(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-05
(45)【発行日】2022-08-16
(54)【発明の名称】製造管理システム、及び製造管理方法
(51)【国際特許分類】
G05B 19/418 20060101AFI20220808BHJP
G06Q 50/04 20120101ALI20220808BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
G06Q50/04
(21)【出願番号】P 2019112565
(22)【出願日】2019-06-18
【審査請求日】2021-07-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000233055
【氏名又は名称】株式会社日立ソリューションズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】武田 正和
(72)【発明者】
【氏名】粂野 紀忠
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 浩二
(72)【発明者】
【氏名】阿部 優
【審査官】山本 裕太
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-341937(JP,A)
【文献】特開2002-149221(JP,A)
【文献】特開2004-241419(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0055524(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/418
G06Q 50/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサ及びメモリを有し、
所定の製品を製造している所定の装置から、前記装置による前記製品の製造状況を示す情報である製造状況情報を受信する製造状況情報受信部と、
前記受信した製造状況情報と、前記受信した製造状況情報が示す製品又は当該製品の製造方法に関する属性情報たるタグ情報とを対応づけて格納する、前記製品の製造工程の管理者が管理する所定の端末及び前記製造工程の上流工程の管理者が管理する所定の端末と通信可能に接続された所定のテータベースを生成する製造能力データベース生成部と、
前記受信した製造状況情報と、前記製品の製造の上流工程における業務計画に関する情報である業務計画情報とに基づき、前記製造状況情報が示す製造能力の範囲内での前記製品の製造の業務計画を行うための新たな前記業務計画情報を生成する業務計画情報修正部とを備え、
前記業務計画情報修正部は、前記製造状況情報が示す製造能力であって前記製品又は前記製品の製造方法の評価値である実績値と、前記業務計画情報が示す製造能力であって前記製品又は前記製品の製造方法の評価値である計画値との間の所定の中間値を算出し、算出した中間値が示す製造能力を、前記製造状況情報が示す製造能力の範囲内の能力として特定する、
製造支援システム。
【請求項2】
プロセッサ及びメモリを有し、
所定の製品を製造している所定の装置から、前記装置による前記製品の製造状況を示す情報である製造状況情報を受信する製造状況情報受信部と、
前記受信した製造状況情報と、前記受信した製造状況情報が示す製品又は当該製品の製造方法に関する属性情報たるタグ情報とを対応づけて格納する、前記製品の製造工程の管理者が管理する所定の端末及び前記製造工程の上流工程の管理者が管理する所定の端末と通信可能に接続された所定のテータベースを生成する製造能力データベース生成部と、
前記受信した製造状況情報と、前記製品の製造の上流工程における業務計画に関する情報である業務計画情報とに基づき、前記製造状況情報が示す製造能力の範囲内での前記製品の製造の業務計画を行うための新たな前記業務計画情報を生成する業務計画情報修正部と、
所定の要求情報に基づき前記業務計画情報を編集する業務設計部と、
前記業務計画情報修正部が生成した前記新たな業務計画情報を前記業務設計部に送信する設計管理部とを備え、
前記業務計画情報修正部は、前記受信した製造状況情報と、前記要求情報たる前記タグ情報と、前記業務計画情報とに基づき、前記新たな業務計画情報を生成する、
製造支援システム。
【請求項3】
プロセッサ及びメモリを有し、
所定の製品を製造している所定の装置から、前記装置による前記製品の製造状況を示す情報である製造状況情報を受信する製造状況情報受信部と、
前記受信した製造状況情報と、前記受信した製造状況情報が示す製品又は当該製品の製造方法に関する属性情報たるタグ情報とを対応づけて格納する、前記製品の製造工程の管理者が管理する所定の端末及び前記製造工程の上流工程の管理者が管理する所定の端末と通信可能に接続された所定のテータベースを生成する製造能力データベース生成部と、
前記受信した製造状況情報と、前記製品の製造の上流工程における業務計画に関する情報である業務計画情報とに基づき、前記製造状況情報が示す製造能力の範囲内での前記製品の製造の業務計画を行うための新たな前記業務計画情報を生成する業務計画情報修正部と、
前記生成した新たな業務計画情報を表示する表示部を備える、
製造支援システム。
【請求項4】
プロセッサ及びメモリを有する製造支援システムが、
所定の製品を製造している所定の装置から、前記装置による前記製品の製造状況を示す情報である製造状況情報を受信する製造状況情報受信処理と、
前記受信した製造状況情報と、前記受信した製造状況情報が示す製品又は当該製品の製造方法に関する属性情報たるタグ情報とを対応づけて格納する、前記製品の製造工程の管理者が管理する所定の端末及び前記製造工程の上流工程の管理者が管理する所定の端末と通信可能に接続された所定のテータベースを生成する製造能力データベース生成処理と、
前記受信した製造状況情報と、前記製品の製造の上流工程における業務計画に関する情報である業務計画情報とに基づき、前記製造状況情報が示す製造能力の範囲内での前記製品の製造の業務計画を行うための新たな前記業務計画情報を生成する業務計画情報修正処理と、
を実行し、
前記業務計画情報修正処理において、前記製造状況情報が示す製造能力であって前記製品又は前記製品の製造方法の評価値である実績値と、前記業務計画情報が示す製造能力であって前記製品又は前記製品の製造方法の評価値である計画値との間の所定の中間値を算出し、算出した中間値が示す製造能力を、前記製造状況情報が示す製造能力の範囲内の能力として特定する、
製造支援方法。
【請求項5】
プロセッサ及びメモリを有する製造支援システムが、
所定の製品を製造している所定の装置から、前記装置による前記製品の製造状況を示す情報である製造状況情報を受信する製造状況情報受信処理と、
前記受信した製造状況情報と、前記受信した製造状況情報が示す製品又は当該製品の製造方法に関する属性情報たるタグ情報とを対応づけて格納する、前記製品の製造工程の管理者が管理する所定の端末及び前記製造工程の上流工程の管理者が管理する所定の端末と通信可能に接続された所定のテータベースを生成する製造能力データベース生成処理と、
前記受信した製造状況情報と、前記製品の製造の上流工程における業務計画に関する情報である業務計画情報とに基づき、前記製造状況情報が示す製造能力の範囲内での前記製品の製造の業務計画を行うための新たな前記業務計画情報を生成する業務計画情報修正処理と、
所定の要求情報に基づき前記業務計画情報を編集する業務設計処理と、
前記業務計画情報修正処理が生成した前記新たな業務計画情報を、前記業務設計処理を行う処理部に送信する設計管理処理とを実行し、
前記業務計画情報修正処理において、前記受信した製造状況情報と、前記要求情報たる前記タグ情報と、前記業務計画情報とに基づき、前記新たな業務計画情報を生成する、
製造支援方法。
【請求項6】
プロセッサ及びメモリを有する製造支援システムが、
所定の製品を製造している所定の装置から、前記装置による前記製品の製造状況を示す情報である製造状況情報を受信する製造状況情報受信処理と、
前記受信した製造状況情報と、前記受信した製造状況情報が示す製品又は当該製品の製造方法に関する属性情報たるタグ情報とを対応づけて格納する、前記製品の製造工程の管理者が管理する所定の端末及び前記製造工程の上流工程の管理者が管理する所定の端末と通信可能に接続された所定のテータベースを生成する製造能力データベース生成処理と、
前記受信した製造状況情報と、前記製品の製造の上流工程における業務計画に関する情報である業務計画情報とに基づき、前記製造状況情報が示す製造能力の範囲内での前記製品の製造の業務計画を行うための新たな前記業務計画情報を生成する業務計画情報修正処理と、
前記生成した新たな業務計画情報を表示する表示処理とを実行する、
製造支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造管理システム、及び製造管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製品の製造現場においては、製品の品質向上、生産効率の向上、製造コストの削減等に向けられた努力が行われており、これらを支援するための情報管理システムが多く提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、情報処理装置が、部材を処理した装置、処理を担当した作業員、及び処理が行われたタイミングを互いに対応づけた情報であるトレーサビリティ情報を記憶するトレーサビリティ情報記憶処理と、部材の処理の状況、及びその処理が行われたタイミングを対応づけた情報である処理状況情報を記憶する処理状況情報記憶処理と、トレーサビリティ情報及び処理状況情報に基づき、同一のタイミングにおける、処理と、装置又は作業員と、処理の状況との組み合わせをオブジェクト統合データとして生成するオブジェクト統合データ生成処理と、生成したオブジェクト統合データの内容を出力するオブジェクト統合データ出力処理とを実行する製造管理システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ただ、こうした製造現場で蓄積された情報又はノウハウ等を、製品の設計側や部品の供給元(サプライヤ)といった上流工程に反映させることができなければ、業務の抜本的な改善は難しい。しかしながら、このようなフィードバックの仕組みは必ずしも充分に検討されてこなかった。
【0006】
本発明はこのような背景に鑑みてなされたものであり、その目的は、製品の製造現場の情報を上流工程にフィードバックさせることが可能な製造管理システム、及び製造管理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための、本発明の一つは、製造支援システムであって、プロセッサ及びメモリを有し、所定の製品を製造している所定の装置から、前記装置による前記製品の製造状況を示す情報である製造状況情報を受信する製造状況情報受信部と、前記受信した製造状況情報と、前記受信した製造状況情報が示す製品又は当該製品の製造方法に関する属性情報たるタグ情報とを対応づけて格納する、前記製品の製造工程の管理者が管理する所定の端末及び前記製造工程の上流工程の管理者が管理する所定の端末と通信可能に接続された所定のテータベースを生成する製造能力データベース生成部と、前記受信した製造状況情報と、前記製品の製造の上流工程における業務計画に関する情報である業務計画情報とに基づき、前記製造状況情報が示す製造能力の範囲内での前記製品の製造の業務計画を行うための新たな前記業務計画情報を生成する業務計画情報修正部とを備え、前記業務計画情報修正部は、前記製造状況情報が示す製造能力であって前記製品又は前記製品の製造方法の評価値である実績値と、前記業務計画情報が示す製造能力であって前記製品又は前記製品の製造方法の評価値である計画値との間の所定の中間値を算出し、算出した中間値が示す製造能力を、前記製造状況情報が示す製造能力の範囲内の能力として特定する。
また、本発明の他の一つは、製造支援システムであって、プロセッサ及びメモリを有し、所定の製品を製造している所定の装置から、前記装置による前記製品の製造状況を示す情報である製造状況情報を受信する製造状況情報受信部と、前記受信した製造状況情報と、前記受信した製造状況情報が示す製品又は当該製品の製造方法に関する属性情報たるタグ情報とを対応づけて格納する、前記製品の製造工程の管理者が管理する所定の端末及び前記製造工程の上流工程の管理者が管理する所定の端末と通信可能に接続された所定のテータベースを生成する製造能力データベース生成部と、前記受信した製造状況情報と、前記製品の製造の上流工程における業務計画に関する情報である業務計画情報とに基づき、前記製造状況情報が示す製造能力の範囲内での前記製品の製造の業務計画を行うための新たな前記業務計画情報を生成する業務計画情報修正部と、所定の要求情報に基づき前記業務計画情報を編集する業務設計部と、前記業務計画情報修正部が生成した前記新たな業務計画情報を前記業務設計部に送信する設計管理部とを備え、前記業務計画情報修正部は、前記受信した製造状況情報と、前記要求情報たる前記タグ情報と、前記業務計画情報とに基づき、前記新たな業務計画情報を生成する。
また、本発明の他の一つは、製造支援システムであって、プロセッサ及びメモリを有し、所定の製品を製造している所定の装置から、前記装置による前記製品の製造状況を示す情報である製造状況情報を受信する製造状況情報受信部と、 前記受信した製造状況情報と、前記受信した製造状況情報が示す製品又は当該製品の製造方法に関する属性情報たるタグ情報とを対応づけて格納する、前記製品の製造工程の管理者が管理する所定の端末及び前記製造工程の上流工程の管理者が管理する所定の端末と通信可能に接続された所定のテータベースを生成する製造能力データベース生成部と、前記受信した製造状況情報と、前記製品の製造の上流工程における業務計画に関する情報である業務計画情報とに基づき、前記製造状況情報が示す製造能力の範囲内での前記製品の製造の業務計画を行うための新たな前記業務計画情報を生成する業務計画情報修正部と、前記生成した新たな業務計画情報を表示する表示部を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、製品の製造現場の情報を上流工程にフィードバックさせることができる。
【0009】
その他、本願が開示する課題、およびその解決手段は、発明を実施するための形態の欄、および図面により明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態に係る製造管理システムの構成の一例を示す図である。
【
図2】製造能力DBのデータ構造の一例を示す図である。
【
図3】設計ITタグを備える製造情報の一例を示す図である。
【
図4】工具ITタグを備える製造情報の一例を示す図である。
【
図5】製品製造システムにおける各情報処理装置が備えるハードウェアの一例を説明する図である。
【
図6】設計フィードバック処理の一例を説明するフロー図である。
【
図9】品質チェック結果表示画面の一例を示す図である。
【
図10】工具フィードバック処理の一例を説明するフロー図である。
【
図12】工具使用実績詳細画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。ただし、本実施形態は本発明を実現するための一例に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0012】
図1は、本実施形態に係る製品製造システムの構成の一例を示す図である。製品製造システム1は、所定の部品を所定の工作機械を用いて組み立てることにより所定の製品を製造している1又は複数のメーカ企業30と、メーカ企業30による製品の製造の上流工程であって、メーカ企業30に対して部品を供給している1又は複数のサプライヤ企業20とが利用する情報処理システムである。
【0013】
製品製造システム1は、メーカ企業30に設けられるメーカ端末31及び製造装置33と、サプライヤ企業20に設けられるサプライヤ端末21と、メーカ企業30及びサプライヤ企業20による製品の製造を支援する製造支援システム10とを備える。
【0014】
メーカ端末31は、メーカ企業30の所定の管理者等が操作する情報処理装置であり、後述するクラウド空間103にアクセスすることができる。また、サプライヤ端末21は、サプライヤ企業20の所定の管理者等が操作する情報処理装置であり、クラウド空間103にアクセスすることができる。
【0015】
製造装置33は、例えば、メーカ企業30の工場等に設けられている、製品を製造するための各種機器である。本実施形態では、製造装置33は、製品を製造する所定の工作機械、及び工作機械に設けられる所定の工具(刃具等)であるものとする。
【0016】
製造支援システム10は、クラウド空間103及び製造管理システム105を有する。
【0017】
クラウド空間103は、メーカ端末31及びサプライヤ端末21と通信可能に接続されている情報処理システムである。クラウド空間103は、製品の製造及び管理に関する情報を蓄積した製造能力DB104(データベース)を備える。
【0018】
製造管理システム105は、製品の製造と、その上流工程である製品の設計とをそれぞれ管理する情報処理システムである。なお、製造管理システム105及びクラウド空間103の間、製造装置33及び製造管理システム105の間、サプライヤ端末21及びクラウド空間103の間、メーカ端末31及びクラウド空間103の間は、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、インターネット、専用線等の有線又は無
線の通信ネットワーク5によって通信可能に接続される。
<製造管理システムの機能>
次に、製造管理システム105が備える機能について説明する。
【0019】
製造管理システム105は、製品の製造管理に関して、製造状況情報受信部111、製造データ蓄積部112、及び解析部113を備える。
【0020】
製造状況情報受信部111は、メーカ企業30の各製造装置33から、製造装置33による製品の製造状況を示す情報(以下、製造状況情報という)を受信する。製造状況情報受信部111は、例えば、PLC(Programmable Logic Controller)により実現される。製造状況情報は、いわゆるOTデータ(OT: Operation Technology)であり、例えば、工作機械、又は工具等の制御データ、運用技術データを含む。
【0021】
すなわち、各製造装置33に設けられている所定のセンサは、当該製造装置33にかかっている応力、製造装置33に流れている電流、製造装置33が検知した振動等の情報を取得し、取得した情報を製造状況情報として製造状況情報受信部111に送信する。また、例えば、メーカ企業30の工場等に設けられている所定の画像撮影装置が、製造装置33、製品、又は部品の画像の情報を撮影し、撮影した画像を製造状況情報として製造状況情報受信部111に送信する。
【0022】
また、製造状況情報受信部111は、製造状況情報を製造データ蓄積部112に記憶する。製造状況情報受信部111は、後述する所定のタグ情報を、当該製造状況情報に対して付与する。そして、製造状況情報受信部111は、製造状況情報及びタグ情報を、クラウド空間103の製造能力DB104に蓄積する。なお、タグ情報は、後述する業務設計部108が作成する業務計画情報に対応した、製造状況情報が示す製品又は当該製品の製造方法の属性情報である。
【0023】
製造データ蓄積部112は、構造化データ及び非構造化データを記憶するレポジトリ(データレイク:Data Lake)である。
【0024】
解析部113は、製造能力DB104における製造状況情報に対して所定の解析処理を行うことにより、各製造装置33の性能を表す項目(スペック)の現場での評価値(実績値。例えば、モーターの回転数)を算出する解析アプリケーションである。そして、解析部113は、算出した実績値を、製造能力DB104に蓄積する。なお、本実施形態では、サプライヤ企業20のサプライヤ端末21が、このスペックに関する公表値(以下、スペック値という)を記憶しているものとする。
【0025】
次に、製造管理システム105は、製品の設計の管理に関して、業務設計部108、設計管理部109、及び業務計画情報修正部110を備える。
【0026】
業務設計部108は、製品の製造の上流工程における業務計画の情報、すなわち、製品の設計、製品の在庫管理、製品の製造コストの管理、又は製品の生産計画の立案等の、製品の製造に係る各種の業務計画の情報(以下、業務計画情報という)を管理する、1又は複数の業務アプリケーションである。設計管理部109は、ユーザからの入力により又は自動的に、業務計画情報を生成又は編集する。
【0027】
設計管理部109は、製品の製造に係るライフサイクル(製品の設計、開発、保守、廃棄、及びリサイクルにわたる包括的なプロセス)を管理する。設計管理部109は、業務設計部108と連携することにより、業務計画情報を一元管理する。また、設計管理部109は、業務計画情報修正部110が生成した新たな業務計画情報(次述)を、業務設計
部108に送信する。設計管理部109は、例えば、PLM(Product Lifecycle Management)により実現される。
【0028】
業務計画情報修正部110は、製品の製造現場の情報を、その上流工程である設計管理部109にフィードバックさせるチェックアプリケーションである。すなわち、業務計画情報修正部110は、製造能力DB104(製造状況情報、及びこれに付加される所定のタグ情報)、及び業務計画情報を参照することにより、製造状況情報が示す製造能力の範囲内での製品の製造の業務計画を行う、新たな業務計画情報を生成する。なお、タグ情報は、製造状況情報が示す製品又は当該製品の製造方法の属性情報である。
【0029】
例えば、業務計画情報修正部110は、製造状況情報が示す製造能力(製品又は製造方法)の評価値(実績値)と、業務計画情報が示す製品又は製造方法の評価値(スペック値)との間の所定の中間値を算出し、算出した中間値が示す製品又は製造方法を、製造状況情報が示す製造能力の範囲内の能力として特定する。なお、業務計画情報修正部110は、スペックの公表値を、サプライヤ端末21から取得する。
【0030】
製造能力DB作成部114は、メーカ端末31及びサプライヤ端末21と通信可能であって、製造状況情報と、製造状況情報が示す製品又は当該製品の製造方法に関する属性情報たるタグ情報とを対応づけて格納した製造能力DB104を生成する。
【0031】
表示部115は、業務計画情報修正部110が生成した新たな業務計画情報を表示する。
【0032】
ここで、製造能力DB104について説明する。
(製造能力DB104)
図2は、製造能力DB104のデータ構造の一例を示す図である。製造能力DB104は、各製造装置33の製造状況情報(OTデータ202)と、1又は複数のタグ情報(ITタグ201)とを対応づけ、製造情報150として記憶している。製造能力DB104は、業務設計部108及び解析部113が処理可能なデータ構造を有している。
【0033】
製造情報150は、1又は複数のITタグ201と、OTデータ202とを有する。ITタグ201は、製品又は製品の製造方法に関する情報であり、業務設計部108又は設計管理部109の要求情報である。ITタグ201は、例えば、製品の設計の仕様に関する情報である設計ITタグ、製品の製造に用いる工具の仕様に関する情報である工具ITタグ、製品又は部品の在庫の数量を規定した情報である在庫ITタグ、製品の所定期間ごとの生産量又は製品を製造する従業員の労務状況を規定した情報である生産計画ITタグ等がある。
【0034】
ここで、設計ITタグ、及び工具ITタグについて詳細に説明する。
(設計ITタグ)
図3は、設計ITタグを備える製造情報150の一例を示す図である。この製造情報150a(以下、設計情報という)は、過去の製造要件を活用した流用設計を実現するためタグ情報である。設計情報は、製品を構成する部品の設計に係るタグ情報である設計ITタグ308と、OTデータ202としての製造品OTデータ307とを有する。
【0035】
設計ITタグ308は、製品を構成する部品の素材の情報(例えば、素材の物理的又は化学的性質を表す所定のパラメータ)である素材情報301、部品の形状の情報である形状情報302、部品の寸法公差の情報である寸法公差情報303、部品に対して行う表面処理の内容を示す情報である表面処理情報304、部品の組み立てに対して適用する工法を示す情報(例えば、工法の種類又は目的ごとに割り当てられた所定のパラメータ)であ
る工法情報305、及び、部品の平面上又は空間上の形態を示す情報であるベクトル情報306の各情報を備える。なお、以下では、形状情報302、寸法公差情報303、ベクトル情報306を形状パラメータといい、素材情報301を素材パラメータといい、工法情報305を工法パラメータという。
【0036】
製造品OTデータ307は、製品に係るOTデータである。
(工具ITタグ)
次に、
図4は、工具ITタグを備える製造情報の一例を示す図である。この製造情報150b(以下、工具情報という)は、製品の製造に使用される工具(例えば、工作機械に装着されている刃具)に係るタグ情報である工具ITタグ405と、OTデータ202としての工具OTデータ404とを有する。
【0037】
工具ITタグ405は、工具のメーカ企業30の情報であるメーカ情報401、工具のサプライヤ企業20の情報であるサプライヤ情報402、及び、工具のスペック項目の情報である解析要素情報403の各情報を備える。工具ITタグ405は、工具の状況(刃具の摩耗状況など)を共有するために用いられる。
【0038】
ここで、
図5は、製品製造システム1における各情報処理装置が備えるハードウェアの一例を説明する図である。各情報処理装置は、CPU(Central Processing Unit)など
のプロセッサ11と、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等のメモリ12と、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置13と、キーボード、マウス、又はタッチパネル等の入力装置14と、ディスプレイ又はタッチパネル等の出力装置15と、他の情報処理装置と通信する通信装置16とを備える。製品製造システム1における各情報処理装置が備える各機能部の機能は、各情報処理装置のこれらのハードウェアによって、もしくは、各情報処理装置のプロセッサが、メモリや記憶装置に記憶されている各プログラムを読み出して実行することにより実現される。また、これらのプログラムは、例えば、二次記憶デバイスや不揮発性半導体メモリ、ハードディスクドライブ、SSDなどの記憶デバイス、又は、ICカード、SDカード、DVDなどの、情報処理装置で読み取り可能な非一時的データ記憶媒体に格納される。
<<処理>>
次に、製品製造システム1において行われる処理について説明する。
【0039】
まず、製造現場の情報を設計側にフィードバックする処理(以下、設計フィードバック処理という)について説明する。
<設計フィードバック処理>
図6は、設計フィードバック処理の一例を説明するフロー図である。まず、製造状況情報受信部111は、製造現場の各製造装置33から製造状況情報を受信する。そして、製造状況情報受信部111は、受信した製造状況情報を製造データ蓄積部112に蓄積する(S501)。なお、製造状況情報は、製造情報150aにおける製造品OTデータ307に対応する。
【0040】
そして、製造状況情報受信部111は、受信した製造状況情報に係る各製造装置33の設計タグ情報を取得し、取得した設計タグ情報と、製造データ蓄積部112における製造状況情報とを対応づけて、これらを製造能力DB104に記憶する(S502)。なお、設計タグ情報は、製造情報150aにおける設計ITタグ308に対応する。
【0041】
他方、設計管理部109は、業務設計部108に基づき、製品の設計に係る業務計画情報を生成し記憶する(S503)。具体的には、例えば、まず、業務設計部108(製品の設計を行う所定のアプリケーション)が、製品の構造を示すデータ(例えば、CAD(computer-aided design)データ)の入力を、ユーザから受け付ける。業務設計部108
は、入力されたデータを設計管理部109に送信する。なお、この業務計画情報には、製品の製造に係る従業員の労務管理のデータが含まれていてもよい。
【0042】
業務計画情報修正部110は、製造能力DB104に蓄積されている製造情報150aを取得し、取得した製造情報150aに基づき、製造装置33による製品の製造能力を推定し、その製造能力の範囲内にある新たな業務計画情報を作成する(S504-S507)。
【0043】
すなわち、まず、業務計画情報修正部110は、S503で生成した業務計画情報に基づき製造される製品(部品を含む。以下同様。)及びその製造方法(部品の製造方法を含む。以下同様。)と、S502で蓄積した製造情報150aが示す製品(実際に製造された製品)及びその製造方法とを特定する(S504)。
【0044】
そして、業務計画情報修正部110は、両者の類似性を表す類似度を、形状パラメータ又は素材パラメータ等のパラメータに基づき算出し、両者の類似度が高い製品及び製造方法を抽出する(S505)。
【0045】
具体的には、まず、業務計画情報修正部110は、S503で生成した業務計画情報に係る製品の構成部品及び製品の製造方法と、S502で蓄積した製造情報150aに係る製品の構成部品及びその製品の製造方法とを特定する(S504)。そして、設計管理部109は、業務計画情報及び製造情報150aで互いに対応する構成部品(1対1、1対複数、複数対複数で構成部品が対応する場合がある)を特定し、特定した構成部品の特徴を表す所定のパラメータ(形状パラメータ、素材パラメータ等)を、業務計画情報及び製造情報150aのそれぞれにつき算出し、それらのパラメータ値の近さを類似度(製品類似度)として算出する。同様に、業務計画情報修正部110は、業務計画情報及び製造情報150aで互いに対応する製造方法を特定し、特定した製造方法の特徴を表す所定のパラメータ(例えば、工法パラメータ)を業務計画情報及び製造情報150aのそれぞれにつき算出し、それらのパラメータ値の近さを類似度(製法類似度)として算出する(S505)。そして、業務計画情報修正部110は、S504で算出した製品類似度及び製法類似度のうち、その値が所定以上である製品及び製造方法を特定する(S505)。
【0046】
なお、業務計画情報修正部110は、製品の製造能力を推定し新たな業務計画情報を作成するに際して(S504-S505)、業務計画情報の作成の対象となる部品又は製造方法の指定をユーザから受け付けるようにしてもよい。
【0047】
例えば、
図7は、新たな業務計画情報を作成する部品(修正対象部品)を指定するための画面(部品指定画面)の一例を示す図である。部品指定画面400は、各部品の構造を表示する部品表示欄411と、部品表示欄411に表示されている部品に対する設計案の修正(フィードバック)を開始するためのチェック内容表示欄413とを備える。
【0048】
また、業務計画情報修正部110は、製品の製造能力を推定し新たな業務計画情報を作成するに際して(S504-S505)、使用するパラメータの指定をユーザから受け付けるようにしてもよい。
【0049】
例えば、
図8は、パラメータの指定を受け付ける画面(パラメータ指定画面)の一例を示す図である。パラメータ指定画面420には、修正対象部品の構造を表示する部品表示欄421と、その修正対象部品におけるパラメータの内容(部品の曲げ部分の形状パラメータ等)を表示すると共にその表示領域がユーザから指定されるとそのパラメータの指定を受け付けるパラメータ受け付け欄423とが表示される。
【0050】
次に、
図6のS506に示すように、業務計画情報修正部110は、S505で特定した製品及び製造方法のうち、製造側で定めた基準を満たしている製品及び製造方法を特定する。具体的には、例えば、業務計画情報修正部110は、S505で抽出した製品及び製造方法と、製品及び製造方法の合格基準を記憶した所定のデータベースとを比較することにより、合格基準を満たしている製品及び製造方法を特定する。なお、このデータベースは、例えば、予め、製造支援システム10のいずれかの装置(例えば、メーカ端末31、製造管理システム105)が記憶している。
【0051】
業務計画情報修正部110は、S506で特定した製品及び製造方法に係る、新たな業務計画情報を生成する(S507)。
【0052】
具体的には、例えば、業務計画情報修正部110は、業務計画情報における、S506で抽出した製品及び製造方法に係るパラメータ値と、製造情報150aにおける、S506で抽出した製品及び製造方法に係るパラメータ値との中間値を算出する。そして、業務計画情報修正部110は、その中間値をパラメータ値として有する、製造情報150aに係る製品及び製造方法を特定する。
【0053】
例えば、業務計画情報修正部110は、中間値又は、製品若しくは製造方法の入力をユーザから受け付けてもよいし、自動的に中間値を算出するようにしてもよい。なお、中間値は、例えば、両パラメータ値の平均値であってもよいし、その他の按分値であってもよい。これにより、製造側の現状と設計側の設計案の双方の要求を満たしうる新たな業務計画(製品の設計、部品の調達等)を行うことができる。
【0054】
なお、
図8に示すように、新たな業務計画情報を生成すると、パラメータ指定画面420には、処理が終了した旨425が表示される。
【0055】
次に、業務計画情報修正部110は、S507で生成した新たな業務計画情報を、設計管理部109に送信する(S508)。設計管理部109は、受信した設計情報を、業務設計部108に対応する情報に変換した上で、変換した各情報を業務設計部108に送信する(S509)。各業務設計部108は、設計情報が更新された旨を表示する(S509)。これにより、業務設計部108には、新たな業務計画情報がフィードバックされたことになる。
【0056】
なお、この際、業務計画情報修正部110は、例えば、以下の画面を表示する。
【0057】
図9は、新たな業務計画情報の内容を示す画面(品質チェック結果表示画面)の一例を示す図である。品質チェック結果表示画面440には、修正対象部品の表示欄441と、その修正対象部品に係る修正項目(パラメータ)の項目表示欄443と、その修正項目の内容の表示欄445とが表示される。
【0058】
以上の設計フィードバック処理により、設計管理部109が管理している業務の設計案を、メーカ企業30における製造状況に応じた適切な設計案に自動的に修正することができる。これにより、設計リードタイムの短縮、及び、設計又は製造製品の向上を実現することができる。
<工具フィードバック処理>
次に、製造現場の情報をサプライヤ企業20にフィードバックする処理(以下、工具フィードバック処理という)について説明する。
【0059】
図10は、工具フィードバック処理の一例を説明するフロー図である。まず、製造状況情報受信部111は、製造現場の各製造装置33から、各工具に係る製造状況情報(例え
ば、応力、電流、振動値等の制御情報)を受信する(S601)。そして、製造状況情報受信部111は、実績値を算出するために必要なスペック情報である制御情報(応力、電流、振動等に関するスペック項目の情報)を、受信した製造状況情報に対応づけて、これらを製造データ蓄積部112に蓄積する(S601)。なお、製造状況情報は、製造情報150bにおける工具OTデータ404に対応し、制御情報は製造情報150bにおける解析要素情報403に対応する。
【0060】
また、製造状況情報受信部111は、S601で製造データ蓄積部112に蓄積した各工具のデータに、その工具を使用しているメーカ企業30の情報(メーカの識別子等)と、その工具のサプライヤ企業20の情報(サプライヤの識別子等)とを付加し、これらの情報を付加したデータを、製造情報150bとして製造能力DB104に蓄積する(S602)。なお、メーカの情報は製造情報150bにおけるメーカ情報401に対応し、サプライヤの情報は製造情報150bにおけるサプライヤ情報402に対応する。
【0061】
解析部113は、所定のタイミング(例えば、所定の時刻、所定の時間間隔等)にて、製造能力DB104から、所定の工具に係る製造情報150bを取得する(S603)。
【0062】
解析部113は、S603で取得した製造情報150bに基づき、所定の工具の実績値を算出する(S604)。具体的には、例えば、解析部113は、工具及びこれによる加工対象の部品の素材ごとに、前記の制御情報に基づき、各工具のスペックの実績値を算出する。そして、解析部113は、算出した実績値を製造能力DB104の解析要素情報403に記憶する。
【0063】
サプライヤ端末21は、サプライヤ企業20が提供した部品の情報を製造能力DB104から取得する(S605)。具体的には、例えば、サプライヤ端末21は、自身の識別子を含む情報取得要求情報を製造能力DB104に送信し、その識別子(サプライヤ情報402)に係る製造情報150を、製造能力DB104から受信する。そして、サプライヤ端末21は、受信した情報を所定の画面に表示する(S605)。
(工具使用実績情報画面)
ここで、
図11は、サプライヤ端末21が表示する工具の画面(以下、工具使用実績情報画面)の一例である。工具使用実績情報画面600は、サプライヤ企業20が提供する工具を用いて製造される製品の名称欄601、その工具のサプライヤの情報欄603、その工具の名称欄605、及び、その工具のスペック項目(性能の項目)の実績値が必要な条件を満たしているか否かを示す判定情報欄607等を備える。そして、工具使用実績情報画面600に対してユーザから工具の選択があると、その工具の実績の判定に関する詳細を表示した画面(工具使用実績詳細画面)が表示される。
(工具使用実績詳細画面)
図12は、工具使用実績詳細画面の一例を示す図である。工具使用実績詳細画面650は、スペック項目の表示欄651、サプライヤ企業20が提供しているスペックの公表値を表示した公開スペック表示欄653、製造状況情報に基づく実績値を表示した実績スペック655、及び、公表値と実績値との乖離を表示した乖離値表示欄657を備える。
【0064】
サプライヤ企業20の管理者等は、工具使用実績情報画面600及び工具使用実績詳細画面650を参照することにより、スペックの公表値の修正又は、性能を向上させた工具の開発を行うことで、工具に係る業務の品質改善に取り組むことができる。
【0065】
続いて、
図10のS606に示すように、サプライヤ端末21は、各工具の実績値が必要な条件を満たしているか否かを判定する。
【0066】
工具の実績値が必要な条件を満たしていない場合は(S606:NO)、サプライヤ端
末21は、その工具のスペックの公表値を修正する(S607)。サプライヤ端末21は、修正した公表値を、製造管理システム105の業務設計部108に送信することで、業務計画情報を修正してもよい(業務設計部108が具体的な修正を行ってもよい)(S607)。また、そのサプライヤ企業20は、実績値を向上させるべく工具の品質改善に取り組むことになる(S612)。その後は、S601の処理が繰り返される。
【0067】
他方、工具の実績値が必要な条件を満たしている場合は(S606:YES)、サプライヤ端末21は、その工具を今後も使用可能であることを示す情報を実績値と共に、その工具を使用しているメーカ企業30のメーカ端末31に送信する(S608)。なお、メーカ企業30は、このような情報に基づき、他のサプライヤ企業20の工具と比較しつつ、より性能の良い工具を提供するサプライヤ企業20を選定するようになる(S609)。その結果、サプライヤ企業20間で工具の品質改善に係る競争が発生し、工具の品質が全体としても向上することになる(S611)。なお、S608の処理の後は、S601の処理が繰り返される。
【0068】
以上のように、工具フィードバック処理によれば、サプライヤ企業20が提供する工具の品質改善のサイクルが成立することになる。
【0069】
すなわち、工具を使用しているメーカ企業30は、製造能力DB104から各工具の使用状況を取得し、高品質や安価な工具の選定が可能となる。また工具を提供しているサプライヤ企業20は、製造能力DB104に蓄積されている実績データ及び解析データを活用することで、工具の品質の向上や、他のサプライヤ企業20との差別化等が可能となる。
【0070】
以上に説明したように、本実施形態の製造支援システム10によれば、製造装置33から製造状況情報を受信し、サプライヤ端末21及びメーカ端末31と通信可能な、製造状況情報とタグ情報とを対応づけた製造能力DB104を生成することで、製品の製造現場の情報をサプライヤ企業20及びメーカ企業30で共有し、業務改善に役立てることができる。すなわち、本実施形態の製造支援システム10によれば、製品の製造現場の情報を上流工程にフィードバックさせることができる。
【0071】
また、本実施形態の製造支援システム10は、前記受信した製造状況情報と、前記製品の製造の上流工程における業務計画に関する情報である業務計画情報とに基づき、前記製造状況情報が示す製造能力の範囲内での前記製品の製造の業務計画を行うための新たな前記業務計画情報を生成する業務計画情報修正部を備える。
【0072】
このように、製造状況情報と、製品の製造の上流工程に関する情報である業務計画情報とに基づき、製造状況情報が示す製造能力の範囲内の、新たな業務計画情報を生成するので、製品の製造の現場の状況を上流工程に確実に反映させることができる。
【0073】
例えば、メーカ企業30における製造部門とその上流工程である設計部門との間で効率的な連携が可能となり、設計品質の向上や製品の生産のリードタームの短縮を実現することができる。
【0074】
また、製造部門及びその上流工程であるサプライヤ企業20の間でも、効率的な連携が可能となる。例えば、メーカ企業30は、部品のサプライヤ企業20側からより安い工具の調達が可能となり、また、サプライヤ企業20側も、より品質の高い部品を提供することができるようになる。特に、メーカ企業30側が使用する工具は高価なものが多いため、より長持ちする工具をサプライヤ企業から購入することで、製造コストを低減することができるようになる。
【0075】
また、本実施形態の製造支援システム10において、前記業務計画情報修正部は、前記製造状況情報が示す製造能力であって前記製品又は前記製品の製造方法の評価値である実績値と、前記業務計画情報が示す製造能力であって前記製品又は前記製品の製造方法の評価値である計画値との間の所定の中間値を算出し、算出した中間値が示す製造能力を、前記製造状況情報が示す製造能力の範囲内の能力として特定する。
【0076】
このように、製造状況情報が示す製造能力(製品及び製造方法)の実績値と、業務計画情報が示す製造能力(製品及び製造方法)の計画値との間の中間の製造能力を、製造状況情報が示す製造能力の範囲内の能力として特定することで、製造現場の現在の製造能力を上流工程において目指している製造能力へと改善するよう促し、製造現場の質の向上を図ることができる。
【0077】
また、本実施形態の製造支援システム10は、所定の要求情報に基づき前記業務計画情報を編集する業務設計部と、前記業務計画情報修正部が生成した前記新たな業務計画情報を前記業務設計部に送信する設計管理部とをさらに備え、前記業務計画情報修正部は、前記受信した製造状況情報と、前記要求情報たる前記タグ情報と、前記業務計画情報とに基づき、前記新たな業務計画情報を生成する。
【0078】
このように、業務設計部(業務アプリケーション)の要求情報に対応したタグ情報を用いて新たな業務計画情報を生成し、この業務計画情報を業務設計部に送信することで、新たな業務計画情報を業務アプリケーションに容易にフィードバックさせることができる。これにより、業務アプリケーションを業務改善のために積極的に活用することができる。
【0079】
また、本実施形態の製造支援システム10においては、前記生成した新たな業務計画情報を表示する表示部を備える。
【0080】
これにより、改善された上流工程の業務を確認することができる。
【0081】
以上の実施形態の説明は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に本発明にはその等価物が含まれる。
【0082】
例えば、製造情報150におけるタグ情報は、設計管理部109又は業務設計部108が記憶していてもよいが、製造管理システム1における他の装置が記憶していてもよい。
【0083】
また、製造情報150におけるタグ情報の付加は、例えば、業務計画情報修正部110が行ってもよいが、製造管理システム1における他の装置が行ってもよい。
【0084】
また、本実施形態では、タグ情報として設計ITタグ及び工具ITタグを用いた処理を説明したが、他の種類のタグを用いてもよい。例えば、在庫ITタグの場合は、製品又は部品の在庫の回転率、在庫の回転期間、又は交差比率等の各情報をITタグ201に設定する。また、コストITタグの場合は、例えば、コストの積算値(製品の製造全体に係るコストの合計)、積算値に基づく将来のコストの予測値(計画値)の各情報をITタグ201に設定する。生産計画ITタグの場合は、例えば、製品の標準生産時間(労務時間)をITタグ201に設定する。そして、製造状況情報受信部111は、これらの情報に対応する製造状況情報を受信する。
【0085】
また、本実施形態では、製造能力の範囲を推定する際に、実績値と設計値の中間値を算出したが、製造能力の範囲を実績値に限るとしてもよい。これにより、製造現場の実態に
即した上流工程の業務を行うことができる。
【0086】
また、部品指定画面400、パラメータ指定画面420、又は品質チェック結果表示画面440等の各画面は、製品製造システム1内のいずれの情報処理装置が表示してもよい。
【符号の説明】
【0087】
1 製品製造システム、10 製造支援システム、20 サプライヤ企業、21 サプライヤ端末、30 メーカ企業、31 メーカ端末、33 製造装置、105 製造管理システム、108 業務設計部、109 設計管理部、110 業務計画情報修正部、111 製造状況情報受信部、112 製造データ蓄積部、113 解析部、114 製造能力DB作成部、115 表示部、103 クラウド空間、104 製造能力DB、150
製造情報