IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ カウンスィル オブ サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチの特許一覧

特許7119083環境に優しく生物分解性の潤滑剤配合物とその調製方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-05
(45)【発行日】2022-08-16
(54)【発明の名称】環境に優しく生物分解性の潤滑剤配合物とその調製方法
(51)【国際特許分類】
   C10M 105/46 20060101AFI20220808BHJP
   C10M 105/42 20060101ALI20220808BHJP
   C10M 169/04 20060101ALI20220808BHJP
   C10M 129/10 20060101ALN20220808BHJP
   C10M 133/12 20060101ALN20220808BHJP
   C10M 137/10 20060101ALN20220808BHJP
   C10M 137/02 20060101ALN20220808BHJP
   C10M 135/36 20060101ALN20220808BHJP
   C10N 10/04 20060101ALN20220808BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20220808BHJP
   C10N 30/02 20060101ALN20220808BHJP
   C10N 30/08 20060101ALN20220808BHJP
   C10N 30/06 20060101ALN20220808BHJP
   C10N 30/10 20060101ALN20220808BHJP
   C10N 30/12 20060101ALN20220808BHJP
   C10N 40/02 20060101ALN20220808BHJP
   C10N 40/00 20060101ALN20220808BHJP
   C10N 40/06 20060101ALN20220808BHJP
【FI】
C10M105/46
C10M105/42
C10M169/04
C10M129/10
C10M133/12
C10M137/10 A
C10M137/02
C10M137/10 Z
C10M135/36
C10N10:04
C10N30:00 Z
C10N30:02
C10N30:08
C10N30:06
C10N30:10
C10N30:12
C10N30:00 A
C10N40:02
C10N40:00 Z
C10N40:06
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020524240
(86)(22)【出願日】2018-04-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-01-21
(86)【国際出願番号】 IN2018050257
(87)【国際公開番号】W WO2019087205
(87)【国際公開日】2019-05-09
【審査請求日】2021-04-08
(31)【優先権主張番号】201711039235
(32)【優先日】2017-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(73)【特許権者】
【識別番号】596020691
【氏名又は名称】カウンスィル オブ サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ
【氏名又は名称原語表記】COUNCIL OF SCIENTIFIC & INDUSTRIAL RESEARCH
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ナゲンドラマ、ポネカンティ
(72)【発明者】
【氏名】ライ、アンジャン
(72)【発明者】
【氏名】サクレ、ガナナ・ドウラット
(72)【発明者】
【氏名】アトライ、ニーラ
【審査官】中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-181133(JP,A)
【文献】特開2011-184536(JP,A)
【文献】特開平03-217493(JP,A)
【文献】特開平05-025484(JP,A)
【文献】特開平03-217494(JP,A)
【文献】特開平05-078689(JP,A)
【文献】国際公開第2014/017596(WO,A1)
【文献】特開2015-071672(JP,A)
【文献】国際公開第2014/156737(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/156738(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/087916(WO,A1)
【文献】VENKATARAMANI P S ET AL,SYNTHESIS, EVALUATION AND APPLICATIONS OF COMPLEX ESTERS AS LUBRICANTS: A BASIC STUDY,JOURNAL OF SYNTHETIC LUBRICATION,1989年01月,Vol.5, No.4,271-289
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M101/00-177/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉱油を含まない潤滑剤を合成するための方法であって、
(i)C~C 炭素のポリオールとC~C10炭素のジカルボン酸の混合物を1:2の比率で、不均一系触媒と溶媒の存在下、還流温度で2~4時間の範囲で反応させて反応混合物を得る工程;
(ii)前記反応混合物から水を除去し、かつ前記混合物を冷却して、冷却した混合物を得る工程、
(iii)工程(ii)で得られた前記冷却した混合物を、全ての残りのカルボキシル基がエステル化されるまで、少なくとも2モルのモノアルコールと還流条件下で反応させ、かつ、前記反応を、水が除去されるまで8~12時間の範囲で完了させて、基油としてのポリオール複合エステルを得る工程、及び
(iv)工程(iii)で得られた前記基油を、前記基油が94%~100%であり、抗酸化剤1~2%及び添加剤1.5~4%とブレンドして、前記鉱油を含まない潤滑剤を得る工程、
を含み、
前記不均一系触媒は、スルホン酸官能基を有するスチレンジビニルベンゼンコポリマー樹脂である、前記方法。
【請求項2】
前記ポリオールは、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、及び1,1,1-トリスヒドロキシメチルプロパンからなる群から選択される、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記ジカルボン酸(C~C10)は、アジピン酸、アゼライン酸、及びセバシン酸からなる群から選択される、請求項に記載の方法。
【請求項4】
工程(iii)での前記モノアルコールは、2-エチル-1-ヘキサノール、イソオクタノール、ノナノール、及びイソデカノールからなる群から選択される、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記溶媒は、トルエン又はキシレンから選択される、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記抗酸化剤は、2,6-ジターシャリーブチル-4,メチルフェノール(BHT)、アルキル化ジフェニルアミン、3,7-ジ-t-オクチルフェノチアジン、アルキル化PANA、及びジ-t-ブチル-p-クレゾール(DBPC)からなる群から選択される、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記添加剤は、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZDDP)、5,5-ジチオビス-(1,3,4-チアジアゾール-2(3H)-チオン)、亜リン酸水素ジメチル、亜リン酸水素ジブチル、亜リン酸水素ジ-n-オクチル、亜リン酸水素ジ-2-エチルヘキシル、亜リン酸水素ジオレイル、亜リン酸水素ジラウリル、トリチオ亜リン酸トリウラリル、亜リン酸トリラウリル、トリ-C12-C14ホスフィット、及びトリ-C12-C14ホスフィットからなる群から選択される、請求項に記載の方法。
【請求項8】
工程(i)及び工程(ii)での前記反応温度は、大気圧で107~115℃の範囲である、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、機械システム、特に微小電気機械システム(MEMS)及びそのプロセスに有用な、環境に優しく生分解性の潤滑剤配合物の開発に関する。本発明は、2,2-ジメチル,1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、1,1,1,-トリスヒドロキシメチルプロパン等のポリオール(C~C)と、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸(C~C10)と、をモノアルコールと共に、カチオン交換特性を持つ不均一系触媒を使用したエステル化によって調製された新世代の潤滑剤素材(base stocks)を開示する。これらの新世代の潤滑剤は、優れた生分解性、高い粘度指数、低い流動点、高い引火点、優れた潤滑性、優れた酸化安定性、摩耗に対する非常に優れた保護、蒸発損失なし、金属への優れた付着性、腐食防止特性、及び市販の添加剤との使用への優れた適合性を示す。更に、生成物は、下水細菌に対して無毒である。より具体的には、本発明は、広範囲の動作条件に曝される傾向がある、クロノメーター及び他の精巧な高精度機器の潤滑のためにこれらの新世代の潤滑剤素材を使用することに関する。
【発明の背景】
【0002】
近年の技術開発の困難な要件を満たすために、新しく高性能な潤滑剤が世界中で研究されている。このシナリオでは、新世代の高性能バイオ潤滑剤は、幅広い供給範囲を有することが証明されている。バイオ潤滑剤は、既に様々な産業用途及び自動車用途に採用されている。バイオベースの生成物は、切削油、エンジン油、ギア及び油圧油の形で、現在、商業市場で定着している。しかしながら、バイオ潤滑剤の潤滑及び使用が依然として課題である工業技術と科学技術の他の様々な分野がまだある。MEMSは、バイオ潤滑剤の使用がまだ検討されていない分野の1つである。
【0003】
MEMSは、小型デバイスを指し、典型的には、通常1~100μmの寸法の機械・電気部品の組み合わせで構成される。MEMSの部品は、通常、相対運動を伴い、意図した接触と意図しない接触の両方を示す。これは、抵抗力のため、MEMS部品の脆弱性を高める。従って、MEMS部品の信頼性を向上させるには、接触に作用する表面力を理解するだけでなく、それらの潤滑剤や耐摩耗性コーティングを開発することが急務である。微小電気機械産業では、長寿命で環境に安全な潤滑剤が求められている。微小電気機械システム用の潤滑剤選択の基準は、部品の寿命全体で100%の効果的な潤滑を提供すること、動作中の静粛性に加えて、分離トルクが低いことである。これらの潤滑剤の要件は、電気及び機械デバイスの小型化、高温動作条件での使用、生成物寿命の期待値の拡大、動作環境及び保管環境の範囲の拡大などの様々な要因により、ますます厳しくなっている。潤滑剤は、表面の潤滑に加えて、用途の要件に応じて、熱安定性、化学的不活性、耐摩耗性、低揮発性、及び/又は耐食性を提供する必要もある。
【0004】
MEMS部品が動作するとき、高粘度の液体潤滑剤は、より高いエネルギー散逸をもたらす。しかしながら、MEMSでは、境界潤滑は、流体膜潤滑よりも好ましい選択肢である。境界膜は、衝突中に散逸するエネルギーを低減するために、対象表面にコーティングされる。MEMS潤滑剤の優れた候補には、典型的には、表面張力が低く、基材に簡単に塗布でき、基材に強く結合し、環境に非感応型である化学的安定性及び熱的安定性の特性がある。
【0005】
従来、MEMS用途の最も一般的な潤滑剤には、パーフルオロポリエーテル(PFPE)、鉱油潤滑剤、及びホスゲンエステル等がある。鉱油ベースの潤滑剤の主な欠点は、100℃を超える温度で老化して酸化し、樹脂や炭素質堆積物を形成するため、100℃を超える温度では使用できないことである。更に、それらは、他のシリコーン及びPFPEベースの添加剤との低い混和性を示す。同様に、パーフルオロポリエーテルはMEMS用途で非常に有名であるが、特に不動態化されていないアルミニウム合金、マグネシウム合金、チタン合金等の特定の物質の存在下では、高温(200℃以上)での劣化などの特定の欠点がある。表面張力が低く、密度が高く、水蒸気の透過性のため腐食保護に劣り、境界潤滑に劣ることは、パーフルオロポリエーテルに関連するその他の制限である。
【0006】
米国特許出願第6878418号B2(2005年)を参照することができ、これは、磁性層上にダイヤモンドライクカーボン(DLC)コーティングを堆積し、水素のDLC保護層の一部を枯渇させてから、その場での蒸気潤滑技術によってパーフルオロポリエーテル(PFPE)でコーティングすることにより、保護オーバーコートを調製する方法を開示する。
【0007】
別の米国特許第3791488号(故Roweら 1974)を参照でき、これは、500~1500センチストークの範囲の粘度を有する、非常に高粘度のシリコン流動体からなる覆膜を使用して、鉱油と接触する表面を保護する新しい方法である。
【0008】
別の米国特許7695820号B2(Economyら、2010)を参照でき、発明者らは、アルファ及びベータ位置で置換された脂肪族ポリエステルからなる潤滑剤組成物を請求し、それは、従来の脂肪族エステル及びそれら用途に一般的に使用されるPFPEと比較して、熱的安定性、化学的安定性及び加水分解安定性の向上をもたらし、ハードディスク用の潤滑剤を含む高性能潤滑に使用する。
【0009】
出版物、Singhら、Surface chemical modification for exceptional wear life of MEMS materials、AIP ADVANCES 1、042141(2011)を参照でき、この中で著者らは、摩擦低減のための表面の化学修飾方法を記載し、最も有名な2つのMEMS構造材料、すなわちシリコンとSU-8ポリマーの摩耗寿命を著しく延長した。エタノールアミン-リン酸ナトリウム緩衝液を使用して表面改質を行った後、(i)SU-8薄膜(500nm)で被覆されたシリコン、及び(ii)MEMSプロセスで処理したSU-8膜厚膜(50μm)上にパーフルオロポリエーテル(PFPE)ナノ潤滑剤を被覆した。
【0010】
別の出版物、Guptaら、Ultrathin PFPE Film Systems Fabricated by Covalent Assembly;An Application to Tribology,Tribology Letters、及びVol.45(2012)371~378ページを参照でき、この中で著者らは、アミン官能化シリコン表面上に共有結合を介して無水物官能化ポリマーを堆積した。誘導体シリコンとパーフルオロポリエーテル(PFPE)の間の中間層は、情報ストレージデバイスや微小電気機械システム等、いくつかの用途でナノ潤滑として機能する。
【0011】
精密機器油については、出版物(P S Venkataramaniら、J.Synthetic Lubrication、4:307~319、1987)を参照できる。著者らは、開発した腕時計用油の物理化学的及び性能特性について議論し、それが腕時計用潤滑剤の基本的な要件を満足し、かつ一般に受け入られる腕時計用油と遜色がないかどうかを示している。
【0012】
米国特許第3,065,180号(Samuel Richard PethriclrとMaurice Harrington Sparke、Sunbury-on-Tharnes、1962年11月20日)を参照でき、これは、飽和脂肪族ジカルボン酸の液体脂肪族ジエステルとポリエステルのブレンドからなり、エアロガスタービンの潤滑で適用可能性を示す合成潤滑剤に関するものである。この特許は、(i)セバシン酸をエチルヘキシルアルコールで処理して合成したジエステル、並びに(ii)ネオペンチルグリコールを、セバシン酸、イソセバシン酸、及び2,2,4トリメチルアジピン酸で、窒素雰囲気の存在下の一段階のエステル化を使用して処理したポリエステル、の二成分のブレンドとしての潤滑剤組成物を開示する。
【0013】
ニートな切削油用の環境に優しい/生分解性の混合ポリオールエステル素材の開発については、出版物(Ponnekanti Nagendramma、Savita Kaul、R.P.S.Bisht M.R.Tyagi、www.nlgi-india.org.12th NLGI-2010)を参照できる。著者らは、C~C12の範囲の一塩基酸の混合物とポリオールを使用して合成したいくつかのエステルと、これらのエステルのニートな切削油としての適用性を報告している。
【0014】
しかしながら、PFPE潤滑剤の性能と寿命は、それらの熱的安定性及び化学的安定性、並びに静摩擦特性及び接着特性によって制限され予測される。フルオロエーテルは、高温で、システムに典型的に存在するルイス酸性物質に曝されると化学的に分解する。
【0015】
自動車用ギア潤滑剤としての合成複合エステルの研究については、出版物(Ponnekanti NagendrammaとSavita Kaul、J.Synthetic Lubrication、25、131-136、2008)を参照できる。この論文では、国産(indigenous)のイオン交換樹脂(Indion-130)触媒を使用して合成したジオール及びトリオール中心のいくつかのポリオール複合エステルと、自動車用ギア潤滑剤としてのそれらの適用性について報告する。合成生成物には、極圧添加剤を添加して、耐荷重性と耐摩耗性を向上した。
【0016】
潤滑剤油配合物のための環境に優しいベース流体については、出版物(R.P.S.Bisht、Savita Kaul、P.Nagendramma、V.K.Bhatia、A.K.Gupta、Journal of Synthetic Lubrication、Volume 19、Issue 3、2002年10月(19)243)を参照できる。論文では、C-C14カルボン酸とCポリオールを使用し、環境に優しい触媒であるIIPC-IIPCを使用した様々なポリオールエステルの合成を報告し、自動車のトランスミッション液としての合成エステルの適用性を主張している。論文では、市販のトリアリールホスファート(1%)添加剤を合成生成物に添加して、自動点火性及び耐摩耗性を改善した。合成した環境に優しく生分解性エステルの耐火性と潤滑性の研究については、出版物(Ponnekanti Nagendramma、Savita KaulとR.P.S.Bisht、Lublication Science、22、103-110、2010)を参照できる。この論文では、2-メチル-2-n-プロピル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、1,1,1-[トリス]ヒドロキシルメチルプロパン、1,1,1-[トリス]ヒドロキシルメチルエタン、純粋形態と混合形態の両方のカルボン酸(C~C12)、及び2-エチル-1ヘキサノールを、国産のイオン交換樹脂(Indion-130)触媒と共に使用した様々なポリオールエステルの合成を報告し、これらエステルの耐火性油圧流体としての適用性について報告している。合成生成物には、自動点火性と耐摩耗性を改善するために、市販のトリアリールホスファート(1%)添加剤を添加した。
【0017】
米国特許第6551968号B2(Mchenryら、2003年4月22日)、生分解性のポリネオペンチルポリオールベースの合成エステルブレンド及びそれらの潤滑剤、を参照できる。この発明は、新規の生分解性ポリネオペンチルポリオール(PNP)エステルベースの合成素材を提供し、それはカップリング剤としてジカルボン酸エステルと混合したPNPエステルを含む。PNPエステル-カップリング剤混合物は、少量で、単体又は混合物の、追加の高分子量の直鎖又は分岐鎖エステルとブレンドされる。最終的な素材は、標準の潤滑剤添加剤パッケージと互換性があり、ガソリンと混和性があるため、2ストロークエンジン用途で、改善した粘度特性、良好な低温特性、及び改善した潤滑性を有する生分解性潤滑剤が得られる。(ブレンドは、2ストロークエンジン用油に使用される)。
【0018】
別の特許US8183190B2、CA2534902A1、EP1656437A1、EP1656437A4、US20050049153、WO2005019395A1(Zeheler、Eugene;Costello;Christopherら、2012年5月22日)、性能を改善した複合ポリオールエステル、を参照できる。多官能性アルコール残基と、約9~約22の炭素原子を有する飽和又は不飽和ジカルボン酸残基を有する複合ポリオールエステルを含む生分解性潤滑剤組成物。特許WO2014005932A1(Markus Scherer、Boris Breitscheidelら、2014年1月9日)、潤滑剤としてのカルボン酸エステルの使用、を参照できる。この発明は、脂肪族ジカルボン酸と、10個の炭素原子を有する構造的に異なるモノアルコールの混合物とを反応して得られたカルボン酸エステルの潤滑剤としての使用、及びそれらの調製方法を対象とする。
【0019】
特許WO2015/036293、(Scherer、Markus;Rinklieb、Ronnyら、2016年9月)、ポリエステル及び潤滑剤でのポリエステルの使用を参照でき、この中で発明者らは、5~20の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸と4~36の炭素原子を有するシクロ脂肪族ジカルボン酸(グルタル酸、アゼライン酸、セバシン酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、及びオクタデカン二酸)、並びに≧2から≦6の範囲のヒドロキシル官能基を有する1つのポリオールを使用して合成した潤滑剤組成物を報告した。合成に使用した触媒は、チタン含有化合物、ジルコニウム含有化合物、及びスズ含有化合物からなる群から選択した。
【0020】
出版物(A.K.Misra、A.K.Mehrotra、R.D.Srivastava、A.N.Nandy、Wear、Volume 26、Issue 2、229~237ページ、1973年11月)、耐摩耗剤として複合エステル、を参照でき、この中で著者らは、ジオール(ジエチレングリコール、1,3-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール(分子量200~1000)、1-フェノキシ2,3-プロパンジオール)、二塩基酸(セバシン酸)、及び一価アルコール(2-エチルヘキサノール)を、触媒としてのp-トルエンスルホン酸(PTSA)と共に使用して、いくつかのジオール中心複合エステルを合成した。合成した生成物は、効果的な耐摩耗剤であると判明した。
【0021】
米国特許US5750750A(Carolyn Boggus Duncan、Paul R.Geissler、David Wayne Turner、William Joseph、Munley、Jr.Martin、A.Krevalisら、1997年2月7日)、高粘度の複合アルコールエステル、を参照でき、この特許は、脂肪族又は脂環式のポリヒドロキシル化合物(C2~C20、-OH≧2)、多塩基酸又は多塩基酸無水物、及び一価アルコールからなる複合アルコールエステルの組成物を報告する。選択した多塩基酸又は多価カルボン酸は、いずれかのC~C12の二酸、例えば、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸を含み、かつ一価アルコールは、イソデシルアルコール又は2-エチルヘキサノールのいずれかである。この特許は、金属触媒の低い含有量と低い総酸価を使用して、複合アルコールエステルを製造方法も開示している。
【0022】
日本特許JP06025683A(Sakai Akimitsu、Hagiwara Toshiyaら、1992年7月9日)、冷凍機の作動流体用組成物、を参照でき、これは、脂肪族ポリアルコール、脂肪族モノアルコール、及びポリカルボン酸(誘導体)を反応してエステルを調製する方法を議論する。エステルは、優れた潤滑特性、熱安定性等のために、冷凍機油とハイドロフルオロカーボンと混合され、冷凍機潤滑剤として使用される。
【0023】
米国特許US2009186787A1(Scherer Markus、BuschStefan、Roeder Juergen、Iking Rudolf、Rettemeyer Dirk、Bala Vasuら、2006年6月13日)、複合エステルを含む潤滑剤化合物、を参照でき、これは、ポリオール、モノアルコール及びジカルボン酸の反応から得られる複合エステルを含む。合成した生成物は、車両のトランスミッション、アクセル、産業用ドライブ、コンプレッサ、タービン又はエンジン用の潤滑剤として使用される。開示したポリオールは、一般式R(OH)の分岐鎖又は直鎖アルコールであり、式中、-Rは2~20の炭素原子を有する脂肪族基又は脂環式基であり、nは少なくとも2である。好ましいポリオールは、ネオペンチルグリコールを含む。使用したモノアルコールは、一般式ROHの分岐鎖又は直鎖アルコールであり、式中、-Rは、2~24の範囲の炭素原子を有し、0及び/又は1、2又は3個の二重結合を有する脂肪族基又は脂環式基である。好ましいモノアルコールは、2-エチルヘキシルアルコールを含んだ。使用したジカルボン酸は、好ましくは、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ブラシル酸、タプシン酸、及びフェロゲン酸である。
【0024】
別の米国特許US6376435B1、(Mahmoud Mostafa Hafez、Ulrich Witten、Paul Simon Woolley、Hiroki Kurosawaら、1999年5月19日)、内燃エンジン用の潤滑システム(法952)を参照でき、この特許は、バイナリ2相エンジン油組成物を開示し、当該組成物は、2つの実質的に非混和性の液相を有し、かつ長期間に亘って維持される改善した燃料経済性を示す。第1の液相は、天然又は合成の基油を含む。第2の液相は、極性有機液体であり、好ましくは複合アルコールエステルであり、好ましくはポリオール、多塩基酸、及び一価アルコールから誘導される。
【0025】
精密機器用の潤滑剤については、工業トライボロジーに関する世界会議1ST(1973)の議事録(Misra、A.K.;Kalra,S.L.;Srivastava.A.N、R.D.;Nandy,A.N.;Nanda,J.N 1973)を参照できる。著者らは、時計及び腕時計用潤滑剤を報告した。グリセロール、グリコール、及び一価アルコールの39のエステル、エーテルエステル、及びジエステル型の誘導体を、100°Fでの粘度、流動点、ガラス表面での広がり%、酸化及び湿度に対する安定性の点で評価した。セバシン酸と、アルコール成分としての、1,3-ブタンジオール及び2-エチルヘキサノール(I)、又はネオペンチルグリコール、1-ベンゾイルオキシ-2-プロパノール及びIとの2つの複合エステルのみは、高級脂肪酸のN-アルキルピペリジン誘導体を使用して減少した拡散を除いて、抗拡散添加剤として全てのテストに合格した。
【0026】
Venkataramani PS、Kalra SL、Raman SV、Srivastava HC、Synthesis evaluation and applications of complex esters as lubricant、基礎研究、Journal of Synthetic Lubrication(1987)5(4):271~289、を参照でき、著者らは、新規のポリオール(NPG&THMP)エステルに基づく、触媒としてp-トルエンスルホン酸を使用したいくつかの複合エステルの合成を説明している。しかしながら、前記プロセスに関する主な欠点は、非常に煩雑であり、継続的な監視を必要とし、著しい酸性度及び炭化生成物を含む品質の劣る基油を生じる生成物を生成することである。
【0027】
既存の最新技術は、特許と公開文献で公開される情報のほとんどは、MEMS用途のパーフルオロポリエーテル(PFPE)、ホスファゼン、鉱油組成物等の既存の潤滑剤の合成と使用の技術に関連することを明らかにする。更に、引用文献は、既存のMEMS潤滑剤の摩耗寿命の増加に対して制限がある。
【0028】
従って、機械システム、特にMEMS用の既存の潤滑剤配合物の制限を回避して、鉱油を含まず、環境に優しく生分解性の潤滑剤配合物を開発する必要がある。
【発明の目的】
【0029】
本発明の主な目的は、クロノメーター、及びベアリング、ゲージ、メーター、時計等の微小電気機械システムベースのデバイスの他の精巧な精密部品の潤滑に有用で、従来技術の欠点を取り除き、環境に優しく生分解性で鉱油を含まない潤滑剤を開発することである。
【0030】
本発明の別の目的は、潤滑剤配合物の調製方法を提供することである。
【0031】
本発明の更に別の目的は、IS:1448:P-25仕様による40℃での粘度グレードが31.0~47.0cStで、P-56による161~171の高い粘度指数を有するエステル基油を開発することである。
【0032】
本発明の更に別の目的は、IS:1448:P-10による、約<-39℃の低い流動点を有するエステル基油を開発することである。
【0033】
本発明の更に別の目的は、ASTM D:92による、高い引火点(210~232℃)を有するエステル基油を開発することである。
【0034】
本発明の更に別の目的は、良好な酸化安定性を有し、動粘度での変化が<10%であり、過酸化物が形成されず、銅スパイラルに腐食の兆候がない、エステル基油を開発することである。
【0035】
本発明の更に別の目的は、蒸発損失のないエステル基油を開発することである。
【0036】
本発明の更に別の目的は、ASTM D:4172Bによる、40kgfの負荷で0.350mmの摩耗瘢痕径を有する非常に良好な摩耗保護を有するエステル基油を開発することである。
【0037】
本発明の更に別の目的は、研磨された軟鋼基材上で、接触角が22~29°の範囲であり、直径が<15%である、金属への良好な付着特性を有するエステル基油を開発することである。
【0038】
本発明の更に別の目的は、スチール及び真鍮の試験片で良好な腐食防止特性を有するエステル基油を開発することである。
【0039】
本発明の更に別の目的は、20~30Nの範囲の負荷に対して、0.098~0.11の範囲の平均摩擦値、及び約180μmの摩耗瘢痕値、並びに0.1~0.5m/秒の滑り速度を有する、良好な潤滑性を有するエステル基油を開発することである。
【0040】
本発明の更に別の目的は、既存の従来の鉱油ベースの潤滑剤と比較して、低い又はそれよりも良好な比摩耗量(specific wear rate)を有する生成物を合成することである。
【0041】
本発明の更に別の目的は、毒性がなく、優れた生分解性を有するエステル基油を開発することである。合成したエステルの生分解性は、ASTM D:5864標準の生分解性試験方法に従って、95%を超える。生成物は、下水細菌に対して無毒である。
【0042】
本発明の更に別の目的は、鉱油に適した従来の添加剤は、このエステルでも肯定的な反応を提供することである。
【0043】
本発明の更に別の目的は、20~30Nの範囲の負荷に対して、60~180nmの範囲の弾性流体力学(EHD)膜厚を有する優れた耐荷重能力を有するエステル基油を開発することである。
【0044】
本発明の更に別の目的は、市販のクロノメーター及び他の精巧な精密機器用油仕様の要件を満たすMEMS潤滑剤基油に匹敵するエステル基油を開発することである。
【0045】
本発明の更に別の目的は、優れた生分解性、高い粘度指数、低い流動点、高い引火点、非常に優れた潤滑性、優れた酸化安定性、腐食防止特性を備え、シーリング材との使用に適したエステル基油を開発することである。
【0046】
本発明の更に別の目的は、多機能EP添加剤としてのジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZDDP)と1.5~4%の推奨用量でブレンドしたとき、融着荷重と耐摩耗性能を約30%向上できる、合成生成物を含むエステル基油を開発することである。
【0047】
本発明の更に別の目的は、100時間の酸化安定性試験に合格する生成物を合成することである。この後、抗酸化添加剤の2,6-ジターシャリーブチル-4,メチルフェノールを添加した。
【0048】
本発明の更に別の目的は、無視し得る酸性度で高純度のポリオール複合エステルを含むエステル基油を開発することである。本発明によって得られた生成物は、クロノメーターやMEMSデバイスの他の精巧な部品での生分解性で環境に優しい潤滑剤として使用でき、ASTM D:5864-2009の方法に従って、完全に環境に優しく生分解可能であり、ここで、従来のMEMS用油は、生分解性ではなく、鉱油及びPFPEを素材として含み、従来の触媒を使用して合成される。
【0049】
本発明の更に別の目的は、市販の配合物で使用される市販の鉱油添加剤を使用することによって、MEMS用途のためのエステル基油配合物を開発することである。
【0050】
本発明の更に別の目的は、市販のクロノメーター及び他の精巧な機器用油仕様の要件を満たす基油としてのポリオール複合エステルを含む、環境に優しく生分解性のMEMS潤滑基油を合成することである。
【発明の概要】
【0051】
従って、本発明は、鉱油を含まない潤滑剤配合物を提供し、配合物は、
2,2-ジエチル,1,3-プロパン-ジアゼライック-2-エチル-1-ヘキサノアート、2,2-ジメチル,1,3-プロパン-ジアジピック-2-エチル-1-ヘキサノアート、及びそれらの混合物からなる群から選択されるポリオール複合エステル;及び
任意で抗酸化剤;及び
任意で添加剤
を含む。
【0052】
別の実施形態では、配合物は、
(i)94%~100%の範囲のポリオール複合エステル;
(ii)0~2%の範囲の抗酸化剤;及び
(iii)0~4%の範囲の添加剤
を含む。
【0053】
本発明の更に別の実施形態では、配合物は、40℃で31~47cStの範囲の粘度、161~171の高粘度指数、約<-39℃の流動点、-45℃~285℃の範囲の動作温度を有する。
【0054】
本発明の一実施形態では、ポリオール複合エステルの比率は、1:1~1:3の比率である。
【0055】
本発明の更に別の実施形態では、ポリオール複合エステルの比率は、1:1である。
【0056】
本発明の更に別の実施形態では、抗酸化剤は、2,6-ジターシャリーブチル-4,メチルフェノール(BHT)、アルキル化ジフェニルアミン、3,7-ジ-t-オクチルフェノチアジン、アルキル化PANA、及びジ-t-ブチル-p-クレゾール(DBPC)からなる群から選択される。
【0057】
本発明の別の実施形態において、添加剤は、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZDDP)、5,5-ジチオビス-(1,3,4-チアジアゾール-2(3H)-チオン)、亜リン酸水素ジメチル、亜リン酸水素ジブチル、亜リン酸水素ジ-n-オクチル、亜リン酸水素ジ-2-エチルヘキシル、亜リン酸水素ジオレイル、亜リン酸ジラウリル、トリチオ亜リン酸トリウラリル、亜リン酸トリラウリル、トリ-C12-C14ホスフィット、及びトリ-C12-C14ホスフィットからなる群から選択される。
【0058】
本発明の別の実施形態では、配合物は、基油を含み、多機能EP添加剤としてジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZDDP)と1.5~4%の推奨用量でブレンドしたときに融着荷重及び耐摩耗性能を約30%改善する。
【0059】
本発明の更なる実施形態は、請求項1に記載の鉱油を含まない潤滑剤配合物を合成するための方法を提供し、この方法は、以下の工程を含む。
【0060】
(i)C~C炭素のポリオールとC~C10炭素のジカルボン酸の混合物を1:2の比率で、不均一系触媒と溶媒の存在下、還流温度で2~4時間の範囲で反応させて反応混合物を得る工程;
(ii)前記反応混合物から水を除去し、かつ前記混合物を冷却して、冷却した混合物を得る工程;
(iii)工程(ii)の冷却した混合物を、残りの全てのカルボキシル基がエステル化されるまで、少なくとも2モルのモノアルコールと還流条件下で反応させ、かつ、前記反応を、水が除去されるまで8~12時間の範囲で完了させて、基油としてポリオール複合エステルを得る工程;及び
(iv)工程(iii)で得られた前記基油を、前記基油が94%~100%であり、抗酸化剤1~2%及び添加剤1.5~4%とブレンドして、前記鉱油を含まない潤滑剤配合物を得る工程。
【0061】
本発明の更に別の実施形態では、ポリオールは、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、及び1,1,1,-トリスヒドロキシメチルプロパンからなる群から選択される。
【0062】
本発明の更に別の実施形態では、ジカルボン酸(C~C10)は、アジピン酸、アゼライン酸、及びセバシン酸からなる群から選択される。
【0063】
本発明の別の実施形態では、工程(iii)でのモノアルコールは、2-エチル-1-ヘキサノール、イソオクタノール、ノナノール、及びイソデカノールからなる群から選択される。
【0064】
本発明の更に別の実施形態では、溶媒は、トルエン又はキシレンから選択される。
【0065】
本発明の更なる実施形態では、抗酸化剤は、2,6-ジターシャリーブチル-4,メチルフェノール(BHT)、アルキル化ジフェニルアミン、3,7-ジ-t-オクチルフェノチアジン、アルキル化PANA、及びジ-t-ブチル-p-クレゾール(DBPC)からなる群から選択される。
【0066】
本発明の更に別の実施形態では、添加剤は、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZDDP)、5,5-ジチオビス-(1,3,4-チアジアゾール-2(3H)-チオン)、亜リン酸水素ジメチル、亜リン酸水素ジブチル、亜リン酸水素ジ-n-オクチル、亜リン酸水素ジ-2-エチルヘキシル、亜リン酸水素ジオレイル、亜リン酸ジラウリル、トリチオ亜リン酸トリウラリル、亜リン酸トリラウリル、トリ-C12-C14ホスフィット、及びトリ-C12-C14ホスフィットからなる群から選択される。
【0067】
本発明の更に別の実施形態では、不均一系触媒は、スルホン酸官能基を有するスチレンジビニルベンゼンコポリマー樹脂(Indion140)である。
【0068】
本発明の更なる実施形態では、触媒は、粒子径が0.42~1.2mmの範囲の-SOHのマクロポーラス架橋ポリスチレン(Hイオン 4.8最小乾燥、meq/g、湿潤、meq/ml 1.7最小)のカチオン性イオン交換樹脂である。
【0069】
本発明の別の実施形態では、工程(i)及び工程(ii)での反応温度は、大気圧で107~115℃の範囲である。
【0070】
本発明の別の実施形態では、生成物は以下の特徴を有する。
【0071】
(i)合成エステルの生分解性は、生分解性についてのASTM D:5864試験方法に従って、95%を超える。
【0072】
(ii)生成物は、下水細菌に対して無毒である。
【0073】
(iii)生成物は、20~30Nの範囲の負荷に対して、60~180nmの範囲の弾性流体力学(EHD)膜厚で優れた耐荷重能力を有する。
【0074】
(iv)生成物は、良好な酸化安定性を有し、動粘度の変化は30℃~100℃の動作温度範囲で10%未満であり、過酸化物の形成や銅スパイラルの腐食の兆候がない。
【0075】
(v)機能的動作温度は、示差走査熱量測定(DSC)を使用して測定した場合、45℃~285℃の範囲である。
【0076】
(vi)生成物は、研磨された軟鋼基材上で、22~29°の範囲の接触角及び直径変化が15%未満であり金属への良好な付着特性を有する。
【0077】
(vii)生成物は、スチール及び真鍮の試験片での優れた腐食防止特性を有する。
【0078】
(viii)採用した合成プロセスにより、無視し得る酸性度で高純度のポリオール複合エステルを得られる。
【0079】
(ix)本発明により得られた生成物は、生分解性で環境に優しいMEMSのクロノメーター及び他の精巧な機器用油として使用でき、ASTM D:5864-2009方法に従って完全に環境に優しく生分解性であり、ここで、従来のMEMS油は、生分解性ではなく、鉱物油とPFPEを素材として含み、従来の触媒を使用して合成される。
【0080】
本発明の一実施形態では、基油は、潤滑剤としての用途に使用される。
【0081】
本発明の別の実施形態では、式Aのポリオール複合エステルを提供する。
【0082】
【化1】
【0083】
上式で、
nは、3であり、
は、4~8であり、
Rは、C1~C5から選択されるアルキルである。
【0084】
略語
ASTM:米国標準材料試験
MEMS:微小電気機械システム
DMPD:2,2-ジメチル,1,3-プロパンジオール、
DEPD:2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、
-C:炭素数3-5のアルコール
-C10:炭素数6-10の酸
AD:アジピック(Adipic)
AZ:アゼライック(Azelaic)
PFPE:パーフルオロポリエーテル
PNP:ポリネオペンチルポリオールエステル
EH:2-エチルヘキサノール
PTSA:p-トルエンスルホン酸
NPG:ネオペンチルグリコール
THMP:1,1,1,-トリスヒドロキシメチルプロパン
THME:1,1,1,-トリスヒドロキシメチルエタン
PFPE:パーフルオロポリエーテル
IS:インド規格
cSt:センチストーク
EHD:弾性流体力学
ZDDP:ジアルキルジチオリン酸亜鉛
BHT:2,6-ジターシャリーブチル-4,メチルフェノール(ブチル化ヒドロキシトルエン)
EP:極圧
DSC:示差走査熱量測定
DEAZEH:2-ジエチル,1,3-プロパン-ジアゼライック-2-エチル-1-ヘキサノアート
DMADEH:2,2-ジメチル,1,3-プロパン-ジアジピック-2-エチル-1-ヘキサノアート
【発明の詳細な説明】
【0085】
これまでのところ、MEMS潤滑剤素材としてのポリオール複合エステルについて、体系的な研究は行われていない。本研究では、ポリオール複合エステルの合成、物理化学的特性評価及び性能評価、並びにクロノメーター及び微小電気機械システムで使用される他の精巧な高精度部品用の潤滑剤配合物としてのこれらエステルの適合性について実施した研究を報告する。
【0086】
発明者の知る限りでは、ポリオールエステル素材の調製、ニートな切削油や自動車用ギア油へのその適用について、公開文献での報告はほとんどない。しかしながら、本発明は、微小電気機械システム用途のための、環境に優しく生分解性の新規の潤滑組成物の開発を意図する。
【0087】
本研究では、2,2-ジメチル,1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、アジピン酸、アゼライン酸、及び2-エチル-1-ヘキサノールの複合エステルを、国産の市販のイオン交換樹脂触媒を使用して二段階のエステル化によって合成する。この触媒の使用は、従来の触媒に比べて利点があり、(i)国産であり、(ii)反応性を失うことなく2回再利用される。
【0088】
従って、本発明は、現存する最新技術の全ての短所を克服する。本発明は、生分解性で環境に優しい新世代の潤滑剤素材を説明し、当該潤滑剤素材は、2,2-ジメチル,1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール等のポリオールと、アジピン酸及びアゼライン酸のような脂肪族ジカルボン酸とをモノアルコールと共に、不均一系イオン交換樹脂触媒を使用した二段階エステル化によって調製され、かつその用途は幅広い動作条件に曝される可能性のあるクロノメーター、及び精巧なベアリング、ゲージ、メーター、時計等のMEMSベースのデバイス用の他の精巧な精密部品である。
【0089】
本発明は、優れた生分解性、高い粘度指数及び低い流動点、高い引火点、非常に良好な潤滑性、良好な酸化安定性及び腐食防止特性を有し、シーリング材との使用に適したエステル基油を開発することである。
【0090】
本発明は、多機能EP添加剤としてのジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZDDP)と1.5~4%の推奨用量でブレンドしたとき、融着荷重と耐摩耗性能を約30%向上させる、合成生成物を含むエステル基油を開発することである。
【0091】
特徴の1つは、生成物は、100時間の酸化安定性試験に合格することである。この後、抗酸化添加剤の2,6-ジターシャリーブチル4,メチルフェノールを添加した。
【0092】
本発明のもう1つの特徴は、無視し得る酸性度を有する高純度のポリオール複合体エステルを含むエステル基油である。本発明により得られた生成物は、クロノメーターやMEMSデバイス中の他の精巧な部品用の生分解性で環境に優しい潤滑剤として使用でき、ASTM D:5864-2009の方法に従って、完全に環境に優しく生分解性であり、ここで、従来のMEMS油は、生分解性ではなく、素材として鉱物油及びPFPEを含み、従来の触媒を使用して合成される。
【0093】
市販の配合物で使用される市販の鉱油添加剤を使用することによる、MEMS用途のエステル基油配合物。
【0094】
本発明の別の特徴は、本発明は、市販のクロノメーター及び他の精巧な機器用油仕様の要件を満たし、環境に優しく生分解性のポリオール複合エステルを含むMEMS用潤滑剤基油を提供することである。
【0095】
従って、本発明は、微小電気機械システムのための、新規で、環境に優しく生分解性の潤滑剤を提供する。本発明では、新世代の潤滑剤素材は、2,2-ジメチル,1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール等のポリオールと、アジピン酸及びアゼライン酸等の脂肪族ジカルボン酸とをモノアルコールと共に、不均一系触媒としてIndion140を使用して、エステル化によって調製された。より具体的には、本発明は、クロノメーター及び他の精巧なベアリング、ゲージ、メーター、時計等の幅広い動作条件に曝される可能性が高いMEMSベースのデバイスなどの精巧な精密部品の潤滑剤にこれらの新世代の潤滑剤素材を採用することに関する。
【0096】
従って、本発明は、以下を含むプロセスにおける微小電気機械システム用の新規で、環境に優しく生分解性のエステル素材の開発に関する。
【0097】
1.不均一系触媒の存在下での、ポリオールとジカルボン酸、及びモノアルコールとのエステル化
(i)ジカルボン酸は、C~C10の炭素範囲に属し、アジピン酸やアゼライン酸等である。
【0098】
(ii)ポリオールは、C~Cの範囲に属し、2,2-ジメチル,1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール等であり、使用したモノアルコールは、2-エチル-1-ヘキサノールであった。
【0099】
(iii)ポリオール対ジカルボン酸対モノアルコールの比率は、ジオールの合成に対して、1:2:2の範囲内に入る。
【0100】
(iv)不均一系触媒は、25(wt%)の濃度で使用されるIndion140であり、2回の再利用後でも実質的な反応性を失わない。
【0101】
2.反応物を、107~115℃の温度範囲で8~12時間の反応時間で加熱して、複合エステルを得る。
【0102】
3.生成物を水で洗浄した後、乾燥させ、溶媒を回収して生成物を分離し、次の特性を有する生成物を開発する。
【0103】
(i)ポリオールアルコールから合成した生分解性のMEMS潤滑剤素材。
【0104】
(ii)配合生成物は、優れた潤滑性と耐摩耗性を有している。
【0105】
(iii)配合生成物は、優れた耐荷重能力を有している。
【0106】
(iv)本発明によって得られたエステル基油配合物は、ASTM D:5864-95の方法に従って、完全に環境に優しく生分解性であるMEMS潤滑油として使用でき、ここで、従来の鉱物ベースのMEMS潤滑油は生分解性ではない。
【0107】
本発明は、毒性及び非生分解性である従来の油の代わりに、C~Cのポリオールアルコール、C~C10の脂肪族ジカルボン酸及びCのモノアルコール、抗酸化添加剤を1:2:2のモル比で出発物質として利用した。
【0108】
本発明の別の特徴は、非従来型の国産の市販のイオン交換樹脂Indion140の触媒としての使用である。
【0109】
本発明の実施形態では、ポリオール複合エステル基油は、IS:1448:P-25仕様による40℃で34.26~43.54cStの粘度範囲、及びP-56による161~171の高い粘度指数から選択してよい。
【0110】
本発明の別の実施形態では、使用したポリオールアルコールは、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオールであり、かつモノアルコールは、2-エチル-1-ヘキサノールであった。
【0111】
本発明の更に別の実施形態では、使用した酸は、C~C10の炭素範囲を有する脂肪族ジカルボン酸(アジピン酸及びアゼライン酸)であった。
【0112】
本発明の更に別の実施形態では、使用したモノアルコールは、2-エチル-1-ヘキサノールであった。
【0113】
本発明の更に別の実施形態では、使用した溶媒は、トルエン及びキシレンであった。
【0114】
本発明の更に別の実施形態では、加熱は、107~115℃の温度範囲で行われた。
【0115】
本発明の更に別の実施形態では、加熱及び撹拌は、8~12時間連続的に行われた。
【0116】
本発明の更に別の実施形態では、MEMS用ポリオール複合エステルは、非従来型の国産の市販のイオン交換樹脂(Indion140)触媒を使用することによって合成された。
【0117】
本発明の更に別の実施形態では、回収した触媒は、反応時間を増加したのみで、反応性の損失なく、ジオールに対して2回使用された。
【0118】
本発明の更に別の実施形態では、非従来型の国産の市販の触媒を使用することにより、無視し得る酸性度で誘導生成物が得られる。このプロセスは、扱いやすさ、反応時間の短縮、高純度、リサイクル可能な性質、エネルギー節約、及び90%以上のオーダーの収率による費用対効果に優れている。
【0119】
本発明の更に別の実施形態では、合成したエステルは、IR分光法によって特徴付けられた。ポリオール複合エステルのIRスペクトルは、1746cm-1にエステルの特徴的なピークを示す。エステルのカルボニル振動数及びエステルの炭素-酸素伸縮振動は、それぞれ1746cm-1及び1158cm-1に現れた。1158~1000cm-1の間の低い振動数の強いバンドは、脂肪族エステルのものである。723cm-1のピークは、潤滑剤に存在する長いアルキル鎖によるものである。エステルの炭素-水素の伸縮振動と変角振動は、3007~2854cm-1と1379~1466cm-1で観察された。-COOH基及び-OH基に対応するバンドはなく、このことは、アルコールの全ての-CHOH基の完全なエステル化、及び-COOH基の完全な変換を示す。
【0120】
本発明の更に別の実施形態では、MEMSのクロノメーター及び他の精巧な機器用の本発明の生成物は、ASTM D:5864-2004に従って、完全に生分解性である。
【0121】
本発明の更に別の実施形態では、本発明の生成物は、藻類阻害試験の修正された方法、ヨーロッパ共同体の公式ジャーナルNo.L 383A/179-185(1993)に従って、下水細菌に対して非毒性であり、MEMSのクロノメーター及び他の精巧な機器用油の潤滑剤として使用できる。
【0122】
合成した生成物は、以下の特性を有する。
【0123】
a.調製したエステルは、仕様に適合するP-25による、40℃で31.0~47.0cStの粘度グレード、及びP-56による161~171の高い粘度指数を有する。
【0124】
b.合成した生成物は、IS:1448:P-10による、約<-39℃の流動点を有した。
【0125】
c.ポリオール複合エステルは、ASTM D:92による仕様に対して、210~232℃の優れた引火点を示した。
【0126】
d.合成したエステルの生分解性は、生分解性に対するASTM D:5864標準の試験方法に従って、95%を超える。
【0127】
e.生成物は、下水細菌に対して無毒である。
【0128】
f.鉱油に適した従来の添加剤は、このエステルでも肯定的な反応を示す。
【0129】
g.生成物は、ASTM D:4172Bによる、40kgfの負荷で0.350mmの摩耗痕径を有する良好な耐摩耗性を有する。
【0130】
h.生成物は、耐荷重性に優れている。
【0131】
i.生成物は、潤滑性に優れている。
【0132】
j.生成物は、良好な酸化安定性を有する。
【0133】
k.生成物には、蒸発損失がない。
【0134】
l.生成物は、金属への良好な付着特性を有する。
【0135】
m.生成物は、優れた腐食防止特性を有する。
【0136】
n.合成したポリオール複合エステルは、市販のクロノメーター及び他の精巧な機器用油の仕様の要件を満たす、環境に優しく生分解性のMEMS潤滑剤基油に匹敵する。
【0137】
o.合成の生分解性のポリオール複合エステル潤滑剤は、優れた生分解性、高い粘度指数、低い流動点、高い引火点、非常に優れた潤滑性、優れた酸化安定性、腐食防止特性を有し、シーリング材との使用に適している。
【0138】
p.採用した合成プロセスは、無視し得る酸性度で高純度のポリオール複合体エステルを生成した。本発明により得られた生成物は、ASTM D:5864-2009の方法に従って、完全に環境に優しく生分解性であり、かつMEMSクロノメーター及び他の精巧な機器用油の生分解性で環境に優しい潤滑剤として使用でき、ここで、従来のMEMS油は、生分解性ではなく、素材として鉱油及びPFPEを含み、従来の触媒を使用して合成される。
【0139】
均一系触媒はIndion140であり、これは最大動作温度150℃の-SOH型のマクロポーラス架橋ポリスチレン(Hイオン 4.8最小乾燥、meq/gm、湿潤、meq/ml 1.7最小)のカチオンイオン交換樹脂である。その外観は、灰色の球形の乾燥したビーズであり、0.42~1.2mmの粒子径を有する。これは、(最大)5%の水分を含み、pHは0~7の範囲である。
【0140】
これまで、基油としてポリオール複合エステル、具体的には、イオン交換樹脂触媒でのポリオールアルコールとジカルボン酸、及びモノアルコール、を含む潤滑剤基油は、MEMSベースのデバイス中で使用される精巧なベアリング、ギア、ゲージ、メーター、時計等の潤滑用の潤滑剤として報告されていない。
【0141】
本研究は、ポリオールアルコール(2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール)、二塩基酸(アジピン酸及びアゼライン酸)、及びエンドキャップ剤としてモノアルコール(2-エチル1-ヘキサノール)、及び非従来型の国産の市販のイオン交換樹脂Indion140触媒を市販の添加剤と共に含む、新規の環境に優しく生分解性のMEMSバイオ潤滑剤基油の開発である。MEMSバイオ潤滑剤基エステルの合成のために最適化した反応条件は、1:2:2モルのポリオールアルコール-二塩基酸-モノアルコール、25%の非従来型イオン交換樹脂触媒、反応温度107~115℃であり、90~95%のエステルへの転化率を提供する。生成物の非毒性及び生分解性、既知の市販のクロノメーター及び他の精密機器用油生成物への代替品。市販の入手可能な生成物は、生分解性ではなく、毒性のある鉱油、フルオロエーテル、及びPFPE潤滑剤を素材として使用し、かつ従来の触媒を使用して合成する。
【0142】
本発明は、非従来型の国産のイオン交換樹脂触媒を使用し、市販の添加剤の使用、非毒性及び生分解性で、既知の市販のクロノメーター及び他の精巧な精密機器用油生成物への代替であり、既知の生成物は、毒性、非生分解性、制限された性能と寿命を有する、従来の鉱油、フルオロエーテル及びPFPEベースの潤滑剤である。
【0143】
第二段階のエステル化、すなわちモノアルコールの使用による本発明の重要な技術的進歩は、以下の通りである。
【0144】
複合エステルは、ポリオール、ジカルボン酸、及びエンドキャッピング剤としてのモノアルコールの反応を介して生成される。これらの複合エステルは、エンドキャッピング剤として2-エチルヘキサノールを使用して合成され、ダイマー、トリマー及びその他のオリゴマーの形成により、ジオールエステル及びポリオールエステルと比較して、より高い粘度を有する。この方法で調製した複合エステルは、ポリオール部分の高い転化率を有し、低い酸価とヒドロキシル価を有する。
【0145】
エステルは、通常、p-トルエンスルホン酸、Ni、Cu、Fe、V、Co、及びSnベースの触媒、Cu、Cr、酸化物、アルコキシジルコナート、並びにヘテロポリ酸を使用して合成される。これらのプロセスでは、触媒は一回限りの用途で使用され、廃棄の問題があり、継続的な監視を必要とし、やや劣る品質の基油であり、酸性度が高く炭化した生成物を含む基油が得られる。
【0146】
本研究では、複合エステルは、国産の市販のイオン交換樹脂触媒を使用して合成されている。この触媒の使用は、従来の触媒よりも優れており、国産であり、反応性を失うことなく2回再利用される。このプロセスは、取り扱いの容易さ、反応時間の短縮、アルコールと酸のモル比の低さ、高純度、及び、再利用可能な性質と90%以上のオーダーの収率による費用対効果の点で優れている。費用対効果の高い効率的なプロセスは、新規の触媒システムを使用して単純で国産の原材料から合成の複合エステル基油を製造するもので、MEMS用途のために開発された。代表的な複合エステルは、以下の通りである。
【0147】
【化2】
【0148】
【化3】
【0149】

以下の例は、本発明の作用を実際の実施で説明するために与えられ、本発明の範囲を限定するものと決して解釈されるべきではない。
【0150】
例-1
2,2-ジメチル-1,3-プロパンジアジピック-2-エチル-1-ヘキサノアート(DMADEH)
2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオールとアジピン酸の混合物(1:2:2モル、10.4gと29.2g)に、それぞれ25%(16.2g)のIndion140触媒とトルエン100mlを添加した。内容物を、メカニカルスターラーで攪拌し、107~115℃で4~5時間還流して、ハーフエステルハーフ酸を得た。3.6mlの水を除去した後(第1段階)、混合物を冷却し、残りの-COOH基が全てエステル化されるまで、前記内容物を2-エチル-1-ヘキサノール(26.0g)と還流下で反応させた。反応は、水3.6g(第2段階)(理論値3.6g)を回収することで、8.30時間で完了した。生成物の収率は、92.8%の転化率であり、未反応の物質を72℃にて真空下(2mmHg)で留去した。この生成物は、0℃と40℃でそれぞれ323.98、31.00の粘度、161の粘度指数、及び>-39℃の流動点を示す。
【0151】
配合物は、ポリオールエステル:抗酸化剤(1%):ポリオールエステルの1.5のZDDPを使用して調製した。
【0152】
例-2
2,2-ジメチル-1,3-プロパン-ジアゼライック-2-エチル-1-ヘキサノアート(DMAZEH)
脂肪族ジカルボン酸を変更、すなわちアゼライン酸にする以外、同一の条件下で実験-1を繰り返した。それぞれ1:2:2モルのポリオール、ジカルボン酸、脂肪族モノアルコール(10.4gms+37.6gms+26.0gms)及びIndion140触媒25%(18.3gms)。反応は、3.6gの実験に基づく水(理論値3.6g)を回収することで、8.45時間で完了した。水分を除去した後、内容物を更に1~2時間加熱し、冷却して濾過し、85mlの溶媒(トルエン)を回収した。生成物の収率は、93.7%であった。この生成物は、100℃及び40℃でそれぞれ5.60、25.44の粘度、169の粘度指数、及び>-27℃の流動点を示す。
【0153】
例-3
2,2-ジメチル-1,3-プロパンジセバシッド-2-エチル-1-ヘキサノアート(DMSEH)
酸部分を変更する以外、同一の条件下で実験1を繰り返した(それぞれ、1:2:2モルのDMPD、セバシン酸、2-エチル-1-ヘキサノール(10.4g+40.4g+26.0g)及び25%(19g)のIndion140触媒)。反応は、両段階で、3.6gの実験に基づく水(理論値3.6g)を回収することで、9時間で完了した。水の除去後、内容物を更に1~2時間加熱し、冷却して濾過し、80mlの溶媒(トルエン)を回収した。生成物の収率は、91%であった。この生成物は、100℃及び40℃でそれぞれ14.8、90.33の低い粘度、172の粘度指数、>-24℃の流動点を示す。
【0154】
例-4
2,2-ジエチル-1,3-プロパンジアジピック-2-エチル-1-ヘキサノアート(DEADEH)
2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオールとアジピン酸(1:2モル、13.2g+29.2g)の混合物に、それぞれIndion140触媒25%(17.0g)とトルエン100mlを添加した。内容物を、メカニカルスターラーで攪拌し、111℃で4~5時間還流して、ハーフエステルハーフ酸を得た。3.6gの水(第1段階)を除去した後、混合物を冷却し、残りのカルボキシル基が全てエステル化されるまで、内容物を2-エチル-1-ヘキサノール(26g)と還流下で反応させた。反応は、水3.6g(第2段階)(理論値水3.6g)を回収することで、5.45時間で完了した。水の除去後、内容物を更に1~2時間加熱し、冷却して濾過し、85mlのトルエンを真空蒸留により回収した。生成物の収率は、92.1%であった。この生成物は、100℃及び40℃でそれぞれ12.83、91.3の低い粘度、138の粘度指数、>-24℃の流動点を示す。
【0155】
例-5
2,2-ジエチル1,3-プロパンジアゼライック-2-エチル-1-ヘキサノアート(DEAZEH)
脂肪族ジカルボン酸を変更、すなわちアゼライン酸にすること以外、同一の条件下で実験4を繰り返した。1:2:2モルのDEPD、アジライン酸、2-エチル-1-ヘキサノール(13.2g+37.6g+26g)及び25%(19g)のIndion140触媒。反応は、両段階で3.6gの実験に基づく水(理論値は3.6g)を回収することで、9時間で完了した。水の除去後、内容物を更に1~2時間加熱し、冷却して濾過し、85mlの溶媒(トルエン)を回収した。生成物の収率は、90.2%であった。この生成物は、0℃及び40℃でそれぞれ408.23、47.0の低い粘度、171の粘度指数、及び>-39℃の流動点を示す。
【0156】
配合物は、ポリオールエステル:抗酸化剤(1%):ポリオールエステルの3.5のZDDPを使用して調製した。
【0157】
例-6
2,2-ジエチル1,3-プロパンジセバシック-2-エチル-1-ヘキサノアート(DESEH)
酸を変更、すなわちセバシン酸にすること以外、同一の条件下で実験4を繰り返した、それぞれ1:2:2モルのDEPD、セバシン酸、2-エチル-1-ヘキサノール(13.2g+40.4g+26.0g)及び25%(19.7g)のIndion140触媒。反応は、両段階で3.6gの実験水(理論値3.6g)を回収することで、9.45時間で完了した。水の除去後、内容物を更に1~2時間加熱し、冷却して濾過し、80mlの溶媒(トルエン)を回収した。生成物の収率は、91.9%であった。この生成物は、100℃及び40℃でそれぞれ7.24、36.8の低い粘度、165の粘度指数、及び>-39℃以上の流動点を示す。
【0158】
例-7
1,1,1,-トリスヒドロキシメチルプロパントリアジピック-2-エチル-1-ヘキサノアート(THADEH)
THMPとアジピン酸それぞれ1:3モル(1,3.4g+43.8g)の混合物に、25%(23.7g)のIndion140触媒とトルエン100mlを添加した。内容物をメカニカルスターラーで攪拌し、111℃で4~5時間還流して、ハーフエステルハーフ酸を得た。8.4gの実験に基づく水(第1段階)を除去後、混合物を冷却し、残りのカルボキシル基がすべてエステル化されるまで、内容物を還流下で2-エチル-1-ヘキサノール(39g)と反応させた。反応は、水5.4g(第2段階)(理論値5.4g)を回収することで、10.25時間で完了した。水の除去後、内容物を更に1~2時間加熱し、冷却して濾過し、80mlのトルエンを真空蒸留により回収した。この生成物の収率は、94.4%であった。この生成物は、100℃と40℃でそれぞれ10.17、26.51の低い粘度、196の粘度指数、及び>-15℃の流動点を示す。
【0159】
例-8
1,1,1-トリスヒドロキシメチルプロパントリアジライック-2-エチル-1-ヘキサノアート(THAZEH)
酸部分を変更、すなわちアゼライン酸にすること以外、同一の条件下で実験7を繰り返した。それぞれ、1:3:3モルのTHMP、アゼライン酸、2-エチル-ヘキサノール(13.4g+56.4g+39g)及び25%(27g)のIndion140触媒。反応は、両段階で5.4gと5.2g(理論値5.4g)を回収することで、9.45時間で完了した。水の除去後、内容物を更に1~2時間加熱し、冷却して濾過し、80mlの溶媒(トルエン)を回収した。生成物の収率は、92.7%であった。この生成物は、100℃及び40℃でそれぞれ8.53、46.07の低い粘度、165の粘度指数、及び>-27℃の流動点を示す。
【0160】
例-9
1,1,1,-トリスヒドロキシメチルプロパントリセバシック-2-エチル-1-ヘキサノアート(THSEH)
酸部分を変更、すなわちセバシン酸にすること以外、同一の条件下で実験7を繰り返した。それぞれ、1:3:3モルのTHMP、セバシン酸、2-エチル-ヘキサノール(13.4g+60.6g+39g)及び25%(28g)のIndion140触媒。反応は、両段階で5.4gの実験に基づく水(理論値は5.4g)を回収することで、10.45時間で完了した。水(理論値)を除去後、内容物を更に1~2時間加熱し、冷却して濾過し、及び80mlの溶媒(トルエン)を回収した。この生成物の収率は、94.3%であった。この生成物は、100℃及び40℃でそれぞれ16.87、111の低い粘度を示し、196の粘度指数、>-24℃の流動点を示す。
【0161】
実験1~9に基づく生成物の物理化学的特性と性能評価では、例1及び例5は、クロノメーター用の潤滑剤の(IS-1088、2004)仕様に記載される、40℃での粘度とその他の特性に適合し、MEMS潤滑剤として適している。
【0162】
以下に示す例10及び例11では、酸化特性及び極圧特性を改善するために、抗酸化剤及びEP添加剤を配合する。
【0163】
例-10
脂肪族ジカルボン酸を変更、すなわちアゼライン酸にすることを除いて、同一の条件下で実験5を繰り返した。それぞれ1:2:2モルのDEPD、アゼライン酸、2-エチル-1-ヘキサノール(1,3.2g+37.6g+2,6g)及び25%(19g)の触媒。反応は、両段階で3.6gの実験に基づく水(理論値は3.6g)を回収することで、9時間で完了した。水の除去後、内容物を更に1~2時間加熱し、冷却して濾過し、85mlの溶媒(トルエン)を回収した。基油生成物の収率は、90.2%であった。この生成物は、0℃及び40℃でそれぞれ408.23、47.0の低い粘度、171の粘度指数、及び>-39℃の流動点を示す。
【0164】
基油は、基油に基づいて、1%の抗酸化剤の2,6-ジターシャリーブチル-4,メチルフェノール(BHT)、及び4%のジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZDDP)の推奨用量でブレンドした。ZDDPは、炭素長1~14の分岐アルカン及び直鎖アルカンを含むアルキル基を有する。ジアルキル(C3~C6)ジチオリン酸亜鉛の混合物は、多機能EP添加剤としてCAS番号84605-29-8に分類される。
【0165】
例-11
2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオールとアジピン酸の混合物(1:2:2モル、10.4gと29.2g)に、それぞれ25%(16.2g)の触媒とトルエン100mlを添加した。内容物を、メカニカルスターラーで攪拌し、107~115℃で4~5時間還流して、ハーフエステルハーフ酸を得た。3.6mlの水を除去した後(第1段階)、混合物を冷却し、残りの-COOH基が全てエステル化されるまで、内容物を2-エチル-1-ヘキサノール(26.0g)と還流下で反応させた。反応は、水3.6g(第2段階)(理論値3.6g)を回収することで、8.30時間で完了した。基油生成物の収率は、92.8%の転化率であり、未反応の物質を72℃にて真空下(2mmHg)で留去した。この生成物は、0℃と40℃でそれぞれ323.98、31.00の粘度、161の粘度指数、>-39℃の流動点を示す。
【0166】
基油には、1%の抗酸化剤の2,6-ジターシャリーブチル-4,メチルフェノール(BHT)、及び2.5%のジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZDDP)を推奨用量でブレンドした。使用のZDDPは、炭素長1~14の分岐アルカン及び直鎖アルカンを含むアルキル基を有する。ジアルキル(C3~C6)ジチオリン酸亜鉛の混合物は、多機能EP添加剤としてCAS番号84605-29-8に分類される。
【0167】
例-12
(DMADEH)と(DEAZEH)の混合物
潤滑剤混合物を、合成した非従来型の複合ポリオール潤滑剤素材を使用して調製し、それは他の複合ポリオールと既知の量でブレンドした。1:1と1:2の比率の混合物を、100℃の磁気ホットプレート上で2時間激しく攪拌することにより均一にした。複合ポリオールエステルは、容易に均一で透明なブレンドに混合した。潤滑剤ブレンドでは、試験の前後で分離が報告されなかった。調製したままの潤滑剤ブレンドは、それらの物理化学的特性及びトライボロジー性能について試験した。
【0168】
例-13
2,2-ジメチル1,3-プロパンジアジピック-2-エチル-1-ヘキサノアート(DMADEH)
キシレンを溶媒として使用したため反応温度を(138℃)に増加したこと以外、同一の条件下で実験1を繰り返した。反応は、6時間で完了し、観察した収率は96%であった。反応時間と収率は、反応温度を増加しても、ほぼ同じである。従って、エステル化の最適化した反応温度は、107~115℃であった。
【0169】
例-14
2,2-ジメチル-1,3-プロパンジアジピック-2-エチル-1-ヘキサノアート(DMADEH)
20wt%のIndion140触媒を使用して、同一の条件下で、実験1を繰り返した。2,2-ジメチル1,3-プロパンジオールとアジピン酸(1:2:2モル)の混合物に、20%のIndion140触媒とトルエン100mlを添加した。内容物を、メカニカルスターラーで攪拌し、111℃で4~5時間還流して、ハーフエステルハーフ酸を得た。水の除去後(第1段階)、混合物を冷却し、残りの全ての-COOH基がエステル化されるまで、内容物を2-エチル-1-ヘキサノールと還流下で反応させた。反応は、70%の水(第2段階)を回収することで、8.30時間で完了した。生成物の収率は、78.8%の転化率であり、未反応の物質を72℃にて真空下(2mmHg)で留去した。
【0170】
例-15
2,2-ジメチル1,3-プロパンジアデピック-2-エチル-1-ヘキサノアート(DMADEH)
Indion140触媒を25wt%に増加することを以外、同一の条件下で、実験1を繰り返した。反応は、100%の実験に基づく水(理論値)、95mlの溶媒(トルエン)を回収することで、8.30時間で完了し、92.8%の転化率であった。
【0171】
例-16
2,2-ジメチル1,3-プロパンジアジピック-2-エチル-1-ヘキサノアート(DMADEH)
触媒を30wt%に増加すること以外、同一条件下で、実験1を繰り返した。反応は、92.8%の転化率で、8.30時間で完了した。
【0172】
上記実験12~14に基づき、最適化した条件下でのエステル化反応で使用されるIndion140触媒の割合は、25wt%だった。
【0173】
触媒の反応性
Indion140触媒の寿命を確保するために、回収した触媒を過剰の溶媒(トルエン)で完全に洗浄し、室温で乾燥した。触媒は、反応性を失うことなく2回再利用する。
【0174】
例-17
2,2-ジメチル-1,3-プロパンジ-2-エチル-1-ヘキサノアート(DMADEH)
同一の条件下(1:2:2モルの2,2-ジメチル1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル1,3-プロパンジオール/アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸/2-エチル-1-ヘキサノール)及び25wt%のIndion140触媒で、実験1を繰り返した。反応は、8.30時間で完了し、観察した収率は92.8%であった。Indion140触媒は、反応性を失うことなく2回再利用され、反応時間のみを増加した。3回目は18時間後でも反応が完了せず、観測した収率は40%であった。
【0175】
アジピン酸、アゼライン酸、及び2-エチル-1-ヘキサノールを使用したDMPD及びDEPDのMEMSの複合エステルの合成では、最適化した反応条件は、1:2:2モルのポリオール、二酸、及びモノアルコール、25%の非従来型イオン交換樹脂Indion140触媒、及び反応温度107~115℃であり、90%~95%のエステルへの転換を提供する。
【0176】
合成生成物の特性は、鉱油ベースの配合物のBIS仕様1088と比較され、結果を以下の表1に示す。特性は、BIS仕様よりも優れている。
【0177】
【表1】
【0178】
合成した生成物は、表2に示すように、良好なトライボロジー特性も備えている。
【0179】
【表2】
【0180】
発明の利点
1.環境に優しく生分解性のその性質のため、従来の鉱油及びパーフルオロポリエーテルベースの市販のMEMS潤滑剤基油に対する優れた代替品である。
【0181】
2.合成生成物の主な利点は、優れた潤滑性である。
【0182】
3.合成生成物の主な利点は、優れた耐荷重特性である。
【0183】
4.合成生成物の主な利点は、鉱油に適した従来の添加剤もこのエステルで肯定的な反応を示すことである。
【0184】
5.合成生成物の主な利点は、100時間の酸化安定性試験に合格することである。この後、耐摩耗性及び抗酸化添加剤の2,6-ジターシャリーブチル4-メチルフェノールを使用した。
【0185】
6.合成したポリオール複合エステルは、環境に優しく生分解性のMEMSのクロノメーターやその他の精巧な機器用油を配合するための新規の生分解性素材として使用するのに適している。
【0186】
7.合成生成物の主な利点は、非従来型の国産の市販のIndion-140イオン交換樹脂触媒の使用である。
【0187】
8.非従来型の触媒を使用して合成した生成物は、生分解性MEMSクロノメーターやその他の精巧な機器用油の新規の有力候補であり、完全に環境に優しく、生分解性であり、現在使用される毒性で非生分解性の従来型ベースの生成物の代替である。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] 鉱油を含まない潤滑剤配合物であって、
2,2-ジエチル,1,3-プロパン-ジアゼライック-2-エチル-1-ヘキサノアート、2,2-ジメチル,1,3-プロパン-ジアジピック-2-エチル-1-ヘキサノアート、及びそれらの混合物からなる群から選択されるポリオール複合エステル;及び
任意で抗酸化剤;及び
任意で添加剤
を含む、前記配合物。
[2] 前記配合物は、
(i)94%~100%の範囲のポリオール複合エステル;
(ii)0~2%の範囲の抗酸化剤;及び
(iii)0~4%の範囲の添加剤
を含む、[1]に記載の配合物。
[3] 前記ポリオール複合エステルの比率は、1:1~1:3の比率である、[1]に記載の配合物。
[4] 前記ポリオール複合エステルの比率は、1:1である、[1]に記載の配合物。
[5] 前記抗酸化剤は、2,6-ジターシャリーブチル-4,メチルフェノール(BHT)、アルキル化ジフェニルアミン、3,7-ジ-t-オクチルフェノチアジン、アルキル化PANA、及びジ-t-ブチル-p-クレゾール(DBPC)からなる群から選択される、[1]に記載の配合物。
[6] 前記添加剤は、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZDDP)、5,5-ジチオビス-(1,3,4-チアジアゾール-2(3H)-チオン)、亜リン酸水素ジメチル、亜リン酸水素ジブチル、亜リン酸水素ジ-n-オクチル、亜リン酸水素ジ-2-エチルヘキシル、亜リン酸水素ジオレイル、亜リン酸水素ジラウリル、トリチオ亜リン酸トリウラリル、亜リン酸トリラウリル、トリ-C 12 -C 14 ホスフィット、及びトリ-C 12 -C 14 ホスフィットからなる群から選択される、[1]に記載の配合物。
[7] [1]に記載の鉱油を含まない潤滑剤配合物を合成するための方法であって、
(i)C ~C 炭素のポリオールとC ~C 10 炭素のジカルボン酸の混合物を1:2の比率で、不均一系触媒と溶媒の存在下、還流温度で2~4時間の範囲で反応させて反応混合物を得る工程;
(ii)前記反応混合物から水を除去し、かつ前記混合物を冷却して、冷却した混合物を得る工程、
(iii)工程(ii)の前記冷却した混合物を、全ての残りのカルボキシル基がエステル化されるまで、少なくとも2モルのモノアルコールと還流条件下で反応させ、かつ、前記反応を、水が除去されるまで8~12時間の範囲で完了させて、基油としてのポリオール複合エステルを得る工程、及び
(iv)工程(iii)で得られた前記基油を、前記基油が94%~100%であり、抗酸化剤1~2%及び添加剤1.5~4%とブレンドして、前記鉱油を含まない潤滑剤配合物を得る工程、
を含む、前記方法。
[8] 前記ポリオールは、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、及び1,1,1,-トリスヒドロキシメチルプロパンからなる群から選択される、[7]に記載の方法。
[9] 前記ジカルボン酸(C ~C 10 )は、アジピン酸、アゼライン酸、及びセバシン酸からなる群から選択される、[7]に記載の方法。
[10] 工程(iii)での前記モノアルコールは、2-エチル-1-ヘキサノール、イソオクタノール、ノナノール、及びイソデカノールからなる群から選択される、[7]に記載の方法。
[11] 前記溶媒は、トルエン又はキシレンから選択される、[7]に記載の方法。
[12] 前記抗酸化剤は、2,6-ジターシャリーブチル-4,メチルフェノール(BHT)、アルキル化ジフェニルアミン、3,7-ジ-t-オクチルフェノチアジン、アルキル化PANA、及びジ-t-ブチル-p-クレゾール(DBPC)からなる群から選択される、[7]に記載の方法。
[13] 前記添加剤は、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZDDP)、5,5-ジチオビス-(1,3,4-チアジアゾール-2(3H)-チオン)、亜リン酸水素ジメチル、亜リン酸水素ジブチル、亜リン酸水素ジ-n-オクチル、亜リン酸水素ジ-2-エチルヘキシル、亜リン酸水素ジオレイル、亜リン酸水素ジラウリル、トリチオ亜リン酸トリウラリル、亜リン酸トリラウリル、トリ-C 12 -C 14 ホスフィット、及びトリ-C 12 -C 14 ホスフィットからなる群から選択される、[7]に記載の方法。
[14] 前記不均一系触媒は、スルホン酸官能基を含むスチレンジビニルベンゼンコポリマー樹脂である、[7]に記載の方法。
[15] 工程(i)及び工程(ii)での前記反応温度は、大気圧で107~115℃の範囲である、[7]に記載の方法。
[16] 前記基油は、潤滑剤としての用途に使用される、[1]に記載の配合物。
[17] 式Aのポリオール複合エステル。
【化4】
上式で、
nは3であり、
は4~8であり、
RはC1~C5から選択されるアルキルである。