(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-05
(45)【発行日】2022-08-16
(54)【発明の名称】糸を巻き取るための装置
(51)【国際特許分類】
B65H 67/08 20060101AFI20220808BHJP
【FI】
B65H67/08 B
(21)【出願番号】P 2018553991
(86)(22)【出願日】2017-04-06
(86)【国際出願番号】 EP2017058185
(87)【国際公開番号】W WO2017178312
(87)【国際公開日】2017-10-19
【審査請求日】2020-01-23
(31)【優先権主張番号】102016004563.9
(32)【優先日】2016-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】307031976
【氏名又は名称】エーリコン テクスティル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Oerlikon Textile GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Leverkuser Strasse 65, D-42897 Remscheid, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン コンラート
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス キュッパー
(72)【発明者】
【氏名】フィリプ ユングベッカー
【審査官】沖 大樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-189490(JP,A)
【文献】特開2005-219880(JP,A)
【文献】特開平09-110300(JP,A)
【文献】実開平02-002365(JP,U)
【文献】特開2001-247258(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2001/0022071(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第1509972(CN,A)
【文献】特開2013-056766(JP,A)
【文献】特開平09-077381(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 54/00-54/553
B65H 67/00-67/08
D01H 1/00-17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸(28)を巻き取るための装置であって、巻管(5)を緊締するための、互いに反対の側に位置する2つのクランプディスク(2.1,2.2)を有する可動のパッケージホルダ(1)と、前記パッケージホルダ(1)に対応配置された駆動可能な駆動ローラ(7)と、揺動するように駆動される糸ガイド(9)を有する綾振り装置(8)と、パッケージ交換時に糸(28)をガイドするための、前記駆動ローラ(7)に糸走路において前置された補助装置(12)とを備え、該補助装置(12)が、吸込み装置に接続された、サクション通路(37)を備える1つのサクションノズル(13)を有しており、該サクションノズル(13)が、サクション端部(14)においてサクション開口(20)を形成している、糸を巻き取るための装置において、
前記サクションノズル(13)は、前記サクション端部(14)とは反対の側に位置する接続端部(17)で、1つの軸線の回りに回転可能に支承されており、回転駆動装置(18)により、90°よりも大きな旋回角度範囲において、複数の位置に位置決め可能であ
り、前記サクションノズル(13)の前記サクション端部(14)が、前記回転駆動装置(18)によって、静止位置と、引取り位置と、引渡し位置に位置決め可能であり、前記引取り位置において、前記サクションノズル(13)が、走入する糸(28)の糸走路に対して横方向に向けられており、前記引渡し位置において、前記サクションノズル(13)の前記サクション端部(14)が、前記クランプディスクのうち一方のクランプディスク(2.1)に接近するように対応配置されていることを特徴とする、糸を巻き取るための装置。
【請求項2】
前記サクションノズル(13)が、前記接続端部(17)と、前記サクション端部(14)との間で、管屈曲部(16)を有しており、前記サクション端部(14)を備える長手方向区分(15.1)が、前記接続端部(17)を備える長手方向区分(15.2)よりも長く形成されており、前記サクション端部(14)を備える前記長手方向区分(15.1)が、時計の針のように運動可能である、請求項1記載の糸を巻き取るための装置。
【請求項3】
前記サクションノズル(13)の前記サクション端部(14)に、前記引取り位置において、切断装置(21)が対応配置されており、該切断装置(21)は、静止位置と運転位置との間で高さ調節可能に形成されている、請求項
1または2記載の糸を巻き取るための装置。
【請求項4】
前記切断装置(21)が、糸ガイド(24)と、切刃(23)を備えるカッタホルダ(22)とを有しており、前記糸ガイド(24)と前記カッタホルダ(22)とが、互いに対して間隔を空けて、前記引取り位置における前記サクションノズル(13)の前記サクション開口(20)と前記綾振り糸ガイド(9)との間に配置されている、請求項
3記載の糸を巻き取るための装置。
【請求項5】
前記サクションノズルの前記サクション端部(14)に、前記サクション開口(20)に対して間隔を空けて切断装置(38)が保持されている、請求項
1または2記載の糸を巻き取るための装置。
【請求項6】
前記切断装置(38)が、前記サクション開口(20)に対して突出している糸案内エッジ(39)と、該糸案内エッジ(39)の端部に設けられたV字形のカッタ装置(40)とを有しており、該カッタ装置(40)の切断切欠き(41)が、前記サクション開口(20)に対して後退して形成されている、請求項
5記載の糸を巻き取るための装置。
【請求項7】
前記サクションノズル(13)が、前記サクション端部(14)において、少なくとも1つのガイド金属薄板(30)を備える保持体(29)を有しており、該ガイド金属薄板(30)は、前記糸(28)をガイドするための糸ガイドエッジ(31)を形成している、請求項1から
6までのいずれか1項記載の糸を巻き取るための装置。
【請求項8】
前記保持体(29)は、前記ガイド金属薄板(30)において糸ガイド(32)を支持しており、該糸ガイド(32)は、前記糸(28)をガイドするための別個の糸ガイド溝(33)を有している、請求項
7記載の糸を巻き取るための装置。
【請求項9】
前記サクションノズル(13)の前記サクション開口(20)と前記糸ガイド(32)とが直線状の糸走路を形成するように、前記糸ガイド(32)が、前記サクションノズル(13)の前記サクション開口(20)に対して間隔を空けて保持されている、請求項
8記載の糸を巻き取るための装置。
【請求項10】
前記サクション端部(14)を備える前記サクションノズル(13)の長手方向区分(15.1)は、前記サクション端部(14)の引渡し位置において前記サクション開口(20)と前記糸ガイド(32)との間に張られた糸区分が前記クランプディスク(2.1)のディスク縁部に巻き付くような長さを有している、請求項
8記載の糸を巻き取るための装置。
【請求項11】
前記サクションノズル(13)の前記サクション端部(14)に設けられた保持体(29)が、前記サクション開口(20)の一方の側で切断装置(38)を支持するとともに、前記サクション開口(20)の反対に位置する側で糸ガイド(32)を備えるガイド金属薄板(30)を支持している、請求項
5から
10までのいずれか1項記載の糸を巻き取るための装置。
【請求項12】
前記サクションノズル(13)が、前記サクション端部(14)にガイド切欠き(34)を有しており、該ガイド切欠き(34)が、前記サクション開口(20)を貫通している、請求項1から
11までのいずれか1項記載の糸を巻き取るための装置。
【請求項13】
前記サクションノズル(13)の前記回転駆動装置(18)が、ステッピングモータ(19)を有しており、前記サクション端部(14)を備える長手方向区分(15.1)が、時計回りに、かつ反時計回りに回転可能である、請求項1から
12までのいずれか1項記載の糸を巻き取るための装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念部に記載の形式の、可動のパッケージホルダを備える、糸を巻き取るための装置に関する。
【0002】
糸を巻き取るためのこのような形式の装置は、たとえば国際公開第2004/035446号(WO2004/035446A1)から公知である。
【0003】
糸を巻き取るためのこのような形式の装置は、通常、糸を連続的に巻き取ってパッケージを形成するために繊維機械において使用される。このためには、走入する糸がプロセスの最後にできるだけ中断なしにパッケージに巻き取られ得ることが通常である。その限りでは、満管の交換はできるだけ自動的に実施され得る。したがって、公知の巻取り装置もしくはワインダは、可動のパッケージホルダを有している。このパッケージホルダは、巻管に巻かれたパッケージを2つのクランプディスクの間で保持する。パッケージホルダに保持されたパッケージを、空管により置き換えることができるように、巻かれた糸は満管から分離される必要があり、パッケージ交換中に連続的に収容され、かつ新しいパッケージを巻成するために新たに敷設されなければならない。このためには、公知の巻き取り装置は、補助装置を有している。この補助装置は、糸をガイドするために旋回可能な支持体に保持されている。この支持体は、自由に突出する端部において、サクションノズルを保持している。このサクションノズルは、サクション通路を介して吸込み装置に接続されている。サクションノズルの自由端には、糸を収容するためのサクション開口が形成されている。さらに、旋回アームには移動可能な糸ガイドと切断装置とが配置されている。糸ガイドと切断装置とは、糸の分断および引取りならびに糸の引渡しを実施する。この場合、旋回アームは、パッケージホルダに対して相対的に種々異なる位置に配置され得る。
【0004】
実地において、パッケージ交換をできるだけ短い中断時間で実現することが試みられる。その限りでは、補助装置の迅速かつ正確な運動が必要であり、これにより短い中断時間を実現することができる。しかし、糸を巻き取るための公知の装置では、補助装置が、旋回アームの突出した自由端に支持され、したがって、旋回アームが高い慣性を有しているという問題が生じる。したがってこれにより、迅速かつ正確な位置変更は制限されてしか実施することはできない。さらに、補助装置全体を運動させるためには、高出力の旋回駆動装置が必要となる。
【0005】
したがって本発明の課題は、糸を巻き取るための冒頭で述べた装置を改良して、補助装置が迅速かつ正確な糸ガイドを可能にするようにすることである。
【0006】
この課題は、本発明によれば、サクションノズルは、サクション端部とは反対の側に位置する接続端部で回転可能に支承されており、回転駆動装置により、90°よりも大きい旋回角度範囲において複数の位置に位置決め可能であることにより解決される。
【0007】
本発明の有利な別の形態は、各従属請求項に記載された特徴および特徴の組み合わせにより規定されている。
【0008】
本発明は、パッケージ交換中の糸ガイドが、実質的にサクションノズルにより規定されており、該サクションノズルは、そのサクション端部において糸をガイドするという知識に基づいている。したがって、満管からの糸を分断後に糸を引き取るためにサクションノズルを位置決めし、新たな巻き取りを開始するために糸を引き渡すことは、糸ガイドにとって重要である。サクションノズルを回転駆動装置に直接に接続することは、サクションノズルのサクション端部の任意の位置が正確に制御され得るという特別な利点を有している。したがって、特に糸の引取りおよび糸の引渡し時の確実性が著しく高められる。
【0009】
糸を引き取り、糸を引き渡すための、装置内で予め規定された位置が簡単な形式で達成され得るようにするためには、さらに、サクションノズルが、接続端部とサクション端部との間で管屈曲部を有しており、サクション端部を有する長手方向区分が、接続端部を有する長手方向区分よりも長く形成されており、サクション端部を有する長手方向区分が、時計の針のように運動可能であることが規定されている。これにより、サクションノズルのサクション端部が、付加的な駆動装置なしに、対応する位置へとガイドされ得る。サクションノズルのサクション端部は、回転駆動装置のみによって、時計針の端部のように、種々異なる位置へと移行され得る。
【0010】
したがってサクションノズルのサクション端部は、回転駆動装置により、静止位置と、引取り位置と、引渡し位置とに位置決め可能であり、この場合、引取り位置において、サクションノズルは、走入する糸の糸走路に対して横方向に配向されており、引渡し位置では、サクションノズルのサクション端部は、クランプディスクのうちの1つのクランプディスクに接近するように対応配置されている。
【0011】
この場合、糸の引き取りは、特に本発明の別の態様により可能にされる。この態様では、引取り位置におけるサクションノズルのサクション端部に、切断装置が対応配置されている。この切断装置は、静止位置と運転位置との間で高さ調節可能に形成されている。したがって、切断装置は、既に引取り位置に配置されていてよく、必要に応じてのみ、高さ調節により糸走路内にガイドされ得る。
【0012】
切断装置は、好適には、糸ガイドと、切刃を備えるカッタホルダとにより形成されている。糸ガイドと、カッタホルダとは、互いに対して間隔を空けて、引取り位置におけるサクションノズルのサクション開口と、綾振り糸ガイドとの間に配置されている。これにより、綾振り糸ガイドの運動のみにより、糸が切断装置内にガイドされる可能性が生じる。切断装置の糸ガイドは、サクションノズルのサクション開口の直前に糸を位置決めすることを保証する。
【0013】
引取り位置において糸をサクションノズルの移動によってのみ引き取ることができるようにするために、好適には本発明の別の実施形態が実施されている。この実施形態では、サクションノズルのサクション端部において、サクション開口に対して間隔を空けて切断装置が保持されている。これにより、切断装置は、サクションノズルの運動により糸走路内にガイドされ得る。
【0014】
糸が、自動的に捕捉され切断され得るようにするために、切断装置が、サクション開口に対して突出した糸案内エッジと、この糸案内エッジの端部に設けられたV字形のカッタ装置とを有していて、カッタ装置の切断切欠きが、サクション開口に対してセットバックされて形成されていることが規定されている。これにより糸端部が、糸の分断後に、直接にサクション端部に設けられたサクション開口内に収容され得ることが保証されている。切断装置の突出した糸案内エッジにより、綾振りされた糸でさえ、この糸が難なく切断切欠き内に到達することがさらに可能にされる。
【0015】
糸の位置決めを支援するためには、サクションノズルが、サクション端部において、少なくとも1つのガイド金属薄板を備える保持体を有していて、該ガイド金属薄板が、糸をガイドするための糸ガイドエッジを形成している本発明の別の実施形態が特に有利である。これにより、サクションノズルのサクション端部は、サクション開口とは関係なしに付加的に糸ガイド機能を引き受けることができる。
【0016】
このようなガイド機能は、ガイド金属薄板に設けられた保持体が、糸ガイドを支持しており、該糸ガイドが、糸をガイドするための別個の糸ガイド溝を有していることによりさらに改善され得る。
【0017】
本発明の特に有利な構成によれば、糸ガイドが、サクションノズルのサクション開口に対して間隔を空けて保持されており、この場合、サクションノズルのサクション開口と、糸ガイドとが、直線状の糸走路を形成するようになっている。これによりサクションノズルは、サクション端部において、走入する糸の糸区分をガイドするために適している。
【0018】
したがって、このような糸区分は、回転する捕捉装置により捕捉されるために特に適している。その限りでは、サクション端部を有するサクションノズルの長手方向区分が、サクション端部の引渡し位置において、サクション開口と糸ガイドとの間に張られた糸区分がクランプディスクのディスク縁部に巻き付くような長さを有している本発明の別の実施形態が特に有利である。このようなクランプディスクは、有利には、ディスク縁部に、捕捉突起を有している。この捕捉突起は、糸を簡単な形式でサクションノズルから外すことができる。
【0019】
切断装置がサクションノズルにより支持される本発明の態様では、サクションノズルのサクション端部に設けられた保持体が、サクション開口の一方の側に切断装置を支持しており、サクション開口の、これとは反対の側に位置する側に、糸ガイドを備えるガイド金属薄板を支持する本発明の実施形態が有利に実施される。この場合、有利には、ガイド金属薄板のガイドエッジおよび切断装置の糸案内エッジが協働し、これによりサクションノズルの内側に向かった旋回時に走行する糸を捕捉することができる。
【0020】
サクションノズルのサクション端部において糸の効果的な吸込みをできるだけ小さなサクション作用で可能にするためには、サクションノズルがサクション端部において、ガイド切欠きを有している本発明の形態が特に有利である。このガイド切欠きは、サクション開口を貫通している。これにより、たとえば、糸が引取り位置において、サクションノズルのサクション端部に設けられたガイド切欠き内にガイドされるので、既にサクション端部に流入している周辺空気が糸に作用する。
【0021】
有利な別の形態によれば、サクションノズルの回転駆動装置が、ステッピングモータにより形成され、この場合、サクション端部を有する長手方向区分が、時計回りおよび反時計回りに回転可能である。これにより、サクションノズルの全ての運動が迅速かつ正確に、かつ高い再現性を有して実施され得る。
【0022】
したがって、糸を巻き取るための本発明に係る装置は、パッケージ交換が常に繰り返される精度で実施可能であるという特別な利点を有している。
【0023】
以下に、糸を巻き取るための本発明に係る装置の実施例を添付の図面に関連して詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】糸を巻き取るための本発明に係る装置の実施例の概略的な側面図である。
【
図2】
図1に示した実施例の概略的な平面図である。
【
図3】
図3.1,
図3.2および
図3.3は、
図1に示した実施例のサクションノズルのサクション端部を複数の視点で示している。
【
図4】
図4.1および
図4.2は、パッケージ交換時に引取り位置にあるサクションノズルを概略的に複数の視点で示している。
【
図5】引渡し位置におけるサクションノズルの概略的な平面図である。
【
図6】
図6.1,
図6.2および
図6.3は、本発明に係る装置の別の実施例の、糸をガイドするための補助装置を複数の視点で示している。
【0025】
図1および
図2には、糸を巻き取るための本発明に係る装置の実施例が概略的に複数の視点で図示されている。
図1には、この実施例が側面図で示されており、
図2には上から見た平面図で示されている。図面のうちの1つに明確に関連付けがなされない限り、以下の説明は両図面に該当する。
【0026】
糸を巻き取るための本発明に係る装置の実施例は、旋回可能なパッケージホルダ1を有している。このパッケージホルダ1は、旋回軸線3に支承されている。パッケージホルダ1には、旋回駆動装置4が対応して配置されている。フォーク形のパッケージホルダ1の自由端には、互いに反対の側に位置する2つのクランプディスク2.1,2.2が回動可能に支承されている。これらのクランプディスク2.1,2.2の間に、パッケージを収容するための巻管5が緊締されている。このためには、クランプディスク2.1,2.2は、それぞれ1つの円錐形のセンタリング付設部を有している。これらのセンタリング付設部は部分的に巻管端部内に突入する。これにより巻管5は、クランプディスク2.1,2.2の間でセンタリングされている。
【0027】
巻管5の表面もしくは巻成されたパッケージ6の表面には、駆動ローラ7が当て付けられる。この駆動ローラ7は、ローラ駆動装置(ここでは図示せず)に連結されている。ローラ駆動装置は、駆動ローラ7をほぼ一定の速度で糸を巻き取るために駆動する。摩擦を介して、巻管5は駆動されてパッケージ回転数に至るので、糸28は巻管5上に巻き取られてパッケージ6を形成する。
【0028】
糸を巻き取るために、駆動ローラ5には、糸走路において、揺動するように駆動される綾振り糸ガイド9を備える綾振り装置8が前置されている。綾振り糸ガイド9は、ベルト駆動装置10により駆動されている。この場合、通常は、綾振り糸ガイド9が、複数の変向ローラと1つの駆動ローラとを介してガイドされるベルトに取り付けられている。ベルト駆動装置10は、電動モータ11により駆動される。
【0029】
綾振り糸ガイド9には、糸走路において、ヘッド糸ガイド27が前置されている。このヘッド糸ガイド27は、巻き取り装置内への糸の走入をガイドする。
【0030】
図1および
図2において、通常の運転状況が図示されている。この通常の運転状況では、糸28は、ヘッド糸ガイド27を介して供給され、連続的に巻成されてパッケージ6を形成する。この場合、糸28は、綾振り糸ガイド9によってパッケージ表面に対して平行に揺動するように往復ガイドされ、これにより綾巻きが生じる。
【0031】
糸走路において綾振り装置8とヘッド糸ガイド27との間に、補助装置12が配置されている。この補助装置12により、パッケージ交換中の糸ガイドが行われる。補助装置12は、側方に配置されたサクションノズル13を有している。このサクションノズル13は、サクション開口20を備える可動なサクション端部14を有している。サクションノズル13の内部には、サクション通路37が形成されている。このサクション通路37は、吸込み装置(ここでは図示せず)と屑容器とに接続されている。サクションノズル13は、サクション端部14とは反対の側に位置する接続端部17を有している。この接続端部17は、回動可能に支承されており、回転駆動装置18に連結されている。回転駆動装置18は、ステッピングモータ19を有しており、これによりサクションノズル13のサクション端部14に旋回運動をさせることができる。
【0032】
図1の図面から特に明らかであるように、サクションノズルは、サクション端部14と接続端部17との間に形成された屈曲部16を備えている。その限りでは、サクションノズル13は、サクション端部を備える第1の長手方向区分15.1と、接続端部17を備える第2の長手方向区分15.2とを有している。この場合、長手方向区分15.1は、第2の長手方向区分15.2よりも著しく長く形成されており、時計の針のように、時計回りに、かつ反時計回りに運動することができる。
【0033】
サクションノズル13についてさらに説明するために、付加的に
図3.1,
図3.2および
図3.3が参照される。
図3.1~
図3.3には、サクションノズル13のサクション端部14が複数の視点で図示されている。
図3.1には、正面図が、
図3.2には平面図が、
図3.3には側面図が示されている。図面のうちの一つに明確に関連付けがなされない限り、以下の説明は各図面に該当する。
【0034】
サクションノズル13のサクション端部14には、保持体29が取り付けられている。この保持体29は、サクション開口20に対して間隔を空けて、ガイド金属薄板30を有している。このガイド金属薄板30は、下面にガイドエッジ31を支持しており、このガイドエッジ31は、糸を変向するために働く。ガイド金属薄板30の側面には、糸ガイド32が導入されている。この糸ガイド32は、開いたガイド溝33を有している。糸ガイド32は、ガイド金属薄板30において、サクションノズル13に対して突出している。この場合、糸ガイド32とサクション開口20とは、実質的に同一の糸走行平面に位置している。
【0035】
サクション端部14において、サクションノズル13は、一貫した糸切欠き34を有している。これにより、糸をサクション開口20に対して直交する横方向にガイドすることができる。サクションノズル13の端部に設けられた糸切欠き34により、糸は、既にサクション効果が糸において有効であるように、サクション開口20に対して横方向にガイドされ得る。サクション端部14に設けられた糸切欠き34は、ガイド金属薄板30のガイドエッジ31と一緒に作用して、これにより引取り位置において糸端部を吸い込むことができる。
【0036】
図1および
図2の図面から明らかであるように、補助装置12は、中間領域に配置された切断装置21を有している。この切断装置21は、切刃23を備えるカッタホルダ22を有している。カッタホルダ22は、綾振り手段に向けられた走入開口を有している。カッタホルダ22には、糸走路において、糸ガイド24が前置されている。カッタホルダ22と糸ガイド24とは、一緒に1つの可動の支持体25に保持されている。この支持体25は、リフト駆動装置26を介してその高さを調節可能に形成されている。
【0037】
図1および
図2では、補助装置12が、それぞれ運転停止状態で図示されている。この場合、サクションノズル13は、静止位置にある。この場合、サクションノズル13のサクション端部14は、糸走行方向とは反対方向で、綾振り領域の側方で隣に保持されている。
【0038】
切断装置21も、糸走路外で下側の静止位置に位置している。
【0039】
パッケージが所望の直径に達すると、パッケージ交換が開始する。
図4.1と
図4.2には、補助装置による糸の引取りが間近に迫っている状況が図示されている。
図4.1は平面図を示しており、
図4.2には糸の引取りのための運転状況の側面図が示されている。図面のうちの1つに明確に関連付けがなされない限り、以下の説明は両図面に該当する。
【0040】
パッケージ交換を開始するために、まずサクションノズル13を旋回させるための回転駆動装置18が作動させられる。サクションノズル13は、静止位置から引取り位置へとガイドされる。引取り位置では、サクションノズル13は、糸の走行方向に対してほぼ横方向に向けられており、この場合、サクション端部14に設けられたガイド金属薄板30のガイドエッジ31は、糸走行上に配置されている。次いで、切断装置21が、リフト駆動装置26により、静止位置から運転位置へ、ひいては糸28の糸走路内へと移動される。この場合、糸は、糸ガイド24により捕捉され、ガイド金属薄板30のガイドエッジ31において変向されて、この場合、糸28が、サクション端部14におけるサクション開口20に対して直交する横方向に延びている。この状況では、糸は、綾振り糸ガイド9によりガイドされる。綾振り糸ガイド9がストローク端部へ向かって運動を進めると、糸28は、カッタホルダ22の入口開口内へとガイドされ、切刃23により分断される。自由な糸端部は、即座にサクション開口20を介して収容され、サクション通路37を介して屑容器に向かって連続的に吸引される。切断装置21は、リフト駆動装置26により静止位置へと戻るようにガイドされる。
【0041】
パッケージホルダのパッケージが新規の巻管に置き換えられた後に、糸の巻き取り過程が継続して行われる。このためには、補助装置12の回転駆動装置18が改めて作動させられる。この場合、まずサクションノズル13が、時計回りとは反対向きに静止位置の方向に旋回させられる。この場合、糸は、ガイド金属薄板30のガイドエッジ31により外されて、サクションノズル13のサクション開口20内に直接に延びる。糸がガイド金属薄板30のガイドエッジ31を離れるや否や、回転駆動装置18の回転運動が反転され、この場合、サクションノズル13が時計回りに運動し、引渡し位置の方向へとガイドされる。この場合、糸は自動的にガイド金属薄板30の側面に形成された糸ガイド32内へと収容される。糸ガイド32とサクション開口20との間では、いまや糸28の糸区分がサクションノズル13のサクション端部14においてガイドされる。
【0042】
糸の引渡しを説明するために、以下では
図5が参照される。
図5には、サクションノズル13が引渡し位置において保持されている。この引渡し位置では、サクションノズル13の長手方向区分15.1の長さおよび回転駆動装置18の位置は、以下のように選択されている。すなわち、糸ガイド32とサクション開口20との間に延びる糸区分が、クランプディスク2.1の周面に接触するようになっている。この状況は
図5に図示されている。
【0043】
クランプディスク2.1には、周面に、捕捉突起35を備える切込み36が形成されている。したがって、クランプディスク2.1の運動が進行すると、糸28の糸区分は、クランプディスク2.1の縁部において、切込み36内に落ち、ひいては捕捉突起35により捕捉される。クランプディスク2.1は、内側面に、クランプ兼切断機構を有しているので、走入する糸は位置固定され、かつ巻管5上に巻き取られ得る。この場合、糸は自動的に綾振り糸ガイド9により捕捉され得るので、新しいパッケージ形成過程が開始される。サクションノズル13は、その静止位置に戻される。この場合、サクションノズル13は、好適には、時計回りとは反対方向に旋回させられる。この場合、サクションノズル13は、約180°の旋回角度にわたって回転され得る。基本的に、サクションノズル13の種々異なる位置および旋回角度は例示的である。極端な場合、サクションノズル13が、360°の旋回角度を移動することも可能である。
【0044】
ここで、補助装置12、特に糸ガイドのための機械的な装置の構成は部分的に例示的であることを示唆しておく。したがって、サクションノズル13のサクション端部14は、保持体29なしにも実施可能である。この場合、付加的な糸ガイドエレメントがたとえば引渡し位置または引取り位置に配置されてよい。同様に保持体29におけるガイド金属薄板の構成も例示的である。本発明にとって重要であるのは、サクションノズルの可動性と、それに関連するパッケージ交換中のフレキシブルな糸ガイドとである。
【0045】
図6.1,
図6.2および
図6.3には、補助装置12の別の実施例が、たとえば
図1および
図2に示した糸を巻き取るための本発明に係る装置においてどのように使用され得るかが示されている。
図1および
図2に示された実施例とは異なり、補助装置12のこの実施例では、切断装置がサクションノズルにおいて保持されている。
図6.1および
図6.3は、それぞれ1つの側面図を示しており、
図6.2は、サクションノズルのサクション端部の正面図を示している。図面のうちの1つに明確に関連付けがなされない限り、以下の説明は全ての図面に該当する。
【0046】
サクションノズル13は、上述の実施例と同一であり、サクション端部14を備える第1の長手方向区分15.1と、接続端部(ここでは図示せず)を備える第2の長手方向区分15.2とを有している。接続端部は回転可能に支承されており、回転駆動装置に連結されているので、サクション端部14を備える長手方向区分15.1は、時計の針のように回転する。
【0047】
サクションノズル13のサクション端部14には、保持体29が取り付けられている。この保持体29は、サクション開口20の一方の側に、切断装置38を支持しており、サクション開口20の反対に位置する側に、ガイド金属薄板30を支持している。切断装置38とガイド金属薄板30とは、サクション開口20に対して間隔を空けて保持されている。
【0048】
図6.1および
図6.2から判るように、切断装置38は、サクション開口20の左側に配置されている。この場合、サクションノズル13は、
図6.2に示された状況では、静止位置に位置している。したがって切断装置38は、側方で糸が走行するように保持されている。
【0049】
切断装置38は、この実施例では、糸案内エッジ39を有している。この糸案内エッジ39の自由端は、サクション開口20に対して突出している。糸案内エッジ39は、V字形に配置された2つのカッタ40.1,40.2により形成されているカッタ装置40内に通じている。その限りでは糸案内エッジ39は、カッタ装置40の切断切欠き41内に通じている。
【0050】
サクション開口20の反対に位置する側には、ガイド金属薄板30が配置されている。このガイド金属薄板30は、自由端を備える、サクション開口20に対して突出しているガイドエッジ31を有している。ガイドエッジ31は、ガイド溝33内に通じており、ガイド溝33は、
図6.3の図から明らかであるように、糸ガイド32を形成している。
【0051】
図6.1および
図6.3から判るように、サクションノズル13のサクション端部14には、V字形のガイド切欠き34が形成されている。このガイド切欠き34は、サクション開口20を貫通している。ガイド切欠き34は、糸ガイド32と、ガイド切欠き34と、切断切欠き41との間に糸走行平面が形成されるように、配向されている。
【0052】
図1および
図2に図示された糸の巻き取り装置において、パッケージ交換のために糸を引き取るためには、サクションノズル13が、回転駆動装置により引取り位置へと旋回させられる。この状況では、糸は、ガイド金属薄板30のガイドエッジ31と、切断装置38の糸案内エッジ39とを介して捕捉され、サクションノズル13のサクション開口20に向かって案内される。運動が進行すると、糸は、切断装置38のカッタ装置40内に到達し、切断切欠き41により分断される。分断後の自由な糸端部は、直接にサクション開口20内に吸い込まれ、糸ガイド32にガイドされる。
【0053】
満管がパッケージホルダから取り出され、新しい空管に置き換えられるや否や、新しい巻き取り過程が開始することができる。このためには、サクション端部14を有するサクションノズル13が、引渡し位置へと回転させられる。この状況は、
図5に示す上述の実施形態と同一である。その限りでは、
図5が参照される。
【0054】
糸が引き渡され、分断されるや否や、サクションノズル13は、回転駆動装置により、その静止位置へと戻るように移動させられる。
【0055】
したがって
図6.1~
図6.3に記載した、補助装置12の実施例は、別の構造的な実施形態を成す。この実施形態は、巻き取り装置におけるパッケージ交換の自動化のために適している。ステッピングモータとして形成された回転駆動装置によるサクションノズルの正確な位置の再現により、糸をガイドするための極めて高い捕捉確実性と、引渡し確実性が達成され得る。