(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-05
(45)【発行日】2022-08-16
(54)【発明の名称】新規の二官能(メタ)アクリレート化合物および重合物
(51)【国際特許分類】
C08F 20/18 20060101AFI20220808BHJP
C07C 69/54 20060101ALI20220808BHJP
C08F 20/20 20060101ALI20220808BHJP
G03F 7/027 20060101ALI20220808BHJP
【FI】
C08F20/18
C07C69/54 B CSP
C08F20/20
G03F7/027 502
(21)【出願番号】P 2020504910
(86)(22)【出願日】2019-02-20
(86)【国際出願番号】 JP2019006341
(87)【国際公開番号】W WO2019171958
(87)【国際公開日】2019-09-12
【審査請求日】2021-10-08
(31)【優先権主張番号】P 2018040907
(32)【優先日】2018-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000157603
【氏名又は名称】丸善石油化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000590
【氏名又は名称】特許業務法人 小野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】角田 聡
(72)【発明者】
【氏名】馬場 弘光
(72)【発明者】
【氏名】池田 明代
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 亮
(72)【発明者】
【氏名】羽場 一彦
【審査官】工藤 友紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-081633(JP,A)
【文献】国際公開第2013/141265(WO,A1)
【文献】特開2002-338627(JP,A)
【文献】特開昭62-053664(JP,A)
【文献】特開2005-283632(JP,A)
【文献】特開2010-522893(JP,A)
【文献】国際公開第2017/209161(WO,A1)
【文献】特開2017-226616(JP,A)
【文献】特開2017-003920(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 20/18
C07C 69/54
C08F 20/20
G03F 7/027
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(1)
【化1】
(式(1)中、R
1は水素原子またはメチル基を示し、R
2は炭素数1~6の脂肪族炭化水素基を示し、mは0~5の整数を示し、nは0~4の整数を示す)
で表される化合物。
【請求項2】
請求項1記載の化合物に由来する構成単位を有する重合物。
【請求項3】
請求項2に記載の重合物を含有する、レジスト用樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1に記載の化合物を含有する、硬化性組成物。
【請求項5】
請求項4に記載の硬化性組成物を硬化させて得られる硬化物。
【請求項6】
請求項1に記載の化合物を含有する架橋剤。
【請求項7】
請求項6に記載の架橋剤と、構造中にエチレン性二重結合を有する樹脂とを含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項7に記載の硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジストに代表される半導体リソグラフィー用樹脂、粘着剤、接着剤、インキ、塗料、フィルム等の製造に有用な新規の二官能(メタ)アクリレート化合物、その重合物、また、その重合物を含むレジスト用樹脂組成物、また該二官能(メタ)アクリレート化合物を含む硬化性組成物およびその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
リソグラフィーにおいては、集積度の増大に伴い、より微細なパターンの形成が求められており、現在ではKrFエキシマレーザー光(波長248nm)やArFエキシマレーザー光(波長193nm)によるリソグラフィー技術が量産で使用されている。また、エキシマレーザーと液浸リソグラフィー技術を組み合わせることにより50nm程度以下のレベルでの微細加工が可能といわれている。さらに波長の短いF2エキシマレーザー光(波長157nm)や、これらエキシマレーザーより短波長のEUV(極紫外線)やX線、また、電子線によるリソグラフィー技術についても研究開発が進んでいる。
【0003】
このような高解像度のリソグラフィー材料の一つとして化学増幅型レジストがある。化学増幅型レジストの基材となるポリマーは、酸の作用で脱離可能な酸解離性基で極性基を保護した構造を有する構成単位を含んでおり、露光部では光酸発生剤から発生した酸の作用で酸解離性基が脱離してポリマーの極性が変化し、露光部と未露光部で現像液に対する溶解性に差が生じることでパターン形成が可能となる。
【0004】
このような化学増幅型レジスト用ポリマーの合成に用いられるモノマーには、ヒドロキシスチレンのヒドロキシ基を酸解離性基で保護した構造を有する化合物や、アクリル酸やメタクリル酸(以下、(メタ)アクリル酸と表す)のカルボキシ基を酸解離性基で保護した構造を有する化合物が用いられている。特にArFエキシマレーザーを用いるリソグラフィーでは、波長193nmにおける透過性が良好な酸解離性の(メタ)アクリル酸エステルが好適に用いられている。
【0005】
特許文献1には、カルボキシル基の水素原子が酸解離性の架橋基で置換された多官能(メタ)アクリル酸エステルをコモノマーとして用いることにより、ポリマーに架橋構造を導入し、現像コントラストや耐エッチング性能の向上に有利であることが示されている。しかしながら、特許文献1で例示されているのは2,5‐ジメチルヘキサンジオールジアクリレート等、鎖状のジオール又はトリオールの、ジ又はトリエステルのみであり、さらなる感度、解像性およびエッチング耐性に優れたレジスト用樹脂を与える新規モノマーが求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、感度、解像性、エッチング耐性に優れたレジスト用ポリマーおよび、該ポリマーを与える新規モノマー化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、特定の構造を有する化合物が、その課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の式(1)
【化1】
(式(1)中、R
1は水素原子またはメチル基を示し、R
2は炭素数1~6の脂肪族炭化水素基を示し、mは0~5の整数を示し、nは0~4の整数を示す)
で表される化合物である。
【0010】
また、本発明は上記化合物をモノマーとして用いる重合物、該重合物を含有するレジスト用樹脂組成物である。
【0011】
更に、本発明は、上記化合物を含有する硬化性組成物およびその硬化物である。
【0012】
また更に、本発明は、上記化合物を含有する架橋剤、前記架橋剤と、構造中にエチレン性二重結合を有する樹脂とを含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物、および前記硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の(メタ)アクリル酸エステルを用いるポリマーによれば、感度、解像性、エッチング耐性に優れたレジスト用樹脂を与えることが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の化合物は、以下の式(1)で表されるものである。
【化2】
ここで、式(1)中、R
1は水素原子またはメチル基を示す。R
2は炭素数1~6の脂肪族炭化水素基、好ましくはメチル基、エチル基、イソプロピル基、t-ブチル基を示す。mは0~5の整数、好ましくは0~2の整数を示す。nは0~4の整数、好ましくは1~3の整数を示す。
【0015】
式(1)で表される化合物の具体例としては、例えば、1,2-ビス-[(1-アクリロイルオキシ)シクロオキセタニル]エタン、1,2-ビス-[(1-アクリロイルオキシ)シクロペンチル]エタン、1,2-ビス-[(1-アクリロイルオキシ)シクロヘキシル]エタン、1,2-ビス-[(1-アクリロイルオキシ)シクロヘプチル]エタン、1,2-ビス-[(1-アクリロイルオキシ)シクロオクチル]エタン、1,2-ビス-[(1-メタクリロイルオキシ)シクロオキセタニル]エタン、1,2-ビス-[(1-メタクリロイルオキシ)シクロペンチル]エタン、1,2-ビス-[(1-メタクリロイルオキシ)シクロヘキシル]エタン、1,2-ビス-[(1-メタクリロイルオキシ)シクロヘプチル]エタン、1,2-ビス-[(1-メタクリロイルオキシ)シクロオクチル]エタン、等が挙げられる。
【0016】
本発明の化合物は、次のようにして製造することができる。
まず、以下の式(2)で表される環式ケトン化合物を、溶媒およびアルカリ触媒の存在下、アセチレンと反応させる。
【化3】
ここで、式(2)におけるR
2、mおよびnの定義および好ましい態様は、式(1)と同じである。
【0017】
上記反応で用いられるアルカリ触媒は、特に限定されないが、金属ナトリウムや金属カリウム等のアルカリ金属;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物;または、カリウムメチラート、カリウムエチラート、カリウムイソブチラート、カリウム-t-ブチラート、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート等のアルカリ金属アルコラートから選択することができる。これらの中でも好ましくはアルカリ金属水酸化物である。
【0018】
上記反応におけるアルカリ触媒の使用量は、特に限定されないが、式(2)のケトン1モルに対して0.1~20モル、好ましくは0.5~10モルである。
【0019】
上記反応で用いられる溶媒としては、特に限定されないが、飽和脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、脂肪族エーテル、非プロトン性極性溶媒を用いることができる。これらの中でも好ましくは飽和脂肪族炭化水素であり、例えば、ヘキサン、へプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、デカリン等が挙げられる。これらの中でも特に好ましくは、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサンである。
【0020】
上記反応における溶媒の使用量は、特に限定されないが、式(2)のケトンの重量の2~20倍量、好ましくは2~10倍量である。
【0021】
上記反応は具体的には、ステンレス製等の耐圧反応容器中に、アルカリ金属化合物と脂肪族炭化水素溶媒と、式(2)で表される環式ケトン化合物とを入れ、窒素ガスにより耐圧反応容器内を置換した後、反応容器を密封し、アセチレンを圧入しながら、昇温して式(2)で表される環式ケトン化合物と反応させる。反応温度は特に限定されないが、0~100℃、好ましくは10~60℃である。反応圧力は、特に限定されないが、アセチレン分圧として通常0~1MPa(ゲージ圧)、好ましくは0~0.2MPa(ゲージ圧)である。アセチレン分圧が高ければ高いほど反応速度が大きくなるが、アセチレンは分解爆発を起こしやすいので、それを防止するためにはできるだけアセチレン分圧を低くすることが好ましい。なお、分解爆発を防止するために窒素、アルゴン、プロパン等の不活性ガスを導入し、アセチレンを希釈して反応させてもよい。反応時間は反応温度やアセチレン分圧等その他の条件によるが、バッチ式の場合、通常0.5 ~20時間、好ましくは1~8時間である。なお、この反応は、アセチレンの吸収がゼロになったところで終了させればよい。
【0022】
上記反応後は、必要により、洗浄処理、抽出処理、精製処理、乾燥処理を行ってもよい。
【0023】
上記反応により以下の式(3)で表されるジオール化合物が得られる。
【化4】
ここで式(3)におけるR
2、mおよびnの定義および好ましい態様は、式(1)と同じである。
【0024】
次に、この式(3)で表される化合物を水素化する。
【0025】
水素化反応は、特に限定されないが、例えば、水素化触媒の存在下、飽和脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、脂肪族アルコール、脂肪族エーテル等の溶媒を用い、式(3)の化合物と水素を接触させることにより行う。
【0026】
上記水素化反応に用いられる水素化触媒は特に限定されず、例えば、ニッケル、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、白金等の金属触媒が用いられ、これらの金属触媒は通常、カーボン、シリカ、アルミナ、シリカアルミナ、マグネシア等の担体に担持された金属担持水素化触媒として用いられる。金属担持水素化触媒としては、例えば、Pd/C等が挙げられる。金属の担持量は特に限定されないが、0.3~10重量%が好ましい。また、そのような金属担持水素化触媒は市販されているものを使用することができる。
【0027】
上記水素化反応における金属触媒の使用量は特に限定されないが、例えば、式(3)の化合物に対して金属量として0.001~1重量%の範囲であり、好ましくは0.05~0.5重量%である。
【0028】
上記水素化反応の条件は特に限定されない。水素化反応はガラス製の反応容器でも行うことができる。この場合、水素圧は常圧付近で、温度も室温付近でよい。この水素化反応の際にガスビュレットを用いて水素を導入すれば水素の消費量を定量することができる。水素化反応の反応時間は特に限定されないが、例えば1~20時間、好ましくは2~10時間である。また、水素化の際に耐圧容器を使用する場合、水素圧は0.3~15MPa、好ましくは0.5~10MPaであり、反応温度は10~150℃、好ましくは20~100℃であり、反応時間は1~20時間、好ましくは2~10時間である。
【0029】
上記反応後は、必要により、洗浄処理、抽出処理、精製処理、乾燥処理を行ってもよい。
【0030】
上記反応により式(4)表されるジオール化合物が得られる。
【化5】
ここで式(4)におけるR
2、mおよびnの好ましい態様は、式(1)と同じである。
【0031】
次に、この式(4)で表されるジオール化合物を(メタ)アクリル酸エステル化する。式(4)で表されるジオール化合物の(メタ)アクリル酸エステル化は公知の方法により行うことができ、例えば、酸触媒の存在下にジオールと(メタ)アクリル酸を反応させる通常のエステル化反応、他の(メタ)アクリル酸エステルを用いるエステル交換反応、無水(メタ)アクリル酸と反応させる方法、あるいは、有機塩基存在下に(メタ)アクリル酸ハライドを反応させる方法等がある。
【0032】
上記反応で用いられる(メタ)アクリル酸ハライドとしては、特に限定されないが、例えば、アクリル酸クロリド、アクリル酸ブロミド、メタクリル酸クロリド、メタクリル酸ブロミド等が挙げられる。
【0033】
上記反応における(メタ)アクリル酸ハライドの量は、特に限定されないが、式(4)で表されるジオール化合物に対して1.0~10倍当量、好ましくは1.2~5倍当量である。
【0034】
上記反応で用いられる有機塩基としては、有機アミンが好ましく、例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、n-プロピルアミン、ジ-n-プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリ-n-プロピルアミン、n-ブチルアミン、ジ-n-ブチルアミン、ジイソブチルアミン等の脂肪族アミン;アニリン、メチルアニリン、トルイジン等の芳香族アミン;ピリジン、ピロール、ピペリジン等の複素環式アミンが挙げられる。
【0035】
上記反応における有機塩基の量は、特に限定されないが、(メタ)アクリル酸ハライドに対して1.0~10倍当量、好ましくは1.2~5倍当量である。
【0036】
上記反応に用いられる溶媒は特に制限されない。溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、モノエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、ガンマブチロラクトン等のエステル系溶媒、ジメチルホルムアミドやジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド系溶媒等を用いることができる。
【0037】
上記反応における反応温度は特に限定されないが、-20~80℃、好ましくは-10℃~30℃である。
【0038】
上記反応後は、必要により、洗浄処理、抽出処理、精製処理、乾燥処理を行ってもよい。
【0039】
以上説明した製造方法により、本発明の式(1)で表される化合物が得られる。この化合物が製造できたかどうかは、NMR等の公知の方法で確認することができる。
【0040】
本発明の式(1)で表される化合物は、これを単独で、あるいは式(1)で表される化合物と共重合可能なモノマーと反応させて、この化合物に由来する構成単位を有する重合物を得ることができる。そのようなモノマーとしては、エチレン性二重結合を有するモノマーが挙げられ、その構造は特に限定されないが、例えば、スチレン系モノマー、(メタ)アクリレート系モノマー、ノルボルネン系モノマーなどが挙げられる。スチレン系モノマーとは、スチレン類似の骨格を有するモノマーであり、例えば、スチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、ヒドロキシスチレン等、およびこれらに種々の置換基が付いた誘導体を挙げることができる。(メタ)アクリレート系モノマーとは、(メタ)アクリル酸類似の骨格を有するモノマーであり、アクリル酸、メタクリル酸、あるいはそれらから誘導される種々の(メタ)アクリル酸エステルを挙げることができる。ノルボルネン系モノマーとは、ノルボルネン類似の骨格を有するモノマーであり、ノルボルネン、トリシクロデセン、テトラシクロドデセン等、およびこれらに種々の置換基が付いた誘導体を挙げることができる。またインデン、アセナフチレン等も共重合可能である。また、本発明の重合物をレジスト用途に用いる場合は、上記のモノマーとして、リソグラフィー溶剤やアルカリ現像液への溶解性や基板密着性等を調整するために、公知のレジスト樹脂に用いられている各種のエチレン二重結合を有するモノマーを使用することもできる。
【0041】
上記重合反応としては公知のラジカル重合、カチオン重合、またはアニオン重合を採用することができる。それぞれの重合反応の条件は限定されないが、例えば、ラジカル重合の場合、アゾ系重合開始剤や過酸化物系重合開始剤の存在下、40~160℃、特に好ましくは60~120℃で反応させる。溶媒を使用する方が好ましく、モノマーやラジカル重合開始剤、生成するポリマーの種類により、これらを良く溶解する溶媒を選択するのが好ましい。
【0042】
この重合物は、例えば、半導体リソグラフィーに必要なレジスト等の用途に用いることができる。特に、この重合物は、これを含有するレジスト用樹脂組成物に用いることが好ましい。このレジスト用樹脂組成物には、重合物の他、酸発生剤、酸拡散抑制剤、そしてこれらを均一に溶解させる塗膜形成用溶媒等を含む。
【0043】
酸発生剤は、これまで化学増幅型レジスト用の酸発生剤として提案されているものから適宜選択して用いることができる。このような例として、ヨードニウム塩やスルホニウム塩等のオニウム塩、オキシムスルホネート類、ビスアルキル又はビスアリールスルホニルジアゾメタン類等のジアゾメタン類、ニトロベンジルスルホネート類、イミノスルホネート類、ジスルホン類等を挙げることができ、中でもオニウム塩が好ましい。これらは単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。酸発生剤は、本発明の重合物100質量部に対して通常0.5~30質量部、好ましくは1~10質量部の範囲で用いられる。
【0044】
酸拡散抑制剤は、これまで化学増幅型レジスト用の酸拡散抑制剤として提案されているものから適宜選択することができる。このような例として、含窒素有機化合物を挙げることができ、第一級~第三級のアルキルアミン若しくはヒドロキシアルキルアミンが好ましい。特に第三級アルキルアミン、第三級ヒドロキシアルキルアミンが好ましく、中でもトリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミンが特に好ましい。これらは単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。酸拡散抑制剤は、本発明の重合物100重量部に対して通常0.01~5.0質量部の範囲で用いられる。
【0045】
塗膜形成用溶媒は、レジスト用樹脂組成物を構成する各成分を溶解し、均一な溶液とすることができるものであればよく、塗膜形成用溶媒として公知のものの中から任意のものを1種の単独溶媒又は2種以上の混合溶媒として用いることができる。溶解性に優れるため、ケトン結合、エステル結合、エーテル結合、およびヒドロキシ基から選ばれる少なくとも1種以上の極性基を有する溶媒が好ましい。中でも常圧での沸点が110~220℃の溶媒は、スピンコーティングの後のベークにおいて蒸発速度が適度であり、製膜性に優れるため、特に好ましい。このような溶媒の具体例として、メチルイソブチルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン等のケトン結合を有する溶媒、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル結合とヒドロキシ基を有する溶媒、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3-エトキシプロピオン酸エチル等のエーテル結合とエステル結合を有する溶媒、乳酸メチル、乳酸エチル等のエステル結合とヒドロキシ基を有する溶媒、γ-ブチロラクトン等のエステル結合を有する溶媒等を挙げることができる。中でも、PGMEA、PGME、γ-ブチロラクトン、乳酸エチルが好ましい。
【0046】
レジスト用樹脂組成物には、さらに所望により、酸発生剤の感度劣化防止やレジストパターンの形状、引き置き安定性等の向上を目的とした有機カルボン酸類やリンのオキソ酸類、レジスト膜の性能を改良するための付加的樹脂、塗布性を向上させるための界面活性剤、溶解抑止剤、可塑剤、安定剤、着色剤、ハレーション防止剤、染料等、レジスト用添加剤として慣用されている化合物を必要に応じて適宜含有させることができる。
【0047】
また、本発明の式(1)で表される化合物は、既存の(メタ)アクリル酸エステルと同様に、硬化性組成物の原料として用いることができる。硬化性組成物には他の(メタ)アクリル酸エステルまたは重合可能なエチレン性二重結合を有する他の化合物、および重合開始剤などを含むことができる。重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、光(または熱)ラジカル重合開始剤、光(または熱)カチオン重合開始剤、光(または熱)アニオン重合開始剤等が挙げられる。これら重合開始剤は市販のものを使用できる。
【0048】
更に、本発明の式(1)で表される化合物は、エチレン性二重結合を2つ有することから架橋剤として用いることができる。
【0049】
本発明の式(1)で表される化合物を架橋剤として用いる場合、側鎖にビニル基や(メタ)アクリロイル基を有する樹脂や、不飽和ポリエステル、ビニルエステル樹脂等、構造中にエチレン性二重結合を有する樹脂と組み合わせて含有させることにより硬化性樹脂組成物とすることができる。
【0050】
上記の硬化性組成物および硬化性樹脂組成物は常法に従って硬化させることにより硬化物となる。硬化物の形状は特に限定されないが、例えば、膜、成型体等が挙げられる。
【実施例】
【0051】
以下、本発明を実施例を挙げて詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
本実施例における合成物の同定は、1H-NMR及び13C-NMRにより行った。また、純度、収率はガスクロマトグラフィーにより求めた。
【0052】
実 施 例 1
1,2-ビス-[(1-メタクリロイルオキシ)シクロヘキシル]エタンの合成:
(1)1,2-ビス[(1-ヒドロキシ)シクロヘキシル]エチンの合成
30Lオートクレーブに水酸化カリウム1,599g、シクロヘキサノン1,401g、メチルシクロヘキサン12.0kgを仕込んだ。反応容器内を窒素置換後、アセチレン置換を行った。その後、反応温度30℃、アセチレン圧(ゲージ圧)0.04MPa以下で反応を行い、アセチレンの吸収がゼロとなった4時間で反応を終了した。反応容器内に21kgのイオン交換水を加えて1時間撹拌を行い、生じた固形分を加圧濾過器を用いて分離した。
【0053】
次に、得られた固形分を10Lガラス容器に入れ、5kgのイオン交換水を投入して30分、室温下で撹拌後、加圧濾過器で固形分を分離した。ろ液のpHが7になるまでこの操作を繰り返し行った。得られた固形物を、40℃、29時間減圧乾燥した。この乾燥固体の760gを減圧単蒸留(2.7kPa、115℃、3時間)し、未反応成分など軽質分の除去を行った。得られた重質分(ボトム残渣)は730gであり、GC分析の結果、1,2-ビス[(1-ヒドロキシ)シクロヘキシル]エチンの純度は98.6%であった。
13C-NMR(400MHz、CD3OD):σppm=24.5、26.4、41.0、69.1、88.8
【0054】
【0055】
(2)1,2-ビス[(1-ヒドロキシ)シクロヘキシル]エタンの合成(水素化)
500ccガスビュレット(窒素ラインあるいは水素ラインに接続)、攪拌機、温度計、三方コック(ベントラインあるいはダイヤフラムポンプに接続)を備えた1L4つ口フラスコに(1)で得られた1,2-ビス[(1-ヒドロキシ)シクロヘキシル]エチン50.0g、メタノール400gを投入し、20℃水浴で撹拌し溶解した。ダイヤフラムポンプで系内を減圧、その後窒素で復圧を繰り返して、ガスビュレットを含む系内を窒素で置換した。次に、触媒として10%Pd/C(和光純薬製)1.05gを添加し、メタノール50gを用いて系内に洗いこんだ。ガスビュレットに接続するガスを水素ラインに切り替え、窒素置換の時と同様に系内を水素で置換した。ガスビュレットの水位が500ccの目盛りを示すまで水素を充填し、20~22℃下、4.5時間撹拌して水素化反応を行った。途中、反応の進行、即ち水素の消費に伴いガスビュレットの水位が上昇し、水位の目盛りが0ccになったところで再度水位の目盛りが500ccになるまで水素を充填することを繰り返し、水素の消費量を計測した。反応の終了は薄層クロマトグラフィーで確認し、水素の消費量は理論量よりやや多い10.6Lであった(一部系外への漏れと考えられる)。反応終了後、系内を窒素置換したのち触媒を濾過により分離した。ろ液を30℃、2kPa~0.2kPaで濃縮乾固させ、薄灰白色の粗結晶51.0gを得た。
【0056】
この粗結晶にテトラヒドロフラン160mlを加え内温47℃まで昇温して完全に溶解させた。次いでゆっくりと温度を下げ、4℃まで冷却して結晶を十分に析出させたのち、-25℃の冷凍庫で一晩保管した。翌日ろ過により結晶をろ別し、30℃、0.2kPaで減圧乾燥し、薄灰白色の結晶44.1gを得た。結晶はNMR分析により、1,2-ビス[(1-ヒドロキシ)シクロヘキシル]エタンであることを確認した。
【0057】
13C-NMR(400MHz、CD3OD):δppm=23.3、27.1、35.9、38.3、72.0
【0058】
また、GC分析の結果、純度は99.6%、収率は87.4%であった。
【0059】
【0060】
(3)1,2-ビス[(1-メタクリロイルオキシ)シクロヘキシル]エタンの合成
攪拌機、温度計、側管付き滴下ロートを備えた1L4つ口フラスコに純空気気流下、(2)で得られた1,2-ビス[(1-ヒドロキシ)シクロヘキシル]エタン42.9g(0.19モル)、アセトニトリル337g、トリエチルアミン 69.0g(0.68モル)を投入した。この時、1,2-ビス[(1-ヒドロキシ)シクロヘキシル]エタンは溶解しなかった。氷浴にて冷却を行い、10℃以下でメタクリル酸クロライド59.4g(0.57モル)を80分かけて滴下した。滴下終了後、20℃で更に14時間反応した。次に、氷浴で反応液を冷却し、5℃以下でメタノール34.0gを30分かけて滴下し、滴下終了後20℃で3時間攪拌を継続した。
【0061】
この反応液に酢酸エチル230.8gとイオン交換水128.7gを添加し、液液抽出操作を行った。水層に対しては酢酸エチル115.8gを加えて更に液液抽出操作を行った。得られた有機層を統合し、1N-塩酸128.7g、次いで飽和重曹水132.3g、最後に飽和食塩水149gで順次、洗浄を行った。有機層を無水硫酸ナトリウムで脱水し、ろ過後、ろ液を30℃で減圧濃縮して褐色の粗結晶84.2gを得た。この粗結晶を酢酸エチルに溶解し、ヘプタン~へプタン:酢酸エチル=100:1を溶離液としてシリカゲルカラムで精製後、濃縮して黄色結晶を得た。この黄色結晶を再び酢酸エチル300mlに溶解し、活性炭5.0gを用いて脱色した。活性炭をろ過後、ろ液を減圧乾固して、微黄色結晶49.1gを得た。微黄色結晶はNMR分析により、1,2-ビス[(1-メタクリロイルオキシ)シクロヘキシル]エタンであることを確認した。
【0062】
1H-NMR(400MHz、acetone-d6):δppm=1.23-1.62(16H)、1.90(6H)、1.94(4H)、2.23(4H)、5.53(2H)、6.00(2H)
13C-NMR(400MHz、acetone-d6):δppm=18.6、22.6、26.2、31.2、35.2、83.9、124.3、139.0、166.4
【0063】
また、GC分析の結果、純度は99.4%であった。
【0064】
【0065】
実 施 例 2
γ-ブチロラクトンメタクリレート/1-メチル-1-シクロペンチルメタクリレート/1,2-ビス[(1-メタクリロイルオキシ)シクロヘキシル]エタン共重合体の合成:
ジムロート冷却管、温度計、滴下ロートを備えた300mL三口フラスコにメチルエチルケトン(以下、MEK)37.3gを入れ、80℃まで昇温した。ジメチル-2,2’-アゾビスイソブチレート(以下、MAIB)0.35gをMEK5gに溶解した重合開始剤溶液を等速で10分かけて滴下し、その後、10分間撹拌を続けた。続いてMAIB3.11g、γ-ブチロラクトンメタクリレート24.45g、1-メチル-1-シクロペンチルメタクリレート23.87g、および実施例1で得られた1,2-ビス[(1-メタクリロイルオキシ)シクロヘキシル]エタン5.22gをMEK62.9gに溶解したモノマー溶液を等速で180分間かけて滴下し、滴下終了後さらに80℃で180分間重合反応を行い、その後室温まで冷却した。
【0066】
得られた重合液150gを、メタノール450gとイオン交換水150gの混合溶液に5分間かけて滴下しそのまま30分間撹拌を続け樹脂を沈殿させた。減圧濾過で樹脂をろ別し、回収した樹脂にさらにメタノール300gを加え室温で30分間撹拌して樹脂を洗浄する操作を2回繰り返した。減圧濾過でろ別した樹脂をMEK75gで溶解後、1Lナスフラスコに移しプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、PGMEA)450gを加え、40℃で内容物が200gになるまで減圧濃縮し、共重合体のPGMEA溶液を得た。
【0067】
得られたPGMEA溶液中の共重合体濃度を加熱残分により求めた結果、21.4wt%であった。共重合体の重量平均分子量(Mw)、及び分子量分布(Mw/Mn)をGPC-RI、モノマー組成比を13C-NMRで求めた。各分析条件を以下に示す。
【0068】
<共重合体分析条件>
GPC-RI:示差屈折率検出器、Shodex(登録商標)カラムLF-804×3本、溶離液THF
13C-NMR:400MHz、アセトン-d6、Cr(III)アセチルアセトナート、インバースゲートデカップリング法
【0069】
共重合体の重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)はMw=17,200、Mw/Mn=3.34であった。また、共重合体のモノマー組成比はγ-ブチロラクトンメタクリレート/1-メチル-1-シクロペンチルメタクリレート/1,2-ビス[(1-メタクリロイルオキシ)シクロヘキシル]エタンが、47.8/47.7/4.5であった。
【0070】
実 施 例 3
p-ヒドロキシスチレン/1-エチル-1-シクロへキシルアクリレート/1,2-ビス[(1-メタクリロイルオキシ)シクロヘキシル]エタン共重合体の合成:
窒素雰囲気に保った反応容器に、p-ヒドロキシスチレン25wt%、メタノール22wt%、水10wt%を含むp-エチルフェノール溶液100gと、1-エチル-1-シクロへキシルアクリレート9.16g、実施例1で得られた1,2-ビス[(1-メタクリロイルオキシ)シクロヘキシル]エタン2.87g、tert-ドデシルメルカプタン0.22g、MAIB0.90gを仕込み溶解させた。この溶液を撹拌しながら40℃から80℃まで1℃/分で昇温し、80℃で2時間半重合反応を行った後、室温まで冷却した。
【0071】
得られた重合液をトルエンに滴下してポリマーを沈殿させ、上澄みを除去した。次いで、沈殿をアセトンに溶解し、これをトルエンで沈殿させ、上澄みを除去する操作を2回繰り返した。沈殿をアセトンに再溶解し、これにヘキサンを加えてポリマーを再沈殿させ、上澄み液を除去した。得られた沈殿は減圧乾燥器にて乾燥し、固体の共重合体を得た。この共重合体の重量平均分子量(Mw)、及び分子量分布(Mw/Mn)およびモノマー組成比の分析を実施例2と同様にして行った。
【0072】
共重合体の重量平均分子量(Mw)、及び分子量分布(Mw/Mn)はMw=23,900、Mw/Mn=7.44であった。また、共重合体のモノマー組成比はp-ヒドロキシスチレン/1-エチル-1-シクロへキシルアクリレート/1,2-ビス[(1-メタクリロイルオキシ)シクロヘキシル]エタンが81.3/15.5/3.2であった。
【0073】
実 施 例 4
p-ヒドロキシスチレン/1-エチル-1-シクロへキシルアクリレート/1,2-ビス[(1-メタクリロイルオキシ)シクロヘキシル]エタン共重合体の合成:
窒素雰囲気に保った反応容器に、p-ヒドロキシスチレン25wt%、メタノール22wt%、水10wt%を含むp-エチルフェノール溶液200gと、1-エチル-1-シクロへキシルアクリレート16.9g、実施例1で得られた1,2-ビス[(1-メタクリロイルオキシ)シクロヘキシル]エタン5.62g、tert-ドデシルメルカプタン0.62g、MAIB1.94gを仕込み溶解させた。この溶液を撹拌しながら40℃から80℃まで1℃/分で昇温し、80℃で2時間半重合反応を行った後、室温まで冷却した。
【0074】
得られた重合液をトルエンに滴下してポリマーを沈殿させ、上澄みを除去した。次いで、沈殿をアセトンに溶解し、これをトルエンで沈殿させ、上澄みを除去する操作を2回繰り返した。沈殿をアセトンに再溶解し、これにヘキサンを加えてポリマーを再沈殿させ、上澄み液を除去した。得られた沈殿は減圧乾燥器にて乾燥し、固体の共重合体を得た。この共重合体の重量平均分子量(Mw)、及び分子量分布(Mw/Mn)およびモノマー組成比の分析を実施例2と同様にして行った。
【0075】
共重合体の重量平均分子量(Mw)、及び分子量分布(Mw/Mn)はMw=36,960、Mw/Mn=3.46であった。また、共重合体のモノマー組成比はp-ヒドロキシスチレン/1-エチル-1-シクロへキシルアクリレート/1,2-ビス[(1-メタクリロイルオキシ)シクロヘキシル]エタンが75.8/20.4/3.8であった。
【0076】
比 較 例 1
p-ヒドロキシスチレン/1-エチル-1-シクロへキシルアクリレート/2,5-ジメチルヘキシルグリコールジアクリレート共重合体の合成:
1,2-ビス[(1-メタクリロイルオキシ)シクロヘキシル]エタン5.62gに代えて、2,5-ジメチルヘキシルグリコールジアクリレート3.94gを用いた他は実施例4と同様に合成と分析を行った。
【0077】
共重合体の重量平均分子量(Mw)、及び分子量分布(Mw/Mn)はMw=33,400、Mw/Mn=3.77であった。また、共重合体のモノマー組成比はp-ヒドロキシスチレン/1-エチル-1-シクロへキシルアクリレート/2,5-ジメチルヘキシルグリコールジアクリレートが76.0/20.0/4.0であった。
【0078】
実 施 例 5
レジスト組成物の調製:
実施例4で合成した共重合体100質量部、酸発生剤としてビス-(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロブタンスルホナート0.3質量部、界面活性剤(DIC製、F447)0.1質量部をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに溶解させ、ポリマー濃度15重量%の溶液を調製した後、得られた溶液を孔径0.1μmのメンブレンフィルターでろ過してレジスト組成物を得た。
【0079】
比 較 例 2
レジスト組成物の調製:
比較例1で合成した共重合体を用いる他は、実施例5と同様にしてレジスト組成物を得た。
【0080】
試 験 例 1
レジスト組成物の評価:
100℃のホットプレート上で1分間ヘキサメチルジシラザン処理を施したシリコン基板に、実施例5または比較例2で調製したレジスト組成物をスピンコートした後、ホットプレート上で110℃、60秒間プリベークして膜厚1.0μmのレジスト層を形成した。
次に、オープンフレーム露光装置(リソテックジャパン製、UVES-2000)を用い、波長248nm光の露光量を変化させて10mm×10mmの18ショット照射したのち、120℃で90秒間ポストベーク(PEB)処理した。次いで、レジスト現像速度測定装置(リソテックジャパン製、RDA-800)を用いて23℃において2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で現像し、各露光量における現像中のレジスト膜厚の変化を測定した。
【0081】
得られたデータを基に、露光量(mJ/cm2)と初期膜厚に対する60秒間現像した時点での残存膜厚率をプロットした曲線を作成した(図示せず)。この曲線において、残膜率曲線の残膜率10%~70%の範囲で近似直線を引き、残膜率0%になったときの露光量(mJ/cm2)を、レジスト組成物の感度の指標の一つであるEth感度とした。Eth感度は残膜率0%とするための必要露光量であり、Eth感度の値が小さいほどレジスト組成物の感度が高いことを示す。Eth感度を表1に示した。また、Rmin(溶解速度の最小値であり、未露光部の溶解速度に相当)を算出し、それらも表1に示した。
【0082】
【0083】
本発明のレジスト組成物は、従来技術と比較して同等のEth感度を有しながら、Rminが大幅に小さくなった。つまり、本発明のレジスト組成物は、未露光部の膜減りが減少し、溶解コントラストの改善が期待できる。
【0084】
実 施 例 6
硬化性組成物の調製および硬化物の作製:
反応性モノマーとしてテトラヒドロフルフリルアクリレート50質量部に、実施例1で得られた1,2-ビス[(1-メタクリロイルオキシ)シクロヘキシル]エタン50質量部、光ラジカル重合開始剤(BASF製、イルガキュア379)5質量部を混合し、硬化性組成物を調製した。
2枚のフッ素処理済みのPETフィルム間に、厚さ100μmのスペーサーと共に上記の硬化性組成物を挟み、水銀ランプの波長365nm光で3000mJ/cm2照射した。その後、PETフィルムを剥がし、硬化性樹脂組成物の硬化物からなるフィルム状のサンプルを得た。
【0085】
比 較 例 3
硬化性組成物の調製および硬化物の作製:
1,2-ビス[(1-メタクリロイルオキシ)シクロヘキシル]エタンに代えて、2,5-ジメチルヘキシルグリコールジアクリレート(CAS番号188837-15-2)を用いた他は、実施例6と同様にして硬化性組成物を作製し、それを硬化させてフィルム状のサンプルを得た。
【0086】
比 較 例 4
硬化性組成物の調製および硬化物の作製:
1,2-ビス[(1-メタクリロイルオキシ)シクロヘキシル]エタンに代えて、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(CAS番号42594-17-2)を用いた他は、実施例6と同様にして硬化性組成物を作製し、それを硬化させてフィルム状のサンプルを得た。
【0087】
比 較 例 5
硬化性組成物の調製および硬化物の作製:
1,2-ビス[(1-メタクリロイルオキシ)シクロヘキシル]エタンに代えて、9,9-ビス[4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン(CAS番号1234827-45-2)を用いた他は、実施例6と同様にして硬化性組成物を作製し、それを硬化させてフィルム状のサンプルを得た。
【0088】
試 験 例 2
硬化物の評価:
実施例6および比較例3~5で得られたフィルム状のサンプルを用いて、下記条件にて動的粘断性測定を行い、硬化物のガラス転移点(Tg)を求めた。結果を表2に示した。
【0089】
<動的粘断性測定条件>
装置 : セイコーインスツル製 DMS6100
試料片 : 1cm×5cm
温度範囲: 25~250℃
昇温速度: 2℃/分
周波数 : 1Hz
歪振幅 : 10μm
【0090】
【0091】
本発明のジアクリレートを用いた硬化性組成物を硬化させて得られた実施例6の硬化物は、従来の硬化性組成物を硬化させて得られた比較例3~5の硬化物と比べてTgが高く耐熱性に優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明の式(1)で表される化合物は、レジスト用樹脂の合成原料の他、各種硬化性組成物の原料として、また、エチレン性二重結合を有する樹脂の架橋剤として利用できる。
以 上