(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-05
(45)【発行日】2022-08-16
(54)【発明の名称】脈波伝播時間測定装置及び血圧測定装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/02 20060101AFI20220808BHJP
A61B 5/022 20060101ALI20220808BHJP
A61B 5/256 20210101ALI20220808BHJP
A61B 5/352 20210101ALI20220808BHJP
【FI】
A61B5/02 310V
A61B5/02 D
A61B5/022 100A
A61B5/256 220
A61B5/352
(21)【出願番号】P 2018132390
(22)【出願日】2018-07-12
【審査請求日】2021-06-24
(73)【特許権者】
【識別番号】503246015
【氏名又は名称】オムロンヘルスケア株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【氏名又は名称】鵜飼 健
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(72)【発明者】
【氏名】松村 直美
(72)【発明者】
【氏名】川端 康大
(72)【発明者】
【氏名】藤井 健司
(72)【発明者】
【氏名】藤田 麗二
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 晃人
【審査官】亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-000088(JP,A)
【文献】特開2005-253610(JP,A)
【文献】特表2014-521427(JP,A)
【文献】特開2012-029854(JP,A)
【文献】特表2009-542294(JP,A)
【文献】特開2002-119488(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/02 - 5/03
A61B 5/24 - 5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの
四肢のいずれかの一部である被測定部位に巻き付けられる
1つのベルト部と、
前記ベルト部に設けられ、第1の電極、第2の電極、第3の電極及び第4の電極を含む電極群と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に交流電流を印加する電流源と、
前記第3の電極と前記第4の電極との間の電位差信号を検出する電位差信号検出部と、
前記電位差信号に基づいて、前記ユーザの心臓の電気的活動を表す波形信号である心電図を取得する心電図取得部と、
前記電位差信号に基づいて、前記ユーザの前記被測定部位における電気インピーダンスを表す波形信号を脈波信号として取得する脈波信号取得部と、
前記心電図及び前記脈波信号に基づいて脈波伝播時間を算出する脈波伝播時間算出部と、
を備える脈波伝播時間測定装置。
【請求項2】
前記電極群は、前記第3の電極を複数含み、前記複数の第3の電極は、一方向に配列されており、
前記脈波伝播時間測定装置は、前記複数の第3の電極間で前記電位差信号検出部に接続する第3の電極を切り替える第1のスイッチ回路をさらに備える、請求項1に記載の脈波伝播時間測定装置。
【請求項3】
前記電極群は、前記第4の電極を複数含み、前記複数の第4の電極は、前記一方向に配列されており、
前記脈波伝播時間測定装置は、前記複数の第4の電極間で前記電位差信号検出部に接続する第4の電極を切り替える第2のスイッチ回路をさらに備える、請求項2に記載の脈波伝播時間測定装置。
【請求項4】
ユーザの被測定部位に巻き付けられるベルト部と、
前記ベルト部に設けられた電極群であって、第1の電極と、第2の電極と、一列に配列された複数の第3の電極と、第4の電極と、を含む電極群と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に交流電流を印加する電流源と、
前記複数の第3の電極のうちの1つと前記第4の電極との間の電位差信号である第1の電位差信号を検出する第1の電位差信号検出部と、
前記第1の電位差信号に基づいて、前記ユーザの前記被測定部位における電気インピーダンスを表す波形信号を脈波信号として取得する脈波信号取得部と、
前記複数の第3の電極の中から選択された2つの第3の電極間の電位差信号である第2の電位差信号を検出する第2の電位差信号検出部と、
前記第2の電位差信号に基づいて、前記ユーザの心臓の電気的活動を表す波形信号である心電図を取得する心電図取得部と、
前記心電図及び前記脈波信号に基づいて脈波伝播時間を算出する脈波伝播時間算出部と、
を備える脈波伝播時間測定装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の脈波伝播時間測定装置と、
前記算出された脈波伝播時間に基づいて第1の血圧値を算出する第1の血圧値算出部と、
を備える血圧測定装置。
【請求項6】
前記ベルト部に設けられた押圧カフと、
前記押圧カフに流体を供給する流体供給部と、
前記押圧カフ内の圧力を検出する圧力センサと、
前記圧力センサの出力に基づいて第2の血圧値を算出する第2の血圧値算出部と、
をさらに備える請求項5に記載の血圧測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脈波伝播時間を非侵襲的に測定する脈波伝播時間測定装置、及び脈波伝播時間測定装置を用いた血圧測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
脈波伝播時間(PTT:Pulse Transit Time)を測定する方法として、動脈上の2点で脈波の検出を行い、脈波が2点間の距離を伝播するのに要した時間を脈波伝播時間として算出する方法がある。脈波伝播時間測定の時間分解能を上げるために、2点間の距離をより長くすることが望まれる。
【0003】
引用文献1には、上腕部及び肘と手首との中間部の2つの部位で、脈波によって生じる生体インピーダンスの変化をモニタすることで、脈波伝播時間を測定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された技術では、肩、手首、上腕部、及び肘と手首との中間部の4つの部位それぞれに電極を装着する必要がある。このため、長時間にわたって測定を行う場合などにおいては、装着によるユーザの身体的負担が大きい。
【0006】
本発明は、上記の事情に着目してなされたものであり、その目的は、装着によるユーザの身体的負担が小さい脈波伝播時間測定装置及び血圧測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために、以下の態様を採用する。
【0008】
第1の態様に係る脈波伝播時間測定装置は、ユーザの被測定部位に巻き付けられるベルト部と、前記ベルト部に設けられ、第1の電極、第2の電極、第3の電極及び第4の電極を含む電極群と、前記第1の電極と前記第2の電極との間に交流電流を印加する電流源と、前記第3の電極と前記第4の電極との間の電位差信号を検出する電位差信号検出部と、前記電位差信号に基づいて、前記ユーザの心臓の電気的活動を表す波形信号である心電図を取得する心電図取得部と、前記電位差信号に基づいて、前記ユーザの前記被測定部位における電気インピーダンスを表す波形信号を脈波信号として取得する脈波信号取得部と、前記心電図及び前記脈波信号に基づいて脈波伝播時間を算出する脈波伝播時間算出部と、を備える。
【0009】
上記の構成によれば、ベルト部をユーザの被測定部位に巻き付けると、電極群がユーザに取り付けられる。このため、ユーザは1つの装置を装着するだけで脈波伝播時間を測定することが可能になる。したがって、ユーザへの装着が容易であり、装置を装着していることによる身体的負担が小さい。
さらに、心電図を取得する回路(ECGセンサ)と脈波信号を取得する回路(脈波センサ)とが第3の電極、第4の電極、及び電位差信号検出部を共有している。これにより、ベルト部を小型化できるとともに、部品コストを削減することができる。
【0010】
第1の態様において、前記電極群は、前記第3の電極を複数含んでよく、前記複数の第3の電極は、一方向に配列されている。この場合、脈波伝播時間測定装置は、前記複数の第3の電極間で前記電位差信号検出部に接続する第3の電極を切り替える第1のスイッチ回路をさらに備える。
【0011】
上記の構成によれば、信号対雑音比がより高い心電図及び脈波信号を取得することが可能になる。その結果、脈波伝播時間の測定確度を向上することができる。
【0012】
第1の態様において、前記電極群は、前記第4の電極を複数含んでよく、前記複数の第4の電極は、前記一方向に配列されている。この場合、脈波伝播時間測定装置は、前記複数の第4の電極間で前記電位差信号検出部に接続する第4の電極を切り替える第2のスイッチ回路をさらに備える。
【0013】
上記の構成によれば、信号対雑音比がより高い心電図及び脈波信号を取得することが可能になる。その結果、脈波伝播時間の測定確度を向上することができる。
【0014】
第2の態様に係る脈波伝播時間測定装置は、ユーザの被測定部位に巻き付けられるベルト部と、前記ベルト部に設けられた電極群であって、第1の電極と、第2の電極と、一列に配列された複数の第3の電極と、第4の電極と、を含む電極群と、前記第1の電極と前記第2の電極との間に交流電流を印加する電流源と、前記複数の第3の電極のうちの1つと前記第4の電極との間の電位差信号である第1の電位差信号を検出する第1の電位差信号検出部と、前記第1の電位差信号に基づいて、前記ユーザの前記被測定部位における電気インピーダンスを表す波形信号を脈波信号として取得する脈波信号取得部と、前記複数の第3の電極の中から選択された2つの第3の電極間の電位差信号である第2の電位差信号を検出する第2の電位差信号検出部と、前記第2の電位差信号に基づいて、前記ユーザの心臓の電気的活動を表す波形信号である心電図を取得する心電図取得部と、前記心電図及び前記脈波信号に基づいて脈波伝播時間を算出する脈波伝播時間算出部と、を備える。
【0015】
上記の構成によれば、第1の態様に係る脈波伝播時間測定装置に関して説明したものと同様の効果が得られる。
【0016】
第3の態様に係る血圧測定装置は、上記の脈波伝播時間測定装置と、前記算出された脈波伝播時間に基づいて第1の血圧値を算出する第1の血圧値算出部と、を備える。
【0017】
上記の構成によれば、ユーザの身体的負担が軽い状態で、血圧を長期間にわたって連続的に測定することができる。
【0018】
第3の態様において、血圧測定装置は、前記ベルト部に設けられた押圧カフと、前記押圧カフに流体を供給する流体供給部と、前記押圧カフ内の圧力を検出する圧力センサと、前記圧力センサの出力に基づいて第2の血圧値を算出する第2の血圧値算出部と、をさらに備えてもよい。
【0019】
上記の構成によれば、連続血圧測定(脈波伝播時間に基づく血圧測定)及びオシロメトリック法による血圧測定を1つのデバイスで行うことが可能になる。その結果、ユーザにとって利便性が高い。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、装着によるユーザの身体的負担が小さい脈波伝播時間測定装置及び血圧測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】一実施形態に係る血圧測定装置を例示する図。
【
図2】
図1に示した血圧測定装置の外観を例示する図。
【
図3】
図1に示した血圧測定装置の外観を例示する図。
【
図4】
図1に示した血圧測定装置の断面を例示する図。
【
図5】
図1に示した血圧測定装置の制御系のハードウェア構成を例示するブロック図。
【
図6】
図1に示した血圧測定装置のソフトウェア構成を例示するブロック図。
【
図7】
図6に示した脈波伝播時間算出部が脈波伝播時間を算出する方法を説明する図。
【
図8】
図1に示した血圧測定装置が脈波伝播時間に基づく血圧測定を行う動作を例示するフローチャート。
【
図9】
図1に示した血圧測定装置がオシロメトリック法による血圧測定を行う動作を例示するフローチャート。
【
図10】オシロメトリック法による血圧測定におけるカフ圧及び脈波信号の変化を示す図。
【
図11】一実施形態に係る押圧カフを用いて電極と上腕との接触状態を調整する方法を例示するフローチャート。
【
図12】一実施形態に係る血圧測定装置の外観を例示する図。
【
図13】一実施形態に係る血圧測定装置の外観を例示する図。
【
図14】
図13に示した血圧測定装置の制御系のハードウェア構成を例示するブロック図。
【
図15】一実施形態に係る、脈波信号及び心電図を取得するために使用する検出電極対を選択する方法を例示するフローチャート。
【
図16】一実施形態に係る血圧測定装置の外観を例示する図。
【
図17】一実施形態に係る血圧測定装置の外観を例示する図。
【
図18】
図17に示した血圧測定装置の制御系のハードウェア構成を例示するブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
【0023】
[適用例]
図1を参照して、本発明が適用される場面の一例について説明する。
図1は、一実施形態に係る血圧測定装置10を例示する。血圧測定装置10は、ウェアラブルデバイスであり、ユーザの被測定部位としての上腕70に装着される。血圧測定装置10は、ベルト部20、第1の血圧測定部30、及び第2の血圧測定部50を備える。
【0024】
ベルト部20は、ユーザの上腕70に巻き付けられる部材であり、血圧測定装置10をユーザの上腕70に装着するために使用される。
【0025】
第1の血圧測定部30及び第2の血圧測定部50はベルト部20に設けられている。第1の血圧測定部30は、ユーザの脈波伝播時間を非侵襲的に測定し、測定した脈波伝播時間に基づいて血圧値を算出する。第1の血圧測定部30は、一心拍ごとの血圧値を得る連続血圧測定を行うことができる。第2の血圧測定部50は、第1の血圧測定部30とは異なる方式で血圧測定を行う。第2の血圧測定部50は、例えばオシロメトリック法又はコロトコフ法に基づいており、特定のタイミングで、例えばユーザによる操作に応答して、血圧測定を行う。第2の血圧測定部50は、第1の血圧測定部30よりも正確に血圧を測定することができる。
【0026】
第1の血圧測定部30は、電流電極31、32、検出電極33、34、電流源35、電位差信号検出部36、脈波信号取得部37、心電図取得部38、脈波伝播時間算出部39、及び血圧値算出部40を備える。
【0027】
電流電極31、32及び検出電極33、34は、血圧測定装置10がユーザの上腕70に装着された状態(以下、単に「装着状態」と称する)でユーザの上腕70の皮膚に接するように、ベルト部20の内周面に配置されている。ベルト部20の内周面は、ベルト部20の表面のうち、装着状態でユーザの上腕70に面する部分である。装着状態では電流電極31、32及び検出電極33、34は外部から見えないが、
図1では、説明のために電流電極31、32及び検出電極33、34が示されている。検出電極33、34は電流電極31、32間に配置される。より具体的には、電流電極31、検出電極33、検出電極34及び電流電極32は、この順番にベルト部20の幅方向に並んでいる。ベルト部20の幅方向は、装着状態で上腕70を通る上腕動脈に沿った方向に対応する。電流電極31、32は、本発明の第1の電極及び第2の電極に相当し、検出電極33、34は、本発明の第3の電極及び第4の電極に相当する。
【0028】
電流電極31、32は、電流源35に接続されており、電流源35は、電流電極31、32間に交流電流を印加する。交流電流は、後述する脈波信号を取得するために印加される。交流電流は、例えば、正弦波電流である。検出電極33、34は、電位差信号検出部36に接続されており、電位差信号検出部36は、検出電極33、34間の電位差信号を検出する。電位差信号は、心電図取得部38及び脈波信号取得部37に出力される。
【0029】
脈波信号取得部37は、電位差信号検出部36から受け取った電位差信号に基づいて、ユーザの上腕70における生体インピーダンスを表す波形信号を脈波信号として取得する。ユーザの上腕70における生体インピーダンスは上腕動脈の血流によって変化する。したがって、ユーザの上腕70における生体インピーダンスを表す波形信号は、ユーザの上腕70における容積脈波を間接的に表す。インピーダンスを表す波形信号は、インピーダンスを直接的に表す信号に限らず、例えば上腕70に交流電流が流されている場合における降下電圧のように、インピーダンスを間接的に表す信号であってもよい。本実施形態では、電流電極31、32、検出電極33、34、電流源35、電位差信号検出部36、脈波信号取得部37を脈波センサと総称する。
【0030】
心電図取得部38は、電位差信号検出部36から受け取った電位差信号に基づいてユーザの心電図(ECG:ElectroCardioGram)を取得する。心電図は、ユーザの心臓の電気的活動を表す波形信号である。本実施形態では、検出電極33、34、電位差信号検出部36、及び心電図取得部38をECG(ElectroCardioGraphic)センサと総称する。
【0031】
脈波伝播時間算出部39は、脈波信号取得部37から脈波信号を受け取り、心電図取得部38から心電図を受け取る。脈波伝播時間算出部39は、心電図の波形特徴点と脈波信号の波形特徴点との間の時間差に基づいて脈波伝播時間を算出する。例えば、脈波伝播時間算出部39は、心電図の波形特徴点と脈波信号の波形特徴点との間の時間差を算出し、算出した時間差を脈波伝播時間として出力する。心電図の波形特徴点は、例えば、R波に対応するピーク点であり、脈波信号の波形特徴点は、例えば、立ち上がり点である。本実施形態では、脈波伝播時間は、心臓から上腕まで脈波が動脈を伝播するのに要した時間に相当する。このため、上腕70における2点間で脈波伝播時間を測定する場合に比べて、時間分解能が向上する。
【0032】
血圧値算出部40は、脈波伝播時間算出部39により算出された脈波伝播時間と血圧算出式とに基づいて血圧値を算出する。血圧算出式は、脈波伝播時間と血圧との間の相関関係を表す関係式である。血圧算出式の一例を下記に示す。
SBP=A1/PTT2+A2 ・・・(1)
ここで、SBPは収縮期血圧を表し、PTTは脈波伝播時間を表し、A1、A2はパラメータである。
【0033】
脈波伝播時間算出部39は一心拍ごとの脈波伝播時間を算出することができ、したがって、血圧値算出部40は一心拍ごとの血圧値を算出することができる。
【0034】
以上のように、本実施形態では、ECGセンサ及び脈波センサがともにベルト部20に設けられている。これにより、単にベルト部20を上腕に巻き付けることで、ECGセンサ及び脈波センサの両方をユーザに取り付けることが可能になる。このため、ユーザへの装着が容易であるとともに、血圧測定装置10を装着していることによるユーザの身体的負担(装着負担ともいう)を軽減することができる。
【0035】
さらに、ECGセンサと脈波センサとが検出電極33、34及び電位差信号検出部36を共有する。これにより、血圧測定装置10を小型化することが可能になり、さらに、部品コストを削減することができる。血圧測定装置10の小型化は、装着負担の軽減に寄与する。
【0036】
以下に、血圧測定装置10をより具体的に説明する。
[構成例]
(ハードウェア構成)
図2から
図6を参照して、本実施形態に係る血圧測定装置10のハードウェア構成の一例を説明する。
図2及び
図3は、血圧測定装置10の外観を例示する平面図である。具体的には、
図2は、ベルト部20の外周面側から見た血圧測定装置10を示し、
図3は、ベルト部20の内周面側から見た血圧測定装置10を示している。
図4は、装着状態での血圧測定装置10の断面を示している。
【0037】
図2に示されるように、ベルト部20は、ベルト21及び本体22を備える。ベルト21は、上腕70を取り巻いて装着される帯状の部材を指し、バンド又はカフなどの別の名称で呼ばれることもある。ベルト21は、外周面211及び内周面212を有する。内周面212は、装着状態でユーザの上腕70に面する表面であり、外周面211は、内周面212とは反対側の表面である。
【0038】
本体22は、ベルト21に取り付けられている。本体22は、表示部506及び操作部507とともに、後述する制御部501(
図5に示される)などの構成要素を収容する。表示部506は、血圧測定結果などの情報を表示する表示装置である。表示装置としては、例えば、液晶表示装置(LCD)又は有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイを使用することができる。有機ELディスプレイは、OLED(Organic Light Emitting Diode)ディスプレイと呼ばれることもある。操作部507は、ユーザが血圧測定装置10に対する指示を入力することを可能にする入力装置である。
図2の例では、操作部507は複数のプッシュ式ボタンを含む。表示装置及び入力装置を兼ねたタッチスクリーンが使用されてもよい。本体22には、スピーカ又は圧電サウンダなどの発音体が設けられていてもよい。本体22には、ユーザが音声で指示を入力することができるように、マイクロフォンが設けられていてもよい。
【0039】
ベルト21は、ベルト部20を上腕に着脱可能にする装着部材を備える。
図2及び
図3に示される例では、装着部材は、多数のループを有するループ面213と複数のフックを有するフック面214とを有する面ファスナである。ループ面213は、ベルト21の外周面211上であってベルト21の長手方向の端部215Aに配置されている。長手方向は、装着状態で上腕の周方向に対応する。フック面214は、ベルト21の内周面212上であってベルト21の長手方向の端部215Bに配置されている。端部215Bは、ベルト21の長手方向において端部215Aと対向する。ループ面213及びフック面214を互いに押し付けると、ループ面213及びフック面214が結合する。また、ループ面213及びフック面214を互いに離れるように引っ張ることで、ループ面213及びフック面214が分離する。
【0040】
図3に示されるように、ベルト21の内周面212には、電流電極31、32及び検出電極33、34が配置されている。電流電極31、32及び検出電極33、34は、ベルト21の長手方向に長い形状を有する。血圧測定装置10においては、使用可能な上腕周長の範囲が設定される。例えば、血圧測定装置10は、上腕周長が220~320mmの範囲内のユーザにとって使用可能とされる。ベルト21の長手方向における電流電極31、32及び検出電極33、34の寸法は、例えば、上腕周長に関する上限値(例えば320mm)に等しい。この場合、血圧測定装置10を使用可能な任意のユーザについて、電流電極31、32及び検出電極33、34は上腕70を全周にわたって取り囲む。
【0041】
なお、ベルト21の長手方向における電極(例えば検出電極33)の寸法は、電極が上腕70の一部を取り囲むような値であってもよい。一例では、電極は、上腕周長に関する上限値の二分の一の長さ(例えば160mm)を有する。他の例では、電極は、上腕周長に関する上限値の四分の三の長さ(例えば240mm)を有する。
【0042】
また、ベルト21の長手方向における電流電極31、32の寸法は、検出電極33、34と同じであってもよく、検出電極33、34より長くてもよく、検出電極33、34より短くてもよい。
【0043】
電流電極31及び検出電極33は、ベルト21の中枢側端部218Aに配置されている。ベルト21の中枢側端部218Aは、ベルト21の幅方向に関するベルト21の端部であって、装着状態で中枢側(肩側)に位置する端部である。中枢側端部218Aの幅は、例えば、ベルト21の全幅の四分の一である。電流電極31は、検出電極33よりも中枢側に位置する。
【0044】
電流電極32及び検出電極34は、ベルト21の末梢側端部218Cに配置されている。ベルト21の末梢側端部218Cは、ベルト21の幅方向に関するベルト21の端部であって、装着状態で末梢側(肘側)に位置する端部である。末梢側端部218Cの幅は、例えば、ベルト21の全幅の四分の一である。電流電極32は、検出電極34よりも末梢側に位置する。
【0045】
図4に示されるように、ベルト21は、内布210A、外布210B、及び内布210Aと外布210Bとの間に設けられた押圧カフ51を含む。押圧カフ51は、上腕70を取り囲むことができるように、ベルト21の長手方向に長い帯状体である。ベルト21の幅方向においては、押圧カフ51は、中枢側端部218A、中間部218B、及び末梢側端部218Cにわたって存在する。中間部218Bは、中枢側端部218Aと末梢側端部218Cとの間の部分である。押圧カフ51は、オシロメトリック法による血圧測定のために使用される。電極などの構造物が中間部218Bに配置されている場合には、オシロメトリック法による血圧測定の精度が低下することがある。このため、本実施形態では、電流電極31及び検出電極33がベルト21の中枢側端部218Aに配置され、電流電極32及び検出電極34がベルト21の末梢側端部218Cに配置される。例えば、押圧カフ51は、伸縮可能な2枚のポリウレタンシートを厚さ方向に対向させ、それらの周縁部を溶着して、流体袋として構成されている。
【0046】
図5は、血圧測定装置10の制御系のハードウェア構成の一例を例示する。
図5の例では、本体22は、上述した表示部506及び操作部507に加えて、制御部501、記憶部505、通信部508、電池509、電流源35、計装アンプ360、検出回路370、検出回路380、圧力センサ52、ポンプ53、弁54、発振回路55、ポンプ駆動回路56、及び弁駆動回路57を収容する。
【0047】
制御部501は、CPU(Central Processing Unit)502、RAM(Random Access Memory)503、ROM(Read Only Memory)504などを含み、情報処理に応じて各構成要素の制御を行う。記憶部505は、例えば、ハードディスクドライブ(HDD)、半導体メモリ(例えばフラッシュメモリ)などの補助記憶装置であり、制御部501で実行されるプログラム(例えば脈波伝播時間測定プログラム及び血圧測定プログラムを含む)、プログラムを実行するために必要な設定データ、血圧測定結果などを非一時的に記憶する。記憶部505が備える記憶媒体は、コンピュータその他装置、機械等が記録されたプログラムなどの情報を読み取り可能なように、当該プログラムなどの情報を、電気的、磁気的、光学的、機械的又は化学的作用によって蓄積する媒体である。なお、プログラムの一部又は全部は、ROM504に記憶されていてもよい。
【0048】
通信部508は、ユーザの携帯端末(例えばスマートフォン)などの外部装置と通信するための通信インタフェースである。通信部508は、有線通信モジュール及び/又は無線通信モジュールを含む。無線通信方式として、例えば、Bluetooth(登録商標)、BLE(Bluetooth Low Energy)などを採用することができる。
【0049】
電池509は、制御部501などの構成要素に電力を供給する。電池509は、例えば、充電可能なバッテリである。
【0050】
電流源35は、電流電極31、32に接続され、電流電極31、32間に高周波定電流を流す。例えば、電流の周波数は50kHzであり、電流値は1mAである。
【0051】
計装アンプ360は、
図1に示した電位差信号検出部36の一例である。計装アンプ360の2つの入力端子には、検出電極33、34がそれぞれ接続されている。計装アンプ360は、検出電極33の電位と検出電極34の電位とを差動増幅する。計装アンプ360は、検出電極33と検出電極34との間の電位差を増幅した電位差信号を出力する。電位差信号は、2分岐され、検出回路370、380に与えられる。
【0052】
検出回路370は、
図1に示した脈波信号取得部37に相当するものである。検出回路370は、電位差信号から検出電極33、34間の電気インピーダンスに対応する信号成分を抽出する。
図5に示される例では、検出回路370は、整流回路371、ローパスフィルタ(LPF)372、ハイパスフィルタ(HPF)373、増幅器374、及びアナログデジタルコンバータ(ADC)375を含む。検出回路370では、電位差信号は、整流回路371により整流され、LPF372でフィルタリングされ、HPF373でフィルタリングされ、増幅器374により増幅され、ADC375によりデジタル信号に変換される。LPF372は、例えば、10Hzのカットオフ周波数を有し、HPF373は、例えば、0.5Hzのカットオフ周波数を有する。制御部501は、検出回路370から時系列で出力される電位差信号を脈波信号として取得する。
【0053】
検出回路380は、
図1に示した心電図取得部38に相当するものである。検出回路380は、電位差信号から心臓の電気的活動に対応する信号成分を抽出する。
図5に示される例では、検出回路380は、LPF381、HPF382、増幅器383、及びADC384を含む。検出回路380では、電位差信号は、LPF381でフィルタリングされ、HPF382でフィルタリングされ、増幅器383により増幅され、ADC384によりデジタル信号に変換される。LPF381は、例えば、40Hzのカットオフ周波数を有し、HPF382は、例えば、0.5Hzのカットオフ周波数を有する。制御部501は、検出回路380から時系列で出力される電位差信号を心電図として取得する。
【0054】
図5に示される例では、電流電極31、32、検出電極33、34、電流源35、計装アンプ360、検出回路370、検出回路380は、
図1に示した第1の血圧測定部30に含まれる。
【0055】
圧力センサ52は配管58を介して押圧カフ51に接続され、ポンプ53及び弁54は配管59を介して押圧カフ51に接続されている。配管58、59は共通の1つの配管であってもよい。ポンプ53は、例えば圧電ポンプであり、押圧カフ51内の圧力を高めるために、配管59を通して押圧カフ51に流体としての空気を供給する。ポンプ駆動回路56は、制御部501から受け取る制御信号に基づいてポンプ53を駆動する。弁駆動回路57は、制御部501から受け取る制御信号に基づいて弁54を駆動する。弁54が開状態であるときには、押圧カフ51は大気と連通し、押圧カフ51内の空気が大気中へ排出される。
【0056】
圧力センサ52は、押圧カフ51内の圧力(カフ圧とも称する)を検出し、カフ圧を表す電気信号を生成する。カフ圧は、例えば、大気圧を基準とした圧力である。圧力センサ52は、例えばピエゾ抵抗式圧力センサである。発振回路55は、圧力センサ52からの電気信号に基づいて発振して、電気信号に応じた周波数を有する周波数信号を制御部501に出力する。この例では、圧力センサ52の出力は、押圧カフ51の圧力を制御するために、及び、オシロメトリック法によって血圧値を算出するために用いられる。
【0057】
図5に示される例では、押圧カフ51、圧力センサ52、ポンプ53、弁54、発振回路55、ポンプ駆動回路56、弁駆動回路57、及び配管58、59は、
図1に示した第2の血圧測定部50に含まれる。
【0058】
なお、血圧測定装置10の具体的なハードウェア構成に関して、実施形態に応じて、適宜、構成要素の省略、置換及び追加が可能である。例えば、制御部501は、複数のプロセッサを含んでいてもよい。電位差信号に対する信号処理(例えばフィルタリング)は、デジタル信号処理であってもよい。
【0059】
(ソフトウェア構成)
図6を参照して、本実施形態に係る血圧測定装置10のソフトウェア構成の一例を説明する。
図6は、血圧測定装置10のソフトウェア構成の一例を例示する。
図6の例では、血圧測定装置10は、電流源制御部601、心電図生成部602、脈波信号生成部603、脈波伝播時間算出部604、血圧値算出部605、指示入力部606、表示制御部607、血圧測定制御部608、較正部609、第1の血圧値記憶部611、及び第2の血圧値記憶部612を備える。電流源制御部601、心電図生成部602、脈波信号生成部603、脈波伝播時間算出部604、血圧値算出部605、指示入力部606、表示制御部607、血圧測定制御部608、及び較正部609は、血圧測定装置10の制御部501が記憶部505に記憶されたプログラムを実行することによって下記の処理を実行する。制御部501がプログラムを実行する際は、制御部501は、プログラムをRAM503に展開する。そして、制御部501は、RAM503に展開されたプログラムをCPU502により解釈及び実行して、各構成要素を制御する。第1の血圧値記憶部611及び第2の血圧値記憶部612は、記憶部505により実現される。
【0060】
電流源制御部601は、脈波信号を取得するために、電流源35を制御する。電流源制御部601は、電流源35を駆動する駆動信号を電流源35に与える。電流源35は、電流源制御部601により駆動されると、電流電極31、32間に流される高周波電流を発生させる。
【0061】
心電図生成部602は、検出回路380の出力に基づいて心電図を生成する。具体的には、心電図生成部602は、検出回路380から時系列で出力される電位差信号を心電図として取得する。脈波信号生成部603は、検出回路370の出力に基づいて脈波信号を生成する。具体的には、脈波信号生成部603は、検出回路370から時系列で出力される電位差信号を脈波信号として取得する。
【0062】
脈波伝播時間算出部604は、心電図生成部602から心電図を受け取り、脈波信号生成部603から脈波信号を受け取り、心電図の波形特徴点と脈波信号の波形特徴点との間の時間差に基づいて脈波伝播時間を算出する。例えば、脈波伝播時間算出部604は、
図7に示されるように、心電図からR波に対応するピーク点の時間(時刻)を検出し、脈波信号から立ち上がり点の時間(時刻)を検出し、立ち上がり点の時間からピーク点の時間を引いた差を脈波伝播時間として算出する。
【0063】
なお、脈波伝播時間算出部604は、前駆出期(PEP:PreEjection Period)に基づいて上記の時間差を補正し、補正後の時間差を脈波伝播時間として出力してもよい。例えば、前駆出期が一定であるとみなし、脈波伝播時間算出部604は、上記の時間差から所定値を引くことで脈波伝播時間を算出してもよい。
【0064】
R波に対応するピーク点は、心電図の波形特徴点の一例である。心電図の波形特徴点は、Q波に対応するピーク点であってもよく、S波に対応するピーク点であってもよい。R波はQ波又はS波と比べてはっきりとしたピークとして現れるので、R波ピーク点の時間はより正確に特定することができる。このため、好ましくは、R波ピーク点が心電図の波形特徴点として使用される。また、立ち上がり点は、脈波信号の波形特徴点の一例である。脈波信号の波形特徴点は、ピーク点であってもよい。
【0065】
図6を再び参照すると、血圧値算出部605は、脈波伝播時間算出部604により算出された脈波伝播時間と血圧算出式とに基づいて血圧値を算出する。血圧値算出部605は、例えば上記の式(1)を血圧算出式として使用する。血圧値算出部605は、算出した血圧値を時間情報に関連付けて第1の血圧値記憶部611に記憶させる。
【0066】
なお、血圧算出式は上記の式(1)に限らない。血圧算出式は、例えば、下記の式であってもよい。
SBP=B1/PTT2+B2/PTT+B3×PTT+B4 ・・・(2)
ここで、B1、B2、B3、B4はパラメータである。
【0067】
指示入力部606は、操作部507を通じてユーザから入力された指示を受け付ける。指示は、例えば、オシロメトリックによる血圧測定の開始、連続血圧測定(脈波伝播時間に基づく血圧測定)の開始、連続血圧測定の停止、表示の切り替えなどであり得る。例えば、血圧測定の開始を指示する操作がなされると、指示入力部606は、オシロメトリックによる血圧測定の実行を指示する指示信号を血圧測定制御部608に与える。
【0068】
表示制御部607は、表示部506を制御する。例えば、表示制御部607は、オシロメトリック法による血圧測定の結果、連続血圧測定の結果などの情報を表示部506に表示させる。
【0069】
血圧測定制御部608は、オシロメトリック法による血圧測定を実行するためにポンプ駆動回路56及び弁駆動回路57を制御する。血圧測定制御部608は、指示入力部606から指示信号を受けると、弁駆動回路57を介して弁54を閉状態にし、ポンプ駆動回路56を介してポンプ53を駆動する。それにより、押圧カフ51への空気の供給が開始される。押圧カフ51が膨張し、ユーザの上腕70が圧迫される。血圧測定制御部608は、圧力センサ52を用いてカフ圧をモニタする。血圧測定制御部608は、押圧カフ51に空気を供給する加圧過程において、圧力センサ52から出力される圧力信号に基づいて、オシロメトリック法により血圧値を算出する。血圧値は、収縮期血圧(SBP)及び拡張期血圧(DBP)を含むが、これに限定されない。血圧測定制御部608は、算出した血圧値を時間情報に関連付けて第2の血圧値記憶部612に記憶させる。血圧測定制御部608は、血圧値と同時に脈拍数を算出することができる。血圧測定制御部608は、血圧値の算出が完了すると、ポンプ駆動回路56を介してポンプ53を停止し、弁駆動回路57を介して弁54を開状態にする。それにより、押圧カフ51から空気が排気される。
【0070】
較正部609は、脈波伝播時間算出部604により算出された脈波伝播時間と血圧測定制御部608により算出された血圧値とに基づいて、血圧算出式の較正を行う。脈波伝播時間と血圧値との間の相関関係は、個人ごとに異なる。また、相関関係は、血圧測定装置10がユーザの上腕70に装着された状態に応じて変化する。例えば、同じユーザであっても、血圧測定装置10がより肩側に配置されたときと血圧測定装置10がより肘側に配置されたときとで相関関係は変化する。このような相関関係の変化を反映するために、血圧算出式の較正が行われる。血圧算出式の較正は、例えば、ユーザが血圧測定装置10を装着したときに実行される。較正部609は、例えば、脈波伝播時間の測定結果と血圧の測定結果との組みを複数得て、脈波伝播時間の測定結果と血圧の測定結果との複数の組みに基づいてパラメータA1、A2を決定する。較正部609は、パラメータA1、A2を決定するために、例えば、最小二乗法又は最尤法といったフィッティング法を使用する。
【0071】
なお、本実施形態では、血圧測定装置10の機能がいずれも汎用のプロセッサによって実現される例について説明している。しかしながら、機能の一部又は全部が1又は複数の専用のプロセッサにより実現されてもよい。
【0072】
[動作例]
(脈波伝播時間に基づく血圧測定に使用される血圧算出式の較正)
ユーザが血圧測定装置10を装着すると、まず、血圧算出式の較正が実行される。血圧算出式に含まれるパラメータの数をNとすると、脈波伝播時間の測定値と血圧の測定値との組みがN組み以上必要となる。上記の血圧算出式(1)は2つのパラメータA1、A2を有する。この場合、例えば、制御部501は、ユーザの安静時に、脈波伝播時間の測定値及び血圧の測定値の組みを取得し、続いて、ユーザに運動を行わせ、運動後に脈波伝播時間の測定値及び血圧の測定値の組みを取得する。これにより、脈波伝播時間の測定値と血圧の測定値との組みが2組み取得される。制御部501は、較正部609として動作し、取得された脈波伝播時間の測定値と血圧の測定値との2つの組みに基づいてパラメータA1、A2を決定する。較正が終了した後に、脈波伝播時間に基づく血圧測定が実行可能となる。
【0073】
(脈波伝播時間に基づく血圧測定)
図8は、血圧測定装置10が脈波伝播時間に基づく血圧測定を行う際の動作フローを示している。制御部501は、例えば、ユーザが操作部507を通じて脈波伝播時間に基づく血圧測定の開始を指示したことに応答して、脈波伝播時間に基づく血圧測定を開始する。また、制御部501は、血圧算出式の較正が完了したことに応答して、脈波伝播時間に基づく血圧測定を開始してもよい。
【0074】
図8のステップS11では、制御部501は、電流源制御部601として動作し、電流源35を駆動する。それにより、電流電極31、32間に交流電流が印加される。
【0075】
ステップS12では、制御部501は、心電図及び脈波信号を同時に取得する。具体的には、制御部501は、心電図生成部602として動作し、検出回路380から時系列で出力される電位差信号を心電図として取得する。さらに、制御部501は、脈波信号生成部603として動作し、検出回路370から時系列で出力される電位差信号を脈波信号として取得する。
【0076】
ステップS13では、制御部501は、脈波伝播時間算出部604として動作し、心電図のR波ピーク点と脈波信号の立ち上がり点との間の時間差を脈波伝播時間として算出する。ステップS14では、制御部501は、血圧値算出部605として動作し、上記の血圧算出式(1)を使用して、ステップS13で算出した脈波伝播時間から血圧値を算出する。制御部501は、算出した血圧値を時間情報に関連付けて記憶部505に記録する。
【0077】
ステップS15では、制御部501は、ユーザが操作部507を通じて脈波伝播時間に基づく血圧測定の終了を指示したか否かを判定する。ユーザが脈波伝播時間に基づく血圧測定の終了を指示するまで、ステップS12~S14の処理が繰り返される。それにより、一心拍ごとの血圧値が記録される。ユーザが脈波伝播時間に基づく血圧測定の終了を指示すると、制御部501は、電流源制御部601として動作し、電流源35を停止させる。これにより、脈波伝播時間に基づく血圧測定が終了する。
【0078】
脈波伝播時間に基づく血圧測定によれば、ユーザの身体的負担が軽い状態で、血圧を長期間にわたって連続的に測定することができる。
【0079】
(オシロメトリック法による血圧測定)
図9は、血圧測定装置10がオシロメトリック法による血圧測定を行う際の動作フローを示している。オシロメトリック法による血圧測定では、押圧カフ51が徐々に加圧され、その後に減圧される。このような加圧又は減圧過程では、脈波伝播時間を正しく測定することができない。このため、オシロメトリック法による血圧測定の実行中は、
図8に示した脈波伝播時間に基づく血圧測定は一時的に停止されてもよい。
【0080】
制御部501は、例えば、ユーザが操作部507を通じてオシロメトリック法による血圧測定の実行を指示したことに応答して、血圧測定を開始する。
【0081】
図9のステップS21では、制御部501は、血圧測定制御部608として動作し、オシロメトリック法による血圧測定のための初期化を行う。例えば、制御部501は、処理用メモリ領域を初期化する。そして、制御部501は、ポンプ駆動回路56を介してポンプ53を停止し、弁駆動回路57を介して弁54を開状態にする。それにより、押圧カフ51内の空気が排出される。制御部501は、圧力センサ52の現時点の出力値を基準値として設定する。
【0082】
ステップS22では、制御部501は、血圧測定制御部608として動作し、押圧カフ51に加圧する制御を行う。例えば、制御部501は、弁駆動回路57を介して弁54を閉状態にし、ポンプ駆動回路56を介してポンプ53を駆動する。それにより、空気が押圧カフ51に供給され、押圧カフ51が膨張するとともに、
図10に示すようにカフ圧Pcが徐々に高まる。制御部501は、圧力センサ52を用いてカフ圧Pcをモニタし、動脈容積の変動成分を表す脈波信号Pmを取得する。
【0083】
ステップS23では、制御部501は、血圧測定制御部608として動作し、この時点で取得されている脈波信号Pmに基づいて血圧値(SBP及びDBPを含む)の算出を試みる。この時点でデータ不足のために、未だ血圧値を算出できない場合は(ステップS24でNo)、カフ圧Pcが上限圧力に達していない限り、ステップS22、S23の処理が繰り返される。上限圧力は、安全性の観点から予め定められる。上限圧力は、例えば300mmHgである。
【0084】
血圧値の算出ができた場合(ステップS24でYes)、ステップS25に進む。ステップS25では、制御部501は、血圧測定制御部608として動作し、ポンプ駆動回路56を介してポンプ53を停止し、弁駆動回路57を介して弁54を開状態にする。それにより、押圧カフ51内の空気が排出される。
【0085】
ステップS26では、制御部501は、血圧測定結果を表示部506に表示させるとともに、記憶部505に記録する。
【0086】
なお、
図8又は
図9に示した処理手順は例示であり、処理順序は適宜変更することが可能である。各処理の内容もまた適宜変更することが可能である。例えば、オシロメトリック法による血圧測定において、血圧値の算出は、押圧カフ51から空気が排出される減圧過程で実行されてもよい。
【0087】
[効果]
以上のように、本実施形態では、ECGセンサ、脈波センサ、押圧カフ51などがベルト部20に設けられている。このため、脈波伝播時間又は血圧を測定するためには、ユーザは単にベルト部20を上腕70に巻き付ければよい。したがって、ユーザは血圧測定装置10を容易に装着することができる。ユーザは1つの装置を装着していればよいので、ユーザの装着負担が少ない。
【0088】
さらに、ECGセンサと脈波センサとが検出電極33、34及び電位差信号検出部36(例えば計装アンプ360)を共有する。これにより、ベルト部20の内周面において電極を配置するために必要な領域が小さくなり、血圧測定装置10を小型化することが可能になる。血圧測定装置10の小型化は、装着負担の軽減に寄与する。さらに、ECGセンサ及び脈波センサのそれぞれについて検出電極及び電位差信号検出部を用意する必要がなくなるので、部品コストを削減することができる。
【0089】
[変形例]
なお、この発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0090】
一実施形態では、押圧カフ51は、電流電極31、32及び検出電極33、34と上腕70との接触状態を調整するために使用されてもよい。
【0091】
図11は、血圧測定装置10が電極と上腕70との接触状態を調整する際の動作フローを示している。
図11のステップS31では、制御部501は、脈波信号及び心電図を取得する。ステップS31の処理は、
図8のステップS11、S12に関して説明したものと同様であるので、説明を省略する。
【0092】
ステップS32では、制御部501は、ステップS31で取得された脈波信号の信号対雑音比が第1の閾値以上であるか否かを判定する。第1の閾値は、例えば40dBである。脈波信号の信号対雑音比が第1の閾値以上である場合、処理はステップS33に進み、脈波信号の信号対雑音比が第1の閾値未満である場合、処理はステップS35に進む。
【0093】
ステップS33では、制御部501は、ステップS31で取得された心電図の信号対雑音比が第2の閾値以上であるか否かを判定する。第2の閾値は、例えば40dBである。なお、第2の閾値は第1の閾値と異なっていてもよい。心電図の信号対雑音比が第2の閾値以上である場合、処理はステップS34に進み、心電図の信号対雑音比が第2の閾値未満である場合、処理はステップS35に進む。
【0094】
ステップS35では、制御部501は、カフ圧が第3の閾値以下であるか否かを判定する。第3の閾値は、例えば30mmHgである。初期状態では、カフ圧は基準値(0mmHg)に等しい。カフ圧が第3の閾値以下である場合、処理はステップS36に進む。ステップS36では、制御部501は、カフ圧を高めるために、ポンプ駆動回路56を介してポンプ53を駆動する。例えば、カフ圧は10mmHg高められる。その後、処理はステップS31に戻る。
【0095】
ステップS35においてカフ圧が第3の閾値を超える場合、処理はステップS37に進む。ステップS37では、制御部501は、現在のカフ圧で取得された脈波信号及び心電図の検出レベルを記憶部505に記憶させる。その後、処理はステップS34に進む。
【0096】
ステップS34では、制御部501は、脈波伝播時間に基づく血圧測定(
図8に示される)を開始する。
【0097】
このようにして電極と上腕との接触状態を調整することにより、所望する信号対雑音比を有する脈波信号及び心電図を取得できるようになる。その結果、脈波伝播時間の測定確度が向上する。
【0098】
一実施形態では、複数の検出電極33又は複数の検出電極34がベルト部20に設けられていてもよい。
【0099】
図12は、一実施形態に係る血圧測定装置の外観を例示する。
図12に示される血圧測定装置では、6つの検出電極33及び1つの検出電極34がベルト21の内周面212に配置されている。検出電極33は、ベルト21の長手方向に一定間隔で配列している。この配置では、例えば、想定する最も上腕の細いユーザについては、装着状態で6つの検出電極33のうちの4つが上腕70に接し、残り2つの検出電極33がベルト21の外周面211に接する。想定する最も上腕の太いユーザについては、装着状態で6つすべての検出電極33が上腕70に接する。
【0100】
図13は、一実施形態に係る血圧測定装置の外観を例示する。
図13に示される血圧測定装置では、6つの検出電極33及び6つの検出電極34がベルト21の内周面212に配置されている。検出電極33はベルト21の長手方向に一定間隔で配列し、検出電極34はベルト21の長手方向に一定間隔で配列している。
図13では、個々の検出電極33、34を区別するために、参照符号に枝番を付している。検出電極33-1、33-2、33-3、33-4、33-5、33-6はそれぞれ、ベルト21の幅方向に検出電極34-1、34-2、34-3、34-4、34-5、34-6に対向する。
【0101】
図3に示される検出電極33の電位は、
図13に示される検出電極33-1~33-6の電位を平均したものに相当する。同様に、
図3に示される検出電極34の電位は、
図13に示される検出電極34-1~34-6の電位を平均したものに相当する。このため、検出電極33-1~33-6の中から適切な1つの検出電極33を選択し、検出電極34-1~34-6の中から適切な1つの検出電極34を選択し、選択した検出電極33、34間の電位差に基づいて脈波信号及び心電図を取得することにより、信号対雑音比を向上することが可能になる。
【0102】
図14は、
図13に示した血圧測定装置の制御系のハードウェア構成の一例を例示する。
図14では、オシロメトリック法による血圧測定に関与する構成要素などのいくつかの構成要素が省略されている。また、
図14において、
図5に示した構成要素と同じ構成要素に同じ参照符号を付し、これらの構成要素についての詳細な説明は省略する。
【0103】
図14に示される血圧測定装置は、
図5に示した構成要素に加えて、スイッチ回路1401及びスイッチ回路1402を備える。スイッチ回路1401は、6つの検出電極33と計装アンプ360との間に設けられており、6つの検出電極33間で計装アンプ360に接続する検出電極33を切り替える。スイッチ回路1401は、制御部501から受け取るスイッチ信号により指定される検出電極33を計装アンプ360に接続する。スイッチ回路1402は、6つの検出電極34と計装アンプ360との間に設けられており、6つの検出電極34間で計装アンプ360に接続する検出電極34を切り替える。スイッチ回路1402は、制御部501から受け取るスイッチ信号により指定される検出電極34を計装アンプ360に接続する。
【0104】
図15は、
図14に示した血圧測定装置10が心電図及び脈波信号を取得するために使用する電極対を選択する際の動作フローを示している。
図15に示される動作フローは、例えば、ユーザが血圧測定装置10を装着したことに応答して開始される。また、動作フローは、ユーザの指示に応答して、あるいは、一定期間が経過するたびに開始されてもよい。
【0105】
ここでは、心電図及び脈波信号を取得するために使用する検出電極対の候補として、N個の電極パターンが設定される。一例では、検出電極33-1と検出電極34-1の対、検出電極33-2と検出電極34-2の対、・・・、検出電極33-6と検出電極34-6の対という6個の電極パターンが設定される。他の例では、6つの検出電極33及び6つの検出電極34により形成されるすべての検出電極対が電極パターンとして設定されてもよい。この例では、36個の電極パターンが設定される。
【0106】
図15のステップS41では、制御部501は、パラメータnを初期化する。例えば、制御部501は、パラメータnを1にする。ステップS42では、制御部501は、電流源制御部601として動作し、電流源35を駆動する。それにより、電流電極31、32間に交流電流が印加される。
【0107】
ステップS43では、制御部501は、n番目の電極パターンを選択する。例えば、制御部501は、n番目の電極パターンに対応する検出電極33を指定するスイッチ信号をスイッチ回路1401に与え、n番目の電極パターンに対応する検出電極34を指定するスイッチ信号をスイッチ回路1402に与える。これにより、n番目の電極パターンに対応する検出電極33、34が計装アンプ360に接続される。
【0108】
ステップS44では、制御部501は、検出電極33、34間の電位差に基づいて脈波信号及び心電図を取得する。具体的には、制御部501は、脈波信号生成部603として動作し、検出回路370から時系列で出力される電位差信号を脈波信号として取得する。さらに、制御部501は、心電図生成部602として動作し、検出回路380から時系列で出力される電位差信号を心電図として取得する。制御部501は、取得した心電図及び脈波信号をパラメータnに関連付けて記憶部505に記憶させる。
【0109】
ステップS45では、制御部501は、パラメータnがNに等しいか否かを判定する。パラメータnがNに等しくない場合、処理はステップS46に進み、制御部501は、パラメータnを1だけインクリメントする。その後、処理はステップS43に戻る。
【0110】
ステップS45においてパラメータnがNに等しい場合、処理はステップS47に進む。この場合、N個の電極パターンのそれぞれについて心電図及び脈波信号が取得されたことになる。
【0111】
ステップS47では、制御部501は、電極選択部として動作し、所定の選択基準をN個の電極パターンに適用することで、N個の電極パターンのうちの1つを、心電図及び脈波信号を取得するために使用する検出電極対として選択する。選択基準は、例えば、心電図の信号対雑音比が第1の閾値を超え、かつ、脈波信号の信号対雑音比が第2の閾値を超えるという条件であり得る。第1の閾値は、第2の閾値と同じ値であってもよく、第2の閾値とは異なる値であってもよい。この選択基準によれば、第1の閾値を超える信号対雑音比を有する心電図及び第2の閾値を超える信号対雑音比を有する脈波信号を提供する電極パターンが選択される。複数の電極パターンが上記の選択基準を満たすことがある。このため、選択基準は、1つの電極パターンを選択するための条件をさらに含んでもよい。さらなる条件は、例えば、心電図の信号対雑音比が最も大きいという条件である。
【0112】
このようにして検出電極対を選択することにより、より高い信号対雑音比を有する心電図及び脈波信号が取得されるようになる。その結果、脈波伝播時間を正確に測定することが可能になる。
【0113】
なお、脈波信号を取得するために使用される検出電極対は、心電図を取得するために使用される検出電極対と異なっていてもよい。一例として、検出電極33-3、34-3が脈波信号を取得するために使用され、検出電極33-1、33-3が心電図を取得するために使用される。この場合、2つの計装アンプが設けられる。
【0114】
一実施形態では、複数の電流電極31又は複数の電流電極32がベルト部20に設けられていてもよい。
【0115】
図16は、一実施形態に係る血圧測定装置の外観を例示する。
図16に示される血圧測定装置では、6つの電流電極31、6つの電流電極32、6つの検出電極33及び6つの検出電極34がベルト21の内周面212に配置されている。電流電極31はベルト21の長手方向に一定間隔で配列し、電流電極32はベルト21の長手方向に一定間隔で配列し、検出電極33はベルト21の長手方向に一定間隔で配列し、検出電極34はベルト21の長手方向に一定間隔で配列している。
図16では、個々の電流電極31、32及び検出電極33、34を区別するために、参照符号に枝番を付している。電流電極31-m、検出電極33-m、検出電極34-m、及び電流電極32-mは、この順番にベルト21の幅方向に整列している。ここで、mは1から6までの整数である。
【0116】
図16に示される血圧測定装置では、脈波信号を取得するために使用する検出電極33、34に応じて、通電するために使用する電流電極31、32が選択される。例えば、検出電極33-3、34-3を使用して脈波信号を取得する場合には、電流電極31-3、32-3間に高周波電流が印加される。
【0117】
一実施形態では、ベルト21の長手方向に配置される複数の検出電極の中から選択される2つの検出電極を使用して心電図を取得するようにしてもよい。
【0118】
図17は、一実施形態に係る血圧測定装置の外観を例示する。
図17に示される血圧測定装置では、1つの電流電極31、1つの電流電極32、6つの検出電極33及び1つの検出電極34がベルト21の内周面212に配置されている。検出電極33はベルト21の長手方向に配列している。
図17では、個々の検出電極33を区別するために、参照符号に枝番を付している。この例では、検出電極34は、ベルト21の幅方向において検出電極33-3に対向し、検出電極33-3と同じ長さ(ベルト21の長手方向における寸法)を有する。
【0119】
図18は、
図17に示した血圧測定装置の制御系のハードウェア構成の一例を例示する。
図18では、オシロメトリック法による血圧測定に関与する構成要素などのいくつかの構成要素が省略されている。また、
図18において、
図5に示した構成要素と同じ構成要素に同じ参照符号を付し、これらの構成要素についての詳細な説明は省略する。
【0120】
図18に示される血圧測定装置は、電流電極31、電流電極32、検出電極33-1、・・・、33-6及び検出電極34に加えて、電流源35、スイッチ回路1801、計装アンプ1802、計装アンプ1803、検出回路370、検出回路380、及び制御部501を備える。
【0121】
スイッチ回路1801は、検出電極33-1~33-6と計装アンプ1802との間に設けられる。スイッチ回路1801は、制御部501から受け取るスイッチ信号にしたがって、検出電極33-1~33-6のうちの2つを計装アンプ1802に接続する。計装アンプ1802は、入力端子に接続された2つの検出電極33間の電位差信号を検出回路380へ出力する。
【0122】
検出電極33-3及び検出電極34が計装アンプ1803の入力端子に接続されている。計装アンプ1803は、検出電極33-3と検出電極34との間の電位差信号を検出回路370へ出力する。
【0123】
脈波伝播時間の測定に関与する部分が単独の装置として実現されてもよい。一実施形態では、ベルト部20、電流電極31、32、検出電極33、34、電流源35、電位差信号検出部36、脈波信号取得部37、心電図取得部38、及び脈波伝播時間算出部39を備える脈波伝播時間測定装置が提供される。
【0124】
血圧測定装置10は、第2の血圧測定部50を備えていなくてもよい。血圧測定装置10が第2の血圧測定部50を備えない実施形態では、血圧算出式の較正を行うために、他の血圧計で測定することで得られた血圧値を血圧測定装置10に入力する必要がある。
【0125】
被測定部位は、上腕に限らず、手首、大腿、足首などの他の部位であってよい。被測定部位は、四肢のいずれかの一部であり得る。
【0126】
要するに本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【符号の説明】
【0127】
10…血圧測定装置、20…ベルト部、21…ベルト、22…本体、
30…第1の血圧測定部、31,32…電流電極、33,34…検出電極、
35…電流源、36…電位差信号検出部、37…脈波信号取得部、
38…心電図取得部、39…脈波伝播時間算出部、40…血圧値算出部、
50…第2の血圧測定部、51…押圧カフ、52…圧力センサ、53…ポンプ、
54…弁、55…発振回路、56…ポンプ駆動回路、57…弁駆動回路、
58,59…配管、
210A…内布、210B…外布、211…外周面、212…内周面、
213…ループ面、214…フック面、
360…計装アンプ、370…検出回路、371…整流回路、372…LPF、
373…HPF、374…増幅器、375…ADC、380…検出回路、
381…LPF、382…HPF、383…増幅器、384…ADC、
501…制御部、502…CPU、503…RAM、504…ROM、
505…記憶部、506…表示部、507…操作部、508…通信部、509…電池、
601…電流源制御部、602…心電図生成部、603…脈波信号生成部、
604…脈波伝播時間算出部、605…血圧値算出部、606…指示入力部、
607…表示制御部、608…血圧測定制御部、609…較正部、
611…第1の血圧値記憶部、612…第2の血圧値記憶部、
1401,1402,1801…スイッチ回路、1802,1803…計装アンプ。