(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-05
(45)【発行日】2022-08-16
(54)【発明の名称】ドレン取付装置
(51)【国際特許分類】
E04D 13/04 20060101AFI20220808BHJP
【FI】
E04D13/04 B
(21)【出願番号】P 2018110828
(22)【出願日】2018-06-11
【審査請求日】2021-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000217365
【氏名又は名称】田島ルーフィング株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000208651
【氏名又は名称】第一機材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】特許業務法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木下 武文
(72)【発明者】
【氏名】金丸 和樹
(72)【発明者】
【氏名】原田 龍裕
(72)【発明者】
【氏名】野林 純平
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-285684(JP,A)
【文献】実開昭60-133030(JP,U)
【文献】特開平08-093150(JP,A)
【文献】特開2007-211539(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 13/04
E04D 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水管に接続される筒部と、垂直フランジ部と、水平フランジ部とを備えたドレン本体を取り付けるドレン取付装置であって、
前記筒部を挿通させる開口を備えた垂直板と、前記垂直板に接合された水平板と、前記水平板上に形成される支持部と、を有し、
前記支持部は、水平支持面部と、前記水平支持面部の周辺と前記水平板とを連結する水平連結部と、前記水平支持面部に接合された垂直支持面部と、前記垂直支持面部の周辺と前記垂直板とを連結する垂直連結部と、を有し、
前記支持部は、前記水平板に対して、前記水平フランジ部が所定の高さに位置するように、
前記水平支持面部により前記ドレン本体を支持する、
ことを特徴とするドレン取付装置。
【請求項2】
前記支持部は、前記垂直板上に形成され、前記垂直板に対して、前記垂直フランジ部が所定の距離に位置するように、
前記垂直支持面部により前記ドレン本体を支持する、
ことを特徴とする請求項1に記載のドレン取付装置。
【請求項3】
前記垂直板に対する前記垂直フランジ部の距離は、前記垂直板上における前記支持部の周囲に配置される断熱材の厚みに応じて決められている、
ことを特徴とする請求項2に記載のドレン取付装置。
【請求項4】
前記水平板に対する前記水平フランジ部の高さは、前記水平板上における前記支持部の周囲に配置される断熱材の厚みに応じて決められている、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のドレン取付装置。
【請求項5】
前記水平板が下地に固定され、前記垂直板が壁に固定され、前記ドレン本体の筒部が前記排水管に接続される、
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のドレン取付装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドレン取付装置に関する。
【背景技術】
【0002】
デッキプレート上に断熱材を敷設し、さらに該断熱材上に防水層を施すことにより屋根を構成するデッキプレート下地断熱屋根工法が知られている。この工法で形成される屋根には、通常、雨水排水用のルーフドレンが設置される。
【0003】
このようなルーフドレンとしては、例えば特許文献1に示す横引きタイプのものがある。かかる従来例のルーフドレンにおいて、水平方向の下地面(デッキプレート)と、垂直方向の壁面とが交差するコーナー部分に配設され壁面に形成される排水管に水平方向に排水を為すために、ドレン本体と、これに被着されるドレンカバーと、ドレン本体の取り付け装置とを具えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のルーフドレンによれば、ドレン周縁において、防水層表面を平滑に維持するとともに防水層を必要かつ充分なだけ下地に密接できるようにし、円滑適正な排水を実現して、ドレン周りの防水性能の維持強化ならびに施工性の向上を図ることができる。
【0006】
ところで、例えば内部の温度環境を厳密に管理したい冷凍・冷蔵倉庫などでは、倉庫内空調の効率を向上させるために、屋根の断熱性能をなるべく高めたいという要請がある。かかる要請に対し、ルーフドレン自体を断熱材で覆うことは困難であるが、その周囲に断熱材を極力隙間なく敷き詰めることで、屋根の断熱性能を高めることができる。しかしながら、従来の構成では円滑適正な排水を優先するために、ルーフドレンの周囲に断熱材を敷設することが困難であった。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みて、排水性能を確保しながらも、例えば断熱材の敷設を妨げないドレン取付装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明のドレン取付装置は、
排水管に接続される筒部と、垂直フランジ部と、水平フランジ部とを備えたドレン本体を取り付けるドレン取付装置であって、
前記筒部を挿通させる開口を備えた垂直板と、前記垂直板に接合された水平板と、前記水平板上に形成される支持部と、を有し、
前記支持部は、水平支持面部と、前記水平支持面部の周辺と前記水平板とを連結する水平連結部と、前記水平支持面部に接合された垂直支持面部と、前記垂直支持面部の周辺と前記垂直板とを連結する垂直連結部と、を有し、
前記支持部は、前記水平板に対して、前記水平フランジ部が所定の高さに位置するように、前記水平支持面部により前記ドレン本体を支持する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、排水性能を確保しながらも、例えば断熱材の敷設を妨げないドレン取付装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態のドレン取付装置に取り付け可能なドレン本体の斜視図である。
【
図3】本実施形態のドレン取付装置の斜視図である。
【
図4】ドレン取付装置10を用いてドレン本体1を設置する状態を示す斜視図である。
【
図5】ドレン取付装置10を用いてドレン本体1を設置した状態を示す正面図であり、中心線より左半分は壁WL及びドレン取付装置10の垂直板12上に防水層(ハッチング)を施工した状態で示す。
【
図6】
図5の構成をA-A線で切断して矢印方向に見た断面図である。
【
図8】別の実施形態にかかる
図5と同様な正面図であり、中心線より左半分は壁WL及びドレン取付装置10の垂直板12上に防水層(ハッチング)を施工した状態で示す。
【
図9】
図8の構成をB-B線で切断して矢印方向に見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本実施形態のドレン取付装置に取り付け可能なドレン本体の斜視図である。
図2は、ドレン本体を分解して示す図である。
図3は、本実施形態のドレン取付装置の斜視図である。
【0012】
まず、ドレン本体から説明する。
図2に示すように、ドレン本体1は、ベース2と、中間部3と、カバー部4とから構成される。金属製のベース2は、水平フランジ部2aと垂直フランジ部2bとを略直角に接合した形状を有する。垂直フランジ部2bの中央には、円形の筒部2cが奥側(水平フランジ部2aと反対側)に突出するように形成され、また水平フランジ部2aと垂直フランジ部2bの接合部には、2つのねじ穴2dが形成されている。水平フランジ部2aの角部近傍における背面に2つの袋ねじ孔2eが形成され、また垂直フランジ部2bの2つの角部近傍における裏面に2つの袋ねじ孔2fが形成されている。袋ねじ孔2e、2fは、貫通しない孔の内周に雌ねじを形成したものである。また、水平フランジ部2a上における筒部2cの近傍には、水平フランジ部2a上に集められた水が筒部2cに向かって流れるように案内する窪み2gが形成されている。
【0013】
金属製の中間部3は、中間水平部3aと中間垂直部3bとを接合した形状を有する。中間水平部3aと中間垂直部3bに跨るようにして、矩形状の開口3cが形成され、開口3cの両側縁に切欠状のねじ受け部3dが2つ形成されている。また、中間垂直部3bの上部中央にねじ穴3eが形成されている。
【0014】
金属製のカバー部4は、カバー水平部4aとカバー垂直部4bとを接合し、更に両者に跨るようにして円弧櫛歯状のグレーチング部4cを形成している。また、カバー垂直部4bの上部中央に貫通孔4dが形成されている。
【0015】
ドレン本体1を組み付ける場合、ベース2上に中間部3を載置し、全体が雄ねじである全ねじボルト5aを中間部3のねじ受け部3dを通過させて、その一端をねじ穴2dに螺合させる。更に全ねじボルト5aの他端にワッシャ5bを挿入すると、ワッシャ5bがねじ受け部3dに当接する。かかる状態で全ねじボルト5aの他端にナット5cを螺合させワッシャ5を押圧しつつ締め上げることにより、ベース2に対して中間部3が連結される。
【0016】
さらに、中間部3上にカバー部4を載置し、ねじ6をカバー部4の貫通孔4dを通過させて、ねじ穴3eに螺合させる。これにより、ベース2及び中間部3に対してカバー部4が連結される。以上で、ドレン本体1の組み付けが完了する。
【0017】
次にドレン取付装置について説明する。
図3において、ドレン取付装置10は、SUSなどの金属製の板材から形成され、水平板11と、水平板11の一辺に直角に接合された垂直板12と、支持部13とから構成されている。
【0018】
支持部13は、水平板11から所定の高さだけ上方に平行シフトした水平支持面部13aと、垂直板12から所定の距離だけ手前側(ここでは水平板11側)に平行シフトした垂直支持面部13bと、水平支持面部13aの周囲三辺と水平板11とを連結する水平連結部13cと、垂直支持面部13bの周囲三辺と垂直板12とを連結する垂直連結部13dとを有する。水平支持面部13aと垂直支持面部13bとは互いに直交して接合しており、更に両者に跨るようにして開口13eが形成されている。また、水平板11と垂直板12の周縁近傍には、設置用のボルト(不図示)を貫通する孔11a、12aがそれぞれ複数個形成されている。
【0019】
水平支持面部13aの角部近傍に2つの貫通孔13fが形成され、また垂直支持面部13bの2つの角部近傍に2つの貫通孔13gが形成されている。
【0020】
ドレン取付装置10を製造する場合、矩形開口を有する金属板の中間を折り曲げて、水平板11と垂直板12とを形成した中間生成体(不図示)に対し、これと並行して金属板から折り曲げて形成しておいた支持部13を、中間生成体の矩形開口の周囲に溶接するなどして形成することができる。ただし、水平板11と垂直板12とを折り曲げて形成した後、更にプレス成形を行うことで、支持部13を形成することもできる。
【0021】
次に、ドレン取付装置10及びドレン本体1の設置について説明する。
図4は、ドレン取付装置10を用いてドレン本体1を設置する状態を示す斜視図である。
図5は、ドレン取付装置10を用いてドレン本体1を設置した状態を示す正面図である。
図6は、
図5の構成をA-A線で切断して矢印方向に見た断面図である。
図7は、
図6の一部を拡大して示す図である。
【0022】
図5,6において、ドレン取付装置10は、デッキプレートDPにより支持された下地(屋根材)FLと壁WLの交差部に設置される。ここで、下地FLと壁WLの交差部には、開口OPが形成されているものとする。
【0023】
まず、
図4に示すように、ドレン本体1の袋ねじ孔2eとドレン取付装置10の貫通孔13fとに挿通したボルト14(
図5,6)、およびドレン本体1の袋ねじ孔2fとドレン取付装置10の貫通孔13gとに挿通したボルト15(
図6)により、ドレン取付装置10上にドレン本体1が載置され固定される。このとき、水平支持面部13aにドレン本体1の水平フランジ部2aの下面が当接し、また垂直支持面部13bに垂直フランジ部2bの裏面が当接する。
【0024】
かかる状態では、ドレン本体1は、ドレン取付装置10の水平板11の表面から高さΔ1だけ上方にシフトした位置に支持され、一方、ドレン取付装置10の垂直板12の表面から距離Δ2だけ手前側にシフトした位置に支持される。なお、高さΔ1は、水平連結部13cのサイズ(幅)を変更することで調整することができ、また距離Δ2も、垂直連結部13dのサイズ(幅)を変更することで調整することができる。
【0025】
更に、開口OPを覆うようにして、ドレン本体1が載置固定されたドレン取付装置10を設置し、水平板11を下地FLに、孔11aを介してボルト(ビス)止めし、且つ垂直板12を壁WLに、孔12aを介してボルト(ビス)止めして取り付けを行う。
かかる状態で、ドレン本体1の筒部2cが開口13eを介して開口OPから突き出すので、これに不図示の排水管を嵌合固定することができる。
【0026】
その後、下地FLの上面及びドレン取付装置10の水平板11の表面にかけて、水平支持面部13aの周囲にまで、例えば硬質ウレタンフォームなどの断熱材21(
図4に一部を図示)を敷設する。また、断熱材21上には防水層22を敷設する(
図6,7参照)。
【0027】
ここで、
図7に示すように、水平板11から水平支持面部13aの高さΔ1を、断熱材21及び防水層22の厚さに対して調整することにより、ドレン本体1のベース2の水平フランジ部2aの上面を、その周囲の防水層22の上面より低くすることができる。これにより、水平フランジ部2aの外周に隣接して断熱材21及び防水層22を敷設した場合に、雨水が断熱材21及び防水層22側からドレン本体1に向かって円滑に流れるようにすることができる。同時に、ドレン取付装置10の水平板11の表面まで断熱材21を敷設することで、下地FLの断熱性能を高めることができる。
【0028】
一方、壁WLの表面及びドレン取付装置10の垂直板12の表面にかけて、垂直支持面部13bの周囲にまで、例えば硬質ウレタンフォームなどの断熱材23(
図4に一部を図示)を敷設する。また、断熱材23上には防水層24を敷設する(
図6参照)。
【0029】
また、垂直板12から垂直支持面部13bの距離Δ2を、断熱材23及び防水層24の厚さに対して調整することにより、ドレン本体1のベース2の垂直フランジ部2bの表面を、その周囲の防水層24の表面に対して近づける(好ましくは面一と)することができる。これにより、敷設したドレン本体1を目立たなくすることができ、美的外観を確保できる。同時に、ドレン取付装置10の垂直板12の表面まで断熱材23を敷設することで、壁WLの断熱性能を高めることができる。
【0030】
なお、防水層22、24は、厚さ1mm~15mmであると好ましく、例えば、塩化ビニル製の防水層、アスファルト防水層、ウレタン防水層などがあるが、これに限られない。
【0031】
本実施形態のドレン取付装置10においては、断熱材21,23の厚みに対応が可能であり、ドレン本体1に隣接する断熱材21,23の厚みを、下地FLや壁WL上の断熱材の厚みと変えるなどの必要がなく、均一な厚さの断熱材を容易に施工できる。また、ドレン取付装置10の剛性が高く、外力が付与されてもドレン本体1と異なる動きをせず、これにより防水層22,24を設けた際に密着性を高めることができ、又ねじれなどが生じにくいため、防水層22,24の剥がれや亀裂などが生じることを抑制できる。
【0032】
本実施形態によれば、防水層22,24のフラットな上面に落滴した雨水は、スムーズにドレン本体1のベース2へと流れるから、防水層22の上面に雨水がたまるなどの不具合を抑制できる。ドレン本体1で収集された雨水は、排水管を介して排水される。
【0033】
図8は、別の実施形態にかかる
図5と同様な正面図である。
図9は、
図8の構成をB-B線で切断して矢印方向に見た断面図である。
【0034】
本実施形態では、ドレン取付装置10及びドレン本体1自体は上述した実施形態と同様であるが、その敷設方法が異なる。より具体的には、断面コ字状またはアングル状の鋼鉄梁ST上に、断熱材25を設置している。水平板11は鋼鉄梁ST上に取り付けられている。
【0035】
本実施形態では、断熱材25は硬質ウレタンフォームを鋼板でサンドイッチしたものであり、それ自体が剛性を有するため鋼鉄梁STと共に下地として用いることができるので、断熱材25上に防水層22を敷設している。それ以外の構成は上述した実施の形態と同様であるため、説明を省略する。
【0036】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の改変を施すことができる。例えば、垂直支持面部13bは、垂直板12に対して手前側(正側とする)に所定距離だけシフトさせているが、垂直板12に対して奥側(負側とする)にシフトさせてもよいし、垂直板12と面一としてもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 ドレン本体
2 ベース
3 中間部
4 カバー部
5a 全ねじボルト
5b ワッシャ
5c ナット
10 ドレン取付装置
11 水平板
12 垂直板
13 支持部
21,23,25 断熱材
22,24 防水層
FL 下地
WL 壁