(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-05
(45)【発行日】2022-08-16
(54)【発明の名称】地絡検出装置
(51)【国際特許分類】
G01R 31/52 20200101AFI20220808BHJP
【FI】
G01R31/52
(21)【出願番号】P 2019164210
(22)【出願日】2019-09-10
【審査請求日】2021-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】河村 佳浩
【審査官】島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-066402(JP,A)
【文献】特開2019-113431(JP,A)
【文献】特開2018-128440(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高電圧バッテリと接続し、前記高電圧バッテリが設けられた系の絶縁抵抗低下を検出する地絡検出装置であって、
フライングキャパシタとして動作する検出用コンデンサと、
前記検出用コンデンサのフル充電電圧を計測する制御部と、
前記高電圧バッテリの正極側と前記検出用コンデンサの正極側端とが抵抗を介して直列に接続する状態(正極第1状態)と、前記検出用コンデンサの正極側端が抵抗を介して接地に接続する状態(正極第2状態)と、を切り替える第1の切替部と、
前記高電圧バッテリの負極側と前記検出用コンデンサの負極側端とが抵抗を介して直列に接続する状態(負極第1状態)と、前記検出用コンデンサの負極側端が抵抗を介して接地に接続する状態(負極第2状態)と、を切り替える第2の切替部と、
前記高電圧バッテリの正極側と接地との間に直列に接続したスイッチおよび抵抗
と、
を備え、
前記制御部は、
前記第1の切替部を前記正極第1状態に切り替え、前記第2の切替部を前記負極第2状態に切り替えた状態で計測した前記検出用コンデンサの充電電圧Vpと、前記第1の切替部を前記正極第2状態に切り替え、前記第2の切替部を前記負極第1状態に切り替えた状態で計測した前記検出用コンデンサの充電電圧Vnと、を比較し、
充電電圧Vpの方が小さく、小ささの度合いが所定の基準よりも大きい場合に、正極側絶縁抵抗が低下していると判定し、充電電圧Vnの方が小さく、小ささの度合いが所定の基準よりも大きい場合に、負極側絶縁抵抗が低下していると判定し、
前記充電電圧Vp、前記充電電圧Vnを計測する際には、前記スイッチはオフにし、
充電電圧Vp、充電電圧Vnの小さい方の小ささの度合いが所定の基準よりも大きくない場合に、前記第1の切替部を前記正極第1状態に切り替え、第2の切替部を前記負極第2状態に切り替え、前記スイッチをオンにした状態で前記検出用コンデンサの充電電圧Vp′を計測し、
前記充電電圧Vpから前記充電電圧Vp′への変化率が基準より小さい場合に、両極で絶縁抵抗が低下していると判定する
地絡検出装置。
【請求項2】
高電圧バッテリと接続し、前記高電圧バッテリが設けられた系の絶縁抵抗低下を検出する地絡検出装置であって、
フライングキャパシタとして動作する検出用コンデンサと、
前記検出用コンデンサのフル充電電圧を計測する制御部と、
前記高電圧バッテリの正極側と前記検出用コンデンサの正極側端とが抵抗を介して直列に接続する状態(正極第1状態)と、前記検出用コンデンサの正極側端が抵抗を介して接地に接続する状態(正極第2状態)と、を切り替える第1の切替部と、
前記高電圧バッテリの負極側と前記検出用コンデンサの負極側端とが抵抗を介して直列に接続する状態(負極第1状態)と、前記検出用コンデンサの負極側端が抵抗を介して接地に接続する状態(負極第2状態)と、を切り替える第2の切替部と、
前記高電圧バッテリの負極側と接地との間に直列に接続したスイッチおよび抵抗
と、
を備え、
前記制御部は、
前記第1の切替部を前記正極第1状態に切り替え、前記第2の切替部を前記負極第2状態に切り替えた状態で計測した前記検出用コンデンサの充電電圧Vpと、前記第1の切替部を前記正極第2状態に切り替え、前記第2の切替部を前記負極第1状態に切り替えた状態で計測した前記検出用コンデンサの充電電圧Vnと、を比較し、
充電電圧Vpの方が小さく、小ささの度合いが所定の基準よりも大きい場合に、正極側絶縁抵抗が低下していると判定し、充電電圧Vnの方が小さく、小ささの度合いが所定の基準よりも大きい場合に、負極側絶縁抵抗が低下していると判定し、
前記充電電圧Vp、前記充電電圧Vnを計測する際には、前記スイッチはオフにし、
充電電圧Vp、充電電圧Vnの小さい方の小ささの度合いが所定の基準よりも大きくない場合に、前記第1の切替部を前記正極第2状態に切り替え、第2の切替部を前記負極第1状態に切り替え、前記スイッチをオンにした状態で前記検出用コンデンサの充電電圧Vn′を計測し、
前記充電電圧Vnから前記充電電圧Vn′への変化率が基準より小さい場合に、両極で絶縁抵抗が低下していると判定する
地絡検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フライングキャパシタを用いた地絡検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
駆動源としてエンジンと電気モータとを備えるハイブリッド車や、電気自動車のような車両においては、車体上に搭載したバッテリを充電し、バッテリから供給される電気エネルギーを利用して推進力を発生する。一般に、バッテリ関連の電源回路は、200V以上の高電圧を扱う高電圧回路として構成されており、安全性確保ため、バッテリを含む高電圧回路は接地の基準電位点となる車体から電気的に絶縁された非接地構成となっている。
【0003】
非接地の高電圧バッテリを搭載した車両では、高電圧バッテリが設けられた系、具体的には、高電圧バッテリからモータに至るメインの電源系と車体との絶縁状態(地絡)を監視するために地絡検出装置が備えられている。地絡検出装置は、フライングキャパシタと呼ばれるコンデンサを利用した方式が広く用いられている。
【0004】
図11は、フライングキャパシタ方式の従来の地絡検出装置の回路例を示す図である。本図に示すように地絡検出装置400は、非接地の高電圧バッテリ300と接続し、高電圧バッテリ300が設けられた系の地絡を検出する装置である。ここで、高電圧バッテリ300の正極側と接地間の絶縁抵抗をRLpと表し、負極側と接地間の絶縁抵抗をRLnと表すものとする。
【0005】
本図に示すように、地絡検出装置400は、フライングキャパシタとして動作する検出用コンデンサC1を備えている。また、計測経路を切り換えるとともに、検出用コンデンサC1の充電および放電を制御するために、検出用コンデンサC1の周辺に4つのスイッチS1~S4を備えている。
【0006】
地絡検出装置400では、絶縁抵抗RLpおよびRLnを把握するために、V0計測期間→Vc1n計測期間→V0計測期間→Vc1p計測期間を1サイクルとして計測動作を繰り返す。いずれの計測期間とも、計測対象の電圧で検出用コンデンサC1を充電してから、検出用コンデンサC1の充電電圧の計測を行なう。そして、次の計測のために検出用コンデンサC1の放電を行なう。
【0007】
V0計測期間では、高電圧バッテリ300電圧に相当する電圧を計測する。このため、スイッチS1、S2をオンにし、スイッチS3、S4をオフにして、検出用コンデンサC1を充電する。すなわち、高電圧バッテリ300、抵抗R1、検出用コンデンサC1、抵抗R2が計測経路となる。
【0008】
検出用コンデンサC1の充電電圧の計測時には、スイッチS1、S2をオフにし、スイッチS3、S4をオンにし、制御装置410でサンプリングを行なう。その後、次の計測のために検出用コンデンサC1の放電を行なう。検出用コンデンサC1の充電電圧の計測時、検出用コンデンサC1の放電時の動作は他の計測期間においても同様である。
【0009】
Vc1n計測期間では、絶縁抵抗RLnの影響を反映した電圧を計測する。このため、スイッチS1、S4をオンにし、スイッチS2、S3をオフにして、検出用コンデンサC1を充電する。すなわち、高電圧バッテリ300、抵抗R1、検出用コンデンサC1、抵抗R4、接地、絶縁抵抗RLnが計測経路となる。
【0010】
Vc1p計測期間では、絶縁抵抗RLpの影響を反映した電圧を計測する。このため、スイッチS2、S3をオンにし、スイッチS1、S4をオフにして、検出用コンデンサC1を充電する。すなわち、高電圧バッテリ300、絶縁抵抗RLp、接地、抵抗R5、検出用コンデンサC1、抵抗R2が計測経路となる。
【0011】
これらの計測期間で得られたV0、Vc1n、Vc1pから算出される(Vc1p+Vc1n)/V0に基づいて、(RLp×RLn)/(RLp+RLn)を求めることができることが知られている。このため、地絡検出装置400内の制御装置410は、V0、Vc1n、Vc1pを測定することにより、絶縁抵抗RLp、RLnの合成抵抗を把握することができる。そして、絶縁抵抗RLp、RLnの合成抵抗が所定の判定基準レベル以下となった場合に、地絡が発生しているものとして判定し、警報を出力する。
【0012】
なお、各計測期間において、検出用コンデンサC1をフル充電とすると、V0計測期間では高電圧バッテリ300の電圧値が得られ、Vc1n計測期間、Vc1p計測期間では、単に高電圧バッテリ300を絶縁抵抗RLp、RLnで分圧した値が得られてしまい、上述の式で絶縁抵抗を算出することができない。このため、例えば、検出用コンデンサC1が50%程度充電される程度の時間を各計測期間の充電時間とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
一般に、高電圧バッテリ300の正極側電源ライン301と接地電極との間および負極側電源ライン302と接地電極との間には、電源の高周波ノイズを除去するためや、動作を安定化するために、それぞれYコンデンサ(ライン・バイパス・コンデンサ)と呼ばれるコンデンサCYp、CYnが接続される。特に、高電圧バッテリ300が充電設備をはじめとした高電圧設備と接続される場合等には、大容量のYコンデンサが接続される。
【0015】
大容量のYコンデンサが接続された場合、地絡検出装置400において各計測を行なうときに、Yコンデンサに蓄積された電荷が検出用コンデンサC1に移動する等により計測値に影響を与えてしまう。この影響を軽減するために検出用コンデンサC1の容量を大きくすると、その分充電速度が遅くなり、測定時間が長くなってしまう。
【0016】
そこで、本発明は、大容量Yコンデンサに対応した地絡検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するため、本発明の地絡検出装置は、高電圧バッテリと接続し、前記高電圧バッテリが設けられた系の絶縁抵抗低下を検出する地絡検出装置であって、フライングキャパシタとして動作する検出用コンデンサと、前記検出用コンデンサのフル充電電圧を計測する制御部と、前記高電圧バッテリの正極側と前記検出用コンデンサの正極側端とが抵抗を介して直列に接続する状態(正極第1状態)と、前記検出用コンデンサの正極側端が抵抗を介して接地に接続する状態(正極第2状態)と、を切り替える第1の切替部と、前記高電圧バッテリの負極側と前記検出用コンデンサの負極側端とが抵抗を介して直列に接続する状態(負極第1状態)と、前記検出用コンデンサの負極側端が抵抗を介して接地に接続する状態(負極第2状態)と、を切り替える第2の切替部と、を備え、前記制御部は、前記第1の切替部を前記正極第1状態に切り替え、前記第2の切替部を前記負極第2状態に切り替えた状態で計測した前記検出用コンデンサの充電電圧Vpと、前記第1の切替部を前記正極第2状態に切り替え、前記第2の切替部を前記負極第1状態に切り替えた状態で計測した前記検出用コンデンサの充電電圧Vnと、を比較し、充電電圧Vpの方が小さく、小ささの度合いが所定の基準よりも大きい場合に、正極側絶縁抵抗が低下していると判定し、充電電圧Vnの方が小さく、小ささの度合いが所定の基準よりも大きい場合に、負極側絶縁抵抗が低下していると判定する。
【0018】
前記地絡検出装置は、前記高電圧バッテリの正極側と接地との間に直列に接続したスイッチおよび抵抗を、さらに備えるようにし、前記制御部は、前記充電電圧Vp、前記充電電圧Vnを計測する際には、前記スイッチはオフにし、充電電圧Vp、充電電圧Vnの小さい方の小ささの度合いが所定の基準よりも大きくない場合に、前記第1の切替部を前記正極第1状態に切り替え、第2の切替部を前記負極第2状態に切り替え、前記スイッチをオンにした状態で前記検出用コンデンサの充電電圧Vp′を計測し、前記充電電圧Vpから前記充電電圧Vp′への変化率が基準より小さい場合に、両極で絶縁抵抗が低下していると判定するようにしてもよい。また、前記地絡検出装置は、前記高電圧バッテリの負極側と接地との間に直列に接続したスイッチおよび抵抗を、さらに備えるようにし、前記制御部は、前記充電電圧Vp、前記充電電圧Vnを計測する際には、前記スイッチはオフにし、充電電圧Vp、充電電圧Vnの小さい方の小ささの度合いが所定の基準よりも大きくない場合に、前記第1の切替部を前記正極第2状態に切り替え、第2の切替部を前記負極第1状態に切り替え、前記スイッチをオンにした状態で前記検出用コンデンサの充電電圧Vn′を計測し、前記充電電圧Vnから前記充電電圧Vn′への変化率が基準より小さい場合に、両極で絶縁抵抗が低下していると判定するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、大容量Yコンデンサに対応した地絡検出装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態に係る地絡検出装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】地絡検出装置の動作について説明するフローチャートである。
【
図9】本発明の実施形態に係る地絡検出装置の構成を示すブロック図である。
【
図10】本発明の実施形態に係る地絡検出装置の構成を示すブロック図である。
【
図11】フライングキャパシタ方式の従来の地絡検出装置の回路例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<地絡検出装置100>
本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る地絡検出装置100の構成を示すブロック図である。本図に示すように地絡検出装置100は、高電圧バッテリ300と接続し、高電圧バッテリ300が設けられた系の地絡を検出するフライングキャパシタ方式の装置である。ここで、高電圧バッテリ300の正極側と接地間の絶縁抵抗をRLpと表し、負極側と接地間の絶縁抵抗をRLnと表すものとする。
【0022】
高電圧バッテリ300は、車両走行の駆動用に用いられるバッテリである。高電圧バッテリ300は、リチウムイオン電池等のように充電可能なバッテリにより構成されており、図示しないバスバーを経由して放電し、インバータ等を介して接続された電気モータを駆動する。また、回生時や充電設備接続時には、バスバーを介して充電を行なう。
【0023】
一般に、高電圧バッテリ300の正極側電源ライン101と接地電極との間および負極側電源ライン102と接地電極との間には、電源の高周波ノイズを除去するためや、動作を安定化するために、それぞれYコンデンサ(ライン・バイパス・コンデンサ)と呼ばれるコンデンサCYp、CYnが接続される。
【0024】
本図に示すように、地絡検出装置100は、フライングキャパシタとして動作する検出用コンデンサC1と、制御装置110を備えている。検出用コンデンサC1は、正極側端が接続点Aと接続し、負極側端が接続点Bと接続している。
【0025】
また、地絡検出装置100は、計測経路を切り替えるとともに、検出用コンデンサC1の充電および放電を制御するために、検出用コンデンサC1の周辺に4つのスイッチS1~S4を備えている。これらのスイッチは、光MOSFETのように絶縁型のスイッチング素子で構成することができる。
【0026】
スイッチS1は、一端が正極側電源ライン101と接続し、他端がダイオードD1のアノード側と接続している。ダイオードD1のカソード側は抵抗R1と接続し、抵抗R1の他端は接続点Aと接続している。
【0027】
スイッチS2は、一端が負極側電源ライン102と接続し、他端が抵抗R2と接続している。抵抗R2の他端は接続点Bと接続している。
【0028】
スイッチS3は、一端が抵抗R3およびダイオードD3のアノード側と接続し、他端が抵抗R5の一端と制御装置110のアナログ入力端子に接続している。ダイオードD3のカソード側は接続点Aと接続し、抵抗R3の他端はダイオードD2のカソード側と接続し、ダイオードD2のアノード側は接続点Aと接続している。抵抗R5の他端は接地している。
【0029】
スイッチS4は、一端が接続点Bと接続し、他端が抵抗R4と接続している。抵抗R4の他端は接地している。
【0030】
制御装置110は、マイクロコンピュータ等で構成され、あらかじめ組み込まれたプログラムを実行することにより、地絡検出装置100に必要とされる各種制御を実行する。具体的には、スイッチS1~S4を個別に制御して計測経路を切り替えるとともに、検出用コンデンサC1の充電および放電を制御する。
【0031】
また、制御装置110は、検出用コンデンサC1の充電電圧に相当するアナログレベルをアナログ入力端子から入力し、このアナログレベルに基づいて高電圧バッテリ300が設けられた系の絶縁抵抗の低下を検出する。
【0032】
さらに、本実施形態では、正極側電源ライン101に、スイッチS5を介して、他端が接地された抵抗R6が接続されている。抵抗R6の抵抗値は、安全性を考慮し、例えば、絶縁抵抗値と同程度の大きさにするとよい。
【0033】
また、本実施形態では、検出用コンデンサC1をフル充電の状態で計測を行なう。大容量のYコンデンサ(CYp、CYn)が接続される場合であっても検出用コンデンサC1は大容量とする必要はなく、計測のためのフル充電時間を短くすることができる。また、以下に説明するように、抵抗による高電圧バッテリ300の分圧値を計測するため、Yコンデンサの安定を待つ必要がない。
【0034】
<地絡検出装置100の動作>
次に、上記構成の地絡検出装置100の動作について
図2のフローチャートを参照して説明する。上述のように、本実施形態では、検出用コンデンサC1をフル充電の状態で計測を行なう。このため、従来の絶縁抵抗算出とは異なる手法で地絡判定を行なう。
【0035】
まず、
図3(a)に示すように、スイッチS1、スイッチS4をオン、スイッチS2、スイッチS3をオフにした状態で検出用コンデンサC1をフル充電して、このときの充電電圧Vpを計測する(S101)。
【0036】
ここで、充電電圧Vpは、
図3(b)に示すように、高電圧バッテリ300の電圧Vbを抵抗RLpと抵抗RLnとで分圧したときに抵抗RLpに生じる電圧に相当する。
【0037】
次に、
図4(a)に示すように、スイッチS1、スイッチS4をオフ、スイッチS2、スイッチS3をオンにした状態で検出用コンデンサC1をフル充電して、このときの充電電圧Vnを計測する(S102)。
【0038】
ここで、充電電圧Vnは、
図4(b)に示すように、高電圧バッテリ300の電圧Vb
を抵抗RLpと抵抗RLnとで分圧したときに抵抗RLnに生じる電圧に相当する。なお、充電電圧Vnの計測と充電電圧Vpの計測の順序は問わない。
【0039】
充電電圧Vpの方が充電電圧Vnより小さい場合(S103:Yes)は、その小ささの度合いが所定の基準より大きいとき、例えば、Vn/Vp>基準値Pのとき(S104:Yes)は、正極側絶縁抵抗RLpが低下していると判定する(S105)。
【0040】
これは、充電電圧Vpが充電電圧Vnよりも小さいことは、正極側絶縁抵抗RLpが負極側絶縁抵抗RLnよりも小さいことを意味し、その度合いが大きいほど、正極側絶縁抵抗RLpが低下していると考えられるためである。
【0041】
同様に、充電電圧Vpが充電電圧Vn以上である場合(S103:No)は、VnのVpに対する小ささの度合いが所定の基準より大きいとき、例えば、Vp/Vn>基準値Pのとき(S106:Yes)は、負極側絶縁抵抗RLnが低下していると判定する(S107)。
【0042】
充電電圧Vpと充電電圧Vnとの差が相対的に小さい場合は、正極側絶縁抵抗RLp、負極側絶縁抵抗RLnとも正常である可能性が高いが、正極側絶縁抵抗RLp、負極側絶縁抵抗RLnとも同程度に低下している可能性が少ないながらもある。そこで、充電電圧Vpが充電電圧Vnより小さい場合(S103:Yes)であって、充電電圧Vpと充電電圧Vnとの差が相対的に小さいとき、Vn/Vp≦基準値Pのとき(S104:No)は、
図5(a)に示すように、スイッチS1、スイッチS4に加えてスイッチS5をオンにし、スイッチS2、スイッチS3をオフにした状態で検出用コンデンサC1をフル充電して、このときの充電電圧Vp′を計測する(S108)。また、充電電圧Vpが充電電圧Vn以上である場合(S103:NO)であって、充電電圧Vpと充電電圧Vnとの差が相対的に小さいとき、Vp/Vn≦基準値Pのとき(S107:No)も、充電電圧Vp′を計測する(S108)。
【0043】
ここで、充電電圧Vp′は、
図5(b)に示すように、高電圧バッテリ300の電圧Vbを、抵抗RLpと抵抗R6との並列合成抵抗と、抵抗RLnと、で分圧したときに、抵抗RLpと抵抗R6との並列合成抵抗に生じる電圧に相当する。
【0044】
そして、充電電圧Vpと充電電圧Vp′とがほぼ同じとみなせる場合、例えば、充電電圧Vpから充電電圧Vp′への変化率(Vp/Vp′)が基準値より小さい場合(S109:Yes)は、挿入された抵抗R6の影響が小さいときであるため、正極側絶縁抵抗RLp、負極側絶縁抵抗RLnとも低下していると判定する(S110)。
【0045】
一方、充電電圧Vpと充電電圧Vp′とがほぼ同じとみなせない場合、例えば、充電電圧Vpから充電電圧Vp′への変化率が基準値より大きい場合(S109:No)は、挿入された抵抗R6の影響が大きいときであるため、正極側絶縁抵抗RLp、負極側絶縁抵抗RLnとも低下しておらず、正常である判定する(S111)。
【0046】
<地絡検出装置100の他の実施例>
また、
図6のように、スイッチS5、抵抗R6の代わりに、負極側電源ライン101に、スイッチS6を介して、他端が接地された抵抗R7が接続し、充電電圧Vpと充電電圧Vnとの差が相対的に小さいとき、スイッチS2、スイッチS3に加えてスイッチS6をオンにし、スイッチS1、スイッチS4をオフにした状態で検出用コンデンサC1をフル充電して、このときの充電電圧Vn′を計測し、充電電圧Vnから充電電圧Vn′への変化率(Vn/Vn′)を用いて、両極の絶縁低下あるいは正常を判定するようにしてもよい。つまり、充電電圧Vnから充電電圧Vn′への変化率が基準値より小さい場合は、正極側絶縁抵抗RLp、負極側絶縁抵抗RLnとも低下していると判定し、充電電圧Vnから充電電圧Vn′への変化率が基準値より大きい場合は、正極側絶縁抵抗RLp、負極側絶縁抵抗RLnとも低下しておらず、正常である判定するようにしてもよい。抵抗R7の抵抗値は、安全性を考慮し、例えば、絶縁抵抗値と同程度の大きさにするとよい。
【0047】
なお、上述した実施形態では、充電電圧Vpと充電電圧Vnとの差が相対的に小さい場合、充電電圧Vp、充電電圧Vnの大小に関係なく、充電電圧Vp′のみを計測、または充電電圧Vn′のみを計測し、両極の絶縁低下あるいは正常を判定していた。しかしながら、
図7(a)、
図8(a)のように、スイッチS5、S6、抵抗R6、R7を備えるようにし、正極側絶縁抵抗RLp、負極側絶縁抵抗RLnのうち少しでも値の大きい方に抵抗(R6またはR7)を並列接続させたときの充電電圧変化率を判定するようにしてもよい。つまり、充電電圧Vpと充電電圧Vnとの差が相対的に小さい場合に、充電電圧Vpの方が小さければ、負極側絶縁抵抗RLnの方が大きいので、負極側絶縁抵抗RLnに抵抗R7を並列接続させ、このときの充電電圧Vn′を計測し、充電電圧Vnの方が小さければ、正極側絶縁抵抗RLpの方が大きいので、正極側絶縁抵抗RLpに抵抗R6を並列接続させ、このときの充電電圧Vp′を計測するようにしてもよい。
【0048】
このとき、例えば、充電電圧Vpが充電電圧Vnより大きい場合であって、充電電圧Vpと充電電圧Vnとの差が相対的に小さいとき、例えば、Vp/Vn<基準値Pのときは、
図7(a)に示すように、スイッチS2、スイッチS3に加えてスイッチS6をオンにし、スイッチS1、S4をオフにした状態で検出用コンデンサC1をフル充電して、このときの充電電圧Vn′を計測する。
【0049】
ここで、充電電圧Vn′は、
図7(b)に示すように、高電圧バッテリ300の電圧Vbを、抵抗RLpと抵抗R7との並列合成抵抗と、抵抗RLnと、で分圧したときに、抵抗RLpと抵抗R7との並列合成抵抗に生じる電圧に相当する。
【0050】
そして、充電電圧Vnと充電電圧Vn′とがほぼ同じとみなせる場合、例えば、充電電圧Vnから充電電圧Vn′への変化率(Vn/Vn′)が基準値より小さい場合は、挿入された抵抗R7の影響が小さいときであるため、正極側絶縁抵抗RLp、負極側絶縁抵抗RLnとも低下していると判定する。
【0051】
一方、充電電圧Vnと充電電圧Vn′とがほぼ同じとみなせない場合、例えば、充電電圧Vnから充電電圧Vn′への変化率が基準値より大きい場合は、挿入された抵抗R7の影響が大きいため、正極側絶縁抵抗RLp、負極側絶縁抵抗RLnとも低下しておらず、正常である判定する。
【0052】
また、充電電圧Vnが充電電圧Vpより大きい場合であって、充電電圧Vpと充電電圧Vnとの差が相対的に小さいとき、例えば、Vp/Vn<基準値Pのときは、
図8(a)に示すように、スイッチS1、スイッチS4に加えてスイッチS5をオンにし、スイッチS2、スイッチS3をオフにした状態で検出用コンデンサC1をフル充電して、このときの充電電圧Vp′を計測する。
【0053】
ここで、充電電圧Vp′は、
図8(b)に示すように、高電圧バッテリ300の電圧Vbを、抵抗RLpと抵抗R6との並列合成抵抗と、抵抗RLnと、で分圧したときに、抵抗RLpと抵抗R6との並列合成抵抗に生じる電圧に相当する。
【0054】
そして、充電電圧Vpと充電電圧Vp′とがほぼ同じとみなせる場合、例えば、充電電圧Vpから充電電圧Vp′への変化率(Vp/Vp′)が基準値より小さい場合は、挿入された抵抗R6の影響が小さいときであるため、正極側絶縁抵抗RLp、負極側絶縁抵抗RLnとも低下していると判定する。
【0055】
一方、充電電圧Vpと充電電圧Vp′とがほぼ同じとみなせない場合、例えば、充電電
圧Vpから充電電圧Vp′への変化率が基準値より大きい場合は、挿入された抵抗R6の影響が大きいため、正極側絶縁抵抗RLp、負極側絶縁抵抗RLnとも低下しておらず、正常である判定する。
【0056】
<切替部>
本実施形態では、常に、スイッチS1とスイッチS3のどちらかはオンになっている。また、両方のスイッチが、同時にオンになることはない。よって、スイッチS1とスイッチS3は、高電圧バッテリ300の正極側と検出用コンデンサC1の正極側端とが直列的に接続する状態と、検出用コンデンサC1の正極側端が接地に接続する状態と、を切り替える切替部を構成する。この切替部は、スイッチS1、スイッチS2の代わりに、
図9に示すように、C接点スイッチSc1により構成してもよいし、
図10に示すように、連動して動作する2つのC接点スイッチから成るツインリレーSt1により構成してもよい。
【0057】
同様に、本実施形態では、常に、スイッチS2とスイッチS4のどちらかはオンになっている。また、両方のスイッチが、同時にオンになることはない。よって、スイッチS2とスイッチS4は、高電圧バッテリ300の負極側と検出用コンデンサC1の負極側端とが直列的に接続する状態と、検出用コンデンサC1の負極側端が接地に接続する状態と、を切り替える切替部を構成する。この切替部は、スイッチS1、スイッチS2の代わりに、
図9に示すように、C接点スイッチSc2により構成してもよいし、
図10に示すように、ツインリレーSt2により構成してもよい。
【0058】
また、スイッチ5、スイッチ6も、
図9に示したC接点スイッチSc3のように、C接点スイッチにより構成してもよいし、
図10に示したツインリレーSt3のように、ツインリレーにより構成してもよい。
【符号の説明】
【0059】
100 地絡検出装置
101 正極側電源ライン
102 負極側電源ライン
110 制御装置
300 高電圧バッテリ
C1 検出用コンデンサ
CYp Yコンデンサ
CYn Yコンデンサ
RLn 負極側絶縁抵抗
RLp 正極側絶縁抵抗