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特許7119079超伝導電気カプラを備えた熱絶縁グランド面
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-05
(45)【発行日】2022-08-16
(54)【発明の名称】超伝導電気カプラを備えた熱絶縁グランド面
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/36 20060101AFI20220808BHJP
   H01L 39/22 20060101ALI20220808BHJP
   H01L 21/822 20060101ALI20220808BHJP
   H01L 27/04 20060101ALI20220808BHJP
   H01R 4/68 20060101ALI20220808BHJP
【FI】
H01L23/36 C
H01L39/22 K
H01L27/04 F
H01R4/68
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020517874
(86)(22)【出願日】2018-09-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-03
(86)【国際出願番号】 US2018050921
(87)【国際公開番号】W WO2019089139
(87)【国際公開日】2019-05-09
【審査請求日】2020-03-27
(31)【優先権主張番号】15/798,977
(32)【優先日】2017-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520128820
【氏名又は名称】ノースロップ グラマン システムズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ロニー、パトリック アラン
(72)【発明者】
【氏名】ハサウェイ、アーロン アシュリー
(72)【発明者】
【氏名】クイーン、ダニエル ロバート
(72)【発明者】
【氏名】プシビシュ、ジョン エックス.
(72)【発明者】
【氏名】ヤング、ロバート マイルズ
【審査官】綿引 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-032356(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/02 - 23/50
H01L 39/22
H01L 21/822
H01R 4/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
集積回路であって、
第1の動作温度要件を有する第1の回路セットに関連付けられた第1のグランド面と、
前記第1の動作温度要件よりも高い第2の動作温度要件を有する第2の回路セットに関連付けられ、前記第1のグランド面とは熱絶縁された第2のグランド面と、
前記第1のグランド面と前記第2のグランド面との熱絶縁を維持しつつ前記第1のグランド面と前記第2のグランド面とを電気的に結合する超伝導カプラと、
放熱層と、
前記第1のグランド面を前記放熱層に結合する第1の熱伝導ビアと、
前記第2のグランド面を前記放熱層に結合する第2の熱伝導ビアと、
を備え
前記第1の熱伝導ビアは、前記第2の熱伝導ビアよりも熱伝導材料の熱負荷に比例した適切な体積を有して前記第2の回路セットよりも小さい勾配で前記第1の回路セットから熱を除去する、集積回路。
【請求項2】
前記超伝導カプラは、前記第1のグランド面を前記第2のグランド面に各々結合する1つまたは複数の超伝導接続ラインを含む、請求項1に記載の集積回路。
【請求項3】
前記超伝導カプラは、良好な電気的DC結合を可能にしつつ前記第1の回路セットと前記第2の回路セットとの間の周波数の伝送を阻止するRF誘導チョークを含む、請求項1に記載の集積回路。
【請求項4】
前記第1のグランド面と前記第1の回路セットが、基板上に位置する第1の誘電体層に存在し、前記第2のグランド面と前記第2の回路セットが、前記第1のグランド面および前記第1の回路セットに隣接しつつそれらとは物理的に離間しかつ熱絶縁されて前記第1の誘電体層に存在する、請求項に記載の集積回路。
【請求項5】
前記第1の熱伝導ビアが、基板を介して前記第1のグランド面を前記放熱層に各々結合する複数の第1の熱伝導ビアのうちの1つであり、前記第2の熱伝導ビアが、前記基板を介して前記第2のグランド面を前記放熱層に各々結合する複数の第2の熱伝導ビアのうちの1つである、請求項に記載の集積回路。
【請求項6】
前記複数の第1の熱伝導ビアの各々が第1のサイズを有し、前記複数の第2の熱伝導ビアの各々が第2のサイズの同数の熱伝導ビアを有し、前記第1のサイズは、前記第2のサイズよりも前記熱負荷に比例した体積だけ大きいサイズに設定されて前記第2の回路セットよりも小さい勾配で前記第1の回路セットから熱を除去する、請求項に記載の集積回路。
【請求項7】
前記複数の第1の熱伝導ビアの各々および前記複数の第2の熱伝導ビアの各々が同じサイズであり、前記複数の第1の熱伝導ビアの数が前記複数の第2の熱伝導ビアの数よりも多くされて前記第2の回路セットよりも小さい勾配で前記第1の回路セットから熱を除去する、請求項に記載の集積回路。
【請求項8】
モノリシックマイクロ波集積回路(MMIC)であって、
基板の下に位置する放熱層と、
第1の動作温度要件を有する第1の超伝導回路のセットに関連付けられた第1の超伝導グランド面と、
前記基板を介して前記第1の超伝導グランド面を前記放熱層に各々結合する第1の熱伝導ビアのセットと、
前記第1の動作温度要件よりも高い第2の動作温度要件を有する第2の超伝導回路のセットに関連付けられた第2の超伝導グランド面と、
前記基板を介して前記第2の超伝導グランド面を前記放熱層に各々結合する第2の熱伝導ビアのセットであって、前記第1の熱伝導ビアのセットが前記第2の熱伝導ビアのセットよりも熱伝導材料の体積が大きい前記第2の熱伝導ビアのセットと、
前記第1の超伝導グランド面と前記第2の超伝導グランド面との熱絶縁を維持しつつ前記第1の超伝導グランド面と前記第2の超伝導グランド面とを電気的に結合する超伝導カプラと、を備えるモノリシックマイクロ波集積回路。
【請求項9】
前記超伝導カプラは、前記第1の超伝導グランド面を前記第2の超伝導グランド面に各々結合する1つまたは複数の超伝導接続ラインを含む、請求項に記載のモノリシックマイクロ波集積回路。
【請求項10】
前記超伝導カプラは、良好な電気的DC結合を可能にしつつ前記第1の超伝導回路のセットと前記第2の超伝導回路のセットとの間の周波数の伝送を阻止するRF誘導チョークを含む、請求項に記載のモノリシックマイクロ波集積回路。
【請求項11】
前記第1の超伝導グランド面と前記第1の超伝導回路のセットが、前記基板上に位置する第1の誘電体層に存在し、前記第2の超伝導グランド面と前記第2の超伝導回路のセットが、前記基板上に位置する第2の誘電体層であって前記第1の誘電体層の上または下に位置する前記第2の誘電体層に存在する、請求項に記載のモノリシックマイクロ波集積回路。
【請求項12】
前記第1の超伝導グランド面と前記第1の超伝導回路のセットが、前記基板上に位置する第1の誘電体層に存在し、前記第2の超伝導グランド面と前記第2の超伝導回路のセットが、前記第1の超伝導グランド面および前記第1の超伝導回路のセットに隣接しつつそれらとは物理的に離間して前記第1の誘電体層に存在する、請求項に記載のモノリシックマイクロ波集積回路。
【請求項13】
前記第1の熱伝導ビアのセットの各熱伝導ビアが第1のサイズを有し、前記第2の熱伝導ビアのセットの各熱伝導ビアが第2のサイズの同数の熱伝導ビアを有し、前記第1のサイズは、前記第2のサイズよりも体積が大きいサイズに設定されて、前記第2の超伝導回路のセットよりも小さい勾配で前記第1の超伝導回路のセットから熱負荷に比例した熱を除去する、請求項に記載のモノリシックマイクロ波集積回路。
【請求項14】
前記第1の熱伝導ビアのセットの各熱伝導ビアと前記第2の熱伝導ビアのセットの各熱伝導ビアとが同じサイズであり、前記第1の熱伝導ビアのセットの熱伝導ビアの数が、熱負荷に比例して前記第2の熱伝導ビアのセットの熱伝導ビアの数よりも多くされて、前記第2の超伝導回路のセットよりも小さい勾配で前記第1の超伝導回路のセットから熱を除去する、請求項に記載のモノリシックマイクロ波集積回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して集積回路に関し、より具体的には超伝導電気カプラを備えた熱絶縁グランド面に関する。本出願は、2017年10月31日に出願された米国特許出願第15/798977号の優先権を主張し、その全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
極低温で動作するモノリシックマイクロ波集積回路(MMIC)チップは、熱管理が必要な超伝導回路を有する。主な方法の1つは、基板に向けて超伝導回路から熱を除去することである。MMICの下位層における金属メッシュ材料からなるグランド面は、層全体を熱平衡状態にする。このため、低温に維持する必要があるMMIC上のデバイスの一部が高温のコンポーネントにさらされることとなる。
【0003】
極低温条件では、熱負荷、冷却リソース、温度、および回路の複雑さが互いに大きく関係する。極低温から室温に上昇すると、1ユニットの電力消費の節約が数桁に大きくなる。極低温チップがますます複雑化されるにつれて、MMICに搭載されるデバイスの数やバリエーションが増えている。これらの各デバイスは、異なる動作温度要件を有し得る。
【0004】
典型的な極低温MMICは、導電性材料と誘電体の交互の層で覆われたシリコン基板で構成されている。MMICには複数のデバイスタイプが存在し得る。一例として、MMICが、3つの異なる動作温度で動作する必要がある3つの異なるデバイスタイプを有する場合がある。第1のデバイスは500mK(ミリケルビン)未満で動作する必要があり、第2のデバイスは1K(ケルビン)未満で動作する必要があり、第3のデバイスは4K未満で動作する必要がある。単一のグランド面を備える場合、メッシュ層全体がほぼ均一な温度になる。これは、XおよびY方向における横方向に熱を伝達(拡散)する導電性材料の能力によるものである。したがって、すべてのデバイスがこのグランド面に接続されている場合は、そのすべてのデバイスを最も厳しい動作要件(例えば、500mKなど)に維持する必要がある。すなわち、第3のデバイスは4Kに維持するのみでよいが、0.5Kに維持する必要があることから、MMICのこのセクタを管理するために8倍の冷却リソースが必要となる。
【発明の概要】
【0005】
一実施例において、第1の動作温度要件を有する第1の回路セットに関連付けられた第1のグランド面と、前記第1の動作温度要件よりも高い第2の動作温度要件を有する第2の回路セットに関連付けられた第2のグランド面とを備える集積回路が提供される。前記第2のグランド面は、前記第1のグランド面とは実質的に熱絶縁されている。超伝導カプラは、前記第1のグランド面と前記第2のグランド面との相対的な熱絶縁を維持しつつ前記第1のグランド面と前記第2のグランド面とを電気的に結合する。
【0006】
別の実施例において、基板の下に位置する放熱層と、第1の動作温度要件を有する第1の超伝導回路のセットに関連付けられた第1の超伝導グランド面と、前記基板を介して前記第1の超伝導グランド面を前記放熱層に各々結合する第1の熱伝導ビアのセットとを備えるモノリシックマイクロ波集積回路(MMIC)が提供される。
【0007】
前記MMICはさらに、前記第1の動作温度要件よりも高い第2の動作温度要件を有する第2の超伝導回路のセットに関連付けられた第2の超伝導グランド面と、前記基板を介して第2の超伝導グランド面を前記放熱層に各々結合する第2の熱伝導ビアのセットであって、前記第1の熱伝導ビアのセットが前記第2の熱伝導ビアのセットよりも熱伝導材料の体積が大きい前記第2の熱伝導ビアのセットと、前記第1の超伝導グランド面と前記第2の超伝導グランド面との相対的な熱絶縁を維持しつつ前記第1の超伝導グランド面を前記第2の超伝導グランド面に電気的に結合する超伝導カプラと、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】例示的な集積回路の一部の断面図。
図2】A-A線に沿って切断した図1の集積回路の上面図。
図3】複数の第1のビアと複数の第2のビアとを想定した、B-B線に沿った図1の集積回路の一部の断面図。
図4図3に示されているものと同様の別の例の集積回路の取り得る一部分の断面図。
図5】集積回路のさらに別の例の一部の断面図。
図6】第3の誘電体層を除いた状態での、第2の導電性グランド面、第2の超伝導回路のセット、および第2の導電性グランド面に隣接するスパイラル超伝導電気無線周波数(RF)チョークカプラを示す平面図。
図7】第2の誘電体層、第3の誘電体層、および関連する構成要素を除いた状態での、第1の導電性グランド面、第1の超伝導回路のセット、および第1の導電性グランド面に結合された超伝導ビアを示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示は、異なる動作温度要件で動作する回路セット用の別個の専用グランド面を含む集積回路(例えば、モノリシックマイクロ波集積回路(MMIC))について説明する。本開示で使用されるセットとは、1つまたは複数の所与の構造(例えば、超伝導カプラ、サーマルビア、超伝導回路)を指す。別個の専用グランド面は、超伝導電気カプラのセットによって互いに電気的に結合される。超伝導電気カプラのセットは、別個の専用グランド面の間の熱絶縁を維持しつつ、それら別個の専用グランド面(および能動回路)の間の良好な電気的接続を提供する。超伝導材料は、導電性に優れた材料である一方、熱伝導性が(通常の金属と比べて)低い材料である。
【0010】
一例では、超伝導材料の設計量は、別個の超伝導熱グランド面(TGP)を接続する超伝導カプラを形成するように決定され得る。熱絶縁を維持して電気的接続が提供される。MMIC超伝導グランド面の信号は高周波(典型的には10~40GHz)で動作する。これらの超伝導グランド面が分割されて別個の熱/温度ゾーンを提供する場合、それらグランド面がアンテナのように機能して、不所望なRFエネルギーを放射し得る。また、分割されたグランド面の間では種々の信号を受け渡す必要がある。したがって、分割されたグランド面を電気的に接続する必要がある。しかしながら、グランド面の間では非常に強い熱絶縁を維持する必要がある。設計量の超伝導体を利用することによって熱的要件と電気的要件の両方を満たすことができる。
【0011】
別個の各グランド面は、対応するサーマルビア(コンタクト)のセットによって基板の底部側における放熱層に結合することができる。放熱層を適切に冷却することで、別個の各グランド面からの適切な熱放出を可能にして、対応する回路セットを所望の動作温度要件に維持することができる。放熱層とサーマルビアは、熱伝導率の高い通常の金属で形成され得る。通常の金属は熱伝導率が高く、超伝導体に転移することはない。通常の金属の例としては、銅や、金や、銀が挙げられるが、他の多くの通常の金属も含まれ得る。
【0012】
サーマルビアは、グランド面の異なる動作温度要件およびそれらグランド面に関連付けられた回路によって生じる熱負荷に基づいて、異なるサイズを有したり、同じサイズのサーマルビアを異なる数にて有したりすることで、各グランド面の適切な冷却を行うことができる。各グランド面の熱負荷が等しい場合、所与のグランド面を放熱層に結合するサーマルビアの熱伝導材料の量は、より高い動作温度要件を有する回路に関連付けられたグランド面を結合するサーマルビアの熱伝導材料の量よりも多くなる一方、より低い動作温度要件を有する回路に関連付けられたグランド面を結合するサーマルビアの熱伝導材料の量よりも少なくなる。これにより、異なる動作温度要件を有する回路に基づいて、比例した放熱能力が提供される。
【0013】
1つまたは複数の超伝導カプラは、別個の専用グランド面の異なる動作温度要件に影響を与えることなく、それら別個の専用グランド面の良好な電気的接続を提供する。
以下、異なる動作温度要件を有する導電性グランド面およびそれに関連付けられた超伝導回路に関して本実施例を説明する。しかしながら、他の実施例は、超伝導グランド面とそれに関連する超伝導回路との組み合わせや、非超伝導グランド面とそれに関連する超伝導回路との組み合わせ、または異なる動作温度要件を有する非超伝導グランド面とそれに関連する非超伝導回路との組み合わせを含むことができる。
【0014】
図1は、例示的な集積回路10の一部の断面図を示す。図2は、A-A線に沿って切断した集積回路10の上面図を示す。集積回路10の一部は、基板14の上に位置する第1の誘電体層16と、第1の誘電体層16の上に位置する第2の誘電体層18と、第2の誘電体層18の上に位置する第3の誘電体層20とを含む。基板14は、シリコン、ガラス、または他の基板材料で形成することができる。放熱層12は、基板14の底部に存在する。第1の誘電体層16は、基板と集積回路10の能動回路との間にバッファ層を提供する。第1の導電性グランド面22と第1の超伝導回路のセット24が第2の誘電体層18に配置され、第2の導電性グランド面28と第2の超伝導回路のセット30が第3の誘電体層20に存在する。第1の導電性グランド面22と第1の超伝導回路のセット24は第1の動作温度要件を有し、第2の導電性グランド面28と第2の超伝導回路のセット30は第2の動作温度要件を有し、各超伝導回路が対応する動作温度要件以下に維持される限り、それら各超伝導回路の適切な動作が維持される。
【0015】
動作温度要件という用語は、グランド面および/または回路セットの回路材料がそれらの特性を維持するために、その温度以下で動作する必要がある動作温度のことを指す。例えば、第1の導電性グランド面22と第1の超伝導回路のセット24はアルミニウムの利用を含み得るものであって、超伝導のために500ミリケルビン以下の動作温度を維持する必要がある一方、第2の導電性グランド面26と第2の超伝導回路のセット28はニオブの利用を含み得るものであって、超伝導のために4ケルビン以下の動作温度を維持する必要がある。すなわち、より低い動作温度要件の回路セットは、より高い動作温度要件の回路セットよりも多くの冷却リソースを必要とする。
【0016】
1つまたは複数の超伝導電気カプラ34は、第1のグランド面22を第2のグランド面26に電気的に結合する。上述したように、超伝導体は、非常に優れた電気伝導体ではあるが熱伝導体としては乏しいため、第1のグランド面22と第2のグランド面26との間の良好な電気的結合を提供しつつ、それら第1および第2のグランド面の間の良好な温度分離、したがって第1の超伝導回路のセット24と第2の超伝導回路のセット28との間の良好な温度分離も維持する。
【0017】
2つのグランド面の間の超伝導材料の量は、集積回路10の電気的要件と熱的要件によって決定される。材料が超伝導であるため、少量の材料で多くの電流を流すことができる。最小量は、予想されるデューティ/電流と比較し、材料で許容される最大許容電流密度(かつ超伝導能力を依然として維持すること)とのバランスと比較することによって決定することができる。これにより、最小量の下限値が設定される。熱的な要件については、分析によって、2つのグランド面の間で許容される熱リークの量を決定することができる。熱グランド面コネクタによる誘電体材料を介したフォノン伝導熱リークを考慮に入れる。これにより、材料の最大量の上限値が設定される。材料の最小量と最大量との間に有益なエンベロープがあれば設計ソリューションが存在する。超伝導体の電流を流す能力と熱を伝達しない能力とを考慮すると、有益なエンベロープが存在する可能性は高い。
【0018】
図1および図2を再度参照すると、第1のサーマルビア32は第1の導電性グランド面22を放熱層12に基板14を介して接続し、第2のサーマルビア30は第2の導電性グランド面28を放熱層12に基板14を介して接続する。放熱層12は、熱伝導材料で形成されている。熱伝導材料は、熱を容易に伝達できる比較的良好な熱伝導体の材料である。超伝導材料は(超伝導でない通常の金属と比較して)優れた導電性材料であるが熱伝導性材料としては乏しい。したがって、放熱層12は超伝導材料で形成されていない。第1のサーマルビア32と第2のサーマルビア30は熱伝導材料で形成することができる。すなわち、導電性グランド層から放熱層12への熱の伝導が比較的良好な材料で形成することができる。放熱層12は、外部ソースによって冷却することができる。一例では、放熱層12、第1のサーマルビア32、および第2のサーマルビア30はすべて銅で形成される。
【0019】
図1に示されるように、第1のサーマルビア32に関連する熱伝導材料の厚さおよびそれによる熱伝導材料の体積は、第2のサーマルビア30に関連する熱伝導材料の厚さおよびそれによる熱伝導材料の体積よりも大きい。したがって、第2の導電性グランド面26と第2の超伝導回路のセット28に現れる場合よりも小さい勾配で第1の導電性グランド面22と第1の超伝導回路のセット24から熱が除去される。これにより、異なる動作温度要件を有するグランド面を冷却するために単一の冷却層を提供することが可能となる。
【0020】
したがって、同じ放熱層12を使用することによって、第1の導電性グランド面22と第1の超伝導回路のセット24の温度を、第2の導電性グランド面26と第2の超伝導回路のセット30よりも低い温度に維持することができる。放熱層12は、第1の動作温度要件よりも高い温度であるが依然として第1の導電性グランド面22と第1の超伝導回路のセット24を第1の動作温度要件に維持しつつ第2の導電性グランド面26と第2の超伝導回路のセット28を第2の動作温度要件に維持することができる温度に冷却することができる。
【0021】
図1は単一の第1のサーマルビアと単一の第2のサーマルビアとを示しているが、第1の導電性グランド面22と第1の超伝導回路のセット24の温度を第1の動作温度要件以下に維持し、第2の導電性グランド面26と第2の超伝導回路のセット28の温度を第2の動作温度要件以下に維持するように第2のサーマルビアに対する第1のサーマルビアの熱伝導材料の比例体積が維持される限り、第1のサーマルビアの数や第2のサーマルビアの数は多数とすることができる。
【0022】
図3は、複数の第1のビアと複数の第2のビアを想定した、B-B線に沿った集積回路10の一部の断面図を示す。図1図3に示されるように、第1のサーマルビアのセット32に関連する熱伝導材料の厚さおよびそれによる熱伝導材料の体積は、熱負荷に比例して、第2のサーマルビアのセット30に関連する熱伝導材料の厚さおよびそれによる熱伝導材料の体積よりも大きい。このため、第1の導電性グランド面22および第1の超伝導回路のセット24からの熱の伝達および除去は、第2の導電性グランド面26および第2の超伝導回路のセット28からの熱の伝達および除去よりも小さい勾配でなされる。
【0023】
図3の例では、第1のサーマルビアのセット32内のビアと第2のサーマルビアのセット30内のビアとの間に1対1の対応関係があることが理解され得る。図4は、図3に示されているものと同様の別の例の集積回路の取り得る一部分の断面図を示している。この例では、第1のサーマルビアのセット52の各サーマルビアと第2のサーマルビアのセット50の各サーマルビアは、実質的に同じ深さおよび幅を有し、その結果、実質的に同じ体積を有している。ただし、第1のサーマルビアのセット52内のサーマルビアの数は、第2のサーマルビアのセット50内のサーマルビアの数よりも多い。結果として、第1のサーマルビアのセット52における熱伝導材料の体積は、第2のサーマルビアのセット50における熱伝導材料の体積よりも大きい。このため、第2のサーマルビアのセット50と比べて第1のサーマルビアのセット52内には追加の熱伝導材料が存在することにより、第2の導電性グランド面26および第2の超伝導回路のセット28に比べて、第1の導電性グランド面22および第1の超伝導回路のセット24にはより大きな冷却が提供される。
【0024】
図5は、集積回路60のさらに別の例の一部の断面図を示す。集積回路60の一部は、基板64の上に位置する第1の誘電体層66と、第1の誘電体層66の上に位置する第2の誘電体層68と、第2の誘電体層68の上に位置する第3の誘電体層78とを含む。基板64は、シリコン、ガラス、または他の基板材料で形成することができる。放熱層62は、基板64の底部に存在する。第1の誘電体層66は、基板64と集積回路60の能動回路との間にバッファ層を提供する。第1の導電性グランド面72と第1の超伝導回路のセット74が第2の誘電体層68に配置され、第2の導電性グランド面76と第2の超伝導回路のセット78が第3の誘電体層70に存在する。第1の導電性グランド面72と第1の超伝導回路のセット74は第1の動作温度要件を有し、第2の導電性グランド面76と第2の超伝導回路のセット78は第2の動作温度要件を有している。
【0025】
第1のサーマルビアのセット82は、第1の導電性グランド面72を放熱層62に基板64を介して接続し、第2のサーマルビアのセット80は、第2の導電性グランド面76を放熱層62に基板64を介して接続する。第1のサーマルビアのセット82内のビアのサイズおよび/または数は、第2のサーマルビアのセット80内のビアのサイズおよび/または数よりも大きい。放熱層62、第1のサーマルビアのセット82、および第2のサーマルビアのセット80は熱伝導材料で形成することができる。すなわち、導電性グランド層から放熱層62への熱の伝導が比較的良好な材料で形成することができる。放熱層62は、外部ソースによって冷却することができる。一例では、放熱層62、第1のサーマルビアのセット82、および第2のサーマルビアのセット80はすべて銅で形成される。この例では、グランド面76は、そのより高い動作温度要件を維持するためにグランド面72よりも大きな勾配を有するとともに、同様なサイズかまたはより薄いビアをより少ない数で必要とする。グランド面72は、そのより低い動作温度要件を維持するために、グランド面76よりも小さな勾配を有するとともに、同様なサイズかまたはより大きな体積のビアをより多い数で必要とする。
【0026】
スパイラル超伝導電気カプラ84は、第3の誘電体層70において第2の導電性グランド面76に隣接して存在し第2の導電性グランド面76に結合されている。超伝導ビア86は、スパイラル超伝導電気カプラ84の中心から第1の導電性グランド面72まで延在し、第2の導電性グランド面76と第1の導電性グランド面72との間の電気的結合を提供しつつそれら2つのグランド面の間の熱絶縁を維持する。スパイラル超伝導電気カプラ84は、第1の導電性グランド面72と第2の導電性グランド面76との間の良好な電気的DC結合を可能にしつつ、第1の超伝導回路のセット74と第2の超伝導回路のセット78との間の周波数の伝送を阻止するRF誘導チョークを形成する。本例は、RF誘導チョークを形成するためのスパイラル構造を示すが、他の形状および/または構造を使用してRF誘導チョークを形成することもできる。
【0027】
図6は、第3の誘電体層70を除いた状態での、第2の導電性グランド面76、第2の超伝導回路のセット78、および第2の導電性グランド面76に隣接するスパイラル超伝導電気カプラ84の平面図を示す。図7は、第2の誘電体層68、第3の誘電体層70、および関連する構成要素を除いた状態での、第1の導電性グランド面72、第1の超伝導回路のセット74、および第1の導電性グランド面72に結合された超伝導ビア86の平面図を示す。
【0028】
図5図7の集積回路70に関する熱放散についての影響を示すために、2つの例を以下に説明する。第1の例では、長さ10μm、面積1×0.2μmの導体を分析する。この例では、高温側が4Kで低温側が1Kである。通常の金属である金の導体の場合、熱抵抗(シータすなわちΘ)は4.90×10K/Wである。金を超伝導ニオブに置き換えた場合、Θは2.7×10K/Wになる。第2の例では、導体の長さが100μmである。他のすべてのパラメータは、第1の例と同一である。通常の金属である金の導体の場合、熱抵抗(シータすなわちΘ)は4.90×10K/Wである。金を超伝導ニオブに置き換えた場合、Θは2.7×10K/Wになる。
【0029】
両方の例から分かるように、Θには6倍の違いがある。これは、同様の通常の金属と比較した場合、超伝導金属を利用する構成における熱伝送の減少に対応し得る。超伝導導体の断面をさらに薄くすることで、熱伝送のさらなる低減を実現できる。これは、超伝導材料が通常の金属と比較して(面積ベースで)極めて多くの電流を流すことができるために実現できる。
【0030】
以上の説明は本発明の例示である。本開示を説明する目的のために構成要素または方法のあらゆる考えられる組み合わせを記載することは勿論不可能であり、当業者は本開示のさらなる多くの組み合わせおよび置換が可能であることを認識し得る。したがって、本開示は、添付の特許請求の範囲を含む本出願の範囲内に含まれるすべてのそのような代替、変形、および変更を包含することが意図される。
本開示に含まれる技術的思想を以下に記載する。
(付記1)
集積回路であって、
第1の動作温度要件を有する第1の回路セットに関連付けられた第1のグランド面と、
前記第1の動作温度要件よりも高い第2の動作温度要件を有する第2の回路セットに関連付けられ、前記第1のグランド面とは実質的に熱絶縁された第2のグランド面と、
前記第1のグランド面と前記第2のグランド面との相対的な熱絶縁を維持しつつ前記第1のグランド面と前記第2のグランド面とを電気的に結合する超伝導カプラと、
を備える集積回路。
(付記2)
前記超伝導カプラは、前記第1のグランド面を前記第2のグランド面に各々結合する1つまたは複数の超伝導接続ラインを含む、付記1に記載の集積回路。
(付記3)
前記超伝導カプラは、良好な電気的DC結合を可能にしつつ前記第1の回路セットと前記第2の回路セットとの間の周波数の伝送を阻止するRF誘導チョークを含む、付記1に記載の集積回路。
(付記4)
前記集積回路がさらに、
放熱層と、
前記第1のグランド面を前記放熱層に結合する第1の熱伝導ビアと、
前記第2のグランド面を前記放熱層に結合する第2の熱伝導ビアと、を備え、
前記第1の熱伝導ビアは、前記第2の熱伝導ビアよりも熱伝導材料の熱負荷に比例した適切な体積を有して前記第2の回路セットよりも小さい勾配で前記第1の回路セットから熱を除去する、付記1に記載の集積回路。
(付記5)
前記放熱層、前記第1の熱伝導ビア、および前記第2の熱伝導ビアが超伝導特性を有さない通常の金属で形成されている、付記4に記載の集積回路。
(付記6)
前記第1のグランド面と前記第1の回路セットが第1の超伝導材料で形成されており、前記第2のグランド面と前記第2の回路セットが、前記第1の超伝導材料とは異なる動作温度要件を有する第2の超伝導材料で形成されている、付記4に記載の集積回路。
(付記7)
前記第1の超伝導材料がアルミニウムからなり、前記第2の超伝導材料がニオブからなる、付記6に記載の集積回路。
(付記8)
前記第1のグランド面と前記第1の回路セットが、基板上に位置する第1の誘電体層に存在し、前記第2のグランド面と前記第2の回路セットが、前記基板上に位置する第2の誘電体層であって前記第1の誘電体層の上または下に位置する前記第2の誘電体層に存在する、付記4に記載の集積回路。
(付記9)
前記第1のグランド面と前記第1の回路セットが、基板上に位置する第1の誘電体層に存在し、前記第2のグランド面と前記第2の回路セットが、前記第1のグランド面および前記第1の回路セットに隣接しつつそれらとは物理的に離間しかつ熱絶縁されて前記第1の誘電体層に存在する、付記4に記載の集積回路。
(付記10)
前記第1の熱伝導ビアが、基板を介して前記第1のグランド面を前記放熱層に各々結合する複数の第1の熱伝導ビアのうちの1つであり、前記第2の熱伝導ビアが、前記基板を介して前記第2のグランド面を前記放熱層に各々結合する複数の第2の熱伝導ビアのうちの1つである、付記4に記載の集積回路。
(付記11)
前記複数の第1の熱伝導ビアの各々が第1のサイズを有し、前記複数の第2の熱伝導ビアの各々が第2のサイズの同数の熱伝導ビアを有し、前記第1のサイズは、前記第2のサイズよりも前記熱負荷に比例した体積だけ大きいサイズに設定されて前記第2の回路セットよりも小さい勾配で前記第1の回路セットから熱を除去する、付記10に記載の集積回路。
(付記12)
前記複数の第1の熱伝導ビアの各々および前記複数の第2の熱伝導ビアの各々が実質的に同じサイズであり、前記複数の第1の熱伝導ビアの数が前記複数の第2の熱伝導ビアの数よりも多くされて前記第2の回路セットよりも小さい勾配で前記第1の回路セットから熱を除去する、付記11に記載の集積回路。
(付記13)
モノリシックマイクロ波集積回路(MMIC)であって、
基板の下に位置する放熱層と、
第1の動作温度要件を有する第1の超伝導回路のセットに関連付けられた第1の超伝導グランド面と、
前記基板を介して前記第1の超伝導グランド面を前記放熱層に各々結合する第1の熱伝導ビアのセットと、
前記第1の動作温度要件よりも高い第2の動作温度要件を有する第2の超伝導回路のセットに関連付けられた第2の超伝導グランド面と、
前記基板を介して前記第2の超伝導グランド面を前記放熱層に各々結合する第2の熱伝導ビアのセットであって、前記第1の熱伝導ビアのセットが前記第2の熱伝導ビアのセットよりも熱伝導材料の体積が大きい前記第2の熱伝導ビアのセットと、
前記第1の超伝導グランド面と前記第2の超伝導グランド面との相対的な熱絶縁を維持しつつ前記第1の超伝導グランド面と前記第2の超伝導グランド面とを電気的に結合する超伝導カプラと、
を備えるモノリシックマイクロ波集積回路。
(付記14)
前記超伝導カプラは、前記第1の超伝導グランド面を前記第2の超伝導グランド面に各々結合する1つまたは複数の超伝導接続ラインを含む、付記13に記載のモノリシックマイクロ波集積回路。
(付記15)
前記超伝導カプラは、良好な電気的DC結合を可能にしつつ前記第1の超伝導回路のセットと前記第2の超伝導回路のセットとの間の周波数の伝送を阻止するRF誘導チョークを含む、付記13に記載のモノリシックマイクロ波集積回路。
(付記16)
前記放熱層、前記第1の熱伝導ビア、および前記第2の熱伝導ビアは、高い熱伝導率を有する非超伝導金属で形成され、前記第1の超伝導グランド面はアルミニウムからなり、前記第2の超伝導グランド面はニオブからなる、付記13に記載のモノリシックマイクロ波集積回路。
(付記17)
前記第1の超伝導グランド面と前記第1の超伝導回路のセットが、前記基板上に位置する第1の誘電体層に存在し、前記第2の超伝導グランド面と前記第2の超伝導回路のセットが、前記基板上に位置する第2の誘電体層であって前記第1の誘電体層の上または下に位置する前記第2の誘電体層に存在する、付記13に記載のモノリシックマイクロ波集積回路。
(付記18)
前記第1の超伝導グランド面と前記第1の超伝導回路のセットが、前記基板上に位置する第1の誘電体層に存在し、前記第2の超伝導グランド面と前記第2の超伝導回路のセットが、前記第1の超伝導グランド面および前記第1の超伝導回路のセットに隣接しつつそれらとは物理的に離間して前記第1の誘電体層に存在する、付記13に記載のモノリシックマイクロ波集積回路。
(付記19)
前記第1の熱伝導ビアのセットの各熱伝導ビアが第1のサイズを有し、前記第2の熱伝導ビアのセットの各熱伝導ビアが第2のサイズの同数の熱伝導ビアを有し、前記第1のサイズは、前記第2のサイズよりも体積が大きいサイズに設定されて、前記第2の超伝導回路のセットよりも小さい勾配で前記第1の超伝導回路のセットから熱負荷に比例した熱を除去する、付記13に記載のモノリシックマイクロ波集積回路。
(付記20)
前記第1の熱伝導ビアのセットの各熱伝導ビアと前記第2の熱伝導ビアのセットの各熱伝導ビアとが実質的に同じサイズであり、前記第1の熱伝導ビアのセットの熱伝導ビアの数が、熱負荷に比例して前記第2の熱伝導ビアのセットの熱伝導ビアの数よりも多くされて、前記第2の超伝導回路のセットよりも小さい勾配で前記第1の超伝導回路のセットから熱を除去する、付記13に記載のモノリシックマイクロ波集積回路。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7