IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ カーディアック ペースメイカーズ, インコーポレイテッドの特許一覧

<>
  • 特許-心房性不整脈を検出するためのシステム 図1
  • 特許-心房性不整脈を検出するためのシステム 図2
  • 特許-心房性不整脈を検出するためのシステム 図3
  • 特許-心房性不整脈を検出するためのシステム 図4
  • 特許-心房性不整脈を検出するためのシステム 図5
  • 特許-心房性不整脈を検出するためのシステム 図6
  • 特許-心房性不整脈を検出するためのシステム 図7
  • 特許-心房性不整脈を検出するためのシステム 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-05
(45)【発行日】2022-08-16
(54)【発明の名称】心房性不整脈を検出するためのシステム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/352 20210101AFI20220808BHJP
   A61B 5/0245 20060101ALI20220808BHJP
   A61B 5/361 20210101ALI20220808BHJP
   A61B 5/363 20210101ALI20220808BHJP
   A61N 1/365 20060101ALI20220808BHJP
【FI】
A61B5/352 100
A61B5/0245 100D
A61B5/361
A61B5/363
A61N1/365
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019548312
(86)(22)【出願日】2018-03-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-04-16
(86)【国際出願番号】 US2018021330
(87)【国際公開番号】W WO2018165289
(87)【国際公開日】2018-09-13
【審査請求日】2019-09-25
【審判番号】
【審判請求日】2021-10-08
(31)【優先権主張番号】62/468,165
(32)【優先日】2017-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505003528
【氏名又は名称】カーディアック ペースメイカーズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ペルシュバッハー、デイビッド エル.
(72)【発明者】
【氏名】サハ、スニパ
【合議体】
【審判長】三崎 仁
【審判官】伊藤 幸仙
【審判官】樋口 宗彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0342466(US,A1)
【文献】特開2017-42386(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0250428(US,A1)
【文献】欧州特許第3592220(EP,B1)
【文献】米国特許第10786172(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/24 - 5/398
A61B 5/02 - 5/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
心房頻脈性不整脈検出器回路を備える心房頻脈性不整脈を検出するためのシステムであって、
前記心房頻脈性不整脈検出器回路は、
第1の複数の心拍数分析窓内で判定される複数の代表的な心室心拍数を使用して第1の心室心拍数統計値を生成し、
予め定められた特定の持続時間中に1つまたは複数の種類からなる複数個の第2の心室心拍数統計値を生成し、前記複の第2の心室心拍数統計値は、それぞれ、第2の複数の心拍数分析窓内で判定される複数の代表的な心室心拍数から生成され、
(1)第1の条件を満足する前記第1の心室心拍数統計値、および、(2)前記予め定められた特定の持続時間にわたって第2の条件を満足する前記複の第2の心室心拍数統計値に応答して、前記予め定められた特定の持続時間にわたって持続する持続性心房粗動(AFL)イベントを含む心房頻脈性不整脈(AT)イベントを検出する
ように構成されている、心房頻脈性不整脈を検出するためのシステム。
【請求項2】
前記持続性AFLイベントの前記検出に応答して心臓の治療または神経の治療を生成及び施すように構成されている治療回路を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記予め定められた特定の持続時間は2時間~8時間の間でプログラミング可能である、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記複数の代表的な心室心拍数のそれぞれは、各心拍数分析窓内の心室心拍数測定値のうち最も頻繁な心拍数を示す中心傾向を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項5】
前記第1の心室心拍数統計値は、心拍数しきい値を超える、前記第1の複数の心拍数分析窓内の前記代表的な心室心拍数の第1の相対数を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項6】
前記心房頻脈性不整脈検出器回路は、10個の連続的な心拍数分析窓から判定される10個の代表的な心室心拍数のうち少なくとも8個が前記心拍数しきい値を超えることを示す前記第1の条件を満足する前記第1の心室心拍数統計値に応答して前記複数の第2の心室心拍数統計値を生成するように構成されている、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
記複の第2の心室心拍数統計値は、心拍数しきい値を超える、前記第2の複数の心拍数分析窓内の前記代表的な心室心拍数の第2の相対数を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項8】
前記心房頻脈性不整脈検出器回路は、前記予め定められた特定の持続時間にわたって任意の10個の連続的な心拍数分析窓から判定される10個の代表的な心室心拍数のうち少なくとも6個が前記心拍数しきい値を超えることを示す前記第2の条件を満足する前記複の第2の心室心拍数統計値に応答して前記持続性AFLイベントを検出するように構成されている、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記心拍数しきい値は、100拍/分~150拍/分の間でプログラミング可能である、請求項7または8に記載のシステム。
【請求項10】
前記予め定められた特定の持続時間は、4時間~8時間の間でプログラミング可能である、請求項7~9のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項11】
前記1つまたは複数の種類からなる第2の心室心拍数統計値のうちの少なくとも1つの種類は、前記第2の複数の心拍数分析窓から計算される前記代表的な心室心拍数の心拍数安定性をさらに含み、
前記心房頻脈性不整脈検出器回路は、安定性しきい値を超える前記心拍数安定性にさらに応答して前記持続性AFLイベントを検出するように構成されている、請求項7~10のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項12】
前記心房頻脈性不整脈検出器回路は、前記第2の複数の心拍数分析窓から計算される前記代表的な心室心拍数のヒストグラムを使用して前記心拍数安定性を生成するように構成されている、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記持続性AFLイベントの前記検出に応答して前記予め定められた特定の持続時間を短縮させるように構成されているパラメータ調整回路をさらに備える、請求項1~12のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項14】
前記心房頻脈性不整脈検出器回路は、
AFL持続時間にわたってAFL心拍数しきい値を含むAFL検出条件を満足する前記複の第2の心室心拍数統計値に応答して前記持続性AFLイベントを検出するとともに、
速いAFL持続時間にわたって速いAFL心拍数しきい値を含む速いAFL検出条件を満足する前記複の第2の心室心拍数統計値に応答して速い持続性AFLイベントを検出する、
ように構成されており、
前記速いAFL心拍数しきい値は前記AFL心拍数しきい値よりも高く、前記速いAFL持続時間は前記AFL持続時間よりも短い、請求項1~13のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項15】
前記心房頻脈性不整脈検出器回路の少なくとも一部を含む携帯用デバイスをさらに備える、請求項1~14のいずれか1項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本文書は、一般に医療デバイスに関し、より詳細には、心臓不整脈を検出および管理するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
患者の健康状態または病状をモニタリングし、治療を施すために、植え込み型医療デバイス(IMD:implantable medical device)が使用されてきた。例えば、ある異常な心拍リズムをモニタリングし、心臓に電気エネルギーを供給して異常なリズムを矯正するために、植え込み型除細動器(ICD:implantable cardioverter‐defibrillator)が使用されることがある。いくつかのIMDは、鬱血性心不全(CHF:congestive heart failure)などに起因する心血行動態パフォーマンスの慢性悪化をモニタリングし、心臓再同期療法(CRT:cardiac resynchronization therapy)を含む心刺激療法を提供して心室内または心室間における心臓同期不全を矯正するために、使用されることがある。
【0003】
いくつかのIMDは、心房頻脈性不整脈(AT:atrial tachyarrhythmia)などの心臓不整脈を検出することが可能である。1つのタイプのAFは、数百万人の人々に影響を及ぼす、最も一般的な臨床的不整脈として認識されている、心房細動(AF:atrial fibrillation)である。AFの間、心房内または心房付近の領域から生じた無秩序な電気パルスが、心室への不規則な伝導をもたらすことがあり、それによって、不適切に速く、不規則な心拍数を引き起こす。AFは、それがひとりでに止むまでに数分から数日続く場合がある発作性である可能性、正常な洞調律に復帰するためには通常は薬物治療もしくは他の治療を必要とする、1週間を超えて続く場合がある持続性である可能性、または、治療を行っても正常な心拍リズムを回復することができない永続性である可能性がある。
【0004】
別のタイプのAFは、心房粗動(AFL:atrial flutter)である。AFLは通常、ある程度の房室(AV:atrioventricular)結節伝導ブロックを伴い、速く、通常は規則的な心拍数に関連付けることができる。典型的なまたはI型のAFLは、右心房内の三尖弁輪の周りの単一のリエントリー回路を伴う場合があり、240拍/分~340拍/分(bpm:beats per minute)の心房レートを有する。リエントリー回路は、最も多くの場合、反時計回り方向に進む。非典型的なまたはII型のAFLは、異なる回路に追従し、これは、右心房または左心房を伴う可能性があり、通常はおよそ340bpm~440bpmのより速い心房レートを有する。AFLは、冠動脈疾患(CAD:coronary artery disease)または高血圧性心疾患などの、種々の心疾患に関連付けることができる。AFLは、多くの場合に、悪化してAFになる可能性がある。長引く速いAFLは、正常な心機能の喪失を伴う代償不全につながる可能性がある。これは、労作不耐症(effort intolerance)、夜間呼吸困難(nocturnal breathlessness)、または、脚もしくは腹部のむくみとして現れる可能性がある。AFまたはAFLなどのATのタイムリーな検出は、心臓機能を評価するために臨床的に重要であり得る。
【発明の概要】
【0005】
いくつかのIMDは、心臓不整脈または慢性心疾患の進行などの生理学的イベントを検出し、電位図などの心臓の電気的活動信号のサンプリングされた値を獲得することが可能である。いくつかのIMDは、さらに、様々な生理学的信号を測定することができる、複数の生理学的センサと通信することができる。正確な電位図、または、定期的に予定される通院患者の来院から次の来院までの長期間といった、より長い期間にわたって得られる他の生理学的なセンサ情報を捕捉することは、医師が必要に応じてデバイスを再プログラミングすること、心臓病を診断すること、または、患者の健康状態を評価することを助けることができる。
【0006】
AFまたはAFLなどの心房頻脈性不整脈は、速い心房レートを特徴とする。心房のリード線植え込みに適応ではない患者など、患者によっては、心房内に位置決めされる電極によって心房活性化率を直接的に感知することが利用可能ではないかまたは実現可能ではない。専用の心房感知/ペーシングリード線を有しない単一チャンバのIMDなどの医療デバイスは、心房からの心房活動の直接的感知ではなく心拍数に基づいて、ATを検出することができる。しかし、ノイズ、動きアーチファクトまたはAT以外の心調律といった交絡因子が、ATイベントとして誤って検出される可能性がある。例えば、AFL中に、心房からの刺激が、房室結節(AV(atrio‐ventricular)結節)を通じて心室に伝導される。AV結節は、主にそのより長い不応期に起因して、およそ180拍/分(bpm)を超える心房刺激をブロックすることによって、心室における心拍数に保護作用を与えることができる。AFLレートが300bpmである場合、2対1(2:1)の心臓ブロックが生じる可能性があり、それによって、心房刺激の半分しか心室に伝導することができず、結果として、150bpmの心室レートになる。心拍数は、心房活動よりも心室の尺度であるため、心房活動ではなく心室心拍数に基づいてATを検出する医療デバイスは、許容可能な身体活動中といった、高いレートにおける生理学的な洞調律(例えば、洞性頻脈)によって混乱される可能性がある。不適切な検出は、検出の特異度を低下させ、結果として、不必要もしくは不適切な医療的またはデバイスによる治療につながる可能性がある。不適切に検出された不整脈を医師に誤って警告すること、または、不適切に検出された大量の不整脈イベントを検討もしくは判断のために医師に提示することは、デバイスの有効性に悪影響を与え、患者の管理に関連するヘルスケアコストを不当に増大させる可能性がある。その結果、これは、心拍数に基づくAT検出の臨床的有用性を低下させる可能性がある。少なくともこれらの理由から、本発明者らは、とりわけ、ATを検出するためのより効率的なシステムおよび方法についての本質的な課題と必要性とを認識している。
【0007】
本文書は、とりわけ、心房頻脈性不整脈を検出するためのシステム、デバイスおよび方法を論じる。AT検出システムは、生理学的信号を感知するセンサ回路、および、心拍数分析窓内で代表的な心室心拍数を検出する心拍数検出器回路を含むことができる。心房頻脈性不整脈検出器回路は、第1の複数の心拍数分析窓内の代表的な心室心拍数から生成される第1の心室心拍数統計値を使用して初期レート検出を行い、第2の複数の心拍数分析窓内で特定の持続時間中に判定される複数の代表的な心室心拍数から生成される1つまたは複数の第2の心室心拍数統計値を使用して持続性不整脈の検出を行うことができる。ATイベントは、特定の持続時間にわたって第2の心室心拍数統計値が特定の条件を満足する場合に検出される。AT検出システムは、検出されたATをユーザまたはプロセスに出力することができる出力ユニットを含むことができる。
【0008】
実施例1は、心房性不整脈を検出するためのシステムである。システムは、第1の複数の心拍数分析窓内で判定される複数の代表的な心室心拍数を使用して第1の心室心拍数統計値を生成し、特定の持続時間中に1つまたは複数の第2の心室心拍数統計値を生成することができる心房頻脈性不整脈検出器回路を備え、1つまたは複数の第2の心室心拍数統計値は、それぞれ、第2の複数の心拍数分析窓内で判定される複数の代表的な心室心拍数から生成することができる。心房頻脈性不整脈検出器回路は、第1の条件を満足する第1の心室心拍数統計値、および、特定の持続時間にわたって第2の条件を満足する1つまたは複数の第2の心室心拍数統計値に応答して心房頻脈性不整脈(AT)イベントを検出することができる。
【0009】
実施例2では、実施例1の主題は、ATの検出に応答して心臓の治療または神経の治療を生成して施すように構成されている治療回路を任意選択的に含む。
実施例3では、実施例1~2のいずれか1つまたは複数の主題は、心房粗動イベントまたは心房細動イベントを含むATイベントを検出することを任意選択的に含む。
【0010】
実施例4では、実施例1~3のいずれか1つまたは複数の主題は、複数の代表的な心室心拍数を任意選択的に含み、これらのそれぞれは、各心拍数分析窓内の心室心拍数測定値のうち最も頻繁な心拍数を示す中心傾向を含むことができる。
【0011】
実施例5では、実施例1~4のいずれか1つまたは複数の主題は、心拍数しきい値を超える、第1の複数の心拍数分析窓内の代表的な心室心拍数の第1の相対数を含むことができる第1の心室心拍数統計値を任意選択的に含む。
【0012】
実施例6では、実施例5の主題は、10個の連続的な心拍数分析窓から判定される10個の代表的な心室心拍数のうち少なくとも8個が心拍数しきい値を超えることを示す第1の条件を満足する第1の心室心拍数統計値に応答して1つまたは複数の第2の心室心拍数統計値を生成するように構成することができる心房頻脈性不整脈検出器回路を任意選択的に含む。
【0013】
実施例7では、実施例1~6のいずれか1つまたは複数の主題は、心拍数しきい値を超える、第2の複数の心拍数分析窓内の代表的な心室心拍数の第2の相対数を含むことができる1つまたは複数の第2の心室心拍数統計値を任意選択的に含む。
【0014】
実施例8では、実施例7の主題は、特定の持続時間にわたって任意の10個の連続的な心拍数分析窓から判定される10個の代表的な心室心拍数のうち少なくとも6個が心拍数しきい値を超えることを示す第2の条件を満足する1つまたは複数の第2の心室心拍数統計値に応答してATイベントを検出するように構成することができる心房頻脈性不整脈検出器回路を任意選択的に含む。
【0015】
実施例9では、実施例7~8のいずれか1つまたは複数の主題は、心房粗動イベントを含むことができるATイベントを任意選択的に含み、心拍数しきい値は、100拍/分~150拍/分の間でプログラミング可能である。
【0016】
実施例10では、実施例7~9のいずれか1つまたは複数の主題は、心房粗動イベントを含むATイベントを検出することを任意選択的に含み、特定の持続時間は、4時間~8時間の間でプログラミング可能である。
【0017】
実施例11では、実施例7~10のいずれか1つまたは複数の主題は、第2の複数の心拍数分析窓から計算される代表的な心室心拍数の心拍数安定性を含むことができる1つまたは複数の第2の心室心拍数統計値のうちの少なくとも1つを任意選択的に含む。心房頻脈性不整脈検出器回路は、安定性しきい値を超える心拍数安定性にさらに応答してATイベントを検出するように構成することができる。
【0018】
実施例12では、実施例11の主題は、第2の複数の心拍数分析窓から計算される代表的な心室心拍数のヒストグラムを使用して心拍数安定性を生成するように構成することができる心房頻脈性不整脈検出器回路を任意選択的に含む。
【0019】
実施例13では、実施例1~12のいずれか1つまたは複数の主題は、ATイベントの検出に応答して特定の持続時間を短縮させるように構成されているパラメータ調整回路を任意選択的に含む。
【0020】
実施例14では、実施例1~13のいずれか1つまたは複数の主題は、AFL持続時間にわたってAFL心拍数しきい値を含むAFL検出条件を満足する1つまたは複数の第2の心室心拍数統計値に応答して心房粗動(AFL)イベントを検出することと、速いAFL持続時間にわたって速いAFL心拍数しきい値を含む速いAFL検出条件を満足する1つまたは複数の第2の心室心拍数統計値に応答して速いAFLイベントを検出することと、を含むATイベントを検出するように構成することができる心房頻脈性不整脈検出器回路を任意選択的に含み、速いAFL心拍数しきい値はAFL心拍数しきい値よりも高く、速いAFL持続時間はAFL持続時間よりも短い。
【0021】
実施例15では、実施例1~14のいずれか1つまたは複数の主題は、心房頻脈性不整脈検出器回路の少なくとも一部を含む携帯型デバイスを任意選択的に含む。
実施例16は、不整脈検出器システムを使用して心房頻脈性不整脈を検出するための方法である。この方法は、不整脈検出器システムを介して、第1の複数の心拍数分析窓内で複数の代表的な心室心拍数を判定するとともに、第1の複数の心拍数分析窓内の複数の代表的な心室心拍数を使用して、第1の心室心拍数統計値を生成するステップと、第2の複数の心拍数分析窓内で複数の代表的な心室心拍数を判定するとともに、特定の持続時間中に1つまたは複数の第2の心室心拍数統計値を生成するステップと、第1の条件を満足する第1の心室心拍数統計値、および、特定の持続時間にわたって第2の条件を満足する1つまたは複数の第2の心室心拍数統計値に応答して心房頻脈性不整脈(AT)イベントを検出するステップと、検出されたATをユーザまたはプロセスに出力するステップと、を含む。
【0022】
実施例17では、実施例16の主題は、代表的な心室心拍数を判定することを任意選択的に含み、これらのそれぞれは、各心拍数分析窓内の複数の心拍数測定値のうち最も頻繁な心拍数を示す中心傾向を含む。
【0023】
実施例18では、実施例16の主題は、心拍数しきい値を超える、第1の複数の心拍数分析窓内の代表的な心室心拍数の第1の相対数を含むことができる第1の心室心拍数統計値を任意選択的に含む。
【0024】
実施例19では、実施例16の主題は、心拍数しきい値を超える、第2の複数の心拍数分析窓内の代表的な心室心拍数の第2の相対数、または、第2の複数の心拍数分析窓から計算される代表的な心室心拍数の心拍数安定性、のうちの1つまたは複数を含むことができる1つまたは複数の第2の心室心拍数統計値を任意選択的に含む。
【0025】
実施例20では、実施例19の主題は、心房粗動(AFL)イベントを検出することを含む、ATイベントを検出することを任意選択的に含む。心拍数しきい値は、100拍/分~150拍/分の間でプログラミング可能とすることができ、特定の持続時間は、4時間~8時間の間でプログラミング可能である。
【0026】
実施例21では、実施例16の主題は、ATイベントの検出に応答して特定の持続時間を短縮することを任意選択的に含む。
実施例22は、心房性不整脈を検出するためのシステムである。システムは心房頻脈性不整脈検出器回路を備える。心房頻脈性不整脈検出器回路は、複数の代表的な心室心拍数を受信し、第1の期間にわたって複数の代表的な心室心拍数の少なくとも一部を使用して心房細動(AF)イベントを検出し、第2の期間にわたって複数の代表的な心室心拍数の少なくとも一部を使用して心房粗動(AFL)イベントを検出するように構成することができる。第1の期間は、数秒または数分のオーダーとすることができる。第2の期間は数時間のオーダーとすることができる。
【0027】
実施例23では、実施例22の主題は、第1の複数の心拍数分析窓内の複数の代表的な心室心拍数を使用して第1の心室心拍数統計値を生成し、第1の期間内でAF持続時間中に1つまたは複数の第2の心室心拍数統計値を生成し、1つまたは複数の第2の心室心拍数統計値はそれぞれ、第2の複数の心拍数分析窓内の複数の代表的な心室心拍数を使用して生成され、第2の期間内でAFL持続時間中に1つまたは複数の第3の心室心拍数統計値を生成し、1つまたは複数の第3の心室心拍数統計値はそれぞれ、第3の複数の心拍数分析窓内の複数の代表的な心室心拍数を使用して生成され、AF持続時間中に生成された第1の心室心拍数統計値および1つまたは複数の第2の心室心拍数統計値を使用してAFイベントを検出し、AFL持続時間中に生成された第1の心室心拍数統計値および1つまたは複数の第3の心室心拍数統計値を使用してAFLイベントを検出するように構成することができる、心房頻脈性不整脈検出器回路を任意選択的に含む。
【0028】
実施例24では、実施例22の主題は、第3の期間にわたって複数の代表的な心室心拍数の少なくとも一部を使用して速いAFLイベントを検出するように構成することができる心房頻脈性不整脈検出器回路を任意選択的に含む。第3の期間は、数時間のオーダーであり、第2の期間よりも短いものとすることができる。
【0029】
本文書において説明されるシステム、デバイスおよび方法は、自動心調律管理(CRM:cardiac rhythm management)の医療技術、および、心臓機能の悪化の予防を改善することができる。心拍数に基づく不整脈検出は、植え込み型CRMデバイスの性能および機能を高めることもでき、特定の例においては、皆無かそれに近いコストの追加でシステムの性能を改良することができるように既存のAFまたはAFL検出の特異度を高め(例えば、偽陽性を低減し)、一方で、偽AFもしくはAFL検出、または、そのような誤った判定によって必要とされる手動点検に関連するコストを低減する。他の例においては、既存のシステムの性能は、より低いコストまたはより目立たないシステム、装置および方法を使用して維持することができる(例えば、高いAFまたはAFL感度および特異度など)。例えば、システムまたはデバイスは、心房頻脈性不整脈検出のための直接的な心房活動感知を必要としないため、システムの複雑さおよび実施コストを低減することができる。これは、心房活動感知または心房ペーシングのいずれかのために心房リード線植え込みに適応ではない患者にとって特に有益であり得る。心拍数に基づく不整脈検出は、不整脈認識に臨床的に関連する心室心拍数統計値、および、より少ない潜在的なAFまたはAFLイベントを記憶することなどによって、デバイスのメモリのより効率的な使用も可能にする。より少ないアラームが提供されるため、バッテリの寿命を延ばすことができ、より少ない不必要な薬および手順を計画するか、処方するかまたは提供することができ、全体的なシステムのコスト節減を実現することができる。
【0030】
本概要は本願の教示のいくつかの概観であって、本主題の排他的または網羅的な取り扱いを意図したものではない。本主題に関するさらなる詳細が、詳細な説明および添付の特許請求の範囲に見出される。本開示の他の態様は、いずれも限定の意図はない、下記の詳細な説明を読解し、その一部を形成する図面を参照することにより、当業者には明らかとなるであろう。本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲およびその法的均等物によって規定される。
【0031】
様々な実施形態が、添付の図面の図において、例として示されている。そのような実施形態は、例証的なものであり、本主題の網羅的または排他的な実施形態であることは意図されていない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】心調律管理(CRM)システム、および、CRMシステムが動作することができる環境の部分の例を示す図である。
図2】患者から、ATイベントなどの心臓不整脈を検出するように構成することができる不整脈検出システムの例を概略的に示す図である。
図3】不整脈検出中の動作状態の状態機械の図、および、これらの状態間の遷移を概略的に示す図である。
図4】持続性AT検出のための移動窓セットの例のグラフを示す図である。
図5】マルチゾーン心房頻脈性不整脈検出の例のグラフを示す図である。
図6】患者から心臓不整脈を検出するための方法の例を概略的に示す図である。
図7】2つ以上の心房頻脈性不整脈のマルチゾーン検出のための方法の例を概略的に示す図である。
図8】本明細書において説明される技法(例えば、方法)のうちのいずれか1つまたは複数を行うことができる例示的な機械のブロック図を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本明細書では、心房頻脈性不整脈(AT)などの心臓不整脈を検出するためのシステム、デバイスおよび方法が開示される。代表的な心室心拍数は、生理学的信号から心拍数分析窓内で検出することができる。心房頻脈性不整脈検出器回路は、第1の複数の心拍数分析窓内で判定された代表的な心室心拍数から第1の心室心拍数統計値を生成し、特定の持続時間中に第2の複数の心拍数分析窓内で判定された複数の代表的な心室心拍数から1つまたは複数の第2の心室心拍数統計値を生成することができる。1つまたは複数のタイプの持続性ATイベントは、特定の持続時間にわたって特定の条件を満足する第2の心室心拍数統計値に応答して検出することができる。
【0034】
図1は、心調律管理(CRM)システム100、および、システム100が動作することができる環境の部分の例を概略的に示している。CRMシステム100は、患者102に関連付けられている携帯型システム105、外部システム125、および、携帯型システム105と外部システム125との間の通信を提供するテレメトリリンク115を含むことができる。
【0035】
携帯型システム105は、携帯型医療デバイス(AMD)110を含むことができる。例においては、AMD110は、患者102の胸部、腹部または他の部分に皮下に植え込まれる植え込み型デバイスとすることができる。植え込み型デバイスの例としては、とりわけ、ペースメーカ、ペースメーカ/除細動器、心臓再同期療法(CRT)デバイス、心臓リモデリング制御療法(RCT:remodeling control therapy)デバイス、ニューロモデュレータ、薬物送達デバイス、生物学的療法デバイス、心臓モニタもしくはループレコーダなどの診断デバイス、または、患者モニタが挙げられるが、これらに限定されない。AMD110は、代替的にまたは付加的に、皮下植え込み型デバイス、装着型医療デバイス、または、他の外部モニタリングもしくは治療用医療デバイスもしくは機器を含んでもよい。
【0036】
AMD110は、リードシステム108に連結することができる。リードシステム108は、経静脈的に、皮下にもしくは非侵襲的に配置される1つまたは複数のリード線またはカテーテルを含むことができる。それぞれのリード線またはカテーテルは、1つまたは複数の電極を含むことができる。リードシステム108および関連する電極の配置ならびに使用は、患者のニーズ、および、AMD110の機能に基づいて決定することができる。リードシステム108上の関連する電極は、心臓活動を示す生理学的信号、または、目的組織への診断もしくは治療のための刺激に対する生理学的反応を感知するために、患者の胸部または腹部に位置決めすることができる。限定するものではなく例として、かつ図1において示されているように、リードシステム108は、心臓101内に外科的に挿入されるかまたは心臓101の表面に位置決めされるように構成することができる。リードシステム108上の電極は、右心房(RA:right atrium)、右心室(RV:right ventricle)、左心房(LA:left atrium)もしくは左心室(LV:left ventricle)、または、心臓部分間もしくは心臓部分付近のいずれかの組織など、心臓101の一部に位置決めすることができる。いくつかの例においては、リードシステム108および関連する電極は、代替的には、患者の心拍数または脈拍数についての情報を含む生理学的信号を感知するために、身体の他の部分に位置決めしてもよい。例においては、携帯型システム105は、リードシステム108を介してAMD110につながれていない、1つまたは複数のリード線のないセンサを含むことができる。リード線のない携帯型センサは、生理学的信号を感知し、AMD110と無線通信するように構成することができる。
【0037】
AMD110は、モニタリングおよび診断デバイスとして構成することができる。AMD110は、他の構成要素の中でも、感知回路、コントローラ回路、通信回路およびバッテリのうちの1つまたは複数を収容する、気密に封止された缶を含むことができる。感知回路は、生理学的センサまたはリードシステム108に関連する電極を使用することなどによって、生理学的信号を感知することができる。生理学的信号の例としては、心電図、心内電位図、不整脈、心拍数、心拍数の変動性、胸郭インピーダンス、心内インピーダンス、動脈圧、肺動脈圧、左心房圧、RV圧、LV冠状動脈圧、冠血液温度、血液酸素飽和度、1つまたは複数の心音、心臓内加速、身体活動もしくは運動レベル、活動に対する生理学的反応、姿勢、呼吸数、1回換気量、呼吸音、体重または体温のうちの1つまたは複数が挙げられる。
【0038】
例においては、AMD110は、患者102から心房頻脈性不整脈を検出するように構成されている心臓不整脈検出回路160を含むことができる。感知される生理学的信号は、患者の心拍数または脈拍数についての情報を含むことができる。心臓不整脈検出回路160は、感知された生理学的信号から心室心拍数統計値を生成することができる。心室心拍数統計値は、特定の期間の持続時間にわたる持続性の過剰な心拍数を示すことができる。心臓不整脈検出回路160は、心室心拍数統計値が特定の条件を満足することに応答して、心房粗動(AFL)または心房細動(AF)イベントのうちの1つまたは複数などの、心房頻脈性不整脈(AT)イベントを検出することができる。AMD110は、患者もしくは医師などのユーザに、または、例えば、マイクロプロセッサにおいて実行可能なコンピュータプログラムのインスタンスを含むプロセスに、検出されたATイベントを出力することができる。例においては、プロセスは、抗不整脈治療の推奨、または、さらなる診断テストもしくは治療の推奨の自動生成を含むことができる。
【0039】
AMD110は、代替的には、不整脈または他の心臓の状態を治療するように構成されている治療デバイスとして構成してもよい。AMD110は、付加的に、1つまたは複数の治療を生成して施すことができる治療ユニットを含むことができる。治療は、リードシステム108および関連する電極を介して患者102に施すことができる。治療は、電気的、磁気的または他のタイプの療法を含むことができる。療法は、不整脈を治療するための、または、とりわけ失神、鬱血性心不全もしくは発作などの、不整脈による1つまたは複数の合併症を治療または制御するための、抗不整脈療法を含むことができる。抗不整脈療法の例は、他のタイプの療法の中でも、ペーシング、電気的除細動、徐細動、ニューロモデュレーション、薬物療法または生物学的療法を含むことができる。例においては、治療は、CHF患者における非同期を矯正するとともに心臓機能を改善するための心臓再同期療法(CRT)を含むことができる。いくつかの例においては、AMD110は、不整脈または不整脈による合併症を管理するために、薬物を患者に送達するための薬物注入ポンプなどの薬物送達システムを含むことができる。
【0040】
AMD110に関する本明細書における説明は植え込み型システムに焦点を当てているが、これは、例示に過ぎず、限定的ではないことが意図される。本明細書において説明されるシステム、デバイスおよび方法を、皮下モニタまたは診断デバイスなどの皮下医療デバイス、装着型医療デバイス(例えば、時計状のデバイス、パッチベースのデバイスもしくは他のアクセサリ)、または、他の携帯型医療デバイスにおいて実施し、またこれらによって実行してもよいことが、本発明者らの意図するところであり、本文書の範囲内にある。
【0041】
外部システム125は、通信リンク115を介してAMD110と通信することができる。外部システム125は、プログラマ、リモートサーバベースの患者管理システム、または代替的には、標準的なパーソナルコンピュータ上で実行するソフトウェアによって主に規定されるシステムなどの、専用のハードウェア/ソフトウェアシステムを含むことができる。外部システム125を使用してAMD110の動作を制御することができる。外部システム125は、付加的に、通信リンク115を介して、1つまたは複数の生理学的信号などの、AMD110によって取得された情報を受信することができる。
【0042】
限定するものではなく例として、外部システム125は、AMD110の近傍にある外部デバイス120、AMD110から比較的離れた場所にある遠隔デバイス124、および、外部デバイス120と遠隔デバイス124とを結合する遠隔通信ネットワーク122を含むことができる。テレメトリリンク115は、誘導テレメトリリンク、容量性テレメトリリンクまたは無線周波数(RF:radio‐frequency)テレメトリリンクとすることができる。テレメトリリンク115は、AMD110から外部システム125へのデータ送信を提供することができる。これは、例えば、AMD110によって取得されたリアルタイムの生理学的データを送信すること、AMD110によって取得されてAMD110に格納されている生理学的データを抽出すること、不整脈の発生、代償不全の発生、および、AMD110に記録されている療法の送達、を示すデータなどの患者の病歴データを抽出すること、ならびに、AMD110の動作状態を示すデータ(例えば、バッテリ状態およびリード抵抗)を抽出することを含むことができる。テレメトリリンク115は、外部システム125からAMD110へのデータ送信も提供することができる。これは、例えば、AMD110をプログラミングして生理学的データを取得すること、少なくとも1つの自己診断テスト(デバイスの動作状態などに関する)を行うこと、生理学的データを分析して心臓不整脈を検出すること、または、任意選択的に治療を患者102に施すかもしくは調整することのうちの1つまたは複数を行うことを含むことができる。
【0043】
外部デバイス120または遠隔デバイス124のうちの1つまたは複数は、生理学的もしくは機能性の信号、または、アラート、アラーム、緊急呼び出し、または、不整脈の検出を知らせるための他の形態の警告を表示するためのディスプレイを含むことができる。いくつかの例においては、外部システム125は、AMD110によって受信された生理学的または機能性の信号を分析するとともに、不整脈の検出を承認または拒絶するように構成されている外部のデータプロセッサを含むことができる。機械学習アルゴリズムなどの計算集約的なアルゴリズムを、外部のデータプロセッサにおいて実施し、データを遡及的に処理し、心臓不整脈を検出することができる。
【0044】
AMD110または外部システム125の部分は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェアまたはこれらの組み合わせを使用して実施することができる。AMD110または外部システム125の部分は、1つまたは複数の特定の機能を行うように構築もしくは構成することができる特定用途向け回路を使用して実施することができるか、または、1つまたは複数の特定の機能を行うようにプログラミングされるかもしくは別様に構成することができる汎用回路を使用して実施することができる。そのような汎用回路は、マイクロプロセッサもしくはその部分、マイクロコントローラもしくはその部分、または、プログラマブル論理回路もしくはその部分を含むことができる。例えば、「比較器」は、とりわけ、2つの信号間の比較という特定の機能を行うように構築することができる電子回路比較器を含むことができるか、または、比較器は、2つの信号間の比較を行うように汎用回路の一部に命令するコードによって駆動されることができる汎用回路の一部として実施することができる。
【0045】
図2は、患者からATイベントなどの心房頻脈性不整脈を検出するように構成することができる不整脈検出システム200の一例を概略的に示している。不整脈検出200の部分は、AMD110の不整脈検出回路160に含めることができる。不整脈検出システム200は、センサ回路210、心拍数検出器回路220、不整脈検出器回路230、コントローラ回路240およびユーザインターフェースユニット250のうちの1つまたは複数を含むことができる。不整脈検出システム200は、患者の健康状態をモニタリングするための心臓モニタもしくは診断デバイスとして、または、任意選択的な治療回路260を付加的に含む治療デバイスとして構成することができる。
【0046】
センサ回路210は、1つまたは複数の植え込み型の、装着型の、または、患者に関連付けられている別様の携帯型センサもしくは電極を介して患者から感知される生理学的信号を感知するために、感知増幅回路を含むことができる。感知される生理学的信号は、心拍数または脈拍数などの、脈動する心臓活動についての情報を含むことができる。生理学的信号の例としては、とりわけ、体表上の電極から感知される等の体表面心電図記録法(ECG:electrocardiography)、皮膚下に配置される電極から感知される等の皮下ECG、リードシステム108上の1つまたは複数の電極から感知される心内電位図(EGM:electrogram)、胸郭または心臓インピーダンス信号、動脈圧信号、肺動脈圧信号、左心房圧信号、RV圧信号、LV冠状動脈圧信号、冠血液温度信号、血液酸素飽和度信号、携帯型加速度計もしくは音響センサによって感知される等の心音信号、活動に対する生理学的反応、無呼吸低呼吸指数、呼吸速度信号もしくは1回換気量信号などの1つまたは複数の呼吸信号、脳内ナトリウム利尿ペプチド(BNP:brain natriuretic peptide)、血液パネル、ナトリウムおよびカリウム値、血糖値、ならびに、他の生物マーカおよび生化学マーカが挙げられる。センサ回路210は、受信された生理学的信号をデジタル化するか、フィルタリングするか、または、該信号に対して他の信号調整操作を行うための、1つまたは複数の他のサブ回路を含むことができる。
【0047】
いくつかの例においては、生理学的信号は、電子医療記録(EMR:electronic medical record)システムなどの格納デバイスに格納することができる。センサ回路210は、システムのユーザによって提供されるかまたは特定のイベントの発生に応答して自動的に生成されるコマンド信号に応答して、格納デバイスから生理学的信号を検索するように構成することができる。
【0048】
心拍数検出器回路220は、センサ回路210に結合されて、代表的な心室心拍数を検出することができる。心拍数検出器回路220は、心拍感知回路222および代表的HRの計算器回路224を含むことができる。心拍感知回路222は、感知された生理学的信号から心拍を感知するように構成することができる。例においては、センサ回路210は、ECG、皮下ECGまたは心内EGMなどの心臓の電気信号を感知することができ、心拍感知回路222は、心臓の脱分極または再分極を示す電気生理学的なイベントを心臓の電気信号から検出することができる。感知される電気生理学的なイベントの例は、体表面または皮下ECGまたは心内EGMにおけるP波、Q波、R波、QRS複合またはT波を含むことができる。センサ回路210は、付加的にまたは代替的に、心臓収縮を示す心臓の機械的活動を感知するように構成されている1つまたは複数のセンサを含むことができ、心拍感知回路222は、感知した心臓の機械的活動から、心房収縮、心室収縮、充満の終了、排出の終了、または、心収縮サイクル中の他の特定の段階のうちの1つまたは複数を示す、機械生理学的なイベントを感知することができる。心臓の機械的活動を感知するためのセンサの例としては、他のセンサの中でもとりわけ、心臓から心音信号もしくは心内膜加速度信号を感知するように構成されている加速度計またはマイク、心収縮の結果としての心臓インピーダンスにおける周期的な変化を感知するように構成されているインピーダンスセンサ、または、周期的な心臓収縮および心臓弁の開閉の結果としての脈動する動脈圧もしくは動脈流を感知するための血圧センサまたは血流センサが挙げられる。機械生理学的なイベントの例としては、とりわけ、感知された心音信号からのS1、S2、S3もしくはS4心音、心臓インピーダンス信号からのピークもしくはトラフインピーダンス、または、血圧信号からのピークもしくはトラフ血圧が挙げられる。
【0049】
代表的HRの計算器回路224は、心拍数分析窓内で感知された心拍を使用して代表的な心室心拍数(rHR:representative ventricular heart rate)を判定するように構成することができる。心拍数または周期長(CL:cycle length)は、検出された電気生理学的なまたは機械生理学的なイベントを使用して判定することができる。例においては、CLは、とりわけ、2つの隣接するR波間(R‐R間隔)もしくはP波間(P‐P間隔)の時間間隔(秒もしくはミリ秒の単位など)、または、心臓インピーダンス信号からの隣接するインピーダンスピークもしくは隣接するインピーダンストラフ間の間隔、または、血圧信号からの2つの隣接する血圧ピーク(すなわち、収縮期圧)間もしくは隣接する血圧トラフ(すなわち、拡張期圧)間の間隔として測定することができる。拍/分(bpm)の単位でのHRは、HR=60秒/CLに従うなどして、CLを使用して計算することができる。
【0050】
代表的HRの計算器回路224は、心拍数分析窓内の複数のHR測定値の平均値、中央値、最頻値または他の中心傾向を使用してrHRを計算することができる。例えば、HR測定値の最頻値は、複数のHR測定値において最も頻繁に生じるHR値を示すことができる。rHRは、代替的には、HR測定値の特定のパーセンタイルとして計算してもよく、これは、そのパーセンタイルと同じくらいの大きさの度数分布におけるHR測定値の特定のパーセンテージ(X%)を示す。例においては、度数分布は、心拍数分析窓内のHR測定値から計算されるHRヒストグラムを含み、X%はおよそ25%~75%である。心拍数分析窓のサイズは、心拍の回数もしくはCLまたは期間によって表すことができる。例においては、心拍数分析窓は、およそ2分~5分のサイズを有する。心拍数分析窓はプログラミング可能とすることができる。ユーザは、ユーザインターフェースユニット250を介するなどして心拍数分析窓を調整することができる。
【0051】
HR分布の中心傾向またはパーセンタイルなどの統計的測定は、心拍感知に対するノイズ、干渉、過剰感知または感知不全の影響を低減することができる。これは、HR検出における心室への心房刺激の間欠的な伝導の影響も低減することができる。そのように計算されるrHRは、心房頻脈性不整脈中のHRのよりロバストな推定値である。
【0052】
不整脈検出器回路230は、代表的HRの計算器回路224に結合されて、代表的HRから求められる心室心拍数統計値に基づいて、心房頻脈性不整脈(AT)を検出することができる。ATの例としては、とりわけ、心房細動(AF)、心房粗動(AFL)、心房性頻拍、発作性上室性頻拍(PSVT:paroxysmal supraventricular tachycardia)、ウォルフ・パーキンソン・ホワイト(WPW:Wolff‐Parkinson‐White)症候群が挙げられる。不整脈検出器回路230は、初期AT検出器232、タイマ/カウンタ回路234および持続性AT検出器236を含むことができる。初期AT検出器232は、第1の複数の心拍数分析窓内で判定される複数のrHRを使用して、第1の心室心拍数統計値を生成するように構成されている。第1の心室心拍数統計値は、心拍数しきい値HRT1を超える、第1の複数の心拍数分析窓内のrHRの(割合またはパーセンテージなどの)第1の相対数を含むことができる。そのような第1の心室心拍数統計値は、「Y個のうちのX個」(X/Y)統計値によって示すことができ、対応するY個の心拍数分析窓から計算されるY個の代表的な心室心拍数{rHR,rHR,…,rHR}のうち、合計でX個のrHRが、しきい値HRT1を超える「速い」心拍数であることを示す。YおよびHRT1の値は、予め決めることができるかまたはユーザがプログラミング可能である。例においては、Yは、10~20の値をとることができ、HRT1は、150bpm~180bpmの値をとることができる。
【0053】
タイマ/カウンタ回路234は、特定の回数の心拍もしくはCLまたは特定の期間によって表すことができるAT持続時間DATにプリセットまたはプログラミングすることができる。タイマ/カウンタ回路234は、心拍数の上昇を示す第1の条件を第1の心室心拍数統計値が満足するときに、初期レート検出から経過した時間または検出された心拍もしくはCLを数えることができる。第1の条件は、本明細書において以下では「エントリー条件」とも称され、持続性AT検出にエントリーするための条件を示す。例においては、タイマ/カウンタ回路234は、10個のうち少なくとも8個(8/10)のrHRが(心拍数しきい値HRT1を超えるなど)「速い」と判定されることに応答して開始することができる。すなわち、エントリー条件は、X/Y≧8/10である。タイマ/カウンタ回路234は、開始すると、DATの終了に向かって経過するかまたはカウントダウンすることができる。タイマ/カウンタ回路234は、持続時間DATが満了して持続性ATイベントが検出されるか、または、DATの満了前に「エグジット条件」が満足されて持続性ATイベントが検出されない場合に、リセットされることができる。
【0054】
初期AT検出器232およびタイマ/カウンタ回路234に結合されている持続性AT検出器236は、AT持続時間DAT中にrHRをモニタリングして、1つまたは複数の第2の心室心拍数統計値を生成するように構成することができる。1つまたは複数の第2の心室心拍数統計値はそれぞれ、第2の複数の心拍数分析窓内で判定される複数の代表的な心室心拍数(rHR)から生成することができる。第2の心室心拍数統計値は、心拍数しきい値HRT2を超える、第2の複数の心拍数分析窓内のrHRの(割合またはパーセンテージなどの)第2の相対数を含むことができる。このように求められる第2の心室心拍数統計値は、「N個のうちM個」(M/N)統計値として示され、対応するN個の心拍数分析窓から計算されるN個の代表的な心室心拍数{rHR,rHR2,…,rHR}のうち、合計でM個のrHRが、しきい値HRT2を超える「速い」心拍数であることを示す。NおよびHRT2の値は、それぞれ、予め決めることができるかまたはユーザがプログラミング可能である。例においては、Nは、10~20の値をとることができ、HRT2は、100bpm~160bpmの値をとることができる。
【0055】
初期レート検出のための検出パラメータ(YおよびHRT1など)、ならびに、持続性AT検出のための検出パラメータ(NおよびHRT2など)は、独立してプログラミングすることができる。例においては、第1の心室心拍数統計値および第2の心室心拍数統計値は、10個の連続的な心拍数分析窓からそれぞれ計算される10個のrHRから計算され、すなわち、Y=N=10である。心拍数しきい値HRT2は、HRT1と同一であってもよい。特定の例では、HRT1=HRT2=150bpmである。代替的には、HRT2およびHRT1は、異なる値にプログラミングすることができる。例においては、HRT1=180bpmであり、HRT2=150bpmである。
【0056】
持続性AT検出器236は、持続時間DATにわたって第2の条件を満足する1つまたは複数の第2の心室心拍数統計値に応答して持続性ATエピソードを検出するように構成することができる。例においては、第2の心室心拍数統計値は、上記のような「N個のうちM個」(M/N)統計値であり、第2の条件は、DATにわたって任意の10個の連続的な心拍数分析窓から判定される10個のうち少なくとも6個(6/10)のrHRが、心拍数しきい値HRT2を超えること、すなわち、M/N≧6/10とすることができる。例においては、本明細書において以下では「窓セット」と称される、10個の連続的な心拍数分析窓の移動セットを、持続時間DATにわたって検査することができる。結果として生じる複数の窓セットは、互いに重なっていてもよいし、または重なっていなくてもよい。M/N統計値は、各窓セットから求めることができ、DAT中に傾向が示される。持続性ATエピソードは、DAT中のすべての窓セットに対応するM/N統計値が、M/N≧6/10という第2の条件を満足する場合に検出される。DAT中の少なくとも1つの窓セットに対応するM/N統計値がM/N≧6/10という第2の条件を満足しない場合、持続性ATは検出されず、タイマ/カウンタ回路234は、持続時間タイマをリセットすることができる。持続性AT検出のセッションを開始するために持続性AT検出器236をトリガする「エントリー条件」を規定するX/Y≧8/10と比較して、M/N<6/10は、持続性AT検出のセッションを終了するために持続性AT検出器236をトリガする「エグジット条件」を規定する。持続性AT検出のための移動窓セットの例を、図4を参照するなどして以下で説明する。
【0057】
いくつかの例においては、第2の心室心拍数統計値は、付加的にまたは代替的に、rHRの心拍数安定性を含むことができる。心拍数安定性は、ATに対する心室の反応の変動性または規則性の程度を示し、第2の複数の心拍数分析窓から計算されるrHRを使用して求めることができる。心拍数安定性の例は、差、分散、標準偏差、または、周期長もしくは心拍数の変動性を特徴付ける他のより高次の統計値を含むことができる。例においては、心拍数安定性は、心拍数分析窓から計算される複数のrHRのヒストグラムを使用して計算することができる。別の例では、心拍数安定性は、rHRのローレンツプロット(LP:Lorenz plot)から導出することができる。LPは、以前の1つまたは複数の周期長(CL)またはHRに応じた現在のHRまたはCLの散布図である。LPベースの安定性は、とりわけ、LP形状の最大長、LP形状の最大幅、LP散布図の密度または広がり具合の尺度といった、CLまたはHRのLPから生成される幾何学的なインデックスを含むことができる。
【0058】
心拍数安定性は、AT持続時間DAT中に傾向を示されることができる。心拍数安定性は、M/N統計値を計算するために使用されるN個の代表的な心室心拍数{rHR,rHR,…,rHR}からそれぞれ成る複数の窓セットから計算することができる。持続性AT検出器236は、心拍数安定性の傾向を使用して、DAT中にすべての窓セットから計算される心拍数安定性が安定性しきい値を超えるときまたは特定の範囲内に入るときといったATイベントを検出するように構成することができる。持続性AT検出器236は、代替的には、M/N統計値および心拍数安定性の測定値の双方を使用してATイベントを検出することができる。例においては、ATイベントは、(1)DAT中のすべての窓セットに対応するM/N統計値がM/N≧6/10を満足し、(2)DAT中のすべての窓セットから計算される心拍数安定性が安定性しきい値を超えるかまたは特定の範囲内に入る場合に、検出される。M/N統計値または心拍数安定性がそれらのそれぞれの条件を満足しない場合、持続性ATは検出されず、タイマ/カウンタ回路234は、持続時間タイマをリセットすることができる。
【0059】
とりわけ、初期レート検出のための心拍数しきい値HRT1、持続性AT検出のための心拍数しきい値HRT2、心拍数安定性しきい値またはAT持続時間DATなどの検出パラメータのうちの1つまたは複数を、検出されるべきATイベントのタイプに従って独立してプログラミングすることができる。例えば、AFは、典型的なAFLにおける心拍数および心拍数安定性とは異なる平均的な心拍数および心拍数安定性を含む、独特の心室の反応パターンを有することができる。より速くてより不規則的な心拍数を伴うAFまたは速いAFLは、心臓の出力を減らす可能性があり、患者の血行動態の安定性をより著しく悪化させ、したがって、早期の検出、および、直ちに治療するための医師へのアラートを必要とする可能性がある。これに反して、より遅くてより規則的な、またはより遅いかより規則的な心拍数を伴うAFLは、実質的な血行動態の擾乱を引き起こす可能性がより低い場合があり、洞調律または洞性頻脈などの非ATイベントの偽陽性検出を回避するために、より長いモニタリングセッションが有益であり得る。したがって、(DAFLによって示される)AFLイベントを検出するための持続時間は、(DAFによって示される)AFイベントを検出するための持続時間よりも実質的により長くすることができる。DAFなどの、AFを検出するための期間は、数秒または数分のオーダーとすることができる。DAFLなどの、AFLを検出するための期間は、数時間のオーダーとすることができる。例においては、限定するものではなく例として、DAFLは、4時間~8時間の間でプログラミング可能であり、DAFは、2分~10分の間でプログラミング可能である。
【0060】
検出パラメータは、心房頻脈性不整脈中の房室(AV)ブロックの程度に従ってプログラミングすることもできる。例えば、AFL中に2:1のAVブロックが生じる可能性があり、結果として、心房レートのおよそ半分の規則的な心室レートとなる。3:1、4:1または5:1のAVブロックなどの他の一定の比率も存在する場合がある。一定の比率のAVブロックに加えて、AVブロックは、拍動ごとに変わる可能性があり、不規則的な心室調律を引き起こす。したがって、AVブロックの程度は、心拍数および心拍数安定性を含む心室の反応に影響を与える。心拍数および心拍数安定性は、典型的な(I型)AFLと非典型的な(II型)AFLとの間でも異なる可能性がある。検出持続時間などの検出パラメータは、異なるタイプのAFLイベントを検出するために異なる値にプログラミングすることができる。
【0061】
いくつかの例においては、不整脈検出器回路230は、とりわけ、AF、速いAFL、遅いAFL、I型AFL、II型AFLまたは心房性頻脈などの、2つ以上のタイプのATイベントを検出するように構成することができる。2つ以上のタイプのATイベントは、それらのそれぞれの検出ゾーンにおいて同時かつ独立して検出することができる。各ゾーンは、心拍数のしきい値または心拍数の範囲によって規定することができる。例えば、マルチゾーンAT検出は、100bpm~160bpmの心拍数の範囲によって規定することができる遅いAFLゾーンを含むことができ、速いAFL(fAFL)ゾーンは、160bpmを上回る心拍数によって規定することができる。代替的には、ゾーンは、心拍数安定性のしきい値または範囲によって規定することができる。各ゾーンは、特定のタイプのATイベントを検出するためにそれぞれの検出基準を含むことができる。2つ以上のタイプのATイベントを検出するためにマルチゾーンAT検出をプログラミングする例を、図5を参照するなどして以下で説明する。
【0062】
図2において示されているように、心拍数検出器回路220または不整脈検出器回路230は、1つまたは複数の他の回路またはサブ回路を備える回路セットをそれぞれ含むことができる。回路またはサブ回路は、単独でまたは組み合わせて、本明細書において記載される機能、方法または技法を行うことができる。例においては、回路セットのハードウェアは、特定の動作を実施するようにイミュータブルに設計することができる(例えば、ハードワイヤード)。例においては、回路セットのハードウェアは、特定の動作の命令をエンコードするために物理的に変更された(例えば、磁気的な変更、電気的な変更、不変質量粒子の可動配置など)コンピュータ可読媒体を含む、可変的に接続された物理的構成要素(例えば、実行ユニット、トランジスタ、単純回路など)を含むことができる。物理的構成要素を接続する際に、ハードウェア要素の基本的な電気的特性は、例えば、絶縁体から導体に、またはその逆に変化させられる。命令は、埋め込まれたハードウェア(例えば、実行ユニットまたはローディング機構)が、動作時に特定の動作の部分を実施するように、可変接続を介して、回路セットのメンバをハードウェア的に生成することを可能にする。したがって、コンピュータ可読媒体は、デバイスが動作しているときに、回路セットのメンバの他の構成要素に通信可能に結合される。例においては、物理的構成要素のいずれも、2つ以上の回路セットの2つ以上のメンバにおいて使用することができる。例えば、動作中、実行ユニットは、1つの時点においては第1の回路セットの第1の回路において使用されることができ、異なる時間においては、第1の回路セット内の第2の回路によって、または、第2の回路セット内の第3の回路によって再使用される。
【0063】
種々の例において、心拍数検出器回路220または不整脈検出器回路230は、マイクロプロセッサ回路の一部として実施することができる。マイクロプロセッサ回路は、デジタル信号プロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC:application specific integrated circui)、マイクロプロセッサ、または、センサ回路210から受信した生理学的信号を含む情報を処理するための他のタイプのプロセッサなどの、専用のプロセッサとすることができる。代替的には、マイクロプロセッサ回路は、本明細書において記載される機能、方法または技法を行う命令のセットを受信して実行することができる汎用プロセッサとすることができる。
【0064】
コントローラ回路240は、センサ回路210、心拍数検出器回路220、不整脈検出器回路230、ユーザインターフェースユニット250の動作、ならびに、これらの構成要素間のデータおよび命令の流れを制御する。例えば、コントローラ回路240は、rHRの判定、初期レートの検出および持続性不整脈の検出を制御することができる。ユーザインターフェースユニット250は、入力ユニット251および出力ユニット252を含むことができる。例においては、ユーザインターフェースユニット250の少なくとも一部は、外部システム130において実施することができる。入力ユニット251は、とりわけ、心拍数しきい値HRT1およびHRT2、心拍数安定性のしきい値およびAT持続時間DATを含む、初期のおよび持続性不整脈の検出のためのパラメータなどの、ユーザのプログラミング入力を受信することができる。いくつかの例においては、入力ユニット251は、ユーザが、AFゾーン、速いAFL(fAFL:fast AFL)ゾーン、遅いAFLゾーン、心房性頻脈ゾーンなどといった複数の検出ゾーンをプログラミングすることを可能にすることができる。入力ユニット251は、キーボード、オンスクリーンキーボード、マウス、トラックボール、タッチパッド、タッチスクリーンまたは他のポインティングもしくはナビゲーティングデバイスなどの、入力デバイスを含むことができる。入力デバイスは、とりわけ、生理学的信号を感知し、不整脈を検出し、アラートを生成するために使用されるパラメータを、システムのユーザがプログラミングすることを可能にすることができる。
【0065】
出力ユニット252は、心房頻脈性不整脈の検出のうちの1つまたは複数を含む情報の、人間が知覚可能な提示を生成することができる。出力ユニット252は、とりわけ、感知された生理学的信号、第1の心室心拍数統計値および第2の心室心拍数統計値(例えば、X/Y統計値、M/N統計値、M/N統計値の傾向もしくはAT持続時間DAT中の心拍数安定性の傾向)などの中間の測定値または計算値、検出されるATのタイプ(とりわけ、速いAT、遅いAT、AFまたは心房性頻脈など)、持続性ATの時間を示すAT負荷などを表示するためのディスプレイを含むことができる。出力ユニット252は、検出情報のハードコピーを印刷するためのプリンタを含むことができる。情報は、表、チャート、図、または、任意の他のタイプのテキスト、表もしくはグラフィカル提示フォーマットで提示することができる。出力情報の提示は、検出された不整脈イベントについてシステムのユーザにアラートを出すための、オーディオまたは他のメディアフォーマットを含むことができる。例においては、出力ユニット252は、検出された不整脈イベントについてシステムのユーザに知らせるために、アラート、アラーム、緊急呼び出し、または、他の形態の警告を生成することができる。
【0066】
出力ユニット252は、検出持続時間DATなどの、1つまたは複数の不整脈検出パラメータを調整するためのプログラミング推奨を出力することができる。例においては、持続性AT検出器236は、およそ5時間~8時間の検出持続時間DAFLを使用して持続性AFLイベントを検出することができる。典型的なAFLイベントは、許容可能な身体活動中の心拍数の上昇を伴う洞調律(例えば、洞性頻脈)など、他の交絡するリズムよりも実質的に長い間続く可能性がある。AFLイベントは、少なくともDAFLほど持続するか、または、さらにはDAFLよりも長く続く場合があり、一方で、交絡する高いレートの洞調律は概して、持続時間DAFLにわたって持続しない。したがって、より長い初期の検出持続時間DAFLは、AFL検出における誤ったアラームの割合を下げるのを助け、したがって、より高い検出の特異度を達成することができる。しかし、長い持続時間DAFLは、より短い持続時間(例えば、DAFLよりも短い)を有するいくつかのAFLイベントの誤検出を生じさせる可能性があり、AFL検出に対する検出感度を潜在的に損なう。感度に対するこの影響を軽減するために、持続時間タイマの満了時に不整脈検出器回路230が持続性ATイベントを検出すると、出力ユニット252は、DAFLを、2時間~5時間の値といったより短い持続時間に調整する推奨など、検出持続時間DAFLを短縮するか、または、DAFLを特定の量だけ短縮するための推奨を生成して、ユーザに提示することができる。出力ユニット252は、システムのユーザ(医師など)が、検出されたAFLイベントを検討して判断し、再プログラミングするか、または、任意選択的に1つまたは複数の他のパラメータとともに、所定のリストから持続時間DAFLを選択することを可能にするように構成することができる。より短い持続時間DAFLは、AFL検出の感度、および、心房頻脈性不整脈の負荷(例えば、不整脈において経過する時間)の推定を改善することができ、検出の特異度を維持することができるか、または、検出の特異度を実質的に構成しない。
【0067】
任意選択的な治療回路260は、ATイベントの検出に応答して患者に治療を施すように構成することができる。療法の例としては、心臓、神経組織、他のターゲット組織に施される電気刺激療法、電気的除細動療法、除細動療法、または、組織もしくは器官に薬物を送達することを含む薬物療法が挙げられる。いくつかの例においては、治療回路260は、刺激パラメータまたは薬物用量を調整するなど、既存の療法を変更してもよい。
【0068】
図3は、不整脈検出中の動作状態の状態機械300の図、および、これらの状態間の遷移を概略的に示している。状態機械300は、心拍数検出器回路220および不整脈検出器回路230などの、システム200の部分において実施されるとともにシステム200の部分によって実行されることができる。代替的には、状態機械300は、メモリに格納されるコンピュータプログラムとして実施され、感知された生理学的信号を処理して不整脈検出の出力を生成するマイクロプロセッサによって実行されることができる。限定するものではなく例として、状態機械300は、洞調律モニタ状態310、および、高レートモニタ状態322と持続性不整脈状態324とを含むことができる心房頻脈性不整脈(AT)モニタ状態320を含むことができる。
【0069】
洞調律モニタ状態310は、正常な洞調律の状態などの、上昇していない心拍数における心臓モニタリングの状態を表す。状態310における心臓モニタリングは、心拍数または脈拍数についての情報を含む生理学的信号を感知するためのセンサ回路210を介して、および、代表的な心室心拍数(rHR)を感知するとともに、X/Y統計値などの第1の心室心拍数統計値を生成するための心拍数検出器回路220を介して行うことができる。高レートモニタ状態322への遷移331は、頻脈性不整脈になりやすい心拍数上昇を示す第1の条件を第1の心室心拍数統計値が満足するときに生じる。例においては、状態の遷移331は、rHRのかなりの部分が心拍数しきい値HRT1を超えることを示す「エントリー条件」(X/Y≧8/10など)をX/Y統計値が満足すると、トリガされる。
【0070】
高レートモニタ状態322は、上昇した心拍数における心臓モニタリングの状態を表す。状態322における心臓モニタリングは、不整脈検出器回路230を介して行うことができ、この場合、特定の持続時間DATにわたってrHRがモニタリングされる。M/N統計値または心拍数安定性の測定値のうちの1つまたは複数などの、1つまたは複数の第2の心室心拍数統計値が、持続時間DATの間に生成されて傾向を示されることができる。1つまたは複数の第2の心室心拍数統計値が、持続時間DATにわたってそれぞれの第2の条件を満足するときに、持続性不整脈状態324への遷移332が生じる。例においては、状態の遷移332は、持続時間DAT中のすべての窓セットに対応するM/N統計値が、M/N≧6/10を満足し、持続時間DAT中のすべての窓セットから計算される心拍数安定性の測定値が、安定性しきい値を超えるかまたは特定の範囲内に入ると、トリガされる。高レートモニタ状態322において、1つまたは複数の第2の心室心拍数統計値が持続時間DATにわたってそれらのそれぞれの第2の条件を満足しない場合、洞調律モニタ状態310に戻る遷移333が生じ、持続性ATは検出されないものとみなされる。例においては、窓セットにおけるrHRの不十分な部分が、DATの満了前に、心拍数しきい値HRT2を超えることを示す「エグジット条件」(X/Y<6/10など)をM/N統計値が満足する場合に、状態の遷移333がトリガされる。
【0071】
持続性不整脈状態324は、持続性心房頻脈性不整脈の状態を表す。検出の結果は、医師などのユーザに、または、マイクロプロセッサにおいて実行可能なコンピュータプログラムのインスタンスなどのプロセスに出力することができる。例においては、プロセスは、抗不整脈治療の推奨、または、さらなる診断テストもしくは治療の推奨の、コンピュータが実行する生成を含むことができる。
【0072】
図4は、持続性AT検出のための移動する窓セットの例のグラフ400を示している。生理学的信号401は、脈動する心臓の電気的または機械的な活動についての情報を含むことができる。心拍数は、例えば心拍感知回路222を介して検出することができる。複数の心拍数分析窓410A、410B、…、から成る窓セット410を、生理学的信号401に適用することができ、代表的な心室心拍数(rHR)を、心拍数分析窓のそれぞれにおいて計算することができる。例においては、窓セット410は、Y個の連続的な心拍数分析窓から成ることができる。それぞれの心拍数分析窓は、特定の回数の心拍もしくはCLまたは特定の期間によって表される特定のサイズを有することができる。例においては、心拍数分析窓は、およそ2分~5分のサイズを有する。rHRはそれぞれ、それらのそれぞれの心拍数分析窓内の心拍数測定値の最頻値または別の中心傾向として計算することができる。図2図3を参照して上記で説明したX/Y統計値などの第1の心室心拍数統計値は、窓セット410におけるY個の連続的な心拍数分析窓に対応するrHRから生成することができる。
【0073】
窓セット410から計算されるrHRのかなりの(例えば、8/10)部分が心拍数しきい値HRTを超えることを示す「エントリー条件」をX/Y統計値が満足すると、初期レート検出が宣言され、時点431においてAT持続時間タイマを開始することができる。AT持続時間(DAT)430は、特定の値にプログラミングすることができる。複数の心拍数分析窓421A、421B、…、から成る窓セット421を確立することができる。心拍数分析窓のそれぞれにおいて、対応する心拍数分析窓内の心拍数測定値の最頻値または別の中心傾向を使用するなどして、それぞれの代表的な心室心拍数rHRを計算することができる。第2の心室心拍数統計値を、窓セット421に対応するrHRから求めることができる。例においては、窓セット421は、N個の連続的な心拍数分析窓から成ることができ、第2の心室心拍数統計値は、窓セット421におけるN個の連続的な心拍数分析窓からrHRを使用して計算されるM/N統計値または心拍数安定性を含むことができる。第2の心室心拍数統計値が、第2の条件(M/N≧6/10など)を満足するか、および/または、心拍数安定性が安定性しきい値を超えるかもしくは特定の範囲内に入ると、窓セット421を、特定の時間または特定の回数の心拍だけシフトさせて、別の窓セット422を形成することができる。窓セット421および422は、特定の期間、特定の回数の心拍または特定の数の心拍数分析窓だけ重なることができる。図4において示されているような例においては、窓セット421は、1つの心拍数分析窓だけシフトされ、窓セット422を形成することができる。第2の心室心拍数統計値を、窓セット422におけるN個の連続的な心拍数分析窓に対応するrHRから同様に求めることができる。移動する窓セットを、432における持続時間DATの終わりに達するまで、そのように確立することができる。(1)DAT中のすべての窓セットに対応するM/N統計値がM/N≧6/10を満足し、(2)DAT中のすべての窓セットから計算される心拍数安定性が安定性しきい値を超えるかまたは特定の範囲内に入る場合など、DAT内の、結果として生じるすべての窓セット421、422、423、…から計算される第2の心室心拍数統計値が第2の条件を満足する場合には、432において持続性ATイベントを検出することができる。しかし、M/N統計値または心拍数安定性のいずれかがそれらのそれぞれの条件を満足しない場合など、窓セット421、422、423、…のうちのいずれか1つに対応する第2の心室心拍数統計値がそれぞれの第2の条件を満足しない場合には、持続性ATは検出されない。
【0074】
図5は、マルチゾーン心房頻脈性不整脈の検出の例のグラフ500を示している。限定するものではなく例として、速いAFL(fAFL)ゾーンとAFLゾーンとを含む2ゾーン検出が示されている。各ゾーンは、特定のタイプのATイベントを検出するための基準を規定している。図5において示されているような例では、AFLゾーンとfAFLゾーンとにおける不整脈検出は、図4を参照して説明したように、窓セット410を使用する初期レート検出を共有する。第1の統計値が、窓セット410から計算されるrHRのかなりの部分が心拍数しきい値HRT1を超えることを示す場合、511において、AFLゾーンとfAFLゾーンとにおける持続性調律検出を開始し、同時にかつ独立して進めることができる。いくつかの例(図示せず)においては、1つのゾーン(例えば、fAFLゾーン)における初期レート検出は、別のゾーン(例えば、AFLゾーン)における初期レート検出とは別個の独立したものであり得る。例えば、各ゾーンは、ゾーン固有の窓セット410、ゾーン固有の心拍数しきい値HRT1またはゾーン固有の「エントリー条件」を使用した初期レート検出を伴うことができる。
【0075】
複数のゾーンのそれぞれは、特定のタイプのATイベントを検出するためのそれぞれの検出基準を規定することができる。HRT2および持続時間DATなどの検出パラメータを、各ゾーンについて独立してプログラミングすることができる。fAFLゾーンは、より低い心拍数しきい値(HRAFL)とより長い持続時間520(DAFL)とを有するAFLゾーンよりも高いプログラミングされた心拍数しきい値(HRfAFL)と短い持続時間510(DfAFL)とを有することができる。例においては、fAFLゾーンは、HRfAFL=160bpmおよびDfAFL=2時間にプログラミングすることができ、AFLゾーンは、HRAFL=100bpmおよびDAFL=8時間にプログラミングすることができる。図4において示されているような移動する窓セットを、各ゾーンにおける不整脈検出に使用することができる。例においては、DAFL内の窓セットのうちの1つまたは複数におけるような、1つまたは複数の窓セットを、AFL検出およびfAFL検出の双方において使用することができる。各窓セットからの心拍数分析窓から生成される代表的な心室心拍数を、心拍数しきい値HRAFLと比較して、AFLゾーンのM/N統計値(M/NAFL)を判定することができる。同じ代表的な心室心拍数を、心拍数しきい値HRfAFLと比較して、fAFLゾーンのM/N統計値(M/NfAFL)を判定することができる。心拍数しきい値HRfAFLは心拍数しきい値HRAFLよりも大きいため、fAFLゾーンにおいて条件M/NfAFL≧6/10を満足するM/NfAFL統計値は、AFLゾーンにおける条件M/NAFL≧6/10も満足することができる。したがって、より高いレートのfAFLゾーンにおいて費やされる時間は、より低いレートのAFLゾーンにおける時間に反映されることができる。M/NfAFL統計値が持続時間510にわたって特定の条件(例えば、M/NfAFL≧6/10)を満足する場合、512においてfAFLイベントが検出される。AFL持続時間タイマは512では満了せず、AFLゾーンにおける持続性不整脈の検出は、522におけるAFL持続時間タイマの満了まで、時間512を超えて継続することができる。すなわち、fAFLの検出は、より低いレートのAFLゾーンにおいて進行中の検出を、自動的には停止しない。代替的には、AFLゾーンにおける検出は、512におけるfAFLの検出に応答して終了することができる。
【0076】
付加的にまたは代替的には、M/NfAFL統計値が、512におけるfAFL持続時間タイマの満了前に、M/NfAFL<6/10などの「エグジット条件」を満足する場合、心拍数の評価および不整脈検出は、522におけるAFL持続時間タイマの満了まで、より低いレートのAFLゾーンにおいて継続してもよい。すなわち、fAFLの非検出は、より低いレートのAFLゾーンにおける進行中の検出を、自動的には停止しない。fAFLゾーンおよびAFLゾーンのそれぞれにおける検出または非検出は、ユーザにAFLまたはfAFLの検出を警告するためなどに、出力ユニット252を介するなどして、ユーザまたはプロセスに、独立して出力することができる。検出されたAFLまたはfAFLエピソードは、さらなる処理のために、遠隔患者管理システムなどの外部システムに転送することができる。例においては、検出された不整脈は、AFL、fAFLまたはAFLおよびfAFLの双方として表記され、ディスプレイにおいて、または不整脈レポートのハードコピーにおいて提示されることができる。
【0077】
本文書において説明されるようなマルチゾーン検出および各ゾーンの検出レポートは、不整脈レート、不整脈負荷、および、不整脈進行の一時的プロファイルの特徴付けを含む、改善された不整脈診断を提供することができる。1つの例においては、AFLゾーンにおける検出を伴うfAFLゾーンにおける非検出は、平均して、AFLゾーンとfAFLゾーンとについての心拍数しきい値であるHRAFLとHRfAFLとの間にあるものとすることができる不整脈レートを示すことができる。別の例においては、AFLゾーンにおける非検出を伴うfAFLゾーンにおける検出は、HRfAFLでのまたはHRfAFLを上回るより高いレートでATエピソードが開始し、持続時間DfAFLにわたって持続し、次に遅くなり、最終的には、522におけるAFL持続時間タイマの満了前に、ある時点でHRAFLを下回ることを示すことができる。改善された不整脈の特徴付けを、医師が使用し、個別化された診断テストおよび適切な治療レジメンを決定することができる。
【0078】
マルチゾーン検出は、付加的に、第3のAFゾーンを含むことができる。AFゾーンにおけるAFイベントの検出は、図4において示されているような移動する窓セットを使用する初期レート検出と持続性AF検出とを含むことができる。AFは通常、患者の血行動態安定性を損なう可能性がある速くて規則的な心拍数を伴うため、AFゾーンは、AFLゾーン検出DAFLよりも短い持続時間DAFによってプログラミングすることができる。例においては、DAF=2分である。いくつかの例においては、AFイベントは、上記で説明したようなM/N統計値などの心拍数の代わりにまたはこれに加えて、心拍数安定性に基づいて検出することができる。
【0079】
図6は、患者から心臓不整脈を検出するための方法600の例を概略的に示している。心臓不整脈の例としては、とりわけ、心房細動(AF)、心房粗動(AFL)、心房性頻拍、発作性上室性頻拍(PSVT)、ウォルフ・パーキンソン・ホワイト(WPW)症候群、心室性頻拍、心室細動、除脈または洞停止が挙げられる。方法600は、植え込み型もしくは装着型医療デバイスなどの携帯型医療デバイス、または、遠隔患者管理システムにおいて実施および実行することができる。例においては、方法600は、AMD110内の心臓不整脈検出回路160、外部システム130または不整脈検出システム200によって実施および実行することができる。
【0080】
方法600は610において開始し、ここで、患者から生理学的信号を感知することができる。生理学的信号は、心電図(ECG)または心内電位図(EGM)などの心臓の電気信号を含むことができる。生理学的信号としては、付加的にまたは代替的に、とりわけ、胸郭または心臓インピーダンス信号、動脈圧信号、肺動脈圧信号、左心房圧信号、RV圧信号、LV冠状動脈圧信号、心音または心内膜加速度信号、活動に対する生理学的反応、無呼吸低呼吸指数、呼吸速度信号または1回換気量信号などの1つまたは複数の呼吸信号を含む、心臓の機械的活動を示す信号が挙げられる。感知された生理学的信号は、信号増幅、デジタル化、フィルタリングまたは他の信号調整操作のうちの1つまたは複数を含め、前処理することができる。心拍を示す複数の電気生理学的なまたは機械生理学的なイベントを、前処理された生理学的信号から検出することができる。いくつかの例においては、鼓動に関連するタイミングパラメータ、または、統計的もしくは形態学的パラメータなどの信号メトリクスを、感知された生理学的信号から検出することができる。
【0081】
620において、初期AT検出器232を介するなどして、不整脈の初期レート検出を実行することができる。心拍感知回路222を介して心臓周期長(CL)を測定することなどによって、感知された生理学的信号から心拍を感知することができる。心拍数(HR:heart rate)は、測定されたCLから計算することができる。620における初期AT検出は、622における、感知された電気生理学的または機械生理学的信号の第1の複数の心拍数分析窓内で代表的な心室心拍数(rHR)を判定することを含むことができる。rHRは、平均値、中央値、最頻値、または、それぞれの心拍数分析窓内の複数のHR測定値の他の中心傾向として計算することができる。例においては、心拍数分析窓に対応するrHRは、複数のHR測定値のうち最も頻繁に生じるHR値を示す、HR測定値の最頻値として計算することができる。rHRは、代替的には、HR測定値の特定のパーセンタイルとして計算してもよく、これは、そのパーセンタイルと同じくらいの大きさの度数分布(HRヒストグラムなど)における複数のHR測定値のパーセンテージを示す。心拍数分析窓は、心拍の回数もしくはCLまたは期間によって表されるような特定のサイズを有することができる。例においては、心拍数分析窓はおよそ2分~5分である。心拍数分析窓はプログラミング可能とすることができる。
【0082】
第1の心室心拍数統計値を、624において、第1の複数の心拍数分析窓内で判定される複数のrHRを使用して生成することができる。第1の心室心拍数統計値は、心拍数しきい値HRT1を超える、第1の複数の心拍数分析窓内のrHRの(割合またはパーセンテージなどの)第1の相対数を含むことができる。例においては、第1の心室心拍数統計値は、対応するY個の心拍数分析窓から計算されるY個の代表的な心室心拍数{rHR,rHR,…,rHR}を示す、「Y個のうちのX個」(X/Y)統計値を含むことができ、X個のrHRは、しきい値HRT1を超える「速い」心拍数である。例として、Yは、10~20の値とすることができ、HRT1は150bpm~180bpmの値をとることができる。
【0083】
初期レート検出中に第1の心室心拍数統計値が第1の「エントリー条件」を満足する場合、630において持続性AT検出を開始することができる。「エントリー条件」は、持続性AT検出プロセスに入るために満たされなければならない基準を示している。例においては、「エントリー条件」は、10個の連続的な心拍数分析窓から、10個のうち少なくとも8個のrHRが心拍数しきい値HRT1を超えることを含むことができる。すなわち、X/Y≧8/10である。エントリー条件は、タイマ/カウンタ回路234を介するなどして、特定の持続時間DATで持続時間タイマのカウントダウンまたは経過をトリガすることもできる。
【0084】
630における持続性AT検出は、632において第2の複数の心拍数分析窓内でrHRを判定すること、および、634において複数のrHRから1つまたは複数の第2の心室心拍数統計値を生成することを含むことができる。例においては、第2の心室心拍数統計値は、心拍数しきい値HRT2を超える、第2の複数の心拍数分析窓内のrHRの(割合またはパーセンテージなどの)第2の相対数を含むことができる。例においては、第2の心室心拍数統計値は、「N個のうちM個」(M/N)統計値を含むことができ、対応するN個の心拍数分析窓から計算されるN個の代表的な心室心拍数{rHR,rHR,…,rHR}のうち、M個のrHRが、しきい値HRT2を超える「速い」心拍数であることを示す。初期レート検出中の「X/Y」統計値と同様に、「M/N」統計値において、NおよびHRT2の値は、予め決めることができるかまたはユーザがプログラミング可能である。例として、Nは10~20の値とすることができ、HRT2は100bpm~160bpmの値をとることができる。持続性AT検出のための心拍数しきい値HRT2は、初期レート検出のための心拍数しきい値HRT1と同一であってもよい。代替的には、HRT2およびHRT1は、互いに異なる値に独立してプログラミングすることができる。例においては、HRT1=HRT2=150bpmである。別の例においては、HRT1=180bpm、HRT2=150bpmである。
【0085】
640において、持続時間DATにわたって第2の条件を満足する1つまたは複数の第2の心室心拍数統計値に応答してATイベントを検出することができる。例においては、第2の条件は、DATにわたって任意の10個の連続的な心拍数分析窓から判定される10個のうち少なくとも6個の(6/10)rHRが、心拍数しきい値HRT2を超えることとすることができる。例においては、10個の連続的な心拍数分析窓の移動する窓セットを、持続時間DATにわたって検査することができる。窓セットは、互いに重なっていてもよいし、または重なっていなくてもよい。M/N統計値は、各窓セットから求めることができ、DAT中に傾向が示される。持続性ATエピソードは、DAT中のすべての窓セットに対応するM/N統計値が、M/N≧6/10という第2の条件を満足する場合に検出される。DAT中の少なくとも1つの窓セットに対応するM/N統計値がM/N≧6/10という第2の条件を満足しないか、または、M/N<6/10という「エグジット条件」が満足される場合、持続性ATは検出されず、タイマ/カウンタ回路234をリセットすることができる。
【0086】
いくつかの例においては、634における第2の心室心拍数統計値は、付加的にまたは代替的に、第2の複数の心拍数分析窓から計算されるような、rHRの心拍数安定性を含むことができる。心拍数安定性の例は、差、分散、標準偏差、または、周期長もしくは心拍数の変動性または規則性の程度を示す他のより高次の統計値を含むことができる。心拍数安定性は、M/N統計値を計算するために使用されるN個の代表的な心室心拍数{rHR,rHR,…,rHR}からそれぞれ成る複数の窓セットから計算することができる。結果として生じる心拍数安定性の測定値は、DAT中に傾向を示されることができる。640において、心拍数安定性の傾向を使用して、または、M/N統計値および心拍数安定性の測定値の双方を使用して、持続性ATイベントを検出することができる。M/N統計値または心拍数安定性のいずれも、それらのそれぞれの条件を満足しない場合、持続性ATは検出されない。
【0087】
検出されたATイベントは、プロセス652、654または656のうちの1つまたは複数において使用することができる。652において、ATイベントを、図2において示されているように出力ユニット252を介するなどして、ユーザまたはプロセスに出力することができる。例においては、情報は、とりわけ、感知された生理学的信号、第1の心室心拍数統計値および第2の心室心拍数統計値などの中間の測定値または計算値、検出されるATのタイプ、または持続性ATにおいて経過した時間を示すAT負荷を含め、ディスプレイに表示されることができる。付加的にまたは代替的に、検出された情報のハードコピーを生成してもよい。
【0088】
654において、推奨を生成してユーザに提供することができる。推奨は、行うべきさらなる診断テスト、検出された不整脈を治療するためのまたは不整脈の合併症を軽減するための抗不整脈療法のうちの1つまたは複数を含むことができる。推奨は、検出持続時間DATなどの1つまたは複数の不整脈検出パラメータの調整を含むことができる。例においては、典型的なAFLイベントを検出する際に、およそ5時間~8時間の持続時間DAFLを最初にプログラミングすることができる。そのような長い持続時間は、AFL検出の誤った警報の割合を低減するのを助けることができ、より高い検出の特異度を可能にする。持続性ATイベントを検出すると、DAFLを2時間~5時間の値に短縮する等のために、持続時間DAFLを調整するという推奨をユーザに提示することができる。システムのユーザ(医師など)が、検出されたAFLイベントを検討して判断し、任意選択的に1つまたは複数の他のパラメータとともに持続時間DAFLを再プログラミングし、AFL検出の感度、および、心房頻脈性不整脈の負荷の推定(例えば、不整脈における時間)の正確性を改善することができる一方で、AFL検出の特異度は維持するかまたは実質的に構成しない。
【0089】
方法600は、心臓不整脈の検出に応答して、図2において示されている任意選択的な治療回路260を介するなどして、患者に治療を施す任意選択的なステップ656を含むことができる。療法の例としては、心臓、神経組織、他のターゲット組織に施される電気刺激療法、電気的除細動療法、除細動療法、または、組織もしくは器官に薬物を送達することを含む薬物療法が挙げられる。いくつかの例においては、患者のフォローアップスケジュールを変更するか、または、刺激パラメータもしくは薬物用量を調整するなど、既存の療法または治療計画を変更して、検出された不整脈を治療することができる。
【0090】
図7は、とりわけ、心房細動(AF)、速い心房粗動(AFL)、遅いAFL、I型AFL、II型AFLまたは心房性頻脈などの、2つ以上の心房性不整脈のマルチゾーン検出の方法700の例を概略的に示している。方法700は、ステップ630および640を含め、方法600の少なくとも一部の一実施形態とすることができる。例においては、方法700は、図2の不整脈検出システム200において実施され、不整脈検出システム200によって実行されることができる。
【0091】
限定するものではなく例として、方法700は、AFLゾーンにおいてAFLイベントを検出すること、および、fAFLゾーンにおいて速いAFL(fAFL)イベントを検出することを含む、2ゾーンAT検出を示している。AFLゾーンおよびfAFLゾーンは、図6を参照して説明したように、初期レート検出620を共有することができる。第1の心室心拍数統計値が、窓セット410から計算されるrHRのかなりの部分が心拍数しきい値HRT1を超えることを示す場合、AFLゾーンとfAFLゾーンとにおける持続性調律検出を、同時にかつ独立して進めることができる。代替的には、AFLゾーンおよびfAFLゾーン検出は、それらのそれぞれの「エントリー条件」を伴う別個の独立した初期レート検出を含むことができる。
【0092】
710において、AFL持続時間タイマおよびfAFL持続時間タイマを、10個の連続的なrHRのうち少なくとも8個が心拍数しきい値HRT1を超えるといった第1の条件を第1の心室心拍数統計値が満足することに応答して開始することができる。fAFLゾーンは、AFLゾーンよりも短い持続時間を有することができる。例においては、fAFLゾーンの持続時間は、DfAFL=2時間であり、AFLゾーンの持続時間は、DAFL=8時間である。
【0093】
720において、代表的な心室心拍数(rHR)を、N個の連続的な心拍数分析窓のセットなど、心拍数分析窓のセット内で判定することができる。例においては、N=10である。心拍数分析窓のセットから生成されるrHRは、AFLゾーン検出730およびfAFLゾーン検出740の双方によって使用することができる。AFLゾーン検出730およびfAFLゾーン検出740は、同時にかつ独立して進行することができる。各ゾーンは、1つまたは複数の第2の心室心拍数統計値および心拍数しきい値HRT2を含む、特定のタイプのATイベントを検出するためのそれぞれの検出基準を規定する。
【0094】
731において、M/N統計値などの第2の心室心拍数統計値を、720において生成された複数のrHRとAFLゾーンの心拍数しきい値(HRAFL)とを比較することによって生成することができる。例においては、HRAFL=100bpmである。732において、第2の心室心拍数統計値を、特定の第2の条件に対して比較することができる。10個の連続的な心拍数分析窓からの、720において生成された10個のうち少なくとも6個の(6/10)rHRがHRAFLを超えるといったAFL検出条件を第2の心室心拍数統計値が満足する場合、733において、AFL持続時間タイマを更新することができる。例においては、AFL持続時間タイマの更新は、図5において示されているような移動する窓セットを介して達成することができる。時間軸に沿った右への窓セットのシフトは、持続時間DAFLの時間の経過またはカウントダウンに相当する。734において、満了についてAFL持続時間タイマをチェックする。AFL持続時間タイマが満了していない場合、AFLゾーンにおける不整脈検出は、720において継続することができ、ここで、rHRは、新たな心拍数分析窓のセットから生成することができ、第2の心室心拍数統計値(例えば、M/N統計値)を、新たな時間シフトされた窓セットから評価することができる。734において、AFL持続時間タイマが満了している場合、AFLは、持続時間DAFLを通して持続性であるとみなされ、750において、持続性AFLを検出することができる。DAFL中の任意の時点で、第2の心室心拍数統計値が732においてAFL検出条件を満足しない場合、「エグジット条件」が満足されたとみなされ、760において、持続性AFLは検出されないという決定がなされる。
【0095】
fAFL検出740は、AFLゾーン検出730と同時に進行することができる。fAFL検出740は、AFL検出730と同様のステップを含むことができる。741において、720において生成された同じ複数のrHRを、fAFLゾーンの心拍数しきい値(HRfAFL)と比較して、第2の心室心拍数統計値を求めることができる。例においては、心拍数しきい値HRfAFL=160bpmである。10個のうち少なくとも6個(6/10)のrHRがHRfAFLを超える場合など、第2の心室心拍数統計値がfAFL検出条件を満足する場合、743において、AFL持続時間タイマを更新することができる。次に、fAFL持続時間タイマを、744において満了についてチェックする。fAFL持続時間タイマが満了していない場合、fAFLゾーンにおける不整脈検出は720において継続することができ、この場合、新たな心拍数分析窓セットからrHRを判定することができ、第2の心室心拍数統計値(例えば、M/N統計値)を、新たなタイムシフトされた窓セットから評価することができる。744において、fAFL持続時間タイマが満了している場合、fAFLは、持続時間DfAFLを通して持続性であるとみなされ、750において持続性fAFLが検出される。持続時間DfAFL中の任意の時点において、第2の心室心拍数統計値が742においてfAFL検出条件を満足しない場合、「エグジット条件」が満足されるとみなされ、760において、持続性fAFLは検出されないという決定がなされる。AFLもしくはfAFLの検出または非検出の決定は、次に、図6において示されているようなプロセス652、654または656のうちの1つまたは複数によって使用することができる。
【0096】
図8は、本明細書において説明される技法(例えば、方法論)のうちのいずれか1つまたは複数を行うことができる、例示的な機械800のブロック図を概略的に示している。この記載のいくつかの部分は、LCPデバイス、IMDまたは外部プログラマの種々の部分のコンピューティングフレームワークに適用することができる。
【0097】
代替的な実施形態では、機械800は、スタンドアロン型デバイスとして動作することができるか、または、他の機械に接続する(例えば、ネットワーク化する)ことができる。ネットワーク化された配置では、機械800は、サーバマシン、クライアントマシンの能力で、または、サーバクライアントネットワーク環境における両方の能力で動作することができる。例においては、機械800は、ピアツーピア(P2P:peer‐to‐peer)(または他の分散型)ネットワーク環境においてピアマシンとして機能することができる。機械800は、パーソナルコンピュータ(PC:personal computer )、タブレットPC、セットトップボックス(STB:set-top box)、携帯情報端末(PDA:personal digital assistant)、携帯電話、ウェブアプライアンス、ネットワークルータ、スイッチもしくはブリッジ、または、任意の機械であって、その機械が行うべき動作を指定する(順次のまたは別様の)命令を実行することが可能な機械とすることができる。さらに、単一の機械のみが示されているが、「機械」という用語は、クラウドコンピューティング、SaaS(software as a service(サービスとしてのソフトウェア))、他のコンピュータクラスタ構成など、本明細書において説明される方法論のうちの任意の1つまたは複数を行うために、命令の1つのセット(または複数のセット)を個別にまたは共同で実行する、機械の任意の集まりを含むようにも解釈されるべきである。
【0098】
本明細書において記載されるような例は、ロジックもしくは複数のコンポーネントまたは機構を含むことができるか、または、それらによって動作することができる。回路セットは、ハードウェア(例えば、単純回路、ゲート、ロジックなど)を含む有形の存在に実装された回路の集まりである。回路セットのメンバシップは、時間と、基礎となるハードウェアの変動性とに対して柔軟であり得る。回路セットは、指定された動作を動作中に単独でまたは組み合わせて行うことができるメンバを含む。例においては、回路セットのハードウェアは、所定の動作を実行するようにイミュータブルに設計することができる(例えば、ハードワイヤード)。例においては、回路セットのハードウェアは、特定の動作の命令をエンコードするように物理的に変更された(例えば、磁気的に、電気的に、不変質量粒子の可動配置など)コンピュータ可読媒体を含む、可変に接続された物理的コンポーネント(例えば、実行ユニット、トランジスタ、単純回路など)を含むことができる。物理的コンポーネントを接続する際、ハードウェア構成要素の基礎となる電気的特性は、例えば、絶縁体から導体に、またはその逆に変更される。命令は、組み込みハードウェア(例えば、実行ユニットまたはローディング機構)が、動作中に特定の動作の一部を実行するように、可変接続を介してハードウェアにおいて回路セットのメンバを生成することを可能にする。したがって、コンピュータ可読媒体は、デバイスが動作しているときに、回路セットメンバの他のコンポーネントに通信可能に結合される。例においては、2つ以上の回路セットの2つ以上のメンバにおいて、物理的コンポーネントのうちの任意のものを使用することができる。例えば、動作中、実行ユニットは、ある時点で第1の回路セットの第1の回路で使用され、異なる時点で、第1の回路セットの第2の回路によって、または、第2の回路セットの第3の回路によって再使用されることができる。
【0099】
機械(例えば、コンピュータシステム)800は、ハードウェアプロセッサ802(例えば、中央処理装置(CPU:central processing unit)、グラフィックスプロセッシングユニット(GPU:graphics processing unit)、ハードウェアプロセッサコア、または、それらの任意の組み合わせ)、メインメモリ804およびスタティックメモリ806を含むことができ、それらのうちのいくつかまたはすべては、インターリンク(例えば、バス)808を介して互いに通信することができる。機械800は、ディスプレイユニット810(例えば、ラスタディスプレイ、ベクトルディスプレイ、ホログラフィックディスプレイなど)、英数字入力デバイス812(例えば、キーボード)およびユーザインターフェース(UI:user interface)ナビゲーションデバイス814(例えば、マウス)をさらに含むことができる。例においては、ディスプレイユニット810、入力デバイス812およびUIナビゲーションデバイス814は、タッチスクリーンディスプレイとすることができる。機械800は、格納デバイス(例えば、ドライブユニット)816、信号生成デバイス818(例えば、スピーカ)、ネットワークインターフェースデバイス820、および、全地球測位システム(GPS:global positioning system)センサ、コンパス、加速度計もしくは他のセンサなど、1つまたは複数のセンサ821を付加的に含むことができる。機械800は、1つまたは複数の周辺デバイス(例えば、プリンタ、カードリーダなど)と通信するかまたはそれらを制御するために、シリアル(例えば、ユニバーサルシリアルバス(USB:universal serial bus)、パラレル、または、他の有線もしくは無線(例えば、赤外源(IR:infrared)、近距離無線通信(NFC:near field communication)など)接続などの、出力コントローラ828を含むことができる。
【0100】
格納デバイス816は、機械可読媒体822を含むことができ、そこに、本明細書において記載される技法または機能のうちの任意の1つまたは複数を具現化するかまたはそれらによって利用されるデータ構造または命令824(例えば、ソフトウェア)の1つまたは複数のセットが格納される。命令824はまた、機械800が命令824を実行している間に、メインメモリ804内、スタティックメモリ806内、または、ハードウェアプロセッサ802内に、完全にまたは少なくとも部分的に存在することができる。例においては、ハードウェアプロセッサ802、メインメモリ804、スタティックメモリ806または格納デバイス816のうちの1つまたは任意の組み合わせが、機械可読媒体を構成することができる。
【0101】
機械可読媒体822は、単一の媒体として示されているが、「機械可読媒体」という用語は、1つまたは複数の命令824を格納するように構成されている単一の媒体または複数の媒体(例えば、集中型もしくは分散型データベースと、関連するキャッシュおよびサーバと、の両方または一方)を含むことができる。
【0102】
「機械可読媒体」という用語は、機械800によって実行される命令を格納するか、エンコードするかまたは運ぶことが可能であり、機械800に本開示の技法のうちの任意の1つまたは複数を実行させるか、または、そのような命令によって使用されるかもしくはそのような命令に関連付けられているデータ構造を格納するか、エンコードするかもしくは運ぶことが可能な、任意の媒体を含むことができる。非限定的な機械可読媒体の例としては、ソリッドステートメモリならびに光媒体および磁気媒体が挙げられる。例においては、質量を有する機械可読媒体は、不変(例えば、静止)質量を有する複数の粒子を備えた機械可読媒体を含む。したがって、質量を有する機械可読媒体は、一時的な伝播信号ではない。質量を有する機械可読媒体の特定の例としては、半導体メモリデバイス(例えば、電気的にプログラミング可能なリードオンリーメモリ(EPROM:Electrically Programmable Read‐Only Memory)、電気的に消去可能なプログラミング可能なリードオンリーメモリ(EEPROM:Electrically Erasable Programmable Read‐Only Memory)およびフラッシュメモリデバイスなどの不揮発性メモリ、内蔵ハードディスクおよびリムーバブルディスクなどの磁気ディスク、光磁気ディスク、ならびに、CD‐ROMおよびDVD‐ROMディスクが挙げられる。
【0103】
命令824はさらに、多数の転送プロトコル(例えば、フレームリレー、インターネットプロトコル(IP:internet protocol)、伝送制御プロトコル(TCP:transmission control protocol)、ユーザデータグラムプロトコル(UDP:user datagram protocol)、ハイパーテキスト転送プロトコル(HTTP:hypertext transfer protocol)など)のうちの任意の1つを利用するネットワークインターフェースデバイス820を介して、伝送媒体を使用して通信ネットワーク826上で送信または受信することができる。例示的な通信ネットワークとしては、とりわけ、ローカルエリアネットワーク(LAN:local area network)、広域ネットワーク(WAN:wide area network)、パケットデータネットワーク(例えば、Internet)、携帯電話ネットワーク(例えば、セルラーネットワーク)、基本電話(POTS:Plain Old Telephone)ネットワークおよび無線データネットワーク(例えば、WiFi(登録商標)として知られるIEEE802.11ファミリーの標準規格、WiMax(登録商標)として知られるIEEE802.16ファミリーの標準規格)、IEEE802.15.4ファミリーの標準規格、ピアツーピア(P2P)ネットワークが挙げられる。例においては、ネットワークインターフェースデバイス820は、通信ネットワーク826へ接続するための1つまたは複数の物理ジャック(例えば、イーサネット(登録商標)、同軸もしくは電話ジャック)または1つまたは複数のアンテナを含むことができる。例においては、ネットワークインターフェースデバイス820は、単入力多出力(SIMO:single‐input multiple‐output)、多入力多出力(MIMO:multiple‐input multiple‐output)または多入力単出力(MISO:multiple‐input single‐output)技法のうちの少なくとも1つを使用して無線通信するための複数のアンテナを含むことができる。「伝送媒体」という用語は、機械800により実行される命令を格納するか、エンコードするかまたは運ぶことが可能であり、そのようなソフトウェアの通信を容易にするデジタルもしくはアナログ通信信号または他の無形媒体を含む、任意の無形媒体を含むように解釈されるものとする。
【0104】
上記の図において種々の実施形態が示されている。これらの実施形態のうちの1つまたは複数からの1つまたは複数の特徴を組み合わせて、他の実施形態を形成することができる。
【0105】
本明細書において記載される方法の例は、少なくとも部分的に、機械またはコンピュータにより実施されることができる。いくつかの例は、上記の例において記載されたような方法を行うために電子デバイスまたはシステムを構成するように動作可能な命令がエンコードされた、コンピュータ可読媒体または機械可読媒体を含むことができる。そのような方法の実施態様は、マイクロコード、アセンブリ言語コード、高水準言語コードなどのコードを含むことができる。そのようなコードは、様々な方法を行うためのコンピュータ可読命令を含むことができる。コードは、コンピュータプログラム製品の部分を形成することができる。さらに、コードは、実行中または他の時点において、1つまたは複数の揮発性または不揮発性のコンピュータ可読媒体上に、有形に格納されることができる。
【0106】
上記で詳述した説明は、例示的であることが意図され、限定的であることは意図されない。したがって、本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲を参照して、そのような特許請求の範囲が権利を与えられる均等物の全範囲とともに、決定されるものとする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8