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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-05
(45)【発行日】2022-08-16
(54)【発明の名称】近接センサ
(51)【国際特許分類】
   H01H 35/00 20060101AFI20220808BHJP
【FI】
H01H35/00 C
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2018169778
(22)【出願日】2018-09-11
(65)【公開番号】P2020042986
(43)【公開日】2020-03-19
【審査請求日】2021-08-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】特許業務法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上平 祥嗣
【審査官】片岡 弘之
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-301522(JP,A)
【文献】特開平06-241788(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/146938(US,A1)
【文献】特開2017-005428(JP,A)
【文献】特開2015-078947(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/378013(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象に光を照射する発光部と、第1クロストーク特性を持ち第1検出範囲に存在する検出対象からの外部反射光を検出する第1受光部と、前記第1クロストーク特性と異なる第2クロストーク特性を持ち前記第1検出範囲よりも遠方の第2検出範囲に存在する検出対象からの外部反射光を検出する第2受光部と、前記第1受光部への内部反射光や内部漏洩光を軽減する遮光壁を有する近接センサ。
【請求項2】
検出対象に光を照射する発光部と、第1クロストーク特性を持ち第1検出範囲に存在する検出対象からの外部反射光を検出する第1受光部と、前記第1クロストーク特性と異なる第2クロストーク特性を持ち前記第1検出範囲よりも遠方の第2検出範囲に存在する検出対象からの外部反射光を検出する第2受光部と、を有し、
前記第2受光部の出力積分時間は、前記第1受光部の出力積分時間よりも長い、近接センサ。
【請求項3】
検出対象に光を照射する発光部と、第1クロストーク特性を持ち第1検出範囲に存在する検出対象からの外部反射光を検出する第1受光部と、前記第1クロストーク特性と異なる第2クロストーク特性を持ち前記第1検出範囲よりも遠方の第2検出範囲に存在する検出対象からの外部反射光を検出する第2受光部と、を有し、
前記第2受光部の出力積算回数は、前記第1受光部の出力積算回数よりも多い、近接センサ。
【請求項4】
検出対象に光を照射する発光部と、第1クロストーク特性を持ち第1検出範囲に存在する検出対象からの外部反射光を検出する第1受光部と、前記第1クロストーク特性と異なる第2クロストーク特性を持ち前記第1検出範囲よりも遠方の第2検出範囲に存在する検出対象からの外部反射光を検出する第2受光部と、を有し、
前記発光部、前記第1受光部、及び、前記第2受光部は、それぞれ、個別のチップに形成されている、近接センサ。
【請求項5】
検出対象に光を照射する発光部と、第1クロストーク特性を持ち第1検出範囲に存在する検出対象からの外部反射光を検出する第1受光部と、前記第1クロストーク特性と異なる第2クロストーク特性を持ち前記第1検出範囲よりも遠方の第2検出範囲に存在する検出対象からの外部反射光を検出する第2受光部と、前記第2受光部への内部反射光や内部漏洩光を遮断する遮光壁と、を有し、
前記第2受光部は、前記遮光壁の下面よりも低い位置に設けられている、近接センサ。
【請求項6】
前記遮光壁は、前記第1受光部の上面よりも高い位置まで設けられている、請求項5に記載の近接センサ。
【請求項7】
前記遮光壁の下面は、前記第2受光部が形成されるチップの上面と接している、請求項5又は6に記載の近接センサ。
【請求項8】
断面視において、前記第1受光部が形成されるチップ、前記遮光壁が形成される構造部材、及び、前記第2受光部が形成されるチップは、縦方向に重なっている、請求項7に記載の近接センサ。
【請求項9】
断面視において、前記発光部が形成されるチップ、前記遮光壁が形成される構造部材、及び、前記第2受光部が形成されるチップは、縦方向に重なっている、請求項7又は8に記載の近接センサ。
【請求項10】
検出対象に光を照射する発光部と、第1クロストーク特性を持ち第1検出範囲に存在する検出対象からの外部反射光を検出する第1受光部と、前記第1クロストーク特性と異なる第2クロストーク特性を持ち前記第1検出範囲よりも遠方の第2検出範囲に存在する検出対象からの外部反射光を検出する第2受光部と、を有し、
前記発光部から前記第1受光部の前記発光部側の端辺までの距離をd1とし、前記発光部から前記第2受光部の前記発光部側の端辺までの距離をd2として、距離比d2/d1が3以上である、近接センサ。
【請求項11】
検出対象に光を照射する発光部と、第1クロストーク特性を持ち第1検出範囲に存在する検出対象からの外部反射光を検出する第1受光部と、前記第1クロストーク特性と異なる第2クロストーク特性を持ち前記第1検出範囲よりも遠方の第2検出範囲に存在する検出対象からの外部反射光を検出する第2受光部と、を有し、
前記発光部から前記第1受光部の前記発光部とは逆側の端辺までの距離をd1’とし、前記発光部から前記第2受光部の前記発光部とは逆側の端辺までの距離をd2’として、距離比d2’/d1’が12以下である、近接センサ。
【請求項12】
前記第2受光部から透過窓までの距離は、前記第1受光部から前記透過窓までの距離よりも長い、請求項1~11のいずれか一項に記載の近接センサ。
【請求項13】
前記第2受光部から前記発光部までの距離は、前記第1受光部から前記発光部までの距離よりも長い、請求項1~12のいずれか一項に記載の近接センサ。
【請求項14】
前記発光部は、垂直共振器面発光レーザである、請求項1~13のいずれか一項に記載の近接センサ。
【請求項15】
TOF[Time-of-Flight]方式により検出対象が前記第2検出範囲に存在するか否かを判定する、請求項1~14のいずれか一項に記載の近接センサ。
【請求項16】
前記発光部と前記第1受光部は、共通のチップに形成されている、請求項1~3及び5~11のいずれか一項に記載の近接センサ。
【請求項17】
前記第1受光部と前記第2受光部は、共通のチップに形成されている、請求項1~3及び5~11のいずれか一項に記載の近接センサ。
【請求項18】
前記発光部、前記第1受光部、及び、前記第2受光部は、共通のチップに形成されている、請求項1~3及び5~11のいずれか一項に記載の近接センサ。
【請求項19】
前記第1検出範囲は0~5cmであり、前記第2検出範囲は3~60cmである、請求項1~18のいずれか一項に記載の近接センサ。
【請求項20】
前記第2受光部は、前記第1受光部の下面よりも低い位置に設けられている、請求項1~19のいずれか一項に記載の近接センサ。
【請求項21】
請求項1~20のいずれか一項に記載の近接センサと、
前記近接センサに対向する透過窓を備えた筐体と、
を有する電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書中に開示されている発明は、光学式の近接センサに関する。
【背景技術】
【0002】
光学式の近接センサは、これを搭載するセット(スマートフォンなど)の外部に向けて赤外光を照射し、セットの外部から戻ってくる反射光を検出することにより、検出対象の近接有無(=検出対象による反射有無)を検出する。
【0003】
なお、上記に関連する従来技術の一例としては、特許文献1を挙げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開第2015/0378013号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の近接センサでは、近距離検出動作(0~5cm程度)と中長距離検出動作(3~60cm程度)を両立することが難しかった。
【0006】
本明細書中に開示されている発明は、本願の発明者により見出された上記課題に鑑み、近距離検出動作と中長距離検出動作を両立することのできる近接センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書中に開示されている近接センサは、検出対象に光を照射する発光部と、第1クロストーク特性を持ち第1検出範囲に存在する検出対象からの外部反射光を検出する第1受光部と、前記第1クロストーク特性と異なる第2クロストーク特性を持ち前記第1検出範囲よりも遠方の第2検出範囲に存在する検出対象からの外部反射光を検出する第2受光部と、を有する構成(第1の構成)とされている。
【0008】
なお、第1の構成から成る近接センサは、前記第2受光部への内部反射光や内部漏洩光を遮断する第1遮光壁をさらに有する構成(第2の構成)にするとよい。
【0009】
また、第1または第2の構成から成る近接センサは、前記第1受光部への内部反射光や内部漏洩光を軽減する第2遮光壁をさらに有する構成(第3の構成)にするとよい。
【0010】
また、第1~第3いずれかの構成から成る近接センサにおいて、前記第2受光部から透過窓までの距離は、前記第1受光部から前記透過窓までの距離よりも長い構成(第4の構成)にするとよい。
【0011】
また、第1~第4いずれかの構成から成る近接センサにおいて、前記第2受光部から前記発光部までの距離は、前記第1受光部から前記発光部までの距離よりも長い構成(第5の構成)にするとよい。
【0012】
また、第1~第5いずれかの構成から成る近接センサにおいて、前記発光部は、垂直共振器面発光レーザである構成(第6の構成)にするとよい。
【0013】
また、第1~第6いずれかの構成から成る近接センサにおいて、前記第2受光部の出力積分時間は、前記第1受光部の出力積分時間より長い構成(第7の構成)にするとよい。
【0014】
また、第1~第7いずれかの構成から成る近接センサにおいて、前記第2受光部の出力積算回数は、前記第1受光部の出力積算回数より多い構成(第8の構成)にするとよい。
【0015】
また、第1~第8いずれかの構成から成る近接センサは、TOF[Time-of-Flight]方式により検出対象が前記第2検出範囲に存在するか否かを判定する構成(第9の構成)にするとよい。
【0016】
また、第1~第9いずれかの構成から成る近接センサにおいて、前記発光部、前記第1受光部、及び、前記第2受光部は、それぞれ、個別のチップに形成されている構成(第10の構成)にするとよい。
【0017】
また、第1~第9いずれかの構成から成る近接センサにおいて、前記発光部と前記第1受光部は、共通のチップに形成されている構成(第11の構成)にしてもよい。
【0018】
また、第1~第9いずれかの構成から成る近接センサにおいて、前記第1受光部と前記第2受光部は、共通のチップに形成されている構成(第12の構成)にしてもよい。
【0019】
また、第1~第9いずれかの構成から成る近接センサにおいて、前記発光部、前記第1受光部、及び、前記第2受光部は、共通のチップに形成されている構成(第13の構成)にしてもよい。
【0020】
また、第1~第13いずれかの構成から成る近接センサにおいて、前記第1検出範囲は0~5cmであり、前記第2検出範囲は3~60cmである構成(第14の構成)にするとよい。
【0021】
また、第2の構成から成る近接センサにおいて、前記第1遮光壁は、前記第1受光部の上面よりも高い位置まで設けられている構成(第15の構成)にするとよい。
【0022】
また、第1~第15いずれかの構成から成る近接センサにおいて、前記第2受光部は、前記第1受光部の下面よりも低い位置に設けられた構成(第16の構成)にするとよい。
【0023】
また、第2または第15の構成から成る近接センサにおいて、前記第2受光部は、前記第1遮光壁の下面よりも低い位置に設けられている構成(第17の構成)にするとよい。
【0024】
また、第17の構成から成る近接センサにおいて、前記第1遮光壁の下面は、前記第2受光部が形成されるチップの上面と接している構成(第18の構成)にするとよい。
【0025】
また、第18の構成から成る近接センサの断面視において、前記第1受光部が形成されるチップ、前記第1遮光壁が形成される構造部材、及び、前記第2受光部が形成されるチップは、縦方向に重なっている構成(第19の構成)にするとよい。
【0026】
また、第18または第19の構成から成る近接センサの断面視において、前記発光部が形成されるチップ、前記第1遮光壁が形成される構造部材、及び、前記第2受光部が形成されるチップは、縦方向に重なっている構成(第20の構成)にするとよい。
【0027】
また、第1~第20いずれかの構成から成る近接センサは、前記発光部から前記第1受光部の前記発光部側の端辺までの距離をd1とし、前記発光部から前記第2受光部の前記発光部側の端辺までの距離をd2として、距離比d2/d1が3以上である構成(第21の構成)にするとよい。
【0028】
また、第1~第21の構成から成る近接センサは、前記発光部から前記第1受光部の前記発光部とは逆側の端辺までの距離をd1’とし、前記発光部から前記第2受光部の前記発光部とは逆側の端辺までの距離をd2’として、距離比d2’/d1’が12以下である構成(第22の構成)にするとよい。
【0029】
また、本明細書中に開示されている電子機器は、上記第1~第22いずれかの構成から成る近接センサと、前記近接センサに対向する透過窓を備えた筐体と、を有する構成(第23の構成)とされている。
【発明の効果】
【0030】
本明細書中に開示されている発明によれば、近距離検出動作と中長距離検出動作を両立することのできる近接センサを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】第1実施形態の近接センサを搭載した電子機器の一構成例を示す図
図2】近距離検出動作の一例を示す図
図3】中長距離検出動作の一例を示す図
図4】発光部及び受光部それぞれの動作シーケンスを示す図
図5】近接センサの第2実施形態を示す図
図6】近接センサの第3実施形態を示す図
図7】近接センサの第4実施形態を示す図
図8】近接センサの第5実施形態を示す図
図9】近接センサの第6実施形態を示す図
図10】スマートフォンの外観図
【発明を実施するための形態】
【0032】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の近接センサを搭載した電子機器を模式的に示す断面図である。本構成例の電子機器1は、光学式の近接センサ100と、これを担持する筐体200を有する。筐体200には、近接センサ100に対向する透過窓210が形成されている。なお、電子機器1としては、スマートフォン(詳細は後述)などを想定することができる。
【0033】
近接センサ100は、これを搭載する電子機器1の外部に向けて光を出射し、電子機器1の外部から戻ってくる反射光を検出することにより、検出対象の近接有無(=検出対象による反射有無)を検出するモジュールであり、発光部110と、第1受光部120と、第2受光部130と、構造部材140と、を有する。
【0034】
なお、発光部110、第1受光部120、及び、第2受光部130は、それぞれ、個別のチップ151~153に集積化されている。
【0035】
発光部110は、電子機器1の外部に向けて光(例えば、波長650~1300nmの赤外光)を出射する発光デバイスであり、チップ151に集積化されている。発光部110としては、例えば、出射光の共振方向が基板面に対して垂直な垂直共振器面発光レーザ(VCSEL[Vertical Cavity Surface Emitting LASER])を用いるとよい。
【0036】
VCSELは、発光ダイオードと比べて出射光の指向角が狭い(一般には基板面に垂直な方向に対して5~20°)。従って、発光部110としてVCSELを用いれば、近接センサ100の内部を伝わる内部漏洩光に起因したクロストークを考慮せずに済むので、発光部110と第1受光部120との距離d21、及び、発光部110と第2受光部120との距離d22を縮めることが可能となる。これにより、透過窓210の直径を小さくすることができるので、電子機器1の意匠性を高めることが可能となる。また、発光部110の出射光を収束させるための集光部材も不要となる。
【0037】
ただし、発光部110は、VCSELに限らず、共振器を外部に持つ外部共振器型垂直面発光レーザ(VECSEL[Vertical External Cavity Surface Emitting Laser])を用いてもよいし、若しくは、へき開した端面から光を出射する端面発光レーザ(EEL[Edge Emitting Laser])を用いてもよい。若しくは、発光ダイオード(LED[Light Emitting Diode])を用いることも可能である。
【0038】
第1受光部120は、検出対象が第1検出範囲(例えば0~5cm程度)に存在するか否かを検出する近距離検出動作(NPS[Near Proximity Sensing])用の受光デバイスであり、チップ152に集積化されている。
【0039】
第2受光部130は、検出対象が第1検出範囲よりも遠方の第2検出範囲(例えば3~60cm程度)に存在するか否かを検出する中長距離検出動作(FPS[Far Proximity Sensing])用の受光デバイスであり、チップ153に集積化されている。
【0040】
なお、第1受光部120及び第2受光部130としては、それぞれ、発光部110が出射する光の波長帯域にピーク感度を持ち、その受光強度に応じた電流信号を出力するフォトダイオードやフォトトランジスタなどを用いるとよい。また、チップ152及び153には、それぞれ、不図示の信号処理回路(電流アンプ、フィルタ、または、ADコンバータなど)を集積化しておくことが望ましい。
【0041】
構造部材140は、近接センサ100を形成する躯体(骨組)であり、例えば、ガラスエポキシ等の硬質樹脂またはセラミックから成る。
【0042】
なお、第2受光部130を集積化したチップ153は、透過窓210から第2受光部130に至る井戸型導光領域αを除いて、その表面及び側面がいずれも構造部材140により覆われている。
【0043】
また、チップ153の上部に形成された構造部材140の表面側(=透過窓210と対向する一面側)には、枡形状(凹形状)のチップ搭載領域βが形成されている。なお、発光部110を集積化したチップ151、及び、第1受光部120を集積化したチップ152は、それぞれ、チップ搭載領域βの内部に並べて載置されている。
【0044】
また、井戸型導光領域αとチップ搭載領域βは、それぞれ、図示しない透光性の樹脂部材(例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ユリア樹脂など)により封止しておけばよい。
【0045】
上記したように、本実施形態の近接センサ100では、下段に第2受光部130を配置し、上段に発光部110と第1受光部120をそれぞれ配置した多段構造(縦積み構造)が採用されている。その結果、第2受光部130から透過窓210までの距離d12は、第1受光部120から透過窓210までの距離d11よりも長くなっている。
【0046】
また、水平方向(=紙面左右方向)の配置に着目すると、紙面右側から左側に向けて、発光部110、第1受光部120、及び、第2受光部130の順序で並べられている。従って、第2受光部130から発光部110までの距離d22は、第1受光部120から発光部110までの距離d21よりも長くなっている。
【0047】
このようなデバイス構造は、近距離検出動作に用いられる第1受光部120と、中長距離検出動作に用いられる第2受光部130について、それぞれのクロストーク特性を最適化するために採用されている。
【0048】
以下では、近接センサ100による近距離検出動作と中長距離検出動作について、それぞれ、図示を交えながら詳細に説明する。
【0049】
<近距離検出動作(NPS)>
図2は、近接センサ100による近距離検出動作の一例を示す図である。検出対象2が透過窓210から第1検出範囲D1(例えば0cm≦D1≦5cm)に存在する場合、発光部110から出射されて検出対象2に反射された光が、外部反射光L1として第1受光部120で検出される。一方、検出対象2が第1検出範囲D1に存在しない場合には、第1受光部120で外部反射光L1が検出されなくなる。従って、第1受光部120による外部反射光L1の検出有無に応じて、検出対象2の近距離検出を行うことができる。
【0050】
ところで、近接センサ100内部でのクロストークは、主に、透過窓210から戻ってくる内部反射光L2と、近接センサ100の内部を伝わる内部漏洩光L3により生じる。
【0051】
なお、内部漏洩光L3に起因するクロストークについては、VCSELの採用、受発光間距離の調整、ないしは、遮光壁の設置などにより、ほぼ0レベルまで低減することが可能である。
【0052】
また、内部反射光L2に起因するクロストークについては、第1受光部120から透過窓210までの距離d11を調整したり、遮光壁を設けたりすることにより、ほぼ0レベルまで低減することが可能である。ただし、赤外光を反射しにくい物体の近接を正しく検出するために、当該クロストークを敢えて0レベルまで低減しない場合もある。
【0053】
例えば、第1受光部120では、黒い髪の毛が透過窓210に張り付いた状態(いわゆる「黒髪0cm近接」)を正しく検出するために、内部反射光L2に起因するクロストークを敢えて0レベルまで低減せずに、その影響を残しつつ外部反射光L1を検出する構成(=非近接時でもクロストークの影響を受けて一定の受光量が検出されている状態から、黒髪0cm近接による受光量の僅かな増大を検出する構成)が採用されている。
【0054】
<中長距離検出動作(FPS)>
図3は、近接センサ100による中長距離検出動作の一例を示す図である。検出対象2が透過窓210から第1検出範囲D1よりも遠方の第2検出範囲D2(例えば、3cm≦D2≦60cm)に存在する場合、発光部110から出射されて検出対象2に反射された光が、外部反射光L1として第2受光部130で検出される。一方、検出対象2が第2検出範囲D2に存在しない場合には、第2受光部130で外部反射光L1が検出されなくなる。従って、第2受光部130による外部反射光L1の検出有無に応じて、検出対象2の中長距離検出を行うことができる。
【0055】
ところで、中長距離検出動作では、遠方に存在する検出対象2からの微弱な外部反射光L1を検出する必要がある。そのため、第2受光部130では、ノイズ成分となり得るクロストークを0レベルまで低減し、その影響を受けずに外部反射光L1のみを検出することが重要となる。
【0056】
なお、内部漏洩光L3に起因するクロストークについては、先にも述べたように、VCSELの採用、受発光間距離の調整、ないしは、遮光壁の設置などにより、ほぼ0レベルまで低減することが可能である。
【0057】
また、内部反射光L2に起因するクロストークについては、第2受光部130から透過窓210までの距離d12を調整したり、遮光壁を設けたりすることにより、ほぼ0レベルまで低減することが可能である。
【0058】
特に、本実施形態の近接センサ100では、構造部材140の一部(=チップ搭載領域βの周囲を取り囲むように形成された壁の一部)が、第2受光部130への内部反射光L2や内部漏洩光L3を遮断する第1遮光壁141として機能する。
【0059】
また、本実施形態の近接センサ100では、先の多段構造(縦積み構造)を採用したことにより、第1受光部120から透過窓210までの距離d11と第2受光部130から透過窓210までの距離d12をそれぞれ異なる長さに設計することができる。従って、近距離検出動作に用いられる第1受光部120と、中長距離検出動作に用いられる第2受光部130について、それぞれのクロストーク特性を個別に最適化することができる。
【0060】
なお、上記の中長距離検出動作に際しては、TOF方式により検出対象2が第2検出範囲D2に存在するか否かを判定することが望ましい。上記のTOF方式では、発光部110が光を出射してから第2受光部130が外部反射光L1を検出するまでの時間を測定して検出対象2までの距離を算出する。本手法を採用すれば、検出対象2の反射率にADコンバータの出力結果が依存しないので、中長距離検出動作の精度を高めることができる。
【0061】
<補足>
図1図3について補足する。第1遮光壁141は、第1受光部120の上面よりも高い位置まで設けておくことが望ましい。
【0062】
また、第2受光部130は、第1受光部120の下面よりも低い位置に設けておくことが望ましい。
【0063】
また、第2受光部130は、第1遮光壁141の下面(=構造部材140の下面)よりも低い位置に設けておくことが望ましい。
【0064】
また、第1遮光壁141の下面(=構造部材140の下面)は、第2受光部130が形成されるチップ153の上面と接していることが望ましい。
【0065】
また、近接センサ100の断面視において、第1受光部120が形成されるチップ152、第1遮光壁141が形成される構造部材140、及び、第2受光部130が形成されるチップ153は、縦方向(垂直方向)に重なっていることが望ましい。
【0066】
また、近接センサ100の断面視において、発光部110が形成されるチップ151、第1遮光壁141が形成される構造部材140、及び、第2受光部130が形成されるチップ153についても、縦方向(垂直方向)に重なっていることが望ましい。
【0067】
また、近接センサ100は、発光部110から第1受光部120の発光部110側の端辺(紙面では右辺)までの距離をd1とし、発光部110から第2受光部130の発光部側の端辺(紙面では右辺)までの距離をd2としたとき、距離比d2/d1が3以上であることが望ましい。これは、第1受光部120が1cmの近接に対応し、第2受光部130が3cmの近接に対応しているとき、距離比d2/d1が最小値3となるからである。
【0068】
また、近接センサ100は、発光部110から第1受光部120の発光部110とは逆側の端辺(紙面では左辺)までの距離をd1’とし、発光部110から第2受光部130の発光部110とは逆側の端辺(紙面では左辺)までの距離をd2’としたとき、距離比d2’/d1’が12以下であることが望ましい。これは、第1受光部120が5cmの近接に対応し、第2受光部130が60cmの近接に対応しているとき、距離比d2’/d1’が最大値12となるからである。
【0069】
<動作シーケンス>
図4は、発光部110と第1受光部120及び第2受光部130それぞれの動作シーケンスを示す図である。本図で示したように、発光部110は、一定の時間間隔で周期的に赤外光を出射するように駆動される。一方、第1受光部120と第2受光部130では、それぞれ、発光部110による赤外光出射期間の前後を含むように、入射光の検出が行われる。すなわち、1回の測定ステージ毎に、周囲光(太陽光や室内光など)の検出→外部反射光の検出→周囲光の再検出が1セットで実施される。
【0070】
そして、外部反射光の検出値から周囲光の検出値(例えば、外部反射光の前後で検出された周囲光の平均検出値)を差し引くことにより、周囲光に含まれる赤外成分(ノイズ成分)を除去することが可能となる。
【0071】
本図に即して述べると、1回目の測定ステージでは、外部反射光の検出値がS12であり、その前後における周囲光の検出値がS11及びS13であることから、最終的な検出値をSとすると、S=S12-(S11+S13)/2として算出することができる。2回目以降の測定ステージについても、上記と同様の演算により、最終的な検出値Sを算出すればよい。
【0072】
ところで、検出対象2から近接センサ100に戻ってくる外部反射光は、当然ながら、検出対象2が遠方にあるほど弱くなる。特に、第2受光部130による中長距離検出動作では、第1受光部120による近距離検出動作と比べて、外部反射光がかなり微弱(1/100程度)となることが想定される。
【0073】
そこで、第2受光部130の出力積分時間(=外部反射光の受光時間)は、第1受光部120の出力積分時間よりも長く設定するとよい。このような構成とすることにより、外部反射光が微弱であっても、中長距離検出動作の精度を落とさずに済む。
【0074】
ただし、第2受光部130の出力積分時間を長く設定し過ぎると、周囲光に含まれる赤外成分の除去に支障を来すおそれがある。このような背反を避けるためには、例えば、第2受光部130の出力積分時間を際限なく伸ばすのではなく、第2受光部130の出力積算回数を第1受光部120の出力積算回数よりも多く設定しておくとよい。本図に即して述べると、例えば、3回分の測定ステージで得られた外部反射光の検出値(S12、S14、S16)を足し合わせて1回分の検出値とすればよい。
【0075】
<第2実施形態>
図5は、近接センサ100の第2実施形態を示す図である。本図で示したように、第1実施形態(図1)をベースとしつつ、発光部110と第1受光部120との間に、第1受光部120への内部反射光や内部漏洩光を軽減する第2遮光壁142を追加してもよい。
【0076】
<第3実施形態>
図6は、近接センサ100の第3実施形態を示す図である。本実施形態の近接センサ100では、第1実施形態(図1)及び第2実施形態(図5)と異なり、発光部110と第1受光部120が共通のチップ154に形成されている。従って、モジュールの簡略化やコストダウンを図ることが可能となる。もちろん、このようなデバイス構造を採用した場合でも、近距離検出動作と中長距離検出動作を両立することは可能である。
【0077】
<第4実施形態>
図7は、近接センサ100の第4実施形態を示す図である。本実施形態の近接センサ100では、第1実施形態(図1)及び第2実施形態(図5)、並びに、第3実施形態(図6)のいずれとも異なり、発光部110と第1受光部120を共通のチップ155に形成した結果、先述の多段構造(縦積み構造)が解消されている。このようなデバイス構造を採用した場合でも、第1受光部120と第2受光部130との間に第1遮光壁141を設けたり、第2受光部130から発光部110までの距離を、第1受光部120から発光部110までの距離よりも長くしたりして、各受光部のクロストーク特性を個別に最適化することにより、近距離検出動作と中長距離検出動作を両立することは可能である。
【0078】
<第5実施形態>
図8は、近接センサ100の第5実施形態を示す図である。本図で示したように、第4実施形態(図7)をベースとしつつ、発光部110と第1受光部120との間に第2遮光壁142を追加してもよい。
【0079】
<第6実施形態>
図9は、近接センサ100の第6実施形態を示す図である。本実施形態の近接センサ100では、第1実施形態(図1)、第2実施形態(図5)、第3実施形態(図6)、第4実施形態(図7)、及び、第5実施形態(図8)のいずれとも異なり、発光部110、第1受光部120、及び、第2受光部130が共通のチップ156に形成されている。従って、近接センサ100を1チップで実現することができるので、モジュールのさらなる簡略化やコストダウンを図ることが可能となる。なお、このようなデバイス構造を採用した場合でも、第1遮光壁141及び第2遮光壁142を設けたり、その高さを調整(例えば第1遮光壁141を第2遮光壁142よりも高く調整)したり、或いは、第2受光部130から発光部110までの距離を、第1受光部120から発光部110までの距離よりも長くしたりして、各受光部のクロストーク特性を個別に最適化することにより、近距離検出動作と中長距離検出動作を両立することは可能である。
【0080】
<スマートフォンへの適用>
図10は、スマートフォンの外観図である。スマートフォンXは、これまでに説明してきた電子機器1の一具体例であり、外観的には、タッチパネル機能を備えた表示画面X1(液晶ディスプレイや有機EL[electro-luminescence]ディスプレイ)と、光学式の近接センサX2と、スピーカX3及びマイクX4と、カメラX5と、を有する。
【0081】
スマートフォンXでの音声通話時には、ユーザの耳と口がそれぞれスピーカX3とマイクX4に近付けられる。このとき、表示画面X1にはユーザの頬が肉薄する。このような近距離近接(例えば0~5cm程度)を近接センサX2で検出したときに、表示画面X1のタッチパネル機能をオフさせれば、音声通話時の意図しないタッチ操作を未然に防止することができる。また、音声通話時に表示画面X1をオフしておけば、スマートフォンXの消費電力を削減することも可能となる。
【0082】
また、スマートフォンXでの顔認証時には、ユーザの顔が撮影に適した距離までカメラX5に近付けられる。このような中長距離近接(例えば3~60cm程度)を近接センサX2で検出したときに、顔認証用モジュールを起動させれば、スマートフォンXの消費電力を削減することができる。
【0083】
なお、近接センサX2としては、これまでに説明してきた近接センサ100を好適に用いることが可能である。
【0084】
<その他の変形例>
なお、本明細書中に開示されている種々の技術的特徴は、上記実施形態のほか、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち、上記実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本明細書中に開示されている発明は、例えば、スマートフォン向けの近接センサに利用することが可能である。
【符号の説明】
【0086】
1 電子機器
2 検出対象
100 近接センサ
110 発光部
120 第1受光部
130 第2受光部
140 構造部材
141 第1遮光壁
142 第2遮光壁
151、152、153、154、155、156 チップ
200 筐体
210 透過窓
α 井戸型導光領域
β チップ搭載領域
D1 第1検出範囲
D2 第2検出範囲
L1 外部反射光
L2 内部反射光
L3 内部漏洩光
X スマートフォン
X1 表示画面
X2 近接センサ
X3 スピーカ
X4 マイク
X5 カメラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10