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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-05
(45)【発行日】2022-08-16
(54)【発明の名称】X線診断装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20060101AFI20220808BHJP
   H05G 1/62 20060101ALI20220808BHJP
【FI】
A61B6/00 331E
A61B6/00 350S
A61B6/00 320Z
H05G1/62 B
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018160787
(22)【出願日】2018-08-29
(65)【公開番号】P2020031857
(43)【公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【氏名又は名称】鵜飼 健
(72)【発明者】
【氏名】白石 邦夫
(72)【発明者】
【氏名】相田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】水谷 賢治
(72)【発明者】
【氏名】金子 誠
【審査官】宮川 数正
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-113779(JP,A)
【文献】特開2010-005480(JP,A)
【文献】特開昭59-002732(JP,A)
【文献】特開2009-207876(JP,A)
【文献】特開2009-022452(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/14
H05G 1/00-2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線を発生させるX線管と、
前記X線管から発生したX線を検出するX線検出器と、
前記X線管に印加される管電圧毎に、造影剤の投与前に前記X線検出器による検出結果に基づいて撮像されたマスク画像を保存する画像メモリと、
前記管電圧に対応するマスク画像と、前記造影剤の投与後に前記X線検出器による検出結果に基づいて撮像されたコントラスト画像との差分を演算することにより、前記造影剤の流入血管を表すX線画像を生成する画像演算部と、
記X線画像に基づいて、前記X線管によるX線の照射条件の切替えタイミングを決定する決定部と、
を備え
切替えられる前記照射条件は、前記X線管に印加される管電圧を含む、X線診断装置。
【請求項2】
X線を発生させるX線管と、
前記X線管から発生したX線を検出するX線検出器と、
前記X線管によるX線の照射条件毎に、造影剤の投与前に前記X線検出器による検出結果に基づいて撮像されたマスク画像を保存する画像メモリと、
前記照射条件に対応するマスク画像と、前記造影剤の投与後に前記X線検出器による検出結果に基づいて撮像されたコントラスト画像との差分を演算することにより、前記造影剤の流入血管を表すX線画像を生成する画像演算部と、
前記X線画像に基づいて、前記照射条件の切替えタイミングを決定する決定部と、
を備え、
切替えられる前記照射条件は、前記X線管によるX線の照射レートを含む、X線診断装置。
【請求項3】
前記X線画像に関心領域を設定する関心領域設定部をさらに備え、
前記決定部は、前記関心領域内の情報に基づいて前記切替えタイミングを決定する、請求項1又は2に記載のX線診断装置。
【請求項4】
前記関心領域は、前記X線画像の撮像対象部位に関する解剖学的情報に基づいて設定される、請求項に記載のX線診断装置。
【請求項5】
前記解剖学的情報は、前記撮像対象部位の情報と、前記X線管及び前記X線検出器の幾何学的配置に係る情報とを含む、請求項に記載のX線診断装置。
【請求項6】
前記決定部は、前記関心領域内の画素の統計情報に基づき、前記切替えタイミングを決定する、請求項乃至のいずれか一項に記載のX線診断装置。
【請求項7】
前記決定部は、前記X線画像の周波数解析の結果に基づいて前記切替えタイミングを決定する、請求項1又は2に記載のX線診断装置。
【請求項8】
前記関心領域は、前記X線画像の撮像対象部位における動脈の末梢部を含む領域に設定される、請求項乃至のいずれか一項に記載のX線診断装置。
【請求項9】
前記決定部は、前記X線画像の撮像対象部位における動脈の起始部の照射条件を前記動脈の末梢部の照射条件に切替えるように前記切替えタイミングを決定する、請求項1乃至のいずれか一項に記載のX線診断装置。
【請求項10】
前記決定部は、前記X線画像の撮像対象部位における動脈相の照射条件を静脈相の照射条件に切替えるように前記切替えタイミングを決定する、請求項1乃至のいずれか一項に記載のX線診断装置。
【請求項11】
前記切替えタイミングは、互いに異なる第1切替えタイミング及び第2切替えタイミングを含んでおり、
前記決定部は、前記X線画像の撮像対象部位における動脈の起始部の照射条件を前記動脈の末梢部の照射条件に切替えるように前記第1切替えタイミングを決定し、前記末梢部の照射条件を静脈相の照射条件に切替えるように前記第2切替えタイミングを決定する、請求項1乃至のいずれか一項に記載のX線診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、X線診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
循環器用のX線診断装置では、頭部、腹部、肝臓、下肢又は四肢などの血管を撮影する際に、デジタルサブトラクション血管造影(DSA)法が広く用いられている。DSAは、造影剤注入時の画像(コントラスト画像)と、注入前の画像(マスク画像)との差分をとることにより造影血管のみを表示させる撮影手法である。コントラスト画像は、通常1枚ではなく、連続した画像として収集される。連続したコントラスト画像からマスク画像を減算して作成したDSA画像を動画として観察することで、術者は血管の血流を理解できる。
【0003】
このようなDSAでは、一定のX線管電圧の場合、カテーテルより造影剤が注入された直後は血管が太く造影剤も濃くコントラストが高い。また、造影剤が末梢の血管に行くに従い血管が細く造影剤が希釈されコントラストが低くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-226764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、術者の煩雑な操作無しに、造影剤が抹消側の血管にある場合においても必要なコントラストを確保できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係るX線診断装置は、X線管、X線検出器及び決定部を備える。前記X線管は、X線を発生させる。前記X線検出器は、前記X線管から発生したX線を検出する。前記決定部は、前記X線検出器による検出結果に基づくX線画像に基づいて、前記X線管によるX線の照射条件の切替えタイミングを決定する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第1の実施形態に係るX線診断装置の構成を示すブロック図である。
図2図2は、第1の実施形態におけるX線診断装置の画像データ処理部及びシステム制御部を処理回路で実現する場合の構成を示すブロック図である。
図3図3は、第1の実施形態における動作を説明するためのフローチャートである。
図4図4は、第1の実施形態における関心領域を説明するための模式図である。
図5図5は、第1の実施形態における各フレームのX線画像の一例を示す模式図である。
図6図6は、第1の実施形態における切替えタイミングの一例を説明するための模式図である。
図7図7は、第1の実施形態の第1変形例における切替えタイミングの他の一例を説明するための模式図である。
図8図8は、第1の実施形態の第1変形例における動作を説明するためのフローチャートである。
図9図9は、第1の実施形態の第2変形例における切替えタイミングの一例を説明するための模式図である。
図10図10は、第1の実施形態の第2変形例における動作を説明するためのフローチャートである。
図11図11は、第2の実施形態における動作を説明するためのフローチャートである。
図12図12は、第2の実施形態における動作を説明するための概念図である。
図13図13は、第2の実施形態の第2変形例における動作を説明するためのフローチャートである。
図14図14は、第2の実施形態の第2変形例における動作を説明するための概念図である。
図15図15は、第3の実施形態におけるX線照射レートの切替えを説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して各実施形態を説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0009】
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態に係るX線診断装置の構成を示すブロック図である。このX線診断装置1は、データ収集系として、X線発生部3、X線検出器5、寝台7、Cアーム9、X線コントローラ11、高電圧発生装置13、及びCアーム・寝台機構制御部15を備えている。また、X線診断装置1は、データ処理系として、位置データメモリ21、システム制御部22、入力インタフェース23、ディスプレイ24及び画像データ処理部25を備えている。
【0010】
ここで、X線発生部3は、X線管3a及びX線絞り器3bを備えている。
【0011】
X線管3aは、X線を発生させる真空管であり、陰極(フィラメント)より放出された熱電子を高電圧によって加速させ、この加速電子をタングステン陽極に衝突させることでX線を発生させる。
【0012】
X線絞り器3bは、X線管3aとX線検出器5の間に位置し、金属板としての鉛板で構成される。X線絞り3bは、X線コントローラ11により制御され、開口領域外のX線を遮蔽することにより、X線管3aが発生したX線を、被検体Pの関心領域にのみ照射されるように絞り込む。例えば、X線絞り3aは複数枚の絞り羽根を有し、これらの絞り羽根をスライドさせることで、X線の遮蔽される領域を任意のサイズに調節する。X線絞りの絞り羽根は、領域設定部25dにより設定された関心領域に応じてX線コントローラ11により制御され、図示しない駆動装置により駆動される。
【0013】
X線検出器5は、被検体Pを透過したX線を検出する。このようなX線検出器5としては、X線を直接電荷に変換するものと、光に変換した後、電荷に変換するものとが使用可能であり、ここでは前者を例に説明するが後者であっても構わない。すなわち、X線検出器5は、例えば、被検体Pを透過したX線を電荷に変換して蓄積する平面状のFPD(Flat Panel Detector)と、このFPDに蓄積された電荷を読み出すための駆動パルスを生成するゲートドライバとを備えている。FPDの大きさは一般的に8~16インチである。FPDは微小な検出素子を列方向及びライン方向に2次元的に配列して構成される。各々の検出素子はX線を感知し、入射X線量に応じて電荷を生成する光電膜と、この光電膜に発生した電荷を蓄積する電荷蓄積コンデンサと、電荷蓄積コンデンサに蓄積された電荷を所定のタイミングで出力するTFT(薄膜トランジスタ)を備えている。蓄積された電荷はゲートドライバが供給する駆動パルスによって順次読み出される。
【0014】
X線検出器5の後段には、図示しない投影データ生成回路を備える。投影データ生成回路は、電荷・電圧変換器、A/D変換器及びパラレル・シリアル変換器を備えている。電荷・電圧変換器は、FPDから行単位あるいは列単位でパラレルに読み出された電荷を電圧に変換する。A/D変換器は、この電荷・電圧変換器の出力をデジタル信号に変換する。パラレル・シリアル変換器は、デジタル変換されたパラレル信号を時系列的なシリアル信号に変換する。投影データ生成回路は、このシリアル信号を時系列的な投影データとして画像データ処理部25に出力する。
【0015】
寝台7は、被検体Pを搭載したまま起倒及び位置決め動作可能な機構を有する。寝台7には、その位置などの幾何学的配置に係る情報を検出する状態検出器(図示せず)が設けられている。状態検出器は、寝台7の幾何学的配置に係る情報をCアーム・寝台機構制御部15に出力する。
【0016】
Cアーム9は、X線発生部3とX線検出器5とを被検体P及び寝台7の天板を挟んで対向するように保持する。詳しくは、Cアーム9は、寝台7の天板に垂直なZ方向と、天板の長軸方向に沿ったY方向との両者に直交するX方向の軸を中心に回転可能に保持部(図示せず)に保持されている。また、Cアーム9は、Y方向の軸を中心とした略円弧形状を有し、略円弧形状に沿ってスライド可能に保持部に保持されている。あるいは、Cアーム9は、保持部を中心としてX方向の軸を中心とした回転をすることができ、スライドとこの回転の組み合わせにより様々な角度方向からX線画像を観察することを可能とする。Cアーム9は、このようなスライド動作と回転動作を実現するための複数の動力源が該当する適当な箇所に備えられている。さらに、Cアーム9には、その角度または姿勢や位置といった幾何学的配置に係る情報を検出する状態検出器(図示せず)がそれぞれ備えられている。状態検出器は、例えば回転角や移動量を検出するポテンショメータや、位置検出センサであるエンコーダ等で構成される。エンコーダとしては、例えば磁気方式、刷子式、あるいは光電式等の、いわゆるアブソリュートエンコーダが使用可能となっている。また、状態検出器としては、回転変位をデジタル信号として出力するロータリエンコーダあるいは直線変位をデジタル信号として出力するリニアエンコーダなど、様々な種類の位置検出機構が適宜、使用可能となっている。この種の状態検出器は、Cアーム9の幾何学的配置に係る情報をCアーム・寝台機構制御部15に出力する。なお、Cアーム9の幾何学的配置に係る情報は、X線管及びX線検出器の幾何学的配置に係る情報に相当する。
【0017】
X線コントローラ11は、システム制御部22及び切替えタイミング決定回路25eにより制御され、X線絞り器3b、X線制御部13a及び高電圧発生器13bを制御する。
【0018】
高電圧発生装置13は、X線制御部13a及び高電圧発生器13bを備えている。
【0019】
X線制御部13aは、X線コントローラ11から供給される、X線管3aによるX線の照射条件に基づいて、高電圧発生器13bにおける管電流、管電圧、印加時間、印加タイミング、繰り返し周波数等を制御する。
【0020】
高電圧発生器13bは、X線コントローラ11により制御され、X線管3aの陰極から発生する熱電子を加速するために、陽極と陰極の間に印加する高電圧を発生させてX線管3aへ出力する。
【0021】
Cアーム・寝台機構制御部15は、システム制御部22に制御され、Cアーム9及び寝台7を個別に駆動制御すると共に、図示しない状態検出器から受けたCアーム9の幾何学的配置に係る情報と、寝台7の幾何学的配置に係る情報とを位置データメモリ21に書き込む。
【0022】
位置データメモリ21は、Cアーム9の幾何学的配置に係る情報と、寝台7の幾何学的配置に係る情報とを保存する。
【0023】
システム制御部22は、画像データの収集に関する制御、及び収集した画像データの画像処理、画像再生処理等に関する制御を行う中央処理装置である。システム制御部22は、例えば、入力インタフェース23から入力されたコマンド信号、及び各種初期設定条件等の情報を一旦記憶した後、これらの情報をX線コントローラ11、Cアーム・寝台機構制御部15及び/又は画像データ処理部25に送信する。
【0024】
入力インタフェース23は、被検体情報の入力、X線照射条件を含むX線撮影条件の設定、各種コマンド信号の入力等を行う。入力インタフェース23は、例えば、Cアーム9の移動指示、関心領域(ROI)の設定などを行うためのトラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、及び表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチパネルディスプレイ等によって実現される。入力インタフェース23は、システム制御部22に接続されており、操作者から受け取った入力操作を電気信号へ変換し、システム制御部22へと出力する。なお、本明細書において入力インタフェース23はマウス、キーボードなどの物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号をシステム制御部22へ出力する電気信号の処理回路も入力インタフェース23の例に含まれる。
【0025】
ディスプレイ24は、医用画像などを表示するディスプレイ本体と、ディスプレイ本体に表示用の信号を供給する内部回路、ディスプレイ本体と内部回路とをつなぐコネクタやケーブルなどの周辺回路から構成されている。内部回路は、画像データ処理部25から供給される画像データに被検体情報や投影データ生成条件等の付帯情報を重畳して表示データを生成し、得られた表示データに対しD/A変換とTVフォーマット変換を行なってディスプレイ本体に表示する。
【0026】
画像データ処理部25は、画像演算回路25a、画像データメモリ25b、表示用データ生成回路25c、領域設定部25d及び切替えタイミング決定回路25eを備えている。
【0027】
画像演算回路25aは、X線検出器5による検出結果に基づくX線画像を生成する。詳しくは、画像演算回路25aは、X線検出器5の投影データ生成回路から出力される時系列的な投影データを投影データ記憶回路(図示せず)に順次保存して2次元投影データからなるX線画像を生成する。このX線画像は、画像データメモリ25bに保存される。
【0028】
なお、画像演算回路25aが生成可能なX線画像としては、マスク画像(非造影像)、コントラスト画像(造影像)及びDSA画像(差分画像)がある。マスク画像は、造影剤投与前のX線画像であり、骨像を有する投影像である。コントラスト画像は、造影剤投与後のX線画像であり、骨及び血管像を有する投影像である。DSA画像は、コントラスト画像とマスク画像との差分を表すX線画像であり、血管像を有する投影像である。例えば、DSA画像は、画像データメモリ25bに記憶したマスク画像と、X線検出器5の出力から生成したコントラスト画像との差分を演算することにより生成可能となっている。なお、マスク画像は、X線の照射条件毎に生成される。例えば、第1の管電圧を含む第1の照射条件と、第2の管電圧を含む第2の照射条件とがある場合には、第1の照射条件に基づく第1のマスク画像と、第2の照射条件に基づく第2のマスク画像とが生成される。言い換えると、管電圧を切り替える場合には、管電圧毎にマスク画像が準備される。また、管電圧を切り替える場合、造影剤の注入直後はコントラストが高いため、被ばく低減のために高い管電圧が設定される。また、造影剤が末梢血管を流れるとコントラストが低くなるため、低い管電圧が設定される。
【0029】
これに加え、画像演算回路25aは、X線管3a及びX線検出器5を被検体Pの周囲で連続的に回動することによって収集され、画像データメモリ25bに保存された投影データに対し所定の再構成処理を行なって3D画像データを生成してもよい。得られた3D画像データは画像データメモリ25bに保存される。この場合、画像演算回路25aは、略リアルタイムで生成する2次元のX線画像を当該3D画像データに重畳させることにより3Dロードマップ画像を生成してもよい。
【0030】
画像データメモリ25bは、画像演算回路25aにより生成されたX線画像、3D画像及び3Dロードマップ画像といった画像データを保存する。
【0031】
表示用データ生成回路25cは、少なくとも画像演算回路25aにより生成されたX線画像を含む表示用データを生成し、当該表示用データをディスプレイ24に送出する。
【0032】
領域設定部25d(関心領域設定部)は、X線画像に関心領域を設定する。関心領域は、例えば、X線画像の撮像対象部位に関する解剖学的情報に基づいて設定されてもよい。解剖学的情報は、撮像対象部位の情報と、X線管3a及びX線検出器5の幾何学的配置に係る情報とを含んでもよい。すなわち、領域設定部25dは、例えば、システム制御部22から取得した検査プロトコル内の撮像対象部位の情報と、システム制御部22から取得したCアーム9の角度及び位置に基づいて、視野の位置を推定し、視野の位置から関心領域を設定してもよい。この関心領域は、例えば、X線画像の中心領域(又は上側領域)というように、(術者が指定可能な領域よりも)広い領域を設定すればよい。術者が指定可能な領域は、領域設定部25dが設定した関心領域内の高コントラスト領域に相当する。ここで、コントラストは、造影領域と非造影領域との間のDSA画像上のレベル差を意味する。「コントラスト」の用語は、「血管濃度」、又は「造影剤濃度」と呼んでもよい。
また、領域設定部25dは、X線管3a及びX線検出器5の幾何学的配置に係る情報に加え、寝台7の位置・SID(source-image distance:線源-画像間距離)・FOV(field of view:視野)、被検体情報(身長・体重)、被検体体位情報などを用いて、関心領域を設定してもよい。
【0033】
また、関心領域は、例えば、X線画像の撮像対象部位における動脈の末梢部を含む領域に設定されてもよい。「末梢部」は、「末梢」又は「末梢血管」と呼んでもよい。動脈の末梢部を含む領域は、照射条件の切替え前後の造影領域を含む領域に対応する。例えば、動脈の起始部と末梢部との間で照射条件を切替える場合、動脈の末梢部を含む領域としては、動脈の起始部及び末梢部(切替え前後の造影領域)を含む領域が使用可能であり、動脈の起始部及び末梢部に加え、静脈を含んでもよい。また例えば、動脈相と静脈相との間で照射条件を切り替える場合、動脈の末梢部を含む領域としては、動脈の末梢部及び静脈(切替え前後の造影領域)を含む領域が使用可能であり、動脈の末梢部及び静脈に加え、動脈の起始部を含んでもよい。
【0034】
あるいは、領域設定部25dは、操作者による入力インタフェース23の操作により、3Dロードマップ画像内の3D画像(3Dボリューム画像)に関心領域を設定してもよい。この場合、3Dロードマップ画像が被検体Pに位置合わせされていることから、関心領域を正確な位置に設定することができる。すなわち、関心領域を設定する際に、3Dロードマップ画像内の3D画像に指定してもよく、前述したように解剖学的に設定してもよい。
【0035】
切替えタイミング決定回路25e(決定部)は、X線検出器5による検出結果に基づくX線画像に基づいて、X線管3aによるX線の照射条件の切替えタイミングを決定する。切替えられる照射条件は、X線管3aに印加される管電圧を含んでもよい。また、切替えられる照射条件は、X線管3aによるX線の照射レートを含んでもよい。
【0036】
ここで、切替えタイミング決定回路25eは、関心領域内の情報に基づいて切替えタイミングを決定してもよい。また、切替えタイミング決定回路25eは、関心領域内の画素の統計情報に基づき、切替えタイミングを決定してもよい。また、切替えタイミング決定回路25eは、X線画像の撮像対象部位における動脈の起始部の照射条件を動脈の末梢部の照射条件に切替えるように切替えタイミングを決定してもよい。
【0037】
なお、以上のように構成されたX線診断装置1は、図2に示すように、システム制御部22及び画像データ処理部25といった個別のハードウェア回路と同等のシステム制御機能27a及び画像データ処理機能27bを処理回路27が実現する構成としてもよい。この処理回路27は、メモリ26内のプログラムを読出実行することにより、システム制御部22に対応するシステム制御機能27aと、画像データ処理部25に対応する画像データ処理機能27bとを実現する。画像データ処理機能27bは、画像演算機能27c、表示用データ生成機能27d、領域設定機能27e及び切替えタイミング決定機能27fを含んでいる。画像演算機能27c、表示用データ生成機能27d、領域設定機能27e及び切替えタイミング決定機能27fは、それぞれ画像演算回路25a、表示用データ生成回路25c、領域設定部25d及び切替えタイミング決定回路25eに対応する。また、メモリ26は、位置データメモリ21及び画像データメモリ25bに保存される情報を記憶し、さらにプログラムを記憶する。メモリ26、入力インタフェース23、ディスプレイ24及び処理回路27は、互いにバスを介して接続され、コンソール装置20に設けられている。
【0038】
メモリ26は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hardware Disk Drive)及び画像メモリなど電気的情報を記録するメモリ本体と、それらメモリ本体に付随するメモリコントローラやメモリインタフェースなどの周辺回路とを備えている。メモリ26は、例えば、処理回路27に実行されるプログラムと、処理回路27により生成されたX線画像と、処理回路27の処理に用いるデータ、処理途中のデータ及び処理後のデータ等とが記憶される。処理回路27の処理に用いるデータは、X線画像の撮像対象部位に関する解剖学的情報を含んでもよい。メモリ26は、3D画像及び3Dロードマップ画像を記憶してもよい。
【0039】
入力インタフェース23及びディスプレイ24は、前述同様の構成である。
【0040】
処理回路27は、メモリ26に保存されたプログラムを読み出し実行することにより、プログラムに対応するシステム制御機能27a、画像データ処理機能27b、画像演算機能27c、表示用データ生成機能27d、領域設定機能27e及び切替えタイミング決定機能27fを実現するプロセッサである。ここで、「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA)等の回路を意味する。なお、メモリ26にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。また、図2においては単一の処理回路27にてシステム制御機能27a、画像データ処理機能27b、画像演算機能27c、表示用データ生成機能27d、領域設定機能27e及び切替えタイミング決定機能27fが実現されるものとして説明した。しかしながら、これに限らず、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより各機能を実現するものとしても構わない。
【0041】
なお、以下の説明は、図1及び図2に示した構成のうち、図1に示した構成を代表例に挙げて行う。代表例に挙げたシステム制御部22及び画像データ処理部25は、図2に示したシステム制御機能27a及び画像データ処理機能27bに対し、ほぼ同様の動作を実行する。従って、このような代表例の説明は、適宜、構成要素名及び参照符号などを読み替えることにより、図2に示した処理回路27の動作の説明に適用することができる。このことは、以下の各実施形態及び各変形例でも同様である。
【0042】
次に、以上のように構成されたX線診断装置の動作について図3のフローチャート、及び図4乃至図6の模式図を用いて説明する。
【0043】
始めに、被検体Pに関する情報(患者氏名、撮像対象部位等)の確認が行われた後、被検体Pを載置した寝台7の位置や、Cアーム9の角度・位置などの幾何学的配置が調整される。寝台7及びCアーム9の幾何学的配置に係る情報は、位置データメモリ21に保存される。また、医師または技師等の操作者により当該被検体Pに対して適切な照射条件(管電圧、管電流、照射レート等)が入力インタフェース23を介して入力される。なお、造影剤注入前に照射条件毎にマスク画像を撮像する場合には、切替えて用いる照射条件のうち、いずれかの照射条件を入力する。
【0044】
次に、システム制御部22の制御により、X線コントローラ11および高電圧発生装置13を介して、寝台7に載せられた被検体PにX線管3aからX線が照射される。
【0045】
次に、被検体Pを透過したX線に基づいて、X線画像が生成され表示される。すなわち、X線検出器5では、被検体Pを透過したX線を検出して電気信号に変換する。この変換は、X線から電気信号に変換する直接変換であっても良いし、X線から光を介して電気信号に変換する間接変換であっても良い。X線検出器5で収集された電気信号は、所定の変換処理が施された後、画像データ処理部25に出力される。画像データ処理部25の画像演算回路25aは、X線検出器5の出力に基づいてX線画像を生成し、当該X線画像を表示用データ生成回路25c及び画像データメモリ25bに送出する。表示用データ生成回路25cは、当該X線画像を含む表示用データを生成し、当該表示用データをディスプレイ24に表示する。画像データメモリ25bは、当該X線画像をマスク画像として保存する。また同様に、他の照射条件を入力して、他の照射条件に対応するマスク画像を撮像する。これにより、切替えて用いる照射条件毎に、造影剤注入前の撮影対象部位のマスク画像が撮像される。例えば、高い管電圧を照射条件に含むマスク画像と、低い管電圧を照射条件に含むマスク画像とが撮像される。すなわち、管電圧毎にマスク画像が準備される。各マスク画像は、画像データメモリ25bに保存される。マスク画像の撮像後、被検体Pに造影剤が注入され、コントラスト画像(注入時間毎のX線画像)が撮像される。なお、造影剤の注入直後はコントラストが高いため、被ばく低減のために高い管電圧を含む照射条件が用いられる。
【0046】
次に、ステップST1において、画像演算回路25aは、造影剤注入前の1フレーム目のマスク画像から、造影剤注入後の2フレーム目以降のコントラスト画像を減算し、造影剤の流入血管を表すX線画像(DSA画像)を作成する。作成したX線画像は、領域設定部25d、表示用データ生成回路25c及び画像データメモリ25bに入力される。以下、特に断らない限り、画像演算回路25aが作成するX線画像は、DSA画像であり、表示用データ生成回路25cを介してディスプレイ24に表示される一方、画像データメモリ25bに保存される。なお、時系列に沿ったフレームであるX線画像は、動画像として表示される。
【0047】
ステップST2において、領域設定部25dは、当該X線画像に関心領域を設定する。このとき、領域設定部25dは、X線画像の撮像対象部位に関する解剖学的情報に基づいて関心領域を設定する。具体的には例えば、領域設定部25dは、解剖学的情報をシステム制御部22に要求する。システム制御部22は、検査プロトコル内の撮像対象部位の情報と、位置データメモリ21内の寝台7及びCアーム9の幾何学的配置に係る情報とを含む解剖学的情報を領域設定部25dに送出する。領域設定部25dは、当該送出された解剖学的情報から撮像対象部位の情報と、X線管及びX線検出器の幾何学的配置に係る情報とを抽出する。しかる後、領域設定部25dは、撮像対象部位の情報と、幾何学的配置に係る情報とに基づいて、X線画像に関心領域を設定する。なお、領域設定部25dは、1つの関心領域に限らず、例えば図4に示すように、複数の関心領域30a,30bをX線画像に設定してもよい。この関心領域30a,30bは、いずれも動脈の末梢部を含む領域に設定されている。
【0048】
ステップST3において、画像演算回路25aは、次のフレームのX線画像を作成し、当該X線画像を切替えタイミング決定回路25e、表示用データ生成回路25c及び画像データメモリ25bに入力する。表示用データ生成回路25c及び画像データメモリ25bは、前述同様に、それぞれX線画像をディスプレイ24への表示及び保存を行う。
【0049】
ステップST4において、切替えタイミング決定回路25eは、ステップST3で入力されたX線画像に基づいて、関心領域内の画素の統計情報を作成する。また、切替えタイミング決定回路25eは、作成した統計情報に基づいて、当該X線画像の動脈の末梢部に造影剤が流入したか否かを判定する。判定の結果、否の場合には、ステップST3に戻る。これにより、ステップST3~ST4の処理がX線画像のフレーム単位で実行される。判定の結果、造影剤が流入した場合にはステップST5に移行する。
【0050】
このようなステップST4においては、例えば図5に示すように、各フレームのX線画像(頭部DSA画像)が得られると共に、関心領域内の画素値のヒストグラムに基づいて、関心領域内の画素の統計情報がフレーム毎に順次、作成される。なお、この例では、関心領域は、X線画像の上側2/3弱を占める楕円状の頭部領域に設定されている。また、図5に示した各フレームのX線画像は、図示しない1フレーム目から81フレーム目まであるとする。但し、現在は、23フレーム目のX線画像が最新の画像であるとする。また、各フレームの統計情報は、図6に示すように、横軸をフレーム番号とし、縦軸を統計値としたグラフに記録されるとする。統計値は、例えば、(a)分散値、(b)平均値、(c)平均値-中央値、などのいずれでもよい。すなわち、造影剤が流入したか否かを判定する際には、分散値の変化、平均値の変化、平均値と中央値の差分の変化、のいずれを用いてもよい。ここでは、上記(c)の「平均値-中央値」を用いている。
【0051】
図6中、統計値は、フレーム番号“1”~“20”にかけて上昇し、フレーム番号“21”~“40”にかけて下降している。また、フレーム番号“41”~“78”にかけて緩やかに上昇している。統計値は、関心領域の画素の「平均値-中央値」であるので、関心領域のコントラスト(造影剤濃度)に対応する。すなわち、フレーム番号“1”~“20”における統計値の上昇は、動脈の起始部に造影剤が流入したことを表す。また、フレーム番号“21”~“40”における統計値の下降は、動脈の末梢部に造影剤が流入したことを表す。また、フレーム番号41以降の統計値の緩やかな上昇は、静脈に造影剤が流入したことを表す。このため、切替えタイミング決定回路25eは、例えば、フレーム番号“21”~“23”の統計値が下降状態にあることに基づいて、X線画像の動脈の末梢部に造影剤が流入したことを判定し、ステップST5に移行する。なお、図6には、理解を容易にするためにフレーム番号1~81までの統計値を示したが、現在の最新の統計値は、フレーム番号“23”の統計値であるとする。すなわち、フレーム番号“24”以降のX線画像は、まだ撮像されていない状況にあるとする。
【0052】
ステップST5において、切替えタイミング決定回路25eは、ステップST4の造影剤が流入した旨の判定結果を得ると、即座に照射条件を切替えるように、照射条件の切替えタイミングを決定する。しかる後、切替えタイミング決定回路25eは、高い管電圧を含む照射条件から低い管電圧を含む照射条件に切り替えるように、照射条件の切替え指令をシステム制御部22に出力する。すなわち、切替えタイミング決定回路25eは、造影剤が末梢血管を流れるとコントラストが低くなるため、低い管電圧を含む照射条件に切り替えるように動作する。
【0053】
ステップST6において、システム制御部22は、照射条件の切替え指令を受けると、照射条件を切替える。
【0054】
ステップST7において、X線診断装置1は、切り替えた照射条件でX線画像を撮像する。
【0055】
上述したように第1の実施形態によれば、X線検出器による検出結果に基づくX線画像に基づいて、X線管によるX線の照射条件の切替えタイミングを決定するので、術者の判断を用いずに、適切な切替えタイミングを決定することができる。従って、術者の煩雑な操作無しに、造影剤が末梢側の血管にある場合においても必要なコントラストを確保することができる。
【0056】
続いて、第1の実施形態の効果につき、手動又は時間設定によりX線管電圧を切替える場合を比較例に挙げて補足的に説明する。手動又は時間設定によりX線間電圧を切替える場合、切替えタイミングについての術者の判断が煩わしく、必ずしも適切な切替えタイミングを決定することができない場合がある。
【0057】
一方、前述した第1の実施形態によれば、手動又は時間設定によりX線管電圧を切替える場合に比べ、術者の判断を用いずに、適切な切替えタイミングを決定できる点で優れている。
【0058】
また、第1の実施形態によれば、管電圧切替えを伴うステージ切替えを自動化することができる。また、術者の煩わしさが減り、ワークフローを改善することができる。また、照射条件を自動的に切り替えることにより、造影剤流入直後の被ばく低減を確実に実施することができる。また、造影剤の低減を図ることができる。
【0059】
また、第1の実施形態によれば、X線画像に関心領域を設定し、関心領域内の情報に基づいて切替えタイミングを決定する。これにより、切替えタイミングを決定する際に、関心領域から外れた情報を用いないので、切替えタイミングを決定するための負荷を軽減することができる。
【0060】
また、第1の実施形態によれば、関心領域を、X線画像の撮像対象部位に関する解剖学的情報に基づいて設定する。これにより、関心領域を設定するための負荷を軽減することができる。
【0061】
また、第1の実施形態によれば、解剖学的情報が、撮像対象部位の情報と、X線管及びX線検出器の幾何学的配置に係る情報とを含んでいる。これにより、前述した関心領域を設定するための負荷軽減効果に加え、幾何学的配置に係る情報に基づいて、より正確に関心領域を設定することができる。
【0062】
また、第1の実施形態によれば、関心領域内の画素の統計情報に基づき、切替えタイミングを決定する。これにより、関心領域のコントラスト(造影剤濃度)を反映して切替えタイミングを決定できるので、より適切な切替えタイミングの決定を期待することができる。
【0063】
また、第1の実施形態によれば、切り替えられる照射条件が、X線管に印加される管電圧を含んでいる。
【0064】
また、第1の実施形態によれば、関心領域が、X線画像の撮像対象部位における動脈の末梢部を含む領域に設定される。これにより、末梢部を含む領域に造影剤が流入したことを判定した際に、切替えタイミングを決定することができる。よって、動脈の末梢部を含む領域のコントラストを確保することができる。
【0065】
また、第1の実施形態によれば、X線画像の撮像対象部位における動脈の起始部の照射条件を、動脈の末梢部の照射条件に切替えるように切替えタイミングを決定する。これにより、動脈の起始部と末梢部との間で照射条件を自動的に切り替えることができる。
【0066】
[第1の実施形態の第1変形例]
続いて、第1の実施形態の第1変形例について説明する。
【0067】
第1の実施形態の第1変形例は、起始部と末梢部との2相に代えて、図7に示すように、動脈相と静脈相との2相において、照射条件を自動的に切替える構成である。
【0068】
具体的には、切替えタイミング決定回路25eは、X線画像の撮像対象部位における動脈相の照射条件を静脈相の照射条件に切替えるように切替えタイミングを決定する構成となっている。
【0069】
他の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0070】
以上のような構成によれば、図8に示すように、ステップST1~ST3は、第1の実施形態と同様に実行される。
【0071】
ステップST4Aにおいて、切替えタイミング決定回路25eは、前述同様に、ステップST3で入力されたX線画像に基づいて、関心領域内の画素の統計情報を作成する。また、切替えタイミング決定回路25eは、作成した統計情報に基づいて、当該X線画像の静脈に造影剤が流入したか否かを判定する。判定の結果、否の場合には、ステップST3に戻る。これにより、ステップST3~ST4Aの処理がX線画像のフレーム単位で実行される。判定の結果、造影剤が流入した場合にはステップST5に移行する。
【0072】
このようなステップST4Aにおいては、切替えタイミング決定回路25eは、例えば、次のように判定を行う。すなわち、フレーム番号“1”~“40”の統計値が上昇状態から下降状態を過ぎた後、フレーム番号“41”~“43”の統計値が緩やかな上昇状態にあることに基づいて、X線画像が示す静脈に造影剤が流入したことを判定する。また、造影剤が流入した旨の判定結果により、ステップST5に移行する。なお、図7には、理解を容易にするためにフレーム番号1~81までの統計値を示したが、現在の最新の統計値は、フレーム番号“43”の統計値であるとする。すなわち、フレーム番号“44”以降のX線画像は、まだ撮像されていない状況にあるとする。
【0073】
ステップST5において、切替えタイミング決定回路25eは、ステップST4Aの造影剤が流入した旨の判定結果を得ると、即座に照射条件を切替えるように、照射条件の切替えタイミングを決定する。しかる後、切替えタイミング決定回路25eは、高い管電圧を含む照射条件から低い管電圧を含む照射条件に切り替えるように、照射条件の切替え指令をシステム制御部22に出力する。
【0074】
以下、前述同様にステップST6以降の処理が実行される。
【0075】
上述したように第1の実施形態の第1変形例によれば、X線画像の撮像対象部位における動脈相の照射条件を静脈相の照射条件に切替えるように切替えタイミングを決定する。これにより、動脈相と静脈相との間で照射条件を切替える場合に、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。また、静脈相のコントラストを確保することができる。
【0076】
[第1の実施形態の第2変形例]
続いて、第1の実施形態の第2変形例について説明する。
【0077】
第1の実施形態の第2変形例は、起始部と末梢部との2相に代えて、図9に示すように、起始部と末梢部と静脈相との3相において、照射条件を自動的に切替える構成である。
【0078】
具体的には、切替えタイミングは、互いに異なる第1切替えタイミング及び第2切替えタイミングを含んでいる。
【0079】
切替えタイミング決定回路25eは、X線画像の撮像対象部位における動脈の起始部の照射条件を動脈の末梢部の照射条件に切替えるように第1切替えタイミングを決定し、末梢部の照射条件を静脈相の照射条件に切替えるように第2切替えタイミングを決定する。
【0080】
他の構成は、第1の実施形態の構成と同様である。
【0081】
以上のような構成によれば、図10に示すように、ステップST1~ST5は、第1の実施形態と同様に実行される。なお、ステップST5で決定された切替えタイミングは、第1切替えタイミングと呼んでもよい。すなわち、ステップST5において、切替えタイミング決定回路25eは、X線画像の撮像対象部位における動脈の起始部の照射条件を動脈の末梢部の照射条件に切替えるように第1切替えタイミングを決定する。ステップST5の後、ステップST6~ST7は、第1の実施形態と同様に実行される。
【0082】
ステップST7の後、ステップST8において、切替えタイミング決定回路25eは、ステップST8で撮像されたX線画像に基づいて、関心領域内の画素の統計情報を作成する。また、切替えタイミング決定回路25eは、作成した統計情報に基づいて、当該X線画像の静脈に造影剤が流入したか否かを判定する。判定の結果、否の場合には、ステップST7に戻る。これにより、ステップST7~ST8の処理がX線画像のフレーム単位で実行される。判定の結果、造影剤が流入した場合にはステップST9に移行する。
【0083】
このようなステップST8においては、切替えタイミング決定回路25eは、例えば、次のように判定を行う。すなわち、フレーム番号“1”~“40”の統計値が上昇状態から下降状態を過ぎた後、フレーム番号“41”~“43”の統計値が緩やかな上昇状態にあることに基づいて、X線画像が示す静脈に造影剤が流入したことを判定する。また、造影剤が流入した旨の判定結果により、ステップST9に移行する。なお、図9には、理解を容易にするためにフレーム番号1~81までの統計値を示したが、現在の最新の統計値は、フレーム番号“43”の統計値であるとする。すなわち、フレーム番号“44”以降のX線画像は、まだ撮像されていない状況にあるとする。
【0084】
ステップST9において、切替えタイミング決定回路25eは、ステップST8の造影剤が流入した旨の判定結果を得ると、即座に照射条件を切替えるように、照射条件の切替えタイミングを決定する。なお、ステップST9で決定された切替えタイミングは、第2切替えタイミングと呼んでもよい。すなわち、切替えタイミング決定回路25eは、X線画像の撮像対象部位における動脈の末梢部の照射条件を静脈相の照射条件に切替えるように第2切替えタイミングを決定する。しかる後、切替えタイミング決定回路25eは、低い管電圧を含む照射条件から高い管電圧を含む照射条件に切り替えるように、照射条件の切替え指令をシステム制御部22に出力する。
【0085】
ステップST10において、システム制御部22は、照射条件の切替え指令を受けると、照射条件を切替える。
【0086】
ステップST11において、X線診断装置1は、切り替えた照射条件でX線画像を撮像する。
【0087】
上述したように第1の実施形態の第2変形例によれば、切替えタイミングが、互いに異なる第1切替えタイミング及び第2切替えタイミングを含んでいる。また、X線画像の撮像対象部位における動脈の起始部の照射条件を動脈の末梢部の照射条件に切替えるように第1切替えタイミングを決定し、末梢部の照射条件を静脈相の照射条件に切替えるように第2切替えタイミングを決定する。これにより、起始部と末梢部と静脈相との3相の間で照射条件を切替える場合に、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。また、末梢部のコントラストと、静脈相のコントラストとを確保することができる。
【0088】
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態について説明する。
第2の実施形態は、関心領域及び統計情報を用いる第1の実施形態とは異なり、周波数解析の結果を用いて、切替えタイミングを決定する構成となっている。
【0089】
具体的には、切替えタイミング決定回路25eは、X線画像の周波数解析の結果に基づいて切替えタイミングを決定する構成となっている。
【0090】
また、領域設定部24dは省略されている。
【0091】
他の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0092】
次に、以上のように構成されたX線診断装置の動作を図11のフローチャート及び図12の模式図を用いて説明する。
【0093】
いま前述同様に、照射条件毎に、マスク画像が撮像されたとする。各マスク画像は、画像データメモリ25bに保存される。マスク画像の撮像後、被検体Pに造影剤が注入され、コントラスト画像(注入時間毎のX線画像)が撮像される。
【0094】
次に、ステップST21において、画像演算回路25aは、造影剤注入前の1フレーム目のマスク画像から、造影剤注入後の2フレーム目以降のコントラスト画像を減算し、造影剤の流入血管を表すX線画像(DSA画像)を作成する。作成したX線画像は、表示用データ生成回路25c、画像データメモリ25b及び切替えタイミング決定回路25eに入力される。このX線画像は、前述同様に、表示用データ生成回路25cを介してディスプレイ24に表示される一方、画像データメモリ25bに保存される。
【0095】
ステップST22において、切替えタイミング決定回路25eは、当該X線画像にFFT(高速フーリエ変換)を実行することにより、X線画像の周波数解析の結果を得る。図12(a)に概念図を示すように、周波数解析の結果は、横軸を周波数fとし、縦軸を信号の強度vとしたグラフに表されるとする。
【0096】
ステップST23において、図12(b)に示すように、切替えタイミング決定回路25eは、ステップST22で得られたX線画像の周波数解析の結果に基づいて、X線画像の周波数f1の高周波成分が閾値v1以上か否かを判定する。判定の結果、否の場合には、ステップST21に戻る。これにより、ステップST21~ST23の処理がX線画像のフレーム単位で実行される。判定の結果、高周波成分が閾値以上の場合にはステップST24に移行する。
【0097】
このようなステップST23においては、末梢血管が起始部に比べ細いことから、周波数成分の解析を利用して末梢血管への造影剤の流入を検出できる。例えば、DSA画像に対してFFT(高速フーリエ変換)を行い、得られた周波数解析の結果と、造影剤注入前のコントラクト画像(又はマスク画像)の周波数解析の結果とを比較する。比較の結果、DSA画像の周波数解析の結果において、明らかに高周波成分が増えている場合には、末梢血管に造影剤が流入したことを判定(検出)できる。
【0098】
ステップST24において、切替えタイミング決定回路25eは、ステップST23の高周波成分が閾値以上である旨の判定結果を得ると、即座に照射条件を切替えるように、照射条件の切替えタイミングを決定する。しかる後、切替えタイミング決定回路25eは、高い管電圧を含む照射条件から低い管電圧を含む照射条件に切り替えるように、照射条件の切替え指令をシステム制御部22に出力する。
【0099】
ステップST25において、システム制御部22は、照射条件の切替え指令を受けると、照射条件を切替える。
【0100】
ステップST26において、X線診断装置1は、切り替えた照射条件でX線画像を撮像する。
【0101】
上述したように第2の実施形態によれば、X線画像の周波数解析の結果に基づいて切替えタイミングを決定する。これにより、術者の判断を用いずに、適切な切替えタイミングを決定することができる。従って、術者の煩雑な操作無しに、造影剤が末梢側の血管にある場合においても必要なコントラストを確保できる。また、関心領域を用いないため、領域設定部25dを省略して構成の簡素化を図ることができる。
【0102】
なお、第2の実施形態は、第1の実施形態の全ての変形例に適用することができる。例えば、第1の実施形態の第1変形例に適用する場合、高周波成分(末梢部の造影剤濃度)の増加の後、高周波成分の減少を判定して検知することにより、静脈への造影剤の流入を検知することが可能である。
【0103】
また、第2の実施形態を第1の実施形態の第2変形例に適用する場合には、図13及び図14(a)~(b)に示すように、ステップST21~ST24は、第2の実施形態と同様に実行される。なお、ステップST24で決定された切替えタイミングは、第1切替えタイミングと呼んでもよい。すなわち、ステップST24において、切替えタイミング決定回路25eは、X線画像の撮像対象部位における動脈の起始部の照射条件を動脈の末梢部の照射条件に切替えるように第1切替えタイミングを決定する。ステップST24の後、ステップST25~ST26は、第2の実施形態と同様に実行される。
【0104】
ステップST26の後、ステップST27において、切替えタイミング決定回路25eは、ステップST26で撮像されたX線画像にFFTを実行することにより、X線画像の周波数解析の結果を得る。
【0105】
ステップST28において、図14(c)に示すように、切替えタイミング決定回路25eは、ステップST27で得られたX線画像の周波数解析の結果に基づいて、X線画像の周波数f1の高周波成分が閾値v1未満か否かを判定する。判定の結果、否の場合には、ステップST26に戻る。これにより、ステップST26~ST28の処理がX線画像のフレーム単位で実行される。判定の結果、高周波成分が閾値v1以上の場合にはステップST29に移行する。
【0106】
ステップST29において、切替えタイミング決定回路25eは、ステップST27で得られたX線画像の周波数解析の結果に基づいて、X線画像の周波数f2の低周波成分が閾値v2未満か否かを判定する。判定の結果、否の場合には、ステップST26に戻る。これにより、ステップST26~ST29の処理がX線画像のフレーム単位で実行される。判定の結果、低周波成分が閾値v2未満の場合にはステップST30に移行する。
【0107】
ステップST30において、切替えタイミング決定回路25eは、ステップST29の低周波成分が閾値未満である旨の判定結果を得ると、即座に照射条件を切替えるように、照射条件の切替えタイミングを決定する。しかる後、切替えタイミング決定回路25eは、高い管電圧を含む照射条件から低い管電圧を含む照射条件に切り替えるように、照射条件の切替え指令をシステム制御部22に出力する。
【0108】
ステップST31において、システム制御部22は、照射条件の切替え指令を受けると、照射条件を切替える。
【0109】
ステップST32において、X線診断装置1は、切り替えた照射条件でX線画像を撮像する。
【0110】
このように、第2の実施形態を第1の実施形態の第2変形例にも適用できる。
【0111】
<第3の実施形態>
次に、第3の実施形態について説明する。
第3の実施形態は、第1の実施形態の第1変形例と、第2の実施形態の第1変形例のいずれかにおいて、動脈相と静脈相との間で照射条件を切り替える場合に、切替えられる照射条件が、X線管3aによるX線の照射レートを含む構成である。
【0112】
具体的には、切替えタイミング決定回路25eは、図15に示すように、動脈相と静脈相との間で照射条件を切り替える場合に、管電圧を変更せずに、高いX線照射レートを含む照射条件から低いX線照射レートを含む照射条件に切り替える構成となっている。ここで、X線照射レートは、1秒間当たりのX線照射回数である。なお、切替えタイミング決定回路25eは、図15に示した統計情報に基づく場合に限らず、周波数解析の結果に基づいて静脈に造影剤が流入した旨を検知した場合にX線照射レートを切替えてもよい。
【0113】
他の構成は、前述した2つの第1変形例のうちの適用する変形例と同様である。
以上のような構成によれば、切替えられる照射条件が、X線管によるX線の照射レートを含むことにより、動脈相と静脈相との間で照射条件を切り替える場合に、管電圧を変更せずに、X線照射レートを変更することができる。
【0114】
これに加え、第3の実施形態によれば、第1の実施形態の第1変形例と、第2の実施形態の第1変形例とのうち、適用する変形例と同様の作用効果を得ることができる。従って、動脈相と静脈相との間でX線照射レートを自動的に切替えることができるので、術者の煩わしさを軽減すると共に、造影剤流入直後の被検体の被ばく低減を確実に実施することができる。
【0115】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、X線検出器による検出結果に基づくX線画像に基づいて、X線管によるX線の照射条件の切替えタイミングを決定する。従って、術者の煩雑な操作無しに、造影剤が抹消側の血管にある場合においても必要なコントラストを確保できる。
【0116】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0117】
1 X線診断装置
3 X線発生部
3a X線管
3b X線絞り器
5 X線検出器
7 寝台
9 Cアーム
11 X線コントローラ
13 高電圧発生装置
13a X線制御部
13b 高電圧発生器
15 Cアーム・寝台機構制御部
21 位置データメモリ
22 システム制御部
23 入力インタフェース
24 ディスプレイ
25 画像データ処理部
25a 画像演算回路
25b 画像データメモリ
25c 表示用データ生成回路
25d 領域設定部
25e 切替えタイミング決定回路
図1
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