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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-05
(45)【発行日】2022-08-16
(54)【発明の名称】腫瘍を治療するための抗B7-H1抗体
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20220808BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220808BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20220808BHJP
【FI】
A61K39/395 U ZMD
A61P35/00
C07K16/28 ZNA
【請求項の数】 6
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020152079
(22)【出願日】2020-09-10
(62)【分割の表示】P 2019081639の分割
【原出願日】2014-09-11
(65)【公開番号】P2021006537
(43)【公開日】2021-01-21
【審査請求日】2020-10-09
(31)【優先権主張番号】61/876,509
(32)【優先日】2013-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/971,212
(32)【優先日】2014-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/978,401
(32)【優先日】2014-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/003,349
(32)【優先日】2014-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506042265
【氏名又は名称】メディミューン リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ナーワル,ラジェッシュ
(72)【発明者】
【氏名】フェアマン,デーヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】ロビンズ,ポール
(72)【発明者】
【氏名】リャン,メイナ
(72)【発明者】
【氏名】シュナイダー,エイミー
(72)【発明者】
【氏名】チャベス,カルロス
(72)【発明者】
【氏名】ハール,カリーナ
(72)【発明者】
【氏名】パク,ミン
(72)【発明者】
【氏名】ル,ホン
(72)【発明者】
【氏名】レベラット,マーロン
(72)【発明者】
【氏名】スティール,ケイス
(72)【発明者】
【氏名】ボウトリン,アンマリー
(72)【発明者】
【氏名】シ,リ
(72)【発明者】
【氏名】ホン,シェンヤン
(72)【発明者】
【氏名】ヒッグズ,ブランドン
(72)【発明者】
【氏名】ロスコス,ローリン
【審査官】伊藤 基章
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-511959(JP,A)
【文献】特表2016-530323(JP,A)
【文献】特開2019-163269(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
MEDI4736またはその抗原結合断片を含む、PD-L1陽性非小細胞肺がん(NSCLC)腫瘍を有すると同定された患者の治療における使用のための医薬であって、前記患者が1500mgのMEDI4736またはその抗原結合断片を2週間毎または3週間毎に投与され、腫瘍細胞の少なくとも25%がPD-L1陽性染色である、前記医薬。
【請求項2】
前記MEDI4736またはその抗原結合断片が2週間毎に投与される、請求項1に記載の医薬。
【請求項3】
PD-L1染色が免疫組織化学を使用して検出される、請求項1または2に記載の医薬。
【請求項4】
PD-L1発現腫瘍を有すると同定された患者において、約40%または50%の客観的奏効率がある、請求項1または2に記載の医薬。
【請求項5】
腫瘍が、扁平上皮がんまたは非扁平上皮がんである非小細胞肺がんである、請求項1~のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項6】
少なくとも2用量が投与される、請求項1~のいずれか一項に記載の医薬。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
がんは世界的に、健康に対する大きな負担であり続けている。がん治療法の進歩にもかかわらず、特に既存治療薬に抵抗性の進行した疾患またはがんがある患者のための、より効果的でより低毒性の治療法に対する、満たされていない医学的必要性が継続している。
【0002】
免疫系は、腫瘍関連抗原を同定して、それらを発現するがん性細胞を排除する能力がある。この腫瘍免疫監視または腫瘍免疫編集のプロセスは、腫瘍成長を予防してそれに対抗する上で重要な役割を果たし、腫瘍浸潤性リンパ球のレベル、より具体的には細胞傷害性T細胞のレベルは、いくつかのがんにおける改善された予後と相関した。したがって、免疫応答の増強は、腫瘍を制御する手段を提供してもよい。
【0003】
B7-H1(プログラム死リガンド1(PD-L1)またはCD274としてもまた知られている)は、T細胞活性化の制御に関与する受容体およびリガンドの複雑なシステムの一員である。正常組織においては、B7-H1は、T細胞、B細胞、樹状細胞、マクロファージ、間葉系幹細胞、骨髄由来肥満細胞、ならびに様々な非造血細胞上で発現される。その正常機能は、その2つの受容体であるプログラム死1(PD-1またはCD279としてもまた知られている)およびCD80(B7-1としてもまた知られている)との相互作用を通じて、T細胞の活性化と免疫寛容の間の平衡を調節することである。
【0004】
B7-H1はまた、腫瘍によって発現されて複数部位で作用し、腫瘍が、宿主免疫系によって検出され排除されるのを回避するのを助ける。B7-H1は、広範ながんにおいて高頻度で発現される。いくつかのがんでは、B7-H1の発現は、生存期間短縮および好ましくない予後と関連付けられている。B7-H1とその受容体の間の相互作用を妨げる抗体は、生体外で、B7-H1依存性免疫抑制効果を軽減し、抗腫瘍T細胞の細胞傷害性活性を亢進できる。
【0005】
MEDI4736は、PD-1およびCD80受容体の双方に対するB7-H1の結合をブロックする能力がある、ヒトB7-H1に対するヒトモノクローナル抗体である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、発病率の高い腫瘍、ならびに治療法の選択肢が限られている転帰不良の一般的でないタイプをはじめとする腫瘍の治療に対する、満たされていない高い必要性を考慮して、ヒト患者における腫瘍に対するMEDI4736の影響を調べた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
MEDI4736をヒト患者に投与する方法、およびMEDI4736を使用してヒト患者において腫瘍を治療する方法が、本明細書で提供される。
【0008】
特定の態様では、ヒト患者においてB7-H1発現腫瘍を治療する方法は、MEDI4736またはその抗原結合断片を患者に投与するステップを含んでなり、投与は、腫瘍サイズを減少させる。
【0009】
特定の態様では、B7-H1発現腫瘍があるヒト患者によって産生される抗薬剤抗体を最小化する方法は、MEDI4736またはその抗原結合断片を患者に投与するステップを含んでなり、患者は、抗B7-H1抗体またはその抗原結合断片で治療される。
【0010】
特定の態様では、ヒト患者においてB7-H1発現腫瘍を治療する方法は、MEDI4736またはその抗原結合断片を患者に投与するステップを含んでなり、投与は、約100~約2,500d・μg/mLのAUC(τ)を生じる。
【0011】
特定の態様では、ヒト患者においてB7-H1発現腫瘍を治療する方法は、MEDI4736またはその抗原結合断片を患者に投与するステップを含んでなり、投与は、約15~約350μg/mのCmaxを生じる。
【0012】
特定の態様では、ヒト患者においてB7-H1発現腫瘍を治療する方法は、MEDI4736またはその抗原結合断片を患者に投与するステップを含んでなり、MEDI4736またはその抗原結合断片の半減期は、約5~約25日間である。
【0013】
特定の態様では、ヒト患者においてB7-H1発現腫瘍を治療する方法は、MEDI4736またはその抗原結合断片を患者に投与するステップを含んでなり、MEDI4736またはその抗原結合断片のクリアランスは、約1~10ml/日/kgである。
【0014】
特定の態様では、ヒト患者においてB7-H1発現腫瘍を治療する方法は、約3mg/kgの用量のMEDI4736またはその抗原結合断片を患者に投与するステップを含んでなる。
【0015】
特定の態様では、ヒト患者においてB7-H1発現腫瘍を治療する方法は、約15mg/kgの用量のMEDI4736またはその抗原結合断片を患者に投与するステップを含んでなる。
【0016】
特定の態様では、ヒト患者においてB7-H1発現腫瘍を治療する方法は、MEDI4736またはその抗原結合断片を投与するステップを含み、1mg/kgのMEDI4736またはその抗原結合断片の投与は、腫瘍サイズを減少させるのに十分である。
【0017】
いくつかの実施形態では、少なくとも2用量のMEDI4736またはその抗原結合断片が投与される。いくつかの実施形態では、少なくとも3用量のMEDI4736またはその抗原結合断片が投与される。いくつかの実施形態では、少なくとも5用量のMEDI4736またはその抗原結合断片が投与される。
【0018】
いくつかの実施形態では、投与は、腫瘍成長を低下させる。いくつかの実施形態では、投与は、腫瘍サイズを減少させる。いくつかの実施形態では、投与は、腫瘍サイズを少なくとも25%減少させる。いくつかの実施形態では、投与は、腫瘍サイズを少なくとも50%減少させる。いくつかの実施形態では、投与は、腫瘍サイズを少なくとも75%減少させる。
【0019】
いくつかの実施形態では、投与は、患者によって抗薬剤抗体が産生される可能性を最小化する。いくつかの実施形態では、MEDI4736で治療されたの患者10%以下が、抗薬剤抗体を産生する。いくつかの実施形態では、MEDI4736で治療されたの患者9%以下が、抗薬剤抗体を産生する。いくつかの実施形態では、MEDI4736で治療されたの患者8%以下が、抗薬剤抗体を産生する。いくつかの実施形態では、MEDI4736で治療されたの患者7%以下が、抗薬剤抗体を産生する。
【0020】
いくつかの実施形態では、投与は、AUC(τ)測定値の中央値範囲を生じる。したがって、例えば、いくつかの実施形態では、投与は、約100~約2,500d・μg/mLのAUC(τ)を生じる。いくつかの実施形態では、投与は、Cmax測定値の中央値範囲を生じる。したがって、例えば、いくつかの実施形態では、投与は、約15~約350μg/mLのCmaxを生じる。いくつかの実施形態では、投与は、半減期測定の中央値範囲を生じる。したがって、例えば、いくつかの実施形態では、MEDI4736またはその抗原結合断片の半減期は、約5~約25日間である。いくつかの実施形態では、投与は、クリアランス測定値の中央値範囲を生じる。したがって、例えば、いくつかの実施形態では、MEDI4736またはその抗原結合断片のクリアランスは、約1~10ml/日/kgである。
【0021】
いくつかの実施形態では、約0.1、約0.3、約1、約3、約10、または約15mg/kgのMEDI4736またはその抗原結合断片が投与される。いくつかの実施形態では、約1mg/kgのMEDI4736またはその抗原結合断片が投与される。いくつかの実施形態では、約3mg/kgのMEDI4736またはその抗原結合断片が投与される。いくつかの実施形態では、約10mg/kgのMEDI4736またはその抗原結合断片が投与される。いくつかの実施形態では、約15mg/kgのMEDI4736またはその抗原結合断片が投与される。
【0022】
いくつかの実施形態では、投与は、約14~21日間毎に反復される。いくつかの実施形態では、投与は、約14日間毎に反復される。いくつかの実施形態では、投与は、約21日間毎に反復される。
【0023】
いくつかの実施形態では、腫瘍サイズが減少しまたは腫瘍成長が低下して、MEDI4736またはその抗原結合断片は、引き続き維持療法として、約2ヶ月毎に投与される。
【0024】
いくつかの実施形態では、腫瘍サイズは、約6週間以内に少なくとも25%減少する。いくつかの実施形態では、投与は、腫瘍サイズを少なくとも50%減少させる。いくつかの実施形態では、腫瘍サイズは、約10週間以内に少なくとも50%減少する。いくつかの実施形態では、投与は、腫瘍サイズを少なくとも75%減少させる。いくつかの実施形態では、腫瘍サイズは、約10週間以内に少なくとも75%減少する。
【0025】
いくつかの実施形態では、投与は、部分寛解をもたらす。いくつかの実施形態では、投与は、完全寛解をもたらす。いくつかの実施形態では、投与は、無進行生存(PFS)を増加させる。いくつかの実施形態では、投与は、全生存(OS)を増加させる。
【0026】
いくつかの実施形態では、投与は、遊離B7-H1レベルを少なくとも80%低下させ得る。いくつかの実施形態では、投与は、遊離B7-H1レベルを少なくとも90%低下させ得る。いくつかの実施形態では、投与は、遊離B7-H1レベルを少なくとも95%低下させ得る。いくつかの実施形態では、投与は、遊離B7-H1レベルを少なくとも99%低下させ得る。いくつかの実施形態では、投与は、B7-H1レベルの増大速度を低下させ得る。
【0027】
いくつかの実施形態では、腫瘍は固形腫瘍である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、メラノーマ、腎細胞がん、非小細胞肺がん、または結腸直腸がんである。いくつかの実施形態では、腫瘍はメラノーマである。いくつかの実施形態では、腫瘍は腎細胞がんである。いくつかの実施形態では、腫瘍は非小細胞肺がんである。いくつかの実施形態では、腫瘍は結腸直腸がんである。
【0028】
いくつかの実施形態では、腫瘍は、NSCLC(扁平上皮がん)、肝細胞がん(HCC)、三種陰性乳がん(TNBC)、膵臓がん、GIがん、メラノーマ、ぶどう膜黒色腫、または頭頸部扁平上皮がん(SCCHN)である。いくつかの実施形態では、腫瘍はNSCLC(扁平上皮がん)である。いくつかの実施形態では、腫瘍はHCCである。いくつかの実施形態では、腫瘍はTNBCである。いくつかの実施形態では、腫瘍は膵臓がんである。いくつかの実施形態では、腫瘍はGIがんである。いくつかの実施形態では、腫瘍はメラノーマである。いくつかの実施形態では、腫瘍はぶどう膜黒色腫である。いくつかの実施形態では、腫瘍はSCCHNである。
【0029】
いくつかの実施形態では、腫瘍は、メラノーマ、腎細胞がん、非小細胞肺がん(扁平細胞)、非小細胞肺がん(非扁平細胞)、結腸直腸がん、HCC、TNBC、膵臓がん、GIがん、ぶどう膜黒色腫、またはSCCHNである。
【0030】
いくつかの実施形態では、腫瘍は、少なくとも1つの化学療法剤に対して難治性である。いくつかの実施形態では、化学療法剤は、ベムラフェニブ、エルロチニブ、アファチニブ、セツキシマブ、カルボプラチン、ベバシズマブ、エルロチニブ、またはペメトレキセドである。
【0031】
いくつかの実施形態では、患者は、米国東海岸がん臨床試験グループ(ECOG)活動指標が0または1である。
【0032】
いくつかの実施形態では、投与は、静脈内点滴による。いくつかの実施形態では、投与は、約1時間かけて行われる。
【0033】
提供される方法の特定の態様では、MEDI4736またはその抗原結合断片の投与は、図4~6に示されるような薬物動態学的プロファイルをもたらす。
【0034】
提供される方法の特定の態様では、MEDI4736またはその抗原結合断片の投与は、実施例2で得られる薬物動態学的プロファイルをもたらす。
【0035】
提供される方法の特定の態様では、MEDI4736またはその抗原結合断片の投与は、図7~9に示されるような腫瘍の治療をもたらす。
【0036】
提供される方法の特定の態様では、MEDI4736またはその抗原結合断片の投与は、実施例2に示されるような腫瘍の治療をもたらす。
【0037】
本発明は、実施例3に示されるようにして、可溶性B7-H1を定量化する方法もまた提供する。
【0038】
別の態様では、本発明は、MEDI4736またはその抗原結合断片をヒト患者に投与するステップを伴う、B7-H1発現腫瘍を有すると同定された患者を治療する方法を提供し、患者は、1つまたは複数の腫瘍細胞内でB7-H1発現を検出することによる同定される。
【0039】
別の態様では、本発明は、MEDI4736を、B7-H1を発現する腫瘍細胞を有すると同定されたヒト患者に投与するステップを伴う、MEDI4736がん療法の有効性を増大させる方法を提供する。
【0040】
先の態様の様々な実施形態では、B7-H1は、例えば、ホルマリン固定およびパラフィン包埋腫瘍サンプル中などで、免疫組織化学的検査を使用して検出される。その他の実施形態では、腫瘍細胞の少なくとも25%が、B7-H1膜染色を含有する。その他の実施形態では、B7-H1発現腫瘍を有すると同定された患者において、40%または50%の客観的奏効率がある。その他の実施形態では、腫瘍は、メラノーマ、腎細胞がん、非小細胞肺がん、膵臓腺がん、胃食道がん、ぶどう膜黒色腫、トリプルネガティブ乳がん、肝細胞がん、扁平上皮がん、または結腸直腸がんである。その他の実施形態では、腫瘍は、非小細胞肺がん(例えば、扁平上皮がんまたは非扁平上皮がん)である。その他の実施形態では、腫瘍は、頭頸部上の扁平上皮がんである。その他の実施形態では、約0.1、約0.3、約1、約3、約10、または約15mg/kgのMEDI4736またはその抗原結合断片が投与される。特定の実施形態では、投与は、約14または21日間毎に反復される。その他の実施形態では、少なくとも2、3、4、または5用量のMEDI4736が投与される。
本発明はまた、以下に関する。
[項目1]
MEDI4736またはその抗原結合断片を患者に投与するステップを含んでなる、ヒト患者においてB7-H1発現腫瘍を治療する方法であって、前記投与が、腫瘍サイズを減少させる、方法。
[項目2]
MEDI4736またはその抗原結合断片を患者に投与するステップを含んでなる、B7-H1発現腫瘍があるヒト患者によって産生される抗薬剤抗体を最小化する方法であって、前記患者が、抗B7-H1抗体またはその抗原結合断片で治療される、方法。
[項目3]
MEDI4736またはその抗原結合断片を患者に投与するステップを含んでなる、ヒト患者においてB7-H1発現腫瘍を治療する方法であって、前記投与が、約100~約2,500d・μg/mLのAUC(τ)を生じる、方法。
[項目4]
MEDI4736またはその抗原結合断片を患者に投与するステップを含んでなる、ヒト患者においてB7-H1発現腫瘍を治療する方法であって、前記投与が、約15~約350μg/mLのCmaxを生じる、方法。
[項目5]
MEDI4736またはその抗原結合断片を患者に投与するステップを含んでなる、ヒト患者においてB7-H1発現腫瘍を治療する方法であって、前記MEDI4736または前記その抗原結合断片の半減期が、約5~約25日間である、方法。
[項目6]
MEDI4736またはその抗原結合断片を患者に投与するステップを含んでなる、ヒト患者においてB7-H1発現腫瘍を治療する方法であって、前記MEDI4736または前記その抗原結合断片のクリアランスが、約1~10ml/日/kgである、方法。
[項目7]
約3mg/kgの用量のMEDI4736またはその抗原結合断片を患者に投与するステップを含んでなる、ヒト患者においてB7-H1発現腫瘍を治療する方法。
[項目8]
約15mg/kgの用量のMEDI4736またはその抗原結合断片を患者に投与するステップを含んでなる、ヒト患者においてB7-H1発現腫瘍を治療する方法。
[項目9]
MEDI4736またはその抗原結合断片を投与するステップを含んでなる、ヒト患者においてB7-H1発現腫瘍を治療する方法であって、1mg/kgの前記MEDI4736またはその抗原結合断片の投与が、腫瘍サイズを減少させるのに十分である、方法。
[項目10]
少なくとも2用量の前記MEDI4736または前記その抗原結合断片が投与される、項目1~9のいずれか一項に記載の方法。
[項目11]
少なくとも3用量の前記MEDI4736または前記その抗原結合断片が投与される、項目10に記載の方法。
[項目12]
少なくとも5用量の前記MEDI4736または前記その抗原結合断片が投与される、項目11に記載の方法。
[項目13]
前記投与が腫瘍成長を低下させる、項目2~12のいずれか一項に記載の方法。
[項目14]
前記投与が腫瘍サイズを減少させる、項目2~12のいずれか一項に記載の方法。
[項目15]
前記投与が腫瘍サイズを少なくとも25%減少させる、項目1または14に記載の方法。
[項目16]
前記投与が、前記患者によって抗薬剤抗体が産生される可能性を最小化する、項目1または2~15のいずれか一項に記載の方法。
[項目17]
前記投与が、約100~約2,500d・μg/mLのAUC(τ)を生じる、項目1、2、または4~16のいずれか一項に記載の方法。
[項目18]
前記投与が、約15~約350μg/mLのCmaxを生じる、項目1~3または5~17のいずれか一項に記載の方法。
[項目19]
前記MEDI4736または前記その抗原結合断片の半減期が、約5~約25日間である、項目1~4または6~18のいずれか一項に記載の方法。
[項目20]
前記MEDI4736または前記その抗原結合断片のクリアランスが、約1~10ml/日/kgである、項目1~5または7~19のいずれか一項に記載の方法。
[項目21]
約0.1、約0.3、約1、約3、約10、または約15mg/kgのMEDI4736またはその抗原結合断片が投与される、項目1~6および9~20のいずれか一項に記載の方法。
[項目22]
約1mg/kgのMEDI4736またはその抗原結合断片が投与される、項目21に記載の方法。
[項目23]
約3mg/kgのMEDI4736またはその抗原結合断片が投与される、項目21に記載の方法。
[項目24]
約10mg/kgのMEDI4736またはその抗原結合断片が投与される、項目21に記載の方法。
[項目25]
約15mg/kgのMEDI4736またはその抗原結合断片が投与される、項目21に記載の方法。
[項目26]
前記投与が、約14~21日間毎に反復される、項目1~25のいずれか一項に記載の方法。
[項目27]
前記投与が、約14日間毎に反復される、項目26に記載の方法。
[項目28]
前記投与が、約21日間毎に反復される、項目26に記載の方法。
[項目29]
前記腫瘍サイズが減少しまたは腫瘍成長が低下して、MEDI4736またはその抗原結合断片が、引き続いて約2ヶ月毎に維持療法として投与される、項目1~28のいずれか一項に記載の方法。
[項目30]
前記腫瘍サイズが、約6週間以内に少なくとも25%減少する、項目15に記載の方法。
[項目31]
前記投与が、腫瘍サイズを少なくとも50%減少させる、項目1~30のいずれか一項に記載の方法。
[項目32]
前記腫瘍サイズが、約10週間以内に少なくとも50%減少する、項目31に記載の方法。
[項目33]
前記投与が、腫瘍サイズを少なくとも75%減少させる、項目1~32のいずれか一項に記載の方法。
[項目34]
前記腫瘍サイズが、約10週間以内に少なくとも75%減少する、項目33に記載の方法。
[項目35]
前記投与が、部分寛解をもたらす、項目1~34のいずれか一項に記載の方法。
[項目36]
前記投与が、完全寛解をもたらす、項目1~34のいずれか一項に記載の方法。
[項目37]
前記投与が、無進行生存(PFS)を増加させる、項目1~36のいずれか一項に記載の方法。
[項目38]
前記投与が全生存(OS)を増加させる、項目1~37のいずれか一項に記載の方法。
[項目39]
前記投与が、遊離B7-H1レベルを少なくとも80%低下させる、項目1~38のいずれか一項に記載の方法。
[項目40]
前記投与が、遊離B7-H1レベルを少なくとも90%低下させる、項目39に記載の方法。
[項目41]
前記投与が、遊離B7-H1レベルを少なくとも95%低下させる、項目40に記載の方法。
[項目42]
前記投与が、遊離B7-H1レベルを少なくとも99%低下させる、項目41に記載の方法。
[項目43]
前記投与が、B7-H1レベルの増大速度を低下させる、項目1~42のいずれか一項に記載の方法。
[項目44]
前記腫瘍が、固形腫瘍である、項目1~43のいずれか一項に記載の方法。
[項目45]
前記固形腫瘍が、メラノーマ、腎細胞がん、非小細胞肺がん、または結腸直腸がんである、項目44に記載の方法。
[項目46]
前記腫瘍が、少なくとも1つの化学療法剤に対して難治性である、項目1~45のいずれか一項に記載の方法。
[項目47]
前記化学療法剤が、ベムラフェニブ、エルロチニブ、アファチニブ、セツキシマブ、カルボプラチン、ベバシズマブ、エルロチニブ、またはペメトレキセドである、項目46に記載の方法。
[項目48]
前記患者が、0または1の米国東海岸がん臨床試験グループ(ECOG)活動指標を有する、項目1~47のいずれか一項に記載の方法。
[項目49]
前記投与が、静脈内点滴による、項目1~48のいずれか一項に記載の方法。
[項目50]
前記投与が、約1時間かけて行われる、項目1~49のいずれか一項に記載の方法。
[項目51]
前記腫瘍が、メラノーマである、項目45に記載の方法。
[項目52]
前記腫瘍が、腎細胞がんである、項目45に記載の方法。
[項目53]
前記腫瘍が、非小細胞肺がんである、項目45に記載の方法。
[項目54]
前記腫瘍が、結腸直腸がんである、項目45に記載の方法。
[項目55]
前記腫瘍が、扁平上皮がんである非小細胞肺がんである、項目1~50のいずれか一項に記載の方法。
[項目56]
前記腫瘍が、非扁平上皮がんである非小細胞肺がんである、項目1~50のいずれか一項に記載の方法。
[項目57]
前記腫瘍が、肝細胞がん(HCC)腫瘍である、項目1~50のいずれか一項に記載の方法。
[項目58]
前記腫瘍が、三種陰性乳がん(TNBC)腫瘍である、項目1~50のいずれか一項に記載の方法。
[項目59]
前記腫瘍が、膵臓がん腫瘍である、項目1~50のいずれか一項に記載の方法。
[項目60]
前記腫瘍が、GIがん腫瘍である、項目1~50のいずれか一項に記載の方法。
[項目61]
前記腫瘍が、ぶどう膜黒色腫である、項目1~50のいずれか一項に記載の方法。
[項目62]
前記腫瘍が、頭頸部扁平上皮がん(SCCHN)腫瘍である、項目1~50のいずれか一項に記載の方法。
[項目63]
MEDI4736またはその抗原結合断片をヒト患者に投与するステップを含んでなる、B7-H1発現腫瘍を有すると同定された患者を治療する方法であって、前記患者が、1つまたは複数の腫瘍細胞内におけるB7-H1発現の検出によって同定される、方法。
[項目64]
MEDI4736を、B7-H1を発現する腫瘍細胞を有すると同定されたヒト患者に投与するステップを含んでなる、MEDI4736がん療法の有効性を増大させる方法。
[項目65]
B7-H1が、免疫組織化学的検査を使用して検出される、項目63または64に記載の方法。
[項目66]
前記腫瘍細胞の少なくとも25%が、B7-H1膜染色を含んでなる、項目63または64に記載の方法。
[項目67]
B7-H1発現腫瘍を有すると同定された患者において、約40%または50%の客観的奏効率がある、項目63または64に記載の方法。
[項目68]
前記腫瘍が、メラノーマ、腎細胞がん、非小細胞肺がん、膵臓腺がん、胃食道がん、ぶどう膜黒色腫、トリプルネガティブ乳がん、肝細胞がん、扁平上皮がん、または結腸直腸がんである、項目63または64に記載の方法。
[項目69]
前記腫瘍が、非小細胞肺がんである、項目68に記載の方法。
[項目70]
前記腫瘍が、扁平上皮がんまたは非扁平上皮がんである非小細胞肺がんである、項目69に記載の方法。
[項目71]
前記腫瘍が、頭頸部扁平上皮がんである、項目68に記載の方法。
[項目72]
約0.1、約0.3、約1、約3、約10、または約15mg/kgのMEDI4736またはその抗原結合断片が投与される、項目63または64に記載の方法。
[項目73]
約1mg/kgのMEDI4736またはその抗原結合断片が投与される、項目72に記載の方法。
[項目74]
約3mg/kgのMEDI4736またはその抗原結合断片が投与される、項目72に記載の方法。
[項目75]
約10mg/kgのMEDI4736またはその抗原結合断片が投与される、項目72に記載の方法。
[項目76]
約15mg/kgのMEDI4736またはその抗原結合断片が投与される、項目72に記載の方法。
[項目77]
前記投与が、約14または21日間毎に反復される、項目63または64に記載の方法。
[項目78]
少なくとも2用量が投与される、項目63または64に記載の方法。
[項目79]
少なくとも3用量が投与される、項目63または64に記載の方法。
[項目80]
少なくとも5用量が投与される、項目63または64に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】隔週(Q2W)で静脈内(IV)投与されるMEDI4736による、治療法の予定表を示す。免疫関連応答基準(irRC)は、6、12、および16週間後に、そして次に8週間毎に測定される。
図2A】試験の用量拡大および用量漸増部分について、試験流れ図を示す。試験の用量拡大部分は、2週間投与計画(Q2W)および3週間投与計画(Q3W)を使用して実施した。非小細胞肺がん(NSCLC)、メラノーマ、およびその他の腫瘍がある患者を試験の漸増部分で評価した。
図2B】拡大における腫瘍型を示す。
図3】用量漸増試験において、0.1、0.3、1、3、10、または15mg/kgのMED4736で治療される、被験者のベースライン統計を示す。
図4】試験の用量漸増期において、MEDI4736(Q2W)を0.1mg/kgまたは0.3mg/kgで投与した後に得られた、薬物動態学的データの概要を示す。「AUC」=曲線下面積;「Cmax」=最大観察濃度(パネルA)。
図5】試験の用量漸増期において、0.1mg/kg、0.3mg/kg、1mg/kg、3mg/kgまたは10mg/kgのMEDI4736(Q2W)を投与された患者で観察された、経時的なMEDI4736の濃度を示す。
図6】試験の用量漸増期において、0.1mg/kg、0.3mg/kg、1mg/kg、3mg/kgまたは10mg/kgのMEDI4736(Q2W)を投与された患者で観察された、経時的な標的結合を示す。「LLOQ」=定量下限。
図7】0.1mg/kg、0.3mg/kg、または1mg/kgのMEDI4736が投与された、非小細胞肺がん(NSCLC)、メラノーマ、または結腸直腸がん(CRC)がある患者で観察されたMEDI4736の臨床活性を示す。最良の応答は、安定性疾患(SD)、進行性疾患(PD)、部分寛解(PR)、または評価不能(NE)として、特性解析される。
図8】0.1mg/kg、0.3mg/kg、1mg/kg、10mg/kgまたは15mg/kgのMEDI4736を投与された患者における、腫瘍サイズに対するMEDI4736の効果を示す。
図9】NSCLC腫瘍に対する10mg/kgのMEDI4736の効果を示す。
図10】NSCLC(非扁平上皮および扁平上皮)について、全ての用量レベルにおける腫瘍サイズのベースラインからのパーセント変化を示す。
図11】進行した皮膚性メラノーマについて、全ての用量レベルにおける腫瘍サイズのベースラインからのパーセント変化を示す。
図12】10mg/kgのMEDI4736 2QWで治療されたSCCHN患者について、腫瘍サイズのベースラインからのパーセント変化を示す。
図13】10mg/kgのMEDI4736 2QWで治療された膵臓腺がん患者について、腫瘍サイズのベースラインからのパーセント変化を示す(パネルA);腫瘍サイズのベースラインからの最良の変化は、パネルBに示される。
図14】10mg/kgのMEDI4736 2QWで治療された胃食道がん患者について、腫瘍サイズのベースラインからのパーセント変化を示す(図14A)。腫瘍サイズのベースラインからの最良の変化は、図14Bに示される。
図15】10mg/kgのMEDI4736 2QWで治療された肝細胞がん(HCC)患者について、腫瘍サイズのベースラインからのパーセント変化を示す。腫瘍サイズのベースラインからの最良の変化は、パネルBに示される。
図16】10mg/kgのMEDI4736 2QWで治療されたトリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者について、腫瘍サイズのベースラインからのパーセント変化を示す。
図17】10mg/kgのMEDI4736 2QWで治療されたぶどう膜黒色腫患者について、腫瘍サイズのベースラインからのパーセント変化を示す。
図18図18Aは、10mg/kgのMEDI4736 2QWで治療され、2スキャンについて評価可能なNSCLC患者について、腫瘍サイズのベースラインからのパーセント変化の比較を示す。PD-L1陽性腫瘍、PD-L1陰性腫瘍がある患者、およびそのPD-L1腫瘍状態が取得できない患者のプロットを示す。喫煙者として同定された患者は、星型で示される。全ての患者についてORR(確認されたCR+PR)は3.7%であった。PD-L1+患者のORR率は、10%であった。図18Bは、全ての用量レベルのMEDI4736 2QWで治療され、1スキャンについて評価可能なNSCLC患者について、腫瘍サイズのベースラインからのパーセント変化の比較を示す。PD-L1陽性腫瘍、PD-L1陰性腫瘍がある患者、およびそのPD-L1腫瘍状態が取得できない患者のプロットを示す。喫煙者として同定された患者は、星型で示される。全ての確認された患者のORR(確認されたCR+PR)は、4.3%であった(全ての未確認の患者のORRは8.5%であった)。PD-L1+患者のORR率は、8.3%であった。
図19】漸増期における、6つの腫瘍型の腫瘍サイズの変化を示す。
図20】10mg/kgのMEDI4736 Q2Wで治療された、膵臓がん患者の応答を示す。パネルAは最初のスクリーニングを示し、パネルBは6週目における被験者を示す。
図21】10mg/kgのMEDI4736の2回の点滴による治療(パネルA)前および(パネルB)後における、SCCHNがある女性患者の応答を示す。
図22】NSCLCの対象組織(新鮮生検)中のPD-L1染色を示す。
図23】新生物細胞および免疫細胞を示す、対象組織(新鮮生検)中のPD-L1染色を示す。
図24】新生物細胞および免疫および内皮細胞を示す、対象組織)中のPD-L1染色を示す。
図25A】患者のPD-L1腫瘍状態と比較した、MEDI4736治療に対する患者の応答を示す。図25Aは、非扁平上皮および扁平上皮NSCLCにおける、MEDI4736治療に続く、腫瘍サイズを示すスパイダープロットである。
図25B】患者のPD-L1腫瘍状態と比較した、MEDI4736治療に対する患者の応答を示す。図25Bは、PD-L1陽性およびPD-L1陰性NSCLC腫瘍における、MEDI4736治療に続く、腫瘍サイズを示すスパイダープロットである。
図25C】患者のPD-L1腫瘍状態と比較した、MEDI4736治療に対する患者の応答を示す。図25Cは、PD-L1陽性およびPD-L1陰性NSCLC患者における、腫瘍サイズの変化を示す、瀑状プロットである。
【発明を実施するための形態】
【0042】
「a」または「an」という用語は、その実体の1つまたは複数を指すことに注意すべきであり;例えば、「抗B7-H1抗体(an anti-B7-H1 antibody)」は、1つまたは複数の抗B7-H1抗体を表すと理解される。したがって、「a」(または「an」)、「1つまたは複数の」、および「少なくとも1つの」という用語は、本明細書で同義的に使用され得る。
【0043】
本明細書で提供されるのは、腫瘍を治療するための方法である。提供される方法は、MEDI4736またはその抗原結合断片の有効量を投与するステップを含む。
【0044】
本明細書で提供される方法で使用するためのMEDI4736(またはその断片)に関する情報は、その開示の内容全体を参照によって本明細書に援用する、国際公開第2011/066389A1号パンフレットにある。MEDI4736の結晶化可能フラグメント(Fc)ドメインは、IgG1重鎖の定常領域内の三重変異を含有し、それは、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)仲介の原因である、補体成分C1qおよびtheFcγ受容体に対する結合を低下させる。MEDI4736は、B7-H1について選択的であり、PD-1およびCD80受容体に対するB7-H1の結合をブロックする。MEDI4736は、生体外でヒトT細胞活性化のB7-H1媒介性抑制を軽減し得て、T細胞依存性機序を通じて、異種移植モデルにおいて腫瘍成長を阻害する。
【0045】
本明細書で提供される方法で使用するためのMEDI4736およびそれらの抗原結合断片は、重鎖と軽鎖または重鎖可変領域と軽鎖可変領域を含んでなる。特定の態様では、本明細書で提供される方法で使用するためのMEDI4736またはその抗原結合断片は、配列番号1のアミノ酸配列を含んでなる軽鎖可変領域と、配列番号2のアミノ酸配列を含んでなる重鎖可変領域とを含んでなる。特定の態様では、本明細書で提供される方法で使用するためのMEDI4736またはその抗原結合断片は、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含んでなり、重鎖可変領域は、配列番号3~5のKabat定義CDR1、CDR2、およびCDR3配列を含んでなり、軽鎖可変領域は、配列番号6~8のKabat定義CDR1、CDR2、およびCDR3配列を含んでなる。当業者は、Chothia定義、Abm定義または当業者に知られているその他のCDR定義を容易に同定できるであろう。特定の態様では、本明細書で提供される方法で使用するためのMEDI4736またはその抗原結合断片は、その内容全体を参照によって本明細書に援用する、国際公開第2011/066389A1号パンフレットで開示されるような、2.14H9OPT抗体の可変重鎖および可変軽鎖CDR配列を含んでなる。
【0046】
特定の態様では、腫瘍を呈する患者に、MEDI4736またはその抗原結合断片が投与される。MEDI4736またはその抗原結合断片は、1回だけまたはまれに投与することで、なおも患者に利点を提供し得る。さらなる態様では、患者には、追加の後続用量が投与される。後続用量は、患者の年齢、体重、臨床的評価、腫瘍量、および/または主治医の判断をはじめとするその他の要素次第で、様々な時間間隔で投与し得る。
【0047】
投与間隔は、隔週であり得る。投与間隔は、3週間毎であり得る。投与間隔は、2ヶ月毎であり得る(例えば維持期において)。
【0048】
投薬間隔はまた、約14日間毎または約21日間毎であり得る。いくつかの実施形態では、「約」14日間毎または「約」21日間毎は、14日間+/-2日間または21日間+/-2日間を指す。いくつかの実施形態では、MEDI4736の投与は、約14~21日間毎である。
【0049】
いくつかの実施形態では、少なくとも2用量のMEDI4736またはその抗原結合断片が、患者に投与される。いくつかの実施形態では、少なくとも3用量、少なくとも4用量、少なくとも5用量、少なくとも6用量、少なくとも7用量、少なくとも8用量、少なくとも9用量、少なくとも10用量、または少なくとも15用量以上を患者に投与し得る。いくつかの実施形態では、MEDI4736またはその抗原結合断片は、2週間の治療期間にわたり、4週間の治療期間にわたり、6週間の治療期間にわたり、8週間の治療期間にわたり、12週間の治療期間にわたり、24週間の治療期間にわたり、または1年間以上の治療期間にわたり投与される。いくつかの実施形態では、MEDI4736またはその抗原結合断片は、3週間の治療期間にわたり、6週間の治療期間、9週間の治療期間にわたり、12週間の治療期間にわたり、24週間の治療期間にわたり、または1年間以上の治療期間にわたり投与される。いくつかの実施形態では、MEDI4736またはその抗原結合断片は、2ヶ月の治療期間にわたり、4ヶ月の治療期間にわたり、または6ヶ月以上の治療期間にわたり(例えば維持期において)投与される。
【0050】
患者に投与されるMEDI4736またはその抗原結合断片の量は、患者の年齢、体重、臨床的評価、腫瘍量および/または主治医の判断をはじめとするその他の要素などの様々なパラメータに左右されるであろう。
【0051】
特定の態様では、患者には、1用量または複数用量のMEDI4736またはその抗原結合断片が投与され、1用量は約0.1mg/kgである。特定の態様では、患者には、1用量または複数用量のMEDI4736またはその抗原結合断片が投与され、1用量は約0.3mg/kgである。特定の態様では、患者には、1用量または複数用量のMEDI4736またはその抗原結合断片が投与され、1用量は約1mg/kgである。特定の態様では、患者には、1用量または複数用量のMEDI4736またはその抗原結合断片が投与され、1用量は約3mg/kgである。特定の態様では、患者には、1用量または複数用量のMEDI4736またはその抗原結合断片が投与され、1用量は約10mg/kgである。特定の態様では、患者には、1用量または複数用量のMEDI4736またはその抗原結合断片が投与され、1用量は約15mg/kgである。
【0052】
特定の態様では、患者には、少なくとも2用量のMEDI4736またはその抗原結合断片が投与され、1用量は約0.1mg/kgである。特定の態様では、患者には、少なくとも2用量のMEDI4736またはその抗原結合断片が投与され、1用量は約0.3mg/kgである。特定の態様では、患者には、少なくとも2用量のMEDI4736またはその抗原結合断片が投与され、1用量は約1mg/kgである。特定の態様では、患者には、少なくとも2用量のMEDI4736またはその抗原結合断片が投与され、1用量は約3mg/kgである。特定の態様では、患者には、少なくとも2用量のMEDI4736またはその抗原結合断片が投与され、1用量は約10mg/kgである。特定の態様では、患者には、少なくとも2用量のMEDI4736またはその抗原結合断片が投与され、1用量は約15mg/kgである。いくつかの実施形態では、約2週間間隔で少なくとも2用量が投与される。いくつかの実施形態では、約3週間間隔で少なくとも2用量が投与される。
【0053】
特定の態様では、患者には、少なくとも3用量のMEDI4736またはその抗原結合断片が投与され、1用量は約0.1mg/kgである。特定の態様では、患者には、少なくとも3用量のMEDI4736またはその抗原結合断片が投与され、1用量は約0.3mg/kgである。特定の態様では、患者には、少なくとも3用量のMEDI4736またはその抗原結合断片が投与され、1用量は約1mg/kgである。特定の態様では、患者には、少なくとも3用量のMEDI4736またはその抗原結合断片が投与され、1用量は約3mg/kgである。特定の態様では、患者には、少なくとも3用量のMEDI4736またはその抗原結合断片が投与され、1用量は約10mg/kgである。特定の態様では、患者には、少なくとも3用量のMEDI4736またはその抗原結合断片が投与され、1用量は約15mg/kgである。いくつかの実施形態では、約2週間間隔で少なくとも3用量が投与される。いくつかの実施形態では、約3週間間隔で少なくとも3用量が投与される。
【0054】
特定の態様では、本明細書で提供される方法によるMEDI4736またはその抗原結合断片投与は、非経口投与を介する。例えば、MEDI4736またはその抗原結合断片は、静脈内点滴によって、または皮下注射によって投与し得る。いくつかの実施形態では、投与は、静脈内点滴による。
【0055】
特定の態様では、MEDI4736またはその抗原結合断片は、追加的ながん治療法と、組み合わせてまたは併用して、本明細書で提供される方法に従って投与される。このような治療法としては、制限なしに、ベムラフェニブ、エルロチニブ、アファチニブ、セツキシマブ、カルボプラチン、ベバシズマブ、エルロチニブ、またはペメトレキセドなどの化学療法剤、またはその他の化学療法剤、さらに放射線または任意のその他の抗がん治療法が挙げられる。
【0056】
本明細書で提供される方法は、腫瘍サイズを減少させ、腫瘍成長を遅延させ、または定常状態を維持し得る。特定の態様では、腫瘍サイズの減少は、適切な統計解析に基づいて有意であり得る。腫瘍サイズの減少は、予測腫瘍サイズに対して、大きな患者母集団に基づく予測腫瘍サイズに対して、または対照母集団の腫瘍サイズに対して、ベースラインにおける患者の腫瘍サイズを比較することで測定され得る。本明細書で提供される特定の態様では、MEDI4736の投与は、腫瘍サイズを少なくとも25%減少させ得る。本明細書で提供される特定の態様では、MEDI4736の投与は、初回治療の約6週間以内に、腫瘍サイズを少なくとも25%減少させ得る。本明細書で提供される特定の態様では、MEDI4736の投与は、腫瘍サイズを少なくとも50%減少させ得る。本明細書で提供される特定の態様では、MEDI4736の投与は、初回治療の約10週間以内に、腫瘍サイズを少なくとも50%減少させ得る。本明細書で提供される特定の態様では、MEDI4736の投与は、腫瘍サイズを少なくとも75%減少させ得る。本明細書で提供される特定の態様では、MEDI4736の投与は、初回治療の約10週間以内に、腫瘍サイズを少なくとも75%減少させ得る。
【0057】
特定の態様では、本明細書で提供される方法、すなわち、MEDI4736またはその抗原結合断片の投与の使用は、初回治療の6週間以内、7週間以内、8週間以内、9週間以内、10週間以内、12週間以内、16週間以内、20週間以内、24週間以内、28週間以内、32週間以内、36週間以内、40週間以内、44週間以内、48週間、または52週間以内に、腫瘍サイズを減少させ得る。
【0058】
いくつかの実施形態では、1mg/kgのMEDI4736またはその抗原結合断片(例えば、少なくとも1用量、少なくとも2用量、少なくとも3用量、少なくとも4用量、少なくとも5用量、少なくとも6用量、少なくとも7用量、少なくとも8用量、少なくとも9用量、少なくとも10用量以上の2週間または3週間毎の)投与が、腫瘍サイズを減少させるのに十分であり得る。しかし、例えば、本明細書で提供されるように、効力、必要な用量数、または特定の薬物動態学的パラメータを最適化するために、より多くの用量も投与し得る。
【0059】
本明細書で提供される方法は、腫瘍成長を低下させまたは遅延させ得る。いくつかの態様では、低下または遅延は、統計学的に有意であり得る。腫瘍成長の低下は、予測腫瘍成長に対して、大きな患者母集団に基づく予測腫瘍成長に対して、または対照母集団の腫瘍成長に対して、ベースラインにおける患者の腫瘍成長を比較することで測定され得る。
【0060】
特定の態様では、患者は、疾患制御(DC)を達成する。疾患制御は、完全寛解(CR)、部分寛解(PR)、または安定性疾患(SD)であり得る。
【0061】
「完全寛解」(CR)は、測定可能かどうかを問わないあらゆる病変の消失、そして新規病変の不在を指す。確認は、最初の文書化の日付から4週間以上の反復する連続的評価を使用して得られ得る。新しい、測定不能能な病変は、CRの可能性を排除する。
【0062】
「部分寛解」(PR)は、ベースラインに対する≧50%の腫瘍量低下を指す。確認は、最初の文書化の日付から少なくとも4週間の連続反復評価を使用して得られ得る。
【0063】
「進行性疾患」(PD)は、最小記録(最下点)と比較した≧25%の腫瘍量増大を指す。確認は、最初の文書化の日付から少なくとも4週間の連続反復評価によって得られ得る。新しい、測定不能な病変は、PDを定義しない。
【0064】
「安定性疾患」(SD)は、CR、PR、またはPDの基準を満たさないことを指す。
【0065】
特定の態様では、MEDI4736またはその抗原結合断片投与は、無進行生存(PFS)を増加し得る。
【0066】
特定の態様では、MEDI4736またはその抗原結合断片の投与は、全生存(OS)を増加し得る。
【0067】
特定の態様では、患者は、特定の腫瘍型を有する。いくつかの実施形態では、腫瘍は、固形腫瘍である。いくつかの実施形態では、腫瘍は、メラノーマ、腎細胞がん、非小細胞肺がん(例えば、扁平上皮または腺がん)、または結腸直腸がんである。いくつかの実施形態では、腫瘍は、メラノーマ、非小細胞肺がん(例えば、扁平上皮または腺がん)、または結腸直腸がんである。いくつかの実施形態では、腫瘍は、メラノーマである。いくつかの実施形態では、腫瘍は、腎細胞がんである。いくつかの実施形態では、腫瘍は、非小細胞肺がんである。いくつかの実施形態では、腫瘍は、結腸直腸がんである。
【0068】
いくつかの実施形態では、腫瘍は、NSCLC(扁平上皮がん)、肝細胞がん(HCC)、三種陰性乳がん(TNBC)、膵臓がん、GIがん、メラノーマ、ぶどう膜黒色腫、または頭頸部扁平上皮がん(SCCHN)である。いくつかの実施形態では、腫瘍は、NSCLC(扁平上皮がん)である。いくつかの実施形態では、腫瘍は、HCCである。いくつかの実施形態では、腫瘍は、TNBCである。いくつかの実施形態では、腫瘍は、膵臓がんである。いくつかの実施形態では、腫瘍は、GIがんである。いくつかの実施形態では、腫瘍は、メラノーマである。いくつかの実施形態では、腫瘍は、ぶどう膜黒色腫である。いくつかの実施形態では、腫瘍は、SCCHNである。
【0069】
いくつかの実施形態では、腫瘍は、メラノーマ、腎細胞がん、非小細胞肺がん(扁平細胞)、非小細胞肺がん(非扁平細胞)、結腸直腸がん、HCC、TNBC、膵臓がん、GIがん、ぶどう膜黒色腫、またはSCCHNである。
【0070】
いくつかの実施形態では、患者は、以前に少なくとも1つの化学療法剤による治療を受けてる。いくつかの実施形態では、患者は、以前に少なくとも2つの化学療法剤による治療を受けている。化学療法剤は、例えば、制限なしに、ベムラフェニブ、エルロチニブ、アファチニブ、セツキシマブ、カルボプラチン、ベバシズマブ、エルロチニブ、および/またはペメトレキセドであり得る。
【0071】
いくつかの実施形態では、腫瘍は、少なくとも1つの化学療法剤に対して、難治性または抵抗性である。いくつかの実施形態では、腫瘍は、少なくとも2つの化学療法剤に対して難治性または抵抗性である。腫瘍は、例えば、制限なしに、ベムラフェニブ、エルロチニブ、アファチニブ、セツキシマブ、カルボプラチン、ベバシズマブ、エルロチニブ、および/またはペメトレキセドの1つまたは複数に対して、難治性または抵抗性であり得る。
【0072】
いくつかの実施形態では、患者は、MEDI4736またはその抗原結合断片の投与前に、米国東海岸がん臨床試験グループ(ECOG)(Oken MM,et al.Am.J.Clin.Oncol.5:649-55(1982))活動指標が0または1である。
【0073】
本明細書で提供される方法によれば、MEDI4736またはその抗原結合断片の投与は、望ましい薬物動態学的パラメータをもたらし得る。全薬物曝露は、「曲線下面積」(AUC)を用いて推定し得る。「AUC(τ)」が、投薬期間終了までのAUCを指すのに対し、「AUC(inf)」は、無限時間までのAUCを指す。投与は、約100~約2,500d・μg/mLのAUC(τ)を生じ得る。投与は、約15~約350μg/mLの最大観察濃度(Cmax)を生じ得る。MEDI4736またはその抗原結合断片の半減期は、約5~約25日間であり得る。さらに、MEDI4736またはその抗原結合断片のクリアランスは、約1~10ml/日/kgであり得る。
【0074】
本明細書で提供されるように、MEDI4736またはその抗原結合断片は、遊離B7-H1レベルもまた低下させる。遊離B7-H1は、(例えば、MEDI4736によって)結合していないB7-H1を指す。いくつかの実施形態では、B7-H1レベルは、少なくとも80%低下する。いくつかの実施形態では、B7-H1レベルは、少なくとも90%低下する。いくつかの実施形態では、B7-H1レベルは、少なくとも95%低下する。いくつかの実施形態では、B7-H1レベルは、少なくとも99%低下する。いくつかの実施形態では、B7-H1レベルは、MEDI4736またはその抗原結合断片の投与に続いて排除される。いくつかの実施形態では、MEDI4736またはその抗原結合断片の投与は、例えば、MEDI4736またはその抗原結合断片の投与前のB7-H1レベルの増大速度と比較して、B7-H1レベルの増大速度を低下させる。
【0075】
有利なことに、本明細書で提供される投与方法はまた、本明細書で提供される抗薬剤抗体応答も最小化する。したがって、いくつかの実施形態では、抗B7-H1、抗B7-1、または抗PD-1による治療を必要とする患者へのMEDI4736またはその抗原結合断片の投与は、患者によって産生される抗薬剤抗体を最小化する。いくつかの実施形態では、抗薬剤抗体は、MEDI4736で治療された患者における、MEDI4736曝露に影響を及ぼさない。
【実施例
【0076】
実施例1:患者および方法
(a)被験者
この試験では、被験者は、標準的治療に対して難治性である、またはそれに対する標準的治療が存在しない、進行した悪性黒色腫、腎細胞がん(RCC)、非小細胞肺がん(NSCLC)、または結腸直腸がん(CRC)がある、18才以上であることが要求された。試験の用量拡大期における被験者は、標準的治療に対して難治性である、またはそれに対して標準的治療が存在しない、進行した悪性黒色腫、NSCLC、またはCRCがある成人である。用量拡大期の追加的な被験者は、NSCLC(扁平上皮がん)、肝細胞がん(HCC)、三種陰性乳がん(TNBC)、膵臓がん、GIがん、メラノーマ、ぶどう膜黒色腫、または頭頸部扁平上皮がん(SCCHN)を有した。がんは、組織学的または細胞学的に、確認されなくてはならない。被験者は、米国東海岸がん臨床試験グループ(ECOG)指標が0または1であり、ならびに適切な臓器および骨髄機能を有することが要求される。適切な臓器および骨髄機能は、次のように定義された:ヘモグロビン≧9g/dL;絶対好中球数≧1,500/mm3;リンパ球数≧800/mm3;血小板数≧100,000/mm3;アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)およびアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)≦2.5×施設正常上限(ULN);ジルベール病が実証されているまたは疑われる被験者(この場合は、ビリルビン≦5×ULNでなくてはならない)を除き、ビリルビン≦1.5×ULN;コッククロフト・ゴールト式による、またはクレアチニンクリアランス測定のための24時間蓄尿による判定で、クレアチニンクリアランス≧50mL/分。
【0077】
被験者は、活動性の自己免疫疾患、以前の抗PD-1または抗PD-L1療法、または以前の重篤なまたは持続性の免疫関連有害事象(irAE)があれば、参加できない。被験者は、がん療法のための任意の併行する化学療法、免疫治療法、生物学的またはホルモン療法を許容されないが、併行する非がん関連病状(例えば、糖尿病のためのインスリン、およびホルモン代替療法)のためのホルモンの使用は、許容される。
【0078】
(b)試験デザイン
試験は、複数用量のMEDI4736が静脈内(IV)点滴を通じてがん患者に投与される、多施設、非盲検、第一相、ファースト・イン・ヒューマン、用量漸増および用量拡大試験である。MEDI4736は、0.1、0.3、1、3、10、および15mg/kg用量で投与された。試験の流れ図は、図1に示される。投薬初日が1日目と見なされ、疾患評価は、6、12、および16週間後、次に8週間毎に行われる。
【0079】
A用量漸増は、0.1、0.3、1、3、および10mg/kg用量での、異なるコホートへの2週間毎の(Q2W)(+/-2日間)投与によって実施した。
【0080】
15mg/kgで3週間毎の(Q3W)投与によって、別の用量漸増を実施した。次に、用量漸増で同定された最大耐容量(MTD)または最適生物学的用量(OBD)を使用して、拡大期を実施する。
【0081】
15mg/kg Q2Wの用量もまた、実施してもよい。
【0082】
用量漸増
用量漸増期では、MEDI4736の第1の用量が、4時間かけて投与される0.1mg/kgの点滴として、第1のコホートの全被験者に投与された。第1のコホートのための後続の点滴(第2および第3の用量など)は、60分間かけてQ2Wで投与された。後続のコホートのための用量は、60分間のIV点滴としてQ2Wで投与される、0.3、1.0、3.0、または10mg/kgであった。初期用量漸増のための用量コホート概要を下の表1に提供する。15mg/kgの追加用量もまた、Q3Wで投与された。
【0083】
【表1】
【0084】
Q2W用量漸増レジメンでの全てのコホートの完了時に、Q3Wレジメンを使用して別の用量漸増を開始して、利用できる安全性、PK/薬物動力学、および臨床データに基づいて、最大15mg/kgでQ3Wの用量に進める。Q3W漸増における開始用量は、最適生物学的用量(OBD)(またはOBDが同定されない場合は、試験された最大用量)と、同等の投与速度(平均mg/kg/週)である。
【0085】
用量漸増期における被験者は、確認されたPD、代案のがん治療開始、許容できない毒性、またはその他の治療を中断する理由が発生するまで、治療を継続する。疾患制御(DC)の達成が確認された被験者では、DCが確認された日から6ヶ月間過ぎるまで、治療を継続してもよい。DCは、3ヶ月以上持続する安定性疾患(SD)、部分寛解(PR)、および完全寛解(CR)を含む。
【0086】
用量拡大
Q2WおよびQ3Wでの用量漸増の完了に続いて、拡大期のための投与計画が選択される。用量拡大コホートに登録された被験者は、最大耐容量(MTD)、最適生物学的用量(OBD)、またはMTDまたはOBDが判定されない場合は用量漸増中に評価された最大用量で、選択された用量および頻度でIV点滴として投与されるMEDI4736を投与される。疾患制御(DC)を達成した被験者は、治療を継続して、次に維持期間に移行する。維持期間中の任意の時点で、進行性疾患(PD)の形跡があれば、MEDI4736は、PD確認、またはMEDI4736を中断するその他の理由があるまで、IV点滴として再投与される。
【0087】
維持期間
漸増または拡大相において疾患制御(DC)を達成した被験者は、DCが確認された日から6ヶ月間過ぎるまで、治療が継続され得る維持期間に移行する。
【0088】
維持期間では、MEDI4736は、6ヶ月間にわたり、2ヶ月毎のIV点滴として投与される。被験者の理学的検査は、2、4、および6ヶ月目に実施される。6ヶ月にわたる2ヶ月毎の投薬後、MEDI4736は停止される。進行性疾患(PD)の形跡があれば、MEDI4736は、最大2年間にわたり、PD確認、代案のがん治療開始、許容不能な毒性、同意の撤回、またはその他の治療中断理由があるまで、Q2WまたはQ3WスケジュールでIV点滴として再投与される。
【0089】
(c)薬動力学的、抗腫瘍、および安全性アセスメント
血清中のMEDI4736濃度の測定は、検証済みの免疫測定法を使用して、Q2W用量漸増相において実施された。薬物動態評価のための、ならびに可溶性B7-H1(sB7-H1)濃度のための血液サンプルは、以下のスケジュールに従って、Q2W用量漸増相において収集された:
●初回投与:1日目投与前、点滴終了時(EOI)、およびEOIの3時間後、および2、3、5、および10日目(+/-1日)。点滴開始の2時間後における追加的なサンプルは、最初の試験において、被験者の最初の4時間の点滴中に採取された。
●2回目投与:投与前、EOI、EOIの3時間後、および8日目。
●引き続く偶数回投与のみ:投与前およびEOI。
●中断または最終投与に際して、薬物動態(PK)サンプルは、最終投与の14日、30日、2および3ヶ月後に採取すべきである。
【0090】
Q3W投薬では、血液サンプルが、初回投与の15日後にもまた収集されたことを除いて、薬物動態アセスメントは、Q2W投薬と同一スケジュールで実施される。用量拡大相では、薬物動態アセスメントは、2ヶ月毎に(1日目投与前およびEOI)に実施される。さらに、投与停止または最終投与に際して、薬物動態(PK)サンプルは、最終投与の14日、30日、2ヶ月、および3ヶ月後に採取される。維持相においては、sB7-H1の薬物動態アセスメントおよび評価は、14および30日目(+/-3日)に、そして2、4、および6ヶ月目(+/-1週間)に実施される。
【0091】
抗薬剤抗体(ADA)の存在は、1日目(点滴前)、およびQ2W用量漸増相における2回目投与に続く全ての投与時に、評価される(そして評価され続ける)。ADAは、Q3W用量漸増および用量拡大相において、同一スケジュールに従って評価される。維持相においては、ADAが6ヶ月目(+/-1週間)に評価される。
【0092】
腫瘍アセスメントは、スクリーニング中(-28日から-1日まで)、およびQ2W用量漸増相の7週目に実施された(そして実施され続けた)。腫瘍アセスメントは、Q3W用量漸増相および用量拡大相において、同じタイミングで実施される。腫瘍アセスメントは、以下の評価を含み得る:理学的検査(当てはまる場合は皮膚病変の写真および測定を伴う)、胸部、腹部、および骨盤のCTまたはMRIスキャン、および脳のCTまたはMRIスキャン。脳のコンピュータ断層撮影またはMRIスキャンは、スクリーニング時のみ、または被験者が神経学的に症候性である場合に、実施される。維持相においては、腫瘍アセスメントが、2、4、および6ヶ月目(+/-1週間)に実施される。
【0093】
拡大期においては、腫瘍生検もまた、スクリーニング中(-28日から-1日まで)および7週目に実施される。
【0094】
抗腫瘍活性のアセスメントは、免疫関連客観的奏効率(ORR)、免疫関連疾患制御率(DCR)、免疫関連奏効持続期間(DR)、免疫関連無進行生存(PFS)、および全生存(OS)に基づく。腫瘍応答の判定には、免疫関連応答基準(Wolchok et al.,Clin Cancer Res.15:7412-20(2009))が使用された。
【0095】
ORRは、確認された完全寛解(CR)または確認された部分寛解(PR)がある被験者の比率と定義される。確認された応答は、応答の最初の文書化の≧4週間後における反復画像診断時に持続する応答である。DCRは、CR、PRまたは安定性疾患(SD)がある被験者の比率と定義される(SDを達成した被験者は、SDを≧3ヶ月にわたって維持すればDCRに包含される)。ORRおよびDCRの95%信頼区間(CI)は、直接確率法を使用して推定される。奏効持続期間(DR)は、客観的奏効の最初の文書化から、最初の文書化された疾患進行までの長さである。無進行生存(PFS)は、MEDI4736による治療開始から、確認された免疫関連疾患進行まで、または任意の原因に起因する死亡まで、の最初に発生した方の文書化まで測定される。全生存(OS)は、MEDI4736による治療開始から死亡までの期間である。
【0096】
有害事象は、MEDI4736の投与に続いてモニターされる。その他のアセスメントとしては、理学的検査、生命徴候モニタリング、および実験室測定が挙げられる。
【0097】
実施例2:結果
(a)登録者およびベースライン特性
Q2W用量漸増相において、0.1、0.3、または1mg/kgのMEDI4736を投与された被験者のベースライン特性は、下の表2に提供される。さらに、245人の患者は10mg/kg Q2Wで治療され、6人の患者は15mg/kg Q3Wで治療された。
【0098】
【表2】
【0099】
Q2WおよびQ3W用量漸増相において0.1、0.3、1、3、10、または15mg/kgのMEDI4736を投与された被験者のベースライン特性は、図3に提供される。
【0100】
(b)薬物動態
Q2W用量漸増相において0.1および0.3mg/kgのMEDI4736の投与から得られた薬物動態データは、図4に要約される。MEDI4736は、より低い用量では非線形PKを示したが、≧1.0mg/kg Q2Wの用量では線形PKを示した。図5を参照されたい。MEDI4736はまた、MEDI4736とB7-H1の結合に一致する、標的結合の用量依存的増大を示した(図6)。pKデータを使用した計算および可溶性B7-H1の測定に基づいて、≧0.3mg/kg Q2Wの用量で顕著な標的占有が達成され、≧3mg/kg Q2Wの用量ではほぼ完全な飽和が予測された。図6を参照されたい。
【0101】
(c)有効性
腫瘍の縮小は、多大な前治療を受けた患者および大きな腫瘍量がある患者を含めて、全ての用量レベルで観察された。活性は、迅速に(6週間)識別でき、持続した。部分寛解(PR)および安定性疾患(SD)は、0.1mg/kg Q2W程度の小量を投与された患者で観察された。下の図7および表3を参照されたい。
【0102】
【表3】
【0103】
さらに、最大10mg/kg Q2Wを投与された患者では、腫瘍量は83%程度に低下した。図7~9を参照されたい。例えば、0.3mg/kgを投与された1人のNSCLC腺がん患者(1351901004)は、6週間後に腫瘍量の31%の低下、23週間後に71%の低下を示した。予防的なステロイドが1人の被験者で使用され、臨床活性には影響を及ぼさないようであった。
【0104】
用量拡大相では、臨床活性は、非小細胞肺がん、メラノーマ、および膵臓がんがある被験者で最初に観察された。安定性疾患(12週間目)は、非小細胞肺がん(非扁平上皮)、膵臓がん、GIがん、メラノーマ、および頭頸部扁平上皮がんがある被験者で観察された。
【0105】
NSCLC(非扁平上皮および扁平上皮)の全ての用量レベルについて、腫瘍サイズのベースラインからのパーセント変化は、図10に示される。
【0106】
進行した皮膚性メラノーマの全ての用量レベルについて、腫瘍サイズのベースラインからのパーセント変化は、図11に示される。
【0107】
10mg/kgのMEDI4736 2QWで治療されたSCCHN患者について、腫瘍サイズのベースラインからのパーセント変化は、図12に示される。
【0108】
10mg/kgのMEDI4736 2QWで治療された膵臓腺がん患者について、腫瘍サイズのベースラインからのパーセント変化は、図13に示される。8人の被験者では、SD[41~108日間]があり、またはさらに良好である。これらの内6人の患者は、試験登録前に、第二次療法以上を受けた。SDがあり、またはさらに良好な8人の患者の内7人は、PD-L1(-)である(別の患者のPD-L1状態は不明である)。
【0109】
10mg/kgのMEDI4736 2QWで治療された胃食道がん患者について、腫瘍サイズのベースラインからのパーセント変化は、図14に示される。9人の被験者では、SD[35~174日間]があり、またはさらに良好である。これらの内6人は、試験登録前に、第二次療法以上を受けた。SDがあり、またはさらに良好な3人の患者はPD-L1(-)であり、2人はPD-L1(+)で、残りは不明である。
【0110】
10mg/kgのMEDI4736 2QWで治療された肝細胞がん(HCC)患者について、腫瘍サイズのベースラインからのパーセント変化は、図15に示される。登録した17人の患者のは全て、以前、ソラフェニブを投与されていた。3人はHBV(+)で、2人はHCV(+)であり、残りはHBV(-)&HCV(-)である。5人の被験者では、SD[33~76日間]があり、またはさらに良好である。これらの内、これらの内の4人は、試験登録前に、第二次療法以上を受けており;1人はHBV(+);4人はHBV(-)&HCV(-)であった。SDがあり、またはさらに良好な3人の患者はPD-L1(-)であり、これらの患者の残りではPD-L1状態は不明である。
【0111】
10mg/kgのMEDI4736 2QWで治療されたトリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者について、腫瘍サイズのベースラインからのパーセント変化は、図16に示される。
【0112】
10mg/kgのMEDI4736 2QWで治療されたぶどう膜黒色腫患者について、腫瘍サイズのベースラインからのパーセント変化は、図17に示される。
【0113】
10mg/kgのMEDI4736 2QWで治療され、2スキャンについて評価可能なNSCLC患者について、腫瘍サイズのベースラインからのパーセント変化の比較は、図18Aに示される。PD-L1陽性腫瘍、PD-L1陰性腫瘍がある患者、およびそのPD-L1腫瘍状態が取得できない患者のプロットを示す。喫煙者として同定された患者は、星型で示される。全ての患者についてORR(確認されたCR+PR)は3.7%であった。PD-L1+患者のORR率は、10%であった。
【0114】
全ての用量レベルのMEDI4736 2QWで治療され、1スキャンについて評価可能なNSCLC患者について、腫瘍サイズのベースラインからのパーセント変化の比較は、図18Bに示される。PD-L1陽性腫瘍、PD-L1陰性腫瘍がある患者、およびそのPD-L1腫瘍状態が取得できない患者のプロットを示す。喫煙者として同定された患者は、星型で示される。全ての確認された患者のORR(確認されたCR+PR)は、4.3%であった(全ての未確認の患者のORRは、8.5%であった)。PD-L1+患者のORR率は、8.3%であった。
【0115】
漸増期における6つの腫瘍型の腫瘍サイズの変化は、図19に示される。
【0116】
Q2Wで10mg/kgのMEDI4736で治療された1人の患者の拡大期における応答は、図20に示される。上部左側パネルでは、患者の腫瘍が顕著である。6週間後、上部右側パネルに示されるように、腫瘍は縮小した。
【0117】
MEDI4736(10mg/kg Q2W)のわずか2回の点滴後における、SCCHN(PD-L1+)がある患者の腫瘍退縮の劇的効果は、図21に示される。
PD-L1染色
【0118】
IHCによって、腫瘍パネルからの腫瘍組織中のPD-L1染色を実施して、様々な腫瘍中のPD-L1レベルを評価した。結果は、表4に示される。
【0119】
【表4】
【0120】
10mg/kg Q2Wの用量(N=245)は、良好に耐えられた。最も頻度の高いSAEは、下の表5に示される:
【0121】
【表5】
【0122】
(d)安全性および抗薬剤抗体
MEDI4736は、通常、良好に耐えられた。間質性肺炎、大腸炎(あらゆる等級の)、または高血糖症は、観察されなかった。さらに0.1~3mg/kgのコホートにおいて、グレード3以上の治療関連事象は、観察されなかった。用量制限毒性は、観察されなかった。6つのコホートの有害事象の要約は、下の表6に示される:
【0123】
【表6】
【0124】
0.1~3mg/kgの用量範囲にわたり、極めて低いADA発生率が観察された。具体的には、0.1~1mg/kgの用量範囲の投与を受けた15人の患者の内、1人だけが、PK/PDの意味合いがあるADA陽性と判定された。0.1~1.0mg/kgの用量範囲にわたり、薬物曝露または標的抑制に対する影響の形跡はなかった。
【0125】
(e)考察
この試験は、MEDI4736が好ましいpK特性を有して、通常、良好に耐えられることを実証する。さらに、MEDI4736は、(メラノーマ、非小細胞肺がん、膵臓腺がん、ぶどう膜黒色腫、頭頸部扁平上皮がん、胃食道がん、および肝細胞がんをはじめとするが、これに限定されるものではない)固形腫瘍の治療に効果的である一方で、ADAの発生率が低い。臨床上の便益は、試験された全ての用量レベルで観察され、活性は、早くも6週間で報告された。
【0126】
実施例3:可溶性B7-H1の定量化
電気化学発光(ECL)ベースのアッセイを使用して、(MED4736と結合していない)可溶性B7-H1を測定した。ヒト血清中の可溶性B7-H1のアッセイで使用された特定手順は、下に示される。
【0127】
(a)プレート調製
I-ブロック緩衝液(IBB)(MedImmune)は室温(RT)に平衡化して、試薬リザバー(Fisher Scientific#07-200-127)に移し入れた。ストレプトアビジン被覆プレート(Meso Scale Discovery(「MSD」)カタログ番号L11SA/L15SA)の各プレートウェルに、150μlのIBBをピペットで移し入れた。プレートをカバーして、軌道プレート振盪機上でおよそ450rpmで振盪しながら、最低限1時間(4時間以下)室温でインキュベートした。
【0128】
捕捉抗体使用液(WS)は、IBBを使用して使用直前に室温で調製した。捕捉抗体は、米国特許出願第2013/0034559号明細書に記載されるようなビオチン化抗ヒトB7-H1 IgG1 TM抗体、クローン2.7A4である。最初に、下の表7に示されるように、少なくとも100μLの捕捉抗体原液をIBB中で1000μg/mlの濃度に予備希釈した。次に、下の表8に示される容積を使用して、ポリプロピレン管内のIBB中で、250μg/mLの捕捉抗体WSを調製した。次に、捕捉抗体WSを試薬リザバーに移し入れた。
【0129】
【表7】
【0130】
【表8】
【0131】
プレート洗浄機を使用して、300μLの1×ELISA洗浄液緩衝液(1×PBS、0.05%Tween20)でプレートを3回洗浄して、プレートブロッキングを終了させた。プレートをブロットして乾燥させ、即座にウェルあたり35μLの捕捉抗体WSで被覆した。プレートを密封し、軌道プレート振盪機上でおよそ450rpmで振盪しながら、室温で1時間インキュベートした。
【0132】
(b)試験サンプル、参照サンプル、および品質管理試料調製
試験されるヒト血清サンプルは室温で解凍し、均一になるまで穏やかに混合した。これらのサンプルを希釈せずに使用した。
【0133】
組換えB7-H1の標準試料原液(RS原液)は、下の表9に示されるように、アッセイ基材(AM):Neal仔ウシ血清(Lonza、カタログ番号14-401F)中で、47μg/mLの濃度に予備希釈した。RS予備希釈液は、下の表10に示されるように、2000(S1)、1000(S2)、500(S3)、250(S4)、125(S5)、62.5(S6)、31.3(S7)、15.6(S8)、7.8(S9)、および3.9(S10)pg/mLの最終標準試料濃度に、AM中で連続希釈した。AM単独サンプルもまた含めた。希釈液は、ポリプロピレンタイターチューブまたは同等物内で調製された。
【0134】
【表9】
【0135】
【表10】
【0136】
下の表11に示されるように、AM中の品質管理(QC)サンプル予備希釈液、ならびに高、培地、および低QCサンプルをポリプロピレン管または同等物内で調製した。使用されたQC原液は、90%仔ウシ血清(Lonza、カタログ番号14-401F)中の組換えB7-H1タンパク質であった。
【0137】
【表11】
【0138】
(c)可溶性B7-H1検出
調製されたプレートは、300μLの1×ELISA洗浄緩衝液で3回洗浄し、ブロット乾燥した。試験サンプル、標準試料、品質対照、およびアッセイ基材単独を、プレート上の二連のウェル(それぞれ35μl)に移し入れた。プレートを密封し、軌道プレート振盪機上でおよそ450rpmで振盪しながら、室温で30時間インキュベートした。
【0139】
表12に示されるようにして、一次検出抗体使用液(WS)をポリプロピレン管内のIBB(1μg/mL)中で調製した。一次検出抗体は、マウス抗ヒトB7-H1 IgG1抗体クローン130021(R&D systems、カタログ番号MAB1561)(0.5mg/ml)であった。
【0140】
【表12】
【0141】
プレートを振盪機から取り出して、300μLの1×ELISA洗浄緩衝液で3回洗浄し、ブロット乾燥した。一次検出抗体WSを試薬リザバーに移し入れ、次に各プレートウェルに35μlをピペットで移した。プレートを再度密封して、軌道プレート振盪機上でおよそ450rpmで振盪しながら、室温で1時間インキュベートした。
【0142】
表13に示されるようにして、二次検出抗体使用液(WS)をポリプロピレン管内のIBB(1μg/mL)中で調製した。二次検出抗体は、ルテニウム標識ヤギ抗マウスB7-H1ポリクローナル抗体(MSD、カタログ番号R32AC-1)(0.5mg/ml)であった。二次検出抗体WSは、遮光された。
【0143】
【表13】
【0144】
プレートを振盪機から取り出して、300μLの1×ELISA洗浄緩衝液で3回洗浄し、ブロット乾燥した。二次検出抗体WSを試薬リザバーに移し入れ、次に各プレートウェルに35μlをピペットで移した。プレートを再度密封して、遮光しながら、軌道プレート振盪機上でおよそ450rpmで振盪しながら、室温で1時間インキュベートした。
【0145】
下の表14に示されるように、ポリプロピレン管内で、読み取り緩衝液T(4×)(MSDカタログ番号R92TC-1)試薬を細胞培養等級水で希釈して、読み取り緩衝液T(1×)を調製した。
【0146】
【表14】
【0147】
プレートを振盪機から取り出して、300μLの1×ELISA洗浄緩衝液で3回洗浄した。プレートをカバーして、1×読み取り緩衝液Tの添加直前にブロット乾燥した。読み取り緩衝液T(1×)を試薬リザバーに移し入れた。アッセイプレートは、読み取りのためにカバーを外して、ブロット乾燥した。読み取り緩衝液T(1×)をアッセイプレート(150μl)の全てのウェルにピペットで移し、プレートを5分以内に読み取った。
【0148】
(d)データ解析
解析のために、データをSoftMax(登録商標)Pro GxP v.5.2ソフトウェア(Molecular Devices)に転送し、1/y2重み付け4パラメータ)ロジスティック曲線適合モデルを使用して、ECLシグナル値に対して標準試料濃度をプロットした。
【0149】
全ての標準試料およびQCサンプル希釈液のsB7-H1のpg/mlを計算(逆算)した。各標準試料およびQCサンプル希釈液の二連のウェルの変動係数(%CV)もまた計算した。これらのデータを使用して、プレートが許容基準を満たしたかどうかを判定した。プレートは、以下の許容基準が満たされれば有効と見なされる。
1-標準試料レベルS2~S7の平均%回復率が、名目上の濃度の±25%以内であり、レベルS8では±30%以内であった;
2-標準試料レベルS2~S7の各逆算濃度の%CVが≦25%であり、レベルS8では≦30%であった;
3-各QCレベルの平均%回復率が、名目上の濃度の±25%以内であった;そして
4-3QCレベルの内少なくとも2つの逆算濃度の%CVが、≦25%であった。
【0150】
有効プレートでは、各サンプル中のsB7-H1のpg/mlは、標準試料を使用して計算された。試験サンプルは無希釈で試験されたので、各試験サンプルの希釈係数は1.0であり、希釈係数の修正は必要なかった。得られたデータは、100%血清中のsB7-H1濃度に相当する。
【0151】
試験サンプルのデータはまた、それが許容基準を満たしたかどうかを判定するために再吟味した。試験サンプル読み取りは、以下の許容基準が満たされれば、有効と考えられた。
1-双方の反復試験の逆算濃度がアッセイ動作範囲内に入った;
2-試験サンプルの平均逆算濃度の%CVが≦25%であった。
【0152】
試験サンプルの1つの逆算濃度がアッセイ動作範囲内に入り、もう一方がアッセイ定量下限(LLOQ)未満であり、または定量アッセイ上限ULOQを上回る場合、以下の基準が適用された:
-平均逆算濃度%CVが>25%であれば、試験サンプルは無効と見なされた。
-平均逆算濃度%CVが≦25%であり、平均逆算濃度がアッセイ動作範囲内であれば、試験サンプルは有効と見なされ、試験サンプルの平均逆算濃度が報告された。
-平均逆算濃度%CVが≦25%であれば、試験サンプルは有効と見なされ、定量限界未満、または定量限界を超えると報告された。
【0153】
双方の試験サンプル反復試験の逆算濃度がアッセイLLOQ未満であった場合、試験サンプルは有効と見なされ、定量限界未満として報告された。
【0154】
試験サンプル反復試験の1つの逆算濃度がアッセイ動作範囲未満であり、もう一方の反復試験が範囲外であった場合、以下の基準が適用された:
-範囲外の反復試験のECL値が、アッセイの平均LLOQ ECL未満であれば、試験サンプルは有効と見なされ、定量限界未満として報告された。
-範囲外の反復試験のECL値が、アッセイの平均ULOQ ECLを上回れば、試験サンプルは無効と見なされた。
【0155】
双方の試験サンプル反復試験の逆算濃度がアッセイULOQを超えた場合、試験サンプルは有効と見なされ、定量限界を超えると報告された。
【0156】
試験サンプル反復試験の1つの逆算濃度がアッセイ動作範囲を超え、もう一方の反復試験が範囲外であった場合、以下の基準を適用した:
-範囲外の反復試験のECL値が、アッセイの平均ULOQ ECLを超えた場合、試験サンプルは有効と見なされ、定量限界を超えると報告された。
-範囲外の反復試験のECL値が、アッセイの平均LLOQ ECL未満であれば、試験サンプルは無効と見なされた。
【0157】
試験サンプル反復試験の1つの逆算濃度がアッセイ動作範囲内に入り、もう一方の反復試験が範囲外であった場合、試験サンプルは無効と見なされた。
【0158】
双方の試験サンプル反復試験の逆算濃度が、範囲外であったの場合、以下の基準が適用された。
-双方のECL値がアッセイの平均LLOQ ECL未満であれば、試験サンプルは有効と見なされ、定量限界未満として報告された。
-双方のECL値がアッセイの平均ULOQ ECLを超えた場合、試験サンプルは有効と見なされ、定量限界を超えると報告された。
-1反復試験のECL値がアッセイの平均LLOQECL未満であり、もう一方の反復試験のECL値がULOQ ECLを超えた場合、試験サンプルは無効と見なされた。
【0159】
これらの手順を使用して、上の実施例1および2で上で提供されたヒト血清サンプル中の可溶性B7-H1判定した。
【0160】
実施例4:PD-L1発現は患者奏効率を駆動する
ホルマリン固定およびパラフィン包埋組織サンプル中の免疫組織化学的検査によって、NSCLC患者の対象組織をPDL1発現について特性解析した。サンプルが、PDL1膜染色された25%以上の腫瘍細胞を含有すれば、サンプルは「PD-L1陽性」と判定された。PDL1アッセイを用いた、NSCLC母集団内のこのようなサンプルの有病率は、20~40%であった。
【0161】
カットオフおよびスコア付けアルゴリズムは、第I相試験(CP1108)で、約60人の患者からのサンプルを評価することによって判定された。第3相試験について確立されたカットオフでは、およそ40%のNSCLC患者がPD-L1陽性であった(下の表15)。
【0162】
【表15】
【0163】
PDL1-発現腫瘍を有すると同定された患者は、任意抽出患者よりも、MEDI4736治療に応答する可能性が高い(下の表16)。16~24週間を超えて、10mg/kgのMEDI4736で治療されたPDL1-陽性NSCLC患者では、50パーセントの客観的奏効率があった(表16)。この劇的な奏効率は、PDL1陰性または任意抽出患者では観察されなかった(表16)。これらの結果は、PDL1発現が、NSCLCにおける奏効の重要な駆動機構であることを示唆する。
【0164】
【表16】
【0165】
MEDI4736に対する完全または部分寛解(CR/PR)は、16~24週間を超えて、10mg/kgのMEDI4736で治療されたPDL1陽性NSCLC患者の50パーセントで観察された(下の表17)。MEDI4736治療に対する初期応答は、わずか6~12週間で観察され得る(表17)。
【0166】
【表17】
【0167】
任意抽出患者は、MEDI4736に対する同一の高奏効率を示さなかった(下の表18)。
【0168】
【表18】
【0169】
疾病応答の概要は表19.1(10mg/kg Q2W)に提供される。腫瘍サンプルが、PDL1陽性である基準を満たす場合、すなわち、PDL1膜染色された25%以上の腫瘍細胞を含有する(MSCORE>25%)場合、少なくとも16~24週間以上にわたり治療された患者では、40%の奏効率が観察された。少なくとも16~24週間以上にわたり、10mg/kg Q2Wで治療された頭頸部扁平上皮がん(SCCHN)がある被験者では、33パーセントの完全または部分寛解率が観察された。
【0170】
全ての用量レベルにおける疾患応答の概要は、表19.2に示される。完全または部分寛解率は、PDL1-陽性NSCLCの基準を満たした患者で最大であった(表19.2)。より大きな便益は、より長い治療期間において、NSCLCおよびSCCHNで見られた(表19.2)。表19.3は、用量漸増(Q2WおよびQ3W)がある被験者における、疾患応答の概要を示す。
【0171】
【表19-1】
【0172】
【表19-2】
【0173】
【表19-3】
【0174】
さらなる患者奏効率は、図25A~Cに示される。MEDI4736治療に対する、非扁平上皮NSCLC患者および扁平上皮NSCLC患者の応答は、図25Aに示される。腫瘍PD-L1状態(陽性、陰性、またはNA)に対する奏効率は、図25B~Cに示される。データは、PD-L1陽性腫瘍がある患者における奏効率増大を示す。
【0175】
当業者は、単に通例の実験法を使用して、本明細書に記載される本開示の特定の側面の多くの同等物を認識し、または見極めることができるであろう。このような同等物は、以下の特許請求の範囲に包含されることが意図される。
【0176】
本明細書では様々な文献が引用され、その開示は、その内容全体を参照によって援用する。
【0177】
前述の発明は、理解を明確にする目的で、例示および実施例の手段によってある程度詳細に記載したが、添付の特許請求の範囲内で、特定の変更および修正が可能なことは明らかであろう。
【0178】
配列番号1
>PCT/US2010/058007_77 PCT/US2010/058007からの配列77 生物:ホモ・サピエンス(Homo sapiens)
【0179】
配列番号2
>PCT/US2010/058007_72 PCT/US2010/058007からの配列72 生物:ホモ・サピエンス(Homo sapiens)
【0180】
配列番号3-VHCDR1
>PCT/US2010/058007_73 PCT/US2010/058007からの配列73 生物:ホモ・サピエンス(Homo sapiens)
【0181】
配列番号4-VHCDR2
>PCT/US2010/058007_74 PCT/US2010/058007からの配列74 生物:ホモ・サピエンス(Homo sapiens)
【0182】
配列番号5-VHCDR3
>PCT/US2010/058007_75 PCT/US2010/058007からの配列75 生物:ホモ・サピエンス(Homo sapiens)
【0183】
配列番号6-VLCDR1
>PCT/US2010/058007_78 PCT/US2010/058007からの配列78 生物:ホモ・サピエンス(Homo sapiens)
【0184】
配列番号7-VLCDR2
>PCT/US2010/058007_79 PCT/US2010/058007からの配列79 生物:ホモ・サピエンス(Homo sapiens)
【0185】
配列番号8-VLCDR3
>PCT/US2010/058007_80 PCT/US2010/058007からの配列80 生物:ホモ・サピエンス(Homo sapiens)
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25A
図25B
図25C
【配列表】
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