(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-05
(45)【発行日】2022-08-16
(54)【発明の名称】鳥脅し装置および鳥の追い払い方法
(51)【国際特許分類】
A01M 29/16 20110101AFI20220808BHJP
【FI】
A01M29/16
(21)【出願番号】P 2019110455
(22)【出願日】2019-06-13
【審査請求日】2021-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】591262827
【氏名又は名称】株式会社シー・アイ・シー
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100086689
【氏名又は名称】松井 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100157772
【氏名又は名称】宮尾 武孝
(72)【発明者】
【氏名】今井 金美
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-24676(JP,U)
【文献】国際公開第01/074156(WO,A1)
【文献】実開平6-41487(JP,U)
【文献】特開2001-340047(JP,A)
【文献】韓国公開実用新案第20-2011-0002425(KR,U)
【文献】実開昭60-31287(JP,U)
【文献】登録実用新案第3071409(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 29/00
G10K 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鳥を追い払いたい場所に配置される被打撃部と、
厚さ方向の一側の打撃面が前記被打撃部に近接または接触する打撃位置、及び、前記打撃面が前記被打撃部から離隔する離隔位置の間を、往復移動可能に配置される帯板状の打撃部と、
前記打撃部を、前記打撃位置及び前記離隔位置の間で往復移動させて、前記打撃面を前記被打撃部に衝突させる駆動部と
を備え、
前記駆動部は、所定の揺動中心を中心に揺動するアームを備えており、前記打撃部は、長手方向が前記揺動中心の軸方向と直交する姿勢で、長手方向の一端が前記アームの先端部に接続されており、
前記駆動部が固定される基板部を備え、
前記被打撃部は、前記打撃部よりも長く延びる帯板状をなしており、前記基板部に固定されるか、または、前記基板部の一部から構成されており、
前記被打撃部は、前記打撃部が打撃位置にある場合に、前記打撃面の長手方向の全域が近接または接触する被打撃面を備えることを特徴とする鳥脅し装置。
【請求項2】
前記打撃部および前記被打撃部は、縦割りした竹から構成されることを特徴とする請求項1記載の鳥脅し装置。
【請求項3】
前記アームは、基部と、該基部に接続され、への字状に曲折された平板部とを有しており、該平板部の先端部に、前記打撃部の長手方向の一端が接続されている請求項1又は2記載の鳥脅し装置。
【請求項4】
前記打撃部は、長手方向寸法が300mm以上1000mm以下である
請求項1から3のいずれか1項に記載の鳥脅し装置。
【請求項5】
予め設定された開始時刻と終了時刻の間に、予め設定された時間間隔で前記打撃部を前記被打撃部に衝突させるように前記駆動部を作動させる制御部を備えることを特徴とする請求項1から
4までのいずれか1項に記載の鳥脅し装置。
【請求項6】
請求項1から
5までのいずれか1項に記載の鳥脅し装置を使用することを特徴とする鳥の追い払い方法。
【請求項7】
前記鳥脅し装置を樹木または建造物の高さ方向の中間部よりも上方に前記打撃部が位置するように設置することを特徴とする請求項
6に記載の鳥の追い払い方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛来する鳥による食害や糞害等を防止するために、鳥を脅して追い払う鳥脅し装置および鳥の追い払い方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人間にとって害をなす鳥を追い払うためのいわゆる鳥脅しとして、古くから案山子や鳴子等が農業において使用されている。近年では、丸い風船に大きな目玉を描いたものや、光を反射する円盤やテープなども使用されている。また、空港や山間部等の騒音が問題とならない地域においては、猟銃の空砲やガスの爆発による音を利用する手法も古くから使用されている。その他、鳥の体内時計を乱すと言われている磁石を設置したり、鳥のディストレスコールやアラームコールを録音したものをスピーカーから出力したりといった新たな手法も試みられている。
【0003】
但し、これらの手法は、鳥がすぐ慣れてしまうため、効果的に鳥を追い払えるものではなかった。このため、可動物の動作と音を組み合わせ、鳥の視覚と聴覚の両方に訴えることで、より効果的に鳥を追い払う手法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の手法は、不規則に揺動する細棒の動作によって視覚的に鳥を追い払うことを主眼として構成されており、聴覚に訴える音の発生は揺動部分とストッパの衝突音に起因するものであることから、音による脅し効果が低く、やはり鳥が慣れやすいという問題があった。
【0006】
本発明は、斯かる実情に鑑み、効果的に鳥を追い払うことが可能な鳥脅し装置および鳥の追い払い方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の鳥脅し装置は、鳥を追い払いたい場所に配置される被打撃部と、厚さ方向の一側の打撃面が前記被打撃部に近接または接触する打撃位置、及び、前記打撃面が前記被打撃部から離隔する離隔位置の間を往復移動可能に配置される帯板状の打撃部と、前記打撃部を前記打撃位置及び前記離隔位置の間で往復移動させて、前記打撃面を前記被打撃部に衝突させる駆動部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明の鳥脅し装置によれば、衝突時に、帯板状の打撃部を厚さ方向に振動させることができるため、より大きな音を周囲に響き渡らせることが可能となる。これにより、聴覚的な脅し効果を高めることが可能となるため、打撃部の動作による視覚的な脅し効果と共に鳥を効果的に追い払うことができる。
【0009】
また、本発明の鳥脅し装置において、前記被打撃部は、前記打撃部が打撃位置にある場合に、前記打撃面の長手方向の全域が近接または接触する被打撃面を備えることが好ましい。
【0010】
これによれば、打撃面が全体的に被打撃面に衝突して音を発生させるようにすることが可能となるため、音をより大きく響かせることができる。
【0011】
また、本発明の鳥脅し装置において、前記打撃部および前記被打撃部は、縦割りした竹から構成されることが好ましい。
【0012】
これによれば、竹特有のしなりや振動によって脅し効果の高い音を大きく響かせることができる。
【0013】
また、本発明の鳥脅し装置において、前記駆動部は、所定の揺動中心を中心に揺動するアームを備え、前記打撃部は、長手方向が前記揺動中心の軸方向と直交する姿勢で長手方向の一端が前記アームの先端部に接続されることが好ましい。
【0014】
これによれば、打撃部をしなるように弾性変形させながら被打撃部に衝突させ、衝突後にしなるように振動させることが可能となるため、音をより大きく響かせることができる。
【0015】
また、本発明の鳥脅し装置は、前記駆動部が固定される基板部を備え、前記被打撃部は、前記基板部に固定されるか、または、前記基板部の一部から構成されることが好ましい。
【0016】
これによれば、被打撃部、打撃部および駆動部を一つのユニットとして容易に運搬し、例えば鳥の集まる場所である樹木の上部等、鳥を追い払うのに効果的な場所に容易に設置することができる。
【0017】
また、本発明の鳥脅し装置において、前記打撃部は、長手方向寸法が300mm以上1000mm以下であることが好ましい。
【0018】
これによれば、打撃部の適度なしなりと振動によって効果的な音を発生させると共に、打撃部の動作による脅し効果を十分に発揮させることができる。
【0019】
また、本発明の鳥脅し装置は、予め設定された開始時刻と終了時刻の間に、予め設定された時間間隔で前記打撃部を前記被打撃部に衝突させるように前記駆動部を作動させる制御部を備えることが好ましい。
【0020】
これによれば、例えば鳥が集まる時間帯に限定して打撃部を動作させると共に、打撃部を周期的に動作させることで、一旦追い払われた鳥が再び戻ってくる度に追い払うことが可能となるため、より効果的に鳥を追い払うことができる。
【0021】
また、本発明の鳥の追い払い方法は、本発明の鳥脅し装置を使用することを特徴とする。
【0022】
本発明の鳥の追い払い方法によれば、本発明の鳥脅し装置によって聴覚的な脅し効果を高めることが可能となるため、打撃部の動作による視覚的な脅し効果と共に鳥を効果的に追い払うことができる。
【0023】
また、本発明の鳥の追い払い方法において、前記鳥脅し装置を樹木または建造物の高さ方向の中間部よりも上方に前記打撃部が位置するように設置することが好ましい。
【0024】
これによれば、鳥に近い場所で打撃部を動作させて音を発生させることが可能となるため、より脅し効果を高めることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る鳥脅し装置および鳥の追い払い方法によれば、効果的に鳥を追い払うことが可能という優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の一実施形態に係る鳥脅し装置の使用状態を示した概略図である。
【
図3】
図2におけるA方向矢視から見た断面図である。
【
図4】駆動部による打撃部の動作を示した図である。
【
図5】鳥脅し装置のその他の設置例を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る鳥脅し装置1の使用状態を示した外観斜視図である。
【0028】
同図に示されるように、鳥脅し装置1は、例えば鳥が飛来する樹木等、鳥を追い払いたい場所に設置されるものである。鳥脅し装置1は、樹木に固定された基板部10と、基板部10に固定された被打撃部20と、被打撃部20に近接して配置された打撃部30と、基板部10に固定されて打撃部30を揺動させる駆動部40と、基板部10とは別体に設けられた制御部50と、から構成されている。
【0029】
基板部10は、被打撃部20および駆動部40を支持する帯板状の部材である。鳥脅し装置1では、このような基板部10を設けることで、被打撃部20、打撃部30および駆動部40を一つのユニットとして運搬し、例えば樹木の枝等にこれらを容易に設置することを可能としている。
【0030】
基板部10は、シンプルな平板状に構成されており、例えば固定ベルトや針金、結束バンド等の既知の固定具12を利用して樹木の枝等に容易に固定することが可能となっている。基板部10の材質は、特に限定されるものではないが、樹木等の比較的高い位置に設置することを考慮すると、木材やアルミ合金等の軽量な素材であることが好ましい。
【0031】
被打撃部20は、打撃部30が衝突することにより、鳥を聴覚的に脅す衝突音を打撃部30と共に発生させるものである。被打撃部20は、基板部10よりも短く(長手方向寸法が小さく)、細い(幅方向寸法の小さい)帯板状の部材である。被打撃部20は、厚さ方向の一側の面を基板部10側に向け、厚さ方向の他側の面である被打撃面21を打撃部30側に向けた状態で、針金等の固定具22によって基板部10に固定されている。
【0032】
被打撃部20の材質は特に限定されるものではなく、木材、樹脂、金属または繊維強化複合材料等、既知の各種素材を採用することができる。但し、被打撃部20の材質は後述する打撃部30の材質との組み合わせで、より脅し効果の高い音を発生させる材質であることが好ましい。この点から本実施形態では、被打撃部20を縦割りにした竹から構成している。
【0033】
打撃部30は、駆動部40に駆動されて被打撃部20に衝突することで、被打撃部20と共に衝突音を発生させるものである。打撃部30はまた、被打撃部20に対して近接離隔するように揺動動作することによって、鳥を視覚的に脅す機能も担っている。打撃部30は、被打撃部20よりも短く(長手方向寸法が小さく)、細い(幅方向寸法の小さい)帯板状の部材である。打撃部30は、厚さ方向の一側の面である打撃面31を被打撃部20側に向けた状態で、長手方向の一端がねじ締結によって駆動部40に固定されている。
【0034】
図4に示すように、打撃部30は、通常の状態では打撃面31が被打撃部20の被打撃面21に近接または接触した状態となる打撃位置P1に配置されている。打撃位置P1において打撃面31は、被打撃面21と必ずしも接触していなくてもよい。そして、打撃部30は駆動部40に駆動され、打撃面31が被打撃面21から離隔した状態となる離隔位置P2に一旦移動した後に、再度打撃位置P1に戻ることによって打撃面31が被打撃面21に衝突し、被打撃部20との間で衝突音を発生させる。
【0035】
本実施形態では、打撃部30を帯板状に構成し、厚さ方向の一側の面である打撃面31を被打撃部20の被打撃面21に衝突させるようにすることで、より脅し効果の高い音を発生させることを可能としている。すなわち、互いに対向する面同士を衝突させることで衝突時に押しのけられる空気の量を大きくすると共に、衝突後の打撃部30を厚さ方向に振動させることができるため、より大きな音を周囲に響き渡らせることが可能となっている。
【0036】
本実施形態では特に、被打撃部20を打撃部30よりも長く構成し、打撃部30が打撃位置P1にある場合に打撃面31の長手方向の全域が被打撃面21に近接または接触するように配置することで、打撃面31が全体的に被打撃面21に衝突して音を発生させるようにしているため、音をより大きく響かせることが可能となっている。本実施形態ではさらに、被打撃部20を帯板状に構成しているため、衝突後の被打撃部20の厚さ方向の振動によって音をより響かせることを可能としている。
【0037】
打撃部30の材質は特に限定されるものではなく、木材、樹脂、金属または繊維強化複合材料等、既知の各種素材を採用することができる。本実施形態では、より脅し効果の高い音を発生させるべく、打撃部30は縦割りした竹から構成している。すなわち、竹は特有の弾性を有する素材であり、打撃部30として縦割りした竹を使用することで、竹特有のしなりや振動によって脅し効果の高い周波数帯の音を大きく響かせることが可能となる。さらに、この場合、被打撃部20も縦割りした竹から構成することで、竹特有のしなりや振動を相乗的に作用させ、より効果的な音を発生させることができる。
【0038】
打撃部30を構成する竹は、縦割り後に適宜に削って断面形状を整えたものであってもよいし、縦割りしたままの形状であってもよい。すなわち、打撃部30の長手方向に垂直な断面の形状は、蒲鉾形状や長方形状であってもよいし、円弧状であってもよい。被打撃部20を構成する竹についても同様である。但し、より効果的な音を発生させるためには、竹の表皮側の面を凸面のまま打撃面31および被打撃面21とすることが好ましい。
【0039】
打撃部30の各寸法は、特に限定されるものではないが、適度なしなりと振動によって効果的な音を発生させると共に動作による脅し効果を十分に発揮させるためには、長手方向の寸法が300mm以上1000mm以下であることが好ましく、400mm以上900mm以下であればより好ましい。同様に、打撃部30の幅方向の寸法は、40mm以上60mm以下であることが好ましく、20mm以上40mm以下であればより好ましい。同様に、打撃部30の厚さは、6mm以上15mm以下であることが好ましく、7mm以上10mm以下であればより好ましい。
【0040】
なお、被打撃部20の各寸法も特に限定されるものではないが、打撃面31が全体的に衝突して音を発生させるようにするためには、長手方向の寸法が打撃部30の長手方向の寸法以上であることが好ましい。同様に、被打撃部20の幅方向の寸法は、打撃部30の長手方向の寸法以上であることが好ましい。また、被打撃部20の厚さは打撃部30の厚さと同等であることが好ましい。
【0041】
また、被打撃部20および打撃部30は、長手方向に沿って厚さ、幅方向寸法または断面形状が変化するものであってもよい。
【0042】
駆動部40は、適宜の防水カバー60に覆われた状態で基板部10に固定されている。
図2は一部の構成の記載を省略することで駆動部40の内部構造を示した斜視図であり、
図3は
図2におけるA方向矢視から見た断面図である。
【0043】
これらの図に示されるように、駆動部40は、箱状の筐体41と、筐体41内に配置された支軸42と、支軸42周りに揺動可能に配置されたアーム43と、アーム43を揺動方向の一方に付勢するように筐体41内に配置された2つの付勢部材44と、筐体41内に収容されたモータ45および減速機46と、減速機46の出力軸46aに接続された扇形状の回動部材47と、回動部材47に突設された円柱状のピン48と、回動部材47の近傍に配置されたスイッチ49と、を備えている。
【0044】
筐体41は、平板を組み合わせて構成されており、駆動部40の各部を収容して保護するものである。筐体41には、平板をやや開いたコの字状に曲げて構成された架台41aが接続されており、この架台41aを介して筐体41は基板部10に固定されている。架台41aには、針金や固定ベルト等の固定具を通す通し孔41bが設けられており、筐体41はこの通し孔41bを通した固定具41cによって基板部10に固定されている(
図4参照)。
【0045】
支軸42は、アーム43を揺動可能に支持するものである。支軸42は、筐体41内に立設された2つの平板状の支持部材41dの間で両者を繋ぐように配置されている。なお、
図2では、図の手前側の支持部材41dの記載を省略している。
【0046】
アーム43は、打撃部30が接続される部分である。アーム43は、トレー状の基部43aと、基部43aにねじ締結で接続された平板状の平板部43bと、基部43aと平板部43bの間に挟持されたスカート状のスカート部43c(
図3及び
図4参照)と、から構成されている。
【0047】
基部43aは、減速機46および回動部材47と干渉する部分が切り欠かれた形状に構成されている。基部43aには支軸42が挿通されており、これによりアーム43は支軸42の中心を揺動中心として揺動可能となっている。また、アーム43は、筐体41の被打撃部20側において突出した開口41e(
図3参照)から基部43aの一部および平板部43bが露出する状態で配置されている。
【0048】
平板部43bの先端部分には、打撃部30の長手方向の一端がねじ締結によって接続されている。平板部43bに接続された打撃部30は、長手方向が支軸42の軸方向(すなわち、揺動中心の軸方向)と直行する姿勢となる。また、平板部43bは、打撃位置P1にある打撃部30が被打撃部20と略平行な状態となるように、への字状に曲折されている。スカート部43cは、基部43a側が開いたスカート状に構成されており、筐体41cの開口41eを塞ぐように設けられている。
【0049】
付勢部材44は、アーム43に接続された打撃部30が打撃位置P1に向かう方向にアーム43を付勢するものである。これにより、打撃部30は、通常の状態では打撃位置P1にある状態を維持するようになっている。付勢部材44は、ねじりコイルばねから構成されており、コイル部分に支軸42が挿通され、2つの支持部材41dをつなぐ補強部材41fの一つとアーム43の基部43aの底部分の間で付勢力を発生させるように配置されている。
【0050】
モータ45は、回動部材47を回転駆動するものであり、自身の出力軸が減速機46の入力軸に接続された状態で減速機46に固定されている。減速機46は、内部の歯車列によってモータ45の回転動力を減速して出力軸46aから回動部材47へ出力するものであり、図の奥側の支持部材41d(
図4参照)に固定されている。減速機46の出力軸46aは、支軸42と略平行に配置されている。
【0051】
回動部材47は、モータ45に駆動されて
図3における矢印方向に回動するものである。ピン48は、回動部材47から支軸42と略平行な方向に突設されており、回動部材47の回動に伴ってアーム43の基部43aの端部を付勢部材44の付勢力に抗して押圧するように配置されている。すなわち、アーム43は、ピン48に押圧されることによって打撃部30が離隔位置P2に向かう方向に揺動するようになっている。
【0052】
スイッチ49は、回動部材47が約1回転した場合にモータ45を停止させるものである。スイッチ49は、既知の構成により回動部材47の外周面47aの回転位置に基づいて、回動部材47が約1回転したことを検知し、モータ45への通電を切断して停止させる。スイッチ49はまた、制御部50から駆動部40への通電が切断されることによってリセットされ、これによりモータ45は再度起動可能となる。本実施形態では、スイッチ49を設けることで、制御部50を簡素に構成することを可能としている。
【0053】
図4は、駆動部40による打撃部30の動作を示した図である。制御部50がモータ45を起動して回動部材47を回転させると、同図に示されるようにピン48がアーム43の基部43aの端部を押圧してアーム43を図の矢印の方向に揺動させ、打撃部30を打撃位置P1から離隔位置P2まで移動させる。そして、打撃部30が離隔位置P2に到達するのと略同時にピンがアーム43の基部43aの端部から外れる。すると、付勢部材44の付勢力により、アーム43はそれまでと逆方向に勢いよく揺動し、打撃部30を再度打撃位置P1に移動させて、被打撃部20に衝突させる。
【0054】
上述のように、打撃部30は、長手方向が支軸42の軸方向と直交する姿勢でアーム43に接続されているため、打撃部30は、しなるように弾性変形しながら打撃位置P1に移動することとなる。従って、打撃位置P1において打撃面31が必ずしも被打撃面21に接触していなくとも、離隔位置P2から打撃位置P1に戻る際には打撃面32を被打撃面21に衝突させることができる。
【0055】
打撃面32が被打撃面21に衝突することで、上述のように鳥に対する脅し効果の高い音が発生する。このときも、打撃部30はしなるように振動することが可能であるため、より大きな音を周囲に響き渡らせることができる。また、打撃部30が比較的ゆっくりと打撃位置P1から離隔位置P2に移動した後に、急激に打撃位置P1に戻る動作は、鳥の視覚に十分に訴えるものであり、この動作によっても鳥を効果的に脅すことが可能となっている。
【0056】
図1に戻って、制御部50は、ケーブル51によって駆動部40と電気的に接続されている。制御部50は、既存の部品を組み合わせて構成され、電源52と、ブレーカ53と、24時間タイムスイッチ54と、タイマ55と、リレー56と、を備えている。
【0057】
電源52は、直流電源であり、駆動部40および制御部50の各部に電力を供給するものである。ブレーカ53は、異常時等に制御部50を電源52から遮断するためのものである。24時間タイムスイッチ54は、予め設定された開始時刻に電源52とタイマ55およびリレー56を接続し、予め設定された終了時刻に電源52とタイマ55およびリレー56を遮断するものである。
【0058】
タイマ55は、予め設定された間隔でリレー56のオンオフを切り替えるものである。本実施形態のタイマ55は、7分30秒間リレー56をオンにした後に、7分30秒間リレー56をオフにするという動作を繰り返すように設定されている。リレー56は、オンの場合は電源52と駆動部40の接続し、オフの場合は電源52と駆動部40を遮断するものである。
【0059】
これらの構成により制御部50は、まず予め設定された開始時刻(例えば、15時)に、24時間タイムスイッチ54が電源52とタイマ55およびリレー56を接続する。これにより、タイマ55が動作を開始し、リレー56をオンにする。すると、電源52から駆動部40に電力が供給され、モータ45が回転して回動部材47を回動させる。これにより、打撃部30が打撃位置P1と離隔位置P2の間で往復移動して衝突音を発生させる。
【0060】
その後、回動部材47が約1回転した後にスイッチ49がモータ45を停止させる。従って、打撃部30の往復移動および衝突音の発生は1回のみ行われる。このとき、リレー56はまだオンのままであるが、スイッチ49によってモータ45は回転しないようになっている。
【0061】
タイマ55は、リレー56をオンにしてから7分30秒後にリレー56をオフにする。すると、駆動部40への電力供給が遮断されるため、スイッチ49がリセットされ、モータ45は次に電力が供給された際に起動可能となる。そして、タイマ55は、リレー56をオフにしてから7分30秒後にリレー56を再度オンにし、以後、上述の内容が繰り返される。
【0062】
この結果、打撃部30は、7分30秒×2=15分間隔で動作して衝突音を発生させることとなる。そして予め設定された終了時刻(例えば、18時)になったならば、24時間タイムスイッチ54が電源52とタイマ55およびリレー56を切断する。これにより、タイマ55および駆動部40は電力の供給が遮断されて停止する。
【0063】
このように、制御部50は、例えば15時から18時までの間といった所定の時間帯においてのみ、打撃部30を動作させ、被打撃部20に衝突させることができるため、例えばムクドリがねぐらを求めて街路樹に集まる時間帯に絞って打撃部30を動作させ、効果的且つ効率的にこれらを追い払うことが可能となっている。
【0064】
また、制御部50は、所定の時間間隔で打撃部30を動作させるため、例えば一旦追い払った鳥が再び同じ場所に戻ってくるまでの時間間隔に合わせて動作を行わせることで、鳥が戻ってくる度に追い払うことができるため、効果的に鳥を追い払うことが可能となっている。なお、本実施形態では、打撃部30を動作させる時間間隔を15分に設定しているが、時間間隔がこれに限定されないことはいうまでもない。
【0065】
次に、鳥脅し装置1の設置方法について説明する。
【0066】
図5は、鳥脅し装置1のその他の設置例を示した外観斜視図である。同図に示されるように、鳥脅し装置1は、樹木以外にも例えば街灯柱や電柱、信号柱、塔、住宅、倉庫、ビル、橋梁等の人工的に作られた建造物に基板部10が設置されるものであってもよい。
【0067】
また、鳥の聴覚および視覚に効果的に訴えるためには、被打撃部20および打撃部30は追い払いたい鳥のなるべく近くに配置されることが好ましい。従って、基板部10は、樹木や建造物の最上部に設置されることが好ましく、少なくとも打撃部30が樹木または建造物の高さ方向の中間部よりも上方に位置するように基板部10を設置することが好ましい。
【0068】
さらに、打撃部30の動作を鳥に確実に視認させ、脅し効果をより高めるためには、打撃部30の先端が上方を向くように基板部10を設置することが好ましく、また、打撃部30が被打撃部20の上方に位置するように基板部10を設置することが好ましい。
【0069】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の鳥脅し装置1および鳥の追い払い方法は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0070】
例えば、基板部10の形状や駆動部40の各部の形状および配置は上記実施形態において示したものに限定されるものではなく、既知の種々の形状および配置を採用することができる。また、駆動部40はモータ45を使用するものに限定されず、その他のアクチュエータを使用するものであってもよい。また、制御部50は、コンピュータから構成されるものであってもよく、さらに基板部10に固定されるものであってもよい。
【0071】
また、上記実施形態において示した作用および効果は、本発明から生じる最も好適な作用および効果を列挙したものに過ぎず、本発明による作用および効果は、これらに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0072】
1 鳥脅し装置
10 基板部
20 被打撃部
21 被打撃面
30 打撃部
31 打撃面
40 駆動部
50 制御部
43 アーム
P1 打撃位置
P2 離隔位置