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▶ ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシーの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-05
(45)【発行日】2022-08-16
(54)【発明の名称】変性油溶性ポリアルキレングリコール
(51)【国際特許分類】
   C08G 65/332 20060101AFI20220808BHJP
   C10M 129/68 20060101ALI20220808BHJP
   C10N 20/02 20060101ALN20220808BHJP
   C10N 20/00 20060101ALN20220808BHJP
   C10N 40/25 20060101ALN20220808BHJP
   C10N 30/02 20060101ALN20220808BHJP
【FI】
C08G65/332
C10M129/68
C10N20:02
C10N20:00 Z
C10N40:25
C10N30:02
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020531637
(86)(22)【出願日】2017-12-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-24
(86)【国際出願番号】 CN2017118222
(87)【国際公開番号】W WO2019126923
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2020-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128484
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 司
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ハン、ヤオクン
(72)【発明者】
【氏名】シェン、チョン
(72)【発明者】
【氏名】クレイヴス、マーティン アール.
(72)【発明者】
【氏名】ツァオ、ヨン
【審査官】櫛引 智子
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-068401(JP,A)
【文献】特開平07-233255(JP,A)
【文献】特開2003-155339(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G,C10M,C10N
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iを有するエステル化油溶性ポリアルキレングリコールであって、
[O(RO)(RO)(C=O)R 式I
式中、Rは、1~18個の炭素原子を有する直鎖アルキル、4~18個の炭素原子を有する分岐アルキル、または6~30個の炭素原子を有するアリールであり、ROは、1,2-プロピレンオキシドから誘導されたオキシプロピレン部分であり、ROは、ブチレンオキシドから誘導されたオキシブチレン部分であり、ROおよびROは、ブロックまたはランダム分布であり、Rは、1~18個の炭素原子を有する直鎖アルキル、4~18個の炭素原子を有する分岐アルキル、または6~18個の炭素原子を有するアリールであり、nおよびmは、それぞれ独立して、0~20の範囲の整数であり、n+mは、0より大きく、pは、1~4の整数であり
(R O) の分子量値を、(R O) および(R O) の分子量値の合計で除した値が、0.5~0.95の値を有する、エステル化油溶性ポリアルキレングリコール。
【請求項2】
前記エステル化油溶性ポリアルキレングリコールが、100℃で6cSt以下である動粘度を有する、請求項1に記載のエステル化油溶性ポリアルキレングリコール。
【請求項3】
前記エステル化油溶性ポリアルキレングリコールが、40℃で25cSt未満である動粘度を有する、請求項1または2に記載のエステル化油溶性ポリアルキレングリコール。
【請求項4】
が、直鎖アルキルである、請求項1~のいずれか一項に記載のエステル化油溶性ポリアルキレングリコール。
【請求項5】
が、分岐している、請求項1~のいずれか一項に記載のエステル化油溶性ポリアルキレングリコール。
【請求項6】
前記エステル化油溶性ポリアルキレングリコールが、ASTM D2270に従って決定された130~200の粘度指数を有する、請求項1~のいずれか一項に記載のエステル化油溶性ポリアルキレングリコール。
【請求項7】
油溶性ポリアルキレングリコールのASTM D6375に準拠するNOACK空気揮発性を低減する方法であって、
低粘度油溶性ポリアルキレングリコールをカルボン酸と反応させて、式Iを有するエステル化油溶性ポリアルキレングリコールを提供することを含み、
[O(RO)(RO)(C=O)R 式I
式中、Rは、1~18個の炭素原子を有する直鎖アルキル、4~18個の炭素原子を有する分岐アルキル、または6~30個の炭素原子を有するアリールであり、ROは、1,2-プロピレンオキシドから誘導されたオキシプロピレン部分であり、ROは、ブチレンオキシドから誘導されたオキシブチレン部分であり、ROおよびROは、ブロックまたはランダム分布であり、Rは、1~18個の炭素原子を有する直鎖アルキル、4~18個の炭素原子を有する分岐アルキル、または6~18個の炭素原子を有するアリールであり、nおよびmは、それぞれ独立して、0~20の範囲の整数であり、n+mは、0より大きく、pは、1~4の整数であり、
(R O) の分子量値を、(R O) および(R O) の分子量値の合計で除した値が、0.5~0.95の値を有し、
前記エステル化油溶性ポリアルキレングリコールが、前記低粘度油溶性ポリアルキレングリコールと比較して、低減したNOACK空気揮発性を有する、方法。
【請求項8】
油溶性ポリアルキレングリコールのASTM D7042に従って決定される粘度を低下させる方法であって、
低粘度油溶性ポリアルキレングリコールをカルボン酸と反応させて、式Iを有するエステル化油溶性ポリアルキレングリコールを提供することを含み、
[O(RO)(RO)(C=O)R 式I
式中、Rは、1~18個の炭素原子を有する直鎖アルキル、4~18個の炭素原子を有する分岐アルキル、または6~30個の炭素原子を有するアリールであり、ROは、1,2-プロピレンオキシドから誘導されたオキシプロピレン部分であり、ROは、ブチレンオキシドから誘導されたオキシブチレン部分であり、ROおよびROは、ブロックまたはランダム分布であり、Rは、1~18個の炭素原子を有する直鎖アルキル、4~18個の炭素原子を有する分岐アルキル、または6~18個の炭素原子を有するアリールであり、nおよびmは、それぞれ独立して、0~20の範囲の整数であり、n+mは、0より大きく、pは、1~4の整数であり、
(R O) の分子量値を、(R O) および(R O) の分子量値の合計で除した値が、0.5~0.95の値を有し、
前記エステル化油溶性ポリアルキレングリコールが、前記低粘度油溶性ポリアルキレングリコールと比較して、0℃以下の温度での低下した粘度を有する、方法。
【請求項9】
前記粘度が、動粘度および動的粘度から選択される、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、ポリアルキレングリコール、より具体的には、変性油溶性ポリアルキレングリコールに関する。
【背景技術】
【0002】
潤滑剤は、様々な用途に利用され得る。潤滑剤は、可動部品の表面間の摩擦を制御する、可動部品の摩耗を低減する、可動部品の表面の腐食を低減する、機械的衝撃を減衰させる、および/または密封を形成するなどの、様々な機能を有し得る。
【発明の概要】
【0003】
本開示は、式Iのエステル化油溶性ポリアルキレングリコールを提供する。
[O(RO)(RO)(C=O)R 式I
式中、Rは、1~18個の炭素原子を有する直鎖アルキル、4~18個の炭素原子を有する分岐アルキル、または6~30個の炭素原子を有するアリールであり、ROは、1,2-プロピレンオキシドから誘導されたオキシプロピレン部分であり、ROは、ブチレンオキシドから誘導されたオキシブチレン部分であり、ROおよびROは、ブロックまたはランダム分布であり、Rは、1~18個の炭素原子を有する直鎖アルキル、4~18個の炭素原子を有する分岐アルキル、または6~18個の炭素原子を有するアリールであり、nおよびmは、それぞれ独立して、0~20の範囲の整数であり、n+mは、0より大きく、pは、1~4の整数である。エステル化油溶性ポリアルキレングリコールの実施形態は、0.5~0.95の値を有する、(RO)の分子量値を、(RO)および(RO)の分子量値の合計で除した値を有し得る。好ましくは、Rは、本明細書に記載される直鎖アルキルまたは分岐である。
【0004】
エステル化油溶性ポリアルキレングリコールは、100℃で6cSt以下である動粘度を有し得る。エステル化油溶性ポリアルキレングリコールは、40℃で25cSt未満である動粘度を有し得る。本開示のエステル化油溶性ポリアルキレングリコールはまた、ASTM D2270に従って決定された130~200の粘度指数も有し得る。
【0005】
本開示は、ASTM D6375に準拠するNOACK空気揮発性の低減方法を提供し、本方法は、低粘度油溶性ポリアルキレングリコールをカルボン酸と反応させて、式Iを有するエステル化油溶性ポリアルキレングリコールを提供することを含み、
[O(RO)(RO)(C=O)R 式I
式中、Rは、1~18個の炭素原子を有する直鎖アルキル、4~18個の炭素原子を有する分岐アルキル、または6~30個の炭素原子を有するアリールであり、ROは、1,2-プロピレンオキシドから誘導されたオキシプロピレン部分であり、ROは、ブチレンオキシドから誘導されたオキシブチレン部分であり、ROおよびROは、ブロックまたはランダム分布であり、Rは、1~18個の炭素原子を有する直鎖アルキル、4~18個の炭素原子を有する分岐アルキル、または6~18個の炭素原子を有するアリールであり、nおよびmは、それぞれ独立して、0~20の範囲の整数であり、n+mは、0より大きく、pは、1~4の整数であり、エステル化油溶性ポリアルキレングリコールは、低粘度油溶性ポリアルキレングリコールと比較して、低減したNOACK空気揮発性を有する。
【0006】
本開示はまた、ASTM D7042に従って決定される低下した粘度の提供方法も提供し、本方法は、低粘度油溶性ポリアルキレングリコールをカルボン酸と反応させて、式Iを有するエステル化油溶性ポリアルキレングリコールを提供することを含み、
【0007】
[O(RO)(RO)(C=O)R 式I
式中、Rは、1~18個の炭素原子を有する直鎖アルキル、4~18個の炭素原子を有する分岐アルキル、または6~30個の炭素原子を有するアリールであり、ROは、1,2-プロピレンオキシドから誘導されたオキシプロピレン部分であり、ROは、ブチレンオキシドから誘導されたオキシブチレン部分であり、ROおよびROは、ブロックまたはランダム分布であり、Rは、1~18個の炭素原子を有する直鎖アルキル、4~18個の炭素原子を有する分岐アルキル、または6~18個の炭素原子を有するアリールであり、nおよびmは、それぞれ独立して、0~20の範囲の整数であり、n+mは、0より大きく、pは、1~4の整数であり、エステル化油溶性ポリアルキレングリコールは、低粘度油溶性ポリアルキレングリコールと比較して、0℃以下の温度での低下した粘度を有する。
【0008】
本開示の上記概要は、開示された各実施形態または本開示のすべての実施形態を説明することを意図するものではない。以下の説明は、例示的な実施形態をより具体的に例示するものである。本出願全体にわたるいくつかの場所では、例のリストを通じて指針が提供され、これらの例は、種々の組み合わせで使用することができる。各例において、列挙されたリストは、代表的なグループとしてのみ機能し、排他的なリストとして解釈されるべきではない。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示は、式Iのエステル化油溶性ポリアルキレングリコールを提供する。
[O(RO)(RO)(C=O)R 式I
式中、Rは、1~18個の炭素原子を有する直鎖アルキル、4~18個の炭素原子を有する分岐アルキル、または6~30個の炭素原子を有するアリールであり、ROは、1,2-プロピレンオキシドから誘導されたオキシプロピレン部分であり、ROは、ブチレンオキシドから誘導されたオキシブチレン部分であり、ROおよびROは、ブロックまたはランダム分布であり、Rは、1~18個の炭素原子を有する直鎖アルキル、4~18個の炭素原子を有する分岐アルキル、または6~18個の炭素原子を有するアリールであり、nおよびmは、それぞれ独立して、0~20の範囲の整数であり、n+mは、0より大きく、pは、1~4の整数である。一実施形態では、n+mは、3~12である。本明細書に開示されるエステル化油溶性ポリアルキレングリコールは、油溶性ポリアルキレングリコールと酸とを反応させることによって形成される反応生成物である。
【0010】
本明細書に開示されるエステル化油溶性ポリアルキレングリコールは、様々な用途に望ましい1つ以上の特性を有し得る。例えば、粘度指数は、潤滑剤の粘度が温度とともにどのように変化するかを示す尺度である。潤滑剤について、比較的低い粘度指数値は、比較的高い粘度指数値を有する潤滑剤と比較して、高温での潤滑剤の粘度のより大きな低減を示し得る。したがって、多くの用途について、比較的高い粘度指数値が有益であり、その結果、潤滑剤は、低温から高温に移行する極端な温度での粘度変化があまり目立たず、一般に安定した粘度を維持する。本明細書に開示されるエステル化油溶性ポリアルキレングリコールは、他のいくつかの潤滑剤と比較して、より高い粘度指数値を提供し得る。
【0011】
さらに、40℃で25センチストークス(cSt)未満の動粘度、および100℃で6cSt以下の動粘度を有するとして、本明細書で定義される低粘度潤滑剤などのいくつかの潤滑剤は、例えば、高粘度潤滑剤と比較して、より揮発性である。本明細書に開示されるエステル化油可溶性ポリアルキレングリコールは、低粘度潤滑剤、すなわち、40℃で25cSt未満の動粘度、および100℃で6cSt以下の動粘度を有する、本明細書に開示されるエステル化油可溶性ポリアルキレングリコールである。
【0012】
低粘度潤滑剤は、例えば、自動車用途(例えば、内燃機関)などの多くの用途に望ましいが、低粘度潤滑剤の一部は、使用中に不利益に蒸発し得る。したがって、比較的低いNOACK揮発性、特に空気中のNOACK揮発性は、潤滑剤が使用中に蒸発することが少なくなるために有益である。本明細書に開示されるエステル化油溶性ポリアルキレングリコールは、同様の非エステル化油溶性ポリアルキレングリコールなどの他のいくつかの潤滑剤と比較して、より低いNOACK揮発性、特に空気中のNOACK揮発性を提供し得る。
【0013】
加えて、0℃以下などの低温で比較的低い粘度、例えば、動粘度および/または動的粘度を有する低粘度潤滑剤は、自動車のエンジンの周りに潤滑剤を注入するときなど、より低いエネルギー損失の提供に有益に役立ち得る。本明細書に開示されるエステル化油溶性ポリアルキレングリコールは、他のいくつかの潤滑剤と比較して、低温で比較的低い粘度、例えば、動粘度および/または動的粘度を提供し得る。
【0014】
上記のように、本明細書に開示されるエステル化油溶性ポリアルキレングリコールは、油溶性ポリアルキレングリコールと酸とを反応させることによって形成される。鉱油基油とは異なり、油溶性ポリアルキレングリコールは、ポリマー主鎖中の酸素の有意な存在を有する。本開示の実施形態は、油溶性ポリアルキレングリコールが、プロピレンオキシドおよびブチレンオキシドのアルコール開始コポリマーであり、そこで、ブチレンオキシドから誘導される単位が、プロピレンオキシドおよびブチレンオキシドから誘導される単位の合計に基づいて、50重量%~95重量%であることを提供する。50重量%~95重量%のすべての個々の値および部分範囲が含まれ、例えば、油溶性ポリアルキレングリコールは、プロピレンオキシドおよびブチレンオキシドから誘導される単位の合計に基づいて、下限である50、55、または60重量パーセント~上限である95、90、または85重量パーセントのブチレンオキシドから誘導される単位を有し得る。様々な実施形態について、プロピレンオキシドは、1,2-プロピレンオキシドおよび/または1,3-プロピレンオキシドであり得る。様々な実施形態について、ブチレンオキシドは、1,2-ブチレンオキシドまたは2,3-ブチレンオキシドから選択され得る。好ましくは、1,2-ブチレンオキシドは、油溶性ポリアルキレングリコールを形成するのに使用される。
【0015】
油溶性ポリアルキレングリコールのアルコール開始剤は、モノオール、ジオール、トリオール、テトロール、またはこれらの組み合わせであり得る。アルコール開始剤の例としては、メタノール、エタノール、ブタノール、オクタノール、およびドデカノールなどのモノオールが挙げられるが、これらに限定されない。ジオールの例は、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、および1,4ブタンジオールである。トリオールの例は、グリセロールおよびトリメチロールプロパンである。テトロールの例は、ペンタエリスリトールである。モノオール、ジオール、トリオール、および/またはテトロールの組み合わせが使用され得る。アルコール開始剤は、1~30個の炭素原子を含み得る。1~30個の炭素原子のすべての個々の値および部分範囲が含まれ、例えば、アルコール開始剤は、下限である1、3、または5個の炭素原子~上限である30、25、または20個の炭素原子を有し得る。
【0016】
油溶性ポリアルキレングリコールは、既知のプロセスおよび既知の条件によって調製され得る。油溶性ポリアルキレングリコールは、商業的に入手され得る。市販の油溶性ポリアルキレングリコールの例としては、両方ともDow Chemical Companyから入手可能である、UCON商標OSP-12およびUCON商標OSP-18などの商品名UCON商標下の油溶性ポリアルキレングリコールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0017】
本開示の油溶性ポリアルキレングリコールは、40℃で25センチストークス(cSt)未満の動粘度、および100℃で6cSt以下の動粘度を有し、したがって、低粘度潤滑剤、すなわち、低粘度油溶性ポリアルキレングリコールとみなされ得る。
【0018】
油溶性ポリアルキレングリコールと反応して、本明細書に開示されるエステル化油溶性ポリアルキレングリコールを形成する酸は、カルボン酸であり得る。酸の例としては、酢酸、プロピオン酸、ペンタン酸、例えば、n-ペンタン酸、吉草酸、例えば、イソ吉草酸、カプリル酸、ドデカン酸、これらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0019】
本明細書に開示されるエステル化油溶性ポリアルキレングリコールを形成するために、油溶性ポリアルキレングリコール10モル:酸1モル~油溶性ポリアルキレングリコール1モル:酸10モルのモル比で、油溶性ポリアルキレングリコールと酸とが反応し得る。10:1の油溶性ポリアルキレングリコールのモル対酸のモル~1:10の油溶性ポリアルキレングリコールのモル対酸のモルのすべての個々の値および部分範囲が含まれ、例えば、油溶性ポリアルキレングリコール酸と酸は、10:1、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、または1:10の油溶性ポリアルキレングリコールのモル対酸のモルのモル比で反応し得る。
【0020】
エステル化油溶性ポリアルキレングリコールは、既知のプロセスおよび既知の条件によって調製され得る。例えば、本明細書に開示されるエステル化油溶性ポリアルキレングリコールは、エステル化プロセス、例えば、フィッシャーエステル化(Fisher Esterification)によって形成され得る。エステル化について、他の既知の成分の中でも、酸触媒、中和剤、および/または塩吸収剤などの既知の成分が、利用され得る。酸触媒の例は、中でも、p-トルエンスルホン酸である。中和剤の例は、中でも、炭酸ナトリウムおよび水酸化カリウムである。塩吸収剤の例は、中でも、ケイ酸マグネシウムである。
【0021】
本明細書に開示されるエステル化油溶性ポリアルキレングリコールは、式Iのものである。
[O(RO)(RO)(C=O)R 式I
【0022】
は、1~18個の炭素原子を有する直鎖アルキル、4~18個の炭素原子を有する分岐アルキル、または6~30個の炭素原子を有するアリールである。好ましくは、Rは、10~14個の炭素原子を有する直鎖アルキルである。Rは、本明細書で論じられる油溶性ポリアルキレングリコールの重合中に使用されるアルコール開始剤の残余に対応する。本明細書で使用される場合、「アルキル基」とは、飽和一価炭化水素基を指す。本明細書で使用される場合、「アリール基」とは、単核または多核芳香族炭化水素基を指し、アリール基は、アルキル置換基を含み得る。存在する場合には、アルキル置換基を含む、Rのアリール基は、6~30個の炭素を有し得る。好ましくは、Rは、本明細書に記載される直鎖アルキルまたは分岐である。
【0023】
Oは、1,2-プロピレンオキシドから誘導されたオキシプロピレン部分であり、式IのROの得られる構造は、[-CHCH(CH)-O-]または[-CH(CH)CH-O-]であり得る。ROは、ブチレンオキシドから誘導されたオキシブチレン部分であり、式IのROの得られる構造は、ROが、1,2-ブチレンオキシドから誘導される場合、[-CHCH(C)-O-]または[-CH(C)CH-O-]であり得る。様々な実施形態について、ROおよびROは、式Iにおいてブロックまたはランダム分布である。
【0024】
は、1~18個の炭素原子を有する直鎖アルキル、4~18個の炭素原子を有する分岐アルキル、または6~18個の炭素原子を有するアリールである。好ましくは、Rは、1~8個の炭素原子を有する直鎖アルキルである。本明細書で使用される場合、「アルキル基」とは、飽和一価炭化水素基を指す。本明細書で使用される場合、「アリール基」とは、単核または多核芳香族炭化水素基を指し、アリール基は、アルキル置換基を含み得る。存在する場合には、アルキル置換基を含む、Rのアリール基は、6~18個の炭素を有し得る。
【0025】
エステル化油溶性ポリアルキレングリコールの実施形態は、0.5~0.95の値を有する、(RO)の分子量値を、(RO)および(RO)の分子量値の合計で除した値を有し得る。言い換えれば、式Iの(RO)部分は、(RO)(RO)部分の50重量パーセント(重量%)~95重量%である。式Iの(RO)(RO)部分の50重量%~95重量%が、(RO)に由来するのであれば、式Iのエステル化油溶性ポリアルキレングリコールが、油溶性であることを確実にするのに役立つ。
【0026】
同様に、エステル化油溶性ポリアルキレングリコールは、0.05~0.5の値を有する、(RO)の分子量値を、(RO)および(RO)の分子量値の合計で除した値を有し得る。言い換えれば、式Iの(RO)部分は、(RO)(RO)部分の5重量%~50重量%であり、(RO)および(RO)の両方の分子量の合計は、式Iの(RO)(RO)部分の1.0または100重量%になる。
【0027】
上記説明による(RO)および/または(RO)の分子量値の他の値は可能である。例えば、0.5~0.95の(RO)の分子量値を、(RO)および(RO)の分子量値の合計で除した値の個々の値および部分範囲が、本明細書に含まれる。したがって、(RO)の分子量値を、(RO)および(RO)の分子量値の合計で除した値は、下限値である0.5、0.55、または0.6~上限値である0.85、0.90、または0.95を有し得、ここで下限値と上限値の任意の組み合わせが可能である。
【0028】
式Iのnおよびmの値は、それぞれ独立して、0~20の範囲の整数であり、n+mは、0より大きい。好ましくは、n+mは、3~12である。好ましくは、nおよびmは、それぞれ独立して、1~5の範囲の整数である。好ましくは、pは、1~4の整数である。
【0029】
本開示のエステル化油溶性ポリアルキレングリコールは、100℃で6cSt以下である動粘度を有し得る。エステル化油溶性ポリアルキレングリコールは、40℃で25cSt未満である動粘度を有し得る。加えて、本明細書に開示されるエステル化油溶性ポリアルキレングリコールは、40℃で25cSt未満の動粘度、および100℃で6cSt以下の動粘度を有する。したがって、エステル化油溶性ポリアルキレングリコールは、低粘度潤滑剤として、かつ/または様々な低粘度潤滑剤用途に有益に利用され得る。エステル化油溶性ポリアルキレングリコールは、ASTM D7042によって決定されると、40℃で下限である8.0または9.0cSt~上限である24.5または24.0cStの動粘度を有し得る。エステル化油溶性ポリアルキレングリコールは、ASTM D7042によって決定されると、100℃で下限である1.0または2.5cSt~上限である6.0または5.5cStの動粘度を有し得る。上記のように、本明細書に開示されるエステル化油溶性ポリアルキレングリコールは、同様の非エステル化油溶性ポリアルキレングリコールなどの他のいくつかの潤滑剤と比較して、低温で比較的低い粘度を有益に提供し得る。
【0030】
本開示のエステル化油溶性ポリアルキレングリコールはまた、ASTM D2270に従って決定された130~200の粘度指数も有し得る。130~200のすべての個々の値および部分範囲が含まれ、例えば、本開示のエステル化油溶性ポリアルキレングリコールは、下限である130または135~上限である200または195の粘度指数を有し得る。この改善された粘度指数は、類似の非エステル化油溶性ポリアルキレングリコールなどの他のいくつかの潤滑剤と比較して、粘度指数を上げるための以前の以前のプロセス、すなわち、アルキル化キャッピングプロセスよりも有益である、なぜなら、エステル化は、より単純なプロセスを介して、かつ/または低コストで達成され得るためである。
【0031】
本開示のエステル化油溶性ポリアルキレングリコールは、本明細書で論じられるように、基油中で油溶性(相溶性)である。例えば、10~0.01重量%の本開示のエステル化油溶性ポリアルキレングリコールは、90~99.9重量パーセント(重量%)の基油中で溶解され得、重量%は、エステル化油溶性ポリアルキレングリコール(複数可)と基油との混合物の総重量に基づく。
【0032】
本明細書で使用される場合、本開示のエステル化油溶性ポリアルキレングリコールが溶解する基剤は、米国石油協会(API)のグループIの炭化水素基油、APIのグループIIの炭化水素基油、APIのグループIIIの炭化水素基油、APIのグループIVの炭化水素基油、およびこれらの組み合わせからなる群から選択され得る。好ましくは、潤滑剤調合物の基油は、APIのグループIIIの炭化水素基油である。APIのグループI~IVの炭化水素油の組成は以下の通りである。グループIIおよびグループIIIの炭化水素油は、典型的には、過酷な水素化工程を使用して従来のグループIの供給原料から調製されて、芳香族化合物、硫黄、窒素の含有量を低減させ、続いて、脱ロウ、水素化仕上げ、抽出、および/または蒸留工程を行って、完成した基油を生成する。グループIIおよびIIIの基原料は、硫黄、窒素、および芳香族化合物の含有量が非常に低いという点で、従来の溶媒精製されたグループIの基原料とは異なる。結果として、これらの基油は、従来の溶媒精製された基原料とは組成的に非常に異なる。APIは、これらの異なる基原料の種類を以下のように分類してきた。グループI、>0.03重量%の硫黄、および/または<90体積%の飽和脂肪酸、80~120の粘度指数、グループII、≦0.03重量%の硫黄、および≧90体積%の飽和脂肪酸、80~120の粘度指数、グループIII、≦0.03重量%の硫黄、および≧90体積%の飽和脂肪酸、>120の粘度指数。グループIVは、ポリアルファオレフィン(PAO)である。水素化処理された基原料および触媒的に脱ロウされた基原料は、硫黄および芳香族化合物の低い含有量のため、一般にグループIIおよびグループIIIの区分に分類される。
【0033】
例として、限定するものではないが、本開示の実施形態は、エステル化油溶性ポリアルキレングリコールが油溶性であることを提供し、例えば、エステル化油溶性ポリアルキレングリコールは、10/90~90/10のエステル化油溶性ポリアルキレングリコール/鉱油の重量パーセントレベルで、APIのグループIの鉱油に混和性を示す。グループIの鉱物油の例は、Totalから入手可能なTotal 150SNである。
【0034】
本開示の実施形態は、ASTM D6375に準拠するNOACK空気揮発性の低減方法を提供する。本方法は、低粘度油溶性ポリアルキレングリコールをカルボン酸と反応させて、式Iを有するエステル化油溶性ポリアルキレングリコールを提供することを含む。
[O(RO)(RO)(C=O)R 式I
式Iのエステル化油溶性ポリアルキレングリコールは、本明細書に記載される通りである。したがって、簡潔に言えば、Rは、1~18個の炭素原子を有する直鎖アルキル、4~18個の炭素原子を有する分岐アルキル、または6~30個の炭素原子を有するアリールであり、ROは、1,2-プロピレンオキシドから誘導されたオキシプロピレン部分であり、ROは、ブチレンオキシドから誘導されたオキシブチレン部分であり、ROおよびROは、ブロックまたはランダム分布であり、Rは、1~18個の炭素原子を有する直鎖アルキル、4~18個の炭素原子を有する分岐アルキル、または6~18個の炭素原子を有するアリールであり、nおよびmは、それぞれ独立して、0~20の範囲の整数であり、n+mは、0より大きく、pは、1~4の整数であり、エステル化油溶性ポリアルキレングリコールは、低粘度油溶性ポリアルキレングリコールと比較して、低減したNOACK空気揮発性を有する。
【0035】
本開示の実施形態はまた、ASTM D2270に従って決定された粘度指数の増加方法も提供する。本方法は、低粘度油溶性ポリアルキレングリコールをカルボン酸と反応させて、式Iを有するエステル化油溶性ポリアルキレングリコールを提供することを含む。
[O(RO)(RO)(C=O)R 式I
式Iのエステル化油溶性ポリアルキレングリコールは、本明細書に記載される通りである。したがって、簡潔に言えば、Rは、1~18個の炭素原子を有する直鎖アルキル、4~18個の炭素原子を有する分岐アルキル、または6~30個の炭素原子を有するアリールであり、ROは、1,2-プロピレンオキシドから誘導されたオキシプロピレン部分であり、ROは、ブチレンオキシドから誘導されたオキシブチレン部分であり、ROおよびROは、ブロックまたはランダム分布であり、Rは、1~18個の炭素原子を有する直鎖アルキル、4~18個の炭素原子を有する分岐アルキル、または6~18個の炭素原子を有するアリールであり、nおよびmは、それぞれ独立して、0~20の範囲の整数であり、n+mは、0より大きく、pは、1~4の整数であり、エステル化油溶性ポリアルキレングリコールは、低粘度油溶性ポリアルキレングリコールと比較して、増加した粘度指数を有する。
【0036】
本開示は、ASTM D7042に従って決定される低下した動粘度の提供方法を追加的に提供し、本方法は、低粘度油溶性ポリアルキレングリコールをカルボン酸と反応させて、式Iを有するエステル化油溶性ポリアルキレングリコールを提供することを含み、
[O(RO)(RO)(C=O)R 式I
式中、Rは、1~18個の炭素原子を有する直鎖アルキル、4~18個の炭素原子を有する分岐アルキル、または6~30個の炭素原子を有するアリールであり、ROは、1,2-プロピレンオキシドから誘導されたオキシプロピレン部分であり、ROは、ブチレンオキシドから誘導されたオキシブチレン部分であり、ROおよびROは、ブロックまたはランダム分布であり、Rは、1~18個の炭素原子を有する直鎖アルキル、4~18個の炭素原子を有する分岐アルキル、または6~18個の炭素原子を有するアリールであり、nおよびmは、それぞれ独立して、0~20の範囲の整数であり、n+mは、0より大きく、pは、1~4の整数であり、エステル化油溶性ポリアルキレングリコールは、低粘度油溶性ポリアルキレングリコールと比較して、0℃以下の温度での低下した動粘度を有する。温度は-10℃以下であってもよく、温度は-20℃以下であってもよい。
【0037】
本開示は、ASTM D7042に従って決定される低下した動的粘度の提供方法を追加的に提供し、本方法は、低粘度油溶性ポリアルキレングリコールをカルボン酸と反応させて、式Iを有するエステル化油溶性ポリアルキレングリコールを提供することを含み、
[O(RO)(RO)(C=O)R 式I
式中、Rは、1~18個の炭素原子を有する直鎖アルキル、4~18個の炭素原子を有する分岐アルキル、または6~30個の炭素原子を有するアリールであり、ROは、1,2-プロピレンオキシドから誘導されたオキシプロピレン部分であり、ROは、ブチレンオキシドから誘導されたオキシブチレン部分であり、ROおよびROは、ブロックまたはランダム分布であり、Rは、1~18個の炭素原子を有する直鎖アルキル、4~18個の炭素原子を有する分岐アルキル、または6~18個の炭素原子を有するアリールであり、nおよびmは、それぞれ独立して、0~20の範囲の整数であり、n+mは、0より大きく、pは、1~4の整数であり、エステル化油溶性ポリアルキレングリコールが、低粘度油溶性ポリアルキレングリコールと比較して、0℃以下の温度での低下した動的粘度を有する。温度は-10℃以下であってもよく、温度は-20℃以下であってもよい。
【実施例
【0038】
実施例では、例えば、以下を含む、材料の様々な用語および名称が使用される。
【0039】
OSP-1(油溶性ポリアルキレングリコール、UCON(商標)OSP-12、ドデカノール開始ランダムコポリマー(50重量%のプロピレンオキシド/50重量%のブチレンオキシド)、The Dow Chemical Companyから入手可能)、OSP-2(油溶性ポリアルキレングリコール、UCON(商標)OSP-18、ドデカノール開始ランダムコポリマー(50重量%のプロピレンオキシド/50重量%のブチレンオキシド)、The Dow Chemical Companyから入手可能)、p-トルエンスルホン酸(PTSA)(酸触媒、Sinopharm Chemical Reagent Co.Ltd(SCRC)から入手可能)、炭酸ナトリウム(中和剤、SCRCから入手可能)、水酸化カリウム(中和剤、SCRCから入手可能)、ケイ酸マグネシウム(塩吸収剤、SCRCから入手可能)、酢酸(酸、SCRCから入手可能)、プロピオン酸(酸、SCRCから入手可能)、n-ペンタン酸(酸、Energy Chemicalから入手可能)、イソ吉草酸(酸、>99重量パーセントの3-メチルブタン酸を含有、Energy Chemicalから入手可能)、カプリル酸(酸、SCRCから入手可能)、ドデカン酸(酸、SCRCから入手可能)。
【0040】
実施例1、式:R[O(RO)(RO)(C=O)Rを有するエステル化油溶性ポリアルキレングリコールであって、式中、RおよびRは、それぞれ独立して、18個以下の炭素を有するアルキル基または6~30個の炭素を有するアリール基であり、(RO)は、1,2-プロピレンオキシドから誘導されたオキシプロピレン部分であり、ROは、1,2-ブチレンオキシドから誘導されたオキシブチレン部分であり、n+mは、3~12の整数であり、pは、1の値を有する、エステル化油溶性ポリアルキレングリコールを、以下のように形成した。OSP-2(350g、0.749mol)、酢酸(45g、0.749mol、43.0mL)、およびトルエン(500mL)を槽に添加し、撹拌した。PTSA(1.42g、0.00749mol)を撹拌しながら槽に添加し、槽の内容物を135℃で4時間ディーン・スタークで還流させて、水を除去し、次いで、槽の内容物を室温に冷却した。炭酸ナトリウム(50g)を槽に添加し、内容物を約12時間撹拌した。ケイ酸マグネシウム(10g)を槽に添加し、内容物を60℃で3時間撹拌した。次いで、槽の内容物を濾紙を通して濾過し、残留溶媒を真空蒸留によって除去して、約300gの実施例1を得た。
【0041】
実施例2を、実施例1と同様に形成したが、酢酸ではなくプロピオン酸(55.5g、0.749mol、56.0mL)を利用して、約310gの実施例2を得たという変更を伴った。
【0042】
実施例3を、実施例1と同様に形成したが、酢酸ではなくn-ペンタン酸(76.5g、0.749mol)を利用して、約330gの実施例3を得たという変更を伴った。
【0043】
実施例4を、実施例1と同様に形成したが、酢酸ではなくイソ吉草酸(76.5g、0.749mol)を利用して、約335gの実施例4を得たという変更を伴った。
【0044】
実施例5を、実施例1と同様に形成したが、酢酸ではなくカプリル酸(108g、0.749mol)を利用して、約356gの実施例5を得たという変更を伴った。
【0045】
実施例6を、実施例1と同様に形成したが、酢酸ではなくドデカン酸(150g、0.749mol)を利用して、約389gの実施例6を得たという変更を伴った。
【0046】
実施例7、式:R[O(RO)(RO)(C=O)Rを有するエステル化油溶性ポリアルキレングリコールであって、式中、RおよびRは、それぞれ独立して、18個以下の炭素を有するアルキル基または6~30個の炭素を有するアリール基であり、(RO)は、1,2-プロピレンオキシドから誘導されたオキシプロピレン部分であり、ROは、1,2-ブチレンオキシドから誘導されたオキシブチレン部分であり、n+mは、3~12の整数であり、pは、1の値を有する、エステル化油溶性ポリアルキレングリコールを、以下のように形成した。OSP-1(374g、1mol)、酢酸(60g、1mol)、およびトルエン(500mL)を槽に添加し、撹拌した。PTSA(1.90g、0.001mol)を撹拌しながら槽に添加し、槽の内容物を135℃で4時間ディーン・スタークで還流させて、水を除去し、次いで、槽の内容物を室温に冷却した。水酸化カリウム(1.12g、0.002)を槽に添加し、内容物を約12時間撹拌した。ケイ酸マグネシウム(10g)を槽に添加し、内容物を60℃で3時間撹拌した。次いで、槽の内容物を濾紙を通して濾過し、残留溶媒を真空蒸留によって除去して、約390gの実施例7を得た。
【0047】
実施例8を、実施例7と同様に形成したが、酢酸ではなくプロピオン酸(74g、1mol)を利用して、約390gの実施例8を得たという変更を伴った。
【0048】
実施例9を、実施例7と同様に形成したが、酢酸ではなくn-ペンタン酸(102g、1mol)を利用して、約388gの実施例9を得たという変更を伴った。
【0049】
実施例10を、実施例7と同様に形成したが、酢酸ではなくイソ吉草酸(102g、1mol)を利用して、約376gの実施例10を得たという変更を伴った。
【0050】
実施例11を、実施例7と同様に形成したが、酢酸ではなくカプリル酸(144g、1mol)を利用して、約420gの実施例11を得たという変更を伴った。
【0051】
実施例12を、実施例7と同様に形成したが、酢酸ではなくドデカン酸(200g、1mol)を利用して、約450gの実施例12を得たという変更を伴った。
【0052】
動粘度および動的粘度を、ASTM D7042に従って決定した(KV40は40℃での動粘度であり、KV100は100℃での動粘度であり、KV-20は-20℃での動粘度であり、DV-20は-20℃での動的粘度である)。ASTM D2270に従って粘度指数を決定した。ASTM D97に従って流動点を決定した。ASTM D6375に従ってNOACK揮発性を決定した。結果を表1および表2に報告する。
【0053】
熱重量分析(TGA)を使用して、NOACK測定を行った。分析対象の試料片を、適切なTGA試料片パンに配置した。パンをTGAパンホルダー上に配置し、空気の流れの下で247~249℃に加熱し、1時間等温を保持した。このプロセスを通して、TGAは、蒸発による試料片の質量損失を監視し、記録した。空気中のNOACK測定値(NOACK空気)は、試験片の熱および酸化安定性に関する情報を提供する。窒素中のNOACK測定値(NOACK N)は、l試験片の熱安定性に関する情報を提供する。
【表1】
【0054】
表1のデータは、実施例1~6のそれぞれが、比較例Aと比較して、改善された、すなわち、増加した粘度指数を有することを示す。表1のデータはまた、実施例1~6のそれぞれが、比較例Aと比較して、改善された、すなわち、低下した低温動粘度KV-20、および比較例Aと比較して、改善された、すなわち、低下した低温動的粘度DV-20を有することも示す。表1のデータは、実施例1~6のそれぞれが、比較例Aと比較して、改善された、すなわち、減少したNOACK空気重量パーセントを有することを示す。
【表2】
【0055】
表2のデータは、実施例7~12のそれぞれが、比較例Bと比較して、改善された、すなわち、増加した粘度指数を有することを示す。表2のデータはまた、実施例7~12のそれぞれが、比較例Bと比較して、改善された、すなわち、低温動粘度KV-20の低下、および比較例Bと比較して、改善された、すなわち、低下した低温動的粘度DV-20を有することも示す。表2のデータは、実施例7~12のそれぞれが、比較例Bと比較して、改善された、すなわち、減少したNOACK空気重量パーセントを有することを示す。
本願発明には以下の態様が含まれる。
項1.
式Iを有するエステル化油溶性ポリアルキレングリコールであって、
[O(RO)(RO)(C=O)R 式I
式中、Rは、1~18個の炭素原子を有する直鎖アルキル、4~18個の炭素原子を有する分岐アルキル、または6~30個の炭素原子を有するアリールであり、ROは、1,2-プロピレンオキシドから誘導されたオキシプロピレン部分であり、ROは、ブチレンオキシドから誘導されたオキシブチレン部分であり、ROおよびROは、ブロックまたはランダム分布であり、Rは、1~18個の炭素原子を有する直鎖アルキル、4~18個の炭素原子を有する分岐アルキル、または6~18個の炭素原子を有するアリールであり、nおよびmは、それぞれ独立して、0~20の範囲の整数であり、n+mは、0より大きく、pは、1~4の整数である、エステル化油溶性ポリアルキレングリコール。
項2.
(RO)の分子量値を、(RO)および(RO)の分子量値の合計で除した値が、0.5~0.95の値を有する、項1に記載のエステル化油溶性ポリアルキレングリコール。
項3.
前記エステル化油溶性ポリアルキレングリコールが、100℃で6cSt以下である動粘度を有する、項1または2に記載のエステル化油溶性ポリアルキレングリコール。
項4.
前記エステル化油溶性ポリアルキレングリコールが、40℃で25cSt未満である動粘度を有する、項1~3のいずれか一項に記載のエステル化油溶性ポリアルキレングリコール。
項5.
が、直鎖アルキルである、項1~4のいずれか一項に記載のエステル化油溶性ポリアルキレングリコール。
項6.
が、分岐している、項1~4のいずれか一項に記載のエステル化油溶性ポリアルキレングリコール。
項7.
前記エステル化油溶性ポリアルキレングリコールが、ASTM D2270に従って決定された130~200の粘度指数を有する、項1~6のいずれか一項に記載のエステル化油溶性ポリアルキレングリコール。
項8.
ASTM D6375に準拠するNOACK空気揮発性を低減する方法であって、
低粘度油溶性ポリアルキレングリコールをカルボン酸と反応させて、式Iを有するエステル化油溶性ポリアルキレングリコールを提供することを含み、
[O(RO)(RO)(C=O)R 式I
式中、Rは、1~18個の炭素原子を有する直鎖アルキル、4~18個の炭素原子を有する分岐アルキル、または6~30個の炭素原子を有するアリールであり、ROは、1,2-プロピレンオキシドから誘導されたオキシプロピレン部分であり、ROは、ブチレンオキシドから誘導されたオキシブチレン部分であり、ROおよびROは、ブロックまたはランダム分布であり、Rは、1~18個の炭素原子を有する直鎖アルキル、4~18個の炭素原子を有する分岐アルキル、または6~18個の炭素原子を有するアリールであり、nおよびmは、それぞれ独立して、0~20の範囲の整数であり、n+mは、0より大きく、pは、1~4の整数であり、
前記エステル化油溶性ポリアルキレングリコールが、前記低粘度油溶性ポリアルキレングリコールと比較して、低減したNOACK空気揮発性を有する、方法。
項9.
ASTM D7042に従って決定される低下した粘度の提供方法であって、
低粘度油溶性ポリアルキレングリコールをカルボン酸と反応させて、式Iを有するエステル化油溶性ポリアルキレングリコールを提供することを含み、
[O(RO)(RO)(C=O)R 式I
式中、Rは、1~18個の炭素原子を有する直鎖アルキル、4~18個の炭素原子を有する分岐アルキル、または6~30個の炭素原子を有するアリールであり、ROは、1,2-プロピレンオキシドから誘導されたオキシプロピレン部分であり、ROは、ブチレンオキシドから誘導されたオキシブチレン部分であり、ROおよびROは、ブロックまたはランダム分布であり、Rは、1~18個の炭素原子を有する直鎖アルキル、4~18個の炭素原子を有する分岐アルキル、または6~18個の炭素原子を有するアリールであり、nおよびmは、それぞれ独立して、0~20の範囲の整数であり、n+mは、0より大きく、pは、1~4の整数であり、
前記エステル化油溶性ポリアルキレングリコールが、低粘度油溶性ポリアルキレングリコールと比較して、0℃以下の温度での低下した粘度を有する、方法。
項10.
前記粘度が、動粘度および動的粘度から選択される、項9に記載の方法。