(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-05
(45)【発行日】2022-08-16
(54)【発明の名称】樹脂成形解析方法、プログラムおよび記録媒体
(51)【国際特許分類】
G06F 30/10 20200101AFI20220808BHJP
G06F 30/27 20200101ALI20220808BHJP
B29C 45/76 20060101ALI20220808BHJP
G01N 3/04 20060101ALI20220808BHJP
【FI】
G06F30/10
G06F30/27
B29C45/76
G01N3/04 Z
(21)【出願番号】P 2019199733
(22)【出願日】2019-11-01
【審査請求日】2021-07-15
(31)【優先権主張番号】P 2018215474
(32)【優先日】2018-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】山田 高光
(72)【発明者】
【氏名】廣井 正人
【審査官】堀井 啓明
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-271781(JP,A)
【文献】特開2001-277320(JP,A)
【文献】特開2017-162294(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/00-30/398
B29C 45/76
G01N 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂成形条件情報と、対応する樹脂成形品の特性を実測した実測値に基づく出力値とを関係付けて樹脂成形情報として蓄積し、
入力された樹脂成形条件から、蓄積された複数の前記樹脂成形情報に基づいて、樹脂成形品の特性を推定して特性情報として出力
し、
入力された樹脂成形条件から、蓄積された複数の前記樹脂成形情報に基づいて、成形時の樹脂の状態と成形品の特性の詳細とのシミュレーションを行う際のパラメータを推定し、
推定したパラメータを用いてシミュレーションを行う、樹脂成形解析方法。
【請求項2】
樹脂成形条件情報と、対応する樹脂成形品の特性を実測した実測値とを含む複数の前記樹脂成形情報に基づいて機械学習を行い、
複数の前記樹脂成形情報に基づいて、成形時の樹脂の状態と成形品の特性の詳細とのシミュレーションを行う際のパラメータの最適化を行う、請求項
1に記載の樹脂成形解析方法。
【請求項3】
複数の前記樹脂成形情報に基づいて、樹脂成形条件を分類し、
入力された樹脂成形条件に基づいて、対応する分類の前記樹脂成形情報のパラメータを用いて成形時の樹脂の状態と成形品の特性の詳細とのシミュレーションを行う、請求項
2に記載の樹脂成形解析方法。
【請求項4】
複数の前記樹脂成形情報に基づいて、樹脂成形条件を分類し、
入力された樹脂成形条件から、対応する分類の前記樹脂成形情報に基づいて、樹脂成形品の特性を推定して特性情報として出力する、請求項1~
3のいずれか1項に記載の樹脂成形解析方法。
【請求項5】
樹脂成形条件の分類は、成形品の大きさ、成形品の複雑度、成形品形状、樹脂データ、成形条件のうち少なくとも1つを数値化して行う、請求項
3または
4に記載の樹脂成形解析方法。
【請求項6】
成形品の特性は、成形品のそり、成形時の圧力、成形時の温度、成形品の配向、成形品のウェルドの状態のうち少なくとも1つを含む、請求項1~
5のいずれか1項に記載の樹脂成形解析方法。
【請求項7】
成形品の特性は、樹脂の充填パターン、成形品の外観特性、成形品の樹脂物性値、成形時のひずみ、成形品の質量、成形品の長さ、成形品の歪み、成形品の応力、成形品の機械的特性、成形品の熱的特性、成形品の電気的特性、成形品の化学的特性、成形品の成形特性、成形品の光学的特性、成形品の色調のうち少なくとも1つを含む、請求項1~
6のいずれか1項に記載の樹脂成形解析方法。
【請求項8】
樹脂成形条件情報と、対応する樹脂成形品の特性を実測した実測値に基づく出力値とを関係付けて樹脂成形情報として蓄積し、
入力された樹脂成形条件から、蓄積された複数の前記樹脂成形情報に基づいて、樹脂成形品の特性を推定して特性情報として出力し、
樹脂成形品の特性を実測した実測値に基づく出力値は、特性を実測した実測値と、特性を実測した実測値を機械学習を行うことにより補間した補間値とを含む、樹脂成形解析方法。
【請求項9】
樹脂成形品の特性を実測した実測値に基づく出力値は、特性を実測した実測値と、特性を実測した実測値を機械学習を行うことにより補間した補間値とを含む、請求項1~
7のいずれか1項に記載の樹脂成形解析方法。
【請求項10】
既知の樹脂材料の物性値に基づいて、異なる状態の同種の樹脂材料の物性値を予測する、請求項1~9のいずれか1項に記載の樹脂成形解析方法。
【請求項11】
既知の樹脂材料の基本情報と、樹脂材料に含まれるリサイクル材の含有率とに基づいて、異なる状態の同種の樹脂材料の物性値を予測する、請求項10に記載の樹脂成形解析方法。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載された樹脂成形解析方法をコンピュータに実行させる、プログラム。
【請求項13】
請求項12に記載のプログラムが記録され、コンピュータにより読み取り可能な、記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、樹脂成形解析方法、プログラムおよび記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂成形解析方法が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、樹脂成形の条件を設定し、流動解析を含む成形シミュレーションを行い、成形シミュレーションの結果に対して、ウェルド(樹脂合流部分)やエアトラップ(気泡の混入)に関する成形制約条件を満たすか否かを判定し、樹脂成形の条件を変更して、成形シミュレーションを反復して行う成形シミュレーション方法(樹脂成形解析方法)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の成形シミュレーション方法(樹脂成形解析方法)では、樹脂成形の条件を変更して、成形シミュレーションを反復して行うため、1つの成形品の解析を行うのに、複数回の成形シミュレーションを行う必要がある。このため、樹脂成形の解析を行う際の処理時間が増大するという問題点がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、樹脂成形の解析を行う際の処理時間が増大するのを抑制することが可能な樹脂成形解析方法、プログラムおよび記録媒体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面による樹脂成形解析方法は、樹脂成形条件情報と、対応する樹脂成形品の特性を実測した実測値に基づく出力値とを関係付けて樹脂成形情報として蓄積し、入力された樹脂成形条件から、蓄積された複数の樹脂成形情報に基づいて、樹脂成形品の特性を推定して特性情報として出力し、入力された樹脂成形条件から、蓄積された複数の樹脂成形情報に基づいて、成形時の樹脂の状態と成形品の特性の詳細とのシミュレーションを行う際のパラメータを推定し、推定したパラメータを用いてシミュレーションを行う。
【0008】
この発明の第1の局面による樹脂成形解析方法では、上記のように構成することによって、シミュレーションを行うことなく樹脂成形品の特性情報を出力することができるので、シミュレーションを1回または複数回行う場合に比べて、樹脂成形の解析を行う際の処理時間が増大するのを抑制することができる。また、樹脂成形品の特性を実測した実測値を蓄積した複数の樹脂成形情報に基づいて樹脂成形品の特性を推定するので、シミュレーションのみにより特性を推定する場合に比べて、樹脂成形品の特性を実測値に即して推定することができる。また、蓄積した複数の樹脂成形情報を活用することができるので、個別に樹脂成形品の特性を推定する場合に比べて、樹脂成形品の特性をより精度よく推定することができる。
【0009】
また、シミュレーションを行う際のパラメータを、蓄積された複数の樹脂成形情報に基づいて調整することができるので、樹脂成形品の特性を精度よく推定することが可能なシミュレーションのパラメータを容易に設定することができる。
【0010】
上記第1の局面による樹脂成形解析方法において、好ましくは、樹脂成形条件情報と、対応する樹脂成形品の特性を実測した実測値とを含む複数の樹脂成形情報に基づいて機械学習を行い、複数の樹脂成形情報に基づいて、成形時の樹脂の状態と成形品の特性の詳細とのシミュレーションを行う際のパラメータの最適化を行う。このように構成すれば、シミュレーションを行う際のパラメータの最適化が行われるので、樹脂成形品の特性を精度よく推定することが可能なシミュレーションのパラメータをより容易に設定することができる。
【0011】
上記複数の樹脂成形情報に基づいて機械学習を行う構成において、好ましくは、複数の樹脂成形情報に基づいて、樹脂成形条件を分類し、入力された樹脂成形条件に基づいて、対応する分類の樹脂成形情報のパラメータを用いて成形時の樹脂の状態と成形品の特性の詳細とのシミュレーションを行う。このように構成すれば、蓄積された複数の樹脂成形情報を分類することにより、使用する樹脂成形情報を絞ることができるので、対応する樹脂成形情報のパラメータを容易に設定することができる。
【0012】
上記第1の局面による樹脂成形解析方法において、好ましくは、複数の樹脂成形情報に基づいて、樹脂成形条件を分類し、入力された樹脂成形条件から、対応する分類の樹脂成形情報に基づいて、樹脂成形品の特性を推定して特性情報として出力する。このように構成すれば、対応する分類の樹脂成形情報に基づいて、樹脂成形品の特性をより精度よくかつ迅速に推定することができる。
【0013】
上記複数の樹脂成形情報に基づいて、樹脂成形条件を分類する構成において、好ましくは、樹脂成形条件の分類は、成形品の大きさ、成形品の複雑度、成形品形状、樹脂データ、成形条件のうち少なくとも1つを数値化して行う。このように構成すれば、成形品の大きさ、成形品の複雑度、成形品形状、樹脂データ、成形条件のうち少なくとも1つを数値化することにより、類似の条件ごとに樹脂成形条件を容易に分類することができる。
【0014】
上記第1の局面による樹脂成形解析方法において、好ましくは、成形品の特性は、成形品のそり、成形時の圧力、成形時の温度、成形品の配向、成形品のウェルドの状態のうち少なくとも1つを含む。このように構成すれば、樹脂成形条件を入力することにより、成形品の特性として、成形品のそり、成形時の圧力、成形時の温度、成形品の配向、成形品のウェルドの状態のうち少なくとも1つを取得することができる。
【0015】
上記第1の局面による樹脂成形解析方法において、好ましくは、成形品の特性は、樹脂の充填パターン、成形品の外観特性、成形品の樹脂物性値、成形時のひずみ、成形品の質量、成形品の長さ、成形品の歪み、成形品の応力、成形品の機械的特性、成形品の熱的特性、成形品の電気的特性、成形品の化学的特性、成形品の成形特性、成形品の光学的特性、成形品の色調のうち少なくとも1つを含む。このように構成すれば、樹脂成形条件を入力することにより、成形品の特性として、樹脂の充填パターン、成形品の外観特性、成形品の樹脂物性値、成形時のひずみ、成形品の質量、成形品の長さ、成形品の歪み、成形品の応力、成形品の機械的特性、成形品の熱的特性、成形品の電気的特性、成形品の化学的特性、成形品の成形特性、成形品の光学的特性、成形品の色調のうち少なくとも1つを取得することができる。
【0016】
この発明の第2の局面による樹脂成形解析方法は、樹脂成形条件情報と、対応する樹脂成形品の特性を実測した実測値に基づく出力値とを関係付けて樹脂成形情報として蓄積し、入力された樹脂成形条件から、蓄積された複数の樹脂成形情報に基づいて、樹脂成形品の特性を推定して特性情報として出力し、樹脂成形品の特性を実測した実測値に基づく出力値は、特性を実測した実測値と、特性を実測した実測値を機械学習を行うことにより補間した補間値とを含む。
上記第1の局面による樹脂成形解析方法において、好ましくは、樹脂成形品の特性を実測した実測値に基づく出力値は、特性を実測した実測値と、特性を実測した実測値を機械学習を行うことにより補間した補間値とを含む。このように構成すれば、実測値の数が十分でない場合でも、機械学習により補間値を取得することができるので、出力値のデータ数を容易に多くすることができる。
【0017】
上記第1または第2の局面による樹脂成形解析方法において、好ましくは、既知の樹脂材料の物性値に基づいて、異なる状態の同種の樹脂材料の物性値を予測する。このように構成すれば、樹脂材料のグレード(特性の優劣を段階的に示した指標)や組成や製法の違いにより、シミュレーションに必要な樹脂材料の物性値が全て分からない場合でも、既知の樹脂材料の物性値に基づいて、樹脂成形に用いられる同種かつ状態の異なる樹脂材料の物性値を予測して取得することができるので、取得した樹脂材料の物性値に基づいてシミュレーションを行うことができる。また、未知の樹脂材料の物性値を、実際に測定する必要がないので、樹脂材料の物性値を測定するための測定装置を別途設ける必要がない。
【0018】
この場合、好ましくは、既知の樹脂材料の基本情報と、樹脂材料に含まれるリサイクル材の含有率とに基づいて、異なる状態の同種の樹脂材料の物性値を予測する。このように構成すれば、成形が行われ熱を受けたリサイクル材を樹脂材料に混ぜて使用する場合でも、樹脂材料の物性値を予測して取得することができるので、リサイクル材を含有する樹脂材料を用いて樹脂成形を行う場合のシミュレーションを精度よく行うことができる。
【0019】
この発明の第3の局面によるプログラムは、第1の局面による樹脂成形解析方法をコンピュータに実行させる。
【0020】
この発明の第3の局面によるプログラムでは、上記第1の局面による樹脂成形解析方法をコンピュータに実行させることにより、樹脂成形の解析を行う際の処理時間が増大するのを抑制することができる。
【0021】
この発明の第4の局面による記憶媒体は、第2の局面によるプログラムが記録され、コンピュータにより読み取り可能である。
【0022】
この発明の第4の局面による記憶媒体では、上記第2の局面によるプログラムを記録させることにより、樹脂成形の解析を行う際の処理時間が増大するのを抑制することが可能なコンピュータ読み取り可能な記録媒体を提供することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、上記のように、樹脂成形の解析を行う際の処理時間が増大するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】一実施形態による樹脂成形解析方法を実施するための構成例を示したブロック図である。
【
図2】一実施形態による樹脂成形情報の蓄積を説明するための図である。
【
図3】一実施形態による特性情報の出力を説明するための図である。
【
図4】一実施形態によるシミュレーションを行う際のパラメータの最適化を説明するための図である。
【
図5】一実施形態による樹脂成形条件の分類を説明するための図である。
【
図6】一実施形態による樹脂成形品の特性の補間を説明するための図である。
【
図7】一実施形態による樹脂成形解析処理の第1例を説明するためのフローチャートである。
【
図8】一実施形態による樹脂成形解析処理の第2例を説明するためのフローチャートである。
【
図9】一実施形態による樹脂物性値の予測処理を説明するための図である。
【
図10】一実施形態による学習フェーズを説明するためのフローチャートである。
【
図11】一実施形態による運用フェーズを説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0026】
図1~
図7を参照して、一実施形態による樹脂成形解析方法について説明する。
【0027】
本実施形態による樹脂成形解析方法は、樹脂を成形する場合の、成形品のそり、成形時の圧力、成形時の温度、成形品の配向、成形品のウェルドの状態のうち少なくとも1つを含む成形品の特性を解析する方法である。また、新規に成形品を開発する場合には、製品カテゴリ、製品の形状特徴量から適したパラメータを提案する。
【0028】
(装置構成例)
本実施形態による樹脂成形解析方法は、コンピュータ1にプログラム3aを実行させることにより実施することができる。樹脂成形解析方法は、たとえば、
図1に示すような装置構成によって実施可能である。コンピュータ1は、プログラム3aを実行可能に構成されている。コンピュータ1にプログラム3aを実行させることにより、樹脂成形解析装置100が構成されている。コンピュータ1にプログラム3aを実行させることにより行われる処理の一部または全部が、専用の演算回路等のハードウェアによって行われてもよい。
【0029】
図1の構成例では、コンピュータ1は、CPU(Central Processing Unit)などからなる1または複数のプロセッサ2と、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)および記憶装置などを含んだ記憶部3とを備える。記憶装置は、たとえば、ハードディスクドライブや半導体記憶装置などである。
【0030】
コンピュータ1は、記憶部3に記憶されたプログラム3aをプロセッサ2に実行させることにより、樹脂成形解析を行うことが可能である。プログラム3aは、記録媒体7から読み出される他、インターネットなどのネットワークやLAN(Local Area Network)などの伝送経路8を介して外部サーバなどから提供されてもよい。記録媒体7は、光学ディスク、磁気ディスク、不揮発性半導体メモリなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体であり、プログラム3aが記録されている。
【0031】
記憶部3には、プログラム3aの他、樹脂成形解析を行うために利用される各種の解析用データ3bが記憶されている。解析用データ3bは、樹脂成形条件情報および樹脂成形品の特性を含む樹脂成形情報、成形時の樹脂の状態と成形品の特性の詳細とのシミュレーションを行う際のパラメータ、製品カテゴリ情報、形状特徴量、最適なパラメータの群、誤差率、解析に用いる数値データ、解析条件のデータなどが記憶されている。
【0032】
また、コンピュータ1は、液晶表示装置などの表示部4、キーボードおよびマウスなどの入力装置からなる入力部5、記録媒体7からプログラム3aや各種データを読み取るための読取部6を備えている。読取部6は、記録媒体7の種類に応じたリーダ装置などである。解析条件のデータは、入力部5を用いてユーザが入力することができる。解析用データ3bは、ユーザが作成した記録媒体から読み出したり、ユーザが外部サーバなどに作成しておいて、伝送経路8を介して外部サーバから取得したりしてもよい。
【0033】
(樹脂成形解析方法)
次に、樹脂成形解析方法について説明する。本実施形態では、
図2に示すように、樹脂成形条件情報と、対応する樹脂成形品の特性を実測した実測値に基づく出力値とを関係付けて樹脂成形情報として蓄積する。そして、
図3に示すように、蓄積された複数の樹脂成形情報に基づいて、樹脂成形品の特性を推定して特性情報として出力する。
【0034】
樹脂成形解析方法は、学習フェーズと、運用フェーズとを含んでいる。学習フェーズでは、
図2に示すように、樹脂成形情報が蓄積される。また、学習フェーズでは、蓄積された樹脂成形情報が機械学習により学習される。具体的には、樹脂成形情報の蓄積は、樹脂成形条件情報として入力条件定義と、成形品の特性を実測した実測値とが関係付けられて入力される。入力条件定義は、製品カテゴリ情報(用途、分野)、解析(計算)メッシュ情報(要素タイプ、要素数、節点数、分割条件、要素品質)、樹脂データ(樹脂メーカ、グレード名、ベースレジン、潜熱、固化温度、密度、比熱、熱伝導率、溶融粘度、PVTデータ、弾性率、ポアソン比、線膨張係数、成形収縮率、機械的強度、強化材物性、強化材含有率、粘弾性特性(プロニー級数、シフトファクター)、光学特性(応力光学係数、光弾性係数、屈折率、分子構造、ゲル化反応率、硬化反応熱))、成形条件(時間、充填率、圧力上限、スクリュー位置、スクリュー速度、流量、計量位置、樹脂温度、金型温度、VP切替タイミング、保圧力、保圧時間、型内冷却条件、サイクルタイム)、金型条件(ゲート位置、ゲート点数、ランナーレイアウト、冷却回路、突き出しピン配置)、境界条件(ノズル部の流量・圧力、熱伝達率、雰囲気温度、雰囲気湿度)、成形機情報(成形機メーカ名、成形機型番、最大射出速度、最大射出圧力、最大保持圧力、スクリュー径、最大型締力、最大射出容量)、成形品の剛性情報を含んでいる。成形品の特性は、成形品のそり、成形時の圧力、成形時の温度、成形品の配向、成形品のウェルドの状態を含んでいる。たとえば、成形品の特性は、成形品の外観品質(ウエルドライン、フローマーク、面ヒケ、焼け転写性不良など)、物性品質(残留応力、強度、剛性)、寸法品質(そり、ヒケ、転写性)、光学特性(複屈折)を含んでいる。
【0035】
また、成形品の特性は、樹脂の充填パターン、成形品の外観特性、成形品の樹脂物性値、成形時のひずみ、成形品の質量、成形品の長さ、成形品の歪み、成形品の応力、成形品の機械的特性、成形品の熱的特性、成形品の電気的特性、成形品の化学的特性、成形品の成形特性、成形品の光学的特性、成形品の色調うち少なくとも1つを含んでいる。また、成形品の特性は、少なくとも実測値で定義しているものを含み、定量的なものだけではなく、定性的な指標も含む。測定可能な実測値(物理量)としての成形品の特性は、成形品の重量、長さ、そり(歪)、応力、機械的特性、熱的特性、電気的特性、樹脂物性値、化学的特性、成形特性、光学的特性、外観特性、色調を含んでいる。
【0036】
また、学習フェーズでは、3次元CADデータまたは解析メッシュから形状特徴量が計算される。また、ユーザ情報(ライセンス情報)から、推奨モジュールが選定される。また、パラメータ因子および水準数から生成する解析条件が生成される。そして、シミュレーションを行い解析が実行される。シミュレーションにより出力される解析結果と、実測値との差が取得され、誤差率が評価される。解析結果と実測値との誤差率から、最適なパラメータの群が求められる。つまり、樹脂成形条件情報と、対応する樹脂成形品の特性を実測した実測値とを含む複数の樹脂成形情報に基づいて機械学習を行い、複数の樹脂成形情報に基づいて、成形時の樹脂の状態と成形品の特性の詳細とのシミュレーションを行う際のパラメータの最適化を行う。そして、製品カテゴリ情報、形状特徴量、最適なパラメータの群、誤差率が保存される。また、製品カテゴリ情報、形状特徴量、最適なパラメータの群、誤差率の各々の相関が計算される。
【0037】
また、学習フェーズでは、成形品の特性(たとえば、そり)について、複数の影響因子の寄与度を算出する。影響因子は、成形品の形状、成形条件、樹脂の性質を含む。寄与度は、複数の影響因子について、寄与する割合がそれぞれ算出される。影響因子の寄与の割合は、たとえば、1の影響因子を変動させ、他の影響因子を固定した複数の樹脂成形情報を比較することにより、影響因子の変動が成形品の特性についてどの程度寄与しているのかを算出する。
【0038】
パラメータは、金型冷却解析に影響するパラメータ(冷媒温度、冷媒流量)、充填・保圧冷却解析に影響するパラメータ(樹脂データ、製品肉厚、金型内の空気の影響)、配向分布の解析に影響するパラメータ(繊維同士の干渉係数、繊維含有率、繊維の長さ、アスペクト比)、収縮分布の解析に影響するパラメータ(収縮開始のタイミング、固化状態)、物性分布の解析に影響するパラメータ(弾性率、ポアソン比、粘弾性物性)、などを含んでいる。また、パラメータは、製品カテゴリ情報(用途、分野)、解析メッシュ情報(要素タイプ、要素数、節点数、分割条件、要素品質)、樹脂データ(樹脂メーカ、グレード名、ベースレジン、潜熱、固化温度、密度、比熱、熱伝導率、溶融粘度、PVTデータ、弾性率、ポアソン比、線膨張係数、成形収縮率、機械的強度、強化材物性、強化材含有率、粘弾性特性(プロニー級数、シフトファクター)、光学特性(応力光学係数、光弾性係数、屈折率、分子構造、ゲル化反応率、硬化反応熱))、成形条件(時間、充填率、圧力上限、スクリュー位置、スクリュー速度、流量、計量位置、樹脂温度、金型温度、VP切替タイミング、保圧力、保圧時間、型内冷却条件、サイクルタイム)、金型条件(ゲート位置、ゲート点数、ランナーレイアウト、冷却回路、突き出しピン配置)、境界条件(ノズル部の流量・圧力、熱伝達率、雰囲気温度、雰囲気湿度)、成形機情報(成形機メーカ名、成形機型番、最大射出速度、最大射出圧力、最大保持圧力、スクリュー径、最大型締力、最大射出容量)の各情報に応じたパラメータを含んでいる。また、パラメータは、解析対象の形状(成形品形状、ランナー形状、金型形状、ゲート位置)、解析対象の計算モデル、樹脂物性値、形状特徴量を含んでいる。ここで、パラメータの種類が多くなるほど、パラメータを調整するための作業が煩雑になる。本実施形態では、機械学習により最適なパラメータの群を得ることができるので、パラメータを設定する作業が煩雑になるのを抑制することが可能である。
【0039】
また、学習フェーズでは、蓄積された複数の樹脂成形情報から機械学習により最適化したパラメータを用いたシミュレーションの精度を確認する。具体的には、実測値を有する樹脂成形条件情報を入力し、シミュレーションにより出力される樹脂成形品の特性と、実測値による樹脂成形品の特性とを比較して、シミュレーションの精度を確認する。たとえば、実測値のデータの約8割ほどを機械学習に用い、実測値のデータの約2割ほどを機械学習を行い最適化したパラメータを用いたシミュレーションの精度の確認に用いる。
【0040】
運用フェーズでは、
図3に示すように、入力された樹脂成形条件から、蓄積された複数の樹脂成形情報に基づいて、樹脂成形品の特性を推定して特性情報として出力する。また、入力された樹脂成形条件から、蓄積された複数の樹脂成形情報に基づいて、成形時の樹脂の状態と成形品の特性の詳細とのシミュレーションを行う際のパラメータを推定し、推定したパラメータを用いてシミュレーションを行う。つまり、運用フェーズでは、カテゴリ毎に登録されている最適パラメータを利用してシミュレーションが行われる。また、カテゴリを選択した後、形状特徴量が近い情報の最適パラメータを利用してシミュレーションが行われる。
【0041】
また、本実施形態では、
図5に示すように、複数の樹脂成形情報に基づいて、樹脂成形条件を分類する。樹脂成形条件の分類は、成形品の大きさ、成形品の複雑度、成形品形状、樹脂データ、成形条件のうち少なくとも1つを数値化して行う。たとえば、樹脂成形条件の分類は、成形品形状を表す特徴量(たとえば、体積、表面積、肉厚分布、複雑度、自己組織化マップなど)を数値化して行う。成形品の大きさは、成形品の表面積、体積などに基づいて数値化される。また、成形品の複雑度および成形品形状は、成形品の突起、切欠き、穴、曲率などに基づいて数値化される。樹脂データは、密度、比熱、熱伝導率、ヤング率、ポアソン比、線膨張係数、溶融粘度、PVTデータ、強化材物性、粘弾性特性、光学特性に基づいて数値化される。成形条件は、射出時間、樹脂温度、金型温度、VP切替タイミング、保圧条件、冷却条件、サイクルタイム、成形機条件などに基づいて数値化される。
【0042】
また、本実施形態では、入力された樹脂成形条件に基づいて、対応する分類の樹脂成形情報のパラメータを用いて成形時の樹脂の状態と成形品の特性の詳細とのシミュレーションを行う。たとえば、入力された樹脂成形条件に基づいて、同じ分類、または、近い分類の樹脂成形情報が提示される。ユーザは、樹脂成形情報を選択することにより、選択された樹脂成形情報に基づくパラメータが設定された状態でシミュレーションが行われる。この場合、数理的な解析により樹脂成形品の特性が推定される。
【0043】
また、入力された樹脂成形条件から、対応する分類の樹脂成形情報に基づいて、樹脂成形品の特性を推定して特性情報として出力する。たとえば、入力された樹脂成形条件に基づいて、同じ分類、または、近い分類の樹脂成形情報が選択される。そして、選択された分類の樹脂成形情報から、入力された樹脂成形条件における樹脂成形品の特性が推定されて出力される。この場合、統計的な解析により樹脂成形品の特性が推定される。
【0044】
また、本実施形態では、樹脂成形品の特性を実測した実測値に基づく出力値は、特性を実測した実測値と、特性を実測した実測値を機械学習を行うことにより補間した補間値とを含む。
図6に示すように、樹脂成形条件情報と、樹脂成形条件情報に関係付けられた樹脂成形品の特性の実測値とに基づいて、条件が足りない部分を、機械学習により補間する。
【0045】
(実測値の測定方法)
実測値の測定方法について説明する。
【0046】
成形品の樹脂の配向は、X線透過法により測定する。成形品の複屈折は、複屈折測定器により測定する。成形時の圧力は、金型に設けた圧力センサにより測定する。成形時の温度は、金型に設けた温度センサ、または、金型を撮像してサーモグラフィにより測定する。樹脂材料の変位は、接触型の3次元測定装置、または、非接触型の3次元測定装置により測定する。
【0047】
(機械学習)
学習フェーズにおいて用いられる機械学習の例について説明する。
【0048】
機械学習は、たとえば、回帰、決定木、ニューラルネットワーク、ベイズ、クラスタリング、アンサンブル学習などの方法により行われる。
【0049】
(樹脂成形解析処理)
図7を参照して、樹脂成形解析処理の第1例の概略について説明する。なお、樹脂成形解析処理は、コンピュータ1(プロセッサ2)により実行される。
【0050】
図7に示すように、ステップS1において、入力された樹脂成形条件(解析メッシュ、成形条件、樹脂データ)が取得される。ステップS2において、蓄積された樹脂成形情報に基づいて、樹脂成形品の特性(そり)が統計的に推定されて出力される。この場合に、そりの影響因子の寄与度が算出されて提示される。
【0051】
ステップS3において、そり解析を行う指示がされたか否かが判断される。そり解析を行う場合、ステップS4に進み、そり解析を行わない場合、ステップS5に進む。ステップS4において、最適パラメータによりシミュレーション解析が行われる。これにより、ステップS2の統計的解析とは別個に、シミュレーションによってもそりの解析が行われる。その後、ステップS5に進む。
【0052】
ステップS5において、そり対策を行う指示がされたか否かが判断される。そり対策を行う場合、ステップS6に進み、そり対策を行わない場合、ステップS7に進む。ステップS6において、形状因子の解析、最適条件の解析、そり低減材採用が行われて、そり対策が行われる。その後、ステップS7に進む。
【0053】
ステップS7において、樹脂成形解析処理を終了する指示がされたか否かが判断される。終了しない場合、ステップS8に進み、終了される場合、樹脂成形解析処理が終了される。ステップS8において、条件が変更されて、ステップS3に戻る。
【0054】
図8を参照して、樹脂成形解析処理の第2例の概略について説明する。なお、樹脂成形解析処理は、コンピュータ1(プロセッサ2)により実行される。
【0055】
図8に示すように、ステップS11において、入力された樹脂成形条件(解析メッシュ、成形条件、樹脂データ)が取得される。ステップS12において、蓄積された樹脂成形情報に基づいて、樹脂成形品の特性が統計的に推定されて出力される。この場合に、影響因子の寄与度が算出されて提示される。
【0056】
ステップS13において、成形シミュレーション(金型冷却解析、材料充填解析、保圧・冷却解析、そり解析などを含む)を行う指示がされたか否かが判断される。成形シミュレーションを行う場合、ステップS14に進み、成形シミュレーションを行わない場合、ステップS15に進む。ステップS14において、最適パラメータによりシミュレーション解析が行われる。これにより、ステップS12の統計的解析とは別個に、シミュレーションによってもそりの解析が行われる。その後、ステップS15に進む。
【0057】
ステップS15において、対策を行う指示がされたか否かが判断される。対策を行う場合、ステップS16に進み、対策を行わない場合、ステップS17に進む。ステップS16において、成形品形状変更、成形条件変更、金型要件変更(ゲート位置、ランナーレイアウト、入れ子構造)が行われて、対策が行われる。その後、ステップS17に進む。
【0058】
ステップS17において、樹脂成形解析処理を終了する指示がされたか否かが判断される。終了しない場合、ステップS18に進み、終了される場合、樹脂成形解析処理が終了される。ステップS18において、条件が変更されて、ステップS13に戻る。
【0059】
また、本実施形態では、既知の樹脂材料の物性値に基づいて、異なる状態の同種の樹脂材料の物性値を予測する。具体的には、既知の樹脂材料の基本情報と、樹脂材料に含まれるリサイクル材の含有率とに基づいて、異なる状態の同種の樹脂材料の物性値を予測する。
【0060】
ここで、世界中の樹脂メーカが扱う樹脂材料の樹脂グレード(特性の優劣を段階的に示した指標)の数は、約10万程度も存在するともいわれている。成形シミュレーションを行う際に、成形性、熱的特性、機械的特性などを必要とする。しかし、樹脂メーカが樹脂材料を販売する際に作成しているカタログ情報には、樹脂成形のシミュレーションに必要なデータの一部(密度、荷重たわみ温度、線膨張係数、成形収縮率、MFR、弾性率、強化材の含有率など)しか含まれていない。また、成形シミュレーションを利用するユーザーは、通常はソフトウェアに内蔵されている材料データを利用するが、必要な材料データがない場合は、別途測定する場合も多い。材料データを測定するためには、特殊な測定装置を使う場合が大半である。そのため、費用も高くなる。
【0061】
また、コスト削減のため、バージン材に一部リサイクル材を混ぜて樹脂材料を成形に用いる場合がある。リサイクル材は、すでに熱履歴を受けていたり、強化材が破断しており、物性値がバージン材と大きく変わっていることが知られている。リサイクル材の含有率によって、樹脂材料の物性値も変化する。しかし、測定の手間や費用を考えると、リサイクル材を混ぜた場合の精度良いシミュレーション用の材料データを準備することが困難である。
【0062】
そこで、未知の樹脂材料の物性値を予測する処理では、複数の組成を持つ材料を組み合わせた場合の、成形シミュレーション用の材料物性値を生成する。
【0063】
たとえば、
図8に示すように、樹脂グレードに応じた樹脂材料の基本情報と、リサイクル材含有率を入力すると、樹脂物性値を出力する。基本情報は、樹脂メーカが提供しているカタログ情報に基づく。
図8に示すように、樹脂グレードがグレードA、グレードB、グレードCの樹脂材料は、樹脂物性が既知でり、樹脂グレードがグレードCの樹脂材料は、樹脂物性が未知である。この場合、既知の複数の樹脂材料の物性値に基づいて、樹脂成形に用いられる未知の樹脂材料の物性値が予測される。また、基本情報とリサイクル材含有率と、に基づいて樹脂物性値を出力することを機械学習させることにより、任意のリサイクル材含有時の材料物性値を予測する。
【0064】
図9に示すように、学習フェーズでは、ステップS21において、樹脂成形条件(基本情報、リサイクル材含有率)が入力される。ステップS22において、成形シミュレーションを行う。ステップS23において、解析結果(シミュレーション結果)と実測値との差(誤差)を抽出する。ステップS24において、樹脂成形品の特性(特徴量)と誤差とを機械学習する。
【0065】
図10に示すように、運用フェーズでは、ステップS31において、樹脂成形条件(基本情報、リサイクル材含有率)が入力される。ステップS32において、成形品の特徴量から最適なパラメータ(樹脂物性値)を推定する。ステップS33において、推定したパラメータに基づいて成形シミュレーションを行い、成形後の特性を予測する。
【0066】
(本実施形態の効果)
次に、本実施形態の効果について説明する。
【0067】
本実施形態では、上記のように、入力された樹脂成形条件から、蓄積された複数の樹脂成形情報に基づいて、樹脂成形品の特性を推定して特性情報として出力する。これにより、シミュレーションを行うことなく樹脂成形品の特性情報を出力することができるので、シミュレーションを1回または複数回行う場合に比べて、樹脂成形の解析を行う際の処理時間が増大するのを抑制することができる。また、樹脂成形品の特性を実測した実測値を蓄積した複数の樹脂成形情報に基づいて樹脂成形品の特性を推定するので、シミュレーションのみにより特性を推定する場合に比べて、樹脂成形品の特性を実測値に即して推定することができる。また、蓄積した複数の樹脂成形情報を活用することができるので、個別に樹脂成形品の特性を推定する場合に比べて、樹脂成形品の特性をより精度よく推定することができる。
【0068】
また、本実施形態では、上記のように、入力された樹脂成形条件から、蓄積された複数の樹脂成形情報に基づいて、成形時の樹脂の状態と成形品の特性の詳細とのシミュレーションを行う際のパラメータを推定し、推定したパラメータを用いてシミュレーションを行う。これにより、シミュレーションを行う際のパラメータを、蓄積された複数の樹脂成形情報に基づいて調整することができるので、樹脂成形品の特性を精度よく推定することが可能なシミュレーションのパラメータを容易に設定することができる。
【0069】
また、本実施形態では、上記のように、樹脂成形条件情報と、対応する樹脂成形品の特性を実測した実測値とを含む複数の樹脂成形情報に基づいて機械学習を行い、複数の樹脂成形情報に基づいて、成形時の樹脂の状態と成形品の特性の詳細とのシミュレーションを行う際のパラメータの最適化を行う。これにより、シミュレーションを行う際のパラメータの最適化が行われるので、樹脂成形品の特性を精度よく推定することが可能なシミュレーションのパラメータをより容易に設定することができる。
【0070】
また、本実施形態では、上記のように、複数の樹脂成形情報に基づいて、樹脂成形条件を分類し、入力された樹脂成形条件に基づいて、対応する分類の樹脂成形情報のパラメータを用いて成形時の樹脂の状態と成形品の特性の詳細とのシミュレーションを行う。これにより、蓄積された複数の樹脂成形情報を分類することにより、使用する樹脂成形情報を絞ることができるので、対応する樹脂成形情報のパラメータを容易に設定することができる。
【0071】
また、本実施形態では、上記のように、複数の樹脂成形情報に基づいて、樹脂成形条件を分類し、入力された樹脂成形条件から、対応する分類の樹脂成形情報に基づいて、樹脂成形品の特性を推定して特性情報として出力する。これにより、対応する分類の樹脂成形情報に基づいて、樹脂成形品の特性をより精度よくかつ迅速に推定することができる。
【0072】
また、本実施形態では、上記のように、樹脂成形条件の分類は、成形品の大きさ、成形品の複雑度、成形品形状、樹脂データ、成形条件のうち少なくとも1つを数値化して行う。これにより、成形品の大きさ、成形品の複雑度、成形品形状、樹脂データ、成形条件のうち少なくとも1つを数値化することにより、類似の条件ごとに樹脂成形条件を容易に分類することができる。
【0073】
また、本実施形態では、上記のように、成形品の特性は、成形品のそり、成形時の圧力、成形時の温度、成形品の配向、成形品のウェルドの状態のうち少なくとも1つを含む。これにより、樹脂成形条件を入力することにより、成形品の特性として、成形品のそり、成形時の圧力、成形時の温度、成形品の配向、成形品のウェルドの状態のうち少なくとも1つを取得することができる。
【0074】
また、本実施形態では、上記のように、成形品の特性は、樹脂の充填パターン、成形品の外観特性、成形品の樹脂物性値、成形時のひずみ、成形品の質量、成形品の長さ、成形品の歪み、成形品の応力、成形品の機械的特性、成形品の熱的特性、成形品の電気的特性、成形品の化学的特性、成形品の成形特性、成形品の光学的特性、成形品の色調のうち少なくとも1つを含む。これにより、樹脂成形条件を入力することにより、成形品の特性として、樹脂の充填パターン、成形品の外観特性、成形品の樹脂物性値、成形時のひずみ、成形品の質量、成形品の長さ、成形品の歪み、成形品の応力、成形品の機械的特性、成形品の熱的特性、成形品の電気的特性、成形品の化学的特性、成形品の成形特性、成形品の光学的特性、成形品の色調のうち少なくとも1つを取得することができる。
【0075】
また、本実施形態では、上記のように、樹脂成形品の特性を実測した実測値に基づく出力値は、特性を実測した実測値と、特性を実測した実測値を機械学習を行うことにより補間した補間値とを含む。これにより、実測値の数が十分でない場合でも、機械学習により補間値を取得することができるので、出力値のデータ数を容易に多くすることができる。
【0076】
また、本実施形態では、上記のように、既知の樹脂材料の物性値に基づいて、異なる状態の同種の樹脂材料の物性値を予測する。これにより、樹脂材料のグレードや組成や製法の違いにより、シミュレーションに必要な樹脂材料の物性値が全て分からない場合でも、既知の樹脂材料の物性値に基づいて、樹脂成形に用いられる同種かつ状態の異なる樹脂材料の物性値を予測して取得することができるので、取得した樹脂材料の物性値に基づいてシミュレーションを行うことができる。また、未知の樹脂材料の物性値を、実際に測定する必要がないので、樹脂材料の物性値を測定するための測定装置を別途設ける必要がない。
【0077】
また、本実施形態では、上記のように、既知の樹脂材料の基本情報と、樹脂材料に含まれるリサイクル材の含有率とに基づいて、異なる状態の同種の樹脂材料の物性値を予測する。これにより、成形が行われ熱を受けたリサイクル材を樹脂材料に混ぜて使用する場合でも、樹脂材料の物性値を予測して取得することができるので、リサイクル材を含有する樹脂材料を用いて樹脂成形を行う場合のシミュレーションを精度よく行うことができる。
【0078】
(変形例)
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0079】
たとえば、上記実施形態では、成形品の特性は、成形品のそり、成形時の圧力、成形時の温度、成形品の配向、成形品のウェルドの状態のうち少なくとも1つを含む構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、成形品の特性は、上記以外の特性を含んでいてもよい。
【0080】
また、上記実施形態では、樹脂成形条件の分類は、成形品の大きさ、成形品の複雑度、成形品形状、樹脂データ、成形条件のうち少なくとも1つを数値化して行う構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、樹脂成形条件の分類は、上記以外の要素を数値化して行ってもよいし、上記の要素および他の要素を数値化せずに行ってもよい。
【0081】
また、本発明では、複数の樹脂成形情報は、樹脂成形品の特性情報を推定するコンピュータに蓄積してもよいし、樹脂成形品の特性情報を推定するコンピュータとは別個に設けられた外部のサーバなどの装置に蓄積されてもよい。
【0082】
また、上記実施形態では、説明の便宜上、コンピュータの処理動作を処理フローに沿って順番に処理を行うフロー駆動型のフローチャートを用いて説明したが、本発明はこれに限られない。本発明では、コンピュータの処理動作を、イベント単位で処理を実行するイベント駆動型(イベントドリブン型)の処理により行ってもよい。この場合、完全なイベント駆動型で行ってもよいし、イベント駆動およびフロー駆動を組み合わせて行ってもよい。
【符号の説明】
【0083】
1 コンピュータ
3a プログラム
7 記録媒体