(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-05
(45)【発行日】2022-08-16
(54)【発明の名称】スプレー堆積用装置
(51)【国際特許分類】
B29C 64/141 20170101AFI20220808BHJP
B05B 7/28 20060101ALI20220808BHJP
B05B 12/10 20060101ALI20220808BHJP
B29C 64/209 20170101ALI20220808BHJP
B29C 64/393 20170101ALI20220808BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20220808BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20220808BHJP
C23C 24/04 20060101ALI20220808BHJP
【FI】
B29C64/141
B05B7/28
B05B12/10
B29C64/209
B29C64/393
B33Y30/00
B33Y50/02
C23C24/04
(21)【出願番号】P 2019554343
(86)(22)【出願日】2018-04-04
(86)【国際出願番号】 AU2018050308
(87)【国際公開番号】W WO2018184066
(87)【国際公開日】2018-10-11
【審査請求日】2021-03-01
(32)【優先日】2017-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521173867
【氏名又は名称】エフュージョンテック アイピー ピーティーワイ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ケネディ,バイロン ジョン
(72)【発明者】
【氏名】カミッレーリ,スティーブン ピーター
(72)【発明者】
【氏名】エンブリー,ライエル ダグラス
(72)【発明者】
【氏名】ラヴェルサンヌ,シルヴァン ジェイムズ
(72)【発明者】
【氏名】ジャレット,トビー ジョン
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第102527544(CN,A)
【文献】独国特許出願公開第102004021847(DE,A1)
【文献】特開平11-028395(JP,A)
【文献】特開平10-141299(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0117109(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0252450(US,A1)
【文献】特開2006-200030(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104985813(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00 - 64/40
B33Y 10/00 - 99/00
B22F 10/00 - 12/90
B05B 1/00 - 3/18
B05B 7/00 - 9/08
B05B 12/00 - 12/14
B05B 13/00 - 13/06
C23C 24/00 - 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スプレー堆積によって3次元物体を製造するための装置であって、
搬送ガスによって運ばれるスプレー材料の流れ(第1の流れ)をノズルに導くように配置された第1のラインと、
ガスの流れ(第2の流れ)を前記ノズルに導くように配置された第2のラインと、
スプレー用ノズル
であって、前記ガスの流れは、供給される空気の圧力、前記供給される空気の温度、及び前記スプレー用ノズルの幾何学的形状のみによって決まる、スプレー用ノズルと、
電子制御器と、
を有し、
前記装置は、前記第1の流れの圧力及び温度パラメータが前記電子制御器によってリアルタイムで制御されるが、前記第2の流れについては、圧力及び温度パラメータ
は、前記スプレー用ノズルによって決められ、前記第2の流れの前記圧力及び前記温度パラメータは、前記電子制御器によってリアルタイムで制御されないようなものであり、
前記第1のラインにおける前記第1の流れの前記圧力のパラメータは、前記第2のラインにおける前記第2の流れの前記圧力のパラメータより低くなるように決められ、且つ前記2つの流れが合流して、3次元物体を作り出すようにスプレー材料を前記ノズルから基板へと進ませる、
装置。
【請求項2】
前記第1のラインが、前記第1のライン内のガス流れパラメータを検知するための検知手段を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第1のラインが、前記第1のライン内を移動するガスにスプレー材料を供給するためのスプレー材料供給機を備える、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記第1のライン内にガス用の圧力センサ及び温度センサを備え、前記スプレー材料が前記ノズルから出るときに前記スプレー材料に所望のスプレー特性を与えるために、測定値に応じて、前記第1のライン内の前記ガスの前記圧力及び温度を調整する前記電子制御器に前記圧力センサ及び温度センサが前記測定値を送信する、請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記電子制御器が、前記第1のライン内を移動するガス中に供給される前記スプレー材料の量を制御する、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記第1のライン及び前記第2のラインが、共通の貯留部からガスを受け入れる、請求項1から5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記ガスが前記貯留部内に入る前に前記ガスを濾過するフィルタを有する、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記ガスが、圧縮空気を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記圧縮空気が、前記第1のライン及び前記第2のライン内に入る前に除湿機に通される、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記第1のラインが、前記第1のライン内を移動するガスにスプレー材料を供給するためのスプレー材料供給機を備え、
前記第1のライン内にガス用の圧力センサ及び温度センサが存在し、前記スプレー材料が前記ノズルから出るときに前記スプレー材料に所望のスプレー特性を与えるために、測定値に応じて、前記第1のライン内の前記ガスの前記圧力及び温度に対する調整をもたらす電子制御器に前記圧力センサ及び温度センサが前記測定値を送信し、
前記電子制御器が、前記第1のライン内を移動するガス中に供給される前記スプレー材料の量を制御し、
前記第1のライン及び前記第2のラインがガスを受け入れる共通の貯留部を有し、
前記ガスが前記貯留部内に入る前に前記ガスを濾過するフィルタを有し、
前記ガスが、圧縮空気を含み、且つ
前記圧縮空気が、前記第1のライン及び前記第2のライン内に入る前に除湿機に通される、
請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記ノズルが、前記スプレー材料を含む空気を受け入れて、前記空気の速度を高め、前記空気の圧力を低下させ、且つ前記空気の温度を低下させるという点で前記空気の状態を変化させるように配置された収束-発散ノズルである、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記第2の流れを加熱するように配置された加熱器を備える、請求項11に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元物体を形成するためのスプレー堆積用装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コールドスプレー技術を用いて3次元物体を形成することが知られている。使用されるスプレー材料は、金属、セラミック、ポリマー、又は他の任意の好適な粒子を含み得る。最終的に所望の形状を形成するように、スプレー塗布が3次元基板に対して層状になされることがある。いくつかの既知のシステムでは、コールドスプレープロセスは、スプレー粉末の超音速流れを取り込んで制御する必要性のために複雑である。これによって、堆積プロセスを管理するコンピューター化システムに高い需要が生じ得る。
【0003】
いくつかのシステムにおいて、コールドスプレーは、基板に向けて1~50μmの粉末粒子を加速させるために高速(例えば、300~1200m/s)のガス噴流の使用を伴う。粒子は、基板に超音速で接触して塑性変形し、衝撃で結合する。粒子がシステムに衝突し続けるにつれて、粒子が「積み重なって」目標とする3次元形状を形成する。適切な制御パラメータが使用される場合には、粒子間に形成される結合が非常に強力になる可能性があり、それゆえ、高品質の製品の製造が容易になる。
【0004】
いくつかの既知のコールドスプレーシステムは、
スプレー粒子に運動エネルギーを与えるための加熱及び加圧ガス源と、
スプレー用の粒子を提供するための粉末供給システムと、
粒子の必要な超音速を達成するための(例えば、ラバールノズルのような)収束-発散アプリケータノズルと、
粒子を受ける基板と、
スプレーパラメータ(例えば、速度及び温度)を監視及び調整するための電子制御システムと、を含む。
【0005】
これらの構成要素が構成される方式とこれらの構成要素がプロセス変数を操作する方法とによって、低圧スプレーシステムと高圧スプレーシステムのどちらを有するかが決定される。これらの既知のシステムは、高速ガス流を送り出す主要又は「プロセスライン」と、2次ガス流によって、供給機から主要ガス流にスプレー粉末を供給するための「搬送ライン」とを有する。プロセスラインは、ノズルの最もくびれた箇所のよりも手前に、換言すれば上流側に配置される。粉末搬送ラインは、ノズルの(高圧システムでは)上流側又は(低圧システムでは)下流側に位置するものとすることができる。
【0006】
低圧システムは、より複雑でない制御機能、より安価な設備の使用、及びより高度なシステムの可搬性を可能にし得る。しかしながら、これらの利点は、準最適な粒子速度に起因する、比較的低い堆積速度と基板上へのスプレー材料の低品質な堆積とによって相殺される場合がある。
【0007】
高圧システムは、概して、粉末供給機からノズルに粉末を搬送するために高圧の圧縮ガスを必要とする。ヘリウムは、高圧コールドスプレー技術では良好に機能することが知られているが、比較的高価であり得る。ヘリウム回収システムが存在するが、ヘリウム回収システムは複雑である可能性があり、使用されるヘリウムの寿命をある程度限られてに延長することしかもたらさないことがある。窒素、例えば液状の窒素は、概して安価であるが、良好に機能しないことがある。高圧コールドスプレーは、軍事及び航空機製造での鋳造及び修理作業などの利益率の高い仕事に使用されることがある。液体窒素などの、水分ゼロの精製されたプロセスガスに依るのが一般的である。
【0008】
高圧コールドスプレーシステムは通常、著しく高い粒子速度を生み出す傾向があるので好ましく、これによって、通常は、より良好な堆積及び最終製品の品質がもたらされる。ノズルの高圧側へ粉末を噴射して、粒子衝突速度を最大化し、且つ望ましくない変化を最小化してもよい。そのようなシステムは、ベンチュリ管内のその他の乱流混合領域を排除してもよい。低圧システム内に通常存在するベンチュリ管の除去によって、粒子速度の望ましくない変化が低減されてもよい。この高圧システムは、制御システムの変動に起因する堆積速度の変化に依然として悩まされることがある。これらの変動によって、堆積プロセスが予測不能となることがある。
【0009】
衝突前の粒子速度は、通常、コールドスプレーシステムにおける重要な変数である。十分な速度がなければ、粒子が結合せず、速度が速すぎると、粒子が既に堆積した粒子を浸食することがある。プロセス性能を高く保つために、通常は、高い粒子衝突速度を維持する必要がある。これによって、最終的な材料性能及び堆積効率が向上し得る。理想のコールドスプレーシステムは、粒子堆積範囲内に、一定の高い速度でスプレー粒子を基板に運ぶことのできる安定した噴流を実現する。
【0010】
流体の速度は流体の流量と密接に相関する。その分野では、ラバールノズルを通る質量流量についての既知の数式が存在する(John D.Anderson著, Modern Compressible Flow, 第3版,216ページ)。
【数1】
【0011】
数式を参照すると、ノズルの幾何学形状、ガス圧、ガス温度、及びいくつかの定数が分かっている場合に、質量流量を決定することができる。この算出可能な関係のため、いくつかの既知のコールドスプレーシステムは、最も適切な温度、圧力、ノズル寸法、又はこれらのパラメータの特定の構成若しくは制御を提供及び/又は制御することに重点を置いている。
【0012】
典型的な高圧コールドスプレーシステムを通るプロセスガスの質量速度は、流量を測定し、所望の結果を達成するために温度と圧力の両方を調節することによって調整される。概して、(スプレー粉末とプロセスガスとの)質量比は約5%に保持される。このことは、ガス質量速度を測定することと、主要プロセスラインを通るガス流れを測定し、粉末供給機からのスプレー材料の送出を調整することとによって行われる。
【0013】
粉末搬送ライン内のガス圧は、ノズルへのスプレー粉末の供給が一定であることを確実にするために、予め設定されたレベルに維持される。スプレー材料供給機は、粉末供給管内のガス速度を最大化するための小径の噴射器管を有する。出願人は、そのような予め行われる設定にもかかわらず、噴射器を通る流れが大きく変化し得ること見出した。この変化は、粒子速度、ひいては堆積の安定性に影響を及ぼすことがある。
【0014】
典型的な高圧コールドスプレー解決策は、主要プロセスラインについて、及び時として粉末搬送ラインについても、温度、圧力、及び質量流量を測定して、これらを制御する。そのような測定及び制御のための設備を提供することで、資源集約的になり且つコストが高くなる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
発明の目的
本発明の好ましい実施形態の目的は、スプレー材料供給ライン内のガス流れが良好な堆積を達成するように調整される、スプレー堆積用装置を提供することである。これは好ましい実施形態に当てはまるが、本発明の目的自体は単に有用な選択肢を提供することにすぎないことが理解されるべきである。よって、好ましい実施形態の利点の任意の目的は、より広く表現される特許請求の範囲を制限するものとみなされるべきではない。
【0016】
定義
「備える」という用語は、特徴又はステップの組み合わせとの関連で本文書において使用される場合、明らかにされていない更なる特徴又はステップが存在するという選択肢を除外しない。それゆえ、その用語は、排他的ではなく包括的である。
【0017】
「リアルタイム」での制御とは、スプレー堆積前にパラメータを設定するのとは対照的に、基板上に効果的なスプレー堆積が行われている間にパラメータに対してなされる調節に関して用いる。
【課題を解決するための手段】
【0018】
発明の概要
本発明の第1の態様によれば、スプレー堆積によって3次元物体を製造するための装置であって、
搬送ガスによって運ばれるスプレー材料の流れ(第1の流れ)をノズルに導くように配置された第1のラインと、
ガスの流れ(第2の流れ)をノズルに導くように配置された第2のラインと、
スプレー用ノズルと
を有し、
装置は、第1の流れの圧力及び温度パラメータがリアルタイムで制御されるが、第2の流れについては、圧力及び温度のパラメータがリアルタイムで制御されないようなものであり、且つ2つの流れが合流して、3次元物体を作り出すようにスプレー材料をノズルから基板へと進ませる、装置が提供される。
【0019】
任意選択的に、第1のラインは、第1のライン内のガス流れパラメータを検知するための検知手段を備える。
【0020】
任意選択的に、第1のラインは、第1のライン内を移動するガスにスプレー材料を供給するためのスプレー材料供給機を備える。
【0021】
任意選択的に、装置は、第1のライン内にガス用の圧力センサ及び温度センサを組み込んでおり、スプレー材料がノズルから出るときにスプレー材料に所望のスプレー特性を与えるために、測定値に応じて、第1のライン内のガスの圧力及び温度を調整する電子制御器に圧力及び温度センサが測定値を送信する。
【0022】
任意選択的に、電子制御器は、第1のライン内を移動するガス中に供給されるスプレー材料の量を制御する。
【0023】
任意選択的に、第1のライン及び第2のラインは、共通の貯留部からガスを受け入れる。
【0024】
任意選択的に、ガスが貯留部内に入る前にガスを濾過するフィルタを有する。
【0025】
任意選択的に、ガスは圧縮ガスを含む。
【0026】
任意選択的に、圧縮空気は、第1のライン及び第2のライン内に入る前に除湿機に通される。
【0027】
任意選択的に、ノズルは、スプレー材料を含む空気を受け入れて、空気の速度を高め、空気の圧力を低下させ、且つ空気の温度を低下させるという点でその空気の状態を変化させるように配置された収束-発散ノズルである。
【0028】
任意選択的に、装置は、第2の流れを加熱するように配置された加熱器を備える。
【0029】
図面
本発明のいくつかの好ましい実施形態については、3次元物体を形成するためのコールドスプレー装置を概略的に図示する、
図1を参照しながら例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】3次元物体を形成するためのコールドスプレー装置を概略的に図示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
詳細な説明
装置は、大気を取り入れて圧縮する電気モータ駆動の空気圧縮機1を有する。次いで、空気は、自動排水フィルタ2によって濾過されて、圧縮機1の循環動作によって生じる圧力変化を低減するような大きさとされた貯留部3内に貯蔵される。空気系における次のものは、貯留部3からの空気を受け入れて除湿する冷凍式除湿機4である。その箇所における空気は、プロセスガスとして使用するのに好適である。次いで、空気は、空気自体の経路を各々有する2つの流れに分かれる。
【0032】
第1の経路は、スプレー粉末が供給される空気を供給する粉末搬送ラインAである。そのラインには、制御可能な圧力降下要素5、流量センサ6、及び粉末供給機7が組み込まれる。粉末供給機7からのスプレー粉末は、空気流中に供給され、同軸型噴射器(図示せず)によって超音速ノズル8に搬送される。
【0033】
第2の経路は、スプレー粒子に速度を与えるために使用されるプロセスガス(この場合は空気)の流れを供給する主要プロセスラインBである。プロセスラインは、(例えば、空気の圧力を所望の分低下させるための)圧力制御装置9と、ガス加熱器10とを組み込んでいる。加熱器は、所望のレベルのエネルギーを空気に与えるために空気を加熱する。
【0034】
粉末搬送ラインAからのスプレー粉末を伴う空気は、ノズル入口8aの直前で主要プロセスラインからの勢いづけられた空気と合流する。好ましい実施形態では、ノズル8は、低速で高圧で高温の空気を出口8bにおいて高速で低温で低圧の空気に変えるのに十分な、ラバール型の収束-発散ノズルである。ノズルから放出される高速粉末流は、目的とする3次元物品を形成するように基板にコールドスプレーするために使用される。
【0035】
図示の好ましい実施形態では、搬送ラインAからの粉末搬送空気は、そのライン内の圧力が主要プロセスラインB内の圧力よりも高い場合に、ノズル噴射器に、したがってノズル8にのみ流れ込む。この理由から、圧力制御装置9が提供される。つまり、圧力制御装置9は、粉末搬送ラインAからノズル噴射器に粉末を搬送できるように主要プロセスラインB内の空気圧を調節する(例えば、低下させる)。
【0036】
圧力制御装置9は、人間の操作者が圧力制御装置9を設定して圧縮機の圧力の変化の影響を低減できるように、手動で調節可能である。概して、この要素は、サーボ機械である必要はない。
【0037】
好ましい実施形態の重要な態様は、コールドスプレー装置が制御される方式にある。サーボ機械式圧力調整器を備え得る、圧力降下要素5は、電子制御器11からの信号によって制御される。この制御器は、ソフトウェアに実装された、調整された比例積分微分(PID)機能を有する。
【0038】
制御器11は、流量センサ6からの流れの圧力の測定信号を1つの入力、及び外部信号を別の入力として受け取る。流量センサ6、圧力降下要素5、及び制御器11は、組み合わせて、制御システムを形成する。そのシステムは、搬送ラインAを通る粉末搬送ガスの流量を特定の流量に制御することができる。この速度は、制御器11に供給される外部信号を参照して調整される。
【0039】
粉末搬送ラインAを通る粉末搬送ガスの流量を制御することによって、粉末が詰まる又は噴射器及びノズルへ準最適に搬送されるような最小値を超えるスプレー粉末流量を維持することが可能である。粉末搬送ガス対プロセスガス(この場合は「空気」)比を最小化して、ノズル8に供給されるガスの温度を最大化することが重要である。このことは、加熱器10を用いてプロセスガスを加熱することによって容易になる。結果として、ノズル8に供給される総ガス中に混合された粉末搬送ガスの割合が大きいほど、ガス温度が低くなり、且つ発射されるスプレー粉末の最終的な速度が遅くなる。
【0040】
好ましい実施形態では、コールドスプレー装置は、高レベルの制御及び安定性を維持しながら、最低限の数の検知及び制御機能に依存する正しく機能する制御システムを有する。既知の高圧コールドスプレーにおける手法は、主要プロセスラインについて、時として粉末搬送ラインについても、ガス温度、圧力、及び流量を測定して制御する。発明者は、制御システムを簡素化することには、少なくとも好ましい実施形態では、「追従する」及び互いに競合する制御システムが少ないので既知の設定よりも安定性を向上させるという望ましい利点があることを見出した。
【0041】
好ましい実施形態では、高品質の材料出力を達成するために正しいガス流量が重要である。この場合、高品質の出力は、一定の粒子速度を維持するために流量を特定の値に厳密に制御することによって達成される。
【0042】
好ましい実施形態では、粉末搬送ラインA、すなわち、スプレー粉末をノズル噴射点に移送するラインを通る空気は、加熱されない。その一方で、主要プロセスラインB内の空気は、ノズル8を通過するときに粒子を加速させるのに十分なエネルギーを与えるために高いレベルまで加熱される。それゆえ、粉末搬送ライン内の空気と主要プロセスライン内の空気との間に温度差が生じる。低温の搬送ラインAの過大な流量は、主要プロセスラインBの高温の空気と組み合わさったときにノズル入口におけるガス温度を低下させる。これによって、スプレー粒子の速度の低下がもたらされる。品質の低い結果は、粒子速度の不十分な制御の結果として生じ、それゆえ、噴射管を通って流れる空気の最大速度を安定化させ且つ抑制することが望ましい。好ましい実施形態では、それが行われる。
【0043】
粉末/空気の供給の場合に、好ましい実施形態は、粉末がノズルに搬送されるときに粉末を滑りやすくするために、粉末搬送ラインAを通る最低水準の空気流れが確保されるようにする。より低い質量速度限界値(流れが詰まる値)とより高い質量速度限界値(ノズル温度が過度に冷却される値)とを定めることが可能である。下限値を超え且つ上限値を下回るこの理想の設定値は、体積流量又は質量流量を測定することと、制御可能な圧力降下を使用して流れを最適な速度に安定させることとによって空気流れを順に制御できる制御システムにおける目標値として使用される。
【0044】
制御システムを簡素化するために、好ましい実施形態は、粉末搬送ラインAのみについてのパラメータをリアルタイムで制御する。このことは、主要プロセスラインのパラメータのリアルタイム制御に焦点が置かれている先行技術とは区別される。装置がコールドスプレーをしている間には主要プロセスライン内の流れのパラメータは調節されないが、当然ながら、パラメータを事前に必要な値に調節/設定することができる。
【0045】
主要プロセスライン内のガスの圧力及び温度と同様に、ノズルの幾何学形状が分かっているので、質量流量を決定することができる。この知識を用いて、主要プロセスラインB内の質量流量は、構成要素パラメータを(制御するのとは対照的に)設定することによって算出される。これらのパラメータは、(例えば、加熱器10を通る)空気温度、(例えば、要素5を通る)空気圧及び圧力降下のうちの1つ又は複数を含む。これらのパラメータを設定することによって、パラメータを直接測定及び制御せずに、開ループ制御の意味において質量流量の予測と調整の両方を行うことが可能となる。
【0046】
ノズル8から出るスプレー材料についてのパラメータを決定するための1つのパラメータとして収束-発散超音速ノズルの挙動に依存することが好ましい。好ましい実施形態では、プロセス安定化のために、粉末搬送ラインAを通る流量をリアルタイムで調整することが重要である。流量の厳密なリアルタイム制御は、複雑な温度及び圧力制御の必要をなくす、円滑で連続したコールドスプレープロセスの性能のための唯一の要件である。
【0047】
主要プロセスラインBに対するリアルタイム制御を排除する利点は、排除しない場合と比較して低流量センサを使用できることである。
【0048】
好ましい実施形態では、ノズル8に供給される空気の圧力及び温度の経時変化がより少なくなることを確実にすることが望ましい。経時変化は、空気圧変動を低減する搬送ラインBにおけるガス貯留部3によって部分的に抑制される。変動が制御されるか又は回避されない場合に、経時的変化は、結果として生じるスプレー粒子速度の望ましくない変動に、ひいては、製造される3次元物体の品質の低下につながる可能性がある。
【0049】
粉末搬送ラインAのみで流れを制御することと、流入空気圧と設定温度とノズルの幾何学形状によって主要プロセスラインB内の空気流れを決定することを可能にすることとによって、システムにおける乱調並びに不安定性を除去又は低減することができる。システムコストも比較的低い可能性があり、粉末供給での小流量制御システムを1つのみ含み、且つ主要プロセスラインBでの圧力制御を含まない。
【0050】
粉末搬送ラインA内の空気パラメータのリアルタイム制御は、コールドスプレーシステムの安定化をもたらすのに効果的である。好ましい実施形態では、制御器11は、特定された最適な流量を達成する目的で空気圧を変化させるために使用される。制御器11は、粉末搬送ラインAの圧力を主要プロセスラインBの圧力よりも低く抑えるのを補助するとともに、ノズル8における空気温度の変化をできる限り小さく抑えるのを補助する。
【0051】
主要プロセスラインBよりむしろ粉末搬送ラインAを制御することもまた、粉末搬送ライン内の小さな変動がシステムの安定性により大きな相対的影響を及ぼすので有用である。
【0052】
好ましい実施形態では、粉末搬送セクションの供給において30.5barの圧力を及びノズル噴射器の出口において30barの圧力を有する(すなわち、圧力降下が0.5barである)ことによって、ノズル8からの有用なスプレー材料流量を達成できることが見出された。ノズル噴射器における圧力が(何らかの理由で)30barから29.5barに低下し、次いで圧力降下が2倍になって1barになるシステムの変動が想定される。結果として生じる流量が0.71Kから1Kになり、およそ50%増加する。この小さな1.7%の圧力変化(30barに対して0.5bar)によって、粉末搬送流れが実質50%増加することができる。この高感度は、粉末搬送ライン内の圧力の厳密且つ効果的な制御を維持することがシステムの安定性に有益であることを示す。
【0053】
好ましい実施形態では、プロセスガスに空気が使用されるが、他の実施形態では、代替ガス、例えば液体窒素又はヘリウムが使用されてもよい。空気は、ボトル内に高度に圧縮される必要なしに、使用されるときに連続的に圧縮できるので好ましく、出現温度が極低温ではなく且つ極低温である場合と比較して小型の加熱器を使用できることを意味する。このことによって、エネルギー消費を低減することによってプロセスコストが更に低減され得る。
【0054】
好ましい実施形態では、装置は、小型センサを用いて粉末供給機7及び噴射器を通るガス流量を測定して、粉末搬送ラインA内に理想のスプレー粒子質量流量を維持するように圧力降下要素5を制御する。
【0055】
本発明のいくつかの好ましい実施形態を例として説明してきたが、以下の特許請求の範囲から逸脱することなく、修正及び改良が行われ得ることを理解すべきである。