(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-05
(45)【発行日】2022-08-16
(54)【発明の名称】AD変換装置及びそれを備えたミリ波レーダシステム
(51)【国際特許分類】
H03M 3/02 20060101AFI20220808BHJP
【FI】
H03M3/02
(21)【出願番号】P 2018219382
(22)【出願日】2018-11-22
【審査請求日】2021-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】大島 俊
(72)【発明者】
【氏名】松井 徹郎
(72)【発明者】
【氏名】深澤 光弥
(72)【発明者】
【氏名】舘山 克樹
(72)【発明者】
【氏名】藤原 正樹
【審査官】北村 智彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-182610(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0079324(US,A1)
【文献】特開2005-217514(JP,A)
【文献】特開2014-090308(JP,A)
【文献】特開平11-308110(JP,A)
【文献】特開2017-046058(JP,A)
【文献】米国特許第05936562(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03M 3/00-9/00
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プローブ信号を生成するプローブ信号生成回路と、
アナログ回路によって構成された第1アナログ積分器と、前記第1アナログ積分器の出力信号と前記プローブ信号との加算信号を量子化する第1量子化器と、を有する第1変調器と、
前記第1量子化器において発生した量子化誤差と、前記プローブ信号と、を抽出した抽出信号のフィルタリングを行うアナログフィルタと、
前記アナログフィルタの出力信号をAD変換する、前記第1変調器よりも動作周波数の低い第1AD変換器と、
前記プローブ信号に応じた前記第1量子化器の出力信号を観測することによって前記第1変調器の伝達関数である第1伝達関数を探索する第1適応フィルタと、
前記プローブ信号に応じた前記第1AD変換器の出力信号を観測することによって、前記第1変調器の出力から前記アナログフィルタを介して前記第1AD変換器にかけての伝達関数である第2伝達関数を探索する第2適応フィルタと、
前記第1適応フィルタによる探索結果と、前記第2適応フィルタによる探索結果と、を用いて、前記第1量子化器の出力信号を、当該第1量子化器の出力信号に含まれる前記量子化誤差及び前記プローブ信号をキャンセルしたうえで出力する、ノイズキャンセル回路と、
を備え
、
前記アナログフィルタは、前記第2適応フィルタによる探索結果に応じて周波数特性を調整可能に構成されている、
MASH型かつシグマデルタ型のAD変換装置。
【請求項2】
前記アナログフィルタは、
前記第2適応フィルタによる探索結果に応じて、前記周波数特性を決定する容量値を調整可能に構成された容量素子を有する、
請求項
1に記載のAD変換装置。
【請求項3】
プローブ信号を生成するプローブ信号生成回路と、
アナログ回路によって構成された第1アナログ積分器と、前記第1アナログ積分器の出力信号と前記プローブ信号との加算信号を量子化する第1量子化器と、を有する第1変調器と、
前記第1量子化器において発生した量子化誤差と、前記プローブ信号と、を抽出した抽出信号のフィルタリングを行うアナログフィルタと、
前記アナログフィルタの出力信号をAD変換する、前記第1変調器よりも動作周波数の低い第1AD変換器と、
前記プローブ信号に応じた前記第1量子化器の出力信号を観測することによって前記第1変調器の伝達関数である第1伝達関数を探索する第1適応フィルタと、
前記プローブ信号に応じた前記第1AD変換器の出力信号を観測することによって、前記第1変調器の出力から前記アナログフィルタを介して前記第1AD変換器にかけての伝達関数である第2伝達関数を探索する第2適応フィルタと、
前記第1適応フィルタによる探索結果と、前記第2適応フィルタによる探索結果と、を用いて、前記第1量子化器の出力信号を、当該第1量子化器の出力信号に含まれる前記量子化誤差及び前記プローブ信号をキャンセルしたうえで出力する、ノイズキャンセル回路と、
を備え
、
前記第1AD変換器は、逐次比較型AD変換器であって、
前記アナログフィルタは、前記第1AD変換器に設けられた容量素子を用いて構成されている、
MASH型かつシグマデルタ型のAD変換装置。
【請求項4】
プローブ信号を生成するプローブ信号生成回路と、
アナログ回路によって構成された第1アナログ積分器と、前記第1アナログ積分器の出力信号と前記プローブ信号との加算信号を量子化する第1量子化器と、を有する第1変調器と、
前記第1量子化器において発生した量子化誤差と、前記プローブ信号と、を抽出した抽出信号のフィルタリングを行うアナログフィルタと、
前記アナログフィルタの出力信号をAD変換する、前記第1変調器よりも動作周波数の低い第1AD変換器と、
前記プローブ信号に応じた前記第1量子化器の出力信号を観測することによって前記第1変調器の伝達関数である第1伝達関数を探索する第1適応フィルタと、
前記プローブ信号に応じた前記第1AD変換器の出力信号を観測することによって、前記第1変調器の出力から前記アナログフィルタを介して前記第1AD変換器にかけての伝達関数である第2伝達関数を探索する第2適応フィルタと、
前記第1適応フィルタによる探索結果と、前記第2適応フィルタによる探索結果と、を用いて、前記第1量子化器の出力信号を、当該第1量子化器の出力信号に含まれる前記量子化誤差及び前記プローブ信号をキャンセルしたうえで出力する、ノイズキャンセル回路と、
を備え
、
前記第1AD変換器は、並列に設けられた複数の逐次比較型AD変換器を有し、
前記アナログフィルタは、並列に設けられた複数の離散時間型のフィルタを有し、
前記複数の離散時間型のフィルタは、それぞれ、複数の逐次比較型AD変換器に設けられた容量素子を用いて構成され、かつ、異なるタイミングでフィルタリングを行うように構成され、
前記複数の逐次比較型AD変換器は、それぞれ、前記複数の離散時間型のフィルタの出力信号をAD変換するように構成されている、
MASH型かつシグマデルタ型のAD変換装置。
【請求項5】
プローブ信号を生成するプローブ信号生成回路と、
アナログ回路によって構成された第1アナログ積分器と、前記第1アナログ積分器の出力信号と前記プローブ信号との加算信号を量子化する第1量子化器と、を有する第1変調器と、
前記第1量子化器において発生した量子化誤差と、前記プローブ信号と、を抽出した抽出信号のフィルタリングを行うアナログフィルタと、
前記アナログフィルタの出力信号をAD変換する、前記第1変調器よりも動作周波数の低い第1AD変換器と、
前記プローブ信号に応じた前記第1量子化器の出力信号を観測することによって前記第1変調器の伝達関数である第1伝達関数を探索する第1適応フィルタと、
前記プローブ信号に応じた前記第1AD変換器の出力信号を観測することによって、前記第1変調器の出力から前記アナログフィルタを介して前記第1AD変換器にかけての伝達関数である第2伝達関数を探索する第2適応フィルタと、
前記第1適応フィルタによる探索結果と、前記第2適応フィルタによる探索結果と、を用いて、前記第1量子化器の出力信号を、当該第1量子化器の出力信号に含まれる前記量子化誤差及び前記プローブ信号をキャンセルしたうえで出力する、ノイズキャンセル回路と、
を備え
、
前記第1適応フィルタによって探索された前記第1伝達関数を表すのに用いられる複数のタップ係数を、前記第1AD変換器の動作周波数に応じて間引く第1間引き回路と、
前記第2適応フィルタによって探索された前記第2伝達関数を表すのに用いられる複数のタップ係数を、前記第1AD変換器の動作周波数に応じて間引く第2間引き回路と、
をさらに備え、
前記ノイズキャンセル回路は、前記第1間引き回路の出力と、前記第2間引き回路の出力と、を用いて、前記第1量子化器の出力信号を、当該第1量子化器の出力信号に含まれる前記量子化誤差及び前記プローブ信号をキャンセルしたうえで出力するように構成されている、
MASH型かつシグマデルタ型のAD変換装置。
【請求項6】
前記第1量子化器の出力信号のフィルタリングを行うデジタルフィルタをさらに備え、
前記第1間引き回路は、さらに、前記第1適応フィルタによって探索された前記第1伝達関数に対して、前記デジタルフィルタの伝達関数を乗じるように構成され、
前記第1間引き回路は、前記第1適応フィルタによって探索された前記第1伝達関数に前記デジタルフィルタの伝達関数を乗じることによって算出された伝達関数、を表すのに用いられる複数のタップ係数を、前記第1AD変換器の動作周波数に応じて間引くように構成されている、
請求項
5に記載のAD変換装置。
【請求項7】
前記プローブ信号は、1ビットの疑似ランダム信号である、
請求項1
~6の何れか一項に記載のAD変換装置。
【請求項8】
前記ノイズキャンセル回路は、
前記第1適応フィルタにより探索された前記第1伝達関数
又はそれに対応する伝達関数が伝達関数として設定される第1ノイズキャンセルフィルタと、
前記第2適応フィルタにより探索された前記第2伝達関数
又はそれに対応する伝達関数が伝達関数として設定される第2ノイズキャンセルフィルタと、
前記第1ノイズキャンセルフィルタの出力信号と、前記第2ノイズキャンセルフィルタの出力信号と、の差分信号を、前記ノイズキャンセル回路の出力信号として出力するデジタル加減算器と、を有する、
請求項1
~7の何れか一項に記載のAD変換装置。
【請求項9】
前記第1適応フィルタは、前記プローブ信号に応じた前記第1量子化器の出力信号と、前記第1適応フィルタの出力信号と、の誤差を表す第1誤差信号に基づいて、LMS(Least Mean Square)アルゴリズムを用いて、前記第1伝達関数を表すのに用いられるタップ係数を探索するように構成され、
前記第2適応フィルタは、前記プローブ信号に応じた前記第1AD変換器の出力信号と、前記第2適応フィルタの出力信号と、の誤差を表す第2誤差信号に基づいて、LMSアルゴリズムを用いて、前記第2伝達関数を表すのに用いられるタップ係数を探索するように構成されている、
請求項1
~8の何れか一項に記載のAD変換装置。
【請求項10】
送信波を空中に放射する送信アンテナと、
前記送信波に対する対象物からの反射波を受信する複数の受信アンテナと、
前記複数の受信アンテナによって受信された前記反射波を、前記送信波を用いてダウンコンバートすることにより複数のビート信号を生成する高周波ユニットと、
前記複数のビート信号のフィルタリングを行うロウパスフィルタと、
前記ロウパスフィルタによってフィルタリングが行われた前記複数のビート信号を処理するベースバンドユニットと、
を備え、
前記ベースバンドユニットは、
前記ロウパスフィルタによってフィルタリングが行われた前記複数のビート信号をそれぞれAD変換する請求項1
~9の何れか一項に記載の複数のAD変換装置を備えた、
ミリ波レーダシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、AD変換装置及びそれを備えたミリ波レーダシステムに関し、例えば、精度の高いAD変換を実行するのに適したAD変換装置及びそれを備えたミリ波レーダシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、キャリブレーションフィルタのフィルタ係数を探索するキャリブレーション回路を備えたAD変換回路が開示されている。このキャリブレーション回路は、AD変換回路のスタートアップ期間において、疑似ランダム信号をAD変換回路に供給しながら、AD変換器の最終出力を観測することによってフィルタ係数を探索している。
【0003】
非特許文献1には、アナログループフィルタの時定数がデジタルノイズキャンセルフィルタの時定数と一致するようにキャリブレーションを行うキャリブレーション回路を備えたΔΣ変調器が開示されている。具体的には、このキャリブレーション回路は、2値パルスを量子化器に注入しながら、ΔΣ変調器の最終出力における残留電力をゼロにするためのアナログループフィルタの時定数をLMS(Least Mean Square)アルゴリズムを用いて探索している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Yun-Shiang Shu et al., "LMS-Based Noise Leakage Calibration of Cascaded Continuous-Time ΔΣ Modulators", IEEE JSSC, 2010, Vol.45, p.368-379
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、車載用途のミリ波レーダシステム等では、高分解能、広信号帯域及びロバストなAD変換装置が必要とされる。このような要求を満たすAD変換装置として、MASH(Multi stAge Noise SHaping)型のシグマデルタ(ΣΔ)AD変換装置(デルタシグマ(ΔΣ)AD変換装置とも呼ばれる)が知られている。ただし、MASH型のΣΔAD変換装置では、アナログ回路に特性ばらつきが生じると、高分解能化等が図れなくなる。そこで、例えば、特許文献1や非特許文献1のような方式を用いてキャリブレーションを行うことが考えられる。しかし、特許文献1や非特許文献1のような方式では、キャリブレーションが不十分であるため、精度の高いAD変換を実行することができない、という問題があった。その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施の形態によれば、MASH型かつシグマデルタ型のAD変換装置は、プローブ信号を生成するプローブ信号生成回路と、アナログ回路によって構成された第1アナログ積分器と、前記第1アナログ積分器の出力信号と前記プローブ信号との加算信号を量子化する第1量子化器と、を有する第1変調器と、前記第1量子化器において発生した量子化誤差と、前記プローブ信号と、を抽出した抽出信号のフィルタリングを行うアナログフィルタと、前記アナログフィルタの出力信号をAD変換する、前記第1変調器よりも動作周波数の低い第1AD変換器と、前記プローブ信号に応じた前記第1量子化器の出力信号を観測することによって前記第1変調器の伝達関数である第1伝達関数を探索する第1適応フィルタと、前記プローブ信号に応じた前記第1AD変換器の出力信号を観測することによって、前記第1変調器の出力から前記アナログフィルタを介して前記第1AD変換器にかけての伝達関数である第2伝達関数を探索する第2適応フィルタと、前記第1適応フィルタによる探索結果と、前記第2適応フィルタによる探索結果と、を用いて、前記第1量子化器の出力信号を、当該第1量子化器の出力信号に含まれる前記量子化誤差及び前記プローブ信号をキャンセルしたうえで出力する、ノイズキャンセル回路と、を備える。
【0008】
また、他の実施の形態によれば、ミリ波レーダシステムは、送信波を空中に放射する送信アンテナと、前記送信波に対する対象物からの反射波を受信する複数の受信アンテナと、前記複数の受信アンテナによって受信された前記反射波を、前記送信波を用いてダウンコンバートすることにより複数のビート信号を生成する高周波ユニットと、前記複数のビート信号のフィルタリングを行うロウパスフィルタと、前記ロウパスフィルタによってフィルタリングが行われた前記複数のビート信号を処理するベースバンドユニットと、を備え、前記ベースバンドユニットは、前記ロウパスフィルタによってフィルタリングが行われた前記複数のビート信号をそれぞれAD変換する複数のAD変換装置を備え、各前記AD変換装置は、MASH型かつシグマデルタ型のAD変換装置であって、プローブ信号を生成するプローブ信号生成回路と、アナログ回路によって構成された第1アナログ積分器と、前記第1アナログ積分器の出力信号と前記プローブ信号との加算信号を量子化する第1量子化器と、を有する第1変調器と、前記第1量子化器において発生した量子化誤差と、前記プローブ信号と、を抽出した抽出信号のフィルタリングを行うアナログフィルタと、前記アナログフィルタの出力信号をAD変換する、前記第1変調器よりも動作周波数の低い第1AD変換器と、前記プローブ信号に応じた前記第1量子化器の出力信号を観測することによって前記第1変調器の伝達関数である第1伝達関数を探索する第1適応フィルタと、前記プローブ信号に応じた前記第1AD変換器の出力信号を観測することによって、前記第1変調器の出力から前記アナログフィルタを介して前記第1AD変換器にかけての伝達関数である第2伝達関数を探索する第2適応フィルタと、前記第1適応フィルタによる探索結果と、前記第2適応フィルタによる探索結果と、を用いて、前記第1量子化器の出力信号を、当該第1量子化器の出力信号に含まれる前記量子化誤差及び前記プローブ信号をキャンセルしたうえで出力する、ノイズキャンセル回路と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
前記一実施の形態によれば、精度の高いAD変換を実行することが可能なAD変換装置及びそれを備えたミリ波レーダシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1に係るミリ波レーダシステムの主要部の構成例を示す概略図である。
【
図2】実施の形態1に係るMASH型シグマデルタAD変換装置の主要部の構成例を示すブロック図である。
【
図3】
図2に示すMASH型シグマデルタAD変換装置に設けられたアナログ積分器ユニットの構成例を示す図である。
【
図4】
図3に示すアナログ積分器ユニットに設けられたアナログ積分器の第1の構成例を示す図である。
【
図5】
図3に示すアナログ積分器ユニットに設けられたアナログ積分器の第2の構成例を示す図である。
【
図6】
図3に示すアナログ積分器ユニットに設けられたアナログ積分器の第3の構成例を示す図である。
【
図7】
図2に示すMASH型シグマデルタAD変換装置に設けられたアナログ加減算器の構成例を示す図である。
【
図8】
図2に示すMASH型シグマデルタAD変換装置に設けられたアナログフィルタの第1の構成例を示す図である。
【
図9】
図2に示すMASH型シグマデルタAD変換装置に設けられたアナログフィルタの第2の構成例を示す図である。
【
図10】
図2に示すMASH型シグマデルタAD変換装置に設けられたアナログフィルタの第3の構成例を示す図である。
【
図11】
図10に示すアナログフィルタの動作を示すタイミングチャートである。
【
図12】
図2に示すMASH型シグマデルタAD変換装置に設けられたアナログフィルタの第4の構成例を示す図である。
【
図13】
図12に示すアナログフィルタの動作を示すタイミングチャートである。
【
図14】
図2に示すMASH型シグマデルタAD変換装置に設けられた一方の適応フィルタの動作を説明するための図である。
【
図15】
図2に示すMASH型シグマデルタAD変換装置に設けられた他方の適応フィルタの動作を説明するための図である。
【
図16】
図2に示すMASH型シグマデルタAD変換装置の変形例を示す図である。
【
図17】
図16に示すMASH型シグマデルタAD変換装置に設けられたアナログフィルタを構成する各容量素子の構成例を示す図である。
【
図18】実施の形態2に係るMASH型シグマデルタAD変換装置の主要部の構成例を示すブロック図である。
【
図19】
図18に示すMASH型シグマデルタAD変換装置に設けられた低速AD変換器の構成例を示す図である。
【
図20】
図19に示す低速AD変換器の動作を示すタイミングチャートである。
【
図21】
図19に示す低速AD変換器を構成する4個の逐次比較型AD変換器の動作を説明するための図である
【
図22】実施の形態3に係るMASH型シグマデルタAD変換装置の主要部の構成例を示すブロック図である。
【
図23】
図22に示すMASH型シグマデルタAD変換装置のシグマデルタ型変調器に設けられた量子化器の具体的な構成例を示す図である。
【
図24】
図23に示す量子化器である逐次比較型AD変換器の動作を示すタイミングチャートである。
【
図25】実施の形態4に係るMASH型シグマデルタAD変換装置の主要部の構成例を示すブロック図である。
【
図26】実施の形態5に係るMASH型シグマデルタAD変換装置の構成例を示すブロック図である。
【
図27】MASH型シグマデルタAD変換装置の基本構成例を示すブロック図である。
【
図28】
図27に示すMASH型シグマデルタAD変換装置の問題点の一例を示す図である。
【
図29】比較例に係るMASH型シグマデルタAD変換装置の主要部の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。また、様々な処理を行う機能ブロックとして図面に記載される各要素は、ハードウェア的には、CPU(Central Processing Unit)、メモリ、その他の回路で構成することができ、ソフトウェア的には、メモリにロードされたプログラムなどによって実現される。したがって、これらの機能ブロックがハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは当業者には理解されるところであり、いずれかに限定されるものではない。なお、各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0012】
また、上述したプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0013】
<実施の形態1>
≪ミリ波レーダシステムの概略≫
図1は、実施の形態1に係るミリ波レーダシステムSYS1の主要部の構成例を示す概略図である。
図1に示すように、ミリ波レーダシステムSYS1は、ベースバンドユニットBBUと、高周波ユニットRFUと、ロウパスフィルタLPFと、送信アンテナANTtと、n個(nは1以上の整数)の受信アンテナANTr_1~ANTr_nと、を備える。
【0014】
高周波ユニットRFUは、高周波帯域での各種信号処理を行うユニットであって、送信回路として、変調器MOD、発振器OSC及びパワーアンプPAを備え、受信回路として、n個のミキサMIX_1~MIX_n及びn個のアンプIA_1~IA_nを備える。
【0015】
ベースバンドユニットBBUは、例えば、マイクロコントローラ等の1個の半導体チップによって構成され、ベースバンドでの各種信号処理を行う。ベースバンドユニットBBUは、n個のAD変換器ADC_1~ADC_nと、CPU11と、RAM12と、DA変換器13と、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリ(NVM(Non Volatile memory))14と、を備える。
【0016】
変調器MOD及び発振器OSCは、ベースバンドユニットBBUから出力されたベースバンド信号から、周波数変調された送信波(FM-CW方式の送信波)、又は、周波数が異なる2個の送信波(2周波CW方式の送信波)等を生成する。当該送信波は、例えば、60GHz帯や76GHz帯といった周波数を有し、パワーアンプPAを介して送信アンテナANTtから空中に放射される。
【0017】
送信アンテナANTtから空中に放射された送信波は、対象物で反射されたのち、n個の受信アンテナANTr_1~ANTr_nによって受信される。n個のミキサMIX_1~MIX_nは、それぞれ、受信アンテナANTr_1~ANTr_nによって受信された受信波(反射波)を、発振器OSCからの送信波を用いてダウンコンバートすることによってn個のビート信号を出力する。このn個のビート信号は、ロウパスフィルタ(アンチエイリアシングフィルタ)LPFを介してベースバンドユニットBBUのn個のAD変換器ADC_1~ADC_nにそれぞれ入力される。
【0018】
ベースバンドユニットBBUにおいて、n個のAD変換器ADC_1~ADC_nは、何れもMASH型かつシグマデルタ(ΣΔ)型の構成を有し、それぞれ、ロウパスフィルタLPFからのn個のビート信号をデジタル信号に変換する。ベースバンドユニットBBUは、AD変換器ADC_1~ADC_nのから出力されたデジタル信号を、CPU11等を用いて処理することにより、対象物との距離や相対速度等を検出する。
【0019】
上述のミリ波レーダシステムSYS1は、自動者及び医療装置等の分野はもちろんのこと、それ以外の様々な分野で用いられている。ここで、n個のAD変換器ADC_1~ADC_nは、ミリ波レーダシステムSYS1のレーダ性能を向上させるため、高分解能(つまり、広ダイナミックレンジ)かつ広信号帯域であることが求められる。このような要求を満たすAD変換器として、シグマデルタAD変換器(シグマデルタAD変換装置)が知られている。
【0020】
シグマデルタAD変換器は、オーバーサンプリングを行う動作原理上、サンプリングレート(サンプリング周波数)が高い。そのため、ミリ波レーダシステムSYS1に設けられた各AD変換器ADC_1~ADC_nにシグマデルタAD変換器が採用された場合、ロウパスフィルタ(アンチエイリアシングフィルタ)LPFの仕様を緩和することが可能となり、ナイキスト型AD変換器(例えば、パイプライン型、逐次比較型、フラッシュ型など)を用いる場合と比べて有益となり得る。また、シグマデルタAD変換器は、離散時間型(例えば、スイッチトキャパシタ型)の積分器や、連続時間型(例えばRC型)の積分器を用いて構成される。例えば、シグマデルタAD変換器が連続時間型の積分器を用いて構成されている場合、ロウパスフィルタLPFの仕様を更に緩和することできるため、シグマデルタAD変換器の広信号帯域化が容易になる場合がある。
【0021】
≪MASH型シグマデルタAD変換装置の概略及び問題点≫
まず、MASH型シグマデルタAD変換装置の基本構成について説明する。
図27は、MASH型シグマデルタAD変換装置50の基本構成を示すブロック図である。
図27に示すように、MASH型シグマデルタAD変換装置50は、外部から入力されたアナログ信号である外部入力信号SIをデジタル信号に変換して外部出力信号SOとして出力する。
【0022】
MASH型シグマデルタAD変換装置50は、複数段(ここでは2段)の変調器(シグマデルタ型変調器)SDM51,SDM52と、ノイズキャンセル回路NCU51と、を備える。
【0023】
1段目の変調器SDM51は、アナログ加減算器AS11と、アナログ積分器ユニットINTU1と、量子化器QT1と、DA変換回路DAC11,DAC12と、を備える。
【0024】
量子化器QT1は、アナログ回路によって構成されるアナログ積分器ユニットINTU1の出力信号を量子化する。DA変換回路DAC11,DAC12は、何れも、量子化器QT1の出力信号をアナログ信号に変換する。アナログ加減算器AS11は、外部入力信号SIとDA変換回路DAC11の出力信号との差分信号をアナログ積分器ユニットINTU1へ出力する。ここで、量子化器QT1では、量子化器QT1において加算されるような形で量子化誤差Q1が生じる。当該量子化誤差Q1は、DA変換回路DAC12の出力信号とアナログ積分器ユニットINTU1の出力信号との差分信号によって抽出することができる。
【0025】
2段目の変調器SDM52は、アナログ加減算器AS21と、アナログ積分器ユニットINTU2と、量子化器QT2と、DA変換回路DAC21と、を備える。量子化器QT2は、アナログ回路によって構成されるアナログ積分器ユニットINTU2の出力信号を量子化する。なお、量子化器QT2でも、量子化器QT1の場合と同様に量子化誤差Q2が生じる。DA変換回路DAC21は、量子化器QT2の出力信号をアナログ信号に変換する。アナログ加減算器AS21は、前述した変調器SDM51において発生した量子化誤差Q1の抽出信号と、DA変換回路DAC21の出力信号と、の差分信号をアナログ積分器ユニットINTU2へ出力する。
【0026】
ノイズキャンセル回路NCU51は、ノイズキャンセルフィルタNCF51,NCF52と、デジタル加減算器DAS31と、を備える。ノイズキャンセルフィルタNCF51は、量子化器QT1の出力信号S11が入力されるデジタルフィルタである。ノイズキャンセルフィルタNCF52は、量子化器QT2の出力信号S21が入力されるデジタルフィルタである。デジタルフィルタとは、例えば、複数のタップ係数によって所望のフィルタ特性を実現するFIR(Finite Impulse Response)フィルタや、IIR(Infinite Impulse Response)フィルタ等のことである。デジタル加減算器DAS31は、ノイズキャンセルフィルタNCF51の出力信号S12とノイズキャンセルフィルタNCF52の出力信号S22との差分(ここでは“S12-S22”)を算出し、外部出力信号SOを出力する。
【0027】
以下では、伝達関数H
1A(f)を、“量子化誤差Q1の印加点から変調器SDM51(量子化器QT1)の出力信号S11までの伝達関数”と定義する。
図27の例では、伝達関数H
1A(f)は、変調器SDM51の雑音伝達関数(NTF:Noise Transfer Function)と一致する。また、伝達関数H
2A(f)を、“量子化誤差Q1の印加点から変調器SDM52(量子化器QT2)の出力信号S21までの伝達関数”と定義する。
図27の例では、伝達関数H
2A(f)は、変調器SDM52の信号伝達関数(STF:Signal Transfer Function)と一致する。
【0028】
変調器SDM51の出力信号S11は、“H1A(f)・Q1+STF1・SI”と表される。但し、STF1は、変調器SDM51の信号伝達関数であるものとする。また、変調器SDM52の出力信号S21は、“H2A(f)・Q1+NTF2・Q2”と表される。但し、NTF2は、変調器SDM52の雑音伝達関数であるものとする。
【0029】
ここで、ノイズキャンセルフィルタNCF51の伝達関数H2D(f)は、予め伝達関数H2A(f)に設定される。また、ノイズキャンセルフィルタNCF52の伝達関数H1D(f)は、予め伝達関数H1A(f)に設定される。それにより、ノイズキャンセルフィルタNCF51の出力信号S12は、“H1A(f)・H2A(f)・Q1+STF1・H2A(f)・SI”と表すことができる。また、ノイズキャンセルフィルタNCF52の出力信号S22は、“H2A(f)・H1A(f)・Q1+NTF2・H1A(f)・Q2”と表すことができる。
【0030】
その結果、外部入力信号SIの信号成分は、“STF1・H2A(f)”の次数分(即ち、アナログ積分器ユニットINTU1,INTU2のトータル積分次数分)だけ遅延して、外部出力信号SOとして出力される。また、量子化誤差Q1は、キャンセルされる。さらに、量子化誤差Q2は、“NTF2・H1A(f)”の次数分(トータル積分次数分)のノイズシェーピングによって低減される。
【0031】
例えば、
図1に示すミリ波レーダシステムSYS1では、高周波成分の入力ノイズが生じる場合がある。しかしながら、ミリ波レーダシステムSYS1に設けられた各AD変換器ADC_1~ADC_nにMASH型シグマデルタAD変換装置50が採用された場合には、非MASH型(単一ループ型)シグマデルタAD変換器が採用される場合と比較して、外部入力信号SI中に高周波成分が含まれていても安定に動作することが可能である。
【0032】
即ち、一般的に、シグマデルタAD変換器を高分解能化するには、積分器の次数を増やす必要がある。ここで、MASH型シグマデルタAD変換装置50を4次の積分器を用いて構成するためには、アナログ積分器ユニットINTU1,INTU2のそれぞれを2次の積分器を用いて構成すればよい。それに対し、非MASH型シグマデルタAD変換装置では、単一ループ内に4次の積分器が必要になるため、外部入力信号SIに高周波成分が含まれる場合にはループ動作が不安定になり易い。
【0033】
例えば、4次のMASH型シグマデルタAD変換装置50を用いた場合、量子化誤差Q2は、4次分のノイズシェーピングによって十分に無視できるレベルまで低減される。したがって、MASH型シグマデルタAD変換装置50では、量子化誤差Q1をキャンセルできる限り、高分解能化等が図れる。ただし、量子化誤差Q1のキャンセルが不十分な場合、残留する量子化誤差Q1により、分解能が低下してしまう。
【0034】
図28は、
図27に示すMASH型シグマデルタAD変換装置の問題点の一例を示す図である。
図28に示すように、実際のアナログ積分器ユニットINTU1,INTU2では、ある理想状態を基準として各種特性ばらつきが生じ得る。特性ばらつきの要因として、連続時間型の積分器の場合、RC(抵抗・コンデンサ)素子の製造ばらつき、オペアンプの利得不足、帯域不足等が挙げられる。
【0035】
それにより、変調器SDM51の出力信号S11における“H
1A(f)・Q1”は、
図28のように、実際には、“H
1A_R(f)・Q1”となる。但し、伝達関数H
1A_R(f)は、理想的な伝達関数H
1A(f)に対する実際の伝達関数である。同様に、変調器SDM52の出力信号S21における“H
2A(f)・Q1”は、実際には、
図28のように、“H
2A_R(f)・Q1”となる。但し、伝達関数H
2A_R(f)は、理想的な伝達関数H
2A(f)に対する実際の伝達関数である。それに対し、ノイズキャンセルフィルタNCF51,NCF52のそれぞれの伝達関数H
2D(f),H
1D(f)は、予め設定された理想的な伝達関数H
2A(f),H
1A(f)である。それにより、量子化誤差Q1のキャンセルが不十分となるため、外部出力信号SOには量子化誤差Q1が残留してしまう。
【0036】
このような問題に対する解決策として、まず、発明者らは
図29に示すMASH型シグマデルタAD変換装置60を検討した。
【0037】
≪比較例に係るMASH型シグマデルタAD変換装置の概略及び問題点≫
図29は、比較例に係るMASH型シグマデルタAD変換装置60の主要部の構成例を示すブロック図である。
【0038】
図29に示すMASH型シグマデルタAD変換装置60は、
図27に示すMASH型シグマデルタAD変換装置50の場合と比較して、シグマデルタ型変調器SDM51に設けられたアナログ積分器ユニットINTU1の代わりに可変回路パラメータを含むアナログ積分器ユニットINTU1aを備えるとともに、キャリブレーション回路CAL51をさらに備える。MASH型シグマデルタAD変換装置60のその他の構成については、MASH型シグマデルタAD変換装置50の場合と同様であるため、その説明を省略する。
【0039】
まず、第1の解決策として、実際の伝達関数H1A_R(f),H2A_R(f)を調整して、理想状態の伝達関数H1A(f),H2A(f)に近づけることが考えられる(図中の方式A)。具体的には、キャリブレーション回路CAL51は、例えば、所定のキャリブレーション期間において、外部出力信号SOに残留する量子化誤差Q1を観測しながら、それが最小となるように、アナログ積分器ユニットINTU1a内の回路パラメータ(具体的には、RCの時定数)を調整する。それにより、実際の伝達関数H1A_R(f)を理想状態の伝達関数H1A(f)に近づけることができる。
【0040】
しかしながら、第1の解決策(方式A)では、アナログ積分器ユニットINTU1aに設けられたオペアンプの特性ばらつきが調整されないため、依然として、外部出力信号SOに残留する量子化誤差Q1を十分に抑制することができない。なお、アナログ積分器ユニットINTU1だけでなくアナログ積分器ユニットINTU2の回路パラメータを調整することも考えられる。しかしながら、外部出力信号SOに残留する量子化誤差Q1、という1個の観測結果から、複数のアナログ積分器ユニットINTU1,INTU2を調整する場合、調整処理が複雑化し、調整精度の低下が生じる恐れや、場合によっては、解を得ること自体が困難となる恐れがある。
【0041】
次に、第2の解決策として、ノイズキャンセルフィルタNCF51,NCF52の一方(ここではNCF51)を固定し、他方(NCF52)を調整することが考えられる(図中の方式B)。具体的には、キャリブレーション回路CAL51は、例えば、所定のキャリブレーション期間において、外部出力信号SOに残留する量子化誤差Q1を観測しながら、それが最小となるように、ノイズキャンセルフィルタNCF52のタップ係数を調整する。
【0042】
しかしながら、第2の解決策(方式B)の場合、ノイズキャンセルフィルタNCF51,NCF52の一方のみの調整となるため、依然として、外部出力信号SOに残留する量子化誤差Q1を十分に抑制することができない。なお、ノイズキャンセルフィルタNCF51,NCF52の両方のタップ係数を調整することも考えられる。しかしながら、外部出力信号SOに残留する量子化誤差Q1、という1個の観測結果から、2個のノイズキャンセルフィルタNCF51,NCF52を調整する場合、調整処理が複雑化し、調整精度の低下が生じる恐れや、場合によっては、解を得ること自体が困難となる恐れがある。
【0043】
そこで、発明者らは、外部出力信号SOに残留する量子化誤差Q1を効果的に抑制することにより、精度の高いAD変換を実行することが可能な、実施の形態1に係るMASH型シグマデルタAD変換装置1を見出した。
【0044】
≪実施の形態1に係るMASH型シグマデルタAD変換装置の概略≫
図2は、実施の形態1に係るMASH型シグマデルタAD変換装置1の主要部の構成例を示すブロック図である。
【0045】
図2に示すように、MASH型シグマデルタAD変換装置1は、変調器(シグマデルタ型変調器)SDM1と、アナログ加減算器AS21と、アナログフィルタFLT1と、低速AD変換器(第1AD変換器)LC1と、ノイズキャンセル回路NCU1と、キャリブレーション回路CAL1と、を備える。
【0046】
キャリブレーション回路CAL1は、プローブ信号生成回路XGと、複数(ここでは2個)の適応フィルタAF1,AF2と、複数(ここでは2個)のデジタル加減算器DAS41,DAS42と、を備える。
【0047】
変調器SDM1は、変調器SDM51の場合と同様に、アナログ加減算器AS11と、アナログ積分器ユニットINTU1と、量子化器QT1と、DA変換回路DAC11,DAC12と、を備える。変調器SDM1は、さらに、アナログ加減算器AS12と、DA変換回路DAC13と、を備える。
【0048】
DA変換回路DAC13は、後述するプローブ信号生成回路XGによって生成されたプローブ信号Xをアナログ信号に変換して出力する。アナログ加減算器AS12は、アナログ積分器ユニットINTU1の出力信号に、DA変換回路DAC13の出力信号(プローブ信号X成分)を加算して、量子化器QT1に出力する。変調器SDM1のその他の構成については、変調器SDM51の場合と同様であるため、その説明を省略する。
【0049】
アナログ加減算器AS21は、変調器SDM1の出力信号(DA変換回路DAC12の出力信号)からアナログ積分器ユニットINTU1の出力信号を減算することにより、プローブ信号X成分、及び、変調器SDM51において発生した量子化誤差Q1、を抽出して出力する。
【0050】
アナログフィルタFLT1は、所謂ロウパスフィルタ(アンチエイリアシングフィルタ)であって、アナログ加減算器AS21の出力信号に含まれる周波数成分のうち、高周波成分を抑圧して低周波成分を通過させる。それにより、アナログフィルタFLT1の後段に設けられた低速AD変換器LC1は、アナログフィルタFLT1を用いない場合と比較して、低いサンプリング周波数でも折り返しノイズを抑制することができる。
【0051】
低速AD変換器LC1は、ナイキスト型のAD変換器であって、初段の変調器SDM1のサンプリング周波数(クロック周波数、動作周波数)fsのM分の1(Mは2以上の整数)のサンプリング周波数fs/Mで、アナログフィルタFLT1の出力信号をデジタル信号に変換して、出力信号S21として出力する。
【0052】
ここで、MASH型シグマデルタAD変換装置1は、MASH型シグマデルタAD変換装置60の場合と比較して、シグマデルタ型変調器SDM52を備える代わりに、アナログ加減算器AS21、アナログフィルタFLT1及び低速AD変換器LC1を備える。それにより、MASH型シグマデルタAD変換装置1は、高速なアナログ積分器ユニットINTU2、量子化器QT2及びDA変換回路DAC21を備える必要がなくなるため、消費電力を低減することができる。
【0053】
プローブ信号生成回路XGは、プローブ信号Xを生成する。プローブ信号Xは、例えば、疑似ランダム信号であり、望ましくは、1ビット(2値)の疑似ランダム信号である。プローブ信号Xは、変調器SDM1のDA変換回路DAC13によってアナログ信号に変換されたのち、アナログ加減算器AS12を介して、量子化器QT1に入力される。また、プローブ信号Xは、デジタル信号として、適応フィルタAF1,AF2にも入力される。
【0054】
適応フィルタAF1は、プローブ信号Xに応じた変調器SDM1(量子化器QT1)の出力信号S11を観測することにより、変調器SDM1の実際の伝達関数を探索する。具体的には、デジタル加減算器DAS41は、プローブ信号Xに応じた変調器SDM1(量子化器QT1)の出力信号S11と、適応フィルタAF1の出力信号S13との誤差を算出し、その算出結果を誤差信号E1として出力する。適応フィルタAF1は、プローブ信号Xと当該誤差信号E1とに基づいて、LMSアルゴリズムを用いて自身のフィルタ係数(タップ係数)を探索する。
【0055】
ここで、プローブ信号Xの注入箇所と量子化誤差Q1の印加点とが実質的に等しいことから、出力信号S11は、量子化誤差Q1の実際の伝達関数H1A_R(f)を用いて表された“H1A_R(f)・X”の成分を含む。一方、出力信号S13は、“H1D(f)・X”と表される。
【0056】
なお、出力信号S11には、
図27の説明で述べたように、厳密には、量子化誤差Q1の成分や、外部入力信号SIの成分も含まれている。ただし、量子化誤差Q1や外部入力信号SIの成分は、デジタル加減算器DAS41を介した適応フィルタAF1への入力信号という観点では無視することができる。適応フィルタAF1は、出力信号S11と出力信号S13との誤差を最小にするタップ係数を探索する。その結果、適応フィルタAF1の伝達関数H
1D(f)は、伝達関数H
1A_R(f)に収束する。
【0057】
適応フィルタAF2は、プローブ信号Xに応じた低速AD変換器LC1の出力信号S21を観測することにより、アナログ加減算器AS21からアナログフィルタFLT1を介して低速AD変換器LC1にかけての実際の伝達関数を探索する。具体的には、デジタル加減算器DAS42は、プローブ信号Xに応じた低速AD変換器LC1の出力信号S21と、適応フィルタAF2の出力信号S23との誤差を算出し、その算出結果を誤差信号E2として出力する。適応フィルタAF2は、プローブ信号Xと当該誤差信号E2とに基づいて、LMSアルゴリズムを用いて自身のフィルタ係数(タップ係数)を探索する。
【0058】
ここで、プローブ信号Xの注入箇所と量子化誤差Q1の印加点が実質的に等しいことから、出力信号S21は、量子化誤差Q1の実際の伝達関数H2A_R(f)を用いて表された“H2A_R(f)・X”の成分を含む。一方、出力信号S23は、“H2D(f)・X”と表される。
【0059】
なお、出力信号S21には、厳密には、量子化誤差Q1の成分も含まれている。ただし、量子化誤差Q1の成分は、デジタル加減算器DAS42を介した適応フィルタAF2への入力信号という観点では無視することができる。適応フィルタAF2は、この出力信号S21と出力信号S23との誤差を最小にするタップ係数を探索する。その結果、適応フィルタAF2の伝達関数H2D(f)は、伝達関数H2A_R(f)に収束する。
【0060】
ノイズキャンセル回路NCU1は、ノイズキャンセルフィルタNCF1,NCF2と、デジタル加減算器DAS31と、を備える。デジタル加減算器DAS31については、
図27に示すデジタル加減算器DAS31と同様の構成であるため、その説明を省略する。
【0061】
ノイズキャンセルフィルタNCF1,NCF2の伝達関数は、
図27に示すノイズキャンセルフィルタNCF51,NCF52と同様に、それぞれ、H
2D(f),H
1D(f)と表される。ここで、ノイズキャンセルフィルタNCF1は、適応フィルタAF2による探索結果に応じてタップ係数を調整可能に構成されている。それにより、ノイズキャンセルフィルタNCF1の伝達関数H
2D(f)は、伝達関数H
2A_R(f)に調整される。また、ノイズキャンセルフィルタNCF2は、適応フィルタAF1による探索結果に応じてタップ係数を調整可能に構成されている。それにより、ノイズキャンセルフィルタNCF2の伝達関数H
1D(f)は、伝達関数H
1A_R(f)に調整される。
【0062】
それにより、外部出力信号SOにおいて量子化誤差Q1がキャンセルされる。また、プローブ信号Xも、量子化誤差Q1と同じ経路で伝送されるため、外部出力信号SOにおいてキャンセルされる。その結果、外部出力信号SOには、
図27で説明したように、外部入力信号SIの成分と、ノイズシェーピングされた量子化誤差Q2の成分とが含まれることになる。
【0063】
なお、プローブ信号Xは、例えば、+0.1,-0.1といった2値を示す1ビットのデジタル信号である。DA変換回路DAC13は、基準電圧をVrefとすると、当該プローブ信号Xを“+0.1×Vref”や“-0.1×Vref”等の電圧信号に変換する。また、プローブ信号Xの注入は、外部入力信号SIのA/D変換処理と並行して(即ちバックグラウンドで)行うことも可能である。
【0064】
本実施の形態では、適応フィルタAF1,AF2と、ノイズキャンセルフィルタNCF1,NCF2と、が別々に設けられた場合を例に説明したが、これに限られない。適応フィルタAF1とノイズキャンセルフィルタNCF2とは一体に形成されても良いし、適応フィルタAF2とノイズキャンセルフィルタNCF1とは一体に形成されても良い。即ち、適応フィルタAF1は、適応フィルタAF1の本来の機能のみならず、ノイズキャンセルフィルタNCF2として用いられても良い。適応フィルタAF2は、適応フィルタAF2の本来の機能のみならず、ノイズキャンセルフィルタNCF1として用いられても良い。
【0065】
≪アナログ積分器ユニットINTU1の詳細≫
図3は、MASH型シグマデルタAD変換装置1に設けられたアナログ積分器ユニットINTU1の構成例を示す図である。
【0066】
図3に示すように、アナログ積分器ユニットINTU1は、例えば、2個(即ち2次)のアナログ積分器AINT1,AINT2と、アナログ加減算器ASi1,ASi2と、DA変換回路DACiと、アンプ回路AMP11,AMP12,AMP21と、を備える。
【0067】
アナログ積分器AINT1は、アナログ加減算器AS11による算出結果を積分して出力する。また、DA変換回路DACiは、量子化器QT1の出力信号S11をアナログ信号に変換して出力する。アナログ加減算器ASi1は、アナログ積分器AINT1の出力信号にアンプ回路AMP11を用いて所定の係数α1を乗じた信号と、DA変換回路DACiの出力信号にアンプ回路AMP21を用いて所定の係数β1を乗じた信号と、を加算して出力する。
【0068】
アナログ積分器AINT2は、アナログ加減算器ASi1による算出結果を積分して出力する。アナログ加減算器ASi2は、アナログ積分器AINT1の出力信号にアンプ回路AMP12を用いて所定の係数α2を乗じた信号と、アナログ積分器AINT2の出力信と、を加算して出力する。アナログ積分器ユニットINTU1は、アナログ加減算器ASi2の出力信号を、アナログ積分器ユニットINTU1の出力信号として出力する。
【0069】
なお、アナログ積分器ユニットINTU1は、さらに、アンプ回路AMP13を備えていても良い。この場合、アナログ加減算器ASi2は、アナログ積分器AINT1の出力信号にアンプ回路AMP12を用いて所定の係数α2を乗じた信号と、アナログ積分器AINT2の出力信と、に加えて、例えば外部入力信号SIにアンプ回路AMP13を用いて所定の係数α3を乗じた信号を加算して出力する。
【0070】
また、アナログ積分器ユニットINTU1は、様々な構成が知られており、上述の構成に限定されず、同等の機能を有する各種構成に適宜変更可能である。アナログ積分器ユニットINTU1の次数も適宜変更可能である。
【0071】
(アナログ積分器AINT1の第1の構成例)
図4は、
図3に示すアナログ積分器ユニットINTU1に設けられたアナログ積分器AINT1の第1の構成例をアナログ積分器AINT1aとして示す図である。なお、アナログ積分器AINT2の構成については、アナログ積分器AINT1の場合と同様であるため、その説明を省略する。
【0072】
図4に示すように、アナログ積分器AINT1aは、連続時間型の積分器の一つであるRC型の積分器であって、抵抗素子R1aと、容量素子C1aと、オペアンプOPA1aと、を有する。なお、本例では、アナログ積分器AINT1aが、シングルエンド型である場合について説明しているが、これに限られず、差動増幅型であっても良い。
【0073】
アナログ積分器AINT1aでは、入力信号(便宜的にViとする)が、抵抗素子R1aによって電流に変換され、当該電流に伴う電荷は、容量素子C1aに蓄積される。それにより、入力信号Viの積分結果がアナログ積分器AINT1aの出力信号(便宜的にVoとする)として得られる。
【0074】
オペアンプOPA1aの利得及び帯域が共に無限大である場合、当該アナログ積分器AINT1aは、理想的な積分器となる。しかしながら、オペアンプOPA1aの利得及び帯域は、実際には有限である。また、抵抗素子R1aや容量素子C1aの値も、実際には、製造ばらつき等によって理想的な値からばらつく。そのため、実際の伝達関数H1A_R(f),H2A_R(f)は、理想状態の伝達関数H1A(f),H2A(f)とは異なっている。
【0075】
そこで、MASH型シグマデルタAD変換装置1は、このオペアンプOPA1aの有限利得及び有限帯域の影響などを含めた実際の伝達関数H1A_R(f),H2A_R(f)を探索して、ノイズキャンセルフィルタNCF2,NCF1の伝達関数H2D(f),H1D(f)をそれぞれ伝達関数H1A_R(f),H2A_R(f)に収束させている。それにより、MASH型シグマデルタAD変換装置1は、外部出力信号SOに残留する量子化誤差Q1を効果的に抑制することができるため、精度の高いAD変換を実行することができる。また、オペアンプOPA1aの性能に対する要求が緩和されるため、動作電流の低減が可能となる。
【0076】
(アナログ積分器AINT1の第2の構成例)
図5は、
図3に示すアナログ積分器ユニットINTU1に設けられたアナログ積分器AINT1の第2の構成例をアナログ積分器AINT1bとして示す図である。なお、アナログ積分器AINT2の構成については、アナログ積分器AINT1の場合と同様であるため、その説明を省略する。
【0077】
図5に示すように、アナログ積分器AINT1bは、連続時間型の積分器の一つである電流アンプ型の積分器であって、電流アンプ(gmアンプ)OTA1bと、容量素子C1bと、を有する。なお、本例では、アナログ積分器AINT1bが、シングルエンド型である場合について説明しているが、これに限られず、差動増幅型であっても良い。
【0078】
アナログ積分器AINT1bでは、入力信号(便宜的にViとする)が、電流アンプOTA1bの相互コンダクタンスgmに基づいて電流に変換され、当該電流に伴う電荷は、容量素子C1bに蓄積される。それにより、入力信号Viの積分結果がアナログ積分器AINT1bの出力信号(便宜的にVoとする)として得られる。一般的に、電流アンプ型の積分器は、RC型の積分器と比較して、線形性に劣るが、消費電流を低減させることができる。
【0079】
電流アンプOTA1bの出力抵抗が無限大である場合、当該アナログ積分器AINT1bは、理想的な積分器となる。しかしながら、電流アンプOTA1bの出力抵抗は、実際には有限である。また、容量素子C1bや相互コンダクタンスgmの値も、実際には、製造ばらつき等によって理想的な値からばらつく。そのため、実際の伝達関数H1A_R(f),H2A_R(f)は、理想状態の伝達関数H1A(f),H2A(f)とは異なっている。
【0080】
そこで、MASH型シグマデルタAD変換装置1は、この電流アンプOTA1bの有限出力抵抗の影響などを含めた実際の伝達関数H1A_R(f),H2A_R(f)を探索して、ノイズキャンセルフィルタNCF2,NCF1の伝達関数H2D(f),H1D(f)をそれぞれ伝達関数H1A_R(f),H2A_R(f)に収束させている。それにより、MASH型シグマデルタAD変換装置1は、外部出力信号SOに残留する量子化誤差Q1を効果的に抑制することができるため、精度の高いAD変換を実行することができる。また、電流アンプOTA1bの性能に対する要求が緩和されるため、動作電流の低減が可能となる。
【0081】
(アナログ積分器AINT1の第3の構成例)
図6は、
図3に示すアナログ積分器ユニットINTU1に設けられたアナログ積分器AINT1の第3の構成例をアナログ積分器AINT1cとして示す図である。なお、アナログ積分器AINT2の構成については、アナログ積分器AINT1の場合と同様であるため、その説明を省略する。
【0082】
図6に示すように、アナログ積分器AINT1cは、離散時間型の積分器であって、スイッチSW1c~SW4cと、容量素子C1c,C2cと、オペアンプOPA1cと、を備える。なお、本例では、アナログ積分器AINT1cが、シングルエンド型である場合について説明しているが、これに限られず、差動増幅型であっても良い。
【0083】
スイッチSW1c,SW2cは、サンプリングクロックφ1によってオンオフを切り替える。スイッチSW3c,SW4cは、サンプリングクロックφ1を反転させたサンプリングクロックφ2によってオンオフを切り替える。
【0084】
アナログ積分器AINT1cでは、スイッチSW1c,SW2cがオンし且つスイッチSW3c,SW4cがオフにすることによって、入力信号(便宜的にViとする)が容量素子Csによってサンプリングされ、スイッチSW1c,SW2cがオンし且つスイッチSW3c,SW4cがオフにすることによって、容量素子Csによってサンプリングされた信号が容量素子Cfに転送される。それにより、入力信号Viの積分結果がアナログ積分器AINT1cの出力信号(便宜的にVoとする)として得られる。
【0085】
オペアンプOPA1cの利得が無限大、且つ、出力信号Voの過渡応答がサンプリング周期毎に収束すれば、当該アナログ積分器AINT1cは、理想的な積分器となる。出力信号Voの過渡応答がサンプリング周期毎に収束することに関しては、例えば、オペアンプOPA1cに十分な電流を流すことによって保証される。しかしながら、オペアンプOPA1cの利得は、実際には有限である。そのため、実際の伝達関数H1A_R(f),H2A_R(f)は、理想状態の伝達関数H1A(f),H2A(f)とは異なっている。
【0086】
そこで、MASH型シグマデルタAD変換装置1は、このオペアンプOPA1cの有限利得の影響を含めた実際の伝達関数H1A_R(f),H2A_R(f)を探索して、ノイズキャンセルフィルタNCF2,NCF1の伝達関数H2D(f),H1D(f)をそれぞれ伝達関数H1A_R(f),H2A_R(f)に収束させている。それにより、MASH型シグマデルタAD変換装置1は、外部出力信号SOに残留する量子化誤差Q1を効果的に抑制することができるため、精度の高いAD変換を実行することができる。また、オペアンプOPA1cの性能に対する要求が緩和されるため、動作電流の低減が可能となる。
【0087】
なお、MASH型シグマデルタAD変換装置1に設けられた適応フィルタAF1,AF2は、それぞれ伝達関数H
1A_R(f),H
2A_R(f)をz関数に基づいて探索している。ここで、アナログ積分器ユニットINTU1が
図6に示すような離散時間型の積分器によって構成された場合、各伝達関数H
1A_R(f),H
2A_R(f)はz関数に基づいて定義されることになる。その場合、適応フィルタAF1,AF2は、各伝達関数H
1A_R(f),H
2A_R(f)そのものを正確に探索することができる。
【0088】
それに対し、アナログ積分器ユニットINTU1が
図4及び
図5に示すような連続時間型の積分器によって構成された場合、各伝達関数H
1A_R(f),H
2A_R(f)は、厳密には、ラプラス関数(s関数)に基づいて定義されることになる。その場合、適応フィルタAF1,AF2は、当該ラプラス関数で表された伝達関数H
1A_R(f),H
2A_R(f)をz関数に換算して探索することになる。
【0089】
≪アナログ加減算器AS11の詳細≫
図7は、
図2に示すMASH型シグマデルタAD変換装置1に設けられたアナログ加減算器AS11の構成例を示す図である。なお、アナログ加減算器AS12,AS21の構成については、何れもアナログ加減算器AS11の場合と同様であるため、その説明を省略する。
【0090】
図7に示すように、アナログ加減算器AS11は、入力抵抗R1d,R2dと、帰還抵抗R3dと、オペアンプOPA1dと、を備える。2つの入力信号(便宜的にVi1,Vi2とする)は、それぞれ、入力抵抗R1d,R2dによって電流に変換され、それらの合計電流が帰還抵抗R1cによって電圧に変換される。それにより、入力信号Vi1,Vi2の加算結果がアナログ加減算器AS11の出力信号(便宜的にVoとする)として得られる。
【0091】
なお、本例では、アナログ加減算器AS11が、シングルエンド型である場合について説明しているが、これに限られず、差動増幅型であっても良い。その場合、アナログ加減算器AS11には、-Vi2等の逆極性の入力信号も入力される。それにより、アナログ加減算器AS11は、逆極性の入力信号を用いて減算を行うことができる。
【0092】
オペアンプOPA1dの利得及び帯域が共に無限大である場合、当該アナログ加減算器AS11は、理想的な加減算器となる。このとき、出力信号Voは、式(1)のように表される。
【0093】
Vo=-(R3d/R1d)・Vi1-(R3d/R2d)・Vi2 ・・・(1)
【0094】
式(1)からわかるように、入力抵抗R1d,R2dのそれぞれの抵抗値によって、入力信号Vi1,Vi2のそれぞれの加算の重みが設定される。
【0095】
しかしながら、実際のオペアンプOPA1dの利得及び帯域は有限である。そのため、実際の伝達関数H1A_R(f),H2A_R(f)は、このアナログ加減算器AS11の影響を受けることによっても、理想状態の伝達関数H1A(f),H2A(f)とは異なる場合がある。
【0096】
そこで、MASH型シグマデルタAD変換装置1は、このアナログ加減算器AS11の有限利得及び有限帯域の影響を含めた実際の伝達関数H1A_R(f),H2A_R(f)を探索して、ノイズキャンセルフィルタNCF2,NCF1の伝達関数H2D(f),H1D(f)をそれぞれ伝達関数H1A_R(f),H2A_R(f)に収束させている。それにより、それにより、MASH型シグマデルタAD変換装置1は、外部出力信号SOに残留する量子化誤差Q1を効果的に抑制することができるため、精度の高いAD変換を実行することができる。
【0097】
なお、アナログ加減算器AS11において、帰還抵抗R3dは、帰還容量に置き換えられても良い。その場合、MASH型シグマデルタAD変換装置1に設けられたアナログ加減算器AS11,AS12,AS21及びアナログ積分器ユニットINTU1は、何れも、帰還容量を備えた同じ種類のオペアンプを用いて構成可能となる。
【0098】
また、アナログ加減算器AS11は、オペアンプOPA1dを用いずに、抵抗素子及び容量素子を用いてパッシブな加減算器に構成されても良い。但し、その場合、利得が1未満となるため、その利得を補償するための回路が別途必要になる。さらに、アナログ加減算器AS11は、スイッチトキャパシタを用いて離散時間型の加減算器に構成されても良い。
【0099】
≪アナログフィルタFLT1の詳細≫
続いて、アナログフィルタFLT1の詳細について説明する。
【0100】
(アナログフィルタFLT1の第1の具体的な構成例)
図8は、アナログフィルタFLT1の第1の具体的な構成例をアナログフィルタFLT1aとして示す図である。
【0101】
図8に示すように、アナログフィルタFLT1aは、連続時間型のフィルタの一つであるオペアンプ帰還型のアクティブフィルタであって、抵抗素子R1f~R3fと、容量素子C1f,C2fと、オペアンプOPA1fと、を備える。なお、本例では、アナログフィルタFLT1aが、シングルエンド型である場合について説明しているが、これに限られず、差動増幅型であっても良い。
【0102】
抵抗素子R1fは、入力信号(便宜的にViとする)が供給される入力端子と、ノードN1fと、の間に設けられる。抵抗素子R2fは、ノードN1fとオペアンプOPA1fの反転入力端子との間に設けられる。容量素子C1fは、ノードN1fと接地電圧端子GNDとの間に設けられる。抵抗素子R3fは、オペアンプOPA1fの出力端子とノードN1fとの間に設けられる。容量素子C2fは、オペアンプOPA1fの出力端子及び反転入力端子の間に設けられる。オペアンプOPA1fの非反転入力端子は、接地電圧端子GNDに接続されている。それにより、入力信号Viのフィルタリング結果がアナログフィルタFLT1の出力信号(便宜的にVoとする)として得られる。
【0103】
なお、オペアンプOPA1fの利得及び帯域は、実際には、有限である。また、抵抗素子R1f~R3f及び容量素子C1f,C2fの値も、実際には、製造ばらつき等によって理想的な値からばらつく。そのため、実際の伝達関数H2A_R(f)は、理想状態の伝達関数H2A(f)とは異なっている。
【0104】
そこで、MASH型シグマデルタAD変換装置1は、このオペアンプOPA1fの有限利得及び有限帯域の影響などを含めた実際の伝達関数H1A_R(f),H2A_R(f)を探索して、ノイズキャンセルフィルタNCF2,NCF1の伝達関数H2D(f),H1D(f)をそれぞれ伝達関数H1A_R(f),H2A_R(f)に収束させている。それにより、MASH型シグマデルタAD変換装置1は、外部出力信号SOに残留する量子化誤差Q1を効果的に抑制することができるため、精度の高いAD変換を実行することができる。また、オペアンプOPA1fの性能に対する要求が緩和されるため、動作電流の低減が可能となる。
【0105】
アナログフィルタFLT1aは、上述の構成に限られず、同等の機能を実現可能な他の構成に適宜変更可能である。
【0106】
(アナログフィルタFLT1の第2の具体的な構成例)
図9は、アナログフィルタFLT1の第2の具体的な構成例をアナログフィルタFLT1bとして示す図である。
【0107】
図9に示すように、アナログフィルタFLT1bは、連続時間型のフィルタの一つであるGm-Cフィルタであって、差動増幅型の電流アンプ(gmアンプ)OTA1g~OTA4gと、容量素子C1g~C4gと、を備える。
【0108】
電流アンプOTA4gは、2つの入力信号(便宜的にVip,Vinとする)を、電流アンプOTA4gの相互コンダクタンスgm4に基づいて電流に変換する。また、電流アンプOTA1gは、電流アンプOTA2gの差動出力信号を、電流アンプOTA1gの相互コンダクタンスgm1に基づいて電流に変換する。電流アンプOTA4g,OTA1gのそれぞれの反転出力信号の電荷は、容量素子C1gに蓄積される。電流アンプOTA4g,OTA1gのそれぞれの非反転出力信号の電荷は、容量素子C2gに蓄積される。
【0109】
電流アンプOTA2gは、容量素子C1gに蓄積された電荷に応じた電圧、及び、容量素子C2gに蓄積された電荷に応じた電圧を、電流アンプOTA2gの相互コンダクタンスgm2に基づいて電流に変換する。また、電流アンプOTA3gは、容量素子C3gに蓄積された電荷に応じた電圧、及び、容量素子C4gに蓄積された電荷に応じた電圧を、電流アンプOTA3gの相互コンダクタンスgm3に基づいて電流に変換する。なお、電流アンプOTA2g,OTA3gのそれぞれの反転出力信の電荷は、容量素子C3gに蓄積される。電流アンプOTA2g,OTA3gのそれぞれの非反転出力信号の電荷は、容量素子C4gに蓄積される。それにより、入力信号Vip,Vinのフィルタリング結果が、アナログフィルタFLT1bの出力信号(便宜的にVop,Vonとする)として得られる。
【0110】
なお、電流アンプOTA1g~OTA4gの出力抵抗は、実際には有限である。また、容量素子C1g~C4gや相互コンダクタンスgm1~gm4の値も、実際には、製造ばらつき等によって理想的な値からばらつく。そのため、実際の伝達関数H2A_R(f)は、理想状態の伝達関数H2A(f)とは異なっている。
【0111】
そこで、MASH型シグマデルタAD変換装置1は、この電流アンプOTA1g~OTA4gの有限出力抵抗の影響などを含めた実際の伝達関数H1A_R(f),H2A_R(f)を探索して、ノイズキャンセルフィルタNCF2,NCF1の伝達関数H2D(f),H1D(f)をそれぞれ伝達関数H1A_R(f),H2A_R(f)に収束させている。それにより、MASH型シグマデルタAD変換装置1は、外部出力信号SOに残留する量子化誤差Q1を効果的に抑制することができるため、精度の高いAD変換を実行することができる。また、電流アンプOTA1g~OTA4gの性能に対する要求が緩和されるため、動作電流の低減が可能となる。
【0112】
アナログフィルタFLT1bは、上述の構成に限られず、同等の機能を実現可能な他の構成に適宜変更可能である。
【0113】
(アナログフィルタFLT1の第3の具体的な構成例)
図10は、アナログフィルタFLT1の第3の具体的な構成例をアナログフィルタFLT1cとして示す図である。また、
図11は、アナログフィルタFLT1cの動作を示すタイミングチャートである。
【0114】
図10に示すように、アナログフィルタFLT1cは、離散時間型のフィルタであって、スイッチSW1h_1~SW1h_7と、スイッチSW2h_1~SW2h_7と、スイッチSW1i_1~SW1i_7と、スイッチSW2i_1~SW2i_7と、スイッチSW3h,SW3iと、容量素子C1h~C7hと、容量素子C1i~C7iと、容量素子C8hと、を備える。なお、
図10の例では、容量素子C1h~C7hの容量値の比は、1:2:3:4:3:2:1であるものとする。また、容量素子C1i~C7iの容量値の比は、1:2:3:4:3:2:1であるものとする。
【0115】
ここで、
図10の例では、効率の良いフィルタリングを実現するため、2つのフィルタが並列に設けられている。第1のフィルタは、スイッチSW1h_1~SW1h_7と、スイッチSW2h_1~SW2h_7と、スイッチSW3hと、容量素子C1h~C7hと、容量素子C8hと、によって構成される。第2のフィルタは、スイッチSW1i_1~SW1i_7と、スイッチSW2i_1~SW2i_7と、スイッチSW3iと、容量素子C1i~C7iと、容量素子C8hと、によって構成される。なお、容量素子C8hは、第1及び第2のフィルタによって共用されている。
【0116】
まず、第1のフィルタによるフィルタリングが行われる。具体的には、第1のフィルタでは、制御信号φ1h_1~φ1h_7が順番に一時的にHレベルになってスイッチSW1h_1~SW1h_7が順番に一時的にオンすることにより、入力信号(便宜的にViとする)の電荷が容量素子C1h~C7hに順番に蓄積される(時刻t11~t13)。その後、制御信号φ2hが一時的にHレベルになってスイッチSW2h_1~SW2h_7が一斉にオンすることにより、容量素子C1h~C7hに蓄積された電荷に応じた電圧信号が一斉に出力される(時刻t14)。また、このとき、制御信号φ3hが一時的にHレベルになってスイッチSW3hがオンするため、これらの電圧信号の電荷は、容量素子C8hにまとめて蓄積される(時刻t14)。その後、容量素子C8hに蓄積された電荷に応じた電圧は、アナログフィルタFLT1cの出力信号(便宜的にVoとする)として出力される(時刻t15~t17)。
【0117】
次に、第2のフィルタでは、第1のフィルタによるフィルタリングが開始されてからM(ここでは4)クロックサイクル後に、フィルタリングが開始される(時刻t12)。
【0118】
具体的には、第2のフィルタでは、第1のフィルタの制御信号φ1h_1が立ち上がってからM(=4)クロックサイクル後に、制御信号φ2h_1~φ2h_7が順番に一時的にHレベルになってスイッチSW2h_1~SW2h_7が順番に一時的にオンすることにより、入力信号Viの電荷が容量素子C2h~C7hに順番に蓄積される(時刻t12~t16)。その後、制御信号φ2iが一時的にHレベルになってスイッチSW2i_1~SW2i_7が一斉にオンすることにより、容量素子C1i~C7iに蓄積された電荷に応じた電圧信号が一斉に出力される(時刻t17)。また、このとき、制御信号φ3iが一時的にHレベルになってスイッチSW3iがオンするため、これらの電圧信号の電荷は、容量素子C8hにまとめて蓄積される(時刻t17)。その後、容量素子C8hに蓄積された電荷に応じた電圧は、アナログフィルタFLT1cの出力信号Voとして出力される(時刻t18~t19)。
【0119】
第1のフィルタでは、第2のフィルタによるフィルタリングが開始されてからM(=4)クロックサイクル後には(即ち、第2のフィルタの制御信号φ1i_1が立ち上がってからM(=4)クロックサイクル後には)、既にサンプリング動作まで完了しているため、次のフィルタリングが開始される。第1及び第2のフィルタでは、このような動作が繰り返される。そのため、アナログフィルタFLT1cによるフィルタリング結果は、クロック周波数fsのM分の1の周波数(fs/M)で出力されることになる。
【0120】
図10の例では、各フィルタのタップ数が7である場合について説明したが、これに限られない。各フィルタのタップ数は任意に設定可能である。また、
図10の例では、2つのフィルタが並列に設けられた場合について説明したが、これに限られない。任意の数のフィルタが並列に設けられる構成に適宜変更可能である。また、
図10の例では、M=4である場合について説明したが、これに限られない。Mの値は、各フィルタのタップ数やフィルタの数などに応じて任意に設定可能である。
【0121】
アナログフィルタFLT1cは、アンプを備えていないため、動作電流の低減が可能である。
【0122】
(アナログフィルタFLT1の第4の具体的な構成例)
図12は、アナログフィルタFLT1の第4の具体的な構成例をアナログフィルタFLT1dとして示す図である。また、
図13は、アナログフィルタFLT1dの動作を示すタイミングチャートである。
【0123】
図10に示すアナログフィルタFLT1cでは、2つのフィルタが容量素子C8hを共用していた。それに対し、
図12に示すアナログフィルタFLT1dでは、2つのフィルタがそれぞれ個別の容量素子C8h,C8iを備えている。アナログフィルタFLT1dのその他の構成については、アナログフィルタFLT1cの場合と同様であるため、その説明を省略する。
【0124】
第1のフィルタによるフィルタリングでは、基本的にはアナログフィルタFLT1cの場合と同様の処理が行われる。ここで、スイッチSW3hがオンすることによって、容量素子C1h~C7hに蓄積された電荷に応じた電圧信号の電荷は、容量素子C8hにまとめて蓄積される(時刻t14)。その後、容量素子C8hに蓄積された電荷に応じた電圧は、アナログフィルタFLT1dの出力信号(便宜的にVo1とする)として出力される(時刻t15~t19)。
【0125】
次に、第2のフィルタでは、第1のフィルタによるフィルタリングが開始されてからM(ここでは4)クロックサイクル後に、フィルタリングが開始される(時刻t12)。
【0126】
第2のフィルタによるフィルタリングでは、基本的にはアナログフィルタFLT1cの場合と同様の処理が行われる。ここで、スイッチSW3iがオンすることによって、容量素子C1i~C7iに蓄積された電荷に応じた電圧信号の電荷は、容量素子C8iにまとめて蓄積される(時刻t17)。その後、容量素子C8iに蓄積された電荷に応じた電圧は、アナログフィルタFLT1dの出力信号(便宜的にVo2とする)として出力される(時刻t18~t20)。
【0127】
第1のフィルタでは、第2のフィルタによるフィルタリングが開始されてからM(=4)クロックサイクル後には(即ち、第2のフィルタの制御信号φ1i_1が立ち上がってからM(=4)クロックサイクル後には)、既にサンプリング動作まで完了しているため、次のフィルタリングが開始される。第1及び第2のフィルタでは、このような動作が繰り返される。そのため、アナログフィルタFLT1cによるフィルタリング結果は、クロック周波数fsのM分の1の周波数(fs/M)で出力されることになる。
【0128】
アナログフィルタFLT1dは、アンプを備えていないため、動作電流の低減が可能である。さらに、アナログフィルタFLT1dでは、第1及び第2のフィルタがそれぞれ個別の容量素子C8h,C8iを有しているため、容量素子C8hを共用する場合と比較して、それぞれのサンプリング結果の保持期間が長くなる。それにより、後段の低速AD変換器LC1は、AD変換期間を十分に長くとることができる。なお、この場合、低速AD変換器LC1は、容量素子C8h,C8iのそれぞれの電圧を並列にAD変換することが可能に構成されている。
【0129】
≪適応フィルタの詳細≫
図14及び
図15は、それぞれ、MASH型シグマデルタAD変換装置1に設けられた適応フィルタAF1,AF2の動作を説明するための図である。
【0130】
図14に示すように、適応フィルタAF1は、プローブ信号Xに応じた変調器SDM1(量子化器QT1)の出力信号S11と、自身の出力信号S13と、の誤差を表す誤差信号E1がゼロに近づくように、LMSアルゴリズムを用いて自身のフィルタ係数(タップ係数)を探索する。
【0131】
具体的には、プローブ信号Xに応じた変調器SDM1の出力信号S11は、“H1A_R(f)・X”と表される。ここで、伝達関数H1A_R(f)は、“a0z-0+a1z-1+a2z-2+a3z-3”と表すことができる。一方、適応フィルタAF1の出力信号S13は、“H1D(f)・X”と表される。ここで、伝達関数H1D(f)は、“a0
(D)z-0+a1
(D)z-1+a2
(D)z-2+a3
(D)z-3”と定められる。したがって、適応フィルタAF1は、“a0=a0
(D)”,“a1=a1
(D)”,“a2=a2
(D)”,“a3=a3
(D)”となるようなa0
(D),a1
(D),a2
(D),a3
(D)を探索する。
【0132】
図15に示すように、適応フィルタAF2は、プローブ信号Xに応じた低速AD変換器LC1の出力信号S21と、自身の出力信号S23と、の誤差を表す誤差信号E2がゼロに近づくように、LMSアルゴリズムを用いて自身のタップ係数を探索する。
【0133】
具体的には、プローブ信号Xに応じた低速AD変換器LC1の出力信号S21は、“H2A_R(f)・X”と表される。ここで、伝達関数H2A_R(f)は、“b0z-0+b1z-1+b2z-2+b3z-3”と表すことができる。一方、適応フィルタAF2の出力信号S23は、“H2D(f)・X”と表される。ここで、伝達関数H2D(f)は、“b0
(D)z-0+b1
(D)z-1+b2
(D)z-2+b3
(D)z-3”と定められる。したがって、適応フィルタAF2は、“b0=b0
(D)”,“b1=b1
(D)”,“b2=b2
(D)”,“b3=b3
(D)”となるようなb0
(D),b1
(D),b2
(D),b3
(D)を探索する。
【0134】
≪実施の形態1に係るMASH型シグマデルタAD変換装置1の主要な効果≫
このように、本実施の形態に係るMASH型シグマデルタAD変換装置1は、キャリブレーション回路CAL1を用いることによって量子化器QT1において発生した量子化誤差Q1をキャンセルすることができるため、精度の高いAD変換を実行することができる。ここで、MASH型シグマデルタAD変換装置1は、
図29に示した比較例の場合と異なり、変調器SDM1の出力信号の観測結果に基づいてノイズキャンセルフィルタNCF2の伝達関数の調整を行うとともに、低速AD変換器LC1の出力信号の観測結果に基づいてノイズキャンセルフィルタNCF1の伝達関数の調整を行っている。つまり、MASH型シグマデルタAD変換装置1は、1個の観測結果に基づいて1個のノイズキャンセルフィルタの調整を行っている。それにより、調整処理が簡素化されるため、解を容易に得ることや、解の精度(換言すると、適応フィルタAF1,AF2の探索精度)を高めること等が可能になる。
【0135】
また、本実施の形態に係るMASH型シグマデルタAD変換装置1は、初段のシグマデルタ型変調器SDM1の後段にシグマデルタ型変調器SDM2を備える代わりに、アナログ加減算器AS21、アナログフィルタFLT1及び低速AD変換器LC1を備えている。それにより、MASH型シグマデルタAD変換装置1は、高速動作が必要なアナログ積分器ユニットINTU2、量子化器QT2及びDA変換回路DAC21を備える必要がないため、消費電力を低減することができる。
【0136】
また、本実施の形態に係るMASH型シグマデルタAD変換装置1は、アナログ積分器の特性ばらつきに限られず、その他の各種回路の特性ばらつき(例えば、アナログ加減算器の特性ばらつき、量子化器とDA変換回路との間の基準電圧ミスマッチに伴う特性ばらつき等)が存在する状況下においても、量子化誤差Q1をノイズキャンセルフィルタNCF1,NCF2を用いてキャンセルすることができる。
【0137】
さらに、本実施の形態に係るMASH型シグマデルタAD変換装置1は、
図29に示した比較例の場合と異なり、外部入力信号SIに対するA/D変換を行いながら、これを並行して(即ちバックグランドで)、適応フィルタAF1,AF2の探索動作を行うことが可能である。それにより、例えば、使用環境の変化等に伴い各種回路の特性変動が生じた場合であっても、量子化誤差Q1を、ノイズキャンセルフィルタNCF1,NCF2を用いて速やかにキャンセルすることができる。
【0138】
≪MASH型シグマデルタAD変換装置1の変形例≫
図16は、MASH型シグマデルタAD変換装置1の変形例をMASH型シグマデルタAD変換装置1eとして示す図である。
【0139】
図16に示すように、MASH型シグマデルタAD変換装置1eは、アナログフィルタFLT1の変形例としてアナログフィルタFLT1eを備える。アナログフィルタFLT1eは、適応フィルタAF2による実際の伝達関数H2A_R(f)の探索結果(換言すると、適応フィルタAF2自身のフィルタ係数の探索結果)に基づいて、周波数特性を調整可能に構成されている。MASH型シグマデルタAD変換装置1eのその他の構成については、MASH型シグマデルタAD変換装置1の場合と同様であるため、その説明を省略する。
【0140】
図17は、アナログフィルタFLT1eを構成する各容量素子の構成例を示す図である。
図17に示すように、アナログフィルタFLT1eに設けられた各容量素子は、容量値がバイナリ荷重された複数のキャパシタC5e~C1eと、複数のキャパシタC5e~C1eのそれぞれに直列に設けられた複数のスイッチSW5e~SW1eと、を有し、容量値を調整可能に構成されている。ここで、各容量素子の容量値は、初期状態では中間値を示すように設定されており、適応フィルタAF2による探索結果に応じて調整される。
【0141】
MASH型シグマデルタAD変換装置1eは、MASH型シグマデルタAD変換装置1の場合と同等程度の効果を奏することができるとともに、アナログフィルタFLT1eの周波数特性を調整することによって、雑音の増大や信号帯域の低下を抑制することができる。
【0142】
<実施の形態2>
図18は、実施の形態2に係るMASH型シグマデルタAD変換装置2の主要部の構成例を示すブロック図である。
【0143】
図18に示すように、MASH型シグマデルタAD変換装置2は、MASH型シグマデルタAD変換装置1の場合と比較して、アナログフィルタFLT1及び低速AD変換器LC1の代わりに、アナログフィルタFLT2及び低速AD変換器LC2を備える。
【0144】
低速AD変換器LC2は、逐次比較型AD変換器であって、アナログフィルタFLT2は、低速AD変換器LC2に設けられた容量素子を用いて構成されている。換言すると、アナログフィルタFLT2及び低速AD変換器LC2は、容量素子を共用している。
図18の例では、低速AD変換器LC2は、並列に設けられた4個の逐次比較型AD変換器によって構成されている。
【0145】
≪低速AD変換器LC2の詳細≫
図19は、低速AD変換器LC2の構成例を示す図である。なお、
図19の例では、並列に設けられた4個の逐次比較型AD変換器のうちの一つの逐次比較型AD変換器及びそれに対応するアナログフィルタが示されている。なお、本例では、各逐次比較型AD変換器が、シングルエンド型である場合について説明しているが、これに限られず、差動増幅型であっても良い。
【0146】
図19に示すように、低速AD変換器LC2は、DA変換器201と、コンパレータ202と、比較制御部203と、を備える。DA変換器201は、比較制御部203から逐次出力されるデジタル信号を、下限値“-Vr”から上限値“+Vr”までの範囲をフルスケールとしてアナログ電圧V1aに変換する。また、DA変換器201は、入力電圧(便宜的にViとする)をサンプリングしてホールドするサンプルホールド回路としての機能も含んでいる。コンパレータ202は、DA変換器201のサンプルホールド機能によってホールドされた入力電圧Viと、DA変換器201によるAD変換結果であるアナログ電圧V1aと、を比較して比較結果を出力する。比較制御部203は、コンパレータ202による比較結果に基づいて、デジタル信号の値を切り替える。このような動作が繰り返されることで、入力電圧Viに最も近い値を示すアナログ電圧V1aに対応するデジタル信号の値が確定する。低速AD変換器LC2は、このデジタル信号を出力信号S21として出力する。
【0147】
具体的には、DA変換器201は、上位ビットから下位ビットにかけて容量値がバイナリ荷重された複数の容量素子C1_8~C1_0と、最下位ビットの容量素子C1_0と同じ容量値のダミーの容量素子C1_dと、これら容量素子C1_8~C1_0,C1_dのそれぞれに直列に設けられた複数のスイッチSW1_8~SW1_0,SW1_dと、スイッチSW1_bと、を有する。スイッチSW1_bは、各容量素子C1_8~C1_0,C1_dの一方の電極(コンパレータ202側の電極)とコンパレータ202との間のノードと、接地電圧端子GNDと、の間に設けられている。
【0148】
なお、
図19の例では、容量素子C1_8~C1_0,C1_dの容量値がそれぞれ256C,128C,64C,32C,16C,8C,4C,2C,C,Cを示すものとする。即ち、容量素子C1_8~C1_0,C1_dの容量値の比は、2^8:2^7:2^6:2^5:2^4:2^3:2^2:2^1:2^0:2^0であるものとする。
【0149】
スイッチSW1_8~SW1_0,SW1_d,SW1_bは、動作モードやDA変換されるデジタル信号の値に基づいて、比較制御部203によって制御される。例えば、スイッチSW1_8は、制御信号D18によって、電圧+Vr、-Vrの何れかを容量素子C1_8の他方の電極に供給するか、供給を停止させる。スイッチSW1_7は、制御信号D17によって、電圧+Vr、-Vrの何れかを容量素子C1_7の他方の電極に供給するか、供給を停止させる。スイッチSW1_6は、制御信号D16によって、電圧+Vr、-Vrの何れかを容量素子C1_6の他方の電極に供給するか、供給を停止させる。スイッチSW1_5は、制御信号D15によって、電圧+Vr、-Vrの何れかを容量素子C1_5の他方の電極に供給するか、供給を停止させる。スイッチSW1_4は、制御信号D14によって、電圧+Vr、-Vrの何れかを容量素子C1_4の他方の電極に供給するか、供給を停止させる。スイッチSW1_3は、制御信号D13によって、電圧+Vr、-Vrの何れかを容量素子C1_3の他方の電極に供給するか、供給を停止させる。スイッチSW1_2は、制御信号D12によって、電圧+Vr、-Vrの何れかを容量素子C1_2の他方の電極に供給するか、供給を停止させる。スイッチSW1_1は、制御信号D11によって、電圧+Vr、-Vrの何れかを容量素子C1_1の他方の電極に供給するか、供給を停止させる。スイッチSW1_dは、制御信号D1dによって、電圧+Vr、-Vrの何れかを容量素子C1_dの他方の電極に供給するか、供給を停止させる。また、スイッチSW1_bは、制御信号φ1btmによってオンオフを切り替える。
【0150】
図19の例では、容量素子C1_8は、並列に設けられた3つの容量素子C1_8a~C1_8cによって構成されている。なお、容量素子C1_8a~C1_8cの容量値は、それぞれ96C,96C,64Cを示している。また、スイッチSW1_8は、容量素子C1_8a~C1_8cのそれぞれに直列に設けられたスイッチSW1_8a~SW1_8cによって構成されている。
【0151】
ここで、
図19の例では、逐次比較型AD変換器に設けられた容量素子C1_8~C1_0,C1_dを用いてアナログフィルタFLT2の構成が実現される。具体的には、容量値32Cの容量素子C1_5によって
図10でいう容量素子C1hが構成される。容量値64Cの容量素子C1_6によって
図10でいう容量素子C2hが構成される。容量値96Cの容量素子C1_8cによって
図10でいう容量素子C3hが構成される。容量値128Cの容量素子C1_7によって
図10でいう容量素子C4hが構成される。容量値96Cの容量素子C1_8bによって
図10でいう容量素子C5hが構成される。容量値64Cの容量素子C1_8aによって
図10でいう容量素子C6hが構成される。合計容量値32Cの容量素子C1_4~C1_0,C1_dからなる容量素子C1_xによって
図10でいう容量値C7hが構成される。
【0152】
即ち、スイッチSW1_5は、電圧+Vr,-Vrの容量素子C1_5への供給を停止させている場合において、制御信号φ11によって、入力電圧Viの容量素子C1_5への供給の有無を切り替える。スイッチSW1_6は、電圧+Vr,-Vrの容量素子C1_6への供給を停止させている場合において、制御信号φ12によって、入力電圧Viの容量素子C1_6への供給の有無を切り替える。スイッチSW1_8cは、電圧+Vr,-Vrの容量素子C1_8cへの供給を停止させている場合において、制御信号φ13によって、入力電圧Viの容量素子C1_8cへの供給の有無を切り替える。スイッチSW1_7は、電圧+Vr,-Vrの容量素子C1_7への供給を停止させている場合において、制御信号φ14によって、入力電圧Viの容量素子C1_7への供給の有無を切り替える。スイッチSW1_8bは、電圧+Vr,-Vrの容量素子C1_8bへの供給を停止させている場合において、制御信号φ15によって、入力電圧Viの容量素子C1_8bへの供給の有無を切り替える。スイッチSW1_8aは、電圧+Vr,-Vrの容量素子C1_8aへの供給を停止させている場合において、制御信号φ16によって、入力電圧Viの容量素子C1_8aへの供給の有無を切り替える。スイッチSW1_4~SW1_0,SW1_dは、電圧+Vr,-Vrの容量素子C1_xへの供給を停止させている場合において、制御信号φ17によって、入力電圧Viの容量素子C1_xへの供給の有無を切り替える。それにより、アナログフィルタFLT2によるフィルタリングが実現可能となる。
【0153】
図20は、低速AD変換器LC2の動作を示すタイミングチャートである。
【0154】
まず、サンプリングモードでは、制御信号φ1btmがHレベルに設定されてスイッチSW1_bがオンすることにより、各容量素子C1_5、C1_6、C1_8c、C1_7、C1_8b、C1_8a、C1_xの一方の電極にはグランドレベルの電圧(0V)が印可される(時刻t21~t22)。また、制御信号D8~D0,Ddが電圧+Vr,-Vrの容量素子への供給停止(
図20の“off”)を示す状態で、制御信号φ11~φ17が順番に一時的にHレベルになることにより、入力電圧Viの電荷が容量素子C1_5、C1_6、C1_8c、C1_7、C1_8b、C1_8a、C1_xの他方の電極に順番に蓄積される(時刻t21~t22)。つまり、サンプリングモードでは、入力電圧Viのサンプリングのみならず、アナログフィルタFLT2によるフィルタリングも同時に行われる。
【0155】
その後、ホールドモードでは、制御信号φ1btmがHレベルからLレベルに変化してスイッチSW1_bがオフすることにより、各容量素子の一方の電極がフローティング状態に切り替わるとともに、制御信号φ11~φ17が何れもHレベルからLレベルに切り替わることにより、各容量素子の他方の電極への入力電圧Viの印加が停止する(時刻t22)。
【0156】
その後、電荷再分配モードでは、まず、最上位ビットの容量素子C1_8の他方の電極に電圧+Vrが印可され、残りの容量素子C1_7~C1_0,C1_dの他方の電極に電圧-Vrが印可される(時刻t22~t23)。それにより、コンパレータ202の2つの入力端子には、差電圧として-Viが印可される。比較制御部203は、このときのコンパレータ202の比較結果に基づいて、最上位ビットの容量素子C1_8の他方の電極に印可される電圧を、電圧+V,-Vrの何れかに固定させる(時刻t23~t25)。例えば、Vi>0の場合、比較制御部203から出力されるデジタル信号(出力信号S21)の最上位ビットの値が1に確定する。この場合、最上位ビットの容量素子C1_8の他方の電極に印可される電圧は、電圧+Vrに固定される。それに対し、Vi<0の場合、比較制御部203から出力されるデジタル信号の最上位ビットの値が0に確定する。この場合、最上位ビットの容量素子C1_8の他方の電極に印可される電圧は、電圧-Vrに固定される。
【0157】
その後、最上位ビットの次の上位ビットである容量素子C1_7の他方の電極に電圧+Vrが印可され、残りの容量素子C1_6~C1_0,C1_dの他方の電極には電圧-Vrが印可される(時刻t23~t24)。それにより、コンパレータ202の2つの入力端子には、差電圧として-Vi+Vr×(最上位ビットの値)-Vr/2が印可される。比較制御部203は、このときのコンパレータ202の比較結果に基づいて、デジタル信号の上位2ビット目の値を確定させるとともに、容量素子C1_7の他方の電極に印可される電圧を、電圧+V,-Vrの何れかに固定させる(時刻t24~t25)。
【0158】
このような動作が、最下位ビットの容量素子C1_0まで順番に繰り返されることで、比較制御部203から出力されるデジタル信号(出力信号S21)の値が確定する(時刻t25)。
【0159】
なお、本実施の形態では、AD変換器LC2が、並列に設けられた4個の逐次比較型AD変換器によって構成されている。AD変換器LC2は、これら4個の逐次比較型AD変換器を用いて異なるタイミングでAD変換を実行することにより、効率良くかつ高精度にAD変換を実行することができる。以下、
図19及び
図20に加えて、
図21を用いて簡単に説明する。
【0160】
図21は、AD変換器LC2を構成する4個の逐次比較型AD変換器の動作を説明するための図である。なお、本実施の形態では、AD変換器LC2が、初段の変調器SDM1のサンプリング周波数fsのM分の1のサンプリング周波数fs/Mでサンプリングを行っている。即ち、AD変換器LC2を構成する4個の逐次比較型AD変換器は、それぞれ、Mクロックサイクル毎にタイミングをずらしてサンプリングを行っている。この場合、一つの逐次比較型AD変換器に割り当てられるAD変換期間は、“M×逐次比較型AD変換器の個数(スライス数)-アナログフィルタのタップ数”のクロックサイクルとなる。本例では、M=4、スライス数=4、タップ数=7であるため、一つの逐次比較型AD変換器に割り当てられるAD変換期間は、9(=4×4-7)クロックサイクルである。
【0161】
まず、第1の逐次比較型AD変換器では、7クロックサイクルの期間をかけてサンプリング及びフィルタリングが行われ、その後、9クロックサイクルの期間をかけてAD変換が行われる。また、第2の逐次比較型AD変換器では、第1の逐次比較型AD変換器によるサンプリングの開始から4クロックサイクル経過後に、7クロックサイクルの期間をかけてサンプリング及びフィルタリングが行われ、その後、9クロックサイクルの期間をかけてAD変換が行われる。また、第3の逐次比較型AD変換器では、第2の逐次比較型AD変換器によるサンプリングの開始から4クロックサイクル経過後に、7クロックサイクルの期間をかけてサンプリング及びフィルタリングが行われ、その後、9クロックサイクルの期間をかけてAD変換が行われる。また、第4の逐次比較型AD変換器では、第3の逐次比較型AD変換器によるサンプリングの開始から4クロックサイクル経過後に、7クロックサイクルの期間をかけてサンプリング及びフィルタリングが行われ、その後、9クロックサイクルの期間をかけてAD変換が行われる。ここで、第4の逐次比較型AD変換器によるサンプリングの開始から4クロックサイクル経過後には、第1の逐次比較型AD変換器によるAD変換は完了しているため、第1の逐次比較型AD変換器による次のサンプリング及びフィルタリングが開始される。このような動作が繰り返される。
【0162】
このように、本実施の形態に係るMASH型シグマデルタAD変換装置2は、MASH型シグマデルタAD変換装置1と同等程度の効果を奏することができる。また、本実施の形態に係るMASH型シグマデルタAD変換装置2は、アナログフィルタFLT2及び低速AD変換器LC2が容量素子を共用することにより、回路規模の増大を抑制することができるとともに、アナログフィルタFLT2及び低速AD変換器LC2間にバッファを設ける必要が無くなるため、消費電力の増大を抑制することができる。
【0163】
本実施の形態では、M=4、スライス数=4、タップ数=7である場合を例に説明したが、これに限られない。効率良く且つ高精度にAD変換を実行できるのであれば、Mの値、スライス数、タップ数は任意の値に設定可能である。各逐次比較型AD変換器は、9ビット幅のデジタル信号を生成する場合に限られず、Mの値、スライス数、タップ数等に応じて決定される任意のビット幅のデジタル信号を生成する構成に適宜変更可能である。
【0164】
<実施の形態3>
図22は、実施の形態3に係るMASH型シグマデルタAD変換装置3の主要部の構成例を示すブロック図である。
【0165】
図22に示すように、MASH型シグマデルタAD変換装置3は、MASH型シグマデルタAD変換装置1の場合と比較して、シグマデルタ型変調器SDM1に設けられた量子化器QT1として逐次比較型AD変換器QT1aを備え、逐次比較型AD変換器QT1aの電荷保持ノードN2の電圧信号M11をシグマデルタ型変調器SDM1の出力信号としてアナログフィルタFLT2に出力している。また、MASH型シグマデルタAD変換装置3は、DA変換回路DAC12,DAC13及びアナログ加減算器AS21を備えていない。
【0166】
≪逐次比較型AD変換器QT1aの詳細≫
図23は、逐次比較型AD変換器QT1aの構成例を示す図である。なお、
図23の例では、逐次比較型AD変換器QT1aの内部にアナログ加減算器AS12の機能が組み込まれている。なお、本例では、逐次比較型AD変換器QT1aが、シングルエンド型である場合について説明しているが、これに限られず、差動増幅型であっても良い。
【0167】
図23に示すように、逐次比較型AD変換器QT1aは、DA変換器301と、コンパレータ302と、比較制御部303と、を備える。DA変換器301は、比較制御部303から逐次出力されるデジタル信号を、下限値“-Vr”から上限値“+Vr”までの範囲をフルスケールとしてアナログ電圧V2aに変換する。また、DA変換器301は、入力電圧(便宜的にViとする)をサンプリングしてホールドするサンプルホールド回路としての機能も含んでいる。コンパレータ302は、DA変換器301のサンプルホールド機能によってホールドされた入力電圧Viと、DA変換器301によるAD変換結果であるアナログ電圧V2aと、を比較して比較結果を出力する。比較制御部303は、コンパレータ302による比較結果に基づいて、デジタル信号の値を切り替える。このような動作が繰り返されることで、入力電圧Viに最も近い値を示すアナログ電圧V2aに対応するデジタル信号の値が確定する。逐次比較型AD変換器QT1aは、このデジタル信号を出力信号S11として出力する。
【0168】
具体的には、DA変換器301は、上位ビットから下位ビットにかけて容量値がバイナリ加重された3個の容量素子C2_2~C2_0と、最下位ビットの容量素子C2_0と同じ容量値を有するダミーの容量素子C2_dと、最上位ビットの容量素子C2_2の2倍の容量値8Cに係数αを乗じた容量値8αCを有する容量素子C2_3と、これら容量素子C2_3~C2_0,C2_dのそれぞれに直列に設けられた複数のスイッチSW2_3~SW2_0,SW2_dと、を有する。スイッチSW2_bは、各容量素子C2_3~C2_0,C2_dの一方の電極とコンパレータ302との間のノード(電荷保持ノードN2側の電極)と、接地電圧端子GNDと、の間に設けられている。
【0169】
スイッチSW2_2~SW2_0,SW2_dは、動作モードやDA変換されるデジタル信号の値に基づいて、比較制御部303によって制御される。例えば、スイッチSW2_2は、制御信号D22、φ20によって、電圧+Vr、-Vr、Viの何れかを選択して容量素子C2_2の他方の電極に供給する。スイッチSW2_1は、制御信号D21、φ20によって、電圧+Vr、-Vr、Viの何れかを選択して容量素子C2_1の他方の電極に供給する。スイッチSW2_0は、制御信号D20、φ20によって、電圧+Vr、-Vr、Viの何れかを選択して容量素子C2_0の他方の電極に供給する。スイッチSW2_dは、制御信号D2d、φ20によって、電圧+Vr、-Vr、Viの何れかを選択して容量素子C2_dの他方の電極に供給する。また、スイッチSW2_bは、制御信号φ2btmによってオンオフを切り替える。
【0170】
また、スイッチSW2_3は、プローブ信号Xに応じた値を示す制御信号φD2pmによって制御される。例えば、スイッチSW2_3は、プローブ信号Xが“+1”を示す場合、電圧+Vrを容量素子C2_3の他方の電極に供給し、プローブ信号Xが“-1”を示す場合、電圧-Vrを容量素子C2_3の他方の電極に供給する。
【0171】
図24は、逐次比較型AD変換器QT1aの動作を示すタイミングチャートである。
【0172】
まず、サンプリングモードでは、制御信号φ2btmがHレベルに設定されてスイッチSW2_bがオンすることにより、容量素子C2_3~C2_0,C2_dの一方の電極にはグランドレベルの電圧(0V)が印可される(時刻t31~t32)。また、制御信号D22~D20,D2dが電圧+Vr,-Vrの容量素子C2_2~C2_0,C2_dの他方の電極への供給停止(
図24の“off”)を示す状態で、制御信号φ20がHレベルを示すことにより、容量素子C2_2~C2_0,C2_dの他方の電極には入力電圧Viが印可される(時刻t31~t32)。また、このとき、容量素子C2_3の他方の電極には、プローブ信号Xに応じた電圧+Vr,-Vrの何れかが印可される(時刻t31~t32)。つまり、入力電圧Viにプローブ信号X成分が加算される。
【0173】
その後、ホールドモードでは、制御信号φ2btmがHレベルからLレベルに変化してスイッチSW2_bがオフすることにより、容量素子C2_3~C2_0,C2_dの一方の電極がフローティング状態に切り替わるとともに、制御信号φ20がHレベルからLレベルに切り替わることにより、容量素子C2_2~C2_0,C2_dの一方の電極への入力電圧Viの印加が停止する(時刻t32)。
【0174】
その後、電荷再分配モードでは、まず、最上位ビットの容量素子C2_2の他方の電極に電圧+Vrが印可され、残りの容量素子C2_3,C2_1,C2_0,C2_dの他方の電極に電圧-Vrが印可される(時刻t32~t33)。それにより、コンパレータ302の2つの入力端子には、差電圧として-Vi-(プローブ信号X成分の電圧)が印可される。比較制御部303は、このときのコンパレータ302の比較結果に基づいて、最上位ビットの容量素子C2_2の他方の電極に印可される電圧を、電圧+Vr,-Vrの何れかに固定させる(時刻t33~t36)。例えば、Vi+(プローブ信号X成分の電圧)>0の場合、比較制御部303から出力されるデジタル信号(出力信号S11)の最上位ビットの値が1に確定する。この場合、最上位ビットの容量素子C2_2の他方の電極に印可される電圧は、電圧+Vrに固定される。それに対し、Vi+(プローブ信号X成分の電圧)<0の場合、比較制御部303から出力されるデジタル信号の最上位ビットの値が0に確定する。この場合、最上位ビットの容量素子C2_2の他方の電極に印可される電圧は、電圧-Vrに固定される。
【0175】
その後、最上位ビットの次の上位ビットである容量素子C2_1の他方の電極に電圧+Vrが印可され、残りの容量素子C2_3,C2_0,C2_dの他方の電極には電圧-Vrが印可される(時刻t33~t34)。それにより、コンパレータ302の2つの入力端子には、差電圧として-Vi+Vr×(最上位ビットの値)-Vr/2が印可される。比較制御部303は、このときのコンパレータ302の比較結果に基づいて、デジタル信号の上位2ビット目の値を確定させるとともに、容量素子C2_1の他方の電極に印可される電圧を、電圧+V,-Vrの何れかに固定させる(時刻t34~t36)。
【0176】
このような動作が、最下位ビットの容量素子C2_0まで順番に繰り返されることで、比較制御部203から出力されるデジタル信号(出力信号S11)の値が確定する(時刻t25)。なお、この出力信号S11には、プローブ信号X成分が含まれている。
【0177】
その後、容量素子C2_3の他方の電極には、再びプローブ信号Xに応じた電圧+Vr,-Vrの何れかが印可される(時刻t35~t36)。それにより、電荷保持ノードN2は、プローブ信号X成分と量子化誤差Q1とを加算した電圧値を示す。電荷保持ノードN2の電圧は、逐次比較型AD変換器QT1aの中間信号M11として、アナログフィルタFLT2に出力される。
【0178】
MASH型シグマデルタAD変換装置3のその他の構成については、MASH型シグマデルタAD変換装置1の場合と同様であるため、その説明を省略する。
【0179】
このように、本実施の形態に係るMASH型シグマデルタAD変換装置3は、MASH型シグマデルタAD変換装置1と同等程度の効果を奏することができる。また、本実施の形態に係るMASH型シグマデルタAD変換装置3は、アナログ加減算器AS21を設ける必要がないため、回路規模の増大を抑制することができるとともに、消費電力の増大を抑制することができる。
【0180】
本実施の形態では、逐次比較型AD変換器QT1aが3ビット幅の出力信号S11を生成する場合を例に説明したが、これに限られず、任意のビット幅の出力信号S11を生成する構成に適宜変更可能である。
【0181】
<実施の形態4>
図25は、実施の形態4に係るMASH型シグマデルタAD変換装置4の主要部の構成例を示すブロック図である。
【0182】
図25に示すように、MASH型シグマデルタAD変換装置4は、MASH型シグマデルタAD変換装置1と比較して、フィルタFLT4と、タップ係数変換&間引き回路(以下、間引き回路と称す)DM1と、間引き回路DM2と、をさらに備える。
【0183】
フィルタFLT4は、シグマデルタ型変調器SDM1とノイズキャンセルフィルタNCF1との間に設けられ、シグマデルタ型変調器SDM1の出力信号S11のフィルタリングを行ってノイズキャンセルフィルタNCF1に出力する。
【0184】
ここで、ノイズキャンセルフィルタNCF2の伝達関数H1D(f)は、適応フィルタAF1によって探索された伝達関数H1A_R(f)と、フィルタFLT4の伝達関数と、の積で表されるように調整されることが好ましい。そこで、間引き回路DM1は、まず、適応フィルタAF1によって探索された伝達関数H1A_R(f)と、フィルタFLT4の伝達関数と、の積を算出する。
【0185】
また、ノイズキャンセルフィルタNCF2は、低速AD変換器LC1と同じ動作周波数fs/Mで動作するのが通常である。しかしながら、間引き回路DM1によって算出された伝達関数は、動作周波数fsで動作することを想定して算出されたものである。そこで、間引き回路DM1は、さらに、算出された伝達関数を表すのに用いられる複数のタップ係数をM分の1に間引く。それにより、間引き回路DM1から出力されるタップ係数は、動作周波数fs/Mで動作することを想定したものとなる。ノイズキャンセルフィルタNCF2の伝達関数H1D(f)は、この間引き回路DM1から出力されたタップ係数によって調整される。
【0186】
他方、ノイズキャンセルフィルタNCF1は、ノイズキャンセルフィルタNCF2に合わせて動作周波数fs/Mで動作するのが通常である。そこで、間引き回路DM2は、適応フィルタAF2によって探索された伝達関数H2A_R(f)を表すのに用いられる複数のタップ係数をM分の1に間引く。それにより、間引き回路DM2から出力されるタップ係数は、動作周波数fs/Mで動作することを想定したものとなる。ノイズキャンセルフィルタNCF1の伝達関数H2D(f)は、この間引き回路DM2から出力されたタップ係数によって調整される。
【0187】
MASH型シグマデルタAD変換装置4のその他の構成については、MASH型シグマデルタAD変換装置1の場合と同様であるため、その説明を省略する。
【0188】
本実施の形態に係るMASH型シグマデルタAD変換装置4は、MASH型シグマデルタAD変換装置1と同等程度の効果を奏することができる。さらに、MASH型シグマデルタAD変換装置4は、適応フィルタAF1,AF2のそれぞれによって探索された伝達関数を表すのに用いられる複数のタップ係数をM分の1に間引くことによって、それら間引いた結果を、低速AD変換器LC1と同じ動作周波数fs/Mで動作するノイズキャンセルフィルタNCF2,NCF1のそれぞれに適した伝達関数として採用することができる。
【0189】
なお、MASH型シグマデルタAD変換装置4の構成は、MASH型シグマデルタAD変換装置1に採用されるのみならず、他のMASH型シグマデルタAD変換装置にも採用されることができる。
【0190】
<実施の形態5>
図26は、実施の形態5に係るMASH型シグマデルタAD変換装置5の主要部の構成例を示すブロック図である。
【0191】
図26に示すように、MASH型シグマデルタAD変換装置5は、MASH型シグマデルタAD変換装置1の場合と比較して、アナログ加減算器AS21による量子化器QT1の前後の信号間の減算によって、プローブ信号X成分及び量子化誤差Q1の加算信号を生成するのではなく、アナログ積分器ユニットINTU1の複数の内部ノードの電圧を合成することによって、プローブ信号X成分及び量子化誤差Q1の加算信号を生成している。
【0192】
MASH型シグマデルタAD変換装置5のその他の構成については、MASH型シグマデルタAD変換装置1の場合と同様であるため、その説明を省略する。
【0193】
本実施の形態に係るMASH型シグマデルタAD変換装置5は、MASH型シグマデルタAD変換装置1と同等程度の効果を奏することができる。さらに、MASH型シグマデルタAD変換装置5は、アナログ加減算器AS21及びDA変換回路DAC12を設ける必要がないため、回路規模の増大を抑制することができるとともに、消費電力の増大を抑制することができる。
【0194】
なお、MASH型シグマデルタAD変換装置5の構成は、MASH型シグマデルタAD変換装置1に採用されるのみならず、他のMASH型シグマデルタAD変換装置にも採用されることができる。
【0195】
以上のように、上記実施の形態1~5に係るMASH型シグマデルタAD変換装置は、キャリブレーション回路CAL1を用いることによって量子化器QT1において発生した量子化誤差Q1をキャンセルすることができるため、精度の高いAD変換を実行することができる。さらに、上記実施の形態1~5に係るMASH型シグマデルタAD変換装置は、初段のシグマデルタ型変調器の後段にさらにシグマデルタ型変調器を備える代わりに、アナログフィルタ及び低速AD変換器を備えている。それにより、上記実施の形態1~5に係るMASH型シグマデルタAD変換装置は、高速動作が必要なアナログ積分器ユニット、量子化器及びDA変換回路を削減することができるため、消費電力を低減することができる。
【0196】
また、上記実施の形態1~5に係るMASH型シグマデルタAD変換装置は、アナログ積分器の特性ばらつきに限られず、その他の各種回路の特性ばらつき(例えば、アナログ加減算器の特性ばらつき、量子化器とDA変換回路との間の基準電圧ミスマッチに伴う特性ばらつき等)が存在する状況下においても、量子化誤差Q1をノイズキャンセルフィルタNCF1,NCF2を用いてキャンセルすることができる。
【0197】
さらに、上記実施の形態1~5に係るMASH型シグマデルタAD変換装置は、外部入力信号SIに対するA/D変換を行いながら、バックグランドで適応フィルタAF1,AF2の探索動作を行うことが可能である。それにより、例えば、使用環境の変化等に伴い各種回路の特性変動が生じた場合であっても、量子化誤差Q1を、ノイズキャンセルフィルタNCF1,NCF2を用いて速やかにキャンセルすることができる。
【0198】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は既に述べた実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることはいうまでもない。
【0199】
例えば、上記の実施の形態に係る半導体装置では、半導体基板、半導体層、拡散層(拡散領域)などの導電型(p型もしくはn型)を反転させた構成としてもよい。そのため、n型、及びp型の一方の導電型を第1の導電型とし、他方の導電型を第2の導電型とした場合、第1の導電型をp型、第2の導電型をn型とすることもできるし、反対に第1の導電型をn型、第2の導電型をp型とすることもできる。
【符号の説明】
【0200】
1~5 MASH型シグマデルタAD変換装置
1e MASH型シグマデルタAD変換装置
11 CPU
12 RAM
13 DA変換器
14 不揮発性メモリ
50,60MASH型シグマデルタAD変換装置
201,301 DA変換器
202,302 コンパレータ
203,303 比較制御部
ADC_1~ADC_n AD変換器
AF1 適応フィルタ
AF2 適応フィルタ
AINT1 アナログ積分器
AINT1a~AINT1c アナログ積分器
AINT2 アナログ積分器
AMP11,AMP12,AMP21 アンプ回路
AMP13 アンプ回路
ANTt 送信アンテナ
ANTr_1~ANTr_n 受信アンテナ
AS11,AS12,AS21 アナログ加減算器
ASi1,ASi2 アナログ加減算器
BBU ベースバンドユニット
C1a~C1c 容量素子
C1f,C2f 容量素子
C1g~C4g 容量素子
C1h~C7h 容量素子
C1i~C7i 容量素子
C2c 容量素子
C8h,C8i 容量素子
CAL1 キャリブレーション回路
CAL51 キャリブレーション回路
DAC11~DAC13,DAC21 DA変換回路
DACi DA変換回路
DM1 タップ係数変換&間引き回路
DM2 間引き回路
DAS31 デジタル加減算器
DAS41 デジタル加減算器
DAS42 デジタル加減算器
FLT1 アナログフィルタ
FLT1a~FLT1e アナログフィルタ
FLT2 アナログフィルタ
FLT4 フィルタ
IA_1~IA_n アンプ
INTU1,INTU2 アナログ積分器ユニット
INTU1a アナログ積分器ユニット
LC1,LC2 低速AD変換器
LPF ロウパスフィルタ
MIX_1~MIX_n ミキサ
MOD 変調器
NCF1,NCF2 ノイズキャンセルフィルタ
NCF51,NCF52 ノイズキャンセルフィルタ
NCU1 ノイズキャンセル回路
NCU51 ノイズキャンセル回路
OSC 発振器
OPA1a,OPA1c,OPA1d,OPA1f オペアンプ
OTA1b 電流アンプ
OTA1g~OTA4g 電流アンプ
PA パワーアンプ
QT1,QT2 量子化器
QT1a 逐次比較型AD変換器
R1a 抵抗素子
R1d,R2d 入力抵抗
R1f~R3f 抵抗素子
R3d 帰還抵抗
RFU 高周波ユニット
SDM1 シグマデルタ型変調器
SDM51,SDM52 シグマデルタ型変調器
SW1c~SW4c スイッチ
SW1h_1~SW1h_7 スイッチ
SW1i_1~SW1i_7 スイッチ
SW2h_1~SW2h_7 スイッチ
SW2i_1~SW2i_7 スイッチ
SW3h,SW3i スイッチ
SYS1 ミリ波レーダシステム
XG プローブ信号生成回路