(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-05
(45)【発行日】2022-08-16
(54)【発明の名称】医療用装置の積層造形のためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
B29C 64/30 20170101AFI20220808BHJP
B29C 64/118 20170101ALI20220808BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20220808BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20220808BHJP
【FI】
B29C64/30
B29C64/118
B33Y30/00
B33Y10/00
(21)【出願番号】P 2020505403
(86)(22)【出願日】2018-07-31
(86)【国際出願番号】 IB2018055741
(87)【国際公開番号】W WO2019025978
(87)【国際公開日】2019-02-07
【審査請求日】2021-07-30
(32)【優先日】2017-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517076008
【氏名又は名称】エシコン エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Ethicon LLC
【住所又は居所原語表記】#475 Street C, Suite 401, Los Frailes Industrial Park, Guaynabo, Puerto Rico 00969, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ハウザー・ケビン・エル
(72)【発明者】
【氏名】ホプソン・ペイトン・エル
(72)【発明者】
【氏名】バレ・ビンセント・エイチ
【審査官】田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-518267(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0009030(US,A1)
【文献】国際公開第2014/197732(WO,A2)
【文献】中国特許出願公開第107187022(CN,A)
【文献】特開2017-074772(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106393667(CN,A)
【文献】特表2016-536178(JP,A)
【文献】特開2008-265108(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/30
B29C 64/118
B33Y 10/00
B33Y 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層造形システムであって、
(a)ポリマーダイであって、
(i)ファイバー入力部、
(ii)加熱されたポリマー入力部、及び
(iii)ポリファイバー出力部、を備え、
前記ポリマーダイが、前記ファイバー入力部からファイバーストランドを受容し、前記加熱されたポリマー入力部からのポリマーで前記ファイバーストランドをコーティングし、前記ポリファイバー出力部からポリファイバーストランドを押し出すように動作可能である、ポリマーダイと、
(b)前記ポリファイバー出力部に配置され、前記ポリファイバーストランドを切断するように動作可能なポリファイバーカッターと、
(c)前記ポリファイバー出力部を位置決め及び配向するように動作可能な位置決めシステムと、
(d)制御システムであって、
(i)プロセッサ、及び
(ii)メモリ、を備え、
前記制御システムが、前記ポリマーダイ、前記ポリファイバーカッター、及び前記位置決めシステムの動作を制御するように構成されている、制御システムと、
(e)液体樹脂で対象物の間隙空間を充填するように動作可能な樹脂注入システムと、を備え、
前記制御システムが、製造部品の構造を定義する一組の座標で構成された対象物デフィニションを受信し、かつ、前記対象物デフィニションに基づいて、前記ポリマーダイ、前記ポリファイバーカッター、及び前記位置決めシステムを動作させ、複数のポリファイバーストランドを押し出し、切断し、堆積させて前記構造を作製するように更に構成され、前記構造は、前記樹脂注入システムによる液体樹脂の注入及び硬化時に前記製造部品を製造するように構成された一組の間隙空間を画定する、積層造形システム。
【請求項2】
前記位置決めシステムは、前記構造上の方向性が1つ以上変化している、連続したポリファイバーストランドを堆積させるように動作可能である、請求項1に記載の積層造形システム。
【請求項3】
前記樹脂注入システムが、真空樹脂注入システム及び加圧樹脂注入システムからなる群より選択される種類のものである、請求項1に記載の積層造形システム。
【請求項4】
前記ファイバーストランドが、炭素、ガラス、及びアラミドからなる群より選択される種類のものである、請求項1に記載の積層造形システム。
【請求項5】
前記製造部品が医療用装置の構成要素である、請求項1に記載の積層造形システム。
【請求項6】
前記医療用装置が、インプラント、ハンドル、外科用材料、及びグリップからなる群より選択される種類のものである、請求項5に記載の積層造形システム。
【請求項7】
前記構造の前記複数のポリファイバーストランドが、前記製造部品の強度を向上させるように配置されている、請求項1に記載の積層造形システム。
【請求項8】
前記構造が、一組の垂直に配置されたポリファイバーストランド層と、一組の水平に配置されたポリファイバーストランド層とを更に備える、請求項1に記載の積層造形システム。
【請求項9】
前記制御システムは更に、
(i)剛性プロファイルを受信し、前記剛性プロファイルに基づいて、前記構造の作製中に堆積される2つ以上のストランド種類を決定し、
(ii)前記構造上に、前記2つ以上のストランド種類を押し出し、切断し、堆積させるように構成され、
前記製造部品は、前記2つ以上のストランド種類の配置により、1箇所以上で優先的に屈曲可能である、請求項1に記載の積層造形システム。
【請求項10】
前記2つ以上のストランド種類が、剛性ストランド及び可撓性ストランドを含む、請求項9に記載の積層造形システム。
【請求項11】
一組の剛性ストランドが、前記製造部品の外側の角に配置され、一組の可撓性ポリマーストランドが、前記製造部品の中央に配置され、前記製造部品が、力を受け、前記中央で優先的に屈曲するように構成されている、請求項10に記載の積層造形システム。
【請求項12】
前記2つ以上のストランド種類が、略剛性のポリファイバーストランド及び可撓性ポリマーストランドを含む、請求項9に記載の積層造形システム。
【請求項13】
前記制御システムは更に、
(i)剛性プロファイルを受信し、前記剛性プロファイルに基づいて、前記構造において、樹脂不透過性壁部によって分離されなければならない2つ以上の区画を決定し、
(ii)前記複数のポリファイバーストランドを押し出し、切断し、堆積させることにより、前記樹脂不透過性壁部を作製するように構成され、
前記構造への液体樹脂の注入時、前記構造の第1の区画には第1の液体樹脂を注入し、前記構造の第2の区画には前記第1の液体樹脂が注入されず、前記第1の区画及び前記第2の区画は、前記樹脂不透過性壁部で分離されている、請求項1に記載の積層造形システム。
【請求項14】
前記製造部品の製造時、前記構造の前記第2の区画に、第2の液体樹脂が注入されるように構成されている、請求項13に記載の積層造形システム。
【請求項15】
前記製造部品の製造時、前記構造の前記第2の区間が、中空のままであるように構成されている、請求項13に記載の積層造形システム。
【請求項16】
積層造形部品を製造する方法であって、
(a)積層造形システムを使用して製造部品の構造を製造する工程であって、前記構造は、一組の間隙空間を含む、工程と、
(b)前記積層造形システムを介して、複数のポリファイバーストランドを前記構造上に配置する工程であって、前記複数のポリファイバーストランドを配置する工程は、
(i)ポリファイバーストランドを押し出す工程、
(ii)前記ポリファイバーストランドを切断する工程、及び
(iii)前記構造上に前記ポリファイバーストランドを堆積させる工程、を含む、工程と、
(c)樹脂注入システム内に前記構造を配置し、樹脂注入プロセスを行うことにより、前記製造部品を製造する工程であって、前記樹脂注入システムは、前記一組の間隙空間に液体樹脂を充填する、工程と、
(d)前記製造部品を硬化させる工程と、を含む、積層造形部品を製造する方法。
【請求項17】
前記樹脂注入プロセスは、真空樹脂注入プロセスであり、前記製造部品は、鋳型を用いずに製造される、請求項16に記載の積層造形部品を製造する方法。
【請求項18】
前記積層造形システムは、複数のポリマーストランドを押し出し、切断し、堆積させ、前記製造部品は、前記複数のポリファイバーストランド及び前記複数のポリマーストランドを備え、前記製造部品は、前記複数のポリマーストランドの配置に基づき、1つ以上の方向に優先的に屈曲する、請求項16に記載の積層造形部品を製造する方法。
【請求項19】
前記構造は、透過性区画及び不透過性区画を備え、前記樹脂注入プロセスを実施することにより、前記透過性区画に前記液体樹脂を充填させる一方で、前記不透過性区画には前記液体樹脂を充填させず、前記製造部品は、前記不透過性区画の位置に基づき、1つ以上の方向に優先的に屈曲する、請求項16に記載の積層造形部品を製造する方法。
【請求項20】
積層造形システムであって、
(a)ポリマーダイであって、
(i)ファイバー入力部、
(ii)加熱されたポリマー入力部、及び
(iii)ポリファイバー出力部、を備え、
前記ポリマーダイが、前記ファイバー入力部からファイバーストランドを受容し、前記加熱されたポリマー入力部からのポリマーで前記ファイバーストランドをコーティングし、前記ポリファイバー出力部からポリファイバーストランドを押し出すように動作可能である、ポリマーダイと、
(b)前記ポリファイバー出力部に配置され、前記ポリファイバーストランドを切断するように動作可能なポリファイバーカッターと、
(c)前記ポリファイバー出力部を位置決め及び配向するように動作可能な位置決めシステムと、
(d)制御システムであって、
(i)プロセッサ、及び
(ii)メモリ、を備え、
前記制御システムが、前記ポリマーダイ、前記ポリファイバーカッター、及び前記位置決めシステムの動作を制御するように構成されている、制御システムと、
(e)液体樹脂で対象物の間隙空間を充填するように動作可能な樹脂注入システムと、を備え、
前記制御システムが、医療用装置の構造を定義する一組の座標で構成された対象物デフィニションを受信し、かつ、前記対象物デフィニションに基づいて、前記ポリマーダイ、前記ポリファイバーカッター、及び前記位置決めシステムを動作させ、複数のポリファイバーストランド及び複数のポリマーストランドを押し出し、切断し、堆積させて前記構造を作製するように構成され、前記複数のポリファイバーストランドは、方向性が1つ以上変化している、連続したポリファイバーストランドを含み、前記構造は、前記樹脂注入システムによる液体樹脂の注入及び硬化時、前記医療用装置を製造するように構成された一組の間隙空間を含み、前記医療用装置は、前記複数のポリマーストランドの位置に基づき、1つ以上の方向に優先的に屈曲するように構成されている、積層造形システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、装置、構成要素、及びその他の対象物の積層造形のためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
使用される用途及び環境により、医療装置によっては、金属の代わりにポリマー材料を使用して製造されることが有利となることがある。ポリマー材料を使用することで、材料獲得コストの低減、原材料の加工コストの低減、又はその両方を可能にし得る。ポリマー材料により、インプラント、人工装具、及びハンドヘルドツールにとって望ましくなり得る軽量化、インプラント及び人工装具の場合のアレルギー反応又は関連反応の変化低減、並びに生物学的用途で使用される場合に発生し得る錆、腐食、及びその他摩耗に対する抵抗性の改善を含む、更なる利点を有し得る。
【0003】
これらが広範に使用されることを限定してきたポリマー材料の限界は、金属材料に対して機械的強度が低下するという点である。ツール、インプラント、人工装具、及びその他の対象物が使用中に受ける強い力により、従来のポリマー構成要素は、危険かつ予測不能な方法で破損し得る。従来のポリマー構成要素が機械的強度の要件を満たし得る場合であっても、特に、これらが限定的な量でのみ必要とされる場合には、それらのコスト上の利点が実現されない場合がある。例えば、大量生産されるポリマー構成要素は、多くの製造品目に亘って製造中に使用されるカスタム金型のコストを増大する場合があり、一方、固有の金型を必要とするカスタムのインプラント又は人工装具は、少数の製造品目に亘ってのみコストを増大する場合がある。
【0004】
積層造形技術を使用して、上述の利益を達成する医療用装置を製造することができ、また、所与の医療用装置が、それが使用される特定の患者の解剖学及び/又は必要性に基づいて構造的にアドホック構成がとられ得るように、カスタマイズすることも可能となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、医療用装置の積層造形のためのシステム改善が必要とされている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
以下の図面及び詳細な説明は、単に例示に過ぎず、本願発明者らによって企図される本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【
図1】部品を積層造形するためのシステムによって実行され得る例示的な方法における一連の高レベル工程を示すフローチャートである。
【
図2】
図1の方法内で実行され得る、部品の下層構造を作成する例示的な一連のサブ工程のフローチャートである。
【
図3】
図1の方法を実施するために使用され得る積層造形システムの押出ヘッドにポリマーコーティングファイバーを供給するための例示的な供給システムの概略図である。
【
図4】
図1の方法を実施するために使用され得る例示的な積層造形システムの概略図である。
【
図5】
図1の積層造形システム及び例示的な製造部品の概略図である。
【
図6】
図4の積層造形システムの例示的なポリマーダイの断面図である。
【
図8】積層造形プロセス中に押し出されたポリファイバーをいくつか示す正面斜視図である。
【
図9】
図8に示される押し出されたポリファイバーの側面立面図である。
【
図10】積層造形プロセス中に押出及び成形されたポリファイバーをいくつか示す斜視図である。
【
図11】
図1に示される積層造形システムが、積層造形された下層構造を使用して部品を作製するために実行可能である、例示的な一連の工程を示すフローチャートである。
【
図12】第1段階における例示的な金型樹脂転写プロセスの正面斜視図である。
【
図13】第2段階における
図12の金型樹脂転写プロセスの正面斜視図である。
【
図15】例示的な樹脂注入プロセスの側面立面図である。
【
図16】
図15のプロセスを使用して製造された例示的な部品の側面立面図である。
【
図17】
図12又は
図15のプロセスのうちの1つを使用して製造された例示的な部品の正面斜視図であり、点線は、内部構造を示している。
【
図18】
図12又は
図15のプロセスのうちの1つを使用して製造された別の例示的な部品の側面断面図であり、実線は、内部構造を示している。
【
図19】
図18の19-19線に沿った
図18の製造部品の上面断面図であり、実線は、内部構造を示している。
【
図20】可変の剛性を有する製造部品を製造するために、積層造形システムによって実施され得る例示的な一連の工程を示す。
【
図21】使用される個々のフィラメントの剛性に基づいて可変の剛性を有する領域を示した、例示的な製造部品の断面図である。
【
図22】使用される樹脂の種類又は非存在に基づいて可変の剛性を有する領域を示した、例示的な製造部品の断面図である。
【
図23A】使用される樹脂の種類又は非存在に基づいて可変の剛性を有する領域を示した、例示的な製造部品の断面図である。
【
図23B】使用される樹脂の種類又は非存在に基づいて可変の剛性を有する領域の一例を示した、別の例示的な製造部品の断面図である。
【
図23C】使用される樹脂の種類又は非存在に基づいて可変の剛性を有する領域の一例を示した、別の例示的な製造部品の断面図である。
【
図23D】使用される樹脂の種類又は非存在に基づいて可変の剛性を有する領域の一例を示した、別の例示的な製造部品の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明者らは、例示を目的として、積層造形のためのシステム及び技術の文脈で適用されるように、本明細書に開示される新規技術を考案した。本発明者らによる技術について開示された用途は、積層造形の技術分野において長年感じられていたものの満たされていなかったニーズを満たしているが、本発明者らによる技術は、本明細書に記載される正確な方法で実施されることに限定されるものでなく、当業者が本開示を考慮して必要以上の実験を行うことなく、他の方法で実施可能であることが理解されなければならない。したがって、本明細書に記載される実施例は、単なる例示であると理解されるべきであり、限定的なものとして扱われるべきではない。
【0008】
開示の技術は、金属材料ではなくポリマー材料から医療用装置又は医療用装置の構成要素を積層造形するために使用され得る。製造された装置の強度及び構造特性は、装置の一部の部分において高いレベルの可撓性を提供し、他の部分では高いレベルの剛性を提供するように、構造全体を通じて可変であり得る。装置の積層造形は、ポリマーコーティングの加熱及び冷却を通じて他のポリファイバーと結合し得るポリマーコーティングファイバー(ポリファイバー)を押し出す引抜プロセスを実行可能な新規のシステムを必要とする。各長さで押し出されたポリファイバーが配置されると、押出ノズルに近接して配置されたカッターが、押し出されたポリファイバーを切断する。このようにして、装置の多孔質下層構造は、1つ以上の種類のポリファイバーから作製され得る。押出ノズルは、様々なサイズ及び構造の装置の製造を可能にし、広範囲に亘るポリファイバーの指向性を可能にするように、広範囲の移動及び回転が可能であり、装置構造内の力ベクトルの最適化を可能にする。次いで、完成した下層構造には、硬化又は強固化され得る1種類以上のポリマー材料で、下層構造の多孔質領域を充填する樹脂含浸プロセスを施す。
【0009】
様々な装置及び構成要素は、このようにしてポリマー材料から作製されてもよく、作製された装置は、埋め込まれた下層構造に起因して、成形されたポリマー装置と比較して強度及び耐久性が向上しており、各装置にとって好適なファイバーの配置及び指向性を提供するように、その装置に合わせてカスタム設計されてもよい。使用されるファイバーの種類(例えば、炭素、ガラス、アラミド)、使用されるポリマーの種類、並びにファイバーの配置及び指向性の柔軟性において選択可能なオプションの範囲により、このように製造され得る装置又は構成要素の種類は、ほぼ無限である。
【0010】
いくつかの非限定的な例として、これは、Prolene(登録商標)、Mersilene(登録商標)、及びUltrapro(登録商標)の名称で提供されるものと同様のヘルニア手術用のカスタム設計又は成形を行った外科用メッシュ又は構造と、Artisyn(登録商標)及びGynecare Gynemesh(登録商標)の名称で提供されるものと同様の子宮及び骨盤の手術用のカスタムサイズ及び形状の外科用メッシュ、Gynecare TVT Exact(登録商標)、Gynecare TVT Abbrevo(登録商標)、及びGynecare TVT(商標)の名称で提供されるものなど、カスタムサイズ及び形状の骨盤インプラントを含み得る。これはまた、Harmonic Wave(登録商標)、Harmonic Synergy(登録商標)、Enseal(登録商標)、Echelon Flex(商標)、Proximate(登録商標)、その他の名称のもとに販売されているものなど、カスタムサイズ及び形状の外科用器具のグリップ、ハンドル、又はケーシングも含み得るもので、このような装置がカスタム部品に嵌合するようにでき、特定のユーザーに対して、彼らの好みに応じてカスタムフィットするか、又は、所望である、グリップ、ハンドル、形状、又はサイズの提供を可能にすることができる。他の装置及び構成要素としては、Relieva Ultirra(登録商標)の名称のもとに販売されているものなど、サイナスカテーテルシステムのカスタムサイズ及び形状の構成要素、Actis(登録商標)、Corail(登録商標)、Pinnacle(登録商標)、Reclaim(登録商標)、Summit(登録商標)、及びTri-Lock(登録商標)の名称のもとに販売されているものなど、カスタムサイズ及び形状の股関節インプラント、及びBiointrafix(登録商標)、Femoral Intrafix(商標)、Gryphon(登録商標)、及びHealix Advance(商標)の名称のもとに販売されているものなど、カスタムサイズ及び形状のインプラント及び定着システムが含まれ得る。当業者にとって、本明細書に記載されるシステム及び技術のうちの1つ以上を使用して有利に積層造形され得る他の装置及び構成要素は、本明細書の開示を考慮することで明らかとなろう。アドホック医療装置(又は医療用装置のアドホック構成要素)を製造するために積層造形が使用されるとき、医療用装置(又はその構成要素)は、医療用装置が使用される特定の患者に基づいて、及び/又は、医療用装置を使用する特定の医師に基づいて、カスタマイズされてもよいことも理解されたい。
【0011】
図1は、装置、構成要素、部品、又は他の対象物の積層造形を行うために、
図4及び
図5に示されるような積層造形システム(101)によって実施され得る、一連の高レベル工程を示している。最初に、積層造形システム(101)のコントローラ又はプロセッサにより、部品デフィニションが受信される(ブロック300)。部品デフィニションは、部品の下層構造又はフレームワークの座標を画定する。これは、下層構造を構成するポリファイバーの配置、配向、長さ、及び特性を含み、積層造形システム(101)のコントローラ又はプロセッサにより解釈され得る形式であり、押出ヘッド(200)を位置決め及び配向し、1種類以上のポリファイバーを押し出し、押出ヘッドに近接したカッター(110)で押し出されたばかりのポリファイバーを切断するために積層造形システム(101)によって使用され得る。部品デフィニションは、一旦受信されると、積層造形システム(101)によって使用されて、一度に1つのファイバーと1つの層となるようにポリファイバーを押し出すことによって、加熱されたポリマーコーティングが冷却及び固化する際に、先立って配置されたファイバー上に押し出されたポリファイバーが積層されてこれに接着するようにして、下層構造を製造する(ブロック302)。
【0012】
本明細書の実施例及び説明は、下層構造について言及するものであるが、開示された技術を使用して、対象物の上層構造、又は上層構造と下層構造とを組み合わせた構造を作製することもできることを理解されたい。例えば、製造された上層構造は、樹脂含浸プロセスが施され得る対象物の「表皮」、すなわち、外部構造であり得る。このようにして、内部中空を取り囲む多孔質上層構造を製造することができる。樹脂含浸中、多孔質外層は、樹脂の充填された中空の周囲を包囲するポリファイバー補強された表皮を形成する。上層構造及び下層構造の要素を組み合わせた構造も可能である。例えば、製造された構造は、多孔質上層構造皮質及び内部の多孔質下層構造の両方を有し得る。樹脂含浸中、このような構造は、ポリファイバー補強された内部の周囲を包囲するポリファイバー補強された表皮を有することができ、樹脂の充填された中空領域も含んでもよい。見てとれるように、これにより、製造できる構造の種類に多大な柔軟性及び多様性をもたらすことができ、これらの構造の樹脂含浸によって製造できる対象物の特性にも多大な柔軟性をもたらすことができる。
【0013】
製造された下層構造が一旦完全に配置され、完全に冷却又は固化されると、樹脂含浸システム内に下層構造を配置することができる(ブロック304)。配置に関与する特定の作用(ブロック304)は、特定の種類の樹脂含浸プロセスに応じて変化する。これは、圧力樹脂含浸プロセスを含むことができ、これにより、下層構造を金型又は浴内に配置することができ、圧力下で構造に樹脂を注入して、多孔質下層構造から空気を押し出し、それを液体樹脂又はポリマーと置き換えることができる。これはまた、真空樹脂含浸プロセスを含むことができ、それにより、下層構造が、液体樹脂又はポリマーの入力部を有するバッグ又はその他の気密容器内に配置されてもよく、次いで、空気が、多孔質下層構造から力強く除去されてもよく、これによって液体ポリマーが多孔質下層構造内に引き込まれる。そのため、場合によっては、下層構造を配置すること(ブロック304)及び調製することは、金型、樹脂浴、真空バッグ、又は樹脂含浸プロセスで使用され得る、その他の容器若しくはシステム内に下層構造を配置することを含み得る。一旦調製されると、樹脂含浸プロセスが実行されてもよく(ブロック306)、これには、一般的に、多孔質下層構造から空気を除去し、それを液体樹脂又はポリマーで置き換えることが含まれる。樹脂含浸プロセス(ブロック306)が一旦完了し、液体が硬化又は固化されると、結果として、下層構造が埋め込まれ、下層構造の形状、プロセス中に用いられる金型又は真空バッグの形状、又はその双方に実質的に合致した部品の全体形状を備えた、硬化ポリマー部品が得られる。
【0014】
図2は、製造部品の下層構造又はフレームワークを作製するために、積層造形システム(101)によって実施され得る一連の高レベル工程を示す。最初に、ポリファイバーストランドは、引抜として既知の技術により、ファイバーストランドを供給すること(ブロック308)と、供給したファイバーにポリマーを付与すること(ブロック310)とによって、作成されなければならない。
図3は、ファイバーのスプールであるファイバーフィード(102)、又はファイバーのスプールから引っ張る(ブロック308)ローラを含む引抜供給システム(100)の一例を示す。ファイバーがファイバーフィード(102)から供給されると、そのファイバーは、ポリマー浴(104)を通って引っ張られ、そこで液体ポリマーによりファイバーストランドをコーティングする(ブロック310)。ポリファイバーがポリマー浴(104)を出ると、ポリファイバーフィード(106)は、下流のポリファイバーをスプール及び供給するか、又は供給する。
図4は、引抜システムの代替実施形態を示す。同図は、引っ張られるストランドにポリマーをコーティングするポリマーダイ(108)にファイバーストランドを供給するファイバーフィード(102)を示す。
【0015】
図6は、主チャネル(117)内に供給するポリマー入力部(116)と、ファイバー入力部(118)内へのポリマーの逆流を防止しつつ、ファイバーを主チャネル(117)内へと通過させるシール(120)を有したファイバー入力部(118)と、主チャネル(117)の出口に設けられたポリファイバー出力部(122)とを備えた、ポリマーダイ(108)の断面図を示している。ファイバーは、1つ以上がファイバーフィード(102)によって供給され、ポリマーダイ(108)の出力部(122)の端部上のスプール又はローラによってポリマーダイを通じて引っ張られ、射出されたポリマーの流れ、又は、その他の供給方法によってポリマーダイ(108)を通じて引っ張られることで、ポリマーダイ(108)内に供給されてもよい。ファイバーがポリマーダイ(108)を通って引っ張られると、ファイバーは、ポリマーダイ(108)の主チャネル(117)の形状をとるポリマーでコーティングされる。ポリマー注入部(116)は、流動を改善するために、注入点でポリマーを加熱する熱源と組み合わされてもよく、主チャネル(117)の側壁は、ポリマーから熱を引き出し、ポリマーダイ(108)の本体の残りの部分にポリマーを移動させることによって、ポリマーが主チャネル(117)に沿って移動する際にこれを冷却する。
【0016】
図3のポリマー浴引抜システムはまた、
図6に示すポリマーダイ(108)と組み合わせられてもよい。例えば、ポリマー浴(104)を使用して、第1の種類又は用途のポリマーをファイバーに付与することができ、次いでポリマーダイ(108)に供給することができ、次いで第2の種類又は用途のポリマーを受容して、主チャネル(117)内に成形するか、又は主チャネル(117)内で加熱及び成形されるか、この双方を施すことができる。これにより、作製されたポリファイバーを加熱して金型により成形しつつ、異なる種類のポリマーを層に付与するか、又は、第2の用途のものをポリマーダイ(108)に注入して、ポリマー浴(104)によってポリマーのバルクが付与されることができるようにし、結果として得られるポリファイバーが、均一にコーティングされ、均一なサイズ及び形状を有するようにする。
【0017】
ポリファイバーを供給して(ブロック308)、コーティングする(ブロック310)プロセスは、製造中、コーティングされたポリファイバーが押し出されるのと同じ速度で実施することができる。このようにして、ファイバーの次の長さ分をポリマーでコーティングしつつ(ブロック310)、押出ヘッド(200)は、ポリファーバーのうち、コーティングされたばかリの長さ分を堆積させる(ブロック312)ように配置、配向、及び使用され得る。押出ヘッド(200)の位置決め及び配向は、ラスタシステム、機械アーム、又は製造スペースプラットフォームのうちの1つ以上を移動又は回転することを含んでもよく、ポリファイバーの押出前及び押出中の両方において、製造空間内の押出ヘッド(200)について6段階までの自由度を可能にする。押出ポリファイバーは、ポリマーコーティングがポリマーダイ(108)に存在する際に接着するのに十分な程度、高温であってもよく、又は、ポリマーダイ(108)を出る際に、加熱面又は加熱送風機などの熱源によって再加熱されてもよい。他のポリファイバーへの接着するためにポリマーコーティングを調製するために必要な熱源の種類及び熱は、使用される特定の種類のファイバー及びポリマー、並びに所望の押出速度に基づいて変更する。ポリファイバーの最初のストランド又は層は、製造空間の平坦面又は起伏面上に押し出されてもよく、次の層が上に重ねられ、接着され、次いで冷却時に固化して恒久的結合を形成し得る。
【0018】
各ストランドの終点が堆積されると(ブロック312)、カッター(110)を作動させて、ポリファイバーの未配置の長さ分からポリファイバーの配置済みの長さ分を切断し得る(ブロック314)。カッター(110)は、押出ヘッド(200)の近くに配置されており、例えば、切断ブロックに対してポリファイバーを押圧して切断するために延長されてもよい切断ブレード、それらの間にポリスレッドを延在させて捕捉し、切断する2つの切断ブレード、三角形、四角形、又はその他の幾何学的配置でポリファイバーを捕捉し、それを切断するように延在し得るように配置された3つ以上のブレード、互いに向かって、又は切断ブロックに向かって延在し、ポリファイバーを捕捉して切断し得る1つ以上の湾曲ブレード、又は以上のうちの任意の1つ以上を変更したものを含み得る。切断刃及び切断面を異なって配置すると、異なる種類のファイバー及びポリマーにとって有利であり、当業者にとって、そのような変更は、本明細書の開示を考慮することで明らかとなるであろう。
【0019】
図5は、押出ヘッド(200)が、製造部品(112)にポリファイバー(206)の堆積ストランド(114)を配置するように配置及び配向されている、積層造形システム(101)の概略図を示す。
図5はまた、ポリマーダイ(108)にポリマーを注入するために使用され得るポリマーインジェクタ(109)と、ポリマーダイ(108)内に注入中であるか、又はポリマーダイ(108)内に既に存在する(すなわち、既に浴(100)からファイバー上にコーティングされている)か、又はその双方である熱ポリマーとを示している。
図7は、積層造形システム(101)を使用して作製され得る製造部品(112)の一例を示す。ポリファイバーの構造と、押出ヘッド(200)が配置及び配向され得る高レベルの自由度により、堆積されたポリファイバーストランドの可変の配置及び方向性を可能にする。例えば、製造部品(112)は、水平に配置されたポリファイバー(126)の行と、垂直に配置されたポリファイバー(124)の列との組み合わせから作製され、これらは、堆積して加熱された後、冷却されたポリマーコーティングによって互いに接着される。これは、水平層に単一のテクスチャフィラメントを繰り返し配置することに依存する従来の積層造形技術とは異なり、従来のフィラメントと比較して、ポリファイバーによって提供される構造と、押出ヘッド(200)の高度な自由度との両方によって可能となる。
【0020】
図8及び
図9は、相互接続されたポリファイバーストランドの例を示す。ファイバー材料(202)及びポリマー層(204)は、ポリファイバーの切断端部で見ることができる。押し出されたポリファイバー(206)は、押し出されたポリファイバー(206)が複数のベースとなるポリファイバー(205)を横切って配置されるように押出ヘッド(200)によって堆積されている様子が示されており、押し出されたポリファイバー(206)がベースとなるポリファイバー(205)に接触する各点において、接合点(208)が形成される。
図7及び
図8はまた、押し出されたポリファイバー(206)が堆積中に方向を変化させ得る、方向変化(207)を示す。ポリマーケーシングが最初に堆積されるとき、依然として溶融状態にあるものの、ポリマーケーシングが冷却すると、固くなって可撓性が低くなるため、これが可能である。冷却は、自然に発生し得るか、又は外部送風機、又は、押出ヘッド(200)に近接して取り付けられた送風機から方向づけられた冷却空気の噴出に起因して生じ得る。ポリファイバー(206)の長さ分を押し出し、押し出されたポリファイバー(206)を可撓性が低くなる点まで冷却することにより、
図7及び8に示されるように、方向性の変化が生じ得る(207)。
【0021】
図10は、一方向ストランド(214)及び多方向ストランド(216)の両方を含む1組の相互接続ポリファイバーストランド(214、216)を示す。図示の実施例において、一方向ストランド(214)のグリッドが、第1の層(210)と第2の層(212)の一部とを形成し、これが、堆積対象の多方向ストランド(216)に安定的な領域を提供する。多方向ストランド(216)は、ポリファイバーストランドを第1の層(210)上に堆積させ、1つ以上の方向変化(207)を含むように、堆積全体に亘って押出ヘッド(200)を位置決め及び配向することによって、形成される。一方向ストランドのグリッド作業に加えて多方向ストランドを含む利点は、結果として得られる部品の間隙空間(209)の容積と多様性を増すことであり、ポリマー又は樹脂の含浸プロセス(ブロック306)中に下層構造として使用されるときに有利となり得る。ストランド(207)の方向性と、結果として得られる間隙空間(209)の形状を変化させることが可能であることで、樹脂含浸された下層構造の剛性及び可撓性を所望に合わせてカスタマイズすることができる。
【0022】
積層造形システム(101)によってカスタマイズされた下層構造が作製された後、樹脂含浸プロセスを実施してもよい。前述のように、様々な樹脂含浸プロセスが存在する。
図11は、製造された下層構造を充填するために使用され得る2つの樹脂含浸プロセスの例を示す。下層構造が樹脂含浸のために一旦調製されると(ブロック316)、樹脂含浸に使用可能な金型があるか否かが判定され得る(ブロック318)。これは、例えば、作製中の部品が共通のサイズ又は形状であるものの、部品の構造全体に亘ってカスタマイズされたレベルの可撓性又は剛性を提供するために、カスタムの下層構造が製造されている場合であってもよい。この実施例を更に拡張すると、金型はまた、上層構造及び下層構造の組み合わせられた構造を有する部品にも使用され得る。この実施例において、上層構造、すなわち外層は、金型内部に合致又は嵌合する形状及び幾何学形状を有することができ、下層構造は、上層構造内部に合致する形状及び幾何学形状を有し得る。これらの種類の構造は、下層構造の内部幾何学形状及び特性の変更が所望される場合に有用であり得る。上層構造は、金型内に嵌合し、金型に対して静的に配置された外層を提供する一方で、上層構造内の下層構造は、上層構造に対して静的に配置され得る。このようにして、固有、且つ、様々な下層構造を製造し、上層構造内の任意の場所に配置することができ、樹脂含浸プロセス中にその位置を維持することができる。
【0023】
金型が利用可能である場合(ブロック318)、下層構造は、金型内に配置可能であり(ブロック320)、これが部分的に封止されて、樹脂が金型内に押し込まれるようにし(ブロック322)、下層構造の間隙空間を充填して、内部の空気を除去するようにする。実質的に全ての空気が下層構造から押し出された後、樹脂は、使用される樹脂又はポリマーの種類及び特性に応じて、時間の経過により、加熱プロセスにより、又は、別の硬化プロセスにより、硬化され得る。
【0024】
図12は、金型ベースの樹脂含浸プロセスが実施中である例を示しており、断面図は、金型内部及び部品を示している。図示の例において、一方向ストランドの第1の層(210)と第2の層(212)とを有し、間隙空間のグリッドを提供する下層構造が、金型のベース(218)内に配置されており、金型の頂部(220)が金型を閉じた状態に封止するように配置されてもよい。金型が一旦閉じると、圧力下で樹脂を金型に押し込み、間隙空間から空気を押し出して、逆流を防止する空気放出部又は出力部を通じて空気が放出され得る。
図13は、下層構造の間隙空間を充填する樹脂を有する金型の断面図を示し、
図14は、金型から取り出された完成部品の断面を示す。
図14に示すように、ここで間隙空間には、注入樹脂(222)が充填される。
【0025】
金型が利用可能でない場合(ブロック318)、これは製造中の部品が固有のサイズ又は形状である場合に生じ得るが、下層構造は、代わりに、真空バッグ内に配置され(ブロック324)、密封されてもよい。真空源及び樹脂源が真空バッグに接続され、真空源が始動されると、下層構造の間隙空間から空気が引き込まれ、樹脂源から樹脂が引っ張られて(ブロック322)、変位した空気を置換する。他のプロセスのように、一旦空気が完全に除去されると、樹脂含浸部品は、部品の完成に適切となるように、硬化され得る(ブロック326)。
【0026】
図15及び
図16は、真空ベースの樹脂含浸手順の一例を示す。
図15は、真空膜(228)内に収容された、相互接続されたポリファイバー(230)の断面である。真空膜(228)は、液体樹脂又はポリマーの供給源に接続される樹脂ポート(224)と、真空圧源に接続された真空ポート(226)とを有する。真空ポートを通して減圧が付与されると、間隙空間(207)から空気が除去され、液体樹脂が樹脂ポート(224)から引き込まれて間隙空間(207)を充填する。
図16は、樹脂含浸プロセス後に真空膜(228)から除去された製造部品(232)を示す。ここでポリファイバー(230)の周囲の間隙空間(207)には、注入された樹脂(222)が充填される。
【0027】
図17は、積層造形された下層構造及び樹脂注入又は含浸のプロセスを使用して作製することができる製造部品(232)の別の例を示す。ポリファイバー(230)のいくつかの行が構造全体に亘って埋め込まれており、各ファイバー(230)は、構造全体に亘って方向性の変化を複数有する。製造部品(232)の残りの部分は、真空バッグプロセス又は金型をベースとするプロセスなどのプロセスによって添加される注入樹脂(222)から構成される。ポリファイバー(230)の方向性を変化させる能力のために、特定の医療用装置又は医療用装置の構成要素を作製するのに必要とされ得るような、複雑な形状又は不規則な形状を有する下層構造の作製が可能となる。
【0028】
図18及び
図19は、埋め込まれた下層構造と、樹脂注入又は含浸のプロセスとを使用して、作製され得る製造部品(234)の更なる例を示す。製造部品(234)の断面が示されており、埋め込まれたポリファイバー(230)のいくつかの層と、ポリファイバー(230)の周囲の間隙空間に充填された注入樹脂(222)とが示されている。本体(233)全体に亘ってポリファイバー(230)の密度が比較的に低いことにより、ある程度の可撓性を可能にする一方で、ネック(231)は、使用に十分な狭さを依然として維持しつつ、ネック(231)を通じて伝えられる応力に耐えられるような耐性を得るため、ポリファイバー(230)の密度が比較的高い。
【0029】
図19は、
図18の製造部品(234)の19-19線に沿ったオーバーヘッド断面図を示す。この図から、多数の垂直ポリファイバー(236)が製造部品(234)の垂直長さに沿って延び、多数の水平ポリファイバー(238)が製造部品(234)の周囲に延びて、注入樹脂(222)が間隙空間及び周囲空間を充填していることが見てとれる。前の実施例のように、
図18及び
図19に示されるポリファイバー(230)における方向性の変化により、樹脂の注入時、同じサイズ及び形状を有する純粋なポリマー対象物又は装置を上回って強度を増大する、積層造形システム(101)によって製造される下層構造の種類において、はるかに高い柔軟性を可能にする。
【0030】
既に論じたように、積層造形システム(101)及び上述の技術によって、方向性が変更するポリスレッドの堆積を可能にし、幅広い下層構造設計が可能となる。開示のシステム及び技術を用いることで、他の利点も存在し、実施も可能である。例えば、
図20は、積層造形システム(101)と樹脂含浸技術とを使用して実施され、部品全体に亘って複数のゾーンを有してもよく、各ゾーンは独自の固有の剛性プロファイルを有する、製造部品を作製することができる一連の工程を示す。これには、例えば、全ての方向からの力に応じて非常に高い剛性を示すゾーン、全ての方向からの力に応じて非常に高い可撓性を示すゾーン、力が加えられる方向によって可変的に可撓性又は剛性を示すゾーン、又は特定の方向にある程度のねじれ又は回転を可能とするものの、他の方向では可能としないゾーンを含むことができる。これは、積層造形により、異なる種類のポリファイバー、又は、ポリファイバーとファイバーレスフィラメントストランドとで構築された下層構造を製造することにより、又は、注入中に異なる種類の樹脂又はポリマーを受容するか、いずれも全く受容しないか、又はこれらの両方を受容し得る、間隙空間の別個の区画を製造することにより、達成することができる。
【0031】
剛性プロファイルは、部品デフィニションとは別個の一組のデータであってもよく、又は部品デフィニションのサブセットであってもよく、又はその両方であってもよい。
図20の工程は、部品デフィニションを受信し(ブロック300)、剛性プロファイルを受信した(ブロック328)後に、下層構造の製造の一部として実行することができる(ブロック302)。下層構造製造プロセス(ブロック302)中、堆積される各ストランドに対して、デフォルトストランドの種類(例えば、ポリファイバー)を堆積させるか、又は堆積ストランドを何らかの方法で変化させるかにつき、剛性プロファイル、部品デフィニション、又はその両方に基づいて決定が行われる(ブロック330)。
【0032】
ストランドタイプを変更する必要がある場合(ブロック330)、剛性プロファイル、部品デフィニション、又はその両方に基づいて、適切なストランドの種類が選択され(ブロック334)、使用できるように備えられてもよい。ストランドは、このようにして、ストランドの種類のうちの1つ以上により、利用可能性により、可撓性又は剛性の要件、又は、他の要因により、選択され得る。ストランドはまた、例えば、異なる直径のファイバーを使用して、様々な構造(例えば、モノフィラメント、撚り合わされたストランド)を有するファイバーを使用して、様々な材料(例えば、半剛性芯材を有するもの、耐熱性の外側材料を有するもの)を含むファイバーを使用して、又は同一若しくは様々なポリマーをファイバーにコーティングすることにより(例えば、ポリマーのコーティングを行う材料に関わらず、配置時に互いに接着性を増加又は減少するようにポリマーコーティングを選択する)、変更され得る。異なる押出ヘッド(200)を使用して、そのストランドを付与してもよく、又は、標準の押出ヘッド(200)を、自動又は手動でデフォルトストランドから外し、異なるストランドの種類を堆積させるために備えられてもよい。適切なストランドが選択された後(ブロック334)、これが下層構造又は製造領域に堆積されてもよく(ブロック336)、これらの工程は、下層構造が完成するまで繰り返される。積層造形システム(101)は、選択された種類(ブロック334)に基づいて、ストランドを異なって堆積してもよく(ブロック336)、その特定のストランドの種類について、接着性、切断の質、又はその他の特性を向上するために、特定のストランドの種類に応じて、例えば、異なる加熱レベル、異なる堆積速度、又は異なる切断方法を使用してもよい。
【0033】
異なる区画に異なるレベルの剛性を付与するために、樹脂の種類及び透過はまた、製造部品全体に亘って変化させることもできる。樹脂含浸は、剛性プロファイル、部品デフィニション、又はその両方に基づいて、変化させなければならないことがある(ブロック332)。樹脂含浸が可変である製造部品の各区画について、周囲の区画に関連して、当該区画の透過性が選択される(ブロック338)。これには、例えば、同種類の樹脂が注入される2つの区画の間の下層構造壁部が透過性であるべきであると判定すること、又は、含浸中に下層構造のある区画がいずれの樹脂も受容せず、その区画を取り囲む下層構造壁部が不透過性であるべきであると判定することを含むことができる。このようにして、下層構造の異なる区画は、他の部分と隔てる壁部を形成することができ、これにより、異なる種類の樹脂若しくはポリマーを異なる区画に含浸させる多段階樹脂含浸プロセスを実施することができ、又は、下層構造の一部の区画が1つ以上の樹脂含浸プロセスを通じて中空のままとすることができる。
【0034】
区画の透過性が一旦選択されると(ブロック338)、その区画のストランドが堆積されてもよく(ブロック339)、これには、その区画が付近の区画と間隙空間を共有する(すなわち、透過性である)ようにストランドを配置すること、その区画が付近の区画と間隙空間を共有しない(すなわち、不透過性である)ようにストランドを配置することが含まれてもよく、更に、特定の区画が当初は不透過性となるものの、多段階樹脂含浸プロセス中にキャップが取り外されると透過性となるように、当該区画からキャップを外すようにストランドを堆積することも含まれてよい。特定の区画をキャッピング又は遮断して、それらを一時的に不透過性にすることは、人が手動で除去するのではなく、プロセス中に溶解又は破壊され得るキャップ材料を使用することで達成され得る。例えば、これには、特定の溶液に溶解され得るキャップ材料を含まれ得るもので、多工程樹脂含浸プロセスは、第1の区画樹脂を含浸させること、構造を溶液内に配置するか、又は第2の区画を透過性にする溶液を構造に充填又は注入して1つ以上のキャップを溶解することと、次いで、このようにして透過性となった区画に樹脂を含浸させることと、が含まれ得る。2つの区画を有する構造という文脈で説明を行ったが、このような技術は、樹脂含浸プロセス中の異なる時間に透過性にすることができる任意の必要な数の区画をサポートすることができ、プロセス中に高い柔軟性を提供することができる。溶液中に浸けるか、又は、溶液を充填することによって、完全、又は、部分的に溶解又は破壊され得る材料に加えて、温度変化と同様に反応する材料(例えば、キャップ材料の伸縮時、加熱又は冷却に曝されると、透過性となり得る区画)、強制空気(例えば、加圧された空気により、付近の材料を破損することなく、キャップ材料を破壊することができる)、又は当業者にとって本開示を考慮の上、明らかとなる他の材料も使用可能であることが企図される。
【0035】
選択(ブロック338)及び堆積(ブロック339)は、このように、下層構造が完成するまで繰り返すことができる(ブロック337)。下層構造が一旦完成すると、前述の樹脂含浸プロセスを使用して、第1の組の区画に第1の樹脂を付与することができる(ブロック340)。異なる区画を有する下層構造について、これらの区画を充填する樹脂含浸プロセス中に、これらの区画からキャップを外すか、又はこれらの区画を開放することにより、次の樹脂が付与されてもよい(ブロック342)。
【0036】
ストランドの様々な種類及び特性と、樹脂含浸の種類及び特性に合わせて本記載の技術を使用することにより、部品の作製において更なる柔軟性を得ることができる。例えば、
図21は、剛性構造(242)を有する複数のファイバーポリストランドと、可撓性構造(244)を有する複数のポリマーストランドと、からなる例示的な製造部品(240)の断面を示す。部品(240)の4つの角の補剛区画(246)おける比較的硬いポリファイバーストランド(242)の濃度と、部品(240)の中央の可撓性区画(248)における比較的可撓性のポリマーストランド(244)の濃度とにより、結果として、中間部分を通して可撓性であり、いずれかの端部で剛性であるため、中央にて優先的に屈曲し、いずれかの端部でその形状を保持する部品となる。これにより、例えば、使用中に大きな力に曝される特定の可撓性区画(248)においてある程度の可撓性を有することで、破損や欠陥を生じることなく、僅かに曲がることができ、一方で、補剛区画(246)を有することで、装置又は構成要素が全体として、その意図される目的に合った十分な強度と耐性とを有することのできる医療用装置又は構成要素の作製が可能となる。これらの技術は、剛性構成要素の欠陥を引き起こし得る高い応力を受ける構成要素において有用となり得るもので、例えば、股関節、肩、膝、及びその他の関節の骨及び構造インプラントを含むことができる。
【0037】
図22は、作製された下層構造の透過性を変化させるために開示の技術を使用して作製され得る製造部品(250)の別の例の断面図を示す。本実施例では、下層構造(250)の4つの外側区画は、樹脂の内部含浸を可能にする間隙空間を有した透過性壁部(252)を形成するように堆積されたストランドによって囲まれている。図示された下層構造(250)を用いて樹脂含浸プロセスを実施した結果として、4つの透過性区画が含浸プロセス中に樹脂を取り込み、補剛区画(246)を形成する。下層構造の中心は、樹脂含浸プロセス中に樹脂が不透過性壁部(254)の内部領域に入るのを防止する不透過性壁部(254)を形成するように堆積されたスレッドによって形成されたリングを有する。結果として、樹脂含浸後、不透過性壁部の内部が可撓性区画(248)を形成することになる。結果として得られた製造部品(250)は、強度及び耐久性を提供する4つの補剛区画(246)によって囲まれた、ある程度の可撓性を有する中空コア(254)を有する。あるいは、可撓性区画の中空(248)を残す代わりに、複数ポリマーの含浸プロセスを実行して、硬化時にある程度の強度を提供するものの、依然として周囲部分より比較的高い可撓性を有する、より可撓制の高い種類のポリマー又は樹脂を、可撓性区画の中空(248)に充填することができる。別の代替として、中央区画に使用されるポリマーと、外部区画に使用されるポリマーとは、反転させて、1組の可撓性区画がより剛性の高い中央区画を取り囲むようにすることができる。
【0038】
図23A~
図23Dは、
図22に関連して上述したように、透過性壁部及び不透過性壁部の両方を使用して製造部品に組み込むことができる構造の更なる例を示す。例えば、
図23Aは、
図22に示す直径よりも直径の小さな中央区画を有する製造部品(256)を示しており、一方、
図23Bは、
図22に示す直径よりも直径の大きな中央区画を有する製造部品(258)を示す。
図23Cは、4つの外側区画によって囲まれた、外周の小さな四辺形中央区画を有する製造部品(260)を示しており、一方、
図23Dは、四辺形の直角が製造部品(262)の外壁に接触するように、外周のより大きな四辺形中央区画を有する製造部品(262)を示す。
図22のように、製造部品(256、258、260、262)の図示の区画のいずれかは、所望のように、特定種類の樹脂が充填されるか、又は中空のままとされてもよく、その意図される使用にとって適切となるように、特定の区画及び特定の方向に優先的な可撓性を有する製造部品を作製することができる。下層構造の作製及び樹脂含浸を行うための本開示の技術により、
図21、
図22、及び
図23A~
図23Dに明示的に示されているもの以外に、多くの種類の構造を作成することが可能であり、当業者は、本明細書の開示を考慮することにより、それらの部品とその特性及び効果が明らかとなるであろう。
【0039】
以下の実施例は、本明細書の教示を組み合わせるか又は適用することができる、様々な非網羅的な方法に関する。以下の実施例は、本出願における又は本出願の後の出願におけるどの時点でも提示され得る、いずれの特許請求の範囲の適用範囲をも限定することを目的としたものではないと理解されよう。一切の棄権を意図するものではない。以下の実施例は、単なる例示の目的で与えられるものに過ぎない。本明細書の様々な教示は、他の多くの方法で配置及び適用が可能であると考えられる。また、いくつかの変形形態では、以下の実施例において言及される特定の特徴を省略してよいことも考えられる。したがって、本発明者ら又は本発明者らの利益の継承者により、後日、そうである旨が明示的に示されない限り、以下に言及される態様又は特徴のいずれも重要なものとして見なされるべきではない。以下に言及される特徴以外の更なる特徴を含む特許請求の範囲が本出願において、又は本出願に関連する後の出願において示される場合、それらの更なる特徴は、特許性に関連するいかなる理由によっても追加されたものとして仮定されるべきではない。
【実施例1】
【0040】
積層造形システムであって、(a)ポリマーダイであって、(i)ファイバー入力部、(ii)加熱されたポリマー入力部、及び、(iii)ポリファイバー出力部、を備え、ポリマーダイが、ファイバー入力部からファイバーストランドを受容し、加熱されたポリマー入力部からのポリマーでファイバーストランドをコーティングし、ポリファイバー出力部からポリファイバーストランドを押し出すように動作可能である、ポリマーダイと、(b)ポリファイバー出力部に配置され、ポリファイバーストランドを切断するように動作可能なポリファイバーカッターと、(c)ポリファイバー出力部を位置決め及び配向するように動作可能な位置決めシステムと、(d)制御システムであって、(i)プロセッサ、及び、(ii)メモリ、を備え、制御システムが、ポリマーダイ、ポリファイバーカッター、及び位置決めシステムの動作を制御するように構成されている、制御システムと、(e)液体樹脂で対象物の間隙空間を充填するように動作可能な樹脂注入システムと、を備え、制御システムが、製造部品の構造を画定する一組の座標で構成された対象物デフィニションを受信し、かつ、対象物デフィニションに基づいて、ポリマーダイ、ポリファイバーカッター、及び位置決めシステムを動作させ、複数のポリファイバーストランドを押し出し、切断し、堆積させて構造を作製するように更に構成され、構造は、樹脂注入システムによる液体樹脂の注入及び硬化時に製造部品を製造するように構成された一組の間隙空間を画定する、積層造形システム。
【実施例2】
【0041】
位置決めシステムは、構造上の方向性が1つ以上変化している、連続したポリファイバーストランドを堆積させるように動作可能である、実施例1に記載の積層造形システム。
【実施例3】
【0042】
樹脂注入システムが、真空樹脂注入システム及び加圧樹脂注入システムからなる群より選択される種類のものである、実施例1及び2のいずれか1つ以上に記載の積層造形システム。
【実施例4】
【0043】
ファイバーストランドが、炭素、ガラス、及びアラミドからなる群より選択される種類のものである、実施例1~3のいずれか1つ以上に1に記載の積層造形システム。
【実施例5】
【0044】
製造部品が医療用装置の構成要素である、実施例1~4のいずれか1つ以上に記載の積層造形システム。
【実施例6】
【0045】
医療用装置が、インプラント、ハンドル、外科用材料、及びグリップからなる群より選択される種類のものである、実施例5に記載の積層造形システム。
【実施例7】
【0046】
構造の複数のポリファイバーストランドが、製造部品の強度を向上させるように配置されている、実施例1~6のいずれか1つ以上に記載の積層造形システム。
【実施例8】
【0047】
構造が、一組の垂直に配置されたポリファイバーストランド層と、一組の水平に配置されたポリファイバーストランド層とを更に備える、実施例1~7のいずれか1つ以上に記載の積層造形システム。
【実施例9】
【0048】
制御システムは更に、(i)剛性プロファイルを受信し、剛性プロファイルに基づいて、構造の作製中に堆積される2つ以上のストランド種類を決定し、(ii)構造上に、2つ以上のストランド種類を押し出し、切断し、堆積させるように構成され、製造部品は、2つ以上のストランド種類の配置により、1箇所以上で優先的に屈曲可能である、実施例1~8のいずれか1つ以上に記載の積層造形システム。
【実施例10】
【0049】
2つ以上のストランド種類が、剛性ストランド及び可撓性ストランドを含む、実施例9に記載の積層造形システム。
【実施例11】
【0050】
一組の剛性ストランドが、製造部品の外側の角に配置され、一組の可撓性ポリマーストランドが、製造部品の中央に配置され、製造部品が、力を受け、中央で優先的に屈曲するように構成されている、実施例10に記載の積層造形システム。
【実施例12】
【0051】
2つ以上のストランド種類が、略剛性のポリファイバーストランド及び可撓性ポリマーストランドを含む、実施例9~11のいずれか1つ以上に記載の積層造形システム。
【実施例13】
【0052】
制御システムは更に、(i)剛性プロファイルを受信し、剛性プロファイルに基づいて、構造において、樹脂不透過性壁部によって分離されなければならない2つ以上の区画を決定し、(ii)複数のポリファイバーストランドを押し出し、切断し、堆積させることにより、樹脂不透過性壁部を作製するように構成され、構造への液体樹脂の注入時、構造の第1の区画には第1の液体樹脂を注入し、構造の第2の区画には第1の液体樹脂が注入されず、第1の区画及び第2の区画は、樹脂不透過性壁部で分離されている、実施例1~13のいずれか1つ以上に記載の積層造形システム。
【実施例14】
【0053】
製造部品の製造時、構造の第2の区画に、第2の液体樹脂が注入されるように構成されている、実施例13に記載の積層造形システム。
【実施例15】
【0054】
製造部品の製造時、構造の第2の区間が、中空のままであるように構成されている、実施例13及び14のいずれか1つ以上に記載の積層造形システム。
【実施例16】
【0055】
積層造形部品を製造する方法であって、(a)積層造形システムを使用して製造部品の構造を製造する工程であって、構造は、一組の間隙空間を含む、工程と、(b)積層造形システムを介して、複数のポリファイバーストランドを構造上に配置する工程であって、複数のポリファイバーストランドを配置する工程は、(i)ポリファイバーストランドを押し出す工程、(ii)ポリファイバーストランドを切断する工程、及び、(iii)構造上にポリファイバーストランドを堆積させる工程、を含む、工程と、(c)樹脂注入システム内に構造を配置し、樹脂注入プロセスを行うことにより、製造部品を製造する工程であって、樹脂注入システムは、一組の間隙空間に液体樹脂を充填する、工程と、(d)製造部品を硬化させる工程と、を含む積層造形部品を製造する方法。
【実施例17】
【0056】
樹脂注入プロセスは、真空樹脂注入プロセスであり、製造部品は、鋳型を用いずに製造される、実施例16に記載の積層造形部品を製造する方法。
【実施例18】
【0057】
積層造形システムは、複数のポリマーストランドを押し出し、切断し、堆積させ、製造部品は、複数のポリファイバーストランド及び複数のポリマーストランドを備え、製造部品は、複数のポリマーストランドの配置に基づき、1つ以上の方向に優先的に屈曲する、実施例16及び17のいずれか1つ以上に記載の積層造形部品を製造する方法。
【実施例19】
【0058】
構造は、透過性区画及び不透過性区画を備え、樹脂注入プロセスを実施することにより、透過性区画に液体樹脂を充填させる一方で、不透過性区画には液体樹脂を充填させず、製造部品は、不透過性区画の位置に基づき、1つ以上の方向に優先的に屈曲する、実施例16~18のいずれか1つ以上に記載の積層造形部品を製造する方法。
【実施例20】
【0059】
積層造形システムであって、(a)ポリマーダイであって、(i)ファイバー入力部、(ii)加熱されたポリマー入力部、及び(iii)ポリファイバー出力部、を備え、ポリマーダイが、ファイバー入力部からファイバーストランドを受容し、加熱されたポリマー入力部からのポリマーでファイバーストランドをコーティングし、ポリファイバー出力部からポリファイバーストランドを押し出すように動作可能である、ポリマーダイと、(b)ポリファイバー出力部に配置され、ポリファイバーストランドを切断するように動作可能なポリファイバーカッターと、(c)ポリファイバー出力部を位置決め及び配向するように動作可能な位置決めシステムと、(d)制御システムであって、(i)プロセッサ、及び、(ii)メモリ、を備え、制御システムが、ポリマーダイ、ポリファイバーカッター、及び位置決めシステムの動作を制御するように構成されている制御システムと、(e)液体樹脂で対象物の間隙空間を充填するように動作可能な樹脂注入システムと、を備え、制御システムが、医療用装置の構造を画定する一組の座標で構成された対象物デフィニションを受信し、かつ、対象物デフィニションに基づいて、ポリマーダイ、ポリファイバーカッター、及び位置決めシステムを動作させ、複数のポリファイバーストランド及び複数のポリマーストランドを押し出し、切断し、堆積させて構造を作製するように構成され、複数のポリファイバーストランドは、方向性が1つ以上変化している、連続したポリファイバーストランドを含み、構造は、樹脂注入システムによる液体樹脂の注入及び硬化時、医療用装置を製造するように構成された一組の間隙空間を含み、医療用装置は、複数のポリマーストランドの位置に基づき、1つ又は方向に優先的に屈曲するように構成されている、積層造形システム。
【実施例21】
【0060】
構造が、上層構造、上層構造内の下層構造、及び上層構造内の少なくとも1つの中空を含む、実施例20に記載の積層造形システム。
【実施例22】
【0061】
複数のポリファイバーストランドが、様々な直径を有する一組のポリファイバーストランドと、様々な材料を有する一組のポリファイバーストランドと、様々なポリマーコーティングを有する一組のポリファイバーストランドと、を含む、実施例20及び21のいずれかに記載の積層造形システム。
【実施例23】
【0062】
構造が、透過性である第1の区画と、キャップにより不透過性である第2の区画と、を含み、キャップは、第2の区画を透過性にするように溶液に完全、又は、部分的に溶解され得る材料を含む、実施例20~22に記載の積層造形システム。
【0063】
本明細書に記載の教示、表現要素、実施形態、実施例などのうちのいずれか1つ又は2つ以上を、本明細書に記載の他の教示、表現要素、実施形態、実施例などのうちのいずれか1つ又は2つ以上と組み合わせることができる点が理解されるべきである。したがって、以下に記載される教示、表現、実施形態、実施例などは、互いに対して切り離して考慮されるべきではない。本明細書の教示を考慮することで、本明細書の教示を組み合わせることができる様々な好適な方法が、当業者には容易に明らかとなろう。このような改変及び変形形態は、「特許請求の範囲」の範囲内に含まれるものとする。
【0064】
以上、本発明の様々な実施形態を示し、記載したが、当業者による適切な改変により、本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書に記載の方法及びシステムの更なる適合化を実現することができる。そのような可能な改変のうちのいくつかについて述べたが、他の改変も当業者には明らかとなるであろう。例えば、上記の実施例、実施形態、形状、材料、寸法、比率、工程などは例示的なものであって、必須のものではない。したがって、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲の観点から考慮されるべきものであり、本明細書及び図面において図示され、説明された構造及び動作の細部に限定されないものとして、理解されたい。
【0065】
〔実施の態様〕
(1) 積層造形システムであって、
(a)ポリマーダイであって、
(i)ファイバー入力部、
(ii)加熱されたポリマー入力部、及び
(iii)ポリファイバー出力部、を備え、
前記ポリマーダイが、前記ファイバー入力部からファイバーストランドを受容し、前記加熱されたポリマー入力部からのポリマーで前記ファイバーストランドをコーティングし、前記ポリファイバー出力部からポリファイバーストランドを押し出すように動作可能である、ポリマーダイと、
(b)前記ポリファイバー出力部に配置され、前記ポリファイバーストランドを切断するように動作可能なポリファイバーカッターと、
(c)前記ポリファイバー出力部を位置決め及び配向するように動作可能な位置決めシステムと、
(d)制御システムであって、
(i)プロセッサ、及び
(ii)メモリ、を備え、
前記制御システムが、前記ポリマーダイ、前記ポリファイバーカッター、及び前記位置決めシステムの動作を制御するように構成されている、制御システムと、
(e)液体樹脂で対象物の間隙空間を充填するように動作可能な樹脂注入システムと、を備え、
前記制御システムが、製造部品の構造を定義する一組の座標で構成された対象物デフィニションを受信し、かつ、前記対象物デフィニションに基づいて、前記ポリマーダイ、前記ポリファイバーカッター、及び前記位置決めシステムを動作させ、複数のポリファイバーストランドを押し出し、切断し、堆積させて前記構造を作製するように更に構成され、前記構造は、前記樹脂注入システムによる液体樹脂の注入及び硬化時に前記製造部品を製造するように構成された一組の間隙空間を画定する、積層造形システム。
(2) 前記位置決めシステムは、前記構造上の方向性が1つ以上変化している、連続したポリファイバーストランドを堆積させるように動作可能である、実施態様1に記載の積層造形システム。
(3) 前記樹脂注入システムが、真空樹脂注入システム及び加圧樹脂注入システムからなる群より選択される種類のものである、実施態様1に記載の積層造形システム。
(4) 前記ファイバーストランドが、炭素、ガラス、及びアラミドからなる群より選択される種類のものである、実施態様1に記載の積層造形システム。
(5) 前記製造部品が医療用装置の構成要素である、実施態様1に記載の積層造形システム。
【0066】
(6) 前記医療用装置が、インプラント、ハンドル、外科用材料、及びグリップからなる群より選択される種類のものである、実施態様5に記載の積層造形システム。
(7) 前記構造の前記複数のポリファイバーストランドが、前記製造部品の強度を向上させるように配置されている、実施態様1に記載の積層造形システム。
(8) 前記構造が、一組の垂直に配置されたポリファイバーストランド層と、一組の水平に配置されたポリファイバーストランド層とを更に備える、実施態様1に記載の積層造形システム。
(9) 前記制御システムは更に、
(i)剛性プロファイルを受信し、前記剛性プロファイルに基づいて、前記構造の作製中に堆積される2つ以上のストランド種類を決定し、
(ii)前記構造上に、前記2つ以上のストランド種類を押し出し、切断し、堆積させるように構成され、
前記製造部品は、前記2つ以上のストランド種類の配置により、1箇所以上で優先的に屈曲可能である、実施態様1に記載の積層造形システム。
(10) 前記2つ以上のストランド種類が、剛性ストランド及び可撓性ストランドを含む、実施態様9に記載の積層造形システム。
【0067】
(11) 一組の剛性ストランドが、前記製造部品の外側の角に配置され、一組の可撓性ポリマーストランドが、前記製造部品の中央に配置され、前記製造部品が、力を受け、前記中央で優先的に屈曲するように構成されている、実施態様10に記載の積層造形システム。
(12) 前記2つ以上のストランド種類が、略剛性のポリファイバーストランド及び可撓性ポリマーストランドを含む、実施態様9に記載の積層造形システム。
(13) 前記制御システムは更に、
(i)剛性プロファイルを受信し、前記剛性プロファイルに基づいて、前記構造において、樹脂不透過性壁部によって分離されなければならない2つ以上の区画を決定し、
(ii)前記複数のポリファイバーストランドを押し出し、切断し、堆積させることにより、前記樹脂不透過性壁部を作製するように構成され、
前記構造への液体樹脂の注入時、前記構造の第1の区画には第1の液体樹脂を注入し、前記構造の第2の区画には前記第1の液体樹脂が注入されず、前記第1の区画及び前記第2の区画は、前記樹脂不透過性壁部で分離されている、実施態様1に記載の積層造形システム。
(14) 前記製造部品の製造時、前記構造の前記第2の区画に、第2の液体樹脂が注入されるように構成されている、実施態様13に記載の積層造形システム。
(15) 前記製造部品の製造時、前記構造の前記第2の区間が、中空のままであるように構成されている、実施態様13に記載の積層造形システム。
【0068】
(16) 積層造形部品を製造する方法であって、
(a)積層造形システムを使用して製造部品の構造を製造する工程であって、前記構造は、一組の間隙空間を含む、工程と、
(b)前記積層造形システムを介して、複数のポリファイバーストランドを前記構造上に配置する工程であって、前記複数のポリファイバーストランドを配置する工程は、
(i)ポリファイバーストランドを押し出す工程、
(ii)前記ポリファイバーストランドを切断する工程、及び
(iii)前記構造上に前記ポリファイバーストランドを堆積させる工程、を含む、工程と、
(c)樹脂注入システム内に前記構造を配置し、樹脂注入プロセスを行うことにより、前記製造部品を製造する工程であって、前記樹脂注入システムは、前記一組の間隙空間に液体樹脂を充填する、工程と、
(d)前記製造部品を硬化させる工程と、を含む、積層造形部品を製造する方法。
(17) 前記樹脂注入プロセスは、真空樹脂注入プロセスであり、前記製造部品は、鋳型を用いずに製造される、実施態様16に記載の積層造形部品を製造する方法。
(18) 前記積層造形システムは、複数のポリマーストランドを押し出し、切断し、堆積させ、前記製造部品は、前記複数のポリファイバーストランド及び前記複数のポリマーストランドを備え、前記製造部品は、前記複数のポリマーストランドの配置に基づき、1つ以上の方向に優先的に屈曲する、実施態様16に記載の積層造形部品を製造する方法。
(19) 前記構造は、透過性区画及び不透過性区画を備え、前記樹脂注入プロセスを実施することにより、前記透過性区画に前記液体樹脂を充填させる一方で、前記不透過性区画には前記液体樹脂を充填させず、前記製造部品は、前記不透過性区画の位置に基づき、1つ以上の方向に優先的に屈曲する、実施態様16に記載の積層造形部品を製造する方法。
(20) 積層造形システムであって、
(a)ポリマーダイであって、
(i)ファイバー入力部、
(ii)加熱されたポリマー入力部、及び
(iii)ポリファイバー出力部、を備え、
前記ポリマーダイが、前記ファイバー入力部からファイバーストランドを受容し、前記加熱されたポリマー入力部からのポリマーで前記ファイバーストランドをコーティングし、前記ポリファイバー出力部からポリファイバーストランドを押し出すように動作可能である、ポリマーダイと、
(b)前記ポリファイバー出力部に配置され、前記ポリファイバーストランドを切断するように動作可能なポリファイバーカッターと、
(c)前記ポリファイバー出力部を位置決め及び配向するように動作可能な位置決めシステムと、
(d)制御システムであって、
(i)プロセッサ、及び
(ii)メモリ、を備え、
前記制御システムが、前記ポリマーダイ、前記ポリファイバーカッター、及び前記位置決めシステムの動作を制御するように構成されている、制御システムと、
(e)液体樹脂で対象物の間隙空間を充填するように動作可能な樹脂注入システムと、を備え、
前記制御システムが、医療用装置の構造を定義する一組の座標で構成された対象物デフィニションを受信し、かつ、前記対象物デフィニションに基づいて、前記ポリマーダイ、前記ポリファイバーカッター、及び前記位置決めシステムを動作させ、複数のポリファイバーストランド及び複数のポリマーストランドを押し出し、切断し、堆積させて前記構造を作製するように構成され、前記複数のポリファイバーストランドは、方向性が1つ以上変化している、連続したポリファイバーストランドを含み、前記構造は、前記樹脂注入システムによる液体樹脂の注入及び硬化時、前記医療用装置を製造するように構成された一組の間隙空間を含み、前記医療用装置は、前記複数のポリマーストランドの位置に基づき、1つ以上の方向に優先的に屈曲するように構成されている、積層造形システム。