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特許7119076NK細胞培養用組成物、及びそれを利用してNK細胞を培養する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-05
(45)【発行日】2022-08-16
(54)【発明の名称】NK細胞培養用組成物、及びそれを利用してNK細胞を培養する方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/0783 20100101AFI20220808BHJP
   C07K 14/62 20060101ALI20220808BHJP
   C07K 14/79 20060101ALI20220808BHJP
   C07K 14/54 20060101ALI20220808BHJP
【FI】
C12N5/0783
C07K14/62
C07K14/79
C07K14/54
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020513912
(86)(22)【出願日】2018-11-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-04
(86)【国際出願番号】 KR2018014294
(87)【国際公開番号】W WO2019103436
(87)【国際公開日】2019-05-31
【審査請求日】2020-05-14
(31)【優先権主張番号】10-2017-0158577
(32)【優先日】2017-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518018056
【氏名又は名称】スンクワン メディカル ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アン,ヘ ジュン
(72)【発明者】
【氏名】チョイ,ヨン ホ
(72)【発明者】
【氏名】リム,ウン ジン
(72)【発明者】
【氏名】ムン,ヨン ファ
(72)【発明者】
【氏名】キム,セ ファ
【審査官】平林 由利子
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-514057(JP,A)
【文献】特開2017-012010(JP,A)
【文献】特表2007-538108(JP,A)
【文献】FRIAS A. M. et al.,Experimental Hematology,36 (2008),p.61-68
【文献】MARTINEZ A. P. et al.,Clinical grade activated natural killer products for adoptive immunotherapy against high-risk malignancies.,Haematologica,Vol.100 Suppl.1 (2015),p.289-290
【文献】ZIBLAT A. et al.,Eur. J. Immunol.,45 (2015),p.192-202
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00-7/08
C07K 1/00-19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
IL-15、IL-18、及びIL-27を含むナチュラルキラー細胞(NK細胞)培養用組成物であって、前記培養は、NK細胞の増殖のためである、組成物。
【請求項2】
インスリン-トランスフェリン-セレニウム(ITS)をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記培養は、NK細胞の大量増殖のためであることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
細胞培養培地において、前記IL-15の濃度は、0.1ng/mlないし1,000ng/ml、IL-18の濃度は、0.25ng/mlないし2,500ng/ml、及びIL-27の濃度は、0.20ng/mlないし2,000ng/mlであることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記NK細胞は、CD3-及びCD56+の表面抗原特性を有することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
ナチュラルキラー細胞(NK細胞)を、IL-15、IL-18及びIL-27を含NK細胞培養用組成物を含む培地で培養する工程を含む、NK細胞を培養して増殖させる方法。
【請求項7】
前記培養する工程前に、
末梢血から末梢血単核細胞(PBMC)を得る工程と、
得られたPBMCからNK細胞を分離する工程と、
をさらに含むことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記培養は、7日間ないし30日間行われることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記組成物が、インスリン-トランスフェリン-セレニウム(ITS)をさらに含む、請求項6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年11月24日に出願された大韓民国特許出願第10-2017-0158577号を優先権として主張し、前記明細書全体は、本出願の参考文献である。
【0002】
本発明は、NK細胞培養用組成物、及びそれを利用してNK細胞を培養する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
現在、癌の一般的な治療法は、外科的手術(surgery)、放射線療法(radiation therapy)、抗癌化学療法(chemotherapy)などがあり、癌の種類及び病期により、単独あるいは複合的に使用されているが、患者にはなはだしい副作用と苦痛とを伴わせている。完璧な癌治療法は、正常細胞は、損傷させず、癌細胞だけ選んでなくす方法であるだろう。しかし、既存治療法は、正常細胞にある程度の損傷を及ぼす。最近になって注目されている癌免疫治療法(cancer immunotherapy)は、人体固有の免疫システムを活用し、正常細胞の損傷を最小化させ、癌細胞をさらに特異的に除去する治療法であり、さまざまな詳細分野(抗体治療法、免疫細胞治療法、ウイルス免疫治療法、ナノ技術免疫治療法など)の研究が活発に進められている。そのうち、免疫細胞治療は、患者の血液から得られたリンパ球(lymphocyte)のうち、ナチュラルキラー細胞(NK(natural killer) cell)、ナチュラルキラーT細胞(natural killer T cell)、T細胞、B細胞、樹状細胞(dendritic cell)のような細胞数を増やし、体外で(in vitro)機能を強化させ、それをさらに患者の体に戻すことにより、癌を治療する方法である。そのような免疫細胞を利用した治療法は、免疫反応調節治療に好ましい効果を示し、毒性及び安全性の面からすぐれると評価されている。そのうち、NK細胞は、先天免疫(innate immunity)を担当する重要な細胞であり、T細胞と異なり、肝臓(liver)、骨髄(bone marrow)で成熟される。特に、ウイルスに感染された細胞や腫瘍細胞(tumorcells)のような非正常細胞を自ら識別して死滅させる機能を有する。これまでの10年余りの間、患者の免疫システムを利用した腫瘍免疫治療が続けて発展し、それを利用した「細胞治療剤(cell therapy product)」も商業化されている。該細胞治療剤は、自家(autologous)、同種(allogeneic)あるいは異種(xenogeneic)の細胞を体外で増殖、選別する方法を介して、細胞の生物学的特性を変化させる一連の行為を介し、治療、診断、予防の目的に使用する医薬品と定義される(食品医薬安全処公示第2003-26号第2条)。
【0004】
癌のような難治性疾患の治療のための細胞治療剤として、免疫拒否反応を解消することができ、患者誂え型細胞治療を提供することができる、NK細胞を大量に増殖する方法、及び活性が強化されたNK細胞を培養する方法が要求される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一態様は、NK細胞培養用組成物を提供する。
【0006】
他の態様は、前記NK細胞培養用組成物を利用してNK細胞を培養する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様は、IL-15、IL-18、IL-27、又はそれらの組み合わせを含むNK細胞培養用組成物を提供する。
【0008】
前記培養用組成物は、ITS(インスリン-トランスフェリン-セレニウム;insulin-transferrin-selenium)をさらに含んでもよい。
【発明の効果】
【0009】
一態様によれば、末梢血単核細胞でNK細胞を培養するにおいて、NK細胞を、IL-15、IL-18及びIL-27を含むNK細胞培養用組成物を含む培地で培養し、大量に増殖させ、NK細胞の活性化を促進することができる。従って、それを利用する場合、癌細胞アポトーシス能又は殺傷能が促進され、癌の予防又は治療に効果的な養子免疫細胞治療剤として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】健康な正常人から分離されたPBMC及びNK細胞を計数した結果である。
図2A】健康な正常人から分離されたPBMC中のNK細胞を分離した直後(D0)及び培養21日後(D21)、NK細胞の表現型を分析したFACS結果である。
図2B】健康な正常人から分離されたPMBC、NK細胞を分離した直後(D0)及び培養21日後(D21)、CD3-CD56+であるNKの分布を分析した結果である。
図2C】健康な正常人から分離されたPBMC中のNK細胞を分離した直後(D0)及び培養21日後(D21)、NK細胞の純度を計算した結果である。
図3A】本発明のNK細胞培養用組成物において、NK細胞を、3日(Day 3)、7日(Day 7)、17日(Day 17)及び21日(Day 21)の間培養した結果を示した写真である。
図3B】本発明のNK細胞培養用組成物において、NK細胞を、3日(Day 3)、7日(Day 7)、17日(Day 17)及び21日(Day 21)の間培養したNK細胞の細胞数を示したグラフである。
図3C】サイトカインカクテルによる、0日目(D0)、3日目(D3)、13日目(D13)及び21日目(D21)における、NK細胞の増殖程度を示したグラフである。
図4】本発明のNK細胞培養用組成物がNK細胞の活性度(activity)に及ぼす影響を確認した結果である。
図5A】IL-2、IL-15及びIL-18(IL-15/18)、並びにIL-15、IL-18及びIL-27(IL-15/18/27)を含む培養液にITSを添加するか(+ITS)、あるいは添加せず(-ITS)、21日間培養したNK細胞の写真である。
図5B】0~5日培養には、6-ウェルプレートを使用し、5~12日培養には、T25フラスコを使用した後、培養21日にT75フラスコに細胞を移し、21日まで培養した結果、NK細胞の細胞数及び増殖結果のグラフである。
図5C図5Bのように培養するとき、細胞生存率を確認した結果である。
図6A】サイトカインIL-15,IL-18及びIL-27とITSとの混合培養液を利用したNK細胞培養時、NK細胞形態写真である。
図6B】サイトカインIL-15,IL-18及びIL-27とITSとの混合培養液を利用したNK細胞培養時、NK細胞の成長曲線及び増殖を示したグラフである。
図6C】サイトカインIL-15,IL-18及びIL-27とITSとの混合培養液を利用したNK細胞培養時、NK細胞の生存率を示したグラフである。
図7】本発明のNK細胞培養用組成物を添加して培養されたNK細胞の癌細胞に対する細胞毒性を確認した結果である。
図8】NK細胞培養時、7日目(D7)、14日目(D14)及び21日目(D21)に分泌されるIFN-γの程度を、ELISAで測定した結果を示したグラフである。
図9】本発明のNK細胞培養用組成物を添加して培養されたNK細胞の癌細胞に対する細胞毒性を確認した結果である。
図10】本発明のNK細胞培養用組成物を添加して培養されたNK細胞と共培養された癌細胞に対し、カスパーゼ-3(caspase-3)の活性、発現態様、及び発現レベルを確認した結果である。
図11】本発明のNK細胞培養用組成物を添加して培養されたNK細胞と共培養された癌細胞に対するカスパーゼ-3の発現レベル及び発現位置を確認したイメージである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
一態様は、IL-15、IL-18、IL-27、又はそれらの組み合わせを含むNK細胞培養用組成物を提供する。
【0012】
前記培養用組成物は、ITS(insulin-transferrin-selenium)をさらに含んでもよい。
【0013】
NK(natural killer)細胞は、リンパ球の一種である巨大顆粒型リンパ球(LGL:large granular lymphocytes)であり、感染されたウイルス、及び腫瘍細胞をなくす能力にすぐれ、ほとんどの正常細胞は、殺さない特性を有する。従って、NK細胞は、活性細胞毒性Tリンパ球が多量に生成される前、ウイルス感染あるいは腫瘍形成初期段階において、重要な役割を行う。例えば、NK細胞が標的細胞と接触する場合、いくつかの分子は、標的細胞の膜に孔を形成して細胞を溶解させ、他の分子は、標的細胞に入っていき、核DNAの断片化を増加させ、懐死(necrosis)、アポトーシス(apotosis;細胞死滅)又は細胞予定死(programmed cell death)を引き起こす。
【0014】
それにより、NK細胞は、特定ウイルスに感染された細胞と、癌細胞とを、先刺激なしに溶解させることができる。TCRの発現を介し、抗原特異的に認識する細胞毒性Tリンパ球と異なり、NK細胞は、抗原特異的受容体が欠如している。NK細胞は、正常細胞のMHCクラスIと結合する殺害細胞抑制受容体(KIR:killer cell immunoglobulin-like receptor)を発現する。殺害細胞抑制受容体は、MHCクラスIと結合すれば、特定転写因子の抑制を誘導する細胞内シグナルが生成される。その結果、NK細胞の活性化、標的細胞の分解及び破壊が抑制される。ウイルス感染細胞又は癌細胞は、それらの表面に、MHCクラスI分子が大きく低減している。従って、そのような細胞がNK細胞に出合えば、効果的に殺害細胞抑制受容体と結合することができないために、NK細胞媒介細胞毒性に露出されて溶解される。
【0015】
前記NK細胞は、例えば、哺乳動物、ヒト、猿、豚、馬、牛、羊、犬、猫、マウス又は兎などに由来したものでもある。前記NK細胞は、正常人又は癌患者から得られたものでもある。前記NK細胞は、血液、末梢血単核細胞(PBMC:peripheral blood mononuclear cell)から分離されたものでもある。血液を分離する方法、そこからPBMCを分離する方法、そこからNK細胞を分離する方法は、公知された方法によって遂行されるものでもある。
【0016】
前記組成物は、IL-15、IL-18、IL-27、又はそれらの組み合わせを含んでもよいが、IL-15は、NK細胞で発現されるIL-15受容体を介し、NK細胞の成長及び分化を直接増進させるものでもあり、IL-18は、NK細胞のインターフェロンガンマ生産を誘導し、細胞毒性を増進させるものでもあり、IL-27は、免疫反応を調節し、NK細胞の生存率を上昇させ、インターフェロンガンマの発現を増進させるものでもある。
【0017】
前記組成物は、ITSをさらに含んでもよいが、ITSは、前述のIL-15、IL-18、IL-27、又はそれらの組み合わせを含むNK細胞培養用組成物のNK細胞増殖能を向上させることができる。
【0018】
NK細胞培養培地において、前記IL-15の濃度は、約0.1ng/mlないし約1,000ng/ml、約0.2ng/mlないし約500ng/ml、約0.5ng/mlないし約200ng/ml、約1.0ng/mlないし約100ng/ml、約2.0ng/mlないし約50ng/ml、又は約5.0ng/mlないし約20ng/mlでもあり、IL-18の濃度は、約0.25ng/mlないし約2,500ng/ml、約0.5ng/mlないし約1,250ng/ml、約1.25ng/mlないし約500ng/ml、約2.5ng/mlないし約250ng/ml、約5.0ng/mlないし約125ng/ml、約12.5ng/mlないし約50ng/mlでもあり、IL-27の濃度は、約0.20ng/mlないし約2,000ng/ml、約0.40ng/mlないし約1,000ng/ml、約1.0ng/mlないし約400ng/ml、約2.0ng/mlないし約200ng/ml、約4.0ng/mlないし約100ng/ml、約10.0ng/mlないし約40ng/mlでもある。
【0019】
前記組成物は、IL-7、IL-21、又はそれらの組み合わせをさらに含むものでもある。IL-21は、骨髄からのNK細胞前駆体の成熟を誘導し、特に、NK細胞のサイトカイン生成能及びアポトーシス能のようなエフェクター機能(effector functions)を増大させるものでもある。IL-7は、NK細胞前駆体の成熟を誘導し、T細胞の増殖を調節するものでもある。ただし、IL-7、IL-21、又はそれらの組み合わせを含まないとしても、NK細胞の増殖又は活性化を促進させることができる。
【0020】
前記IL-7の濃度は、約0.05ng/mlないし約500ng/ml、約0.10ng/mlないし約250ng/ml、約0.25ng/mlないし約100ng/ml、約0.5ng/mlないし約50ng/ml、約1.0ng/mlないし約25ng/ml、約2.5ng/mlないし約10ng/mlでもあり、IL-21の濃度は、約0.05ないし約500ng/ml、約0.10ないし約250ng/ml、約0.25ないし約100ng/ml、約0.50ないし約50ng/ml、約2.5ないし約10ng/mlでもある。
【0021】
前記培地は、体外で(in vitro)、細胞の成長及び生存を支持させる物質を意味する。前記培地は、細胞培養に利用されることができるものであるならば、特別に制限されるものではなく、例えば、DMEM(Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium)、MEM(Minimal Essential Medium)、BME(Basal Medium Eagle)、RPMI 1640、F-10、F-12、DMEM/F12、MEM-α(Minimal Essential Medium-α)、G-MEM(Glasgow’s Minimal Essential Medium)、IMDM(Iscove’s Modified Dulbecco’s Medium)、MacCoy’s 5A培地、AmnioMax完全(complete)培地、AminoMaxII完全(complete)培地、EBM(Endothelial Basal Medium)培地及びChang’s Medium培地からなる群から選択された1以上を含むものでもある。
【0022】
前記NK細胞は、CD3-及びCD56+の表面抗原特性を有するものでもある。
【0023】
前記培養は、NK細胞の増殖又は活性化のためのものでもある。前記NK細胞の増殖は、細胞数の増加を意味するが、成長と混用されもする。前記NK細胞の活性化は、前述のNK細胞が本来の機能を遂行することを意味し、CD226+、CD69+、CD14-、CD19-、CD16+、又はそれらの組み合わせの表面抗原特性を有するものでもある。
【0024】
前記表面抗原特性は、免疫学的特性と同一意味であり、流細胞分析又は免疫細胞化学のような技法を使用し、細胞表面標識(例えば、組織特異的又は細胞標識特異的な抗体で細胞を染色する)、又は光学顕微鏡若しくは共焦点顕微鏡を使用し、細胞表面標識を観察したり、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR:polymerase chain reaction)、又は遺伝子発現プロファイルのような当該分野に広く公知された技法を使用し、遺伝子発現上の変化を測定したりすることによっても確認される。
【0025】
前述の「陽性又は+」は、細胞標識(マーカー)と係わり、その標識が基準になる他の細胞と比較したとき、さらに多量、又はさらに高濃度で存在することを意味するものでもある。細胞は、ある標識が細胞の内部又は表面に存在するために、その標識を利用し、その細胞を1以上の他の細胞類型と区別することができれば、その標識に対して陽性にもなる。また、細胞が背景値よりさらに大きい値で、シグナル、例えば、細胞測定装置のシグナルを出すことができるほどの量にその標識を有しているということを意味するものでもある。例えば、細胞を、CD56に特異的な抗体で検出可能に標識することができ、その抗体からのシグナルが、対照群(例えば、背景値)より検出可能にさらに大きければ、その細胞は、「CD56に対して陽性」又は「CD56+」と示すことができる。用語「陰性又は-」は、特定細胞表面標識に特異的な抗体を使用しても、背景値に比較し、その標識を検出することができないということを意味するものでもある。例えば、CD3に特異的な抗体で細胞を検出することができるように標識することができなければ、その細胞は、「CD3に対して陰性」又は「CD3-」で示すことができる。
【0026】
他の態様は、NK細胞を、IL-15、IL-18及びIL-27を含むNK細胞培養用組成物を含む培地で培養する工程を含むNK細胞を培養する方法を提供する。
【0027】
前記培養する方法は、NK細胞を大量増殖する方法、又はNK細胞を活性化させる方法でもある。
【0028】
前記方法は、前記培養する工程前、末梢血から末梢血単核細胞(PBMC)を得る工程と、得られたPBMCからNK細胞を分離する工程と、をさらに含むものでもある。
【0029】
前記工程は、CD3+の表面抗原特性を有する細胞を除去する工程をさらに含むものでもある。
【0030】
血液を分離する方法、そこからPBMCを分離する方法、そこからNK細胞を分離する方法、及び特定表面抗原特性を有する細胞を分離又は除去する方法は、特定抗体を利用するというような公知された方法によっても遂行される。
【0031】
前記方法によれば、NK細胞を長期間培養したり、あるいは数回継代培養する場合にも、NK細胞の増殖能が、他のサイトカインを投与して培養した群に比べてすぐれ、NK細胞を大量に得ることができる。
【0032】
前記方法によれば、前記組成物を投与して培養されたNK細胞は、他のサイトカインを投与して培養した群に比べ、IFN-ガンマ(interferon-gamma)の分泌が増加されたものでもある。また、前記組成物を投与して培養されたNK細胞は、他のサイトカインを投与して培養した群に比べて、癌細胞に対する細胞毒性が増大したものでもあり、癌細胞のアポトーシスを促進させるものでもある。
【0033】
前記培養は、約7日ないし約2ヵ月、7日ないし約30日、約14日ないし約30日、約15日ないし約27日、約16日ないし約26日、約17日ないし約25日、約18日ないし約24日、約19日ないし約23日、又は約20日ないし約22日の間遂行されるものでもある。
他の態様は、前記NK細胞を培養する方法によって製造されたNK細胞を提供する。
他の態様は、前記NK細胞を培養する方法によって製造されたNK細胞を含む癌予防用又は癌治療用の組成物を提供する。
【0034】
他の態様は、癌予防用又は癌治療用の薬学的組成物又は製剤の製造に使用するための前記NK細胞を培養する方法によって製造されたNK細胞の用途を提供する。
【0035】
他の態様は、疾病、例えば、癌の予防用医薬又は治療用医薬の製造に使用するための前記NK細胞を培養する方法によって製造されたNK細胞の用途を提供する。前記癌は、固形癌、肺癌、肝臓癌、乳癌、子宮癌、血液癌などでもあるが、それらに制限されるものではない。癌患者において、そのようなNK細胞が肺癌(Carrega P, et al., Cancer, 112, 863-875, 2008)、肝臓癌(Jinushi M, et al., J Hepatol., 43, 1013-1020, 2005)、乳癌(Bauernhofer T, et al., Eur J Immunol., 33, 119-124, 2003)、子宮癌(Mocchegiani E., et al., Br j Cancer., 79, 244-250, 1999)、血液癌(Tajima F., et al, Lekemia, 10, 478-482, 1996)などの疾患発生と深い関連性があると報告されている。
【0036】
前記組成物は、薬学的に許容可能な担体を含むものでもある。前記組成物において、「許容可能な担体」は、活性成分の適用の一助とするために、活性成分と組み合わされて使用される物質、一般的には、不活性物質を示す。前記担体は、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、希釈剤、又はそれらの組み合わせでもある。前記賦形剤は、微結晶セルロース、乳糖、低置換度ヒドロキシセルロース、又はそれらの組み合わせでもある。前記崩壊剤は、澱粉グリコール酸ナトリウム、無水リン酸一水素カルシウム、又はそれらの組み合わせでもある。前記結合剤は、ポリビニルピロリドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、又はそれらの組み合わせでもある。前記滑沢剤は、ステアリン酸マグネシウム、二酸化ケイ素、タルク、又はそれらの組み合わせでもある。
【0037】
他の態様は、前記NK細胞を培養する方法によって製造されたNK細胞の治療学的又は薬剤学的な有効量を個体に投与する工程を含む癌を治療する方法を提供する。
【0038】
前記「投与」は、ある適切な方法で個体に所定物質を導入することを意味し、物質の投与経路は、目的組織に逹することができるある一般的な経路を介しても投与される。腹腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、経口投与、局所投与、鼻内投与、肺内投与又は直腸内投与でもあるが、それらに制限されるものではない。また、該投与は、標的細胞に移動することができる任意の装置によっても遂行される。投与量は、癌の類型、投与経路、患者の年齢及び性別、並びに疾病の程度によっても適切に選択されるが、平均的な成人の場合、約1x10ないし約1x1011細胞で投与することができる。
【0039】
前記「治療学的有効量」は、治療を必要とする個体又は細胞に投与される場合、治療効果を示すに十分な量を意味する。「治療」は、個体、例えば、ヒトを含んだ哺乳動物において、疾患又は医学的症状を治療することを意味し、それは、次を含む:(a)疾患又は医学的症状の発生を予防、すなわち、患者の予防的治療、(b)疾患又は医学的症状の緩和、すなわち、患者において、疾患又は医学的症状の除去又は回復を引き起こし、(c)疾患又は医学的症状の抑剤、すなわち、個体において、疾患又は医学的症状の進行を遅延させたり停止させたりすること、又は(d)個体において、疾患又は医学的症状を軽減させること。
本発明は以下の態様も提供する。
[1] IL-15、IL-18、IL-27、又はそれらの組み合わせを含むNK(ナチュラルキラー)細胞培養用組成物。
[2] ITS(インスリン-トランスフェリン-セレニウム)をさらに含むことを特徴とする[1]に記載の組成物。
[3] 前記培養は、NK細胞の増殖又は活性化のためであることを特徴とする[1]に記載の組成物。
[4] 細胞培養培地において、前記IL-15の濃度は、0.1ng/mlないし1,000ng/ml、IL-18の濃度は、0.25ng/mlないし2,500ng/ml、及びIL-27の濃度は、0.20ng/mlないし2,000ng/mlであることを特徴とする[1]に記載の組成物。
[5] 前記NK細胞は、CD3-及びCD56+の表面抗原特性を有することを特徴とする[1]に記載の組成物。
[6] NK(ナチュラルキラー)細胞を、IL-15、IL-18及びIL-27を含むNK細胞培養用組成物を含む培地で培養する工程を含むNK細胞を培養する方法。
[7] 前記培養する工程前に、
末梢血から末梢血単核細胞(PBMC)を得る工程と、
得られたPBMCからNK細胞を分離する工程と、
をさらに含むことを特徴とする[6]に記載の方法。
[8] 前記培養は、7日間ないし30日間行われることを特徴とする[6]に記載の方法。
[9] [6]に記載の方法によって製造されたNK細胞。
[10] [6]に記載の方法によって製造されたNK細胞を含む癌予防用又は癌治療用の組成物。
[11] 癌予防用又は癌治療用の医薬製造に使用するための[6]に記載の方法によって製造されたNK細胞の用途。
[12] 有効量の、[6]に記載の方法によって製造されたNK細胞を投与する工程を含む、癌を予防又は治療する方法。
【実施例
【0040】
以下、本発明について、実施例を介してさらに詳細に説明する。しかし、それら実施例は、本発明について例示的に説明するためのものであり、本発明の範囲は、それら実施例に限定されるものではない。
【0041】
実施例1:NK細胞分離用及びNK細胞培養用の組成物を利用してNK細胞を培養した後の、NK細胞の増殖能、NK細胞の活性度、及び癌細胞に対する毒性活性の確認
【0042】
1.NK細胞分離用及びNK細胞培養用の組成物を利用したNK細胞培養
(1.1)研究対象選定、血液及びPBMCの分離、NK細胞分離
満20歳ないし65歳の健康な男性及び女性であった、本研究のための採血に同意した対象者を対象にし、問診、体重、バイタルサインを測定し、研究対象適合者を選定した。適合者は、下記のような基準で選定した。
1)問診を介して、以下の除外条件がない者
-高血圧などの心血管系疾患、腎臓疾患、糖尿病、癌診断を受けた過去歴がある者
-宗教的な理由などで輸血ができない者
-妊婦
2)体重は、男性50kg以上、及び女性45kg以上である者
3)バイタルサインは、下記の条件を満足する者
-血圧(mmHg):収縮期90~179、弛緩期100未満
-体温(℃):37.5℃以下
-脈拍(回/分):50~100
【0043】
研究対象適合者に選定された対象に対し、訪問当日、1回総100mlを採血し、ヘパリン(heparin)が入っているチューブに収集した。
【0044】
採血された血液において、Ficoll-Paque(GE Healthcare,17-1440-02)を利用し、次のような方法で、末梢血単核細胞(PBMC)を分離した。採血された全血を、リン酸塩緩衝食塩水(PBS:phosphate buffered saline)(pH7.4、Thermo Fisher Scientific)と1:1に希釈し、Ficoll上層に、希釈された血液を注意深く添加した。次に、2,500rpmで22分間、25℃で遠心分離し、PBMCを分離した。分離されたPBMCをPBSで洗浄した。その後、NK細胞分離前まで、PBMC状態で保管した。また、分離過程から出る血漿(plasma)を収集して共に保管した。
【0045】
分離されたPBMCにおいて、NK細胞分離キット(NK Cell isolation kit,Miltenyi Biotec,130-092-657)及びCD3+磁気ビーズ(Miltenyi Biotec)を利用し、次のような方法でNK細胞を分離し、CD3+細胞を除去した。分離されたPBMCを、1x10個の細胞当たり40μlのMACSランニングバッファー(MACSランニングバッファー、PBS、2mM EDTA、0.5% BSA)を添加し、PBMC細胞ペレットを崩した後、1x10個の細胞当たり20μlのCD3+磁気ビーズを添加し、4℃で10分間反応させた。次に、MACSバッファーで洗浄した後、MACS細胞分離器(Miltenyi Biotec)を利用し、CD3-CD56+のNK細胞を回収した。
【0046】
図1及び表1は、健康な正常人から分離されたPBMC、及びNK細胞を計数した結果である。図1は、健康な正常人から分離されたPBMCを計数した結果(PBMC)、及び健康な正常人から分離されたNK細胞を計数した結果(NK)である。図1及び表1に示されているように、血液中のPBMCにおいて、CD3-CD56+ NK細胞は、平均約8~20%ほど分布することが観察された。性別による違いは観察されず、年齢によるNK細胞の統計的に有意な増加あるいは減少は、観察されていない。
【0047】
【表1】
【0048】
次に、分離されたPBMC中のNK細胞、及び回収されたNK細胞が、CD3-CD56+の特性を有することを、FACS(Fluorescence-activated cell sorting(蛍光標識細胞選別)、BD FACSCalibur)を利用して確認した。
【0049】
図2は、健康な正常人から分離されたPBMC中のNK細胞、及び回収されたNK細胞の表現型を分析したFACS結果である。図2Aは、NK細胞を分離した直後(D0)及び培養21日後(D21)、NK細胞の表現型を分析した結果である。図2Bは、PMBC、NK細胞を分離した直後(D0)及び培養21日後(D21)、CD3-CD56+であるNKの分布を分析した結果である。
【0050】
図2を参照すれば、健康な正常人(対象#8)から回収されたNK細胞(CD3-CD56+)は、95%以上の純度を有し、T細胞、B細胞及び単核球(monocyte)などは、約1ないし2%に分布した。培養21日後(D21)には、NK細胞は、98%以上の純度を有する。
【0051】
(1.2)NK細胞培養用組成物を利用したNK細胞培養
(1)で得られたNK細胞を、1x10細胞/ml濃度で、12又は24-ウェルのティッシュ培養プレート(tissue culture plate)の各ウェルに入れた後、CellGro(R)無血清培地(serum-free medium)(CellGenix、米国)、10%ヒト血清(human serum)(Sigma Aldrich、米国)、10,000U/mLペニシリン/ストレプトマイシン(Pen/Strep)(Gibco/Life Technologies,Carlsbad,CA)、サイトカイン(IL-15、IL-27、1~100ng/ml;Peperotech,Inc.NJ、米国;IL-18、1~100ng/ml;R&D Systems Inc.,MN、米国)、ITS(insulin-transferrin-selenium-G Supplement 100X,GibcoTM)を添加し、37℃、5%のCO恒温器で21日間培養した。
【0052】
具体的には、サイトカイン混合処理群4セット、混合処理群1-1:IL-7(5ng/ml)、IL-15(10ng/ml)、IL-18(25ng/ml)、IL-21(5ng/ml)及びIL-27(20ng/ml)、混合処理群1-2:IL-15(10ng/ml)、IL-18(25ng/ml)、IL-21(5ng/ml)及びIL-27(20ng/ml)、及び混合処理群1-3:IL-15(10ng/ml)、IL-18(25ng/ml)及びIL-27(20ng/ml)、混合処理群1-4:IL-15(10ng/ml)及びIL-18(25ng/ml)のそれぞれを新たな培地に混合させた後、培地を交換する時期である2ないし3日に1回ずつ、培養中のNK細胞に添加して培養した。サイトカインを除き、培地の他の組成は、前述のところと同一である。
【0053】
図2Cは、NK細胞を分離した直後(D0)及び培養21日後(D21)における、NK細胞の純度を分析した結果である。図2Cによれば、健康な正常人(対象#8)から回収されたNK細胞は、混合処理群1-3のNK細胞培養用組成物を添加して培養された後にも、約95%以上の純度を有するということが分かる。
【0054】
2.NK細胞培養用組成物を添加し、NK細胞培養後NK細胞の増殖能及びNK細胞の活性度の確認
(2.1)NK細胞培養用組成物を添加し、NK細胞培養後のNK細胞の増殖能確認
(1.2)のように培養している間、増殖されたNK細胞の数は、初期6-ウェル組織培養プレートに、1x10~1x10/mlのNK細胞培養を始まりに、2~3日間隔で、T25、T75、そして最終的にBAG(NIPRO cell culture bags,A-1000NL,A-350NL,Funakoshi Co.,Ltd.)を利用して大量培養した。生存率は、増殖されたNK細胞数をトリパンブルー(trypan blue)染色剤(Thermo Fisher Scientific、米国)を利用して染色した後、血球計算板(hemocytometer)を利用して測定した。
【0055】
図3は、本発明のNK細胞培養用組成物が、NK細胞の増殖及び生存率(viability)に及ぼす影響を確認した結果である。図3Aは、本発明のNK細胞培養用組成物において、NK細胞を、3日(Day 3)、7日(Day 7)、17日(Day 17)及び21日(Day 21)の間培養した結果を示した写真である。図3Aに示されているように、本発明のNK細胞培養用組成物において、混合処理群1-3をNK細胞に加えて培養した場合(刺激:stimulated)、一次(primary)のNK細胞は、クラスタを形成しながら持続的に成長し、培養する21日間、細胞の生存率が、平均約85ないし90%と高かった。図3Bは、NK細胞の細胞数を示したグラフである。図3Bに示されているように、健康な正常人(対象#12)のNK細胞は、培養前に比べ、混合処理群1-3をNK細胞に加えて培養した21日後、NK細胞の数が、約6x10から1.58x10と、約26倍増加した。また、健康な正常人(対象#2)のNK細胞は、細胞数が、混合処理群1-2を添加して培養した場合、約40倍、混合処理群1-3を添加して培養した場合、約53.3倍増加した。図3Cは、サイトカインカクテル(混合剤)により、0日目(D0)、3日目(D3)、13日目(D13)及び21日目(D21)において、NK細胞の増殖程度を示したグラフである。図3Cに示されているように、NK細胞の増殖した程度は、細胞数が、混合処理群1-3を添加し、21日間培養した場合、有意に高かった。正常人間の違いは、少しずつ観察された。
【0056】
(2.2)NK細胞培養用組成物を添加し、NK細胞培養後、NK細胞の活性度確認
(1.2)のように培養している間、NK細胞の活性度(activity)と受容体(receptor)の発現程度との差を確認した。
【0057】
NK細胞を培養する過程中、NK細胞を回収し、1x10のNK細胞をFACSチューブ(Falcon(R) 5mL Round Bottom Polystyrene Test Tube)に分注した。前記FACSチューブに、ターゲット因子(target gene)の抗体(antibody)を入れた後、30分間反応させた。その後、FACSバッファーを利用して洗浄し、蛍光標識細胞選別(FACS:fluorescence-activated cell sorting,BD FACSCaliburTM)を利用し、表現抗原特性を分析した。データ分析は、FlowJoプログラムを利用した。
【0058】
【表2】
【0059】
図4は、本発明のNK細胞培養用組成物が、NK細胞の活性度に及ぼす影響を確認した結果である。図4を参照すれば、NK細胞の活性受容体(activating receptor)のうち一つであるCD226の発現レベルは、培養前(D0)に比べ、混合処理群1-3を添加して培養した後(D21)、約12.3%から約95.7%に増加した。また、活性化の指標であるCD69の発現レベルは、培養前(D0)に比べ、混合処理群1-3を添加して培養した後(D21)、約3.3%から約91.4%に増加した。フィーダー(feeder)を使用せず、少数のサイトカインのみを使用することでも、多数のNK細胞を誘導増殖させることができるということが分かる。
【0060】
(2.3)ITS添加によるNK細胞の増殖効果確認
NK細胞を培養している間、ITSを添加し、NK細胞の増殖効果が増大するか否かということを確認した。IL-2、IL-15及びIL-18、並びにIL-15、IL-18及びIL-27をそれぞれ添加した3個の培養液に、ITS(insulin-transferrin-selenium-G Supplement 100X、GibcoTM)を追加したり、追加しなかったりして、21日間培養した。その培養結果を図5に示した。
【0061】
図5Aは、IL-2、IL-15及びIL-18(IL-15/18)、並びにIL-15、IL-18及びIL-27(IL-15/18/27)を含む培養液に、ITSを添加するか(+ITS)、あるいは添加せず(-ITS)、21日間培養したNK細胞の写真である。
【0062】
図5Aに示されているように、IL-2、IL-15及びIL-18、並びにIL-15、IL-18及びIL-27を含む培養液にITSを添加する場合、NK細胞の増殖がさらに活発であり、クラスタが良好に形成されたので、相乗効果が発生したということを確認した。
【0063】
図5Bは、0~5日培養には、6-ウェルプレートを使用し、5~12日培養には、T25フラスコを使用した後、培養21日にT75フラスコに細胞を移し、21日まで培養した結果、NK細胞の細胞数及び増殖結果のグラフである。
【0064】
図5Bに示されているように、NK細胞の増殖においては、ITSにより、NK細胞増殖の向上が観察された。IL-15/IL-18/IL-27のみ処理した場合、初期に比べ、13.76倍(2.064X10)の増加が観察された一方、IL-15/IL-18/IL-27とITSとを混合して培養した場合、27.88倍(4.1825X10)の増加が観察された。
【0065】
図5Cは、前述のように培養するとき、細胞生存率を確認した結果である。
【0066】
図5Cに示されているように、2つの細胞とも95%以上の生存率及びクラスタが観察された。 従って、ITSを使用しても、細胞の生存率には、影響を与えないということを確認した。
従って、ITSを追加して添加する場合、本発明による培養用組成物において、NK細胞増殖効果をさらに向上させることができるということを確認した。
【0067】
(2.4)培養バッグでのNK細胞培養確認
前述のところで確認したNK細胞の培養方法を、NK細胞の大量生産に適用することができるか否かということを確認した。具体的には、同一対象者からのNK細胞を利用し、初期0~7日に、IL-15/18/27を利用してNK細胞を活性化させた後、既存NK細胞培養液にITSを添加し、T25プレートで培養した。その後、7~12日に、いくつかのT25プレートに細胞を移して培養した。培養12~14日に、培養バッグに細胞を移し、21日まで培養した。
【0068】
図6は、培養バッグでNK細胞を培養した結果を示した写真である。
【0069】
図6Aは、サイトカインIL-15,IL-18及びIL-27とITSとの混合培養液を利用したNK細胞培養時、NK細胞形態写真である。
【0070】
図6Bは、サイトカインIL-15,IL-18及びIL-27とITSとの混合培養液を利用したNK細胞培養時、NK細胞の成長曲線及び増殖を示したグラフである。
【0071】
図6A及び図6Bに示されているように、プレートを利用した培養と同様に、培養バッグにおいても、NK細胞がクラスタを形成した。また、細胞成長も、2.84X10と、初期NK細胞数に比べ、31.53倍ほど増加することが観察され、21日間持続的に成長が観察されたことを確認した。
【0072】
図6Cは、サイトカインIL-15,IL-18及びIL-27とITSとの混合培養液を利用したNK細胞培養時、NK細胞の生存率を示したグラフである。
【0073】
図6Cに示されているように、98%以上の高い細胞生存率を示した。
【0074】
従って、本発明による培養用組成物を利用して培養する場合、プレートだけではなく、培養バッグにおいても、NK細胞の増殖効果が示されたので、前記培養用組成物は、大量生産時にも活用されうるということを確認した。
【0075】
3.NK細胞培養用組成物を利用したNK細胞の癌細胞に対する毒性活性確認
(3.1)NK細胞培養用組成物を添加して培養されたNK細胞の癌細胞に対する細胞毒性の確認1
(3.1.1)細胞毒性分析(cytotoxicity assay)
細胞毒性は、NK細胞に対する感受性が高く、NK細胞の活性測定に主に使用されているK562細胞(ヒト慢性骨髄性白血病細胞系統;human chronic myelogenous leukemia cell line)を対象に、PromegaのCytotTox-GloTM細胞毒性分析キットを利用し、細胞毒性分析を行った。それは、損傷された細胞膜から遊離された酵素を測定する方法であり、ルミノジェニックペプチド基質(luminogenic peptide substrate)(アラニル-アラニル-フェニルアラニル-アミノルシフェリン;alanyl-alanyl-phenylalanyl-aminoluciferin,AAF-Glo substrate)を測定することにより、死んだ細胞の酵素反応を測定することができる方法である。
【0076】
ポリ-D-リシン(poly-D-lysine)がコーティングされた96-ウェルプレートの各ウェルに、K562細胞を1x10細胞で分注し、細胞毒性を測定するNK92とNK細胞とを、0:1、1.25:1、2.5:1、5:1、10:1のE:T比率(ratio)で入れ、4時間反応させた。その後、50μLのCytotTox-GloTM細胞毒性分析試薬(cytotoxicity assay reagent)を入れ、常温で15分間反応させた後、ルミノメーター(luminometer)を使用し、死んだ細胞の酵素量を測定した。次に、50μLの溶解バッファー(lysis buffer)を添加し、15分間反応させ、全体細胞数を確認した後、全体細胞に対する死んだ細胞の比率を算出し、細胞毒性を分析した。そのとき、得られたデータは、Microsoft ExcelとGraphPad Prism 5.0とを利用して分析した。
【0077】
図7は、本発明のNK細胞培養用組成物を添加して培養されたNK細胞の癌細胞に対する細胞毒性を確認した結果である。図7を参照すれば、培養7日目(D7)、14日目(D14)及び21日目(D21)のいずれにもおいて、IL-2単独、IL-15単独、IL-15及びIL-18(IL-15/18)、IL-15及びIL-27(IL-15/27)、IL-18及びIL-27(IL-18/27)、並びにIL-15、IL-18及びIL-27(IL-15/18/27)を混合して培養した結果、サイトカイン単独を使用した場合に比べ、サイトカインを2種以上組み合わせてNK細胞を培養した場合、培養後、NK細胞毒性が顕著に上昇するということが観察された。特に、IL-15、IL-18、IL-27を混合して培養するとき、長期間(21日)のNK細胞培養過程中にも、細胞毒性程度が最も高く維持された。それは、NK-92細胞株との比較実験においても、細胞毒性測定値(RLU)が、NK-92に比べて2倍以上高いということを確認した。それを介して、IL-2,IL-15単独刺激より、IL-15、IL-18、IL-27の混合使用により、刺激されたNK細胞の癌細胞に対する細胞毒性は、さらに上昇するということを確認した。
【0078】
追加して、NK細胞が分泌するIFN-γの発現程度の差を測定し、細胞毒性を確認した。具体的には、NK細胞を培養する過程中、7日間隔で、培養中のNK細胞培養液を1mlずつ採取した。前記採取した培養液において、IFN-γの発現程度は、ELISA(R&D、MN、米国、酵素免疫分析法、enzyme-linked immunosorbent assay)技法を利用し、ELISA Microplate Reader機器を利用して結果を分析し、図8に示した。
【0079】
図8は、NK細胞培養時、7日目(D7)、14日目(D14)及び21日目(D21)に分泌されるIFN-γの程度を、ELISAで測定した結果を示したグラフである。
【0080】
図8に示されているように、IL-2単独、IL-15単独、IL-15及びIL-18(IL-15/18)、IL-15及びIL-27(IL-15/27)、並びにIL-15、IL-18及びIL-27(IL-15/18/27)をそれぞれ処理した場合、他のサイトカイン処理群に比べ、IL-15/18/27処理群において、NK細胞が分泌するIFN-γの発現レベルが高く観察された。
【0081】
従って、サイトカインを使用したNK細胞刺激が、血液に存在する免疫細胞を効果的に活性化させ、IFN-γを分泌させるということを示す。また、それは、NK細胞による細胞毒性結果と有意の相関関係があるので、NK細胞のIFN-γ分泌能を測定することがNK細胞の細胞毒性を代弁することができるということが分かる。
【0082】
(3.2.2)Calcein AM分析
ポリ-D-リシンがコーティングされた6-ウェルプレートの各ウェルに、Calcein AM(Thermo Fisher Scientific)で染色されたK562細胞を1x10細胞で分注し、細胞毒性を測定するNK92とNK細胞とを、0:1、1.25:1、2.5:1、5:1、10:1のE:T比率で入れ、21日間共培養した。その後、Calcein AM放出分析(release assay)を介して、K562細胞がNK細胞によって溶解(lysis)される程度を、蛍光顕微鏡(zeiss microscope)を利用して観察した。
【0083】
図9は、本発明のNK細胞培養用組成物を添加して培養されたNK細胞の癌細胞に対する細胞毒性を確認した結果である。緑色に染色された領域は、K562細胞を示す。図9に示されているように、NK細胞(エフェクター;effector)の比率が高いほど、生きているK562細胞の数が減少した。それは、NK細胞とK562細胞とが相互作用(interaction)することにより、K562細胞がアポトーシスすると推測される。
【0084】
(3.3)NK細胞培養用組成物を添加して培養されたNK細胞の癌細胞に対する細胞毒性の確認2
(3.3.1)カスパーゼ-3免疫ブロット
本発明のNK細胞培養用組成物を添加して培養されたNK細胞のインビトロ毒性を評価するために、卵巣癌細胞とNK細胞とを培養した後、卵巣癌細胞でのカスパーゼ-3(caspase-3)の活性レベル及び発現レベルを確認した。
【0085】
ポリ-D-リシンがコーティングされた6-ウェルプレートの各ウェルに、卵巣癌細胞(A2780、SKOV3)を1x10細胞で分注し、翌日、細胞毒性を測定するNK92細胞と本発明のNK細胞との1x10個を、前記卵巣癌細胞と3時間培養した後、培養液とNK細胞は、取り除き、残っている卵巣癌細胞のみを回収し、溶解バッファーを利用して細胞を溶解させた。細胞溶解物を95℃で10分間加熱した後、13,000rpmで20分間遠心分離し、蛋白質を分離した。得られた蛋白質を、SDS-PAGE(SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動;SDS-polyacrylamide gel electrophoresis)ゲルを利用して分離し、分離された蛋白質をPVDF(ポリビニリデンフルオリド;polyvinylidene fluoride)メンブレン(EMD Millipore,Billerica,MA、米国)に移動させた。前記PVDFメンブレンを、5%の脱脂乳(skim milk)でインキュベーションし、非特異的な抗体結合を遮断(blocking)した。次に、PVDFメンブレンを、一次抗体、抗カスパーゼ-3(anti-caspase-3)及び抗アクチン(anti-actin)それぞれと4℃で一晩反応させた。翌日、一次抗体が結合されたPVDFメンブレンを、ペルオキシダーゼ(peroxidase)が結合された二次抗体と常温で1時間反応させた。蛋白質バンドを増大された化学発光(ECL:enhanced chemiluminescence)キットシステム(EMD Millipore)を使用し、可視化して定量した。
【0086】
図10は、本発明のNK細胞培養用組成物を添加して培養されたNK細胞と共培養された癌細胞に対し、カスパーゼ-3の活性、発現態様、及び発現レベルを確認した結果である。カスパーゼ-3は、アポトーシスが進むにつれ、完全形態(whole form)が減少し、切断形態(cleaved form)が増加する。図10に示されているように、本発明のNK細胞培養用組成物を添加して培養されたNK細胞と共培養された癌細胞(対象#9)は、切断形態のカスパーゼ-3の蛋白質量が増加し、癌細胞に対する細胞毒性が有意に上昇したということが分かる。また、本発明のNK細胞培養用組成物を添加して培養されたNK細胞と共培養された癌細胞での切断形態のカスパーゼ-3の発現レベルは、NK92細胞と共培養された癌細胞でのカスパーゼ-3の発現レベルより、約5%ないし10%上昇した。
【0087】
(3.3.2)カスパーゼ-3免疫蛍光染色
次に、癌細胞内アポトーシス進行いかんを確認した。
【0088】
ポリ-D-リシンがコーティングされたチャンバースライド(chamber slide)に、卵巣癌細胞(A2780、SKOV3)を分注し、翌日、同数のNK92細胞と本発明のNK細胞とをそれぞれ前記卵巣癌細胞と3時間培養した後、培養液とNK細胞は、取り除き、残っている卵巣癌細胞に免疫蛍光染色(immunofluorescence)を行った。一次抗体としては、抗カスパーゼ-3と抗アクチンとを使用し、二次抗体としては、Alexa 488ヤギ抗ウサギ(goat anti-rabbit)とAlexa 546ヤギ抗マウス(goat anti-mouse)とを使用した。アクチンとDAPIは、対照群として使用した。染色後、スライドをマウンティングし、共焦点レーザー走査顕微鏡(confocal laser-scanning microscope)で観察した。
【0089】
図11は、本発明のNK細胞培養用組成物を添加して培養されたNK細胞と共培養された癌細胞でのカスパーゼ-3の発現レベル及び発現位置を確認したイメージである。
【0090】
図11に示されているように、本発明のNK細胞培養用組成物を添加して培養されたNK細胞と共培養された癌細胞に対し、カスパーゼ-3の活性度が、対照群に比べ、約50%以上高く、他の対照群であるNK92細胞と共培養された癌細胞に比べ、約10%以上高かった。
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9
図10
図11