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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-05
(45)【発行日】2022-08-16
(54)【発明の名称】液体循環装置及び液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/17 20060101AFI20220808BHJP
   B41J 2/175 20060101ALI20220808BHJP
   B41J 2/18 20060101ALI20220808BHJP
   B41J 2/195 20060101ALI20220808BHJP
【FI】
B41J2/17
B41J2/175 501
B41J2/18
B41J2/195
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018193691
(22)【出願日】2018-10-12
(65)【公開番号】P2020059256
(43)【公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-07-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 哲哉
【審査官】大浜 登世子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-144611(JP,A)
【文献】特開2015-107599(JP,A)
【文献】特開2014-180828(JP,A)
【文献】国際公開第2016/208533(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0201734(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 - 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次側が液体を吐出する液体吐出ヘッドに接続される第1流路管と、
前記第1流路管の中途に設けられる第1ポンプと、
前記第1流路管の中途であって、前記第1ポンプの二次側に設けられ、前記第1流路管の流路断面積よりも大きい流路断面積に形成される第1拡径部と、
一次側が前記液体吐出ヘッドに接続される第2流路管と、
前記第2流路管の中途に設けられる第2ポンプと、
前記第2流路管の中途であって、前記第2ポンプの一次側に設けられ、前記第2流路管の流路断面積よりも大きい流路断面積に形成される第2拡径部と、
前記液体吐出ヘッドの一次側に設けられ、前記液体を加熱するヒータと、
前記第2拡径部にのみ設けられ、前記液体の温度を検出する温度センサと、
前記液体の目標温度を記憶する記憶部と、
前記温度センサで検出された検出値及び前記目標温度に基づいて前記ヒータを制御する制御部と、
を備える液体循環装置。
【請求項2】
前記ヒータに設けられたヒータ用温度センサを備え、
前記記憶部は、前記ヒータの上限温度を記憶し、
前記制御部は、前記ヒータ用温度センサで検出された検出値が前記ヒータの上限温度を超えている場合に前記ヒータを停止する、請求項1に記載の液体循環装置。
【請求項3】
液体を吐出する液体吐出ヘッドと、
二次側が前記液体吐出ヘッドに接続される第1流路管と、
前記第1流路管の中途に設けられる第1ポンプと、
前記第1流路管の中途であって、前記第1ポンプの二次側に設けられ、前記第1流路管の流路断面積よりも大きい流路断面積に形成される第1拡径部と、
一次側が前記液体吐出ヘッドに接続される第2流路管と、
前記第2流路管の中途に設けられる第2ポンプと、
前記第2流路管の中途であって、前記第2ポンプの一次側に設けられ、前記第2流路管の流路断面積よりも大きい流路断面積に形成される第2拡径部と、
前記液体吐出ヘッドの一次側に設けられ、前記液体を加熱するヒータと、
前記第2拡径部にのみ設けられ、前記液体の温度を検出する温度センサと、
前記液体の目標温度を記憶する記憶部と、
前記温度センサで検出された検出値及び前記目標温度に基づいて前記ヒータを制御する制御部と、
を備える液体吐出装置。
【請求項4】
前記ヒータに設けられたヒータ用温度センサを備え、
前記記憶部は、前記ヒータの上限温度を記憶し、
前記制御部は、前記ヒータ用温度センサで検出された検出値が前記ヒータの上限温度を超えている場合に前記ヒータを停止する、請求項3に記載の液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、液体循環装置及び液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従前から、インク等の液体を循環させる液体循環装置を備え、液体吐出ヘッドから液体を紙葉類等の記録媒体に噴射する液体吐出装置が知られている。このような液体吐出装置は、印字性能等の向上を目的として、液体の吐出に適した粘度にすべく、液体を加熱するヒータを備える構成も知られている。このようなヒータを設ける液体循環装置は、温度センサをヒータの加熱部と同じ部位に設け、液体吐出ヘッド内に流入する液体の温度を想定し、この想定値に基づいてヒータを制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-132159号公報
【文献】特開2017-105212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、液体を適切な温度に加熱できる液体循環装置及び液体吐出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の液体循環装置は、第1流路管と、第1ポンプと、第1拡径部と、第2流路管と、第2ポンプと、第2拡径部と、ヒータと、温度センサと、記憶部と、制御部と、を備える。第1流路管は、二次側が液体を吐出する液体吐出ヘッドに接続される。第1ポンプは、前記第1流路管の中途に設けられる。第1拡径部は、前記第1流路管の中途であって、前記第1ポンプの二次側に設けられ、前記第1流路管の流路断面積よりも大きい流路断面積に形成される。第2流路管は、一次側が前記液体吐出ヘッドに接続される。第2ポンプは、前記第2流路管の中途に設けられる。第2拡径部は、前記第2流路管の中途であって、前記第2ポンプの一次側に設けられ、前記第2流路管の流路断面積よりも大きい流路断面積に形成される。ヒータは、前記液体吐出ヘッドの一次側に設けられ、前記液体を加熱する。温度センサは、前記第2拡径部にのみ設けられ、前記液体の温度を検出する。記憶部は、前記液体の目標温度を記憶する。制御部は、前記温度センサで検出された検出値及び前記目標温度に基づいて前記ヒータを制御する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1の実施形態に係るインクジェット記録装置の構成を示す斜視図。
図2】同インクジェット記録装置の構成を示す説明図。
図3】同インクジェット記録装置の構成を示すブロック図。
図4】同インクジェット記録装置に設けられるインク循環装置の制御の一例を示す流れ図。
図5】同インク循環装置及び液体吐出ヘッド内のインク温度の相関を示す説明図。
図6】第2の実施形態に係るインクジェット記録装置の構成を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、第1の実施形態に係るインク循環装置(液体循環装置)13を用いたインクジェット記録装置(液体吐出装置)1について、図1乃至図3を用いて説明する。図1は、第1の実施形態に係るインクジェット記録装置1の構成を示す斜視図である。図2は、インクジェット記録装置1の構成を示す説明図である。図3は、インクジェット記録装置1の構成を示すブロック図である。
【0008】
図1乃至図3に示すように、インクジェット記録装置1は、単数又は複数のタンク11と、液体吐出ヘッド12と、タンク11及び液体吐出ヘッド12間でインク(液体)90を循環させるインク循環装置13と、インク循環装置13を収容するケース14と、プロセッサ(制御部)であるCPU(Central Processing Unit)15と、プログラムメモリ16と、RAM(Randum Access Memory)17と、通信I/F(InterFace)18と、ヘッドコントローラ19と、制御基板20と、を備えている。
【0009】
タンク11は、インクジェット記録装置1で吐出するインク90の種類と同数設けられる。ここで、インク90の種類とは、インク90の色や特性等である。本実施形態においては、1色のインク90を吐出するインクジェット記録装置1を用いて説明することから、タンク11は1つ設けられる。例えば、タンク11は、インク90が充填されており、インク循環装置13に装着される。なお、タンク11は、インク90の残量が低下したときに、インク90を補充可能な繰り返し使用される容器であってもよく、また、インク90の残量が低下したときにインク90が充填された容器を交換する、使い捨てタイプの容器であってもよい。
【0010】
図1及び図2に示すように、タンク11は、タンク本体11aと、タンク本体11aに設けられたエアフィルタ11bと、を備えている。タンク本体11aは、エアフィルタ11bを介して大気と連通する。
【0011】
液体吐出ヘッド12は、1色又は2色のインク90を吐出する。本実施形態においては、インクジェット記録装置1は1色のインク90を吐出する構成であることから、液体吐出ヘッド12は、1色のインク90を吐出する構成を用いて説明する。液体吐出ヘッド12は、一方向に複数のノズル孔12aが配置された、単列又は複数列のノズル列12bを有する。液体吐出ヘッド12は、例えば、ノズル列12bを有するノズルプレートに、圧電素子や振動板からなるアクチュエータの複数の圧力室12cを対向配置させ、アクチュエータを駆動することで、圧力室12cのインク90を圧力室12cと対向するノズル孔12aから記録媒体に噴射する。
【0012】
図2に示すように、液体吐出ヘッド12は、内部に各圧力室12cにインク90を供給するインク流路と、インク流路の一次側に設けられた供給口12dと、インク流路の二次側に設けられた吐出口12eと、を有する。なお、供給口12d及び吐出口12eは、ノズル孔12aの数やノズル列12bの列数に応じて、単数又は複数設けられる。液体吐出ヘッド12は、例えば、複数のノズル孔12aが重力方向で下方に向かって開口する姿勢で配置される。
【0013】
図2に示すように、インク循環装置13は、第1流路管21と、第1ポンプ22と、第1拡径部23と、第1圧力センサ24と、第1バルブ25と、第2流路管31と、第2ポンプ32と、第2拡径部33と、第2圧力センサ34と、第2バルブ35と、ヒータ36と、第1温度センサ37と、第2温度センサ38と、を備える。
【0014】
図1及び図2に示すように、第1流路管21は、一次側がタンク11に接続され、二次側が液体吐出ヘッド12の供給口12dに接続される。第1流路管21は、例えば、樹脂材料で形成されたチューブである。第1流路管21は、例えば、所定の長さに形成された複数のチューブにより構成され、このチューブを各構成品に所謂パイプ接続で接続できる。
【0015】
第1ポンプ22は、例えばダイアフラムポンプである。第1ポンプ22は、タンク11のインク90を液体吐出ヘッド12に供給する。第1ポンプ22は、第1流路管21の中途に設けられる。
【0016】
図2に示すように、第1拡径部23は、第1流路管21の中途であって、第1ポンプ22の二次側に設けられる。第1拡径部23は、インク90の流れ方向に対して直交する流路断面積が第1流路管21のインク90の流れ方向に対して直交する流路断面積よりも大きく形成され、インク90の流れ方向で所定の長さに形成される。即ち、第1拡径部23は、第1ポンプ22及び液体吐出ヘッド12の間に、第1流路管21の流路断面積よりも流路断面積が大きい液室を構成する。第1拡径部23は、一次側の第1ポンプ22から吐出された、第1流路管21から液体吐出ヘッド12へ供給されるインク90の脈動を低減する。なお、第1拡径部23が構成する液室は、インク90の脈動を低減可能であれば、円柱状であっても、矩形柱状であってもよく、また、他の形状であってもよい。第1拡径部23は、例えば、第1ポンプ22と重力方向に沿って並んで配置される。
【0017】
図2に示すように、第1圧力センサ24は、第1拡径部23の二次側の第1流路管21に設けられる。第1圧力センサ24は、第1拡径部23の二次側の第1流路管21のインク90の圧力を検出する。
【0018】
図2に示すように、第1バルブ25は、第1拡径部23の二次側の第1流路管21に設けられる。例えば、第1バルブ25は、第1流路管21及び第1圧力センサ24の間に設けられる。第1バルブ25は、第1拡径部23の二次側の第1流路管21の流路を開閉する電磁弁である。第1バルブ25は、開閉することで第1流路管21内の圧力を調整する圧力調整機構である。
【0019】
図1及び図2に示すように、第2流路管31は、一次側が液体吐出ヘッド12の吐出口12eに接続され、二次側がタンク11に接続される。第2流路管31は、例えば、樹脂材料で形成されたチューブである。第2流路管31は、例えば、所定の長さに形成された複数のチューブにより構成され、このチューブを各構成品に所謂パイプ接続で接続できる。
【0020】
第2ポンプ32は、例えばダイアフラムポンプである。第2ポンプ32は、液体吐出ヘッド12内のインク流路を流れ、液体吐出ヘッド12で吐出されなかったインク90をタンク11に戻す。第2ポンプ32は、第2流路管31の中途に設けられる。
【0021】
図2に示すように、第2拡径部33は、第2流路管31の中途であって、第2ポンプ32の一次側に設けられる。第2拡径部33は、インク90の流れ方向に対して直交する流路断面積が第2流路管31のインク90の流れ方向に対して直交する流路断面積よりも大きく形成され、インク90の流れ方向で所定の長さに形成される。即ち、第2拡径部33は、液体吐出ヘッド12及び第2ポンプ32の間に、第2流路管31の流路断面積よりも流路断面積が大きい液室を構成する。第2拡径部33は、液体吐出ヘッド12から吐出された、二次側の第2ポンプ32に吸い込まれるインク90の脈動を低減する。なお、第2拡径部33が構成する液室は、インク90の脈動を低減可能であれば、円柱状であっても、矩形柱状であってもよく、また、他の形状であってもよい。第2拡径部33は、例えば、第2ポンプ32と重力方向に沿って並んで配置される。
【0022】
図2に示すように、第2圧力センサ34は、液体吐出ヘッド12の二次側であって、且つ、第2拡径部33の一次側の第2流路管31に設けられる。第2圧力センサ34は、液体吐出ヘッド12の二次側であって、且つ、第2拡径部33の一次側の第2流路管31のインク90の圧力を検出する。
【0023】
図2に示すように、第2バルブ35は、液体吐出ヘッド12の二次側であって、且つ、第2拡径部33の一次側の第2流路管31に設けられる。第2バルブ35は、例えば、第2流路管31及び第2圧力センサ34の間に設けられる。第2バルブ35は、第2拡径部33の二次側の第2流路管31の流路を開閉する電磁弁である。第2バルブ35は、開閉することで第2流路管31内の圧力を調整する圧力調整機構である。
【0024】
ヒータ36は、発熱することで加熱対象を加熱する加熱部を有する。ヒータ36の加熱部は、加熱対象に取り付けられる。図2に示すように、ヒータ36は、第1ポンプ22の二次側であって、且つ、液体吐出ヘッド12の供給口12dの一次側に設けられる。具体例として、ヒータ36は、第1ポンプ22の二次側であって、且つ、第1拡径部23の一次側の第1流路管21に設けられる。ヒータ36は、第1流路管21を加熱することで、第1流路管21を流れるインク90を加熱する。
【0025】
図2に示すように、第1温度センサ37は、液体吐出ヘッド12の吐出口12eの二次側であって、且つ、第2ポンプ32の一次側に設けられる。例えば、第1温度センサ37は、第2拡径部33に設けられ、第2拡径部33内のインク90の温度を検出する。図3に示すように、第1温度センサ37は、CPU15に電気的に接続され、検出した温度情報(検出値)を電気信号として、CPU15へ送信する。第1温度センサ37は、例えばサーミスタである。
【0026】
図2に示すように、第2温度センサ38は、ヒータ36に設けられる。第2温度センサ38は、ヒータ36の温度を検出する。図3に示すように、第2温度センサ38は、CPU15に電気的に接続され、検出した温度情報(検出値)を電気信号として、CPU15へ送信する。第2温度センサ38は、例えばサーミスタである。
【0027】
図1及び図2に示すように、ケース14は、例えば、内部に所定の容積の収容空間を有する直方体状に構成される。ケース14は、インク循環装置13の第1流路管21及び第2流路管31のタンク11及び液体吐出ヘッド12に接続される両端部側を除く各構成を収容する。
【0028】
図3に示すように、CPU15は、例えば、インクジェット記録装置1全体を制御する。CPU15は、プログラムを実行することによって、種々の処理を実行する。CPU15は、インクジェット記録装置1内のプログラムメモリ16、RAM17、通信I/F18、ヘッドコントローラ19、及び、制御基板20と電気的に接続される。CPU15は、外部装置からの動作指令に応じて、インクジェット記録装置1の各部への動作指示を出力、及び、各部から取得した種々の情報を外部装置へ通知可能に構成される。
【0029】
例えば、CPU15は、RAM17を使用するとともに、プログラムメモリ16に記憶したプログラムを実行することにより、種々の処理を行う。
【0030】
プログラムメモリ16は、記憶部である。プログラムメモリ16は、例えば、ROM(Read Only Memory)であり、プログラム及び制御データ等を記憶する書き換え不可の不揮発性メモリである。
【0031】
RAM17は、記憶部である。RAM17は、揮発性のメモリで構成される。RAM17は、例えば、ワーキングメモリである。RAM17には、例えば、ヒータ36によりインク90を加温するときに用いられる設定値が記憶されている。具体例として、RAM17は、インク90の加温に用いられる設定値として、インク90の目標温度と、ヒータ36を異常と判断する温度(上限温度)である閾値と、を記憶する。なお、閾値は、ヒータ36自身の温度の上限値が設定されるが、この閾値は、インク90の種類、周囲構成、及び、安全性等を考慮して適宜設定される。具体例として、閾値は、ヒータ36の周囲に存する周辺パーツの破損や装置の破壊等を回避することが可能なヒータ36の温度である。
【0032】
図3に示すように、通信I/F18は、ホスト制御装置100等の外部装置と通信するためのインターフェースである。たとえば、通信I/F18は、外部装置からの印刷要求に応じ、印刷用のデータを受信する。通信I/F18は、CPU15に電気的に接続され、外部装置とデータの送受信を行うインターフェースを構成する。
【0033】
図3に示すように、ヘッドコントローラ19は、CPU15からの指示に基づいて液体吐出ヘッド12を駆動させる。ヘッドコントローラ19は、液体吐出ヘッド12の駆動回路12fと電気的に接続する。
【0034】
図3に示すように、制御基板20は、CPU15、プログラムメモリ16、RAM17、通信I/F18及びヘッドコントローラ19を搭載する。制御基板20は、例えば、ケース14の中に収容され、第1ポンプ22、第1圧力センサ24、第1バルブ25、第2ポンプ32、第2圧力センサ34、第2バルブ35に電気的に接続される。制御基板20は、第1圧力センサ24及び第2圧力センサ34から発信される圧力値の信号を受信し、第1ポンプ22、第1バルブ25、第2ポンプ32及び第2バルブ35を駆動制御する駆動回路20aを有する。
【0035】
次に、CPU15が行う処理の具体例として、インク90の循環処理及びインク90の温度制御処理について、以下説明する。なお、図4は、インクジェット記録装置1に設けられるインク循環装置13のインク90の温度制御処理の流れを説明するための流れ図である。
【0036】
先ず、液体吐出装置1が起動すると、CPU15は、インク循環装置13を駆動し、タンク11及び液体吐出ヘッド12間でインク(液体)90の循環を行う(ACT1)。具体例として、CPU15は、第1ポンプ22及び第2ポンプ32を駆動し、タンク11内のインク90を液体吐出ヘッド12へ供給するとともに、液体吐出ヘッド12のインクをタンク11へ戻す。
【0037】
次に、ホスト制御装置100等からインク90の加温の指令を受信すると(ACT2)、CPU15は、第1温度センサ37で検出されたインク90の温度(検出値)がRAM17に記憶されたインク90の目標温度以下であるか否かを判断する(ACT3)。第1温度センサ37で検出されたインク90の温度が、インク90の目標温度よりも高い場合(ACT3のNO)には、CPU15は、ヒータ36をオフにするか、又は、ヒータ36のオフを維持する(ACT4)。
【0038】
第1温度センサ37で検出されたインク90の温度がインク90の目標温度以下である場合(ACT3のYES)には、CPU15は、第2温度センサ38で検出されたヒータ36の温度(検出値)がRAM17に記憶された閾値以下であるか否かを判断する(ACT5)。第2温度センサ38で検出されたヒータ36の温度が閾値よりも高い場合(ACT5のNO)には、CPU15は、ヒータ36の異常であると判断し(ACT6)、ヒータ36をオフにするか、又は、ヒータ36のオフを維持する(ACT4)。第2温度センサ38で検出されたヒータ36の温度が閾値以下である場合(ACT5のYES)には、CPU15は、ヒータ36が正常であると判断し(ACT7)、ヒータ36をオンにするか、又は、ヒータ36のオンを維持する(ACT8)。
【0039】
次に、CPU15は、停止指示があるか否かを判断する(ACT9)。なお、ここで、停止指示とは、ホスト制御装置100等からの外部指令、第1温度センサ37及び第2温度センサ38で検出した温度の異常を検出したときにプログラム等によって出される停止指示等が挙げられる。また、停止指示とは、ヒータ36によるインク90の加温の停止指示やインク90の循環の停止指示等が挙げられる。本実施形態においては、停止指示は、例えば、ホスト制御装置100からのインク90の循環の停止指示である。
【0040】
インク90の循環の停止指示がない場合(ACT9のNO)には、ACT3に戻り、CUP15は、インク90の加温制御処理を繰り返し行う。インク90の循環の停止指示がある場合(ACT9のYES)には、CPU15は、ヒータ36をオフにするか、又は、ヒータ36のオフを維持する(ACT10)とともに、第1ポンプ22及び第2ポンプ32を停止する(ACT11)。
【0041】
このように構成されたインクジェット記録装置1は、液体吐出ヘッド12の一次側であって、第1ポンプ22の二次側の第1流路管21にヒータ36を設ける構成としたことで、液体吐出ヘッド12に供給されるインク90を加熱することができる。
【0042】
また、インクジェット記録装置1は、液体吐出ヘッド12の二次側に第1温度センサ37を設け、第1温度センサ37で検出された温度がインク90の目標温度以下である場合に、ヒータ36によりインク90を加熱する構成である。この構成によりインクジェット記録装置1は、液体吐出ヘッド12内のインク90の温度と相関性がある第1温度センサ37で検出したインク90の温度に基づいて、ヒータ36の制御を行うことが可能となる。
【0043】
図5は、第1温度センサ37で検出したインク90の温度を実線で示し、液体吐出ヘッド12内に設けたサーミスタにより検出した液体吐出ヘッド12内のインク90の温度を破線で示す説明図である。図5に示すように、第1温度センサ37で検出した第2拡径部33の温度と、サーミスタにより検出した液体吐出ヘッド12内のインク90の温度とには相関性があることがわかる。
【0044】
このように、インクジェット記録装置1は、第1温度センサ37で検出したインク90の温度に基づいてヒータ36のオン及びオフを制御することで、液体吐出ヘッド12に温度センサ等の温度検出を行う手段を設けなくても、インク90の温度に基づいて、ヒータ36を制御することができる。
【0045】
また、インクジェット記録装置1は、第1温度センサ37で検出したインク90の温度を目標温度と比較してヒータ36を制御するフィードバック制御が可能となる。これにより、インクジェット記録装置1は、インク90が適切な粘度となるように、インク90の温度を管理することができる。結果、インクジェット記録装置1は、液体吐出ヘッド12が、正確、且つ、安定して、インク90を吐出することができるため、高い印字性能を得ることができる。
【0046】
また、インクジェット記録装置1は、第2温度センサ38で検出したヒータ36の温度を、ヒータ36の異常と判断する温度である閾値と比較し、検出したヒータ36の温度が閾値以上である場合に、ヒータ36の異常と判断してヒータ36をオフにする。この構成により、インクジェット記録装置1は、ヒータ36による異常加熱によって、過剰な加温によるヒータ36の周囲に存する周辺パーツの破損や装置の破壊等を回避することが可能となる。結果、インクジェット記録装置1は、高い安全性を確保することができる。
【0047】
上述したように、一実施形態に係るインクジェット記録装置1によれば、液体(インク90)を適切な温度に加熱することができる。
【0048】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。例えば、上述した例では、タンク11、インク循環装置13及び液体吐出ヘッド12をそれぞれ一つ備える構成を説明したがこれに限定されない。インクジェット記録装置1は、多種のインクを吐出可能な構成としてもよい。具体例として、図6に示す第2の実施形態に係るインクジェット記録装置1Aのように、2種類の異なるインク90を吐出可能とするために、2つのタンク11と、一つの液体吐出ヘッド12Aと、二つのタンク11及び液体吐出ヘッド12A間でインク90を循環させる2つのインク循環装置13と、を備える構成としてもよい。
【0049】
同様に、4色のインク90を噴射するインクジェット記録装置として、4つのタンク11、2つの液体吐出ヘッド12A、4つのインク循環装置13及び2つのケース14を設ける構成としてもよい。即ち、用いるインク90の色や種類に応じて、各構成を適宜組み合わせることで、多種又は多色のインク90を噴射可能なインクジェット記録装置を提供することができる。
【0050】
また、上述した例では、インク90の目標温度及び閾値をRAM17に記憶する構成を説明したがこれに限定されない。例えば、ヒータ36の異常を判断するための閾値は、設定できない構成とするために、プログラムメモリ16に記憶する構成としてもよい。また、例えば、インク90の目標温度をホスト制御装置100等によって設定し、書き換え可能な構成としてもよい。
【0051】
また、上述した例では、CPU15は、ヒータ36のオン及びオフを行う制御を説明したがこれに限定されない。例えば、CPU15は、ヒータ36の加熱温度を可変させる構成としてもよい。このような構成とした場合、CPU15は、第1温度センサ37で検出したインク90の温度に基づいてヒータ36の加熱温度を可変させるフィードバック制御を行えば良い。
【0052】
また、上述した例のインクジェット記録装置1、1Aの構成に加え、液体吐出ヘッド12を移動する移動機構を有していても良い。また、上述した例のインクジェット記録装置1、1Aの構成に加え、記録媒体を搬送する搬送モータや、液体吐出ヘッド12の位置を制御するキャリッジモータ等を有していても良い。また、インクジェット記録装置1、1Aで用いる液体はインク90に限られるものではなく、インク90以外の液体を吐出する液体吐出装置に用いることもできる。インク90以外を用いる液体吐出装置としては、例えばプリント配線基板の配線パターンを形成するための導電性粒子を含む液体を吐出する装置等であっても良い。
【0053】
また、液体吐出装置は、例えば3Dプリンタ、産業用の製造機械、医療用途にも用いることが可能である。また、液体吐出ヘッド12のアクチュエータは、振動板を電気で変形させて圧力室12cを可変させる構成であっても、ヒータ等の熱エネルギーを利用してノズルからインク90を吐出する構成であってもよい。
【0054】
また、上述した例では、CPU15が第2温度センサ38で検出したヒータ36の温度と閾値を判断して、ヒータ36の正常又は異常を判断する構成を説明したがこれに限定されない。例えば、CPU15は、ヒータ36の正常又は異常を判断した後に、ホスト制御装置100に判断した情報を送信し、ホスト制御装置100にヒータ36の状態を表示する構成としてもよい。
【0055】
また、上述した例では、液体吐出装置1は、記憶部としてプログラムメモリ16及びRAM17を備える構成を説明したがこれに限定されず、他の記憶装置であってもよい。
【0056】
また、上述した例では、CPU15がインクジェット記録装置1全体を制御する構成を説明したがこれに限定されない。例えば、CPU15は、インク循環装置13のみを制御し、そして、インクジェット記録装置1の他の構成をCPU15以外のプロセッサである処理装置が処理する構成であってもよい。また、上述した例では、プロセッサとしてCPU15を用いる構成を説明したが、プロセッサは、CPU15に限定されず、適宜設定可能である。
【0057】
以上述べた少なくとも一つの実施形態の液体循環装置及び液体吐出装置によれば、液体を適切な温度に加熱することができる。
【0058】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明と同等の記載を付記する。
[1] 二次側が液体を吐出する液体吐出ヘッドに接続される第1流路管と、
前記第1流路管の中途に設けられる第1ポンプと、
前記第1流路管の中途であって、前記第1ポンプの二次側に設けられ、前記第1流路管の流路断面積よりも大きい流路断面積に形成される第1拡径部と、
一次側が前記液体吐出ヘッドに接続される第2流路管と、
前記第2流路管の中途に設けられる第2ポンプと、
前記第2流路管の中途であって、前記第2ポンプの一次側に設けられ、前記第2流路管の流路断面積よりも大きい流路断面積に形成される第2拡径部と、
前記液体吐出ヘッドの一次側に設けられ、前記液体を加熱するヒータと、
を備える液体循環装置。
[1] 前記液体吐出ヘッドの二次側に、前記液体の温度を検出する温度センサを備える、[1]に記載の液体循環装置。
[3] 前記液体の目標温度を記憶する記憶部と、
前記温度センサで検出された検出値及び前記目標温度に基づいて前記ヒータを制御する制御部と、
を備える[2]に記載の液体循環装置。
[4] 前記ヒータに設けられたヒータ用温度センサを備え、
前記記憶部は、前記ヒータの上限温度を記憶し、
前記制御部は、前記ヒータ用温度センサで検出された検出値が前記ヒータの上限温度を超えている場合に前記ヒータを停止する、[3]に記載の液体循環装置。
[5] 液体を吐出する液体吐出ヘッドと、
二次側が前記液体吐出ヘッドに接続される第1流路管と、
前記第1流路管の中途に設けられる第1ポンプと、
前記第1流路管の中途であって、前記第1ポンプの二次側に設けられ、前記第1流路管の流路断面積よりも大きい流路断面積に形成される第1拡径部と、
一次側が前記液体吐出ヘッドに接続される第2流路管と、
前記第2流路管の中途に設けられる第2ポンプと、
前記第2流路管の中途であって、前記第2ポンプの一次側に設けられ、前記第2流路管の流路断面積よりも大きい流路断面積に形成される第2拡径部と、
前記液体吐出ヘッドの一次側に設けられ、前記液体を加熱するヒータと、
を備える液体吐出装置。
【符号の説明】
【0059】
1、1A…インクジェット記録装置(液体吐出装置)、11…タンク、11a…タンク本体、11b…エアフィルタ、12、12A…液体吐出ヘッド、12a…ノズル孔、12b…ノズル列、12c…圧力室、13…インク循環装置(液体循環装置)、14…ケース、15…CPU、16…プログラムメモリ、17…RAM、18…通信I/F、19…ヘッドコントローラ、20…制御基板、20a…駆動回路、21…第1流路管、22…第1ポンプ、23…第1拡径部、24…第1圧力センサ、25…第1バルブ、31…第2流路管、32…第2ポンプ、33…第2拡径部、34…第2圧力センサ、35…第2バルブ、36…ヒータ、37…第1温度センサ、38…第2温度センサ、90…インク(液体)、100…ホスト制御装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6