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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-05
(45)【発行日】2022-08-16
(54)【発明の名称】医療器具
(51)【国際特許分類】
   A61B 10/00 20060101AFI20220808BHJP
   A61B 1/018 20060101ALI20220808BHJP
【FI】
A61B10/00 K
A61B1/018 515
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020199773
(22)【出願日】2020-12-01
(62)【分割の表示】P 2018542607の分割
【原出願日】2017-09-26
(65)【公開番号】P2021049358
(43)【公開日】2021-04-01
【審査請求日】2020-12-01
(31)【優先権主張番号】P 2016188670
(32)【優先日】2016-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(72)【発明者】
【氏名】野崎 雄介
(72)【発明者】
【氏名】玉造 滋
【審査官】磯野 光司
(56)【参考文献】
【文献】特表2001-505464(JP,A)
【文献】特表2008-504053(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0234409(US,A1)
【文献】特開2014-140413(JP,A)
【文献】特開2005-349022(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 10/00
A61B 1/018
A61B 17/28
A61B 17/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体組織を挟み込み可能な挟持部材と、
前記生体組織に穿刺可能な穿刺部材と、
前記穿刺部材の移動を規制する規制部材と、を備え、
前記穿刺部材は、軸方向において前記挟持部材よりも先端側に突出する穿刺位置と、前記軸方向において前記挟持部材よりも基端側に後退する待機位置と、の間で移動可能であり、
前記穿刺部材は、前記生体組織を挟み込んだ前記挟持部材の閉じ度合いが所定範囲内である場合に、前記待機位置から前記穿刺位置まで移動可能であり、
前記穿刺部材は、前記生体組織を挟み込んだ前記挟持部材の閉じ度合いが前記所定範囲よりも小さい場合に、前記挟持部材に突き当たることで前記挟持部材に対する前記先端側への相対的な移動が妨げられ、前記待機位置から前記穿刺位置まで移動できず
前記規制部材は、前記挟持部材の閉じ度合いが前記所定範囲よりも大きい場合に、前記穿刺部材が前記待機位置から前記穿刺位置まで移動することを規制する、
医療器具。
【請求項2】
前記挟持部材に接続され、前記挟持部材との接続位置から前記基端側に向かって延在する長尺体を更に備え、
前記長尺体を前記穿刺部材に対して前記軸方向に沿って移動させると、前記挟持部材の閉じ度合いが変化する、請求項に記載の医療器具。
【請求項3】
前記軸方向に沿って延在する外筒部材を更に備え、
前記挟持部材は、前記外筒部材の先端よりも前記先端側に一部が突出するように、前記外筒部材の内部に固定され、
前記穿刺部材の先端は、前記待機位置では前記外筒部材の内部に位置する、請求項1又は2に記載の医療器具。
【請求項4】
前記穿刺部材を前記穿刺位置から前記待機位置に向けて付勢する付勢部材を更に備える、請求項1からのいずれか一項に記載の医療器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、心筋梗塞検出方法、心筋梗塞検出装置及び医療器具に関する。
【背景技術】
【0002】
心筋梗塞は、虚血性心疾患の一種であり、心筋に酸素や栄養を供給する冠動脈の血流が閉塞や狭窄などによって低下することで、心筋が虚血状態に陥り、壊死に至る疾患である。従来より、心筋梗塞を検出する方法が研究されている。例えば特許文献1には、患者に埋め込まれた装置を用いて心臓をモニタし、エレクトログラム信号などの信号を用いて心筋梗塞を検出する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2002-522103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、測定データを解析するための複雑な処理が必要であるという点において課題があった。本願発明者は、鋭意検討を重ねた結果、心筋自体の物性を利用すればより簡易に梗塞の有無が判定できることを発見し、更に鋭意検討を重ねることで、本発明を完成させるに至ったものである。
【0005】
本開示の目的は、簡易に梗塞の有無を判定することができる心筋梗塞検出方法、心筋梗塞検出装置及び医療器具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様としての心筋梗塞検出方法は、心筋硬さを測定する硬さ測定ステップと、前記心筋硬さに基づいて梗塞の有無を判定する判定ステップと、を含む。
【0007】
本発明の一実施形態としての心筋梗塞検出方法は、穿刺抵抗測定部を含む針部材を心臓内腔から心筋に穿刺する穿刺ステップを更に含み、前記硬さ測定ステップでは、前記穿刺ステップで前記針部材が前記心筋に穿刺されるときの穿刺抵抗を心筋硬さとして前記穿刺抵抗測定部により測定する。
【0008】
本発明の一実施形態としての心筋梗塞検出方法は、前記針部材が、周囲の温度を測定する温度測定部を更に含み、前記針部材が前記心筋に穿刺された状態で、前記温度測定部により心筋温度を測定する温度測定ステップを更に含み、前記判定ステップでは、前記心筋温度に基づいて梗塞の有無を判定する。
【0009】
本発明の一実施形態としての心筋梗塞検出方法は、前記針部材が、周囲の色情報を取得する色情報取得部を更に含み、前記針部材が前記心筋に穿刺された状態で、前記色情報取得部により前記心筋の色情報を取得する色情報取得ステップを更に含み、前記判定ステップでは、前記色情報に基づいて梗塞の有無を判定する。
【0010】
本発明の一実施形態としての心筋梗塞検出方法は、心臓内腔から心筋を吸引する吸引ステップを更に含み、前記硬さ測定ステップでは、前記吸引ステップで吸引される心筋の吸引度合いを心筋硬さとして測定する。
【0011】
本発明の一実施形態としての心筋梗塞検出方法は、心臓内腔から心筋を摘む摘みステップを更に含み、前記硬さ測定ステップでは、前記摘みステップで摘まれる心筋の摘み度合いを心筋硬さとして測定する。
【0012】
本発明の第2の態様としての心筋梗塞検出装置は、穿刺抵抗測定部を含み、心臓内腔から心筋に穿刺可能な針部材と、前記穿刺抵抗測定部により測定された穿刺抵抗に基づいて梗塞の有無を判定する制御部と、を備える。
【0013】
本発明の第3の態様としての医療器具は、生体組織を挟み込み可能な挟持部材と、前記生体組織に穿刺可能な穿刺部材と、を備え、前記穿刺部材は、軸方向において前記挟持部材よりも先端側に突出する穿刺位置と、前記軸方向において前記挟持部材よりも基端側に後退する待機位置と、の間で移動可能であり、前記穿刺部材は、前記生体組織を挟み込んだ前記挟持部材の閉じ度合いが所定範囲内である場合に、前記待機位置から前記穿刺位置に移動可能である。
【0014】
本発明の一実施形態としての医療器具において、前記穿刺部材は、前記生体組織を挟み込んだ前記挟持部材の閉じ度合いが前記所定範囲よりも小さい場合に、前記挟持部材に突き当たることで前記挟持部材に対する前記先端側への相対的な移動が妨げられ、前記穿刺位置まで移動できない。
【0015】
本発明の一実施形態としての医療器具は、前記挟持部材の閉じ度合いが前記所定範囲よりも大きい場合に、前記穿刺部材が前記穿刺位置まで移動することを規制する規制部材を更に備える。
【0016】
本発明の一実施形態としての医療器具は、前記挟持部材に接続され、前記挟持部材との接続位置から前記基端側に向かって延在する長尺体を更に備え、前記長尺体を前記穿刺部材に対して前記軸方向に沿って移動させると、前記挟持部材の閉じ度合いが変化する。
【0017】
本発明の一実施形態としての医療器具は、前記軸方向に沿って延在する外筒部材を更に備え、前記挟持部材は、前記外筒部材の先端から一部が突出するように、前記外筒部材の内部に固定され、前記穿刺部材の先端は、前記待機位置では前記外筒部材の内部に位置する。
【0018】
本発明の一実施形態としての医療器具は、前記穿刺部材を前記穿刺位置から前記待機位置に向けて付勢する付勢部材を更に備える。
【発明の効果】
【0019】
本開示の心筋梗塞検出方法、心筋梗塞検出装置及び医療器具によれば、簡易に梗塞の有無を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る心筋梗塞検出装置の概要を示す図である。
図2図1の心筋梗塞検出装置の概略構成を示す機能ブロック図である。
図3図1の心筋梗塞検出装置を用いた心筋梗塞検出方法を示すフローチャートである。
図4図1の心筋梗塞検出装置の針部材を心筋に穿刺する様子を示す概略図である。
図5図3の心筋梗塞検出方法における心筋硬さの測定の別の例を示すフローチャートである。
図6図1の心筋梗塞検出装置の吸引部で心筋を吸引する様子を示す概略図である。
図7図3の心筋梗塞検出方法における心筋硬さの測定の更に別の例を示すフローチャートである。
図8図1の心筋梗塞検出装置の摘み部で心筋を摘む様子を示す概略図である。
図9】本発明の一実施形態に係る医療器具の側面図である。
図10図9の医療器具の挟持部材の閉じ度合いが所定範囲内よりも小さい場合の医療器具の状態を示す図である。
図11図9の医療器具の挟持部材の閉じ度合いが所定範囲内である場合の医療器具の状態を示す図である。
図12図9の医療器具の挟持部材の閉じ度合いが所定範囲よりも大きい場合の医療器具の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、一実施形態に係る心筋梗塞検出装置及びこの心筋梗塞検出装置を用いた心筋梗塞検出方法、並びに医療器具について、図面を参照して説明する。各図において共通の部材には、同一の符号を付している。
【0022】
[心筋梗塞検出装置]
図1は、一実施形態に係る心筋梗塞検出装置1の概要を示す図である。また、図2は、心筋梗塞検出装置1の概略構成を示す機能ブロック図である。
【0023】
図1に示すように、心筋梗塞検出装置1は、情報処理部100と、測定部200と、情報処理部100と測定部200とを連結するカテーテル10とを備える。情報処理部100は、被検者の体外に設置され、コンピュータ等の情報処理装置によって構成される。測定部200は、不図示の留置カテーテルを介して心臓内腔に挿入され、心筋温度の測定、心筋硬さの測定、及び心筋の色情報の取得のために用いられる。心筋温度、心筋硬さ、及び心筋の色情報は、それぞれ心筋の物性の一要素である。
【0024】
図2に示すように、情報処理部100は、操作部110と、表示部120と、記憶部130と、制御部140と、通信部150とを備える。また、測定部200は、通信部210と、針部材220と、吸引部230と、吸引度合い測定部240と、摘み部250と、摘み度合い測定部260とを備える。
【0025】
操作部110は、例えばキーボードやマウス等の入力装置で構成される。操作部110は、操作者による操作を受け付けて、受け付けた操作情報を制御部140に出力する。
【0026】
表示部120は、例えば液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等の表示装置で構成される。表示部120は、制御部140により生成された表示画面を表示出力する。
【0027】
記憶部130は、例えばRAMやROM等の記憶装置で構成され、制御部140に特定の機能を実行させるための種々の情報及びプログラムを記憶する。また、記憶部130は、測定部200により測定された心筋温度、心筋硬さ、及び心筋の色情報等の情報を記憶する。
【0028】
制御部140は、例えばプロセッサで構成され、特定のプログラムを読み込むことにより特定の機能を実行する。制御部140は、心筋梗塞検出装置1を構成する各構成部の動作を制御する。
【0029】
通信部150及び通信部210は、互いに通信して情報を送受信可能である。通信部150と通信部210との間の通信は、有線通信でもよいし、無線通信でもよい。通信部150と通信部210との間の通信に有線通信を用いる場合には、例えばカテーテル10の内部を通る配線によって通信することができる。通信部150と通信部210との間の通信に無線通信を用いる場合には、測定部200は、情報処理部100から独立した装置で構成されてもよく、その場合、情報処理部100の制御部140及び記憶部130とは別に、制御部や記憶部等を備えてもよい。
【0030】
針部材220は、例えば図4に示すように、測定部200の先端側(カテーテル10が接続される側とは反対側)から外部に露出させることができ、心臓内腔から心内膜を通って心筋に穿刺することが可能な、鋭利な先端を有する部材である。針部材220は、温度測定部221と、穿刺抵抗測定部222と、色情報取得部223と、加熱部224とを含み、これらは針部材220が心臓内腔から心内膜を通って心筋に穿刺された場合に、心筋に周囲が覆われる位置、すなわち針部材220の先端付近に配置される。針部材220は、外部に露出しない位置に変位可能であってもよい。このように構成することで、例えば、測定部200を心臓内腔に挿入する際や排出する際などに、針部材220を外部に露出させずに安全に取り扱うことができる。
【0031】
温度測定部221は、温度センサ等で構成され、周囲の温度を測定する。温度測定部221は、針部材220が心筋に穿刺された状態で、心筋温度を測定することができる。温度測定部221は、例えば、針部材220における針本体の先端部の外周面に取り付けられる温度センサにより構成される。
【0032】
穿刺抵抗測定部222は、圧力センサ等で構成され、針部材220の穿刺抵抗を測定する。ここで、針部材220の穿刺抵抗は、例えば、針部材220が対象物に穿刺される際に針部材220の先端にかかる抵抗を測定することで得られる。穿刺抵抗測定部222は、例えば、針部材220における針本体の外周面又は先端に取り付けられる圧力センサにより構成される。
【0033】
色情報取得部223は、周囲の色情報を取得する。色情報取得部223は、例えば撮像部を含み、撮像した画像から得られる色相、彩度及び明度等の情報をそれぞれ数値化して色情報として取得する。色情報取得部223は、色情報の取得を容易化するために、被写体を光で照射する発光部を含んでもよい。また、色情報取得部223は、例えば、針部材220における針本体の中空部に収容され、針本体の先端開口から心筋の色を撮像する撮像部により構成される。
【0034】
加熱部224は、ヒータ等で構成され、周囲を加熱する。加熱部224は、針部材220が心筋に穿刺された状態で、心筋温度を上昇させることができる。
【0035】
吸引部230は、例えば図6に示すように、測定部200の先端側から外部に露出させることができ、中央が基端側に凹んだカップ状となっており、中央で吸引口231を区画している。吸引部230は、吸引口231からの吸引力により、心臓内腔310から心筋330を吸引することができる。図6は、測定部200を簡略化した図であり、針部材220及び摘み部250の図示を省略している。また、吸引部230は、外部に露出しない位置に変位可能であってもよい。このように構成することで、例えば、測定部200を心臓内腔に挿入する際や排出する際などに、吸引部230を外部に露出させずに安全に取り扱うことができる。
【0036】
吸引度合い測定部240は、吸引部230の吸引による心筋の吸引度合いを測定する。心筋の吸引度合いとしては、例えば、吸引による心筋の変形量を用いることができる。この場合、吸引による心筋の変形量が大きいほど心筋の吸引度合いが大きくなる。また、例えば、心筋の吸引度合いとしては、心筋が所定量変形するのに必要な吸引力を用いることもできる。この場合、例えば吸引口231の開口端付近に接触センサを設けることで、接触センサに心筋が接触するのに必要な吸引力を測定することができ、必要な吸引力が大きいほど、心筋の吸引度合いは小さくなる。このように、吸引度合いを各種基準を用いて測定することができる。
【0037】
摘み部250は、例えば図8に示すように、測定部200の先端側から外部に露出させることができ、先端で対象物を挟み込むことで摘めるように構成されている。摘み部250は、心臓内腔310から心筋330を摘むことができる。図8は、測定部200を簡略化した図であり、針部材220及び吸引部230の図示を省略している。また、摘み部250は、外部に露出しない位置に変位可能であってもよい。このように構成することで、例えば、測定部200を心臓内腔に挿入する際や排出する際などに、摘み部250を外部に露出させずに安全に取り扱うことができる。
【0038】
摘み度合い測定部260は、摘み部250による心筋の摘み度合いを測定する。心筋の摘み度合いとしては、例えば、心筋を摘んだ状態で、摘み部250で心筋を更に挟み込むときに、挟み込みの移動量に対する心筋からの反発力を用いることができる。この場合、挟み込みの移動量に対する心筋からの反発力が大きいほど、心筋の摘み度合いが小さくなる。このように、摘み度合いを各種基準を用いて測定することができる。
【0039】
[心筋梗塞検出方法]
以下、心筋梗塞検出装置1を用いた心筋梗塞検出方法について説明する。図3は、心筋梗塞検出装置1を用いた心筋梗塞検出方法を示すフローチャートである。
【0040】
まず、操作者が、測定部200を心臓内腔に挿入する(ステップS110)。例えば、測定部200を被検者の大腿部から大腿動脈に挿入し、大動脈を通じて心臓内腔(例えば左心室内腔)に挿入する。以下、ステップS110の工程を、「挿入ステップ」とも記載する。
【0041】
次に、操作者が、測定部200の針部材220を、心筋330に穿刺する(ステップS120)。具体的には、図4に示すように、心臓300の心臓内腔310に挿入された測定部200の先端から針部材220を露出させ、針部材220の先端229を、心内膜320を貫通させて心筋330に到達するように穿刺する。針部材220を心筋330に穿刺する前に、制御部140が、例えば色情報取得部223の撮像部によって心臓内腔310の画像を取得し、表示部120に表示させてもよい。これにより、操作者は、針部材220を心筋330のどの位置に穿刺すればよいか判断することができる。以下、ステップS120の工程を、「穿刺ステップ」とも記載する。
【0042】
ここで、針部材220が心筋330に穿刺される際、制御部140は、穿刺抵抗測定部222を用いて、穿刺抵抗を心筋硬さとして測定する(ステップS130)。制御部140は、測定された心筋硬さの情報を記憶部130に記憶する。ここで、本工程は、上述のステップS120の工程と同時に行われてもよい。本工程では、心内膜320の穿刺抵抗の影響を排除して心筋330の穿刺抵抗を精度良く測定するために、例えば、針部材220が心内膜320に穿刺され始めてから所定時間経過後の穿刺抵抗を測定してもよい。以下、ステップS130の工程を、「硬さ測定ステップ」とも記載する。本工程では穿刺抵抗を心筋硬さとして測定するため、特に「穿刺抵抗測定ステップ」とも記載する。
【0043】
次に、針部材220が心筋330に穿刺された状態で、制御部140は、温度測定部221を用いて、心筋330の温度(心筋温度)を測定する(ステップS140)。制御部140は、測定された心筋温度の情報を記憶部130に記憶する。心筋温度の測定は、針部材220が心筋330に穿刺されたことをセンサ等で検知することで開始してもよいし、操作部110で受け付けた操作情報に基づいて開始してもよい。以下、ステップS140の工程を、「温度測定ステップ」とも記載する。
【0044】
次に、針部材220が心筋330に穿刺された状態で、制御部140は、色情報取得部223を用いて、心筋330の色情報を取得する(ステップS150)。制御部140は、取得された色情報を記憶部130に記憶する。色情報の取得は、針部材220が心筋330に穿刺されたことをセンサ等で検知することで開始してもよいし、操作部110で受け付けた操作情報に基づいて開始してもよい。本工程とステップS140の工程とは、行われる順番が逆でもよいし、同時でもよい。以下、ステップS150の工程を、「色情報取得ステップ」とも記載する。
【0045】
次に、制御部140は、心筋温度、心筋硬さ、及び心筋330の色情報のうち、少なくとも1つの情報に基づいて、針部材220が穿刺された箇所における心筋330の梗塞の有無を判定する(ステップS160)。例えば、制御部140は、心筋温度に基づいて梗塞の有無を判定する場合、心筋温度が所定温度以下であるとき、又は所定温度以上であるとき、梗塞が有ると判定することができる。
【0046】
また、例えば、温度測定ステップの前に加熱部224で心筋330を加熱する工程(加熱ステップ)を追加し、温度測定ステップでは加熱後の心筋温度の変化を測定しておくことで、制御部140は、加熱後の心筋温度の変化に基づいて梗塞の有無を判定することができる。加熱後の心筋温度の変化は、例えば、所定時間内での温度変化を測定することで得られる。
【0047】
また、制御部140は、心筋硬さとしての穿刺抵抗に基づいて梗塞の有無を判定する場合、例えば、穿刺抵抗が所定値以上であるとき、心筋硬さが一定以上であり、梗塞が有ると判定することができる。また、制御部140は、心筋330の色情報に基づいて梗塞の有無を判定する場合、例えば、色相、彩度及び明度等の色情報の数値データが所定範囲内にあるとき、梗塞が有ると判定することができる。この梗塞有無の判定に用いる色情報の数値データの範囲は、例えば、梗塞が有る箇所では血流が下がることによって酸素分圧が低下するため、酸素分圧が所定値以下であるときに満たされる色情報の数値データの範囲とすることができる。また、例えばパルスオキシメーターのように赤外光と赤色光など複数の透過光比率から酸素飽和度を算出してもよい。
【0048】
更に、制御部140は、心筋温度、心筋硬さ、及び心筋330の色情報のうち2以上の組み合わせに基づいて梗塞の有無を判定する場合、例えば上述の2以上の判定条件を満たした場合に、梗塞と判定することができる。このように、心筋についての複数の物性に基づいて判定することで、梗塞有無の判定の精度をより高めることができる。以下、ステップS160の工程を、「判定ステップ」とも記載する。判定ステップで梗塞の有無の判定に用いない物性の情報は、測定又は取得しなくてもよい。
【0049】
次に、制御部140は、判定ステップでの判定結果を、例えば表示部120に表示することで、出力する(ステップS170)。以下、ステップS170の工程を、「出力ステップ」とも記載する。
【0050】
そして、測定を継続する場合には(ステップS180のNO)、操作者が針部材220を心筋330の他の位置に穿刺することで(ステップS120)、新たな位置での測定が継続される。一方、測定を終了する場合には(ステップS180のYES)、操作者が測定部200を被検者の体内から排出して(ステップS190)、本方法の工程を終了する。
【0051】
このように、本実施形態に係る心筋梗塞検出方法によると、針部材220を心筋330に穿刺することで、心臓内腔310内の血液や心内膜320等の影響を排除することができる。したがって、心筋330自体の物性を直接測定して心筋梗塞の有無を検出することができる。
【0052】
また、本実施形態に係る心筋梗塞検出方法によると、心筋330の温度測定及び色情報取得のために心筋330に針部材220を穿刺することで、穿刺の際の穿刺抵抗から心筋硬さも同時に測定することができる。したがって、心筋330自体の物性を効率的に測定することができる。
【0053】
さらに、本実施形態に係る心筋梗塞検出方法によると、心筋330の任意の位置に針部材220を穿刺して穿刺位置における心筋330の梗塞の有無を検出することができ、必要に応じて穿刺位置を変更することで他の位置における心筋330の梗塞の有無も検出することができる。このように、心筋330の任意の複数の位置について、梗塞とは全く関係ない箇所すべてを事前にマッピングすること無しに、梗塞の有無を検出することができる。
【0054】
ここで、図3に示した心筋梗塞検出方法における硬さ測定ステップ(ステップS130)の別の例として、針部材220の穿刺抵抗測定部222ではなく図6に示す吸引部230及び吸引度合い測定部240を利用して心筋硬さとしての吸引度合いを測定する例について、図5及び図6を参照して説明する。まず、図6に示すように、制御部140は、吸引部230を用いて、心臓内腔310から心筋330を心内膜320と共に吸引する(ステップS131’)。吸引部230による吸引は、例えば、操作部110で受け付けた操作情報に基づいて開始することができる。
【0055】
次に、制御部140は、吸引度合い測定部240を用いて、吸引部230による心筋330の吸引度合いを心筋硬さとして測定する(ステップS132’)。測定された心筋硬さの情報は、制御部140に送信され、制御部140は心筋硬さの情報を記憶部130に記憶する。このように、針部材220の穿刺抵抗測定部222による心筋硬さ測定に代えて又は加えて、心筋硬さとして吸引度合いを測定することもできる。
【0056】
図6では、吸引部230が心筋330を心内膜320と共に吸引する例を示したが、このような構成には限定されない。例えば、吸引部230を針部材220の先端の位置で針部材220内に配置し、針部材220を心筋330に穿刺した状態で、針部材220の先端開口を通じて吸引部230からの吸引を開始してもよい。このような構成とすることで、心内膜320の影響を排除して心筋330自体の吸引度合いを直接測定することができる。
【0057】
心筋硬さとして吸引度合いを測定する場合、判定ステップ(ステップS160)では、制御部140は、心筋硬さとしての吸引度合いに基づいて梗塞の有無を判定することができる。この場合、例えば、吸引度合いが所定値以下であるとき、心筋硬さが一定以上であり、梗塞が有ると判定することができる。
【0058】
ここで、図3の心筋梗塞検出方法のフローチャートにおける硬さ測定ステップ(ステップS130)の更に別の例として、針部材220の穿刺抵抗測定部222ではなく図8に示す摘み部250及び摘み度合い測定部260を利用して心筋硬さとしての摘み度合いを測定する例について、図7及び図8を参照して説明する。まず、図8に示すように、制御部140は、摘み部250を用いて、心臓内腔310から心筋330を心内膜320と共に摘む(ステップS131’’)。摘み部250による摘みは、例えば、操作部110で受け付けた操作情報に基づいて開始することができる。
【0059】
次に、制御部140は、摘み度合い測定部260を用いて、摘み部250による心筋330の摘み度合いを心筋硬さとして測定する(ステップS132’’)。測定された心筋硬さの情報は、制御部140に送信され、制御部140は心筋硬さの情報を記憶部130に記憶する。このように、針部材220の穿刺抵抗測定部222による心筋硬さ測定に代えて又は加えて、心筋硬さとして摘み度合いを測定することもできる。
【0060】
心筋硬さとして摘み度合いを測定する場合、判定ステップ(ステップS160)では、制御部140は、心筋硬さとしての摘み度合いに基づいて梗塞の有無を判定することができる。この場合、例えば、摘み度合いが所定値以下であるとき、心筋硬さが一定以上であり、梗塞が有ると判定することができる。
【0061】
[医療器具]
以下、一実施形態に係る医療器具について説明する。図9は、一実施形態に係る医療器具の側面図である。図9に示すように、医療器具2は、挟持部材20と、穿刺部材30と、長尺体40と、外筒部材50と、付勢部材60と、規制部材70と、を備える。図9では、説明の便宜上、外筒部材50を断面で示しており、このことは図10~12においても同様である。以下では、穿刺部材30が延在する延在向を軸方向A、軸方向Aにおける先端側を先端側B、軸方向Aにおける基端側を基端側Cとする。
【0062】
挟持部材20は、例えば鉗子であり、生体組織を挟み込み可能である。挟持部材20は、外筒部材50の先端51から一部が突出するように、外筒部材50の内部に固定されている。本実施形態では、挟持部材20は、固定部21と、回動部22と、を備える。固定部21は、外筒部材50の先端51よりも先端側Bに一部が突出するように、外筒部材50の内部に固定されている。回動部22は、軸方向Aに直交する中心軸23を中心として、固定部21と交差角度θが変動するように回動可能である。挟持部材20の閉じ度合いは、固定部21に対して回動部22が回動し、交差角度θが変動することにより変化する。回動部22は、外筒部材50の先端51よりも先端側Bで、固定部21との間で生体組織を挟み込み可能である(図10~12参照)。挟持部材20の閉じ度合いは、挟み込んだ生体組織の大きさや硬さ等の特性に基づいて、変化する。図9に示すように、挟持部材20の回動部22は、挟持部材20の閉じ度合いが所定範囲よりも小さい場合、すなわち、交差角度θが所定角度範囲の最大角度よりも大きい場合に、穿刺部材30が後述する待機位置から穿刺位置に移動するのを妨げる位置に位置する。つまり、図9では、回動部22が、穿刺部材30に対して軸方向Aの先端側Bに位置し、穿刺部材30の回動部22に対する先端側Bへの相対的な移動が規制される。図9に示す状態の挟持部材20は、付勢手段により、閉じ度合いが所定範囲よりも小さくなるように付勢されている。
【0063】
穿刺部材30は、例えば中空の注入針であり、生体組織に穿刺可能である。穿刺部材30は、鋭利な先端31を有し、先端31を生体組織に穿刺可能である。穿刺部材30が先端31を穿刺可能な生体組織の位置は、挟持部材20が挟み込み可能な生体組織の位置の近傍であり、例えば1cmの範囲内である。穿刺部材30は、先端31を生体組織に穿刺して、例えば中空の内部を通じて生体組織に被投与物を投与することで、生体組織の治療を行うことが可能である。穿刺部材30は、穿刺部材30の軸方向Aにおいて挟持部材20よりも先端側Bに突出する穿刺位置と、軸方向Aにおいて挟持部材20よりも基端側Cに後退する待機位置と、の間で移動可能である。図9においては、穿刺部材30は待機位置に位置している。図9に示すように、穿刺部材30の先端31は、待機位置では、外筒部材50の内部に位置している。すなわち、穿刺部材30の先端31は、待機位置では、外筒部材50の先端51よりも先端側に突出していない。
【0064】
長尺体40は、例えばワイヤーであり、挟持部材20に接続され、挟持部材20との接続位置から基端側Cに向かって延在している。長尺体40を穿刺部材30に対して軸方向Aに沿って移動させると、挟持部材20の閉じ度合いが変化する。より具体的に、長尺体40は、挟持部材20の回動部22の接続位置24に接続され、挟持部材20との接続位置24から基端側Cに向かって延在している。接続位置24が設けられていない、回動部22のうち中心軸23を挟む他端側は、固定部21と共に生体組織を挟持可能な部分である。そして、長尺体40を穿刺部材30に対して軸方向Aに沿って移動させると、回動部22が中心軸23周りを回動し、挟持部材20の閉じ度合いが変化する。本実施形態では、長尺体40を穿刺部材30に対して軸方向Aにおける基端側Cに向けて移動させると、交差角度θが小さくなるように変動し、挟持部材20の閉じ度合いが大きくなる。
【0065】
外筒部材50は、例えばカテーテルであり、軸方向Aに沿って延在する。挟持部材20は、外筒部材50の先端51から一部が突出するように、外筒部材50の内部に固定されている。
【0066】
付勢部材60は、例えばコイルバネ等の弾性部材であり、穿刺部材30を穿刺位置から待機位置に向けて付勢する。本実施形態では、付勢部材60は、第1接続位置61で穿刺部材30と接続され、第1接続位置61よりも軸方向Aにおける先端側Bに位置する第2接続位置62で外筒部材50と接続されている。図9に示す例では、第1接続位置61は、付勢部材60の軸方向Aにおける基端側Cの端部であり、第2接続位置62は、付勢部材60の軸方向Aにおける先端側Bの端部である。
【0067】
規制部材70は、生体組織を挟み込んだ挟持部材20の閉じ度合いが所定範囲よりも大きい場合、すなわち、交差角度θが所定角度範囲の最小角度より小さい場合に、穿刺部材30が待機位置から穿刺位置まで移動することを規制する。規制部材70は、挟持部材20の閉じ度合いが所定範囲よりも大きい場合に穿刺部材30が待機位置から穿刺位置まで移動することを規制するものであればよく、その形態は特に限定されない。本実施形態の規制部材70は、長尺体40の穿刺部材30に対する相対位置の、軸方向Aの基端側Cにおいて取り得る限界位置を規定する。
【0068】
以下、規制部材70が穿刺部材30の移動を規制する仕組みの一例について説明する。まず、図9に示す、挟持部材20の閉じ度合いが所定範囲よりも小さく、かつ、穿刺部材30が待機位置に位置する状態の医療器具2において、長尺体40を基端側Cに引くことで、長尺体40を穿刺部材30に対して基端側Cに相対的に移動させると、挟持部材20と穿刺部材30との軸方向Aにおける相対的な位置関係が一定に保たれたまま、挟持部材20が閉じ度合いを増大させながら生体組織を挟み込む。次に、長尺体40を基端側Cにさらに引くと、挟持部材20の閉じ度合いが挟み込んだ生体組織の特性に応じた大きさで固定されると共に、挟持部材20の軸方向Aにおける位置が挟み込んだ生体組織の位置で固定され、長尺体40を基端側に引くことができなくなる。その後、穿刺部材30を先端側Bに押し込むことで、穿刺部材30を長尺体40及び挟持部材20に対して先端側Bに相対的に移動させる。このとき、挟持部材20の閉じ度合いが大きいほど、長尺体40の穿刺部材30に対する相対的な移動距離が大きくなってから、穿刺部材30の長尺体40及び挟持部材20に対する先端側Bへの相対的な移動が開始される。すなわち、仮に長尺体40を穿刺部材30に対して基端側Cに相対的に移動させることが可能な距離が同じ場合、挟持部材20の閉じ度合いが大きいほど、穿刺部材30を挟持部材20に対して先端側Bに向けて相対的に移動させられる距離は小さくなる。従って、規制部材70が限界位置を規定することで、挟持部材20の閉じ度合いが所定範囲よりも大きい場合には穿刺部材30が待機位置から穿刺位置まで移動できないように設計することができる。
【0069】
以下、挟持部材20の閉じ度合いの大きさに応じた医療器具2の状態について、図10図12を参照して説明する。図10は、医療器具2の挟持部材20の閉じ度合いが所定範囲よりも小さい場合の医療器具の状態を示す図である。図9に示した状態から、長尺体40を基端側Cに引くことで、長尺体40を穿刺部材30に対して基端側Cに向けて相対的に移動させると、挟持部材20が生体組織としての心臓300の心内膜320及び心筋330を挟み込み、挟持部材20の閉じ度合いが、挟み込んだ心内膜320及び心筋330の特性に応じた大きさで固定される。図10に示す例では、心筋330が、例えば壊死による瘢痕化等により硬化しているため、交差角度θが所定角度範囲の最大角度よりも大きく、挟持部材20の閉じ度合いは所定範囲よりも小さい。その後、穿刺部材30を先端側Bに押し込むことで、穿刺部材30を長尺体40及び挟持部材20に対して先端側Bに向けて相対的に移動させることができる。このとき、図10に示すように、挟持部材20の閉じ度合いが所定範囲よりも小さい場合、挟持部材20の回動部22は、穿刺部材30に対して軸方向Aの先端側Bに位置し、穿刺部材30の挟持部材20に対する先端側Bへの相対的な移動を規制する。従って、図10に示すように、穿刺部材30は、挟持部材20に突き当たることで挟持部材20に対する先端側Bへの相対的な移動が妨げられ、穿刺位置まで移動できない。
【0070】
このように、本実施形態に係る医療器具2によると、穿刺部材30は、生体組織としての心臓300の心内膜320及び心筋330を挟み込んだ挟持部材20の閉じ度合いが所定範囲よりも小さい場合に、挟持部材20に突き当たることで挟持部材20に対する軸方向Aにおける先端側Bへの相対的な移動が妨げられ、穿刺位置まで移動できない。従って、医療器具2は、生体組織としての心筋330が例えば壊死による瘢痕化等により硬化しており、穿刺部材30を用いて治療を行っても効果が期待できない場合には、治療を行わないようにすることができる。
【0071】
図11は、医療器具2の挟持部材20の閉じ度合いが所定範囲内である場合の医療器具の状態を示す図である。図9に示した状態から、長尺体40を基端側Cに引くことで、長尺体40を穿刺部材30に対して基端側Cに向けて相対的に移動させると、挟持部材20が生体組織としての心臓300の心内膜320及び心筋330を挟み込み、挟持部材20の閉じ度合いが、挟み込んだ生体組織としての心臓300の心内膜320及び心筋330の特性に応じた大きさで固定される。図11に示す例では、心筋330が、例えば冬眠心筋又は気絶心筋等の治療対象の心筋であり、正常な心筋よりは硬く壊死した心筋よりは軟らかいため、交差角度θは所定角度範囲内となり、挟持部材20の閉じ度合いは所定範囲内となる。その後、穿刺部材30を先端側Bに押し込むことで、穿刺部材30を長尺体40及び挟持部材20に対して先端側Bに向けて相対的に移動させることができる。このとき、図11に示すように、挟持部材20の回動部22は、穿刺部材30が待機位置から穿刺位置に移動するのを妨げない。従って、図11に示すように、穿刺部材30は、穿刺位置まで移動することができ、先端31を、心内膜320を通じて心筋330に穿刺することができる。
【0072】
このように、本実施形態に係る医療器具2によると、穿刺部材30は、生体組織としての心臓300の心内膜320及び心筋330を挟み込んだ挟持部材20の閉じ度合いが所定範囲内である場合に、待機位置から穿刺位置まで移動できる。従って、医療器具2は、生体組織としての心筋330が治療対象の心筋であり、穿刺部材30を用いた治療の効果が期待できる場合には、治療を行うことができる。
【0073】
図12は、医療器具2の挟持部材20の閉じ度合いが所定範囲よりも大きい場合を示す図である。図9に示した状態から、長尺体40を基端側Cに引くことで、長尺体40を穿刺部材30に対して基端側Cに向けて移動させると、挟持部材20の閉じ度合いが、挟み込んだ生体組織としての心臓300の心内膜320及び心筋330の特性に応じた大きさで固定される。図11に示す例では、心筋330が、例えば正常な心筋であり、治療対象の心筋よりも軟らかいため、交差角度θが所定角度範囲の最小角度よりも小さく、挟持部材20の閉じ度合いは所定範囲よりも大きくなる。その後、穿刺部材30を先端側Bに押し込むと、規制部材70により、穿刺部材30が穿刺位置まで移動することが規制される。従って、図12に示すように、穿刺部材30は、穿刺位置まで移動できない。
【0074】
このように、本実施形態に係る医療器具2によると、穿刺部材30は、生体組織としての心臓300の心内膜320及び心筋330を挟み込んだ挟持部材20の閉じ度合いが所定範囲よりも大きい場合に、規制部材70によって、穿刺位置まで移動することが規制される。従って、医療器具2は、生体組織としての心筋330が例えば正常な心筋であり、穿刺部材30を用いた治療を行う必要がない場合には、治療を行わないようにすることができる。
【0075】
図12では、挟持部材20が治療対象の生体組織よりも軟らかい生体組織を挟み込んだ例について説明したが、挟持部材20が何も挟み込まないことで、挟持部材20の閉じ度合いが所定範囲よりも大きくなった場合も同様に、穿刺部材30は規制部材70によって穿刺位置まで移動することが規制される。従って、医療器具2は、挟持部材20が何も挟み込んでおらず穿刺部材30を用いた治療を行う必要がない場合には、治療を行わないようにすることができる。
【0076】
図10図12に示した状態から、長尺体40を穿刺部材30に対して基端側Cに移動させる動作を終了し、長尺体40が開放されると、図9に示したように、穿刺部材30は、付勢部材60による付勢力により、基端側Cに移動して待機位置に戻り、挟持部材20の閉じ度合いは、付勢手段による付勢力により、所定範囲よりも小さくなる。従って、医療器具2は、上記の治療を繰り返し行うことができる。
【0077】
医療器具2は、穿刺部材30の穿刺位置から待機位置への移動を、許容する許容状態と、規制する規制状態と、を切替可能な切替部材を更に備えてもよい。切替部材としては、例えば公知のオルタネイト機構を用いて許容状態と規制状態とを切り替え可能な部材を用いることができる。例えば、オルタネイト機構を用いた切り替え部材は、穿刺部材30が先端側Bに押し込まれて穿刺位置に移動すると、穿刺部材30を穿刺位置に留まるように保持し(規制状態)、穿刺部材30が更に先端側Bに押し込まれると、穿刺部材30の穿刺位置への保持を解除する(許容状態)。
【0078】
本開示は、上述した実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲で記載された内容を逸脱しない範囲で、様々な構成により実現することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本開示は、心筋梗塞検出方法、心筋梗塞検出装置及び医療器具に関する。
【符号の説明】
【0080】
1 心筋梗塞検出装置
2 医療器具
10 カテーテル
20 挟持部材
21 固定部
22 回動部
23 中心軸
24 接続位置
30 穿刺部材
31 穿刺部材の先端
40 長尺体
50 外筒部材
51 外筒部材の先端
60 付勢部材
61 第1接続位置
62 第2接続位置
70 規制部材
100 情報処理部
110 操作部
120 表示部
130 記憶部
140 制御部
150 通信部
200 測定部
210 通信部
220 針部材
221 温度測定部
222 穿刺抵抗測定部
223 色情報取得部
224 加熱部
229 先端
230 吸引部
231 吸引口
240 吸引度合い測定部
250 摘み部
260 摘み度合い測定部
300 心臓
310 心臓内腔
320 心内膜
330 心筋
340 心外膜
A 軸方向
B 先端側
C 基端側
θ 交差角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12