(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-05
(45)【発行日】2022-08-16
(54)【発明の名称】粘着テープ
(51)【国際特許分類】
C09J 7/24 20180101AFI20220808BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20220808BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20220808BHJP
C09J 107/00 20060101ALI20220808BHJP
C09J 109/00 20060101ALI20220808BHJP
【FI】
C09J7/24
C09J7/38
C09J201/00
C09J107/00
C09J109/00
(21)【出願番号】P 2019523454
(86)(22)【出願日】2018-05-25
(86)【国際出願番号】 JP2018020161
(87)【国際公開番号】W WO2018225541
(87)【国際公開日】2018-12-13
【審査請求日】2021-01-28
(31)【優先権主張番号】P 2017114357
(32)【優先日】2017-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】澤村 翔太
(72)【発明者】
【氏名】蓮見 水貴
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-011545(JP,A)
【文献】特開2003-219533(JP,A)
【文献】特開2000-204213(JP,A)
【文献】特表2016-524632(JP,A)
【文献】特開2004-359844(JP,A)
【文献】特開昭62-253647(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00 -201/10
C08K 3/00 - 13/08
C08L 1/00 -101/14
H01B 3/16 - 3/56
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材の片面に形成された粘着剤層とを有する粘着テープであって、
前記基材は、ポリ塩化ビニル樹脂100質量部に対し、沸点が410℃以上
500℃以下である高沸点可塑剤40~65質量部、三酸化アンチモン5~15質量部を含有する樹脂組成物からなる、粘着テープ。
【請求項2】
前記高沸点可塑剤がトリメリット酸エステルを含む、請求項1に記載の粘着テープ。
【請求項3】
前記トリメリット酸エステルが式1で示されるトリメリット酸トリアルキルエステルである請求項2に記載の粘着テープ。
【化1】
【請求項4】
前記粘着剤層の粘着剤が、天然ゴムまたは合成ゴムから選択される1種以上のゴムと、粘着付与樹脂を含有する請求項1~請求項3の何れか1項に記載の粘着テープ。
【請求項5】
前記粘着テープが自動車用ワイヤーハーネス結束用である、請求項1~請求項4の何れか1項に記載の粘着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着テープに関する。この粘着テープは、電気自動車、ハイブリット自動車の高圧ケーブルや自動車のワイヤーハーネスなどを結束する結束用に好適に利用可能である。
【背景技術】
【0002】
自動車のワイヤーハーネスの結束用に、適度な柔軟性と伸長性を有し、難燃性、機械的強度、耐熱変形性、電気絶縁性、及び成形加工性などの点に優れ、さらに比較的安価であるという理由から、ポリ塩化ビニル樹脂からなる基材の片面に粘着剤を塗布したポリ塩化ビニル系粘着テープが使用されている(特許文献1~2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8-259909号公報
【文献】特開2012-184369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、ハイブリット自動車や電気自動車の登場、及び増加に伴い、バッテリーからモーターを繋ぐ高圧ケーブル部分は発熱が高く、従来のポリ塩化ビニル系粘着テープより高い温度環境下にさらされた後でも、ケーブル、及び電線を曲げた際テープにヒビや割れが発生しない耐熱性が求められている。
【0005】
耐熱性を付与したポリ塩化ビニル系粘着テープとしては、ポリ塩化ビニル樹脂にポリエステル系可塑剤を混合してなる基材に、電離性放射線の照射による架橋を行った粘着テープが提案されているが、該粘着テープでは耐熱性が過剰スペック、かつ、ポリエステル系可塑剤は基材から粘着剤層への移行が阻害されやすいため、従来よく使用されてきたフタル酸系可塑剤と同様の粘着物性を維持するのが困難である。さらに電離性放射線の照射は加工費が高く、経済性も良くない問題がある(特許文献1)。
【0006】
また、上記ポリエステル系可塑剤の欠点を改善した、可塑剤のSP値(溶解度パラメーター)を9.0以上にすることで、可塑剤の基材と粘着剤層の移行を改善する粘着テープも提案されているが、SP値の近いアクリル系粘着剤には効果があるものの、ゴム系粘着剤には効果が低い問題がある(特許文献2)。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、優れた機械物性を有し、高温雰囲気下に長時間晒された後のヒビや割れの発生が抑制される粘着テープを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、基材と、前記基材の片面に形成された粘着剤層とを有する粘着テープであって、前記基材は、ポリ塩化ビニル樹脂100質量部に対し、沸点が410℃以上である高沸点可塑剤40~65質量部、三酸化アンチモン5~15質量部を含有する樹脂組成物からなる、粘着テープが提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明者は鋭意検討を行ったところ、特定量の高沸点可塑剤と特定量の三酸化アンチモンを併用した場合には、粘着テープの機械物性が優れ、且つ高温雰囲気下に長時間晒された後にもヒビや割れの発生が抑制されることを見出し、本発明の完成に到った。
【0010】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
好ましくは、前記高沸点可塑剤がトリメリット酸エステルを含む。
好ましくは、前記トリメリット酸エステルが下記式1で示されるトリメリット酸トリアルキルエステルである。
好ましくは、前記粘着剤層の粘着剤が、天然ゴムまたは合成ゴムから選択される1種以上のゴムと、粘着付与樹脂を含有する。
好ましくは、前記粘着テープが自動車用ワイヤーハーネス結束用である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。
【0012】
1.粘着テープの構成
本発明の一実施形態の粘着テープは、基材と、前記基材の片面に形成された粘着剤層とを有する。以下、各構成について、詳細に説明する。
【0013】
1-1.基材
本発明の基材は、ポリ塩化ビニル樹脂100質量部に対し、高沸点可塑剤40~65質量部、三酸化アンチモン5~15質量部を含有する樹脂組成物からなる。
【0014】
<ポリ塩化ビニル樹脂>
本発明におけるポリ塩化ビニル樹脂としては、平均重合度1000~1500が好ましく、平均重合度の異なるポリ塩化ビニル樹脂を2種類以上使用してもよい。平均重合度が1000未満では、基材加工時に樹脂が柔らかくなりすぎ、製膜性が低下する場合がある。平均重合度が1500より高いと、基材が硬くなり電線にテープを巻き付ける際のテープの電線への追従性が低下する場合がある。
【0015】
<高沸点可塑剤>
本発明における高沸点可塑剤は、沸点が410℃以上であり、415℃以上が好ましく、420℃以上がさらに好ましい。高沸点可塑剤の沸点は、500℃以下が好ましく、480℃以下がさらに好ましく、460℃以下がさらに好ましく、450℃以下がさらに好ましい。本明細書において、「沸点」とは、蒸気圧101.3kPa・sにおける値を意味する。高沸点可塑剤として、トリメリット酸エステル、アジピン酸エステル、フタル酸エステルが例示され、トリメリット酸エステルが好ましい。トリメリット酸エステルを用いることによって、加熱前後の引張り伸び率の変化を小さくすることができる。
【0016】
トリメリット酸エステルは、式1で示されるトリメリット酸トリアルキルエステル(トリメリット酸トリ(C4~11アルキル)エステル)が好ましい。式1中のnは、5~10が好ましく、6~9がさらに好ましく、8がさらに好ましい。
【化1】
【0017】
トリメリット酸トリ(C4~11アルキル)エステルとしては、トリメリット酸トリブチル、トリメリット酸トリヘキシル、トリメリット酸トリn-オクチル、トリメリット酸トリイソオクチル、トリメリット酸トリ-2-エチルヘキシル、トリメリット酸トリノニル等が挙げられるが、トリメリット酸トリ-2-エチルヘキシルが特に好ましい。トリメリット酸エステルの分子量は、例えば400~700であり、450~650が好ましく、500~600がさらに好ましい。
【0018】
アジピン酸エステルは、アジピン酸ジイソノニルが好ましい。アジピン酸エステルの分子量は、例えば380~600であり、385~500が好ましく、390~450がさらに好ましい。
【0019】
フタル酸エステルは、フタル酸ジイソデシルが好ましい。フタル酸エステルの分子量は、例えば430~700であり、435~600が好ましく、440~500がさらに好ましい。
【0020】
これらの化合物は、単独、もしくは2種以上を高沸点可塑剤として使用してもよい。
【0021】
本発明における、高沸点可塑剤の含有量は、ポリ塩化ビニル樹脂100質量部に対して40~65質量部であり、好ましくは50~60質量部である。高沸点可塑剤が40質量部未満では、粘着テープの柔軟性が得られず、電線等に巻きつけた際の追従性が悪くなったり、電線に粘着テープを巻きつけた後、加熱後、粘着テープにヒビや割れが発生する場合がある。高沸点可塑剤が65質量部より多いと、基材が柔らかくなりすぎ、引張り強度の低下と製膜性が悪くなる場合がある。
【0022】
<三酸化アンチモン>
本発明の基材に含有される三酸化アンチモンの含有量は、ポリ塩化ビニル樹脂100質量部に対して5~15質量部であり、好ましくは7~12質量部である。
【0023】
三酸化アンチモンの含有量が5質量部未満では、酸素指数が23未満となり粘着テープの難燃性が低下し、更に電線に粘着テープを巻きつけた後、加熱後、粘着テープにヒビや割れが発生する場合がある。また、三酸化アンチモンの含有量が15質量より多いと、電線に粘着テープを巻きつけた後、加熱後、粘着テープにヒビや割れが発生する場合がある。
【0024】
<その他成分>
また、本発明における基材には必要に応じて本発明の効果を阻害しない範囲で、沸点が410℃未満である低沸点可塑剤、無機充填剤、改質剤、及びその他添加剤として着色剤、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤等を配合することができる。
【0025】
低沸点可塑剤としては、例えば、フタル酸エステル系、アジピン酸エステル系、エポキシ系可塑剤等が使用できる。低沸点可塑剤の具体例としては、DINP(フタル酸ジイソノニル)、DHP(フタル酸ジヘプチル)、DOP(フタル酸ジ-2-エチルヘキシル)、n-DOP(フタル酸ジ-n-オクチル)、BBP(ベンジルブチルフタレート)、DOA(アジピン酸ジ-2-エチルヘキシル)等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上選択して使用してもよい。
【0026】
無機質充填剤としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化ジルコニウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、トリフェニルホスファイト、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸アミド、酸化ジリコニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化モリブデン、リン酸グアニジン、ハイドロタルサイト、スネークタイト、硼酸亜鉛、無水硼酸亜鉛、メタ硼酸亜鉛、メタ硼酸バリウム、酸化アンチモン、五酸化アンチモン、赤燐、タルク、アルミナ、シリカ、ベーマイト、ベントナイト、珪酸ソーダ、珪酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムであり、これらから選ばれる単独で又は2種以上選択して使用してもよい。
【0027】
改質剤としては、例えば、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-エチレン共重合体、塩化ビニル-プロピレン共重合体、塩素化ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、メチルメタアクリレート-ブタジエン-スチレン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、熱可塑性ポリウレタン、ポリエステル系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上選択して使用してもよい。
【0028】
<基材の製造方法>
本発明の基材はポリ塩化ビニル樹脂、可塑剤、無機充填剤、熱安定剤、光吸収剤、顔料、その他添加剤などを混合した樹脂組成物を溶融混練して得ることができる。溶融混練方法は特に限定されるものではないが、二軸押出機、連続式及びバッチ式のニーダー、ロール、バンバリーミキサー等の加熱装置を備えた各種混合機、混練機が使用でき、前記樹脂組成物が均一分散するように混合し、得られる混合物を慣用の成形方法であるカレンダー法、Tダイ法、インフレーション法等により基材に成形する。成形機は生産性、色変え、形状の均一性などの面からカレンダー成形機が好ましい。カレンダー成形におけるロール配列方式は、例えば、L型、逆L型、Z型などの公知の方式を採用でき、また、ロール温度は通常150~200℃、好ましくは155~190℃に設定される。基材厚みは使用目的や用途等に応じて様々であるが、通常40~450μm、より好ましくは50~200μm、さらに好ましくは55~100μmである。
【0029】
1-2.粘着剤層
【0030】
本発明の粘着テープの粘着材層の粘着剤は、ゴム系粘着剤が好ましく、溶剤型、エマルジョン型の何れであってもよい。ゴム系粘着剤としては、天然ゴムまたは合成ゴムから選択される1種以上のゴムと、粘着付与樹脂を含有するものが好ましく、天然ゴム、合成ゴム、及び粘着付与樹脂の混合物であることがさらに好ましい。粘着付与樹脂の混合割合は、天然ゴム及び合成ゴムを含有する混合物のゴム成分100質量部に対し、粘着付与樹脂50~150質量部含有することが好ましい。
【0031】
前記天然ゴム及び合成ゴムとしては、天然ゴム-メチルメタアクリレート共重合体ラテックス、スチレン-ブタジエン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、メタクリル酸メチル-ブタジエン共重合体などが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を混合して選択して使用してもよい。
【0032】
前記粘着付与樹脂としては、軟化点、各成分との相溶性等を考慮して選択することができる。例えば、テルペン樹脂、ロジン樹脂、水添ロジン樹脂、クマロン・インデン樹脂、スチレン系樹脂、脂肪族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、テルペン-フェノール樹脂、キシレン系樹脂、その他脂肪族炭化水素樹脂又は芳香族炭化水素樹脂等のエマルジョンが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、二種類以上を混合して用いてもよい。
【0033】
前記ゴム系粘着剤は、溶剤型、エマルジョン型を自由に選択できるが、好ましくは、VOCの発生量が少ないエマルジョン型がよい。
【0034】
1-3.下塗剤層
【0035】
また、本発明の粘着テープは、必要に応じて本発明の効果を阻害しない範囲で、基材と粘着剤層の密着性を向上させる目的で、基材と粘着剤層の間に下塗剤層を設けてもよい。
【0036】
前記下塗剤層を形成する下塗剤としては、天然ゴムにメチルメタアクリレートをグラフト重合させたグラフト重合体100質量部に対し、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体25~300質量部からなるものが好ましい。
【0037】
前記下塗剤に用いられる天然ゴムにメチルメタアクリレートをグラフト重合させたグラフト重合体は、天然ゴム70~50質量%にメチルメタアクリレート30~50質量%グラフト重合させたものが好ましい。グラフト重合体中のメチルメタアクリレートの比率が30質量%未満だと、メチルメタアクリレートとフィルム基材との密着性が悪くなって、粘着テープの層間剥離が起こる場合がある。また、メチルメタアクリレートの比率が50質量%より多いと、下塗剤自体が硬化してフィルム基材の変形に追従できなくなり、粘着テープの層間剥離が起こる場合がある。
【0038】
前記下塗剤に用いられるアクリロニトリル-ブタジエン共重合体としては、中ニトリルタイプ(アクリロニトリル25~30質量%、ブタジエン75~70質量%)、中高ニトリルタイプ(アクリロニトリル31~35質量%、ブタジエン69~65質量%)高ニトリルタイプ(アクリロニトリル36~43質量%、ブタジエン64~57質量%)等がある。これらは、単独で使用するか、あるいは2種類以上を併用してもよい。
【0039】
2.粘着テープの製造方法
本発明における粘着テープは、前記基材の片面に前記下塗剤を塗工し、乾燥炉により溶媒を十分に除去させた後、前記粘着剤を塗工し、下塗剤と同様に乾燥炉により溶媒を十分に除去させたうえで、粘着剤を塗工し粘着テープが得られる。なお、下塗剤の塗工方式としては、グラビア方式、スプレー方式、キスロール方式、バー方式、ナイフ方式等が挙げられ、粘着剤の塗工方式としては、コンマ方式、リップダイ方式、グラビア方式、ロール方式、スロットダイ方式等が挙げられる。下塗剤厚みは通常0.1~1μm、より好ましくは0.3~0.5μmである。また、上塗剤厚みは使用目的や用途等に応じて様々であるが、通常5~50μm、より好ましくは10~30μmである。
【0040】
3.粘着テープの物性・用途
本発明の粘着テープは、120℃雰囲気下、168時間加熱後の粘着テープの引張り伸び率が80%以上であることが好ましい。引張り伸び率が80%未満だと、電線に粘着テープを巻き付け巻きつけた後、加熱後、粘着テープにヒビや割れが発生する場合がある。
【0041】
本発明の粘着テープは、引張り強度が15N/10mm以上であることが好ましく、16N/10mm以上であることがさらに好ましい。
【0042】
本発明の粘着テープは、電気自動車やハイブリット自動車の高圧ケーブルやワイヤーハーネス結束用の粘着テープである。
【実施例】
【0043】
以下に実施例をあげて本発明を更に詳細に説明する。また、これらはいずれも例示的なものであって、本発明の内容を限定するものではない。
【0044】
<引張り強度>
JIS C 2107に準拠して測定した引張り強度である。温度20±2℃、湿度50±5%RHに設定された評価試験室内で測定した。測定結果については以下の様に判断する。
良 :引張り強度が15N/10mm以上
不良:引張り強度が15N/10mm未満
【0045】
<引張り伸び率>
JIS C 2107に準拠して測定した引張り伸び率である。長さ150mm、幅10mmのテープサンプルを、温度20±2℃、湿度50±5%RHに設定された評価試験室内で測定した。測定結果については以下の様に判断する。
良 :引張り伸び率が100%以上
不良:引張り伸び率が100%未満
【0046】
<加熱後の引張り伸び率>
JIS C 2107に準拠して測定した引張り伸び率である。長さ150mm、幅10mmのテープサンプルを、温度120±2℃に設定されたギアオーブンで168時間加熱後、常温で2時間冷却し、測定した。測定結果については以下の様に判断する。
良 :引張り伸び率が80%以上
不良:引張り伸び率が80%未満
【0047】
<端末剥がれ>
φ10mmの電線束に粘着テープを巻き付け、巻き付け終わりの切断時に端末部分の端末剥がれの有無を目視で以下の様に判定する。
良 :端末部分に端末剥がれの無いもの
不良:端末部分に端末剥がれの有るもの
【0048】
<ヒビ、割れ>
φ10mmの電線束に粘着テープを巻き付けたサンプルを、温度120±2℃に設定されたギアオーブンで168時間加熱後、常温で2時間冷却し、電線束の真ん中で手にて折り曲げて目視で以下の様に判定する。
良 :粘着テープにヒビ、割れの無いもの
不良:粘着テープにヒビ、割れの有るもの
【0049】
<酸素指数>
JIS K 7201に記載の装置を用いて測定した燃焼時間4秒以内に消炎する酸素指数(OI)である。長さ100mm、幅20mmのテープサンプルを上部が燃焼円筒の上端部から100mm以上になるようにとりつける。点火器の炎の長さを15~20mmに調整し、テープサンプルの上部に点火し、燃焼し始めてから消炎までの時間を測定する。テープサンプルの燃焼時間が4秒以下で消炎する最大酸素流量と窒素流量を決定し、次式にて酸素指数を求める。
OI値(%)=(酸素流量(L/min))/(酸素流量(L/min)+窒素流量(L/min))
【0050】
[実施例1]
(1)ポリ塩化ビニル樹脂(大洋塩ビ株式会社製TH-1000、平均重合度1000、)、可塑剤としてトリメリット酸トリ-2-エチルヘキシル(DIC株式会社製TOTM)、三酸化アンチモン(鈴裕化学社製、ファイヤーカットTOP-5)を表1に示す配合にてバンバリーミキサーで均一に分散するように溶融混練したのち、カレンダー成形機により、ロール温度165℃にて150μm厚の基材を作製した。
【0051】
(2)作製した基材の片面に、グラビア方式により下塗剤として天然ゴムにメチルメタアクリレートをグラフト重合させたグラフト重合体ラテックスとアクリロニトリルブタジエン共重合体エマルジョンの混合物エマルジョン(イーテック社製、KT4612A)を塗工、乾燥後、コンマ方式により粘着剤として天然ゴムラテックス(レヂテックス社製、HA LATEX)60質量部(固形分)と、天然ゴムにメチルメタアクリレートをグラフト重合させたグラフト重合体ラテックス(レヂテックス社製、MG-40S)40質量部(固形分)に対し、石油樹脂系エマルション粘着付与剤(荒川化学工業社製、AP-1100-NT)135質量部(固形分)を含有する粘着剤を塗工、乾燥して得られた粘着シートをテープログ形状に巻き取った後10mm幅に切断し、サンプルテープを得た。各種特性評価を行った結果は表1に示した。
【0052】
[実施例2~15及び比較例1~15]
可塑剤の種類及び配合量及び三酸化アンチモンの配合量を表1~表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にしてサンプルテープを得た。各種特性評価を行った結果は表1~表2に示した。
【0053】
【0054】
【0055】
表1~表2で示した可塑剤の詳細は、表3の通りである。
【0056】
【0057】
<考察>
表1に示すように、ポリ塩化ビニル樹脂100質量部に対し、高沸点可塑剤40~65質量部、三酸化アンチモン5~15質量部を含有する樹脂組成物からなる基材を用いた場合には、粘着テープが優れた機械物性を有し、高温雰囲気下に長時間晒された後のヒビや割れの発生が抑制されることが分かった。また、トリメリット酸エステルを用いた実施例では、加熱前後の引張り伸び率の変化が小さかった。
【0058】
比較例1、3,5に示すように、高沸点可塑剤の配合量が不十分な場合には、端末剥がれが生じ、粘着テープの加熱後の引張り伸び率が小さく、粘着テープの加熱後にヒビや割れが発生した。
【0059】
比較例2、4,6に示すように、高沸点可塑剤の配合量が過剰な場合には、粘着テープの引張り強度が不十分であった。
【0060】
比較例7~9に示すように、可塑剤の沸点が410℃未満である場合には、粘着テープの加熱後の引張り伸び率が小さく、粘着テープの加熱後にヒビや割れが発生した。
【0061】
比較例10,12,14に示すように、三酸化アンチモンの配合量が不十分な場合には、粘着テープの加熱後にヒビや割れが発生した。
【0062】
比較例11,13,15に示すように、三酸化アンチモンの配合量が過剰な場合には、粘着テープの加熱後の引張り伸び率が小さく、粘着テープの加熱後にヒビや割れが発生した。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の粘着テープを用いることによって、ハイブリット自動車や電気自動車のバッテリーからモーターを繋ぐ高圧ケーブル部分発熱にも耐え、粘着テープにヒビや割れといったクラッキングが発生せず、高圧ケーブルやワイヤーハーネスといった電線束等の結束に期待ができる。