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特許7118887最適化されたレンチウイルス移入ベクターおよびその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-05
(45)【発行日】2022-08-16
(54)【発明の名称】最適化されたレンチウイルス移入ベクターおよびその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/867 20060101AFI20220808BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220808BHJP
   C12N 7/04 20060101ALI20220808BHJP
   C12N 15/49 20060101ALI20220808BHJP
【FI】
C12N15/867 Z ZNA
C12N5/10
C12N7/04
C12N15/49
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2018526655
(86)(22)【出願日】2016-11-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-11-22
(86)【国際出願番号】 US2016063700
(87)【国際公開番号】W WO2017091786
(87)【国際公開日】2017-06-01
【審査請求日】2019-11-07
(31)【優先権主張番号】62/258,798
(32)【優先日】2015-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504389991
【氏名又は名称】ノバルティス アーゲー
(73)【特許権者】
【識別番号】508049592
【氏名又は名称】ザ トラスティーズ オブ ザ ユニバーシティー オブ ぺンシルべニア
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100186897
【弁理士】
【氏名又は名称】平川 さやか
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】スレプシュキン,ヴラディミル
(72)【発明者】
【氏名】ルカシェフ,ドミトリー
【審査官】木原 啓一郎
(56)【参考文献】
【文献】J. Virol.,1998年,Vol. 72,pp. 8463-8471
【文献】J. Virol.,1997年,Vol. 71,pp. 4892-4903
【文献】Thrombosis and Haemostasis,2011年,Vol. 106,pp. 712-723
【文献】Med. Sci. Monit.,2015年,Vol. 21,pp. 2110-2115
【文献】Mol. Ther.,2009年,Vol. 17,pp. 1453-1464
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンチウイルス移入ベクターであって、
(i)配列番号52核酸配列からなるCMVプロモーター、
(ii)配列番号53核酸配列からなるLTR R領域、
(iii)配列番号54核酸配列からなるLTR U5領域、
(iv)配列番号55核酸配列からなるプライマー結合部位、
(v)配列番号56核酸配列からなるパッケージングシグナル、
(vi)配列番号57核酸配列からなり、前記パッケージングシグナル内にある、主要スプライスドナー部位、
(vii)配列番号58核酸配列からなる部分的gag配列、
(viii)配列番号60核酸配列からなる部分的env配列、
(ix)配列番号62核酸配列からなるRev応答エレメント、
(x)配列番号64核酸配列からなる部分的env配列、
(xi)配列番号65核酸配列からなり、(x)部の前記部分的env配列内にある、スプライスアクセプター部位、
(xii)配列番号67、92、または93核酸配列からなるセントラルポリプリントラクト、
(xiii)配列番号68または94核酸配列からなり、前記セントラルポリプリントラクト内にある、スプライスアクセプター部位、
(xiv)配列番号71または95の核酸配列を有するEF1アルファプロモーター、
(xv)配列番号72核酸配列からなり、前記EF1アルファプロモーター内にある、構成的スプライスドナー(CD)部位、
(xvi)配列番号73核酸配列を有する核酸配列からなり、前記EF1アルファプロモーター内にある、構成的スプライスアクセプター(CA)部位、
(xvii)配列番号76核酸配列からなるEGFPをコードするポリヌクレオチドおよび/または導入遺伝子配列、
(xviii)配列番号78または79核酸配列からなるPRE配列、
(xix)配列番号83核酸配列からなる部分的nef配列、
(xx)配列番号84核酸配列からなるdU3配列、
(xxi)配列番号85核酸配列からなるLTR R領域、ならびに
(xxii)配列番号86核酸配列からなるLTR U5領域
を含み、
SV40複製起点および/またはf1複製起点を含まない、
レンチウイルス移入ベクター。
【請求項2】
前記導入遺伝子配列が、タンパク質をコードする、請求項1に記載のレンチウイルス移入ベクター。
【請求項3】
前記タンパク質が、キメラ抗原受容体(CAR)を含む、請求項に記載のレンチウイルス移入ベクター。
【請求項4】
前記CARが、N末端からC末端の方向に、抗原結合性ドメイン、膜貫通ドメイン、および1つまたは複数のシグナル伝達ドメインを含む、請求項に記載のレンチウイルス移入ベクター。
【請求項5】
前記シグナル伝達ドメインが、1つまたは複数の一次シグナル伝達ドメインを含む、請求項に記載のレンチウイルス移入ベクター。
【請求項6】
前記シグナル伝達ドメインが、1つまたは複数の共刺激シグナル伝達ドメインを含む、請求項に記載のレンチウイルス移入ベクター。
【請求項7】
前記1つまたは複数の一次シグナル伝達ドメインのうちの1つが、CD3-ゼータ刺激ドメインを含む、請求項に記載のレンチウイルス移入ベクター。
【請求項8】
前記共刺激シグナル伝達ドメインのうちの1つまたは複数が、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、GITR、CD30、CD40、ICOS、BAFFR、HVEM、ICAM-1、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CDS、CD7、CD287、LIGHT、NKG2C、NKG2D、SLAMF7、NKp80、NKp30、NKp44、NKp46、CD160、B7-H3、およびCD83に特異的に結合するリガンドからなる群から選択される共刺激タンパク質から選択される細胞内ドメインを含む、請求項に記載のレンチウイルス移入ベクター。
【請求項9】
前記共刺激シグナル伝達ドメインのうちの前記1つまたは複数が、前記4-1BB(CD137)共刺激ドメインを含む、請求項に記載のレンチウイルス移入ベクター。
【請求項10】
前記共刺激ドメインのうちの前記1つまたは複数が、前記CD28共刺激ドメインを含む、請求項に記載のレンチウイルス移入ベクター。
【請求項11】
前記抗原結合性ドメインが、scFvである、請求項に記載のレンチウイルス移入ベクター。
【請求項12】
前記抗原結合性ドメインが、CD19;CD123;CD22;CD30;CD171;CS-1;C型レクチン様分子-1、CD33;上皮成長因子受容体バリアントIII(EGFRvIII);ガングリオシドG2(GD2);ガングリオシドGD3;TNF受容体ファミリーメンバーB細胞成熟(BCMA);Tn抗原((Tn Ag)または(GalNAcα-Ser/Thr));前立腺特異的膜抗原(PSMA);受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR1);Fms様チロシンキナーゼ3(FLT3);腫瘍関連糖タンパク質72(TAG72);CD38;CD44v6;癌胎児性抗原(CEA);上皮細胞接着分子(EPCAM);B7H3(CD276);KIT(CD117);インターロイキン-13受容体サブユニットアルファ-2;メソテリン;インターロイキン11受容体アルファ(IL-11Ra);前立腺幹細胞抗原(PSCA);プロテアーゼセリン21;血管内皮成長因子受容体2(VEGFR2);Lewis(Y)抗原;CD24;血小板由来成長因子受容体ベータ(PDGFR-ベータ);ステージ特異的胎児抗原-4(SSEA-4);CD20;葉酸受容体アルファ;受容体チロシン-タンパク質キナーゼERBB2(Her2/neu);ムチン1、細胞表面関連(MUC1);上皮成長因子受容体(EGFR);神経細胞接着分子(NCAM);プロスターゼ;前立腺酸性ホスファターゼ(PAP);伸長因子2変異型(ELF2M);エフリンB2;線維芽細胞活性化タンパク質アルファ(FAP);インスリン様成長因子1受容体(IGF-I受容体)、炭酸脱水酵素IX(CAIX);プロテアソーム(プロソーム、マクロペイン)サブユニット、ベータ型、9(LMP2);糖タンパク質100(gp100);切断点クラスター領域(BCR)およびエーベルソンマウス白血病ウイルスがん遺伝子ホモログ1(Abl)からなるがん遺伝子融合タンパク質(bcr-abl);チロシナーゼ;エフリンA型受容体2(EphA2);フコシルGM1;シアリルLewis接着分子(sLe);ガングリオシドGM3;トランスグルタミナーゼ5(TGS5);高分子量黒色腫関連抗原(HMWMAA);o-アセチル-GD2ガングリオシド(OAcGD2);葉酸受容体ベータ;腫瘍内皮マーカー1(TEM1/CD248);腫瘍内皮マーカー7-関連(TEM7R);クローディン6(CLDN6);甲状腺刺激ホルモン受容体(TSHR);Gタンパク質共役型受容体クラスCグループ5、メンバーD(GPRC5D);X染色体オープンリーディングフレーム61(CXORF61);CD97;CD179a;未分化リンパ腫キナーゼ(ALK);ポリシアル酸;胎盤特異的1(PLAC1);globoHグリコセラミドの六糖部分(GloboH);乳腺分化抗原(NY-BR-1);ウロプラキン2(UPK2);A型肝炎ウイルス細胞受容体1(HAVCR1);アドレナリン受容体ベータ3(ADRB3);パンネキシン3(PANX3);Gタンパク質共役型受容体20(GPR20);リンパ球抗原6複合体、遺伝子座K9(LY6K);嗅覚受容体51E2(OR51E2);TCRガンマ代替リーディングフレームタンパク質(TARP);ウイルムス腫瘍タンパク質(WT1);がん/精巣抗原1(NY-ESO-1);がん/精巣抗原2(LAGE-1a);黒色腫関連抗原1(MAGE-A1);ETS転座バリアント遺伝子6、12p染色体に位置(ETV6-AML);精子タンパク質17(SPA17);X抗原ファミリー、メンバー1A(XAGE1);アンジオポエチン結合性細胞表面受容体2(Tie 2);黒色腫がん精巣抗原-1(MAD-CT-1);黒色腫がん精巣抗原-2(MAD-CT-2);Fos関連抗原1;腫瘍タンパク質p53(p53);p53変異体;プロステイン;サバイビン(surviving);テロメラーゼ;前立腺癌腫瘍抗原-1、T細胞によって認識される黒色腫抗原1;ラット肉腫(Ras)変異体;ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT);肉腫転座切断点;黒色腫のアポトーシス阻害剤(ML-IAP);ERG(膜貫通プロテアーゼ、セリン2(TMPRSS2)ETS融合遺伝子);N-アセチルグルコサミニル-トランスフェラーゼV(NA17);対合ボックスタンパク質Pax-3(PAX3);アンドロゲン受容体;サイクリンB1;v-mycニワトリ骨芽球腫ウイルスがん遺伝子神経芽細胞腫由来ホモログ(MYCN);RasホモログファミリーメンバーC(RhoC);チロシナーゼ関連タンパク質2(TRP-2);シトクロムP450 1B1(CYP1B1);CCCTC-結合因子(ジンクフィンガータンパク質)様、T細胞によって認識される扁平上皮細胞癌腫抗原3(SART3);対合ボックスタンパク質Pax-5(PAX5);プロアクロシン結合タンパク質sp32(OY-TES1);リンパ球特異的タンパク質チロシンキナーゼ(LCK);Aキナーゼアンカータンパク質4(AKAP-4);滑膜肉腫、X切断点2(SSX2);終末糖化産物受容体(RAGE-1);腎臓偏在1(RU1);腎臓偏在2(RU2);レグマイン;ヒトパピローマウイルスE6(HPV E6);ヒトパピローマウイルスE7(HPV E7);腸内カルボキシルエステラーゼ;熱ショックタンパク質70-2変異型(mut hsp70-2);CD79a;CD79b;CD72;白血球関連免疫グロブリン様受容体1(LAIR1);IgAのFcフラグメントの受容体(FCARまたはCD89);白血球免疫グロブリン様受容体サブファミリーAメンバー2(LILRA2);CD300分子様ファミリーメンバーf(CD300LF);C型レクチンドメインファミリー12メンバーA(CLEC12A);骨髄間質細胞抗原2(BST2);EGF様モジュール含有ムチン様ホルモン受容体様2(EMR2);リンパ球抗原75(LY75);グリピカン-3(GPC3);Fc受容体様5(FCRL5);ならびに免疫グロブリンラムダ様ポリペプチド1(IGLL1)からなる群から選択される抗原に結合する、請求項に記載のレンチウイルス移入ベクター。
【請求項13】
前記抗原結合性ドメインが、CD19、メソテリン、またはCD123に結合する、請求項12に記載のレンチウイルス移入ベクター。
【請求項14】
前記CARが、抗CD19抗体またはそのフラグメント、4-1BB(CD137)膜貫通ドメイン、およびCD3-ゼータシグナル伝達ドメインを含む、請求項に記載のレンチウイルス移入ベクター。
【請求項15】
請求項に記載のレンチウイルス移入ベクターを含む、宿主細胞。
【請求項16】
前記宿主細胞が、293T細胞、Jurkat T細胞、または初代ヒトT細胞である、請求項15に記載の宿主細胞。
【請求項17】
1つまたは複数のレンチウイルスパッケージングベクターをさらに含む、請求項15に記載の宿主細胞。
【請求項18】
請求項1に記載のレンチウイルス移入ベクターおよび1つまたは複数のパッケージングベクターを含む、組成物。
【請求項19】
導入遺伝子配列を発現することができるレンチウイルスを産生する方法であって、
(a)細胞に、
(i)請求項に記載のレンチウイルス移入ベクター、および
(ii)1つまたは複数のレンチウイルスパッケージングベクター
を導入するステップと、
(b)前記細胞において、前記レンチウイルス移入ベクターおよび/または前記パッケージングベクターによってコードされるウイルスタンパク質を発現させ、それによって、前記レンチウイルス移入ベクターの導入遺伝子配列を含むレンチウイルスを産生するステップと
を含む、方法(但し、ヒトの体内においてレンチウイルスを産生する方法を除く)。
【請求項20】
前記細胞が、293T細胞、Jurkat T細胞、または初代ヒトT細胞である、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンチウイルス移入ベクターおよびそのようなベクターを使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞における異種遺伝子の発現は、多くの治療関連用途にとって望ましい。異種遺伝子を細胞に導入する1つの方法は、移入ベクターの使用を伴うが、この移入ベクターは、宿主細胞にトランスフェクトされると、宿主細胞による異種遺伝子を含んだウイルス粒子の産生を誘導する。次いで、このウイルス粒子を使用して、標的細胞を感染させ、それによって、標的細胞が異種遺伝子を発現するように誘導される。このような方法において有用なウイルスとしては、レンチウイルス、アデノウイルス、およびアデノ随伴ウイルスが挙げられる。いくつかの既存のレンチウイルスベクターは、低い遺伝子発現レベルを呈し、極めて大型であり得る。加えて、そのようなベクターに関連する生物学的安全性および毒性の問題が存在し得る。このため、そのようなベクターを使用したトランスフェクションおよびウイルス産生は、時間がかかり、非効率的で、手間がかかり、高価であり得る。したがって、標的細胞において異種遺伝子の発現を誘導するのに有用な、高速かつ効率的なウイルス産生に好適な改善されたレンチウイルスベクターが必要とされている。
【発明の概要】
【0003】
第1の態様において、本発明は、任意選択で1つまたは複数の異種核酸配列(任意選択で、コザック配列の下流にある)を含み、以下の特性:(a)サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターを含むこと、(b)野生型INS1と比較してRNAの核外輸送の制限を低減させる変異型INS1阻害性配列を含むgagタンパク質の少なくとも一部分をコードするポリヌクレオチドを含むこと、(c)gagのINS2、INS3、およびINS4阻害性配列をコードするポリヌクレオチドを含まないこと、ならびに(d)SV40複製起点および/またはf1複製起点を含まないことのうちの少なくとも2つによって特徴付けられる、レンチウイルス移入ベクターを提供する。様々な実施形態において、本レンチウイルス移入ベクターは、特性(a)~(d)のうちの少なくとも3つまたは4つすべてによって特徴付けられる。
【0004】
様々な例において、本レンチウイルス移入は、(i)野生型INS1と比較してRNAの核外輸送の制限を低減させる変異型INS1阻害性配列を含む、(ii)フレームシフトおよび成熟前終結(premature termination)をもたらす2つのヌクレオチド挿入を含有する、ならびに/または(iii)gagのINS2、INS3、およびINS4阻害性配列を含まない、gagタンパク質の150~250(例えば、168)ヌクレオチド部分をコードするポリヌクレオチドを含む。
【0005】
さらなる例において、本レンチウイルス移入ベクターは、パッケージングシグナル(プシー)、プシーに隣接するかまたはそれと部分的にオーバーラップする部分的gag配列、rev応答エレメント、部分的env配列、およびpol由来のcPPT配列からなる群から選択される1つまたは複数のエレメントをさらに含み、それらの配列は、任意選択で、HIV-1分離株(isolate)NL4-3またはSF3を起源とする。様々な例において、cPPT配列は、約150~250(例えば、178~181)ヌクレオチドを含み、スプライスアクセプターSA1配列を含む。
【0006】
本レンチウイルス移入ベクターは、任意選択で、ベクターのエレメント間に位置する1つまたは複数の制限部位を含み得る(例えば、例示的な位置については、以下の表3~5参照)。
【0007】
さらに、本レンチウイルス移入ベクターは、任意選択で、転写後制御エレメント(post-transcriptional regulatory element)(PRE)を含み得る。例えば、ウッドチャック肝炎ウイルスPRE(WPRE、例えば、配列番号78に対して少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%の配列同一性を有する)またはB型肝炎ウイルス分離株bba6 PRE(HPRE、例えば、配列番号79に対して少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%の配列同一性を有する)があり、任意選択で、HPREは、Xタンパク質コーディング配列に不活性化変異を含む。
【0008】
本レンチウイルス移入ベクターは、導入遺伝子の発現を作動させるために使用することができる、サブゲノムプロモーターをさらに含み得る。一例において、このプロモーターは、EF1aプロモーター(例えば、配列番号71に対して少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有する核酸配列を有するEF1aプロモーター)である。EF1aプロモーターは、任意選択で、完全長であり、インタクトなスプライスドナー配列およびスプライスアクセプター配列(それぞれ、配列番号72および73)を含む(例えば、配列番号95参照)。
【0009】
本レンチウイルス移入ベクターのレンチウイルス成分は、任意選択で、HIV-1(例えば、HIV-1株NL4-3またはSF3)を起源とし得る。様々な実施形態では、本レンチウイルス移入ベクターにおいて、部分的gagタンパク質をコードする配列は、本レンチウイルス移入ベクターとともに使用されるパッケージングプラスミド(例えば、pMDLgpRREパッケージングプラスミド)によってコードされるgagタンパク質の対応する領域に対して、90%未満の配列同一性を有する。
【0010】
別の態様において、本発明は、以下の特性:(i)配列番号52に対して少なくとも95%の同一性を有する核酸配列を含むCMVプロモーター、(ii)配列番号53に対して少なくとも95%の同一性を有する核酸配列を含むLTR R領域、(iii)配列番号54に対して少なくとも95%の同一性を有する核酸配列を含むLTR U5領域、(iv)配列番号55に対して少なくとも95%の同一性を有する核酸配列を含むプライマー結合部位、(v)配列番号56に対して少なくとも95%の同一性を有する核酸配列を含むパッケージングシグナル、(vi)配列番号57に対して少なくとも95%の同一性を有する核酸配列を含み、パッケージングシグナル内にある、主要スプライスドナー部位、(vii)配列番号58に対して少なくとも95%の同一性を有する核酸配列を含む部分的gag配列、(viii)配列番号60に対して少なくとも95%の同一性を有する核酸配列を含む部分的env配列、(ix)配列番号62に対して少なくとも95%の同一性を有する核酸配列を含むRev応答エレメント、(x)配列番号64に対して少なくとも95%の同一性を有する核酸配列を含む部分的env配列、(xi)配列番号65に対して少なくとも95%の同一性を有する核酸配列を含み、(x)部の部分的env配列内にある、スプライスアクセプター部位、(xii)配列番号67、92、または93に対して少なくとも95%の同一性を有する核酸配列を含むセントラルポリプリントラクト、(xiii)配列番号68または94に対して少なくとも95%の同一性を有する核酸配列を含み、セントラルポリプリントラクト内にある、スプライスアクセプター部位、(xiv)配列番号71または95に対して少なくとも95%の配列同一性を有するEF1アルファプロモーター、(xv)配列番号72に対して少なくとも95%の同一性を有する核酸配列を含み、EF1アルファプロモーター内にある、構成的スプライスドナー(CD)部位、(xvi)配列番号73に対して少なくとも95%の同一性を有する核酸配列を含み、EF1アルファプロモーター内にある、構成的スプライスアクセプター(CA)部位、(xvii)配列番号76に対して少なくとも95%の同一性を有する核酸配列を含むEGFPをコードするポリヌクレオチドおよび/または導入遺伝子配列、(xviii)配列番号78または79に対して少なくとも95%の配列同一性を有する核酸配列を含むPRE配列、(xix)配列番号83に対して少なくとも95%の配列同一性を有する核酸配列を含む部分的nef配列、(xx)配列番号84に対して少なくとも95%の配列同一性を有する核酸配列を含むdU3配列、(xxi)配列番号85に対して少なくとも95%の同一性を有する核酸配列を含むLTR R領域、ならびに(xxii)配列番号86に対して少なくとも95%の同一性を有する核酸配列を含む、LTR U5領域のうちの1つまたは複数(例えば、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、または22個)を含む、レンチウイルス移入ベクターを含む。これらの成分の配列同一性は、任意選択で、96%、97%、98%、99%、または100%であり得る。組合せの例としては、i、vii、viii、ix、x、xii、xiv、およびxviiiを含むものが挙げられ、ここで、xは、任意選択で、xiを含み、xiiは、任意選択で、xiiiを含み、xivは、任意選択で、xvおよびxviを含む。加えて、組合せには、ii、iii、iv、v、xix、xx、xxi、および/またはxxvも含まれ得、任意選択で、vはviを含む。さらに、これらの組合せのいずれも、xviiをさらに含んでもよい。
【0011】
本発明のレンチウイルス移入ベクターは、任意選択で、タンパク質、例えば、EGFPおよび/またはキメラ抗原受容体(CAR)をコードする異種核酸配列を含み得る。CARの事例において、CARは、任意選択で、N末端からC末端の方向に、抗原結合性ドメイン(例えば、scFv)、膜貫通ドメイン、ならびに1つまたは複数のシグナル伝達ドメイン(例えば、1つもしくは複数の一次シグナル伝達ドメイン(例えば、CD3-ゼータ刺激ドメイン)および/または1つもしくは複数の共刺激シグナル伝達ドメイン(例えば、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、GITR、CD30、CD40、ICOS、BAFFR、HVEM、ICAM-1、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CDS、CD7、CD287、LIGHT、NKG2C、NKG2D、SLAMF7、NKp80、NKp30、NKp44、NKp46、CD160、B7-H3、およびCD83に特異的に結合するリガンドからなる群から選択される共刺激タンパク質から選択される細胞内ドメイン))を含む。
【0012】
様々な例において、抗原結合性ドメインは、CD19;CD123;CD22;CD30;CD171;CS-1;C型レクチン様分子-1、CD33;上皮成長因子受容体バリアントIII(EGFRvIII);ガングリオシドG2(GD2);ガングリオシドGD3;TNF受容体ファミリーメンバーB細胞成熟(BCMA);Tn抗原((Tn Ag)または(GalNAcα-Ser/Thr));前立腺特異的膜抗原(PSMA);受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR1);Fms様チロシンキナーゼ3(FLT3);腫瘍関連糖タンパク質72(TAG72);CD38;CD44v6;癌胎児性抗原(CEA);上皮細胞接着分子(EPCAM);B7H3(CD276);KIT(CD117);インターロイキン-13受容体サブユニットアルファ-2;メソテリン;インターロイキン11受容体アルファ(IL-11Ra);前立腺幹細胞抗原(PSCA);プロテアーゼセリン21;血管内皮成長因子受容体2(VEGFR2);Lewis(Y)抗原;CD24;血小板由来成長因子受容体ベータ(PDGFR-ベータ);ステージ特異的胎児抗原-4(SSEA-4);CD20;葉酸受容体アルファ;受容体チロシン-タンパク質キナーゼERBB2(Her2/neu);ムチン1、細胞表面関連(MUC1);上皮成長因子受容体(EGFR);神経細胞接着分子(NCAM);プロスターゼ(Prostase);前立腺酸性ホスファターゼ(PAP);伸長因子2変異型(ELF2M);エフリンB2;線維芽細胞活性化タンパク質アルファ(FAP);インスリン様成長因子1受容体(IGF-I受容体)、炭酸脱水酵素IX(CAIX);プロテアソーム(プロソーム、マクロペイン)サブユニット、ベータ型、9(LMP2);糖タンパク質100(gp100);切断点クラスター領域(BCR)およびエーベルソンマウス白血病ウイルスがん遺伝子ホモログ1(Abl)からなるがん遺伝子融合タンパク質(bcr-abl);チロシナーゼ;エフリンA型受容体2(EphA2);フコシルGM1;シアリルLewis接着分子(sLe);ガングリオシドGM3;トランスグルタミナーゼ5(TGS5);高分子量黒色腫関連抗原(HMWMAA);o-アセチル-GD2ガングリオシド(OAcGD2);葉酸受容体ベータ;腫瘍内皮マーカー1(TEM1/CD248);腫瘍内皮マーカー7-関連(TEM7R);クローディン6(CLDN6);甲状腺刺激ホルモン受容体(TSHR);Gタンパク質共役型受容体クラスCグループ5、メンバーD(GPRC5D);X染色体オープンリーディングフレーム61(CXORF61);CD97;CD179a;未分化リンパ腫キナーゼ(ALK);ポリシアル酸;胎盤特異的1(PLAC1);globoHグリコセラミドの六糖部分(GloboH);乳腺分化抗原(NY-BR-1);ウロプラキン2(UPK2);A型肝炎ウイルス細胞受容体1(HAVCR1);アドレナリン受容体ベータ3(ADRB3);パンネキシン3(PANX3);Gタンパク質共役型受容体20(GPR20);リンパ球抗原6複合体、遺伝子座K9(LY6K);嗅覚受容体51E2(OR51E2);TCRガンマ代替リーディングフレームタンパク質(TCR gamma Alternate Reading Frame Protein)(TARP);ウイルムス腫瘍タンパク質(WT1);がん/精巣抗原1(NY-ESO-1);がん/精巣抗原2(LAGE-1a);黒色腫関連抗原1(MAGE-A1);ETS転座バリアント遺伝子6、12p染色体に位置(ETV6-AML);精子タンパク質17(SPA17);X抗原ファミリー、メンバー1A(XAGE1);アンジオポエチン結合性細胞表面受容体2(Tie 2);黒色腫がん精巣抗原-1(MAD-CT-1);黒色腫がん精巣抗原-2(MAD-CT-2);Fos関連抗原1;腫瘍タンパク質p53(p53);p53変異体;プロステイン;サバイビン(surviving);テロメラーゼ;前立腺癌腫瘍抗原-1、T細胞によって認識される黒色腫抗原1;ラット肉腫(Ras)変異体;ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT);肉腫転座切断点;黒色腫のアポトーシス阻害剤(ML-IAP);ERG(膜貫通プロテアーゼ、セリン2(TMPRSS2)ETS融合遺伝子);N-アセチルグルコサミニル-トランスフェラーゼV(NA17);対合ボックスタンパク質Pax-3(PAX3);アンドロゲン受容体;サイクリンB1;v-mycニワトリ骨芽球腫ウイルスがん遺伝子神経芽細胞腫由来ホモログ(MYCN);RasホモログファミリーメンバーC(RhoC);チロシナーゼ関連タンパク質2(TRP-2);シトクロムP450 1B1(CYP1B1);CCCTC-結合因子(ジンクフィンガータンパク質)様、T細胞によって認識される扁平上皮細胞癌腫抗原3(SART3);対合ボックスタンパク質Pax-5(PAX5);プロアクロシン結合タンパク質sp32(OY-TES1);リンパ球特異的タンパク質チロシンキナーゼ(LCK);Aキナーゼアンカータンパク質4(AKAP-4);滑膜肉腫、X切断点2(SSX2);終末糖化産物受容体(RAGE-1);腎臓偏在1(RU1);腎臓偏在2(RU2);レグマイン;ヒトパピローマウイルスE6(HPV E6);ヒトパピローマウイルスE7(HPV E7);腸内カルボキシルエステラーゼ;熱ショックタンパク質70-2変異型(mut hsp70-2);CD79a;CD79b;CD72;白血球関連免疫グロブリン様受容体1(LAIR1);IgAのFcフラグメントの受容体(FCARまたはCD89);白血球免疫グロブリン様受容体サブファミリーAメンバー2(LILRA2);CD300分子様ファミリーメンバーf(CD300LF);C型レクチンドメインファミリー12メンバーA(CLEC12A);骨髄間質細胞抗原2(BST2);EGF様モジュール含有ムチン様ホルモン受容体様2(EMR2);リンパ球抗原75(LY75);グリピカン-3(GPC3);Fc受容体様5(FCRL5);ならびに免疫グロブリンラムダ様ポリペプチド1(IGLL1)からなる群から選択される抗原に結合する。
【0013】
特定の例において、CARは、抗CD19抗体またはそのフラグメント、4-1BB(CD137)膜貫通ドメイン、およびCD3-ゼータシグナル伝達ドメインを含む。
【0014】
別の態様において、本発明は、5’から3’に、作動可能なつながりで、以下のエレメント:プロモーター、主要スプライスドナー部位(SD)を含むパッケージングシグナル(プシー)、部分的gag配列、部分的env配列、Rev応答エレメント(RRE)、スプライスアクセプター部位(SA7)を含む部分的env配列、スプライスアクセプター部位(SA1)を含むセントラルポリプリントラクト(cPPT)、構成的スプライスドナー部位(CD)および構成的スプライスアクセプター部位(CD)を含むEF1aプロモーター、任意選択で、EGFPをコードする遺伝子および/または異種核酸配列、ならびに転写後制御エレメントのうちの1つまたは複数(例えば、すべて)を含む、レンチウイルス移入ベクターを含む。
【0015】
一例において、本発明は、5’から3’に、作動可能なつながりで、以下のエレメント:CMVプロモーター、LTR R領域、LTR U5領域、プライマー結合部位(PBS)、主要スプライスドナー部位(SD)を含むパッケージングシグナル(プシー)、部分的gag配列、部分的env配列、Rev応答エレメント(RRE)、スプライスアクセプター部位(SA7)を含む部分的env配列、スプライスアクセプター部位(SA1)を含むセントラルポリプリントラクト(cPPT)、EF1aプロモーター、任意選択で、EGFPをコードする遺伝子および/または異種核酸配列、転写後制御エレメント、LTR R領域、LTR U5領域、SV40ポリA尾部、カナマイシン耐性遺伝子(nptII)、ならびにpUC複製起点のうちの1つまたは複数を含む、レンチウイルス移入ベクターを含む。
【0016】
様々な例において、転写後制御エレメントは、本明細書に記載されるように、ウッドチャック肝炎ウイルスPRE(WPRE)またはB型肝炎ウイルス分離株bba6 PRE(HPRE)である。
【0017】
さらなる例において、異種核酸配列は、本明細書に記載されるように、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする。一例において、CARは、抗CD19抗体またはそのフラグメント、4-1BB(CD137)膜貫通ドメイン、およびCD3-ゼータシグナル伝達ドメインを含み得る。
【0018】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載されるレンチウイルス移入ベクターを含む宿主細胞(例えば、293T細胞、Jurkat T細胞、または初代ヒトT細胞)を含む。任意選択で、宿主細胞は、1つまたは複数のレンチウイルスパッケージングベクターをさらに含み得る。
【0019】
さらなる態様において、本発明は、本明細書に記載されるレンチウイルス移入ベクターおよび1つまたは複数のパッケージングベクターを含む、組成物を含む。
【0020】
さらなる態様において、本発明は、異種核酸配列を発現することができるレンチウイルスを産生する方法を含む。これらの方法は、任意選択で、(a)細胞(例えば、293T細胞、Jurkat T細胞、または初代ヒトT細胞)に、(i)本明細書に記載されるレンチウイルス移入ベクター、および(ii)1つまたは複数のレンチウイルスパッケージングベクターを導入するステップと、(b)細胞において、レンチウイルス移入ベクターおよび/またはパッケージングベクターによってコードされるウイルスタンパク質を発現させ、それによって、レンチウイルス移入ベクターの異種核酸配列を含むレンチウイルスを産生するステップとを含み得る。
【0021】
定義
「キメラ抗原受容体」または代替として「CAR」という用語は、免疫エフェクター細胞に入れられると、この細胞に、標的細胞、典型的にはがん細胞に対する特異性を与え、細胞内シグナル生成をもたらす、ポリペプチドのセット、最も単純な実施形態においては典型的に2つのポリペプチドのセットを指す。一部の実施形態において、CARは、少なくとも、細胞外抗原結合性ドメイン、膜貫通ドメイン、ならびに以下に定義される刺激分子および/または共刺激分子に由来する機能的シグナル伝達ドメインを含む細胞質シグナル伝達ドメイン(本明細書において、「細胞内シグナル伝達ドメイン」とも称される)を含む。一部の態様において、ポリペプチドのセットは、互いに近接している。一部の実施形態において、ポリペプチドのセットには、二量体化分子が存在する場合に、ポリペプチドを互いに結合させることができる、例えば、抗原結合性ドメインを細胞内シグナル伝達ドメインに結合させることができる、二量体化スイッチが含まれる。一態様において、刺激分子は、T細胞受容体複合体に付随するゼータ鎖である。一態様において、細胞質シグナル伝達ドメインは、以下に定義される少なくとも1つの共刺激分子に由来する1つまたは複数の機能的シグナル伝達ドメインをさらに含む。一態様において、共刺激分子は、本明細書に記載される共刺激分子、例えば、4-1BB(すなわち、CD137)、CD27、および/またはCD28から選択される。一態様において、CARは、細胞外抗原結合性ドメイン、膜貫通ドメイン、ならびに刺激分子に由来する機能的シグナル伝達ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメインを含む、キメラ融合タンパク質を含む。一態様において、CARは、細胞外抗原結合性ドメイン、膜貫通ドメイン、ならびに共刺激分子に由来する機能的シグナル伝達ドメインおよび刺激分子に由来する機能的シグナル伝達ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメインを含む、キメラ融合タンパク質を含む。一態様において、CARは、細胞外抗原結合性ドメイン、膜貫通ドメイン、ならびに1つまたは複数の共刺激分子に由来する2つの機能的シグナル伝達ドメインおよび1つの刺激分子に由来する1つの機能的シグナル伝達ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメインを含む、キメラ融合タンパク質を含む。一態様において、CARは、細胞外抗原結合性ドメイン、膜貫通ドメイン、ならびに1つまたは複数の共刺激分子に由来する少なくとも2つの機能的シグナル伝達ドメインおよび1つの刺激分子に由来する1つの機能的シグナル伝達ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメインを含む、キメラ融合タンパク質を含む。一態様において、CARは、CAR融合タンパク質のアミノ末端(N末端)に、任意選択のリーダー配列を含む。一態様において、CARは、細胞外抗原結合性ドメインのN末端にリーダー配列をさらに含み、リーダー配列は、任意選択で、細胞プロセシングおよび細胞膜へのCARの局在化の際に抗原結合性ドメイン(例えば、scFv)から切断される。
【0022】
本明細書に記載されるものなど、特異的腫瘍マーカーXを標的とする抗原結合性ドメイン(例えば、scFvまたはTCR)を含むCARは、XCARとも称される。例えば、CD19を標的とする抗原結合性ドメインを含むCARは、CD19CARと称される。
【0023】
「シグナル伝達ドメイン」という用語は、細胞内で情報を伝達することによって、第2のメッセンジャーを生成するか、またはそのようなメッセンジャーに応答することによってエフェクターとして機能することで、所定のシグナル伝達経路を介して細胞活性を制御するように作用する、タンパク質の機能的部分を指す。
【0024】
「抗体」という用語は、本明細書において使用されるとき、抗原に特異的に結合する、免疫グロブリン分子に由来するタンパク質、またはポリペプチド配列を指す。抗体は、ポリクローナルもしくはモノクローナル、多重鎖もしくは一本鎖、またはインタクトな免疫グロブリンであり得、天然の供給源または組換えの供給源に由来し得る。抗体は、免疫グロブリン分子の四量体であってもよい。
【0025】
「抗体フラグメント」という用語は、抗原のエピトープと特異的に相互作用する(例えば、結合、立体障害、安定化/脱安定化、空間分布により)能力を保持する、抗体の少なくとも一部分を指す。抗体フラグメントの例としては、Fab、Fab’、F(ab’)、Fvフラグメント、scFv抗体フラグメント、ジスルフィド結合型Fv(sdFv)、VHドメインおよびCH1ドメインからなるFdフラグメント、線形抗体、単一ドメイン抗体、例えばsdAb(VLもしくはVHのいずれか)、ラクダ科VHHドメイン、ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFabフラグメントを含む二価フラグメントなどの抗体フラグメントから形成された多重特異性抗体、ならびに抗体の単離CDRまたは他のエピトープ結合性フラグメントが挙げられるが、これらに限定されない。抗原結合性フラグメントはまた、単一ドメイン抗体、マキシボディ、ミニボディ、ナノボディ、イントラボディ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、v-NAR、およびビス-scFvに組み込むことができる(例えば、Hollinger and Hudson, Nature Biotechnology 23:1126-1136, 2005参照)。抗原結合性フラグメントはまた、III型フィブロネクチン(Fn3)など、ポリペプチドに基づく足場にグラフトすることができる(フィブロネクチンポリペプチドミニボディについて記載している、米国特許第6,703,199号明細書参照)。
【0026】
「scFv」という用語は、軽鎖の可変領域を含む少なくとも1つの抗体フラグメントおよび重鎖の可変領域を含む少なくとも1つの抗体フラグメントを含む、融合タンパク質を指し、軽鎖可変領域および重鎖可変領域は、例えば、合成リンカー、例えば、短い可動性ポリペプチドリンカーを介して近接して結合されており、一本鎖ポリペプチドとして発現され得、scFvは、それが由来するインタクトな抗体の特異性を保持する。指定されない限り、本明細書において使用されるとき、scFvは、例えば、ポリペプチドのN末端およびC末端に関して、VL可変領域およびVH可変領域をいずれの順序で有してもよく、scFvは、VL-リンカー-VHを含んでもよく、またはVH-リンカー-VLを含んでもよい。
【0027】
抗体またはその抗体フラグメントを含む本発明のCARの部分は、抗原結合性ドメインが、例えば、単一ドメイン抗体フラグメント(sdAb)、一本鎖抗体(scFv)、ヒト化抗体、または二重特異性抗体を含む、近接ポリペプチド鎖の一部として発現された、様々な形態で存在し得る(Harlow et al., 1999, In: Using Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, NY、Harlow et al., 1989, In: Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, New York、Houston et al., 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883、Bird et al., 1988, Science 242:423-426)。一態様において、本発明のCAR組成物の抗原結合性ドメインは、抗体フラグメントを含む。さらなる態様において、CARは、scFvを含む抗体フラグメントを含む。所与のCDRの正確なアミノ酸配列の境界は、Kabat et al. (1991), "Sequences of Proteins of Immunological Interest," 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD(「Kabat」付番スキーム)、Al-Lazikani et al., (1997) JMB 273,927-948(「Chothia」付番スキーム)に記載されているもの、またはこれらの組合せを含む、多数の周知のスキームのうちのいずれかを使用して決定することができる。
【0028】
本明細書において使用されるとき、「結合性ドメイン」または「抗体分子」という用語は、少なくとも1つの免疫グロブリン可変ドメイン配列を含む、タンパク質、例えば、免疫グロブリン鎖またはそのフラグメントを指す。「結合性ドメイン」または「抗体分子」という用語は、抗体および抗体フラグメントを包含する。ある実施形態において、抗体分子は、多重特異性抗体分子であり、例えば、これは、複数の免疫グロブリン可変ドメイン配列を含み、これら複数のうちの第1の免疫グロブリン可変ドメイン配列が第1のエピトープに対する結合特異性を有し、これら複数のうちの第2の免疫グロブリン可変ドメイン配列が第2のエピトープに対する結合特異性を有する。ある実施形態において、多重特異性抗体分子は、二重特異性抗体分子である。二重特異性抗体は、2つを上回らない抗原に対する特異性を有する。二重特異性抗体分子は、第1のエピトープに対する結合特異性を有する第1の免疫グロブリン可変ドメイン配列および第2のエピトープに対する結合特異性を有する第2の免疫グロブリン可変ドメイン配列によって特徴付けられる。
【0029】
抗体またはその抗体フラグメントを含む本発明のCARの部分は、抗原結合性ドメインが、例えば、単一ドメイン抗体フラグメント(sdAb)、一本鎖抗体(scFv)、ヒト化抗体、または二重特異性抗体を含む、近接ポリペプチド鎖の一部として発現された、様々な形態で存在し得る(Harlow et al., 1999, In: Using Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, NY、Harlow et al., 1989, In: Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, New York、Houston et al., 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883、Bird et al., 1988, Science 242:423-426)。一態様において、本発明のCAR組成物の抗原結合性ドメインは、抗体フラグメントを含む。さらなる態様において、CARは、scFvを含む抗体フラグメントを含む。
【0030】
「抗体重鎖」という用語は、その天然に存在する立体構造において抗体分子に存在する2種類のポリペプチド鎖のうちの大きい方を指し、これが、通常、抗体が属するクラスを決定する。
【0031】
「抗体軽鎖」という用語は、その天然に存在する立体構造において抗体分子に存在する2種類のポリペプチド鎖のうちの小さい方を指す。カッパ(κ)軽鎖およびラムダ(λ)軽鎖は、2つの主要な抗体軽鎖アイソタイプを指す。
【0032】
「組換え抗体」という用語は、例えば、バクテリオファージまたは酵母発現系によって発現された抗体など、組換えDNA技術を使用して生成された抗体を指す。この用語はまた、抗体をコードするDNA分子の合成によって生成された抗体であり、そのDNA分子が、抗体タンパク質、または抗体を特定するアミノ酸配列を発現し、そのDNAまたはアミノ酸配列が、当該技術分野において利用可能かつ周知の組換えDNAまたはアミノ酸配列技術を使用して得られたものである、抗体を意味すると解釈されるべきである。
【0033】
「抗原」または「Ag」という用語は、免疫応答を誘起する分子を指す。この免疫応答は、抗体産生もしくは特定の免疫学的に適合性の細胞の活性化のいずれか、またはその両方を伴い得る。当業者であれば、実質的にすべてのタンパク質またはペプチドを含め、いずれの巨大分子も、抗原として機能し得ることを理解するであろう。さらに、抗原は、組換えDNAまたはゲノムDNAに由来し得る。当業者であれば、免疫応答を誘起するタンパク質をコードするヌクレオチド配列または部分的ヌクレオチド配列を含む任意のDNAが、したがって、この用語が本明細書において使用される場合の「抗原」をコードすることを理解するであろう。さらに、当業者であれば、抗原が、必ずしも、遺伝子の完全長ヌクレオチド配列だけによってコードされるわけではないことを理解するであろう。本発明が、1つを上回る遺伝子の部分的ヌクレオチド配列の使用を含むがこれに限定されないこと、およびこれらのヌクレオチド配列が、所望される免疫応答を誘起するポリペプチドをコードするように様々な組合せで配置されることは、容易に明らかである。さらに、当業者であれば、抗原が、「遺伝子」によってコードされる必要が全くないことを理解するであろう。抗原が、生成、合成されてもよく、または生物学的サンプルに由来してもよく、またはポリペプチド以外の巨大分子であってもよいことは、容易に明らかである。このような生物学的サンプルとしては、他の生物学的成分を有する組織サンプル、腫瘍サンプル、細胞、または流体が挙げられるがこれらに限定されない。
【0034】
「自家」という用語は、後に材料が再び導入される個体(例えば、細胞または生物)と同じ個体に由来する任意の材料を指す。「異種」という用語は、材料が導入される個体(例えば、細胞または生物)とは別の個体に由来する任意の材料を指し得る。一部の事例において、「異種」という用語は、材料が導入されるある種の個体(例えば、細胞または生物)とは別の種の個体に由来する任意の材料を指し得る。
【0035】
「細胞内シグナル伝達ドメイン」という用語は、本明細書において使用されるとき、分子の細胞内部分を指す。細胞内シグナル伝達ドメインは、CAR含有細胞、例えば、CART細胞の免疫エフェクター機能を促進するシグナルを生成する。例えば、CART細胞において、免疫エフェクター機能の例としては、細胞溶解活性、およびサイトカインの分泌を含むヘルパー活性が挙げられる。
【0036】
ある実施形態において、細胞内シグナル伝達ドメインは、一次細胞内シグナル伝達ドメインを含み得る。例示的な一次細胞内シグナル伝達ドメインとしては、一次刺激または抗原依存性刺激を担う分子に由来するものが挙げられる。ある実施形態において、細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激細胞内ドメインを含み得る。例示的な共刺激細胞内シグナル伝達ドメインとしては、共刺激シグナルまたは抗原非依存性刺激を担う分子に由来するものが挙げられる。例えば、CARTの事例においては、一次細胞内シグナル伝達ドメインは、T細胞受容体の細胞質配列を含み得、共刺激細胞内シグナル伝達ドメインは、共受容体または共刺激分子由来の細胞質配列を含み得る。
【0037】
一次細胞内シグナル伝達ドメインは、免疫受容体活性化チロシンモチーフまたはITAMとして公知のシグナル伝達モチーフを含み得る。ITAMを含む一次細胞質シグナル伝達配列の例としては、CD3ゼータ、一般的なFcRガンマ(FCER1G)、FcガンマRIIa、FcRベータ(FcイプシロンR1b)、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD79a、CD79b、DAP10、およびDAP12に由来するものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
「ゼータ」または代替として「ゼータ鎖」、「CD3ゼータ」、もしくは「TCRゼータ」という用語は、GenBank受託番号BAG36664.1として提供されるタンパク質、または非ヒト種、例えば、マウス、げっ歯類、サル、類人猿などに由来する同等の残基として定義され、「ゼータ刺激ドメイン」または代替として「CD3ゼータ刺激ドメイン」もしくは「TCRゼータ刺激ドメイン」は、T細胞活性化に必要な初期シグナルを機能的に伝達するのに十分な、ゼータ鎖の細胞質ドメインまたはその機能的誘導体に由来するアミノ酸残基として定義される。一態様において、ゼータの細胞質ドメインは、GenBank受託番号BAG36664.1の残基52から164、またはその機能的オルソログである非ヒト種、例えば、マウス、げっ歯類、サル、類人猿などに由来する同等の残基を含む。
【0039】
「共刺激分子」という用語は、共刺激リガンドに特異的に結合し、それによって、増殖などであるがこれに限定されないT細胞による共刺激応答を媒介する、T細胞上の同族の結合パートナーを指す。共刺激分子は、効率的な免疫応答に寄与する、抗原受容体またはそれらのリガンド以外の細胞表面分子である。共刺激分子としては、MHCクラスI分子、BTLA、およびTollリガンド受容体、ならびにOX40、CD27、CD28、CDS、ICAM-1、LFA-1(CD11a/CD18)、ICOS(CD278)、および4-1BB(CD137)が挙げられるが、これらに限定されない。このような共刺激分子のさらなる例としては、CDS、ICAM-1、GITR、BAFFR、HVEM(LIGHTR)、SLAMF7、NKp80(KLRF1)、NKp44、NKp30、NKp46、CD160、CD19、CD4、CD8アルファ、CD8ベータ、IL2Rベータ、IL2Rガンマ、IL7Rアルファ、ITGA4、VLA1、CD49a、ITGA4、IA4、CD49D、ITGA6、VLA-6、CD49f、ITGAD、CD11d、ITGAE、CD103、ITGAL、CD11a、LFA-1、ITGAM、CD11b、ITGAX、CD11c、ITGB1、CD29、ITGB2、CD18、LFA-1、ITGB7、NKG2D、NKG2C、TNFR2、TRANCE/RANKL、DNAM1(CD226)、SLAMF4(CD244、2B4)、CD84、CD96(Tactile)、CEACAM1、CRTAM、Ly9(CD229)、CD160(BY55)、PSGL1、CD100(SEMA4D)、CD69、SLAMF6(NTB-A、Ly108)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO-3)、BLAME(SLAMF8)、SELPLG(CD162)、LTBR、LAT、GADS、SLP-76、PAG/Cbp、CD19a、およびCD83に特異的に結合するリガンドが挙げられる。
【0040】
共刺激細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激分子の細胞内部分であり得る。共刺激分子は、以下のタンパク質ファミリー:TNF受容体タンパク質、免疫グロブリン様タンパク質、サイトカイン受容体、インテグリン、リンパ球活性化シグナル伝達分子(SLAMタンパク質)、および活性化NK細胞受容体で表され得る。このような分子の例としては、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、GITR、CD30、CD40、ICOS、BAFFR、HVEM、ICAM-1、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CDS、CD7、CD287、LIGHT、NKG2C、NKG2D、SLAMF7、NKp80、NKp30、NKp44、NKp46、CD160、B7-H3、およびCD83に特異的に結合するリガンドなどが挙げられる。
【0041】
細胞内シグナル伝達ドメインは、それが由来する分子、またはその機能的フラグメントもしくは誘導体の、細胞内部分全体または天然の細胞内シグナル伝達ドメイン全体を含み得る。
【0042】
「4-1BB」という用語は、GenBank受託番号AAA62478.2として提供されるアミノ酸配列、または非ヒト種、例えば、マウス、げっ歯類、サル、類人猿などに由来する同等の残基を有する、TNFRスーパーファミリーのメンバーを指し、「4-1BB共刺激ドメイン」は、GenBank受託番号AAA62478.2のアミノ酸残基214~255、または非ヒト種、例えば、マウス、げっ歯類、サル、類人猿などに由来する同等の残基として定義される。
【0043】
「コードする」という用語は、所定のヌクレオチド配列(例えば、rRNA、tRNA、およびmRNA)または所定のアミノ酸配列のいずれかを有し、それによりもたらされる生物学的特性を有する、生物学的プロセスにおいて他のポリマーまたは巨大分子の合成のための鋳型として機能する、ポリヌクレオチド、例えば、遺伝子、cDNA、またはmRNAにおける特定のヌクレオチド配列の固有の特性を指す。したがって、遺伝子、cDNA、またはRNAは、その遺伝子に対応するmRNAの転写および翻訳により細胞または他の生物系においてタンパク質が生じる場合、そのタンパク質をコードする。ヌクレオチド配列が、mRNA配列と同一であり、通常配列表に提供される、コーディング鎖、および遺伝子またはcDNAの転写のための鋳型として使用される、非コーディング鎖の両方が、タンパク質またはその遺伝子もしくはcDNAの他の産物をコードすると称され得る。
【0044】
「発現」という用語は、プロモーターによって作動される特定のヌクレオチド配列の転写および/または翻訳を指す。
【0045】
「移入ベクター」という用語は、単離核酸を含み、単離核酸を細胞の内部に送達するために使用され得る組成物を指す。線状ポリヌクレオチド、イオン性化合物または両親媒性化合物と関連するポリヌクレオチド、プラスミド、およびウイルスを含むがこれらに限定されない多数のベクターが、当該技術分野において公知である。したがって、「移入ベクター」という用語には、自律複製プラスミドが含まれる。この用語はまた、導入遺伝子の細胞への移入を促進する非プラスミド化合物および非ウイルス化合物をさらに含むとみなされるべきである。一部の事例において、移入ベクターは、宿主ゲノムへのパッケージングおよび挿入に必要とされる導入遺伝子およびレンチウイルスシス-エレメントをコードする、プラスミドDNAコンストラクトである。
【0046】
「レンチウイルス」という用語は、レトロウイルスファミリーの属を指す。レンチウイルスは、非分裂細胞に感染することができるという点で、レトロウイルスの中でも固有であり、これらは、相当な量の遺伝情報を宿主細胞のDNAに送達することができ、そのため、遺伝子送達ベクターの最も効率的な方法の1つである。HIV、SIV、およびFIVは、すべて、レンチウイルスの例である。
【0047】
「レンチウイルスベクター」という用語は、レンチウイルスゲノムの少なくとも一部分に由来する1つまたは複数の核酸配列を含むベクターを指す。レンチウイルスベクターは、レンチウイルス(例えば、HIV-1)に由来する1つまたは複数のタンパク質の非コーディング配列を含み得る。「レンチウイルス移入ベクター」は、例えば、細胞に移入しようとする異種核酸配列を含み得、さらに、例えば、1つまたは複数のレンチウイルス遺伝子またはその部分を含み得る。「レンチウイルスパッケージングベクター」は、レンチウイルスタンパク質またはその部分をコードする1つまたは複数の遺伝子を含み得る。例えば、レンチウイルスエンベロープタンパク質は、envタンパク質またはその一部分をコードする遺伝子を含み得る。ウイルスを産生させ、それを使用して、標的細胞を感染させて、標的細胞内で異種核酸配列内に含まれる1つまたは複数の導入遺伝子を発現させるために、移入ベクターおよび1つまたは複数のパッケージングベクターの宿主細胞へのトランスフェクションが行われ得る。「導入遺伝子」は、したがって、例えば、本発明のレンチウイルス移入ベクターを使用して、標的細胞に移入される異種遺伝子を指す。本明細書に記載されるある特定の例において、導入遺伝子は、キメラ抗原受容体、例えば、本明細書に記載されるものをコードする遺伝子である。
【0048】
「単離」されたという用語は、天然の状態から変化しているか、取り出されていることを意味する。例えば、生きている動物に天然に存在する核酸またはペプチドは、「単離」されていないが、同じ核酸またはペプチドがその天然の状態の共存する材料から部分的または完全に分離されている場合は、「単離」されている。単離された核酸またはタンパク質は、実質的に精製された形態で存在し得るか、または例えば宿主細胞などの非天然の環境において存在し得る。
【0049】
「核酸」または「ポリヌクレオチド」という用語は、デオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)、ならびに一本鎖形態または二本鎖形態のそれらのポリマーを指す。具体的に限定されない限り、この用語は、参照核酸と類似した結合特性を有し、天然に存在するヌクレオチドに類似した様式で代謝される、天然のヌクレオチドの公知の類似体を含有する核酸を包含する。別途示されない限り、特定の核酸配列はまた、保存的に修飾されたそのバリアント(例えば、縮重コドン置換)、アレル、オルソログ、SNP、および相補配列、ならびに明確に示されている配列を暗に包含する。具体的には、縮重コドン置換は、1つまたは複数の選択された(またはすべての)コドンの3番目の位置が、混合塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換されている配列を生成することによって達成され得る(Batzer et al., Nucleic Acid Res. 19:5081 (1991)、Ohtsuka et al., J. Biol. Chem. 260:2605-2608 (1985)、およびRossolini et al., Mol. Cell. Probes 8:91-98 (1994))。
【0050】
「ペプチド」、「ポリペプチド」、および「タンパク質」という用語は、互換可能に使用され、ペプチド結合によって共有結合されたアミノ酸残基から構成される化合物を指す。タンパク質またはペプチドは、少なくとも2つのアミノ酸を含まなければならないが、タンパク質またはペプチドの配列を構成し得るアミノ酸の最大数に関しては制限がない。ポリペプチドは、ペプチド結合によって互いに結合された2つ以上のアミノ酸を含む任意のペプチドまたはタンパク質を含む。本明細書において使用されるとき、この用語は、当該技術分野では一般的に例えばペプチド、オリゴペプチド、およびオリゴマーとも称される短い鎖、ならびに多数の種類が存在し当該技術分野では一般的にタンパク質と称される長い鎖の両方を指す。「ポリペプチド」には、例えば、とりわけ、生物学的に活性なフラグメント、実質的に相同なポリペプチド、オリゴペプチド、ホモ二量体、ヘテロ二量体、ポリペプチドのバリアント、修飾ポリペプチド、誘導体、類似体、融合タンパク質が含まれる。ポリペプチドには、天然のポリペプチド、組換えポリペプチド、またはこれらの組合せが含まれる。
【0051】
「プロモーター」という用語は、細胞の合成機構または導入された合成機構によって認識される、ポリヌクレオチド配列の特異的転写を開始するために必要なDNA配列を指す。
【0052】
「プロモーター/制御配列」という用語は、プロモーター/制御配列に作動可能に連結された遺伝子産物の発現に必要な核酸配列を指す。一部の事例において、この配列は、コアプロモーター配列であり得、他の事例においては、この配列はまた、遺伝子産物の発現に必要なエンハンサー配列および他の制御エレメントも含み得る。プロモーター/制御配列は、例えば、組織特異的様式で遺伝子産物を発現するものであり得る。
【0053】
本明細書において使用されるとき、「ポリ(A)」は、ポリアデニル化によってmRNAに結合された一連のアデノシンである。一過的発現のためのコンストラクトの好ましい実施形態において、ポリAは、長さが50~5000ヌクレオチドであり、好ましくは64ヌクレオチドを上回り、より好ましくは100ヌクレオチドを上回り、最も好ましくは300または400ヌクレオチドを上回る。ポリ(A)配列は、局在化、安定性、または翻訳の効率性など、mRNA機能を調節するように、化学的または酵素的に修飾され得る。
【0054】
本明細書において使用されるとき、「ポリアデニル化」は、ポリアデニリル(polyadenylyl)部分またはその修飾バリアントと、メッセンジャーRNA分子との共有結合を指す。真核生物において、ほとんどのメッセンジャーRNA(mRNA)分子は、3’末端においてポリアデニル化されている。3’ポリ(A)尾部は、ポリアデニル化ポリメラーゼ酵素の作用を通じて前mRNAに付加されたアデニンヌクレオチド(数百であることが多い)の長い配列である。より高等な真核生物では、ポリ(A)尾部は、特異的な配列であるポリアデニル化シグナルを含む転写産物に付加される。ポリ(A)尾部およびそれに結合したタンパク質は、mRNAをエクソヌクレアーゼによる分解から保護することに役立つ。ポリアデニル化はまた、転写終結、核からのmRNAの輸送、および翻訳にも重要である。ポリアデニル化は、DNAからRNAへの転写直後に核で生じるが、追加として、後で細胞質において生じることもある。転写が終結された後、mRNA鎖は、RNAポリメラーゼに付随するエンドヌクレアーゼ複合体の作用を通じて切断される。切断部位は、通常、切断部位付近の塩基配列AAUAAAの存在によって特徴付けられる。mRNAが切断された後、アデノシン残基が、切断部位の遊離3’末端に付加される。
【0055】
「対象」という用語は、生物(例えば、哺乳動物、ヒト)を含むことが意図される。一部の事例において、対象は、免疫応答が誘起され得る対象であり得る。
【0056】
「トランスフェクトされた」または「形質転換された」または「形質導入された」という用語は、外来性核酸が宿主細胞に移入または導入されるプロセスを指す。「トランスフェクトされた」または「形質転換された」または「形質導入された」細胞は、外来性核酸がトランスフェクトされたか、形質転換されたか、または形質導入されたものである。細胞には、初代対象細胞およびその子孫が含まれる。「感染」細胞は、病原体、例えば、ウイルス(例えば、レンチウイルス)がトランスフェクトされたか、形質転換されたか、または形質導入されたものである。一部の事例において、1つまたは複数のウイルス核酸エレメントは、感染細胞のゲノムに組み込まれ得る。
【0057】
本発明は、いくつかの利点を提供する。例えば、本発明のウイルス移入ベクターを使用して、パッケージング細胞におけるウイルスゲノムRNAの産生の増加、RNAの核外輸送の増加、およびウイルス力価の増加を達成することができる。加えて、ウイルス移入ベクターは、以前のベクターと比較して比較的小さいサイズであり得、このことにより、使用の容易さが促進され、より大きな異種配列の挿入が許容される。
【0058】
本発明の他の特性および利点は、以下の詳細な説明、図面、および特許請求の範囲から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0059】
図1】pCINSレンチウイルス移入ベクターの特性マップを示す概略図である。P-CMV=サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、R=LTR R領域、U5=LTR U5領域、PBS=プライマー結合部位、SD=主要スプライスドナー部位、プシー=パッケージングシグナル、RRE=Rev応答エレメント、SA7=スプライスアクセプター部位、cPPT=セントラルポリプリントラクト、SA1=スプライスアクセプター部位、EF1A=ヒトEF1アルファプロモーター、EGFP=GFPレポーターオープンリーディングフレーム(ORF)、WPRE=ウッドチャック肝炎ウイルス転写後制御エレメント、SV40ポリA=SV40ポリアデニル化配列、nptII=カナマイシン耐性遺伝子、pUC複製起点=pUC由来の複製起点。
図2】ベクター配列内のそれぞれの制限部位の位置を含む、pCINSレンチウイルス移入ベクターの制限マップを示す概略図である。
図3】pNOXレンチウイルス移入ベクターの特性マップを示す概略図である。P-CMV=サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、R=LTR R領域、U5=LTR U5領域、PBS=プライマー結合部位、SD=主要スプライスドナー部位、プシー=パッケージングシグナル、RRE=Rev応答エレメント、SA7=スプライスアクセプター部位、cPPT=セントラルポリプリントラクト、SA1=スプライスアクセプター部位、EF1A=ヒトEF1アルファプロモーター、EGFP=GFPレポーターオープンリーディングフレーム(ORF)、HPRE-NoX=B型肝炎転写後制御エレメント、Xタンパク質をコードするORFなし、dU3=短縮型LTR U3領域、SV40ポリA=SV40ポリアデニル化配列、nptII=カナマイシン耐性遺伝子、pUC複製起点=pUC由来の複製起点。
図4】ベクター配列内のそれぞれの制限部位の位置を含む、pNOXレンチウイルス移入ベクターの制限マップを示す概略図である。
図5】GFPをコードするpCINSベクターおよびpNOXベクターの性能を、互いとの比較でおよび他のレンチウイルスベクターとの比較で示す、一連のグラフである。以下のパッケージングベクターを、これらの実験において使用した:pNVS-MDG-VSVG-Kan、pNVS-MDLgp-RRE、pNVS RSV Rev-Kan。(A)pCINS移入ベクターの使用は、最適化前の親移入ベクターを使用して得られたものよりも数倍高いウイルス力価をもたらす。(B)pCINSベクターおよびpNOXベクターは、293T細胞において、類似したウイルス力価をもたらす。(C)pNOXは、Jurkat細胞において、pCINSと比較して高いウイルス力価をもたらした。(D)初代ヒトT細胞へのpCINSまたはpNOXの形質導入により、類似した割合のGFP発現T細胞の生成がもたらされ、pCINSおよびpNOXは、初代ヒトT細胞において、類似した感染力価をもたらすことを示す。(E)HPRE転写後制御エレメントを含むpNOXを形質導入したT細胞の集団は、レンチウイルスベクター配列の組込み後に、WPRE転写後制御エレメントを含むpCINSを形質導入したT細胞の集団と比較して類似した数量のGFP+細胞を示した。
図6】レンチウイルス産生系を最適化するためにとった戦略において修飾がなされたある特定の特性を示す概略図である。
図7】親移入ベクターおよびpNLV移入ベクターの性能を、互いとの比較で示すグラフのセットである。(A)Lenti-X qRT-PCR Titration Kit(Clontech)を使用してqRT-PCRによって測定すると、pNLVレンチウイルス骨格の使用により、対照GFPベクターレンチウイルス骨格よりも多くのパッケージングされたレンチウイルスゲノムRNAが産生される。(B)qPCRを使用してプロウイルス組込みアッセイによって測定すると、293T細胞へのpNLVベクターの形質導入により、対照移入ベクターと比較してより高いウイルス力価が得られた。
図8】導入遺伝子(例えば、CAR)を発現するpCINSまたはpNLVレンチウイルスベクターを形質導入したSupT1細胞における導入遺伝子発現のFACS測定を示す、一連のプロットである。(A)PEコンジュゲート抗体を表面上の導入遺伝子の検出試薬として使用した、導入遺伝子を含むpCINSレンチウイルスベクターを形質導入した細胞のFACSプロットである。(B)PEコンジュゲート抗体を導入遺伝子の検出試薬として使用した、導入遺伝子を含むpNLVレンチウイルスベクターを形質導入した細胞のFACSプロットである。(C)(A-B)のFACS分析において測定されたMFIを比較するプロットであり、pNLV移入ベクターを形質導入した細胞におけるより高い導入遺伝子の表面発現を示す。
図9】市販の移入ベクターと最適化前のGFPコーディングSIN移入ベクターである対照ベクター、ならびにpCINS移入ベクターとpNLV移入ベクターのウイルス力価を比較する一連のグラフである。(A)第2世代のpLVX(Clontech)レンチウイルスベクターを、Tat発現コンストラクトを用いて産生させ、293T細胞に形質導入したが、これは、対照移入ベクターよりもわずかに高いウイルス力価を有することが見出された。(B)pLenti6.2(Life Technologies)レンチウイルスベクターを、細胞に形質導入したが、これは、対照移入ベクターと比較してウイルス力価に大幅な減少を有することが見出された。(C)pD2109(DNA2.0)レンチウイルスベクターを、細胞に形質導入したが、これは、対照移入ベクターと比較してウイルス力価に少しの減少を有することが見出された。(D)pCINSレンチウイルスベクターを、細胞に形質導入したが、これは対照移入ベクターよりも相当に高いウイルス力価を有することが見出された。(E)pNLVレンチウイルスベクターを、細胞に形質導入したが、これは、pCINS移入ベクターよりも高いウイルス力価を有することが見出された。
図10】対照である最適化されていない移入コンストラクトにおける様々なスプライス部位変異の、ウイルス力価に対する影響を比較する、概略図およびプロットである。(A)パネルAは、後続のウイルス力価判定のために変異させたスプライスドナー部位およびスプライスアクセプター部位の位置を示す矢尻記号でラベル付けした、レンチウイルス骨格を示す概略図である。(B)示される移入ベクターの様々なスプライスドナーおよびスプライスアクセプター部位の変異体を、細胞に形質導入し、ウイルス力価を、変異体のパネル全体にわたり、対照移入ベクターと比較した。すべての変異が、ウイルス力価に大幅な減少をもたらし、SA7mutおよびE-SAmut移入ベクターが、わずかに改善された力価を有した。
図11】gagおよび/またはenv由来の配列の欠失を有する移入ベクター骨格の概略図およびプロットであり、結果として生じるウイルス力価への影響を比較する。(A)パネルAは、gagおよびまたはenv欠失のおよその位置を示す、注釈付きのレンチウイルス骨格の概略図を示す。(B)env領域および/またはgag領域に欠失を有する移入ベクターコンストラクトを、細胞に形質導入し、ウイルス力価を判定した。対照移入ベクターと比較して、-env3’および-gag3’-env5’変異体は、ウイルス力価の減少を有したが、-env5’および-gag3’は、ウイルス力価にほとんど差を示さなかった。
図12A図12は、pNLV移入ベクターとpRRLSIN移入ベクターとの間の、重要なウイルスシスエレメントにわたる、いくつかの配列アライメントを表す一連の概略図である。(A)パネルAは、2つのベクターのプシー領域間でのアライメントの概略図を示し、網掛けの領域は、配列変動の場所を示す。
図12B】(B)パネルBは、2つのベクターのgag領域間でのアライメントの概略図を示し、網掛けの領域は、配列変動の場所を示す。
図12C】(C)パネルCは、2つのベクターのenv領域間でのアライメントの概略図を示し、網掛けの領域は、配列変動の場所を示す。
図12D】(D)パネルDは、2つのベクターのRPE領域間でのアライメントの概略図を示し、網掛けの領域は、配列変動の場所を示す。
図12E】(E)パネルEは、2つのベクターのenv(主要スプライスアクセプター部位7を有する)領域間でのアライメントの概略図を示し、網掛けの領域は、配列変動の場所を示す。
図12F】(F)パネルFは、2つのベクターのpol(cPPTおよび主要スプライスアクセプター部位1を有する)領域間でのアライメントの概略図を示し、網掛けの領域は、配列変動の場所を示す。#=単一ヌクレオチド置換。上の行=pNLV、下の行=pRRLSIN。pRRLSIN配列は、pRRLSIN.cPPT.PGK-GFP.WPREベクター(Addgene Plasmid #12252)の配列に対応する。pNLV cPPT配列は、配列番号92のものである。
図13】pNLVレンチウイルス移入ベクターの特性マップを示す概略図である。
図14】ベクター配列内のそれぞれの制限部位の位置を含む、pNLVレンチウイルス移入ベクターの制限マップを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0060】
本発明は、レンチウイルス移入ベクターおよびその使用を提供する。概して、本発明のレンチウイルス移入ベクターは、異種核酸配列、例えば、導入遺伝子(例えば、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする遺伝子、以下参照)をコードする配列などを含む。本レンチウイルス移入ベクターは、さらに、以下に記載されるように、2つ以上の追加の所望される特性の組合せを含む。
【0061】
本発明のレンチウイルスベクターは、例えば、ウイルスにパッケージングするための異種核酸配列を宿主細胞に提供するのに有用であり、これを使用して、所望される標的細胞において異種核酸配列内の導入遺伝子を発現させることができる。例えば、本レンチウイルス移入ベクターは、例として、宿主細胞がレンチウイルスを産生するように、1つまたは複数のパッケージングベクターと組み合わせて、宿主細胞に導入され得る。次いで、レンチウイルスを使用して、所望される標的細胞を感染させることができる。ある特定の事例において、所望される標的細胞がレンチウイルスに感染することにより、レンチウイルス移入ベクターから所望される標的細胞(例えば、T細胞)のゲノムへの、1つまたは複数の核酸配列(例えば、導入遺伝子をコードする異種核酸)の組込みが生じ得る。したがって、形質導入された細胞は、異種核酸および/またはウイルスエレメントに存在する1つまたは複数の遺伝子(例えば、CAR遺伝子)を発現することが可能であり得、この能力は、形質導入された細胞の子孫にも受け継がれ得る。
【0062】
宿主細胞において生成されたレンチウイルスを介した、本発明のレンチウイルス移入ベクターから標的細胞への核酸配列の導入は、標的細胞による、レンチウイルス移入ベクター由来のエレメント(例えば、導入遺伝子をコードする異種核酸)の発現を可能にし得る。
【0063】
移入ベクターのエレメント
本発明のレンチウイルス移入ベクターは、レンチウイルス移入ベクターに存在する異種核酸の、細胞(例えば、レンチウイルス移入ベクター、および任意選択で1つまたは複数の追加のベクター、例えば、パッケージングベクターがトランスフェクトされた細胞)への移入を可能にするのに好適なエレメントを含む。特に、本発明のレンチウイルス移入ベクターは、概して、以下の特性:(a)サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターを含むこと、(b)野生型INS1と比較してRNAの核外輸送の制限を低減させる変異型INS1阻害性配列を含むgagタンパク質の少なくとも一部分をコードするポリヌクレオチドを含むこと、(c)gagのINS2、INS3、およびINS4阻害性配列をコードするポリヌクレオチドを含まないこと、ならびに(d)SV40複製起点および/またはf1複製起点を含まないことのうちの少なくとも2つによって特徴付けられる。一部の事例において、本発明のレンチウイルス移入ベクターは、約178ヌクレオチド(例えば、約100、110、120、125、130、140、150、160、170、175、178、180、190、200、225、または250ヌクレオチド)の長さを有するcPPTエレメントを含む。一事例において、cPPTエレメントは、178ヌクレオチドの長さを有する。ある特定の事例において、ベクターは、宿主細胞に移入しようとする異種核酸または導入遺伝子の上流(例えば、すぐ上流)に位置するコザック配列を含む。
【0064】
一部の事例において、本レンチウイルス移入ベクターは、以下:1つまたは複数のウイルス配列の発現を作動させるプロモーター(例えば、CMV、RSV、またはEF1aプロモーター)、長い末端反復(LTR)領域(例えば、R領域またはU5領域)、プライマー結合部位(PBS)、パッケージングシグナル(プシー)(例えば、主要スプライスドナー部位(SD)を含むパッケージングシグナル)、部分的gag配列(例えば、本明細書に記載されるような)、部分的env配列、Rev応答エレメント(RRE)、追加の部分的env配列(任意選択でスプライスアクセプター部位(例えば、SA7スプライスアクセプター)を含む)、部分的pol配列(セントラルポリプリントラクト(cPPT)(例えば、スプライスアクセプター部位、例えば、SA1を含むcPPT)を含む)、サブゲノムプロモーター(例えば、P-EF1a)、異種核酸(例えば、EGFPをコードする遺伝子および/または目的の導入遺伝子(例えば、CAR遺伝子)を含む異種核酸)、転写後制御エレメント(例えば、WPREまたはHPRE、任意選択でXタンパク質変異を含む)、ポリA配列(例えば、SV40ポリA尾部)、選択的マーカー(例えば、カナマイシン耐性遺伝子(nptII)、アンピシリン耐性遺伝子、またはクロラムフェニコール耐性遺伝子)、ならびに複製起点(例えば、pUC複製起点、SV40複製起点、またはf1複製起点)のうちの1つまたは複数を含み得る。上述のように、本レンチウイルス移入ベクターは、EF1aプロモーターを含み得、これは、導入遺伝子の発現を作動させるために使用することができる。特定の事例において、EF1aプロモーターは、配列番号95の核酸配列を有する野生型EF1aプロモーター配列を含む。一部の事例において、本発明のレンチウイルス移入ベクターおよび/または本明細書に記載されるパッケージングベクターがトランスフェクトされた細胞は、レンチウイルスRNAを産生し、これは、主としてスプライシングされている。本発明のレンチウイルスベクターは、当該技術分野において周知のものなど、追加の配列(例えば、ベクター骨格配列)も含み得る。ある特定の事例において、本発明のレンチウイルスベクターは、本明細書に記載されるベクター(例えば、pNOX、pCINS、および/またはpNLV)由来の配列を含み得るか、または組み込み得る。特定の事例において、本発明のレンチウイルスベクターは、本明細書に記載されるベクター(例えば、pNOX、pCINS、および/またはpNLV)の由来のベクター骨格配列またはその部分を含み得るか、または組み込み得る。一例において、本発明のレンチウイルスベクターは、pNLV由来のベクター骨格配列またはその部分を組み込む。
【0065】
本レンチウイルス移入ベクターはまた、細胞において異種タンパク質の発現を作動させるのに好適なエレメントも含み得る。ある特定の事例において、コザック配列は、異種タンパク質のオープンリーディングフレームの上流に位置している。例えば、本レンチウイルス移入ベクターは、異種核酸の発現を制御するプロモーター(例えば、CMV、RSV、またはEF1aプロモーター)を含み得る。本レンチウイルス移入ベクターにおいて使用するのに好適な他のプロモーターとしては、例えば、構成的プロモーターまたは組織/細胞型特異的プロモーターが挙げられる。一部の事例において、本レンチウイルス移入ベクターは、異種核酸(例えば、目的の遺伝子産物)の少なくとも一部分によってコードされる遺伝子産物(例えば、ポリペプチドまたはRNA)を選択的に作製する手段を含む。例えば、本レンチウイルス移入ベクターは、マーカー遺伝子(例えば、選択的マーカー、例えば、蛍光タンパク質(例えば、GFP、YFP、RFP、dsRed、mCherry、またはそれらの任意の誘導体)をコードする遺伝子)を含み得る。マーカー遺伝子は、目的の遺伝子産物とは独立して、発現され得る。あるいは、マーカー遺伝子は、目的の遺伝子産物と共発現され得る。例えば、マーカー遺伝子は、目的の遺伝子産物と同じプロモーターまたは異なるプロモーターの制御下にあってもよい。別の例において、マーカー遺伝子は、目的の遺伝子産物に融合され得る。本発明のレンチウイルス移入ベクターのエレメントは、一般に、移入ベクターが、1つまたは複数のパッケージングベクターとともにトランスフェクトされた細胞においてレンチウイルスの形成に関与することを可能にするように、互いに作動可能な関係にある。
【0066】
ウイルスタンパク質
一部の事例において、本発明のレンチウイルス移入ベクターは、ウイルスタンパク質またはその部分をコードする1つまたは複数の遺伝子を含み得る。例えば、本レンチウイルス移入ベクターは、gagタンパク質(例えば、HIV-1 gagタンパク質)の少なくとも一部分をコードするポリヌクレオチドを含み得る。様々な例において、gagタンパク質をコードする配列は、250以下のヌクレオチド、例えば、200以下のヌクレオチド、175以下のヌクレオチド、または150以下のヌクレオチドを含む。一例において、gagタンパク質をコードする配列は、168ヌクレオチドを含むかまたはそれからなる。gagをコードするヌクレオチド配列は、INS1配列(例えば、以下に明記される変異を有する)を含み得るが、INS2、INS3、およびINS4配列が欠如している。gagタンパク質またはその部分をコードするポリヌクレオチドは、例えば、本明細書に記載される1つまたは複数の阻害性配列を不活性化する変異を含み得る。INS1領域の、以下のヌクレオチドのうちの1つまたは複数(例えば、すべて)における変異:G989、G992、C995、G998、C999、G1004、C1007T、およびC1010(図12BのpNLV配列を参照(pNLV)として使用)が、含まれ得る。特定の例において、これらの変異は、以下の通りである:G989A、G992A、C995T、G998A、C999T、G1004A、C1007T、およびC1010A。さらに、gagをコードする配列は、フレームシフトおよび望ましくないgagタンパク質産生の成熟前終結(premature termination)をもたらす挿入を含んでもよい(例えば、以下の図12B参照)。ある特定の事例において、本レンチウイルス移入ベクターは、部分的gag配列(例えば、本レンチウイルス移入ベクターにおいてパッケージングシグナルに隣接するおよび/またはそれとオーバーラップする位置にある部分的gag配列)、部分的env配列、ならびに/または部分的pol配列(例えば、pol由来のセントラルポリプリントラクト)を含み得る。部分的gag配列、部分的env配列、および/または部分的pol配列は、ある特定の事例において、HIV-1(例えば、HIV-1分離株NL4-3またはSF3)を起源とし得る。一例において、本レンチウイルス移入ベクターは、CMVプロモーターの制御下においてgag配列を含み得る。
【0067】
転写後制御エレメント(PRE)
本発明のレンチウイルス移入ベクターは、転写後制御エレメント(PRE)を含み得る。PREは、PREが位置するDNA配列の発現の制御に寄与する核酸配列である。例えば、PREは、残りのDNA配列とともに転写され得る。PREから転写された、結果として得られるmRNA分子の部分は、遺伝子産物の発現を強化する3次構造を形成し得る。PREは、一部の事例において、3つの成分(アルファ、ベータ、およびガンマ)を含み得る。PREの活性は、これらの成分のうち、いくつ存在しているかに依存し得る。例えば、完全な三部構成のPREは、アルファ成分単独のものよりも活性であり得る。本発明のレンチウイルス移入ベクターに含めるのに好適なPREとしては、例えば、ウッドチャック肝炎ウイルスPRE(WPRE)および/またはB型肝炎ウイルスPRE(HPRE)が挙げられる。ある特定の事例において、HPREには、天然のHPRE配列(例えば、B型肝炎ウイルス分離株bba6、完全ゲノムに由来する天然のHPRE配列;GenBank:KP341007.1)が含まれ得る。一部の事例において、本発明のレンチウイルス移入ベクターにおけるPREは、本明細書に記載されるように、Xタンパク質を不活性化するように修飾されていてもよい。
【0068】
省略されたエレメント
本発明は、既存のベクターと比べて最適化されているレンチウイルス移入ベクターを特徴とする。一部の事例において、本発明のレンチウイルス移入ベクターなどのベクターのサイズを低減することが望ましい。例えば、冗長な配列またはエレメントを、ベクターから除去して、そのサイズを低減させることができる。ある特定の事例において、不必要な複製起点(例えば、SV40複製起点配列および/またはf1複製起点配列)が、レンチウイルスベクターから除去され得る。したがって、様々な例において、本発明のレンチウイルス移入ベクターは、長さが8000ヌクレオチド未満、例えば、長さが7900ヌクレオチド未満、7800ヌクレオチド未満、または7700ヌクレオチド未満であり得る。
【0069】
一部の事例において、ベクターによってコードされるエレメントまたは遺伝子の部分が、ベクターから欠失していてもよい。例えば、タンパク質をコードする遺伝子は、阻害性配列を含み得る。そのような阻害性配列は、遺伝子の発現、プロセシング、および/または機能を阻害し得る。例えば、HIV-1 gagタンパク質は、INSエレメントとして知られる一連の阻害性RNAエレメント(例えば、INS1、INS2、INS3、およびINS4)を含む。そのようなINSエレメントは、例えば、それぞれ参照により本明細書に組み込まれる、J. Virol. 71(7):4892-4903, 1997、J. Virol. 66(12):7176-7182, 1992、およびJ. Virol. 68(6):3784-3793, 1994に記載されている。一例において、INS1は、スプライシングされていないウイルスRNAの核外輸送を制御することに関与する(例えば、J. Virol. 66(12):7176-7182, 1992参照)。したがって、これらの阻害性配列のうちの1つまたは複数(例えば、1つ、2つ、3つ、または4つ)の、遺伝子(例えば、gagタンパク質をコードする遺伝子、またはその一部分)からの除去または変異(例えば、特定のINSエレメントを形成するヌクレオチドの変異によるもの、例として、上記参照)により、遺伝子の発現、プロセシング、および/もしくは機能、またはその遺伝子産物が増加し得る。一例において、gagタンパク質をコードする遺伝子またはその一部分におけるINS1エレメントの変異は、スプライシングされていないウイルスRNAの核外輸送の増加をもたらす。
【0070】
一部の事例において、ベクターによってコードされるエレメントまたは遺伝子の全体が、ベクターから欠失していてもよい。例えば、WPREなどの一部の転写後制御エレメントは、Xタンパク質またはその一部分をコードするポリヌクレオチドを含む。Xタンパク質は、肝臓がんの発生に関係付けられている(例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Gene Ther. 12(1):3-4, 2005参照)。このため、バイオセーフティの観点から、本発明のレンチウイルス移入ベクターのPREからのXタンパク質の活性、機能、および/または発現を防止することが、有益である可能性がある。例えば、Xタンパク質をコードする遺伝子を、ベクターから欠失させることができる。あるいは、Xタンパク質をコードする遺伝子の開始コドンを変異させ(例えば、ATGからAGGへ)、それによって、Xタンパク質の翻訳を防止してもよい。別の代替法として、Xタンパク質の機能を防止する1つまたは複数の不活性化変異を、Xタンパク質のアミノ酸配列に導入してもよい。Xタンパク質を不活性化するためのさらなるアプローチには、当該技術分野において周知の変異方法が含まれる。
【0071】
パッケージングベクター
本発明のレンチウイルス移入ベクターは、1つまたは複数の追加のベクターとともに、細胞に同時にトランスフェクトしてもよい。一部の事例において、1つまたは複数の追加のベクターには、レンチウイルスパッケージングベクターが含まれ得る。ある特定の事例において、1つまたは複数の追加のプラスミドは、エンベローププラスミド(例えば、pMD.GなどのVSV-Gをコードするエンベローププラスミド)を含み得る。一般に、パッケージングベクターには、レンチウイルスタンパク質(例えば、gag、pol、env、tat、rev、vif、vpu、vpr、および/もしくはnefタンパク質、またはそれらの誘導体、組合せ、もしくは部分)をコードする1つまたは複数のポリヌクレオチド配列が含まれ得る。本発明のレンチウイルス移入ベクターとともに細胞に同時にトランスフェクトされるパッケージングベクターは、レンチウイルス移入ベクターによってコードされない1つまたは複数のレンチウイルスタンパク質をコードする配列を含み得る。例えば、レンチウイルス移入ベクターは、gagおよびpolをコードする第1のパッケージングベクター、ならびにrevをコードする第2のパッケージングベクターとともに、同時にトランスフェクトされ得る。したがって、レンチウイルス移入ベクターとそのようなパッケージングベクターとの同時トランスフェクションにより、結果として、ウイルス粒子の形成に必要なすべての遺伝子を細胞に導入することができ、それによって、細胞がウイルス粒子を産生することが可能となり、これを単離することができる。本発明において使用するのに適切なパッケージングベクターは、当業者によって、例えば、本発明のレンチウイルス移入ベクターに選択された特性を考慮して、選択され得る。本発明において使用することができるか、または本発明における使用に適合され得る、パッケージングベクターの例については、例えば、国際公開第03/064665号パンフレット、同第2009/153563号パンフレット、米国特許第7,419,829号明細書、国際公開第2004/022761号パンフレット、米国特許第5,817,491号明細書、国際公開第99/41397号パンフレット、米国特許第6,924,123号明細書、同第7,056,699号明細書、国際公開第99/32646号パンフレット、同第98/51810号パンフレット、および同第98/17815号パンフレット参照。一部の事例において、パッケージングプラスミドは、gagおよび/またはpolタンパク質をコードし得、任意選択で、RRE配列を含み得る(例えば、pMDLgpRREベクター、例えば、Dull et al., J. Virol. 72(11):8463-8471, 1998参照)。ある特定の事例において、パッケージングベクターは、revタンパク質をコードし得る(例えば、pRSV-Revベクター)。
【0072】
レンチウイルス産生のための宿主細胞
本発明のレンチウイルス移入ベクターは、宿主細胞(パッケージング細胞)に導入され得る。本レンチウイルス移入ベクターは、概して、1つまたは複数の追加のベクター(例えば、1つまたは複数のパッケージングベクター)とともに、宿主細胞に同時にトランスフェクトされる。1つまたは複数の追加のベクターは、ウイルスタンパク質および/または制御性タンパク質をコードし得る。本レンチウイルス移入ベクターおよび1つまたは複数の追加のベクターの同時トランスフェクションにより、宿主細胞が、レンチウイルス(例えば、レンチウイルス移入ベクター由来の異種核酸配列をコードするレンチウイルス)を産生することが可能となる。本明細書に記載されるように宿主細胞によって産生されたレンチウイルスは、別の細胞を感染させるために使用することができる。異種核酸および/または1つまたは複数の追加のエレメント(例えば、プロモーターおよびウイルスエレメント)が、感染細胞のゲノムに組み込まれ、それによって、この細胞およびその子孫が、レンチウイルス移入ベクターを起源とする遺伝子を発現することが可能となり得る。
【0073】
レンチウイルス移入ベクター(および1つまたは複数のパッケージングベクター)をトランスフェクトするのに好適なパッケージング細胞は、真核生物細胞、例えば、哺乳動物細胞であり得る。宿主細胞は、細胞株(例えば、不死化細胞株)を起源とするものであってもよい。例えば、宿主細胞は、HEK 293細胞(例えば、SV40大型T抗原を含む293T細胞)であってもよい。レンチウイルスが形質導入される細胞に関する情報は、以下に提供される。
【0074】
標的細胞は、目的の導入遺伝子をコードするレンチウイルスベクター(レンチウイルス)を感染させた(形質導入した)細胞である。形質導入後に、目的の導入遺伝子は、標的細胞のゲノムに安定に挿入され、PCRおよびサザンブロッティングなどの分子生物学方法によって検出することができる。導入遺伝子は、標的細胞において発現され得、フローサイトメトリーまたはウエスタンブロッティングによって検出することができる。一部の事例において、標的細胞は、ヒト細胞である。ある特定の事例において、宿主細胞は、目的とされる特定の細胞型、例えば、初代T細胞、SupT1細胞、Jurkat細胞、または293T細胞である。
【0075】
レンチウイルスを産生する方法
本発明のレンチウイルス移入ベクターは、細胞(例えば、本明細書に記載される宿主細胞)において、レンチウイルスを産生するのに有用であり得る。本明細書に記載されるレンチウイルス移入ベクターを使用して、レンチウイルスを産生する方法は、概して、レンチウイルス移入ベクターおよび1つまたは複数の追加のベクター(例えば、レンチウイルスパッケージングベクター)を細胞に導入することを伴うであろう。ベクターは、当該技術分野において周知のトランスフェクション方法を使用して細胞に導入され得る。トランスフェクション後、細胞は、(例えば、当該技術分野において公知のウイルス遺伝子発現を誘導するための標準的な条件下において細胞をインキュベートすることによって)レンチウイルス移入ベクターおよび/または1つもしくは複数の追加のベクターによってコードされるウイルスタンパク質を発現することが可能となり得る。一部の事例において、ウイルス遺伝子は、構成的プロモーターまたは誘導的プロモーターの制御下において発現される。後者の事例では、ウイルス遺伝子発現は、誘導的プロモーターを活性化するのに好適な条件下において細胞をインキュベートすることによって、選択的に誘導され得る。細胞によって産生されたウイルスタンパク質は、続いて、ウイルス粒子を形成し得、これが、細胞表面から出芽し、(例えば、当該技術分野において周知の方法に従って)溶液から単離することができる。ウイルスの形成の際に、異種核酸の配列を含むポリヌクレオチドが、ウイルス粒子に組み込まれ得る。したがって、このプロセスにより、レンチウイルス移入ベクターを起源とする異種核酸を含むレンチウイルスが得られる。
【0076】
異種核酸
本発明は、異種核酸を含むレンチウイルス移入ベクターを特徴とする。異種核酸は、細胞において発現させようとする目的の導入遺伝子(例えば、ポリペプチドをコードする遺伝子または非コーディングRNAの遺伝子)を含み得る。一部の事例において、異種タンパク質のORFは、コザック配列の下流に位置する。目的の遺伝子は、ある特定の事例において、本明細書に記載されるマーカー遺伝子と会合(例えば、それに融合)していてもよい。一部の事例において、レンチウイルス移入ベクターの異種核酸は、レンチウイルス移入ベクターおよび任意選択で1つまたは複数の追加のベクター(例えば、パッケージングベクター)をトランスフェクトした細胞において産生されたレンチウイルスに存在することになる。ある特定の事例において、異種核酸は、レンチウイルスを感染させた細胞のゲノムに組み込まれ得る。そのような細胞のゲノムへの異種核酸の組込みにより、この細胞およびその子孫が、目的の遺伝子を発現することが可能となり得る。目的の遺伝子は、当該技術分野において公知の任意の遺伝子であり得る。目的の遺伝子の例としては、限定することなく、キメラ抗原受容体(CAR)、結合性部分(例えば、抗体および抗体フラグメント)、シグナル伝達タンパク質、細胞表面タンパク質(例えば、T細胞受容体)、疾患(例えば、がん、自己免疫疾患、神経障害、もしくは当該技術分野において公知の任意の他の疾患)に関与するタンパク質、またはそれらの任意の誘導体もしくは組合せをコードする遺伝子が挙げられる。
【0077】
キメラ抗原受容体
本発明のレンチウイルス移入ベクターは、細胞におけるキメラ抗原受容体(CAR)の産生を誘導するために使用することができる。CARは、(i)細胞外抗原結合性ドメイン、(ii)膜貫通ドメイン、および(iii)細胞内シグナル伝達ドメインを含む、膜貫通タンパク質であり得る。本発明のレンチウイルス移入ベクターによってコードされるCARは、当該技術分野において公知の任意のCARであり得る。一実施形態において、CARは、抗CD19抗体またはそのフラグメント、4-1BB(CD137)膜貫通ドメイン、およびCD3-ゼータシグナル伝達ドメインを含む。
【0078】
抗原結合性ドメイン
本発明は、免疫エフェクター細胞(例えば、T細胞、NK細胞)を望ましくない細胞(例えば、がん細胞)に指向する、1つまたは複数のCARを含むように操作された、免疫エフェクター細胞を作製するために使用することができる。これは、CAR上のがん関連抗原に特異的な抗原結合性ドメインを通じて達成される。本発明のCARによって標的とすることができるがん関連抗原(腫瘍抗原)には、(1)がん細胞の表面上に発現されるがん関連抗原、および(2)がん関連抗原自体は細胞内にあるが、その抗原のフラグメント(ペプチド)が、MHC(主要組織適合複合体)によってがん細胞の表面上に提示されるもの、の2つのクラスがある。
【0079】
一部の事例において、抗原結合性ドメインは、CD19;CD123;CD22;CD30;CD171;CS-1;C型レクチン様分子-1、CD33;上皮成長因子受容体バリアントIII(EGFRvIII);ガングリオシドG2(GD2);ガングリオシドGD3;TNF受容体ファミリーメンバーB細胞成熟(BCMA);Tn抗原((Tn Ag)または(GalNAcα-Ser/Thr));前立腺特異的膜抗原(PSMA);受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR1);Fms様チロシンキナーゼ3(FLT3);腫瘍関連糖タンパク質72(TAG72);CD38;CD44v6;癌胎児性抗原(CEA);上皮細胞接着分子(EPCAM);B7H3(CD276);KIT(CD117);インターロイキン-13受容体サブユニットアルファ-2;メソテリン;インターロイキン11受容体アルファ(IL-11Ra);前立腺幹細胞抗原(PSCA);プロテアーゼセリン21;血管内皮成長因子受容体2(VEGFR2);Lewis(Y)抗原;CD24;血小板由来成長因子受容体ベータ(PDGFR-ベータ);ステージ特異的胎児抗原-4(SSEA-4);CD20;葉酸受容体アルファ;受容体チロシン-タンパク質キナーゼERBB2(Her2/neu);ムチン1、細胞表面関連(MUC1);上皮成長因子受容体(EGFR);神経細胞接着分子(NCAM);プロスターゼ;前立腺酸性ホスファターゼ(PAP);伸長因子2変異型(ELF2M);エフリンB2;線維芽細胞活性化タンパク質アルファ(FAP);インスリン様成長因子1受容体(IGF-I受容体)、炭酸脱水酵素IX(CAIX);プロテアソーム(プロソーム、マクロペイン)サブユニット、ベータ型、9(LMP2);糖タンパク質100(gp100);切断点クラスター領域(BCR)およびエーベルソンマウス白血病ウイルスがん遺伝子ホモログ1(Abl)からなるがん遺伝子融合タンパク質(bcr-abl);チロシナーゼ;エフリンA型受容体2(EphA2);フコシルGM1;シアリルLewis接着分子(sLe);ガングリオシドGM3;トランスグルタミナーゼ5(TGS5);高分子量黒色腫関連抗原(HMWMAA);o-アセチル-GD2ガングリオシド(OAcGD2);葉酸受容体ベータ;腫瘍内皮マーカー1(TEM1/CD248);腫瘍内皮マーカー7-関連(TEM7R);クローディン6(CLDN6);甲状腺刺激ホルモン受容体(TSHR);Gタンパク質共役型受容体クラスCグループ5、メンバーD(GPRC5D);X染色体オープンリーディングフレーム61(CXORF61);CD97;CD179a;未分化リンパ腫キナーゼ(ALK);ポリシアル酸;胎盤特異的1(PLAC1);globoHグリコセラミドの六糖部分(GloboH);乳腺分化抗原(NY-BR-1);ウロプラキン2(UPK2);A型肝炎ウイルス細胞受容体1(HAVCR1);アドレナリン受容体ベータ3(ADRB3);パンネキシン3(PANX3);Gタンパク質共役型受容体20(GPR20);リンパ球抗原6複合体、遺伝子座K9(LY6K);嗅覚受容体51E2(OR51E2);TCRガンマ代替リーディングフレームタンパク質(TARP);ウイルムス腫瘍タンパク質(WT1);がん/精巣抗原1(NY-ESO-1);がん/精巣抗原2(LAGE-1a);黒色腫関連抗原1(MAGE-A1);ETS転座バリアント遺伝子6、12p染色体に位置(ETV6-AML);精子タンパク質17(SPA17);X抗原ファミリー、メンバー1A(XAGE1);アンジオポエチン結合性細胞表面受容体2(Tie 2);黒色腫がん精巣抗原-1(MAD-CT-1);黒色腫がん精巣抗原-2(MAD-CT-2);Fos関連抗原1;腫瘍タンパク質p53(p53);p53変異体;プロステイン;サバイビン(surviving);テロメラーゼ;前立腺癌腫瘍抗原-1、T細胞によって認識される黒色腫抗原1;ラット肉腫(Ras)変異体;ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT);肉腫転座切断点;黒色腫のアポトーシス阻害剤(ML-IAP);ERG(膜貫通プロテアーゼ、セリン2(TMPRSS2)ETS融合遺伝子);N-アセチルグルコサミニル-トランスフェラーゼV(NA17);対合ボックスタンパク質Pax-3(PAX3);アンドロゲン受容体;サイクリンB1;v-mycニワトリ骨芽球腫ウイルスがん遺伝子神経芽細胞腫由来ホモログ(MYCN);RasホモログファミリーメンバーC(RhoC);チロシナーゼ関連タンパク質2(TRP-2);シトクロムP450 1B1(CYP1B1);CCCTC-結合因子(ジンクフィンガータンパク質)様、T細胞によって認識される扁平上皮細胞癌腫抗原3(SART3);対合ボックスタンパク質Pax-5(PAX5);プロアクロシン結合タンパク質sp32(OY-TES1);リンパ球特異的タンパク質チロシンキナーゼ(LCK);Aキナーゼアンカータンパク質4(AKAP-4);滑膜肉腫、X切断点2(SSX2);終末糖化産物受容体(RAGE-1);腎臓偏在1(RU1);腎臓偏在2(RU2);レグマイン;ヒトパピローマウイルスE6(HPV E6);ヒトパピローマウイルスE7(HPV E7);腸内カルボキシルエステラーゼ;熱ショックタンパク質70-2変異型(mut hsp70-2);CD79a;CD79b;CD72;白血球関連免疫グロブリン様受容体1(LAIR1);IgAのFcフラグメントの受容体(FCARまたはCD89);白血球免疫グロブリン様受容体サブファミリーAメンバー2(LILRA2);CD300分子様ファミリーメンバーf(CD300LF);C型レクチンドメインファミリー12メンバーA(CLEC12A);骨髄間質細胞抗原2(BST2);EGF様モジュール含有ムチン様ホルモン受容体様2(EMR2);リンパ球抗原75(LY75);グリピカン-3(GPC3);Fc受容体様5(FCRL5);ならびに免疫グロブリンラムダ様ポリペプチド1(IGLL1)からなる群から選択される抗原に特異的に結合することができる。
【0080】
本明細書に記載されるCARは、腫瘍支持抗原(例えば、本明細書に記載される腫瘍支持抗原)に結合する抗原結合性ドメイン(例えば、抗体または抗体フラグメント、TCRまたはTCRフラグメント)を含み得る。一部の実施形態において、腫瘍支持抗原は、間質細胞または骨髄系細胞由来サプレッサー細胞(MDSC)に存在する抗原である。間質細胞は、成長因子を分泌して、微小環境において細胞分裂を促進し得る。MDSC細胞は、T細胞の増殖および活性化を阻害し得る。理論に束縛されることを望むものではないが、一部の実施形態において、CAR発現細胞は、腫瘍支持細胞を破壊し、それによって、腫瘍の成長および生存を間接的に阻害する。
【0081】
複数の実施形態において、間質細胞抗原は、骨髄間質細胞抗原2(BST2)、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)、およびテネイシンのうちの1つまたは複数から選択される。ある実施形態において、FAP特異性抗体は、シブロツズマブ(sibrotuzumab)と結合に関して競合するか、またはそれと同じCDRを有する。複数の実施形態において、MDSC抗原は、CD33、CD11b、C14、CD15、およびCD66bのうちの1つまたは複数から選択される。したがって、一部の実施形態において、腫瘍支持抗原は、骨髄間質細胞抗原2(BST2)、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)、またはテネイシン、CD33、CD11b、C14、CD15、およびCD66bのうちの1つまたは複数から選択される。
【0082】
抗原結合性ドメインの構造
CARの抗原結合性ドメインは、例えば、当該技術分野において公知の任意のポリペプチド結合性部分を含み得る。例えば、抗原結合性ドメインは、抗体または抗体フラグメント(例えば、scFv、Fv、Fab、(Fab’)2、単一ドメイン抗体(SDAB)、VHもしくはVLドメイン、ラクダ科VHHドメイン、または二官能性(例えば、二重特異性)ハイブリッド抗体)を含み得る。好ましい事例において、抗原結合性ドメインは、scFvを含む。一部の事例において、抗原結合性ドメインは、T細胞受容体(TCR)、またはそのフラグメント、例えば、一本鎖TCR(scTCR)である。ある特定の事例において、抗原結合性ドメインは、二重特異性分子または多重特異性分子(例えば、多重特異性抗体分子)である。一部の事例において、抗原結合性ドメインは、目的とされる1つまたは複数の特定の標的分子を認識する。目的の標的分子は、例えば、疾患またはその発症と関連し得る。
【0083】
一部の事例において、scFvは、当該技術分野において公知の方法に従って調製することができる(例えば、Bird et al., (1988) Science 242:423-426およびHuston et al., (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883参照)。ScFv分子は、可動性ポリペプチドリンカーを使用して、VH領域およびVL領域を一緒に連結させることによって産生することができる。scFv分子は、最適な長さおよび/またはアミノ酸組成を有するリンカー(例えば、Ser-Glyリンカー)を含む。リンカーの長さは、scFvの可変領域がどのように折りたたまれ、相互作用するかに大きく影響を及ぼし得る。実際に、短いポリペプチドリンカーを用いた場合(例えば、5~10個のアミノ酸)、鎖内の折りたたみが防止される。鎖間の折りたたみは、2つの可変領域を一緒にして、機能的エピトープ結合性部位を形成するためにも必要である。リンカーの配向およびサイズの例については、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Hollinger et al. 1993 Proc Natl Acad. Sci. U.S.A. 90:6444-6448、米国特許出願公開第2005/0100543号明細書、同第2005/0175606号明細書、同第2007/0014794号明細書、ならびにPCT国際公開第2006/020258号パンフレットおよび同第2007/024715号パンフレット参照。
【0084】
scFvは、VL領域とVH領域との間に少なくとも1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、またはそれ以上のアミノ酸残基のリンカーを含み得る。リンカー配列は、任意の天然に存在するアミノ酸を含み得る。一部の実施形態において、リンカー配列は、アミノ酸グリシンおよびセリンを含む。別の実施形態において、リンカー配列は、グリシンおよびセリンのセットの繰り返し、例えば、(GlySer)nを含み、nは、1または1を上回る正の整数である(配列番号22)。一実施形態において、リンカーは、(GlySer)(配列番号29)または(GlySer)(配列番号30)であり得る。リンカーの長さの変動は、活性を保持することもあれば、活性を強化して、活性研究においてより優れた有効性をもたらすこともある。
【0085】
別の態様において、抗原結合性ドメインは、T細胞受容体(「TCR」)またはそのフラグメント、例えば、一本鎖TCR(scTCR)である。このようなTCRを作製する方法は、当該技術分野において公知である。例えば、Willemsen RA et al, Gene Therapy 7: 1369-1377 (2000)、Zhang T et al, Cancer Gene Ther 11: 487-496 (2004)、Aggen et al, Gene Ther. 19(4):365-74 (2012)参照(参考文献は、その全体が本明細書に組み込まれる)。例えば、リンカー(例えば、可動性ペプチド)によって連結されたT細胞クローンから、Vα遺伝子およびVβ遺伝子を含有するscTCRを操作することができる。このアプローチは、がん関連標的自体は細胞内にあるが、そのような抗原のフラグメント(ペプチド)がMHCによってがん細胞の表面上に提示されるものに対して、非常に有用である。
【0086】
ある特定の実施形態において、コードされる抗原結合性ドメインは、10-4M~10-8Mの結合親和性KDを有する。
【0087】
一実施形態において、コードされるCAR分子は、標的抗原に対して、10-4M~10-8M、例えば、10-5M~10-7M、例えば、10-6Mまたは10-7Mの結合親和性KDを有する抗原結合性ドメインを含む。一実施形態において、抗原結合性ドメインは、参照抗体、例えば、本明細書に記載される抗体の大きくても5分の1、10分の1、20分の1、30分の1、50分の1、100分の1、または1,000分の1の結合親和性を有する。一実施形態において、コードされる抗原結合性ドメインは、参照抗体(例えば、抗原結合性ドメインが由来する抗体)の大きくても5分の1の結合親和性を有する。一態様において、そのような抗体フラグメントは、当業者には理解されるように、免疫応答の活性化、その標的抗原を起源とするシグナル伝達の阻害、キナーゼ活性の阻害などを含み得るがこれらに限定されない生物学的応答を提供するという点で、機能性である。
【0088】
一態様において、CARの抗原結合性ドメインは、それが由来するscFvマウス配列と比較してヒト化されている、scFv抗体フラグメントである。
【0089】
一態様において、本発明のCARの抗原結合性ドメイン(例えば、scFv)は、哺乳動物細胞における発現に関して配列がコドン最適化されている核酸分子によってコードされる。一態様において、本発明のCARコンストラクト全体は、哺乳動物細胞における発現に関して配列全体がコドン最適化されている核酸分子によってコードされる。コドン最適化は、コーディングDNAにおける同義コドン(すなわち、同じアミノ酸をコードするコドン)の発生頻度に、異なる種では偏りがあることを発見することを指す。このようなコドン縮重により、同一のポリペプチドを様々なヌクレオチド配列によってコードすることが可能となる。様々なコドン最適化方法が、当該技術分野において公知であり、例えば、米国特許第5,786,464号明細書および同第6,114,148号明細書に開示されている方法が挙げられる。
【0090】
特異的な抗原抗体対
一実施形態において、CD22に対する抗原結合性ドメインは、例えば、Haso et al., Blood, 121(7): 1165-1174 (2013)、Wayne et al., Clin Cancer Res 16(6): 1894-1903 (2010)、Kato et al., Leuk Res 37(1):83-88 (2013)、Creative BioMart (creativebiomart.net): MOM-18047-S(P)に記載されている抗体の抗原結合性部分、例えば、CDRである。
【0091】
一実施形態において、CS-1に対する抗原結合性ドメインは、エロツズマブ(BMS)の抗原結合性部分、例えば、CDRであり、例えば、Tai et al., 2008, Blood 112(4):1329-37、Tai et al., 2007, Blood. 110(5):1656-63参照。
【0092】
一実施形態において、CLL-1に対する抗原結合性ドメインは、R&D、ebiosciences、Abcamから入手可能な抗体、例えば、PE-CLL1-huカタログ番号353604(BioLegend)およびPE-CLL1(CLEC12A)カタログ番号562566(BD)の抗原結合性部分、例えば、CDRである。
【0093】
一実施形態において、CD33に対する抗原結合性ドメインは、例えば、Bross et al., Clin Cancer Res 7(6):1490-1496 (2001)(ゲムツズマブオゾガマイシン、hP67.6)、Caron et al., Cancer Res 52(24):6761-6767 (1992)(リンツズマブ、HuM195)、Lapusan et al., Invest New Drugs 30(3):1121-1131 (2012)(AVE9633)、Aigner et al., Leukemia 27(5): 1107-1115 (2013)(AMG330、CD33 BiTE)、Dutour et al., Adv hematol 2012:683065 (2012)、およびPizzitola et al., Leukemia doi:10.1038/Lue.2014.62 (2014)に記載されている抗体の抗原結合性部分、例えば、CDRである。
【0094】
一実施形態において、GD2に対する抗原結合性ドメインは、例えば、Mujoo et al., Cancer Res. 47(4):1098-1104 (1987)、Cheung et al., Cancer Res 45(6):2642-2649 (1985)、Cheung et al., J Clin Oncol 5(9):1430-1440 (1987)、Cheung et al., J Clin Oncol 16(9):3053-3060 (1998)、Handgretinger et al., Cancer Immunol Immunother 35(3):199-204 (1992)に記載されている抗体の抗原結合性部分、例えば、CDRである。一部の実施形態において、GD2に対する抗原結合性ドメインは、mAb 14.18、14G2a、ch14.18、hu14.18、3F8、hu3F8、3G6、8B6、60C3、10B8、ME36.1、および8H9から選択される抗体の抗原結合性部分であり、例えば、国際公開第2012033885号パンフレット、同第2013040371号パンフレット、同第2013192294号パンフレット、同第2013061273号パンフレット、同第2013123061号パンフレット、同第2013074916号パンフレット、および同第201385552号パンフレット参照。一部の実施形態において、GD2に対する抗原結合性ドメインは、米国特許出願公開第20100150910号明細書またはPCT国際公開第2011160119号パンフレットに記載されている抗体の抗原結合性部分である。
【0095】
一実施形態において、BCMAに対する抗原結合性ドメインは、例えば、国際公開第2012163805号パンフレット、同第200112812号パンフレット、および同第2003062401号パンフレットに記載されている抗体の抗原結合性部分、例えば、CDRである。
【0096】
一実施形態において、Tn抗原に対する抗原結合性ドメインは、例えば、米国特許第8,440,798号明細書、Brooks et al., PNAS 107(22):10056-10061 (2010)、およびStone et al., OncoImmunology 1(6):863-873(2012)に記載されている抗体の抗原結合性部分、例えば、CDRである。
【0097】
一実施形態において、PSMAに対する抗原結合性ドメインは、例えば、Parker et al., Protein Expr Purif 89(2):136-145 (2013)、米国特許出願公開第20110268656号明細書(J591 ScFv)、Frigerio et al, European J Cancer 49(9):2223-2232 (2013)(scFvD2B)、国際公開第2006125481号パンフレット(mAbs 3/A12、3/E7、および3/F11)に記載されている抗体、ならびに一本鎖抗体フラグメント(scFv A5およびD7)の抗原結合性部分、例えば、CDRである。
【0098】
一実施形態において、ROR1に対する抗原結合性ドメインは、例えば、Hudecek et al., Clin Cancer Res 19(12):3153-3164 (2013)、国際公開第2011159847号パンフレット、および米国特許出願公開第20130101607号明細書に記載されている抗体の抗原結合性部分、例えば、CDRである。
【0099】
一実施形態において、FLT3に対する抗原結合性ドメインは、例えば、国際公開第2011076922号パンフレット、米国特許第5777084号明細書、欧州特許第0754230号明細書、米国特許出願公開第20090297529号明細書に記載されている抗体、およびいくつかの市販のカタログの抗体(R&D、ebiosciences、Abcam)の抗原結合性部分、例えば、CDRである。
【0100】
一実施形態において、TAG72に対する抗原結合性ドメインは、例えば、Hombach et al., Gastroenterology 113(4):1163-1170 (1997)に記載されている抗体およびAbcam ab691の抗原結合性部分、例えば、CDRである。
【0101】
一実施形態において、FAPに対する抗原結合性ドメインは、例えば、Ostermann et al., Clinical Cancer Research 14:4584-4592 (2008)(FAP5)、米国特許出願公開第2009/0304718号明細書に記載されている抗体、シブロツズマブ(例えば、Hofheinz et al., Oncology Research and Treatment 26(1), 2003参照)、およびTran et al., J Exp Med 210(6):1125-1135 (2013)に記載されている抗体の抗原結合性部分、例えば、CDRである。
【0102】
一実施形態において、CD38に対する抗原結合性ドメインは、例えば、ダラツムマブ(例えば、Groen et al., Blood 116(21):1261-1262 (2010)参照)、MOR202(例えば、米国特許第8,263,746号明細書参照)、または米国特許第8,362,211号明細書に記載されている抗体の抗原結合性部分、例えば、CDRである。
【0103】
一実施形態において、CD44v6に対する抗原結合性ドメインは、例えば、Casucci et al., Blood 122(20):3461-3472 (2013)に記載されている抗体の抗原結合性部分、例えば、CDRである。
【0104】
一実施形態において、CEAに対する抗原結合性ドメインは、例えば、Chmielewski et al., Gastoenterology 143(4):1095-1107 (2012)に記載されている抗体の抗原結合性部分、例えば、CDRである。
【0105】
一実施形態において、EPCAMに対する抗原結合性ドメインは、例えば、MT110、EpCAM-CD3二重特異性Ab(例えば、clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT00635596参照)、エドレコロマブ、3622W94、ING-1、およびアデカツムマブ(MT201)から選択される抗体の抗原結合性部分、例えば、CDRである。
【0106】
一実施形態において、PRSS21に対する抗原結合性ドメインは、米国特許第8,080,650号明細書に記載されている抗体の抗原結合性部分、例えば、CDRである。
【0107】
一実施形態において、B7H3に対する抗原結合性ドメインは、抗体MGA271(Macrogenics)の抗原結合性部分、例えば、CDRである。
【0108】
一実施形態において、KITに対する抗原結合性ドメインは、例えば、米国特許第7915391号明細書、米国特許出願公開第20120288506号明細書に記載されている抗体、およびいくつかの市販のカタログの抗体の抗原結合性部分、例えば、CDRである。
【0109】
一実施形態において、IL-13Ra2に対する抗原結合性ドメインは、例えば、国際公開第2008/146911号パンフレット、同第2004087758号パンフレットに記載されている抗体、いくつかの市販のカタログの抗体、および国際公開第2004087758号パンフレットに記載されている抗体の抗原結合性部分、例えば、CDRである。
【0110】
一実施形態において、CD30に対する抗原結合性ドメインは、例えば、米国特許第7090843号明細書および欧州特許第0805871明細書に記載されている抗体の抗原結合性部分、例えば、CDRである。
【0111】
一実施形態において、GD3に対する抗原結合性ドメインは、例えば、米国特許第7253263号明細書、同第8,207,308号明細書、米国特許出願公開第20120276046号明細書、欧州特許第1013761号明細書、国際公開第2005035577号パンフレット、および米国特許第6437098号明細書に記載されている抗体の抗原結合性部分、例えば、CDRである。
【0112】
一実施形態において、CD171に対する抗原結合性ドメインは、例えば、Hong et al., J Immunother 37(2):93-104 (2014)に記載されている抗体の抗原結合性部分、例えば、CDRである。
【0113】
一実施形態において、IL-11Raに対する抗原結合性ドメインは、Abcam(カタログ番号ab55262)またはNovus Biologicals(カタログ番号EPR5446)から入手可能な抗体の抗原結合性部分、例えば、CDRである。別の実施形態において、IL-11Raに対する抗原結合性ドメインは、ペプチドであり、例えば、Huang et al., Cancer Res 72(1):271-281 (2012)参照。
【0114】
一実施形態において、PSCAに対する抗原結合性ドメインは、例えば、Morgenroth et al., Prostate 67(10):1121-1131 (2007)(scFv 7F5)、Nejatollahi et al., J of Oncology 2013(2013), article ID 839831(scFv C5-II)、および米国特許出願公開第20090311181号明細書に記載されている抗体の抗原結合性部分、例えば、CDRである。
【0115】
一実施形態において、VEGFR2に対する抗原結合性ドメインは、例えば、Chinnasamy et al., J Clin Invest 120(11):3953-3968 (2010)に記載されている抗体の抗原結合性部分、例えば、CDRである。
【0116】
一実施形態において、LewisYに対する抗原結合性ドメインは、例えば、Kelly et al., Cancer Biother Radiopharm 23(4):411-423 (2008)(hu3S193 Ab(scFvs))、Dolezal et al., Protein Engineering 16(1):47-56 (2003)(NC10 scFv)に記載されている抗体の抗原結合性部分、例えば、CDRである。
【0117】
一実施形態において、CD24に対する抗原結合性ドメインは、例えば、Maliar et al., Gastroenterology 143(5):1375-1384 (2012)に記載されている抗体の抗原結合性部分、例えば、CDRである。
【0118】
一実施形態において、PDGFR-ベータに対する抗原結合性ドメインは、抗体Abcam ab32570の抗原結合性部分、例えば、CDRである。
【0119】
一実施形態において、SSEA-4に対する抗原結合性ドメインは、抗体MC813(Cell Signaling)または他の市販入手可能な抗体の抗原結合性部分、例えば、CDRである。
【0120】
一実施形態において、CD20に対する抗原結合性ドメインは、抗体リツキシマブ、オファツムマブ、オクレリズマブ、ベルツズマブ、またはGA101の抗原結合性部分、例えば、CDRである。
【0121】
一実施形態において、葉酸受容体アルファに対する抗原結合性ドメインは、抗体IMGN853、または米国特許出願公開第20120009181号明細書、米国特許第4851332号明細書(LK26)、同第5952484号明細書に記載されている抗体の抗原結合性部分、例えば、CDRである。
【0122】
一実施形態において、ERBB2(Her2/neu)に対する抗原結合性ドメインは、抗体トラスツズマブまたはペルツズマブの抗原結合性部分、例えば、CDRである。
【0123】
一実施形態において、MUC1に対する抗原結合性ドメインは、抗体SAR566658の抗原結合性部分、例えば、CDRである。
【0124】
一実施形態において、EGFRに対する抗原結合性ドメインは、抗体セツキシマブ、パニツムマブ、ザルツムマブ、ニモツズマブ、またはマツズマブの抗原結合性部分、例えば、CDRである。
【0125】
一実施形態において、NCAMに対する抗原結合性ドメインは、抗体クローン2-2B:MAB5324(EMD Millipore)の抗原結合性部分、例えば、CDRである。
【0126】
一実施形態において、エフリンB2に対する抗原結合性ドメインは、例えば、Abengozar et al., Blood 119(19):4565-4576 (2012)に記載されている抗体の抗原結合性部分、例えば、CDRである。
【0127】
一実施形態において、IGF-I受容体に対する抗原結合性ドメインは、例えば、米国特許第8344112号明細書、欧州特許出願公開第2322550号明細書、国際公開第2006/138315号パンフレット、またはPCT出願第2006/022995号パンフレットに記載されている抗体の抗原結合性部分、例えば、CDRである。
【0128】
一実施形態において、CAIXに対する抗原結合性ドメインは、抗体クローン303123(R&D Systems)の抗原結合性部分、例えば、CDRである。
【0129】
一実施形態において、LMP2に対する抗原結合性ドメインは、例えば、米国特許第7,410,640号明細書または米国特許出願公開20050129701号明細書に記載されている抗体の抗原結合性部分、例えば、CDRである。
【0130】
一実施形態において、gp100に対する抗原結合性ドメインは、抗体HMB45、NKIbetaB、または国際公開第2013165940号パンフレットもしくは米国特許出願公開第20130295007号明細書に記載されている抗体の抗原結合性部分、例えば、CDRである。
【0131】
一実施形態において、チロシナーゼに対する抗原結合性ドメインは、例えば、米国特許第5843674号明細書または米国特許出願公開第19950504048号明細書に記載されている抗体の抗原結合性部分、例えば、CDRである。
【0132】
一実施形態において、EphA2に対する抗原結合性ドメインは、例えば、Yu et al., Mol Ther 22(1):102-111 (2014)に記載されている抗体の抗原結合性部分、例えば、CDRである。
【0133】
一実施形態において、GD3に対する抗原結合性ドメインは、例えば、米国特許第7253263号明細書、同第8,207,308号明細書、米国特許出願公開第20120276046号明細書、欧州特許出願公開第1013761号明細書、20120276046、国際公開第2005035577号パンフレット、または米国特許第6437098号明細書に記載されている抗体の抗原結合性部分、例えば、CDRである。
【0134】
一実施形態において、フコシルGM1に対する抗原結合性ドメインは、例えば、米国特許出願公開第20100297138号明細書または国際公開第2007/067992号パンフレットに記載されている抗体の抗原結合性部分、例えば、CDRである。
【0135】
一実施形態において、sLeに対する抗原結合性ドメインは、抗体G193(lewis Y)の抗原結合性部分、例えば、CDRであり、Scott AM et al, Cancer Res 60: 3254-61 (2000)参照、Neeson et al, J Immunol May 2013 190 (Meeting Abstract Supplement) 177.10にも記載されている。
【0136】
一実施形態において、GM3に対する抗原結合性ドメインは、抗体CA 2523449(mAb 14F7)の抗原結合性部分、例えば、CDRである。
【0137】
一実施形態において、HMWMAAに対する抗原結合性ドメインは、例えば、Kmiecik et al., Oncoimmunology 3(1):e27185 (2014) (PMID: 24575382)(mAb9.2.27)、米国特許第6528481号明細書、国際公開第2010033866号パンフレット、または米国特許出願公開20140004124号明細書に記載されている抗体の抗原結合性部分、例えば、CDRである。
【0138】
一実施形態において、o-アセチル-GD2に対する抗原結合性ドメインは、抗体8B6の抗原結合性部分、例えば、CDRである。
【0139】
一実施形態において、TEM1/CD248に対する抗原結合性ドメインは、例えば、Marty et al., Cancer Lett 235(2):298-308 (2006)、Zhao et al., J Immunol Methods 363(2):221-232 (2011)に記載されている抗体の抗原結合性部分、例えば、CDRである。
【0140】
一実施形態において、CLDN6に対する抗原結合性ドメインは、抗体IMAB027(Ganymed Pharmaceuticals)の抗原結合性部分、例えば、CDRであり、例えば、clinicaltrial.gov/show/NCT02054351参照。
【0141】
一実施形態において、TSHRに対する抗原結合性ドメインは、例えば、米国特許第8,603,466号明細書、同第8,501,415号明細書、または同第8,309,693号明細書に記載されている抗体の抗原結合性部分、例えば、CDRである。
【0142】
一実施形態において、GPRC5Dに対する抗原結合性ドメインは、抗体FAB6300A(R&D Systems)またはLS-A4180(Lifespan Biosciences)の抗原結合性部分、例えば、CDRである。
【0143】
一実施形態において、CD97に対する抗原結合性ドメインは、例えば、米国特許第6,846,911号明細書、de Groot et al., J Immunol 183(6):4127-4134 (2009)に記載されている抗体、またはR&Dからの抗体MAB3734の抗原結合性部分、例えば、CDRである。
【0144】
一実施形態において、ALKに対する抗原結合性ドメインは、例えば、Mino-Kenudson et al., Clin Cancer Res 16(5):1561-1571 (2010)に記載されている抗体の抗原結合性部分、例えば、CDRである。
【0145】
一実施形態において、ポリシアル酸に対する抗原結合性ドメインは、例えば、Nagae et al., J Biol Chem 288(47):33784-33796 (2013)に記載されている抗体の抗原結合性部分、例えば、CDRである。
【0146】
一実施形態において、PLAC1に対する抗原結合性ドメインは、例えば、Ghods et al., Biotechnol Appl Biochem 2013 doi:10.1002/bab.1177に記載されている抗体の抗原結合性部分、例えば、CDRである。
【0147】
一実施形態において、GloboHに対する抗原結合性ドメインは、抗体VK9、または例えばKudryashov V et al, Glycoconj J.15(3):243-9 ( 1998)、Lou et al., Proc Natl Acad Sci USA 111(7):2482-2487 (2014)、MBr1: Bremer E-G et al. J Biol Chem 259:14773-14777 (1984)に記載されている抗体の抗原結合性部分、例えば、CDRである。
【0148】
一実施形態において、NY-BR-1に対する抗原結合性ドメインは、例えば、Jager et al., Appl Immunohistochem Mol Morphol 15(1):77-83 (2007)に記載されている抗体の抗原結合性部分、例えば、CDRである。
【0149】
一実施形態において、WT-1に対する抗原結合性ドメインは、例えば、Dao et al., Sci Transl Med 5(176):176ra33 (2013)または国際公開第2012/135854号パンフレットに記載されている抗体の抗原結合性部分、例えば、CDRである。
【0150】
一実施形態において、MAGE-A1に対する抗原結合性ドメインは、例えば、Willemsen et al., J Immunol 174(12):7853-7858 (2005)(TCR様scFv)に記載されている抗体の抗原結合性部分、例えば、CDRである。
【0151】
一実施形態において、精子タンパク質17に対する抗原結合性ドメインは、例えば、Song et al., Target Oncol 2013 Aug 14 (PMID: 23943313)、Song et al., Med Oncol 29(4):2923-2931 (2012)に記載されている抗体の抗原結合性部分、例えば、CDRである。
【0152】
一実施形態において、Tie 2に対する抗原結合性ドメインは、抗体AB33(Cell Signaling Technology)の抗原結合性部分、例えば、CDRである。
【0153】
一実施形態において、MAD-CT-2に対する抗原結合性ドメインは、例えば、PMID:2450952、米国特許第7635753号明細書に記載されている抗体の抗原結合性部分、例えば、CDRである。
【0154】
一実施形態において、Fos関連抗原1に対する抗原結合性ドメインは、抗体12F9(Novus Biologicals)の抗原結合性部分、例えば、CDRである。
【0155】
一実施形態において、メランA/MART1に対する抗原結合性ドメインは、欧州特許出願公開第2514766号明細書または米国特許第7,749,719号明細書に記載されている抗体の抗原結合性部分、例えば、CDRである。
【0156】
一実施形態において、肉腫転座切断点に対する抗原結合性ドメインは、例えば、Luo et al, EMBO Mol. Med. 4(6):453-461 (2012)に記載されている抗体の抗原結合性部分、例えば、CDRである。
【0157】
一実施形態において、TRP-2に対する抗原結合性ドメインは、例えば、Wang et al, J Exp Med. 184(6):2207-16 (1996)に記載されている抗体の抗原結合性部分、例えば、CDRである。
【0158】
一実施形態において、CYP1B1に対する抗原結合性ドメインは、例えば、Maecker et al, Blood 102 (9): 3287-3294 (2003)に記載されている抗体の抗原結合性部分、例えば、CDRである。
【0159】
一実施形態において、RAGE-1に対する抗原結合性ドメインは、抗体MAB5328(EMD Millipore)の抗原結合性部分、例えば、CDRである。
【0160】
一実施形態において、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素に対する抗原結合性ドメインは、抗体カタログ番号LS-B95-100(Lifespan Biosciences)の抗原結合性部分、例えば、CDRである。
【0161】
一実施形態において、腸内カルボキシルエステラーゼに対する抗原結合性ドメインは、抗体4F12:カタログ番号LS-B6190-50(Lifespan Biosciences)の抗原結合性部分、例えば、CDRである。
【0162】
一実施形態において、mut hsp70-2に対する抗原結合性ドメインは、抗体Lifespan Biosciences:モノクローナル:カタログ番号LS-C133261-100(Lifespan Biosciences)の抗原結合性部分、例えば、CDRである。
【0163】
一実施形態において、CD79aに対する抗原結合性ドメインは、Abcamから入手可能な抗体である抗CD79a抗体[HM47/A9](ab3121);Cell Signalling Technologyから入手可能な抗体であるCD79A抗体#3351;またはSigma Aldrichから入手可能なウサギにおいて産生された抗体であるHPA017748-抗CD79A抗体の抗原結合性部分、例えば、CDRである。
【0164】
一実施形態において、CD79bに対する抗原結合性ドメインは、Dornan et al., "Therapeutic potential of an anti-CD79b antibody-drug conjugate, anti-CD79b-vc-MMAE, for the treatment of non-Hodgkin lymphoma" Blood. 2009 Sep 24;114(13):2721-9. doi: 10.1182/blood-2009-02-205500. Epub 2009 Jul 24に記載されている抗CD79b抗体ポラツズマブベドチン、または"4507 Pre-Clinical Characterization of T Cell-Dependent Bispecific Antibody Anti-CD79b/CD3 As a Potential Therapy for B Cell Malignancies" Abstracts of 56th ASH Annual Meeting and Exposition, San Francisco, CA December 6-9 2014に記載されている二重特異性抗CD79b/CD3抗体の抗原結合性部分、例えば、CDRである。
【0165】
一実施形態において、CD72に対する抗原結合性ドメインは、Myers, and Uckun, "An anti-CD72 immunotoxin against therapy-refractory B-lineage acute lymphoblastic leukemia." Leuk Lymphoma. 1995 Jun;18(1-2):119-22に記載されている抗体J3-109、またはPolson et al., "Antibody-Drug Conjugates for the Treatment of Non-Hodgkin’s Lymphoma: Target and Linker-Drug Selection" Cancer Res March 15, 2009 69; 2358に記載されている抗CD72(10D6.8.1、mIgG1)の抗原結合性部分、例えば、CDRである。
【0166】
一実施形態において、LAIR1に対する抗原結合性ドメインは、ProSpecから入手可能な抗体であるANT-301 LAIR1抗体、またはBioLegendから入手可能な抗ヒトCD305(LAIR1)抗体の抗原結合性部分、例えば、CDRである。
【0167】
一実施形態において、FCARに対する抗原結合性ドメインは、Sino Biological Incから入手可能な抗体であるCD89/FCAR抗体(カタログ番号10414-H08H)の抗原結合性部分、例えば、CDRである。
【0168】
一実施形態において、LILRA2に対する抗原結合性ドメインは、Abnovaから入手可能な抗体であるLILRA2モノクローナル抗体(M17)クローン3C7、またはLifespan Biosciencesから入手可能なマウス抗LILRA2抗体、モノクローナル(2D7)の抗原結合性部分、例えば、CDRである。
【0169】
一実施形態において、CD300LFに対する抗原結合性ドメインは、抗BioLegendから入手可能な抗体であるマウス抗CMRF35様分子1抗体、モノクローナル[UP-D2]、またはR&D Systemsから入手可能なラット抗CMRF35様分子1抗体、モノクローナル[234903]の抗原結合性部分、例えば、CDRである。
【0170】
一実施形態において、CLEC12Aに対する抗原結合性ドメインは、Noordhuis et al., "Targeting of CLEC12A In Acute Myeloid Leukemia by Antibody-Drug-Conjugates and Bispecific CLL-1xCD3 BiTE Antibody" 53rdASH Annual Meeting and Exposition, December 10-13, 2011に記載されている抗体である二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)scFv-抗体およびADC、ならびにMCLA-117(Merus)の抗原結合性部分、例えば、CDRである。
【0171】
一実施形態において、BST2(CD317とも称される)に対する抗原結合性ドメインは、Antibodies-Onlineから入手可能な抗体であるマウス抗CD317抗体、モノクローナル[3H4]、またはR&D Systemsから入手可能なマウス抗CD317抗体、モノクローナル[696739]の抗原結合性部分、例えば、CDRである。
【0172】
一実施形態において、EMR2(CD312とも称される)に対する抗原結合性ドメインは、Lifespan Biosciencesから入手可能な抗体であるマウス抗CD312抗体、モノクローナル[LS-B8033]、またはR&D Systemsから入手可能なマウス抗CD312抗体、モノクローナル[494025]の抗原結合性部分、例えば、CDRである。
【0173】
一実施形態において、LY75に対する抗原結合性ドメインは、EMD Milliporeから入手可能な抗体であるマウス抗リンパ球抗原75抗体、モノクローナル[HD30]、またはLife Technologiesから入手可能なマウス抗リンパ球抗原75抗体、モノクローナル[A15797]の抗原結合性部分、例えば、CDRである。
【0174】
一実施形態において、GPC3に対する抗原結合性ドメインは、Nakano K, Ishiguro T, Konishi H, et al. Generation of a humanized anti-glypican 3 antibody by CDR grafting and stability optimization. Anticancer Drugs. 2010 Nov;21(10):907-916に記載されている抗体hGC33、またはいずれもFeng et al., "Glypican-3 antibodies: a new therapeutic target for liver cancer." FEBS Lett. 2014 Jan 21;588(2):377-82に記載されているMDX-1414、HN3、もしくはYP7の抗原結合性部分、例えば、CDRである。
【0175】
一実施形態において、FCRL5に対する抗原結合性ドメインは、Elkins et al., "FcRL5 as a target of antibody-drug conjugates for the treatment of multiple myeloma" Mol Cancer Ther. 2012 Oct;11(10):2222-32に記載されている抗FcRL5抗体の抗原結合性部分、例えば、CDRである。
【0176】
一実施形態において、IGLL1に対する抗原結合性ドメインは、Lifespan Biosciencesから入手可能な抗体であるマウス抗免疫グロブリンラムダ様ポリペプチド1抗体、モノクローナル[AT1G4]、BioLegendから入手可能なマウス抗免疫グロブリンラムダ様ポリペプチド1抗体、モノクローナル[HSL11]の抗原結合性部分、例えば、CDRである。
【0177】
一実施形態において、抗原結合性ドメインは、上記に列挙した抗体に由来する1つ、2つ、3つ(例えば、3つすべて)の重鎖CDR、HC CDR1、HC CDR2、およびHC CDR3を含む、かつ/または上記に列挙した抗体に由来する1つ、2つ、3つ(例えば、3つすべて)の軽鎖CDR、LC CDR1、LC CDR2、およびLC CDR3を含む。一実施形態において、抗原結合性ドメインは、上記に列挙した抗体の重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域を含む。
【0178】
別の態様において、抗原結合性ドメインは、ヒト化抗体または抗体フラグメントを含む。一部の態様において、非ヒト抗体は、ヒト化されるが、その場合、抗体の特定の配列または領域は、ヒトにおいて天然に産生される抗体またはそのフラグメントに対する類似性が増加するように修飾される。一態様において、抗原結合性ドメインは、ヒト化されている。
【0179】
二重特異性CAR
ある特定の実施形態において、抗原結合性ドメインは、二重特異性分子または多重特異性分子(例えば、多重特異性抗体分子)である。ある実施形態において、多重特異性抗体分子は、二重特異性抗体分子である。二重特異性抗体は、2つを上回らない抗原に対する特異性を有する。二重特異性抗体分子は、第1のエピトープに対する結合特異性を有する第1の免疫グロブリン可変ドメイン配列および第2のエピトープに対する結合特異性を有する第2の免疫グロブリン可変ドメイン配列によって特徴付けられる。ある実施形態において、第1のエピトープおよび第2のエピトープは、同じ抗原上、例えば、同じタンパク質(または多量体タンパク質のサブユニット)上にある。ある実施形態において、第1のエピトープおよび第2のエピトープは、オーバーラップする。ある実施形態において、第1のエピトープおよび第2のエピトープは、オーバーラップしない。ある実施形態において、第1のエピトープおよび第2のエピトープは、異なる抗原上、例えば、異なるタンパク質(または多量体タンパク質の異なるサブユニット)上にある。ある実施形態において、二重特異性抗体分子は、第1のエピトープに対する結合特異性を有する重鎖可変ドメイン配列および軽鎖可変ドメイン配列、ならびに第2のエピトープに対する結合特異性を有する重鎖可変ドメイン配列および軽鎖可変ドメイン配列を含む。ある実施形態において、二重特異性抗体分子は、第1のエピトープに対する結合特異性を有する半抗体および第2のエピトープに対する結合特異性を有する半抗体を含む。ある実施形態において、二重特異性抗体分子は、第1のエピトープに対する結合特異性を有する半抗体またはそのフラグメントおよび第2のエピトープに対する結合特異性を有する半抗体またはそのフラグメントを含む。ある実施形態において、二重特異性抗体分子は、第1のエピトープに対する結合特異性を有するscFvまたはそのフラグメントおよび第2のエピトープに対する結合特異性を有するscFvまたはそのフラグメントを含む。
【0180】
ある特定の実施形態において、抗体分子は、多重特異性(例えば、二重特異性または三重特異性)抗体分子である。そのような分子としては、二重特異性融合タンパク質、例えば、例として米国特許第5637481号明細書に記載されている、間に親水性ヘリックスペプチドリンカーを有する2つのscFvおよび完全な定常領域を含む発現コンストラクト;例えば、米国特許第5837821号明細書に記載されている、結合したVL鎖およびVH鎖がさらにペプチドスペーサーによって抗体のヒンジ領域およびCH3領域に接続され、これが二量体化して二重特異性/多重特異性分子が形成され得る、ミニボディコンストラクト;例えば、米国特許第5864019号明細書に記載されている、VHドメインの一部(またはファミリーメンバーではVLドメイン)がペプチド結合によってC末端で架橋性基と接続され、さらにVLドメインと会合して、一連のFV(またはscFv)を形成したもの;ならびに、例えば、米国特許第5869620号明細書に記載されている、VHおよびVLドメインの両方がペプチドリンカーによって結合した一本鎖結合性ポリペプチドを、非共有結合または化学的架橋によって合わせて多価構造体にして、scFVまたはダイアボディ型の両方の形式を使用して、例えば、ホモ一価、ヘテロ二価、三価、および四価の構造体を形成したものが挙げられる。上記で参照した出願の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0181】
二重特異性分子のそれぞれの抗体または抗体フラグメント(例えば、scFv)内で、VHは、VLの上流にあっても下流にあってもよい。一部の実施形態において、上流の抗体または抗体フラグメント(例えば、scFv)は、そのVH(VH)がそのVL(VL)の上流に配置されており、下流の抗体または抗体フラグメント(例えば、scFv)は、そのVL(VL)がそのVH(VH)の上流に配置されており、結果として、全体的な二重特異性抗体分子は、VH-VL-VL-VHの配置を有するようになっている。他の実施形態において、上流の抗体または抗体フラグメント(例えば、scFv)は、そのVL(VL)がそのVH(VH)の上流に配置されており、下流の抗体または抗体フラグメント(例えば、scFv)は、そのVH(VH)がそのVL(VL)の上流に配置されており、結果として、全体的な二重特異性抗体分子は、VL-VH-VH-VLの配置を有するようになっている。任意選択で、2つの抗体または抗体フラグメント(例えば、scFvs)の間、例えば、コンストラクトがVH-VL-VL-VHとして配置されている場合はVLとVLとの間、またはコンストラクトがVL-VH-VH-VLとして配置されている場合はVHとVHとの間に、リンカーが配置される。リンカーは、本明細書に記載されるリンカー、例えば、(Gly-Ser)nリンカーであってもよく、ここで、nは、1、2、3、4、5、または6、好ましくは4である(配列番号29)。一般に、2つのscFv間のリンカーは、2つのscFvのドメイン間の誤対合を回避するのに十分に長くなければならない。任意選択で、リンカーは、第1のscFvのVLとVHとの間に配置される。任意選択で、リンカーは、第2のscFvのVLとVHとの間に配置される。複数のリンカーを有するコンストラクトの場合、リンカーのうちの任意の2つ以上は、同じであっても異なってもよい。したがって、一部の実施形態において、二重特異性CARは、VL、VH、および任意選択で1つまたは複数のリンカーを、本明細書に記載される配置で含む。
【0182】
膜貫通ドメイン
CARの膜貫通ドメインは、このドメインの一方の端部が、例えば、細胞外抗原結合性ドメインに結合し、他方の端部が、例えば、細胞内シグナル伝達ドメインに結合するように、リン脂質二重層を横断することができる任意のポリペプチドドメインであり得る。膜貫通ドメインは、膜貫通領域に隣接する1つまたは複数の追加のアミノ酸、例えば、膜貫通部分が由来するタンパク質の細胞外領域に関連する1つもしくは複数のアミノ酸(例えば、細胞外領域の1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、最大15個のアミノ酸)および/または膜貫通タンパク質が由来するタンパク質の細胞内領域に関連する1つもしくは複数の追加のアミノ酸(例えば、細胞内領域の1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、最大15個のアミノ酸)を含み得る。膜貫通ドメインは、CARの他のドメインのうちの1つに関連するものであり得る。一部の事例において、膜貫通ドメインは、例えば、受容体複合体の他のメンバーとの相互作用を最小限に抑えるために、そのようなドメインが同じかまたは異なる表面膜タンパク質の膜貫通ドメインと結合することを回避するように、選択され得るか、アミノ酸置換によって修飾され得る。一態様において、膜貫通ドメインは、CAR発現細胞の表面上の別のCARとホモ二量体化することができる。異なる態様において、膜貫通ドメインのアミノ酸配列は、同じCAR発現細胞に存在する天然の結合パートナーの結合性ドメインとの相互作用を最小限に抑えるように、修飾または置換され得る。本発明において特に有用な膜貫通ドメインには、少なくとも、例えば、T細胞受容体のアルファ鎖、ベータ鎖、またはゼータ鎖、CD28、CD27、CD3イプシロン、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154の膜貫通領域が含まれ得る。一部の実施形態において、膜貫通ドメインには、少なくとも、例えば、KIRDS2、OX40、CD2、CD27、LFA-1(CD11a、CD18)、ICOS(CD278)、4-1BB(CD137)、GITR、CD40、BAFFR、HVEM(LIGHTR)、SLAMF7、NKp80(KLRF1)、NKp44、NKp30、NKp46、CD160、CD19、IL2Rベータ、IL2Rガンマ、IL7R α、ITGA1、VLA1、CD49a、ITGA4、IA4、CD49D、ITGA6、VLA-6、CD49f、ITGAD、CD11d、ITGAE、CD103、ITGAL、CD11a、LFA-1、ITGAM、CD11b、ITGAX、CD11c、ITGB1、CD29、ITGB2、CD18、LFA-1、ITGB7、TNFR2、DNAM1(CD226)、SLAMF4(CD244、2B4)、CD84、CD96(Tactile)、CEACAM1、CRTAM、Ly9(CD229)、CD160(BY55)、PSGL1、CD100(SEMA4D)、SLAMF6(NTB-A、Ly108)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO-3)、BLAME(SLAMF8)、SELPLG(CD162)、LTBR、PAG/Cbp、NKG2D、NKG2Cの膜貫通領域が含まれ得る。
【0183】
一部の事例において、膜貫通ドメインは、ヒンジ、例えば、ヒトタンパク質由来のヒンジを介して、CARの細胞外領域、例えば、CARの抗原結合性ドメインに、結合することができる。例えば、一実施形態において、ヒンジは、ヒトIg(免疫グロブリン)ヒンジ(例えば、IgG4ヒンジ、IgDヒンジ)、GSリンカー(例えば、本明細書に記載されるGSリンカー)、KIR2DS2ヒンジ、またはCD8aヒンジであり得る。一実施形態において、ヒンジまたはスペーサーは、配列番号4のアミノ酸配列を含む(例えば、それからなる)。一態様において、膜貫通ドメインは、配列番号12の膜貫通ドメインを含む(例えば、それからなる)。
【0184】
ある特定の実施形態において、コードされる膜貫通ドメインは、配列番号12のアミノ酸配列の少なくとも1つ、2つ、もしくは3つの修飾を有するが、20個を上回る、10個を上回る、もしくは5個を上回る修飾は有さない、CD8膜貫通ドメインのアミノ酸配列、または配列番号12のアミノ酸配列に95~99%の同一性を有する配列を含む。一実施形態において、コードされる膜貫通ドメインは、配列番号12の配列を含む。
【0185】
他の実施形態において、CARをコードする核酸分子は、例えば、配列番号13の配列またはそれに95~99%の同一性を有する配列を含む、CD8膜貫通ドメインのヌクレオチド配列を含む。
【0186】
ある特定の実施形態において、コードされる抗原結合性ドメインは、ヒンジ領域によって膜貫通ドメインに接続される。一実施形態において、コードされるヒンジ領域は、CD8ヒンジ、例えば、配列番号4のアミノ酸配列、またはIgG4ヒンジ、例えば、配列番号6のアミノ酸配列、または配列番号4もしくは6に95~99%の同一性を有する配列を含む。他の実施形態において、ヒンジ領域をコードする核酸配列は、それぞれがCD8ヒンジもしくはIgG4ヒンジに対応する、配列番号5もしくは配列番号7の配列、または配列番号5もしくは7に95~99%の同一性を有する配列を含む。
【0187】
一態様において、ヒンジまたはスペーサーは、IgG4ヒンジを含む。例えば、一実施形態において、ヒンジまたはスペーサーは、以下のアミノ酸配列のヒンジを含む。
ESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGKM(配列番号6)。一部の実施形態において、ヒンジまたはスペーサーは、以下のヌクレオチド配列によってコードされるヒンジを含む。
【0188】
【化1】
【0189】
一態様において、ヒンジまたはスペーサーは、IgDヒンジを含む。例えば、一実施形態において、ヒンジまたはスペーサーは、以下のアミノ酸配列のヒンジを含む。
RWPESPKAQASSVPTAQPQAEGSLAKATTAPATTRNTGRGGEEKKKEKEKEEQEERETKTPECPSHTQPLGVYLLTPAVQDLWLRDKATFTCFVVGSDLKDAHLTWEVAGKVPTGGVEEGLLERHSNGSQSQHSRLTLPRSLWNAGTSVTCTLNHPSLPPQRLMALREPAAQAPVKLSLNLLASSDPPEAASWLLCEVSGFSPPNILLMWLEDQREVNTSGFAPARPPPQPGSTTFWAWSVLRVPAPPSPQPATYTCVVSHEDSRTLLNASRSLEVSYVTDH(配列番号8)。一部の実施形態において、ヒンジまたはスペーサーは、以下のヌクレオチド配列によってコードされるヒンジを含む。
【0190】
【化2】
【0191】
一態様において、膜貫通ドメインは、組換えであってもよく、その場合は、主として、ロイシンおよびバリンなどの疎水性残基を含む。一態様において、フェニルアラニン、トリプトファン、およびバリンのトリプレットが、組換え膜貫通ドメインの各末端に見出され得る。
【0192】
任意選択で、長さが2~10個のアミノ酸である短いオリゴペプチドリンカーまたはポリペプチドリンカーが、CARの膜貫通ドメインと細胞質領域との間の連結部を形成し得る。グリシン-セリンのダブレットが、特に好適なリンカーをもたらす。例えば、一態様において、リンカーは、アミノ酸配列GGGGSGGGGS(配列番号10)を含む。一部の実施形態において、リンカーは、ヌクレオチド配列GGTGGCGGAGGTTCTGGAGGTGGAGGTTCC(配列番号11)によってコードされる。
【0193】
一態様において、ヒンジまたはスペーサーは、KIR2DS2ヒンジを含む。
【0194】
シグナル伝達ドメイン
CARは、細胞外抗原結合性ドメインのリガンドへの結合に応答して、1つまたは複数の細胞内シグナル伝達経路を活性化および/または阻害し得る、1つまたは複数の細胞内シグナル伝達ドメインを含み得る。一部の事例において、細胞内シグナル伝達ドメインは、免疫応答を誘導することが可能であり得る。例えば、T細胞によって発現されるCARの細胞内シグナル伝達ドメインは、抗原結合性ドメインが目的とされるその同種標的分子に結合すると、T細胞の活性化を誘導し得る。
【0195】
細胞内シグナル伝達ドメインを有する本発明の実施形態において、そのようなドメインは、例えば、一次シグナル伝達ドメインおよび/または共刺激シグナル伝達ドメインのうちの1つまたは複数を含み得る。一部の実施形態において、細胞内シグナル伝達ドメインは、一次シグナル伝達ドメインをコードする配列を含む。一部の実施形態において、細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激シグナル伝達ドメインを含む。一部の実施形態において、細胞内シグナル伝達ドメインは、一次シグナル伝達ドメインおよび共刺激シグナル伝達ドメインを含む。
【0196】
本発明のCARの細胞質部分内の細胞内シグナル伝達配列は、ランダムな順序または特定の順序で互いに連結され得る。任意選択で、例えば、長さが2~10個のアミノ酸(例えば、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個のアミノ酸)である短いオリゴペプチドリンカーまたはポリペプチドリンカーが、細胞内シグナル伝達配列間の連結部を形成してもよい。一実施形態において、グリシン-セリンのダブレットが、好適なリンカーとして使用され得る。一実施形態において、単一のアミノ酸、例えば、アラニン、グリシンが、好適なリンカーとして使用され得る。
【0197】
一態様において、細胞内シグナル伝達ドメインは、2つ以上、例えば、2つ、3つ、4つ、5つ、またはそれ以上の共刺激シグナル伝達ドメインを含むように設計される。ある実施形態において、2つ以上、例えば、2つ、3つ、4つ、5つ、またはそれ以上の共刺激シグナル伝達ドメインは、リンカー分子、例えば、本明細書に記載されるリンカー分子によって分離されている。一実施形態において、細胞内シグナル伝達ドメインは、2つの共刺激シグナル伝達ドメインを含む。一部の実施形態において、リンカー分子は、グリシン残基である。一部の実施形態において、リンカーは、アラニン残基である。
【0198】
一次シグナル伝達ドメイン
一次シグナル伝達ドメインは、刺激様式または阻害様式のいずれかでTCR複合体の一次活性化を制御する。刺激様式で作用する一次細胞内シグナル伝達ドメインは、免疫受容体活性化チロシンモチーフまたはITAMとして公知のシグナル伝達モチーフを含み得る。
【0199】
本発明において特に有用なITAMを含む一次細胞内シグナル伝達ドメインの例としては、CD3ゼータ、一般的なFcRガンマ(FCER1G)、FcガンマRIIa、FcRベータ(FcイプシロンR1b)、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD79a、CD79b、DAP10、およびDAP12が挙げられる。一実施形態において、本発明のCARは、細胞内シグナル伝達ドメイン、例えば、CD3-ゼータの一次シグナル伝達ドメインを含む。
【0200】
一実施形態において、コードされる一次シグナル伝達ドメインは、CD3ゼータの機能的シグナル伝達ドメインを含む。コードされるCD3ゼータ一次シグナル伝達ドメインは、配列番号18もしくは配列番号20のアミノ酸配列の少なくとも1つ、2つ、もしくは3つの修飾を有するが、20個を上回る、10個を上回る、もしくは5個を上回る修飾は有さないアミノ酸配列、または配列番号18もしくは配列番号20のアミノ酸配列に95~99%の同一性を有する配列を含み得る。一部の実施形態において、コードされる一次シグナル伝達ドメインは、配列番号18または配列番号20の配列を含む。他の実施形態において、一次シグナル伝達ドメインをコードする核酸配列は、配列番号19もしくは配列番号21の配列、またはそれに95~99%の同一性を有する配列を含む。
【0201】
共刺激シグナル伝達ドメイン
一部の実施形態において、コードされる細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激シグナル伝達ドメインを含む。例えば、細胞内シグナル伝達ドメインは、一次シグナル伝達ドメインおよび共刺激シグナル伝達ドメインを含み得る。一部の実施形態において、コードされる共刺激シグナル伝達ドメインは、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83に特異的に結合するリガンド、CDS、ICAM-1、GITR、BAFFR、HVEM(LIGHTR)、SLAMF7、NKp80(KLRF1)、CD160、CD19、CD4、CD8アルファ、CD8ベータ、IL2Rベータ、IL2Rガンマ、IL7Rアルファ、ITGA4、VLA1、CD49a、ITGA4、IA4、CD49D、ITGA6、VLA-6、CD49f、ITGAD、CD11d、ITGAE、CD103、ITGAL、CD11a、LFA-1、ITGAM、CD11b、ITGAX、CD11c、ITGB1、CD29、ITGB2、CD18、LFA-1、ITGB7、TNFR2、TRANCE/RANKL、DNAM1(CD226)、SLAMF4(CD244、2B4)、CD84、CD96(Tactile)、CEACAM1、CRTAM、Ly9(CD229)、CD160(BY55)、PSGL1、CD100(SEMA4D)、CD69、SLAMF6(NTB-A、Ly108)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO-3)、BLAME(SLAMF8)、SELPLG(CD162)、LTBR、LAT、GADS、SLP-76、PAG/Cbp、NKp44、NKp30、NKp46、またはNKG2Dのうちの1つまたは複数から選択されるタンパク質の機能的シグナル伝達ドメインを含む。
【0202】
ある特定の実施形態において、コードされる共刺激シグナル伝達ドメインは、配列番号14もしくは配列番号16のアミノ酸配列の少なくとも1つ、2つ、もしくは3つの修飾を有するが、20個を上回る、10個を上回る、もしくは5個を上回る修飾は有さないアミノ酸配列、または配列番号14もしくは配列番号16のアミノ酸配列に95~99%の同一性を有する配列を含む。一実施形態において、コードされる共刺激シグナル伝達ドメインは、配列番号14または配列番号16の配列を含む。他の実施形態において、共刺激シグナル伝達ドメインをコードする核酸配列は、配列番号15もしくは配列番号17の配列、またはそれに95~99%の同一性を有する配列を含む。
【0203】
他の実施形態において、コードされる細胞内ドメインは、配列番号14または配列番号16の配列および配列番号18または配列番号20の配列を含み、細胞内シグナル伝達ドメインを構成する配列は、同じフレーム内で単一のポリペプチド鎖として発現される。
【0204】
ある特定の実施形態において、細胞内シグナル伝達ドメインをコードする核酸配列は、配列番号15もしくは配列番号17の配列またはそれに95~99%の同一性を有する配列、および配列番号19もしくは配列番号21の配列またはそれに95~99%の同一性を有する配列を含む。
【0205】
一部の実施形態において、核酸分子は、さらに、リーダー配列をコードする。一実施形態において、リーダー配列は、配列番号2の配列を含む。
【0206】
一態様において、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3-ゼータのシグナル伝達ドメインおよびCD28のシグナル伝達ドメインを含むように設計される。一態様において、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3-ゼータのシグナル伝達ドメインおよび4-1BBのシグナル伝達ドメインを含むように設計される。一態様において、4-1BBのシグナル伝達ドメインは、配列番号14のシグナル伝達ドメインである。一態様において、CD3ゼータのシグナル伝達ドメインは、配列番号18のシグナル伝達ドメインである。
【0207】
一態様において、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3-ゼータのシグナル伝達ドメインおよびCD27のシグナル伝達ドメインを含むように設計される。一態様において、CD27のシグナル伝達ドメインは、QRRKYRSNKGESPVEPAEPCRYSCPREEEGSTIPIQEDYRKPEPACSP(配列番号16)のアミノ酸配列を含む。一態様において、CD27のシグナル伝達ドメインは、以下の核酸配列によってコードされる。
AGGAGTAAGAGGAGCAGGCTCCTGCACAGTGACTACATGAACATGACTCCCCGCCGCCCCGGGCCCACCCGCAAGCATTACCAGCCCTATGCCCCACCACGCGACTTCGCAGCCTATCGCTCC(配列番号17)。
【0208】
CAR発現のための宿主細胞
上述のように、一部の態様において、本発明は、本明細書に記載される核酸分子、CARポリペプチド分子、またはベクターを含む、細胞、例えば、免疫エフェクター細胞(例えば、細胞集団、例えば、免疫エフェクター細胞集団)に関する。
【0209】
本開示のある特定の態様において、免疫エフェクター細胞、例えば、T細胞は、Ficoll(商標)分離など、当業者に公知の任意の多数の技法を使用して、対象から採取された血液単位から得ることができる。1つの好ましい態様において、個体の循環血液由来の細胞は、アフェレーシスによって得られる。アフェレーシス産物は、典型的に、T細胞、単球、顆粒球、B細胞を含むリンパ球、他の有核白血球、赤血球、および血小板を含有する。一態様において、アフェレーシスによって収集された細胞を洗浄して、血漿画分を除去し、任意選択で、後続の処理ステップに適した緩衝液または培地に入れてもよい。一実施形態において、細胞は、リン酸緩衝食塩水(PBS)で洗浄される。代替的な実施形態において、洗浄溶液は、カルシウムを含まず、かつマグネシウム不含であり得るか、またはすべてではないものの多くの二価カチオン不含であり得る。
【0210】
カルシウム不在下における初期活性化ステップにより、活性化の拡大をもたらされ得る。当業者には容易に理解されるように、洗浄ステップは、半自動化「フロースルー」遠心分離機(例えば、Cobe 2991細胞処理装置、Baxter CytoMate、またはHaemonetics Cell Saver 5)を製造業者の説明書に従って使用するなど、当業者に公知の方法によって達成され得る。洗浄後、細胞を、例えば、Ca不含、Mg不含PBS、PlasmaLyte A、または緩衝液ありもしくはなしの他の生理食塩水など、様々な生体適合性緩衝液中に再懸濁させてもよい。あるいは、アフェレーシスサンプルの望ましくない成分を除去し、細胞を培養培地中に直接再懸濁してもよい。
【0211】
本出願の方法は、5%以下、例えば、2%のヒトAB血清を含む培養培地条件を用いることができ、公知の培養培地条件および組成、例えば、Smith et al., "Ex vivo expansion of human T cells for adoptive immunotherapy using the novel Xeno-free CTS Immune Cell Serum Replacement" Clinical & Translational Immunology (2015) 4, e31; doi:10.1038/cti.2014.31に記載されているものを採用し得ることが理解される。
【0212】
一態様において、T細胞は、赤血球を溶解させ、例えば、PERCOLL(商標)勾配遠心分離または向流遠心分離溶出により単球を枯渇させることによって、末梢血リンパ球から単離される。
【0213】
本明細書に記載される方法は、例えば、例として本明細書に記載される、例えば、ネガティブセレクション技法を使用して、免疫エフェクター細胞、例えば、T細胞の特定の部分集団(制御性T細胞枯渇集団、CD25+枯渇細胞である)を選択することを含み得る。好ましくは、制御性T細胞枯渇細胞の集団は、30%未満、25%未満、20%未満、15%未満、10%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満のCD25+細胞を含有する。
【0214】
一実施形態において、制御性T細胞、例えば、CD25+T細胞は、抗CD25抗体もしくはそのフラグメント、またはCD25結合性リガンドIL-2を使用して、集団から除去される。一実施形態において、抗CD25抗体もしくはそのフラグメント、またはCD25結合性リガンドは、基質、例えば、ビーズにコンジュゲートされているか、またはそれ以外の場合では基質、例えば、ビーズにコーティングされている。一実施形態において、抗CD25抗体またはそのフラグメントは、本明細書に記載される基質にコンジュゲートされている。
【0215】
一実施形態において、制御性T細胞、例えば、CD25+T細胞は、Miltenyi(商標)からのCD25枯渇試薬を使用して、集団から除去される。一実施形態において、細胞とCD25枯渇試薬との比は、1e7個の細胞に対して20uL、または1e7個の細胞に対して15uL、または1e7個の細胞に対して10uL、または1e7個の細胞に対して5uL、または1e7個の細胞に対して2.5uL、または1e7個の細胞に対して1.25uLである。一実施形態において、例えば、制御性T細胞、例えば、CD25+枯渇に関しては、5億個を上回る細胞/mlが使用される。さらなる態様において、6億個、7億個、8億個、または9億個の細胞/mlの細胞濃度が使用される。
【0216】
一実施形態において、枯渇させようとする免疫エフェクター細胞の集団には、約6×10個のCD25+T細胞が含まれる。他の態様において、枯渇させようとする免疫エフェクター細胞の集団には、約1×10~1×1010個、およびこれらの間の任意の整数値のCD25+T細胞が含まれる。一実施形態において、結果として得られる制御性T細胞枯渇細胞集団は、2×10個またはそれ未満の制御性T細胞、例えば、CD25+細胞(例えば、1×10個、5×10個、1×10個、5×10個、1×10個、またはそれ未満のCD25+細胞)を有する。
【0217】
一実施形態において、制御性T細胞、例えば、CD25+細胞は、CliniMACシステムを枯渇用チューブセット、例えば、チューブ162-01などとともに使用して、集団から除去される。一実施形態において、CliniMACシステムは、例えば、DEPLETION2.1などの枯渇設定で動作させる。
【0218】
特定の理論に束縛されることを望むものではないが、アフェレーシスの前またはCAR発現細胞産物の作製中に、対象における免疫細胞の負の制御因子のレベルを減少させること(例えば、望ましくない免疫細胞、例えば、TREG細胞の数を減少させること)により、対象の再発の危険性が低減され得る。例えば、TREG細胞を枯渇させる方法は、当該技術分野において公知である。TREG細胞を減少させる方法としては、シクロホスファミド、抗GITR抗体(本明細書に記載される抗GITR抗体)、CD25枯渇、およびこれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0219】
一部の実施形態において、作製方法は、CAR発現細胞の作製前に、TREG細胞の数を減少させるステップ(例えば、枯渇させるステップ)を含む。例えば、作製方法は、例えば、CAR発現細胞(例えば、T細胞、NK細胞)産物の作製前に、TREG細胞を枯渇させるために、サンプル、例えば、アフェレーシスサンプルを、抗GITR抗体および/または抗CD25抗体(またはそのフラグメントもしくはCD25結合性リガンド)と接触させるステップを含む。
【0220】
ある実施形態において、対象は、CAR発現細胞産物作製のための細胞を収集する前に、TREG細胞を低減させる1つまたは複数の治療法による予備処置を受け、それによって、CAR発現細胞治療に対する対象の再発の危険性を減少させる。ある実施形態において、TREG細胞を減少させる方法としては、対象へのシクロホスファミド、抗GITR抗体、CD25枯渇、またはこれらの組合せのうちの1つまたは複数の投与が挙げられるが、これらに限定されない。シクロホスファミド、抗GITR抗体、CD25枯渇、またはこれらの組合せのうちの1つまたは複数の投与は、CAR発現細胞産物の注入の前、最中、またはその後に起こり得る。
【0221】
ある実施形態において、対象は、CAR発現細胞産物作製のための細胞を収集する前に、シクロホスファミドによる予備処置を受け、それによって、CAR発現細胞治療に対する対象の再発の危険性を減少させる。ある実施形態において、対象は、CAR発現細胞産物作製のための細胞を収集する前に、抗GITR抗体で予備処置を受け、それによって、CAR発現細胞治療に対する対象の再発の危険性を減少させる。
【0222】
一実施形態において、除去しようとする細胞集団は、制御性T細胞でも腫瘍細胞でもなく、除去しなければCART細胞の増殖および/または機能に負の影響を及ぼす細胞、例えば、CD14、CD11b、CD33、CD15、または可能性として免疫抑制細胞によって発現される他のマーカーを発現する細胞である。一実施形態において、このような細胞は、制御性T細胞および/または腫瘍細胞と同時に、または該枯渇の後に、または別の順序で、除去されることが想定される。
【0223】
本明細書に記載される方法は、1つを上回る選択ステップ、例えば、1つを上回る枯渇ステップを含み得る。ネガティブセレクションによるT細胞集団の濃縮は、例えば、ネガティブセレクションが行われる細胞に固有な表面マーカーに指向される抗体の組合せにより達成することができる。1つの方法は、ネガティブセレクションが行われる細胞上に存在する細胞表面マーカーに対するモノクローナル抗体のカクテルを使用する、負の磁気免疫付着またはフローサイトメトリーによる細胞のソーティングおよび/または選択である。例えば、ネガティブセレクションによりCD4+細胞を濃縮するために、モノクローナル抗体カクテルは、CD14、CD20、CD11b、CD16、HLA-DR、およびCD8に対する抗体を含み得る。
【0224】
本明細書に記載される方法はさらに、腫瘍抗原、例えば、例としてCD19、CD30、CD38、CD123、CD20、CD14、またはCD11bである腫瘍抗原を発現する細胞を、CD25を含まない集団から除去して、それによって、CAR、例えば、本明細書に記載されるCARの発現に好適な制御性T細胞枯渇、例えば、CD25+枯渇かつ腫瘍抗原枯渇の細胞集団を得るステップを含み得る。一実施形態において、腫瘍抗原発現細胞は、制御性T細胞、例えば、CD25+細胞と同時に除去される。例えば、抗CD25抗体もしくはそのフラグメント、および抗腫瘍抗原抗体もしくはそのフラグメントは、同じ基質、例えば、ビーズに付着させることができ、これを使用して細胞を除去してもよく、あるいは抗CD25抗体もしくはそのフラグメント、または抗腫瘍抗原抗体もしくはそのフラグメントは、別個のビーズに付着させることができ、それらの混合物を使用して細胞を除去してもよい。他の実施形態において、制御性T細胞、例えば、CD25+細胞の除去、および腫瘍抗原発現細胞の除去は、逐次的であり、例えば、いずれかの順序で起こり得る。
【0225】
チェックポイント阻害剤、例えば、本明細書に記載されるチェックポイント阻害剤を発現する細胞、例えば、PD1+細胞、LAG3+細胞、およびTIM3+細胞のうちの1つまたは複数を、集団から除去して、それによって、制御性T細胞枯渇、例えば、CD25+枯渇かつチェックポイント阻害剤枯渇の細胞、例えば、PD1+、LAG3+、および/またはTIM3+枯渇の細胞集団を得るステップを含む、方法もまた、提供される。例示的なチェックポイント阻害剤としては、B7-H1、B7-1、CD160、P1H、2B4、PD1、TIM3、CEACAM(例えば、CEACAM-1、CEACAM-3、および/またはCEACAM-5)、LAG3、TIGIT、CTLA-4、BTLA、およびLAIR1が挙げられる。一実施形態において、チェックポイント阻害剤発現細胞は、制御性T細胞、例えば、CD25+細胞と同時に除去される。例えば、抗CD25抗体もしくはそのフラグメント、および抗チェックポイント阻害剤抗体もしくはそのフラグメントは、同じビーズに付着させることができ、これを使用して細胞を除去してもよく、または抗CD25抗体もしくはそのフラグメント、および抗チェックポイント阻害剤抗体もしくはそのフラグメントは、別個のビーズに付着させることができ、それらの混合物を使用して細胞を除去してもよい。他の実施形態において、制御性T細胞、例えば、CD25+細胞の除去、およびチェックポイント阻害剤発現細胞の除去は、逐次的であり、例えば、いずれかの順序で起こり得る。
【0226】
本明細書に記載される方法は、ポジティブセレクションステップを含み得る。例えば、T細胞は、所望されるT細胞のポジティブセレクションに十分な期間、抗CD3/抗CD28(例えば、3×28)コンジュゲートビーズ、例えば、DYNABEADS(登録商標)M-450 CD3/CD28 Tとともにインキュベートすることによって、単離することができる。一実施形態において、この期間は、約30分間である。さらなる実施形態において、この期間は、30分間~36時間またはそれ以上、ならびにこれらの間のすべての整数値の範囲にわたる。さらなる実施形態において、この期間は、少なくとも1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、または6時間である。さらに別の実施形態において、この期間は、10~24時間、例えば、24時間である。腫瘍組織からまたは免疫無防備状態の個体から腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を単離するなど、他の細胞型と比較して存在するT細胞がわずかである任意の状況では、T細胞を単離するために、より長いインキュベーション時間を使用してもよい。さらに、より長いインキュベーション時間を使用することで、CD8+T細胞の捕捉効率が増加し得る。したがって、単純にT細胞をCD3/CD28ビーズに結合させる時間を短縮もしくは延長することにより、および/またはビーズとT細胞との比を増加もしくは減少させることにより(本明細書でさらに説明される)、T細胞の部分集団は、培養開始時もしくはプロセス中の他の時点で、いずれにも優先的に選択することができる。加えて、ビーズまたは他の表面上の抗CD3抗体および/または抗CD28抗体の比を増加または減少させることにより、T細胞の部分集団は、培養開始時または他の所望される時点で、いずれにも優先的に選択するこができる。
【0227】
一実施形態において、IFN-γ、TNFα、IL-17A、IL-2、IL-3、IL-4、GM-CSF、IL-10、IL-13、グランザイムB、およびパーフォリン、または他の適切な分子、例えば、他のサイトカインのうちの1つまたは複数を発現するT細胞集団が、選択され得る。細胞発現に関してスクリーニングするための方法は、例えば、PCT国際公開第2013/126712号パンフレットに記載されている方法によって決定され得る。
【0228】
所望される細胞集団をポジティブセレクションまたはネガティブセレクションによって単離するために、細胞および表面(例えば、ビーズなどの粒子)の濃度を変化させることができる。ある特定の態様において、細胞およびビーズを確実に最大限に接触させるために、ビーズおよび細胞を一緒に混合する体積を大幅に減少させる(例えば、細胞の濃度を増加させる)ことが望ましい場合がある。例えば、一態様において、100億個の細胞/ml、90億個/ml、80億個/ml、70億個/ml、60億個/ml、または50億個/mlの濃度が使用される。一態様において、10億個の細胞/mlの濃度が使用される。さらなる一態様において、7500万個、8000万個、8500万個、9000万個、9500万個、または1億個の細胞/mlの濃度が使用される。さらなる態様において、1億2500万個または1億5000万個の細胞/mlの濃度が使用され得る。
【0229】
高い濃度を使用することにより、細胞収率、細胞活性化、および細胞増殖の増加をもたらすことができる。さらに、高い細胞濃度を使用することにより、CD28陰性T細胞など、目的の標的抗原を微弱に発現し得る細胞、または多数の腫瘍細胞が存在するサンプル(例えば、白血病血、腫瘍組織など)からの、より効率的な捕捉が可能となる。このような細胞集団は、治療的価値を有し得るため、得ることが望ましいであろう。例えば、高い細胞濃度を使用することにより、通常、微弱なCD28発現を有するCD8+T細胞のより効率的な選択が可能となる。
【0230】
関連する態様において、より低い細胞濃度を使用することが望ましい場合がある。T細胞および表面(例えば、ビーズなどの粒子)の混合物を大幅に希釈することにより、粒子と細胞との間の相互作用が最小限に抑えられる。これは、これらの粒子に結合する所望される抗原を多量に発現する細胞に選択される。例えば、CD4+T細胞は、より高いレベルのCD28を発現し、希釈濃度ではCD8+T細胞よりも効率的に捕捉される。一態様において、使用される細胞の濃度は、5×10/mlである。他の態様において、使用される濃度は、約1×10/ml~1×10/ml、およびこれらの間の任意の整数値であり得る。
【0231】
他の態様において、細胞は、2~10℃または室温のいずれかで、様々な速度で様々な長さの期間、ローテーター上でインキュベートしてもよい。
【0232】
また、刺激のためのT細胞を、洗浄ステップの後に凍結させてもよい。理論に束縛されることを望むものではなく、凍結ステップおよび後続の解凍ステップは、細胞集団中の顆粒球およびある程度の単球を除去することによって、より均一な生成物をもたらす。洗浄ステップにより血漿および血小板を除去した後、細胞を、凍結溶液中に懸濁させてもよい。多くの凍結溶液およびパラメーターが当該技術分野において公知あり、この文脈において有用であるが、1つの方法としては、20%DMSOおよび8%ヒト血清アルブミンを含有するPBS、または10%デキストラン40および5%デキストロース、20%ヒト血清アルブミンおよび7.5%DMSO、もしくは31.25%Plasmalyte-A、31.25%デキストロース5%、0.45%NaCl、10%デキストラン40および5%デキストロース、20%ヒト血清アルブミンおよび7.5%DMSOを含有する培養培地、または例えばHespanおよびPlasmaLyte Aを含有する他の好適な細胞凍結培地の使用を伴い、細胞は、次いで、1分間当たり1°の速度で-80℃に凍結され、液体窒素貯蔵タンクの蒸気相で保管される。他の制御された凍結方法が、-20℃または液体窒素中での制御されない即時凍結と同様に使用され得る。
【0233】
ある特定の態様において、凍結保存細胞は、本明細書に記載されるように解凍し、洗浄して、室温で1時間静置させた後、本発明の方法を使用して活性化させる。
【0234】
本明細書に記載される増殖細胞が必要となり得る前の時点における、対象からの血液サンプルまたはアフェレーシス産物の収集もまた、本発明の文脈において企図される。そのため、増殖させようとする細胞の供給源は、任意の必要な時点で収集することができ、所望される細胞、例えば、T細胞を、本明細書に記載されるものなどの免疫エフェクター細胞療法により利益が得られるであろう任意の多数の疾患または状態のための免疫エフェクター細胞療法における今後の使用のために単離し、凍結させることができる。一態様において、血液サンプルまたはアフェレーシスは、全般的に健常な対象から取得される。ある特定の態様において、血液サンプルまたはアフェレーシスは、疾患を発症する危険性があるが、まだ疾患を発症していない、全般的に健常な対象から取得され、今後の使用のために目的の細胞を単離し、凍結させる。ある特定の態様において、T細胞を、増殖させ、凍結させ、後の時点で使用してもよい。ある特定の態様において、サンプルは、本明細書に記載される特定の疾患の診断直後であるが、いかなる治療よりも前に、患者から収集される。さらなる態様において、細胞は、ナタリズマブ、エファリズマブ、抗ウイルス剤、化学療法、照射、免疫抑制剤、例えば、シクロスポリン、アザチオプリン、メトトレキサート、ミコフェノレート、およびFK506、抗体、または他の免疫除去剤、例えば、CAMPATH、抗CD3抗体、シトキサン、フルダラビン、シクロスポリン、FK506、ラパマイシン、ミコフェノール酸、ステロイド、FR901228、ならびに放射線照射など、作用物質での治療を含むがこれらに限定されない、任意の多数の関連する治療モダリティの前に、対象由来の血液サンプルまたはアフェレーシスから単離される。
【0235】
本発明のさらなる態様において、T細胞は、対象に機能性T細胞を残す治療の直後に、患者から得られる。この点に関して、ある特定のがん治療の後、特に、免疫系を損傷する薬物での治療の後は、患者が通常であれば治療から回復している最中であろう治療後間もない時点で、得られるT細胞の品質が、エキソビボで増殖する能力の点で最適であり得るか、または向上している可能性があることが、観察されている。同様に、本明細書に記載される方法を使用したエキソビボ操作後には、これらの細胞は、生着強化およびインビボ増殖に好ましい状態であり得る。したがって、この回復段階中に、T細胞、樹状細胞、または他の造血系細胞を含む、血液細胞を収集することが、本発明の文脈において企図される。さらに、ある特定の態様において、動員(例えば、GM-CSFでの動員)および調整レジメンを使用して、特定の細胞型の再増殖、再循環、再生成、および/または増殖にとって有利な状態を、特に、治療法の後の所定の時間枠の間に、対象において作り出すことができる。例示的な細胞型としては、T細胞、B細胞、樹状細胞、および他の免疫系細胞が挙げられる。
【0236】
一実施形態において、CAR分子、例えば、本明細書に記載されるCAR分子を発現する免疫エフェクター細胞は、低い免疫強化用量のmTOR阻害剤を受容した対象から得られる。ある実施形態において、CARを発現するように操作しようとする免疫エフェクター細胞、例えば、T細胞の集団は、対象におけるかまたは対象から採取されたPD1陰性免疫エフェクター細胞、例えば、T細胞のレベル、またはPD1陰性免疫エフェクター細胞、例えば、T細胞/PD1陽性免疫エフェクター細胞、例えば、T細胞の比が、少なくとも一過的に増加した状態となるように、低い免疫強化用量のmTOR阻害剤から十分な時間の後、またはその十分な投薬の後に、採取される。
【0237】
他の実施形態において、CARを発現するように操作されているか、またはこれから操作される免疫エフェクター細胞、例えば、T細胞の集団は、PD1陰性免疫エフェクター細胞、例えば、T細胞の数を増加させるか、またはPD1陰性免疫エフェクター細胞、例えば、T細胞/PD1陽性免疫エフェクター細胞、例えば、T細胞の比を増加させる量のmTOR阻害剤と接触させることによって、エキソビボで処置することができる。
【0238】
一実施形態において、T細胞集団は、ジアグリセロールキナーゼ(DGK)が欠損している。DGK欠損細胞には、DGK RNAもしくはタンパク質を発現しないか、またはDGK活性が低減もしくは阻害されている、細胞が含まれる。DGK欠損細胞は、遺伝学的アプローチによって、例えば、RNA干渉剤、例えば、siRNA、shRNA、miRNAを投与して、DGK発現を低減または防止することによって、生成することができる。あるいは、DGK欠損細胞は、本明細書に記載されるDGK阻害剤での処置によって生成することができる。
【0239】
一実施形態において、T細胞集団は、Ikarosが欠損している。Ikaros欠損細胞には、Ikaros RNAもしくはタンパク質を発現しないか、またはIkaros活性が低減もしくは阻害されている細胞が含まれ、Ikaros欠損細胞は、遺伝学的アプローチによって、例えば、RNA干渉剤、例えば、siRNA、shRNA、miRNAを投与して、Ikaros発現を低減または防止することによって、生成することができる。あるいは、Ikaros欠損細胞は、Ikaros阻害剤、例えば、レナリドマイドでの処置によって生成することができる。
【0240】
複数の実施形態において、T細胞集団は、DGKが欠損しておりかつIkarosが欠損している、例えば、DGKおよびIkarosを発現しないか、またはDGK活性およびIkaros活性が低減もしくは阻害されている。このようなDGKおよびIkarosが欠損している細胞は、本明細書に記載される方法のうちのいずれかによって生成することができる。
【0241】
ある実施形態において、NK細胞は、対象から得られる。別の実施形態において、NK細胞は、NK細胞株、例えば、NK-92細胞株(Conkwest)である。
【0242】
発現されるさらなる作用物質
別の実施形態において、本明細書に記載されるCAR発現免疫エフェクター細胞は、さらに、別の作用物質、例えば、CAR発現細胞の活性を強化する作用物質を発現し得る。例えば、一実施形態において、作用物質は、阻害性分子を阻害する作用物質であり得る。阻害性分子の例としては、例えば、本明細書に記載される、PD-1、PD-L1、CTLA-4、TIM-3、CEACAM(例えば、CEACAM-1、CEACAM-3、および/またはCEACAM-5)、LAG-3、VISTA、BTLA、TIGIT、LAIR1、CD160、2B4、およびTGFRベータが挙げられる。一実施形態において、阻害性分子を阻害する作用物質は、第1のポリペプチド、例えば、阻害性分子が、正のシグナルを細胞に提供する第2のポリペプチド、例えば、本明細書に記載される細胞内シグナル伝達ドメインに会合したものを含む。一実施形態において、作用物質は、例えば、PD-1、PD-L1、CTLA-4、TIM-3、CEACAM(例えば、CEACAM-1、CEACAM-3、および/またはCEACAM-5)、LAG-3、VISTA、BTLA、TIGIT、LAIR1、CD160、2B4、もしくはTGFRベータなどの阻害性分子、またはこれらのうちのいずれかのフラグメントである、第1のポリペプチド、ならびに本明細書に記載される細胞内シグナル伝達ドメイン(例えば、共刺激ドメイン(例えば、例として本明細書に記載される41BB、CD27、またはCD28)および/または一次シグナル伝達ドメイン(例えば、本明細書に記載されるCD3ゼータシグナル伝達ドメインを含む)である、第2のポリペプチドを含む。一実施形態において、作用物質は、PD-1またはそのフラグメントである第1のポリペプチド、および本明細書に記載される細胞内シグナル伝達ドメイン(例えば、本明細書に記載されるCD28、CD27、OX40、または4-IBBシグナル伝達ドメインおよび/または本明細書に記載されるCD3ゼータシグナル伝達ドメイン)である第2のポリペプチドを含む。
【0243】
一実施形態において、本明細書に記載されるCAR発現免疫エフェクター細胞は、第2のCAR、例えば、例として同じ標的(例えば、上述の標的)または異なる標的に対する異なる抗原結合性ドメインを含む第2のCARをさらに含み得る。一実施形態において、第2のCARは、第1のCARの標的と同じがん細胞型に発現される標的に対する抗原結合性ドメインを含む。一実施形態において、CAR発現免疫エフェクター細胞は、第1の抗原を標的とし、共刺激シグナル伝達ドメインを有するが一次シグナル伝達ドメインを有さない細胞内シグナル伝達ドメインを含む、第1のCAR、ならびに第2の異なる抗原を標的とし、一次シグナル伝達ドメインを有するが共刺激シグナル伝達ドメインを有さない細胞内シグナル伝達ドメインを含む、第2のCARを含む。
【0244】
理論に束縛されることを望むものではないが、共刺激シグナル伝達ドメイン、例えば、4-1BB、CD28、CD27、またはOX-40を第1のCARに配置し、一次シグナル伝達ドメイン、例えば、CD3ゼータを第2のCARに配置することにより、CAR活性を、両方の標的が発現される細胞に限定することができる。一実施形態において、CAR発現免疫エフェクター細胞は、例えば、上述の標的を標的とする抗原結合性ドメイン、膜貫通ドメイン、および共刺激ドメインを含む第1のCAR、第1のCARによって標的とされる抗原以外の抗原(例えば、第1の標的と同じがん細胞型に発現される抗原)を標的とし、抗原結合性ドメイン、膜貫通ドメイン、および一次シグナル伝達ドメインを含む、第2のCARを含む。別の実施形態において、CAR発現免疫エフェクター細胞は、例えば、上述の標的を標的とする抗原結合性ドメイン、膜貫通ドメイン、および一次シグナル伝達ドメインを含む第1のCAR、ならびに第1のCARによって標的とされる抗原以外の抗原(例えば、第1の標的と同じがん細胞型に発現される抗原)を標的とし、その抗原に対する抗原結合性ドメイン、膜貫通ドメイン、および共刺激シグナル伝達ドメインを含む、第2のCARを含む。
【0245】
一実施形態において、CAR発現免疫エフェクター細胞は、本明細書に記載されるCAR、例えば、上述の標的に対するCAR、および阻害性CARを含む。一実施形態において、阻害性CARは、正常細胞、例えば、同様に標的を発現する正常細胞には見出されるががん細胞には見出されない抗原に結合する抗原結合性ドメインを含む。一実施形態において、阻害性CARは、抗原結合性ドメイン、膜貫通ドメイン、および阻害性分子の細胞内ドメインを含む。例えば、阻害性CARの細胞内ドメインは、PD1、PD-L1、CTLA-4、TIM-3、CEACAM(例えば、CEACAM-1、CEACAM-3、および/またはCEACAM-5)、LAG-3、VISTA、BTLA、TIGIT、LAIR1、CD160、2B4、またはTGFRベータの細胞内ドメインであり得る。
【0246】
一実施形態において、免疫エフェクター細胞(例えば、T細胞、NK細胞)は、本明細書に記載される腫瘍抗原に結合する抗原結合性ドメインを含む第1のCAR、およびPD1細胞外ドメインまたはそのフラグメントを含む第2のCARを含む。
【0247】
一実施形態において、細胞は、上述の阻害性分子をさらに含む。
【0248】
一実施形態において、細胞における第2のCARは、阻害性CARであり、阻害性CARは、抗原結合性ドメイン、膜貫通ドメイン、および阻害性分子の細胞内ドメインを含む。阻害性分子は、PD1、PD-L1、CTLA-4、TIM-3、LAG-3、VISTA、BTLA、TIGIT、LAIR1、CD160、2B4、TGFRベータ、CEACAM-1、CEACAM-3、およびCEACAM-5のうちの1つまたは複数から選択され得る。一実施形態において、第2のCAR分子は、PD1の細胞外ドメインまたはそのフラグメントを含む。
【0249】
実施形態において、細胞における第2のCAR分子は、一次シグナル伝達ドメインおよび/または細胞内シグナル伝達ドメインを含む、細胞内シグナル伝達ドメインをさらに含む。
【0250】
他の実施形態において、細胞における細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ゼータの機能性ドメインを含む一次シグナル伝達ドメイン、および4-1BBの機能性ドメインを含む共刺激シグナル伝達ドメインを含む。
【0251】
一実施形態において、細胞における第2のCAR分子は、配列番号26のアミノ酸配列を含む。
【0252】
ある特定の実施形態において、第1のCAR分子の抗原結合性ドメインは、scFvを含み、第2のCAR分子の抗原結合性ドメインは、scFvを含まない。例えば、第1のCAR分子の抗原結合性ドメインは、scFvを含み、第2のCAR分子の抗原結合性ドメインは、ラクダ科VHHドメインを含む。
【0253】
スプリットCAR
一部の実施形態において、CAR発現細胞は、スプリットCARを使用する。スプリットCARアプローチは、国際公開第2014/055442号パンフレットおよび同第2014/055657号パンフレットにおいてより詳細に記載されている。簡単に述べると、スプリットCAR系は、第1の抗原結合性ドメインおよび共刺激ドメイン(例えば、41BB)を有する第1のCARを発現する細胞を含み、この細胞はまた、第2の抗原結合性ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメイン(例えば、CD3ゼータ)を有する第2のCARも発現する。細胞が第1の抗原に遭遇すると、共刺激ドメインが活性化され、細胞が増殖する。細胞が第2の抗原に遭遇すると、細胞内シグナル伝達ドメインが活性化、細胞殺滅活性が開始される。したがって、CAR発現細胞は、両方の抗原の存在下でのみ完全に活性化される。
【0254】
複数のCAR発現
一態様において、本明細書に記載されるCAR発現細胞は、第2のCAR、例えば、例として同じ標的または異なる標的(例えば、本明細書に記載されるがん関連抗原以外の標的、または本明細書に記載される別のがん関連抗原)に対する異なる抗原結合性ドメインを含む第2のCARをさらに含み得る。一実施形態において、第2のCARは、がん関連抗原と同じがん細胞型に発現される標的に対する抗原結合性ドメインを含む。一実施形態において、CAR発現細胞は、第1の抗原を標的とし、共刺激シグナル伝達ドメインを有するが一次シグナル伝達ドメインを有さない細胞内シグナル伝達ドメインを含む、第1のCAR、ならびに第2の異なる抗原を標的とし、一次シグナル伝達ドメインを有するが共刺激シグナル伝達ドメインを有さない細胞内シグナル伝達ドメインを含む、第2のCARを含む。理論に束縛されることを望むものではないが、共刺激シグナル伝達ドメイン、例えば、4-1BB、CD28、CD27、またはOX-40を第1のCARに配置し、一次シグナル伝達ドメイン、例えば、CD3ゼータを第2のCARに配置することにより、CAR活性を、両方の標的が発現される細胞に限定することができる。一実施形態において、CAR発現細胞は、本明細書に記載される標的抗原に結合する抗原結合性ドメイン、膜貫通ドメイン、および共刺激ドメインを含む第1のがん関連抗原CAR、ならびに異なる標的抗原(例えば、第1の標的抗原と同じがん細胞型に発現される抗原)を標的とし、抗原結合性ドメイン、膜貫通ドメイン、および一次シグナル伝達ドメインを含む、第2のCARを含む。別の実施形態において、CAR発現細胞は、本明細書に記載される標的抗原に結合する抗原結合性ドメイン、膜貫通ドメイン、および一次シグナル伝達ドメインを含む第1のCAR、第1の標的抗原以外の抗原(例えば、第1の標的抗原と同じがん細胞型に発現される抗原)を標的とし、その抗原に対する抗原結合性ドメイン、膜貫通ドメイン、および共刺激シグナル伝達ドメインを含む、第2のCARを含む。
【0255】
一部の実施形態において、特許請求される発明は、第1のCARおよび第2のCARを含み、該第1のCAR、該第2CARのうちの一方の抗原結合性ドメインは、可変軽鎖ドメインおよび可変重鎖ドメインを含まない。一部の実施形態において、該第1のCAR、該第2のCARののうちの一方の抗原結合性ドメインは、scFvであり、他方は、scFvではない。一部の実施形態において、該第1のCAR、該第2のCARのうちの一方の抗原結合性ドメインは、単一VHドメイン、例えば、ラクダ、サメ、もしくはヤツメウナギの単一VHドメイン、またはヒトもしくはマウスの配列に由来する単一VHドメインを含む。一部の実施形態において、該第1のCAR、該第2のCARのうちの一方の抗原結合性ドメインは、ナノボディを含む。一部の実施形態において、該第1のCAR、該第2のCARのうちの一方の抗原結合性ドメインは、ラクダ科VHHドメインを含む。
【0256】
テロメラーゼ発現
いかなる理論によっても束縛されることを望むものではないが、一部の実施形態において、治療用T細胞は、T細胞における短縮されたテロメアに起因して、患者における存続性が短期的である。したがって、テロメラーゼ遺伝子のトランスフェクションにより、T細胞のテロメアを延長させ、患者におけるT細胞の存続性を改善することができる。Carl June, "Adoptive T cell therapy for cancer in the clinic", Journal of Clinical Investigation, 117:1466-1476 (2007)参照。したがって、ある実施形態において、免疫エフェクター細胞、例えば、T細胞は、テロメラーゼサブユニット、例えば、テロメラーゼの触媒性サブユニット、例えば、TERT、例えば、hTERTを異所的に発現する。一部の態様において、本開示は、CAR発現細胞を産生する方法であって、細胞を、テロメラーゼサブユニット、例えば、テロメラーゼの触媒性サブユニット、例えば、TERT、例えば、hTERTをコードする核酸と接触させるステップを含む、方法を提供する。細胞は、CARをコードするコンストラクトと接触させる前、それと同時に、またはその後で、核酸と接触させることができる。
【0257】
増殖および活性化
T細胞などの免疫エフェクター細胞は、一般に、例えば、それぞれ参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,352,694号明細書、同第6,534,055号明細書、同第6,905,680号明細書、同第6,692,964号明細書、同第5,858,358号明細書、同第6,887,466号明細書、同第6,905,681号明細書、同第7,144,575号明細書、同第7,067,318号明細書、同第7,172,869号明細書、同第7,232,566号明細書、同第7,175,843号明細書、同第5,883,223号明細書、同第6,905,874号明細書、同第6,797,514号明細書、同第6,867,041号明細書、および米国特許出願公開第20060121005号明細書に記載されている方法を使用して、活性化および増殖させることができ得る。
【0258】
一般に、免疫エフェクター細胞、例えば、制御性T細胞枯渇細胞の集団は、CD3/TCR複合体関連シグナルを刺激する作用物質およびT細胞の表面上の共刺激分子を刺激するリガンドを結合させた表面との接触によって、増殖させることができる。特に、T細胞集団は、本明細書に記載されるように、例えば、表面上に固定化された抗CD3抗体もしくはその抗原結合性フラグメント、または抗CD2抗体との接触によって、またはカルシウムイオノフォアと併せてタンパク質キナーゼC活性化因子(例えば、ブリオスタチン)との接触によって、刺激され得る。T細胞の表面上の補助分子の共刺激については、補助分子に結合するリガンドが使用される。例えば、T細胞の集団を、T細胞の増殖を刺激するのに適した条件下において、抗CD3抗体および抗CD28抗体と接触させてもよい。CD4+TまたはCD8+T細胞のいずれかの増殖を刺激するために、抗CD3抗体および抗CD28抗体が使用され得る。抗CD28抗体の例としては、9.3、B-T3、XR-CD28(Diaclone、Besancon、France)が挙げられ、当該技術分野において一般に公知の他の方法と同様に使用することができる(Berg et al., Transplant Proc. 30(8):3975-3977, 1998、Haanen et al., J. Exp. Med. 190(9):13191328, 1999、Garland et al., J. Immunol Meth. 227(1-2):53-63, 1999)。
【0259】
ある特定の態様において、T細胞の一次刺激シグナルおよび共刺激シグナルは、異なるプロトコルによって提供され得る。例えば、各シグナルを提供する作用物質は、溶液中のものであってもよく、または表面に結合していてもよい。表面に結合している場合、これらの作用物質は、同じ表面に連結されてもよく(すなわち、「シス」構成)または別個の表面に連結されてもよい(すなわち、「トランス」構成)。代替として、一方の作用物質が表面に結合しており、他方の作用物質が溶液中にあってもよい。一態様において、共刺激シグナルを提供する作用物質が、細胞表面に結合しており、一次活性化シグナルを提供する作用物質が、溶液中にあるかまたは表面に結合している。ある特定の態様において、両方の作用物質が溶液中にあってもよい。一態様において、作用物質は、可溶性形態であってもよく、次いで、表面、Fc受容体を発現する細胞、または作用物質に結合する抗体もしくは他の結合剤などに架橋されてもよい。この点に関しては、例えば、本発明においてT細胞の活性化および増殖での使用が企図される人工抗原提示細胞(aAPC)について、米国特許出願公開第20040101519号明細書および同第20060034810号明細書参照。
【0260】
一態様において、2種類の作用物質は、同じビーズに、すなわち「シス」、または別個のビーズに、すなわち「トランス」のいずれかで、ビーズに固定化される。例として、一次活性化シグナルを提供する作用物質は、抗CD3抗体またはその抗原結合性フラグメントであり、共刺激シグナルを提供する作用物質は、抗CD28抗体またはその抗原結合性フラグメントであり、これらの作用物質はいずれも、同等な分子数で同じビーズに共固定化される。一態様において、CD4+T細胞増殖およびT細胞成長のためにビーズに結合させる各抗体は1:1の比で使用される。本発明のある特定の態様において、ビーズに結合させる抗CD3抗体:抗CD28抗体の比は、1:1の比を使用して観察される増殖と比較してT細胞増殖に増加が観察されるようなものが使用される。1つの特定の態様において、1:1の比を使用して観察される増殖と比較して約1倍~約3倍の増加が観察される。一態様において、ビーズに結合させるCD3抗体:CD28抗体の比は、100:1~1:100の範囲およびこれらの間のすべての整数値に及ぶ。一態様において、抗CD3抗体よりも多くの抗CD28抗体を、粒子に結合させる、すなわち、CD3:CD28の比が1未満となる。ある特定の態様において、ビーズに結合させる抗CD28抗体と抗CD3抗体との比は、2:1よりも大きい。1つの特定の態様において、ビーズに結合させるCD3抗体:CD28抗体の比1:100が使用される。一態様において、ビーズに結合させるCD3抗体:CD28抗体の比1:75が使用される。さらなる態様において、ビーズに結合させるCD3抗体:CD28抗体の比1:50が使用される。一態様において、ビーズに結合させるCD3抗体:CD28抗体の比1:30が使用される。1つの好ましい態様において、ビーズに結合させるCD3抗体:CD28抗体の比1:10が使用される。一態様において、ビーズに結合させるCD3抗体:CD28抗体の比1:3が使用される。さらなる1つの態様において、ビーズに結合させるCD3抗体:CD28抗体の比3:1が使用される。
【0261】
T細胞または他の標的細胞を刺激するために、粒子と細胞との比1:500~500:1およびこれらの間の任意の整数値が使用され得る。当業者であれば容易に理解することができるように、粒子と細胞との比は、標的細胞に対する粒子のサイズに依存し得る。例えば、サイズの小さいビーズは、数個の細胞にしか結合することができないが、大きなビーズは、多数に結合することができる。ある特定の態様において、細胞と粒子との比は、1:100~100:1の範囲およびそれらの間の任意の整数値に及び、さらなる態様において、比は、1:9~9:1およびそれらの間の任意の整数値を含み、同様にT細胞を刺激するために使用することができる。T細胞刺激をもたらす、抗CD3および抗CD28が結合した粒子とT細胞との比は、上述のように多様であり得るが、ある特定の好ましい値としては、1:100、1:50、1:40、1:30、1:20、1:10、1:9、1:8、1:7、1:6、1:5、1:4、1:3、1:2、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、および15:1が挙げられ、1つの好ましい比は、T細胞1つ当たりの粒子が少なくとも1:1である。一態様において、粒子と細胞との比1:1またはそれ以下が使用される。1つの特定の態様において、粒子:細胞の好ましい比は、1:5である。さらなる態様において、粒子と細胞との比は、刺激の日に応じて多様であり得る。例えば、一態様において、粒子と細胞の比は、初日では1:1~10:1であり、その後最大10日間、毎日または1日おきにさらなる粒子が追加され、最終的な比は1:1~1:10である(追加日における細胞計数に基づく)。1つの特定の態様において、粒子と細胞との比は、刺激の初日では1:1であり、刺激の3日目および5日目に1:5に調節される。一態様において、粒子は、毎日または1日おきに追加され、最終的な比は、初日で1:1、ならびに刺激の3日目および5日目で1:5である。一態様において、粒子と細胞との比は、刺激の初日では2:1であり、刺激の3日目および5日目に1:10に調節される。一態様において、粒子は、毎日または1日おきに追加され、最終的な比は、初日で1:1、ならびに刺激の3日目および5日目で1:10である。当業者であれば、様々な他の比が、本発明における使用に好適であり得ることを理解するであろう。特に、比は、粒子のサイズならびに細胞のサイズおよび種類に応じて多様であろう。一態様において、使用するための最も典型的な比は、初日で1:1、2:1、および3:1付近である。
【0262】
さらなる態様において、細胞、例えばT細胞を、作用物質がコーティングされたビーズと合わせ、その後、ビーズと細胞を分離した後に、細胞を培養する。代替的な態様において、培養の前に、作用物質がコーティングされたビーズおよび細胞を分離するのではなく、一緒に培養する。さらなる態様において、ビーズおよび細胞を、まず、磁力などの力を印加することによって濃縮し、細胞表面マーカーのライゲーションの増加をもたらし、それによって、細胞刺激を誘導する。
【0263】
例として、抗CD3および抗CD28が結合した常磁性ビーズ(3×28ビーズ)をT細胞に接触させることによって、細胞表面タンパク質をライゲーションすることができる。一態様において、細胞(例えば、10~10個のT細胞)およびビーズ(例えば、DYNABEADS(登録商標)M-450 CD3/CD28 T常磁性ビーズ、1:1の比)を、緩衝液、例えば、PBS(カルシウムおよびマグネシウムなどの二価カチオンを含まない)中で合わせる。ここでも、当業者であれば、任意の細胞濃度が使用され得ることを容易に理解することができる。例えば、標的細胞が、サンプル中にほとんど見られず、サンプルのわずか0.01%を構成するだけでもよく、または全サンプル(すなわち、100%)が、目的の標的細胞で構成されてもよい。したがって、あらゆる細胞数が、本発明の文脈に含まれる。ある特定の態様において、細胞および粒子を確実に最大限に接触させるために、粒子および細胞を一緒に混合する体積を大幅に減少させる(すなわち、細胞濃度を増加させる)ことが望ましい場合がある。例えば、一態様において、約100億個の細胞/ml、90億個/ml、80億個/ml、70億個/ml、60億個/ml、50億個/ml、または20億個の細胞/mlの濃度が使用される。一態様において、1億個を上回る細胞/mlが、使用される。さらなる態様において、1000万個、1500万個、2000万個、2500万個、3000万個、3500万個、4000万個、4500万個、または5000万個の細胞/mlの細胞濃度が使用される。さらなる一態様において、7500万個、8000万個、8500万個、9000万個、9500万個、または1億個の細胞/mlの濃度が使用される。さらなる態様において、1億2500万個または1億5000万個の細胞/mlの濃度が使用され得る。高い濃度を使用することにより、細胞収率、細胞活性化、および細胞増殖の増加をもたらすことができる。さらに、高い細胞濃度を使用することにより、CD28陰性T細胞など、目的の標的抗原を微弱に発現し得る細胞のより効率的な捕捉が可能となる。このような細胞集団は、ある特定の態様において、治療的価値を有し得るため、得ることが望ましいであろう。例えば、高い細胞濃度を使用することにより、通常、微弱なCD28発現を有するCD8+T細胞のより効率的な選択が可能となる。
【0264】
一実施形態において、CAR、例えば、本明細書に記載されるCARをコードする核酸が形質導入された細胞を、例えば、本明細書に記載される方法によって、増殖させる。一実施形態において、細胞を、数時間(例えば、約2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、15時間、18時間、21時間)から約14日間(例えば、1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、または14日間)の期間、培養液中で増殖させる。一実施形態において、細胞を、4~9日間の期間、増殖させる。一実施形態において、細胞を、8日間またはそれ未満、例えば、7日間、6日間、または5日間の期間、増殖させる。一実施形態において、細胞を、5日間培養液中で増殖させ、その結果得られた細胞は、同じ培養条件下において9日間培養液中で増殖させた同じ細胞よりも強力である。効力は、例えば、様々なT細胞機能、例えば、増殖、標的細胞殺滅、サイトカイン産生、活性化、遊走、またはこれらの組合せによって、定義することができる。一実施形態において、細胞を5日間増殖させると、抗原刺激時に、同じ培養条件下において9日間培養液中で増殖させた同じ細胞と比較して、細胞倍増の少なくとも1倍、2倍、3倍、または4倍の増加を示す。一実施形態において、細胞を、5日間培養液中で増殖させ、その結果得られた細胞は、同じ培養条件下において9日間培養液中で増殖させた同じ細胞と比較して、より高い炎症促進性サイトカイン産生、例えば、IFN-γおよび/またはGM-CSFレベルを呈する。一実施形態において、5日間増殖させた細胞は、同じ培養条件下において9日間培養液中で増殖させた同じ細胞と比較して、pg/ml単位での炎症促進性サイトカイン産生、例えば、INF-γおよび/またはGM-CSFレベルの少なくとも1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、またはそれ以上の増加を示す。
【0265】
T細胞の培養時間が60日またはそれ以上となり得るように、複数サイクルの刺激が所望される場合もある。T細胞培養に適した条件としては、血清(例えば、ウシ胎児血清またはヒト血清)、インターロイキン-2(IL-2)、インスリン、IFN-γ、IL-4、IL-7、GM-CSF、IL-10、IL-12、IL-15、TGFβ、およびTNF-α、または当業者に公知の細胞の成長のための任意の他の添加物を含む、増殖および生存に必要な要素を含有し得る、適切な培地(例えば、最小必須培地またはRPMI培地1640またはX-vivo 15(Lonza))が挙げられる。細胞の成長のための他の添加物としては、界面活性剤、プラスマネート、および還元剤、例えば、N-アセチル-システインおよび2-メルカプトエタノールが挙げられるが、これらに限定されない。培地としては、アミノ酸、ピルビン酸ナトリウム、およびビタミンが添加された、血清不含であるか、または適切な量の血清(もしくは血漿)もしくは所定のセットのホルモンおよび/またはT細胞の成長および増殖に十分な量のサイトカインが補充された、RPMI 1640、AIM-V、DMEM、MEM、α-MEM、F-12、X-Vivo 15、およびX-Vivo 20、Optimizerを挙げることができる。抗生物質、例えば、ペニシリンおよびストレプトマイシンは、実験培養液にのみ含まれ、対象に注入される細胞培養液には含まれない。標的細胞は、成長を補助するのに必要な条件下、例えば、適切な温度(例えば、37℃)および雰囲気(例えば、空気に加えて5%CO)で維持される。
【0266】
一実施形態において、細胞は、1つまたは複数のインターロイキンを含む適切な培地(例えば、本明細書に記載される培地)において増殖され、これにより、例えば、フローサイトメトリーなど、本明細書に記載される方法によって測定した場合に、14日間の増殖期間にわたって、細胞の少なくとも200倍(例えば、200倍、250倍、300倍、350倍)の増加をもたらす。一実施形態において、細胞は、IL-15および/またはIL-7(例えば、IL-15およびIL-7)の存在下において増殖される。
【0267】
複数の実施形態において、本明細書に記載される方法、例えば、CAR発現細胞の製造方法は、制御性T細胞、例えば、CD25+T細胞を、抗CD25抗体もしくはそのフラグメント、またはCD25に結合するリガンドであるIL-2を使用して、細胞集団から除去するステップを含む。制御性T細胞、例えば、CD25+T細胞を、細胞集団から除去する方法は、本明細書に記載されている。複数の実施形態において、方法、例えば、製造方法は、細胞集団(例えば、CD25+T細胞などの制御性T細胞が枯渇している細胞集団、または前もって抗CD25抗体、そのフラグメント、またはCD25に結合するリガンドと接触させた細胞集団)を、IL-15および/またはIL-7と接触させるステップをさらに含む。例えば、細胞集団(例えば、前もって抗CD25抗体、そのフラグメント、またはCD25に結合するリガンドと接触させたもの)を、IL-15および/またはIL-7の存在下において増殖させる。
【0268】
一部の実施形態において、本明細書に記載されるCAR発現細胞を、例えばエキソビボで、CAR発現細胞の製造時に、インターロイキン-15(IL-15)ポリペプチド、インターロイキン-15受容体アルファ(IL-15Ra)ポリペプチド、またはIL-15ポリペプチドおよびIL-15Raポリペプチドの両方の組合せ、例えば、hetIL-15を含む組成物と接触させる。複数の実施形態において、本明細書に記載されるCAR発現細胞を、例えばエキソビボで、CAR発現細胞の製造時に、IL-15ポリペプチドを含む組成物と接触させる。複数の実施形態において、本明細書に記載されるCAR発現細胞を、例えばエキソビボでのCAR発現細胞の製造時に、IL-15ポリペプチドおよびIL-15 Raポリペプチドの両方の組合せを含む組成物と接触させる。複数の実施形態において、本明細書に記載されるCAR発現細胞を、例えばエキソビボで、CAR発現細胞の製造時に、hetIL-15を含む組成物と接触させる。
【0269】
一実施形態において、本明細書に記載されるCAR発現細胞を、エキソビボでの増殖中に、hetIL-15を含む組成物と接触させる。ある実施形態において、本明細書に記載されるCAR発現細胞を、エキソビボでの増殖中に、IL-15ポリペプチドを含む組成物と接触させる。ある実施形態において、本明細書に記載されるCAR発現細胞を、エキソビボでの増殖中に、IL-15ポリペプチドおよびIL-15Raポリペプチドの両方を含む組成物と接触させる。一実施形態において、接触により、リンパ球部分集団、例えば、CD8+T細胞の生存および増殖がもたらされる。
【0270】
様々な回数の刺激に曝露されたT細胞は、異なる特徴を呈し得る。例えば、典型的な血液またはアフェレーシスで得た末梢血単核細胞産物は、細胞毒性またはサプレッサーT細胞集団(TC、CD8+)よりも多くのヘルパーT細胞集団(TH、CD4+)を有する。CD3受容体およびCD28受容体を刺激することによるT細胞のエキソビボ増殖では、約8~9日目よりも前には主にTH細胞からなるT細胞集団が生じるが、約8~9日目よりも後にはT細胞の集団は、次第に多くのTC細胞集団で構成される。したがって、治療の目的に応じて、TH細胞を主に含むT細胞集団を対象に注入することが有利な場合がある。同様に、抗原特異的なTC細胞サブセットが単離されている場合、このサブセットをさらに増殖させることが有益な場合がある。
【0271】
さらに、CD4およびCD8マーカーに加えて、他の表現型マーカーが、細胞増殖プロセスの過程において、著しく変動するが、大部分は再現的に変動する。したがって、このような再現性により、活性化T細胞産物を特定の目的に合わせることが可能となる。
【0272】
本明細書に記載されるCARが構築されると、様々なアッセイを使用して、抗原刺激後にT細胞を増殖させる能力、再刺激の不在下においてT細胞増殖を維持する能力、ならびにインビトロおよび動物モデルにおいて適切な抗がん活性などであるがこれらに限定されない分子の活性を評価することができる。本発明のCARの作用を評価するためのアッセイは、以下にさらに詳細に説明される。
【0273】
初代T細胞におけるCAR発現のウエスタンブロット分析を使用して、単量体および二量体の存在を検出することができる。例えば、Milone et al., Molecular Therapy 17(8): 1453-1464 (2009)参照。非常に簡単に述べると、CARを発現するT細胞(CD4T細胞およびCD8T細胞の1:1混合物)を、10日間を上回ってインビトロで増殖させた後、溶解させ、還元条件下でSDS-PAGEを行う。完全長TCR-ζ細胞質ドメインおよび内因性TCR-ζ鎖を含むCARは、TCR-ζ鎖に対する抗体を使用してウエスタンブロットによって検出される。同じT細胞サブセットを、共有結合による二量体形成の評価を許容するように非還元条件下においてSDS-PAGE分析に使用する。
【0274】
抗原刺激後のCART細胞のインビトロでの増殖は、フローサイトメトリーによって測定することができる。例えば、CD4T細胞およびCD8T細胞の混合物を、αCD3/αCD28aAPCと接触させた後、分析しようとするプロモーターの制御下において、GFPを発現するレンチウイルスベクターを形質導入する。例示的なプロモーターとしては、CMV IE遺伝子、EF-1α、ユビキチンC、またはホスホグリセロキナーゼ(PGK)プロモーターが挙げられる。GFP蛍光を、フローサイトメトリーによって、CD4および/またはCD8T細胞サブセットにおいて、培養の6日目に評価する。例えば、Milone et al., Molecular Therapy 17(8): 1453-1464 (2009)参照。代替として、CD4T細胞およびCD8T細胞の混合物を、0日目に、αCD3/αCD28でコーティングした磁気ビーズで刺激し、1日目に、2Aリボソームスキッピング配列を使用して、eGFPとともにCARを発現するバイシストロンのレンチウイルスベクターを使用してCARの形質導入を行う。培養物を、洗浄後に、抗CD3抗体および抗CD28抗体(K562-BBL-3/28)の存在下において、本明細書に記載されるがん関連抗原K562細胞(本明細書に記載されるK562を発現するがん関連抗原)、野生型K562細胞(K562野生型)、またはhCD32および4-1BBLを発現するK562細胞のいずれかで、再刺激する。外因性IL-2を、100IU/mlで1日おきに培養物に添加する。ビーズに基づく計数を使用して、フローサイトメトリーによってGFPT細胞を数える。例えば、Milone et al., Molecular Therapy 17(8): 1453-1464 (2009)参照。
【0275】
再刺激の不在下において持続されるCART細胞の増殖も、測定することができる。例えば、Milone et al., Molecular Therapy 17(8): 1453-1464 (2009)参照。簡単に述べると、0日目にαCD3/αCD28でコーティングした磁気ビーズで刺激し、1日目に、示されるCARを形質導入した後、平均T細胞量(fl)を、Coulter Multisizer III粒子計数装置、Nexcelom Cellometer Vision、またはMillipore Scepterを使用して、培養の8日目に測定する。
【0276】
動物モデルもまた、CART活性を測定するために使用することができる。例えば、免疫欠損マウスにおける原発性ヒト前BALLを治療するための本明細書に記載されるヒトがん関連抗原特異的CART細胞を使用した異種移植片モデルを、使用してもよい。例えば、Milone et al., Molecular Therapy 17(8): 1453-1464 (2009)参照。非常に簡単に述べると、ALLの確立後に、マウスを、ランダムに処置群に分ける。様々な数のがん関連抗原特異的CAR操作T細胞を、1:1の比で、B-ALLを保持するNOD-SCID-γ-/-マウスに共注射する。マウス由来の脾臓DNAにおけるがん関連抗原特異的CARベクターのコピー数を、T細胞注射後の様々な時点で評価する。動物を、1週間に1回の間隔で、白血病に関して評価する。本明細書に記載される末梢血がん関連抗原B-ALL芽細胞計数を、本明細書に記載されるがん関連抗原-ζ CART細胞または偽形質導入T細胞を注射したマウスにおいて、測定する。群ごとの生存曲線を、ログランク試験を使用して比較する。加えて、NOD-SCID-γ-/-マウスにT細胞を注射してから4週間後の末梢血CD4T細胞およびCD8T細胞の絶対数もまた、分析することができる。マウスに白血病細胞を注射し、3週間後に、eGFPに連結したCARをコードするバイシストロンなレンチウイルスベクターによってCARを発現するように操作したT細胞を注射する。T細胞を、注射前に、偽形質導入細胞と混合することによって、45~50%投入のGFPT細胞に対して正規化し、フローサイトメトリーによって確認する。動物を、1週間間隔で、白血病に関して評価する。CART細胞群の生存曲線を、ログランク試験を使用して比較する。
【0277】
用量依存的なCAR処置応答を、評価することができる。例えば、Milone et al., Molecular Therapy 17(8): 1453-1464 (2009)参照。例えば、末梢血を、21日目にCAR T細胞を注射したか、同数の偽形質導入T細胞を注射したか、またはT細胞を注射しなかったマウスにおいて、白血病を確立した35~70日後に、得る。各群からのマウスを、本明細書に記載されるがん関連抗原末梢血ALL芽細胞計数の判定のためにランダムに採血し、35日目および49日目に殺処分する。残りの動物は、57日目および70日目に評価する。
【0278】
細胞増殖およびサイトカイン産生の評価は、これまでに、例えば、Milone et al., Molecular Therapy 17(8): 1453-1464 (2009)に記載されている。簡単に述べるとCARに媒介される増殖の評価は、洗浄したT細胞と、本明細書に記載されるがん関連抗原(K19)またはCD32およびCD137(KT32-BBL)を発現するK562細胞とを、最終的なT細胞:K562の比2:1で混合することによって、マイクロタイタープレートにおいて行う。K562細胞は、使用前に、ガンマ線を照射する。T細胞増殖の刺激に関する陽性対象として機能する抗CD3(クローンOKT3)モノクローナル抗体および抗CD28(クローン9.3)モノクローナル抗体を、KT32-BBL細胞とともに培養液に添加するが、これは、これらのシグナルが、エキソビボで長期CD8T細胞増殖を支持するためである。T細胞を、CountBright(商標)蛍光ビーズ(Invitrogen、Carlsbad、CA)およびフローサイトメトリーを、製造業者によって説明されるように使用して、計数する。CART細胞を、eGFP-2A連結型CAR発現レンチウイルスベクターにより操作したT細胞を使用して、GFP発現によって特定する。GFPを発現しないCAR+T細胞については、CAR+T細胞は、本明細書に記載されるビオチン化組換えがん関連抗原タンパク質および二次アビジン-PEコンジュゲートで検出する。T細胞におけるCD4+およびCD8の発現もまた、特異的モノクローナル抗体(BD Biosciences)で同時に検出する。サイトカイン測定は、ヒトTH1/TH2サイトカインサイトメトリーアレイキット(BD Biosciences、San Diego、CA)を製造業者の説明書に従って使用して、再刺激の24時間後に採取した上清に行う。蛍光を、FACScaliburフローサイトメーターを使用して評価し、データを、製造業者の説明書に従って分析する。
【0279】
細胞毒性は、標準的な51Cr放出アッセイによって評価することができる。例えば、Milone et al., Molecular Therapy 17(8): 1453-1464 (2009)参照。簡単に述べると、標的細胞(K562株および初代前B-ALL細胞)に、37℃で2時間、頻繁にかき混ぜながら、51Cr(NaCrO4として、New England Nuclear、Boston、MA)をロードし、完全RPMIで2回洗浄し、マイクロタイタープレートに蒔く。エフェクターT細胞を、ウェルで、完全RPMIにおいて、様々なエフェクター細胞:標的細胞(E:T)の比で標的細胞と混合する。培地のみ(自発的放出、SR)または1%トリトン-X 100界面活性剤(全放出、TR)を含む追加のウェルも、調製する。37℃で4時間インキュベートした後、各ウェルから上清を採取する。放出された51Crを、次いで、ガンマ粒子カウンター(Packard Instrument Co.、Waltham、MA)を使用して測定する。各条件を、少なくとも3連に行い、溶解の割合を、式:溶解%=(ER-SR)/(TR-SR)を使用して計算する(式中、ERは、それぞれの実験条件で放出された平均51Crを表す)。
【0280】
撮像技術を使用して、腫瘍保持動物モデルにおけるCARの特異的輸送および増殖を評価することができる。そのようなアッセイは、例えば、Barrett et al., Human Gene Therapy 22:1575-1586 (2011)に記載されている。簡単に述べると、NOD/SCID/γc-/-(NSG)マウスに、Nalm-6細胞を静脈内注射し、7日間経った後、CARコンストラクトをエレクトロポレーションした4時間後にT細胞を静脈内注射する。T細胞に、ホタルルシフェラーゼを発現するレンチウイルスコンストラクトを安定にトランスフェクトし、マウスを、生物発光に関して撮像する。あるいは、Nalm-6異種移植片モデルにおけるCART細胞の単回注射の治療効果および特異性を、以下のように測定してもよい:NSGマウスに、ホタルルシフェラーゼを安定に発現するように形質導入したNalm-6を注射し、続いて、7日後に、本発明のCARをエレクトロポレーションしたT細胞の単回尾静脈注射を行う。動物を、注射後の様々な時点で撮像する。例えば、5日目(処置の2日前)および8日目(CARPBLの24時間後)に、代表的なマウスにおけるホタルルシフェラーゼ陽性白血病の光子密度ヒートマップを生成してもよい。
【0281】
本明細書の実施例の節に記載されているもの、ならびに当該技術分野において公知のものを含む、他のアッセイを使用して、本明細書に記載されるCARを評価することもできる。
【0282】
治療の方法/組合せ療法
別の態様において、本発明は、CAR分子、例えば、本明細書に記載されるCAR分子、またはCAR分子、例えば、本明細書に記載されるCAR分子をコードする核酸を含む細胞を投与するステップを含む、方法を提供する。一実施形態において、対象は、本明細書に記載される障害を有し、例えば、対象は、がんを有し、例えば、対象は、本明細書に記載される標的抗原を発現するがんを有する。一実施形態において、対象は、ヒトである。
【0283】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載されるがん関連抗原の発現と関連する疾患を有する対象を治療する方法であって、対象に、CAR分子、例えば、本明細書に記載されるCAR分子を含む有効量の細胞を投与するステップを含む、方法に関する。
【0284】
さらに別の態様において、本発明は、腫瘍抗原(例えば、本明細書に記載される抗原)の発現と関連する疾患を有する対象を治療する方法であって、対象に、CAR分子を含む有効量の細胞、例えば、免疫エフェクター細胞(例えば、免疫エフェクター細胞集団)を投与するステップを含み、CAR分子が、抗原結合性ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含み、該細胞内ドメインが、共刺激ドメインおよび/または一次シグナル伝達ドメインを含み、該抗原結合性ドメインが、疾患と関連する腫瘍抗原、例えば、本明細書に記載される腫瘍抗原に結合する、方法を特徴とする。
【0285】
関連する態様において、本発明は、腫瘍抗原の発現と関連する疾患を有する対象を治療する方法を特徴とする。本方法は、対象に、CAR分子を含む有効量の細胞、例えば、免疫エフェクター細胞(例えば、免疫エフェクター細胞集団)を、免疫細胞の有効性を増加させる作用物質と組み合わせて投与するステップを含み、
免疫細胞の有効性を増加させる作用物質は、
(i)タンパク質ホスファターゼ阻害剤、
(ii)キナーゼ阻害剤、
(iii)サイトカイン、
(iv)免疫阻害性分子の阻害剤、または
(v)TREG細胞のレベルもしくは活性を減少させる阻害剤
のうちの1つまたは複数から選択される。
【0286】
別の態様において、本発明は、腫瘍抗原の発現と関連する疾患、例えば、本明細書に記載される障害を有する対象の治療において使用するための、CAR分子(例えば、本明細書に記載されるCAR分子)を含む免疫エフェクター細胞(例えば、免疫エフェクター細胞集団)を含む、組成物を特徴とする。
【0287】
前述の方法または使用のいずれかのある特定の実施形態において、腫瘍抗原、例えば、本明細書に記載される腫瘍抗原と関連する疾患は、増殖性疾患、例えば、がんもしくは悪性腫瘍、または前がん状態、例えば、骨髄異形成、骨髄異形成症候群、もしくは前白血病から選択されるか、または本明細書に記載される腫瘍抗原の発現と関連する非がん関連適応症である。一実施形態において、疾患は、本明細書に記載されるがん、例えば、本明細書に記載される標的と関連付けられている本明細書に記載されるがんである。一実施形態において、疾患は、血液がんである。一実施形態において、血液がんは、白血病である。一実施形態において、がんは、B細胞性急性リンパ性白血病(「BALL」)、T細胞性急性リンパ性白血病(「TALL」)、急性リンパ性白血病(ALL)を含むがこれらに限定されない1つまたは複数の急性白血病;慢性骨髄性白血病(CML)、慢性リンパ性白血病(CLL)を含むがこれらに限定されない1つまたは複数の慢性白血病;B細胞前リンパ球性白血病、芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍、バーキットリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫、濾胞性リンパ腫、有毛細胞性白血病、小細胞型もしくは大細胞型濾胞性リンパ腫、悪性リンパ球増殖状態、MALTリンパ腫、マントル細胞性リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、多発性骨髄腫、骨髄異形成および骨髄異形成症候群、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、形質芽細胞性リンパ腫、形質細胞様樹状細胞腫瘍、ワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症、ならびに骨髄血液細胞の無効な産生(もしくは異形成)によってまとめられる多様な血液状態の集合である「前白血病」、ならびに本明細書に記載される腫瘍抗原を発現する非定型および/または非古典的ながん、悪性腫瘍、前がん状態、または増殖性疾患を含むがこれらに限定されない本明細書に記載される腫瘍抗原の発現と関連する疾患を含むがこれらに限定されないさらなる血液がんまたは血液状態;ならびにこれらの任意の組合せからなる群から選択される。別の実施形態において、本明細書に記載される腫瘍抗原と関連する疾患は、固形腫瘍である。
【0288】
ある特定の実施形態において、本方法または使用は、免疫エフェクター細胞の有効性を増加させる作用物質、例えば、本明細書に記載される作用物質と組み合わせて行われる。
【0289】
前述の方法または使用のいずれかにおいて、腫瘍抗原の発現と関連する疾患は、腫瘍抗原の発現と関連する増殖性疾患、前がん状態、がん、および非がん関連の適応症からなる群から選択される。
【0290】
がんは、血液がん、例えば、慢性リンパ性白血病(CLL)、急性白血病、急性リンパ性白血病(ALL)、B細胞性急性リンパ性白血病(B-ALL)、T細胞性急性リンパ性白血病(T-ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、B細胞前リンパ球性白血病、芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍、バーキットリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、有毛細胞性白血病、小細胞型もしくは大細胞型濾胞性リンパ腫、悪性リンパ球増殖性状態、MALTリンパ腫、マントル細胞性リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、多発性骨髄腫、骨髄異形成および骨髄異形成症候群、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、形質芽細胞性リンパ腫、形質細胞様樹状細胞腫瘍、ワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症、または前白血病のうちの1つまたは複数から選択されるがんであり得る。
【0291】
がんはまた、結腸がん、直腸がん、腎細胞癌腫、肝臓がん、肺の非小細胞癌腫、小腸のがん、食道のがん、黒色腫、骨がん、膵臓がん、皮膚がん、頭頸部のがん、皮膚または眼内の悪性黒色腫、子宮がん、卵巣がん、直腸がん、肛門領域のがん、胃がん、精巣がん、子宮がん、卵管の癌腫、子宮内膜の癌腫、子宮頸の癌腫、膣の癌腫、外陰部の癌腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、内分泌系のがん、甲状腺のがん、副甲状腺のがん、副腎のがん、軟組織の肉腫、尿道のがん、陰茎のがん、小児期の固形腫瘍、膀胱のがん、腎臓または尿管のがん、腎盂の癌腫、中枢神経系(CNS)の新生物、原発性CNSリンパ腫、腫瘍血管新生、脊椎軸腫瘍、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、カポジ肉腫、表皮がん、扁平上皮細胞がん、T細胞性リンパ腫、環境によって誘発されるがん、該がんの組合せ、ならびに該がんの転移病変から選択され得る。
【0292】
本明細書に記載される方法または使用のある特定の実施形態において、CAR分子は、免疫エフェクター細胞の有効性を増加させる作用物質、例えば、タンパク質ホスファターゼ阻害剤、キナーゼ阻害剤、サイトカイン、免疫阻害性分子の阻害剤のうちの1つもしくは複数、またはTREG細胞のレベルもしくは活性を減少させる作用物質と組み合わせて投与される。
【0293】
本明細書に記載される方法または使用のある特定の実施形態において、タンパク質ホスファターゼ阻害剤は、SHP-1阻害剤および/またはSHP-2阻害剤である。
【0294】
本明細書に記載される方法または使用の他の実施形態において、キナーゼ阻害剤は、CDK4阻害剤、CDK4/6阻害剤(例えば、パルボシクリブ)、BTK阻害剤(例えば、イブルチニブもしくはRN-486)、mTOR阻害剤(例えば、ラパマイシンもしくはエベロリムス(RAD001))、MNK阻害剤、またはP13K/mTOR二重阻害剤のうちの1つまたは複数から選択される。一実施形態において、BTK阻害剤は、インターロイキン-2-誘導性キナーゼ(ITK)のキナーゼ活性を低減または阻害しない。
【0295】
本明細書に記載される方法または使用の他の実施形態において、免疫阻害性分子を阻害する作用物質は、阻害性分子の発現を阻害する、抗体もしくは抗体フラグメント、阻害性核酸、クラスター化され規則的に間隔が空いた短い回文構造の繰り返し(CRISPR)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、またはジンクフィンガーエンドヌクレアーゼ(ZFN)を含む。
【0296】
本明細書に記載される方法または使用の他の実施形態において、TREG細胞のレベルまたは活性を減少させる作用物質は、シクロホスファミド、抗GITR抗体、CD25枯渇、またはこれらの組合せから選択される。
【0297】
本明細書に記載される方法または使用のある特定の実施形態において、免疫阻害性分子は、PD1、PD-L1、CTLA-4、TIM-3、LAG-3、VISTA、BTLA、TIGIT、LAIR1、CD160、2B4、TGFRベータ、CEACAM-1、CEACAM-3、およびCEACAM-5からなる群から選択される。
【0298】
他の実施形態において、阻害性分子を阻害する作用物質は、阻害性分子もしくはそのフラグメントを含む第1のポリペプチドと、細胞に正のシグナルを提供する第2のポリペプチドとを含み、第1および第2のポリペプチドは、CAR含有免疫細胞において発現され、(i)第1のポリペプチドが、PD1、PD-L1、CTLA-4、TIM-3、LAG3、VISTA、BTLA、TIGIT、LAIR1、CD160、2B4、TGFRベータ、CEACAM-1、CEACAM-3、およびCEACAM-5、もしくはそれらのフラグメントを含む、ならびに/または(ii)第2のポリペプチドが、一次シグナル伝達ドメインおよび/もしくは共刺激シグナル伝達ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメインを含む。一実施形態において、一次シグナル伝達ドメインは、CD3ゼータの機能性ドメインを含む、および/または共刺激シグナル伝達ドメインは、41BB、CD27、およびCD28から選択されるタンパク質の機能性ドメインを含む。
【0299】
他の実施形態において、サイトカインは、IL-7、IL-15、もしくはIL-21、または両方から選択される。
【0300】
他の実施形態において、CAR分子を含む免疫エフェクター細胞、および第2のもの、例えば、本明細書に開示される組合せ療法(例えば、免疫エフェクター細胞の有効性を増加させる作用物質)は、実質的に同時または逐次的に投与される。
【0301】
他の実施形態において、CAR分子を含む免疫細胞は、GITRを標的とするおよび/またはGITR機能を調節する分子と組み合わせて投与される。ある特定の実施形態において、GITRを標的とするおよび/またはGITR機能を調節する分子は、CAR発現細胞もしくは細胞集団の前に、またはアフェレーシスの前に、投与される。
【0302】
一実施形態において、リンパ球注入、例えば、同種リンパ球注入が、がんの治療において使用され、リンパ球注入は、少なくとも1つの本発明のCAR発現細胞を含む。一実施形態において、自家リンパ球注入が、がんの治療において使用され、自家リンパ球注入は、少なくとも1つの本明細書に記載されるCAR発現細胞を含む。
【0303】
一実施形態において、細胞は、T細胞であり、T細胞は、ジアグリセロールキナーゼ(DGK)が欠損している。一実施形態において、細胞は、T細胞であり、T細胞は、Ikarosが欠損している。一実施形態において、細胞は、T細胞であり、T細胞は、DGKおよびIkarosの両方が欠損している。
【0304】
一実施形態において、本方法は、本明細書に記載されるように、CAR分子を発現する細胞を、CAR発現細胞の活性を強化する作用物質と組み合わせて投与するステップを含み、この作用物質は、サイトカイン、例えば、IL-7、IL-15、IL-18、IL-21、またはこれらの組合せである。サイトカインは、CAR発現細胞の投与と組み合わせて、例えば、同時または直後に送達され得る。あるいは、サイトカインは、CAR発現細胞の投与後、長期間の後に、例えば、CAR発現細胞に対する対象の応答の評価後に、送達してもよい。一実施形態において、サイトカインは、対象に、請求項61から80のいずれか一項に記載の細胞または細胞集団の投与と同時に投与される(例えば、同じ日に投与される)か、またはその直後に投与される(例えば、投与の1日後、2日後、3日後、4日後、5日後、6日後、もしくは7日後の投与)。他の実施形態において、サイトカインは、請求項61から80のいずれか一項に記載の細胞または細胞集団の投与後、長期間(例えば、少なくとも2週間、3週間、4週間、6週間、8週間、10週間、もしくはそれ以上)の後に、または細胞に対する対象の応答の評価後に、投与される。
【0305】
他の実施形態において、CAR分子を発現する細胞は、CAR分子を発現する細胞の投与に付随する1つまたは複数の副作用を緩和する作用物質と組み合わせて投与される。CAR発現細胞に付随する副作用は、サイトカイン放出症候群(CRS)または血球貪食性リンパ組織球症(HLH)から選択され得る。
【0306】
前述の方法または使用のいずれかの実施形態において、CAR分子を発現する細胞は、腫瘍抗原の発現と関連する疾患を治療する作用物質、例えば、本明細書に開示される第2または第3の治療法と組み合わせて投与される。さらなる例示的な組合せとしては、以下のうちの1つまたは複数が挙げられる。
【0307】
別の実施形態において、例えば本明細書に記載されるCAR分子を発現する細胞は、別の作用物質、例えば、本明細書に記載されるキナーゼ阻害剤および/またはチェックポイント阻害剤と組み合わせて投与され得る。ある実施形態において、CAR分子を発現する細胞は、さらに、別の作用物質、例えば、CAR発現細胞の活性を強化する作用物質を発現し得る。
【0308】
例えば、一実施形態において、CAR発現細胞の活性を強化する作用物質は、阻害性分子(例えば、免疫阻害性分子)を阻害する作用物質であり得る。阻害性分子の例としては、PD1、PD-L1、CTLA-4、TIM-3、CEACAM(例えば、CEACAM-1、CEACAM-3、および/またはCEACAM-5)、LAG-3、VISTA、BTLA、TIGIT、LAIR1、CD160、2B4、およびTGFRベータが挙げられる。
【0309】
一実施形態において、阻害性分子を阻害する作用物質は、阻害性核酸であるdsRNA、siRNA、またはshRNAであり得る。複数の実施形態において、阻害性核酸は、CAR分子の成分をコードする核酸に関連している。例えば、阻害性分子は、CAR発現細胞上に発現され得る。
【0310】
別の実施形態において、阻害性分子を阻害する作用物質は、例えば、本明細書に記載される分子であり、例えば、第1のポリペプチド、例として阻害性分子が、細胞に正のシグナルを提供する第2のポリペプチド、例として本明細書に記載される細胞内シグナル伝達ドメインに会合したものを含む、作用物質である。一実施形態において、作用物質は、阻害性分子、例えば、PD-1、PD-L1、CTLA-4、TIM-3、CEACAM(例えば、CEACAM-1、CEACAM-3、および/もしくはCEACAM-5)、LAG-3、VISTA、BTLA、TIGIT、LAIR1、CD160、2B4、またはTGFRベータ、またはこれらのうちのいずれかのフラグメント(例えば、これらのうちのいずれかの少なくとも細胞外ドメインの一部分)である第1のポリペプチド、ならびに本明細書に記載される細胞内シグナル伝達ドメイン(例えば、共刺激ドメイン(例えば、例として本明細書に記載される41BB、CD27、もしくはCD28)および/または一次シグナル伝達ドメイン(例えば、本明細書に記載されるCD3ゼータシグナル伝達ドメイン)である第2のポリペプチドを含む。一実施形態において、作用物質は、PD1またはそのフラグメント(例えば、PD1の細胞外ドメインの少なくとも一部分)である第1のポリペプチド、ならびに本明細書に記載される細胞内シグナル伝達ドメイン(例えば、本明細書に記載されるCD28シグナル伝達ドメインおよび/または本明細書に記載されるCD3ゼータシグナル伝達ドメイン)である第2のポリペプチドを含む。
【0311】
一実施形態において、本発明のCAR発現免疫エフェクター細胞、例えば、T細胞またはNK細胞は、これまでに幹細胞移植、例えば、自家幹細胞移植を受けた対象に投与される。
【0312】
一実施形態において、本発明のCAR発現免疫エフェクター細胞、例えば、T細胞またはNK細胞は、これまでにメルファランの投与を受けた対象に投与される。
【0313】
一実施形態において、CAR分子、例えば、本明細書に記載のCAR分子を発現する細胞は、CAR分子を発現する細胞の有効性を増加させる作用物質、例えば、本明細書に記載される作用物質と組み合わせて投与される。
【0314】
一実施形態において、CAR分子、例えば、本明細書に記載されるCAR分子を発現する細胞は、低い免疫強化用量のmTOR阻害剤と組み合わせて投与される。理論に束縛されることを望むものではないが、低い免疫強化用量(例えば、免疫系を完全に抑制するには不十分であるが、免疫機能を向上させるには十分である用量)での処置には、PD-1陽性T細胞の減少またはPD-1陰性細胞の増加が付随すると考えられる。PD-1陽性T細胞は、PD-1リガンド、例えば、PD-L1またはPD-L2を発現する細胞との結合によって、疲弊され得るが、PD-1陰性T細胞は疲弊されない。
【0315】
ある実施形態において、このアプローチを使用して、対象における本明細書に記載されるCAR細胞の性能を最適化することができる。理論に束縛されることを望むものではないが、ある実施形態において、内因性非修飾免疫エフェクター細胞、例えば、T細胞またはNK細胞の性能が向上すると考えられる。理論に束縛されることを望むものではないが、ある実施形態において、標的抗原CAR発現細胞の性能が向上すると考えられる。他の実施形態において、CARを発現するように操作されているか、またはこれから操作される細胞、例えば、T細胞またはNK細胞は、PD1陰性免疫エフェクター細胞、例えば、T細胞の数を増加させるか、またはPD1陰性免疫エフェクター細胞、例えば、T細胞/PD1陽性免疫エフェクター細胞、例えば、T細胞の比を増加させる量のmTOR阻害剤と接触させることによって、エキソビボで処置することができる。
【0316】
ある実施形態において、低い免疫強化用量のmTOR阻害剤、例えば、アロステリック阻害剤、例えば、RAD001、または触媒阻害剤の投与は、本明細書に記載されるCAR発現細胞、例えば、T細胞またはNK細胞の投与の前に開始される。ある実施形態において、CAR細胞は、PD1陰性免疫エフェクター細胞、例えば、T細胞もしくはNK細胞のレベル、またはPD1陰性免疫エフェクター細胞、例えば、T細胞/PD1陽性免疫エフェクター細胞、例えば、T細胞の比が、少なくとも一過的に増加した状態となるように、mTOR阻害剤から十分な時間の後、またはその十分な投薬の後に、投与される。
【0317】
ある実施形態において、CARを発現するように操作しようとする細胞、例えば、T細胞またはNK細胞は、対象におけるかまたは対象から採取されたPD1陰性免疫エフェクター細胞、例えば、T細胞のレベル、またはPD1陰性免疫エフェクター細胞、例えば、T細胞/PD1陽性免疫エフェクター細胞、例えば、T細胞の比が、少なくとも一過的に増加した状態となるように、低い免疫強化用量のmTOR阻害剤から十分な時間の後、またはその十分の投薬の後に、採取される。
【0318】
一実施形態において、CAR分子、例えば、本明細書に記載されるCAR分子を発現する細胞は、CAR分子を発現する細胞の投与に付随する1つまたは複数の副作用を緩和する作用物質、例えば、本明細書に記載される作用物質と組み合わせて投与される。
【0319】
一実施形態において、CAR分子、例えば、本明細書に記載されるCAR分子を発現する細胞は、本明細書に記載されるがん関連抗原と関連する疾患を治療する作用物質、例えば、本明細書に記載される作用物質と組み合わせて投与される。
【0320】
一実施形態において、例えば、本明細書に記載されるような、2つ以上のCAR分子を発現する細胞は、がんを治療するために、それを必要とする対象に投与される。一実施形態において、例えば、本明細書に記載されるような、CAR発現細胞を含む細胞の集団は、がんを治療するために、それを必要とする対象に投与される。
【0321】
一実施形態において、CAR分子、例えば、本明細書に記載されるCAR分子を発現する細胞は、本明細書に記載される用量および/または投薬スケジュールで、投与される。
【0322】
一実施形態において、CAR分子は、例えば、インビトロ転写を使用して、免疫エフェクター細胞(例えば、T細胞、NK細胞)に導入され、対象(例えば、ヒト)は、CAR分子を含む細胞の初回投与、およびCAR分子を含む細胞の1回または複数回の後続投与を受け、1回または複数回の後続投与は、前回の投与後、15日未満、例えば、14日未満、13日未満、12日未満、11日未満、10日未満、9日未満、8日未満、7日未満、6日未満、5日未満、4日未満、3日未満、または2日未満で施される。一実施形態において、CAR分子を含む細胞の1回を上回る投与は、1週間単位で対象(例えば、ヒト)に施され、例えば、1週間につき2回、3回、または4回のCAR分子を含む細胞の投与が、施される。一実施形態において、対象(例えば、ヒト対象)は、1週間につき1回を上回るCAR分子を含む細胞の投与(例えば、1週間につき2回、3回、または4回の投与)(本明細書においてサイクルとも称される)を受けた後、CAR分子を含む細胞の投与なしの1週間が続き、その後、CAR分子を含む細胞の1回または複数回の追加の投与(例えば、1週間につき1回を上回るCARを含む細胞の投与)が、対象に施される。別の実施形態において、対象(例えば、ヒト対象)は、1サイクルを上回るCAR分子を含む細胞を受容し、各サイクル間の時間は、10日未満、9日未満、8日未満、7日未満、6日未満、5日未満、4日未満、または3日未満である。一実施形態において、CAR分子を含む細胞は、1週間につき1日おきに3回の投与で投与される。一実施形態において、CAR分子を含む細胞は、少なくとも2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、またはそれ以上投与される。
【0323】
一実施形態において、CAR分子、例えば、本明細書に記載されるCAR分子を発現する細胞は、疾患、例えば、がん、例えば、本明細書に記載されるがんのファーストラインの治療として投与される。別の実施形態において、CAR分子、例えば、本明細書に記載されるCAR分子を発現する細胞は、疾患、例えば、がん、例えば、本明細書に記載されるがんの第2、第3、第4選択肢の治療として投与される。
【0324】
一実施形態において、本明細書に記載される細胞集団が、投与される。
【0325】
別の態様において、本発明は、医薬品として使用するための、本発明のCARをコードする単離核酸分子、本発明のCARの単離ポリペプチド分子、本発明のCARを含むベクター、および本発明のCARを含む細胞に関する。
【0326】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載されるがん関連抗原を発現する疾患の治療において使用するための、本発明のCARをコードする単離核酸分子、本発明のCARの単離ポリペプチド分子、本発明のCARを含むベクター、および本発明のCARを含む細胞に関する。
【0327】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載されるサイトカイン、例えば、IL-7、IL-15、および/またはIL-21と組み合わせて医薬品として使用するための、本明細書に記載されるCARの分子を発現する細胞に関する。別の態様において、本発明は、本明細書に記載されるCAR分子を発現する細胞と組み合わせて医薬品として使用するための、本明細書に記載されるサイトカインに関する。
【0328】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載されるキナーゼ阻害剤および/またはチェックポイント阻害剤と組み合わせて医薬品として使用するための、本明細書に記載されるCAR分子を発現する細胞に関する。別の態様において、本発明は、本明細書に記載されるCAR分子を発現する細胞と組み合わせて医薬品として使用するための、本明細書に記載されるキナーゼ阻害剤および/またはチェックポイント阻害剤に関する。
【0329】
別の態様において、本発明は、CARによって標的とされる腫瘍抗原を発現する疾患の治療において、本明細書に記載されるサイトカイン、例えば、IL-7、IL-15、および/またはIL-21と組み合わせて使用するための、本明細書に記載されるCAR分子を発現する細胞に関する。別の態様において、本発明は、CARによって標的とされる腫瘍抗原を発現する疾患の治療において、本明細書に記載されるCAR分子を発現する細胞と組み合わせて使用するための、本明細書に記載されるサイトカインに関する。
【0330】
別の態様において、本発明は、CARによって標的とされる腫瘍抗原を発現する疾患の治療において、本明細書に記載されるキナーゼ阻害剤および/またはチェックポイント阻害剤と組み合わせて使用するための、本明細書に記載されるCAR分子を発現する細胞に関する。別の態様において、本発明は、CARによって標的とされる腫瘍抗原を発現する疾患の治療において、本明細書に記載されるCAR分子を発現する細胞と組み合わせて使用するための、本明細書に記載されるキナーゼ阻害剤および/またはチェックポイント阻害剤に関する。
【0331】
別の態様において、本発明は、CAR分子、例えば、本明細書に記載されるCAR分子、またはCAR分子、例えば、本明細書に記載されるCAR分子をコードする核酸を含む細胞を投与するステップを含む、方法を提供する。一実施形態において、対象は、本明細書に記載される障害を有し、例えば、対象は、がんを有し、例えば、対象は、がんを有しかつ本明細書に記載される腫瘍支持抗原を発現する腫瘍支持細胞を有する。一実施形態において、対象は、ヒトである。
【0332】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載される腫瘍支持抗原の発現と関連する疾患を有する対象を治療する方法であって、対象に、CAR分子、例えば、本明細書に記載されるCAR分子を含む有効量の細胞を投与するステップを含む、方法に関する。
【0333】
さらに別の態様において、本発明は、腫瘍支持抗原の発現と関連する疾患を有する対象を治療する方法であって、対象に、CAR分子を含む有効量の細胞、例えば、免疫エフェクター細胞(例えば、免疫エフェクター細胞集団)を投与するステップを含み、CAR分子が、抗原結合性ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含み、該細胞内ドメインが、共刺激ドメインおよび/または一次シグナル伝達ドメインを含み、該抗原結合性ドメインが、疾患と関連する腫瘍支持抗原、例えば、本明細書に記載される腫瘍支持抗原に結合する、方法を特徴とする。
【0334】
別の態様において、本発明は、腫瘍支持抗原の発現と関連する疾患、例えば、本明細書に記載される障害を有する対象の治療において使用するための、CAR分子(例えば、本明細書に記載されるCAR分子)を含む免疫エフェクター細胞(例えば、免疫エフェクター細胞集団)を含む、組成物を特徴とする。
【0335】
前述の方法または使用のいずれかにおいて、腫瘍支持抗原の発現と関連する疾患は、腫瘍支持抗原の発現と関連する増殖性疾患、前がん状態、がん、および非がん関連の適応症からなる群から選択される。ある実施形態において、本明細書に記載される腫瘍支持抗原と関連する疾患は、固形腫瘍である。
【0336】
本明細書に記載される方法または使用の一実施形態において、CAR分子は、別の作用物質と組み合わせて投与される。一実施形態において、この作用物質は、キナーゼ阻害剤、例えば、CDK4/6阻害剤、BTK阻害剤、mTOR阻害剤、MNK阻害剤、またはPI3K/mTOR二重阻害剤、およびこれらの組合せであり得る。一実施形態において、キナーゼ阻害剤は、CDK4阻害剤、例えば、本明細書に記載されるCDK4阻害剤、例えば、CD4/6阻害剤、例えば、6-アセチル-8-シクロペンチル-5-メチル-2-(5-ピペラジン-1-イル-ピリジン-2-イルアミノ)-8H-ピリド[2,3-d]ピリミジン-7-オン塩酸塩(パルボシクリブまたはPD0332991とも称される)などである。一実施形態において、キナーゼ阻害剤は、BTK阻害剤、例えば、本明細書に記載されるBTK阻害剤、例えば、イブルチニブなどである。一実施形態において、キナーゼ阻害剤は、mTOR阻害剤、例えば、本明細書に記載されるmTOR阻害剤、例えば、ラパマイシン、ラパマイシン類似体、OSI-027などである。mTOR阻害剤は、例えば、mTORC1阻害剤および/またはmTORC2阻害剤、例えば、本明細書に記載されるmTORC1阻害剤および/またはmTORC2阻害剤であり得る。一実施形態において、キナーゼ阻害剤は、MNK阻害剤、例えば、本明細書に記載されるMNK阻害剤、例えば、4-アミノ-5-(4-フルオロアニリノ)-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジンなどである。MNK阻害剤は、例えば、MNK1a、MNK1b、MNK2a、および/またはMNK2b阻害剤であり得る。PI3K/mTOR二重阻害剤は、例えば、PF-04695102であり得る。
【0337】
本明細書に記載される方法または使用の一実施形態において、キナーゼ阻害剤は、アロイシンA;フラボピリドールまたはHMR-1275、2-(2-クロロフェニル)-5,7-ジヒドロキシ-8-[(3S,4R)-3-ヒドロキシ-1-メチル-4-ピペリジニル]-4-クロメノン;クリゾチニブ(PF-02341066;2-(2-クロロフェニル)-5,7-ジヒドロキシ-8-[(2R,3S)-2-(ヒドロキシメチル)-1-メチル-3-ピロリジニル]-4H-1-ベンゾピラン-4-オン塩酸塩(P276-00);1-メチル-5-[[2-[5-(トリフルオロメチル)-1H-イミダゾール-2-イル]-4-ピリジニル]オキシ]-N-[4-(トリフルオロメチル)フェニル]-1H-ベンズイミダゾール-2-アミン(RAF265);インジスラム(E7070);ロスコビチン(CYC202);パルボシクリブ(PD0332991);ジナシクリブ(dinaciclib)(SCH727965);N-[5-[[(5-tert-ブチルオキサゾール-2-イル)メチル]チオ]チアゾール-2-イル]ピペリジン-4-カルボキサミド(BMS 387032);4-[[9-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-5H-ピリミド[5,4-d][2]ベンザゼピン-2-イル]アミノ]-安息香酸(MLN8054);5-[3-(4,6-ジフルオロ-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)-1H-インダゾール-5-イル]-N-エチル-4-メチル-3-ピリジンメタンアミン(AG-024322);4-(2,6-ジクロロベンゾイルアミノ)-1H-ピラゾール-3-カルボン酸N-(ピペリジン-4-イル)アミド(AT7519);4-[2-メチル-1-(1-メチルエチル)-1H-イミダゾール-5-イル]-N-[4-(メチルスルホニル)フェニル]-2-ピリミジンアミン(AZD5438);ならびにXL281(BMS908662)から選択される、CDK4阻害剤である。
【0338】
本明細書に記載される方法または使用の一実施形態において、キナーゼ阻害剤は、CDK4阻害剤、例えば、パルボシクリブ(PD0332991)であり、パルボシクリブは、約50mg、60mg、70mg、75mg、80mg、90mg、100mg、105mg、110mg、115mg、120mg、125mg、130mg、135mg(例えば、75mg、100mg、または125mg)の用量で、ある期間の間毎日、例えば、28日サイクルの14~21日間毎日、または21日サイクルの7~12日間毎日、投与される。一実施形態において、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、またはそれ以上のサイクルのパルボシクリブが投与される。
【0339】
本明細書に記載される方法または使用の一実施形態において、キナーゼ阻害剤は、イブルチニブ(PCI-32765)、GDC-0834、RN-486、CGI-560、CGI-1764、HM-71224、CC-292、ONO-4059、CNX-774、およびLFM-A13から選択される、BTK阻害剤である。一実施形態において、BTK阻害剤は、インターロイキン-2誘導性キナーゼ(ITK)を低減または阻害せず、GDC-0834、RN-486、CGI-560、CGI-1764、HM-71224、CC-292、ONO-4059、CNX-774、およびLFM-A13から選択される。
【0340】
本明細書に記載される方法または使用の一実施形態において、キナーゼ阻害剤は、BTK阻害剤、例えば、イブルチニブ(PCI-32765)であり、イブルチニブは、約250mg、300mg、350mg、400mg、420mg、440mg、460mg、480mg、500mg、520mg、540mg、560mg、580mg、600mg(例えば、250mg、420mg、または560mg)の用量で、ある期間の間毎日、例えば、21日のサイクルの間毎日、または28日のサイクルの間毎日投与される。一実施形態において、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、またはそれ以上のサイクルのイブルチニブが投与される。
【0341】
本明細書に記載される方法または使用の一実施形態において、キナーゼ阻害剤は、ITKのキナーゼ活性を阻害しないBTK阻害剤、例えば、RN-486であり、RN-486は、約100mg、110mg、120mg、130mg、140mg、150mg、160mg、170mg、180mg、190mg、200mg、210mg、220mg、230mg、240mg、250mg(例えば、150mg、200mg、または250mg)の用量で、ある期間の間毎日、例えば、28日のサイクルの間毎日投与される。一実施形態において、1、2、3、4、5、6、7、またはそれ以上のサイクルのRN-486が投与される。
【0342】
本明細書に記載される方法または使用の一実施形態において、キナーゼ阻害剤は、テムシロリムス、リダフォロリムス、AP23573およびMK8669としても公知の(1R,2R,4S)-4-[(2R)-2[(1R,9S,12S,15R,16E,18R,19R,21R,23S,24E,26E,28Z,30S,32S,35R)-1,18-ジヒドロキシ-19,30-ジメトキシ-15,17,21,23,29,35-ヘキサメチル-2,3,10,14,20-ペンタオキソ-11,36-ジオキサ-4-アザトリシクロ[30.3.1.04,9]ヘキサトリアコンタ-16,24,26,28-テトラエン-12-イル]プロピル]-2-メトキシシクロヘキシルジメチルホスフィネート、エベロリムス(RAD001)、ラパマイシン(AY22989)、シマピモド、(5-{2,4-ビス[(3S)-3-メチルモルホリン-4-イル]ピリド[2,3-d]ピリミジン-7-イル}-2-メトキシフェニル)メタノール(AZD8055)、2-アミノ-8-[トランス-4-(2-ヒドロキシエトキシ)シクロヘキシル]-6-(6-メトキシ-3-ピリジニル)-4-メチル-ピリド[2,3-d]ピリミジン-7(8H)-オン(PF04691502)、N-[1,4-ジオキソ-4-[[4-(4-オキソ-8-フェニル-4H-1-ベンゾピラン-2-イル)モルホリニウム-4-イル]メトキシ]ブチル]-L-アルギニルグリシル-L-α-アスパルチルL-セリン-、分子内塩(SF1126)、ならびにXL765から選択されるmTOR阻害剤である。
【0343】
本明細書に記載される方法または使用の一実施形態において、キナーゼ阻害剤は、mTOR阻害剤、例えば、ラパマイシンであり、ラパマイシンは、約3mg、4mg、5mg、6mg、7mg、8mg、9mg、10mg(例えば、6mg)の用量で、ある期間の間毎日、例えば、21日のサイクルの間毎日、または28日のサイクルの間毎日投与される。一実施形態において、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、またはそれ以上のサイクルのラパマイシンが投与される。一実施形態において、キナーゼ阻害剤は、mTOR阻害剤、例えば、エベロリムスであり、エベロリムスは、約2mg、2.5mg、3mg、4mg、5mg、6mg、7mg、8mg、9mg、10mg、11mg、12mg、13mg、14mg、15mg(例えば、10mg)の用量で、ある期間の間毎日、例えば、28日のサイクルの間毎日投与される。一実施形態において、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、またはそれ以上のサイクルのエベロリムスが投与される。
【0344】
本明細書に記載される方法または使用の一実施形態において、キナーゼ阻害剤は、CGP052088、4-アミノ-3-(p-フルオロフェニルアミノ)-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン(CGP57380)、セルコスポラミド、ETC-1780445-2、および4-アミノ-5-(4-フルオロアニリノ)-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジンから選択される、MNK阻害剤である。
【0345】
本明細書に記載される方法または使用の一実施形態において、キナーゼ阻害剤は、2-アミノ-8-[トランス-4-(2-ヒドロキシエトキシ)シクロヘキシル]-6-(6-メトキシ-3-ピリジニル)-4-メチル-ピリド[2,3-d]ピリミジン-7(8H)-オン(PF-04691502);N-[4-[[4-(ジメチルアミノ)-1-ピペリジニル]カルボニル]フェニル]-N’-[4-(4,6-ジ-4-モルホリニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)フェニル]尿素(PF-05212384、PKI-587);2-メチル-2-{4-[3-メチル-2-オキソ-8-(キノリン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-1-イル]フェニル}プロパンニトリル(BEZ-235);アピトリシブ(GDC-0980、RG7422);2,4-ジフルオロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミド(GSK2126458);8-(6-メトキシピリジン-3-イル)-3-メチル-1-(4-(ピペラジン-1-イル)-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-2(3H)-オンマレイン酸(NVP-BGT226);3-[4-(4-モルホリニルピリド[3’,2’:4,5]フロ[3,2-d]ピリミジン-2-イル]フェノール(PI-103);5-(9-イソプロピル-8-メチル-2-モルホリノ-9H-プリン-6-イル)ピリミジン-2-アミン(VS-5584、SB2343);およびN-[2-[(3,5-ジメトキシフェニル)アミノ]キノキサリン-3-イル]-4-[(4-メチル-3-メトキシフェニル)カルボニル]アミノフェニルスルホンアミド(XL765)から選択される、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)およびmTORの二重阻害剤である。
【0346】
本明細書に記載される方法または使用の一実施形態において、本明細書に記載されるCAR発現免疫エフェクター細胞は、タンパク質チロシンホスファターゼ阻害剤、例えば、本明細書に記載されるタンパク質チロシンホスファターゼ阻害剤と組み合わせて、対象に投与される。一実施形態において、タンパク質チロシンホスファターゼ阻害剤は、SHP-1阻害剤、例えば、本明細書に記載されるSHP-1、例えば、スチボグルコン酸ナトリウムなどである。一実施形態において、タンパク質チロシンホスファターゼ阻害剤は、SHP-2阻害剤である。
【0347】
本明細書に記載される方法または使用の一実施形態において、CAR分子は、別の作用物質と組み合わせて投与され、この作用物質は、サイトカインである。サイトカインは、例えば、IL-7、IL-15、IL-21、またはこれらの組合せであり得る。別の実施形態において、CAR分子は、チェックポイント阻害剤、例えば、本明細書に記載されるチェックポイント阻害剤と組み合わせて投与される。例えば、一実施形態において、チェックポイント阻害剤は、PD-1、PD-L1、CTLA-4、TIM-3、CEACAM(例えば、CEACAM-1、CEACAM-3、および/またはCEACAM-5)、LAG-3、VISTA、BTLA、TIGIT、LAIR1、CD160、2B4、およびTGFRベータから選択される阻害性分子を阻害する。
【0348】
一態様において、本発明のCARは、本明細書に記載される腫瘍抗原を発現する正常細胞を根絶させるために使用することができ、そのため、細胞移植前の細胞調整療法としての使用に適用可能である。一態様において、本明細書に記載される腫瘍抗原を発現する正常細胞は、正常幹細胞であり、細胞移植は、幹細胞移植である。
【0349】
治療適用
別の態様において、対象を治療する方法、例えば、対象における過剰増殖性状態または障害(例えば、がん)、例えば、固形腫瘍、軟組織腫瘍、または転移病変を低減または緩和する方法が、提供される。本明細書において使用されるとき、「がん」という用語は、組織病理学的種類または侵襲の段階に関係なく、すべての種類のがん性成長もしくは発がんプロセス、転移組織、または悪性形質の細胞、組織、もしくは器官を含むことを意味する。固形腫瘍の例としては、様々な器官系の悪性腫瘍、例えば、肉腫、腺癌、および癌腫、例えば、肝臓、肺、乳房、リンパ系、胃腸(例えば、結腸)、泌尿生殖器(例えば、腎臓、尿路上皮細胞)、前立腺、および咽頭に罹患するものが挙げられる。腺癌には、ほとんどの結腸がん、直腸がん、腎細胞癌腫、肝臓がん、肺の非小細胞癌腫、小腸のがん、食道のがんなどの悪性腫瘍が含まれる。一実施形態において、がんは、黒色腫、例えば、進行期の黒色腫である。前述のがんの転移病変もまた、本発明の方法および組成物を使用して、治療または予防することができる。治療することができる他のがんの例としては、骨がん、膵臓がん、皮膚がん、頭頸部のがん、皮膚または眼内の悪性黒色腫、子宮がん、卵巣がん、直腸がん、肛門領域のがん、胃がん、精巣がん、子宮がん、卵管の癌腫、子宮内膜の癌腫、子宮頸の癌腫、膣の癌腫、外陰部の癌腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、食道のがん、小腸のがん、内分泌系のがん、甲状腺のがん、副甲状腺のがん、副腎のがん、軟組織の肉腫、尿道のがん、陰茎のがん、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病を含む慢性または急性白血病、小児期の固形腫瘍、リンパ球性リンパ腫、膀胱のがん、腎臓または尿管のがん、腎盂の癌腫、中枢神経系(CNS)の新生物、原発性CNSリンパ腫、腫瘍血管新生、脊椎軸腫瘍、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、カポジ肉腫、表皮がん、扁平上皮細胞がん、T細胞性リンパ腫、アスベストによって誘発されるものを含む環境によって誘発されるがん、ならびに該がんの組合せが、挙げられる。転移がん、例えば、PD-L1を発現する転移がんの治療は(Iwai et al. (2005) Int. Immunol. 17:133-144)、本明細書に記載される抗体分子を使用して達成することができる。
【0350】
成長を阻害することができる例示的ながんとしては、典型的に免疫療法に対して応答性であるがんが挙げられる。治療のためのがんの非限定的な例としては、黒色腫(例えば、転移悪性黒色腫)、腎臓がん(例えば、明細胞癌腫)、前立腺がん(例えば、ホルモン不応性前立腺癌)、乳がん、結腸がん、および肺がん(例えば、非小細胞肺がん)が挙げられる。加えて、不応性または再発性の悪性腫瘍が、本明細書に記載される分子を使用して治療され得る。
【0351】
一態様において、本発明は、哺乳動物免疫エフェクター細胞(例えば、T細胞、NK細胞)における発現のための、プロモーターに作動可能に連結されたCARを含むベクターに関する。一態様において、本発明は、本明細書に記載されるがん関連抗原を発現するがんの治療において使用するための、本発明のCARを発現する組換え免疫エフェクター細胞を提供する。一態様において、本発明のCAR発現細胞は、CAR発現細胞が、がん細胞を標的とし、がんの成長が阻害されるように、少なくとも1つのがん関連抗原を表面に発現する腫瘍細胞と接触させることができる。
【0352】
一態様において、本発明は、がんの成長を阻害する方法であって、CARTが抗原に応答して活性化され、がん細胞を標的とするように、がん細胞を、本発明のCAR発現細胞と接触させるステップを含み、腫瘍の成長が阻害される、方法に関する。
【0353】
一態様において、本発明は、対象におけるがんを治療する方法に関する。本方法は、がんが対象において治療されるように、本発明のCAR発現細胞を対象に投与するステップを含む。一態様において、本明細書に記載されるがん関連抗原の発現と関連するがんは、血液がんである。一態様において、血液がんは、白血病またはリンパ腫である。一態様において、本明細書に記載されるがん関連抗原の発現と関連するがんとしては、例として、例えば、B細胞性急性リンパ性白血病(「BALL」)、T細胞性急性リンパ性白血病(「TALL」)、急性リンパ性白血病(ALL)を含むがこれらに限定されない1つまたは複数の急性白血病、例えば、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性リンパ性白血病(CLL)を含むがこれらに限定されない1つまたは複数の慢性白血病を含むがこれらに限定されない、がんおよび悪性腫瘍が挙げられる。本明細書に記載されるがん関連抗原の発現と関連するさらなるがんまたは血液状態としては、例えば、B細胞前リンパ球性白血病、芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍、バーキットリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、有毛細胞性白血病、小細胞型もしくは大細胞型濾胞性リンパ腫、悪性リンパ球増殖性状態、MALTリンパ腫、マントル細胞性リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、多発性骨髄腫、骨髄異形成および骨髄異形成症候群、非ホジキンリンパ腫、形質芽細胞性リンパ腫、形質細胞様樹状細胞腫瘍、ワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症、および骨髄血液細胞の無効な産生(または血液異形成)などによってまとめられる血液状態の多様な集合である「前白血病」が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、本明細書に記載されるがん関連抗原の発現と関連する疾患としては、例えば、本明細書に記載されるがん関連抗原の発現と関連する、非定型および/または非古典的ながん、悪性腫瘍、前がん状態、または増殖性疾患が挙げられるが、これらに限定されない。
【0354】
一部の実施形態において、本発明のCAR発現細胞で治療することができるがんは、多発性骨髄腫である。一般に、骨髄腫細胞は、フローサイトメトリーによると、本明細書に記載されるがん関連抗原に関して陰性であると考えられる。したがって、一部の実施形態において、例えば、本明細書に記載されるCD19 CARを使用して、骨髄腫細胞を標的とすることができる。一部の実施形態において、本発明のCAR療法は、1つまたは複数の追加の治療法、例えば、レナリドマイド治療と組み合わせて使用することができる。
【0355】
本発明は、免疫エフェクター細胞(例えば、T細胞、NK細胞)が、キメラ抗原受容体(CAR)を発現するように遺伝子修飾され、そのCAR発現T細胞またはNK細胞が、それを必要とするレシピエントに注入される、一種の細胞療法を含む。注入された細胞は、レシピエントにおいて腫瘍細胞を殺滅させることができる。抗体療法とは異なり、CAR修飾免疫エフェクター細胞(例えば、T細胞、NK細胞)は、インビボで複製することができるため、持続的な腫瘍制御につながり得る長期存続性が得られる。様々な態様において、患者に投与される免疫エフェクター細胞(例えば、T細胞、NK細胞)またはそれらの子孫は、T細胞またはNK細胞を患者に投与した後、少なくとも4ヶ月間、5ヶ月間、6ヶ月間、7ヶ月間、8ヶ月間、9ヶ月間、10ヶ月間、11ヶ月間、12ヶ月間、13ヶ月間、14ヶ月間、15ヶ月間、16ヶ月間、17ヶ月間、18ヶ月間、19ヶ月間、20ヶ月間、21ヶ月間、22ヶ月間、23ヶ月間、2年間、3年間、4年間、または5年間、患者において存続する。
【0356】
本発明はまた、免疫エフェクター細胞(例えば、T細胞、NK細胞)が、例えば、インビトロ転写されたRNAによって、キメラ抗原受容体(CAR)を一過的に発現するように修飾され、そのCAR T細胞またはNK細胞が、それを必要とするレシピエントに注入される、一種の細胞療法を含む。注入された細胞は、レシピエントにおいて腫瘍細胞を殺滅させることができる。したがって、様々な態様において、患者に投与される免疫エフェクター細胞(例えば、T細胞、NK細胞)は、T細胞またはNK細胞を患者に投与した後、1ヶ月未満、例えば、3週間未満、2週間未満、1週間未満存在する。
【0357】
いかなる特定の理論によっても束縛されることを望むものではないが、CAR修飾免疫エフェクター細胞(例えば、T細胞、NK細胞)によって誘起される抗腫瘍免疫応答は、能動的もしくは受動的免疫応答であり得るか、または代替として、直接的対間接的免疫応答に起因するものであってもよい。一態様において、CARを形質導入した免疫エフェクター細胞(例えば、T細胞、NK細胞)は、本明細書に記載されるがん関連抗原を発現するヒトがん細胞に応答して、特異的炎症促進性サイトカイン分泌および強力な細胞溶解活性を呈し、本明細書に記載される可溶性がん関連抗原阻害に抵抗し、バイスタンダー殺滅を媒介し、確立されたヒト腫瘍の退縮を媒介する。例えば、異種の本明細書に記載されるがん関連抗原を発現する腫瘍の分野内では、抗原のない腫瘍細胞は、以前に隣接する抗原陽性がん細胞に対して反応した、本明細書に記載されるがん関連抗原を再指向する免疫エフェクター細胞(例えば、T細胞、NK細胞)による間接的な破壊を受けやすい可能性がある。
【0358】
一態様において、本発明の完全ヒトCAR修飾免疫エフェクター細胞(例えば、T細胞、NK細胞)は、哺乳動物におけるエキソビボ免疫化および/またはインビボ療法のための一種のワクチンであり得る。一態様において、哺乳動物は、ヒトである。
【0359】
エキソビボ免疫化に関して、以下のうちの少なくとも1つが、細胞を哺乳動物に投与する前にインビトロで生じる:i)細胞の増殖、ii)細胞へのCARをコードする核酸の導入、またはiii)細胞の凍結保存。
【0360】
エキソビボ手順は、当該技術分野において周知であり、以下により詳細に説明されている。簡単に述べると、細胞を、哺乳動物(例えば、ヒト)から単離し、本明細書に開示されるCARを発現するベクターにより遺伝子修飾する(すなわち、インビトロで形質導入またはトランスフェクトする)。CAR修飾細胞を、哺乳動物レシピエントに投与して、治療的利点を得ることができる。哺乳動物レシピエントはヒトであってもよく、CAR修飾細胞は、レシピエントに対して自家であり得る。代替として、細胞は、レシピエントに対して同種、同系、または異種であってもよい。
【0361】
造血幹細胞および造血前駆細胞のエキソビボ増殖の手順は、米国特許第5,199,942号明細書に記載されており、これは参照により本明細書に組み込まれ、この手順は、本発明の細胞に適用することができる。他の好適な方法は、当該技術分野において公知であり、したがって、本発明は、細胞のエキソビボ増殖を行う任意の特定の方法に限定されない。簡単に述べると、免疫エフェクター細胞(例えば、T細胞、NK細胞)のエキソビボでの培養および増殖は、(1)哺乳動物由来のCD34+造血幹細胞および造血前駆細胞を末梢血採取または骨髄外植により採取すること、ならびに(2)そのような細胞をエキソビボで増殖させることを含む。米国特許第5,199,942号明細書に記載されている細胞成長因子に加えて、flt3-L、IL-1、IL-3、およびc-kitリガンドなどの他の因子を、細胞の培養および増殖に使用することができる。
【0362】
エキソビボ免疫化に関して細胞に基づくワクチンを使用することに加えて、本発明はまた、患者において抗原を指向する免疫応答を誘起するためのインビボ免疫化のための組成物および方法も提供する。
【0363】
一般に、本明細書に記載されるように活性化され増殖させた細胞は、免疫無防備状態の個体において発生する疾患の治療および予防において利用され得る。特に、本発明のCAR修飾免疫エフェクター細胞(例えば、T細胞、NK細胞)が、本明細書に記載されるがん関連抗原の発現と関連する疾患、障害、および状態の治療において使用される。ある特定の態様において、本発明の細胞は、本明細書に記載されるがん関連抗原の発現と関連する疾患、障害、および状態を発症する危険性にある患者の治療において使用される。したがって、本発明は、本明細書に記載されるがん関連抗原の発現と関連する疾患、障害、および状態の治療または予防のための方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量の本発明のCAR修飾免疫エフェクター細胞(例えば、T細胞、NK細胞)を投与するステップを含む、方法を提供する。
【0364】
一態様において、本発明のCAR発現細胞は、がんもしくは悪性腫瘍などの増殖性疾患、または骨髄異形成、骨髄異形成症候群、もしくは前白血病などの前がん状態を治療するために使用され得る。さらに、本明細書に記載されるがん関連抗原の発現と関連する疾患はとしては、例えば、本明細書に記載されるがん関連抗原を発現する、非定型および/または非古典的ながん、悪性腫瘍、前がん状態、または増殖性疾患が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書に記載されるがん関連抗原の発現と関連する非がん関連の適応症としては、例えば、自己免疫疾患(例えば、ループス)、炎症性障害(アレルギーおよび喘息)、ならびに移植が挙げられるが、これらに限定されない。
【0365】
本発明のCAR修飾免疫エフェクター細胞(例えば、T細胞、NK細胞)は、単独でか、または希釈剤および/またはIL-2もしくは他のサイトカインもしくは細胞集団などの他の成分と組み合わせた医薬組成物としてのいずれかで、投与され得る。
【0366】
血液がん
血液がん状態は、血液、骨髄、およびリンパ系に罹患する、白血病、リンパ腫、および悪性リンパ球増殖性状態などの種類のがんである。
【0367】
白血病は、急性白血病および慢性白血病として分類することができる。急性白血病は、さらに、急性骨髄性白血病(AML)および急性リンパ性白血病(ALL)として分類することができる。慢性白血病には、慢性骨髄性白血病(CML)および慢性リンパ性白血病(CLL)が含まれる。他の関連状態としては、骨髄血液細胞の無効な産生(または異形成)およびAMLへの転換の危険性によってまとめられる、血液状態の多様な集合である、骨髄異形成症候群(MDS、以前は「前白血病」として知られていた)が挙げられる。
【0368】
リンパ腫は、リンパ球から発生する血液細胞腫瘍の群である。例示的なリンパ腫としては、非ホジキンリンパ腫およびホジキンリンパ腫が挙げられる。
【0369】
本発明はまた、本明細書に記載されるがん関連抗原を発現する細胞集団の増殖を阻害するかまたはその細胞集団を低減させるための方法であって、本明細書に記載されるがん関連抗原を発現する細胞を含む細胞集団を、本明細書に記載されるがん関連抗原を発現する細胞に結合する本発明のCAR発現T細胞またはNK細胞と接触させるステップを含む、方法を提供する。特定の態様において、本発明は、本明細書に記載されるがん関連抗原を発現するがん細胞集団の増殖を阻害するかまたはその細胞集団を低減させるための方法であって、本明細書に記載されるがん関連抗原を発現するがん細胞集団を、本明細書に記載されるがん関連抗原を発現する細胞に結合する本発明のCAR発現T細胞またはNK細胞と接触させるステップを含む、方法を提供する。一態様において、本発明は、本明細書に記載されるがん関連抗原を発現するがん細胞集団の増殖を阻害するかまたはその細胞集団を低減させるための方法であって、本明細書に記載されるがん関連抗原を発現するがん細胞集団を、本明細書に記載されるがん関連抗原を発現する細胞に結合する本発明のCAR発現T細胞またはNK細胞と接触させるステップを含む、方法を提供する。ある特定の態様において、本発明のCAR発現T細胞またはNK細胞は、骨髄性白血病または本明細書に記載されるがん関連抗原と関連する別のがんを有する対象またはその動物モデルにおいて、陰性対照と比較して、細胞および/またはがん細胞の数量、数、量、または割合を、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも65%、少なくとも75%、少なくとも85%、少なくとも95%、または少なくとも99%低減させる。一態様において、対象は、ヒトである。
【0370】
本発明はまた、本明細書に記載されるがん関連抗原を発現する細胞と関連する疾患(例えば、血液がんまたは本明細書に記載されるがん関連抗原を発現する非定型がん)を予防、治療、および/または管理するための方法であって、それを必要とする対象に、本明細書に記載されるがん関連抗原を発現する細胞に結合する本発明のCAR T細胞またはNK細胞を投与するステップを含む、方法を提供する。一態様において、対象は、ヒトである。本明細書に記載されるがん関連抗原を発現する細胞と関連する障害の非限定的な例としては、自己免疫障害(ループスなど)、炎症性障害(アレルギーおよび喘息)、ならびにがん(血液がん、または本明細書に記載されるがん関連抗原を発現する非定型のがん)が挙げられる。
【0371】
本発明はまた、本明細書に記載されるがん関連抗原を発現する細胞と関連する疾患を予防、治療、および/または管理するための方法であって、それを必要とする対象に、本明細書に記載されるがん関連抗原を発現する細胞に結合する本発明のCAR T細胞またはNK細胞を投与するステップを含む、方法を提供する。一態様において、対象は、ヒトである。
【0372】
本発明は、本明細書に記載されるがん関連抗原を発現する細胞と関連するがんの再発を予防するための方法であって、それを必要とする対象に、本明細書に記載されるがん関連抗原を発現する細胞に結合する本発明のCAR T細胞またはNK細胞を投与するステップを含む、方法を提供する。一態様において、本方法は、それを必要とする対象に、本明細書に記載されるがん関連抗原を発現する細胞に結合する有効量の本明細書に記載されるCAR発現T細胞またはNK細胞を、有効量の別の治療薬と組み合わせて投与するステップを含む。
【0373】
医薬組成物および治療
本発明の医薬組成物は、CAR発現細胞、例えば、複数の本明細書に記載されるCAR発現細胞を、1つまたは複数の薬学的または生理学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤と組み合わせて含み得る。このような組成物は、緩衝液、例えば、中性緩衝食塩水、リン酸緩衝食塩水など、炭水化物、例えば、グルコース、マンノース、スクロース、またはデキストラン、マンニトール、タンパク質、ポリペプチドまたはアミノ酸、例えば、グリシン、抗酸化剤、キレート剤、例えば、EDTAまたはグルタチオン、アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム)、ならびに保存剤を含み得る。本発明の組成物は、一態様において、静脈内投与用に製剤化される。
【0374】
本発明の医薬組成物は、治療(または予防)しようとする疾患に適した様式で、投与され得る。投与の数量および頻度は、患者の状態、ならびに患者の疾患の種類および重症度などの因子によって決定されるが、適切な投薬量は、臨床試験によって決定され得る。
【0375】
一実施形態において、医薬組成物は、混入物質、例えば、内毒素、マイコプラズマ、複製能力のあるレンチウイルス(RCL)、p24、VSV-G核酸、HIV gag、抗CD3/抗CD28でコーティングされたビーズの残留物、マウス抗体、貯蔵ヒト血清、ウシ血清アルブミン、ウシ血清、培養培地成分、ベクターパッケージング細胞またはプラスミド成分、細菌および真菌からなる群から選択されるものを実質的に含まず、例えば、混入物質は検出可能なレベルでは存在しない。一実施形態において、細菌は、アルガリゲネス・フェカリス(Alcaligenes faecalis)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、大腸菌(Escherichia coli)、ヘモフィルス・インフルエンザ(Haemophilus influenza)、ナイセリア・メニンギティデス(Neisseria meningitides)、シュードモナス・エルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、ストレプトコッカス・ニューモニア(Streptococcus pneumonia)、およびストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)A群から選択される少なくとも1つである。
【0376】
「免疫学的有効量」、「抗腫瘍有効量」、「腫瘍阻害に有効な量」、または「治療量」が示される場合、投与しようとする本発明の組成物の正確な量は、患者(対象)の年齢、体重、腫瘍サイズ、感染または転移の程度、および状態における個々の相違を考慮して、医師によって決定され得る。一般に、本明細書に記載される免疫エフェクター細胞(例えば、T細胞、NK細胞)を含む医薬組成物は、10~10個の細胞/体重kgの投薬量で投与され得、一部の事例においては、10~10個の細胞/体重kgで投与され得、これらの範囲内のすべての整数が含まれる。T細胞組成物または、これらの投薬量で複数回投与してもよい。細胞は、免疫療法において一般に公知の注入技法を使用して投与することができる(例えば、Rosenberg et al., New Eng. J. of Med. 319:1676, 1988参照)。
【0377】
ある特定の態様において、活性化された免疫エフェクター細胞(例えば、T細胞、NK細胞)を対象に投与した後、続いて、血液を再び採取し(またはアフェレーシスを行い)、そこから得られた本発明による免疫エフェクター細胞(例えば、T細胞、NK細胞)を活性化させ、これらの活性化させ増殖させた免疫エフェクター細胞(例えば、T細胞、NK細胞)を患者に再注入することが望ましい場合がある。このプロセスは、数週間毎に複数回行われ得る。ある特定の態様において、免疫エフェクター細胞(例えば、T細胞、NK細胞)は、10cc~400ccの採取血から活性化され得る。ある特定の態様において、免疫エフェクター細胞(例えば、T細胞、NK細胞)は、20cc、30cc、40cc、50cc、60cc、70cc、80cc、90cc、または100ccの採取血から活性化される。
【0378】
本主題の組成物の投与は、エアロゾル吸入、注射、経口摂取、輸血、埋込み、または移植によるものを含む、任意の便宜的な様式で実行され得る。本明細書に記載される組成物は、経動脈、皮下、皮内、腫瘍内、結節内、髄内、筋肉内、静脈注射により(i.v.)、または腹腔内で、患者に投与され得る。一態様において、本発明のT細胞組成物は、皮内または皮下注射によって患者に投与される。一態様において、本発明のT細胞組成物は、静脈内注射によって投与される。免疫エフェクター細胞(例えば、T細胞、NK細胞)の組成物は、腫瘍、リンパ節、または感染部位に直接注射してもよい。
【0379】
特定の例示的な態様において、対象は、白血球を採取し、濃縮し、エキソビボで枯渇させて、目的の細胞、例えば、T細胞を選択および/または単離する、白血球アフェレーシスを受ける場合がある。これらの単離T細胞は、当該技術分野において公知の方法によって増殖させ、1つまたは複数の本発明のCARコンストラクトを導入し、それによって本発明のCAR T細胞を作製することができるように、処置され得る。それを必要とする対象は、続いて、高用量化学療法による標準的な治療を受けた後、末梢血幹細胞移植を受け得る。ある特定の態様において、移植後または移植と同時に、対象は、本発明の増殖CAR T細胞の注入を受ける。追加の態様において、増殖させた細胞は、外科処置の前または後に投与される。
【0380】
患者に投与しようとする上述の治療薬の投薬量は、治療されている状態および治療のレシピエントの正確な性質に応じて変動するであろう。ヒトへの投与のための投薬量の増減は、当該技術分野において許容されている慣例に従って行うことができる。例えば、CAMPATHの用量は、一般に、成人患者では1~約100mgの範囲内となり、通常は1~30日間の期間で毎日投与される。好ましい1日用量は、1日当たり1~10mgであるが、一部の事例では、1日当たり最大40mgまでのより高用量が使用され得る(米国特許第6,120,766号明細書に記載されている)。
【0381】
一実施形態において、CARは、例えば、インビトロ転写を使用して、免疫エフェクター細胞(例えば、T細胞、NK細胞)に導入され、対象(例えば、ヒト)は、本発明のCAR免疫エフェクター細胞(例えば、T細胞、NK細胞)の初回投与、および本発明のCAR免疫エフェクター細胞(例えば、T細胞、NK細胞)の1回または複数回の後続投与を受け、1回または複数回の後続投与は、前回の投与後、15日未満、例えば、14日未満、13日未満、12日未満、11日未満、10日未満、9日未満、8日未満、7日未満、6日未満、5日未満、4日未満、3日未満、または2日未満で施される。一実施形態において、本発明のCAR免疫エフェクター細胞(例えば、T細胞、NK細胞)の1回を上回る投与は、1週間単位で対象(例えば、ヒト)に施され、例えば、1週間につき2回、3回、または4回の本発明のCAR免疫エフェクター細胞(例えば、T細胞、NK細胞)の投与が、施される。一実施形態において、対象(例えば、ヒト対象)は、1週間につき1回を上回るCAR免疫エフェクター細胞(例えば、T細胞、NK細胞)の投与(例えば、1週間につき2回、3回、または4回の投与)(本明細書においてサイクルとも称される)を受けた後、CAR免疫エフェクター細胞(例えば、T細胞、NK細胞)の投与なしの1週間が続き、その後、CAR免疫エフェクター細胞(例えば、T細胞、NK細胞)の1回または複数回の追加の投与(例えば、1週間につき1回を上回るCAR免疫エフェクター細胞(例えば、T細胞、NK細胞)の投与)が、対象に施される。別の実施形態において、対象(例えば、ヒト対象)は、1サイクルを上回るCAR免疫エフェクター細胞(例えば、T細胞、NK細胞)を受容し、各サイクル間の時間は、10日未満、9日未満、8日未満、7日未満、6日未満、5日未満、4日未満、または3日未満である。一実施形態において、CAR免疫エフェクター細胞(例えば、T細胞、NK細胞)は、1週間につき1日おきに3回の投与で投与される。一実施形態において、本発明のCAR免疫エフェクター細胞(例えば、T細胞、NK細胞)は、少なくとも2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、またはそれ以上投与される。
【0382】
一態様において本発明のCAR発現細胞は、レンチウイルスなどのレンチウイルスウイルスベクターを使用して生成される。そのようにして生成された細胞、例えば、CARTは、安定なCAR発現を有する。
【0383】
一態様において、CAR発現細胞、例えば、CARTは、ガンマレトロウイルスベクター、例えば、本明細書に記載されるガンマレトロウイルスベクターなどのウイルスベクターを使用して生成される。これらのベクターを使用して生成されたCARTは、安定なCAR発現を有し得る。
【0384】
一態様においてCARTは、形質導入の後4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間、15日間、CARベクターを一過的に発現する。CARの一過的発現は、RNA CARベクター送達によって達成することができる。一態様においてCAR RNAは、エレクトロポレーションによってT細胞に形質導入される。
【0385】
CARを一過的に発現する免疫エフェクター細胞(例えば、T細胞、NK細胞)(特に、マウスscFvを保持するCART)を使用して治療されている患者において生じ得る潜在的な問題は、複数回の処置の後のアナフィラキシーである。
【0386】
この理論によって束縛されるものではないが、そのようなアナフィラキシー応答は、患者が体液性抗CAR応答、すなわち、抗IgEアイソタイプを有する抗CAR抗体を生じることによって、引き起こされる可能性があると考えられる。抗原への曝露に10日~14日の休止が存在すると、患者の抗体産生細胞が、IgGアイソタイプ(アナフィラキシーをもたらさない)からIgEアイソタイプへのクラススイッチを受けると考えられる。
【0387】
患者が、一過的CAR療法(RNA形質導入によって生成されるもの)の過程で抗CAR抗体応答を生じる危険性が高い場合、CART注入の休止は、10日~14日を上回って継続すべきではない。
【0388】
CAR発現細胞を作製する方法
別の態様において、本発明は、細胞(例えば、免疫エフェクター細胞またはその集団)を作製する方法であって、細胞、例えば、本明細書に記載されるT細胞またはNK細胞に、CAR、例えば、本明細書に記載されるCARをコードする核酸、またはCAR分子、例えば、本明細書に記載されるCARをコードする核酸を含むベクターを導入(例えば、形質導入)するステップを含む、方法に関する。
【0389】
本方法における細胞は、免疫エフェクター細胞(例えば、T細胞もしくはNK細胞、またはそれらの組合せ)である。一部の実施形態において、本方法における細胞は、ジアグリセロールキナーゼ(DGK)および/またはIkarosが欠損している。
【0390】
一部の実施形態において、CARをコードする核酸分子の導入は、CARをコードする核酸分子を含むベクターを形質導入するか、またはCARをコードする核酸分子をトランスフェクトすることを含み、ここで、核酸分子は、インビトロ転写されたRNAである。
【0391】
一部の実施形態において、本方法は、
a.免疫エフェクター細胞(例えば、T細胞またはNK細胞)の集団を提供するステップ、および
b.この集団から制御性T細胞を除去し、それによって、制御性T細胞枯渇細胞集団を提供するステップ
をさらに含み、
ステップa)およびb)は、CARをコードする核酸を集団に導入する前に行われる。
【0392】
本方法の複数の実施形態において、制御性T細胞は、CD25+T細胞を含み、抗CD25抗体またはそのフラグメントを使用して、細胞集団から除去される。抗CD25抗体またはそのフラグメントは、基質、例えば、ビーズにコンジュゲートしていてもよい。
【0393】
他の実施形態において、ステップ(b)によって得られた制御性T細胞枯渇細胞の集団は、30%未満、25%未満、20%未満、15%未満、10%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満のCD25+細胞を含む。
【0394】
さらに他の実施形態において、本方法は、CARをコードする核酸を集団に導入する前に、腫瘍抗原を発現する細胞を、CD25を含まない集団から除去して、制御性T細胞枯渇かつ腫瘍抗原枯渇の細胞集団を得るステップをさらに含む。腫瘍抗原は、CD19、CD30、CD38、CD123、CD20、CD14、もしくはCD11b、またはそれらの組合せから選択され得る。
【0395】
他の実施形態において、本方法は、CARをコードする核酸を集団に導入する前に、チェックポイント阻害剤を発現する細胞を集団から除去して、制御性T細胞枯渇かつ阻害性分子枯渇の細胞集団を得るステップをさらに含む。チェックポイント阻害剤は、PD-1、LAG-3、TIM3、B7-H1、CD160、P1H、2B4、CEACAM(例えば、CEACAM-1、CEACAM-3、および/またはCEACAM-5)、TIGIT、CTLA-4、BTLA、およびLAIR1から選択され得る。
【0396】
本明細書に開示されるさらなる実施形態は、免疫エフェクター細胞の集団を提供することを包含する。提供される免疫エフェクター細胞の集団は、CD3、CD28、CD4、CD8、CD45RA、および/またはCD45ROのうちの1つまたは複数の発現に基づいて選択され得る。ある特定の実施形態において、提供される免疫エフェクター細胞の集団は、CD3+および/またはCD28+である。
【0397】
本方法のある特定の実施形態において、本方法は、CARをコードする核酸分子が導入された後に、細胞集団を増殖させるステップをさらに含む。
【0398】
複数の実施形態において、細胞集団を、8日間またはそれ未満の期間、増殖させる。
【0399】
ある特定の実施形態において、細胞集団を、5日間培養液中で増殖させ、結果として得られた細胞は、同じ培養条件下において9日間培養液中で増殖させた同じ細胞よりも強力である。
【0400】
他の実施形態において、細胞集団を5日間増殖させると、抗原刺激時に、同じ培養条件下において9日間培養液中で増殖させた同じ細胞と比較して、細胞倍増の少なくとも1倍、2倍、3倍、または4倍の増加を示す。
【0401】
さらに他の実施形態において、細胞集団を、5日間培養液中で増殖させ、結果として得られた細胞は、同じ培養条件下において9日間培養液中で増殖させた同じ細胞と比較して、より高い炎症促進性IFN-γおよび/またはGM-CSFレベルを呈する。
【0402】
他の実施形態において、細胞集団は、CD3/TCR複合体関連シグナルを刺激する作用物質および細胞の表面上の共刺激分子を刺激するリガンドの存在下において、細胞を培養することによって増殖される。作用物質は、抗CD3抗体もしくはそのフラグメントおよび/または抗CD28抗体もしくはそのフラグメントとコンジュゲートしたビーズであり得る。
【0403】
他の実施形態において、細胞の集団を、1つまたは複数のインターロイキンを含む適切な培地において増殖させ、これは、フローサイトメトリーによって測定すると、14日間の増殖期間にわたって、細胞の少なくとも200倍、250倍、300倍、または350倍の増加をもたらす。
【0404】
他の実施形態において、細胞集団を、IL-15および/またはIL-7の存在下において増殖させる。
【0405】
ある特定の実施形態において、本方法は、適切な増殖期間の後に、細胞集団を凍結保存するステップをさらに含む。
【0406】
さらに他の実施形態において、本明細書に開示される作製方法は、免疫エフェクター細胞集団を、テロメラーゼサブユニット、例えば、hTERTをコードする核酸と接触させるステップをさらに含む。テロメラーゼサブユニットをコードする核酸は、DNAであり得る。
【0407】
本発明はまた、外因性RNAを一過的に発現する、RNA操作細胞、例えば、本明細書に記載される細胞、例えば、免疫エフェクター細胞(例えば、T細胞、NK細胞)の集団を生成する方法を提供する。本方法は、インビトロ転写したRNAまたは合成RNAを細胞に導入するステップを含み、RNAは、本明細書に記載されるCAR分子をコードする核酸を含む。
【0408】
別の態様において、本発明は、対象において抗腫瘍免疫を提供する方法であって、対象に、CAR分子を含む有効量の細胞、例えば、本明細書に記載されるCAR分子を発現する細胞を投与するステップを含む、方法に関する。一実施形態において、細胞は、自家T細胞またはNK細胞である。一実施形態において、細胞は、同種T細胞またはNK細胞である。一実施形態において、対象は、ヒトである。
【0409】
一態様において、本発明は、例えば、本明細書に記載されるような、CAR分子をコードする核酸分子を含むベクターがトランスフェクトまたは形質導入された自家細胞集団を含む。一実施形態において、ベクターは、レトロウイルスベクターである。一実施形態において、ベクターは、本明細書の他の箇所に記載される自己不活性化レンチウイルスベクターである。一実施形態において、ベクターは、細胞、例えば、T細胞またはNK細胞に(例えば、トランスフェクションまたはエレクトロポレーションによって)送達され、ベクターは、本明細書に記載される本発明のCARをコードする核酸分子を含み、これが、mRNA分子として転写され、本発明のCARが、RNA分子から翻訳され、細胞表面に発現される。
【0410】
別の態様において、本発明は、CAR発現細胞、例えば、CAR発現免疫エフェクター細胞(例えば、T細胞またはNK細胞)の集団を提供する。一部の実施形態において、CAR発現細胞集団は、異なるCARを発現する細胞の混合物を含む。例えば、一実施形態において、CAR発現免疫エフェクター細胞(例えば、T細胞またはNK細胞)集団は、本明細書に記載される第1の腫瘍抗原に結合する抗原結合性ドメインを有するCARを発現する第1の細胞、および本明細書に記載される第2の腫瘍抗原に結合する異なる抗原結合性ドメインを有するCARを発現する第2の細胞を含み得る。別の例として、CAR発現細胞の集団には、本明細書に記載される腫瘍抗原に結合する抗原結合性ドメインを含むCARを発現する第1の細胞、および本明細書に記載される腫瘍抗原以外の標的に対する抗原結合性ドメインを含むCARを発現する第2の細胞が含まれ得る。一実施形態において、CAR発現細胞の集団には、例えば、一次細胞内シグナル伝達ドメインを含むCARを発現する第1の細胞、および二次シグナル伝達ドメイン、例えば、共刺激シグナル伝達ドメインを含むCARを発現する第2の細胞が含まれる。
【0411】
別の態様において、本発明は、集団内の少なくとも1つの細胞が、本明細書に記載される腫瘍抗原に結合する抗原結合性ドメインを有するCARを発現し、第2の細胞は別の作用物質、例えば、CAR発現細胞の活性を強化する作用物質を発現する、細胞集団を提供する。例えば、一実施形態において、作用物質は、阻害性分子を阻害する作用物質であり得る。阻害性分子の例としては、PD-1、PD-L1、CTLA-4、TIM-3、CEACAM(例えば、CEACAM-1、CEACAM-3、および/またはCEACAM-5)、LAG-3、VISTA、BTLA、TIGIT、LAIR1、CD160、2B4、およびTGFRベータが挙げられる。一実施形態において、阻害性分子を阻害する作用物質は、例えば、本明細書に記載される分子であり、例えば、第1のポリペプチド、例として阻害性分子が、細胞に正のシグナルを提供する第2のポリペプチド、例として本明細書に記載される細胞内シグナル伝達ドメインに会合したものを含む、作用物質である。一実施形態において、作用物質は、PD-1、LAG-3、CTLA-4、CD160、BTLA、LAIR1、TIM-3、CEACAM(例えば、CEACAM-1、CEACAM-3、および/またはCEACAM-5)、2B4、およびTIGITなどの阻害性分子、またはこれらのうちのいずれかのフラグメントである、第1のポリペプチド、ならびに本明細書に記載される細胞内シグナル伝達ドメイン(例えば、共刺激ドメイン(例えば、例として本明細書に記載される41BB、CD27、またはCD28)および/または一次シグナル伝達ドメイン(例えば、本明細書に記載されるCD3ゼータシグナル伝達ドメインを含む)である、第2のポリペプチドを含む。一実施形態において、作用物質は、PD-1またはそのフラグメントである第1のポリペプチド、および本明細書に記載される細胞内シグナル伝達ドメイン(例えば、本明細書に記載されるCD28、CD27、OX40、または4-IBBシグナル伝達ドメインおよび/または本明細書に記載されるCD3ゼータシグナル伝達ドメイン)である第2のポリペプチドを含む。
【0412】
一実施形態において、例えば、本明細書に記載されるような本発明のCAR分子をコードする核酸分子は、mRNA分子として発現される。一実施形態において、本発明の遺伝子修飾されたCARを発現する細胞、例えば、免疫エフェクター細胞(例えば、T細胞、NK細胞)は、所望されるCARをコードするRNA分子(例えば、ベクター配列なし)を、細胞にトランスフェクトまたはエレクトロポレーションすることによって生成することができる。一実施形態において、本発明のCAR分子は、組換え細胞に組み込まれ、その表面に発現されると、RNA分子に翻訳される。
【0413】
トランスフェクションにおいて使用するためのmRNAを生成するための方法は、特別に設計したプライマーを用いた鋳型のインビトロ転写(IVT)、続いて、ポリA付加により、3’および5’非翻訳配列(「UTR」)(例えば、本明細書に記載される3’および/または5’UTR)、5’キャップ(例えば、本明細書に記載される5’キャップ)、ならびに/または配列内リボソーム進入部位(IRES)(例えば、本明細書に記載されるIRES)、発現させようとする核酸、ならびに典型的に長さが50~2000塩基であるポリA尾部を含有するコンストラクトを産生することを伴う。このようにして産生されたRNAは、様々な種類の細胞に効率的にトランスフェクトすることが可能である。一実施形態において、鋳型は、CARの配列を含む。ある実施形態において、RNA CARベクターは、エレクトロポレーションによって細胞、例えば、T細胞またはNK細胞に形質導入される。
【0414】
本発明のCARの様々な成分の一部の例の配列は、表1に列挙されており、ここで、aaはアミノ酸を表し、naは、対応するペプチドをコードする核酸を表す。
【0415】
【表1-1】
【0416】
【表1-2】
【0417】
【表1-3】
【0418】
【表1-4】
【0419】
【表1-5】
【0420】
【表1-6】
【0421】
【表2-1】
【0422】
【表2-2】
【0423】
【表2-3】
【0424】
以下の実施例は、本発明を制限するのではなく、例示することを意図する。
【実施例
【0425】
<実施例1>
pCINSベクターの生成
親レンチウイルス移入ベクターpRRL.SIN.cPPT.EF1a.EGFP.WPREを、DNA2.0によって、Dullら(参照により本明細書に組み込まれる、J. Virol. 72: 8463-8471, 1998)によって作製されたpRRL.SINベクターの骨格に由来する配列を使用して、デノボ合成した。pCINSの特性マップは図1に記載されており、一方でベクターの制限マップは図2に記載されている。
【0426】
pCINSベクターの生成の際、親ベクターに対して以下の修飾を行った。
1.5’シスエレメントを、HIV-1分離株NL4-3由来の対応する天然の配列と置き換えた。置き換えた5’シスエレメントには、パッケージングシグナル(プシー)、プシーに隣接する部分的gag配列、Rev応答エレメント(RRE)およびその周囲の部分的env配列、ならびにpol由来のセントラルポリプリントラクト(cPPT)配列が含まれた。
2.SV40およびf1の複製起点は冗長であったため除去し、プラスミドサイズを減少させた。
3.いくつかの制限部位を、シスエレメント間に導入して、DNA操作を促進した。
4.スプライシングされていないウイルスRNAの核外輸送を制限するgagにおけるINS1阻害性配列(それぞれ参照により本明細書に組み込まれる、J. Virol. 71(7):4892-4903, 1997、J. Virol. 66(12):7176-7182, 1992)を変異させ、それによって、ベクターによってコードされるウイルスRNAの核外輸送の制限を低減させた。
5.阻害性配列INS2、INS3、およびINS4を含む、ヌクレオチド168より後ろのgag配列の部分(参照により本明細書に組み込まれる、J. Virol. 68(6):3784-3793, 1994)を、除去した。
6.RSVおよびCMVのいずれのプロモーターも、SIN LV発現に使用することができるため、RSVプロモーターをCMVプロモーターと置き換えた(それぞれ参照により本明細書に組み込まれる、Science 272(5259):263-267, 1996、J. Virol. 72(11):8463-8471, 1998)。
【0427】
pCINS-EGFP配列は、以下に記載されており、表3に詳述されている。EGFP配列は、任意選択で、所望される場合、当該技術分野における標準的な方法を使用して、別の導入遺伝子(例えば、CARをコードする遺伝子)の配列と置き換えてもよい。
pCINS-EGFP配列(配列番号50)
【0428】
【化3-1】
【0429】
【化3-2】
【0430】
【化3-3】
【0431】
【化3-4】
【0432】
<実施例2>
pNOXベクターの生成
実施例1において生成したpCINSベクターをさらに修飾して、pNOXベクターを産生した。特に、pCINSに存在していたウッドチャック肝炎ウイルス(WPRE)の転写後制御エレメント(PRE)を、B型肝炎ウイルス分離株bba6、完全ゲノムの天然の配列(GenBank:KP341007.1)を含むB型肝炎ウイルス由来のPRE(HPRE)を置き換えた。WPREは、導入遺伝子の効率的な発現を確実にするために、親ベクターに存在していた。しかしながら、WPREは、Xタンパク質コーディング配列を含む。WPREにおけるXタンパク質ORFの存在により、レンチウイルスベクターの組込みに関して、安全性の問題が生じ得る。例えば、Xタンパク質は、肝臓がんの発生に関係している(参照により本明細書に組み込まれる、Gene Ther. 12(1):3-4, 2005)。pNOXベクターにおいて、Xタンパク質の開始コドンに点変異を導入した(ATGからAGG)。結果として、組換えHPREは、Xタンパク質のORFを含まない。pNOXの特性マップを図13に示し、一方でベクターの制限マップを図14に示す。
【0433】
pNOX-EGFP配列は、以下に記載されており、表4に詳述されている。EGFP配列は、任意選択で、所望される場合、当該技術分野における標準的な方法を使用して、別の導入遺伝子(例えば、CARをコードする遺伝子)の配列と置き換えてもよい。
pNOX-EGFP配列(配列番号51)
【0434】
【化4-1】
【0435】
【化4-2】
【0436】
【化4-3】
【0437】
【化4-4】
【0438】
<実施例3>
pCINSおよびpNOXベクターを使用して生成したウイルスの力価
pCINSおよびpNOXレンチウイルス移入ベクターの有効性を判定するために、一連の実験を行い、移入ベクターのうちの一方を、パッケージング細胞の一過的トランスフェクションを使用して細胞に導入した。簡単に述べると、Expi293(商標)細胞(ThermoFischer)を、5mln/mlの濃度で、5mlのフリースタイル(FS)培地において、200rpm、37℃、および8%CO、湿度80%で、成長させた。PEIPro移入試薬(PolyPlus)を使用し、3μgのpNVS-MDLgp-RRE、3μgのpNVS RSV Rev-Kan、0.75μgのpNVS-MDG-VSVG-Kan、および6μgの移入ベクター(pCINSまたはpNOX)を使用して、トランスフェクションを行った。トランスフェクションの48時間後に、ウイルス上清を収集し、力価分析(すなわち、感染力価の測定)に供した。
【0439】
293T細胞において、pCINSプラスミド移入ベクターは、親ベクターによって生成されたものよりもおよそ5倍高いウイルス力価をもたらした(図5A)。力価は、GFP陽性細胞の割合に基づいて評価した。この予想外に強力なウイルス産生は、パッケージング細胞においてCMVプロモーターにより媒介される転写によって生成されたレンチウイルスゲノムRNAの高い数量(qRT-PCRにより測定)、および核内保持の不在によるLV RNAの核からのより効率的な輸送に起因し得る。
【0440】
pNOX移入ベクターは、pCINSと比較して類似したまたはより高い力価をもたらすことができた(図5B~5D)。感染力価は、形質導入した293T細胞、Jurkat T細胞、および初代ヒトT細胞におけるGFP発現によって測定した。特に、pNOXは、293T細胞(図5B)および初代ヒトT細胞(図5D)において、pCINSに類似したレベルのGFP発現をもたらしたが、実際には、pCINSと比較して実質的に多くの数量のGFP発現Jurkat細胞をもたらした(図5C)。
【0441】
レンチウイルス移入ベクター由来のエレメントのゲノム組込み後の導入遺伝子発現のレベルもまた、試験した。ウイルスエレメントがT細胞ゲノムに組み込まれるように、T細胞に、pNOXまたはpCINS移入ベクターを使用して産生したウイルスを感染させた。HPREを含むレンチウイルスベクター、pNOXは、WPREを含むレンチウイルスベクターpCINSと比較して類似したレベルの導入遺伝子の発現をもたらした(図5E)。これらの結果は、WPRE(pCINSにおいて)がHPREよりも強力であるというこれまでの報告に基づくと、驚くべきことであった(例えば、それぞれ参照により本明細書に組み込まれる、J. Virol. 72: 5085-5092, 1998、Gene Therapy 14, 1298-1304, 2007参照)。
【0442】
本発明は、pCINSベクター、ならびにpCINSベクターの部分および/またはpCINSの1つもしくは複数の配列と同一性(例えば、pCINSとの少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%の同一性)を共有する配列を含む、関連ベクターを含む。そのような関連ベクターに含まれ得る配列としては、すべてのpCINS配列、または例えばウイルスプロモーター(すなわち、ウイルスタンパク質の発現を作動させるプロモーター)、部分的gag(例えば、INS2、3、および4を欠く、および/または本明細書に記載されるINS1変異を含む)、部分的env、RRE、cPPT、サブゲノムプロモーター(例えば、EF1アルファプロモーター、任意選択で、本明細書に記載される構成的スプライスドナー部位およびスプライスアクセプター部位を含む)、ならびにPRE(任意選択で、本明細書に記載されるXタンパク質不活性化変異を含む)(これらの配列は、それぞれ、任意選択で、上述の配列同一性を有する)の様々な組合せを含むサブセットが挙げられる。そのようなベクターは、導入遺伝子(例えば、本明細書に記載されるような、CARまたはEGFPをコードする遺伝子)を含み得る。
【0443】
【表3-1】
【0444】
【表3-2】
【0445】
【表3-3】
【0446】
【表3-4】
【0447】
【表3-5】
【0448】
本発明は、pNOXベクター、ならびにpNOXベクターの部分および/またはpNOXの1つもしくは複数の配列と同一性(例えば、pNOXとの少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%の同一性)を共有する配列を含む、関連ベクターを含む。そのような関連ベクターに含まれ得る配列としては、すべてのpNOX配列、または例えばウイルスプロモーター(すなわち、ウイルスタンパク質の発現を作動させるプロモーター)、部分的gag(例えば、INS2、3、および4を欠く、および/または本明細書に記載されるINS1変異を含む)、部分的env、RRE、cPPT、サブゲノムプロモーター(例えば、EF1アルファプロモーター、任意選択で、本明細書に記載される構成的スプライスドナー部位およびスプライスアクセプター部位を含む)、ならびにPRE(任意選択で、本明細書に記載されるXタンパク質不活性化変異を含む)(これらの配列は、それぞれ、任意選択で、上述の配列同一性を有する)の様々な組合せを含むサブセットが挙げられる。そのようなベクターは、導入遺伝子(例えば、本明細書に記載されるような、CARまたはEGFPをコードする遺伝子)を含み得る。
【0449】
【表4-1】
【0450】
【表4-2】
【0451】
【表4-3】
【0452】
【表4-4】
【0453】
【表4-5】
【0454】
<実施例4>
pNLV移入ベクターの生成
実施例2において生成したpNOXベクターをさらに修飾して、pNLVベクターを産生した。pNLVの特徴マップおよび制限マップは、それぞれ、図13および図14に示す。pNOXのcPPTエレメントを、配列番号92に示されるcPPT配列と置き換えた。cPPTは、pol配列2698~2850位を表す(配列番号92および93参照)。コザック配列が、導入遺伝子をコードする遺伝子のすぐ上流に含まれる(例えば、表5に示されるEGFP)。最後に、配列番号95の野生型EF1aプロモーター(P-EF1a)を利用した。pNLVベクターは、増加したウイルス力価および改善されたバイオセーフティプロファイルを有する。
【0455】
pNLVベクターの配列およびpNLVベクターに含まれるエレメントの配列を、以下に示す。一部の事例において、ベクター骨格およびpNLVベクターに含まれるエレメント、ならびにそれらの部分は、本明細書に記載されるベクターのいずれかにおいて使用することができる。ベクター骨格配列および機能性エレメントは、当該技術分野において周知のクローニング方法によって、別のベクターに挿入され得るおよび/または別のベクターの部分と置き換わってもよい。
【0456】
pNLV-EGFP配列は、以下に記載されており、表5に詳述されている。EGFP配列は、任意選択で、所望される場合、当該技術分野における標準的な方法を使用して、別の導入遺伝子(例えば、CARをコードする遺伝子)の配列と置き換えてもよい。
pNLV-EGFP配列(配列番号90)
【0457】
【化5-1】
【0458】
【化5-2】
【0459】
【化5-3】
【0460】
pNLVベクター内に存在する機能性エレメントを、以下の表4に示す。完全pNLV配列の部分は、ベクター骨格配列を含み得る。そのようなベクター骨格配列は、本明細書に記載されるベクターのいずれにおいても(例えば、pCINS、pNOX、およびpNLV)、ベクター骨格配列またはその部分として使用され得るおよび/またはそれと置き換わり得る。
【0461】
本発明は、pNLVベクター、ならびにpNLVベクターの部分および/またはpNLVの1つもしくは複数の配列と同一性(例えば、pNLVとの少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%の同一性)を共有する配列を含む、関連ベクターを含む。そのような関連ベクターに含まれ得る配列としては、すべてのpNLV配列、または例えばウイルスプロモーター(すなわち、ウイルスタンパク質の発現を作動させるプロモーター)、部分的gag(例えば、INS2、3、および4を欠く、および/または本明細書に記載されるINS1変異を含む)、部分的env、RRE、cPPT、サブゲノムプロモーター(例えば、EF1アルファプロモーター、任意選択で、本明細書に記載される構成的スプライスドナー部位およびスプライスアクセプター部位を含む)、ならびにPRE(任意選択で、本明細書に記載されるXタンパク質不活性化変異を含む)(これらの配列は、それぞれ、任意選択で、上述の配列同一性を有する)の様々な組合せを含むサブセットが挙げられる。そのようなベクターは、導入遺伝子(例えば、本明細書に記載されるような、CARまたはEGFPをコードする遺伝子)を含み得る。
【0462】
【表5-1】
【0463】
【表5-2】
【0464】
【表5-3】
【0465】
【表5-4】
【0466】
【表5-5】
【0467】
【表5-6】
【0468】
<実施例5>
レンチウイルス産生のための移入ベクターの最適化
ウイルス力価が高く、バイオセーフティ特性が強化され、形質導入の効率性が改善され、導入遺伝子発現が持続する、改善されたレンチウイルス移入ベクター系を、開発した。いくつかのシスエレメントを再操作して、pNLV移入ベクター骨格を生成した(図6)。GFPコーディングpCINS移入ベクターと比較したGFPコーディングpNLVレンチウイルス移入ベクターの有効性を判定するために、一連の実験を行い、移入ベクターのうちの一方を、パッケージング細胞の一過的トランスフェクションによって細胞に導入した。簡単に述べると、Expi293(商標)細胞(Thermo Fisher)を、5mln/mlの濃度で、5mlのフリースタイル(FS)培地において、200rpm、37℃、および8%CO、湿度80%で、成長させた。PElPro移入試薬(PolyPlus)を使用し、3μgのpNVS-MDLgp-RRE、3μgのpNVS 20 RSV Rev-Kan、0.75μgのpNVS-MDG-VSVG-Kan、および6μgの移入プラスミドを使用して、トランスフェクションを行った。トランスフェクションの48時間後に、ウイルス上清を収集し、力価分析(すなわち、感染力価の測定)に供した。
【0469】
pNLV移入ベクターは、対照親(すなわち、最適化前の)ベクターによって得られたものよりもおよそ2~3倍高いウイルス力価をもたらした(図7A)。物理的力価は、ウイルスRNAコピー数(例えば、qRT-PCRによって測定される)に基づいて評価し、感染力価は、プロウイルス組込み力価アッセイによって判定される感染単位に基づいて判定した(図7B)。
【0470】
次いで、導入遺伝子発現のレベルを、pNLVベクターからのエレメントのゲノム組込み後に、pCINS移入ベクターと比較して試験した。ウイルスエレメントがT細胞に組み込まれるように、T細胞に、pCINSまたはpNLVレンチウイルスベクターを使用して産生したウイルスを感染させた。pNLVベクターは、pCINSと比較してより高いレベルの導入遺伝子発現(FACSによって測定される)を有することが見出された(図8A~8C)。
【0471】
また、pNLVおよびpCINSベクターを、相対感染力価に関して、いくつかの市販の移入ベクターとも比較した。市販のベクターのそれぞれ、およびpCINSベクターを、別個に、GFPコーディング対照(親)ベクターと比較し、pCINSベクターは、さらに、pNLVと比較した。pLVX(Clontech)移入ベクターを、293T細胞に形質導入したが、これは、対照ベクターよりもわずかに高いウイルス力価を有することが見出された(図9A)。pLenti6.2(Life Technologies)移入ベクターを、細胞に形質導入したが、これは、対照ベクターと比較してウイルス力価に大幅な減少を有することが見出された(図9B)。pD2109(DNA2.0)移入ベクターを、細胞に形質導入したが、これは、対照ベクターと比較して、ウイルス力価に少しの減少を有することが見出された(図9C)。pCINS移入ベクターを、細胞に形質導入したが、これは、対照ベクターよりも実質的に高いウイルス力価を有することが見出された(図9D)。pNLV移入ベクターもまた、細胞に導入したが、これは、pCINSベクターよりも高いウイルス力価を有することが見出された(図9E)。これらの結果は、pCINSおよびpNLVを使用して作製したウイルスはいずれも、市販入手可能なレンチウイルス移入ベクターを使用して作製したものよりも、全体的に有意に高く感染性であり、pNLVベクターを使用して作製したウイルスが、最も高いウイルス力価を呈することを示す。
【0472】
感染力価に対するスプライシングの影響を調査するために、一連のスプライスドナー部位およびスプライスアクセプター部位を、後続のウイルス力価判定のために変異させた(図10A)。pCINS移入ベクターの様々なスプライスドナー部位およびスプライスアクセプター部位の変異体を、パッケージング細胞にトランスフェクトし、ウイルス力価を、変異体のパネル全体にわたり、対照移入ベクターと比較した(図10B)。変異のすべてが、ウイルス力価に大幅な減少をもたらし、移入ベクター骨格におけるスプライス部位の存在が、最大限のウイルス力価には必要であることが示された。これらの観察結果は、スプライス部位の存在が、レンチウイルスRNA核外輸送にとって重要であることを示す。レンチウイルスゲノムRNAの核外への輸送は、スプライソソームおよびRevタンパク質との相互作用を必要とし得る。パッケージングベクターからRevタンパク質が高いレベルで発現されることにより、完全サイズのRNAが、スプライシングから保護され、パッケージングのために輸送されることが確実になり得る。
【0473】
最後に、移入ベクター骨格のgag領域およびenv領域を、新たに操作した一連の移入ベクターコンストラクトから除去して、感染ウイルス力価に対するgagエレメントおよびenvエレメントの重要性を判定した。3’および5’にgagおよびenvの欠失を有する移入ベクター(すなわち、-gag3’、-gag5’、-env3’、および-env5’変異体)を、作製し(図11A)、各ベクターを、次いで、別個の細胞セットに形質導入した。gagおよび/またはenv欠失変異体のそれぞれについて、ウイルス力価を判定し、対照レンチウイルス移入ベクターと比較した(図11B)。-env3’および-gag3’-env5’変異体は、対照ベクターと比較してウイルス力価に減少を呈したが、-env5’および-gag3’は、ウイルス力価にほとんど差を示さなかったことが見出された。これらの結果は、3’gag領域および5’env領域は、ウイルス力価にわずかな影響しか有さず個別に改変することができるが、他のgagおよびenv短縮は、移入ベクターの有効性にとって有害であることを示す。
【0474】
<実施例6>
pNLVとpRRLSINとの間の配列の相違
pRRLSIN移入ベクターを修飾して、pNLVベクターを生成した。これらのヌクレオチド置換および挿入は、レンチウイルス移入ベクターの有効性およびバイオセーフティプロファイルを改善するために導入した。一例において、pNLVプシー配列は、pRRLSIN配列と比較して、以下の配列の相違を有する(図12A):T771C、T784G、A785G、G788A、ポリヌクレオチド配列「GAG」の挿入(792~794)、A798C、およびG924A。pNLVは、907位で開始して1074位までの部分的gag配列を有する。加えて、pNLVは、この領域に、pRRLSINと比較して、以下の配列の相違を有する(図12B):以下のヌクレオチドの挿入:A968およびA969(終止コドンをもたらす)、ならびに以下の置換:G924A、A949C、A950G、G989A、G992A、C995T、G998A、C999T、G1004A、C1007T、C1010A、T1058G、およびG1064A。pNLVはまた、1083位で開始して1228位までの部分的env配列を有する。この領域において、pNLVは、pRRLSINと比較して、以下の配列の相違を有する(図12C):C1105A。
【0475】
pNLV RRE領域は、pRRLSINと比較して、以下の配列の相違を有する(図12D):G1291C、A1332G、およびA1414G。pNLVは、1479位で開始して1961位までの部分的env領域(主要スプライスアクセプター部位7を含有する)を有する。加えて、pNLVは、この部分的env領域に、pRRLSINと比較して、以下の配列の相違を有する(図12E):A1571C、T1575C、およびT1866C。
【0476】
pNLVは、1971位で開始して2118位までのcPPT領域、および1974位で開始して2151位までの部分的pol配列(主要スプライスアクセプター部位1を含有する)を有する(図12F)。一部の事例において、cPPT領域は、178ヌクレオチドの配列を含む。一部の事例において、部分的gag配列、部分的env配列、および/または部分的pol配列は、親ベクターと比較して、野生型ウイルス配列に対する相同性の低減を示し、そのため、バイオセーフティプロファイルが改善されている。加えて、pNLVは、cPPT領域および部分的pol領域に、pRRLSINと比較して、以下の配列の相違、挿入を有する:+A1971、+ACAAATGGCAG(1974~1984)、+TTCATCC(1987~1993)、+A1996、+A1997、および+CGGGTTTATTACAGGGACAGCAGAGATCCACTTTGG(2116~2151)。
【0477】
pNLVとpRLLSINとの間の上述の配列の相違は、cPPT領域の相違を除き、pRLLSINと比較して、それぞれ、pCINSおよびpNOXに当てはまる。pRLLSINと比較して、pCINSまたはpNOXとの間の相違の正確なヌクレオチドの位置は、本明細書に提供される関連配列のアライメントによって特定することができる。
【0478】
他の実施形態
上述の本明細書において言及されるすべての刊行物、特許、および特許出願は、それぞれ個別の刊行物、特許、または特許出願が、具体的かつ個別に参照により組み込まれると示されるのと同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。本発明の範囲および趣旨を逸脱することなく、記載された本発明の方法、医薬組成物、およびキットの様々な修正形および変化形が、当業者には明らかであろう。本発明は、特定の実施形態と関連して記載されているが、さらなる修正が可能であること、および特許請求される本発明はそのような特定の実施形態に不当に制限されるべきではないことが理解されるはずである。実際に、当業者には明白である本発明を実施するための、記載された様式の様々な修正形は、本発明の範囲に含まれることが意図される。本出願は、概して本発明の原理に従った本発明のあらゆる変化形、使用、または適用を、本発明が関係する技術分野における公知の慣例の範囲内であり、本明細書に上述されている本質的な特性に当てはまり得るような、本開示からの逸脱を含めて網羅することを意図する。

本発明の様々な実施形態を以下に示す。
1.異種核酸配列を含み、以下の特性:
(a)サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターを含むこと、
(b)野生型INS1と比較してRNAの核外輸送の制限を低減させる変異型INS1阻害性配列を含むgagタンパク質の少なくとも一部分をコードするポリヌクレオチドを含むこと、
(c)gagのINS2、INS3、およびINS4阻害性配列をコードするポリヌクレオチドを含まないこと、ならびに
(d)SV40複製起点および/またはf1複製起点を含まないこと
のうちの少なくとも2つによって特徴付けられる、レンチウイルス移入ベクター。
2.特性(a)~(d)のうちの少なくとも3つによって特徴付けられる、上記1に記載のレンチウイルス移入ベクター。
3.特性(a)~(d)のすべてによって特徴付けられる、上記1に記載のレンチウイルス移入ベクター。
4.(i)野生型INS1と比較してRNAの核外輸送の制限を低減させる変異型INS1阻害性配列を含む、(ii)フレームシフトおよび成熟前終結をもたらす2つのヌクレオチド挿入を含有する、ならびに/または(iii)INS2、INS3、およびINS4阻害性配列を含まない、gagタンパク質の150~250(例えば、168)ヌクレオチド部分をコードするポリヌクレオチドを含む、上記1から3のいずれか一項に記載のレンチウイルス移入ベクター。
5.パッケージングシグナル(プシー)、プシーに隣接するかまたはそれと部分的にオーバーラップする部分的gag配列、rev応答エレメント、部分的env配列、およびpol由来のcPPT配列からなる群から選択される1つまたは複数のエレメントをさらに含み、それらの配列は、任意選択で、HIV-1分離株NL4-3またはSF3を起源とする、上記1から4のいずれか一項に記載のレンチウイルス移入ベクター。
6.前記cPPT配列が、約150~250(例えば、178~181)ヌクレオチドを含み、スプライスアクセプターSA1配列を含む、上記5に記載のレンチウイルス移入ベクター。
7.前記ベクターのエレメント間に位置する1つまたは複数の制限部位をさらに含む、上記1から6のいずれか一項に記載のレンチウイルス移入ベクター。
8.転写後制御エレメント(PRE)をさらに含む、上記1から7のいずれか一項に記載のレンチウイルス移入ベクター。
9.前記PREが、ウッドチャック肝炎ウイルスPRE(WPRE)である、上記8に記載のレンチウイルス移入ベクター。
10.前記WPREが、配列番号78に対して少なくとも95%の同一性を有する核酸配列を含む、上記9に記載のレンチウイルス移入ベクター。
11.前記PREが、B型肝炎ウイルス分離株bba6 PRE(HPRE)である、上記8に記載のレンチウイルス移入ベクター。
12.前記HPREが、配列番号79に対して少なくとも95%の同一性を有する核酸配列を含み、任意選択で、前記HPREが、Xタンパク質コーディング配列に不活性化変異を含む、上記11に記載のレンチウイルス移入ベクター。
13.EF1aプロモーターをさらに含み、任意選択で、前記EF1aプロモーターが、配列番号71に対して少なくとも95%の同一性を有する核酸配列を含み、かつ任意選択で完全長であり、インタクトなスプライスドナー配列およびスプライスアクセプター配列(それぞれ、配列番号72および73)を含む(配列番号95)、上記1から12のいずれか一項に記載のレンチウイルス移入ベクター。
14.前記レンチウイルス移入ベクターのレンチウイルス成分が、HIV-1を起源とする、上記1から13のいずれか一項に記載のレンチウイルス移入ベクター。
15.前記異種核酸配列が、コザック配列の下流にある、上記1から14のいずれか一項に記載のレンチウイルス移入ベクター。
16.前記gagタンパク質の前記少なくとも一部分をコードする配列が、pMDLgpRREパッケージングプラスミドによってコードされるgagタンパク質の対応する領域に対して、90%未満の配列同一性を有する、上記1から15のいずれか一項に記載のレンチウイルス移入ベクター。
17.前記レンチウイルス移入ベクターが、
(i)配列番号52に対して少なくとも95%の同一性を有する核酸配列を含むCMVプロモーター、
(ii)配列番号53に対して少なくとも95%の同一性を有する核酸配列を含むLTR
R領域、
(iii)配列番号54に対して少なくとも95%の同一性を有する核酸配列を含むLTR U5領域、
(iv)配列番号55に対して少なくとも95%の同一性を有する核酸配列を含むプライマー結合部位、
(v)配列番号56に対して少なくとも95%の同一性を有する核酸配列を含むパッケージングシグナル、
(vi)配列番号57に対して少なくとも95%の同一性を有する核酸配列を含み、前記パッケージングシグナル内にある、主要スプライスドナー部位、
(vii)配列番号58に対して少なくとも95%の同一性を有する核酸配列を含む部分的gag配列、
(viii)配列番号60に対して少なくとも95%の同一性を有する核酸配列を含む部分的env配列、
(ix)配列番号62に対して少なくとも95%の同一性を有する核酸配列を含むRev応答エレメント、
(x)配列番号64に対して少なくとも95%の同一性を有する核酸配列を含む部分的env配列、
(xi)配列番号65に対して少なくとも95%の同一性を有する核酸配列を含み、(x)部の前記部分的env配列内にある、スプライスアクセプター部位、
(xii)配列番号67、92、または93に対して少なくとも95%の同一性を有する核酸配列を含むセントラルポリプリントラクト、
(xiii)配列番号68または94に対して少なくとも95%の同一性を有する核酸配列を含み、前記セントラルポリプリントラクト内にある、スプライスアクセプター部位、(xiv)配列番号71または95に対して少なくとも95%の配列同一性を有するEF1アルファプロモーター、
(xv)配列番号72に対して少なくとも95%の同一性を有する核酸配列を含み、前記EF1アルファプロモーター内にある、構成的スプライスドナー(CD)部位、
(xvi)配列番号73に対して少なくとも95%の同一性を有する核酸配列を含み、前記EF1アルファプロモーター内にある、構成的スプライスアクセプター(CA)部位、(xvii)配列番号76に対して少なくとも95%の同一性を有する核酸配列を含むEGFPをコードするポリヌクレオチドおよび/または導入遺伝子配列、
(xviii)配列番号78または79に対して少なくとも95%の配列同一性を有する核酸配列を含むPRE配列、
(xix)配列番号83に対して少なくとも95%の配列同一性を有する核酸配列を含む部分的nef配列、
(xx)配列番号84に対して少なくとも95%の配列同一性を有する核酸配列を含むdU3配列、
(xxi)配列番号85に対して少なくとも95%の同一性を有する核酸配列を含むLTR R領域、ならびに
(xxii)配列番号86に対して少なくとも95%の同一性を有する核酸配列を含むLTR U5領域
を含む、上記1から16のいずれか一項に記載のレンチウイルス移入ベクター。
18.前記異種核酸配列が、タンパク質をコードする、上記1から17のいずれか一項に記載のレンチウイルス移入ベクター。
19.前記タンパク質が、キメラ抗原受容体(CAR)を含む、上記18に記載のレンチウイルス移入ベクター。
20.前記CARが、N末端からC末端の方向に、抗原結合性ドメイン、膜貫通ドメイン、および1つまたは複数のシグナル伝達ドメインを含む、上記19に記載のレンチウイルス移入ベクター。
21.前記シグナル伝達ドメインが、1つまたは複数の一次シグナル伝達ドメインを含む、上記20に記載のレンチウイルス移入ベクター。
22.前記シグナル伝達ドメインが、1つまたは複数の共刺激シグナル伝達ドメインを含む、上記20または21に記載のレンチウイルス移入ベクター。
23.前記1つまたは複数の一次シグナル伝達ドメインのうちの1つが、CD3-ゼータ刺激ドメインを含む、上記21に記載のレンチウイルス移入ベクター。
24.前記共刺激シグナル伝達ドメインのうちの1つまたは複数が、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、GITR、CD30、CD40、ICOS、BAFFR、HVEM、ICAM-1、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CDS、CD7、CD287、LIGHT、NKG2C、NKG2D、SLAMF7、NKp80、NKp30、NKp44、NKp46、CD160、B7-H3、およびCD83に特異的に結合するリガンドからなる群から選択される共刺激タンパク質から選択される細胞内ドメインを含む、上記22または23に記載のレンチウイルス移入ベクター。
25.前記共刺激シグナル伝達ドメインのうちの前記1つまたは複数が、前記4-1BB(CD137)共刺激ドメインを含む、上記24に記載のレンチウイルス移入ベクター。
26.前記共刺激ドメインのうちの前記1つまたは複数が、前記CD28共刺激ドメインを含む、上記24または25に記載のレンチウイルス移入ベクター。
27.前記抗原結合性ドメインが、scFvである、上記20から26のいずれか一項に記載のレンチウイルス移入ベクター。
28.前記抗原結合性ドメインが、CD19;CD123;CD22;CD30;CD171;CS-1;C型レクチン様分子-1、CD33;上皮成長因子受容体バリアントIII(EGFRvIII);ガングリオシドG2(GD2);ガングリオシドGD3;TNF受容体ファミリーメンバーB細胞成熟(BCMA);Tn抗原((Tn Ag)または(GalNAcα-Ser/Thr));前立腺特異的膜抗原(PSMA);受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR1);Fms様チロシンキナーゼ3(FLT3);腫瘍関連糖タンパク質72(TAG72);CD38;CD44v6;癌胎児性抗原(CEA);上皮細胞接着分子(EPCAM);B7H3(CD276);KIT(CD117);インターロイキン-13受容体サブユニットアルファ-2;メソテリン;インターロイキン11受容体アルファ(IL-11Ra);前立腺幹細胞抗原(PSCA);プロテアーゼセリン21;血管内皮成長因子受容体2(VEGFR2);Lewis(Y)抗原;CD24;血小板由来成長因子受容体ベータ(PDGFR-ベータ);ステージ特異的胎児抗原-4(SSEA-4);CD20;葉酸受容体アルファ;受容体チロシン-タンパク質キナーゼERBB2(Her2/neu);ムチン1、細胞表面関連(MUC1);上皮成長因子受容体(EGFR);神経細胞接着分子(NCAM);プロスターゼ;前立腺酸性ホスファターゼ(PAP);伸長因子2変異型(ELF2M);エフリンB2;線維芽細胞活性化タンパク質アルファ(FAP);インスリン様成長因子1受容体(IGF-I受容体)、炭酸脱水酵素IX(CAIX);プロテアソーム(プロソーム、マクロペイン)サブユニット、ベータ型、9(LMP2);糖タンパク質100(gp100);切断点クラスター領域(BCR)およびエーベルソンマウス白血病ウイルスがん遺伝子ホモログ1(Abl)からなるがん遺伝子融合タンパク質(bcr-abl);チロシナーゼ;エフリンA型受容体2(EphA2);フコシルGM1;シアリルLewis接着分子(sLe);ガングリオシドGM3;トランスグルタミナーゼ5(TGS5);高分子量黒色腫関連抗原(HMWMAA);o-アセチル-GD2ガングリオシド(OAcGD2);葉酸受容体ベータ;腫瘍内皮マーカー1(TEM1/CD248);腫瘍内皮マーカー7-関連(TEM7R);クローディン6(CLDN6);甲状腺刺激ホルモン受容体(TSHR);Gタンパク質共役型受容体クラスCグループ5、メンバーD(GPRC5D);X染色体オープンリーディングフレーム61(CXORF61);CD97;CD179a;未分化リンパ腫キナーゼ(ALK);ポリシアル酸;胎盤特異的1(PLAC1);globoHグリコセラミドの六糖部分(GloboH);乳腺分化抗原(NY-BR-1);ウロプラキン2(UPK2);A型肝炎ウイルス細胞受容体1(HAVCR1);アドレナリン受容体ベータ3(ADRB3);パンネキシン3(PANX3);Gタンパク質共役型受容体20(GPR20);リンパ球抗原6複合体、遺伝子座K9(LY6K);嗅覚受容体51E2(OR51E2);TCRガンマ代替リーディングフレームタンパク質(TARP);ウイルムス腫瘍タンパク質(WT1);がん/精巣抗原1(NY-ESO-1);がん/精巣抗原2(LAGE-1a);黒色腫関連抗原1(MAGE-A1);ETS転座バリアント遺伝子6、12p染色体に位置(ETV6-AML);精子タンパク質17(SPA17);X抗原ファミリー、メンバー1A(XAGE1);アンジオポエチン結合性細胞表面受容体2(Tie 2);黒色腫がん精巣抗原-1(MAD-CT-1);黒色腫がん精巣抗原-2(MAD-CT-2);Fos関連抗原1;腫瘍タンパク質p53(p53);p53変異体;プロステイン;サバイビン(surviving);テロメラーゼ;前立腺癌腫瘍抗原-1、T細胞によって認識される黒色腫抗原1;ラット肉腫(Ras)変異体;ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT);肉腫転座切断点;黒色腫のアポトーシス阻害剤(ML-IAP);ERG(膜貫通プロテアーゼ、セリン2(TMPRSS2)ETS融合遺伝子);N-アセチルグルコサミニル-トランスフェラーゼV(NA17);対合ボックスタンパク質Pax-3(PAX3);アンドロゲン受容体;サイクリンB1;v-mycニワトリ骨芽球腫ウイルスがん遺伝子神経芽細胞腫由来ホモログ(MYCN);RasホモログファミリーメンバーC(RhoC);チロシナーゼ関連タンパク質2(TRP-2);シトクロムP450 1B1(CYP1B1);CCCTC-結合因子(ジンクフィンガータンパク質)様、T細胞によって認識される扁平上皮細胞癌腫抗原3(SART3);対合ボックスタンパク質Pax-5(PAX5);プロアクロシン結合タンパク質sp32(OY-TES1);リンパ球特異的タンパク質チロシンキナーゼ(LCK);Aキナーゼアンカータンパク質4(AKAP-4);滑膜肉腫、X切断点2(SSX2);終末糖化産物受容体(RAGE-1);腎臓偏在1(RU1);腎臓偏在2(RU2);レグマイン;ヒトパピローマウイルスE6(HPV E6);ヒトパピローマウイルスE7(HPV E7);腸内カルボキシルエステラーゼ;熱ショックタンパク質70-2変異型(mut hsp70-2);CD79a;CD79b;CD72;白血球関連免疫グロブリン様受容体1(LAIR1);IgAのFcフラグメントの受容体(FCARまたはCD89);白血球免疫グロブリン様受容体サブファミリーAメンバー2(LILRA2);CD300分子様ファミリーメンバーf(CD300LF);C型レクチンドメインファミリー12メンバーA(CLEC12A);骨髄間質細胞抗原2(BST2);EGF様モジュール含有ムチン様ホルモン受容体様2(EMR2);リンパ球抗原75(LY75);グリピカン-3(GPC3);Fc受容体様5(FCRL5);ならびに免疫グロブリンラムダ様ポリペプチド1(IGLL1)からなる群から選択される抗原に結合する、上記20から27のいずれか一項に記載のレンチウイルス移入ベクター。
29.前記抗原結合性ドメインが、CD19、メソテリン、またはCD123に結合する、上記28に記載のレンチウイルス移入ベクター。
30.前記CARが、抗CD19抗体またはそのフラグメント、4-1BB(CD137)膜貫通ドメイン、およびCD3-ゼータシグナル伝達ドメインを含む、上記19から29のいずれか一項に記載のレンチウイルス移入ベクター。
31.5’から3’に、作動可能なつながりで、以下のエレメント:
プロモーター、
主要スプライスドナー部位(SD)を含むパッケージングシグナル(プシー)、
部分的gag配列、
部分的env配列、
Rev応答エレメント(RRE)、
スプライスアクセプター部位(SA7)を含む部分的env配列、
スプライスアクセプター部位(SA1)を含むセントラルポリプリントラクト(cPPT)、
構成的スプライスドナー部位(CD)および構成的スプライスアクセプター部位(CD)を含むEF1aプロモーター、
任意選択で、EGFPをコードする遺伝子および/または異種核酸配列、ならびに
転写後制御エレメント
のうちの1つまたは複数を含む、レンチウイルス移入ベクター。
32.5’から3’に、作動可能なつながりで、以下のエレメント:
CMVプロモーター、
LTR R領域、
LTR U5領域、
プライマー結合部位(PBS)、
主要スプライスドナー部位(SD)を含むパッケージングシグナル(プシー)、
部分的gag配列、
部分的env配列、
Rev応答エレメント(RRE)、
スプライスアクセプター部位(SA7)を含む部分的env配列、
スプライスアクセプター部位(SA1)を含むセントラルポリプリントラクト(cPPT)、
EF1aプロモーター、
任意選択で、EGFPをコードする遺伝子および/または異種核酸配列、
転写後制御エレメント、
LTR R領域、
LTR U5領域、
SV40ポリA尾部、
カナマイシン耐性遺伝子(nptII)、ならびに
pUC複製起点
のうちの1つまたは複数を含む、上記31に記載のレンチウイルス移入ベクター。
33.前記転写後制御エレメントが、ウッドチャック肝炎ウイルスPRE(WPRE)またはB型肝炎ウイルス分離株bba6 PRE(HPRE)を含む、上記31または32に記載のレンチウイルス移入ベクター。
34.前記異種核酸配列が、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする、上記31から33のいずれか一項に記載のレンチウイルス移入ベクター。
35.前記CARが、抗CD19抗体またはそのフラグメント、4-1BB(CD137)膜貫通ドメイン、およびCD3-ゼータシグナル伝達ドメインを含む、上記34に記載のレンチウイルス移入ベクター。
36.上記1から35のいずれか一項に記載のレンチウイルス移入ベクターを含む、宿主細胞。
37.前記宿主細胞が、293T細胞、Jurkat T細胞、または初代ヒトT細胞である、上記36に記載の宿主細胞。
38.1つまたは複数のレンチウイルスパッケージングベクターをさらに含む、上記36または37に記載の宿主細胞。
39.上記1から35のいずれか一項に記載のレンチウイルス移入ベクターおよび1つまたは複数のパッケージングベクターを含む、組成物。
40.異種核酸配列を発現することができるレンチウイルスを産生する方法であって、
(a)細胞に、
(i)上記1から35のいずれか一項に記載のレンチウイルス移入ベクター、および
(ii)1つまたは複数のレンチウイルスパッケージングベクター
を導入するステップと、
(b)前記細胞において、前記レンチウイルス移入ベクターおよび/または前記パッケージングベクターによってコードされるウイルスタンパク質を発現させ、それによって、前記レンチウイルス移入ベクターの異種核酸配列を含むレンチウイルスを産生するステップと
を含む、方法。
41.前記細胞が、293T細胞、Jurkat T細胞、または初代ヒトT細胞である、上記40に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図12C
図12D
図12E
図12F
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図14