(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-05
(45)【発行日】2022-08-16
(54)【発明の名称】金属閉鎖形スイッチギヤ
(51)【国際特許分類】
H02B 1/28 20060101AFI20220808BHJP
H02B 1/20 20060101ALI20220808BHJP
【FI】
H02B1/28 G
H02B1/20 H
(21)【出願番号】P 2018106072
(22)【出願日】2018-06-01
【審査請求日】2021-04-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中山 崇嗣
(72)【発明者】
【氏名】若林 徹
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-055672(JP,A)
【文献】特開2011-072063(JP,A)
【文献】特開2017-022029(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02B 1/00 - 1/38
H02B 1/46 - 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の筐体と、
前記筐体内に収容された遮断器と、
前記遮断器と負荷ケーブルとを接続する負荷側母線と、
前記負荷側母線の分岐点において分岐され、前記分岐点から先端部までの長さが、前記分岐点から前記負荷ケーブルとの接続部までの前記負荷側母線の長さより長い分岐母線と
を具備し
、
前記筐体は換気口を有し、前記分岐母線は、前記分岐点の直近の前記換気口及び当該換気口が形成された前記筐体の壁面から水平方向において遠ざかる方向に向けて配設されている
ことを特徴とする金属閉鎖形スイッチギヤ。
【請求項2】
前記分岐母線と前記換気口との間に介在する遮蔽機構を具備したことを特徴とする請求項
1に記載の金属閉鎖形スイッチギヤ。
【請求項3】
前記筐体の天井部に設けられた放圧口及び当該放圧口を開閉自在に覆うフラッパーを具備したことを特徴とする請求項1
又は2に記載の金属閉鎖形スイッチギヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、金属閉鎖形スイッチギヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、真空遮断器等を金属製の筐体内に収容した金属閉鎖形スイッチギヤが使用されている。このような金属閉鎖形スイッチギヤにおいては、金属製の筐体内にて内部アークが発生して高温・高圧ガスが発生した際に、金属製の筐体の天井部等に設けられた放圧口のフラッパーが開くことによって、発生した高温・高圧ガスを放圧するようになっている。
【0003】
しかし、内部アークの継続時間が長い場合、内部アークは、ローレンツ力の作用により、電路の電源から一番遠い場所で停滞するため、内部アークが停滞した部位の近傍の金属製の筐体の外皮に穴が開き、外部に高温・高圧ガスが噴出してしまったり、内部アークが停滞した部位の近傍の換気口から外部に高温・高圧ガスが噴出してしまう可能性があった。すなわち、放圧口以外の不所望の部位から外部に高温・高圧ガスが噴出する可能性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、従来の金属閉鎖形スイッチギヤにおいては、内部アークが発生した際に、その継続時間が長い場合、放圧口以外の部分から外部に高温・高圧ガスが噴出してしまう可能性があり、その改善が求められていた。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、放圧口以外の部分から外部に高温・高圧ガスが噴出することを防止することのできる金属閉鎖形スイッチギヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の金属閉鎖形スイッチギヤは、金属製の筐体と、前記筐体内に収容された遮断器と、前記遮断器と負荷ケーブルとを接続する負荷側母線と、前記負荷側母線の分岐点において分岐され、前記分岐点から先端部までの長さが、前記分岐点から前記負荷ケーブルとの接続部までの前記負荷側母線の長さより長い分岐母線とを具備し、前記筐体は換気口を有し、前記分岐母線は、前記分岐点の直近の前記換気口及び当該換気口が形成された前記筐体の壁面から水平方向において遠ざかる方向に向けて配設されている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係る金属閉鎖形スイッチギヤの縦断面構成を模式的に示す図。
【
図2】
図1の金属閉鎖形スイッチギヤの要部構成を示す図。
【
図3】第2実施形態に係る金属閉鎖形スイッチギヤの縦断面構成を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態の金属閉鎖形スイッチギヤを、図面を参照して説明する。
【0010】
図1は、第1実施形態に係る金属閉鎖形スイッチギヤ100の縦断面構成を模式的に示す図である。
図1に示すように、金属閉鎖形スイッチギヤ100は、金属製の筐体101を具備している。
【0011】
筐体101内は、背面側(
図1中右側)の受電室101aと、正面側(
図1中左側)の遮断器室101bとに分かれて構成されている。受電室101a内の上部には、母線室101cが設けられている。遮断器室101bの上部には、制御機器等が収容される制御室101dが設けられている。
【0012】
また、筐体101の天井部には、放圧口103a,103b,103cと、これらの放圧口103a,103b,103cを開閉自在に覆うフラッパー104a,104b,104cが配設されている。これらの3つの放圧口103a,103b,103cと、フラッパー104a,104b,104cは、それぞれが、受電室101a、遮断器室101b、母線室101cの天井部に位置するよう配設されている。
【0013】
そして、受電室101a、遮断器室101b、母線室101cのいずれかの内部において、内部アークにより高温・高圧ガスが発生し、その内部の圧力が上昇した際に、それぞれの天井部に配設された放圧口103a,103b,103cのフラッパー104a,104b,104cが開くことによって、各放圧口103a,103b,103cから上部に向けて高温・高圧ガスを排出し、圧力を筐体101の外部に逃がすように構成されている。なお、筐体101の背面側(
図1中右側)の下部には、換気口110が設けられている。
【0014】
遮断器室101b内には、真空遮断器等からなる遮断器102が配設されている。受電室101aと遮断器室101bとを仕切る隔壁101eには、上部断路部113と下部断路部114が固定されている。上部断路部113は遮断器102の上部導体(図示せず。)と電気的に接続されており、下部断路部114は遮断器102の下部導体(図示せず。)と電気的に接続されている。
【0015】
また、上部断路部113には、電源側母線105が接続されており、下部断路部114には、負荷側母線106が接続されている。負荷側母線106は、遮断器102の下部断路部114と負荷ケーブル107とを電気的に接続するように配設されている。
【0016】
下部断路部114に接続された負荷側母線106は、銅板などから構成されており、その端部の接続部112において負荷ケーブル107と接続されている。また、負荷側母線106には、下部断路部114と接続部112との間に位置する分岐点108から分岐した分岐母線109が配設されている。
【0017】
この分岐母線109は、分岐点108から筐体101の背面側の下部に設けられた換気口110から遠ざかる方向へ向けて、つまり正面側に向けて延在するように配設されている。なお、分岐母線109は、碍子115によって支持されている。
【0018】
図2に示すように、分岐母線109の分岐点108からその先端部111までの長さL1は、負荷側母線106における分岐点108から負荷ケーブル107との接続部112までの長さL2より長くなるように設定されている。なお、分岐母線109の先端部111は、開放された状態とされている。
【0019】
上記のように、分岐母線109の長さL1が、負荷側母線106における長さL2より長く設定されているので、負荷側母線106において、内部アークが発生し内部アークの継続時間が長い場合、この内部アークは、ローレンツ力の作用により、電源から一番遠い分岐母線109の先端部111へ移動し、ここで停滞するようになる。
【0020】
一方、分岐母線109が無い場合は、内部アークが発生し内部アークの継続時間が長い場合、電源から一番遠い負荷側母線106と負荷ケーブル107との接続部112の近傍に内部アークが停滞する。なお、負荷ケーブル107は、絶縁体等によって被覆されており、内部アークが負荷ケーブル107側に移動する可能性は低い。上記のように、第1実施形態に係る金属閉鎖形スイッチギヤ100では、上記構成の分岐母線109を設けることによって、内部アークが停滞する位置を、負荷側母線106の接続部112から分岐母線109側に移行させることができる。
【0021】
図1に示すように、筐体101には、その背面側の下部に換気口110が設けられている。分岐母線109は、負荷側母線106の分岐点108から、換気口110に対して遠ざかる方向に延在した構成となっている。これによって、内部アークが停滞する位置を、換気口110から離れた位置にすることができ、換気口110から外部に高温・高圧ガスが噴出する可能性を低減することができる。
【0022】
また、上記のように、内部アークが停滞する位置を、筐体101の背面側の壁面から遠ざけることができるので、金属製の筐体101の背面側の外皮に内部アークにより穴が開き、この穴から筐体101の外部に、高温・高圧ガスが噴出してしまうことを防止することができる。
【0023】
次に、
図3を参照して、第2実施形態に係る金属閉鎖形スイッチギヤ200について説明する。
図3は、第2実施形態に係る金属閉鎖形スイッチギヤ200の縦断面構成を模式的に示す図である。
【0024】
図3に示すように、第2実施形態の金属閉鎖形スイッチギヤ200では、負荷側母線106と、筐体101の背面側の下部に設けられた換気口110との間に、高温・高圧ガスの噴出を遮断する遮断機構としての仕切り板120が配設されている点が第1実施形態の金属閉鎖形スイッチギヤ100と相違している。
【0025】
なお、その他の構成は、
図1に示した第1実施形態の金属閉鎖形スイッチギヤ100と同様に構成されているので、対応する部分には同一の符号を付して重複した説明は省略する。
【0026】
上記構成の第2実施形態の金属閉鎖形スイッチギヤ200では、第1実施形態の金属閉鎖形スイッチギヤ100と同様に、負荷側母線106において、内部アークが発生し内部アークの継続時間が長い場合、この内部アークは、電源から一番遠い分岐母線109の先端部111へ移動し、ここで停滞する。したがって、換気口110から外部に高温・高圧ガスが噴出する可能性を低減することができるとともに、金属製の筐体101の外皮に内部アークにより穴が開き、この穴から筐体101の外部に、高温・高圧ガスが噴出してしまうことを防止することができる。
【0027】
さらに、第2実施形態の金属閉鎖形スイッチギヤ200では、負荷側母線106と、換気口110との間に仕切り板120が配設されているので、この仕切り板120が高温・高圧ガスの換気口110側への流れを遮断することによって、より確実に換気口110から外部に高温・高圧ガスが噴出することを防止することができる。
【0028】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0029】
100,200……金属閉鎖形スイッチギヤ、101……筐体、101a……受電室、101b……遮断器室、101c……母線室、101d……制御室、101e……隔壁、102……遮断器、103……放圧口、104……フラッパー、105……電源側母線、106……負荷側母線、107……負荷ケーブル、108……分岐点、109……分岐母線、110……換気口、111……先端部、112……接続部、113……上部断路部、114……下部断路部、115……碍子、120……仕切り板。