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特許7118778搬送車、この搬送車を制御する制御方法及び制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-05
(45)【発行日】2022-08-16
(54)【発明の名称】搬送車、この搬送車を制御する制御方法及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/02 20200101AFI20220808BHJP
【FI】
G05D1/02 K
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018127161
(22)【出願日】2018-07-03
(65)【公開番号】P2020008963
(43)【公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000143639
【氏名又は名称】株式会社今仙電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100129676
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼荒 新一
(74)【代理人】
【識別番号】100158067
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 基
(72)【発明者】
【氏名】小森 勇司
【審査官】川口 真一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-107425(JP,A)
【文献】特開2002-132345(JP,A)
【文献】特開2017-167640(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動走行が可能な搬送車であって、
前方の走行面に所定のパターンを投射する投射手段と、
走行面を撮影した第一撮影情報と前記第一撮影情報を撮影した後に走行面を撮影した第二撮影情報と、走行面に投射されたパターンを含む走行面とをそれぞれ取得する撮影手段と、
自動走行した際の理論上の移動度である理論移動度を算出する理論移動度算出手段と、
前記第一撮影情報及び前記第二撮影情報に基づいて現実の移動度である実移動度を算出する実移動度算出手段と、
前記理論移動度と前記実移動度とを比較する移動度比較手段と、
を備え、
前記実移動度算出手段は、前記第一撮影情報から複数の特徴点を抽出し、パターン情報をX-Y座標面として、前記第二撮影情報に含まれる前記特徴点の座標情報から第一撮影情報に含まれる前記特徴点の座標情報を減算することで実移動度を算出することを特徴とする、
搬送車。
【請求項2】
前記実移動度算出手段は、前記第一撮影情報に含まれる領域を四分割し、四分割されたそれぞれの領域から3つ以上の前記特徴点を抽出することを特徴とする、
請求項1に記載の搬送車。
【請求項3】
前記搬送車は、モーター駆動で自動走行が可能な搬送車であり、
前記理論移動度算出手段は、モーターの回転数から前記理論移動度を算出することを特徴とする、
請求項1又は2に記載の搬送車。
【請求項4】
前方の走行面に所定のパターンを投射する投射手段と、走行面を撮影した第一撮影情報と前記第一撮影情報を撮影した後に走行面を撮影した第二撮影情報と走行面に投射されたパターンを含む走行面とをそれぞれ取得する撮影手段と、自動走行した際の理論上の移動度である理論移動度を算出する理論移動度算出手段と、前記第一撮影情報及び前記第二撮影情報に基づいて現実の移動度である実移動度を算出する実移動度算出手段と、前記理論移動度と前記実移動度とを比較する移動度比較手段と、を備えた自動走行が可能な搬送車を制御する搬送車の制御方法であって、
前記第一撮影情報と前記第二撮影情報とをそれぞれ取得する撮影情報取得ステップと、
前記理論移動度を算出する理論移動度算出ステップと、
前記第一撮影情報から複数の特徴点を抽出し、パターン情報をX-Y座標面として、第二撮影情報に含まれる前記特徴点の座標情報から前記第一撮影情報に含まれる前記特徴点の座標情報を減算することで前記実移動度を算出する実移動度算出ステップと、
前記理論移動度と前記実移動度とを比較する移動度比較ステップと、
を含むことを特徴とする、
搬送車の制御方法。
【請求項5】
請求項4に記載の搬送車の制御方法の各ステップを1又は2以上のコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送車、この搬送車を制御する制御方法及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、予め定められた走路を自動走行する自動走行車両が知られている。例えば、特許文献1では、規定走路を自動走行可能に構成された自動走行車両であって、前記規定走路上の起点から現在地点までの走行距離を計測する走行距離計測部と、前記規定走路を走行する自動走行車両の操舵に関する操舵情報を取得する操舵情報取得部と、事前に前記規定走路を走行した自動走行車両の走行距離と操舵情報とを関連付けた操舵関連データを記憶する記憶部と、前記操舵情報取得部によって取得された現在走行中の自動走行車両の操舵情報を前記走行距離計測部によって計測された現在走行中の自動走行車両の走行距離を前記操舵関連データの走行距離に補正する走行距離補正部とを備えた自動走行車両が記載されている。この自動走行車両は、高精度に走行距離を特定することができるため、正確な位置情報に基づいて自動走行車両を操舵することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-167640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の自動走行車両では、前記走行距離計測部によって計測された現在走行中の自動走行車両の走行距離を前記操舵関連データの走行距離に補正するため、補正された走行距離が実際の走行距離と厳密に一致しない可能性があるという課題がある。
【0005】
すなわち、例えば、自動走行の際、走行面を車輪が滑る等した場合、走行距離計測部によって計測された走行距離と現実の走行距離とが異なる可能性があるという課題がある。このような場合には、自動走行車両の現実の位置が計測上の位置と異なる可能性があるため、正確な自動走行の妨げになる可能性があるという課題がある。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、自動走行中に正確な位置情報を取得し、正確な自動走行が可能な搬送車を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の目的の少なくとも一つを達成するために以下の手段を採った。
【0008】
本発明の搬送車は、
自動走行が可能な搬送車であって、
走行面を撮影した第一撮影情報と前記第一撮影情報を撮影した後に走行面を撮影した第二撮影情報とをそれぞれ取得する撮影手段と、
自動走行した際の理論上の移動度である理論移動度を算出する理論移動度算出手段と、
前記第一撮影情報及び前記第二撮影情報に基づいて現実の移動度である実移動度を算出する実移動度算出手段と、
前記理論移動度と前記実移動度とを比較する移動度比較手段と、
を備えたことを特徴とする、
ものである。
【0009】
この搬送車は、走行時に撮影手段で走行面を撮影して第一撮影情報を取得し、第一撮影情報を取得した後に走行面を撮影して第二撮影情報を取得し、実移動度算出手段で第一撮影情報及び前二撮影情報に基づいて現実の移動度である実移動度を算出する。この実移動度と、理論移動度算出手段で算出した自動走行した際の理論上の移動度である理論移動度とを移動度比較手段で比較することにより、実移動度と理論移動度との違いを比較することができる。こうすることにより、実移動度と理論移動度とが一致しているか否かを判断することができるため、例えば、移動中に車輪が走行面を滑った場合には、実移動度が理論移動度と一致しないこと、付言すると、車輪が走行面を滑る等、走行時に何らかの異常が発生していることを検知することができる。こうすることにより、例えば、GPS等の無線測位システムが使用できない場合であっても、搬送車の正確な位置を知ることができる。なお、ここで「実移動度」とは、搬送車が第一撮影情報を取得してから第二撮影情報を取得する迄に移動した移動距離又は移動方向の少なくとも1つを示し、「理論移動度」とは、車輪やモーターの回転数等搬送車が移動する際に変化する値から計測した計測上の移動距離又は移動方向の少なくとも1つを示すものである。
【0010】
本発明の搬送車は、前方の走行面に所定のパターンを投射する投射手段と、を備え、前記実移動度算出手段は、前記第一撮影情報から複数の特徴点を抽出し、前記第二撮影情報に含まれる前記特徴点と前記パターンとに基づいて実移動度を算出することを特徴としてもよい。こうすることにより、複数の特徴点と走行面に投射された所定のパターンとに基づいて実移動度を算出することができるため、単一の特徴点を抽出する場合と比較して、より確実に実移動度を算出することができる。なお、ここで「特徴点」とは、走行面を撮影した際に現れる特徴的な部位を意味し、例えば、走行面の凹凸等の形状が周りと異なる部位や装飾や汚染等による色が周りと異なる部位等を意味する。
【0011】
この態様を採用した本発明の搬送車において、前記実移動度算出手段は、前記第一撮影情報に含まれる領域を四分割し、四分割されたそれぞれの領域から3つ以上の前記特徴点を抽出することを特徴としてもよい。こうすることにより、搬送車の移動に伴って特徴点の全てが撮影手段で撮影する撮影範囲外に移動してしまう可能性を低減し、実移動度をより確実に算出することができる。
【0012】
本発明の搬送車において、前記搬送車は、モーター駆動で自動走行が可能な搬送車であり、前記理論移動度算出手段は、モーターの回転数から前記理論移動度を算出することを特徴としてもよい。こうすることにより、容易に理論移動度を算出することができる。
【0013】
本発明の搬送車の制御方法は、
走行面を撮影した第一撮影情報と前記第一撮影情報を撮影した後に走行面を撮影した第二撮影情報とをそれぞれ取得する撮影手段と、自動走行した際の理論上の移動度である理論移動度を算出する理論移動度算出手段と、前記第一撮影情報及び前記第二撮影情報に基づいて現実の移動度である実移動度を算出する実移動度算出手段と、前記理論移動度と前記実移動度とを比較する移動度比較手段と、を備えた自動走行が可能な搬送車を制御する搬送車の制御方法であって、
前記第一撮影情報と前記第二撮影情報とをそれぞれ取得する撮影情報取得ステップと、
前記理論移動度を算出する理論移動度算出ステップと、
前記第一撮影情報及び前記第二撮影情報に基づいて前記実移動度を算出する実移動度算出ステップと、
前記理論移動度と前記実移動度とを比較する移動度比較ステップと、
を含むことを特徴とする、
ものである。
【0014】
この搬送車の制御方法では、走行時に撮影手段で走行面を撮影して第一撮影情報を取得し、第一撮影情報を取得した後に走行面を撮影して第二撮影情報を取得し、実移動度算出手段で第一撮影情報及び前二撮影情報に基づいて現実の移動度である実移動度を算出する。この実移動度と、理論移動度算出手段で算出した自動走行した際の理論上の移動度である理論移動度とを移動度比較手段で比較することにより、実移動度と理論移動度との違いを比較することができる。こうすることにより、実移動度と理論移動度とが一致しているか否かを判断することができるため、例えば、移動中に車輪が走行面を滑った場合には、実移動度が理論移動度と一致しないこと、付言すると、車輪が走行面を滑る等、走行時に何らかの異常が発生していることを検知することができる。こうすることにより、例えば、GPS等の無線測位システムが使用できない場合であっても、搬送車の正確な位置を知ることができる。
【0015】
本発明のプログラムは、搬送車の制御方法の各ステップを1又は2以上のコンピュータに実行させるためのプログラムである。このプログラムは、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体(例えば、ハードディスク、ROM、CD、DVD、フラッシュメモリなど)に記録されていても良いし、伝送媒体(インターネットや有線/無線LANなどの通信網)を介してあるコンピュータから別のコンピュータへ送信されても良いし、その他どのような形で授受されても良い。また、制御方法の各ステップを実行する装置で実行されるものであっても、プログラムが実行される装置と処理が行われる装置とが異なっていてもよい。いずれの場合であっても、このプログラムを1つのコンピュータに実行させるか又は複数のコンピュータに各ステップを分担して実行させれば、上述した制御方法と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、搬送車20の構成の概略を示す側面図である。
図2図2は、搬送車20の構成の概略を示す背面図である。
図3図3は、搬送車20の電気的接続を説明するためのブロック図である。
図4図4は、パターン32の一例を示す説明図である。
図5図5は、位置ズレ検知処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。
図6図6は、第一撮影情報の一例を示す説明図である。
図7図7は、第二撮影情報の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施の形態の一例として、搬送車20について詳しく説明する。以下に説明する実施の形態及び図面は、本発明の実施形態の一部を例示するものであり、これらの構成に限定する目的に使用されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更することができる。なお、各図において対応する構成要素には同一又は類似の符号を付す。また、搬送車20の制御方法の一例を示すことで、本発明の搬送車の制御方法及び制御プログラムの一例も明らかにする。
【0018】
本発明の実施の形態の一例である搬送車20は、図1及び図2に示すように、駆動手段22a(図3参照)によって駆動する右後輪24a及び駆動手段22b(図3参照)によって駆動する左後輪24bによってモーター駆動し、無人で予め定められた経路を自走可能なモーター駆動式無人搬送車であり、無線通信又は予め定められた搬送ルートに従って所定の経路を自走する。この搬送車20は、パターン32(図4参照)を走行面に投射する投射手段30と、走行面に投射されたパターン32を含む走行面を撮影する撮影手段40と、投射手段30及び撮影手段40や搬送車20の自走を制御する制御手段50(図3参照)と、を備えており、駆動手段22a及び駆動手段22b(以下、「駆動手段22」とも言う。)、投射手段30、撮影手段40及び制御手段50は、図3に示すように、それぞれ電気的に接続されている。この搬送車20は、投射手段30から投射されたパターン32を含む走行面を撮影情報として撮影手段40が複数回撮影し、第一撮影情報及び第二撮影情報としてそれぞれ取得する。次に、第一撮影情報と第二撮影情報とに基づいて、第一撮影情報を撮影してから第二撮影情報を撮影するまでに移動した移動度を実移動度として算出するとともに、第一撮影情報を撮影してから第二撮影情報を撮影するまでに移動しているはずの移動度を理論移動度として計測する。そして、実移動度と理論移動度とを比較することにより、搬送車20の現実の位置と予め定められた自動走行ルートから計測された計測上の位置とのズレを検出することができる。こうすることにより、搬送車の自動走行制御をより正確に行うことができる。
【0019】
駆動手段22は、例えば、モーター等の公知の駆動手段であり、右後輪24a及び左後輪24bと直接又は間接的に連接され、駆動手段22aが右後輪24aを、駆動手段22bが左後輪24bを、それぞれ駆動する。また、この駆動手段22は、制御手段50と電気的に接続されており、駆動手段22の回転数をそれぞれ駆動情報として制御手段50に発信する。
【0020】
投射手段30は、図1に示すように、搬送車20が走行する搬送車20の前方側の走行面にパターン32を投射する公知の投射装置であり、後述するROM52に記憶されたパターン32を読み出し、搬送車20の前方側の走行面に投射する。
【0021】
パターン32は、図4に示すように、黒色の縦線、横線及び斜線がそれぞれ等間隔で配置されたパターン情報である。このパターン32は後述するROM52に記憶されており、所定のタイミングでROM52から読み出され、投射手段30によって、搬送車20の前方側の走行面に投射される。
【0022】
撮影手段40は、図1に示すように、搬送車20が走行する搬送車20の前方側の走行面を撮影する公知の撮影装置であり、投射手段30によってパターン32が投射された走行面を撮影し、撮影情報を後述するRAM53に送信する。このとき、走行面は完全な平坦面では無いため、凹部や凸部、キズ、模様等の何らかの特徴を有する走行面とパターン32が投射されたパターン情報とが撮影情報として取得される。
【0023】
制御手段50は、図3に示すように、CPU51を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、投射手段30や撮影手段40を制御する各種制御プログラムやパターン32に関する情報等が記憶されたROM52と、撮影手段40によって撮影された第一撮影情報及び第二撮影情報(以下、「撮影情報」ともいう。)等を一時的に記憶するRAM53と、駆動手段22,投射手段30、撮影手段40等との間の各種信号の送受信を行うインタフェース54(以下、「I/F54」と言う。)がそれぞれバス55を介して電気的に接続されている。この制御手段50は、駆動手段22を制御することで搬送車20の走行を制御することに加え、駆動手段22が出力した駆動信号に基づいて理論移動度を算出したり、撮影手段40が取得した第一撮影情報及び第二撮影情報に基づいて実移動度を算出したり、理論移動度と実移動度とを比較したりすることで、本発明の理論移動度算出手段、実移動度算出手段及び移動度比較手段にも相当する。
【0024】
次に、実移動度と理論移動度との違いを検出する位置ズレ検知処理方法について、制御手段50によって実行される位置ズレ検知処理ルーチンを一例に説明する。この位置ズレ検知処理ルーチンは、搬送車20が走行する際に開始され、走行中は繰り返し実行される。なお、ここで図5は、位置ズレ検知処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【0025】
CPU51によってROM52に記憶された位置ズレ検知処理ルーチンが読み出され、実行されると、CPU51は、ROM52よりパターン32を含む投射情報を読み出し(ステップS110)、投射手段30で走行面にパターン32を投射する(ステップS120)。続いて、パターン32が投射された走行面を撮影手段40が撮影し、第一撮影情報として、RAM53に一時的に記憶する(ステップS130)。ここで、第一撮影情報として取得した撮影情報の一例を図6に示す。図6に示すように、パターン32が照射された走行面を撮影することで、複数の特徴点34(特徴点34a、特徴点34b、特徴点34c、特徴点34d)及び投射されたパターンを含む第一撮影情報を取得することができる。なお、ここで、「特徴点」とは、走行面を撮影した際に現れる特徴的な部位を意味し、例えば、走行面の凹凸等の形状が周りと異なる部位や装飾や汚染等による色が周りと異なる部位等を意味する。
【0026】
このとき、複数の特徴点34は、走行面に投射されたパターン情報を四分割した領域のうち、それぞれの領域に少なくとも2カ所以上抽出するものとする。このように、パターン情報を四分割した領域のそれぞれの領域から少なくとも2カ所以上抽出することにより、搬送車20が走行した際、前後左右いずれの方向に走行したとしても、第一撮影情報を撮影してから第二撮影情報を撮影する迄の間に、全ての特徴点が撮影手段40の撮影範囲外に移動する可能性を低減することができる。言い換えると、第二撮影情報に第一撮影情報に含まれる特徴点が一つも含まれず、第一撮影情報と第二撮影情報に基づいて実移動度が算出できなくなる可能性を未然に低減することができる。
【0027】
続いてCPU51は、所定の待機時間経過したか否かを判定し(ステップS140)、所定の待機時間経過していないと判定した場合には、再度ステップS140を実行する。なお、ここで所定時間とは、予めROM52に定められた時間であり、1秒間であってもよいし、数秒間であってもよい。所定の待機時間を短くすることで、より正確に位置ズレを検出することができる。一方、所定の待機時間を短くすると、短期間で多くの処理が必要となるため、CPU51に対する負荷が増大するため、0.1秒以上5秒以下が好ましい。
【0028】
一方、ステップS140において、CPU51が所定の待機時間経過したと判定した場合には、待機時間に相当する理論移動度を算出する(ステップS150)。ここで、理論移動度とは、待機時間に移動した移動距離及び移動方向を意味する値であり、例えば、駆動手段22から出力された駆動信号に含まれる回転数からCPU51が移動距離を算出してもよいし、駆動信号に含まれる駆動手段22aの回転数と駆動手段22bの回転数との差から移動方向を算出してもよい。
【0029】
続いて、CPU51は、走行面を撮影し、第二撮影情報を取得する(ステップS160)。ここで、第二撮影情報は、所定の待機時間経過した後に第一撮影情報と同様に撮影することで取得した撮影情報であり、図6に示すように、複数の特徴点34(特徴点34a、特徴点34b、特徴点34c、特徴点34d)が搬送車20の移動に伴って移動したものである。
【0030】
次に、CPU51は、第一撮影情報と第二撮影情報とに基づいて、実移動度を算出し(ステップS170)、RAM53に一時的に記憶する。ここで、実移動度とは、実際に搬送車20が移動した距離及び方向を表すものであり、第二撮影情報は第一撮影情報が撮影されてから所定の待機時間経過後に撮影された情報であるため、第一撮影情報に含まれる複数の特徴点34と第二撮影情報に含まれる複数の特徴点34の変化量から算出することができる。具体的には、例えば、パターン情報をX-Y座標面として、第二撮影情報に含まれる特徴点34の座標情報から第一撮影情報に含まれる特徴点34の座標情報を減算することで、算出してもよい。こうすることにより、第一撮影情報及び第二撮影情報に基づいて、実移動度を算出することができる。このとき、特徴点34としてパターン32を四分割したそれぞれの領域から複数抽出することで、特徴点34の位置によっては移動に伴って全ての特徴点34が第二撮影情報に含まれない可能性を未然に低減し、実移動度が算出できなくなる可能性を未然に低減することができる。
【0031】
続いて、CPU51は、理論移動度と実移動度が一致するか否かを判定し(ステップS180)、一致すると判定した場合には、本ルーチンを終了する。このような場合には、予め定められたルートを異常なく搬送車20が移動しているため、何ら対応を行う必要が無いためである。一方、ステップS180でCPU51が理論移動度と実移動度が一致しないと判定した場合には、搬送車20の現在地を理論移動度に対応する位置に移動することで現在位置を修正し(ステップS190)、本ルーチンを終了する。こうすることにより、走行面の状態等何らかの理由で走行ルートを外れた場合であっても、走行ルートに戻ることができる。
【0032】
ここで、実移動度と理論移動度の比較方法について、タイヤ滑が発生しなかった場合(図7A参照)、両タイヤ滑りが発生した場合(図7B参照)、右タイヤ滑が発生した場合(図7C参照)のそれぞれの場合を例に説明する。なお、図7は、想定される第二撮影情報の一例を示す説明図であり、図7Aはタイヤ滑が発生しなかった場合、図7Bは両タイヤ滑が発生した場合、図7Cは右タイヤ滑が発生した場合、のそれぞれの場合における第二撮影情報を模式的に示した図である。また、左タイヤ滑が発生した場合は、右タイヤ滑が発生した場合と左右が異なること以外は同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0033】
まず、図7Aに示す場合の実移動度を算出する方法について説明する。図7Aに示す場合の実移動度を算出する場合には、第一撮影情報中に含まれる特徴点34と第二撮影情報中に含まれる対応する特徴点34とを比較する。ここでは、図6の特徴点34aと図7Aの特徴点34a、図6の特徴点34bと図7Aの特徴点34b、図6の特徴点34cと図7Aの特徴点34cが、図6の特徴点34dと図7Aの特徴点34dが、それぞれ対応する。図4に示すように、パターン情報の左下位置を原点として、右方向をX軸方向、上方向をY軸方向、隣り合う縦線及び横線の間隔を値1としたX-Y座標系で考えた場合、図6に示すように、第一撮影情報中の特徴点34aの中心位置の座標は(2,2)、第二撮影情報中の特徴点34aの中心位置の座標は(2,0)と表す(図7A参照)ことができる。このことから、第一撮影情報及び第二撮影情報に基づいて、Y軸方向に-2移動したことが実移動度として表される。
【0034】
一方、所定の待機時間における右駆動輪の回転数及び左駆動輪の回転数から算出した理論移動度に従って移動した特徴点34aの仮想座標が(2,0)と算出できた場合、Y軸方向に-2移動したことが理論移動度として表せる。次に、実移動度と理論移動度とを比較すると、理論移動度と実移動度が一致しているため、図7Aに示す状態では、タイヤ滑が発生していない、すなわち、正常に移動していると判定できる。
【0035】
次に、図7Bに示す実移動度を算出する方法について説明する。図7Bに示す場合の実移動度を算出する場合には、第一撮影情報中に含まれる特徴点34と第二撮影情報中に含まれる対応する特徴点34とを比較する。図7Aの場合と同様にX-Y座標系で考えた場合、図6に示すように、第一撮影情報中の特徴点34aの中心位置の座標は(2,2)、第二撮影情報中の特徴点34aの中心位置の座標は(2,1)と表す(図7B参照)ことができる。このことから、第一撮影情報及び第二撮影情報に基づいて、Y軸方向に-1移動したことが実移動度として表される。
【0036】
一方、所定の待機時間における右駆動輪の回転数及び左駆動輪の回転数から算出した理論移動度に従って移動した特徴点34aの仮想座標が(2,0)と算出できた場合、Y軸方向に-2移動したことが理論移動度として表せる。次に、実移動度と理論移動度とを比較すると、理論移動度と比較して実移動度がY軸方向に1移動していると判定できるため、図7Bに示す状態では、理論移動度と比較して、Y軸方向への移動が少なくかつX軸方向への移動がなく、両タイヤ滑が発生している、すなわち、理論移動度まで十分に移動していないと判定できる。
【0037】
続いて、図7Cに示す実移動度を算出する方法について説明する。図7Cに示す場合の実移動度を算出する場合には、第一撮影情報中に含まれる特徴点34と第二撮影情報中に含まれる対応する特徴点34とを比較する。図7Aの場合と同様にX-Y座標系で考えた場合、図6に示すように、第一撮影情報中の特徴点34aの中心位置の座標は(2,2)、第二撮影情報中の特徴点34aの中心位置の座標は(1,0)と表す(図7C参照)ことができる。このことから、第一撮影情報及び第二撮影情報に基づいて、X軸方向に-1、Y軸方向に-2移動したことが実移動度として表せる。
【0038】
一方、所定の待機時間における右駆動輪の回転数及び左駆動輪の回転数から算出した理論移動度に従って移動した特徴点34aの仮想座標が(2,0)と算出できた場合、Y軸方向に-2移動したことが理論移動度として表せる。次に、実移動度と理論移動度とを比較すると、理論移動度と比較して実移動度がX軸方向に-1移動したと判定できるため、図7Cの状態では、理論移動度と比較して、X軸のマイナス方向へ移動しており、右タイヤ滑が発生し、理論移動度よりも右方向に移動していると判定できる。
【0039】
以上詳述した実施の形態によれば、ステップS150で理論移動度を算出し、ステップS170で第一撮影情報と第一撮影情報を撮影してから所定時間経過後に撮影した第二撮影情報とに基づいて実移動度を算出し、ステップS180で理論移動度と実移動度とを比較することにより、実移動度と理論移動度との違いを判定することができる。このように、実移動度と理論移動度の違いを判定することにより、搬送車20の現在位置を正確に判定することができ、搬送車20が自動走行する際、走行ルートを正確に走行しているか判定することができる。
【0040】
また、特徴点34を抽出する際、パターン32が投射された領域を四分割したそれぞれの領域から複数の特徴点を抽出することにより、搬送車20の移動に伴って第一撮影情報で抽出した特徴点34の全てが第二撮影情報に含まれなくなる可能性を未然に低減することができる。言い換えると、第一撮影情報に含まれる特徴点34がいずれも第二撮影情報に含まれないことにより、実移動度が算出できない可能性を未然に低減することができる。
【0041】
更に、搬送車20はモーター駆動であり、駆動手段22から出力される駆動信号に含まれる駆動手段22の回転数に基づいて理論移動度を算出することで、容易に理論移動度を算出することができる。
【0042】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0043】
例えば、上述した実施の形態では、走行面に投射されたパターン情報を四分割した領域のうち、それぞれの領域に少なくとも2カ所以上の特徴点を抽出するものとしたが、抽出する特徴点の数は、三カ所以上であってもよい。こうすれば、搬送車の移動に伴って、特徴点の全てが撮影手段40で撮影可能な範囲外に移動する可能性を未然に低減することができる。
【0044】
上述した実施の形態では、縦線、横線及び斜線は黒色の線であるとしたが、撮影手段40で撮影可能であれば黒色の線に限定されるものではなく、赤外線や紫外線等、人間の目が視認できないものであってもよい。赤外線の場合には赤外線カメラ等を、紫外線の場合には紫外線カメラ等を撮影手段40として用いることにより、黒色の汚れ等による影響を排除することができる。又、赤色や黄色等の線とした場合、周囲の人に視認されることにより、搬送車20の接近を報知することができるため、周囲の人が意図せず搬送車20の走行を妨げてしまう可能性を未然に低減することができる。
【0045】
上述した実施の形態では、パターン情報は、縦線、横線及び斜線が等間隔に設けられているものとしたが、縦線、横線又は斜線のいずれか少なくとも1種類であってもよいし、それぞれ、異なる間隔であってもよい。また、十字マークや矩形、枠型等、いずれかの形状であってもよい。いずれの場合であっても、上述した実施の形態と同様の効果が得られる。
【0046】
上述した実施の形態では、特徴点34aに基づいて実移動度を算出するものとしたが、特徴点34a、特徴点34b、特徴点34c及び特徴点34dの全てについて実移動度を算出し、これら全ての合計値や平均値等を実移動度として用いてもよいし、算出した実移動度のうち、最も同一の値が多い値を実移動度として算出してもよい。いずれの場合であっても、上述した実施の形態と同様の効果が得られる。
【0047】
上述した実施の形態では、右駆動輪の回転数及び左駆動輪の回転数から移動距離を、右駆動輪の回転数と左駆動輪の回転数との差から移動方向を算出するものとしたが、理論移動値の算出方法については、これに限定されるものではなく、種々の方法で定めることができる。例えば、モーターの回転数に変えて、車輪の回転数等に基づいて算出してもよいし、予め搬送車の自動走行ルートを定める際に、経過時間毎の理論移動値を予め記憶してもいてもよい。いずれの場合であっても、上述した実施の形態と同様の効果が得られる。
【0048】
上述した実施の形態では、理論移動度算出手段、実移動度算出手段及び移動度比較手段として、制御手段50を備えるものとしたが、搬送車20に積載又は電気的に接続される一又は複数のコンピュータを備えるものとしてもよい。この場合も、上述した実施の形態と同様の効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
上述した実施の形態で示すように、自動走行分野、特に自動走行時の位置検知手段として利用することができる。
【符号の説明】
【0050】
20…搬送車、22…駆動手段、22a…駆動手段、22b…駆動手段、24a…右後輪、24b…左後輪、30…投射手段、32…パターン、34…特徴点、34a…特徴点、34b…特徴点、34c…特徴点、34d…特徴点、40…撮影手段、50…制御手段、51…CPU、52…ROM、53…RAM、54…インタフェース、55…バス。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7