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特許7119044抗ヒト間葉系幹細胞老化およびその幹細胞性特徴増強方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-05
(45)【発行日】2022-08-16
(54)【発明の名称】抗ヒト間葉系幹細胞老化およびその幹細胞性特徴増強方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/0775 20100101AFI20220808BHJP
   C12N 5/078 20100101ALI20220808BHJP
   C12N 5/0786 20100101ALI20220808BHJP
【FI】
C12N5/0775
C12N5/078
C12N5/0786
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020180940
(22)【出願日】2020-10-28
(65)【公開番号】P2022035915
(43)【公開日】2022-03-04
【審査請求日】2020-10-28
(31)【優先権主張番号】202010846598.1
(32)【優先日】2020-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520422566
【氏名又は名称】遵義医科大学附属医院
(74)【代理人】
【識別番号】100205936
【弁理士】
【氏名又は名称】崔 海龍
(74)【代理人】
【識別番号】100132805
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 貴之
(72)【発明者】
【氏名】肖 建輝
(72)【発明者】
【氏名】羅 ▲ゆう▼
(72)【発明者】
【氏名】鍾 建江
(72)【発明者】
【氏名】余 昌胤
【審査官】原 大樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/027850(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/006712(WO,A1)
【文献】EXPERIMENTAL CELL RESEARCH,2012年,Vol.318,p.361-370
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
A61K
MEDLINE/BIOSIS/EMBASE/CAplus(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト末梢血中の免疫細胞と老化ヒト間葉系幹細胞とを細胞間接触または非接触の方式で共培養し、前記ヒト末梢血中の免疫細胞と老化ヒト間葉系幹細胞との比率は100:1~400:1であり、
前記ヒト末梢血免疫細胞は、ヒト末梢血単核細胞、ヒト末梢血単球およびヒト末梢血リンパ球を含む、ことを特徴とする老化ヒト間葉系幹細胞の老化特徴を逆転させる方法。
【請求項2】
前記ヒト末梢血免疫細胞は、ヒト末梢血リンパ球である、ことを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項3】
老化ヒト間葉系幹細胞の老化特徴を顕著に逆転させ、β-ガラクトシダーゼ、P16およびP21タンパク質細胞の衰老マーカーの発現を減少させることができる、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記方法は、老化ヒト間葉系幹細胞の細胞周期を調節し、顕著にG1期にある細胞の比率を減少させ、S期にある細胞の比率を増加させ、老化細胞の増殖能力を向上させる、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
自己更新能力、増殖能力および多方向分化潜在能力を含む老化ヒト間葉系幹細胞の幹細胞性特徴を顕著に増強できる、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
共培養方式により得られるヒト間葉系幹細胞は疾患モデルの治療に使用され、免疫拒絶反応が発生しない、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
臨床的にヒト間葉系幹細胞の長期インビトロ増幅に使用されることにより、大量で高品質のヒト間葉系幹細胞が得られる、ことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、幹細胞および再生医療分野に属し、長期インビトロ増幅過程における抗ヒト間葉系幹細胞老化およびその幹細胞性特徴増強方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、間葉系幹細胞(mesenchymal stem cell,MSC)は、その胚性幹細胞様特性および傍分泌能力により、ヒト疾患の治療において非常に重要であり、幹細胞と再生医学の理想的な細胞由来源となっている(Arch Pharm Res.2012;35:213-21.)。米国臨床試験登録センターの記録により、MSCで治療され得る疾患は100種類以上あり、特に治療困難な病気に対して良好な応用見込みを有する(Stem Cells Transl Med 2019;9:17-27.)。しかし、人体組織に由来する間葉系幹細胞の数は限られており、臨床的最小治療用量に必要な細胞数(10-10細胞/kg、成年の1回の治療用量:10-10)に達することが困難である(Cytotherapy 2018; 21:289-36)。したがって、インビトロ増幅はMSC数不足を解決する主要途径ではない(Nat Biomed Eng 2019;3:90-104.)。しかし、長期体外培養によりMSC増殖潜在能力の低下を招き、最終的には分裂停滞を引き起こし(Arch Pharm Res.2009;32:117-26)、さらに、増幅環境ストレスにより損傷してMSC老化を引き起こし、MSC長期分裂増殖による加齢性老化により細胞増殖分化遺伝子タンパク質が変化し、増幅されたMSCの自己更新、増殖能力、分化潜在能力、免疫調節、遊走およびホーミング能力などの生物学的特性の進行性喪失を引き起こす(Semin Immunol 2018,40:101275;Trends Cell Biol 2018;28:595-607)。また、老化細胞が大量の老化関連分泌表現型因子を分泌することで周囲健康細胞の老化を引き起こし、老化MSCを患者に注入すると、幹細胞の臨調治療効果に直接影響を与え、免疫拒絶、健康細胞がん化などの潜在的な治療リスクもある(Semin Immunol 2018, 40:101275;Trends Cell Biol 2018;28:595-607)。例えば、加齢性老化により、MSCサイトカインおよびケモカイン受容体(TNFR1、TNFR2、IL-6R)などの発現の低下を引き起こし(Nat Med.2009;15:42-9.)、これにより、炎症性疾患中の治療効果は若いMSCよりも遥かに低い(AmJRespir Crit Care Med.2014;189:787-98)。したがって、MSCの長期インビトロ増幅による細胞老化問題は、MSCの大規模臨床応用がまだ達成されていない根本的、基本的で重要な一般的な科学的問題および主なボトルネックであり、緊急に解決する必要のある世界的な問題でもある。
【0003】
文献によると、MSCは、様々なサイトカイン、成長因子およびケモカインを放出することにより微環境および周囲細胞の機能を調節することができる。同様にMSC周囲環境における細胞、細胞外マトリックスなどもMSCの生物学的機能を調節することができる(Cell.2018;175:908-920.Histol Histopathol.2016;31:949-59)。生体組織が損傷した後、免疫システムが活性化されて病原体の侵入を抑制するとともに、幹細胞は増殖および分化により損傷を修復し、組織の完全性および定常状態を回復させる。この過程において、細胞内、細胞間および細胞と周囲環境の情報交換を活性化または調整する必要があり、免疫システムは損傷修復過程において重要な作用を奏する(Cell Mol Life Sci.2017;74:2345-60)。免疫システムは、外来抗原の識別と除去に加えて、体内の変異した腫瘍細胞、老化細胞、その他の体内の有害成分を監視することができる。免疫システムは創傷治癒にも有利である(Mediat Inflamm.2016;2016:2856213.)。歳をとった後、生体の免疫システムは若年成人と比べ顕著に退化し、外部損傷の修復能力も顕著に低下する。また、研究によると、胸腺は、免疫機能と内分泌機能の両方を備えた二重器官であり、動物の胸腺を除去した後、老化モデルを構築することができる(Mech Ageing Dev.2001;122:1591-611.)。したがって、免疫システムの退化は、生体の老化を引き起こす。しかし、幹細胞老化仮説によると、成体幹細胞の老化および消耗は、組織器官老化および老化関連疾患の重要な誘因である(Science 2007; 317:803-6)。免疫システム退化による生体老化と生体成体幹細胞の老化との間の関係についての科学的問題は、まだ完全には明らかではない。正常組織において、生体の成体幹細胞は増殖停止状態にあるが、生体が損傷した後、増殖および分化により損傷組織を修復するように損傷部位の成体幹細胞を刺激し、組織修復過程において免疫細胞の損傷部位への遊走を伴う。したがって、本発明者は、免疫細胞が局所幹細胞増殖および分化過程において重要な作用を奏することを推測した。研究により、天然リンパ球はIL-22を分泌することにより腸管幹細胞を刺激し、さらに損傷腸管上皮細胞を修復することが発見された(Nature.2015;528:560-4)。最近の報告(Nature.2019;571:205-10)により、CD8タンパク質を発現する殺傷性T細胞は血液脳関門を突破し、老化マウスの脳に浸潤して神経幹細胞の増殖と分化を干渉することができる。しかし、免疫細胞の老化幹細胞に対する調節作用については、今まで報告はない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、安全であり、長期インビトロ増幅過程に効果的に適用される抗ヒトMSC衰老およびその幹細胞性特徴増強方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した目的を達成するために、本発明では、ヒト末梢血中の免疫細胞とヒトMSCとを細胞間接触または非接触方式で共培養する。
【0006】
本発明に記載のヒト末梢血免疫細胞は、身体検査を受けたドナーから採取、分離して得られたものである。ヒト末梢血免疫細胞は、PBMC、PBMC中のPBM、またはPBMC中のPBLを含む。
【0007】
本発明に記載のヒトMSCは、健康、満期で帝王切開で出産した女性に由来する新鮮な臍帯、羊膜、臍帯血から分離して得られたものであり、羊膜MSC、臍帯MSCおよび臍帯血MSCを含む。
【0008】
本発明に記載のPBMCと老化ヒトMSCの細胞-細胞接触共培養での細胞比率は1:1-400:1であり、100以上:1の細胞比率である場合、MSCの老化マーカーβ-ガラクトシダーゼ発現の逆転はより強い。
【0009】
本発明に記載のヒトPBMCと老化ヒトMSCとの細胞-細胞共培養方式は、接触共培養および非接触共培養を含み、接触共培養は、MSCの老化マーカーβ-ガラクトシダーゼ発現をより良好に逆転することができる。
【0010】
本発明に記載の26歳-74歳の異なるドナーに由来のPBMCと老化ヒトMSCとの細胞-細胞接触共培養は、MSCの老化マーカーβ-ガラクトシダーゼ発現に対する逆転に対して統計的な差異がない。
【0011】
本発明に記載の3種類のヒト末梢血免疫細胞と老化ヒトMSCとを細胞間接触方式で共培養することにより、MSCの老化マーカーβ-ガラクトシダーゼ発現を逆転することができ、PBLの効果は最も高い。
【0012】
本発明に記載のPBLと若いヒトMSCまたは老化ヒトMSCとを細胞-細胞接触方式で共培養することにより、ヒトMSCの老化を遅延または逆転でき、細胞老化マーカーβ-ガラクトシダーゼ、P16およびP21などの発現を顕著に低下させることができる。
【0013】
本発明に記載のPBLと老化ヒトMSCとを細胞-細胞接触で共培養することにより、老化MSCの細胞周期を調節し、G1期にある細胞の比率を減少させ、S期にある細胞の比率を増加させることができる。
【0014】
本発明に記載のPBLと老化ヒトMSCとを細胞-細胞接触で共培養することにより、MSCの増殖能力を顕著に増強させ、増殖細胞核抗原PCNAの発現を促進することができる。
【0015】
本発明に記載のPBLと老化ヒトMSCとを細胞-細胞接触で共培養することにより、MSCの自己更新能力を向上でき、ヒトMSCクローン形成を顕著に促進し、10倍以上向上できる。
【0016】
本発明に記載のPBLと老化ヒトMSCとを細胞-細胞接触で共培養することにより、MSC幹細胞性マーカーOct4の発現を顕著に増強させ、ヒトMSCの多方向分化(骨形成細胞、軟骨細胞および脂肪細胞への分化を含む)能力を向上させることができる。
【0017】
本発明に記載のPBLと老化ヒトMSCとを細胞-細胞接触で共培養して増幅されたMSCを疾患動物モデルに使用することより、免疫拒絶反応が発生せず、安全で有効である。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、主に老化(加齢性老化)したヒトMSCを研究対象とし、それとヒト末梢血中の免疫細胞(末梢血単核細胞(peripheral blood mononucluer cells,PBMC)、PBMC中の末梢血単球(peripheral blood monocyte,PBM)および末梢血リンパ球(peripheral blood lymphocyte,PBL)を含む)とを細胞-細胞接触または非接触の方式で共培養することにより、老化ヒトMSCの老化特徴を顕著に逆転し、非老化ヒトMSCの加齢性老化を遅延し、β-ガラクトシダーゼ、P16およびP21などの細胞老化マーカーの発現を減少できることが発見された。また、老化MSCの細胞周期を調節し、G1期にある細胞の比率を減少させ、S期にある細胞の比率を増加させることができる。さらに、この方法により、老化ヒト間葉系幹細胞の幹細胞性特徴、例えば、自己更新能力、増殖能力および多方向分化潜在能力を顕著に増強できる。そして、ヒト末梢血免疫細胞PBLと老化ヒトMSCとを細胞-細胞接触の方式で共培養して増幅されたMSCを疾患モデルの治療に使用することにより、免疫拒絶がなく、治療効果は顕著である。幹細胞の長期インビトロ増幅過程における環境ストレス、酸化ストレス損傷による老化および増殖性老化という問題を解決することができ、大きな応用の見通しがある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】ヒトMSCの表現型同定(ヒト羊膜MSCを例とする)である。図1Aは、フローサイトメトリーによる表面分子マーカーの検出である。図1Bは、免疫細胞化学染色によるビメンチンおよびケラチンCK19の検出である。
図2】異なる細胞比率でPBMCと老化MSCを接触共培養した後の、βガラクトシダーゼ陽性細胞(老化細胞)数の変化である。
図3】PBMCと老化MSCとを異なる方式(接触および非接触)で共培養した後の、βガラクトシダーゼ陽性細胞(老化細胞)数の変化である。
図4】異なる年齢帯のドナーに由来するPBMCと老化MSCを接触共培養した後の、βガラクトシダーゼ陽性細胞(老化細胞)数の変化である。
図5】ヒト末梢血の異なる免疫細胞と老化MSCとを接触共培養した後の、βガラクトシダーゼ陽性細胞(老化細胞)数の変化である。
図6】PBLとヒト臍帯間葉系幹細胞とを共培養した後の、βガラクトシダーゼ陽性細胞(老化細胞)数の変化である。
図7】PBLとヒト臍帯血間葉系幹細胞とを共培養した後の、βガラクトシダーゼ陽性細胞(老化細胞)数の変化である。
図8】PBLと老化MSCとを接触共培養した後、western blottingにより検出された老化MSC中の老化マーカーP21およびP16タンパク質の発現の変化である。
図9】PBLと老化MSCとを接触共培養した後、フローサイトメトリーにより分析された老化MSCの細胞周期の変化である。
図10】PBLと老化MSCとを接触共培養した後、EDUキットにより検出された老化MSC増殖能力の変化である。
図11】PBLと老化MSCとを15日間接触共培養した後の老化MSCのクローン形成能力の実験である。
図12】PBLと老化MSCとを接触共培養した後、western blottingにより検出された老化MSC中の増殖細胞核抗原PCNAおよび幹細胞性転写因子Oct4の発現変化である。
図13】PBLと老化MSCとを接触共培養した後の、骨形成、軟骨および脂肪細胞への老化MSCの分化能力の変化である。
図14】PBLと非老化MSCとを12日間長期接触共培養した後、βガラクトシダーゼ染色により検出されたMSC老化に対する遅延作用である。
図15】PBLと非老化MSCとを12日間長期接触共培養した後、western blottingにより検出されたMSC中の老化マーカーP21およびP16タンパク質の発現レベルである。
図16】潰瘍性結腸炎マウスモデルに対するPBLと老化MSCの接触共培養により得られたMSCの治療効果の評価である。図16Aはマウスの体重変化を示す。図16Bは、マウス疾患活動性指標(DAI)のスコアを示す。図16Cは病理学的観察を示す。図16Dは病理学スコアを示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施をより十分に説明し、本発明の目的、技術的手段および利点をより明確にするために、以下、図面および実施例により本発明の技術的手段をさらに詳しく説明する。異なる組織由来のMSCは結果に影響を与えない(実施例7を参照)。本実施例では、主にヒト羊膜MSCを用いて説明する。理解できるように、ここで説明する具体的な実施例は、本発明の実施を解釈するものに過ぎず、本発明を制限するものではない。また、本発明の実施計画は、遵義医学院付属病院論理委員会の審査に合格した(論理審査番号:KLLY-2017-003)。
【0021】
<実施例1>ヒト間葉系幹細胞の分離培養および同定
満期帝王切開により得られた健康で新鮮な胎盤から羊膜組織を剥離し、1%ペニシリン・ストレプトマイシン(最終濃度はペニシリン:100IU/mL、ストレプトマイシン:100IU/mL、使用直前に調製)を含むD-PBS溶液で残留血痕および粘液を繰り返し洗浄した。約1cmのサイズで羊膜を切った後、50mL遠心管に分注し、羊膜組織体積の約2倍の0.02%EDTA-2Na含有0.05%トリプシン消化液を加え、37°C恒温水槽において185rpmで約30分間回転消化し、300メッシュのステンレス鋼濾過網で濾過し、上清を捨て、上記ステップを1回繰り返した。消化後の羊膜組織を1%ペニシリン-ストレプトマイシンを含むD-PBS液で1回洗浄し、等体積の0.05mg/mLのDNase Iを含む0.5mg/mLのII型コラゲナーゼ消化液を加え、37°C、190rpmで1~1.5時間回転消化することで羊膜破片を完全に綿状に消化し、300メッシュの篩網で濾過し、細胞濾液を収集し、1500rpmで10分間遠心分離し、上清を捨て、得られた細胞沈殿はヒト羊膜間葉系幹細胞(human amnion-derived mesenchymal stem cells,hA-MSC)であった。10%FBSを含む低糖DMEM完全培地で細胞を再懸濁し、T75細胞培養フラスコに接種し、37°C、5%CO、85-100%空気、飽和湿度の条件下で恒温培養し、細胞コンフルエンスが80%以上に達した後、継代培養を行い、第3継代(P3)または第9継代(P9)細胞を収集し、実験に用いた。また、組織ブロック付着法により新鮮なヒト臍帯組織からヒト臍帯間葉系幹細胞(human umbilical cord-derived mesenchymal stem cells,hUC-MSCs)を分離し、密度勾配遠心分離法により新鮮なヒト臍帯血からヒト臍帯血間葉系幹細胞(human umbilical cord blood-derived mesenchymal stem cells,hUCB-MSC)を分離した。得られたMSCは、CD90、CD105、CD73、CD44およびCD29などの間葉細胞表面分子を高発現し、CD34、CD11b、CD19、CD45およびHLA-DRなどの造血幹細胞マーカー並びにMHCクラスII細胞表面分子を発現しなかった(図1A)。免疫細胞化学染色法により検出した結果、この細胞は間葉細胞マーカーであるビメンチンを高発現し、上皮細胞マーカーであるケラチンCK19を発現せず(図1B)、典型的な間葉細胞の表現型を有する。
【0022】
<実施例2>ヒト末梢血から免疫細胞の分離
通常の身体検査を受けている人から新鮮な末梢血を採取し、等体積の滅菌D-PBSで希釈した。適量のHistopaque-1077を15mL遠心管に加え、管壁に沿って等体積の滅菌D-PBSで希釈した血液をゆっくりと加え、2000rpmで20分間遠心分離した。中間のバフィーコート層を吸い取り、等体積の滅菌D-PBSを加え、1500rpmで10分間遠心分離した。滅菌D-PBSで1回洗浄し、上清を捨て、細胞沈殿物を10%FBS含有低糖DMEM培地で懸濁させ、PBMC免疫細胞を得た。末梢血単球(PBM)がプラスチック細胞培養プレートに付着して接着成長しやすい特性を利用し、PBMおよび末梢血リンパ球(PBL)をPBMCから分離した。
【0023】
<実施例3>老化細胞に対する異なる細胞比率でのPBMCと老化MSCとの接触共培養の逆転作用の比較
第9継代にインビトロで連続増幅され、複製老化を示したヒト羊膜MSCを取り、10/ウェルの密度で12ウェル細胞培養プレートに接種し、16時間後に新たに分離されたPBMCを加えた。PBMCの密度は、それぞれ10、10、10、2×10、3×10および4×10/ウェルであり、PBMCとMSCの共培養の細胞比率は、それぞれ1:1、10:1、100:1、200:1、300:1および400:1であった。PBMCとMSCを72時間共培養した後、βガラクトシダーゼ染色により陽性老化MSCの数を測定した。結果(図2)から分かるように、第10継代に培養された老化MSC(以下、「MSC-10」と略する)対照群におけるβガラクトシダーゼ陽性細胞率は(77.07±7.23)%であり、PBMC:MSC-10=1:1または10:1である場合、老化対照群と比べ、βガラクトシダーゼ陽性率には顕著な変化がなく、PBMC:MSC-10が100:1に達した場合、βガラクトシダーゼ陽性率は下がり始め、77.07%から22.61%に下がり、PBMCと老化MSCの共培養細胞比率が継続的に高くなる場合においても、そのβガラクトシダーゼ陽性率は、対照群に比べ、下がる傾向にあり、細胞比率が300:1である場合に効果が最も高く、βガラクトシダーゼ陽性細胞率はわずかな(20.07±3.07)%であった(表1)。したがって、PBMCとMSCの共培養では、細胞比率が100:1-400:1である場合、老化MSCはいずれも若返り、老化を逆転する作用を有する。
【0024】
【表1】
注:MSC-10群のβガラクトシダーゼ陽性細胞率は(77.07±7.23)%であり、MSC-10に比べ、**p<0.01であった。
【0025】
<実施例4>老化細胞に対するPBMCと老化MSCの接触および非接触共培養の逆転作用の比較
第9継代にインビトロで連続増幅され、複製老化を示したヒト羊膜MSCを取り、10/ウェルの密度でTranswell(Corning,3401)の下室に接種し、下室または上室にそれぞれ10個の新たに分離されたPBMCを加え、MSCと共培養し、72時間後に下室の細胞を観察し、βガラクトシダーゼ染色により老化陽性細胞を検出した。結果(図3)から分かるように、PBMCとMSC細胞の接触および非接触共培養のいずれにおいても、老化MSC中のβガラクトシダーゼの陽性染色率は顕著に低下し、老化細胞は若返り、老化を逆転する作用を奏した。そのうち、接触共培養の逆転効果は非接触共培養よりも高かった。
【0026】
<実施例5>老化細胞に対する異なる年齢ドナーに由来のPBMCと老化MSCの接触共培養の逆転作用の比較
第9継代にインビトロで連続増幅され、複製老化を示したヒト羊膜MSCを取り、10/ウェルの密度で12ウェル細胞培養プレートに接種し、16時間後に、異なる年齢帯のドナーから新たに分離されたPBMCを加えた。老化MSC(MSC-10)とPBMCを72時間共培養した後、βガラクトシダーゼ染色により老化陽性細胞を検出した。結果(図4)から分かるように、老化MSC群では、βガラクトシダーゼ染色陽性率は(69.75±4.79)%であるのに対し、異なる年齢帯のドナーに由来のPBMCを老化MSC群に加えた後、いずれも共培養系におけるβガラクトシダーゼ染色陽性率が低下し、老化細胞が若返り、老化を逆転する作用を奏した。しかし、異なる年齢帯のドナーに由来するPBMCと老化MSCを共培養した後、そのβガラクトシダーゼ染色陽性細胞率の平均値は(19.56±4.20)%から(20.84±4.35)%であり(表2)、老化に対する逆転作用は、群間で統計的な差異が認められなかった。
【0027】
【表2】
注:MSC-10群のβガラクトシダーゼ陽性細胞率は(69.75±4.79)%であり、MSC-10に比べ、**p<0.01であった。
【0028】
<実施例6>老化細胞に対するヒト末梢に由来の異なる免疫細胞と老化MSCの接触共培養の逆転作用の比較
密度勾配遠心分離法により身体検査を受けているヒトの末梢血からPBMCを分離し、2×10/ウェルの密度で12ウェル細胞培養プレートに接種し、2時間後、PBMがプラスチック細胞培養プレートに付着して接着成長しやすい特性を利用し、PBMとPBLをPBMCから分離した。さらに、第9継代にインビトロで連続増幅され、複製老化を示したヒト羊膜MSCを取り、10/ウェルの密度でそれぞれPBMC、PBMおよびPBLを含む12ウェル細胞培養プレートに接種し、72時間共培養した後、βガラクトシダーゼ染色により共培養系における老化MSCに対するPBMC、PBMおよびPBLの影響を検出した。結果(図5)から分かるように、PBMC、PBMおよびPBLのいずれを老化MSCと共培養した後、βガラクトシダーゼ染色の陽性(老化細胞)率が効果的に減少され、老化細胞が若返り、老化を逆転する作用を奏した。老化細胞MSC-10群のβガラクトシダーゼ陽性細胞率は(71.60±2.49)%であり、PBMC、PBMおよびPBLのそれぞれと共培養した後のβガラクトシダーゼ陽性細胞率は順に(17.52±2.24)%、(33.67±4.77)%および(11.39±2.17)%であり(表3)、つまり、これらの免疫細胞の老化逆転衰効果は順にPBL>PBMC>PBMであった。
【0029】
【表3】
注:MSC-10に比べ、**p<0.01であった。PBM+MSC-10に比べ、##p<0.01であった。PBMC+MSC-10に比べ、p<0.05であった。
【0030】
<実施例7>老化細胞に対するPBLと臍帯および臍帯血に由来の老化MSCとの接触共培養の逆転作用
組織ブロック付着法により新鮮な臍帯組織からヒト臍帯間葉系幹細胞(hUC-MSCs)を分離し、別途に密度勾配遠心分離法により新鮮な臍帯血からヒト臍帯血間葉系幹細胞(hUCB-MSC)を分離し、いずれもパンクレアチンを用いて継代培養により純粋化し、第9継代細胞を収集して実験に用いた。第9継代の複製老化を示したhUC-MSCおよびhUCB-MSCを取り、10/ウェルの密度で12ウェル細胞培養プレートに接種し、16時間後に新たに分離されたPBLを加え、72時間共培養した後、βガラクトシダーゼ染色により老化hUC-MSCおよび老化hUCB-MSC老化特徴を逆転するPBLの能力を検出した。結果から分かるように、PBLと上記老化したヒト羊膜MSCの接触共培養の結果と同様に、PBLと老化hUC-MSCの接触共培養は、老化hUC-MSCの老化特徴を顕著に逆転することができ(図6)、PBLと老化hUCB-MSCの接触共培養は、老化hUCB-MSCの老化特徴を顕著に逆転することができる(図7)。したがって、老化ヒトMSCの老化特徴を逆転するPBLの効果はMSCが由来する組織に制限されず、他の組織、例えば血液に由来のMSCに対しても老化逆転効果を有し、それを若返りすることができる。以下、主にヒト羊膜MSCを例として、老化MSCの老化の逆転および長期インビトロ増幅による非老化MSCの老化の遅延に対するPBL共培養の作用を調査し、その生物学的特性および機能を評価した。
【0031】
<実施例8>PBLと老化MSCの接触共培養は、老化MSCの老化マーカータンパク質P21およびP16の発現を低下させることができる。
第9継代にインビトロで連続増幅され、複製老化を示したMSCを取り、2×10の密度で直径10cmの細胞培養皿に接種し、16時間後に新たに分離されたPBLを加え、72時間共培養した後、細胞総タンパク質を抽出し、western blottingにより老化マーカーP21およびP16タンパク質の発現状況を分析した。結果(図8)から分かるように、PBLと老化MSCを共培養した後、共培養系中のMSCの老化マーカータンパク質P21およびP16の発現が顕著に低下した。
【0032】
<実施例9>PBLと老化MSCの接触共培養は、老化MSCの細胞周期を調節することができる。
第9継代にインビトロで連続増幅され、複製老化を示したMSCを取り、2×10の密度で直径10cmの細胞培養皿に接種し、16時間後に新たに分離されたPBLを加え、72時間共培養した後、滅菌D-PBSで細胞を6回洗浄し、パンクレアチンで消化した後、低速遠心分離により細胞を収集し、DNA含有量検出キット(Solarbio,CA1510)により細胞周期を検出した。結果(図9)から分かるように、PBLと老化MSCを共培養した後、共培養系中のMSCの細胞周期が顕著に調節された。具体的には、G1期にある細胞の比率が減少し、S期にある細胞比率が増加した。これは、老化MSC細胞の再分裂および増殖を示している。
【0033】
<実施例10>PBLと老化MSCの接触共培養は、老化MSCの増殖能力および自己更新能力を回復できる。
第9継代にインビトロで連続増幅され、複製老化を示したMSCを取り、3×10/ウェルの密度で24ウェル細胞培養プレートに接種し、16時間後に新たに分離されたPBLを加え、72時間共培養した後、EDUキットによりPBLの老化MSC増殖能力に対する影響を検出した。結果(図10)から分かるように、PBLと老化MSCを共培養した後、そのEDU陽性細胞率は3.54%から12.31%に上がり(表4)、老化MSCの増殖能力は顕著に向上した。
【0034】
【表4】
注:MSC-10に比べ、**p<0.01であった。
【0035】
<実施例11>PBLと老化MSCの接触共培養は、老化MSCのクローン形成能力を増強できる。
第9継代にインビトロで連続増幅され、複製老化を示したMSCを取り、200細胞/皿の密度で直径10cmの細胞培養皿に接種し、16時間後に新たに分離されたPBLを加え、6日ごとに液体を交換し、15日間共培養した後、クリスタルバイオレット染色により老化MSCの細胞コロニーの形成を観察し、撮影して記録した。結果(図11)から分かるように、PBLと老化MSCを15日間共培養した後、細胞コロニーが顕著に増加したことが観察され、そのコロニー形成率は10倍以上増加した(表5)。したがって、この方法は、老化MSCの自己更新能力を回復できる。
【0036】
【表5】
注:MSC-10に比べ、**p<0.01であった。
【0037】
<実施例12>PBLと老化MSCの接触共培養は、老化MSCの増殖細胞核抗原PCNAおよび幹細胞性転写因子Oct4の発現を増強できる。
第9継代にインビトロで連続増幅され、複製老化を示したMSCを取り、2×10の密度で直径10cmの細胞培養皿に接種し、16時間後に新たに分離されたPBLを加え、72時間共培養した後、細胞総タンパク質を抽出し、western blottingにより増殖細胞核抗原PCNAおよび幹細胞性転写因子Oct4の発現状況を分析した。結果(図12)から分かるように、PBLと老化MSCを共培養した後、老化MSC中の増殖細胞核抗原PCNAおよび幹細胞性転写因子Oct4の発現レベルは顕著に向上した。
【0038】
<実施例13>PBLと老化MSCの接触共培養は、老化MSCの多方向分化能力を向上できる。
第9継代にインビトロで連続増幅され、複製老化を示したMSCを取り、2×10/ウェルの密度で6ウェル細胞培養プレートに接種し、16時間後に新たに分離されたPBLを加え、72時間共培養した後、細胞コンフルエンスが80%に達した時に、骨分化、および軟骨分化培地に交換し、細胞コンフルエンスが100%に達した時に、脂肪生成分化培地に交換した。誘導分化過程において、21日目まで3日ごとに液体を交換し、トルイジンブルーで染色し、軟骨形成分化細胞外マトリックスグリコサミノグリカンの生成を検出し、アリザリンレッドS染色法により骨形成分化石灰化結節の生成を検出し、オイルレッドO染色により脂肪生成分化脂肪滴の形成を検出した。結果(図13)から分かるように、トルイジンブルー染色によりPBL処理後の老化MSCは強い軟骨マトリックスグリコサミノグリカン生成能力を有することが検出され、アリザリンレッドS染色はより強い石灰化結節形成能力を有することを示し、オイルレッドO染色はより多い鮮紅色脂肪滴が生成したことを示している。したがって、この方法は、老化MSCの骨形成、脂肪生成分化および軟骨形成分化を増強させる能力を有する。
【0039】
<実施例14>PBLと非老化MSCの長期接触共培養は、MSC老化を遅延できる。
対数増殖期にある第3継代のMSCを取り、10/ウェルの密度で6ウェル細胞培養プレートに接種し、16時間後、新たに分離されたPBLを加え、4日ごとに液体を交換し、12日間連続培養した後、細胞を取り出し、βガラクトシダーゼ染色により老化陽性細胞を検出した。結果(図14)から分かるように、12日間インビトロで連続培養した後、MSCは、細胞体が扁平になり広くなり、かつ68.5%と高いβガラクトシダーゼ陽性染色率を示した。これは、長期インビトロ増幅培養はhAMSCsの老化を招くことを示している。しかし、PBLとMSCを12日間共培養した後、その細胞形態は依然として長紡錘形で渦状に成長し、βガラクトシダーゼ陽性染色率が僅か3.9%であった。したがって、この方法は、長期インビトロ増幅過程におけるMSC老化の発生を顕著に遅延できる。
【0040】
<実施例15>PBLと非老化MSCの長期接触共培養は、MSC発現老化マーカータンパク質P21およびP16を顕著に減少できる。
対数増殖期にある第3継代のMSCを取り、10の密度で直径10cmの細胞培養皿に接種し、16時間後、新たに分離されたPBLを加え、4日ごとに液体を交換し、12日間連続培養した後、細胞総タンパク質を抽出し、western blottingにより老化マーカータンパク質P21およびP16の発現状況を分析した。結果(図15)から分かるように、PBLとMSCを12日間共培養した後、MSCの老化マーカータンパク質P21およびP16の発現レベルは非共培養群よりも顕著に低かった。
【0041】
<実施例16>疾患モデルに対するPBLと老化MSCの接触共培養により増幅されたMSCの治療効果
3%DSSを自由飲食させることにより潰瘍性結腸炎マウスモデルを構築し、40匹のC57マウス(5~7週齢)を10匹/群でランダムにNormal、DSS、DSS+MSC-10、DSS+PBL+MSC-10の4群に分けた。DSS+MSC-10群およびDSS+PBL+MSC-10群では、DSSを食べさせ始めた時にそれぞれP10およびリンパ球で72時間処理した後のP10 MSC(1×10/匹)を腹腔内注射した。NormalおよびDSS群のマウスに同時に等体積の滅菌PBSを注射した。観察期間で、毎日定時で体重を秤り、死亡状況を記録し、下痢便、血便などの現象があるか否かを観察した。マウス体重、下痢、便血および死亡状況に基づいて疾患活動性指標(DAI)を算出した。MSC注射の10日後、マウスを安楽死させ、結腸を取り、4%パラホルムアルデヒドを用いて室温で一晩固定し、パラフィン包埋し、4mの切片に切り出し、HE染色した。顕微鏡で結腸組織の炎性細胞浸潤および陰窩と杯状細胞の構造を観察し、組織病理学的スコアを行った。結果から分かるように、DSSを食べさせた5日目に、マウスは、体重減少、下痢便、血便などを含む炎症性結腸炎の重篤な症状が現れ始め、7日目に死亡し始めた(図16)。組織学的分析により、DSSを食べさせることによりマウスの結腸粘膜が重度の炎症と損傷が発生したことが示された(図16C、D)。潰瘍性結腸炎マウスに対するP10 MSC注射の治療効果はDSS群と同様に、比較的重篤な体重減少、血便が発生し、結腸組織の病理学的観察により重篤な炎性細胞浸潤および陰窩と杯状細胞構造の喪失が観察された。しかし、PBLと老化MSCの接触共培養により増幅されたP10 MSCを注射した後、DSS誘導の体重減少、血便、結腸炎症および損傷を顕著に軽減でき(図16)、免疫拒絶反応による死亡が発生せず、治療効果が顕著であった。
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