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特許7119115アクロレイン反応器廃水の処理方法及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-05
(45)【発行日】2022-08-16
(54)【発明の名称】アクロレイン反応器廃水の処理方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/30 20060101AFI20220808BHJP
   C02F 3/28 20060101ALI20220808BHJP
【FI】
C02F3/30 Z
C02F3/30 A
C02F3/30 B
C02F3/28 B
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2020554216
(86)(22)【出願日】2019-03-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-02
(86)【国際出願番号】 CN2019078511
(87)【国際公開番号】W WO2019192313
(87)【国際公開日】2019-10-10
【審査請求日】2020-11-13
(31)【優先権主張番号】201810309145.8
(32)【優先日】2018-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】517446407
【氏名又は名称】藍星安迪蘇南京有限公司
【氏名又は名称原語表記】BLUESTAR ADISSEO NANJING CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.389 Changfenghe Road, Chemical Industry Park Nanjing, Jiangsu210047 (CN)
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】朱利安・布泰
(72)【発明者】
【氏名】牛磊
【審査官】目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106277554(CN,A)
【文献】中国実用新案第204803179(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第101333050(CN,A)
【文献】特開昭53-055662(JP,A)
【文献】特表2013-513593(JP,A)
【文献】特開2006-187703(JP,A)
【文献】特開平11-077087(JP,A)
【文献】特開平07-016594(JP,A)
【文献】特表2014-511343(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F3/00-3/34
C07B31/00-61/00
C07B63/00-63/04
C07C1/00-409/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のステップS1~ステップS3を含むアクロレイン反応器廃水の処理方法であって、
ステップS1において、アクロレイン反応器廃水と炭酸塩水溶液とを混合して混合溶液を取得し、
アクロレイン反応器廃水は、pH値が2未満であり、アクロレイン500~3000ppm、アリルアルコール50~800ppm、アクリル酸40000~100000ppm、ホルムアルデヒド10000~30000ppm、酢酸3000~10000ppm、マレイン酸3000~8000ppmを含み、
混合溶液のpHは4~6であり、COD濃度は7500ppm~30000ppmであり、ホルムアルデヒド濃度は800ppm~4000ppmであり、
ステップS2において、ステップS1で得られた混合溶液を嫌気性反応器に輸送して生化学的処理し、
ステップS3において、ステップS2で処理された溶液を好気性生化学槽に輸送して処理する、方法。
【請求項2】
ステップS2及び/又はS3で処理された後の溶液の少なくとも一部をステップS2に還流させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップS1において、前記アクロレイン反応器廃水に含まれる塩類の量は50ppm未満であり、実質的に硫酸塩を含まない、請求項1から2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
ステップS1において、前記炭酸塩水溶液のpHは8-9であり、COD濃度は100~600ppmであり、アルカリ度(CaCO換算)は4000~7000ppmであ、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
ステップS1において、前記炭酸塩水溶液の温度は20℃~45℃である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ステップS1において、前記混合溶液のCOD濃度は12000~25000ppmである、請求項1からのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
ステップS1において、前記混合溶液のホルムアルデヒド濃度は1200ppm~3600ppmである、請求項1からのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
ステップS1において、前記混合溶液のアルカリ度(CaCO換算)は3000ppm未満である、請求項1からのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
ステップS1において、前記アクロレイン反応器廃水のCOD濃度は60000ppm~200000ppmである、請求項1からのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
ステップS1において、前記炭酸塩水溶液は、炭酸ナトリウム及び/又は炭酸水素ナトリウムを含、請求項1からのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
ステップS2及び/又はS3で処理された後の溶液の少なくとも一部と、ステップS1で得られた混合溶液とを混合し、pH値が5-6.5の混合物を得た後、前記混合物をステップS2の嫌気性反応器に輸送して生化学反応を行う、請求項1から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記ステップS2後、CODの除去率は70%以上、ホルムアルデヒドの除去率は98%以上であ、請求項1から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記ステップS2において、CH及びCOを含むバイオガスが得られ、
CHの質量%は70%-90%であり、COの質量%は10%-30%である、請求項1から12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
バイオガスにおけるCHとCOの総質量%は99%を超え、及び/又はバイオガスにおけるSの濃度は200ppm未満である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ステップS3後、CODの除去率は95%以上であり、ホルムアルデヒドの除去率は99.5%以上であ、請求項1から1のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記ステップS3後、処理された廃水のpHは6-9であり、含まれるCODは800ppm未満であり、ホルムアルデヒドは5ppm未満であり、NH-Nは50ppm未満であり、総窒素は15ppm未満であり、総リン酸塩は2ppm未満である、請求項1から1のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記ステップS2における反応温度は30~45℃であり、前記ステップS3における反応温度は10~35℃である、請求項1から1のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
廃水貯蔵タンク、炭酸塩水溶液貯蔵タンク、廃水調節タンク、嫌気性反応器、好気性生化学槽、一次沈殿槽、二次沈殿槽及び廃棄管路を含むアクロレイン反応器廃水の処理装置であって、
前記廃水貯蔵タンク及び炭酸塩水溶液貯蔵タンクは、それぞれ廃水調節タンクに流体連通し、
前記廃水調節タンク、嫌気性反応器、好気性生化学槽、一次沈殿槽及び二次沈殿槽は、順に流体連通し、
前記嫌気性反応器には、バイオガス排出口が設けられ、
前記廃水貯蔵タンク、炭酸塩水溶液貯蔵タンク、廃水調節タンク、嫌気性反応器、好気性生化学槽のうちの1つ又は複数には、前記廃棄管路に接続される廃棄排出口が設けられる、アクロレイン反応器廃水の処理装置。
【請求項19】
前記嫌気性反応器は、嫌気性グラニュール汚泥床及び嫌気性汚泥タンクを含み、嫌気性グラニュール汚泥床は、廃水調節タンク及び好気性生化学槽に流体連通し、嫌気性グラニュール汚泥床は、嫌気性汚泥タンクに流体連通し、嫌気性グラニュール汚泥床には、バイオガス排出口が設けられ、嫌気性汚泥タンクには、廃棄管路に接続される廃棄排出口が設けられる、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記好気性生化学槽は曝気汚泥床である、請求項1に記載の装置。
【請求項21】
前記廃水調節タンクと前記嫌気性反応器との間に設けられる嫌気性調節タンクをさらに含み、
前記嫌気性調節タンクは、それぞれ前記廃水調節タンクの出口及び前記嫌気性反応器の入口に流体連通するとともに、前記嫌気性反応器、好気性生化学槽、一次沈殿槽及び二次沈殿槽のうちの1つ又は複数の出口に流体連通する、請求項18に記載の装置。
【請求項22】
前記廃水調節タンクと前記嫌気性グラニュール汚泥床との間に設けられる嫌気性調節タンクをさらに含み、
前記嫌気性調節タンクは、それぞれ前記廃水調節タンクの出口及び前記嫌気性グラニュール汚泥床の入口に流体連通するとともに、前記嫌気性グラニュール汚泥床、好気性生化学槽、一次沈殿槽及び二次沈殿槽のうちの1つ又は複数の出口に流体連通する、請求項19に記載の装置。
【請求項23】
前記一次沈殿槽の出口は、管路及び循環ポンプを介して好気性生化学槽の入口に接続される、請求項18から22のいずれか1項に記載の装置。
【請求項24】
前記廃水調節タンク内には、pH分析計及び/又は温度計が設けられる、請求項18から23のいずれか1項に記載の装置。
【請求項25】
前記廃棄管路の出口は、燃焼器及び/又は濾過器及び/又はガススクラバーに接続される、請求項18から24のいずれか1項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃水処理技術分野に属し、特にアクロレイン反応器廃水の処理方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アクロレインの生産プロセスにおける重要な段階は、プロピレンを原料として酸化してアクロレインを生産することを含む。生産過程において産生される廃水中の有機物の含有量は非常に高く、主成分はアクロレイン、ホルムアルデヒド、酢酸、アクリル酸、アリルアルコール、マレイン酸などの有機物を含み、廃水を処理してから排出する必要がある。アクロレイン反応器廃水の従来の処理方法は焼却である。しかし、焼却法には、天然ガスの消費量が多く、エネルギー消費が高く、設備のメンテナンスコストが高いなどの欠陥がある。
【0003】
生化学的方法による廃水処理は、コストが低く、安全で信頼性が高く、産生されるバイオガスが再生燃料ガスとして供給することもできる。しかし、アクロレイン反応器廃水は強酸性であり、ホルムアルデヒドを含むため、生化学的処理方法を直接使用することが好適ではない。生化学的処理は強酸性環境中で行うことができず、ホルムアルデヒドは嫌気性反応器中の嫌気性微生物に対して有毒であるため、廃水処理の効果は大幅に低下し、排出基準を満たすことができない。強塩基、例えば、水酸化ナトリウムで中和してpH値を8~9に調整することが生化学的処理に有利であるが、水酸化ナトリウムは高価であり、かつ中和により廃水中の塩含有量が高くなり、生化学的処理中の細菌の活性に影響を与えるとともに、余分な処理工程が必要であることでコストが高くなる。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、アクロレイン反応器廃水の処理方法及び装置を提供する。
【0005】
前記問題を解決するために、本発明は、以下の技術的手段を提供する。
【0006】
本発明の一態様では、以下のステップS1~ステップS3を含むアクロレイン反応器廃水の処理方法であって、
ステップS1において、アクロレイン反応器廃水と炭酸塩水溶液とを混合して混合溶液を取得し、
アクロレイン反応器廃水は、pH値が2未満であり、アクロレイン500~3000ppm、アリルアルコール50~800ppm、アクリル酸40000~100000ppm、ホルムアルデヒド10000~30000ppm、酢酸3000~10000ppm、マレイン酸3000~8000ppmを含み、
混合溶液のpHは4~6であり、COD濃度は7500ppm~30000ppmであり、ホルムアルデヒド濃度は800ppm~4000ppmであり、
ステップS2において、ステップS1で得られた混合溶液を嫌気性反応器に輸送して生化学的処理し、
ステップS3において、ステップS2で処理された溶液を好気性生化学槽に輸送して処理し、
必要に応じて、ステップS2及び/又はS3で処理された後の溶液の少なくとも一部をステップS2に還流させる方法が提供される。
【0007】
いくつかの実施形態では、ステップS1において、前記アクロレイン反応器廃水に含まれる塩類の量は50ppm未満であり、実質的に硫酸塩を含まない。
【0008】
いくつかの実施形態では、ステップS1において、前記炭酸塩水溶液のpHは8-9であり、COD濃度は100~600ppmであり、アルカリ度(CaCO換算)は4000~7000ppmであり、特に温度は20℃~45℃である。
【0009】
いくつかの実施形態では、ステップS1において、前記混合溶液のCOD濃度は12000~25000ppmである。
【0010】
いくつかの実施形態では、ステップS1において、前記混合溶液のホルムアルデヒド濃度は1200ppm~3600ppmである。
【0011】
いくつかの実施形態では、ステップS1において、前記混合溶液のアルカリ度(CaCO換算)は3000ppm未満である。
【0012】
いくつかの実施形態では、ステップS1において、前記アクロレイン反応器廃水のCOD濃度は60000ppm~200000ppmである。
【0013】
いくつかの実施形態では、ステップS1において、前記炭酸塩水溶液は、炭酸ナトリウム及び/又は炭酸水素ナトリウムを含み、特に、前記炭酸塩水溶液は、炭酸ナトリウム及び/又は炭酸水素ナトリウムを含む廃水である。
【0014】
いくつかの実施形態では、ステップS2及び/又はS3で処理された後の溶液の少なくとも一部と、ステップS1で得られた混合溶液とを混合し、pH値が5-6.5の混合物を得た後、前記混合物をステップS2の嫌気性反応器に輸送して生化学反応を行う。
【0015】
いくつかの実施形態では、前記ステップS2後、CODの除去率は70%以上、ホルムアルデヒドの除去率は98%以上であり、特にCODの除去率は80%以上、ホルムアルデヒドの除去率は99%以上である。
【0016】
いくつかの実施形態では、前記ステップS2において、CH及びCOを含むバイオガスが得られ、CHの質量%は70%-90%であり、COの質量%は10%-30%であり、特に、バイオガスにおけるCHとCOの総質量%は99%を超え、及び/又はHSの濃度は200ppm未満である。
【0017】
いくつかの実施形態では、前記ステップS3後、CODの除去率は95%以上であり、特にCODの除去率は98%以上であり、ホルムアルデヒドの除去率は99.5%以上であり、特にホルムアルデヒドの除去率は99.9%以上である。
【0018】
いくつかの実施形態では、前記ステップS3後、処理された廃水のpHは6-9であり、含まれるCODは800ppm未満であり、ホルムアルデヒドは5ppm未満であり、NH-Nは50ppm未満であり、総窒素は15ppm未満であり、総リン酸塩は2ppm未満である。
【0019】
いくつかの実施形態では、前記ステップS2における反応温度は30~45℃であり、前記ステップS3における反応温度は10~35℃である。
【0020】
本発明の他の態様では、廃水貯蔵タンク、炭酸塩水溶液貯蔵タンク、廃水調節タンク、嫌気性反応器、好気性生化学槽、浄化槽、二次沈殿槽及び廃棄管路を含むアクロレイン反応器廃水の処理装置であって、
前記廃水貯蔵タンク及び炭酸塩水溶液貯蔵タンクは、それぞれ廃水調節タンクに流体連通し、
前記廃水調節タンク、嫌気性反応器、好気性生化学槽、浄化槽及び二次沈殿槽は、順に流体連通し、
前記嫌気性反応器には、バイオガス排出口が設けられ、
前記廃水貯蔵タンク、炭酸塩水溶液貯蔵タンク、廃水調節タンク、嫌気性反応器、好気性生化学槽のうちの1つ又は複数には、前記廃棄管路に接続される廃棄排出口が設けられる、アクロレイン反応器廃水の処理装置が提供される。
【0021】
いくつかの実施形態では、前記嫌気性反応器は、嫌気性グラニュール汚泥床及び嫌気性汚泥タンクを含み、嫌気性グラニュール汚泥床は、廃水調節タンク及び好気性生化学槽に流体連通し、嫌気性グラニュール汚泥床は、嫌気性汚泥タンクに流体連通し、嫌気性グラニュール汚泥床には、バイオガス排出口が設けられ、嫌気性汚泥タンクには、廃棄管路に接続される廃棄排出口が設けられ、及び/又は
前記好気性生化学槽は曝気汚泥床である。
【0022】
いくつかの実施形態では、前記装置は、前記廃水調節タンクと前記嫌気性反応器との間に設けられる嫌気性調節タンクをさらに含み、前記嫌気性調節タンクは、それぞれ前記廃水調節タンクの出口及び前記嫌気性反応器の入口に流体連通するとともに、前記嫌気性反応器、好気性生化学槽、浄化槽及び二次沈殿槽のうちの1つ又は複数の出口に流体連通する。
【0023】
いくつかの実施形態では、前記装置は、前記廃水調節タンクと前記嫌気性グラニュール汚泥床との間に設けられる嫌気性調節タンクをさらに含み、前記嫌気性調節タンクは、それぞれ前記廃水調節タンクの出口及び前記嫌気性グラニュール汚泥床の入口に流体連通するとともに、前記嫌気性グラニュール汚泥床、好気性生化学槽、浄化槽及び二次沈殿槽のうちの1つ又は複数の出口に流体連通する。
【0024】
いくつかの実施形態では、前記装置において前記浄化槽の出口は管路及び循環ポンプを介して好気性生化学槽の入口に接続される。
【0025】
いくつかの実施形態では、前記装置において前記廃水調節タンク内には、pH分析計及び/又は温度計が設けられる。
【0026】
いくつかの実施形態では、前記装置において前記廃棄管路の出口は燃焼器及び/又は濾過器及び/又はガススクラバーに接続される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の一実施形態に係るアクロレイン反応器廃水の処理方法のフローチャートである。
図2】本発明の一実施形態に係るアクロレイン反応器廃水の処理装置の模式図である。同図において、1は廃水貯蔵タンク、2は炭酸塩水溶液貯蔵タンク、3は廃水調節タンク、4は嫌気性反応器、5は好気性生化学槽、6は浄化槽、7は二次沈殿槽、8は廃棄管路、9はバイオガス排出口、10は排出汚泥タンク、11は遠心分離機、12は濾過器又はガススクラバー、13は燃焼器である。
図3】本発明の一実施形態に係るアクロレイン反応器廃水の処理装置の模式図である。同図において、1は廃水貯蔵タンク、2は炭酸塩水溶液貯蔵タンク、3は廃水調節タンク、401は嫌気性グラニュール汚泥床、402は嫌気性汚泥タンク、5は好気性生化学槽、6は浄化槽、7は二次沈殿槽、8は廃棄管路、9はバイオガス排出口、10は排出汚泥タンク、11は遠心分離機、12は濾過器又はガススクラバー、13は燃焼器である。
図4】本発明の一実施形態に係るアクロレイン反応器廃水の処理装置の模式図である。同図において、1は廃水貯蔵タンク、2は炭酸塩水溶液貯蔵タンク、3は廃水調節タンク、4は嫌気性反応器、5は好気性生化学槽、6は浄化槽、7は二次沈殿槽、8は廃棄管路、9はバイオガス排出口、10は排出汚泥タンク、11は遠心分離機、12は濾過器又はガススクラバー、13は燃焼器、14は嫌気性調節タンクである。
図5】本発明の一実施例の流入物及び流出物のCOD及びCODの除去率を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は、アクロレイン反応器廃水の連続処理用の方法及び装置に関する。
【0029】
本明細書において、特に指定のない限り、使用条件下での液体の流れの密度は、約1000g/Lと見なすことができる。つまり、mg/Lとppmは互換的に使用できる。
【0030】
本明細書において、特に指定のない限り、百分率はすべて質量%を指す。
【0031】
本発明の一態様では、アクロレイン反応器廃水の処理方法が提供される。図1に示すように、この方法は、以下のステップを含む。
ステップS1において、アクロレイン反応器廃水と炭酸塩水溶液とを混合して混合溶液を取得する。
アクロレイン反応器廃水は、pH値が2未満であり、アクロレイン500~3000ppm、アリルアルコール50~800ppm、アクリル酸40000~100000ppm、ホルムアルデヒド10000~30000ppm、酢酸3000~10000ppm、マレイン酸3000~8000ppmを含む。
混合溶液のpHは4~6であり、COD濃度は7500ppm~30000ppmであり、ホルムアルデヒド濃度は800ppm~4000ppmである。
ステップS2において、ステップS1で得られた混合溶液を嫌気性反応器に輸送して生化学的処理する。
ステップS3において、ステップS2で処理された溶液を好気性生化学槽に輸送して処理する。
必要に応じて、ステップS2及び/又はS3で処理された後の溶液の少なくとも一部をステップS2に還流させる。
【0032】
本明細書において、「アクロレイン反応器廃水」とは、プロピレンを原料として酸化によりアクロレインを生産するプロセスにおいて産生される反応器廃水をいい、この廃水は、有機物の含有量が非常に高く、主成分がアクロレイン、ホルムアルデヒド、酢酸、アクリル酸、アリルアルコール、マレイン酸などの有機物を含み、強酸性溶液である。いくつかの実施形態では、アクロレイン反応器廃水のpH値は2未満であり、例えば1-2の範囲内である。アクロレイン反応器廃水は、アクロレイン500~3000ppm、アリルアルコール50~800ppm、アクリル酸40000~100000ppm、ホルムアルデヒド10000~30000ppm、酢酸3000~10000ppm、マレイン酸3000~8000ppmを含み、アセトアルデヒド、アセトン、ハイドロキノンなどの不純物を含んでもよいが、これらの不純物の含有量がいずれも非常に低い。いくつかの実施形態では、アクロレイン反応器廃水はアクロレイン800~2000ppmを含む。いくつかの実施形態では、アクロレイン反応器廃水はアリルアルコール150~650ppmを含む。いくつかの実施形態では、アクロレイン反応器廃水はアクリル酸60000~90000ppmを含む。いくつかの実施形態では、アクロレイン反応器廃水はホルムアルデヒド15000~22000ppmを含む。いくつかの実施形態では、アクロレイン反応器廃水は酢酸5000~8000ppmを含む。いくつかの実施形態では、アクロレイン反応器廃水はマレイン酸4000~6000ppmを含む。
【0033】
いくつかの実施形態では、アクロレイン反応器廃水のCOD濃度は60000ppm~200000ppmである。いくつかの実施形態では、アクロレイン反応器廃水のCOD濃度は80000ppm~180000ppmである。いくつかの実施形態では、アクロレイン反応器廃水のCOD濃度は約130000ppm、約145000ppm、又は約178000ppmである。
【0034】
本発明のCODの値は、成分の濃度及びそのCOD換算係数に基づいて算出される。
【0035】
いくつかの実施形態では、アクロレイン反応器廃水に含まれる塩類の量は50ppm未満であり、実質的に硫酸塩を含まない。
【0036】
強酸性環境、高レベルのCOD及びホルムアルデヒドはいずれも嫌気性生化学反応の進行に不利である。従来のプロセスでは、NaOHなどの強塩基で中和してpH値を8-10に調整し、Cannizzaro反応によりホルムアルデヒドを分解し、さらに後処理している。しかし、このようなプロセスでは、多くの塩(Na塩)が生成し、細胞内圧により高含有量の塩が生化学的処理中の細菌の活性を低下させ、細菌の死滅を招くとともに、NaOHが高価であり、処理コストが高く、プロセスも複雑である。
【0037】
本発明では、アクロレイン反応器廃水と炭酸塩水溶液とを混合することにより、廃水のpH値、COD及びホルムアルデヒドの含有量を同時に調節する目的が達成され、後続の嫌気性及び好気性生化学的処理による有機物の除去に有利であり、排出基準が満たされる。炭酸塩水溶液を使用することにより、中和及び希釈効果がさらに達成され、プロセスが簡単である。炭酸塩を使用することにより、中和反応において二酸化炭素が生成し、細菌の活性に影響を与えない。NaOHによる中和反応に比べて、本発明の反応はより温和であり、反応熱及び温度の制御はより容易であり、生成する塩の量が減少され、後続の生化学反応の進行により有利である。
【0038】
いくつかの実施形態では、炭酸塩水溶液のpHは8-9であり、COD濃度は100~600ppmであり、アルカリ度(CaCO換算)は4000~7000ppmであり、特に温度は20℃~45℃である。いくつかの実施形態では、炭酸塩水溶液のアルカリ度(CaCO換算)は4500~6000ppmである。
【0039】
いくつかの実施形態では、炭酸塩水溶液中の炭酸塩は、炭酸ナトリウム及び炭酸水素ナトリウムからなる群から選択される1種又は2種である。特に、廃水の総排出量を減少させるために、炭酸ナトリウム及び/又は炭酸水素ナトリウムを含む廃水を炭酸塩水溶液として使用してもよい。
【0040】
いくつかの実施形態では、炭酸塩水溶液は実質的に硫酸塩を含まない。
【0041】
アクロレイン反応器廃水及び/又は炭酸塩水溶液が実質的に硫酸塩を含まないことにより、ステップS2で生成するバイオガス中の硫化水素の含有量が減少される。硫化水素は、生化学的処理中の細菌の活性に大きい影響を与えるだけでなく、後続の脱硫工程によりさらに処理する必要がある。
【0042】
本発明において、前記「実質的に硫酸塩を含まない」というのは、硫酸塩の含有量が50ppm未満、特には30ppm未満、さらに特には20ppm未満であることをいう。
【0043】
いくつかの実施形態では、本発明の方法において、ステップS1に用いる炭酸塩水溶液以外、さらに塩基を加えない。前記塩基は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどを含むが、これらに限定されない。
【0044】
本発明のアクロレイン反応器廃水の処理方法では、ステップS1においてアクロレイン反応器廃水と炭酸塩水溶液とを混合して混合溶液を取得し、混合溶液のpHは4~6であり、COD濃度は7500ppm~30000ppmであり、ホルムアルデヒド濃度は800ppm~4000ppmである。いくつかの実施形態では、混合溶液のpHは約5である。必要に応じて、廃水処理過程において嫌気性及び/又は好気性生化学的処理された溶液の少なくとも一部を希釈水としてステップS2に還流させ、さらに廃水のpH値、COD及びホルムアルデヒドの濃度を調節する。いくつかの実施形態では、希釈水のpHは6-9である。いくつかの実施形態では、希釈水のCOD濃度は3000ppm未満、特には2000ppm未満、より特には1000ppm未満、さらに特には500ppm未満である。いくつかの実施形態では、希釈水のホルムアルデヒド濃度は30ppm未満、特には15ppm未満、より特には5ppm未満である。いくつかの実施形態では、ステップS2及び/又はS3で処理された後の溶液の少なくとも一部とステップS1で得られた混合溶液とを混合し、pH値が5-6.5範囲内である混合物を得た後、この混合物をステップS2の嫌気性反応器に輸送して生化学反応を行う。
【0045】
いくつかの実施形態では、混合溶液のCOD濃度は7800ppm~26000ppmであり、例えば、12000~25000ppm、特に約7800ppm、約14000ppm、約16000ppm、約20000ppm、約22000ppm又は約26000ppmである。いくつかの実施形態では、混合溶液のホルムアルデヒド濃度は1200ppm~3600ppmであり、特に約3600ppm、約3400ppm、約3000ppm、約2500ppm、約2300ppm、約2000ppm、約1700ppm、約1600ppm又は約1200ppmである。いくつかの実施形態では、混合溶液のアルカリ度(CaCO換算)は3000ppm未満、特に2000-3000ppmである。
【0046】
ステップS1でアクロレイン反応器廃水のpH、COD及びホルムアルデヒドの濃度を調節した後、得られた溶液を嫌気性反応器に輸送して生化学的処理を行う。
【0047】
嫌気性処理において、嫌気性条件下でバイオガスに還元することにより有機物(COD)を除去する。少なくとも80%のCODはバイオガスに変換する。いくつかの実施形態では、約85%のCODはバイオガスに変換される。バイオガスはCH及びCOを含み、非常に少量の他の成分、例えば、HSをさらに含む。CHの質量%は70%-80%であり、COの質量%は20%-30%であり、HSの濃度は200ppm未満である。いくつかの実施形態では、バイオガスは約75%CH及び25%COを含み、HSの濃度は200ppm未満である。バイオガスは、回収されてエネルギー源、例えば熱源として利用可能である。
【0048】
いくつかの実施形態では、前記嫌気性反応器は、グラニュール汚泥に基づく嫌気性グラニュール汚泥床を含む。グラニュール汚泥は優れた特性を有し、その沈降性は10~100m/hrであり、汚泥体積指数は10~20mL/gであり、汚泥濃度は50000~80000mgSS/Lと高く、活性は1~1.5gCOD/gVSS・dと高い。反応器は4~10kgCOD/m3・dの負荷速度下で操作することができる。
【0049】
いくつかの実施形態では、嫌気性反応は中温消化であり、反応温度が30~45℃である。処理すべき廃水は嫌気性グラニュール汚泥床の底部から入り、上向きに汚泥床を通過する過程において反応が発生し、有機物が分解されて除去され、バイオガスが生成する。頂部にある気液固分離装置により、バイオガスを収集し、汚泥は汚泥床に戻り、処理された後の溶液は反応器から排出される。
【0050】
嫌気性反応の進行につれて、有機物中の酸、例えば酢酸、アクリル酸が除去され、バイオガスが生成するとともに、pH値が高くなる。嫌気性処理された廃水のpH値は6-7に高くなる。いくつかの実施形態では、少なくとも一部の嫌気性処理された廃水を還流させ、ステップS1で得られた混合溶液と混合し、そのpH値、COD及びホルムアルデヒド濃度を調節する。
【0051】
いくつかの実施形態では、嫌気性生化学的処理された後、CODの除去率は70%以上であり、ホルムアルデヒドの除去率は98%以上であり、特に、CODの除去率は80%以上であり、ホルムアルデヒドの除去率は99%以上である。いくつかの実施形態では、嫌気性生化学的処理された後、COD濃度は6000ppm以下、特には4500ppm以下、より特には3000ppm以下である。いくつかの実施形態では、嫌気性生化学的処理された後、ホルムアルデヒド濃度は40ppm以下、特には25ppm以下、より特には15ppm以下である。
【0052】
嫌気性反応器からの流出物を好気性生化学槽に輸送して処理し、好気性生化学反応により有機物をさらに除去する。本発明の方法は、生化学的処理された後の固液分離ステップ、例えば、沈降分離をさらに含む。いくつかの実施形態では、好気性生化学的処理された後の溶液は、浄化槽に自己流入し、沈降分離した汚泥の一部を好気性生化学槽に再循環させ、一定量の汚泥を排出汚泥タンクに排出し、さらに遠心分離して汚泥ケーキを形成し、汚泥ケーキを捨て、これによって、好気性生化学槽における安定した汚泥濃度を維持する。
【0053】
いくつかの実施形態では、好気性生化学的処理された後、CODの除去率は95%以上、特には98%以上であり、ホルムアルデヒドの除去率は99.5%以上、特には99.9%以上である。
【0054】
いくつかの実施形態では、嫌気性処理及び好気性処理された後、廃水のpHは6-9、例えば、約7又は約8であり、含まれるCODは800ppm未満、特に500ppm未満、例えば、約300ppm、250ppm又は150ppmであり、ホルムアルデヒドは5ppm未満、特に3ppm未満であり、NH-Nは50ppm未満、特に5ppm未満であり、総窒素は15ppm未満であり、総リン酸塩は2ppm未満である。
【0055】
本発明の他の態様では、アクロレイン反応器廃水の処理装置が提供される。図2は、本発明の一実施形態に係るアクロレイン反応器廃水の処理装置の模式図を示す。前記装置は、廃水貯蔵タンク1、炭酸塩水溶液貯蔵タンク2、廃水調節タンク3、嫌気性反応器4、好気性生化学槽5、浄化槽6、二次沈殿槽7及び廃棄管路8を含む。
【0056】
前記廃水貯蔵タンク1及び炭酸塩水溶液貯蔵タンク2は、それぞれ廃水調節タンク3に流体連通する。
【0057】
前記廃水調節タンク3、嫌気性反応器4、好気性生化学槽5、浄化槽6、二次沈殿槽7は、順に流体連通する。
【0058】
前記嫌気性反応器4にはバイオガス排出口9が設けられる。
【0059】
前記廃水貯蔵タンク1、炭酸塩水溶液貯蔵タンク2、廃水調節タンク3、嫌気性反応器4、好気性生化学槽5のうちの1つ又は複数には廃棄管路8に接続される廃棄排出口が設けられる。
【0060】
いくつかの実施形態では、アクロレイン反応器廃水の処理装置は、排出汚泥タンク10、遠心分離機11、濾過器又はガススクラバー12、燃焼器13をさらに含む。
【0061】
いくつかの実施形態では、好気性生化学槽5は浄化槽6に流体連通する。いくつかの実施形態では、浄化槽6の出口は管路及び循環ポンプを介して好気性生化学槽5の入口に接続され、これによって、汚泥の循環利用が実現される。
【0062】
いくつかの実施形態では、浄化槽6は排出汚泥タンク10に連通し、排出汚泥タンク10は遠心分離機11に接続される。好気性生化学槽5中で好気性生化学的処理された後の溶液は浄化槽6に自己流入し、沈降分離した汚泥の一部を管路及び循環ポンプを介して好気性生化学槽5に再循環させ、一定量の汚泥を排出汚泥タンク10に排出し、さらに、遠心分離機11により遠心分離して汚泥ケーキを形成し、汚泥ケーキを捨て、これによって、好気性生化学槽5における安定した汚泥濃度を維持する。
【0063】
いくつかの実施形態では、廃水調節タンク3内にpH分析計及び/又は温度計が設けられる。これにより、廃水調節タンク内の廃水のpH及び温度を検出し、適宜の範囲内に制御する。
【0064】
いくつかの実施形態では、廃棄管路8の出口は濾過器又はガススクラバー12に接続される。これにより、廃棄を処理してから排出し、空気汚染を回避する。
【0065】
いくつかの実施形態では、廃棄管路8の出口は燃焼器13に接続される。これにより、廃棄を燃焼し、直接排出による空気汚染を回避する。
【0066】
いくつかの実施形態では、好気性生化学槽5は曝気汚泥床である。
【0067】
図3に示すように、いくつかの実施形態では、嫌気性反応器4は、嫌気性グラニュール汚泥床401及び嫌気性汚泥タンク402を含む。嫌気性グラニュール汚泥床401は、廃水調節タンク3及び好気性生化学槽5に流体連通し、嫌気性グラニュール汚泥床401は、嫌気性汚泥タンク402に流体連通し、嫌気性グラニュール汚泥床401にはバイオガス排出口9が設けられ、嫌気性汚泥タンク402には廃棄管路8に接続される廃棄排出口が設けられる。他の部分は図2についての上記説明と同様である。
【0068】
いくつかの実施形態では、廃水調節タンクと嫌気性反応器との間に嫌気性調節タンクが設けられる。嫌気性調節タンクは、2つの入口及び2つの出口を含む。2つの入口は、それぞれ廃水調節タンクの出口、及び嫌気性反応器、好気性生化学槽、浄化槽、二次沈殿槽のうちの1つ又は複数の出口に流体連通する。2つの出口は、それぞれ嫌気性反応器の入口及び好気性生化学槽の入口に流体連通する。嫌気性調節タンクは、ステップS2及び/又はS3で処理された後の溶液の少なくとも一部をステップS2に還流させる。いくつかの実施形態では、嫌気性調節タンクは、嫌気性処理された廃水の少なくとも一部を嫌気性反応器に還流させる。いくつかの実施形態では、嫌気性調節タンクによりステップS1で得られた混合溶液と少なくとも一部の嫌気性処理された廃水とを混合し、さらに混合物を嫌気性反応器に輸送して嫌気性生化学反応を行うことにより、嫌気性処理内部において少なくとも一部の処理された廃水(pH6-7)の再循環が構築される。嫌気性反応においては、処理された廃水によりステップS1で得られた混合溶液のpH、COD及びホルムアルデヒド含有量を調節するとともに、有機物中の酸が嫌気性反応により分解されるにつれてpHが高くなるため、嫌気性生化学反応の進行により有利である。
【0069】
いくつかの実施形態では、嫌気性調節タンクは、処理された廃水の一部と廃水調節タンクの流出物とを混合し、処理された廃水の一部を好気性生化学槽に輸送することができるように設けられる。
【0070】
図4は、本発明の一実施形態に係るアクロレイン反応器廃水の処理装置の模式図である。嫌気性調節タンク14は、2つの入口及び2つの出口を含む。2つの入口は、それぞれ廃水調節タンク3の出口及び嫌気性反応器4の出口に流体連通する。2つの出口は、それぞれ嫌気性反応器4の入口及び好気性生化学槽5の入口に流体連通する。嫌気性調節タンク14は、嫌気性反応器4の流出物の一部と廃水調節タンク3の流出物とを混合し、さらに嫌気性反応器4の入口を介して嫌気性反応器4に輸送して嫌気性生化反応を行い、嫌気性反応器4の流出物の一部を好気性生化学槽5に輸送して好気性処理を行うことができる。他の部分は図2についての上記説明と同様である。
【0071】
いくつかの実施形態では、嫌気性反応器は、嫌気性グラニュール汚泥床及び嫌気性汚泥タンクを含む。嫌気性調節タンクは、2つの入口及び2つの出口を含む。2つの入口は、それぞれ廃水調節タンクの出口及び嫌気性グラニュール汚泥床の出口に流体連通する。2つの出口は、それぞれ嫌気性グラニュール汚泥床の入口及び好気性生化学槽の入口に流体連通する。これによって、嫌気性グラニュール汚泥床の流出物の少なくとも一部は嫌気性調節タンク及び嫌気性グラニュール汚泥床の内部を循環する。
【0072】
一実施形態において、嫌気性調節タンクは、
内部に設けられ、貫通孔を有する仕切板と、
位置が仕切板よりも高い、嫌気性反応器の出口に流体連通する入口及び好気性生化学槽の入口に流体連通する出口と、
位置が仕切板よりも低い、廃水調節タンクの出口に流体連通する入口及び嫌気性反応器の入口に流体連通する出口と、
仕切板以下の溶液を混合する混合装置と、を含む。
【0073】
前記配置により、嫌気性反応器の流出物が仕切板以上に輸送され、廃水調節タンクの流出物が仕切板以下に輸送されることにより、嫌気性反応器の流出物は、貫通孔を介して仕切板以下の部分に入り、廃水調節タンクの流出物と混合した後、位置が仕切板よりも低い出口を介して嫌気性反応器に入って反応することができ、嫌気性反応器の流出物は位置が仕切板よりも高い出口を介して好気性生化学槽に輸送されて好気性処理を行うことができる。これによって、嫌気性反応器の流出物の一部を嫌気性反応器に還流させ、他の部分を好気性生化学槽に輸送することができる。
【0074】
従来技術に比べ、本発明は以下の利点を有する。
【0075】
本発明は、アクロレイン反応器廃水の連続処理プロセス及び装置を開示する。アクロレイン反応器廃水と炭酸塩水溶液とを混合し、pH、COD濃度及びホルムアルデヒド濃度を調節し、嫌気性及び好気性処理プロセスを行うことにより、排出基準を満たす廃水が得られる。本発明において、炭酸塩水溶液とアクロレイン反応器廃水とを混合することにより、混合廃水のpH値を調節できるとともに、CODとホルムアルデヒドの濃度を減少させることができる。また、アクロレイン反応器廃水に存在する有機酸が嫌気性反応器において分解されることにより、廃水のCODが減少され、廃水のpH値が高くなる。生化学反応した廃水を還流させることにより、混合廃水のpH値がさらに高くなり、混合廃水中のCOD及びホルムアルデヒドの濃度がさらに低くなり、嫌気性反応により適するとともに、処理された廃水の内部循環により、排出される廃水量が減少される。本発明の方法によれば、廃水のpH値を調節し、廃水中の塩の含有量を増加させるために塩基、特に苛性ソーダを追加することが回避され、これによって、環境に優しいだけでなく、廃水の処理コストを効果的に削減することができる。
【0076】
本発明の廃水処理方法では、別途に化学品を添加する必要がなく、酸性化/塩基性反応が発生しないため塩が生成しない。また、嫌気性過程では、ほとんどのCOD及びホルムアルデヒドが除去され、さらに塩基、例えば苛性ソーダを追加して中和反応する必要がないため、処理過程において換気を必要とせず(電力を80%節約)、汚泥の産生量が少なく(85%節約)、化学品の消耗が少なく(60%節約)、操作コストが大幅に削減され、焼却法と比べ、操作コストが30%まで削減可能である。さらに、嫌気性条件下で還元して得られたバイオガスは熱回収にも適用できるため、資源の回収再利用が達成され、環境に優しい。
【0077】
本発明のプロセスにより、少なくとも80%のCODをバイオガスに変換し、燃料ガスとして回収することにより、天然ガスの消費量が減少される。
【0078】
本発明のプロセスは、比較的高いホルムアルデヒド耐性を有し、高ホルムアルデヒド濃度の廃水の処理に直接使用でき、ホルムアルデヒドを減少させるために高濃度廃水を前処理し、又は他の試薬を添加する必要がない。
【0079】
本発明の装置は、アクロレイン反応器廃水を連続的に処理することができ、混合だけにより適切なCOD及びホルムアルデヒド濃度、pH、温度の混合廃水を得ることができ、余分な添加物の追加が回避され、環境に優しく節約が達成される。本発明の装置により、廃水処理が実現され、廃水処理過程において産生された廃気が適切に処理され、熱回収が実現され、環境に優しい。
【0080】
以下、実施例により本発明をさらに説明する。
【0081】
実施例に用いるアクロレイン反応器廃水及び炭酸塩水溶液の組成を表1-1及び表2に示す。表1-2は、各成分のCOD換算係数を示す。
【0082】
【表1-1】
【0083】
【表1-2】
【0084】
実施例に用いるアクロレイン反応器廃水のpHはいずれも1-2であり、CODは60000ppm~200000ppmであり、いくつかの実施例では、それぞれ133028(アクロレイン反応器廃水1)、145318(アクロレイン反応器廃水2)及び178000ppmであった。
【0085】
【表2】
【0086】
実施例に用いる炭酸塩水溶液は、炭酸ナトリウム及び炭酸水素ナトリウムを含み、温度は25-42℃の範囲内であった。
【0087】
実施例に用いる希釈水は嫌気性及び好気性生化学的処理された後の廃水(還流水、COD:500ppm未満、ホルムアルデヒド:1ppm未満、pH:6-9。表3に示す)である。或いは、嫌気性処理された廃水を還流させ、アクロレイン反応器廃水と炭酸塩水溶液の混合溶液を希釈する。
【0088】
【表3】
【0089】
実施例1:アクロレイン反応器廃水中のCOD及びホルムアルデヒドの含有量の調節
アクロレイン反応器廃水と炭酸塩水溶液とを約1:6の流量比で混合し、得られた混合溶液のCOD及びホルムアルデヒドの含有量をそれぞれ測定した。混合過程における組成の変化を表4に示す。
【0090】
【表4】
【0091】
嫌気性及び好気性生化学的処理された後の廃水を希釈水として使用し、得られた混合溶液のCOD及びホルムアルデヒドの含有量、溶液のpH値をさらに調節した。得られた混合溶液と希釈水とを約3:1の流量比で混合し、得られた混合物のCOD及びホルムアルデヒドの含有量をそれぞれ測定した。結果を表5に示す。
【0092】
【表5】
【0093】
実施例2:廃水の生化学的処理
(1)嫌気性生化学的処理
アクロレイン反応器廃水と炭酸塩水溶液とを混合し、又はさらに処理された還流廃水と混合し、混合溶液のCOD濃度が7500~25000ppm、ホルムアルデヒド濃度が800ppm~4000ppm、pHが4-6となるようにCOD及びホルムアルデヒドの含有量、pH値を調節した後、得られた混合溶液を嫌気性反応器に輸送して生化学的処理を行い、溶液のアルカリ度(CaCO換算)を2000~3000ppmに維持した。嫌気性反応器の負荷速度は4~10kgCOD/m3・dであり、嫌気性処理では、嫌気性条件下でバイオガスに還元させることにより、有機物(COD)を除去し、約85%のCODがバイオガスに変換された。バイオガスはCH、CO及び非常に少量のHSからなり、CHの質量%が約75%、COの質量%が約25%、HSの濃度が200ppm未満であった。
【0094】
前記嫌気性反応器は、グラニュール汚泥に基づく嫌気性グラニュール汚泥床を含む。グラニュール汚泥は優れた特性を有し、沈降性は10~100m/hrであり、汚泥体積指数は10~20mL/gであり、汚泥濃度は50000~80000mgSS/Lと高く、活性は1~1.5gCOD/gVSS・dと高い。したがって、反応器は4~10kgCOD/m3・dの負荷速度下で操作できる。嫌気性グラニュール汚泥床に対する流入液及び流出液の流れ中のCOD及びホルムアルデヒドの量に基づいて、それぞれCOD及びホルムアルデヒドの除去率を計算した。
【0095】
(2)好気性生化学的処理
嫌気性反応器からの流出物を後続の好気性生化学槽にオーバーフローさせた。好気性生化学的処理された後の溶液は浄化槽に自己流入し、沈降分離した汚泥中の一部を好気性生化学槽に再循環させ、一定量の汚泥を排出汚泥タンクに排出し、さらに遠心分離により汚泥ケーキを形成し、汚泥ケーキを捨て、好気性生化学槽中の安定した汚泥濃度を維持した。浄化槽流出物中のCOD及びホルムアルデヒドの量に基づいて、それぞれCOD及びホルムアルデヒドの除去率を計算した。
【0096】
実施例2の廃水生化学的処理のデータは以下の通りである。
嫌気性反応器に入った廃水流入物中のCODが15980mg/Lである場合、嫌気性反応器は、5.32gCOD/L・dのVLR下で83.5%のCODを除去し、最終的な浄化槽流出物のCODは328mg/Lであり、総COD除去効率は97.9%であり、ホルムアルデヒドの除去効率も高く、嫌気性処理後に99.1%となった(表6を参照)。
【0097】
嫌気性反応器に入った廃水流入物中のCODが15250mg/Lである場合、嫌気性処理後に83.9%のCODが除去され、最終的な浄化槽流出物のCODは298mg/Lであり、総COD除去効率は98.0%であり、ホルムアルデヒドの除去効率は嫌気性条件下で処理された後に99.1%となり、さらに好気性処理された後に99.99%より高くなった(表6を参照)。
【0098】
【表6】
【0099】
VLR=フィード流量Q(L/d)*流入物COD(g/L)/反応器体積(L)
=流入物COD(g/L)/HRT(d)
HRTは水理学的滞留時間といい、処理される汚水が反応器内に滞留している平均的な時間を示し、つまり、汚水と生物反応器内の微生物が作用する平均的な反応時間である。
FMDはホルムアルデヒド含有量を示す。
COD%はCOD除去率を示す。
FMD%はホルムアルデヒド除去率を示す。
COD%=[(流入物COD-流出物COD)]/流入物COD]*100%
FMD%=[(流入物FMD-流出物FMD)/流入物FMD]*100%
流入物COD及び流入物FMDは、嫌気性反応器に入ったフィード流入物の濃度である。
【0100】
図5は、複数日間連続動作した場合のCOD及びその除去率の結果を示す。上から下へそれぞれ総COD除去率、流入物COD、嫌気性流出物COD及び好気性流出物CODである。同図から分かるように、動作過程全体において、嫌気性処理及び好気性処理中のCODの効果的な除去を達成でき、総COD除去率は約98%で安定した。
【0101】
表7は、異なる条件下での廃水COD及びホルムアルデヒド含有量、その除去率の結果を示す。同表から分かるように、全ての実施例では、嫌気性処理及び好気性処理によりCOD及びホルムアルデヒドの効果的な除去を達成でき、総COD除去率は98%以上で安定し、ホルムアルデヒド除去率は99.9%より高かった。
【0102】
【表7】
【0103】
以上の実施例から分かるように、アクロレイン反応器廃水と炭酸塩水溶液とを混合し、或いはさらに処理された還流廃水と混合し、COD及びホルムアルデヒドの含有量、pH値を調節し、その後、得られた混合溶液を嫌気性反応器に輸送して生化学的処理を行い、さらに好気性生化学槽で生化学的処理することにより、嫌気性処理及び好気性処理中のCOD及びホルムアルデヒドの効果的な除去を達成でき、複数日間連続動作しても安定した除去効果を得ることができる。処理された廃水は排出基準を満たす。
【0104】
なお、以上の実施例は例示的なものに過ぎず、本発明の保護範囲を制限するものではない。以上の説明に基づいて行われる同等置換又は代替はいずれも本発明の保護範囲に含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5