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▶ アクチュエーター・ソリュ―ションズ・ゲーエムベーハーの特許一覧

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  • 特許-スイングタイプSMAアクチュエータ 図1A
  • 特許-スイングタイプSMAアクチュエータ 図1B
  • 特許-スイングタイプSMAアクチュエータ 図2A
  • 特許-スイングタイプSMAアクチュエータ 図2B
  • 特許-スイングタイプSMAアクチュエータ 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-05
(45)【発行日】2022-08-16
(54)【発明の名称】スイングタイプSMAアクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   F03G 7/06 20060101AFI20220808BHJP
【FI】
F03G7/06 E
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020571515
(86)(22)【出願日】2019-06-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-21
(86)【国際出願番号】 IB2019055148
(87)【国際公開番号】W WO2019244062
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2022-04-06
(31)【優先権主張番号】102018000006584
(32)【優先日】2018-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517067202
【氏名又は名称】アクチュエーター・ソリュ―ションズ・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マティーアス・ペーターラインス
【審査官】津田 真吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-100537(JP,A)
【文献】米国特許第08341958(US,B2)
【文献】米国特許出願公開第2007/0132551(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0252260(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0172557(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03G 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定フレーム(11)およびスイング可能部分(12)を備えるアクチュエータ(10)であって、前記固定フレーム(11)および前記スイング可能部分(12)は、
前記スイング可能部分のスイングを可能にするピボット(13)と、
前記スイング可能部分(12)に存在し、前記ピボット(13)から半径方向に離れた2つの接続要素(15,15’)に係合される2つの形状記憶合金ワイヤ(14,14’)であって、前記接続要素(15,15’)は、それぞれ前記スイング可能部分(12)の左部分および右部分にあり、前記形状記憶合金ワイヤ(14,14’)の一方がアクティブになると、前記スイング可能部分(12)の時計回りまたは反時計回り方向のいずれかのスイングを引き起こす、2つの形状記憶合金ワイヤ(14,14’)と、
によって連結され、
前記アクチュエータは、前記アクチュエータの外側に向かってスライド可能な可動要素(16)をさらに備え、
前記可動要素(16)は、前記スイング可能部分(12)に位置し、かつ前記可動要素(16)の凹部(18)に係合されているロック要素(17)が係合解除されると、付勢バネ(19)の作用によって前記アクチュエータの外側に向かってスライド可能であり、係合解除は、前記スイング可能部分のスイングによって引き起こされることを特徴とする、アクチュエータ(10)。
【請求項2】
前記2つの接続要素(15,15’)が前記ピボット(13)に対して対称的に、前記スイング可能部分(12)に配置されている、請求項1に記載のアクチュエータ(10)。
【請求項3】
前記スイング可能部分(12)が略T字形構造を有する、請求項1または2に記載のアクチュエータ(10)。
【請求項4】
前記形状記憶合金ワイヤ(14,14’)の中間部分が前記接続要素(15,15’)に巻かれている、請求項1~3のいずれか一項に記載のアクチュエータ(10)。
【請求項5】
スイング制御双安定機構(100)を備える、請求項1~4のいずれか一項に記載のアクチュエータ(10)。
【請求項6】
前記固定フレーム(11)および前記スイング可能部分(12)の間に変位位置センサが存在する、請求項1~5のいずれか一項に記載のアクチュエータ(10)。
【請求項7】
前記可動要素(16)がデバイスのロック/アンロック要素として作動する、請求項1~6のいずれか一項に記載のアクチュエータ(10)の使用。
【請求項8】
前記デバイスが、燃料蓋または充電供給蓋である、請求項7に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイングタイプの形状記憶合金(SMA)アクチュエータ、およびこのようなアクチュエータを使用するデバイスに関連し、特に、これに限定されないが自動車の蓋に関する。
【背景技術】
【0002】
アクチュエータとしてのSMAワイヤの使用は、その使用に関連する高度な自動化と制御によりますます高く評価されており、たとえば出願人の名前の特許文献1に説明されているように、カメラモジュールなどの幅広い用途で正常に使用されている。
【0003】
特に関心のある分野は、特許文献2に記載されているような、ロックを制御するための、または追加のロック制御としてのSMAベースのソリューションの使用であり、特に例えば、電気モーターによる自動車の蓋の自動ロック解除を開示する特許文献3および自動車のハウジングに可動式に取り付けられたフラップの自動作動に関連するセンサの使用を開示する特許文献4に開示されているような自動車の燃料蓋または充電蓋(電気自動車の場合)を制御するためのソリューションの使用である。
【0004】
一般的に言えば、SMAアクチュエータがマイクロモーターに取って代わることができる任意の用途では、例えばカーエアコンのダクト出口でスイング可能に支持されているルーバーを制御するためのSMAベースのシステムに関して特許文献5に記載されているように、負担、制御、および信頼性の点で利点がある。本発明とは異なり、特許文献5に記載されているソリューションは、SMAが制御するロックのソリューションで必要とされる、可動要素のブロック/ブロック解除の問題に対処していない。
【0005】
同じことが、SMAベースのスイングタイプのアクチュエータを開示する特許文献6にも当てはまり、SMAワイヤが2つのピボットアームに作用し、スイング可能なパイ形状の部品を反対側から押して水平ロッドを動かし、垂直ロッドは、付勢ばねによって常に押されて、スイング可能な部分に形成された複数の凹部と係合し、SMAワイヤに電力を供給せずに安定した平衡位置を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2016/075606号パンフレット
【文献】国際公開第2016/156283号パンフレット
【文献】国際公開第2013/130691号パンフレット
【文献】国際公開第2013/130495号パンフレット
【文献】米国特許出願公開第2007/0123158号明細書
【文献】米国特許出願公開第2007/0132551号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、自動車の燃料蓋の自動制御などの用途においてモーターまたはマイクロモーターを置き換えることができる自動SMAベースのアクチュエータを提供することであり、その第1の態様は、固定フレームおよびスイング可能部分を含むアクチュエータからなり、ここで、スイング可能部分と固定フレームは、以下によって結合されている。
- スイング可能部分のスイングを可能にするピボット要素、
- スイング可能部分に存在し、ピボット要素から垂直方向に離れた2つの接続要素に係合する2つの形状記憶合金ワイヤであって、前記接続要素がそれぞれスイング可能部分の左右部分にある2つの形状記憶合金ワイヤ。
ここで、可動要素は、スイング可能部分に存在するロック要素によってスイング可能部分に結合されている。
【0008】
本発明は、以下の図の助けを借りてさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A】本発明によるスイング型アクチュエータの上からの概略図である。
図1B】本発明によるスイング型アクチュエータの上からの概略図である。
図2A】双安定位置制御を有する本発明によるスイング型アクチュエータの詳細を上から見た概略図である。
図2B】双安定位置制御を有する本発明によるスイング型アクチュエータの詳細を上から見た概略図である。
図3】本発明によるアクチュエータの上方からの透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図では、図面を理解しやすくするために、特に、これに限らないがスイングアクチュエータの他の要素に対するSMAワイヤの直径などは、場合によっては示されているさまざまな要素のサイズと寸法比が変更されている。また、電流供給源など、本発明の理解に必要のないいくつかの補助要素は、技術分野で知られている通常の手段であるため、示されていない。
【0011】
図1には、固定フレーム11を含むスイングタイプのSMAアクチュエータ10が示されており、ピボット13を介してスイング可能部分12が枢動し、スイング可能部分12の円弧型の動き(スイング)を可能にする。好ましくは、スイング可能部分12は、ピボット13に対応してより狭いセクションを有し、アクチュエータ10の上部において、T字形構造に類似したより大きなセクションを有する。
【0012】
スイング可能部分12の動きは、ジュール熱を介して交互に作動される2つの拮抗形状記憶合金ワイヤ14、14’によって達成される。形状記憶合金ワイヤは曲げられ、U字型の構成で使用され、ワイヤの長さを長くすることができるため、より大きな力を加えることができる。ワイヤ14、14’の先端は、それぞれ、ピボット13の両側の固定点141、141’で固定フレーム11に固定され、ワイヤ14、14’の中央部分は、スイング可能要素12の上に配置される接続要素15、15’に巻かれている。
【0013】
図1Aおよび図1Bに示されるように、接続要素15、15’は、好ましくは、アクチュエータ10(Tの水平アーム)の上部のスイング可能要素12上に対称的に配置される。
【0014】
スイング可能要素12上には、可動要素16に形成された適切な凹部18に入ることによって可動要素16をブロックするロック要素17が存在する。
【0015】
要素16の制御された動きは、作動の目的であり、この場合、形状記憶合金ワイヤ14’を加熱することによって達成され、短縮により、スイング可能部分12の時計回りの回転を引き起こし、ロック要素17を可動要素16の凹部18から係合解除する。これにより、プリロードされたばね19によって駆動される要素16の動きが生じる。これは、ピボット13などの他の要素をよりよく理解できるようにするために図1A図1Bには示されていないが、代わりに図2A図2Bに示される。
【0016】
図2Aおよび図2Bは、図1Bの点線の楕円形100によって示されるスイング型アクチュエータ10の詳細の上方からの概略図を示し、本発明による双安定スイングアクチュエータに有用に使用される双安定ロック機構100を示すことを目的としている。双安定機構100は、フレーム11の平面から立ち上がって、係合機構102と一致する固定フレーム11上のエンボス部分102’と、スイング可能部分12上に形成された2つの移動エンドストッパー103、103’とを含む。すでに述べたように、曲げ構成で形状記憶合金ワイヤ14、14’を使用すると、より大きな力を加えることができるため、安定性が向上した双安定機構を使用することができる。つまり、2つの安定位置の間で移動するためにより高い力が要求される。
【0017】
図2Aおよび図2Bには、要素16に作用するばね19の末端部分も示され、ばね19は、ロック要素17が係合されると圧縮され、解放時に要素16をアクチュエータ10の外側に向かって押す。つまり、スイング可能部分12は、形状記憶合金ワイヤ14’の作用によって時計回りに引っ張られる/スイングされる。
【0018】
この回転中、双安定機構100は、係合機構102が形成されている円弧部分を弾性的に変形することによって、すなわち、固定エンボス部分102’の下を通過するように円弧部分を押し下げることによって、図2Aの第1の安定位置から図2Bの第2の安定位置に移動する。明らかに、逆方向の動きは、SMAワイヤ14が作動し、スイング可能部分12が反時計回りに回転するときに起こり、各方向への移動の終わりは、それぞれのストッパー103、103’によって画定される。
【0019】
スイング可能部分12の正しい位置および動きの制御は、固定フレーム11とスイング可能部分12との間に配置された、変位位置センサ、例えばホール効果センサ、ポテンショメーター等を設けることによって達成される。
【0020】
図3は、より完全な表現での本発明によるアクチュエータの上方からの透視図である。図1A図1B図2A図2Bを参照して既に説明した主要素および基本要素は、本明細書では同じ数字で示されている。
【0021】
本発明は、上記の図に示される特定の実施形態に限定されず、他の変形が含まれることを理解されたい。例えば、形状記憶合金ワイヤ14、14’は、固定フレーム11およびスイング可能部分12にそれぞれ配置された固定点の間に延びる単純な直線ワイヤであり得る。
【0022】
本発明は、幾何学的観点から、直径が0.010mmから5mmの間で構成されるSMAワイヤが有用に使用されているとしても、特定のタイプの形状記憶合金ワイヤに限定されるものではない。この点で、形状記憶合金ワイヤは実物であるため、円形断面から逸脱する可能性があることを強調するが、直径という用語は、最小の囲み円の直径として意図されている。
【0023】
本発明は、特定の形状記憶合金材料に限定されないが、そのプロセスにより超弾性ワイヤ挙動または形状記憶合金挙動を交互に示すことができるニチノールなどのNi-Tiベースの合金が好ましい。ニチノールの特性およびそれらを達成することを可能にする方法は、当業者に広く知られている。例えば、SMST2010カンファレンスで発表されたDennis W. Norwich による「A Study of the Properties of a High Temperature Binary Nitinol Alloy Above and Below its Martensite to Austenite Transformation Temperature」の記事を参照されたい。
【0024】
ニチノールをそのまま使用することも、転移温度に関する特性をHf、Nb、Pt、Cuなどの元素を添加することで調整することもできる。材料合金の適切な選択およびその特性は、当業者によって一般に知られている。例えば、以下を参照されたい。
http://memry.com/nitinol-iq/nitinol-fundamentals/transformation-temperatures
【0025】
また、形状記憶合金ワイヤは、それらの熱管理、すなわち作動後の冷却を改善するために、「それ自体」で、またはコーティング/シースと共に使用され得る。コーティングシースは、熱伝導体である電気絶縁コーティングに頼ることによって残留熱を管理する方法を教示する米国特許第9068561号に記載されているように均一であり得るが、米国特許第6835083号はすべての作動サイクル後の冷却を改善することができる封入シースを有する形状記憶合金ワイヤを記載している。また、米国特許第8739525号に記載されているように、相変化材料で作られた、またはそれを含むコーティングを有利に使用することができる。
【0026】
その第2の態様では、本発明は、例えば、本発明によるスイング型SMAアクチュエータを組み込んだ燃料蓋または電気自動車/ハイブリッド車の場合の充電供給蓋などの装置からなる。
【符号の説明】
【0027】
10 形状記憶合金(SMA)アクチュエータ
11 固定フレーム
12 スイング可能部分
13 ピボット要素
14,14’ 形状記憶合金ワイヤ
15,15’ 接続要素
16 可動要素
17 ロック要素
18 凹部
19 付勢バネ
100 双安定機構
102 係合機構
102’ エンボス部分
103,103’ 移動エンドストッパー
141,141’ 固定点
図1A
図1B
図2A
図2B
図3