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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-05
(45)【発行日】2022-08-16
(54)【発明の名称】架空線保守作業システム
(51)【国際特許分類】
   H02G 1/02 20060101AFI20220808BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20220808BHJP
   B64C 27/04 20060101ALI20220808BHJP
   B64D 27/24 20060101ALI20220808BHJP
【FI】
H02G1/02
B64C39/02
B64C27/04
B64D27/24
【請求項の数】 37
(21)【出願番号】P 2020123686
(22)【出願日】2020-07-20
(65)【公開番号】P2022020282
(43)【公開日】2022-02-01
【審査請求日】2021-05-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101683
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100139930
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 亮司
(74)【代理人】
【識別番号】100180529
【弁理士】
【氏名又は名称】梶谷 美道
(72)【発明者】
【氏名】矢嶋 準
【審査官】遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-161833(JP,A)
【文献】特開2013-062946(JP,A)
【文献】特開2018-197999(JP,A)
【文献】特開2016-199144(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0168107(US,A1)
【文献】特開2019-145381(JP,A)
【文献】特開2017-191026(JP,A)
【文献】特開2017-225326(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/00-1/10
B64C 39/02
B64C 27/04
B64D 27/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電装置を有する回転翼機と、
電動モータを有し、供給された電力で前記電動モータを駆動して架空地線に沿って走行しながら前記架空地線の保守作業を行う作業機器と、
前記回転翼機から前記作業機器を吊り下げる第1ケーブルと、
前記発電装置が発電した電力を前記回転翼機の飛行中に前記作業機器に供給する第2ケーブルと
を備え
前記作業機器が前記架空地線の前記保守作業を行っている間、前記発電装置が発電した電力を前記回転翼機から前記作業機器に供給する、架空線保守作業システム。
【請求項2】
発電装置を有する回転翼機と、
電動モータを有し、供給された電力で前記電動モータを駆動して架空地線に沿って走行しながら前記架空地線の保守作業を行う作業機器と、
前記回転翼機から前記作業機器を吊り下げる第1ケーブルと、
前記発電装置が発電した電力を前記回転翼機の飛行中に前記作業機器に供給する第2ケーブルと
を備え、
前記第1ケーブルは、前記回転翼機側の端部から、前記作業機器側の端部までの間にウィークリンク装置を有し、
前記ウィークリンク装置は、前記ウィークリンク装置の両端が予め定められた閾値を超える荷重で引っ張られたときに物理的に切断される架空線保守作業システム。
【請求項3】
前記閾値は、前記作業機器の重量より大きく、前記回転翼機が飛行を制御することが可能な重量未満の範囲内である、請求項2に記載の架空線保守作業システム。
【請求項4】
前記閾値は、前記作業機器の重量より大きく、前記回転翼機の可搬重量未満の範囲内である、請求項2に記載の架空線保守作業システム。
【請求項5】
前記作業機器が前記架空地線の前記保守作業を行っている期間は、前記第1ケーブルの張力は前記作業機器の重量よりも小さい、請求項3または請求項4に記載の架空線保守作業システム。
【請求項6】
前記回転翼機は、前記第1ケーブルで前記作業機器を牽引する、請求項5に記載の架空線保守作業システム。
【請求項7】
前記第1ケーブルは、前記ウィークリンク装置と、前記ウィークリンク装置を除く部分であるケーブル部とを有し、
前記閾値は、前記ケーブル部の切断荷重よりも小さい、請求項2から請求項4のいずれかに記載の架空線保守作業システム。
【請求項8】
前記ウィークリンク装置はロープ形状を有し、
前記ウィークリンク装置の径の平均値は、前記ケーブル部の径の平均値よりも小さい、請求項7に記載の架空線保守作業システム。
【請求項9】
前記ウィークリンク装置を構成する素材と前記ケーブル部の素材とは異なっており、
前記ウィークリンク装置の切断荷重は、前記ケーブル部の切断荷重よりも小さい、請求項7に記載の架空線保守作業システム。
【請求項10】
前記第1ケーブルおよび前記第2ケーブルは並走する、請求項1に記載の架空線保守作業システム。
【請求項11】
前記第2ケーブルの少なくとも一部は、前記第1ケーブルの内部に収容されている、請求項1から請求項9のいずれかに記載の架空線保守作業システム。
【請求項12】
前記第1ケーブルは、前記ウィークリンク装置と、前記ウィークリンク装置を除く部分であるケーブル部とを有し、
前記第2ケーブルは、前記ケーブル部の内部に収容され、かつ、前記ウィークリンク装置をバイパスする、請求項2から請求項9のいずれかに記載の架空線保守作業システム。
【請求項13】
前記第1ケーブルは、
前記ウィークリンク装置と、
前記ウィークリンク装置から見て前記回転翼機側の第1上流側ケーブル部と、
前記ウィークリンク装置から見て前記作業機器側の第1下流側ケーブル部とを有し、
前記第2ケーブルは、
前記第1上流側ケーブル部の内部に収容された第2上流側ケーブル部と、
前記第1下流側ケーブル部の内部に収容された第2下流側ケーブル部とを有し、
前記ウィークリンク装置は、
前記第1上流側ケーブル部に固定され、かつ前記第2上流側ケーブル部と電気的に接続されている上流側コネクタと、
前記第1下流側ケーブル部に固定され、かつ前記第2下流側ケーブル部と電気的に接続されている下流側コネクタとを有し、
前記上流側コネクタおよび前記下流側コネクタは前記ウィークリンク装置を構成し、
前記上流側コネクタと前記下流側コネクタとは相対的に回転可能であり、かつ、任意の回転位置において、前記第2上流側ケーブル部および前記第2下流側ケーブル部は、前記上流側コネクタおよび前記下流側コネクタを介して電気的に接続されている、請求項2から請求項9のいずれかに記載の架空線保守作業システム。
【請求項14】
前記上流側コネクタおよび前記下流側コネクタは、それぞれ、
中心軸を含む内部電極端子と、
前記内部電極端子から所定距離離れた位置で前記内部電極端子を囲む外部電極端子と
を有し、
前記上流側コネクタに対する前記下流側コネクタの任意の回転位置において、
前記上流側コネクタの内部電極端子と前記下流側コネクタの内部電極端子とは電気的に接続され、かつ、前記上流側コネクタの外部電極端子と前記下流側コネクタの外部電極端子とは電気的に接続されている、請求項13に記載の架空線保守作業システム。
【請求項15】
前記第1ケーブルは、
前記ウィークリンク装置と、
前記ウィークリンク装置から見て前記回転翼機側の第1上流側ケーブル部と、
前記ウィークリンク装置から見て前記作業機器側の第1下流側ケーブル部とを有し、
前記ウィークリンク装置は、
前記第1上流側ケーブル部の側に取り付けられた第1磁石と、
前記第1下流側ケーブル部の側に取り付けられた第2磁石とを有し、
前記第1磁石および前記第2磁石は前記ウィークリンク装置を構成し、前記閾値は、前記第1磁石の磁力と前記第2磁石の磁力とによって決定される吸着力にしたがって予め定められる、請求項7に記載の架空線保守作業システム。
【請求項16】
前記第1ケーブルは、
前記ウィークリンク装置と、
前記ウィークリンク装置から見て前記回転翼機側の第1上流側ケーブル部と、
前記ウィークリンク装置から見て前記作業機器側の第1下流側ケーブル部とを有し、
前記ウィークリンク装置は、前記第1上流側ケーブル部と前記第1下流側ケーブル部とを止める留め具である、請求項7に記載の架空線保守作業システム。
【請求項17】
前記第2ケーブルは、前記第1上流側ケーブル部の外部および前記第1下流側ケーブル部の外部に沿って配設され、または前記第1上流側ケーブル部の内部および前記第1下流側ケーブル部の内部に配設され、前記ウィークリンク装置をバイパスする、請求項15または請求項16に記載の架空線保守作業システム。
【請求項18】
前記第1ケーブルの、前記回転翼機から前記ウィークリンク装置までの間、および/または、前記ウィークリンク装置から前記作業機器までの間に、少なくとも1つの弾性部材を有する、請求項2から請求項9および請求項12から請求項17のいずれかに記載の架空線保守作業システム。
【請求項19】
前記第1ケーブルおよび前記第2ケーブルの巻き取りおよび繰り出しを行うケーブルリールをさらに有する、請求項1に記載の架空線保守作業システム。
【請求項20】
前記ケーブルリールと機械的に接続された巻き取りモータを有し、
前記巻き取りモータが前記ケーブルリールを回転させることにより、前記第1ケーブルおよび前記第2ケーブルの巻き取りおよび繰り出しを行う、請求項19に記載の架空線保守作業システム。
【請求項21】
発電装置を有する回転翼機と、
電動モータを有し、供給された電力で前記電動モータを駆動して架空地線に沿って走行しながら前記架空地線の保守作業を行う作業機器と、
前記回転翼機から前記作業機器を吊り下げる第1ケーブルと、
前記発電装置が発電した電力を前記回転翼機の飛行中に前記作業機器に供給する第2ケーブルと、
前記第1ケーブルおよび前記第2ケーブルの巻き取りおよび繰り出しを行うケーブルリールと、
前記ケーブルリールと機械的に接続された巻き取りモータと、
前記巻き取りモータの回転方向および回転量を制御するコントローラ
を備え、
前記巻き取りモータが前記ケーブルリールを回転させることにより、前記第1ケーブルおよび前記第2ケーブルの巻き取りおよび繰り出しを行い、
前記作業機器が前記架空地線に沿って走行している期間中は、前記コントローラは、前記第1ケーブルおよび前記第2ケーブルを所定の張力で引っ張るよう、前記巻き取りモータの回転方向および回転量を調整する架空線保守作業システム。
【請求項22】
前記巻き取りモータはロータを有し、
前記コントローラは、
前記ロータの所定の回転位置である基準位置と、前記基準位置における前記ケーブルリールから前記作業機器までの前記第1ケーブルおよび前記第2ケーブルの長さとの関係、および、
前記巻き取りモータの回転方向および回転量から、前記第1ケーブルおよび前記第2ケーブルの現在の長さを算出し、算出した長さに応じて前記巻き取りモータの回転方向および回転量を調整する、請求項21に記載の架空線保守作業システム。
【請求項23】
前記コントローラは、前記回転翼機の高度を指示する制御信号を出力することが可能であり、
前記第1ケーブルおよび前記第2ケーブルの長さが予め定められた所定の長さよりも長い場合には、前記コントローラは前記回転翼機の高度を下げるよう指示する制御信号を出力し、
前記第1ケーブルおよび前記第2ケーブルの長さが予め定められた所定の長さよりも短い場合には、前記コントローラは前記回転翼機の高度を上げるよう指示する制御信号を出力する、請求項22に記載の架空線保守作業システム。
【請求項24】
前記第1ケーブルおよび前記第2ケーブルの長さが予め定められた所定の長さよりも短い場合には、前記コントローラは外部に警告を発する、請求項23に記載の架空線保守作業システム。
【請求項25】
前記コントローラは、音、光および振動のうちの少なくとも一つにより前記警告を発する、請求項24に記載の架空線保守作業システム。
【請求項26】
前記作業機器と有線または無線で通信する端末装置をさらに備え、
前記端末装置は、
前記作業機器の作業状況を表すデータを受信する通信回路と、
前記データを表示する表示装置と
を備え、
前記表示装置に前記警告を表示する、請求項24に記載の架空線保守作業システム。
【請求項27】
発電装置を有する回転翼機と、
電動モータを有し、供給された電力で前記電動モータを駆動して架空地線に沿って走行しながら前記架空地線の保守作業を行う作業機器と、
前記回転翼機から前記作業機器を吊り下げる第1ケーブルと、
前記発電装置が発電した電力を前記回転翼機の飛行中に前記作業機器に供給する第2ケーブルと、
前記第1ケーブルおよび前記第2ケーブルの巻き取りおよび繰り出しを行うケーブルリールと、
前記ケーブルリールと機械的に接続された巻き取りモータと、
前記ケーブルリールと前記巻き取りモータとを支持するブラケット
を備え、
前記巻き取りモータが前記ケーブルリールを回転させることにより、前記第1ケーブルおよび前記第2ケーブルの巻き取りおよび繰り出しを行う、架空線保守作業システム。
【請求項28】
前記作業機器は、前記作業機器が前記架空地線に載置される際に前記作業機器を前記架空地線に誘導するガイドを有する、請求項1から請求項27のいずれかに記載の架空線保守作業システム。
【請求項29】
前記作業機器が前記架空地線の上方から前記架空地線に載置される場合、前記ガイドは、前記架空地線の延びる方向に平行で、かつ、地平面に対して斜めの方向に広がる、少なくとも1つの棒状部材または板状部材である、請求項28に記載の架空線保守作業システム。
【請求項30】
前記ガイドは、少なくとも2つの板状部材であり、
前記少なくとも2つの板状部材は、前記架空地線の延びる方向に平行で、地平面に対して斜めの方向に広がり、かつ、前記少なくとも2つの板状部材の間に前記架空地線を含むよう前記作業機器を前記架空地線に誘導する、請求項28に記載の架空線保守作業システム。
【請求項31】
前記作業機器は、
風を受けるフィンと、
風向きを検出するセンサと、
前記フィンの向きを変更する電動モータと、
前記センサが検出した前記風向きに応じて前記電動モータを駆動し、前記フィンの向きを調整する制御装置と、
を備える、請求項28に記載の架空線保守作業システム。
【請求項32】
前記回転翼機は、回転翼を回転させるエンジンを有する、請求項1から請求項31のいずれかに記載の架空線保守作業システム。
【請求項33】
前記回転翼機は回転翼を回転させるドローンモータを有し、
前記発電装置は、前記第2ケーブルを介して前記作業機器に供給する電力、および、前記ドローンモータを回転させる電力を生成する燃料電池であり、
前記作業機器は、前記作業機器に供給された前記電力を利用して前記電動モータを駆動し、前記架空地線を自走する、請求項1から請求項31のいずれかに記載の架空線保守作業システム。
【請求項34】
前記作業機器は少なくとも1台のカメラを有し、前記保守作業のために前記カメラを利用して前記架空地線を撮影する、請求項1から請求項33のいずれかに記載の架空線保守作業システム。
【請求項35】
少なくとも1本の電線が前記架空地線と同じ方向に併設されており、
前記少なくとも1台のカメラは2台以上のカメラであり、
前記2台以上のカメラの各々は、前記架空地線および前記少なくとも1本の電線を撮影する、請求項34に記載の架空線保守作業システム。
【請求項36】
前記少なくとも1台のカメラは、ジンバルを介して前記作業機器に接続されている、請求項34または請求項35に記載の架空線保守作業システム。
【請求項37】
前記回転翼機は無人ヘリコプターである、請求項1から請求項36のいずれかに記載の架空線保守作業システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線路に架設された架空線の保守作業に用いられる架空線保守作業システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電力を運ぶ電線路では、支持物である鉄塔に送電線および架空地線が架設されている。架空地線は、送電線などの他の架空線を雷から保護するために架設される。電力会社は、送電線および架空地線の保守作業を定期的に行う。架空地線は比較的細いため、人が架空地線に直接ぶら下がって検査を行うことができない。そのため、架空地線の検査を行う自動検査機器の開発が進められている(例えば、特許文献1参照)。自動検査機器はバッテリを搭載しており架空地線上を自走できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-062946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動検査機器の重量はバッテリ等に起因して大きくなる。そのため複数の作業員の各々が、分解した自動検査機器を持って鉄塔を登り、鉄塔の最上部で機器を組み立てている。
【0005】
作業員に組み立てられた後、自動検査機器は現在の鉄塔から架空地線を自走して次の鉄塔に向かい、架空地線を検査する。その後は、作業員が存在する鉄塔に戻ってくることが求められる。山岳地帯などでは、作業員が次の鉄塔に移動することが困難な場合があるからである。
【0006】
バッテリの電力が途中で枯渇し、架空地線の途中で自動検査機器が止まってしまった場合、人が直接回収に向かうことは困難であるから、高所作業車等を利用して回収することになる。この場合、検査コストが高額化する。バッテリの電力が途中で枯渇しないようにバッテリ容量を大きくしようとすると、バッテリが大型化し、自動検査機器の重量が大きくなるという課題がある。
【0007】
本発明は、架空線の保守作業を容易にする架空線保守作業システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある実施形態に係る架空線保守作業システムは、発電装置を有する回転翼機と、電動モータを有し、供給された電力で前記電動モータを駆動して架空地線に沿って走行しながら前記架空地線の保守作業を行う作業機器と、前記回転翼機から前記作業機器を吊り下げる第1ケーブルと、前記発電装置が発電した電力を前記回転翼機の飛行中に前記作業機器に供給する第2ケーブルとを備える。
【0009】
回転翼機の発電装置から作業機器に電力を供給し、作業機器は供給された電力を利用して保守作業を行う。作業機器が、重量物であるバッテリを内蔵する必要がなく、または内蔵するとしても従来よりも低容量でよく軽量化できるため、従来よりも長い時間保守作業を行うことが可能になる。回転翼機の最大積載量以内であれば、回転翼機に搭載される発電装置の発電量は比較的容易に増加できるため、作業機器を比較的長い時間稼働させることができる。
【0010】
ある実施形態において、前記第1ケーブルは、前記回転翼機側の端部から、前記作業機器側の端部までの間にウィークリンク装置を有し、前記ウィークリンク装置は、前記ウィークリンク装置の両端が予め定められた閾値を超える荷重で引っ張られたときに物理的に切断されてもよい。
【0011】
回転翼機に所定以上の大きさの荷重が掛かった場合、ウィークリンク装置が切断されることにより、その荷重から回転翼機を解放することができる。
【0012】
ある実施形態において、前記閾値は、前記作業機器の重量より大きく、前記回転翼機が飛行を制御することが可能な重量未満の範囲内であってもよい。
【0013】
使用する作業機器の重量より大きく、回転翼機が飛行を制御することが可能な重量未満の閾値を有するウィークリンク装置を採用することにより、回転翼機は作業機器を支えながら作業機器の保守作業を補助できる。
【0014】
ある実施形態において、前記閾値は、前記作業機器の重量より大きく、前記回転翼機の可搬重量未満の範囲内であってもよい。
【0015】
作業機器の重量より大きく、回転翼機の可搬重量未満の閾値を有するウィークリンク装置を採用することにより、回転翼機は作業機器を支えながら作業機器の保守作業を補助できる。
【0016】
ある実施形態において、前記作業機器が前記架空地線の保守作業を行っている期間は、前記第1ケーブルの張力は作業機器の重量よりも小さくてもよい。
【0017】
作業機器が自走することによって第1ケーブルの張力は作業機器の重量よりも小さくなるため、ウィークリンク装置が切断されることはない。
【0018】
ある実施形態において、前記回転翼機は、前記第1ケーブルで前記作業機器を牽引してもよい。
【0019】
作業機器が自走することに加え、回転翼機が第1ケーブルで作業機器を牽引することにより、作業機器はより高速に移動することができる。牽引中も保守作業を行うことにより、作業の迅速化を図ることが可能になる。
【0020】
ある実施形態において、前記第1ケーブルは、前記ウィークリンク装置と、前記ウィークリンク装置を除く部分であるケーブル部とを有し、前記閾値は、前記ケーブル部の切断荷重よりも小さくてもよい。
【0021】
ウィークリンク装置の閾値(切断荷重)がケーブル部の切断荷重よりも小さいことにより、第1ケーブルに閾値以上の荷重がかかったときは、第1ケーブルはウィークリンク装置において切断される。
【0022】
ある実施形態において、前記ウィークリンク装置はロープ形状を有し、前記ウィークリンク装置の径の平均値は、前記ケーブル部の径の平均値よりも小さくてもよい。
【0023】
ウィークリンク装置の径の平均値をケーブル部の径の平均値よりも小さくすることで、ウィークリンク装置が切断される閾値をケーブル部の切断荷重よりも小さくすることができる。
【0024】
ある実施形態において、前記ウィークリンク装置を構成する素材と前記ケーブル部の素材とは異なっており、前記ウィークリンク装置の切断荷重は、前記ケーブル部の切断荷重よりも小さくてもよい。
【0025】
ウィークリンク装置の素材をケーブル部の素材とは異ならせ、かつウィークリンク装置の切断荷重をケーブル部の切断荷重よりも小さくすることで、ウィークリンク装置が切断される閾値をケーブル部の切断荷重よりも小さくすることができる。
【0026】
ある実施形態において、前記第1ケーブルおよび前記第2ケーブルは並走してもよい。
【0027】
ある実施形態において、前記第2ケーブルの少なくとも一部は、前記第1ケーブルの内部に収容されていてもよい。
【0028】
ある実施形態において、前記第1ケーブルは、前記ウィークリンク装置と、前記ウィークリンク装置を除く部分であるケーブル部とを有し、前記第2ケーブルは、前記ケーブル部の内部に収容され、かつ、前記ウィークリンク装置をバイパスしてもよい。
【0029】
ある実施形態において、前記第1ケーブルは、ウィークリンク装置と、前記ウィークリンク装置から見て前記回転翼機側の第1上流側ケーブル部と、前記ウィークリンク装置から見て前記作業機器側の第1下流側ケーブル部とを有し、前記第2ケーブルは、前記第1上流側ケーブル部の内部に収容された第2上流側ケーブル部と、前記第1下流側ケーブル部の内部に収容された第2下流側ケーブル部とを有し、前記ウィークリンク装置は、前記第1上流側ケーブル部に固定され、かつ前記第2上流側ケーブル部と電気的に接続されている上流側コネクタと、前記第1下流側ケーブル部に固定され、かつ前記第2下流側ケーブル部と電気的に接続されている下流側コネクタとを有し、前記上流側コネクタおよび前記下流側コネクタは前記ウィークリンク装置を構成し、前記上流側コネクタと前記下流側コネクタとは相対的に回転可能であり、かつ、任意の回転位置において、前記第2上流側ケーブル部および前記第2下流側ケーブル部は、前記上流側コネクタおよび前記下流側コネクタを介して電気的に接続されていてもよい。
【0030】
上流側コネクタと下流側コネクタとは相対的に回転可能で、かつ回転位置にかかわらず第2上流側ケーブル部および第2下流側ケーブル部は電気的に接続されている。これにより、運搬中および/または作業中の第1および第2ケーブルのねじれを回避しつつ第2ケーブルの導通を確保することができる。また、上流側コネクタと下流側コネクタとがウィークリンク装置を兼ねているため、ウィークリンク装置と別個に設ける場合と比較して構成を簡単化できる。
【0031】
ある実施形態において、前記上流側コネクタおよび前記下流側コネクタは、それぞれ、中心軸を含む内部電極端子と、前記内部電極端子から所定距離離れた位置で前記内部電極端子を囲む外部電極端子とを有し、前記上流側コネクタに対する前記下流側コネクタの任意の回転位置において、前記上流側コネクタの内部電極端子と前記下流側コネクタの内部電極端子とは電気的に接続され、かつ、前記上流側コネクタの外部電極端子と前記下流側コネクタの外部電極端子とは電気的に接続されていてもよい。
【0032】
上流側コネクタと下流側コネクタとが相対的に回転可能であることにより、ケーブルのねじれを回避しつつ、上流側コネクタの内部電極端子と下流側コネクタの内部電極端子同士、および、上流側コネクタの外部電極端子と下流側コネクタの外部電極端子同士の電気的な導通を確保することができる。
【0033】
ある実施形態において、前記第1ケーブルは、ウィークリンク装置と、前記ウィークリンク装置から見て前記回転翼機側の第1上流側ケーブル部と、前記ウィークリンク装置から見て前記作業機器側の第1下流側ケーブル部とを有し、前記ウィークリンク装置は、前記第1上流側ケーブル部の側に取り付けられた第1磁石と、前記第1下流側ケーブル部の側に取り付けられた第2磁石とを有し、前記第1磁石および前記第2磁石は前記ウィークリンク装置を構成し、前記閾値は、前記第1磁石の磁力と前記第2磁石の磁力とによって決定される吸着力にしたがって予め定められてもよい。
【0034】
第1上流側ケーブル部に取り付けられた第1磁石と、第1下流側ケーブル部に取り付けられた第2磁石とを有するウィークリンク装置を設ける。第1磁石および第2磁石がウィークリンク装置を構成する。ウィークリンク装置の閾値は、第1磁石と第2磁石とが互いに吸着する吸着力にしたがって決定される。これにより、荷重が吸着力よりも小さい範囲内で、回転翼機から作業機器を吊り下げることが可能になる。
【0035】
ある実施形態において、前記第1ケーブルは、前記ウィークリンク装置と、前記ウィークリンク装置から見て前記回転翼機側の第1上流側ケーブル部と、前記ウィークリンク装置から見て前記作業機器側の第1下流側ケーブル部とを有し、前記ウィークリンク装置は、前記第1上流側ケーブル部と前記第1下流側ケーブル部とを止める留め具であってもよい。
【0036】
ある実施形態において、前記第2ケーブルは、前記第1上流側ケーブル部の外部および前記第1下流側ケーブル部の外部に沿って配設され、または前記第1上流側ケーブル部の内部および前記第1下流側ケーブル部の内部に配設され、前記ウィークリンク装置をバイパスしてもよい。
【0037】
第2ケーブルは、第1上流側ケーブル部および第1下流側ケーブル部の外部に沿って、またはそれらの内部に配設されているが、ウィークリンク装置の位置においてはウィークリンク装置をバイパスして配設されている。これにより、ウィークリンク装置を構成する磁石または留め具と第2ケーブルとの干渉は回避される。
【0038】
ある実施形態において、前記第1ケーブルの、前記回転翼機から前記ウィークリンク装置までの間、および/または、前記ウィークリンク装置から前記作業機器までの間に、少なくとも1つの弾性部材を有してもよい。
【0039】
ウィークリンク装置の回転翼機側、および/または、作業機器側に少なくとも1つの弾性部材を設けることにより、瞬間的に閾値を超えるような荷重がかかった場合でもウィークリンク装置の切断を回避できる。
【0040】
ある実施形態において、前記第1ケーブルおよび前記第2ケーブルの巻き取りおよび繰り出しを行うケーブルリールをさらに有してもよい。
【0041】
第1および第2ケーブルの巻き取りまたは繰り出しを行うケーブルリールを設けることにより、第1および第2ケーブルの不必要なたるみや、架空地線からの作業機器の浮き上がりを回避できる。これにより、回転翼機の高度を頻繁に変えることなく、作業機器と架空地線との距離を調整できる。
【0042】
ある実施形態において、前記ケーブルリールと機械的に接続された巻き取りモータを有し、前記巻き取りモータが前記ケーブルリールを回転させることにより、前記第1ケーブルおよび前記第2ケーブルの巻き取りおよび繰り出しを行ってもよい。
【0043】
巻き取りモータを利用すると、第1ケーブルおよび第2ケーブルの巻き取りおよび繰り出しを電動化できる。
【0044】
ある実施形態において、前記巻き取りモータの回転方向および回転量を制御するコントローラをさらに備え、前記作業機器が前記架空地線に沿って走行している期間中は、前記コントローラは、前記第1ケーブルおよび前記第2ケーブルを所定の張力で引っ張るよう、前記巻き取りモータの回転方向および回転量を調整してもよい。
【0045】
作業機器が架空地線に沿って走行している期間中は、コントローラは、所定の張力で第1および第2ケーブルを引っ張るよう、巻き取りモータの回転方向および回転量を調整する。これにより、第1および第2ケーブルのたるみを防止することができ、第1および第2ケーブルが回転翼機のメインロータに接触し、または他の架線と接触することを回避できる。
【0046】
ある実施形態において、前記巻き取りモータはロータを有し、前記コントローラは、前記ロータの所定の回転位置である基準位置と、前記基準位置における前記ケーブルリールから前記作業機器までの前記第1ケーブルおよび前記第2ケーブルの長さとの関係、および、前記巻き取りモータの回転方向および回転量から、前記第1ケーブルおよび前記第2ケーブルの現在の長さを算出し、算出した長さに応じて前記巻き取りモータの回転方向および回転量を調整してもよい。
【0047】
コントローラは第1ケーブルおよび第2ケーブルの現在の長さを算出し、算出した長さに応じて巻き取りモータの回転方向および回転量を調整する。第1ケーブルおよび第2ケーブルの長さを例えば一定の範囲に維持することにより、概ね、回転翼機と作業機器との距離を維持することができる。
【0048】
ある実施形態において、前記コントローラは、前記回転翼機の高度を指示する制御信号を出力することが可能であり、前記第1ケーブルおよび前記第2ケーブルの長さが予め定められた所定の長さよりも長い場合には、前記コントローラは前記回転翼機の高度を下げるよう指示する制御信号を出力し、前記第1ケーブルおよび前記第2ケーブルの長さが予め定められた所定の長さよりも短い場合には、前記コントローラは前記回転翼機の高度を上げるよう指示する制御信号を出力してもよい。
【0049】
回転翼機が作業機器から離れすぎている場合には、コントローラは回転翼機の高度を下げさせ、作業機器に近付くよう飛行させる。また回転翼機が作業機器に近すぎる場合には、コントローラは回転翼機の高度を上げさせ、作業機器から離れるよう飛行させる。
【0050】
ある実施形態において、前記第1ケーブルおよび前記第2ケーブルの長さが予め定められた所定の長さよりも短い場合には、前記コントローラは外部に警告を発してもよい。
【0051】
第1ケーブルおよび第2ケーブルの長さが予め定められた所定の長さよりも短い場合には、回転翼機が作業機器に近づきすぎている可能性がある。その場合、警告を発することにより、外部に注意を喚起することができる。
【0052】
ある実施形態において、前記コントローラは、音、光および振動のうちの少なくとも一つにより前記警告を発してもよい。
【0053】
音、光および/または振動により警告を発することにより、人間の注意を的確に喚起することができる。
【0054】
ある実施形態において、前記作業機器と有線または無線で通信する端末装置をさらに備え、前記端末装置は、前記作業機器の作業状況を表すデータを受信する通信回路と、前記データを表示する表示装置とを備え、前記表示装置に前記警告を表示してもよい。
【0055】
オペレータ等が有する端末装置の表示装置に注意を喚起する警告を表示することにより、オペレータの手元で視覚的に注意を喚起することができる。
【0056】
ある実施形態において、前記ケーブルリールと前記巻き取りモータとを支持するブラケットをさらに備えてもよい。
【0057】
ブラケットによってケーブルリールと巻き取りモータとを固定させることにより、巻き取りモータの回転をケーブルリールに伝達することができる。
【0058】
ある実施形態において、前記作業機器は、前記作業機器が前記架空地線に載置される際に前記作業機器を前記架空地線に誘導するガイドを有してもよい。
【0059】
ガイドを設けることにより、作業機器を容易に架空地線に載せることが可能になる。
【0060】
ある実施形態において、前記作業機器が前記架空地線の上方から前記架空地線に載置される場合、前記ガイドは、前記架空地線の延びる方向に平行で、かつ、地平面に対して斜めの方向に広がる、少なくとも1つの棒状部材または板状部材であってもよい。
【0061】
ある実施形態において、前記ガイドは、少なくとも2つの板状部材であり、前記少なくとも2つの板状部材は、前記架空地線の延びる方向に平行で、地平面に対して斜めの方向に広がり、かつ、前記少なくとも2つの板状部材の間に前記架空地線を含むよう前記作業機器を前記架空地線に誘導してもよい。
【0062】
ある実施形態において、前記作業機器は、風を受けるフィンと、風向きを検出するセンサと、前記フィンの向きを変更する電動モータと、前記センサが検出した前記風向きに応じて前記電動モータを駆動し、前記フィンの向きを調整する制御装置とを備えてもよい。
【0063】
風向きに応じてフィンの向きを調整することで、作業機器の向きおよび姿勢を安定させることができる。
【0064】
ある実施形態において、前記回転翼機は、回転翼を回転させるエンジンを有してもよい。
【0065】
回転翼機がエンジンを搭載することにより、比較的長時間の飛行が可能になり、作業機器の作業時間を長く確保することができる。
【0066】
ある実施形態において、前記回転翼機は回転翼を回転させるドローンモータを有し、前記発電装置は、前記第2ケーブルを介して前記作業機器に供給する電力、および、前記ドローンモータを回転させる電力を生成する燃料電池であり、前記作業機器は、前記作業機器に供給された前記電力を利用して前記電動モータを駆動し、前記架空地線を自走してもよい。
【0067】
回転翼機がドローンモータで回転翼を回転させる場合、回転翼機に燃料電池を搭載することにより、当該燃料電池を利用すればドローンモータおよび作業機器の両方に電力を供給することができる。
【0068】
ある実施形態において、前記作業機器は少なくとも1台のカメラを有し、前記保守作業のために前記カメラを利用して前記架空地線を撮影してもよい。
【0069】
ある実施形態において、少なくとも1本の電線が前記架空地線と同じ方向に併設されており、前記少なくとも1台のカメラは2台以上のカメラであり、前記2台以上のカメラの各々は、前記架空地線および前記少なくとも1本の電線を撮影してもよい。
【0070】
ある実施形態において、前記少なくとも1台のカメラは、ジンバルを介して前記作業機器に接続されていてもよい。
【0071】
ある実施形態において、前記回転翼機は無人ヘリコプターであってもよい。
【発明の効果】
【0072】
本発明の実施形態に係る架空線保守作業システムによれば、回転翼機の発電装置から作業機器に電力を供給し、作業機器は供給された電力を利用して保守作業を行う。作業機器が重量物であるバッテリを内蔵する必要がなく、または内蔵するとしても従来よりも低容量でよく軽量化できるため、従来よりも長い時間保守作業を行うことが可能になる。回転翼機の最大積載量以内であれば、回転翼機に搭載される発電装置の発電量は比較的容易に増加できるため、作業機器を比較的長い時間稼働させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
図1】本発明の実施形態に係る架空線の保守作業を行う架空線保守作業システム100を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係る無人ヘリコプター1および作業機器30の外観側面図である。
図3】本発明の実施形態に係る無人ヘリコプター1および作業機器30の正面図である。
図4】本発明の実施形態に係る第1ケーブル51、第2ケーブル52、第3ケーブル53を示す図である。
図5】本発明の実施形態に係る第1ケーブル51と並走するように設けられた第2、第3ケーブル52、53を示す図である。
図6】本発明の実施形態に係る無人ヘリコプター1の飛行制御ボックス15のハードウェア構成例を示す図である。
図7】本発明の実施形態に係る作業機器30の制御装置35のハードウェア構成例を示す図である。
図8】本発明の実施形態に係るケーブルリール22を回転させる巻き取りモータ21の構成例を示す図である。
図9】本発明の実施形態に係る回転コネクタ55の構成例を示す図である。
図10】本発明の実施形態に係るウィークリンク装置56の一例を示す図である。
図11】本発明の実施形態に係るウィークリンク装置56の別の例を示す図である。
図12】本発明の実施形態に係るウィークリンク装置56のさらに別の例を示す図である。
図13】本発明の実施形態に係るウィークリンク装置56のさらに別の例を示す図である。
図14】本発明の実施形態に係るウィークリンク装置56のさらに別の例を示す図である。
図15】本発明の実施形態に係るウィークリンク装置56のさらに別の例を示す図である。
図16】本発明の実施形態に係る端末装置の一例であるタブレットコンピュータ110を示す図である。
図17】本発明の実施形態に係る端末装置の別の例である基地局操縦装置110aを示す図である。
図18】本発明の実施形態に係るタブレットコンピュータ110のハードウェア構成例を示す図である。
図19】本発明の実施形態に係る弾性部材57を備えた第1ケーブル51を示す図である。
図20】本発明の実施形態に係るフィン81を備えた作業機器30を示す図である。
図21】本発明の実施形態に係る送電線92を撮影するカメラ38aを備えた作業機器30を示す図である。
図22】本発明の実施形態に係る板状のガイド37を示す図である。
図23】本発明の実施形態に係るスキッドを兼ねるガイド37を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0074】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態に係る架空線保守作業システムを説明する。実施形態の説明において、同様の構成要素には同様の参照符号を付し、重複する場合にはその説明を省略する。以下の実施形態は例示であり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0075】
図1は、実施形態に係る架空線の保守作業を行う架空線保守作業システム100を示す図である。
【0076】
架空線は、鉄塔およびコンクリート柱などを用いて空中に張り渡した電線を指す。電力を運ぶ電線路は、架空線として例えば送電線および架空地線を含む。以下では、架空線保守作業システム100は、架空線のうちの架空地線の保守作業を行う形態を説明するが、架空線保守作業システム100は、送電線などの架空地線以外の架空線の保守作業にも適用可能である。保守作業には、例えば架空地線の撮影、クリーニング(汚れの拭き取り、洗浄)および修理が含まれる。架空地線を撮影することで、架空地線の劣化度合いを確認することができる。以下では、保守作業として架空地線の撮影について説明するが、架空線保守作業システム100は、別の保守作業(例えばクリーニング、修理)にも適用可能である。
【0077】
図1を参照して、電力を運ぶ電線路90では、支持物である鉄塔91に碍子93を介して送電線92が架設されている。鉄塔91の上部には架空地線94が架設されている。架空線保守作業システム100は、回転翼機1と、架空地線94の保守作業を行う作業機器30と、回転翼機1から作業機器30を吊り下げる第1ケーブル51とを備える。作業機器30は、飛行する回転翼機1から吊り下げられながら架空地線94に沿って走行し、架空地線94の保守作業を行う。
【0078】
図2は、回転翼機1および作業機器30の外観側面図である。図3は、回転翼機1および作業機器30の正面図である。
【0079】
回転翼機1は、回転する翼(回転翼)によって揚力および推力の全部または一部を得て飛行する航空機である。本実施形態における回転翼機1は、例えば、無人ヘリコプターまたは無人マルチコプターである。回転翼はエンジンによって回転してもよいし、電動モータによって回転してもよい。回転翼機1の飛行としては、コンピュータプログラムによる自律飛行、一部を自動化する半自律飛行、無線を用いた人による遠隔操作による飛行のいずれかを行い得る。回転翼機1は、GNSS(Global Navigation Satellite System)を援用して、現在位置を三次元的に測定、修正しながら飛行することが可能である。以下に説明する例示的な実施形態においては、回転翼機1は無人ヘリコプターである。「無人」の用語は、回転翼機1の操縦のために人が搭乗する必要がないことを意味しており、無人航空機が操縦者でない人を運搬することは除外しない。
【0080】
図2および図3を参照して、無人ヘリコプター(回転翼機)1は、メインボディ2およびテールボディ3を有する機体4を備える。メインボディ2には、内燃機関であるエンジン8と、発電装置9と、飛行制御ボックス15とが搭載されている。メインボディ2の上方には回転翼であるメインロータ5が設けられており、テールボディ3の後部にテールロータ6が設けられている。エンジン8が発生させた回転はメインロータ5およびテールロータ6に伝達され、メインロータ5およびテールロータ6が回転することにより無人ヘリコプター1は飛行する。メインボディ2の前部にはラジエータ7が設けられている。メインボディ2内には、いずれも図示しない吸気系、メインロータ軸、燃料タンクが収容されている。
【0081】
メインボディ2の後部上側にはコントロールパネル10が設けられており、後部下側に表示灯11が設けられている。コントロールパネル10は、飛行前のチェックポイントやセルフチェック結果等を表示する。コントロールパネル10の表示は地上局でも確認できる。表示灯11は、GNSS制御の状態や機体の異常警告等の表示を行う。メインボディ2の下側には、着陸時に機体4を支える脚であるスキッド12が設けられている。
【0082】
メインボディ2の中央部下側には、第1ケーブル51の巻き取りおよび繰り出しを行うケーブルリール22と、ケーブルリール22と機械的に接続された巻き取りモータ21とが設けられている。ケーブルリール22および巻き取りモータ21は、メインボディ2の下側に固定されたブラケット23によって支持されている。巻き取りモータ21がケーブルリール22を回転させることにより、第1ケーブル51の巻き取りおよび繰り出しを行う。巻き取りモータ21を用いることで、第1ケーブル51の巻き取りおよび繰り出しを電動化することができる。第1ケーブル51の一端は、作業機器30に固定されている。
【0083】
作業機器30は、筐体31および車輪32を備える。車輪32は、作業機器30の前部および後部のそれぞれに設けられている。車輪32のそれぞれは、車軸36を介して筐体31に回転可能に支持されている。筐体31には、電動モータ33、動力伝達機構34、制御装置35が搭載されている。
【0084】
無人ヘリコプター1は、第1ケーブル51を介して作業機器30を吊り下げながら飛行し、作業機器30を架空地線94(図1)の位置に移動させる。無人ヘリコプター1は、作業機器30を架空地線94の上方から下降させて架空地線94に載置させる。図2図3を参照して、作業機器30の筐体31の下部には、作業機器30が架空地線94に載置される際に作業機器30を架空地線94に誘導するガイド37が設けられている。
【0085】
図3を参照して、ガイド37は、筐体31の右下部および左下部のそれぞれに設けられている。筐体31の右下部に設けられたガイド37は、筐体31から右斜め下方に延びる棒状部材である。筐体31の左下部に設けられたガイド37は、筐体31から左斜め下方に延びる棒状部材である。図2を参照して、上記のようなガイド37のペアが筐体31の前部および後部のそれぞれに設けられている。図3を参照して、作業機器30の左右それぞれに設けられたガイド37の間に架空地線94が位置するように、作業機器30を架空地線94に誘導することで、作業機器30を容易に架空地線94に乗せることができる。作業機器30がガイド37を備えることで、作業機器30を容易に架空地線94に乗せることが可能になる。
【0086】
作業機器30の電動モータ33(図2)が発生させた回転は、動力伝達機構34を介して少なくとも一つの車輪32に伝達される。電動モータ33の回転が伝達された車輪32は回転する。車輪32が架空地線94に乗った状態で回転することで、作業機器30は架空地線94に沿って走行する。車輪32は溝32a(図3)を有しており、この溝32aに架空地線94が嵌ることで、作業機器30は架空地線94に沿って安定して走行することができる。
【0087】
作業機器30は、少なくとも一台のカメラ38を備えている。架空地線94に沿って走行しながらカメラ38が架空地線94を撮影することで、作業機器30が走行した領域の架空地線94の画像を取得することができる。作業機器30は2台以上のカメラ38を備えていてもよく、2台以上のカメラ38で架空地線94を撮影してもよい。
【0088】
なお、作業機器30は、走行を一旦停止させて保守作業を行ってもよい。この一旦停止して行う保守作業も“架空地線94を走行しながら行う保守作業”の範疇である。
【0089】
本実施形態の架空線保守作業システム100では、無人ヘリコプター1から作業機器30へ電力が供給され、作業機器30はその供給された電力により動作する。
【0090】
図4は、無人ヘリコプター1から作業機器30を吊り下げるための第1ケーブル51と、無人ヘリコプター1から作業機器30へ電力を供給するための第2ケーブル(電力線)52と、無人ヘリコプター1と作業機器30との間でデータの送受信を行うための第3ケーブル(信号線)53とを示す図である。図4に示す例では、第2ケーブル52および第3ケーブル53は、第1ケーブル51の内部に収容されている。例えば、第2、第3ケーブル52、53のそれぞれの一端は無人ヘリコプター1の飛行制御ボックス15に接続され、第2、第3ケーブル52、53のそれぞれの他端は作業機器30の制御装置35に接続されている。
【0091】
図4に示す例では、第2、第3ケーブル52、53は、第1ケーブル51の内部に収容されていたが、第2、第3ケーブル52、53は、第1ケーブル51の外部で第1ケーブル51と並走するように設けられていてもよい。図5は、第1ケーブル51と並走するように設けられた第2、第3ケーブル52、53を示す図である。
【0092】
以下では、第3ケーブル53を備える架空線保守作業システム100の形態を説明するが、無人ヘリコプター1と作業機器30との間のデータの送受信を無線通信により行う場合は、第3ケーブル53は備えていなくてもよい。
【0093】
図6は、無人ヘリコプター1の飛行制御ボックス15のハードウェア構成例を示す図である。飛行制御ボックス15は、GPSモジュール15a、加速度センサ15b、気圧センサ15c、地磁気センサ15d、超音波センサ15e、通信回路15f、信号処理回路15g、および、ROM15h、RAM15i等の記憶装置15jを備える。飛行制御ボックス15はさらに、電源回路41、モータ駆動回路42、バッテリ43を備える。各構成要素は、例えば配線または内部バス15kを介して相互にデータを送受信し得る。なお、GPSモジュール15aを初めとする各種のセンサを設ける位置は、常に飛行制御ボックス15内である必要はない。例えばGPS衛星からの信号を取得しやすくするため、GPSモジュール15aをテールボディ3上部に設けてもよい。
【0094】
飛行制御ボックス15は、GNSSモジュールの一例としてGPSモジュール15aを備える。GPSモジュール15aは、GPS(Global Positioning System)を用いて現在位置および飛行速度等の飛行データを取得する。GPSモジュール15aの数は1個であってもよいし、複数(例えば2個)であってもよい。
【0095】
加速度センサ15bは、X軸、Y軸およびZ軸の各方向の加速度を検出する三軸加速度センサである。加速度センサ15bが六軸加速度センサであれば、さらに無人ヘリコプター1のロール加速度、ピッチ角速度およびヨー加速度を検出可能である。気圧センサ15cは気圧を検出する。検出された気圧から現在の標高を知ることができる。なお気圧と標高との関係式は公知であるから、本明細書では説明は省略する。地磁気センサ15dは無人ヘリコプター1の現在の方位を検出する。加速度センサ15bおよび地磁気センサ15dの各々から出力されるデータ(機体データ)を利用することにより、無人ヘリコプター1の現在の姿勢を判断することができる。飛行データおよび機体データは、信号処理回路15gに提供される。
【0096】
通信回路15fは、Bluetooth(登録商標)および/またはWi-Fi(登録商標)規格に準拠した無線通信を行う通信回路を有する。通信回路15fはさらに、携帯電話回線または人工衛星を経由する回線を利用した無線通信を行ってもよい。通信回路15fは、飛行前においては飛行経路のデータを受信し、飛行時には無線によって地上と必要な通信を行う。
【0097】
信号処理回路(コントローラ)15gは、記憶装置15jに記憶された制御プログラムを実行して無人ヘリコプター1を飛行させる。より具体的には信号処理回路15gは、上述した飛行データ、機体データ、エンジン回転数やスロットル開度などの運転状態データ等を監視しながら、予め用意された飛行経路に沿って無人ヘリコプター1を飛行させる。
【0098】
なお、無人ヘリコプター1の飛行・運用を管理するオペレータは、飛行状態を目視しながら、予め用意した飛行経路に沿って無人ヘリコプター1を飛行させることもできる。テールボディ3の後端部には、リモコン操縦機からの指令信号を受信するリモコン受信アンテナ13が設けられている。
【0099】
信号処理回路15gは、エンジン8の動作を制御する。エンジン8が発生させた回転はメインロータ5およびテールロータ6(図2)に伝達されるともに、発電装置9(図6)にも伝達され、発電装置9は発電を行う。発電装置9が発電した電力は、電源回路41に供給される。電源回路41は、飛行制御ボックス15の各構成要素に電力を供給する。また、電源回路41は、第2ケーブル52を介して作業機器30に電力を供給する。発電装置9が発電した電力は、無人ヘリコプター1の飛行中に第2ケーブル52を介して作業機器30に供給される。信号処理回路15gは、第3ケーブル53を介して作業機器30との間でデータの送受信を行う。
【0100】
ケーブルリール22を回転させてケーブル51、52、53の巻き取りおよび繰り出しを行う場合、信号処理回路15gは、モータ駆動回路42を制御して、巻き取りモータ21を回転させる。モータ駆動回路42は、信号処理回路15gから受け取った制御信号に応じた駆動電流を巻き取りモータ21に出力して、巻き取りモータ21を回転させる。
【0101】
バッテリ43は、電源回路41から供給される電力により充電される。バッテリ43は、エンジン8が駆動していないとき、すなわち発電装置9が発電を行っていないときに、電源回路41に電力を供給する。これにより、エンジン8が駆動していないときでも、飛行制御ボックス15の各構成要素は動作することができる。バッテリ43が出力した電力は、第2ケーブル52を介して作業機器30に供給されてもよい。
【0102】
図7は、作業機器30の制御装置35のハードウェア構成例を示す図である。制御装置35は、信号処理回路35aと、メモリ35bと、モータ駆動回路35cと、通信回路35dとを備える。無人ヘリコプター1から第2ケーブル52を介して制御装置35に電力が供給され、制御装置35の各構成要素、電動モータ33およびカメラ38は動作することができる。
【0103】
無人ヘリコプター1の通信回路15fと同様、通信回路35dは、Bluetooth(登録商標)および/またはWi-Fi(登録商標)規格に準拠した無線通信を行う通信回路を有する。通信回路35dはさらに、携帯電話回線または人工衛星を経由する回線を利用した無線通信を行ってもよい。通信回路35dは、保守作業前においては保守作業に関するデータを受信し、保守作業中は無線によって地上と必要な通信を行う。
【0104】
信号処理回路35aは、メモリ35bに記憶された制御プログラムを実行して作業機器30の動作を制御する。架空地線94に乗った作業機器30を走行させる場合、信号処理回路35aは、モータ駆動回路35cを制御して、電動モータ33を回転させる。モータ駆動回路35cは、信号処理回路35aから受け取った制御信号に応じた駆動電流を電動モータ33に出力して、電動モータ33を回転させる。信号処理回路35aは、カメラ38の動作を制御して、架空地線94の撮影を行う。得られた架空地線94の画像データは、メモリ35bに記録される。架空地線94の画像データは、通信回路35dを介して地上の機器に送信されてもよい。架空地線94の画像データは、例えば架空地線94の劣化度合いの確認に用いられる。
【0105】
なお、作業機器30の運用を管理するオペレータは、保守作業状態を目視しながら、作業機器30を遠隔操作してもよい。
【0106】
本実施形態の架空線保守作業システム100では、無人ヘリコプター1から作業機器30に電力を供給し、作業機器30は供給された電力を利用して保守作業を行う。作業機器30は、重量物であるバッテリを内蔵する必要がなく、または内蔵するとしても従来よりも低容量でよく軽量化できるため、従来よりも長い時間保守作業を行うことが可能になる。無人ヘリコプター1の最大積載量以内であれば、無人ヘリコプター1に搭載される発電装置9の発電量は比較的容易に増加できるため、作業機器30を比較的長い時間稼働させることができる。
【0107】
無人ヘリコプター1は、内燃機関であるエンジン8を搭載する。これにより、比較的長時間の飛行が可能になり、作業機器30の作業時間を長く確保することができる。
【0108】
本実施形態の架空線保守作業システム100では、ケーブルリール22(図2)により、第1、第2、第3ケーブル51、52、53の巻き取りまたは繰り出しを行う。これにより、ケーブル51、52、53の不必要なたるみや、架空地線94からの作業機器30の浮き上がりを回避することができる。これにより、無人ヘリコプター1の高度を頻繁に変えることなく、作業機器30と架空地線94との距離を調整することができる。
【0109】
図8は、ケーブルリール22を回転させる巻き取りモータ21の構成例を示す図である。巻き取りモータ21は、モータケース211と、ロータ212と、ステータ213と、モータ回転センサ214とを備える。ステータ213は、モータケース211内に配置されている。ステータ213にはコイル(図示せず)が巻き回されている。ロータ212は、ステータ213の内側に配置されている。ロータ212は、モータケース211によって回転可能に支持されている。ロータ212の外周面には、N極とS極とが周方向に交互に着磁されている。
【0110】
モータ回転センサ214は例えばエンコーダである。モータ回転センサ214は、ロータ212の回転角を検出し、回転角に応じた信号を信号処理回路15g(図6)およびモータ駆動回路42へ出力する。例えば、モータ回転センサ214は、ロータ212の回転を所定の角度毎に検出し、矩形波信号または正弦波信号を出力する。信号処理回路15gおよびモータ駆動回路42は、モータ回転センサ214の出力信号から巻き取りモータ21の回転数および回転速度等を算出することができる。信号処理回路15gは、巻き取りモータ21のロータ212の回転方向および回転量から、ケーブル51、52、53の現在の長さを算出する。例えば、記憶装置15j(図6)には、ロータ212の所定の回転位置である基準位置と、基準位置におけるケーブルリール22から作業機器30までのケーブル51、52、53の長さとの関係を示す情報が予め記憶されている。信号処理回路15gは、その基準位置と長さとの関係を示す情報と、ロータ212の回転方向および回転量とから、ケーブル51、52、53の現在の長さを算出することができる。信号処理回路15gは、算出した長さに応じて巻き取りモータ21の回転方向および回転量を調整する。ケーブル51、52、53の長さを例えば一定の範囲に維持することにより、無人ヘリコプター1と作業機器30との間の距離を概ね一定に維持することができる。
【0111】
上記のように、信号処理回路15gは、巻き取りモータ21の回転方向および回転量を制御する。作業機器30が架空地線94に沿って走行している期間中は、信号処理回路15gは、ケーブル51、52、53を所定の張力で引っ張るよう、巻き取りモータ21の回転方向および回転量を調整する。これにより、ケーブル51、52、53のたるみを防止することができ、ケーブル51、52、53が無人ヘリコプター1のメインロータ5に接触したり、他の架線と接触したりすることを回避できる。また、信号処理回路15gは、無人ヘリコプター1の高度を指示する制御信号を出力する。ケーブル51、52、53の長さが予め定められた所定の長さよりも長い場合には、信号処理回路15gは無人ヘリコプター1の高度を下げるよう指示する制御信号を出力し、無人ヘリコプター1は高度を下げる。ケーブル51、52、53の長さが予め定められた所定の長さよりも短い場合には、信号処理回路15gは無人ヘリコプター1の高度を上げるよう指示する制御信号を出力し、無人ヘリコプター1は高度を上げる。
【0112】
無人ヘリコプター1が作業機器30から離れすぎている場合には、信号処理回路15gは無人ヘリコプター1の高度を下げさせ、作業機器30に近付くよう飛行させる。また無人ヘリコプター1が作業機器30に近すぎる場合には、信号処理回路15gは無人ヘリコプター1の高度を上げさせ、作業機器30から離れるよう飛行させる。無人ヘリコプター1の高度の変更と並行して、信号処理回路15gは、ケーブル51、52、53を所定の張力で引っ張るよう、巻き取りモータ21の回転方向および回転量を調整する。
【0113】
次に、ケーブル51、52、53のねじれを低減する機構を説明する。図2および図3を参照して、第1ケーブル51は回転コネクタ55を有する。回転コネクタ55は、第1ケーブル51における無人ヘリコプター1と作業機器30との間の位置に配置されている。回転コネクタ55よりも無人ヘリコプター1側の第1ケーブル51の部分と、回転コネクタ55よりも作業機器30側の第1ケーブル51の部分とは、回転コネクタ55により互いに独立して回転することができる。このため、例えば作業機器30が空中で回転した場合でも、第1ケーブル51のねじれ量を低減させることができる。
【0114】
この例では、上述したように第2ケーブル52および第3ケーブル53は、第1ケーブル51の内部に収容されている。回転コネクタ55は、回転が発生しても第2ケーブル52および第3ケーブル53の導通を維持することができる。
【0115】
図9は、回転コネクタ55の構成の一例を示す図である。図9に示す回転コネクタ55は、スリップリングとも称される。回転コネクタ55は、ロータ61と、ロータ61を回転可能に支持する支持部材64とを備える。支持部材64は、筐体67に固定されている。ロータ61は、支持部材64および筐体67に対して相対的に回転可能である。筐体67に対するロータ61の上下方向の移動は、支持部材64によって規制されている。ロータ61には、複数のリング電極62が互いに隙間を開けて配置されている。複数のリング電極62のそれぞれにはブラシ63が接触している。
【0116】
回転コネクタ55よりも無人ヘリコプター1側の第1ケーブル51は、筐体67に固定されている。回転コネクタ55よりも作業機器30側の第1ケーブル51は、ロータ61に固定されている。
【0117】
回転コネクタ55よりも無人ヘリコプター1側のケーブル52および53は、複数の電極65を介して複数のブラシ63と電気的に接続されている。回転コネクタ55よりも作業機器30側のケーブル52および53は、複数の電極66を介して複数のリング電極62と電気的に接続されている。すなわち、無人ヘリコプター1側のケーブル52および53と、作業機器30側のケーブル52および53とは、複数のブラシ63および複数のリング電極62を介して、電気的に接続されている。
【0118】
作業機器30が空中で回転した場合、作業機器30側のケーブル51、52および53の部分を回転させようとする力が発生する。このとき、ロータ61が支持部材64および筐体67から独立して回転することで、ケーブル51、52および53のねじれ量を低減させることができる。
【0119】
ロータ61が回転したとき、リング電極62は、ブラシ63との電気的な接触を維持したまま、ブラシ63に対してスリップする。ロータ61が筐体67に対して相対的に回転しても、電気的な接続は維持される。
【0120】
筐体67に対するロータ61の上下方向の移動は、支持部材64によって規制されている。これにより、ケーブル51、52および53が上下方向に引っ張られても、ブラシ63とリング電極62との電気的な接触は維持される。
【0121】
次に、無人ヘリコプター1に掛かる荷重が一定以上になるとケーブル51、52および53を切断するウィークリンク装置を説明する。無人ヘリコプター1に飛行制御困難な程度の大きさの荷重が掛かった場合、ケーブル51、52および53を切断して、その荷重から無人ヘリコプター1を解放する。
【0122】
図2および図3を参照して、第1ケーブル51はウィークリンク装置56を有する。ウィークリンク装置56は、第1ケーブル51における回転翼機1側の端部と作業機器30側の端部との間の位置に配置されている。ウィークリンク装置56は、ウィークリンク装置56の両端が予め定められた閾値を超える荷重で引っ張られたときに物理的に切断される。閾値は、作業機器30の重量より大きく、無人ヘリコプター1が飛行を制御することが可能な重量未満の範囲内である。例えば、閾値は、作業機器30の重量より大きく、無人ヘリコプター1の可搬重量未満の範囲内である。
【0123】
使用する作業機器30の重量より大きく、無人ヘリコプター1が飛行を制御することが可能な重量未満の閾値を有するウィークリンク装置56を採用することにより、無人ヘリコプター1は作業機器30を支えながら保守作業を補助することができる。また、所定以上の荷重が掛かった場合はウィークリンク装置56が切断されることにより、その荷重から無人ヘリコプター1を解放することができる。
【0124】
図10は、ウィークリンク装置56の一例を示す図である。図10に示すウィークリンク装置56は、コネクタ71および72を備える。
【0125】
第1ケーブル51は、ウィークリンク装置56から見て無人ヘリコプター1側の第1上流側ケーブル部51aと、ウィークリンク装置56から見て作業機器30側の第1下流側ケーブル部51bとを有する。第2ケーブル52は、第1上流側ケーブル部51aの内部に収容された第2上流側ケーブル部52aと、第1下流側ケーブル部51bの内部に収容された第2下流側ケーブル部52bとを有する。第3ケーブル53は、第1上流側ケーブル部51aの内部に収容された第3上流側ケーブル部53aと、第1下流側ケーブル部51bの内部に収容された第3下流側ケーブル部53bとを有する。
【0126】
コネクタ(上流側コネクタ)71は、第1上流側ケーブル部51aに固定され、かつ第2上流側ケーブル部52aおよび第3上流側ケーブル部53aと電気的に接続されている。コネクタ(下流側コネクタ)72は、第1下流側ケーブル部51bに固定され、かつ第2下流側ケーブル部52bおよび第3下流側ケーブル部53bと電気的に接続されている。
【0127】
コネクタ71は、第2上流側ケーブル部52aおよび第3上流側ケーブル部53aと電気的に接続された複数の電極端子73を備える。コネクタ72は、第2下流側ケーブル部52bおよび第3下流側ケーブル部53bと電気的に接続された複数の電極端子74を備える。図10に示す例では、電極端子73はメス端子であり、電極端子74はオス端子である。オス端子とメス端子との関係は逆でもよい。オス端子がメス端子に挿入されることにより、第2上流側ケーブル部52aと第2下流側ケーブル部52bとが電気的に接続されるとともに、第3上流側ケーブル部53aと第3下流側ケーブル部53bとが電気的に接続される。
【0128】
電極端子74が電極端子73に挿入されると、電極端子73および74の少なくとも一方が弾性変形する。弾性変形により生じた弾性力により電極端子73と電極端子74との間に摩擦力が発生する。この摩擦力により、電極端子73と電極端子74との接続が維持される。
【0129】
電極端子73と電極端子74との間に働く最大静止摩擦力が、ウィークリンク装置56の上記閾値の大きさになるように、電極端子73および74の材料、形状およびサイズを予め設定する。これにより、無人ヘリコプター1は作業機器30を支えながら保守作業を補助することができるとともに、所定以上の荷重が掛かった場合はウィークリンク装置56が切断されることによりその荷重から無人ヘリコプター1を解放することができる。
【0130】
作業機器30の車輪32が架空地線94に乗った状態では、作業機器30の重量の一部は架空地線94に掛かっている。このため、作業機器30が架空地線94の保守作業を行っている期間における第1ケーブル51の張力は、作業機器30の重量よりも小さくなる。作業機器30が架空地線94に乗ることで、第1ケーブル51の張力は作業機器30の重量よりも小さくなるため、作業機器30が架空地線94の保守作業を行っている期間は、ウィークリンク装置56は切断されない。
【0131】
なお、無人ヘリコプター1は、第1ケーブル51で作業機器30を牽引してもよい。作業機器30が自走することに加え、無人ヘリコプター1が第1ケーブル51で作業機器30を牽引することにより、作業機器30はより高速に移動することができる。牽引中も保守作業を行うことにより、作業の迅速化を図ることができる。
【0132】
図11は、ウィークリンク装置56の別の例を示す図である。
【0133】
図11に示すウィークリンク装置56は、第1上流側ケーブル部51a側に取り付けられた第1磁石75と、第1下流側ケーブル部51b側に取り付けられた第2磁石76とを有する。図11に示す例では、第1磁石75はコネクタ71に固定され、第2磁石76はコネクタ72に固定されている。
【0134】
コネクタ71とコネクタ72とが接続された状態では、第1磁石75と第2磁石76との間に磁力による吸着力が発生する。
【0135】
電極端子73と電極端子74との間に働く最大静止摩擦力と磁力による吸着力との和が、ウィークリンク装置56の上記閾値の大きさになるように、第1および第2磁石75および76の磁力の大きさを予め設定する。これにより、無人ヘリコプター1は作業機器30を支えながら保守作業を補助することができるとともに、所定以上の荷重が掛かった場合はウィークリンク装置56が切断されることによりその荷重から無人ヘリコプター1を解放することができる。
【0136】
また、磁力による吸着力がウィークリンク装置56の上記閾値の大きさになるように、第1および第2磁石75および76の磁力の大きさを設定してもよい。この場合は、電極端子73と電極端子74との間に働く最大静止摩擦力が小さくても、磁力によりコネクタ71および72はウィークリンク装置56として機能することができる。
【0137】
図12は、ウィークリンク装置56のさらに別の例を示す図である。
【0138】
図12に示すコネクタ71は、電極端子73として、中心軸を含む内部電極端子73aと、内部電極端子73aからそれぞれ所定距離離れた位置で内部電極端子73aを囲む外部電極端子73b、73c、73dとを備える。コネクタ72は、電極端子74として、中心軸を含む内部電極端子74aと、内部電極端子74aからそれぞれ所定距離離れた位置で内部電極端子74aを囲む外部電極端子74b、74c、74dとを備える。
【0139】
コネクタ71とコネクタ72との接続は、第1磁石75と第2磁石76との間に働く吸着力により維持される。接続されたコネクタ71とコネクタ72とは相対的に回転可能である。回転時は、第1磁石75と第2磁石76とは相対的にスリップしながら、その吸着力により接続は維持される。
【0140】
コネクタ71に対するコネクタ72の任意の回転位置において、内部電極端子73aと内部電極端子74aとの電気的な接続は維持される。また、その任意の回転位置において、外部電極端子73bと外部電極端子74bとの電気的な接続、外部電極端子73cと外部電極端子74cとの電気的な接続、外部電極端子73dと外部電極端子74dとの電気的な接続は維持される。
【0141】
コネクタ71とコネクタ72とは相対的に回転可能で、かつ回転位置に関わらず上流側ケーブル部と下流側ケーブルとは電気的に接続されている。これにより、運搬中および/または作業中のケーブルのねじれを回避しつつ、導通を確保することができる。また、コネクタ71とコネクタ72とが回転コネクタを兼ねることが可能であるため、回転コネクタ55(図2)は省略することができる。回転コネクタ55とウィークリンク装置56とを別個に設ける場合と比較して構成を簡単化することができる。
【0142】
図13は、ウィークリンク装置56のさらに別の例を示す図である。
【0143】
図13に示す例では、第1ケーブル51の一部がウィークリンク装置56として機能する。第1ケーブル51は、ウィークリンク装置56と、ウィークリンク装置56を除く部分であるケーブル部とを有する。例えば、第1ケーブル51はロープ形状を有し、第1ケーブル51の一部51cの径の平均値は、ケーブル部の径の平均値よりも小さい。この第1ケーブル51の一部51cがウィークリンク装置56として機能する。
【0144】
第1ケーブル51の一部51cであるウィークリンク装置56の切断荷重は、それ以外のケーブル部の切断荷重よりも小さい。ウィークリンク装置56の切断荷重の大きさは、上述した閾値に設定する。ウィークリンク装置56の閾値(切断荷重)がケーブル部の切断荷重よりも小さいことにより、第1ケーブル51に閾値以上の荷重がかかったときは、第1ケーブル51はウィークリンク装置56において切断される。
【0145】
図14は、ウィークリンク装置56のさらに別の例を示す図である。
【0146】
図14に示す例では、第1ケーブル51の一部51dがウィークリンク装置56として機能する。第1ケーブル51のうちのウィークリンク装置56を構成する素材とケーブル部の素材とは互いに異なっている。第1ケーブル51の一部51dであるウィークリンク装置56の切断荷重は、上述した閾値に設定する。
【0147】
ウィークリンク装置56の切断荷重は、ケーブル部の切断荷重よりも小さい。ウィークリンク装置56の素材をケーブル部の素材とは異ならせ、かつウィークリンク装置56の切断荷重をケーブル部の切断荷重よりも小さくすることで、ウィークリンク装置56が切断される閾値をケーブル部の切断荷重よりも小さくすることができる。
【0148】
図15は、ウィークリンク装置56のさらに別の例を示す図である。
【0149】
図15に示す例では、ウィークリンク装置56は、第1上流側ケーブル部51aと第1下流側ケーブル部51bとを止める留め具である。図15に示す留め具は環形状を有しており、第1上流側ケーブル部51aの下端および第1下流側ケーブル部51bの上端のそれぞれに取り付けられている。
【0150】
第1ケーブル51の内部に収容された第2および第3ケーブル52および53は、ウィークリンク装置56の位置において外部に露出し、ウィークリンク装置56をバイパスしている。第2および第3ケーブル52および53は、第1ケーブル51の外部に沿って配設され、ウィークリンク装置56をバイパスしてもよい。これにより、ウィークリンク装置56と第2および第3ケーブル52および53との干渉は回避される。
【0151】
留め具(ウィークリンク装置)56の耐荷重が、ウィークリンク装置56の上記閾値の大きさになるように、留め具56の材料、形状およびサイズを予め設定する。これにより、無人ヘリコプター1は作業機器30を支えながら保守作業を補助することができるとともに、所定以上の荷重が掛かった場合は留め具56が切断されることによりその荷重から無人ヘリコプター1を解放することができる。
【0152】
次に、オペレータが操作する端末装置を説明する。
【0153】
オペレータは、タブレットコンピュータ、基地局操縦装置等の端末装置を利用して、無人ヘリコプター1の飛行経路の設定、作業機器30による架空地線94の保守作業の設定等を行う。そのような端末装置も架空線保守作業システム100に含まれ得る。
【0154】
図16は、端末装置の一例であるタブレットコンピュータ110を示す図である。図17は、端末装置の別の例である基地局操縦装置110aを示す図である。
【0155】
タブレットコンピュータ110および基地局操縦装置110aは、飛行経路の設定を行うための地図データ等を表示装置に表示してオペレータからの指示を受け付ける。タブレットコンピュータ110はタッチスクリーンパネルを有しており、オペレータからのタッチ操作により、指示を受け付ける。なお、本実施形態による基地局操縦装置110aはノート型PCであり、かつタブレットコンピュータ110と同様のタッチ操作に対応しているとする。
【0156】
以下、図16に示すタブレットコンピュータ110を例示して説明する。タブレットコンピュータ110の基本的な構成と基地局操縦装置110aの基本的な構成とは概ね同じである。よって、下記の説明は基地局操縦装置110aの説明として読み替えることができる。
【0157】
図18は、タブレットコンピュータ110のハードウェア構成例を示している。
【0158】
タブレットコンピュータ110は、CPU111と、メモリ112と、通信回路113と、画像処理回路114と、表示装置115と、タッチスクリーンパネル116と、通信バス117と、報知装置118とを有する。CPU111、メモリ112、通信回路113、画像処理回路114、タッチスクリーンパネル116および報知装置118は、通信バス117で接続されており、通信バス117を介して相互にデータを授受することが可能である。
【0159】
CPU111は、タブレットコンピュータ110の動作を制御する信号処理回路(コンピュータ)である。典型的にはCPU111は半導体集積回路である。CPU111を単に「処理回路」と呼ぶこともある。
【0160】
メモリ112は、CPU111が実行するコンピュータプログラムを記憶する不揮発性の記憶装置(例えばフラッシュメモリ)および揮発性の記憶装置(例えばRAM)である。RAMは、CPU111が演算を行う際のワークメモリとしても利用され得る。CPU111は、タブレットコンピュータ110の起動時にフラッシュメモリからコンピュータプログラムを読み出してRAMに展開し、実行する。
【0161】
通信回路113は、たとえば、Bluetooth(登録商標)および/またはWi-Fi(登録商標)規格に準拠した無線通信を行う無線通信回路である。無人ヘリコプター1の通信回路15fと同様、本明細書では、タブレットコンピュータ110は、Bluetooth(登録商標)規格および/またはWi-Fi規格に準拠した無線通信を行い、無人ヘリコプター1および作業機器30と通信する。通信回路113は、無人ヘリコプター1および作業機器30に送信すべきデータを、通信バス117を介してCPU111から受信する。また通信回路113は、無人ヘリコプター1および作業機器30から受信したデータを、通信バス117を介してCPU111および/またはメモリ112に送信する。通信回路113は、例えば無人ヘリコプター1および作業機器30の作業状況を表すデータを受信して、CPU111および/またはメモリ112に送信する。
【0162】
画像処理回路114は、CPU111の指示に従い、表示装置115に表示する画像を生成する。タッチスクリーンパネル116は、指やペンなどで行われたオペレータのタッチを検出する。検出方式として、静電式、抵抗膜式、光学式、超音波方式、電磁式などが知られている。たとえば、静電容量方式のタッチスクリーンパネル116の場合、タッチスクリーンパネル116は、特定の位置における静電容量の変化を検出し、当該変化に関するデータを、通信バス117を介してCPU111に送信する。CPU111は、送られてきたデータに基づいて、オペレータによるタッチの有無を判断する。
【0163】
本実施形態では、タッチスクリーンパネル116は表示装置115に重畳して設けられている。オペレータは、表示装置115に表示された画像を見ながらタッチ操作を行う。なお、タッチスクリーンパネル116に代えて、またはタッチスクリーンパネル116とともに、マウス、キーボード、ジョイスティック、マイク等の他の入力装置を用いてもよい。
【0164】
無人ヘリコプター1の飛行制御ボックス15は、飛行中に異常を検出した場合、外部に警告を発する動作を行う。例えば、第1ケーブル51の長さが予め定められた所定の長さよりも短い場合、信号処理回路15g(図6)は通信回路15fを介して、タブレットコンピュータ110に警告に関するデータを送信する。タブレットコンピュータ110(図18)の通信回路113が警告に関するデータを受信すると、報知装置118は音、光および振動のうちの少なくとも一つによりオペレータに警告を発する。第1ケーブル51の長さが予め定められた所定の長さよりも短い場合には、無人ヘリコプター1が作業機器30に近づきすぎている可能性がある。その場合、警告を発することにより、オペレータ等に注意を喚起することができる。
【0165】
また、表示装置115が警告に関する画像を表示して、オペレータに警告を発してもよい。オペレータが操作する端末装置110の表示装置115に注意を喚起する警告を表示することにより、オペレータの手元で視覚的に注意を喚起することができる。
【0166】
次に、弾性部材を備えた第1ケーブル51を説明する。
【0167】
図19は、弾性部材57を備えた第1ケーブル51を示す図である。第1ケーブル51は、少なくとも1つの弾性部材57を有し得る。図19に示す第1ケーブル51は、無人ヘリコプター1とウィークリンク装置56との間に一つの弾性部材57を有している。弾性部材57は、第1ケーブル51におけるウィークリンク装置56と作業機器30との間に設けられていてもよい。弾性部材57は例えばスプリングである。
【0168】
無人ヘリコプター1の飛行中、瞬間的にウィークリンク装置56の閾値を超えるような荷重が発生する可能性がある。弾性部材57は、このような瞬間的に大きな荷重が発生した場合、その荷重に応じて伸縮する。荷重に応じて弾性部材57が伸縮することにより、ウィークリンク装置56に掛かる荷重を低減させることができる。このように、第1ケーブル51が弾性部材57を備えることにより、瞬間的に閾値を超えるような荷重が掛かった場合にウィークリンク装置56が切断されることを回避できる。
【0169】
次に、フィンを備えた作業機器30を説明する。
【0170】
図20は、フィンを備えた作業機器30を示す図である。図20に示す作業機器30は、風を受けるフィン81と、フィン81の向きを変更する電動モータ83と、風向きを検出する風向きセンサ85とを備える。電動モータ83は例えばサーボモータである。
【0171】
フィン81は、支持部材82により支持されている。電動モータ83は、回転軸84を中心に支持部材82を回転させることにより、フィン81の向きを変更する。風向きセンサ85が検出した風向きに関する情報は、制御装置35の信号処理回路35a(図7)に入力される。信号処理回路35aは、風向きセンサ85が検出した風向きに応じて電動モータ83を駆動する制御を行い、フィン81の向きを変更する。
【0172】
例えば、フィン81の平面部分の延びる方向が風向きに平行になるようにフィン81の向きを調整することで、作業機器30の向きおよび姿勢を安定させることができる。
【0173】
次に、架空地線94の撮影に加えて送電線92(図1)を撮影する作業機器30を説明する。
【0174】
図21は、送電線92を撮影するカメラを備えた作業機器30を示す図である。図21に示す作業機器30は、架空地線94を撮影するカメラ38と、送電線92を撮影するカメラ38aとを備える。カメラ38aは、ジンバル87を介して作業機器30の筐体31に取り付けられている。カメラ38aをジンバル87で支持することにより、カメラ38aの向きを安定させることができる。
【0175】
電線路90(図1)では、複数の送電線92が架空地線94と同じ方向に併設されている。作業機器30の車輪32が架空地線94に乗った状態で、カメラ38は架空地線94を撮影する。並行して、カメラ38aは少なくとも1本の送電線92を撮影する。作業機器30が架空地線94に沿って走行しながら、カメラ38aが送電線92を撮影することで、作業機器30が走行した領域に対応する送電線92の画像を取得することができる。
【0176】
上述の実施形態では、作業機器30のガイド37(図2図3)は棒状部材であったが、ガイド37は棒状部材に限定されず、例えば板状部材であってもよい。
【0177】
図22は、板状のガイド37を示す図である。図3を用いて上述したように、ガイド37は、作業機器30の筐体31の右下部および左下部のそれぞれに設けられる。板状のガイド37は、その平面方向が架空地線94の延びる方向に平行で、かつ、地平面に対して斜めの方向に広がっている。作業機器30の左右それぞれに設けられた板状のガイド37の間に架空地線94が位置するように、作業機器30を架空地線94に誘導することで、作業機器30を容易に架空地線94に乗せることができる。
【0178】
また、ガイド37は、作業機器30を地面に置くときに筐体31を支える脚となるスキッドを兼ねていてもよい。図23は、スキッドを兼ねるガイド37を示す図である。ガイド37がスキッドを兼ねることにより、作業機器30を地面に安定して置くことができる。
【0179】
上述の実施形態では、無人ヘリコプター1のメインロータ5(図2)は、エンジン8によって回転させていたが、メインロータ5は電動モータによって回転させてもよい。電動モータは例えばドローンモータである。この場合、発電装置9は電力を生成する燃料電池であってもよい。燃料電池が生成した電力は、ドローンモータ8の駆動に用いられるとともに、第2ケーブル52を介して作業機器30に供給される。作業機器30は、燃料電池から作業機器30に供給された電力を利用して電動モータ33を駆動することで、架空地線94を自走することができる。
【0180】
上述の実施形態では、作業機器30は架空地線94に乗って保守作業を行ったが、作業機器30は、架空地線94以外の架空線(例えば送電線)に乗って、その架空線の保守作業を行ってもよい。
【0181】
上述の実施形態では、巻き取りモータ21がケーブルリール22を回転させることにより、ケーブル51、52、53の巻き取りおよび繰り出しを行っていたが、巻き取りモータ21とは異なる機構によりケーブルリール22を回転させてもよい。例えば、ゼンマイ機構によりケーブルリール22を回転させて、ケーブル51、52、53の巻き取りを行ってもよい。この場合、巻き取りの力を作業機器30の重量よりも小さくし、巻き取り動作以外のときはゼンマイ機構および/またはケーブルリール22の回転をロックしておくロック機構を備えていてもよい。
【0182】
以上、本発明の例示的な実施形態を説明した。
【0183】
本発明のある実施形態に係る架空線保守作業システム100は、発電装置9を有する回転翼機1と、電動モータ33を有し、供給された電力で電動モータ33を駆動して架空地線94に沿って走行しながら架空地線94の保守作業を行う作業機器30と、回転翼機1から作業機器30を吊り下げる第1ケーブル51と、発電装置9が発電した電力を回転翼機1の飛行中に作業機器30に供給する第2ケーブル52とを備える。
【0184】
回転翼機1の発電装置9から作業機器30に電力を供給し、作業機器30は供給された電力を利用して保守作業を行う。作業機器30が、重量物であるバッテリを内蔵する必要がなく、または内蔵するとしても従来よりも低容量でよく軽量化できるため、従来よりも長い時間保守作業を行うことが可能になる。回転翼機1の最大積載量以内であれば、回転翼機1に搭載される発電装置9の発電量は比較的容易に増加できるため、作業機器30を比較的長い時間稼働させることができる。
【0185】
ある実施形態において、第1ケーブル51は、回転翼機1側の端部から、作業機器30側の端部までの間にウィークリンク装置56を有し、ウィークリンク装置56は、ウィークリンク装置56の両端が予め定められた閾値を超える荷重で引っ張られたときに物理的に切断されてもよい。
【0186】
回転翼機1に所定以上の大きさの荷重が掛かった場合、ウィークリンク装置56が切断されることにより、その荷重から回転翼機1を解放することができる。
【0187】
ある実施形態において、閾値は、作業機器30の重量より大きく、回転翼機1が飛行を制御することが可能な重量未満の範囲内であってもよい。
【0188】
使用する作業機器30の重量より大きく、回転翼機1が飛行を制御することが可能な重量未満の閾値を有するウィークリンク装置56を採用することにより、回転翼機1は作業機器30を支えながら作業機器30の保守作業を補助できる。
【0189】
ある実施形態において、閾値は、作業機器30の重量より大きく、回転翼機1の可搬重量未満の範囲内であってもよい。
【0190】
作業機器30の重量より大きく、回転翼機1の可搬重量未満の閾値を有するウィークリンク装置56を採用することにより、回転翼機1は作業機器30を支えながら作業機器30の保守作業を補助できる。
【0191】
ある実施形態において、作業機器30が架空地線94の保守作業を行っている期間は、第1ケーブル51の張力は作業機器30の重量よりも小さくてもよい。
【0192】
作業機器30が自走することによって第1ケーブル51の張力は作業機器30の重量よりも小さくなるため、ウィークリンク装置56が切断されることはない。
【0193】
ある実施形態において、回転翼機1は、第1ケーブル51で作業機器30を牽引してもよい。
【0194】
作業機器30が自走することに加え、回転翼機1が第1ケーブル51で作業機器30を牽引することにより、作業機器30はより高速に移動することができる。牽引中も保守作業を行うことにより、作業の迅速化を図ることが可能になる。
【0195】
ある実施形態において、第1ケーブル51は、ウィークリンク装置56と、ウィークリンク装置56を除く部分であるケーブル部とを有し、閾値は、ケーブル部の切断荷重よりも小さくてもよい。
【0196】
ウィークリンク装置56の閾値(切断荷重)がケーブル部の切断荷重よりも小さいことにより、第1ケーブル51に閾値以上の荷重がかかったときは、第1ケーブル51はウィークリンク装置56において切断される。
【0197】
ある実施形態において、ウィークリンク装置56はロープ形状を有し、ウィークリンク装置56の径の平均値は、ケーブル部の径の平均値よりも小さくてもよい。
【0198】
ウィークリンク装置56の径の平均値をケーブル部の径の平均値よりも小さくすることで、ウィークリンク装置56が切断される閾値をケーブル部の切断荷重よりも小さくすることができる。
【0199】
ある実施形態において、ウィークリンク装置56を構成する素材とケーブル部の素材とは異なっており、ウィークリンク装置56の切断荷重は、ケーブル部の切断荷重よりも小さくてもよい。
【0200】
ウィークリンク装置56の素材をケーブル部の素材とは異ならせ、かつウィークリンク装置56の切断荷重をケーブル部の切断荷重よりも小さくすることで、ウィークリンク装置56が切断される閾値をケーブル部の切断荷重よりも小さくすることができる。
【0201】
ある実施形態において、第1ケーブル51および第2ケーブル52は並走してもよい。
【0202】
ある実施形態において、第2ケーブル52の少なくとも一部は、第1ケーブル51の内部に収容されていてもよい。
【0203】
ある実施形態において、第1ケーブル51は、ウィークリンク装置56と、ウィークリンク装置56を除く部分であるケーブル部とを有し、第2ケーブル52は、ケーブル部の内部に収容され、かつ、ウィークリンク装置56をバイパスしてもよい。
【0204】
ある実施形態において、第1ケーブル51は、ウィークリンク装置56と、ウィークリンク装置56から見て回転翼機1側の第1上流側ケーブル部51aと、ウィークリンク装置56から見て作業機器30側の第1下流側ケーブル部51bとを有し、第2ケーブル52は、第1上流側ケーブル部51aの内部に収容された第2上流側ケーブル部52aと、第1下流側ケーブル部51bの内部に収容された第2下流側ケーブル部52bとを有し、ウィークリンク装置56は、第1上流側ケーブル部51aに固定され、かつ第2上流側ケーブル部52aと電気的に接続されている上流側コネクタ71と、第1下流側ケーブル部51bに固定され、かつ第2下流側ケーブル部52bと電気的に接続されている下流側コネクタ72とを有し、上流側コネクタ71および下流側コネクタ72はウィークリンク装置56を構成し、上流側コネクタ71と下流側コネクタ72とは相対的に回転可能であり、かつ、任意の回転位置において、第2上流側ケーブル部52aおよび第2下流側ケーブル部52bは、上流側コネクタ71および下流側コネクタ72を介して電気的に接続されていてもよい。
【0205】
上流側コネクタ71と下流側コネクタ72とは相対的に回転可能で、かつ回転位置にかかわらず第2上流側ケーブル部52aおよび第2下流側ケーブル部52bは電気的に接続されている。これにより、運搬中および/または作業中の第1および第2ケーブル51、52のねじれを回避しつつ第2ケーブル52の導通を確保することができる。また、上流側コネクタ71と下流側コネクタ72とがウィークリンク装置56を兼ねているため、ウィークリンク装置56と別個に設ける場合と比較して構成を簡単化できる。
【0206】
ある実施形態において、上流側コネクタ71および下流側コネクタ72は、それぞれ、中心軸を含む内部電極端子73a、74aと、内部電極端子73a、74aから所定距離離れた位置で内部電極端子73a、74aを囲む外部電極端子73b、74bとを有し、上流側コネクタ71に対する下流側コネクタ72の任意の回転位置において、上流側コネクタ71の内部電極端子73aと下流側コネクタ72の内部電極端子74aとは電気的に接続され、かつ、上流側コネクタ71の外部電極端子73bと下流側コネクタ72の外部電極端子74bとは電気的に接続されていてもよい。
【0207】
上流側コネクタ71と下流側コネクタ72とが相対的に回転可能であることにより、ケーブルのねじれを回避しつつ、上流側コネクタ71の内部電極端子73aと下流側コネクタ72の内部電極端子74a同士、および、上流側コネクタ71の外部電極端子73bと下流側コネクタ72の外部電極端子74b同士の電気的な導通を確保することができる。
【0208】
ある実施形態において、第1ケーブル51は、ウィークリンク装置56と、ウィークリンク装置56から見て回転翼機1側の第1上流側ケーブル部51aと、ウィークリンク装置56から見て作業機器30側の第1下流側ケーブル部51bとを有し、ウィークリンク装置56は、第1上流側ケーブル部51aの側に取り付けられた第1磁石75と、第1下流側ケーブル部51bの側に取り付けられた第2磁石76とを有し、第1磁石75および第2磁石76はウィークリンク装置56を構成し、閾値は、第1磁石75の磁力と第2磁石76の磁力とによって決定される吸着力にしたがって予め定められてもよい。
【0209】
第1上流側ケーブル部51aに取り付けられた第1磁石75と、第1下流側ケーブル部51bに取り付けられた第2磁石76とを有するウィークリンク装置56を設ける。第1磁石75および第2磁石76がウィークリンク装置56を構成する。ウィークリンク装置56の閾値は、第1磁石75と第2磁石76とが互いに吸着する吸着力にしたがって決定される。これにより、荷重が吸着力よりも小さい範囲内で、回転翼機1から作業機器30を吊り下げることが可能になる。
【0210】
ある実施形態において、第1ケーブル51は、ウィークリンク装置56と、ウィークリンク装置56から見て回転翼機1側の第1上流側ケーブル部51aと、ウィークリンク装置56から見て作業機器30側の第1下流側ケーブル部51bとを有し、ウィークリンク装置56は、第1上流側ケーブル部51aと第1下流側ケーブル部51bとを止める留め具であってもよい。
【0211】
ある実施形態において、第2ケーブル52は、第1上流側ケーブル部51aの外部および第1下流側ケーブル部51bの外部に沿って配設され、または第1上流側ケーブル部51aの内部および第1下流側ケーブル部51bの内部に配設され、ウィークリンク装置56をバイパスしてもよい。
【0212】
第2ケーブル52は、第1上流側ケーブル部51aおよび第1下流側ケーブル部51bの外部に沿って、またはそれらの内部に配設されているが、ウィークリンク装置56の位置においてはウィークリンク装置56をバイパスして配設されている。これにより、ウィークリンク装置56を構成する磁石または留め具と第2ケーブル52との干渉は回避される。
【0213】
ある実施形態において、第1ケーブル51の、回転翼機1からウィークリンク装置56までの間、および/または、ウィークリンク装置56から作業機器30までの間に、少なくとも1つの弾性部材57を有してもよい。
【0214】
ウィークリンク装置56の回転翼機1側、および/または、作業機器30側に少なくとも1つの弾性部材57を設けることにより、瞬間的に閾値を超えるような荷重がかかった場合でもウィークリンク装置56の切断を回避できる。
【0215】
ある実施形態において、第1ケーブル51および第2ケーブル52の巻き取りおよび繰り出しを行うケーブルリール22をさらに有してもよい。
【0216】
第1および第2ケーブル51、52の巻き取りまたは繰り出しを行うケーブルリール22を設けることにより、第1および第2ケーブル51、52の不必要なたるみや、架空地線94からの作業機器30の浮き上がりを回避できる。これにより、回転翼機1の高度を頻繁に変えることなく、作業機器30と架空地線94との距離を調整できる。
【0217】
ある実施形態において、ケーブルリール22と機械的に接続された巻き取りモータ21を有し、巻き取りモータ21がケーブルリール22を回転させることにより、第1ケーブル51および第2ケーブル52の巻き取りおよび繰り出しを行ってもよい。
【0218】
巻き取りモータ21を利用すると、第1ケーブル51および第2ケーブル52の巻き取りおよび繰り出しを電動化できる。
【0219】
ある実施形態において、巻き取りモータ21の回転方向および回転量を制御するコントローラ15をさらに備え、作業機器30が架空地線94に沿って走行している期間中は、コントローラ15は、第1ケーブル51および第2ケーブル52を所定の張力で引っ張るよう、巻き取りモータ21の回転方向および回転量を調整してもよい。
【0220】
作業機器30が架空地線94に沿って走行している期間中は、コントローラ15は、所定の張力で第1および第2ケーブル51、52を引っ張るよう、巻き取りモータ21の回転方向および回転量を調整する。これにより、第1および第2ケーブル51、52のたるみを防止することができ、第1および第2ケーブル51、52が回転翼機1のメインロータに接触し、または他の架線と接触することを回避できる。
【0221】
ある実施形態において、巻き取りモータ21はロータ212を有し、コントローラ15は、ロータ212の所定の回転位置である基準位置と、基準位置におけるケーブルリール22から作業機器30までの第1ケーブル51および第2ケーブル52の長さとの関係、および、巻き取りモータ21の回転方向および回転量から、第1ケーブル51および第2ケーブル52の現在の長さを算出し、算出した長さに応じて巻き取りモータ21の回転方向および回転量を調整してもよい。
【0222】
コントローラ15は第1ケーブル51および第2ケーブル52の現在の長さを算出し、算出した長さに応じて巻き取りモータ21の回転方向および回転量を調整する。第1ケーブル51および第2ケーブル52の長さを例えば一定の範囲に維持することにより、概ね、回転翼機1と作業機器30との距離を維持することができる。
【0223】
ある実施形態において、コントローラ15は、回転翼機1の高度を指示する制御信号を出力することが可能であり、第1ケーブル51および第2ケーブル52の長さが予め定められた所定の長さよりも長い場合には、コントローラ15は回転翼機1の高度を下げるよう指示する制御信号を出力し、第1ケーブル51および第2ケーブル52の長さが予め定められた所定の長さよりも短い場合には、コントローラ15は回転翼機1の高度を上げるよう指示する制御信号を出力してもよい。
【0224】
回転翼機1が作業機器30から離れすぎている場合には、コントローラ15は回転翼機1の高度を下げさせ、作業機器30に近付くよう飛行させる。また回転翼機1が作業機器30に近すぎる場合には、コントローラ15は回転翼機1の高度を上げさせ、作業機器30から離れるよう飛行させる。
【0225】
ある実施形態において、第1ケーブル51および第2ケーブル52の長さが予め定められた所定の長さよりも短い場合には、コントローラ15は外部に警告を発してもよい。
【0226】
第1ケーブル51および第2ケーブル52の長さが予め定められた所定の長さよりも短い場合には、回転翼機1が作業機器30に近づきすぎている可能性がある。その場合、警告を発することにより、外部に注意を喚起することができる。
【0227】
ある実施形態において、コントローラ15は、音、光および振動のうちの少なくとも一つにより警告を発してもよい。
【0228】
音、光および/または振動により警告を発することにより、人間の注意を的確に喚起することができる。
【0229】
ある実施形態において、作業機器30と有線または無線で通信する端末装置110をさらに備え、端末装置110は、作業機器30の作業状況を表すデータを受信する通信回路113と、データを表示する表示装置115とを備え、表示装置115に警告を表示してもよい。
【0230】
オペレータ等が有する端末装置110の表示装置115に注意を喚起する警告を表示することにより、オペレータの手元で視覚的に注意を喚起することができる。
【0231】
ある実施形態において、ケーブルリール22と巻き取りモータ21とを支持するブラケット23をさらに備えてもよい。
【0232】
ブラケット23によってケーブルリール22と巻き取りモータ21とを固定させることにより、巻き取りモータ21の回転をケーブルリール22に伝達することができる。
【0233】
ある実施形態において、作業機器30は、作業機器30が架空地線94に載置される際に作業機器30を架空地線94に誘導するガイド37を有してもよい。
【0234】
ガイド37を設けることにより、作業機器30を容易に架空地線94に載せることが可能になる。
【0235】
ある実施形態において、作業機器30が架空地線94の上方から架空地線94に載置される場合、ガイド37は、架空地線94の延びる方向に平行で、かつ、地平面に対して斜めの方向に広がる、少なくとも1つの棒状部材または板状部材であってもよい。
【0236】
ある実施形態において、ガイド37は、少なくとも2つの板状部材であり、少なくとも2つの板状部材は、架空地線94の延びる方向に平行で、地平面に対して斜めの方向に広がり、かつ、少なくとも2つの板状部材の間に架空地線94を含むよう作業機器30を架空地線94に誘導してもよい。
【0237】
ある実施形態において、作業機器30は、風を受けるフィン81と、風向きを検出するセンサ85と、フィン81の向きを変更する電動モータ83と、センサ85が検出した風向きに応じて電動モータ83を駆動し、フィン81の向きを調整する制御装置35とを備えてもよい。
【0238】
風向きに応じてフィン81の向きを調整することで、作業機器30の向きおよび姿勢を安定させることができる。
【0239】
ある実施形態において、回転翼機1は、回転翼5を回転させるエンジン8を有してもよい。
【0240】
回転翼機1がエンジン8を搭載することにより、比較的長時間の飛行が可能になり、作業機器30の作業時間を長く確保することができる。
【0241】
ある実施形態において、回転翼機1は回転翼5を回転させるドローンモータ8を有し、発電装置9は、第2ケーブル52を介して作業機器30に供給する電力、および、ドローンモータ8を回転させる電力を生成する燃料電池であり、作業機器30は、作業機器30に供給された電力を利用して電動モータ33を駆動し、架空地線94を自走してもよい。
【0242】
回転翼機1がドローンモータ8で回転翼5を回転させる場合、回転翼機1に燃料電池を搭載することにより、当該燃料電池を利用すればドローンモータ8および作業機器30の両方に電力を供給することができる。
【0243】
ある実施形態において、作業機器30は少なくとも1台のカメラ38を有し、保守作業のためにカメラ38を利用して架空地線94を撮影してもよい。
【0244】
ある実施形態において、少なくとも1本の電線92が架空地線94と同じ方向に併設されており、少なくとも1台のカメラは2台以上のカメラ38、38aであり、2台以上のカメラ38、38aの各々は、架空地線94および少なくとも1本の電線92を撮影してもよい。
【0245】
ある実施形態において、少なくとも1台のカメラ38aは、ジンバル87を介して作業機器30に接続されていてもよい。
【0246】
ある実施形態において、回転翼機1は無人ヘリコプターであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0247】
本発明の技術は、架空線の保守作業に好適に利用され得る。
【符号の説明】
【0248】
1:無人ヘリコプター(回転翼機)、 2:メインボディ、 3:テールボディ、 4:機体、 5:メインロータ、 6:テールロータ、 7:ラジエータ、 8:エンジン、 9:発電装置、 10:コントロールパネル、 11:表示灯、 12:スキッド、 13:リモコン受信アンテナ、 15:飛行制御ボックス(制御装置)、 15a:GPSモジュール、 15b:加速度センサ、 15c:気圧センサ、 15d:地磁気センサ、 15e:超音波センサ、 15f:通信回路、 15g:信号処理回路(コントローラ)、 15h:ROM、 15i:RAM、 15j:記憶装置、 15k:内部バス、 21:巻き取りモータ、 22:ケーブルリール、 23:ブラケット、 30:作業機器、 31:筐体、 32:車輪、 32a:溝、 33:電動モータ、 34:動力伝達機構、 35:制御装置、 35a:信号処理回路、 35b:メモリ、 35c:モータ駆動回路、 35d:通信回路、 36:車軸、 37:ガイド、 38:カメラ、 38a:カメラ、 41:電源回路、 42:モータ駆動回路、 43:バッテリ、 51:第1ケーブル、 52:第2ケーブル(電力線)、 53:第3ケーブル(信号線)、 55:回転コネクタ、 56:ウィークリンク装置、 57:弾性部材、 61:ロータ、 62:リング電極、 63:ブラシ、 64:支持部材、 65:電極、 66:電極、 67:筐体、 71:コネクタ、 72:コネクタ、 73:電極端子、 74:電極端子、 75:第1磁石、 76:第2磁石、 81:フィン、 82:支持部材、 83:電動モータ、 84:回転軸、 85:風向きセンサ、 87:ジンバル、 90:電線路、 91:鉄塔、 92:送電線、 93:碍子、 94:架空地線、 100:架空線保守作業システム、 110:タブレットコンピュータ(端末装置)、 110a:基地局操縦装置、 111:CPU、 112:メモリ、 113:通信回路、 114:画像処理回路、 115:表示装置、 116:タッチスクリーンパネル、 117:通信バス、 118:報知装置、 211:モータケース、 212:ロータ、 213:ステータ、 214:回転センサ
図1
図2
図3
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