(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-05
(45)【発行日】2022-08-16
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/00 20060101AFI20220808BHJP
B62D 21/18 20060101ALI20220808BHJP
【FI】
E02F9/00 F
B62D21/18 E
(21)【出願番号】P 2019136046
(22)【出願日】2019-07-24
【審査請求日】2021-04-23
(73)【特許権者】
【識別番号】398071668
【氏名又は名称】株式会社日立建機ティエラ
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】弁理士法人広和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本圖 誠
(72)【発明者】
【氏名】藤川 良三
(72)【発明者】
【氏名】海崎 裕輝
(72)【発明者】
【氏名】平井 諒
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-186828(JP,A)
【文献】特開2001-207476(JP,A)
【文献】特開平09-111804(JP,A)
【文献】実開平02-130420(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2005/0241196(US,A1)
【文献】特開平11-043966(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/00
B62D 21/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走可能な下部走行体と、前記下部走行体の上側に旋回可能に支持された上部旋回体と、前記上部旋回体の前部に設けられた作業装置とからなり、
前記上部旋回体は、
支持ブラケットが前側に突出して設けられた旋回フレームと、
前記支持ブラケットに揺動可能に取付けられると共に、前記作業装置が取付けられるスイングポストとを備え、
前記支持ブラケットと前記スイングポストとが、上,下方向で同一軸線上に配置された上側ピンおよび下側ピンにより回動可能に連結された建設機械において、
前記下側ピンは
、前記上側ピンを挿着するために前記支持ブラケットと前記スイングポストとに設けられた上側ピン孔
を通過可能に当該下側ピンの直径が前記上側ピン孔の直径よりも小さく形成されていることを特徴とする建設機械。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械において、
前記下側ピンは、当該下側ピンを挿着するために前記支持ブラケットと前記スイングポストとに設けられた
前記下側ピン孔の直径よりも大径な鍔部を備えていることを特徴とする建設機械。
【請求項3】
請求項1に記載の建設機械において、
前記下側ピンは、挿着部分の長さが前記上側ピンの下面と
前記下側ピンの上面との間の長さよりも大きく形成されていることを特徴とする建設機械。
【請求項4】
請求項1に記載の建設機械において、
前記上側ピンと前記下側ピンには、それぞれ上面にねじ穴が設けられていることを特徴とする建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上部旋回体の前部に左,右方向に揺動可能に作業装置が設けられた油圧ショベル等の建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建設機械の代表例となる油圧ショベルは、自走可能な下部走行体と、下部走行体の上側に旋回可能に支持された上部旋回体と、上部旋回体の前部に設けられた作業装置とにより構成されている。
【0003】
ここで、油圧ショベルには、狭い作業現場等で作業を行うための小型の油圧ショベルがある。小型の油圧ショベルは、通常ミニショベルと呼ばれるもので、例えば、建物の内部での解体作業、狭い街路地での掘削作業に用いられる。小型の油圧ショベルは、旋回フレームの支持ブラケットに揺動可能に取付けられると共に、作業装置が取付けられるスイングポストを備えている。
【0004】
このスイングポストと旋回フレームの支持ブラケットとの間には、ピンが上,下方向に延びて設けられている。ここで、スイングポストには、作業装置を動作させるための圧油が流通する複数本の油圧ホースが通されている。そこで、従来技術では、旋回フレームの支持ブラケットにスイングポストを回動可能に連結しているピンを、上側ピンと下側ピンとに分割し、各ピン間に油圧ホースを通すためのスペースを確保する構成が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1では、上側ピンをスイングポストの上側から挿着し、下側ピンをスイングポストの下側から挿着している。この場合、ピンは、金属製で重量物であるから、挿着作業に手間を要する。特に、下側ピンの挿着作業では、作業者が下側ピンを持ち上げつつ、挿着する孔を探して位置合わせしなくてはならず、組立作業に手間と時間を要してしまうという問題がある。
【0007】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、下側ピンを上側から挿着することにより、下側ピンの挿着作業を容易にして組立作業性を向上できるようにした建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、自走可能な下部走行体と、前記下部走行体の上側に旋回可能に支持された上部旋回体と、前記上部旋回体の前部に設けられた作業装置とからなり、前記上部旋回体は、支持ブラケットが前側に突出して設けられた旋回フレームと、前記支持ブラケットに揺動可能に取付けられると共に、前記作業装置が取付けられるスイングポストとを備え、前記支持ブラケットと前記スイングポストとが、上,下方向で同一軸線上に配置された上側ピンおよび下側ピンにより回動可能に連結された建設機械において、前記下側ピンは、前記上側ピンを挿着するために前記支持ブラケットと前記スイングポストとに設けられた上側ピン孔を通過可能に当該下側ピンの直径が前記上側ピン孔の直径よりも小さく形成されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、下側ピンを上側から挿着することができ、下側ピンの取付作業を容易にして組立作業性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に適用される油圧ショベルを示す正面図である。
【
図2】旋回フレームの支持ブラケットにスイングポストを取付けた状態を示す要部拡大の斜視図である。
【
図3】第1の実施の形態による支持ブラケット、スイングポスト、上側ピンおよび下側ピンを組立てた状態で示す断面図である。
【
図4】第2の実施の形態によるスイングポストと下側ピンを、支持ブラケット、上側ピンと一緒に
図3と同様位置から見た断面図である。
【
図5】第3の実施の形態による支持ブラケット、スイングポスト、上側ピンおよび下側ピンを
図3と同様位置から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態に係る建設機械の代表例として、クローラ式の油圧ショベルを例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
【0012】
図1ないし
図3は本発明の第1の実施の形態を示している。建設機械としての油圧ショベル1は、後述のキャノピ18を備えたキャノピ仕様の小型の油圧ショベル(所謂、ミニショベルと呼ばれる機種)として構成されている。この油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、下部走行体2の上側に旋回可能に支持された上部旋回体3と、上部旋回体3の前部に設けられた作業装置4とにより構成されている。
【0013】
作業装置4は、例えば、土砂の掘削作業、建物の解体作業を行うものである。作業装置4は、後述する旋回フレーム5の支持ブラケット6にスイングポスト7を介して取付けられている。作業装置4は、スイングポスト7の上側部位に俯仰の動作が可能に取付けられたブーム4Aと、ブーム4Aの先端部に回動可能に取付けられたアーム4Bと、アーム4Bの先端部に回動可能に取付けられたバケット4Cと、これらを駆動するブームシリンダ4D、アームシリンダ4E、バケットシリンダ4Fとにより構成されている。なお、作業装置4では、バケット4Cに交換して、グラップル、ブレーカ等の他の作業具(いずれも図示せず)を取付けることができる。また、ブームシリンダ4Dは、基端側がスイングポスト7の前側部位に取付けられ、先端側がブーム4Aの途中部位に取付けられている。
【0014】
旋回フレーム5は、上部旋回体3の支持構造体を構成している。
図2に示すように、旋回フレーム5は、前,後方向に延びた底板5Aと、底板5A上に左,右方向に間隔をもって前,後方向に延びつつ、前側に向けて互いに接近して立設された左縦板5B,右縦板5Cと、左縦板5B,右縦板5Cの前側に位置して各縦板5B,5C上を覆うように延びた上面板5Dと、前側に設けられた後述の支持ブラケット6とにより構成されている。
【0015】
旋回フレーム5の支持ブラケット6は、スイングポスト7を支持するために、前側に突出して設けられている。支持ブラケット6は、旋回フレーム5の底板5A、左縦板5B、右縦板5Cおよび上面板5Dの前側部位を含んで構成されている。本実施の形態による支持ブラケット6は、後述の上側ピン12と下側ピン13とを用いてスイングポスト7を支持する構造となっている。
【0016】
このために、
図3に示すように、支持ブラケット6を形成する上面板5Dの前部位置には、下向きに突出して上側ボス6Aが設けられ、底板5Aの前部位置には、上向きに突出して下側ボス6Bが設けられている。この上で、支持ブラケット6には、上面板5Dと上側ボス6Aとを上,下方向に貫通した上側ピン孔6Cと、底板5Aと下側ボス6Bとを上,下方向に貫通した下側ピン孔6Dとが設けられている。上側ピン孔6Cと下側ピン孔6Dとは、同一の軸線O-Oをもった円形孔として形成されている。
【0017】
ここで、上側ピン孔6Cの直径d1(上側ピン12の直径D1よりもはめあい公差分だけ大きい)は、下側ピン孔6Dの直径d2(下側ピン13の直径D2よりもはめあい公差分だけ大きい)よりも大きく形成されている。この場合、上側ピン孔6Cの直径d1は、下側ピン13を吊った状態で下げることで、この下側ピン13を干渉しないように容易に挿通(通過)させることができる値に設定されている。
【0018】
スイングポスト7は、旋回フレーム5の支持ブラケット6に揺動可能に取付けられている。また、スイングポスト7には、作業装置4のブーム4Aおよびブームシリンダ4Dが取付けられている。スイングポスト7は、板厚方向(支持ブラケット6を挟む方向)に間隔をもって配置された左板部材8、右板部材9と、各板部材8,9の上,下方向の中間部に位置して左板部材8と右板部材9とを接続した上接続部材10と、上接続部材10の下側に位置して左板部材8と右板部材9とを接続した下接続部材11とを含んで構成されている。
【0019】
左板部材8,右板部材9には、上部に位置してブーム取付部8A,9Aが設けられ、前部に位置してシリンダ取付部8B,9B(
図1参照)が設けられている。各ブーム取付部8A,9Aには、作業装置4のブーム4Aのフート部が回動可能に取付けられている。各シリンダ取付部8Bには、作業装置4のブームシリンダ4Dのチューブが回動可能に取付けられている。
【0020】
上接続部材10は、上,下方向に間隔をもって対面した上板10A、下板10Bと、前側に位置して上板10Aと下板10Bとを連結した半円筒状の連結部10Cとによって断面U字状に形成されている。上接続部材10には、上板10Aと下板10Bとを上,下方向に貫通して上側ピン孔10Dが設けられている。この上側ピン孔10Dには、上側ピン12が挿着される。従って、上側ピン孔10Dは、支持ブラケット6の上側ピン孔6Cの直径d1と同等の直径をもった円形孔として形成されている。
【0021】
上接続部材10の上板10Aと下板10Bとの間には、旋回フレーム5の上面板5Dの前側部分と支持ブラケット6の上側ボス6Aとを僅かな隙間(スイング動作を許すための隙間)をもって配置することができる。
【0022】
下接続部材11は、上接続部材10と同様に、上,下方向に間隔をもって対面した上板11A、下板11Bと、前側の連結部11Cと、上板10Aと下板10Bとを上,下方向に貫通した下側ピン孔11Dとによって形成されている。下板11Bの下面位置には、下側ピン孔11Dよりも縮径してストッパ11Eが設けられている。このストッパ11Eは、下側ピン13が下方に抜けるのを規制している。さらに、下板11Bには、例えば、下側ピン孔11Dの径方向に延びてピン挿嵌孔11F(点線で図示)が設けられている。このピン挿嵌孔11Fには、下側ピン13の回転を規制する回止めピン14が挿嵌される。
【0023】
下側ピン孔11Dは、下側ピン13が挿着される。これにより、下側ピン孔11Dは、支持ブラケット6の下側ピン孔6Dの直径d2と同等の直径をもった円形孔として形成されている。下接続部材11の上板11Aと下板11Bとの間には、旋回フレーム5の底板5Aの前側部分と支持ブラケット6の下側ボス6Bとを僅かな隙間をもって配置することができる。
【0024】
次に、本実施の形態の特徴部分となる上側ピン12および下側ピン13の構成について説明する。
【0025】
上側ピン12は、旋回フレーム5の支持ブラケット6とスイングポスト7との間、即ち、支持ブラケット6の上側ボス6A(旋回フレーム5の上面板5Dを含む)とスイングポスト7の上接続部材10との間に上,下方向に延びて設けられている。上側ピン12は、支持ブラケット6の上側ピン孔6Cと上接続部材10の上側ピン孔10Dに挿着されている。上側ピン12は、各上側ピン孔6C,10Dに挿通されるピン本体12Aと、ピン本体12Aの上部の外周側に設けられた角鍔部12Bとを含んで構成されている。ピン本体12Aは、直径D1をもった円柱体として形成されている。このピン本体12Aは、直径D1が上側ピン孔6C,10Dの直径d1よりもはめあい公差分だけ小さく形成されている(ガタつかずに回動できる)。
【0026】
ピン本体12Aには、上面12Cの中央(軸線O-O)に位置してねじ穴12Dが設けられている。このねじ穴12Dには、上側ピン12を吊上げて移動するためのアイボルト等の吊り具(図示せず)が取付けられる。また、ピン本体12Aの下面12Eは、下側ピン13の上面13Aと対面している。
【0027】
ここで、
図2に示すように、角鍔部12Bは、対向する2辺がスイングポスト7の左板部材8と右板部材9との間に嵌るように形成されている。これにより、上側ピン12を上側ピン孔6C,10Dに挿着した状態では、角鍔部12Bは、スイングポスト7に対して上側ピン12を回止めすることができる。また、上側ピン12は、例えば、上側ピン孔6C,10Dに挿通された状態で、固定用の冶具(図示せず)を用いて上側から押さえられて抜止めされる。
【0028】
下側ピン13は、旋回フレーム5の支持ブラケット6とスイングポスト7との間、即ち、支持ブラケット6の下側ボス6B(旋回フレーム5の底板5Aを含む)とスイングポスト7の下接続部材11との間に上,下方向に延びて設けられている。下側ピン13は、支持ブラケット6の下側ピン孔6Dと下接続部材11の下側ピン孔11Dに挿着されている。下側ピン13は、直径D2をもった円柱体として形成されている。
【0029】
下側ピン13は、直径D2が下側ピン孔6D,11Dの直径d2よりもはめあい公差分だけ小さく形成されている(ガタつかずに回動できる)。この上で、下側ピン13は、直径D2が上側ピン12を挿着するために支持ブラケット6とスイングポスト7とに設けられた上側ピン孔6C,10Dの直径d1よりも小さく形成されている。これにより、下側ピン13は、上側ピン孔6C,10Dを通過することができる。
【0030】
下側ピン13には、上面13Aの中央(軸線O-O)に位置してねじ穴13Bが設けられている。このねじ穴13Bには、下側ピン13を吊上げて移動するためのアイボルト等の吊り具が取付けられる。また、下側ピン13は、下面13Cの外周側を下接続部材11のストッパ11Eに当接させることで、下方向への抜止めが図られている。
【0031】
さらに、下側ピン13の下側寄りには、下接続部材11のピン挿嵌孔11Fに対応する位置に、ピン穴13Dが設けられている。従って、ピン挿嵌孔11Fおよびピン穴13Dに回止めピン14を挿嵌することにより、下側ピン13は、回止めピン14によってスイングポスト7に対して回止め状態、抜止め状態で固定される。
【0032】
なお、上部旋回体3には、オペレータが着座する運転席15が設けられている。運転席15の左,右両側には、作業装置4等を操作する作業用の操作レバー16(左側のみ図示)が設けられている。また、運転席15の前側には、走行用の操作レバー17が設けられている。さらに、上部旋回体3には、運転席15の上方を覆うキャノピ18が設けられている。
【0033】
本実施の形態による油圧ショベル1は、上述の如き構成を有するもので、次に、その動作について説明する。
【0034】
オペレータは、上部旋回体3に搭乗し、運転席15に着座する。この状態で、走行用の操作レバー17を操作することにより、下部走行体2を走行させることができる。一方、オペレータが作業用の操作レバー16を操作することにより、上部旋回体3の旋回動作、作業装置4による土砂の掘削作業等を行うことができる。
【0035】
次に、旋回フレーム5の支持ブラケット6にスイングポスト7を取付ける組立作業の一例について説明する。
【0036】
まず、昇降機(クレーン、リフタ等)を用いてスイングポスト7を旋回フレーム5の支持ブラケット6の高さ位置に配置する。この状態で、スイングポスト7の上接続部材10の上板10Aと下板10Bとの間に旋回フレーム5の上面板5Dと支持ブラケット6の上側ピン孔6Cとを配置し、支持ブラケット6の上側ピン孔6Cと上接続部材10の上側ピン孔10Dとを位置合わせする。同様に、スイングポスト7の下接続部材11の上板11Aと下板11Bとの間に旋回フレーム5の底板5Aと支持ブラケット6の下側ピン孔6Dとを配置し、支持ブラケット6の下側ピン孔6Dと下接続部材11の下側ピン孔11Dとを位置合わせする。
【0037】
このように、旋回フレーム5の支持ブラケット6に対してスイングポスト7を位置決めしたら、下側ピン13のねじ穴13Bにアイボルトを螺着して下側ピン13をクレーンで吊上げ、上側ピン孔6C,10Dの上方に移動させる。この状態で、下側ピン13を下降させることにより、下側ピン13は、上側ピン孔6C,10Dを下側に向けて通過することができる。そして、上側ピン孔6C,10Dを通過した下側ピン13は、支持ブラケット6の下側ピン孔6Dと下接続部材11の下側ピン孔11Dとに挿着することができる。
【0038】
また、下側ピン13を下側ピン孔6D,11Dに挿着したときには、ストッパ11Eが下側ピン13の下面13Cに当接することで、下側ピン13の軸方向の位置決め、下側への抜止めを図ることができる。さらに、下側ピン13を下側ピン孔6D,11Dに挿着した状態では、下接続部材11のピン挿嵌孔11F、下側ピン13のピン穴13Dに回止めピン14を挿嵌する。これにより、回止めピン14は、下側ピン13を回止め、抜止めすることができる。
【0039】
下側ピン13を下側ピン孔6D,11Dに挿着したら、上側ピン12のねじ穴12Dにアイボルトを螺着して上側ピン12をクレーンで吊上げ、上側ピン孔6C,10Dの上方に移動させる。この状態で、上側ピン12を下降させることにより、上側ピン12は、上側ピン孔6C,10Dに挿着することができる。このときに、上側ピン12の角鍔部12Bの対向する2辺を、スイングポスト7の左板部材8と右板部材9との間に嵌るように配置する。これにより、上側ピン12を、スイングポスト7に対して回止めすることができる。また、上側ピン12は、固定用の冶具を用いて上側から押さえることで、抜止めすることができる。
【0040】
かくして、本実施の形態によれば、旋回フレーム5の支持ブラケット6とスイングポスト7とは、上,下方向で同一の軸線O-O上に配置された上側ピン12および下側ピン13により回動可能に連結されている。この上で、下側ピン13は、直径D2が上側ピン12を挿着するために支持ブラケット6とスイングポスト7とに設けられた上側ピン孔6C,10Dの直径d1よりも小さく形成されている。
【0041】
従って、下側ピン13は、上側ピン孔6C,10Dを通じて下側ピン孔6D,11Dに上側から挿着することができる。これにより、特許文献1のように、下側ピンをスイングポストの下側から挿着する場合に比較し、下側ピン13を、下側ピン孔6D,11Dに容易に挿着することができる。この結果、下側ピン13の挿着作業を容易にして組立作業性を向上することができる。
【0042】
上側ピン12には、アイボルト等の吊り具を取付けるためのねじ穴12Dが設けられている。また、下側ピン13には、吊り具を取付けるためのねじ穴13Bが設けられている。これにより、上側ピン12および下側ピン13には、クレーン等を用いて容易に昇降させることができる。
【0043】
次に、
図4は本発明の第2の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、下側ピンは、当該下側ピンを挿着するために支持ブラケットとスイングポストとに設けられた下側ピン孔の直径よりも大径な鍔部を備えていることにある。なお、本実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0044】
図4において、第2の実施の形態によるスイングポスト21の下接続部材22は、第1の実施の形態による下接続部材11と同様に、上板22A、下板22B、連結部22C、下側ピン孔22Dおよびピン挿嵌孔22Eを有している。しかし、第2の実施の形態による下接続部材22は、ストッパが省略されている点で、第1の実施の形態による下接続部材11と相違している。
【0045】
第2の実施の形態による下側ピン23は、第1の実施の形態による下側ピン13と同様に、上面23A、ねじ穴23B、下面23Cおよびピン穴23Dを有している。しかし、第2の実施の形態による下側ピン23は、上端位置に円形状の鍔部23Eが設けられている点で、第1の実施の形態による下側ピン13と相違している。
【0046】
鍔部23Eの直径D3は、下側ピン孔6D,22Dの直径d2よりも大径(大きな寸法)で、かつ上側ピン孔6C,10Dの直径d1よりも小径(小さな寸法)に設定されている。これにより、下側ピン23は、上側ピン孔6C,10Dを通過することができる。この上で、鍔部23Eは、下接続部材22の上板22Aに当接することにより、下側ピン23を下側ピン孔6D,22Dに挿着したときに、下側ピン23が下側に抜け出るのを防止している。
【0047】
かくして、このように構成された第2の実施の形態でも、前述した第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。特に、第2の実施の形態によれば、下側ピン23は、当該下側ピン23を挿着するために支持ブラケット6とスイングポスト21とに設けられた下側ピン孔6D,22Dの直径d2よりも大径な鍔部23Eを備えている。これにより、下側ピン23は、鍔部23Eを下接続部材22の上板22Aに当接させることにより、下側ピン23を下側ピン孔6D,22Dに挿着したときに、下側への抜け出しを防止することができる。これに伴い、スイングポスト21(下接続部材22)の構成を簡略化することができる。
【0048】
次に、
図5は本発明の第3の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、下側ピンは、当該下側ピンを挿着するために支持ブラケットとスイングポストとに設けられた下側ピン孔の直径よりも大径な鍔部を備えていると共に、下側ピンは、挿着部分の長さが上側ピンの下面と下側ピンの上面との間の長さよりも大きく形成されていることにある。なお、本実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0049】
図5において、第3の実施の形態による支持ブラケット31は、第1の実施の形態による支持ブラケット6と同様に、上側ボス31A、下側ボス31B、上側ピン孔31Cおよび下側ピン孔31Dを有している。しかし、第3の実施の形態による支持ブラケット31は、下側ボス31Bの高さが第1の実施の形態による下側ボス6Bの高さよりも大きな値となっている点で、第1の実施の形態による下側ボス6Bと相違している。
【0050】
第3の実施の形態によるスイングポスト32の下接続部材33は、第1の実施の形態による下接続部材11と同様に、上板33A、下板33B、連結部33C、下側ピン孔33Dおよびピン挿嵌孔33Eを有している。しかし、第3の実施の形態による下接続部材33は、ストッパが省略されている点と、上板33Aと下板33Bとの間隔が第1の実施の形態による下接続部材11の上板11Aと下板11Bとの間隔よりも大きく形成されている点との2点で、第1の実施の形態による下接続部材11と相違している。即ち、第3の実施の形態による下接続部材33の上板33Aと下板33Bとの間隔は、支持ブラケット31の下側ボス31Bの高さの拡大に合わせて大きな値となっている。
【0051】
第3の実施の形態による上側ピン34は、第1の実施の形態による上側ピン12と同様に、ピン本体34A、角鍔部34B、上面34C、ねじ穴34Dおよび下面34Eを有している。しかし、第3の実施の形態による上側ピン34は、ピン本体34Aの長さが第1の実施の形態による上側ピン12のピン本体12Aの長さよりも大きな値となっている点で、第1の実施の形態による上側ピン12と相違している。
【0052】
第3の実施の形態による下側ピン35は、第1の実施の形態による下側ピン13と同様に、上面35A、ねじ穴35B、下面35Cおよびピン穴35Dを有している。しかし、第3の実施の形態による下側ピン35は、上端位置に円形状の鍔部35Eが設けられている点と、軸方向の長さが第1の実施の形態による下側ピン13の長さよりも大きな値となっている点との2点で、第1の実施の形態による下側ピン13と相違している。
【0053】
鍔部35Eの直径D3は、下側ピン孔31D,33Dの直径d2よりも大径(大きな寸法)で、かつ上側ピン孔31C,10Dの直径d1よりも小径(小さな寸法)に設定されている。これにより、下側ピン35は、上側ピン孔31C,10Dを通過することができる。この上で、鍔部35Eは、下接続部材33の上板33Aに当接することにより、下側ピン35が下側に抜け出るのを防止している。
【0054】
さらに、第3の実施の形態による下側ピン35は、下側ピン孔31D,33Dに挿着される部分、即ち、鍔部35Eよりも下側の部分が挿着部分35Fとなっている。この下側ピン35は、挿着部分35Fの長さL1が上側ピン34の下面34Eと下側ピン35の上面35Aとの間の長さL2よりも大きく形成されている。これにより、下側ピン35は、下側ピン孔31D,33Dに対して上向きに移動したときに、下側ピン孔31D,33Dから抜け落ちる前に、上面35Aが上側ピン34の下面34Eに当接する。
【0055】
かくして、このように構成された第3の実施の形態でも、前述した第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。特に、第3の実施の形態によれば、下側ピン35は、当該下側ピン35を挿着するために支持ブラケット31とスイングポスト32とに設けられた下側ピン孔31D,33Dの直径d2よりも大径な鍔部35Eを備えている。これにより、下側ピン35は、鍔部35Eを下接続部材33の上板33Aに当接させることにより、下側への抜け出しを防止することができる。これに伴い、スイングポスト32(下接続部材33)の構成を簡略化することができる。
【0056】
しかも、第3の実施の形態によれば、下側ピン35は、挿着部分35Fの長さL1が上側ピン34の下面34Eと下側ピン35の上面35Aとの間の長さL2よりも大きく形成されている。これにより、例えば、下接続部材33のピン挿嵌孔33E、下側ピン35のピン穴35Dから回止めピン14が脱落することがあっても、下側ピン35が抜け落ちるのを未然に防ぐことができる。
【0057】
なお、第2の実施の形態では、下側ピン23に鍔部23Eを一体形成したように図示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、別体に設けた鍔部を、溶接、ねじ止め等の手段を用いて下側ピンに取付ける構成としてもよい。この構成は、第3の実施の形態にも同様に適用できるものである。
【0058】
また、各実施の形態では、運転席15の上方を覆うキャノピ18を備えたキャノピ仕様の油圧ショベル1を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、運転席の周囲と上方を覆うキャブボックスが設けられたキャブ仕様の油圧ショベルに適用してもよい。
【0059】
さらに、各実施の形態では、クローラ式の下部走行体2を備えた小型の油圧ショベル1を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば、ホイール式の油圧ショベルに適用してもよい。また、作業装置が揺動可能に設けられた中型の油圧ショベルに適用してもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 油圧ショベル
2 下部走行体
3 上部旋回体
4 作業装置
5 旋回フレーム
6,31 支持ブラケット
6C,10D,31C 上側ピン孔
6D,11D,22D,31D,33D 下側ピン孔
7,21,32 スイングポスト
12,34 上側ピン
12C,13A,23A,34C,35A 上面
12D,13B,23B,34D,35B ねじ穴
13,23,35 下側ピン
23E,35E 鍔部
34E 下面
35F 挿着部分
O-O 軸線
d1 上側ピン孔の直径
d2 下側ピン孔の直径
D2 下側ピンの直径
L1 下側ピンの挿着部分の長さ
L2 上側ピンの下面と下側ピンの上面との間の長さ