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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-05
(45)【発行日】2022-08-16
(54)【発明の名称】化粧料塗布具
(51)【国際特許分類】
   A45D 34/04 20060101AFI20220808BHJP
【FI】
A45D34/04 510A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018165040
(22)【出願日】2018-09-04
(65)【公開番号】P2019076698
(43)【公開日】2019-05-23
【審査請求日】2021-04-14
(31)【優先権主張番号】P 2017204416
(32)【優先日】2017-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000145862
【氏名又は名称】株式会社コーセー
(74)【代理人】
【識別番号】110000590
【氏名又は名称】特許業務法人 小野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂田 修
【審査官】遠藤 邦喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-128488(JP,A)
【文献】特開平02-202448(JP,A)
【文献】特開2014-208425(JP,A)
【文献】特開平08-224121(JP,A)
【文献】実開昭63-039476(JP,U)
【文献】実開昭55-130611(JP,U)
【文献】特開平11-011512(JP,A)
【文献】特開2017-012897(JP,A)
【文献】特開2012-210959(JP,A)
【文献】実開昭50-118070(JP,U)
【文献】米国特許第05735623(US,A)
【文献】中国特許出願公開第1134802(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0315645(US,A1)
【文献】特開平07-303520(JP,A)
【文献】特開2015-167638(JP,A)
【文献】特開平10-262728(JP,A)
【文献】特開2004-202163(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 34/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の長さの中空筒状に形成された持ち手部と、該持ち手部の中空部に挿通され、両端の一部が持ち手部外へと突出するとともに、持ち手部に対して軸方向に一定幅で摺動可能に取り付けられたシャフトと、該シャフトの先端に取り付けられ、先端部に塗布面を備えた塗布部と、該シャフトの一部に着脱可能に取り付けられた分銅とを備えた略垂直姿勢で使用する化粧料塗布具。
【請求項2】
前記塗布部の塗布面には人の指紋パターンを模した溝部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の化粧料塗布具。
【請求項3】
一つないし複数の前記分銅が、前記シャフトの後端部側に着脱可能に取り付けられたことを特徴とする請求項1または2に記載の化粧料塗布具。
【請求項4】
前記シャフトは、持ち手部に対し軸回転不能に取り付けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の化粧料塗布具。
【請求項5】
前記塗布部は、前記シャフトの先端に取り付けるための基部と、該基部に対して取り付けられた先端チップとからなることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の化粧料塗布具。
【請求項6】
前記先端チップは、平面視で正方形に形成されている台座部より下方へ略椀状に突出する膨出部を備え、さらに、該膨出部の先端部に平面状に形成された塗布面を備えることを特徴とする請求項5に記載の化粧料塗布具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧料を常に一定の荷重で塗布することが可能な化粧料塗布具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の化粧料業界において、ロドデノールによる白斑症状などが認知されるのに伴い、化粧料の連用試験や、重ね付け試験等への関心が高まっているが、化粧料中の有効成分の経皮吸収を測定する試験では、被験物質である化粧料を指で塗布し、あるいは、ピペットの先やスパチュラ等で塗りひろげることが広く行われている。
【0003】
しかしながら、これらの従来の塗布方法によると、常に一定の荷重で塗布することが困難なため、定量的な塗布膜を高い再現性で得ることが困難であった。
【0004】
その点、特許文献1には、スティック状化粧料を、水平方向に往復運動する装置に取り付け、一定圧力をかけつつ、塗布時間間隔を段々と広げながら被塗布体に塗布する方法が開示されている。
【0005】
しかしながら、かかるスティック状化粧料の評価方法を実施するには、まず、スティック状化粧料を、水平方向に運動する装置に取り付け、一定圧力をかけつつ塗布することのできる大掛かりな装置を準備することが必要であった。
【0006】
さらに、使用時に指の先端で塗布する化粧料の場合、実験的にピペット先端などにより塗布する方法では、指による摩擦が再現できず、また指で塗布する方法でも、サンプルを塗布する際はゴム手袋などで手を保護しているため、指紋による摩擦を再現できず、実際の化粧膜に近い状態を得ることが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2011-99811
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明は、従来の化粧料塗布具のかかる欠点を克服し、大掛かりな装置を必要とせず、簡易に定量的な塗布膜を高い再現性で得ることができ、且つ、指紋による塗布時の摩擦を再現することで、より実際の化粧膜に近い状態を得ることができる化粧料塗布具の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するものであり、所定の長さの中空筒状に形成された持ち手部と、該持ち手部の中空部に挿通され、その両端の一部が持ち手部外へと突出するとともに、持ち手部に対して軸方向に一定幅で摺動可能に取り付けられたシャフトと、該シャフトの先端に取り付けられ、その先端部に塗布面を備えた塗布部と、該シャフトの一部に着脱可能に取り付けられた分銅とを備えた化粧料塗布具である。
【0010】
また本発明は、前記塗布部の塗布面に人の指紋パターンを模した溝部が形成されていることを特徴とする化粧料塗布具である。
【0011】
また本発明は、一つないし複数の前記分銅が、前記シャフトに脱着可能に取り付けられたことを特徴とする化粧料塗布具である。
【発明の効果】
【0012】
本発明にかかる化粧料塗布具は、持ち手部に対して軸方向に一定幅で摺動可能に取り付けられたシャフトに分銅を取り付けることにより、シャフトの先端に取り付けられた塗布部に一定荷重をかけた状態で化粧料を塗布することが可能となり、定量的な塗布膜を高い再現性で得ることができる。
【0013】
また、本発明にかかる化粧料塗布具で、前記塗布部の塗布面に人の指紋パターンを模した溝部が形成されたものは、指紋による塗布時の摩擦を再現することで、より実際の化粧膜に近い状態を得ることができる。
【0014】
また、本発明にかかる化粧料塗布具で、一つないし複数の前記分銅が、前記シャフトに脱着可能に取り付けられたものは、分銅の数により荷重を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】(a)本発明に係る化粧料塗布具の正面図、(b)同平面図、(c)同底面図
図2】(a)本発明に係る化粧料塗布具の先端チップの正面図、(b)同底面図
図3】(a)本発明に係る化粧料塗布具の異なる実施態様における先端チップの正面図、(b)同底面図
図4】本発明に係る化粧料塗布具の異なる実施態様における分銅の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の化粧料塗布具の実施態様を、図面に基づいて具体的に説明する。なお、本発明はこれら実施態様に何ら制約されるものではない。
【0017】
本発明の化粧料塗布具は、所定の長さの中空筒状に形成された持ち手部1と、該持ち手部1に対して軸方向に一定幅で摺動可能に取り付けられた棒状のシャフト2と、該シャフト2の先端に取り付けられた塗布部3と、該シャフト2の一部に着脱可能に取り付けられた分銅4とを備える。以下、各部材について詳述する。
【0018】
持ち手部1は、軸方向に穿設された中空部を有する所定の長さの筒状に形成されており、本実施態様では、平面視で角が斜めに切り落とされた角柱状に形成されている。なお、かかる持ち手1の形状に関しては、その他の形状、例えば円柱状としても良いが、使用時に簡便に化粧料塗布具の正面が認識しやすい角柱状とすることが好ましい。また、持ち手部1の寸法は任意に決めることができるが、指で保持しやすいサイズ、具体的には太さ10~20mm、全長60~100mm程度で形成することが好ましい。
【0019】
持ち手部1の中空部には、少なくとも持ち手部1よりも長い棒状に形成されたシャフト2が挿通されており、図1に示すように、シャフト2の両端側は持ち手部1の外側へ突出するように取り付けられている。シャフト2の寸法は任意に決めることができるが、少なくともその全長は持ち手部1の全長よりも長く、且つ、その両端側に塗布部3と分銅4とを取り付けた状態で、軸方向に一定幅で摺動できるだけの余裕があることが好ましく、具体的には全長150mm~200mm程度であることが好ましい。
【0020】
シャフト2は、持ち手部1に対し軸方向に一定幅で摺動可能に、且つ、持ち手部1に対して軸回転不能に取り付けられている。そして、軸方向の摺動については持ち手部1とシャフト2の間の摩擦抵抗を極力減らすことが望ましく、このように、持ち手部1とシャフト2の間の摩擦抵抗を減らすとともに、シャフト2の軸回転を防止する手段としては、回転防止機構を備えたボールスプライン、ボールスライダー、ボールブッシュ、リニアブッシュ等の公知の技術を採用することができる。
【0021】
シャフト2の先端には塗布部3が設けられている。本実施態様における塗布部3は、シャフト2の先端に塗布部3を取り付けるための基部32と、該基部32に対して取り付けられた先端チップ31とからなる。基部32は、シャフト2の先端を挿入可能な円筒状に形成された本体の下端に、平面視で正方形の板状部を備え、シャフト2を本体へ挿入した状態で固定するためのネジ部321を備える。
【0022】
基部32の板状部の底面には、先端チップ31が取り付けられている。図2に示すように、先端チップ31は、基部32の板状部と平面視で略同一の正方形に形成されている台座部311と、該台座部311より下方へ略椀状に突出する膨出部312を備え、さらに、その先端部には平面状に形成された塗布面313を備える。なお、本実施態様のように、先端チップ31の台座部311を正方形に形成することにより、使用時に化粧料塗布具の正面が認識しやすくなるため、好ましい。
【0023】
膨出部312の形状は特に本実施態様のものに限定されないが、本実施態様のように略椀状に形成することにより、塗布時に塗布面313と膨出部312の角部により化粧料が掻き取られることもなく、塗布面313の下へ適切に化粧料が取り込まれるため、好ましい。
【0024】
塗布面313は、底面視で略円形に形成することが好ましく、その直径は4~15mmが好ましい。さらに、塗布面313の表面には、人の指紋パターンを模した溝部314が複数形成されている。この溝部314は、人の指で化粧料を塗布した場合の摩擦抵抗を再現できる幾何学パターンであればよく、本実施態様では、複数の直線状の溝が平行して設けられている。
【0025】
先端チップ31は、指による塗布を再現するために弾性材料により形成することが好ましく、具体的には、天然ゴム、合成ゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。さらに、その用途から耐薬品性に優れたものが好ましい。
【0026】
また、先端チップ31は複数種類を用意し、試験内容に応じて交換可能としても良い。例えば、図2、3は、交換可能な2つの先端チップ3、3’を示す。これらの先端チップは、塗布面313、313’の直径が異なっており、具体的には、先端チップ3の塗布面313はφ5mm、先端チップ3’の塗布面313’はφ9mmに形成されている。なお、先端チップ31を交換可能とする場合、先端チップ31の台座311部分を、基部32の板状部に対して、両面テープやその他の着脱可能な手段で固定すればよい。なお、本実施態様では、先端チップ31は基部32を介してシャフト2に取り付けられているが、かかる基部32を介することなく先端チップ31を直接シャフト2に取り付けてもよく、さらに、先端チップ31と基部32を一体に形成し、それらの一体に形成した塗布部3をシャフト2に固定、または、着脱可能に取り付けてもよい。
【0027】
また、シャフト2の後端側には、一つないし複数の分銅4が着脱可能に設けられている。本実施態様の分銅4は、その中心にシャフト2を挿通可能な穴部41を有する環状に形成されており、シャフト2を挿通した状態で分銅4をシャフト2に対して固定するためのネジ部42を備える。
【0028】
かかる分銅4は、シャフト2に対して一つないし複数個取り付けることにより荷重を調整することができる。例えば、分銅4をひとつ当たり20gとした場合、分銅4の数nに応じて、20g×nの荷重をかけることができる。なお、厳密には、分銅4×nの荷重に加え、シャフト2及びシャフト2に付属する取り付けられる塗布部3の重さも荷重される。
【0029】
持ち手部1は、シャフト2に取り付けられた塗布部3と分銅4の間において、軸方向に摺動可能であるが、本実施態様では、基部32の上端側に取り付けられた摺動規制手段5と、分銅4の下端側に取り付けられた摺動規制手段6の間において、摺動することができる。すなわち、持ち手部1に対してシャフト2の摺動可能な幅は、摺動規制手段5と摺動規制手段6の間の距離から持ち手部1の全長を差し引いた距離に制限される。かかる摺動規制手段5、6としては、例えば、シャフト2の任意の位置に固定されたOリング等を好適に使用することができる。なお、本実施態様では、摺動規制手段5は基部32に対して、また、摺動規制手段6は分銅4に対して接するように設けられているが、必ずしもこの位置に設ける必要はなく、摺動規制手段5、6はそれぞれ基部32と分銅4から離れたシャフト2の任意の部分に設けてもよい。
【0030】
さらに、本実施態様の分銅4はシャフト2の後端より着脱されるが、分銅4の取付位置はこの場所に限らず、塗布部3を設けた先端側に着脱可能としても良く、具体的には、本実施態様における基部32と持ち手部1の間のシャフト2に取り付けても良い。その場合、シャフト2の後端側には、摺動規制手段6などのシャフト2の先端側への摺動を規制する手段のみ設ければよい。
【0031】
分銅4をシャフト2の先端側へ着脱する場合は、シャフト2の先端に設けた塗布部3が邪魔となるため、シャフト2の端部を穴部41に挿通することができない。したがって、シャフト2の途中から着脱可能とする必要があり、図4の例に示すように、分銅4の周壁から中心までをU字形の溝状に切り欠いて、かかるU字溝43を通して分銅4の中心にシャフト2を移動させ、固定してもよい。このように、分銅4を塗布部3と同じようにシャフト2の先端側へ取り付けることにより、使用時に重心が低くなり安定する。
【0032】
以下に、本発明にかかる化粧料塗布具の使用方法について説明する。まず、シャフト2に分銅4をひとつないし複数取り付け、任意の荷重を設定する。次に、塗布部3の塗布面313に化粧料を付着させ、持ち手部1を保持してなるべく垂直の姿勢を維持したまま、塗布面3を被塗布面へ載置する。
【0033】
その状態で、持ち手部1が上下の摺動規制手段5、6のいずれとも接しない状態の高さになるように調整する。このように、持ち手部1が摺動規制手段5、6のいずれとも接しない状態において、塗布部3の塗布面313には、分銅4、シャフト2、および塗布部3の重さが適切に荷重された状態となる。
【0034】
そして、持ち手部1を垂直且つ、摺動規制手段5、6のいずれとも接しない状態で被塗布面に対して持ち手部1を水平に往復移動させ、化粧料を塗布する。なお、持ち手部1の移動方向は、塗布面313に設けられた溝部314が本実施態様のように直線状に形成されている場合、かかる直線とは垂直方向に往復移動させる。すなわち、図1(c)では溝部314は縦方向に形成されているため、持ち手部1を移動させる方向は、図の左右方向となる。なお、溝部314の向きを移動方向と垂直に調整するためには、角柱の持ち手部1や平面視で正方形の先端チップ31の台座部311の向きを調整すればよい。
【0035】
化粧料を塗布する際、持ち手部1を往復移動させる際に手が上下にブレることがあっても、かかるブレは持ち手部1がシャフト2に対して上下に摺動することで吸収されるため、塗布面313にかかる荷重は一定のままである。また、被塗布面に凹凸がある場合も、かかる凹凸に追従してシャフト2が上下に摺動するため、塗布面313にかかる荷重は一定のままである。
【0036】
そして、塗布面313に設けられた溝部314が被塗布面との間に摩擦を生じさせるため、これにより、指で塗布した際の指紋による摩擦を再現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の化粧料塗布具は、化粧水、乳液、クリーム、美容液、リキッドファンデーション、クリーミーファンデーション、BBクリーム等の液状化粧料の塗布具として有効であるが、被塗布物はこれに限定されず、液状で塗布されうるものであればよく、例えば、医薬品、医薬部外品、塗料等にも好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 … … 筒体
2 … … シャフト
3 … … 塗布部
4 … … 分銅
5 … … 摺動規制手段
6 … … 摺動規制手段
31 … … 先端チップ
31’ … … 先端チップ
32 … … 基部
41 … … 穴部
42 … … ネジ部
43 … … U字溝
311 … … 台座部
312 … … 膨出部
313 … … 塗布面
314 … … 溝部
311’ … … 台座部
312’ … … 膨出部
313’ … … 塗布面
314’ … … 溝部
321 … … ネジ部
図1
図2
図3
図4