IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ポスコの特許一覧 ▶ リサーチ インスティチュート オブ インダストリアル サイエンス アンド テクノロジーの特許一覧 ▶ ポスコ ケムテックの特許一覧

特許7119093リチウム二次電池用正極活物質、その製造方法、およびこれを含むリチウム二次電池
<>
  • 特許-リチウム二次電池用正極活物質、その製造方法、およびこれを含むリチウム二次電池 図1
  • 特許-リチウム二次電池用正極活物質、その製造方法、およびこれを含むリチウム二次電池 図2
  • 特許-リチウム二次電池用正極活物質、その製造方法、およびこれを含むリチウム二次電池 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-05
(45)【発行日】2022-08-16
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用正極活物質、その製造方法、およびこれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   C01G 53/04 20060101AFI20220808BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20220808BHJP
   H01M 4/485 20100101ALI20220808BHJP
   H01M 4/525 20100101ALN20220808BHJP
   H01M 4/505 20100101ALN20220808BHJP
【FI】
C01G53/04
H01M4/36 C
H01M4/485
H01M4/525
H01M4/505
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020535240
(86)(22)【出願日】2018-12-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-03-11
(86)【国際出願番号】 KR2018016147
(87)【国際公開番号】W WO2019132381
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2020-08-24
(31)【優先権主張番号】10-2017-0179893
(32)【優先日】2017-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】592000691
【氏名又は名称】ポスコ
【氏名又は名称原語表記】POSCO
(73)【特許権者】
【識別番号】592000705
【氏名又は名称】リサーチ インスティチュート オブ インダストリアル サイエンス アンド テクノロジー
(73)【特許権者】
【識別番号】511038879
【氏名又は名称】ポスコ ケミカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(72)【発明者】
【氏名】ミン、 スン ファン
(72)【発明者】
【氏名】キム、 チョン ハン
(72)【発明者】
【氏名】ソン、 チュン フン
【審査官】神野 将志
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2017-0076088(KR,A)
【文献】特開2015-088343(JP,A)
【文献】特表2015-536558(JP,A)
【文献】特開2015-133318(JP,A)
【文献】国際公開第2013/021955(WO,A3)
【文献】特表2018-500720(JP,A)
【文献】特表2020-536362(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 53/04
H01M 4/36
H01M 4/485
H01M 4/525
H01M 4/505
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアおよびコーティング層から構成され、
前記コアは、リチウム金属酸化物であり、
前記コーティング層は、ボロンを含み、
前記コーティング層内のボロン化合物は、リチウムボロン酸化物およびボロン酸化物であり
前記リチウムボロン酸化物は、全体コーティング層内の70重量%以上および99重量%であり、
前記ボロン酸化物は、B であり
前記リチウムボロン酸化物は、Liを含み、
前記リチウムボロン酸化物100重量%に対して、Liの含有量は55重量%以上および99重量%以下であり、前記リチウムボロン酸化物100重量%に対して、Li BO の含有量は1重量%以下であり、
前記コーティング層内のボロン化合物100重量%に対して、Bの含有量は20重量%以下である、リチウム二次電池用正極活物質。
【請求項2】
金属水酸化物前駆体を準備する段階;
前記金属水酸化物前駆体およびリチウム原料物質を混合後に焼成してリチウム金属酸化物を得る段階;
前記リチウム金属酸化物を水洗する段階;および
前記水洗されたリチウム金属酸化物およびコーティング物質を混合後に熱処理して正極活物質を得る段階;
を含み、
前記コーティング物質は、ボロンを含み、
前記得られた正極活物質は、コアおよびコーティング層から構成され、前記コアは、リチウム金属酸化物であり、
前記コーティング層内のボロン化合物は、リチウムボロン酸化物およびボロン酸化物を含み、
前記リチウムボロン酸化物は、全体コーティング層内の70重量%以上および99重量%であり、
前記ボロン酸化物は、B であり
前記リチウムボロン酸化物は、Liを含み、
前記リチウムボロン酸化物100重量%に対して、Liの含有量は、55重量%以上および99重量%以下であり、前記リチウムボロン酸化物100重量%に対して、Li BO の含有量は1重量%以下であり、
前記コーティング層内のボロン化合物100重量%に対して、Bの含有量は、20重量%以下であ
前記リチウム原料物質がLiOHであれば、前記熱処理の温度は350℃超過、450℃未満であり、
前記リチウム原料物質がLi CO であれば、前記熱処理の温度は250℃超過、350℃未満である、
リチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項3】
前記水洗されたリチウム金属酸化物およびコーティング物質を混合後に熱処理して正極活物質を得る段階;で、
前記熱処理の温度が350℃超過および450℃未満であれば、
水洗されたリチウム金属酸化物の残留リチウムであるLiCOは、リチウム二次電池用正極活物質に対して、2,000乃至3,000ppmである、
求項に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項4】
前記水洗されたリチウム金属酸化物およびコーティング物質を混合後に熱処理して正極活物質を得る段階;で、
前記熱処理の温度が250℃超過、350℃未満であれば、
水洗されたリチウム金属酸化物の残留リチウムであるLiCOは、リチウム二次電池用正極活物質に対して、1,000乃至2,000ppmである、
求項に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質を含む正極、
負極、および
前記正極および負極の間に位置する電解質
を含むリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
リチウム二次電池用正極活物質、その製造方法、およびこれを含むリチウム二次電池に関する。より具体的に、ボロンコーティング時に生成されるリチウムボロン酸化物およびボロン酸化物の量が制御された正極活物質に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、携帯用電子機器の小型化および軽量化の傾向と関連してこれら機器の電源として使用される電池の高性能化および大容量化に対する必要性が高まっている。
【0003】
電池は、正極と負極に電気化学反応が可能な物質を使用することによって電力を発生させるものである。このような電池中の代表的な例としては、正極および負極でリチウムイオンが挿入/脱離される時の化学電位(chemical potential)の変化により電気エネルギーを生成するリチウム二次電池がある。
【0004】
前記リチウム二次電池は、リチウムイオンの可逆的な挿入/脱離が可能な物質を正極と負極活物質として使用し、前記正極と負極の間に電解質を充電して製造する。
【0005】
リチウム二次電池の正極活物質としては、リチウム複合金属化合物が使用されており、その例としてLiCoO、LiMn、LiNiO、LiNi1-xCo(0<x<1)、LiMnOなどの複合金属酸化物が研究されている。
【0006】
そのうち、リチウムニッケル系酸化物は、コバルト系酸化物より費用が安価でありながらも、4.3Vで充電された時に高い放電容量を示すところ、ドーピングされたリチウムニッケル系酸化物の可逆容量は、LiCoOの容量(約165mAh/g)を超える約200mAh/gに近接する。したがって、リチウムニッケル系正極活物質は、若干低い放電電圧と体積密度(volumetric density)にもかかわらず、改善されたエネルギー密度を有することによって高容量電池に商用化されている。
【0007】
しかし、リチウムニッケル系正極活物質の大きな問題点は、合成時に表面に残留するようになるLiCOとLiOHのようなリチウム不純物の存在である。表面に残留するリチウム不純物は、空気中のCOやHOと反応してLiCOを形成するようになる。このようなLiCOは初期不可逆容量を形成し、表面のリチウムイオン移動を妨害するなどの問題を招くだけでなく、電気化学反応中に分解反応によりガス発生の主原因になったりもする。
【0008】
そこで、ニッケル系正極活物質の構造安定性確保および表面の副反応抑制のための研究が必要であるのが実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
改善された特性のリチウム二次電池用正極活物質、その製造方法、およびこれを含むリチウム二次電池を提供することにある。より具体的に、ボロンコーティング時に生成されるリチウムボロン酸化物およびボロン酸化物の量が制御された正極活物質を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態では、コアおよびコーティング層から構成され、前記コアは、リチウム金属酸化物であり、前記コーティング層は、ボロンを含み、前記コーティング層内のボロン化合物は、リチウムボロン酸化物およびボロン酸化物を含み、前記リチウムボロン酸化物は、全体コーティング層内の70重量%以上および99重量%であり、前記リチウムボロン酸化物は、Liを含み、前記リチウムボロン酸化物100重量%に対して、Liの含有量は55重量%以上および99重量%以下であるリチウム二次電池用正極活物質を提供する。
【0011】
前記リチウムボロン酸化物は、LiBOをさらに含むことができる。
【0012】
前記リチウムボロン酸化物100重量%に対して、Bの含有量は20重量%以下であり得る。
【0013】
前記リチウムボロン酸化物100重量%に対して、LiBOの含有量は1重量%以下であり得る。
【0014】
本発明の他の一実施形態では、金属水酸化物前駆体を準備する段階;前記金属水酸化物前駆体およびリチウム原料物質を混合後に焼成してリチウム金属酸化物を得る段階;前記リチウム金属酸化物を水洗する段階;および前記水洗されたリチウム金属酸化物およびコーティング物質を混合後に熱処理して正極活物質を得る段階;を含み、前記コーティング物質は、ボロンを含み、前記得られた正極活物質は、コアおよびコーティング層から構成され、前記コアは、リチウム金属酸化物であり、前記コーティング層内のボロン化合物は、リチウムボロン酸化物およびボロン酸化物を含み、前記リチウムボロン酸化物は、全体コーティング層内の70重量%以上および99重量%であり、前記リチウムボロン酸化物は、Liを含み、前記リチウムボロン酸化物100重量%に対して、Liの含有量は、55重量%以上および99重量%以下であるリチウム二次電池用正極活物質の製造方法を提供する。
【0015】
前記水洗されたリチウム金属酸化物およびコーティング物質を混合後に焼成して正極活物質を得る段階;で、水洗されたリチウム金属酸化物の残留リチウムは、2,000乃至3,000ppmであり、焼成温度は、350℃超過および450℃未満であり得る。
【0016】
前記金属水酸化物前駆体およびリチウム原料物質を混合後に焼成してリチウム金属酸化物を得る段階;で、リチウム原料物質は、LiOHであり得る。
【0017】
前記水洗されたリチウム金属酸化物およびコーティング物質を混合後に焼成して正極活物質を得る段階;で、水洗されたリチウム金属酸化物の残留リチウムは、1,000乃至2,000ppmであり、焼成温度は、250℃超過および350℃未満であり得る。
【0018】
前記金属水酸化物前駆体およびリチウム原料物質を混合後に焼成してリチウム金属酸化物を得る段階;で、リチウム原料物質は、LiCOであり得る。
【0019】
本発明の他の一実施形態では、前述した本発明の一実施形態による正極活物質を含む正極、負極、および前記正極および負極の間に位置する電解質を含むリチウム二次電池を提供する。
【0020】
その他本発明の実施形態の具体的な事項は、以下の詳細な説明に含まれている。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一実施形態による正極活物質を含むリチウム二次電池は、容量、高率放電効果、および寿命特性、C-rate特性などが改善され得る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】ボロンコーティングに対する概略反応式である。
図2】本発明の一実施例によるコインセルデータである。
図3】本発明の一実施例によるコインセルデータである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実現例を詳細に説明する。ただし、これは例示として提示されるものであり、 本発明はこれによって本発明が制限されず、後述する請求項の範疇のみによって定義される。
【0024】
正極活物質
本発明の一実施形態による正極活物質は、コアおよびコーティング層から構成され、前記コアは、リチウム金属酸化物であり、前記コーティング層は、ボロンを含み、前記コーティング層内のボロン化合物は、リチウムボロン酸化物およびボロン酸化物を含み、前記リチウムボロン酸化物は、全体コーティング層内の70重量%以上および99重量%であり、前記リチウムボロン酸化物は、Liを含み、前記リチウムボロン酸化物100重量%に対して、Liの含有量は55重量%以上および99重量%以下であり得る。
【0025】
より具体的に、ボロンコーティング時にリチウムボロン酸化物とボロン酸化物の比率およびリチウムボロン酸化物の2種類の形態の含有量を制御した正極活物質であり得る。
【0026】
このような範囲の提案から電気伝導度、電解液との副反応抑制などの効果の適切な範囲を制御することができる。
【0027】
具体的な例を挙げると、Bは電解液との副反応抑制による高温寿命、高温保存など肯定的な役割をはたすことができるが、電気伝導性を低下させてセルの抵抗を増加させる否定的な役割を果たしたりもする。
【0028】
そこで、本発明者らは、リチウムボロン酸化物およびボロン酸化物の含有量を適切に制御して最適のコーティング物質の範囲を見つけ出した。
【0029】
具体的なリチウムボロン酸化物およびボロン酸化物の生成反応式は次のとおりである。
[反応式1]
LiCO+4HBO→LiCO+2B+6HO(g)→Li+CO(g)
[反応式2]
3LiOH+HBO→LiBO+3HO(g)
【0030】
ボロンコーティングのための原料物質(例えば、HBO)とリチウム原料物質が反応してリチウムボロン酸化物が生成されるようになる。もし、リチウム原料物質と接触されなければ、B酸化物が生成され得る。図1は球形の正極活物質のボロン酸化物生成部分について概略的に示している。
【0031】
より具体的に、制御するための具体的な方法を説明する。
【0032】
リチウム二次電池用正極活物質の製造方法
本発明の一実施形態では、金属水酸化物前駆体を準備する段階;前記金属水酸化物前駆体およびリチウム原料物質を混合後に焼成してリチウム金属酸化物を得る段階;前記リチウム金属酸化物を水洗する段階;および前記水洗されたリチウム金属酸化物およびコーティング物質を混合後に熱処理して正極活物質を得る段階;を含む正極活物質の製造方法を提供する。
【0033】
これによって製造された正極活物質に対する具体的な説明は前述したとおりである。
【0034】
具体的に、下記方法を通じて正極活物質を製造した。
【0035】
金属酸化物前駆体を製造するために、原材料であるNiSO*6HO、CoSO*7HO、MnSO*HOを計量した後、蒸溜水に溶解させる。溶解された金属水和物溶液は反応器でアンモニア、苛性ソーダと共に反応して沈澱される。沈殿されたスラリーは圧力濾過器(filter press)を利用して水洗および固/液分離を行い、高圧のフレッシュエアー(Fresh Air)を利用して残余水分を除去した。
【0036】
固液分離された活物質は、100乃至200流動層乾燥機を利用して乾燥した。乾燥された前駆体は、LiOHまたはLiCOと混合した後、混合された前駆体4.0kgをムライト(mullite)材質の耐火匣(saggar)に充填した後、焼結炉で空気(air)雰囲気中で焼成温度700乃至900の条件で昇温速度1.0乃至4.0/minで焼成する。
【0037】
その後、ボロン原料物質であるHBOと混合後に熱処理して最終の正極活物質を得ることができる。
【0038】
具体的な例を挙げると、リチウム原料物質はLiOHであり得る。この場合、前記反応式1および2により、LiおよびLiBO化合物が全て生成され得る。
【0039】
前記水洗されたリチウム金属酸化物およびコーティング物質を混合後に焼成して正極活物質を得る段階;で、水洗されたリチウム金属酸化物の残留リチウムは2,000乃至3,000ppmであり、焼成温度は350℃超過および450℃未満であり得る。
【0040】
この時、具体的な温度条件は350℃超過および450℃未満であり、この時、コーティング層内の化合物変化は次の表1のとおりである。
【0041】
【表1】
【0042】
前記反応式を考慮すれば、<熱処理温度400℃>でLiCOと反応したBoronは約309ppmであり、残りの91ppmはBを作るのに使用されたことが分かる。
【0043】
したがって、最終物質のコーティング生成物は「Li(約1,256ppm)+B(約293ppm)」と推定される。
【0044】
参考までに、<熱処理温度350℃>最終物質のコーティング生成物は「Li(約676ppm)+LiBO(約524ppm)+B(約502ppm)」と推定され、熱処理温度が低くなることによってLBO中のLiBOの比率が漸次に増加すると同時にBの含有量が増加するようになる。
【0045】
参考までに、<熱処理温度450℃>最終物質のコーティング生成物は「Li(約225ppm)+LiBO(約790ppm)+B(約759ppm)」と推定され、熱処理温度が高くなることによってLBO中のLiBOの比率が漸次に増加すると同時にBの含有量が増加するようになる。
【0046】
【表2】
【0047】
図2はリチウム原料物質をLiOHで用いた前述の活物質を利用して製造したコインセルの評価結果である。具体的なコインセルの製造方法は次のとおりである。
【0048】
前記得られた正極活物質と導電剤(Denka black)、バインダー(PVDF)の質量比が94:3:3になるようにN-メチル-2ピロリドン(NMP)溶媒で均一に混合した。前記の混合物をアルミニウム箔に均一にDoctor bladeを利用してcastingした後、100乃至200真空オーブンで12時間真空乾燥した後、ロールプレスで圧搾して正極極板を製造した。相対電極としてLi-metalを用い、電解液としてエチレンカーボネート(EC):エチルメチルカーボネート(EMC)=1:2である混合溶媒に1モルのLiPF塩を溶かして電解液として用いて通常の製造方法によりハーフコインセル(half coin cell)を製造した。
【0049】
図2から分かるように、400℃熱処理温度で最も優れた電池特性を示す。これは残留リチウムの評価結果とも一致する。
【0050】
具体的な例を挙げると、リチウム原料物質はLiCOであり得る。この場合、前記反応式1および2により、Li化合物が大部分であり得る。
【0051】
前記水洗されたリチウム金属酸化物およびコーティング物質を混合後に焼成して正極活物質を得る段階;で、水洗されたリチウム金属酸化物の残留リチウムは1,000乃至2,000ppmであり、焼成温度は250℃超過および350℃未満であり得る。
【0052】
これについての説明は下記表3を参照することができる。
【0053】
【表3】
【0054】
前記反応式を考慮すれば、熱処理温度300℃でLiCOと反応したBoronは約314ppmであり、残りの約86ppmがBを作るのに使用されたことが分かる。
【0055】
したがって、最終物質のコーティング生成物は「Li(約1,229ppm)+B(約291ppm)」と推定される。
【0056】
参考までに、<熱処理温度250℃>最終物質のコーティング生成物は「Li(約563ppm)+LiBO(約493ppm)+B(約609ppm)」と推定され、熱処理温度が低くなることによってLBO中のLiBOの比率が漸次に増加する傾向を示し、同時にBの含有量が増加することが分かる。
【0057】
参考までに、<熱処理温度400℃>最終物質のコーティング生成物は「Li(約1207ppm)+B(約296ppm)」と推定され、熱処理温度が高くなることによってLiOHの量が漸次に増加することが分かる。(この時のLiOH許容数値を2,000ppm以下に制限する)
【0058】
参考までに、<熱処理温度450℃>最終物質のコーティング生成物は「Li(約1207ppm)+B(約296ppm)」と推定され、熱処理温度が高くなることによってBの含有量が増加し、同時にLiOHの量も増加することが分かる。
【0059】
【表4】
【0060】
図3はリチウム原料物質をLiCOとして用いた時のコインセル評価結果である。熱処理温度が300℃付近で優れた電池特性を示す。これは残留リチウムの評価結果とも一致する。
【0061】
リチウム二次電池
本発明のまた他の一実施形態では、前述した正極活物質を含む正極、
負極、および電解液を含むリチウム二次電池を提供する。
【0062】
前記正極は、集電体および前記集電体の上に形成される正極活物質層を含む。
【0063】
前記集電体としては、アルミニウムを用いることができるが、これに限定されるのではない。
【0064】
前記正極活物質層は、正極活物質、バインダー、そして選択的に導電剤を含む。
【0065】
前記バインダーは、例えば、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、カルボキシル化されたポリ塩化ビニル、ポリビニルフルオライド、エチレンオキシドを含むポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン-ブタジエンラバー、アクリル化スチレン-ブタジエンラバー、エポキシ樹脂、ナイロンなどであり得る。
【0066】
前記導電剤は、電極に導電性を付与するために使用されるものであって、電池で化学変化を招かない電子伝導性材料であれば如何なるものでも使用可能である。導電剤の例として、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維、銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末、金属繊維などを用いることができ、また、ポリフェニレン誘導体などの導電性材料を1種または1種以上を混合して用いることができる。
【0067】
前記負極は、集電体および前記集電体の上に形成された負極活物質層を含む。
【0068】
前記集電体としては、銅箔、ニッケル箔、ステレンス鋼箔、チタニウム箔、ニッケル発泡体(foam)、銅発泡体、伝導性金属がコーティングされたポリマー基材、またはこれらの組み合わせを用いることができる。
【0069】
前記負極活物質層は、負極活物質、バインダー組成物、および/または導電剤を含む。
【0070】
前記負極活物質としては、リチウムイオンを可逆的に挿入/脱離することができる物質、リチウム金属、リチウム金属の合金、リチウムをドープおよび脱ドープすることができる物質、または遷移金属酸化物を含む。
【0071】
前記負極活物質とバインダー組成物、導電剤についての説明は省略する。
【0072】
前記電解質は、非水性有機溶媒とリチウム塩を含む。前記非水性有機溶媒とリチウム塩は商用されるものであれば制限なしに適用され得るため、詳細な説明は省略する。
【0073】
本発明は、前記実施例に限定されず、互いに異なる多様な形態で製造することができ、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的な思想や必須の特徴を変更せずに他の具体的な形態で実施可能であることを理解できるはずである。したがって、以上で記述した実施例は全ての面で例示的なものであり、限定的なものでないことを理解しなければならない。
図1
図2
図3