(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-05
(45)【発行日】2022-08-16
(54)【発明の名称】ポンプ型歯磨剤組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/24 20060101AFI20220808BHJP
A61K 8/25 20060101ALI20220808BHJP
A61K 8/19 20060101ALI20220808BHJP
A61K 8/26 20060101ALI20220808BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20220808BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20220808BHJP
A61Q 11/00 20060101ALI20220808BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20220808BHJP
A61K 8/86 20060101ALI20220808BHJP
A61K 8/39 20060101ALI20220808BHJP
【FI】
A61K8/24
A61K8/25
A61K8/19
A61K8/26
A61K8/73
A61K8/02
A61Q11/00
A61K8/37
A61K8/86
A61K8/39
(21)【出願番号】P 2019538652
(86)(22)【出願日】2018-01-10
(86)【国際出願番号】 KR2018000485
(87)【国際公開番号】W WO2018135797
(87)【国際公開日】2018-07-26
【審査請求日】2020-12-11
(31)【優先権主張番号】10-2017-0010574
(32)【優先日】2017-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2017-0010589
(32)【優先日】2017-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2017-0026651
(32)【優先日】2017-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2017-0026686
(32)【優先日】2017-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514112488
【氏名又は名称】エルジー ハウスホールド アンド ヘルスケア リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】キョ-テ・ムン
(72)【発明者】
【氏名】ジ-ヒェ・イ
(72)【発明者】
【氏名】ソン-ロク・ファン
(72)【発明者】
【氏名】ウォン-ホ・ハ
(72)【発明者】
【氏名】アラム・ヨウ
【審査官】小川 慶子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-113371(JP,A)
【文献】国際公開第2015/016057(WO,A1)
【文献】特開2013-166783(JP,A)
【文献】特開平10-114636(JP,A)
【文献】LG Household & Health Care,韓国,Pumping Gel Style Toothpaste with Herb Flavour,ID#2591569,Mintel GNPD [online],2014年08月,[検索日2021.11.01],URL:https://www.gnpd.com/sinatora/recordpage/
【文献】LG Household & Health Care,韓国,Cool Mint Toothpaste,ID#4297061,Mintel GNPD [online] ,2016年09月, [検索日2021.11.01],URL:https://www.gnpd.com/sinatora/recordpage/
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプ型容器に充填されるポンプ型歯磨剤組成物であって、
HLB値が16以下の非イオン性界面活性剤
、及びモース硬度が1~6の研磨剤を含むポンプ型歯磨剤組成物
(ただし、両性界面活性剤を含む組成物及び雲母チタンを含む組成物は除く)
ここで、前記HLB値が16以下の非イオン性界面活性剤の含量は、組成物の総重量対比0.1~10重量%であり、
前記モース硬度が1~6の研磨剤は、リン酸一水素カルシウム、沈降シリカ、フュームドシリカ、コロイドシリカ、ゼオライト、炭酸カルシウム、水和アルミナ、カオリン、セルロース及びこれらの混合物からなる群より選択されるものであり、
前記ポンプ型歯磨剤組成物は、25℃、20rpm、5サイクルの条件で、ブルックフィールド粘度計、RVT型7番スピンドルまたはRV-5で粘度を測定したとき、5,000~60,000cPの粘度を有する。
【請求項2】
前記HLB値が16以下の非イオン性界面活性剤が、モノステアリン酸グリセリン、モノオレイン酸ポリオキシエチレン、モノステアリン酸ポリオキシエチレン
、モノラウリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン
、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノパルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンまたはこれらの2以上の混合物からなる群より選択された1以上であることを特徴とする請求項1に記載のポンプ型歯磨剤組成物。
【請求項3】
前記組成物が、
前記非イオン性界面活性剤の疎水部が外部空気層に向かって配列された疎水性配列が形成された懸濁状態であることを特徴とする請求項1に記載のポンプ型歯磨剤組成物。
【請求項4】
前記組成物に含まれた研磨剤の含量が、組成物の総重量対比40重量%以下であることを特徴とする請求項1に記載のポンプ型歯磨剤組成物。
【請求項5】
前記ポンプ型容器のポンプが
ディスペンサポンプであることを特徴とする請求項1に記載のポンプ型歯磨剤組成物。
【請求項6】
前記歯磨剤組成物を60℃で5時間乾燥した後、テクスチャーアナライザーを用いて0.4~2cmプローブで圧縮強度を測定したとき、5g以下の圧縮強度を示すことを特徴とする請求項1に記載のポンプ型歯磨剤組成物。
【請求項7】
請求項1~請求項
6のうちいずれか1項に記載のポンプ型歯磨剤組成物、及び前記ポンプ型歯磨剤組成物が充填されるポンプ型容器を含むポンプ型歯磨剤。
【請求項8】
前記ポンプ型歯磨剤を吐出し60℃で6時間乾燥した後、テクスチャーアナライザーを用いてポンプ圧を測定したとき、3kg以下の吐出圧を示すことを特徴とする請求項
7に記載のポンプ型歯磨剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯磨剤組成物に関し、ポンプ型容器に充填して提供されるための歯磨剤組成物に関する。
【0002】
より具体的に、本発明は、歯ブラシ中に歯磨剤組成物が浸透して歯に対する拡展性が改善され、固まらずに吐出安定性が確保されるポンプ型歯磨剤組成物に関する。
【0003】
本出願は、2017年1月23日出願の韓国特許出願第10-2017-0010574号及び第10-2017-0010589号、2017年2月28日出願の韓国特許出願第10-2017-0026651号及び第10-2017-0026686号に基づく優先権を主張し、該当出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に組み込まれる。
【背景技術】
【0004】
通常、口腔及び歯の洗浄のために使用される歯磨剤組成物は、ペースト状、粉末状、ゲル状/粘液状または液状の製品が市販されているが、使用及び取扱の面では一定の長短所を有している。
【0005】
米国のコルゲート社で最初開発されたペースト状歯磨剤は、アルミニウムチューブに入れられて販売され、1970年代までもこのようなアルミニウムチューブが使用されていた。このようなペースト状歯磨剤の容器は、高分子及び高分子加工技術の発展により、現代のようなアルミニウムが積層されたフィルム材質に変わった。しかし、このようなチューブ型の歯磨剤は粘度が高く、研磨剤成分によって歯のエナメル層が損傷され易く、絞り出して使用することが不便であるだけでなく、容器内の製品を絞り切ることができず廃棄される容器内に歯磨剤が残ってしまい、環境汚染を引き起こすなどの様々な問題がある。このような歯磨剤の放出性などを改善するため、プラスチック容器に流れ性を有する液状歯磨剤を入れた製品が発売されたが、流れ性が良すぎると歯ブラシ上から流れ落ちて、歯磨剤内の薬物を歯及び歯茎に効果的に伝達し難い。そこで、口腔菌の抑制及び口臭除去の機能を果たす口腔うがい剤として広く使用されているが、洗浄成分が足りなくて流れ落ちやすいため、口腔内のプラーク及び口腔菌の除去などの十分な歯磨きの効果が得られなかった。その後、ユーザ便利性を高めるため、真空ポンプ型のプラスチック容器を用いて高粘度のペーストを吐出可能にした製品が提案され、一部は市販中であるが、価格的な問題及び従来のペースト状歯磨剤の放出性が悪いなどの問題が残っている。また、粉末状は使用中に粒子が噴射されたり飛散されたりするため、使用が不便である。また、一般的な高粘度ペースト状歯磨剤または従来の液状歯磨剤は、多様な形態の容器への適用が不可能である。
【0006】
また、このような一般的な高粘度ペースト状歯磨剤または従来の液状歯磨剤の場合、多様な形態の容器に適用することができない。高粘度ペースト状歯磨剤をディップチューブ型のポンプに適用すれば、吐出が困難であり、時間が経過すれば粘度がさらに増加して吐出が不可能になる。従来の液状歯磨剤の場合は、吐出されても歯ブラシ上でその形態を維持できず、使用が不可能である。また、歯磨剤に含まれた研磨剤のモース硬度は3~6程度であり、ディスペンサポンプのピストンである低密度ポリエチレンの硬度より高い。したがって、歯磨剤に含まれている研磨剤によってピストンが摩耗して吐出され難いという問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、上述した問題を解決して、ポンプ型容器に充填して提供可能なポンプ型歯磨剤組成物を提供することを課題とする。
【0009】
また、ポンプ型歯磨剤組成物であって、歯ブラシに吐出された歯磨剤組成物が歯ブラシ中に浸透して歯に対する拡展性が改善された歯磨剤組成物を提供することを課題とする。
【0010】
また、ポンプ型歯磨剤組成物であって、固まらずに吐出安定性が確保される歯磨剤組成物を提供することを課題とする。
【0011】
また、ポンプ型歯磨剤組成物であって、ディスペンサポンプ(または、「ディップポンプ」と称する)を使用して使用が便利であって、ピストン摩耗によるポンプの故障及び内容物が固まる現象なく使用できるポンプ型歯磨剤組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するため、本発明の一態様は、ポンプ型容器に充填して提供可能なポンプ型歯磨剤組成物を提供することである。より具体的に、本発明は、ポンプ型歯磨剤組成物であって、歯ブラシに吐出された歯磨剤組成物が歯ブラシ中に浸透して歯に対する拡展性が改善された歯磨剤組成物を提供する。
【0013】
以下、より詳しく説明する。
【0014】
歯ブラシに吐出して使用する歯磨剤は、歯ブラシ中によく浸透することで、歯磨きをする間に歯に持続的に薬効成分を伝達できるように製造することが重要である。したがって、流れ性が良すぎれば、歯ブラシ上から歯磨剤が流れてしまい、高粘度であるか又は弾性係数の高い歯磨剤は、放出性が弱くて歯に触れる瞬間全部消尽されてしまうという短所を有する。さらに、歯ブラシ中に浸透すると同時に、歯磨きの際には豊富な気泡感が感じられる歯磨剤組成物を製造することが重要であるが、このような歯磨剤組成物の製造は容易ではなかった。
【0015】
そこで、本発明者らは、ポンプ型容器に充填されるポンプ型歯磨剤組成物で使用する結合剤の種類及び/または含量を調節することで、ポンプ型歯磨剤組成物が歯ブラシ毛の間によく浸透して歯に対する拡展性を著しく改善し、それによって歯に長く且つ持続的に薬効成分を伝達でき、さらに歯磨きの際に豊満感を提供する効果が得られることを見出して、本発明の完成に至った。
【0016】
より具体的に、ポンプ型歯磨剤組成物において、結合剤を組成物の総重量対比0.1重量%以上2.5重量%未満の含量で含むか、又は、結合剤としてPVM/MA、PVP、HPMC及びHPCからなる群より選択された1種以上を使用する場合、歯に対する拡展性の改善及び豊富な歯磨感を提供できることを確認した。
【0017】
本明細書において、用語「ポンプ型」とは、容器の押し部を用いたポンプ作用によって容器内部に貯蔵された内容物を吐出口から外部に簡単に排出できる構造を言う。具体的に、容器内部の歯磨剤組成物をピストンのポンプ作用によって容器外部に排出させて使用する構造を意味し、すなわち、前記ポンプ作用で容器内部に備えられたピストンによって内容物が容器の内部下端から外部に排出される。
【0018】
本発明は、ポンプ型容器に充填されるポンプ型歯磨剤組成物であって、特定含量範囲及び/または特定種類の結合剤を含むポンプ型歯磨剤組成物を提供する。
【0019】
前記「結合剤」は、歯磨剤を安定して均一な形態で維持する成分であって、当業界で歯磨剤組成物の結合剤として通常使用可能な多様な成分が含まれ得る。例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルビニルエーテルと無水マレイン酸との共重合体(PVM/MA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシメチルセルロース(HMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、カルボマー、カラギーナン、キサンタンガム、グアーガム、ポリアクリル酸/ナトリウム及びアルジネート類などが含まれ、これらに制限されない。結合剤としての機能と共に他の機能を発揮する成分も本発明で定義する結合剤に含まれて排除されないと解釈される。
【0020】
本発明によるポンプ型歯磨剤組成物はゲル状で提供される。
【0021】
本明細書において、用語「ゲル状」は、従来の水っぽい剤形の液状歯磨剤及び高粘度のペースト状歯磨剤と区別するための概念で使われた。前記ゲル状は、従来の液状剤形とは区別される剤形であって、液状歯磨剤に比べてべたつき、粘性のある剤形を意味する。本発明のゲル状歯磨剤は、弾性があり、液状歯磨剤に比べて剛性のある剤形を意味する。また、本発明のゲル状歯磨剤は、ペースト状歯磨剤に比べては粘度が低くて流動性があり、流れ性があるため、内容物を外部に容易に吐出することができる。
【0022】
本明細書において、用語「弾性」とは、外力によって変形した物体が、力を除去されたとき本来の形態に帰ろうとする性質を意味し、本来の形態を維持しようとする物体の特性を意味する広い概念で使われた。すなわち、歯磨剤組成物を吐出口から吐出した後、最初の形態を維持しようとするあらゆる性質を含む広い意味で使われた。
【0023】
一態様において、本発明は、ポンプ型容器に充填されるポンプ型歯磨剤組成物であって、メチルビニルエーテルと無水マレイン酸との共重合体(PVM/MA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)及びヒドロキシプロピルセルロース(HPC)(以下、4種と称する)からなる群より選択された1以上の結合剤を含むことを特徴とするポンプ型歯磨剤組成物を提供する。
【0024】
本発明において、結合剤として前記4種のうち1以上を使用すれば、これら結合剤の外に、選択的に結合剤として当業界で公知のその他の結合剤をさらに使用し得る。その他の結合剤としては、上述したように、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボマー、カラギーナン、キサンタンガム、グアーガム、ポリアクリル酸/ナトリウム及びアルジネート類などが含まれるが、これらに制限されない。
【0025】
前記4種のうち1以上の結合剤の総含量は、ポンプ型歯磨剤組成物の総重量対比0.1~7重量%、より望ましくは0.3~5重量%、さらに望ましくは0.5~2.5重量%で含むことができる。上記の範囲内の含量で結合剤を使用すれば、適切な粘度の歯磨剤組成物を製造でき、歯ブラシ毛の隙間に浸透し易い歯磨剤組成物を製造することができる。
【0026】
前記4種のうち1以上の結合剤を含めて、本発明による歯磨剤組成物に含まれる結合剤の総含量は、ポンプ型歯磨剤組成物の総重量対比0.5~8重量%、より望ましくは0.5~6重量%、さらに望ましくは0.5~5重量%で含むことができる。上記の範囲内の含量で結合剤を使用すれば、適切な粘度の歯磨剤組成物を製造でき、歯ブラシ毛の隙間に浸透し易い歯磨剤組成物を製造することができる。
【0027】
本発明による前記4種のうち1以上の結合剤を含むポンプ型歯磨剤組成物は、歯ブラシ毛同士の間隔が1~1.5mmである歯ブラシに吐出したとき、10秒以内で歯ブラシ毛の隙間に1.5mm以上の深さほど浸透する。より望ましくは、5mm以下の深さほど浸透する。ここで、「深さ」とは、歯ブラシ毛の上端から歯磨剤が下方に拡展する長さを意味する。
【0028】
本発明による前記4種のうち1以上の結合剤を含むポンプ型歯磨剤組成物は、常温(25℃)における粘度が5×103cP以上60×103cP未満である。前記粘度は当業界で公知の多様な方法によって測定でき、例えば、ブルックフィールド粘度計RVT型でスピンドル7番を用いて1分当り10回転の速度で回転させながら測定できるが、これに制限されない。
【0029】
本発明による前記4種のうち1以上の結合剤を含むポンプ型歯磨剤組成物は、Tanδ(Loss modulus(損失係数)(G”)/ElasticModulus(弾性係数)(G’))が0.4以上である。本発明は、粘性係数が高い高分子である前記4種を使いながらも、同時に優れた流れ性を有し、豊満感の優れた歯磨剤組成物を提供する。
【0030】
本発明による前記4種のうち1以上の結合剤を含むポンプ型歯磨剤組成物は、優れた豊満感を発揮する。
【0031】
本明細書において、「豊満感」とは、歯磨き時に発生する気泡の質感と粘度によって口いっぱいに満ちた感覚を称する。
【0032】
また他の態様において、本発明は、ポンプ型容器に充填されるポンプ型歯磨剤組成物であって、結合剤の含量が組成物の総重量対比0.5重量%以上であることを特徴とするポンプ型歯磨剤組成物を提供する。より望ましくは、組成物の総重量対比2.5重量%未満である。さらに望ましくは、組成物の総重量対比1.5重量%以下である。組成物の総重量対比2.5重量%以上であれば、歯ブラシ毛の間に浸透し難くて高粘度の歯磨剤組成物が製造される。
【0033】
前記結合剤としては、当業界で歯磨剤組成物の結合剤として公知の結合剤が使用でき、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルビニルエーテルと無水マレイン酸との共重合体(PVM/MA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシメチルセルロース(HMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、カルボマー、カラギーナン、キサンタンガム、グアーガム、ポリアクリル酸/ナトリウム及びアルジネート類などが挙げられる。望ましくは、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボマー、カラギーナン、キサンタンガム、グアーガム、ポリアクリル酸/ナトリウム及びアルジネート類のうち1以上が使用できる。
【0034】
本発明による組成物の総重量対比0.5重量%以上の結合剤を含むポンプ型歯磨剤組成物は、歯ブラシ毛同士の間隔が1.5mmである歯ブラシに吐出したとき、10秒以内で歯ブラシ毛の隙間に1mm以上の深さほど浸透する。また、歯ブラシ毛同士の間隔が2mmである歯ブラシに吐出したとき、10秒以内で歯ブラシ毛の隙間に1.5以上の深さほど浸透する。ここで、「深さ」とは、歯ブラシ毛の上端から歯磨剤が下方に拡展する長さを意味する。
【0035】
本発明による組成物の総重量対比0.5重量%以上の結合剤を含むポンプ型歯磨剤組成物は、常温(25℃)における粘度が5×103cP以上40×103cP以下である。前記粘度は当業界で公知の多様な方法によって測定でき、例えば、ブルックフィールド粘度計RVT型でスピンドル7番を用いて1分当り20回転の速度で回転させながら測定できるが、これらに制限されない。
【0036】
本発明による歯磨剤組成物は、結合剤の外に、当業界で歯磨剤組成物として通常使用される成分として、その剤形及び使用目的に応じて、着香剤、甘味剤、薬効剤、pH調整剤、防腐剤、結合剤、起泡剤、増白剤などをさらに含むことができる。
【0037】
本発明による歯磨剤組成物は、ポンプ型歯磨剤組成物として提供されるため、ポンプの摩耗を防止するため、研磨剤は少量含まれることが望ましく、乾燥によって吐出口が詰まる現象を防止するため、潤滑剤(ポリオール、グリセリンなど)を含むことが望ましい。
【0038】
研磨剤は、口腔内で歯垢(プラーク)を除去する機能をする物質であって、プラークの除去効率を高め、堅い異物などを除去するために必須に使用され、モース硬度が1~6程度の値を示す。本発明において、ポンプ容器のピストンは低密度ポリエチレンから製作されるが、前記ポリエチレンの硬度が使用される研磨剤の硬度より低く、ポンプが摩耗し得るため、研磨剤は少量含まれることが望ましい。例えば、組成物の総重量対比30重量%以下、望ましくは0.5~20重量%で含まれ得る。前記研磨剤は、例えばリン酸一水素カルシウム、沈降シリカ、フュームドシリカ、コロイドシリカ、ゼオライト、炭酸カルシウム、水和アルミナ、カオリン、セルロース及びこれらの混合物からなる群より選択されたいずれか1つを含むことができるが、これらに制限されない。
【0039】
潤滑剤は、互いに接触して滑る2つの面の間の摩擦を減らす作用をする物質を意味し、潤滑作用をして本発明の歯磨剤組成物中に含まれている摩耗特性を有する原料(研磨剤など固形分)によるピストンの摩耗を防止する役割をする。前記潤滑剤は、例えばポリエチレングリコール、グリセロール、プロピレングリコール、エチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びこれらの混合物からなる群より選択されたいずれか1つを含むことができるが、これらに制限されない。望ましくは、ポリエチレングリコール200~600、グリセロール、プロピレングリコール、エチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びこれらの混合物からなる群より選択されたいずれか1つを含むことができる。望ましくは、液状潤滑剤として、石油系油、動植物油、合成潤滑油などが使用でき、最も望ましくは組成物の安定性及び優れた使用感の面から液状ポリオールを使用できる。または、潤滑剤は液状ポリオールに限定されず、高分子の形態を有するポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールのように、一定分子量以上で高分子の内部引力(intramolecular interaction)によって常温で固相として存在できるが、製造温度の調節を通じて液化が可能であり、製品化して安定した状態で維持可能な高分子量ポリオールも含む。
【0040】
本発明の組成物には、消費者の嗜好に合わせて着香剤と甘味剤を添加することができる。着香剤は口腔内に残留して持続的に香を発散することで爽快感を継続させる。
【0041】
着香剤としては、ペパーミント、スペアミントなどのミント、ウィンターグリーン、サリチル酸メチル、オイゲノール、メロン、いちご、オレンジ、バニリンなどを使用できる。一般に着香剤は、組成物の総重量対比0.001~10重量%範囲で使用できる。
【0042】
また、本発明の組成物には、剤形が有し得る基本的な味を克服するため、甘味剤を添加することができる。甘味剤は、口腔内に残留しながら持続的に味を提供することで、唾液の発生を持続させる役割を果たすことができる。
【0043】
甘味剤としては、サッカリン、スクラロース、砂糖、キシリトール、ソルビトール、ラクトース、マンニトール、マルチトール、エリトリトール、アスパルテーム、タウリン、サッカリン塩、D-トリプトファンなどを1種または2種以上混合して使用することができる。サッカリン塩の中ではサッカリンナトリウムが最も広く使用される。甘味剤の量は組成物総重量の0.001~20重量%範囲で使用することが一般的である。
【0044】
薬効剤は、口腔衛生のために使用され、虫歯予防、歯茎疾患の予防、歯石沈着の予防、美白などの効果がある成分を使用できる。虫歯予防を目的で使用する薬効剤には、フッ素イオンを含む米国食品医薬品局で安全な物質として認めた化合物が含まれる。フッ素イオンの供給源として使用できる化合物としては、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化スズ、フッ化アミンが挙げられる。フッ素の含量は国によって使用量が異なり得るが、望ましくは850~1500ppm範囲のフッ素イオン濃度を有するように、これら供給源の1種または2種以上の混合物を使用することが一般的である。再石灰化剤も虫歯予防剤として作用できる。再石灰化剤は歯の主要構成成分であるヒドロキシアパタイトを再生して復元させる役割をするものである。ヒドロキシアパタイトの主成分は、2価のカルシウム陽イオンとリン酸陰イオンを含む。したがって、カルシウムイオンとリン酸イオンを同時に供給するか、又は、口腔内の化学平衡をヒドロキシアパタイトが生成される方に移動できるように、カルシウム2価イオンやリン酸陰イオンの1種以上が含有されたものであれば、再石灰化剤になり得る。カルシウムとリンを提供する物質には、原料状のヒドロキシアパタイト、第2リン酸カルシウム、塩化カルシウム、カゼインホスホペプチド、グリセロリン酸カルシウム、第1リン酸ナトリウム、第2リン酸ナトリウム、第3リン酸ナトリウム、第1リン酸カリウム、第2リン酸カリウム、第3リン酸カリウムなどが含まれる。一般に再石灰化剤は、組成物全体の0.001~20重量%範囲で使用することが望ましい。0.001重量%未満では再石灰化効果が低下し、20重量%より多ければ製剤が本来持っている性質を失うようになる。口腔衛生用品を使用する目的のうち1つは、口腔内に生存している口腔内有害微生物に対する殺菌または抗炎症作用を通じて、進行中の歯茎疾患の緩和だけでなく、歯茎疾患を予め防止することである。このような目的のためには抗菌剤として知られたイソプロピルメチルフェノール、シクロヘキシジン、塩化セチルピリジニウム、サントリゾールなどが使用でき、抗炎症作用のためにビタミン類と酵素、アミノカプロン酸、アラントイン及びその誘導体なども使用できる。薬効剤は0.005重量%~5重量%で含むことができる。薬効剤の含量が0.005未満の場合は薬効を示し難く、5重量%を超過して含む場合は基本ベースの味を変化させる恐れがある。歯茎疾患の外にも美白効果を奏する過酸化水素、過酸化尿素、過酸化カルシウムなどが使用でき、歯石沈着を抑制する効果を得るため、ピロリン酸ナトリウム、酸性ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、メタリン酸ナトリウムなども使用される。一般にこれら薬効剤は、組成物全体重量の0.001~10重量%範囲で使用される。
【0045】
pH調整剤としては、リン酸、リン酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム、コハク酸、コハク酸ナトリウム、酒石酸、酒石酸ナトリウムなどを使用でき、口腔用組成物の酸性度は一般に5~8である。
【0046】
防腐剤としては、安息香酸、メチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸ナトリウムなどを使用できる。
【0047】
起泡剤としては、アルキル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、アルキルサルコシネート、ラウリルサルコシネート、ココイルグルタミン酸ナトリウム塩、ミリストイルグルタミン酸ナトリウム塩、コカミドプロピルベタイン、しょ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンとの共重合体(ポロキサマー)などの陰イオン、両性及び非イオン性界面活性剤を単独または2種以上混合して使用することができる。
【0048】
増白剤としては酸化チタンを使用し、一般に0.1%~2重量%で使用する。
【0049】
本発明の歯磨剤組成物は、当業界で通常使用する方法で製造することができる。
【0050】
本発明の歯磨剤組成物は、うがい剤、入れ歯洗浄剤などに転用できる。
【0051】
本発明の他の態様は、ポンプ型容器に充填して提供可能なポンプ型歯磨剤組成物を提供することである。より具体的に、本発明は、ポンプ型歯磨剤組成物であって、固まらずに吐出安定性が確保される歯磨剤組成物を提供する。さらに具体的に、ポンプ型歯磨剤組成物であって、ディスペンサポンプ(または、「ディップポンプ」と称する)を取り付けたポンプ型容器に充填して提供可能なポンプ型歯磨剤組成物を提供する。
【0052】
ポンプ型歯磨剤組成物は、ポンプ型容器のポンプを通って吐出されるが、ポンプ吐出口には固体、液体、気体の相がすべて存在するため、これらと接触する歯磨剤組成物が吐出口の入口で固まる現象が問題になっていた。さらに、歯磨剤組成物には、歯垢などを除去するために一般に研磨剤が含まれるが、歯磨剤組成物がポンプ型で製作される場合、前記研磨剤の硬度のためピストンが摩耗する問題が生じる。前記ピストンが低密度ポリエチレンから製作され、前記ポリエチレンの硬度が使用される研磨剤の硬度より低い場合、このような問題はより深刻になる。
【0053】
そこで、本発明者らは、ポンプ型容器に充填されるポンプ型歯磨剤組成物で使用する成分の種類及び/または含量を調節することで、ポンプ型歯磨剤組成物が吐出口で固まらずに吐出安定性が確保される効果が得られることを見出して、本発明の完成に至った。
【0054】
より具体的に、一態様として、ポンプ型歯磨剤組成物において、固形研磨剤の含量が組成物の総重量対比40重量%以下であって、水の含量が組成物の総重量対比7重量%未満である場合、ポンプ型歯磨剤組成物が吐出口で固まらずに吐出安定性が確保される効果が得られることを確認した。
【0055】
他の態様として、ポンプ型歯磨剤組成物において、HLB値が16以下の非イオン性界面活性剤を含む場合、ポンプ型歯磨剤組成物が吐出口で固まらずに吐出安定性が確保される効果が得られることを確認した。
【0056】
前記非イオン性界面活性剤のHLB値は16以下、望ましくは10以下、より望ましくは8以下、さらに望ましくは6以下であり得る。
【0057】
さらに他の態様として、ポンプ型歯磨剤組成物において、比重が0.8~0.99の有機オイルを含む場合、ポンプ型歯磨剤組成物が吐出口で固まらずに吐出安定性が確保される効果が得られることを確認した。
【0058】
ポンプ作用で容器内部に取り付けられたピストンによって外部に排出される内容物は、排出(吐出)中または排出(吐出)後に、ポンプ吐出口に存在する固体、液体または気体の相と接触するようになる。
【0059】
本発明において、ポンプ型容器に使用されるポンプとしては、例えば、ディスペンサポンプ(ディップポンプ)、E-センサーポンプ、オイルポンプ、フォーミングポンプ、ミストポンプなどが使用され、望ましくはディスペンサポンプ(ディップポンプ)が使用できる。
【0060】
前記ディスペンサポンプ(ディップポンプ)は、ポンピング時の柔らかい手触り、正確且つ多様な吐出量、及び内容物の粘性に応じた内部構造の作用によって使用が便利であるため、通常シャンプーやボディウォッシュ製品に使用される。前記E-センサーポンプは吐出量を少量化且つ細密化できるという長所がある。前記オイルポンプは、使用時に漏液が生じ得る内容物に効果的なポンプである。前記フォーミングポンプは、フレオンガスを使わず、ポンプの内部構造のみで豊かな泡を作ることができるポンプである。前記ミストポンプは、微細な粒子状に内容物を噴射する構造のポンプである。
【0061】
本発明は、ポンプ型容器に充填されるポンプ型歯磨剤組成物であって、特定成分及び/またはそれの特定含量範囲を含むポンプ型歯磨剤組成物を提供する。
【0062】
本発明によるポンプ型歯磨剤組成物は、ポンプ吐出口で固まらずに吐出安定性を発揮する。
【0063】
より具体的に、後述する一態様の歯磨剤組成物、他の態様の歯磨剤組成物、及びさらに他の態様の歯磨剤組成物のうちいずれか1つ以上のポンプ型歯磨剤組成物は、ポンプ吐出口で固まらずに吐出安定性を発揮する。
【0064】
本明細書において、「固まる」とは、歯磨剤組成物の固さ(hardness)または硬度の値が増加することを意味し、他の物体を用いて歯磨剤組成物に圧力を加えたとき、歯磨剤組成物の変形に対する抵抗力の大きさが増加することを意味する。当業界で公知の多様な方法によって「固さ」を測定または評価でき、後述する方法に制限されないが、例えば、探針棒(丸形のペン)を用いて圧力を加えたときの固まった程度を評価する方法、または、テクスチャーアナライザー(texture analyzer)を用いて0.4~2cmプローブで圧縮強度を測定する方法などを使用できる。または、テクスチャーアナライザーを用いて歯磨剤組成物を吐出した後、ポンプのポンプ圧を測定する方法も使用できる。
【0065】
本明細書において、「固まらない」とは、歯磨剤組成物の固さ(hardness)または硬度の値が増加しないかまたはその程度が僅かであることを意味する。例えば、探針棒(丸形のペン)を用いて圧力を加えたときの固まった程度を評価する方法によれば、吐出した歯磨剤組成物を60℃で48時間乾燥した後、圧力を加えたとき、歯磨剤組成物に跡が付くかまたは内容物に探針棒が押し込まれる場合を「固まらない」と評価する。さらに、例えば、テクスチャーアナライザーを用いて0.4~2cmプローブで圧縮強度を測定する方法によれば、吐出した歯磨剤組成物を60℃で48時間乾燥した後、測定した圧力強度が5g以下である場合「固まらない」と評価する。また、例えば、テクスチャーアナライザーを用いて歯磨剤組成物を吐出した後、ポンプのポンプ圧を測定する方法によれば、歯磨剤組成物を吐出して60℃で6時間乾燥した後、テクスチャーアナライザーを用いてポンプ圧を測定したとき、3kg以下の吐出圧を示す場合「固まらない」と評価する。
【0066】
後述する一態様の歯磨剤組成物、他の態様の歯磨剤組成物、及びさらに他の態様の歯磨剤組成物のうちいずれか1つ以上のポンプ型歯磨剤組成物は、ポンプ吐出口で固まらないため、例えば、探針棒(丸形のペン)を用いて圧力を加えたときの固まった程度を評価する方法によれば、吐出した歯磨剤組成物を60℃で48時間乾燥した後圧力を加えると、歯磨剤組成物に跡が付くか又は内容物に探針棒が押し込まれる。また、テクスチャーアナライザーを用いて0.4~2cmプローブで圧縮強度を測定する方法によれば、吐出した歯磨剤組成物を60℃で48時間乾燥した後、測定した圧力強度が5g以下を示す。また、テクスチャーアナライザーを用いて歯磨剤組成物を吐出した後、ポンプのポンプ圧を測定する方法によれば、歯磨剤組成物を吐出して60℃で6時間乾燥した後、テクスチャーアナライザーを用いてポンプ圧を測定すれば、3kg以下の吐出圧を示す。
【0067】
本明細書において、用語「吐出安定性」とは、歯磨剤組成物が「固まらない」場合に発揮される効果を意味する。
【0068】
本発明による歯磨剤組成物は粘度変化などで固まる現象がない。
【0069】
望ましくは、後述する本発明による一態様の歯磨剤組成物、他の態様の歯磨剤組成物及びさらに他の態様の歯磨剤組成物のうちいずれか1つ以上のポンプ型歯磨剤組成物の粘度は5,000cP~30,000cPであり得る。
【0070】
本明細書において、「粘度」とは歯磨剤組成物の粘性の大きさを意味し、「粘度維持力」とは製造時の歯磨剤が有する粘度が最低2年後にも一定に維持される程度を意味する。望ましくは、前記粘度維持力は25℃、20rpm、5サイクルの条件で、ブルックフィールド、RVT型7番スピンドルまたはRV-5で粘度を測定したとき、組成物の粘度変化が製造時と比べて最小2年後に約100~15,000cP程度であることを意味する。
【0071】
一態様において、本発明は、ポンプ型容器に充填されるポンプ型歯磨剤組成物であって、固形研磨剤の含量が組成物の総重量対比40重量%以下であって、水の含量が組成物の総重量対比7重量%未満であるポンプ型歯磨剤組成物を提供する。
【0072】
本発明者らは、歯磨剤組成物の乾燥が生じる理由が組成物内に含まれている水が蒸発しながら、内容物中の固形分、特に固形研磨剤が発現されるためであることを確認し、固形研磨剤に対する水の含量比を高めることでこのような問題を解決するため、本発明を具体化した。
【0073】
前記研磨剤は、口腔内で歯垢(プラーク)を除去する機能をする物質であって、プラークの除去効率を高めて堅い異物などを除去するため歯磨剤組成物に通常使用されるが、ポンプを摩耗させてポンプ吐出口で固まるようにする。前記研磨剤は、モース硬度1~6程度、望ましくはモース硬度3~6程度の値を示し得る。
【0074】
本発明の固形研磨剤は、当業界で歯磨剤組成物の固形研磨剤として使用されるものであれば全て使用することができ、例えばリン酸一水素カルシウム、沈降シリカ、フュームドシリカ、コロイドシリカ、ゼオライト、炭酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、水和アルミナ、カオリン、セルロース及びこれらの混合物などを含むが、これらに制限されない。望ましくは、沈降シリカ、炭酸カルシウム、リン酸水素カルシウムまたはこれらの2以上の混合物を使用することができる。
【0075】
本発明において、固形研磨剤の含量は組成物の総重量対比40重量%以下であって、例えば、30重量%以下、20重量%以下、10重量%以下、5重量%以下であり得る。例えば、0.1重量%以上であって、0.1重量%以上40重量%以下、0.5重量%以上40重量%以下、0.5重量%以上20重量%以下であり得る。40重量%を超えれば、歯磨剤組成物の吐出口で固まる現象が生じ得る。
【0076】
本発明において、「水」は歯磨剤組成物に含まれる成分の溶媒の役割をする物質であって、例えば、上水を蒸留するか又はイオン交換樹脂を通じて精製した精製水、蒸留水、滅菌精製水、注射用水、上水などを含み、望ましくは滅菌精製水を使用できる。
【0077】
本発明において、水の含量は総重量対比10重量%未満、7重量%未満、6重量%未満であり得る。または、3重量%以上10重量%未満、5重量%以上7重量%未満であり得る。10重量%以上の場合、歯磨剤組成物の吐出口で固まる現象が生じ得る。
【0078】
本発明において、前記固形研磨剤に対する水の含量比は、1:0.1以上、望ましくは1:0.1~1であり得る。1:0.1未満の場合、歯磨剤組成物の吐出口で固まる現象が生じ得る。
【0079】
本発明による歯磨剤組成物は、固形研磨剤及び水の外に、当業界で歯磨剤組成物として通常使用される成分として、その剤形及び使用目的に応じて、多様な成分をさらに含むことができる。
【0080】
ただし、望ましくは、本発明による歯磨剤組成物に固形研磨剤以外の固形成分は実質的に含まない。
【0081】
本明細書において、「実質的に含まない」とは、組成物の総重量対比1重量%以下、0.5重量%以下、0.1重量%以下、望ましくは0重量%(すなわち、全く含まない)の含量であることを意味する。
【0082】
他の態様として、本発明はポンプ型容器に充填されるポンプ型歯磨剤組成物であって、HLB値が16以下、望ましくは10以下、より望ましくは8以下、さらに望ましくは6以下の非イオン性界面活性剤を含むポンプ型歯磨剤組成物を提供する。
【0083】
本発明者らは、HLB値が16以下の非イオン性界面活性剤を含めば、歯磨剤組成物が吐出されるとき、前記界面活性剤の疎水性基が外側に配列しながら疎水性配列(hydrophobic array)が形成される懸濁状態になり、それによって内容物中の水が表面に上昇することが抑制され、固まる問題を解決する効果が奏されることを確認した。また、HLB値が16以下の非イオン性界面活性剤によって形成される疎水性配列の懸濁状態は、ストロー及びポンプピストンに適用される高分子との接触時のピストンの摩耗を減らし、したがってポンピング安定性の向上に役立つ効果を有することを確認し、本発明を具体化した。
【0084】
本発明において、「HLB」は親水性-親油性比(hydrophile-lipophile balance)の略語であり、界面活性剤の親水性と親油性との均衡を示す指標であり、HLBが大きければ親水性が高く、HLBが小さければ親水性が低いことを意味する。
【0085】
本発明において、「HLB値が16以下の非イオン性界面活性剤」としては当業界で歯磨剤組成物に含有可能な多様な成分を使用でき、例えば、モノステアリン酸グリセリン、モノオレイン酸ポリオキシエチレン(商品名:PEG400モノオレート)、モノステアリン酸ポリオキシエチレン(商品名:PEG400モノステアレート)、モノラウリン酸ソルビタン(商品名:Span(登録商標)20)、モノパルミチン酸ソルビタン(商品名:Span(登録商標)40)、モノステアリン酸ソルビタン(商品名:Span(登録商標)60)、トリステアリン酸ソルビタン(商品名:Span(登録商標)65)、モノオレイン酸ソルビタン(商品名:Span(登録商標)80)、トリオレイン酸ソルビタン(商品名:Span(登録商標)85)、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(商品名:Tween(登録商標)21)、モノパルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタン(商品名:Tween(登録商標)40)、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(商品名:Tween(登録商標)60、Tween(登録商標)61)、トリステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(商品名:Tween(登録商標)65)、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(商品名:Tween(登録商標)80、Tween(登録商標)81)、トリオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(商品名:Tween(登録商標)85)またはこれらの2以上の混合物が含まれるが、これらに制限されることはない。
【0086】
本発明において、前記HLB値が16以下の非イオン性界面活性剤の含量は、組成物の総重量対比0.1~10重量%、より望ましくは0.1~5重量%である。上記のような重量範囲内で歯磨剤組成物が固まる現象を抑制することができ、ピストンの摩耗を抑制してポンピング安定性の向上に役立つことができる。
【0087】
さらに他の態様として、本発明はポンプ型容器に充填されるポンプ型歯磨剤組成物であって、比重が0.8~0.99の有機オイルを含むポンプ型歯磨剤組成物を提供する。
【0088】
本発明者らは、歯磨剤組成物のうちポンプ型容器、特にディップポンプが取り付けられたポンプ型容器に充填して使用するポンプ型組成物は、通常乾燥を防止するため液剤の組成を高める技術を適用しているが、ポンプ吐出口では却って内容物中に含まれた水分及び揮発性有機物が気化しながらポンプ吐出口で固まる原因になることに着目して、本発明を具体化した。
【0089】
そこで、ポンプ用歯磨剤組成物に比重0.8~0.99のオイルを含めば、ポンプ吐出口で疎水性のオイルが空気側に配向しながらポンプ用歯磨剤組成物内の水の蒸発を抑制して、吐出口で固まる現象を解決できることを確認した。
【0090】
さらに、オイルは研磨剤による摩擦力を低減できるため、研磨剤との摩擦によって生じ得るポンプの損傷を最小化することで、ポンプの寿命を伸ばす効果も有することを確認し、本発明を完成した。
【0091】
本発明において、用語「比重(specific gravity)」とは、体積に対する重量の比を意味し、任意の温度で任意の体積を占める物質の質量と同じ温度、同じ体積の標準物質の質量との比を意味する。比重の単位はg/cm3である。
【0092】
本発明において、「比重0.8~0.99」とは、20~25℃で体積を占める有機オイルの質量と同じ温度、同じ体積の精製水の質量との比が0.8~0.99であることを意味する。このとき、比重が0.99超過の物質を使用すれば、剤形の下部に沈む問題が生じ得、比重が0.8未満のオイルを使用すれば、揮発し易くて剤形の安定性が低下し得る。
【0093】
本発明において、比重が0.8~0.99のオイルとしては、当業界で歯磨剤組成物の成分として使用されるものであれば制限なく使用でき、例えば、ココナッツ油、綿実油、オリーブ油、ひまわり油、米糠油、コーン油、パーム油、パーム核油、ピーナッツ油、紅花油、ひまし油、キャノーラ油、グレープシード油、アボカド油、クルミ油、丁香油、ペパーミント油、スペアミント油、バニリン油、アニス、アネトール油などが挙げられるが、これらに制限されることはない。前記ココナッツ油は15℃で0.925、20℃で0.919、綿実油は16℃で0.926、25℃で0.915~0.921、オリーブ油は15℃で0.918、15.5℃で0.915~0.918である。望ましくは、前記オイルは有機オイルであり得、望ましくは、室温で液状である液状オイルであり得る。
【0094】
望ましくは、本発明において、前記比重が0.8~0.99のオイルの含量は、組成物の総重量対比0.3重量%以上、より望ましくは0.3~20重量%である。最も望ましくは、0.3~10重量%である。上記のような重量%範囲内で、歯磨剤組成物が固まる現象を効果的に解消することができる。
【0095】
望ましくは、本発明による歯磨剤組成物には比重が0.8~0.99のオイルの外に、乳化剤をさらに含むことができ、乳化剤のうち、特にラウリル硫酸ナトリウム(SLS)を使用することが望ましい。具体的な実施例によって、ラウリル硫酸ナトリウムは界面活性剤として歯磨剤のオイル乳化を促すだけでなく、消費者に気泡感を提供できて、オイルによって生じ得る歯磨き後のぬらぬら感を効果的に除去できることを確認した。
【0096】
本発明による歯磨剤組成物において、前記乳化剤は歯磨剤組成物に含まれたオイルを乳化するが、乳化されるオイル以外のオイルが空気側に配向しながらポンプ用歯磨剤組成物内の水の蒸発を抑制して、吐出口で固まる現象を解決する。このとき、前記乳化剤としてラウリル硫酸ナトリウム(SLS)を選択すれば、歯磨剤組成物内に含まれたオイルのうち乳化されるオイル以外のオイルを空気側に配向させることができるという特徴がある。
【0097】
本発明において、前記比重が0.8~0.99のオイルの総重量対比組成物に含まれる界面活性剤の総重量は0.1~7重量%、望ましくは0.5~3重量%である。0.1重量未満の場合、歯磨剤組成物が固まる現象を解消できず、使用後の歯のぬらぬら感を除去できない。また、7重量%を超過すれば、歯磨きの際に口腔の粘膜に損傷を与える恐れがある。
【0098】
本発明において、上述した一態様の歯磨剤組成物、他の態様の歯磨剤組成物及びさらに他の態様の歯磨剤組成物のうちいずれか1つ以上のポンプ型歯磨剤組成物には、上述した必須に含まれる成分の外に、当業界で歯磨剤組成物として通常使用される成分として、その剤形及び使用目的に応じて、研磨剤、潤滑剤、着香剤、甘味剤、薬効剤、pH調整剤、防腐剤、結合剤、起泡剤、増白剤などをさらに含むことができる。
【0099】
後述する各成分及びこれらの含量範囲は、通常使用される成分及び含量%を記載したものであるため、その剤形及び使用目的などに応じて、当業者が適切に調節することができる。
【0100】
さらに、上述した一態様の歯磨剤組成物、他の態様の歯磨剤組成物及びさらに他の態様の歯磨剤組成物のうちいずれか1つ以上のポンプ型歯磨剤組成物に記載された成分及びその含量範囲と相反又は背馳する記載があれば、上述した記載を基準にすることが望ましい。
【0101】
本発明は、上述した一態様の歯磨剤組成物、他の態様の歯磨剤組成物及びさらに他の態様の歯磨剤組成物のうちいずれか1つ以上のポンプ型歯磨剤組成物、及び前記ポンプ型歯磨剤組成物が充填されるポンプ型容器を含むポンプ型歯磨剤を提供する。
【0102】
本発明によるポンプ型歯磨剤は、固まらず、例えば歯磨剤を吐出した後、60℃で6時間乾燥してテクスチャーアナライザーを用いてポンプ圧を測定したとき、3kg以下の吐出圧を示すことができる。
【発明の効果】
【0103】
本発明は、ポンプ型容器に充填して提供可能なポンプ型歯磨剤組成物を提供する。特に、ポンプ型歯磨剤組成物であって、歯ブラシに吐出された歯磨剤組成物が歯ブラシ中に浸透して歯に対する拡展性が改善され、結果的に口腔内で長く且つ持続的に薬効成分を伝達することができる。
【0104】
また、本発明によれば、固まる現象なく吐出安定性が確保されるため、容器の特性上、外気が自由に移動して吐出口で固まる問題が多いディスペンサポンプ(ディップポンプ)を取り付けたポンプ型容器にも適用可能になって使用便利性も確保することができ、商品価値が優れたポンプ型歯磨剤組成物を提供することができる。
【0105】
本明細書に添付される次の図面は、本発明の望ましい実施例を例示するものであり、発明の詳細な説明とともに本発明の技術的な思想をさらに理解させる役割をするため、本発明は図面に記載された事項だけに限定されて解釈されてはならない。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【
図1】下記II.ポンプ型歯磨剤組成物の製造例2によって製造された組成物(実施例7、実施例8及び比較例1)の気泡満足度と気泡質感満足度を評価した値を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0107】
以下、本発明をより具体的に説明するために実施例などを挙げて説明する。しかし、本発明による実施例は多くの他の形態に変形でき、本発明の範囲が後述する実施例に限定されると解釈されてはならない。本発明の実施例は本発明の具体的な理解を助けるために例示的に提供されるものである。
【0146】
IV.ポンプ型歯磨剤組成物の製造例4
【0147】
実施例及び比較例の歯磨剤組成物を下記表13に示した成分及び組成比で製造した。精製水、液状ポリオール、香料、薬効剤、サンタンゴム、サッカリン、防腐剤、界面活性剤(HCO40、HLB12.5;TWEEN60、HLB14.9;及びSPAN80、HLB4.3)などの粉末成分を完全に分散させて1次混合した後、シリカなどの研磨剤と薬効剤を投入し、真空中で混合して歯磨剤組成物を製造した。
【0148】
【0149】
実験例4-1.相安定性
過量の界面活性剤を含む比較例2の場合、歯磨剤の相を維持できずに変形したため、以降の実験で評価できなかった。
【0150】
実験例4-2.吐出後のポンプ型歯磨剤が固まる時間
表13の実施例及び比較例のように製造した歯磨剤組成物を24ウェルプレートに充填した後、ファンが取り付けられているドライオーブンで60℃、48時間乾燥した。その次、探針棒(丸形のペン)を用いて歯磨剤に圧力を加えたときの固まった程度を確認して、歯磨剤の固まりの程度を評価した。
【0151】
固まりの程度は、内容物に跡が付かないほど固い場合を「固まる」と示し、内容物に跡が付くか又は探針棒が押し込まれる場合を「固まらない」と示した。その結果を表14に示した。
【0152】
【0153】
上記の結果から分かるように、比較例1は「固まる」であった一方、実施例1~12は「固まらない」であった。
【0154】
実験例4-3.圧縮強度テスト
24ウェルプレートに表13の実施例及び比較例のように製造した歯磨剤組成物を充填し、60℃で48時間乾燥した後、テクスチャーアナライザーを用いて0.4~2cmプローブで歯磨剤の圧縮強度を測定した。測定値が5g以下の場合は固まっておらず、5g以上の場合は表面が固まって圧縮強度が増加していると確認された。その結果を表15に示した。
【0155】
【0156】
上記の結果から、実施例1~12は全て「5g以下」の圧縮強度を示した一方、比較例1は5g以上の圧縮強度を示し、表面が固まっていることが分かる。
【0157】
実験例4-4.ポンプ入口で固まる現象の観察
表13の実施例及び比較例のように製造した歯磨剤組成物をポンプ型容器に充填し、ポンプを用いてポンプ型歯磨剤を吐出した後、60℃で6時間乾燥した。その後、テクスチャーアナライザーを用いてポンプ圧を測定した。その結果を表16に示した。
【0158】
【0159】
その結果、実施例1~12はすべて3kg以下の吐出圧を示した一方、比較例1は3kg以上の吐出圧を示し、入口で固まって吐出圧が上昇したことが分かる。