(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-05
(45)【発行日】2022-08-16
(54)【発明の名称】密封装置
(51)【国際特許分類】
F16J 15/3232 20160101AFI20220808BHJP
【FI】
F16J15/3232 201
(21)【出願番号】P 2018130964
(22)【出願日】2018-07-10
【審査請求日】2021-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000167196
【氏名又は名称】光洋シーリングテクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹内 亮二
(72)【発明者】
【氏名】松田 健太郎
【審査官】山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-103142(JP,A)
【文献】実開平02-121669(JP,U)
【文献】特開2014-109297(JP,A)
【文献】特開2009-115110(JP,A)
【文献】特開2003-065289(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/3204-15/3236
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに相対回転する軸とハウジングとの間に構成される環状の空間に装着され、当該軸と当該ハウジングとの間を封止する密封装置であって、
環状の芯金を有するとともに前記軸と前記ハウジングとの間に装着される環状のシール本体と、前記シール本体の軸方向外方において前記軸に装着される環状のディフレクターとを備えており、
前記芯金は、円筒形状の第1円筒部、前記第1円筒部の軸方向外方の一端から径方向内方へ延在する円環状の第1環状板部、前記第1環状板部の径方向内方の一端から軸方向外方に延在している第2円筒部、および、前記第2円筒部の軸方向外方の一端から径方向内方へ延在している円環状の第2環状板部を有し、前記芯金は、折れ曲がり形状を有し、
前記シール本体が、前記軸に摺接する主リップ部と、前記主リップ部側から軸方向外方に向けて径方向外方に傾斜しつつ延在し、その内周面において前記ディフレクターと接触するサイドリップ部とを有しており、
前記サイドリップ部は、その付け根部に
断面形状が矩形状である肉厚部を有
し、
断面形状が矩形状である前記肉厚部が、前記第2円筒部と前記第2環状板部との前記折れ曲がり形状を成す部分を、軸方向外方からおよび径方向外方から覆う
ことを特徴とする、密封装置。
【請求項2】
互いに相対回転する軸とハウジングとの間に構成される環状の空間に装着され、当該軸と当該ハウジングとの間を封止する密封装置であって、
環状の芯金を有するとともに前記軸と前記ハウジングとの間に装着される環状のシール本体と、前記シール本体の軸方向外方において前記軸に装着される環状のディフレクターとを備えており、
前記芯金は、円筒形状の円筒部と、前記円筒部の軸方向外方の一端から径方向内方へ延在している円環状の環状板部と、を有し、
前記シール本体が、前記軸に摺接する主リップ部と、前記主リップ部側から軸方向外方に向けて径方向外方に傾斜しつつ延在し、その内周面において前記ディフレクターと接触するサイドリップ部とを有しており、
前記サイドリップ部は、その付け根部に肉厚部を有
し、
前記肉厚部は、前記環状板部の径方向内側の端面よりも径方向外方に設けられ前記環状板部の一部を覆っており、
前記肉厚部は、その外周面が軸方向外方に向かうにしたがって縮径する形状でありかつその内周面が軸方向外方に向かうにしたがって拡径する形状となることによって、これら外周面と内周面との間における断面形状が三角形状である、
ことを特徴とする、密封装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は密封装置に関する。さらに詳しくは、例えば自動車のデフサイド用の密封装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のディファレンシャル装置は、デフピニオンギヤ及びデフサイドギヤを収容するデフケースと、デフケースを回転自在に支持するハウジングと、デフサイドギヤに連結されるとともに、ハウジングに挿通される軸とを備えている。ハウジングと軸との間の環状空間には、潤滑油の漏洩を防止し、ハウジングの軸方向外方からの異物の混入を防止するために、デフサイド用の密封装置が設けられる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載された密封装置を含む従来のデフサイド用の密封装置100は、
図4に示されるように、通常、ハウジング101と軸102との間に装着されるシール本体103と、シール本体103の軸方向外方において軸102に装着されるディフレクター104とを備えている。
【0004】
シール本体103は、リップ部105として、軸102に摺接する主リップ部106と、この主リップ部106よりも軸方向外方において軸102に摺接する補助リップ部107と、この補助リップ部107よりも径方向外方に設けられ且つ軸方向外方に向けて径方向外方に傾斜しつつ延在するサイドリップ部108とを有している。ディフレクター104は、径方向に沿って配置された円環状の環状板部104aを有している。この密封装置100では、サイドリップ部108がディフレクター104の環状板部104aに接触することで、軸方向外方からの異物の侵入が防止される。
【0005】
密封装置100のサイドリップ部108には、ディフレクター104に対して締め代が設定される。この締め代は、ハウジング101に対するシール本体103の組み付け位置や、軸102に対するディフレクター104の組み付け位置等によって変化する。また、自動車の走行中に軸102がスラスト移動することによっても、締め代は変化する。
このため、デフサイド用の密封装置100では、密封性を確保するために、サイドリップ部108の軸方向の長さを長くして、当該サイドリップ部108の内周面108aがディフレクター104の環状板部104aと面接触して当該環状板部104aに摺接するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
デフサイド用の密封装置100は、広い締め代領域に対応するために、前記のようにサイドリップ部108の軸方向の長さを長くしているが、この場合、例えば軸102が軸方向外方(
図4において左方向)に移動することで当該サイドリップ部108と補助リップ部107との間の環状のスペース109の体積が増加して当該スペース109が負圧になり、サイドリップ部108の変形基点である根元部分108bが径方向内側に変形してディフレクター104の内径側円筒部104bの先端角部104b1や軸102に接触する恐れがある。
サイドリップ部108がディフレクター104や軸102に接触した状態で軸102が回転すると、接触している部分が摩耗ないし破損し、密封装置100の密封性が損なわれる。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、サイドリップ部とディフレクターや軸との間に隙間を確保して当該サイドリップ部とディフレクターや軸とが接触するのを防止することができる密封装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の密封装置は、
(1)互いに相対回転する軸とハウジングとの間に構成される環状の空間に装着され、当該軸と当該ハウジングとの間を封止する密封装置であって、
前記軸と前記ハウジングとの間に装着される環状のシール本体と、前記シール本体の軸方向外方において前記軸に装着される環状のディフレクターとを備えており、
前記シール本体が、前記軸に摺接する主リップ部と、前記主リップ部側から軸方向外方に向けて径方向外方に傾斜しつつ延在し、その内周面において前記ディフレクターと接触するサイドリップ部とを有しており、
前記サイドリップ部は、その付け根部に肉厚部を有することを特徴とする。
【0010】
本発明の密封装置では、サイドリップ部の付け根部に肉厚部が形成されているので、当該付け根部の剛性を向上させることができる。したがって、例えば軸が軸方向外方に移動することでサイドリップ部と主リップ部との間の環状のスペースの体積が増加して当該スペースが負圧になり、当該サイドリップ部が径方向内側に変形しようとしたり、又は、締め代が大きくなりサイドリップ部が径方向内側に変形しようとしても、サイドリップ部の付け根部の剛性は大きくされているので、当該変形を抑制することができ、当該サイドリップ部とディフレクターや軸との間に隙間を確保することができる。これにより、サイドリップ部がディフレクターや軸に接触するのを防止することができ、接触した状態で軸が回転することで当該サイドリップ部が摩耗ないし破損するのを防止することができる。その結果、密封装置の長寿命化を図ることができる。
【0011】
(2)上記(1)の密封装置において、前記肉厚部の断面形状を矩形状とすることができる。この場合、断面形状が矩形状の肉厚部をサイドリップ部の付け根部に形成することで、当該付け根部の剛性を向上させることができる。
【0012】
(3)上記(1)の密封装置において、前記肉厚部の断面形状を三角形状とすることができる。この場合、断面形状が三角形状の肉厚部をサイドリップ部の付け根部に形成することで、当該付け根部の剛性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の密封装置によれば、サイドリップ部とディフレクターや軸との間に隙間を確保して当該サイドリップ部とディフレクターや軸とが接触するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る密封装置の断面説明図である。
【
図2】
図1に示される密封装置においてサイドリップ部の締め代が大きくなったときの断面説明図である。
【
図3】本発明の他の実施形態に係る密封装置の断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の密封装置の実施形態について添付図面を参照しながら詳述する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0016】
〔第1実施形態〕
[密封装置1の全体構成]
図1は本発明の一実施形態(第1実施形態)に係る密封装置1の断面説明図である。この密封装置1は、自動車のディファレンシャル装置において、デフピニオンギヤ及びデフサイドギヤを収容するデフケースを回転自在に支持するハウジング2と、デフサイドギヤに連結され、当該ハウジング2の軸孔3に挿通された軸4(ドライブシャフトともいう。)との間に用いられる。密封装置1は、デフサイド用の密封装置である。
【0017】
密封装置1は、互いに相対回転する軸4とハウジング2との間に形成される環状の空間に装着され、軸4とハウジング2との間を封止する。この密封装置1は、ハウジング2内部の密封空間A内に密封された潤滑油等の流体がハウジング2の外部へ漏洩するのを防止する。なお、
図1には、軸4とハウジング2との間に装着される前、すなわち、変形前の自然状態にある密封装置1が示されている。
【0018】
密封装置1は、環状のシール本体10と、環状のディフレクター30とを備えている。シール本体10は、軸4とハウジング2との間に装着される。ディフレクター30は、シール本体10の軸方向外方において軸4に装着される。ディフレクター30は、径方向に沿って配置される円環状の環状板部31を有している。
【0019】
[シール本体10]
シール本体10は、環状の芯金11と、当該芯金11に固定されているシール部材12と、環状のバネリング13とを備えている。シール本体10は、芯金11、シール部材12及びバネリング13で構成されている。
【0020】
芯金11は、例えばSPCC等の金属で作製された環状部材である。この芯金11は、円筒形状の第1円筒部14a及び第2円筒部14bと、円環状の第1環状板部15a及び第2環状板部15bとで構成されている。第1円筒部14a及び第2円筒部14bは、それらの軸心が軸4の軸心と一致するように配置されている。第1環状板部15aは、第1円筒部14aの軸方向外方の一端から径方向内方へ延在しており、第2円筒部14bは当該第1環状板部15aの径方向内方の一端から軸方向外方に延在している。また、第2環状板部15bは、第2円筒部14bの軸方向外方の一端から径方向内方へ延在している。
【0021】
シール部材12は、例えばアクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、アクリルゴム(ACM)等の合成ゴムを基材ゴムとする弾性部材からなる。シール部材12は、加硫による接着処理(焼き付け)により芯金11に固定されている。シール部材12は、環状に形成されており、本体部16と、主リップ部17と、補助リップ部18と、サイドリップ部19とを有している。
【0022】
本体部16は、外周部20と、側面部21と、内周部22とを備えている。外周部20は、芯金11の第1円筒部14aの外周面14a1に積層されており、ハウジング2の軸孔3に固定される。側面部21は、芯金11の第1環状板部15a及び第2環状板部15bの軸方向外方の側面15a1、15b1、並びに第2円筒部14bの径方向外方の面14b1に積層されている。内周部22は、芯金11の第2環状板部15bの内周部を覆っている。本実施形態におけるシール部材12では、外周部20、側面部21及び内周部22は一体的に形成されている。外周部20は軸方向に延在し、側面部21は径方向に延在している。
【0023】
[主リップ部17]
主リップ部17は、本体部16の内周部22の径方向内側において密封空間A側へ延びている。主リップ部17の外周面17aには、周溝23が形成されている。そして、この周溝23には、ガータスプリングと呼ばれるバネリング13が装着されている。このバネリング13により、主リップ部17が径方向内方へ締め付けられている。
【0024】
本実施形態の密封装置1では、主リップ部17は軸4と摺接する。この主リップ部17は、軸4の外周面4aに締め代をもって接触して密封空間A内の密封流体が軸方向外方へ漏れるのを防止している。主リップ部17の断面形状は、径方向内方に向けて先細りである。
【0025】
[補助リップ部18]
補助リップ部18は、本体部16の内周部22から径方向内方で且つ軸方向外方へ延在している。本実施形態の密封装置1では、補助リップ部18は軸4と摺接する。この補助リップ部18は、軸4の外周面4aに締め代をもって接触して軸方向外方から密封空間A内への異物の侵入を防止している。
【0026】
[サイドリップ部19]
サイドリップ部19は、主リップ部17側から軸方向外方に向けて径方向外方に傾斜しつつ延在している。本実施形態の密封装置1におけるサイドリップ部19は、本体部16と一体的に形成されている。このサイドリップ部19は、本体部16の側面部21から軸方向外方に向けて延在している。サイドリップ部19は、その内周面19aにおいて、ディフレクター30の環状板部31と接触する。換言すれば、サイドリップ部19の内周面19aは、ディフレクター30の環状板部31と面接触して当該環状板部31に摺接する。なお、
図1において、二点鎖線D1で表されたディフレクター30は、サイドリップ部19の締め代が最小となる位置にある。また、
図1において、二点鎖線D2で表されたディフレクター30は、このサイドリップ部19の締め代が最大となる位置にある。
【0027】
本実施形態のサイドリップ部19は、その付け根部に断面形状が矩形状の肉厚部24が形成されている。この肉厚部24の軸方向外方の端部近傍は薄肉の狭窄部25とされている。サイドリップ部19は、狭窄部25、及び当該サイドリップ部19の先端部26から軸方向中央付近に向かって径方向外方に漸次略直線状に膨出する膨出部27を有している。
【0028】
本実施形態の密封装置1では、前記のようにサイドリップ部19の付け根部に肉厚部24が形成されているので、当該付け根部の剛性を向上させることができる。したがって、例えば軸4が軸方向外方(
図1において左方向)に移動することでサイドリップ部19と補助リップ部18との間の環状のスペース28の体積が増加して当該スペース28が負圧になり、当該サイドリップ部19が径方向内側に変形しようとしても、サイドリップ部19の付け根部の剛性は大きくされているので、当該変形を抑制することができる。これにより、サイドリップ部19とディフレクター30や軸4との間に隙間を確保することができる。これにより、径方向内側に変形したサイドリップ部19がディフレクター30の内径側円筒部32の先端角部32aや軸4に接触するのを防止することができる。
【0029】
図2は、
図1に示される密封装置1においてサイドリップ部19の締め代が大きくなったときの断面説明図である。サイドリップ部19は、前記狭窄部25を変形の起点として径方向外方に大きく変形しているが、当該肉サイドリップ部19の付け根部に肉厚部24を設けることで当該付け根部の剛性を大きくしているので、サイドリップ部19とディフレクター30や軸4との間に隙間を確保することができる。これにより、サイドリップ部19がディフレクター30や軸4に接触するのを防止することができ、接触した状態で軸4が回転することで当該サイドリップ部19が摩耗ないし破損するのを防止することができる。その結果、密封装置1の長寿命化を図ることができる。
【0030】
肉厚部24の形状及びサイズは、前記のようにサイドリップ部19と補助リップ部18との間の環状のスペース28が負圧になったときに当該肉厚部24の内径側の縁部24aがディフレクター30又は軸4と干渉しない範囲で設定される。また、肉厚部24の外径側の縁部24bの位置は、密封装置1をハウジング2の軸孔3に圧入するときの押し面を確保することができる範囲で設定される。すなわち、肉厚部24を径方向外方に大きくしすぎると、押し面を確保することできず、密封装置1を軸孔3に圧入することが難しくなる。
【0031】
〔第2実施形態〕
[密封装置51の全体構成]
図3は本発明の他の実施形態(第2実施形態)に係る密封装置51の断面説明図である。この密封装置51は、
図1に示される第1実施形態と芯金及びサイドリップ部の構成が異なっているだけで、他の主リップ部等の構成は同じである。したがって、共通する部材ないし要素の説明は簡略化する。
【0032】
本実施形態の密封装置51もデフサイド用の密封装置であり、ハウジング52と、当該ハウジング52の軸孔53に挿通された軸54との間に用いられる。密封装置51は、環状のシール本体60と、環状のディフレクター80とを備えている。ディフレクター80は、径方向に沿って配置される円環状の環状板部81を有している。
【0033】
[シール本体60]
シール本体60は、断面略L字形の環状の芯金61と、当該芯金61に固定されているシール部材62と、環状のバネリング63とを備えている。
【0034】
芯金61は、円筒形状の円筒部64と、円環状の環状板部65とで構成されている。環状板部65は、円筒部64の軸方向外方の一端から径方向内方へ延在している。
シール部材62は、環状に形成されており、本体部66と、主リップ部67と、補助リップ部68と、サイドリップ部69とを有している。
【0035】
本体部66は、外周部70と、側面部71と、内周部72とを備えている。外周部70は、芯金61の円筒部64の外周面64aに積層されており、ハウジング52の軸孔53に固定される。側面部71は、芯金61の環状板部65の軸方向外方の側面65aに積層されている。内周部72は、芯金61の環状板部65の内周部を覆っている。
【0036】
[主リップ部67]
主リップ部67は、本体部66の内周部22の径方向内側において密封空間A側へ延びている。主リップ部67の外周面67aには、周溝73が形成されている。そして、この周溝73には、ガータスプリングと呼ばれるバネリング63が装着されている。このバネリング63により、主リップ部67が径方向内方へ締め付けられている。主リップ部67は、軸54の外周面54aに締め代をもって接触して密封空間A内の密封流体が軸方向外方へ漏れるのを防止している。主リップ部67の断面形状は、径方向内方に向けて先細りである。
【0037】
[補助リップ部68]
補助リップ部68は、本体部66の内周部72から径方向内方で且つ軸方向外方へ延在している。補助リップ部68は、軸54の外周面54aに締め代をもって接触して軸方向外方から密封空間A内への異物の侵入を防止している。
【0038】
[サイドリップ部69]
サイドリップ部69は、主リップ部67側から軸方向外方に向けて径方向外方に傾斜しつつ延在している。サイドリップ部69は、本体部66の側面部71から軸方向外方に向けて延在している。サイドリップ部69は、その内周面69aにおいて、ディフレクター80の環状板部81と接触する。
なお、
図3において、二点鎖線D1で表されたディフレクター80は、サイドリップ部69の締め代が最小となる位置にある。また、
図3において、二点鎖線D2で表されたディフレクター80は、このサイドリップ部69の締め代が最大となる位置にある。
【0039】
本実施形態のサイドリップ部69は、その付け根部に断面形状が三角形状の肉厚部74が形成されている。この肉厚部74の軸方向外方の端部近傍は薄肉の狭窄部75とされている。サイドリップ部69は、狭窄部75、及び当該サイドリップ部69の先端部76から軸方向中央付近に向かって径方向外方に漸次略直線状に膨出する膨出部77を有している。
【0040】
本実施形態の密封装置51では、前記のようにサイドリップ部69の付け根部に肉厚部74が形成されているので、当該付け根部の剛性を向上させることができる。したがって、例えば軸54が軸方向外方(
図3において左方向)に移動することでサイドリップ部69と補助リップ部68との間の環状のスペース78の体積が増加して当該スペース78が負圧になり、当該サイドリップ部69が径方向内側に変形しようとしても、サイドリップ部69の付け根部の剛性は大きくされているので、当該変形を抑制することができる。これにより、当該サイドリップ部69とディフレクター80や軸54との間に隙間を確保して、サイドリップ部69がディフレクター80や軸54に接触するのを防止することができる。そして、接触した状態で軸54が回転することで当該サイドリップ部69が摩耗ないし破損するのを防止することができる。その結果、密封装置51の長寿命化を図ることができる。
【0041】
〔その他の変形例〕
本開示は前述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内において種々の変更が可能である。
例えば、前述した実施形態では、サイドリップ部の付け根部に形成される肉厚部の断面形状を矩形状(第1実施形態)又は三角形状(第2実施形態)としているが、肉厚である限り、その断面形状は特に限定されるものではない。肉厚部の断面形状は、例えば、4分の1円形状、5角形状とすることもできる。
【0042】
また、前述した実施形態では、本発明を自動車のデフサイド用の密封装置に適用しているが、これ以外に、例えばトランスファ、及び足回りの密封装置に適用することもできる。
【符号の説明】
【0043】
1、51 : 密封装置
2、52 : ハウジング
3、53 : 軸孔
4、54 : 軸
4a、54a: 外周面
10、60 : シール本体
11、61 : 芯金
12、62 : シール部材
13、63 : バネリング
14a : 第1円筒部
14a1 : 外周面
14b : 第2円筒部
14b1 : 面
15a : 第1環状板部
15a1 : 側面
15b : 第2環状板部
15b1 : 側面
16、66 : 本体部
17、67 : 主リップ部
17a、67a: 外周面
18、68 : 補助リップ部
19、69 : サイドリップ部
19a,69a: 内周面
20、70 : 外周部
21、71 : 側面部
22、72 : 内周部
23、73 : 周溝
25、75 : 狭窄部
26、76 : 先端部
27、77 : 膨出部
28、78 : 環状のスペース
30、80 : ディフレクター
31、81 : 環状板部
64 : 円筒部
65 : 環状板部
A : 密封空間