(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-05
(45)【発行日】2022-08-16
(54)【発明の名称】たばこ材料の製造方法、たばこ材料、たばこ香味液の製造方法、たばこ香味液、および加熱型香味吸引器
(51)【国際特許分類】
A24B 3/12 20060101AFI20220808BHJP
A24B 15/24 20060101ALI20220808BHJP
A24B 15/167 20200101ALI20220808BHJP
【FI】
A24B3/12 Z
A24B15/24
A24B15/167
(21)【出願番号】P 2020531844
(86)(22)【出願日】2018-07-23
(86)【国際出願番号】 JP2018027520
(87)【国際公開番号】W WO2020021599
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2020-10-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000004569
【氏名又は名称】日本たばこ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】藤平 真里那
(72)【発明者】
【氏名】永井 敦
【審査官】川口 聖司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06298858(US,B1)
【文献】特表2014-530633(JP,A)
【文献】特開平07-184624(JP,A)
【文献】永井敦,たばこ乾燥葉の保存過程における糖質成分の変化および反応機構,博士論文,日本,九州大学,2013年09月24日,P.11-14, P.98-102
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24B 3/00-15/42
A24F 40/00-47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
たばこ製品に組み込むためのたばこ材料の製造方法であって、
30[nkat/g]以上のβ-D-グルコシダーゼ活性を有する第1の葉たばこ粉砕物と、配糖体を含有し、かつ25[nkat/g]以下のβ-D-グルコシダーゼ活性を有する第2の葉たばこ粉砕物とを混合して、葉たばこ混合物を調製すること、および
前記葉たばこ混合物を加湿条件下で蔵置して、たばこ香味が増加したたばこ材料を得ること
を含
み、
前記第1の葉たばこ粉砕物は、前記第2の葉たばこ粉砕物と混合される前も後も、80℃以上の温度に晒されず、前記葉たばこ混合物は、80℃以上の高温に晒されず、たばこ香味が増加した前記たばこ材料は、たばこ製品に組み込まれる前も後も、80℃以上の高温に晒されない、方法。
【請求項2】
前記第1の葉たばこ粉砕物および前記第2の葉たばこ粉砕物が、1mm以下の最大径を有する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記加湿条件が、前記葉たばこ混合物の水分量が12~80質量%になるように前記葉たばこ混合物に水分を加えた条件である請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記蔵置が、0~60℃の温度で行われる請求項1~3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記蔵置が、24~72時間の期間にわたって行われる請求項1~4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記蔵置が、密閉条件下で行われる請求項1~5の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の葉たばこ粉砕物が、前記第2の葉たばこ粉砕物と比べて、単位質量あたり少ない含有量で配糖体を含有する請求項1~6の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の葉たばこ粉砕物に含有される配糖体成分のいずれの成分の含有量も、前記第2の葉たばこ粉砕物に含有される配糖体成分のものよりも少ない請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第2の葉たばこ粉砕物が、
葉たばこ原料を加熱して、前記葉たばこ原料に含まれる酵素を失活させ、その後、
前記葉たばこ原料を粉砕する
ことにより得られる粉砕物である請求項1~8の何れか1項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1~9の何れか1項に記載の方法により製造されるたばこ材料。
【請求項11】
請求項10に記載のたばこ材料からたばこ香味成分を抽出して、たばこ香味液を得ることを含む、たばこ香味液の製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法により製造されるたばこ香味液。
【請求項13】
請求項10に記載のたばこ材料または請求項12に記載のたばこ香味液を含む加熱型香味吸引器。
【請求項14】
請求項10に記載のたばこ材料と、
前記たばこ材料と混合されたエアロゾル源と
を含むたばこ香味源を備えた加熱型香味吸引器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たばこ材料の製造方法、たばこ材料、たばこ香味液の製造方法、たばこ香味液、および加熱型香味吸引器に関する。
【背景技術】
【0002】
栽培、収穫されたたばこ植物の葉は、農家での乾燥工程、その後の原料工場での1年ないし数年の長期熟成工程、およびその後の製造工場でのブレンドおよび裁刻など種々の加工処理を経て、たばこ製品の製造に使用される。たばこ製品の製造に使用されるたばこ葉原料は、当該技術分野で「葉たばこ」と呼ばれる。
【0003】
葉たばこは、種々の配糖体成分を含むことが知られている。葉たばこに含まれる配糖体としては、スコポレチン7-グルコシド(スコポレチン)、クェルセチン3-β-D-グルコシド(イソクェルセチン)などのグルコシド;ナリンゲニン7-ラムノグルコシド(ナリンギン)、クェルセチン3-ラムノグルコシド(ルチン)などのラムノグルコシド(ルチノシド);リシチンβ-ソホロシド、クェルセチン3-β-D-ソホロシドなどのソホロシドなどが同定されているが、未だ同定されていないものも多数存在する。
【0004】
葉たばこに含まれる配糖体は、たばこ香味成分の前駆体としての機能を有すると考えられている。具体的には、喫煙時に葉たばこが燃焼されると、葉たばこに含まれる配糖体成分は、糖部分と非糖部分(すなわち、アグリコン)に分解され、非糖部分がたばこ香味成分として機能すると考えられている。
【0005】
一方、葉たばこに含まれるたばこ香味成分を増加させるための試みが為されている。例えば、日本国特開昭56-51976号公報は、原料工場での長期熟成工程の前にたばこの葉にエチルアルコールを添加し、その後、熟成工程を行うことにより、葉たばこの香喫味を改善することを報告している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、たばこ香味が増加したたばこ材料およびたばこ香味が増加したたばこ香味液に関する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の側面によれば、
30[nkat/g]以上のβ-D-グルコシダーゼ活性を有する第1の葉たばこ粉砕物と、配糖体を含有し、かつ25[nkat/g]以下のβ-D-グルコシダーゼ活性を有する第2の葉たばこ粉砕物とを混合して、葉たばこ混合物を調製すること、および
前記葉たばこ混合物を加湿条件下で蔵置して、たばこ香味が増加したたばこ材料を得ること
を含む、たばこ材料の製造方法が提供される。
【0008】
第2の側面によれば、前記方法により製造されるたばこ材料が提供される。
第3の側面によれば、前記たばこ材料からたばこ香味成分を抽出して、たばこ香味液を得ることを含む、たばこ香味液の製造方法が提供される。
【0009】
第4の側面によれば、前記方法により製造されるたばこ香味液が提供される。
第5の側面によれば、前記たばこ材料または前記たばこ香味液を含む加熱型香味吸引器が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、第2の葉たばこ粉砕物に含まれる種々の配糖体を、第1の葉たばこ粉砕物に含まれる種々の配糖体分解酵素により分解して種々のたばこ香味成分を生成し、これにより、たばこ香味が増加したたばこ材料およびたばこ香味が増加したたばこ香味液を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の方法を示すフローチャートである。
【
図2】
図2は、たばこ材料を含む加熱型香味吸引器の一例を示す部分切開図である。
【
図3】
図3は、たばこ香味液を含む加熱型香味吸引器の一例を示す断面図である。
【
図4】
図4は、分析用試料D、H、IおよびJの配糖体含有量の分析結果を示すグラフである。
【
図5】
図5は、配糖体含有量の分析結果を示すグラフである。
【
図6】
図6は、配糖体含有量の分析結果を示すグラフである。
【
図7】
図7は、たばこ香味液のGC-MSクロマトグラムである。
【
図8】
図8は、たばこ香味液のGC-MSクロマトグラムである。
【
図9】
図9は、蔵置中の温度が配糖体含有量に及ぼす影響を示すグラフである。
【
図10】
図10は、蔵置期間が配糖体含有量に及ぼす影響を示すグラフである。
【
図11】
図11は、蔵置中の水分量が配糖体含有量に及ぼす影響を示すグラフである。
【
図12】
図12は、蔵置中の水分量が配糖体含有量に及ぼす影響を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明するが、以下の説明は、本発明を説明することを目的とし、本発明を限定することを意図しない。
【0013】
<1.たばこ材料の製造方法>
たばこ材料の製造方法は、
30[nkat/g]以上のβ-D-グルコシダーゼ活性を有する第1の葉たばこ粉砕物と、配糖体を含有し、かつ25[nkat/g]以下のβ-D-グルコシダーゼ活性を有する第2の葉たばこ粉砕物とを混合して、葉たばこ混合物を調製すること、および
前記葉たばこ混合物を加湿条件下で蔵置して、たばこ香味が増加したたばこ材料を得ること
を含む。たばこ材料の製造方法をフローチャートで
図1に示す。
【0014】
(葉たばこ粉砕物)
第1の葉たばこ粉砕物と第2の葉たばこ粉砕物について、まず説明する。以下の説明において、「葉たばこ粉砕物」の用語は、第1の葉たばこ粉砕物および第2の葉たばこ粉砕物の両方を指すために使用される。
【0015】
葉たばこ粉砕物は、葉たばこを粉砕することにより得られる。葉たばこ粉砕物は、例えば、1mm以下の最大径を有する。1mm以下の最大径を有する葉たばこ粉砕物は、例えば、市販の粉砕機(ミル)により粉砕し、1.0mmメッシュの篩にかけることにより得ることができる。葉たばこ粉砕物は、例えば、0.5~1mmの最大径を有する。葉たばこ粉砕物を使用すると、粉砕されていない葉たばこを使用した場合と比べて、第1の葉たばこ粉砕物と第2の葉たばこ粉砕物との間での配糖体分解酵素および配糖体の移動を促進し、配糖体分解反応の効率を高めることができる。これにより、配糖体分解物が効率良く生成され、たばこ香味を増加させることができる。
【0016】
葉たばこ粉砕物の原料となる「葉たばこ」は、栽培、収穫されたたばこ植物の葉に、農家での乾燥工程、その後の原料工場での1年ないし数年の長期熟成工程、およびその後の製造工場でのブレンドおよび裁刻などの種々の加工処理を施すことにより得られる。すなわち、「葉たばこ」は、たばこ製品の製造のための準備が整ったたばこ刻を指す。例えば、「葉たばこ」として、シガレットの巻上げ工程のための準備が整ったたばこ刻を使用することができる。
【0017】
第1の葉たばこ粉砕物は、30[nkat/g]以上のβ-D-グルコシダーゼ活性を有する。第1の葉たばこ粉砕物は、一般的には、30~1000[nkat/g]のβ-D-グルコシダーゼ活性を有する。第1の葉たばこ粉砕物は、好ましくは、100~1000[nkat/g]のβ-D-グルコシダーゼ活性を有する。一方、第2の葉たばこ粉砕物は、配糖体を含有し、かつ25[nkat/g]以下のβ-D-グルコシダーゼ活性を有する。第2の葉たばこ粉砕物は、一般的には、0~25[nkat/g]のβ-D-グルコシダーゼ活性を有する。第2の葉たばこ粉砕物は、好ましくは、0~15[nkat/g]のβ-D-グルコシダーゼ活性を有する。
【0018】
「β-D-グルコシダーゼ」は、葉たばこが有している配糖体分解酵素の一つである。本明細書において、葉たばこ粉砕物の「β-D-グルコシダーゼ活性」は、モデル基質である4-ニトロフェニルβ-D-グルコピラノシド(Glc-β-pNP)の分解活性を指し、具体的には、後述する実施例1の測定方法により決定される酵素活性を指す。葉たばこ粉砕物の「β-D-グルコシダーゼ活性」は、葉たばこ粉砕物の3箇所から部分サンプルを採取し、部分サンプルについて当該酵素活性を測定し、得られた測定値の平均を求めることにより得ることができる。
【0019】
一般に、葉たばこが有している酵素は、葉たばこの製造過程(とりわけ、農家での乾燥工程)で高温に晒されると失活し、葉たばこの製造過程で高温に晒されなかった場合、失活せずに活性が維持されている。このため、葉たばこ粉砕物の「β-D-グルコシダーゼ活性」が維持されていれば、その他の酵素活性も維持されている。したがって、葉たばこ粉砕物の「β-D-グルコシダーゼ活性」を、葉たばこ粉砕物が有する種々の配糖体分解酵素の活性の指標とすることができる。
【0020】
具体的には、葉たばこ粉砕物が、30[nkat/g]以上のβ-D-グルコシダーゼ活性を有する場合、葉たばこ粉砕物は、β-D-グルコシダーゼ以外の配糖体分解酵素についても所定の値以上の活性を有し、種々の配糖体を分解してたばこ香味成分を生成する十分な能力を備えている。一方、葉たばこ粉砕物が、25[nkat/g]以下のβ-D-グルコシダーゼ活性を有する場合、葉たばこ粉砕物は、β-D-グルコシダーゼ以外の配糖体分解酵素についても所定の値以下の活性を有し、種々の配糖体を分解してたばこ香味成分を生成する十分な能力を備えていない。
【0021】
葉たばこ粉砕物の「β-D-グルコシダーゼ活性」は、第1の葉たばこ粉砕物と第2の葉たばこ粉砕物とを混合する直前に、後述する実施例1の測定方法により測定された値をいう。同様に、葉たばこ粉砕物の「配糖体の有無」は、第1の葉たばこ粉砕物と第2の葉たばこ粉砕物とを混合する直前に、後述する実施例2の分析方法に従って配糖体と同定されるピークが存在するか否かによって決定される。
【0022】
第1の葉たばこ粉砕物は、配糖体を含有していても含有していなくてもよく、その含有量は特に限定されないが、第1の葉たばこ粉砕物は、高い配糖体分解酵素活性を示すため、配糖体含有量は一般に少ない。一方、第2の葉たばこ粉砕物は、配糖体分解反応の基質となる配糖体を含有している。第2の葉たばこ粉砕物は、低い配糖体分解酵素活性を示すため、配糖体含有量は一般に多い。第2の葉たばこ粉砕物に含有される配糖体の量が多いと、より多くの配糖体分解物の生成につながるため、第2の葉たばこ粉砕物の配糖体含有量は多いことが好ましい。
【0023】
したがって、好ましくは、第1の葉たばこ粉砕物は、前記第2の葉たばこ粉砕物と比べて、葉たばこ粉砕物の単位質量あたり少ない含有量で配糖体を含有する。より好ましくは、第1の葉たばこ粉砕物に含有される配糖体成分のいずれの成分の含有量も、第2の葉たばこ粉砕物に含有される配糖体成分のものよりも少ない。なお、本明細書において、葉たばこ粉砕物の配糖体含有量は、葉たばこ粉砕物の単位質量あたりの含有量を指す。
【0024】
本明細書において、葉たばこ粉砕物に含有される「配糖体」は、葉たばこに含まれる配糖体の全てを指し、具体的には、WO2018/038245に記載される分析方法により配糖体と決定される成分の全てを指す。より具体的には、葉たばこ粉砕物に含有される「配糖体」は、後述する実施例2の分析方法に従って配糖体と決定される成分の全てを指す。WO2018/038245に記載される分析方法では、β-D-グルコシダーゼで処理した葉たばこ抽出液サンプルと、β-D-グルコシダーゼで処理しなかった葉たばこ抽出液サンプルとを準備し、各サンプルをLC-MS/MSにより分析して分析結果を比較し、β-D-グルコシダーゼにより消失または強度が低下しているピークを配糖体と決定する。葉たばこ粉砕物に含有される「配糖体」は、WO2018/038245に記載されるとおり、内部標準物質を用いて定量することができる。
【0025】
背景技術の欄に記載したとおり、葉たばこは、多種類の配糖体成分を含むが、これら配糖体成分のなかには、同定されていないものも多くある。したがって、本明細書において、葉たばこ粉砕物に含有される「配糖体」は、葉たばこに含まれる配糖体として同定されている配糖体だけでなく、葉たばこに含まれるが同定されていない配糖体も含む。
【0026】
「第1の葉たばこ粉砕物」は、典型的には、たばこ植物の葉の農家での乾燥が空気乾燥(air-curing)により行われる品種の葉たばこ粉砕物である。典型的な第1の葉たばこ粉砕物は、農家での乾燥工程で自然の温湿度および通気条件に晒されるため、酵素の失活が起こり難く、配糖体の多くは分解される。その結果、典型的な第1の葉たばこ粉砕物は、高い配糖体分解酵素活性を有するとともに、低い配糖体含有量を有する。
【0027】
第1の葉たばこ粉砕物は、例えば、バーレー種、在来種、暗色火干種、暗色気干種、および暗色日干種から選択される少なくとも1つの品種の葉たばこ粉砕物である。第1の葉たばこ粉砕物は、1つの品種の葉たばこ粉砕物であってもよいし、複数の品種の葉たばこ粉砕物の混合物であってもよい。
【0028】
「第2の葉たばこ粉砕物」は、典型的には、たばこ植物の葉の農家での乾燥が、加熱工程を伴う鉄管乾燥(flue-curing)または加熱空気を循環させる循環乾燥(air-circulating curing)または日干乾燥(sun-curing)により行われる品種の葉たばこ粉砕物である。典型的な第2の葉たばこ粉砕物は、農家での乾燥工程で高温に晒されるため、酵素の失活が起こり易く、配糖体の多くは、それ以上分解されることなく残る。その結果、典型的な第2の葉たばこ粉砕物は、低い配糖体分解酵素活性を有するとともに、高い配糖体含有量を有する。
【0029】
第2の葉たばこ粉砕物は、例えば、黄色種、オリエント種、日干種、および明色日干種から選択される少なくとも1つの品種の葉たばこ粉砕物である。第2の葉たばこ粉砕物は、1つの品種の葉たばこ粉砕物であってもよいし、複数の品種の葉たばこ粉砕物の混合物であってもよい。
【0030】
上述のとおり、第1の葉たばこ粉砕物は、たばこ植物の葉の農家での乾燥が空気乾燥(air-curing)により行われる品種の葉たばこ粉砕物であってもよい。あるいは、第1の葉たばこ粉砕物は、
葉たばこ原料に、配糖体分解酵素を活性化させる処理を施し、その後、
前記葉たばこ原料を粉砕する
ことにより得られる粉砕物であってもよい。ここで使用される葉たばこ原料は、配糖体分解酵素活性を有している葉たばこ原料であれば、配糖体の含有量は任意である。葉たばこ原料として、例えば、バーレー種、在来種、暗色火干種、暗色気干種、暗色日干種、黄色種、オリエント種、日干種、および明色日干種から選択される少なくとも1つの品種を使用することができる。活性化処理は、例えば、葉たばこ原料のpHを当該酵素の至適pHに調節するように緩衝剤を用いて葉たばこ原料を処理すること、または葉たばこ原料を当該酵素の至適温度の下に置くことにより行うことができる。
【0031】
第1の葉たばこ粉砕物の配糖体分解酵素を予め活性化させておいた場合、配糖体分解反応の効率を高めることができる。
【0032】
上述のとおり、第2の葉たばこ粉砕物は、たばこ植物の葉の農家での乾燥が、加熱工程を伴う鉄管乾燥(flue-curing)または加熱空気を循環させる循環乾燥(air-circulating curing)または日干乾燥(sun-curing)により行われる品種の葉たばこ粉砕物であってもよい。あるいは、第2の葉たばこ粉砕物は、
葉たばこ原料を加熱して、前記葉たばこ原料に含まれる酵素を失活させ、その後、
前記葉たばこ原料を粉砕する
ことにより得られる粉砕物であってもよい。ここで使用される葉たばこ原料は、配糖体を含有している葉たばこ原料であれば、配糖体分解酵素活性の値は任意である。葉たばこ原料として、例えば、バーレー種、在来種、暗色火干種、暗色気干種、暗色日干種、黄色種、オリエント種、日干種、および明色日干種から選択される少なくとも1つの品種を使用することができる。好ましくは、葉たばこ原料として、黄色種、オリエント種、日干種、および明色日干種から選択される少なくとも1つの品種を使用することができる。失活処理は、例えば、葉たばこを、220~250℃の気流温度を有する流動層に投入し、1~5秒間処理することにより行うことができる。
【0033】
第2の葉たばこ粉砕物の酵素を予め失活させておいた場合、失活処理後の葉たばこは、その後の配糖体の分解を完全に抑えることができ、高い配糖体含有量を維持したまま葉たばこ原料を保存することができる。したがって、かかる失活処理を行うことにより、高い配糖体含有量を有する葉たばこ原料を、「第2の葉たばこ粉砕物」の原料として安定に供給することができる。
【0034】
(葉たばこ混合物の調製)
上述の第1の葉たばこ粉砕物と上述の第2の葉たばこ粉砕物とを混合して、葉たばこ混合物を調製する。第1の葉たばこ粉砕物と第2の葉たばこ粉砕物との混合比は、任意であるが、好ましくは、質量比で1:20~20:1、例えば、質量比で1:1とすることができる。
【0035】
葉たばこ混合物は、第1の葉たばこ粉砕物と第2の葉たばこ粉砕物のみから構成されていてもよい。本発明では、第1の葉たばこ粉砕物に含まれる配糖体分解酵素が、第2の葉たばこ粉砕物に含まれる配糖体に作用して配糖体分解物が生成されればよいため、葉たばこ混合物は、葉たばこ粉砕物以外の成分を含んでいなくても問題ない。ただし、本発明では、葉たばこ混合物が、葉たばこ粉砕物以外の成分を含んでいることを排除しておらず、配糖体分解反応を促進する成分、例えば水、pH緩衝剤などを添加物として含んでいてもよい。
【0036】
(葉たばこ混合物の蔵置)
上述の葉たばこ混合物を加湿条件下で蔵置して、たばこ香味が増加したたばこ材料を製造する。
【0037】
加湿条件は、一般的には、葉たばこ混合物の水分量が12~80質量%になるように葉たばこ混合物に水分を加えた条件とすることができる。ここで「葉たばこ混合物の水分量(質量%)」は、葉たばこ混合物が本来有している水分量と、加えた水分量との合計水分量が、葉たばこ混合物の質量と加えた水分量との合計質量に占める割合をいう。
【0038】
「葉たばこ混合物が本来有している水分量」は、以下の方法で求めることができる。
葉たばこ試料を、食品の水分の分析方法(加熱乾燥法)に準拠し、常圧下、100℃で1時間加熱し、40分間デシケータにて放冷し、加熱前後の重量差から水分を求める。具体的な手順は以下の通りである。
【0039】
(1)デシケータに保存している試料容器の質量(W0)を測定する。
(2)必要量の葉たばこ試料を秤り取り、試料容器に入れ蓋をする。ここで、秤り取った試料の質量および試料容器の質量(WO)の合計質量をW1とする。
(3)試料容器の蓋を開け、ロータリー式乾燥器の中に並べ、100℃で1時間加熱する。
(4)1時間後、試料容器の蓋を閉めて取り出し、デシケータ内で放冷する。
(5)40分後、試料を含む試料容器の質量(W2)を測定する。水分量(Mw)は下記の式により求める。
【0040】
Mw={(W1-W2)/(W1-W0)}×100
Mw:水分量(質量%)
W1:乾燥前試料および試料容器の合計質量(g)
W2:乾燥後試料および試料容器の合計質量(g)
W0:試料容器の質量(g)
【0041】
「葉たばこ混合物が本来有している水分量」は、一般的には、12~14質量%である。例えば、12質量%の水分量を有している葉たばこ混合物(30g)の水分量を55%にするためには、29gの水を加える必要がある。必要な量の水分を葉たばこ混合物に加えた後、葉たばこ混合物の全体に水分が行き渡るように、葉たばこ混合物をかき混ぜてもよい。
【0042】
好ましくは、加湿条件は、葉たばこ混合物の水分量が12~55質量%になるように葉たばこ混合物に水分を加えた条件である。より好ましくは、加湿条件は、葉たばこ混合物の水分量が12~45質量%になるように葉たばこ混合物に水分を加えた条件である。
【0043】
水分は、配糖体分解反応が加水分解反応であるため、反応物質としての役割を果たす。更に、水分は、媒体として機能し、第1の葉たばこ粉砕物と第2の葉たばこ粉砕物との間での配糖体分解酵素および配糖体の移動を促進し、配糖体分解反応の効率を高める役割を果たす。
【0044】
したがって、「葉たばこ混合物の水分量」は、上記役割を果たすのに十分な量であることが好ましい。また、葉たばこ混合物が、蔵置後に、たばこ製品のたばこ充填材として使用されたり、たばこ香味液の原料として使用されたりすることを考えると、「葉たばこ混合物の水分量」は、上記役割を果たすのに十分な量であれば、必要以上に多すぎないことが好ましい。「葉たばこ混合物の水分量」は、カビの発生のリスクという意味でも必要以上に多すぎないことが好ましい。
【0045】
葉たばこ混合物の蔵置は、配糖体分解酵素が働くのに適した温度で、十分な量の配糖体分解物が生成されるのに必要な期間にわたって行うことができる。
【0046】
葉たばこ混合物の蔵置は、好ましくは0~60℃の温度で行われる。葉たばこ混合物の蔵置は、より好ましくは0~50℃、更に好ましくは20~50℃の温度で行われる。
【0047】
葉たばこ混合物の蔵置は、好ましくは24~72時間の期間にわたって行われる。葉たばこ混合物の蔵置は、より好ましくは24~48時間にわたって行われる。蔵置期間は、生成された配糖体分解物が、揮発や更なる分解などにより消失するリスクを減らすため、配糖体分解物の生成量が頭打ちになるまでの期間に基づいて決めてもよい。
【0048】
葉たばこ混合物の蔵置は、好ましくは密閉条件下で行われる。密閉条件は、葉たばこ混合物を、気密性を有する容器内に入れることによりつくることができる。気密性を有する容器は、任意の容量であってもよいが、容器内の温度を制御可能なものが好ましい。葉たばこ混合物は、たとえば、容器の容量の約50~80%を占める程度に容器内に入れることができる。密閉条件下での蔵置は、生成された配糖体分解物が葉たばこ粉砕物にとどまりやすいため、好ましい。
【0049】
葉たばこ混合物は、蔵置後、たばこ製品に組み込まれてもよいし、通常の葉たばこと同程度の水分量(すなわち、12~14質量%)まで乾燥させた後に、たばこ製品に組み込まれてもよい。乾燥は、乾燥機を用いて行ってもよいし、自然乾燥により行ってもよい。自然乾燥は、葉たばこ混合物を、5~40℃の温度および10~90%の湿度の条件下に1~7日間静置することにより行うことができる。乾燥機を使用する場合、乾燥は、加熱を避け40℃以下に保ちながら1~5時間減圧乾燥することにより行うことができる。
【0050】
本発明の方法に従って製造されたたばこ材料は、生成された配糖体分解物を含むため、増加したたばこ香味を有する。生成された配糖体分解物が、揮発や更なる分解などにより消失するリスクを減らすため、本発明の方法に従って製造されたたばこ材料は、速やかにたばこ製品(例えば、香味吸引物品)に組み込まれることが好ましい。言い換えると、本発明の方法は、たばこ製品(例えば、香味吸引物品)に組み込まれる直前の葉たばこに対して実施されることが好ましい。
【0051】
また、本発明の方法において、「第1の葉たばこ粉砕物」、「葉たばこ混合物」、「たばこ香味が増加したたばこ材料」はいずれも、例えば80℃以上の高温に晒されないことが望ましい。「第1の葉たばこ粉砕物」は、配糖体分解酵素活性を有することが求められるため、第2の葉たばこ粉砕物と混合される前も後も、酵素を失活させるような高温、例えば80℃以上の温度に晒されないことが望ましい。「葉たばこ混合物」は、葉たばこ混合物に含まれる配糖体分解酵素が機能するように、酵素を失活させるような高温、例えば80℃以上の高温に晒されないことが望ましい。「たばこ香味が増加したたばこ材料」は、生成された配糖体分解物が揮発や更なる分解などにより消失するリスクを減らすため、たばこ製品に組み込まれる前も後も、例えば80℃以上の高温に晒されないことが望ましい。
【0052】
(効果)
上述のとおり、葉たばこには、農家での乾燥の仕方の違いによって、「配糖体分解酵素の活性が高く、配糖体含有量が少ない品種」と、「配糖体分解酵素の活性が低く、配糖体含有量が多い品種」とが存在する。これは、配糖体分解酵素の活性および配糖体の両方が同一の葉たばこに存在すると、配糖体の分解が起こり、配糖体分解酵素の活性と配糖体含有量とが両立しないためと考えられる。本発明者らは、この点に新たに着目して、配糖体分解酵素の活性が高い葉たばこに含まれる配糖体分解酵素と、配糖体分解酵素の活性が低い葉たばこに多量に含まれる配糖体とを反応させて、葉たばこのたばこ香味を増加させることに成功した。
【0053】
本発明は、ある葉たばこに高い活性で含まれる多種類の配糖体分解酵素と、別の葉たばこに多量に含まれる多種類の配糖体とを有効利用して、多種類の配糖体分解物を生成することができる点で優れている。
【0054】
葉たばこに含まれる酵素ではなく酵素標品を利用した場合、酵素は、基質の特定構造を識別して特定の基質のみに作用するため、例えばβ-グルコシダーゼは、β-グリコシド結合をもつ配糖体しか分解することができない。したがって、葉たばこに含まれる多種類の配糖体成分を分解するには、多種類の酵素標品を準備する必要がある。また、葉たばこに含まれる配糖体成分は同定されていないものも多く、そもそも、どんな種類の酵素を準備すればよいかわからないものも多い。仮に葉たばこに含まれる全ての配糖体成分を同定できた場合であっても、これら全ての配糖体成分を分解することができる多種類の酵素を準備することは負担が大きい。
【0055】
一方、本発明に従って、葉たばこに内在する多種類の配糖体分解酵素を利用すれば、葉たばこに存在する多種類の配糖体成分を一度に分解することができ、この点においても本発明の方法は優れている。
【0056】
<2.たばこ材料>
別の側面によれば、上記方法により製造されるたばこ材料が提供される。上述のとおり、本発明のたばこ材料は、増加したたばこ香味を有する。
【0057】
本発明のたばこ材料は、たばこ充填材として任意のたばこ製品に組み込まれてもよいし、たばこ香味液の製造のための原料として使用されてもよい。
【0058】
本発明のたばこ材料は、たばこ香味をユーザが味わう任意の香味吸引物品に組み込むことができる。香味吸引物品としては、具体的には、たばこ材料を燃焼させることによりたばこ香味をユーザに提供する燃焼型喫煙物品、たばこ材料を燃焼させることなく加熱することによりたばこ香味をユーザに提供する加熱型香味吸引器、およびたばこ材料を加熱も燃焼もしないで、たばこ香味をユーザに提供する非加熱型香味吸引器が挙げられる。加熱型香味吸引器として、ヒータ等の加熱デバイスでたばこ材料を加熱することによりたばこ香味をユーザに提供する直接加熱タイプや、液状のエアロゾル源を加熱してエアロゾルを発生させ、エアロゾルをたばこ材料に通すことにより、たばこ香味をユーザに提供する間接加熱タイプが知られている。
【0059】
加熱型香味吸引器および非加熱型香味吸引器は、たばこ材料を燃焼させないため、燃焼型喫煙物品と比べると、たばこ香味成分が放出されにくい。このため、本発明のたばこ材料は、加熱型香味吸引器または非加熱型香味吸引器で使用した場合に、増加したたばこ香味をユーザに提供することができるという点で特に優れた効果を発揮する。
【0060】
燃焼型喫煙物品としては、例えば、シガレット、パイプ、キセル、葉巻、またはシガリロなどが挙げられる。
【0061】
加熱型香味吸引器としては、例えば、
炭素熱源の燃焼熱でたばこ材料(例えば、たばこ刻またはたばこ成形体)を加熱して、香喫味成分を含むエアロゾルを発生させる炭素熱源型吸引器(例えば国際公開2006/073065号を参照);または
たばこ材料をエアロゾル源(例えば、プロピレングリコールまたはグリセリン)とともに収容した詰め替えタイプのたばこポッドと、たばこポッドを電気加熱により加熱してエアロゾルを発生させる吸引器本体とを備えた電気加熱型吸引器(例えばWO2013/025921を参照);または
電池から供給される電力によってエアロゾル源を霧化する霧化部を有する第1カートリッジと、たばこ材料を収容した第2カートリッジとを備え、第1カートリッジにおいて発生するエアロゾルを第2カートリッジに通すことでエアロゾルにたばこ香味を付与する電気加熱型吸引器(例えばWO2016/075747を参照)
が挙げられる。
【0062】
非加熱型香味吸引物品としては、たばこ材料を収容した詰め替えタイプのカートリッジを吸引ホルダ内に備え、常温のたばこ材料に由来するたばこ香味をユーザが吸引する非加熱型たばこ香味吸引器(例えばWO2010/110226を参照)が挙げられる。
【0063】
本発明のたばこ材料が、香味吸引物品に含まれる全たばこ材料(以下、たばこ充填材ともいう)に占める割合は、特に限定されない。すなわち、本発明のたばこ材料は、たばこ充填材の全体(100質量%)を占めるように配合されてもよいし、たばこ充填材の一部分、例えばたばこ充填材の1~99質量%を占めるように配合されてもよい。
【0064】
<3.たばこ香味液の製造方法>
別の側面によれば、本発明のたばこ材料からたばこ香味成分を抽出して、たばこ香味液を得ることを含む、たばこ香味液の製造方法が提供される。すなわち、たばこ香味液の製造方法は、
30[nkat/g]以上のβ-D-グルコシダーゼ活性を有する第1の葉たばこ粉砕物と、配糖体を含有し、かつ25[nkat/g]以下のβ-D-グルコシダーゼ活性を有する第2の葉たばこ粉砕物とを混合して、葉たばこ混合物を調製すること、
前記葉たばこ混合物を加湿条件下で蔵置して、たばこ香味が増加したたばこ材料を得ること、および
前記たばこ材料からたばこ香味成分を抽出して、たばこ香味液を得ること
を含む。たばこ香味液の製造方法をフローチャートで
図1に示す。
【0065】
たばこ材料を得るまでの工程は、<1.たばこ材料の製造方法>の説明を参照することができる。たばこ材料からたばこ香味成分を抽出する工程は、香気成分の抽出方法として一般に知られている方法を用いて行うことができる。たばこ香味成分の抽出は、例えば蒸留により、具体的には、水蒸気蒸留、熱水蒸留、常圧蒸留または減圧蒸留により行うことができる。たばこ香味成分の抽出は、抽出効率の点で、水蒸気蒸留により行うことが好ましい。
【0066】
<4.たばこ香味液>
別の側面によれば、上記方法により製造されるたばこ香味液が提供される。本発明のたばこ香味液は、たばこ香味が増加したたばこ材料を原料として用いて製造されるため、増加したたばこ香味を有する。
【0067】
本発明のたばこ香味液は、任意のたばこ製品に組み込むことができる。
例えば、本発明のたばこ香味液は、「加熱型香味吸引器」において、単独で液体収容部に組み込まれてもよいし、たばこ刻やたばこ顆粒などの固体のたばこ香味源と混合してポッド(pod)内に組み込まれてもよいし、エアロゾル源の液体(例えば、プロピレングリコールまたはグリセリン)と混合して液体収容部に組み込まれてもよい。本発明のたばこ香味液は、「非加熱型香味吸引器」において、単独で液体収容部に組み込まれてもよいし、たばこ刻やたばこ顆粒などの固体のたばこ香味源と混合してポッド(pod)内に組み込まれてもよい。
【0068】
<5.たばこ材料を含む加熱型香味吸引器>
別の側面によれば、本発明のたばこ材料を含む加熱型香味吸引器が提供される。
一つの実施形態によれば、本発明のたばこ材料と、前記たばこ材料と混合されたエアロゾル源とを含むたばこ香味源を備えた加熱型香味吸引器が提供される。かかる加熱型香味吸引器の一例を、
図2に示す。
【0069】
図2に示す加熱型香味吸引器10は、電気加熱によりたばこ香味源を加熱してエアロゾルを発生させる電気加熱型吸引器である。以下の説明において、加熱型香味吸引器10を単に香味吸引器10と称する。
【0070】
香味吸引器10は、本体110とマウスピース120とを含んでいる。香味吸引器10は、本体110とマウスピース120とが連なる方向に沿って延びた形状を有しており、非吸口端(本体110側の端)と吸口端(マウスピース120側の端)とを有している。
【0071】
なお、以下の説明において、ある部品について「非吸口端側」と言及した場合、この「非吸口端側」によって特定される位置は、その部品のうち、香味吸引器10の非吸口端により近い端の位置である。また、以下の説明において、ある部品について「吸口端側」と言及した場合、この「吸口端側」によって特定される位置は、その部品のうち、香味吸引器10の吸口端により近い端の位置である。
【0072】
本体110は、筒体111と、バッテリ112と、制御回路113と、ヒータ114とを含んでいる。
【0073】
筒体111は、有底筒体であり、後述するたばこポッド130を交換可能なように、吸口端側において開口している。筒体111は、円筒体であってもよいし、多角筒体であってもよい。筒体111の非吸口端には、バッテリ112を充電するための充電部(図示せず)が設けられている。また、筒体111の側壁には、香味吸引器10の電源をオンにしたりオフにしたりするための電源ボタン(図示せず)が設けられている。
【0074】
バッテリ112は、筒体111内に設置されている。バッテリ112は、例えば、リチウムイオン二次電池である。バッテリ112は、香味吸引器10の動作に必要な電力を、香味吸引器10が含んでいる電気および電子部品へ供給する。例えば、バッテリ112は、制御回路113およびヒータ114へ電力を供給する。
【0075】
制御回路113は、筒体111内であって、その開口部とバッテリ112との間に設置されている。制御回路113は、筒体111内の他の位置に設置されていてもよい。制御回路113は、香味吸引器10の動作を制御する。具体的には、制御回路113は、ヒータ114の近傍に設置された温度センサが出力する値に基づいて、ヒータ114へ供給する電力を制御する。
【0076】
ヒータ114は、筒体111内の吸口端側に設置されている。すなわち、ヒータ114は、筒体111内であって、その開口部と制御回路113との間に設置されている。ヒータ114は、たばこポッド130を収容可能なカップ形状を有している。ヒータ114は、バッテリ112および制御回路113と電気的に接続されている。ヒータ114の温度は、制御回路113により制御される。ヒータ114は、その熱が筒体111、バッテリ112および制御回路113等に伝わらないように、絶縁体によって囲まれていることが好ましい。
【0077】
本体110は、例えば筒体111の側壁に、たばこポッド130の加熱状況やバッテリ112の残量をユーザに通知するための発光素子を更に備えていてもよい。
【0078】
ここで、たばこポッド130について説明する。
たばこポッド130は、本体110内に、ヒータ114に取り囲まれるように設置される。たばこポッド130は、所定回数の吸引後、ユーザにより交換される。
【0079】
たばこポッド130は、容器131と、たばこ香味源132とを含んでいる。
容器131は、例えば、金属(例えばアルミニウム)製の容器である。
たばこ香味源132は、容器131に収容されている。たばこ香味源132は、本発明のたばこ材料およびエアロゾル発生液を含んでいる。エアロゾル発生液は、加熱によりエアロゾルを発生させるための液体であり、例えば、プロピレングリコール、グリセリン、またはこれらの混合物などである。たばこ香味源132は、たばこ充填材として、本発明のたばこ材料以外のたばこ材料を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。
【0080】
たばこポッド130は、本体110に装着する前は、アルミ箔の蓋により密封されている。たばこポッド130は、本体110に装着する際に、たばこ香味源からのたばこ香味を吸引可能なように開封される。
【0081】
マウスピース120は、本体110の吸口端側に着脱可能に設けられている。マウスピース120は、たばこポッド130を交換する際には、ユーザによって本体110から取り外される。
【0082】
マウスピース120は、その非吸口端側に突起部を有している。マウスピース120を本体110に装着すると、この突起部がたばこポッド130の蓋を貫通してたばこポッド130を開封する。マウスピース120は、突起部を有していなくてもよい。この場合、たばこポッド130は、例えば、本体110に装着する直前にユーザの手で開封される。
【0083】
マウスピース120は、香味吸引器10の外部の空気をたばこポッド130内の空間へと導く第1ガス流通路を有している。第1ガス流通路のガス流入口は、例えば、マウスピース120の本体110との接続部近傍に設けられる。また、マウスピース120は、ユーザがたばこ香味源132からたばこ香味を吸引可能なように、たばこポッド130内の空間と香味吸引器10の外部空間とを連絡する第2ガス流通路をさらに有している。第2ガス流通路のガス流出口は、例えば、マウスピース120の吸口端に設けられる。
【0084】
<6.たばこ香味液を含む加熱型香味吸引器>
別の側面によれば、本発明のたばこ香味液を含む加熱型香味吸引器が提供される。
一つの実施形態によれば、本発明のたばこ香味液と、前記たばこ香味液と混合されたエアロゾル源とを含むたばこ香味源を備えた加熱型香味吸引器が提供される。かかる加熱型香味吸引器の一例を、
図3に示す。
【0085】
図3に示す加熱型香味吸引器11は、電気加熱によりたばこ香味源を加熱してエアロゾルを発生させる電気加熱型吸引器である。以下の説明において、加熱型香味吸引器11を単に香味吸引器11と称する。
【0086】
香味吸引器11は、吸口端13Aから先端14まで延びるロッド状ないし円柱状をなしている。香味吸引器11は、円筒形をなして外殻を構成するハウジング12と、円筒形の吸口13と、吸口13の吸口端13Aとは反対側に設けられる先端14と、ハウジング12内に収納される電池15と、ハウジング12内に収納されるエアロゾル源16と、エアロゾル源16と接続されるウィック17と、ウィック17の周囲に巻かれた電気抵抗性の金属素材で構成されるヒータ18と、ヒータ18と電池15とを接続する配線21と、ハウジング12に設けられる吸気孔22と、ハウジング12の中心部に円筒形に設けられる通気路23と、ヒータ18への電力の供給を制御する駆動回路24と、を備えている。
【0087】
吸口13は、例えば、ステンレス鋼、黄銅等の金属材料で形成される。ハウジング12は、例えば、樹脂材料によって円筒形に形成される。ハウジング12は、吸口端13A側に位置する第1部分12Aと、先端14側に位置する第2部分12Bと、を有する。第1部分12Aは、吸口13と同様の金属材料で形成される。第2部分12Bは、低比重の樹脂材料によって形成される。この樹脂材料としては、例えば、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリプロピレン、フッ素系樹脂(テフロン(登録商標))等を用いることができる。電池15は、香味吸引器11の電源を構成する。
【0088】
電池15は、例えば円柱形のリチウム電池で構成されるが、それ以外の電池であってもよい。電池15は、繰り返し使用可能な充電式の電池であってもよい。
【0089】
エアロゾル源16は、脱脂綿等の吸収体或いはそれ以外の多孔質体に、本発明のたばこ香味液と、プロピレングリコールやグリセリン等のエアロゾル発生液との混合液を染み込ませたもので構成される。あるいは、エアロゾル源16は、密閉可能な小型の溶液タンクに、本発明のたばこ香味液と、プロピレングリコールやグリセリン等のエアロゾル発生液との混合液を封入したもので構成されてもよい。
【0090】
ウィック17は、複数本のガラス繊維(繊維)を一つの束にして形成され、各ガラス繊維間に働く毛細管力によってエアロゾル源16内の液をヒータ18の位置まで供給する(吸い上げる)ことができる。
【0091】
ヒータ18は、エアロゾル源16から供給される液を加熱してエアロゾルを発生する熱源を構成する。
【0092】
吸気孔22は、ハウジング12の円周方向に沿って、一定の間隔を空けて少なくとも1つ以上形成される。なお、本実施形態では、吸気孔22は、複数で構成されているが、吸気孔22を1つで構成してもよい。それぞれの吸気孔22は、ハウジング12を貫通するように設けられた円形の小孔で構成される。
【0093】
香味吸引器11の作用について説明する。香味吸引器11は、ハウジング12に設けられた押しボタン等のスイッチを押したり、或いは人が吸口13から空気を吸い込むことを流量センサによって感知したりすることで起動される。或いは電池15が充電式のもので構成される場合には、香味吸引器11に設けられた感知部によって充電器から取り外されたことを感知して香味吸引器11を起動してもよい。
【0094】
香味吸引器11が起動されると、駆動回路24は、ヒータ18に対して電力を供給する。電力の供給方法は任意であり、一定の時間間隔を空けて間欠的にヒータ18に電力を供給してもよいし、香味吸引器11の起動後はある一定の電圧をヒータ18にかけるようにしてもよい。あるいは、通気路23の途中に流量計を設けて、通気路23を通る気体の流量に比例して電力を大きくしたり小さくしたりするように制御してもよい。エアロゾル源16から供給された液は、ヒータ18によって温められて、吸気孔22から供給された空気と混ざってエアロゾルを生成する。
【0095】
ユーザが吸口13から吸引を行うと、吸気孔22から空気がハウジング12内に取り込まれる。この空気は、ウィック17を通過する際にたばこ香味を含んだエアロゾルとなる。このエアロゾルは、ユーザの口腔内に取り込まれ、ユーザにたばこ香味を提供することができる。
【0096】
<7.好ましい実施形態>
以下に、本発明の好ましい実施形態をまとめて示す。
[1]30[nkat/g]以上のβ-D-グルコシダーゼ活性を有する第1の葉たばこ粉砕物と、配糖体を含有し、かつ25[nkat/g]以下のβ-D-グルコシダーゼ活性を有する第2の葉たばこ粉砕物とを混合して、葉たばこ混合物を調製すること、および
前記葉たばこ混合物を加湿条件下で蔵置して、たばこ香味が増加したたばこ材料を得ること
を含む、たばこ材料の製造方法。
【0097】
[2]前記第1の葉たばこ粉砕物および前記第2の葉たばこ粉砕物が、1mm以下の最大径、好ましくは0.5~1mmの最大径を有する[1]に記載の方法。
[3]前記第1の葉たばこ粉砕物が、30~1000[nkat/g]のβ-D-グルコシダーゼ活性、好ましくは100~1000[nkat/g]のβ-D-グルコシダーゼ活性を有する[1]または[2]に記載の方法。
【0098】
[4]前記第2の葉たばこ粉砕物が、0~25[nkat/g]のβ-D-グルコシダーゼ活性、好ましくは0~15[nkat/g]のβ-D-グルコシダーゼ活性を有する[1]~[3]の何れか1に記載の方法。
[5]前記第1の葉たばこ粉砕物が、たばこ植物の葉の農家での乾燥が空気乾燥(air-curing)により行われる品種の葉たばこ粉砕物である[1]~[4]の何れか1に記載の方法。
【0099】
[6]前記第1の葉たばこ粉砕物が、バーレー種、在来種、暗色火干種、暗色気干種、および暗色日干種から選択される少なくとも1つの品種の葉たばこ粉砕物である[1]~[5]の何れか1に記載の方法。
[7]前記第2の葉たばこ粉砕物が、たばこ植物の葉の農家での乾燥が、加熱工程を伴う鉄管乾燥(flue-curing)または加熱空気を循環させる循環乾燥(air-circulating curing)または日干乾燥(sun-curing)により行われる品種の葉たばこ粉砕物である[1]~[6]の何れか1に記載の方法。
【0100】
[8]前記第2の葉たばこ粉砕物が、黄色種、オリエント種、日干種、および明色日干種から選択される少なくとも1つの品種の葉たばこ粉砕物である[1]~[7]の何れか1に記載の方法。
[9]前記混合が、前記第1の葉たばこ粉砕物と前記第2の葉たばこ粉砕物とを1:20~20:1の質量比で混合することにより行われる[1]~[8]の何れか1に記載の方法。
【0101】
[10]前記葉たばこ混合物が、前記第1の葉たばこ粉砕物と前記第2の葉たばこ粉砕物のみから構成される[1]~[9]の何れか1に記載の方法。
[11]前記加湿条件が、前記葉たばこ混合物の水分量が12~80質量%になるように前記葉たばこ混合物に水分を加えた条件である[1]~[10]の何れか1に記載の方法。
【0102】
[12]前記加湿条件が、前記葉たばこ混合物の水分量が12~55質量%、好ましくは12~45質量%になるように前記葉たばこ混合物に水分を加えた条件である[1]~[11]の何れか1に記載の方法。
[13]前記蔵置が、0~60℃、好ましくは0~50℃、より好ましくは20~50℃の温度で行われる[1]~[12]の何れか1に記載の方法。
【0103】
[14]前記蔵置が、24~72時間、好ましくは24~48時間の期間にわたって行われる[1]~[13]の何れか1に記載の方法。
[15]前記蔵置が、密閉条件下で行われる[1]~[14]の何れか1に記載の方法。
【0104】
[16]前記蔵置が、気密性を有する容器内で行われる[1]~[15]の何れか1に記載の方法。
[17]前記第1の葉たばこ粉砕物が、前記第2の葉たばこ粉砕物と比べて、単位質量あたり少ない含有量で配糖体を含有する[1]~[16]の何れか1に記載の方法。
【0105】
[18]前記第1の葉たばこ粉砕物に含有される配糖体成分のいずれの成分の含有量も、前記第2の葉たばこ粉砕物に含有される配糖体成分のものよりも少ない[1]~[17]の何れか1に記載の方法。
[19]前記第2の葉たばこ粉砕物が、
葉たばこ原料を加熱して、前記葉たばこ原料に含まれる酵素を失活させ、その後、
前記葉たばこ原料を粉砕する
ことにより得られる粉砕物である[1]~[18]の何れか1に記載の方法。
【0106】
[20]前記葉たばこ原料が、バーレー種、在来種、暗色火干種、暗色気干種、暗色日干種、黄色種、オリエント種、日干種、および明色日干種から選択される少なくとも1つの品種の葉たばこであり;好ましくは、黄色種、オリエント種、日干種、および明色日干種から選択される少なくとも1つの品種の葉たばこ粉砕物である[19]に記載の方法。
[21]前記方法が、前記蔵置の後に、前記たばこ材料を、前記たばこ材料の水分量が12~14質量%になるように乾燥させることを更に含む[1]~[20]の何れか1に記載の方法。
【0107】
[22]上記[1]~[21]の何れか1に記載の方法により製造されるたばこ材料。
[23]上記[22]に記載のたばこ材料からたばこ香味成分を抽出して、たばこ香味液を得ることを含む、たばこ香味液の製造方法。
【0108】
[24]前記抽出が、蒸留により、好ましくは水蒸気蒸留、熱水蒸留、常圧蒸留または減圧蒸留により、より好ましくは水蒸気蒸留により行われる[23]に記載の方法。
[25]上記[23]または[24]に記載の方法により製造されるたばこ香味液。
【0109】
[26]上記[22]に記載のたばこ材料を含む加熱型香味吸引器。
[27]上記[25]に記載のたばこ香味液を含む加熱型香味吸引器。
【0110】
[28]上記[22]に記載のたばこ材料と、
前記たばこ材料と混合されたエアロゾル源と
を含むたばこ香味源を備えた加熱型香味吸引器。
[29]前記たばこ材料と前記エアロゾル源との混合物を加熱してエアロゾルを発生させる加熱デバイスを更に含む[28]に記載の加熱型香味吸引器。
【0111】
[30]上記[25]に記載のたばこ香味液と、
前記たばこ香味液と混合されたエアロゾル源と
を含むたばこ香味源を備えた加熱型香味吸引器。
[31]前記たばこ材料と前記エアロゾル源との混合物を加熱してエアロゾルを発生させる加熱デバイスを更に含む[30]に記載の加熱型香味吸引器。
【0112】
[32]前記加熱型香味吸引器が、上記[22]に記載のたばこ材料と、前記たばこ材料に通すためのエアロゾルを発生させるエアロゾル源と、前記エアロゾル源を加熱してエアロゾルを発生させる加熱デバイスとを備えた加熱型吸引器である[26]に記載の加熱型香味吸引器。
[33]前記加熱型香味吸引器が、上記[22]に記載のたばこ材料とエアロゾル源との混合物を収容した詰め替えタイプのたばこポッドと、前記たばこポッドを電気加熱により加熱してエアロゾルを発生させる吸引器本体とを備えた電気加熱型吸引器である[26]に記載の加熱型香味吸引器。
【0113】
[34]前記加熱型香味吸引器が、電池から供給される電力によってエアロゾル源を霧化する霧化部を有する第1カートリッジと、上記[22]に記載のたばこ材料を収容した第2カートリッジとを備え、前記第1カートリッジにおいて発生するエアロゾルを前記第2カートリッジに通すことでエアロゾルにたばこ香味を付与する電気加熱型吸引器である[26]に記載の加熱型香味吸引器。
[35]前記エアロゾル源が、プロピレングリコール、グリセリン、またはこれらの混合物である[28]~[34]の何れか1に記載の加熱型香味吸引器。
【0114】
[36]上記[22]に記載のたばこ材料を含む燃焼型喫煙物品。
[37]上記[22]に記載のたばこ材料を含む非加熱型香味吸引器。
[38]上記[25]に記載のたばこ香味液を含む非加熱型香味吸引器。
【実施例】
【0115】
[実施例1:β-D-グルコシダーゼ活性の測定]
実施例1では、葉たばこのβ-D-グルコシダーゼ活性を測定した。葉たばことして、バーレー種、黄色種、オリエント種を使用した。
【0116】
1-1.粗酵素液の調製
葉たばこを1.0mmメッシュ以下に粉砕して葉たばこ粉砕物を得た。葉たばこ粉砕物(2.0±0.005g)をガラスバイアルに秤量し、4℃に冷却しておいた100mLの15mM McIlvaine緩衝液(4.8mMクエン酸-10.2mMリン酸水素二ナトリウム緩衝液、pH5.4)に懸濁した。懸濁液をホモジナイズし、さらに超音波を掛けて30分間酵素タンパク質を抽出した。抽出液をWhatmann♯60を用いて濾過し、濾液を12,000×g、10分間遠心した。上清を孔径0.2μmのセルロースアセテートメンブレン(Whatmann)を用いて濾過した。濾液を60mL分取し、30kDa限外濾過膜(Amicon Ultra、遠心式限外濾過チューブ×4)を用いて低分子成分を除去して高分子成分の分離液を得た。高分子成分の分離液に対して、5mM酢酸緩衝液(pH5.5)を加えて希釈し、再び限外濾過を行うことにより高分子画分を洗浄(低分子を除去)した。さらに高分子画分の洗浄操作を2回繰り返した。洗浄した分離液は、5mM、pH5.5に調整した酢酸緩衝液を用いて12mLにメスアップした。このメスアップした溶液を、「粗酵素液」と定義する。粗酵素液の調製操作は全て4℃で実施した。
【0117】
調製した粗酵素液は、たばこ原料0.1g相当の高分子粗精製物が1mLに溶解している計算となる(0.1gの原料中可溶性高分子/1mL)。
【0118】
1-2.酵素活性の測定
調製した粗酵素液100μLと10mM酢酸緩衝液(pH5.5)1000μLとをエッペンドルフチューブ内で混合した溶液を5つ調製し、それぞれヒートブロック内で45℃、2分間加温した。加温した5つの混合溶液のうち、4つに対して、20mM 4-ニトロフェニルβ-D-グルコピラノシド(Glc-β-pNP)基質溶液をそれぞれ500μL加えて、一つは5分後、もう一つは15分後、さらにもう一つは30分後、最後の一つは60分後に50mM炭酸ナトリウム溶液を400μL加えて反応を停止した。残りの1つの混合溶液はインキュベート後、50mM炭酸ナトリウム溶液を400μL加えた後にGlc-β-pNP基質溶液を500μL加えた。
【0119】
各溶液中の生成した4-ニトロフェノール(pNP)濃度を、405nm波長の吸光度から算出し、反応時間に対する濃度変化から反応速度を求めた。酵素活性は、1秒間に1[nmol]のpNPを遊離させる酵素量を1[nkat]と定義し、反応溶液中の酵素濃度から最終的に葉たばこ原料の重量当たりの活性値[nkat/g]に換算した。
【0120】
具体的な計算式として、反応速度[nmol/mL/s]×2.0[mL(活性測定後の最終液量)]÷0.1[mL(粗酵素液量)]の計算式により算出される値を、さらに葉たばこ原料の重量[g/mL]で割り戻した値を、葉たばこ原料の重量当たりのβ-D-グルコシダーゼ活性値[nkat/g]とした。
【0121】
1-3.測定結果
バーレー種、黄色種およびオリエント種において測定されたβ-D-グルコシダーゼ活性を以下の表に示す。
【0122】
【0123】
表1において、黄色種のロット番号A~Dは、それぞれ原産国が異なり、バーレー種のロット番号E~Jは、それぞれ原産国が異なり、オリエント種のロット番号KおよびLは、それぞれ原産国が異なる。
【0124】
測定結果から、黄色種とオリエント種に比べ、バーレー種では、配糖体分解酵素であるβ-グルコシダーゼの活性が高いことがわかった。
【0125】
[実施例2:配糖体の分析]
実施例2では、葉たばこに含まれる配糖体を分析した。分析は、WO2018/038245に記載される方法に従って行った。葉たばことして、表1のロット番号D、H、IおよびJを使用した。
【0126】
2-1.分析用試料の準備
ミル(メリタジャパン株式会社)を用いて粉砕した乾燥葉たばこ試料を3日間凍結乾燥した。凍結乾燥後の原料(0.5g)をそれぞれスクリュー管(体積20mL、マルエム)に秤量し、20mLのメタノール(和光純薬工業株式会社、日本)を加えて超音波(AS ONE、US CLEANER US-1R)処理をしながら90分間抽出した。続いて、内部標準物質としてn-ドデシル-β-D-グルコピラノシド(シグマ・アルドリッチジャパン)溶液100μL(1mg/mLメタノール)をそれぞれのスクリュー管に加え振とうした。孔径0.45μmのPTFEメンブレン(Whatman、25mm GD/X Disposable Filter Device)を用いてろ過し、配糖体を含むろ液を調製した。
【0127】
ろ液をそれぞれバイアル瓶に2mLずつ分注し、分析用試料とした。ロット番号D、H、IおよびJの葉たばこから得られたろ液を、それぞれ分析用試料D、H、IおよびJと称する。
【0128】
2-2.LC-MS/MSによる配糖体の分析
分析用試料D、H、IおよびJを、以下の条件でLC-MS/MSによりそれぞれ分析した。
【0129】
装置
Agilent 6410 トリプル四重極LC/MS
クロマトグラフィー条件
カラム:YMC-Pack Pro C18(株式会社ワイエムシィ(YMC Co.,Ltd.))、内径2.0mm×長さ150mm、粒子径3μm
注入量(injection volume):5μL
流速(flow rate):0.15mL/分
分析時間(run time):60分
溶離方法:グラジエント溶離(gradient elution)
溶離液A:1%ギ酸、溶離液B:アセトニトリル
グラジエント条件:15%B(0~5分)、15~45%B(5~15分)、45~90%B(15~45分)、90%B(45~60分)
再平衡化(re-equilibrium)時間:20分
カラム温度:40℃
イオン源パラメーター
イオン化法:エレクトロスプレーイオン化(ESI)
ネブライザーガス:窒素
ネブライザーガス温度:350℃
ネブライザーガス流量:11L/分
ネブライザー圧力:35psi
キャピラリー電圧:4000V
質量分析計パラメーター
イオン極性:正
フラグメンター電圧:100V
衝突ガス(collision gas):窒素
衝突エネルギー(collision energy):20V
測定モード:スキャン
MSスキャン範囲:m/z250~500
スキャン時間:500ms
スキャン方法:コンスタントニュートラルロススキャン
ニュートラルロス質量設定値(neutral loss off-set):162u
【0130】
各分析用試料から得られたクロマトグラムに基づいて、WO2018/038245に記載の方法により特定した配糖体由来のピークを比較した。その結果を
図4に示す。
図4は、分析用試料D、H、IおよびJの配糖体含有量の分析結果を示す。
【0131】
2-3.分析結果
図4の結果から、黄色種(分析用試料D)の葉たばこ粉砕物に含まれる配糖体含有量は多く、バーレー種(分析用試料H、IおよびJ)の葉たばこ粉砕物に含まれる配糖体含有量は少ないことがわかった。
図4の結果は、バーレー種の葉たばこ粉砕物が、黄色種の葉たばこ粉砕物と比べて、単位質量あたり少ない含有量で配糖体を含有することを示す。また、
図4の結果は、バーレー種の葉たばこ粉砕物に含有される配糖体成分のいずれの成分の含有量も、黄色種の葉たばこ粉砕物に含有される配糖体成分のものよりも少ないことを示す。
【0132】
[実施例3:たばこ材料の製造]
3-1.たばこ材料の製造方法
バーレー種の葉たばこ15gを1mm以下の最大径を有するように粉砕し、バーレー種の葉たばこ粉砕物を調製した。同様に、黄色種の葉たばこ15gを1mm以下の最大径を有するように粉砕し、黄色種の葉たばこ粉砕物を調製した。
【0133】
調製された葉たばこ粉砕物を用いて、以下の4種類のたばこ材料を製造した。
【0134】
たばこ材料A
バーレー種の葉たばこ粉砕物1.5gと、黄色種の葉たばこ粉砕物1.5gを混合して、葉たばこ混合物Aを調製した。葉たばこ混合物の水分量が40質量%になるように葉たばこ混合物に水を加え、葉たばこ混合物をかき混ぜた。これにより、葉たばこ粉砕物は、その表面が少し湿っている程度に加湿された。加湿された葉たばこ混合物を20mL容器に入れて蓋をし、37℃で3日間にわたって蔵置してたばこ材料Aを製造した。
【0135】
たばこ材料B
黄色種の葉たばこ粉砕物の酵素を以下のとおり失活させた。気流温度220℃以上、絶対湿度69~78vol%、線速30~34m/sに設定した流動層に、黄色種の葉たばこ粉砕物を投入し、流動層内の滞留時間は2秒以下になるように加熱処理をし、酵素を失活させた。
【0136】
バーレー種の葉たばこ粉砕物1.5gと、加熱処理された黄色種の葉たばこ粉砕物1.5gを混合して、葉たばこ混合物Bを調製した。葉たばこ混合物Aの代わりに葉たばこ混合物Bを用いたこと以外は、たばこ材料Aと同様の手法に従ってたばこ材料Bを製造した。
【0137】
たばこ材料C
葉たばこ混合物Aの代わりにバーレー種の葉たばこ粉砕物3.0gを用いたこと以外は、たばこ材料Aと同様の手法に従ってたばこ材料Cを製造した。
【0138】
たばこ材料D
葉たばこ混合物Aの代わりに黄色種の葉たばこ粉砕物3.0gを用いたこと以外は、たばこ材料Aと同様の手法に従ってたばこ材料Dを製造した。
【0139】
たばこ材料E
バーレー種の葉たばこ粉砕物の酵素を以下のとおり失活させた。気流温度220℃以上、絶対湿度69~78vol%、線速30~34m/sに設定した流動層に、バーレー種の葉たばこ粉砕物を投入し、流動層内の滞留時間は2秒以下になるように加熱処理をし、酵素を失活させた。
【0140】
同様に、黄色種の葉たばこ粉砕物の酵素を以下のとおり失活させた。気流温度220℃以上、絶対湿度69~78vol%、線速30~34m/sに設定した流動層に、黄色種の葉たばこ粉砕物を投入し、流動層内の滞留時間は2秒以下になるように加熱処理をし、酵素を失活させた。
【0141】
加熱処理されたバーレー種の葉たばこ粉砕物1.5gと、加熱処理された黄色種の葉たばこ粉砕物1.5gを混合して、葉たばこ混合物Eを調製した。葉たばこ混合物Aの代わりに葉たばこ混合物Eを用いたこと以外は、たばこ材料Aと同様の手法に従ってたばこ材料Eを製造した。
【0142】
3-2.配糖体の分析結果
たばこ材料A、B、C、DおよびEに含まれる配糖体を、実施例2に記載したとおりのLC-MS/MSにより分析した。
【0143】
図5は、たばこ材料Cの配糖体含有量とたばこ材料Dの配糖体含有量との合計、並びにたばこ材料Aの配糖体含有量を示す。
図5において、横軸は配糖体のピーク番号を示し、縦軸はたばこ材料1gあたりのピーク面積を示す。
【0144】
図5の結果から、「たばこ材料Aの配糖体含有量」が、「たばこ材料C(バーレー種)の配糖体含有量とたばこ材料D(黄色種)の配糖体含有量との合計」と比較して少ないことが分かる。たばこ材料Aは、バーレー種と黄色種の葉たばこ粉砕物を混合して蔵置することにより製造されたたばこ材料である。また、実施例1および2の結果から、黄色種が、低い配糖体分解酵素の活性を示し、種々の多量の配糖体を含んでいること、バーレー種が、高い配糖体分解酵素の活性を示し、少量の配糖体を含んでいることが実証されている。したがって、たばこ材料Aでは、黄色種の葉たばこ粉砕物に含まれる種々の配糖体が、バーレー種の葉たばこ粉砕物に含まれる種々の配糖体分解酵素により分解されたといえる。
【0145】
図6は、たばこ材料Bの配糖体含有量とたばこ材料Eの配糖体含有量を示す。
図6において、横軸は配糖体のピーク番号を示し、縦軸はたばこ材料1gあたりのピーク面積を示す。
【0146】
図6の結果から、「たばこ材料Bの配糖体含有量」が、「たばこ材料Eの配糖体含有量」と比較して少ないことが分かる。たばこ材料Bは、黄色種の葉たばこ粉砕物の酵素を失活させた後、かかる黄色種とバーレー種の葉たばこ粉砕物を混合して蔵置することにより製造されたたばこ材料である。一方、たばこ材料Eは、黄色種の葉たばこ粉砕物の酵素およびバーレー種の葉たばこ粉砕物の酵素をともに失活させた後、黄色種とバーレー種の葉たばこ粉砕物を混合して蔵置することにより製造されたたばこ材料である。したがって、たばこ材料Bでは、黄色種の葉たばこ粉砕物に含まれる種々の配糖体が、バーレー種の葉たばこ粉砕物に含まれる種々の配糖体分解酵素により分解されたといえる。
【0147】
[実施例4:たばこ香味液の製造]
4-1.たばこ材料の製造方法
黄色種の葉たばこ粉砕物を、実施例3の「たばこ材料B」の製造で使用した加熱処理条件と同一の条件で加熱処理し、酵素を失活させた。加熱処理された黄色種の葉たばこ粉砕物3.0gを葉たばこ混合物Aの代わりに用いたこと以外は、実施例3の「たばこ材料A」の製造と同様の手法に従ってたばこ材料Fを製造した。
【0148】
4-2.たばこ香味液の製造方法
(1)水蒸気蒸留
水を入れて1時間程度内部をクリーニングした水蒸気蒸留装置(東京製作所製ハーブオイルメーカー(スタンダードタイプ))に1Lの水を入れてヒーターで加熱(250℃)した。沸騰後、実施例3で調製されたたばこ材料B、C及び実施例4で調製されたたばこ材料Fの何れか(60g)を入れて蒸留を開始した。蒸留を続け、2時間の蒸留で、500mLの留分を採取した。得られた留分は、三角フラスコに捕集し、氷浴(5℃)で2時間放置した。
【0149】
(2)留分の有機溶媒抽出
有機溶媒として、ジエチルエーテルを用いた。
留分が入った三角フラスコに塩化ナトリウムを15g添加して振とうした。次に、1L容の分液ロートに留分500mL(留分に浮いていたオイルも含む)を入れ、有機溶媒150mLを添加して振とうした。水相を除去した後、有機相を新たな三角フラスコに入れた。水相に新たに有機溶媒を150mL加え、有機相を回収する操作を繰り返し2回行った。有機相を回収した三角フラスコに無水硫酸ナトリウム20gを添加し、室温で30分放置することにより脱水した。
【0150】
(3)有機相からの有機溶媒の除去
脱水後の有機相を、ろ紙(ADVANTEC,No.2,150mm)でろ過し、ロータリーエバポレーターにより、ろ液を35℃の湯浴中で減圧下において蒸発乾固させて、乾固物としてのたばこ抽出物を得た。該抽出物の重量に対して50倍の重量のプロピレングリコールを添加し、「たばこ香味液」とした。たばこ材料B、CおよびFから製造したたばこ香味液を、それぞれたばこ香味液B、CおよびFと称する。
【0151】
4-3.たばこ香味液の分析
上記たばこ香味液B、CおよびFをGC/MSにて分析した。
GC/MSの条件については、以下の条件を用いることができる。
【0152】
装置:アジレント社製ガスクロマトグラム質量検出器
カラム:アジレント社製HP-1MS(30m×0.25mm(膜厚0.25μm))
注入量(injection volume):1μL
流速(Septum Purge Flow):1.3mL/分
分析時間(run time):52分
昇温条件:40℃(4分)→10℃/分、150℃→15℃/分、190℃
→15℃/分、240℃→15℃/分、250℃(30分)
[MS条件]
装置:Agilent 5975C Inert XL MSD
検出モード:SCAN
イオン源温度:230℃
四重極温度:150℃
【0153】
4-4.たばこ香味液の香味成分分析結果
図7は、たばこ香味液CとFを混合した(1:1で混合)場合のGC-MSクロマトグラムである。また、
図8は、たばこ香味液BのGC-MSクロマトグラムである。
図7および
図8の結果から、たばこ香味液Bは、たばこ香味液CおよびFの混合液と比べても、香味成分のピークが多く、豊かな香味を有することが分かる。したがって、
図7および
図8の結果から、本発明の方法を実施することにより、香味が増加したたばこ香味液を提供することができるといえる。
【0154】
[実施例5:蔵置中の温度が効果に及ぼす影響]
5-1.たばこ材料の製造方法
バーレー種の葉たばこ粉砕物1.5gと、黄色種の葉たばこ粉砕物1.5gを混合して、葉たばこ混合物を調製した。葉たばこ混合物の水分量が40質量%になるように葉たばこ混合物に水を加え、葉たばこ混合物をかき混ぜた。これにより、葉たばこ粉砕物は、その表面が少し湿っている程度に加湿された。加湿された葉たばこ混合物を、20mL容器に入れて密閉し、27℃、37℃、47℃、または57℃の温度で3日間保存してたばこ材料を調製した。
【0155】
5-2.配糖体の分析結果
蔵置中の温度が異なる各たばこ材料に含まれる配糖体を、実施例2に記載したとおりのLC-MS/MSにより分析した。
図9は、各蔵置温度における配糖体含有量を表している。
図9では、基準値として、実施例3のたばこ材料Cの配糖体含有量と実施例3のたばこ材料Dの配糖体含有量の合算値を示す。
【0156】
図9の結果から、57℃で保存した場合、それよりも低い温度で保存した場合と比較すると、配糖体含有量が多く、配糖体分解量が少ないことがわかる。これは、葉たばこ混合物がより高い温度にさらされたことにより、配糖体分解酵素の活性が低下したためであると考えられる。本結果より、配糖体分解のために望ましい温度領域は、20℃~50℃の温度であることがわかる。
【0157】
[実施例6:蔵置期間が効果に及ぼす影響]
6-1.たばこ材料の製造方法
バーレー種の葉たばこ粉砕物1.5gと、黄色種の葉たばこ粉砕物1.5gを混合して、葉たばこ混合物を調製した。葉たばこ混合物の水分量が40質量%になるように葉たばこ混合物に水を加え、葉たばこ混合物をかき混ぜた。これにより、葉たばこ粉砕物は、その表面が少し湿っている程度に加湿された。加湿された葉たばこ混合物を、20mL容器に入れて密閉し、37℃で1日、2日、または3日間にわたって蔵置してたばこ材料を製造した。
【0158】
6-2.配糖体の分析結果
蔵置期間が異なる各たばこ材料に含まれる配糖体を、実施例2に記載したとおりのLC-MS/MSにより分析した。
図10は、蔵置期間を変えた際の配糖体含有量を表している。
図10では、基準値として、実施例3のたばこ材料Cの配糖体含有量と実施例3のたばこ材料Dの配糖体含有量の合算値を示す。
【0159】
図10の結果から、蔵置1日で、基準値の配糖体含有量の約50%が分解されていることがわかる。蔵置2日では、さらに配糖体の分解が進行した。また、蔵置3日目の配糖体含有量は、蔵置2日目の配糖体含有量と大きな差異が無かった。本結果より、配糖体分解のために望ましい蔵置期間は、24時間~48時間であることがわかる。
【0160】
[実施例7:蔵置中の水分量が効果に及ぼす影響]
7-1.たばこ材料の製造方法
バーレー種の葉たばこ粉砕物1.5gと、黄色種の葉たばこ粉砕物1.5gを混合して、葉たばこ混合物を調製した。葉たばこ混合物の水分量が、12質量%、22質量%、26質量%、30質量%、40質量%、45質量%、50質量%、または55質量%になるように葉たばこ混合物に水を加え、葉たばこ混合物をかき混ぜた。加湿された葉たばこ混合物を、20mL容器に入れて蓋をし、37℃で3日間にわたって蔵置してたばこ材料を製造した。
【0161】
7-2.配糖体の分析結果
蔵置中の水分量が異なる各たばこ材料に含まれる配糖体を、実施例2に記載したとおりのLC-MS/MSにより分析した。
図11および
図12は、蔵置中の水分量を変えた際の配糖体含有量を表している。
図11および
図12では、基準値として、実施例3のたばこ材料Cの配糖体含有量と実施例3のたばこ材料Dの配糖体含有量の合算値を示す。
【0162】
図11および
図12の結果から、どの水分量の場合においても配糖体の分解が生じていることがわかる。また、水分量が50質量%および55質量%の場合の配糖体含有量は、水分量が45質量%の場合の配糖体含有量とほぼ同等であった。本結果より、配糖体分解のために望ましい蔵置中の水分量(すなわち、葉たばこ混合物の水分量)は、12%~45質量%であることがわかる。