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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-05
(45)【発行日】2022-08-16
(54)【発明の名称】トナーバインダー及び樹脂粒子
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/087 20060101AFI20220808BHJP
   C08G 64/18 20060101ALI20220808BHJP
   C08L 67/00 20060101ALI20220808BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20220808BHJP
【FI】
G03G9/087 331
C08G64/18
C08L67/00
C08L101/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018174662
(22)【出願日】2018-09-19
(65)【公開番号】P2019061239
(43)【公開日】2019-04-18
【審査請求日】2021-09-13
(31)【優先権主張番号】P 2017185678
(32)【優先日】2017-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 浩太郎
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-13265(JP,A)
【文献】特開2017-71764(JP,A)
【文献】特開2011-148963(JP,A)
【文献】特開2015-42737(JP,A)
【文献】特開2017-151329(JP,A)
【文献】特開2014-199422(JP,A)
【文献】特開2014-199423(JP,A)
【文献】特開2014-129444(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/087
C08G 64/18
C08L 67/00
C08L 101/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非結晶性樹脂(A)と結晶性ポリエステル樹脂(C)とを含有するトナーバインダーであって、結晶性ポリエステル樹脂(C)が以下の条件(1)を満たす結晶性ポリエステル樹脂(c1)と結晶性ポリエステル樹脂(c2)とを結合剤を用いて結合させたブロックポリマーであるトナーバインダー。
条件(1):0.5(cal/cm1/2≦[前記(c1)のSP値と前記(c2)のSP値の差の絶対値]≦2.0(cal/cm1/2
【請求項2】
更に、結晶性ポリエステル樹脂(c1)と結晶性ポリエステル樹脂(c2)が、以下の条件(2)及び(3)を満たす請求項1記載のトナーバインダー。
条件(2):[前記(A)のSP値と前記(c1)のSP値の差の絶対値]≦1.0(cal/cm1/2
条件(3):[前記(A)のSP値と前記(c2)のSP値の差の絶対値]>1.0(cal/cm1/2
【請求項3】
非結晶性樹脂(A)、結晶性ポリエステル樹脂(c1)及び結晶性ポリエステル樹脂(c2)の親水性親油性バランス(HLB値)[小田法による]が以下の条件(4)を満たす請求項1又は2に記載のトナーバインダー。
条件(4):HLB値(c1)> HLB値(A)> HLB値(c2)
【請求項4】
結晶性ポリエステル樹脂(c1)と結晶性ポリエステル樹脂(c2)との重量比(c1/c2)が、25/75~75/25である請求項1~3いずれか1項に記載のトナーバインダー。
【請求項5】
非結晶性樹脂(A)と結晶性ポリエステル樹脂(C)との重量比(A/C)が、99/1~60/40である請求項1~4いずれか1項に記載のトナーバインダー。
【請求項6】
結合剤が多価イソシアネート及び/又は多官能エポキシである請求項1~5いずれか1項に記載のトナーバインダー。
【請求項7】
請求項1~6いずれか1項に記載のトナーバインダーを含有する樹脂粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナーバインダー及び前記トナーバインダーを含有する樹脂粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネルギーの観点からトナーの低温定着性が強く求められている。一般に、トナーの低温定着性と耐熱保存安定性はトレードオフの関係にあり、これらを両立させるために、結晶性ポリエステルをトナー内部に導入したトナーバインダーが提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
低温定着性向上の観点からは、トナーバインダーと結晶性樹脂が加温により相溶することが望ましいことから、両者のSP値の差は小さい方が良いと考えられてきた。しかし、SP値の差が小さいトナーバインダーと結晶性樹脂を用いてトナーを作製する場合、低温定着性には優れるものの、定着時の加温より前にトナーバインダーと結晶性樹脂が相溶したり、トナーの表面に結晶性樹脂が露出したりして、トナーの耐熱保存安定性が充分とはいえなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-287426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、トナーの場合に低温定着性及び耐熱保存安定性が両立可能であり、帯電性(飽和帯電量、帯電安定性)に優れるトナーバインダー及び前記トナーバインダーを含有する樹脂粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、これらの課題を解決するべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち本発明は、下記2発明である。
非結晶性樹脂(A)と結晶性ポリエステル樹脂(C)とを含有するトナーバインダーであって、結晶性ポリエステル樹脂(C)が以下の条件(1)を満たす結晶性ポリエステル樹脂(c1)と結晶性ポリエステル樹脂(c2)とを結合剤を用いて結合させたブロックポリマーであるトナーバインダー、及び前記トナーバインダーを含有する樹脂粒子である。
条件(1):0.5(cal/cm1/2≦[前記(c1)のSP値と前記(c2)のSP値の差の絶対値]≦2.0(cal/cm1/2
【発明の効果】
【0007】
本発明のトナーバインダー及び前記トナーバインダーを含有する樹脂粒子は、トナーの場合に低温定着性及び耐熱保存安定性の両立が可能であり、帯電性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のトナーバインダーは、非結晶性樹脂(A)と結晶性ポリエステル樹脂(C)とを含有するトナーバインダーであって、結晶性ポリエステル樹脂(C)が以下の条件(1)を満たす結晶性ポリエステル樹脂(c1)と結晶性ポリエステル樹脂(c2)とを結合剤を用いて結合させたブロックポリマーである。
条件(1):0.5(cal/cm1/2≦[前記(c1)のSP値と前記(c2)のSP値の差の絶対値]≦2.0(cal/cm1/2
【0009】
本発明のトナーバインダーは、非結晶性樹脂(A)と結晶性ポリエステル樹脂(C)とを含有する。
本発明において「結晶性」とは、軟化点(以下、Tmと略記)と融解熱の最大ピーク温度(以下、Taと略記)との比(Tm/Ta)が0.8~1.55であり、示差走査熱量測定(DSC)において、吸熱ピークの極大を有することを指す。また、「非結晶性」とは、(Tm/Ta)が1.55より大きいことを指す。Tm、Taは以下の方法で測定することができる。
【0010】
<Tmの測定方法>
高化式フローテスター{「CFT-500D」[(株)島津製作所製]等}を用いて測
定する。
Tmの測定に供する(a)は、1gを測定試料として用いる。測定試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出して、「プランジャー降下量(流れ値)」と「温度」とのグラフを描き、プランジャーの降下量の最大値の1/2に対応する温度をグラフから読み取り、この値(測定試料の半分が流出したときの温度)をTmとする。
【0011】
<Taの測定方法>
示差走査熱量計{「DSC210」[セイコー電子工業(株)製]等}を用いて測定する。
Taの測定に供する(a)は、前処理として、130℃で溶融した後、130℃から70℃まで1.0℃/分の速度で降温し、次に70℃から10℃まで0.5℃/分の速度で降温する。ここで、一度DSCにより、昇温速度20℃/分で昇温して吸発熱変化を測定して、「吸発熱量」と「温度」とのグラフを描き、このとき観測される20~100℃にある吸熱ピーク温度をTa’とする。複数ある場合は最も吸熱量が大きいピークの温度をTa’とする。その後、試料を(Ta’-10)℃で6時間保管した後、(Ta’-15)℃で6時間保管する。
次いで、前記(a)を、DSCにより降温速度10℃/分で0℃まで冷却した後、昇温速度20℃/分で昇温して吸発熱変化を測定して同様のグラフを描き、吸熱量の最大ピークに対応する温度を、融解熱の吸熱ピーク温度(Ta)とする。
【0012】
非結晶性樹脂(A)としては、非結晶性であれば、その樹脂の組成の種類は特に限定されないが、トナーの場合に低温定着性と帯電安定性の観点から、非結晶性ポリエステル樹脂(a1)及び/又は非結晶性ビニル樹脂(a2)であることが好ましい。
【0013】
非結晶性ポリエステル樹脂(a1)は、ポリオール成分(xa)とカルボン酸成分(ya)とを重縮合して得られる。
非結晶性ポリエステル樹脂(a1)のポリオール成分(xa)としては、ジオール及び3価以上のポリオールが挙げられる。
ジオールとしては、炭素数2~10のアルキレングリコール(エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール及び1,10-デカンジオール等)、炭素数4~10のアルキレンエーテルグリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール等)、炭素数11~36のアルキレングリコール(1,12-ドデカンジオール等)、炭素数11~36のアルキレンエーテルグリコール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びポリテトラメチレンエーテルグリコール等)、炭素数6~36の脂環式ジオール(1,4-シクロヘキサンジメタノール及び水素添加ビスフェノールA等)、前記脂環式ジオールの(ポリ)オキシアルキレン〔アルキレン基の炭素数2~4(オキシエチレン、オキシプロピレン等)、以下のポリオキシアルキレン基も同じ〕エーテル〔オキシアルキレン単位(以下、AO単位と略記)の数1~30〕及び2価フェノール〔単環2価フェノール(ハイドロキノン等)及びビスフェノール(ビスフェノールA、ビスフェノールF及びビスフェノールS等)〕のポリオキシアルキレンエーテル(AO単位の数2~30)、カルボキシ基を有するジオール、スルホン酸基もしくはスルファミン酸基を有するジオール、及びこれらの塩が挙げられる。
これらのうち、トナーの場合に低温定着性と耐ホットオフセット性の両立の観点から、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール及びビスフェノールのポリオキシアルキレンエーテル(AO単位の数2~30)が好ましい。
【0014】
3価以上のポリオールとしては、炭素数3~36の3~8価もしくはそれ以上の脂肪族多価アルコール〔アルカンポリオール及びその分子内もしくは分子間脱水物(グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタン、ポリグリセリン及びジペンタエリスリトール等)〕、糖及びそのエステル(ショ糖及びメチルグルコシド等)、前記脂肪族多価アルコールの(ポリ)オキシアルキレンエーテル(AO単位の数1~30)、トリスフェノール(トリスフェノールPA等)のポリオキシアルキレンエーテル(AO単位の数2~30)、ノボラック樹脂(フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等、平均重合度3~60)のポリオキシアルキレンエーテル(AO単位の数2~30)等が挙げられる。
これらのうち好ましいのは、3~8価もしくはそれ以上の脂肪族多価アルコール及びノボラック樹脂のポリオキシアルキレンエーテル(AO単位の数2~30)である。
【0015】
非晶性樹脂とするために、直鎖型ジオールの含有率は使用するジオール成分の70モル%以下が好ましく、更に好ましくは60モル%以下である。また、非晶性ポリエステル樹脂(a1)を構成するポリオール成分(xa)において、ジオール成分が90~100モル%であることが好ましい。
【0016】
非結晶性ポリエステル樹脂(a1)のカルボン酸成分(ya)としては、ジカルボン酸、3価以上のポリカルボン酸及びモノカルボン酸が挙げられる。
ジカルボン酸としては、炭素数8~36の芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸及びナフタレンジカルボン酸等)、炭素数4~36のアルカンジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸及びセバシン酸等)、炭素数6~40の脂環式ジカルボン酸〔ダイマー酸(2量化リノール酸)等〕、炭素数4~36のアルケンジカルボン酸(ドデセニルコハク酸等のアルケニルコハク酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸及びメサコン酸等)及びこれらのエステル形成性誘導体等が挙げられる。
【0017】
ここで、エステル形成性誘導体とは、酸無水物、アルキル(炭素数1~24のメチル、エチル、ブチル、ステアリル等、好ましくは炭素数1~4のもの)エステル及び部分アルキルエステルを意味する。以下のエステル形成性誘導体についても同様である。
【0018】
これらのカルボン酸成分(ya)うち、樹脂粒子の低温定着性と耐ホットオフセット性の両立の観点から好ましいのは、炭素数8~36の芳香族ジカルボン酸、炭素数4~36のアルカンジカルボン酸、炭素数4~36のアルケンジカルボン酸及びこれらのエステル形成性誘導体であり、更に更に好ましくは、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸及び/又はこれらのエステル形成性誘導体である。
【0019】
3価以上(好ましくは3~6価)のポリカルボン酸としては、炭素数9~20の芳香族カルボン酸(トリメリット酸及びピロメリット酸等)、炭素数6~36の脂肪族(脂環式を含む)カルボン酸(ヘキサントリカルボン酸及びデカントリカルボン酸等)及びこれらのエステル形成性誘導体等が挙げられる。これらのうち好ましいのは、トリメリット酸、ピロメリット酸及びこれらのエステル形成性誘導体である。
【0020】
モノカルボン酸としては、炭素数1~30の脂肪族(脂環式を含む)モノカルボン酸及び炭素数7~36の芳香族モノカルボン酸が挙げられる。
【0021】
本発明における非結晶性ポリエステル樹脂(a1)は、公知のポリエステル製造法と同様にして製造することができる。例えば、ポリオール成分(xa)とカルボン酸成分(ya)とを、不活性ガス(窒素ガス等)雰囲気中で、反応温度が好ましくは150~280℃、更に好ましくは170~260℃、特に好ましくは190~240℃で反応させることにより行うことができる。また反応時間は、重縮合反応を確実に行う観点から、好ましくは30分以上、特に2~40時間である。反応末期の反応速度を向上させるために減圧することも有効である。
【0022】
ポリオール成分(xa)とポリカルボン酸成分(ya)との反応比率は、ヒドロキシ基とカルボキシ基のモル比[OH]/[COOH]として、好ましくは2/1~1/2、更に好ましくは1.5/1~1/1.3、特に好ましくは1.3/1~1/1.2である。
【0023】
このとき必要に応じてエステル化触媒を使用することができる。エステル化触媒としては、スズ含有触媒(ジブチルスズオキシド等)、三酸化アンチモン、チタン含有触媒[チタンアルコキシド、シュウ酸チタン酸カリウム、テレフタル酸チタン、特開2006-243715号公報に記載の触媒〔チタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)、チタニウムモノヒドロキシトリス(トリエタノールアミネート)及びこれらの分子内重縮合物等〕及び特開2007-11307号公報に記載の触媒(チタントリブトキシテレフタレート、チタントリイソプロポキシテレフタレート及びチタンジイソプロポキシジテレフタレート等)]、ジルコニウム含有触媒(酢酸ジルコニル等)及び酢酸亜鉛等が挙げられる。これらの中で好ましくはチタン含有触媒である。
【0024】
非結晶性ビニル樹脂(a2)としては、ラジカル重合性単量体を、ラジカル重合開始剤を用いて単独重合又は共重合した重合体が挙げられる。ラジカル重合性単量体としては、以下の単量体(w1)~(w9)等が挙げられる。
重合は、溶液重合、塊状重合、懸濁重合及び乳化重合等の公知の方法で行うことができる。
ラジカル重合開始剤としては、アゾ重合開始剤(アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスバレロニトリル及びアゾビスシアノ吉草酸等)及び有機過酸化物重合開始剤〔ベンゾイルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシベンゾエート、2、2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン等〕等が挙げられる。これらのうち好ましいのは、ジ-t-ブチルパーオキサイド又は2、2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパンである。
ラジカル重合開始剤の使用量は、単量体の全量に基づいて、好ましくは0.01~10重量%、更に好ましくは0.05~8重量%、特に好ましくは0.1~6重量%である。
【0025】
(w1)重合性二重結合を有する炭化水素:
以下の(w11)重合性二重結合を有する脂肪族炭化水素と(w12)重合性二重結合とを有する芳香族炭化水素等が挙げられる。
(w11)重合性二重結合を有する脂肪族炭化水素:
重合性二重結合を有する鎖状炭化水素としては、炭素数2~30のアルケン(エチソプレン、1,4-ペンタジエン、1,5-ヘキサジエン及び1,7-オクタジエン等)が挙げられる。
重合性二重結合を有する環状炭化水素としては、炭素数6~30のモノ又はジシクロアルケン(シクロヘキセン、ビニルシクロヘキセン及びエチリデンビシクロヘプテン等)及び炭素数5~30のモノ又はジシクロアルカジエン[(ジ)シクロペンタジエン等]等が挙げられる。
【0026】
(w12)重合性二重結合を有する芳香族炭化水素:
スチレン、スチレンのハイドロカルビル(炭素数1~30のアルキル、シクロアルキル、アラルキル及び/又はアルケニル)置換体(α-メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4-ジメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、フェニルスチレン、シクロヘキシルスチレン、ベンジルスチレン、クロチルベンゼン、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン及びトリビニルベンゼン等)及びビニルナフタレン等が挙げられる。
【0027】
(w2)カルボキシ基と重合性二重結合を有する単量体及びそれらの塩:
炭素数3~15の不飽和モノカルボン酸{(メタ)アクリル酸[「(メタ)アクリル」は、アクリル又はメタクリルを意味する]、クロトン酸、イソクロトン酸及び桂皮酸等}、炭素数3~30の不飽和ジカルボン酸及びその無水物[(無水)マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸及びメサコン酸等]及び炭素数3~10の不飽和ジカルボン酸のモノアルキル(炭素数1~10)エステル(マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノデシルエステル、フマル酸モノエチルエステル、イタコン酸モノブチルエステル及びシトラコン酸モノデシルエステル等)等が挙げられる。
【0028】
カルボキシ基と重合性二重結合を有する単量体の塩を構成する塩としては、アルカリ金属塩(ナトリウム塩及びカリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩及びマグネシウム塩等)、アンモニウム塩、アミン塩及び4級アンモニウム塩等が挙げられる。
アミン塩としては、アミン化合物であれば特に限定されないが、1級アミン塩(エチルアミン塩、ブチルアミン塩及びオクチルアミン塩等)、2級アミン(ジエチルアミン塩及びジブチルアミン塩等)、3級アミン(トリエチルアミン塩及びトリブチルアミン塩等)が挙げられる。4級アンモニウム塩としては、テトラエチルアンモニウム塩、トリエチルラウリルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩及びトリブチルラウリルアンモニウム塩等が挙げられる。
【0029】
カルボキシ基と重合性二重結合を有する単量体の塩としては、アクリル酸ナトリウム、メタクリル酸ナトリウム、マレイン酸モノナトリウム、マレイン酸ジナトリウム、アクリル酸カリウム、メタクリル酸カリウム、マレイン酸モノカリウム、アクリル酸リチウム、アクリル酸セシウム、アクリル酸アンモニウム、アクリル酸カルシウム及びアクリル酸アルミニウム等が挙げられる。
【0030】
(w3)スルホ基と重合性二重結合を有する単量体及びそれらの塩:
炭素数2~14のアルケンスルホン酸(ビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸及びメチルビニルスルホン酸等)、スチレンスルホン酸及びそのアルキル(炭素数2~24)(α-メチルスチレンスルホン酸等)、炭素数5~18のスルホ(ヒドロキシ)アルキル-(メタ)アクリレート(スルホプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロキシプロピルスルホン酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエタンスルホン酸及び3-(メタ)アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸等)、炭素数5~18のスルホ(ヒドロキシ)アルキル(メタ)アクリルアミド[2-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2-ジメチルエタンスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸及び3-(メタ)アクリルアミド-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸等]、アルキル(炭素数3~18)アリルスルホコハク酸(プロピルアリルスルホコハク酸、ブチルアリルスルホコハク酸及び2-エチルヘキシル-アリルスルホコハク酸等)、重合度が2~30のポリオキシアルキレン(オキシエチレン、オキシプロピレン及びオキシブチレン等。オキシアルキレンは単独又は併用でもよく、併用する場合、付加形式はランダム付加でもブロック付加でもよい。)、モノ(メタ)アクリレートの硫酸エステル[重合度が5~15のポリオキシエチレンモノメタクリレート硫酸エステル及び重合度が5~15のポリオキシプロピレンモノメタクリレート硫酸エステル等]及びこれらの塩等が挙げられる。
【0031】
なお、塩としては、前記(w2)でカルボキシ基と重合性二重結合を有する単量体の塩を構成する塩として例示したものが挙げられる。
【0032】
(w4)ホスホノ基と重合性二重結合を有する単量体及びその塩:
アルキル基の炭素数が1~24である(メタ)アクリロイルオキシアルキルリン酸モノエステル(2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリロイルホスフェート及びフェニル-2-アクリロイロキシエチルホスフェート等)、アルキル基の炭素数が1~24である(メタ)アクリロイルオキシアルキルホスホン酸(2-アクリロイルオキシエチルホスホン酸等)が挙げられる。
なお、塩としては、前記(w2)でカルボキシ基と重合性二重結合を有する単量体を構成する塩として例示したものが挙げられる。
【0033】
(w5)ヒドロキシル基と重合性二重結合を有する単量体:
ヒドロキシスチレン、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アリルアルコール、クロチルアルコール、イソクロチルアルコール、1-ブテン-3-オール、2-ブテン-1-オール、2-ブテン-1,4-ジオール、プロパルギルアルコール、2-ヒドロキシエチルプロペニルエーテル及び庶糖アリルエーテル等が挙げられる。
【0034】
(w6)重合性二重結合を有する含窒素単量体:
(w61)アミノ基と重合性二重結合を有する単量体、(w62)アミド基と重合性二重結合を有する単量体、(w63)ニトリル基と重合性二重結合を有する炭素数3~10の単量体、(w64)ニトロ基と重合性二重結合を有する炭素数8~12の単量体等が挙げられる。
(w61)アミノ基と重合性二重結合を有する単量体:
アミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t-ブチルアミノエチルメタクリレート、N-アミノエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アリルアミン、モルホリノエチル(メタ)アクリレート、4-ビニルピリジン、2-ビニルピリジン、クロチルアミン、N,N-ジメチルアミノスチレン、メチル-α-アセトアミノアクリレート、ビニルイミダゾール、N-ビニルピロール、N-ビニルチオピロリドン、N-アリールフェニレンジアミン、アミノカルバゾール、アミノチアゾール、アミノインドール、アミノピロール、アミノイミダゾール、アミノメルカプトチアゾール及びこれらの塩等が挙げられる。
【0035】
(w62)アミド基と重合性二重結合を有する単量体:
(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-ブチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N’-メチレン-ビス(メタ)アクリルアミド、桂皮酸アミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジベンジルアクリルアミド、メタクリルホルムアミド、N-メチル-N-ビニルアセトアミド及びN-ビニルピロリドン等が挙げられる。
(w63)ニトリル基と重合性二重結合を有する炭素数3~10の単量体:
(メタ)アクリロニトリル、シアノスチレン及びシアノアクリレート等が挙げられる。
(w64)ニトロ基と重合性二重結合を有する炭素数8~12の単量体:
ニトロスチレン等が挙げられる。
【0036】
(w7)エポキシ基と重合性二重結合を有する炭素数6~18の単量体:
グリシジル(メタ)アクリレート及びp-ビニルフェニルフェニルオキサイド等が挙げられる。
【0037】
(w8)ハロゲン元素と重合性二重結合を有する炭素数2~16の単量体:
塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、アリルクロライド、クロロスチレン、ブロムスチレン、ジクロロスチレン、クロロメチルスチレン、テトラフルオロスチレン及びクロロプレン等が挙げられる。
【0038】
(w9)重合性二重結合を有するエステル、重合性二重結合を有するエーテル、重合性二重結合を有するケトン及び重合性二重結合を有する含硫黄化合物:
(w91)重合性二重結合を有する炭素数2~24のエステル、(w92)重合性二重結合を有する炭素数3~16のエーテル、(w93)重合性二重結合を有する炭素数4~12のケトン、(w94)重合性二重結合を有する炭素数2~16の含硫黄化合物等が挙げられる。
(w91)重合性二重結合を有する炭素数2~24のエステル:
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ジアリルフタレート、ジアリルアジペート、イソプロペニルアセテート、ビニルメタクリレート、メチル-4-ビニルベンゾエート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ビニルメトキシアセテート、ビニルベンゾエート、エチル-α-エトキシアクリレート、炭素数1~22のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル[メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート及びエイコシル(メタ)アクリレート等]、ジアルキルフマレート(2個のアルキル基は、炭素数2~8の直鎖、分枝鎖又は脂環式の基である)、ジアルキルマレエート(2個のアルキル基は、炭素数2~8の直鎖、分枝鎖又は脂環式の基である)、ポリ(メタ)アリロキシアルカン(ジアリロキシエタン、トリアリロキシエタン、テトラアリロキシエタン、テトラアリロキシプロパン、テトラアリロキシブタン及びテトラメタアリロキシエタン等)等、ポリアルキレングリコール鎖と重合性二重結合を有する単量体[ポリエチレングリコール[Mn=300]モノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(Mn=500)モノアクリレート、メチルアルコールEO10モル付加物(メタ)アクリレート及びラウリルアルコールEO30モル付加物(メタ)アクリレート等]、ポリ(メタ)アクリレート[多価アルコールのポリ(メタ)アクリレート:エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート及びポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等]等が挙げられる。
(w92)重合性二重結合を有する炭素数3~16のエーテル:
ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテル、ビニルブチルエーテル、ビニル-2-エチルヘキシルエーテル、ビニルフェニルエーテル、ビニル-2-メトキシエチルエーテル、メトキシブタジエン、ビニル-2-ブトキシエチルエーテル、3,4-ジヒドロ-1,2-ピラン、2-ブトキシ-2’-ビニロキシジエチルエーテル、アセトキシスチレン及びフェノキシスチレン等が挙げられる。
(w93)重合性二重結合を有する炭素数4~12のケトン:
ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン及びビニルフェニルケトン等が挙げられる。
(w94)重合性二重結合を有する炭素数2~16の含硫黄化合物:
ジビニルサルファイド、p-ビニルジフェニルサルファイド、ビニルエチルサルファイド、ビニルエチルスルホン、ジビニルスルホン及びジビニルスルホキサイド等が挙げられる。
【0039】
これらのラジカル重合性単量体のうち、本発明の非結晶性ビニル樹脂(a2)として好ましいのは、樹脂粒子の低温定着性と帯電安定性の観点から、スチレン、炭素数3~15の不飽和モノカルボン酸、炭素数1~22のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル、アクリロニトリルであり、更に好ましくはスチレン、(メタ)アクリル酸、ブチル(メタ)アクリレート、アクリロニトリルである。
【0040】
本発明のトナーバインダーは、結晶性ポリエステル樹脂(C)を含有し、結晶性ポリエステル樹脂(C)は結晶性ポリエステル樹脂(c1)からなる単位と結晶性ポリエステル樹脂(c2)からなる単位とのブロックポリマーである。
【0041】
結晶性ポリエステル樹脂(c1)及び結晶性ポリエステル樹脂(c2)は、ポリオール成分(xc)とカルボン酸成分(yc)とを重縮合して得られる。
【0042】
結晶性ポリエステル樹脂(c1)及び結晶性ポリエステル樹脂(c2)のポリオール成分(xc)としては、脂肪族ジオール等が挙げられる。脂肪族ジオールとしては、直鎖型脂肪族ジオール、2級ヒドロキシ基を有する脂肪族ジオール、及び分岐型脂肪族ジオールが挙げられる。
【0043】
直鎖型脂肪族ジオールとしては、炭素数が2~36の直鎖型脂肪族ジオール(例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,18-オクタデカンジオール及び1,20-エイコサンジオール)等が挙げられる。及び2級ヒドロキシ基を有する脂肪族ジオールとしては、炭素数2~36の2級ヒドロキシ基を有する脂肪族ジオール(例えば、1,2-プロピレングリコール)等)が挙げられる。
分岐型脂肪族ジオールとしては、炭素数2~36の分岐型脂肪族ジオール(例えば、ネオペンチルグリコール及び2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール)等)が挙げられる。
【0044】
ポリオール成分(xc)のうち、低温定着性及び耐熱保存安定性の観点から、好ましくは脂肪族ジオールであり、更に好ましくは直鎖型脂肪族ジオールであり、特に好ましくは炭素数が2~20の直鎖型脂肪族ジオールである。
【0045】
本発明のポリオール成分(xc)としては、以下に記載する上記の脂肪族ジオール以外のポリオール成分を本発明の効果に影響のない範囲で使用することができる。
上記の脂肪族ジオール以外の脂肪族ジオールとしては、炭素数4~36のアルキレンエーテルグリコール(例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール)、炭素数4~36の脂環式ジオール(例えば、1,4-シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールA)、上記脂環式ジオールのアルキレンオキサイド(以下AOと略記する)〔エチレンオキサイド(以下EOと略記する)、プロピレンオキサイド(以下POと略記する)、ブチレンオキサイド(以下BOと略記する)など〕付加物(付加モル数1~30)及びポリブタジエンジオールなど)が挙げられる。
【0046】
芳香族ジオールとしては、ビスフェノール(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなど)のAO(EO、PO、BOなど)付加物(付加モル数2~30)などが挙げられる。
【0047】
3官能以上(3~8価又はそれ以上)のポリオールとしては、炭素数3~36の3~8価又はそれ以上の多価脂肪族アルコール(アルカンポリオール及びその分子内もしくは分子間脱水物、例えばグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタン、及びポリグリセリン;糖及びそのエステル、例えばショ糖、及びメチルグルコシド);トリスフェノール(トリスフェノールPAなど)のAO付加物(付加モル数2~30);ノボラック樹脂(フェノールノボラック、クレゾールノボラックなど)のAO付加物(付加モル数2~30);アクリルポリオール[ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと他のビニルモノマーの共重合物など];などが挙げられる。
これらのうち好ましいものは、3~8価又はそれ以上の多価脂肪族アルコール及びノボラック樹脂のAO付加物である。
【0048】
ポリオール成分(xc)としては、直鎖型脂肪族ジオールの含有量がポリオール成分(xc)の80モル%以上であることが好ましく、より好ましくは90モル%以上である。80モル%以上では、樹脂の結晶性が向上し、融点が上昇するため、耐熱保存性が良好となる。
【0049】
結晶性ポリエステル樹脂(c1)及び結晶性ポリエステル樹脂(c2)のポリカルボン酸成分(yc)としては、ジカルボン酸、3価以上のポリカルボン酸等が挙げられる。
ジカルボン酸としては、炭素数4~36の脂肪族ジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジカルボン酸、オクタデカンジカルボン酸、デシルコハク酸など);炭素数6~40の脂環式ジカルボン酸〔ダイマー酸(2量化リノール酸)など〕、炭素数4~36のアルケンジカルボン酸(ドデセニルコハク酸、ペンタデセニルコハク酸、マレイン酸、フマール酸、シトラコン酸など);炭素数8~36の芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、t-ブチルイソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸など)などが挙げられる。
【0050】
3価以上(3~6価又はそれ以上)のポリカルボン酸としては、炭素数9~20の芳香族ポリカルボン酸(トリメリット酸、ピロメリット酸など)などが挙げられる。
なお、ジカルボン酸及びポリカルボン酸としては、上述のものの酸無水物又は炭素数1~4の低級アルキルエステル(メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステルなど)を用いてもよい。
【0051】
ポリカルボン酸成分(yc)のうち、耐熱保存安定性の観点から、好ましくは、脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸であり、更に好ましくは、直鎖脂肪族ジカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸であり、特に好ましくはアジピン酸、セバシン酸、1,12-ドデカンジカルボン酸、テレフタル酸及びイソフタル酸である。
【0052】
結晶性ポリエステル樹脂(c1)及び結晶性ポリエステル樹脂(c2)のそれぞれの末端はヒドロキシ基であってもよいしカルボキシ基であってもよく、同じでも異なっていてもよい。
【0053】
結晶性ポリエステル樹脂(c1)及び結晶性ポリエステル樹脂(c2)の製造方法としては、前記(a1)と同様の製造方法が挙げられる。
【0054】
本発明の結晶性ポリエステル樹脂(C)は、以下の条件(1)を満たす結晶性ポリエステル樹脂(c1)と結晶性ポリエステル樹脂(c2)とを結合剤を用いて結合させたブロックポリマーである。なお、(c1)と(c2)のSP値は、ポリエステル末端のカルボキシ基及びヒドロキシ基を含めて計算する。
条件(1):0.5(cal/cm1/2≦[前記(c1)のSP値と前記(c2)のSP値の差の絶対値]≦2.0(cal/cm1/2
前記(c1)のSP値と前記(c2)のSP値の差の絶対値が0.5(cal/cm1/2未満であると、定着時の加温より前に前記(A)と前記(c1)が相溶したり、樹脂粒子表面に結晶性ポリエステル樹脂(C)が露出したりして耐熱保存安定性が悪化する。前記(c1)のSP値と前記(c2)のSP値の差の絶対値が2.0(cal/cm1/2を超えると、結晶性ポリエステル樹脂(C)を製造する際の反応性が悪くなる。
【0055】
更に、前記(c1)と前記(c2)は、低温定着性と耐熱保存安定性の両立の観点から、以下の条件(2)及び(3)を満たすことが好ましい。
条件(2):[前記(A)のSP値と前記(c1)のSP値の差の絶対値]≦1.0(cal/cm1/2
条件(3):[前記(A)のSP値と前記(c2)のSP値の差の絶対値]>1.0(cal/cm1/2
前記(A)のSP値と前記(c1)のSP値の差の絶対値が1.0(cal/cm1/2未満であると低温定着性が向上する。前記(A)のSP値と前記(c2)のSP値の差の絶対値が1.0(cal/cm1/2以上であると耐熱保存性が向上する。
【0056】
なお、本発明におけるSP値は、Fedorsらが提案した下記の文献に記載の方法によって計算されるものである。
「POLYMER ENGINEERING AND SCIENCE,FEBRUARY,1974,Vol.14,No.2,ROBERT F.FEDORS.(147~154頁)」
【0057】
前記(A)のSP値は構成成分の種類と重量を適宜選択することにより、前記(c1)、前記(c2)のSP値は、それぞれの構成成分である前記ジオールとジカルボン酸の種類と重量を適宜選択することにより、条件(1)、(2)及び(3)を満たす値に調整できる。
【0058】
本発明の結晶性ポリエステル樹脂(C)は、結晶性ポリエステル樹脂(c1)と結晶性ポリエステル樹脂(c2)とを結合剤を用いて結合させたブロックポリマーであり、結晶性ポリエステル樹脂(c1)及び結晶性ポリエステル樹脂(c2)を後述する方法等で結合させることで得ることができる。
【0059】
結晶性ポリエステル樹脂(c1)及び結晶性ポリエステル樹脂(c2)を結合させて得ることができるブロックポリマーである。前記結晶性ポリエステル樹脂(c1)、前記結晶性ポリエステル樹脂(c2)それぞれの末端官能基にあった結合剤種を選択し、前記結晶性ポリエステル樹脂(c1)と前記結晶性ポリエステル樹脂(c2)を結合させる等の方法によりブロックポリマーとすることが出来る。
【0060】
結合剤としては、種々の結合剤が使用できる。多価カルボン酸、多価アルコール、多価イソシアネート、多官能エポキシ、酸無水物等を用いて、脱水反応や、付加反応を行うことができる。
多価カルボン酸及び酸無水物としては、前記ジカルボン酸成分と同様のものが挙げられる。多価アルコールとしては、前記ジオール成分と同様のものが挙げられる。
多価イソシアネートとしては、炭素数(NCO基中の炭素を除く、以下同様)6~20の芳香族ジイソシアネート(ジフェニルメタンジイソシアネート等)、炭素数2~18の脂肪族ジイソシアネート(ヘキサメチレンジイソシアネート等)、炭素数4~15の脂環式ジイソシアネート、炭素数8~15の芳香脂肪族ジイソシアネート及びこれらのジイソシアネートの変性物(ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、イソシアヌレート基、オキサゾリドン基含有変性物など)及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
多官能エポキシとしては、ビスフェノールA型又は-F型エポキシ化合物(ビスフェノールA型又は-F型ジグリシジルエーテル等)、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、水添ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールA又は-FのAO付加体のジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAのAO付加体のジグリシジルエーテル、ジオール(エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコール等)のジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジ又はトリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリ又はテトラグリシジルエーテル、ソルビトールヘプタ又はヘキサグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、ジシクロペンタジエン・フェノール付加型グリシジルエーテル、メチレンビス(2,7-ジヒドロキシナフタレン)テトラグリシジルエーテル、1,6-ジヒドロキシナフタレンジグリシジルエーテル、ポリブタジエンジグリシジルエーテル等が挙げられる。
結合剤として、反応性の観点から、好ましくは多価イソシアネート及び多官能エポシキであり、更に好ましくは多価イソシアネートである。
【0061】
本発明の非結晶性樹脂(A)、結晶性ポリエステル樹脂(c1)及び結晶性ポリエステル樹脂(c2)は、各々の親水性親油性バランス(HLB値)[小田法による]が以下の条件(4)を満たすことが好ましい。
条件(4):HLB値(c1)> HLB値(A)> HLB値(c2)
ここでHLB(Hydrophile-Lipophile Balance)値とは、無機性/有機性のバランスを示す尺度であり、HLB値が高いほど無機性が高いことを意味する。計算は小田法を用い、下記式によって算出される。なお、(c1)及び(c2)のHLB値は、ポリエステル末端のカルボキシ基及びヒドロキシ基を含めて計算する。
HLB値 ≒ 10×無機性/有機性
(参考:「界面活性剤入門」2007年 三洋化成工業株式会社発行 P212)
【0062】
HLB値は、前記(A)、前記(c1)、前記(c2)各々の原料の組成、使用量等により調整できる。
【0063】
本発明のトナーバインダーは、結晶性ポリエステル樹脂(c1)と結晶性ポリエステル樹脂(c2)との重量比(c1/c2)が、25/75~75/25であることが好ましい。前記重量比(c1/c2)が25/75~75/25であると、低温定着性と耐熱保存安定性がより良化する。なお、(c1)及び(c2)の重量は、ポリエステル末端のカルボキシ基及びヒドロキシ基を含めて計算する。
【0064】
本発明のトナーバインダーは、非結晶性樹脂(A)と結晶性ポリエステル樹脂(C)との重量比(A/C)が、99/1~60/40であることが好ましい。前記重量比(A/C)が99/1~60/40であると、低温定着性と耐熱保存安定性がより良化する。
【0065】
結晶性ポリエステル樹脂(c1)及び結晶性ポリエステル樹脂(c2)の製造方法は、非晶性ポリエステル樹脂(a1)の製造方法と同様に公知のポリエステル製造方法と同様にして製造することができる。
このとき必要に応じてエステル化触媒を使用することができる。使用できるエステル化触媒は、非晶性ポリエステル樹脂(a1)の製造方法で用いたものと同様の物を使用することができる。
【0066】
結晶性ポリエステル樹脂(C)の製造方法について説明する。結晶性ポリエステル樹脂(C)は、結晶性ポリエステル樹脂(c1)と結晶性ポリエステル樹脂(c2)とを結合剤を用いて結合させてできる。(c1)及び(c2)は、それぞれの末端官能基にあった結合剤種を選択し、(c1)と(c2)を結合させ、ブロックポリマーとすることが出来る。
【0067】
(c1)と(c2)を結合させる方法としては、脱水反応及び付加反応等がある。
脱水反応としては、両者とも両末端アルコール樹脂で、これらを結合剤(多価カルボン酸等)で結合する反応等が挙げられる。この場合、無溶剤下、反応温度180℃~230℃で反応し、ブロックポリマーが得られる。
付加反応としては、両者とも末端にヒドロキシ基を有する樹脂であり、これらを結合剤(多価イソシアネート等)で結合する反応等が挙げられる。この場合、(c1)及び(c2)ともに溶解可能な溶剤に溶解させ、これに結合剤を投入し、反応温度80℃~150℃で反応し、ブロックポリマーが得られる。また、もう一つの場合、(c1)又は(c2)のどちらか一方と結合剤とを反応させた後、(c1)又は(c2)のどちらか他方を投入して反応し、ブロックポリマーが得られる。また、両者とも末端にカルボキシ基を有する樹脂の場合、これらを結合剤(多価エポキシ等)で結合する反応等があげられる。この場合、(c1)及び(c2)ともに溶解可能な溶剤に溶解させ、これに結合剤を投入し、反応温度80℃~150℃で反応し、ブロックポリマーが得られる。
【0068】
本発明の樹脂粒子は、本発明のトナーバインダーの他に、着色剤、離型剤及び荷電制御剤等を含有することができる。
着色剤としては、トナー用着色剤として使用されている染料、顔料等のすべてを使用することができる。具体的には、カーボンブラック、鉄黒、スーダンブラックSM、ファーストイエローG、ベンジジンイエロー、ソルベントイエロー(21、77及び114等)、ピグメントイエロー(12、14、17及び83等)、インドファーストオレンジ、イルガシンレッド、パラニトロアニリンレッド、トルイジンレッド、ソルベントレッド(17、49、128、5、13、22及び48・2等)、ディスパースレッド、カーミンFB、ピグメントオレンジR、レーキレッド2G、ローダミンFB、ローダミンBレーキ、メチルバイオレットBレーキ、フタロシアニンブルー、ソルベントブルー(25、94、60及び15・3等)、ピグメントブルー、ブリリアントグリーン、フタロシアニングリーン、オイルイエローGG、カヤセットYG、オラゾールブラウンB及びオイルピンクOP等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。また、必要により磁性粉(鉄、コバルト及びニッケル等の強磁性金属の粉末、マグネタイト、ヘマタイト並びにフェライト等の化合物)を着色剤としての機能を兼ねて含有させることができる。
【0069】
離型剤としては、軟化点が50~170℃のものが好ましく、ポリオレフィンワックス、天然ワックス(カルナウバワックス、モンタンワックス、パラフィンワックス及びライスワックス等)、炭素数30~50の脂肪族アルコール(トリアコンタノール等)、炭素数30~50の脂肪酸(トリアコンタンカルボン酸等)及びこれらの混合物等が挙げられる。
ポリオレフィンワックスとしては、オレフィン(エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブチレン、1-ヘキセン、1-ドデセン、1-オクタデセン及びこれらの混合物等)の(共)重合体[(共)重合により得られるもの及び熱減成型ポリオレフィンを含む]、オレフィンの(共)重合体の酸素及び/又はオゾンによる酸化物、オレフィンの(共)重合体のマレイン酸変性物[マレイン酸及びその誘導体(無水マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノブチル及びマレイン酸ジメチル等)変性物]、オレフィンと不飽和カルボン酸[(メタ)アクリル酸、イタコン酸及び無水マレイン酸等]及び/又は不飽和カルボン酸アルキルエステル[(メタ)アクリル酸アルキル(アルキルの炭素数1~18)エステル及びマレイン酸アルキル(アルキルの炭素数1~18)エステル等]等との共重合体、ポリメチレン(サゾールワックス等のフィシャートロプシュワックス等)、脂肪酸金属塩(ステアリン酸カルシウム等)及び脂肪酸エステル(ベヘニン酸ベヘニル等)等が挙げられる。
【0070】
荷電制御剤としては、ニグロシン染料、3級アミンを側鎖として含有するトリフェニルメタン染料、4級アンモニウム塩、ポリアミン樹脂、イミダゾール、4級アンモニウム塩基含有ポリマー、含金属アゾ染料、銅フタロシアニン染料、サリチル酸金属塩、ベンジル酸のホウ素錯体、スルホン酸基含有ポリマー、含フッ素ポリマー、ハロゲン置換芳香環含有ポリマー、サリチル酸のアルキルエステルの金属錯体、セチルトリメチルアンモニウムブロミド等が挙げられる。
【0071】
本発明の樹脂粒子を構成する各成分の含有率は、以下の通りであることが好ましい。
トナーバインダーの含有率は、樹脂粒子の重量に基づき、好ましくは30~97重量%であり、更に好ましくは40~95重量%、特に好ましくは45~92重量%である。
着色剤の含有率は、樹脂粒子の重量に基づき、好ましくは0~60重量%であり、更に好ましくは0.1~55重量%、特に好ましくは0.5~50重量%である。
離型剤の含有率は、樹脂粒子の重量に基づき、好ましくは0~30重量%であり、更に好ましくは0.5~20重量%、特に好ましくは1~10重量%である。
荷電制御剤の含有率は、樹脂粒子の重量に基づき、好ましくは0~20重量%であり、更に好ましくは0.1~10重量%、特に好ましくは0.5~7.5重量%である。
【0072】
本発明の樹脂粒子の製造方法については特に制限はなく、公知の混練法が使用できる。具体的には、樹脂粒子の構成成分を乾式ブレンドした後に二軸押し出し機等で溶融混練することで得ることができる。
また、本発明の樹脂粒子は、必要に応じて、キャリアー粒子[鉄粉、ガラスビーズ、ニッケル粉、フェライト、マグネタイト及び樹脂(アクリル樹脂及びシリコーン樹脂等)により表面をコーティングしたフェライト等]と混合して、電気的潜像の現像剤として用いることができるが、この粒子化の過程(乳化転相法及び重合法等)で得ることもできる。
具体的には、樹脂粒子の構成成分を有機溶剤に溶解又は分散した後、水を添加する等によりエマルジョン化し、次いで分離、分級して製造することができる。特開2002-284881号公報に記載の有機微粒子を用いる方法により製造してもよい。
【実施例
【0073】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0074】
本発明におけるNCO含有量は、JIS K 6806:2003に準じて測定した。但し、滴定溶媒には試料を溶解することのできる溶媒としてトルエンを用いた。
【0075】
本発明におけるエポキシ当量は、JIS K 7236:2001に準じて測定した。
【0076】
<製造例1>[結晶性ポリエステル樹脂(c0-1)の合成]
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計、冷却管、窒素導入管及び減圧装置を備えた反応容器に、エチレングリコール348重量部、セバシン酸843重量部、重合触媒としてテトラブトキシチタネート2重量部を入れ、180℃に昇温し、同温度で窒素気流下に生成する水を留去しながら10時間反応させ、次いで220℃まで徐々に昇温しながら、窒素気流下に生成する水を留去しながら4時間反応させ、更に0.007~0.026MPaの減圧下で水を留去しながら反応させ、酸価が0.1[mgKOH/g]以下になった時点で取り出し、結晶性ポリエステル樹脂(c0-1)を得た。
【0077】
<製造例2>[結晶性ポリエステル樹脂(c0-2)の合成]
製造例1において、エチレングリコール348重量部を1,6-ヘキサンジオール643重量部に、セバシン酸843重量部をアジピン酸737重量部に変更した他は製造例1と同様にして、結晶性ポリエステル樹脂(c0-2)を得た。
【0078】
<製造例3>[結晶性ポリエステル樹脂(c0-3)の合成]
製造例1において、エチレングリコール348重量部を1,12-ドデカンジオール614重量部に、セバシン酸843重量部を466重量部に変更した他は製造例1と同様にして、結晶性ポリエステル樹脂(c0-3)を得た。
【0079】
<製造例4>[結晶性ポリエステル樹脂(c0-4)の合成]
製造例1において、エチレングリコール348重量部を1,9-ノナンジオール529重量部に、セバシン酸843重量部をドデカン二酸675重量部に変更した他は製造例1と同様にして、結晶性ポリエステル樹脂(c0-4)を得た。
【0080】
<製造例5>[結晶性ポリエステル樹脂(c0-5)の合成]
製造例1において、エチレングリコール348重量部を1,12-ドデカンジオール596重量部に、セバシン酸843重量部をドデカン二酸595重量部に変更した他は製造例1と同様にして、結晶性ポリエステル樹脂(c0-5)を得た。
【0081】
<製造例6>[結晶性ポリエステル樹脂(c0-6)の合成]
製造例1において、エチレングリコール348重量部を554重量部に、セバシン酸843重量部をコハク酸850重量部に変更した他は製造例1と同様にして、結晶性ポリエステル樹脂(c0-6)を得た。
【0082】
【表1】
【0083】
<製造例7>[結晶性ポリエステルブロック樹脂(C-1)の製造]
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計、冷却管及び窒素導入管を備えた反応容器に、窒素を導入しながら結晶性ポリエステル樹脂(c0-1)42.2重量部、結晶性ポリエステル樹脂(c0-3)52.8重量部、酢酸エチル100重量部を入れ、60℃に昇温し、均一に溶解させ、次いで結合剤として、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)5重量部を、窒素を導入しながら投入した。
次いで90℃に昇温し、10時間かけてウレタン化反応を行い、結晶性ポリエステルブロック樹脂(C-1)の酢酸エチル溶液を得た後酢酸エチルを留去し、結晶性ポリエステルブロック樹脂(C-1)を得た。結晶性ポリエステルブロック樹脂(C-1)のNCO含有率は0%であった。
【0084】
<製造例8、9、12~14>[結晶性ポリエステルブロック樹脂(C-2)、(C-3)及び(C-6)~(C-8)の製造]
以下の表2に記載の原料を用いた以外は製造例7と同様にして、結晶性ポリエステルブロック樹脂(C-2)、(C-3)及び(C-6)~(C-8)を得た。結晶性ポリエステルブロック樹脂(C-2)、(C-3)及び(C-6)~(C-8)のNCO含有率はそれぞれ0%であった。
【0085】
<製造例10>[結晶性ポリエステルブロック樹脂(C-4)の製造]
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計、冷却管及び窒素導入管を備えた反応容器に、窒素を導入しながら結晶性ポリエステル樹脂(c0-2)19.0重量部、結晶性ポリエステル樹脂(c0-5)76.0重量部、酢酸エチル100重量部を入れ、60℃に昇温し、均一に溶解させ、次いで結合剤として、ビスフェノールAジグリシジルエーテル5重量部を、窒素を導入しながら投入した。
次いで90℃に昇温し、10時間かけて付加反応を行い、結晶性ポリエステルブロック樹脂(C-4)の酢酸エチル溶液を得た後酢酸エチルを留去し、結晶性ポリエステルブロック樹脂(C-4)を得た。結晶性ポリエステルブロック樹脂(C-4)のエポキシ当量は0であった。
【0086】
<製造例11>[結晶性ポリエステルブロック樹脂(C-5)の製造]
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計、冷却管及び窒素導入管を備えた反応容器に、窒素を導入しながら結晶性ポリエステル樹脂(c0-2)42.2重量部、酢酸エチル100重量部を入れ、60℃に昇温し、均一に溶解させ、次いで結合剤として、イソホロンジイソシアネート(IPDI)5重量部を、窒素を導入しながら投入した。
次いで90℃に昇温し、10時間かけてウレタン化反応を行い、その後、結晶性ポリエステル樹脂(c0-4)52.8重量部を入れ、更に10時間かけてウレタン化反応を行い、結晶性ポリエステルブロック樹脂(C-5)の酢酸エチル溶液を得た後酢酸エチルを留去し、結晶性ポリエステルブロック樹脂(C-5)を得た。結晶性ポリエステルブロック樹脂(C-5)のNCO含有率は0%であった。
【0087】
【表2】
【0088】
<製造例15>[非結晶性ポリエステル樹脂(A-1)の合成]
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールA・PO2モル付加物235重量部、ビスフェノールA・PO3モル付加物196重量部、ビスフェノールA・EO2モル付加物243重量部、トリメチロールプロパン9重量部、テレフタル酸226重量部、アジピン酸40重量部及び縮合触媒としてチタニウムジイソプロポキシビストリエタノールアミネート2重量部を入れ、次いで230℃まで徐々に昇温しながら、0.5~2.5kPaの減圧下に10時間反応させた。次いで180℃まで冷却し、無水トリメリット酸28重量部を加え、常圧密閉下1時間反応後、取り出し、非結晶性ポリエステル樹脂(A-1)を得た。
【0089】
<製造例16>[非結晶性ポリエステル樹脂(A-2)の合成]
製造例15において、ビスフェノールA・PO2モル付加物235重量部、ビスフェノールA・PO3モル付加物196重量部、ビスフェノールA・EO2モル付加物243重量部、トリメチロールプロパン9重量部、テレフタル酸226重量部、アジピン酸40重量部をプロピレングリコール826重量部、トリメチロールプロパン27重量部、テレフタル酸584重量部、アジピン酸87重量部に変更した他は製造例15と同様にして、結晶性ポリエステル樹脂(A-2)を得た。
【0090】
<製造例17>[非結晶性ポリビニル樹脂(A-3)の合成]
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計、滴下ロート及び窒素導入管を備えた反応容器に、キシレン250重量部を投入し、別のガラス製ビーカーに、スチレン395重量部、n-ブチルアクリレート105重量部、ジ-t-ブチルパーオキサイド5重量部を投入したものを40℃で撹拌、混合して単量体溶液を調製し、滴下ロートに投入した。反応容器の気相部の窒素置換を行った後に密閉下70℃で2時間かけて単量体溶液を滴下し、滴下終了から6時間、70℃で熟成し、非結晶性ポリビニル樹脂(A-3)溶液を得た後、キシレンを留去して、非結晶性ポリビニル樹脂(A-3)を得た。
【0091】
【表3】
【0092】
<製造例18>[微粒子分散液(O-1)の製造]
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計、冷却管及び窒素導入管を備えた反応容器に、水690.0重量部、ポリオキシエチレンモノメタクリレート硫酸エステルのナトリウム塩「エレミノールRS-30」[三洋化成工業(株)製]9.0重量部、スチレン90.0重量部、メタクリル酸90.0重量部、アクリル酸ブチル110.0重量部及び過硫酸アンモニウム1.0重量部を投入し、350回転/分で15分間撹拌したところ、白色の乳濁液が得られた。
次いで75℃まで昇温し、同温度で5時間反応させた。更に、1重量%過硫酸アンモニウム水溶液30重量部加え、75℃で5時間熟成してビニル樹脂(スチレン-メタクリル酸-アクリル酸ブチル-メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩の共重合体)の微粒子分散液(O-1)を得た。
微粒子分散液に分散されている粒子の体積平均粒径を、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置「LA-920」[(株)堀場製作所製]を用いて測定したところ、0.1μmであった。微粒子分散液(O-1)の一部を取り出し、Tg及びMwを測定したところ、Tgは65℃であり、Mwは150,000であった。
【0093】
<製造例19>[着色剤分散液(P-1)の製造]
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計、冷却管及び窒素導入管を備えた反応容器に、プロピレングリコール557重量部、テレフタル酸ジメチルエステル569重量部、アジピン酸184重量部及び縮合触媒としてテトラブトキシチタネート3重量部を投入し、180℃で窒素気流下に、生成するメタノールを留去しながら8時間反応させた。次いで230℃まで徐々に昇温しながら、窒素気流下に、生成するプロピレングリコール及び水を留去しながら4時間反応させ、更に0.007~0.026MPaの減圧下に1時間反応させた。回収されたプロピレングリコールは175重量部であった。
次いで180℃まで冷却し、無水トリメリット酸121重量部を加え、常圧密閉下で2時間反応後、220℃、常圧で軟化点が180℃になるまで反応させ、ポリエステル樹脂(Mn=8,500)を得た。
ビーカーに、フタロシアニンブルー20重量部と着色剤分散剤「ソルスパーズ28000」[アビシア(株)製]4重量部、得られたポリエステル樹脂20重量部及び酢酸エチル56重量部を投入し、撹拌して均一分散させた後、ビーズミルによってフタロシアニンブルーを微分散して、着色剤分散液(P-1)を得た。着色剤分散液(P-1)の「LA-920」で測定した体積平均粒径は0.2μmであった。
【0094】
<製造例20>[ワックス(w-1)の製造]
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計及び滴下ボンベを備えた耐圧反応容器に、キシレン454重量部、熱減成型ポリオレフィン(低分子量ポリエチレン) 「サンワックス LEL-400」[軟化点:128℃、三洋化成工業(株)製]150重量部を投入し、窒素置換後撹拌下170℃に昇温し、同温度でスチレン595重量部、メタクリル酸メチル255重量部、ジ-t-ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート34重量部及びキシレン119重量部の混合溶液を3時間かけて滴下し、更に同温度で30分間保持した。次いで0.039MPaの減圧下でキシレンを留去し、変性ワックス(w-1)を得た。
変性ワックス(w-1)のグラフト鎖のSP値は10.35(cal/cm1/2、Mnは1,900、Mwは5,200、Tgは56.9℃であった。
【0095】
<製造例21>[離型剤分散液(W-1)の製造]
撹拌装置、加熱冷却装置、冷却管及び温度計を備えた反応容器に、パラフィンワックス「HNP-9」[融解熱最大ピーク温度:73℃、日本精鑞(株)製]10重量部、変性ワックス(w-1)1重量部及び酢酸エチル33重量部を投入し、撹拌下78℃に昇温し、同温度で30分間撹拌後、1時間かけて30℃まで冷却してパラフィンワックスを微粒子状に晶析させ、更にウルトラビスコミル(アイメックス製)で湿式粉砕し、離型剤分散液(W-1)を得た。得られたパラフィンワックス微粒子の体積平均粒径は0.25μmであった。
【0096】
<実施例1>
結晶性ポリエステルブロック樹脂(C-1)10重量部と、非結晶性ポリエステル樹脂(A-1)90重量部とを乾式配合し、トナーバインダー(R-1)を得た。
撹拌装置及び温度計を備えた反応容器に、着色分散液(P-1)30重量部、離型剤分散液(W-1)140重量部、トナーバインダー(R-1)100重量部及び酢酸エチル153重量部を投入し、撹拌してトナーバインダーを均一に溶解させ、樹脂溶液(D-1)を得た。ビーカーに、イオン交換水170.2重量部、微粒子分散液0.3重量部、カルボキシメチルセルロースナトリウム1重量部、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの48.5重量%水溶液「エレミノールMON-7」[三洋化成工業(株)製]36重量部及び酢酸エチル15.3重量部を投入し、撹拌して均一に溶解した。次いで、TKオートホモミキサーを10,000rpmに撹拌しながら、樹脂溶液(D-1)63.8重量部投入し2分間撹拌した。次いでこの混合液を撹拌装置、加熱冷却装置、冷却管及び温度計を備えた反応容器に移し、50℃で混合液中の酢酸エチル濃度が0.5重量%以下となるまで酢酸エチルを留去し、樹脂粒子の水性樹脂分散体を得た。次いで洗浄、濾別し、40℃で18時間乾燥を行い、揮発分を0.5重量%以下として、樹脂粒子(S-1)を得た。
【0097】
<実施例2~7、比較例1~2>
以下の表4に記載の原料を用いた以外は実施例1と同様にして、樹脂粒子(S-2)~(S-7)、(S’-1)~(S’-2)を得た。
【0098】
樹脂粒子(S-1)~(S-7)、(S’-1)~(S’-2)について下記の方法で体積平均粒径を測定し、耐熱保存安定性及び低温定着性を評価した。結果を表4に示す。
【0099】
[1]体積平均粒径
樹脂粒子(S-1)~(S-7)、(S’-1)~(S’-2)を水に分散して、コールターカウンター「マルチサイザーIII」(ベックマンコールター社製)で体積平均粒径を測定した。
【0100】
[2]耐熱保存安定性
樹脂粒子(S-1)~(S-7)、(S’-1)~(S’-2)を40℃の雰囲気で1日間静置し、ブロッキングの程度を目視で判断し、下記の基準で耐熱保存安定性を評価した。
[評価基準]
○:ブロッキングが発生していない。
×:ブロッキングが発生している。
【0101】
[3]低温定着性
熱定着機を外したプリンターを用いて紙面上に0.6mg/cmとなるよう均一に樹脂粒子(S-1)~(S-7)、(S’-1)~(S’-2)を載せた。この紙を加圧ローラーを有する熱定着機に定着速度(加熱ローラ周速)213mm/sec、定着圧力(加圧ローラ圧)10kg/cmの条件で通して、コールドオフセットの発生温度を測定した。コールドオフセットの発生温度が低いほど低温定着性に優れることを意味する。
【0102】
[4]飽和帯電量
樹脂粒子0.5gとフェライトキャリア(パウダーテック社製、F-150)20gとを50mlのガラス瓶に入れ、これを23℃、50%R.H.で8時間以上調湿した後、ターブラーシェーカーミキサー(ウイリー・ア・バショッフェン社製)にて50rpm×10分間摩擦撹拌し帯電量を測定した。測定にはブローオフ帯電量測定装置[東芝ケミカル(株)製]を用いた。摩擦時間10分の帯電量をもって飽和帯電量とした。なお、トナー用とした場合にはマイナス帯電量が高いほど帯電特性が優れており、-25μC/g以下であれば帯電特性が良好であると判断される。
【0103】
[5]帯電安定性
上記飽和帯電量の測定において、調湿条件を(1)温度23℃、湿度50%から(2)温度40℃、湿度85%に変更した以外は、同様の操作を行い、樹脂粒子の帯電量(μC/g)を測定した。調湿条件(2)での帯電量と調湿条件(1)での帯電量との比[Q(40℃、85%)/Q(23℃、50%)]を計算し、これを帯電安定性の指標とした。
[評価基準]
○:0.5以上
△:0.3以上0.5未満
×:0.3未満
【0104】
【表4】
【0105】
なお、製造例及び実施例に用いた原料は以下の通りである。
・エチレングリコール[日本触媒製]
・1,6-ヘキサンジオール[宇部興産製]
・1,9-ノナンジオール[クラレ製]
・1,12-ドデカンジオール[宇部興産製]
・セバシン酸[豊国製油製]
・アジピン酸[旭化成製]
・ドデカン二酸[宇部興産製]
・コハク酸[三井化学製]
・ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)[旭化成製]
・ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)[東ソー製]
・イソホロンジイソシアネート(IPDI)[東京化成工業製]
・ビスフェノールAジグリシジルエーテル[東京化成工業製]
・ビスフェノールA・PO2モル付加物(BP-2P)[三洋化成工業製]
・ビスフェノールA・PO3モル付加物(BP-3P)[三洋化成工業製]
・ビスフェノールA・EO2モル付加物(BPE-20)[三洋化成工業製]
・トリメチロールプロパン(TMP)[三菱ガス化学製]
・テレフタル酸[三井化学製]
・チタンジイソプロポキシビストリエタノールアミネート[三洋化成工業製]
・無水トリメリット酸[百川化工有限公司製]
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明のトナーバインダー及び前記トナーバインダーを含有する樹脂粒子は、トナーの場合に低温定着性及び耐熱保存安定性が両立可能であり、帯電性に優れる。そのため、電子写真、静電記録、静電印刷等に用いる静電荷像現像用トナー用樹脂粒子及びトナーバインダーとして有用である。