(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-05
(45)【発行日】2022-08-16
(54)【発明の名称】膝スペーサ部材を製造するための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
A61F 2/38 20060101AFI20220808BHJP
【FI】
A61F2/38
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021013887
(22)【出願日】2021-01-29
【審査請求日】2021-03-31
(32)【優先日】2020-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】510340506
【氏名又は名称】ヘレウス メディカル ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】フォクト セバスティアン
(72)【発明者】
【氏名】クルーゲ トーマス
【審査官】土谷 秀人
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-507343(JP,A)
【文献】特表2016-500292(JP,A)
【文献】特表2017-533741(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0348973(US,A1)
【文献】特開2016-109298(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨セメントペースト(50、51)を硬化させることにより膝スペーサ部材(110、210、410)を製造するための装置であって、前記膝スペーサ部材(110、210、410)は、膝関節の関節面を含む膝関節の一部を一時的に置換するために医療分野で提供され、前記装置は、
骨セメントペースト(50、51)から前記膝スペーサ部材(110、210、410)を成形するための注型型と、
前記注型型に接続された弁座(3、63、163、263、363)であって、前記弁座(3、63、163、263、363)は、少なくとも1つの第1の貫通部(5、65、165、265、365)を有する領域的に閉じたヘッド側(4、64、164、264、364)を有し、前記少なくとも1つの第1の貫通部(5、65、165、265、365)は、前記注型型に開口している弁座(3、63、163、263、363)と、
前記弁座(3、63、163、263、363)に対して回転可能であるように装着され、シール面(7、67、167、267)を有する弁本体(6、18、78、178、266、366)であって、前記シール面(7、67、167、267)は、前記弁座(3、63、163、263、363)の前記領域的に閉じたヘッド側(4、64、164、264、364)の方向に向けられており、少なくとも1つの第2の貫通部(8、21、68、168、268)が、前記シール面(7、67、167、267)内に配置されている弁本体(6、18、78、178、266、366)と
を有し、
前記弁座(3、63、163、263、363)及び前記弁本体(6、18、78、178、266、366)は一緒になって弁を形成し、前記弁は、前記弁座(3、63、163、263、363)に対する前記弁本体(6、18、78、178、266、366)の回転によって開位置及び閉位置に可逆的に移動可能であり、前記弁の前記開位置において、前記弁座(3、63、163、263、363)の前記少なくとも1つの第1の貫通部(5、65、165、265、365)及び前記弁本体(6、18、78、178、266、366)の前記少なくとも1つの第2の貫通部(8、21、68、168、268)が、少なくとも一部で互いに重なり合って位置し、骨セメントペースト(50、51)にとって透過性である、前記弁を介した接続を提供し、前記弁の前記閉位置において、前記弁座(3、63、163、263、363)の前記少なくとも1つの第1の貫通部(5、65、165、265、365)は前記弁本体(6、18、78、178、266、366)の前記シール面(7、67、167、267)によって覆われており、前記弁の前記閉位置において、前記注型型は骨セメントペースト(50、51)について液密に閉じられている装置。
【請求項2】
前記弁座(3、63、163、263、363)が、前記注型型に対して回転不能に前記注型型に接続され、又は、
前記弁座(3、63、163、263、363)が、前記注型型に固定的に及び/若しくは剛性的に接続されるか、又は前記注型型と一体的に形成されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記弁が手動で操作可能であり、前記弁本体(6、18、78、178、266、366)が前記弁座(3、63、163、263、363)に対して手動で回転可能であり、前記弁が、回転によって前記閉位置から前記開位置へ、及び前記開位置から前記閉位置へ移動可能であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記弁の前記閉位置において、前記弁座(3、63、163、263、363)の前記少なくとも1つの第1の貫通部(5、65、165、265、365)が、前記弁本体(6、18、78、178、266、366)の前記シール面(7、67、167、267)で覆われていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記弁座(3、63、163、263、363)の前記領域的に閉じたヘッド側(4、64、164、264、364)と前記弁本体(6、18、78、178、266、366)の前記シール面(7、67、167、267)が、最大2mmの間隔で互いに離間していることを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記弁座(3、63、163、263、363)の前記領域的に閉じたヘッド側(4、64、164、264、364)と前記弁本体(6、18、78、178、266、366)の前記シール面(7、67、167、267)が、最大0.5mmの間隔で互いに離間していることを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項7】
前記弁本体(6、18、78、178、266、366)が、前記弁座(3、63、163、263、363)に対して回転軸の周りに回転可能であるように装着され、前記回転軸が、前記弁本体(6、18、78、178、266、366)の前記シール面(7、67、167、267)に対して垂直に延びるか、又は前記回転軸が、前記弁本体(6、18、78、178、266、366)の前記シール面(7、67、167、267)の回転対称軸に沿って延びることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記弁本体(6、18、78、178、266、366)が、骨セメントカートリッジ(10)又は前記装置のハンドルの液密接続のためのポート(11、271)を有するか、又はそのようなポート(11、271)に強固に接続されていることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記装置が、骨セメントカートリッジ(10)に接続されているか若しくは接続可能なアダプタ要素(9)を有し、前記アダプタ要素(9)が、骨セメントカートリッジ(10)の内部が、前記アダプタ要素(9)を介して前記弁本体(6、18、78、178、266、366)内の前記少なくとも1つの第2の貫通部(8、21、68、168、268)に、骨セメントペースト(50、51)について透過的に接続されているか若しくは接続可能であるように、前記ポート(11、271)に着脱可能にかつ係合可能に接続されているか若しくは接続可能であること、及び/又は
前記ポート(11、271)ポートが、骨セメントカートリッジ(10)若しくはハンドル(14、74、174)の液密接続のために、前記弁本体(6、18、78、178、266、366)内の内ねじ部(24、84、184)若しくは前記弁本体(6、18、78、178、266、366)上の外ねじ部を含み、前記骨セメントカートリッジ(10)のアダプタ要素(9)若しくは前記骨セメントカートリッジ(10)に接するアダプタ要素(9)が、前記内ねじ部(24、84、184)若しくは前記外ねじ部と一致する嵌合ねじ部(26)を有るか、又は前記装置の前記ハンドル(14、74、174)が、前記内ねじ部(24、84、184)若しくは前記外ねじ部と一致する嵌合ねじ部(19、79、179)を有すること
を特徴とする請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記装置が、骨セメントカートリッジ(10)であって、骨セメント出発成分を混合し、混合された骨セメントペースト(50、51)を前記骨セメントカートリッジ(10)から送達するための骨セメントカートリッジ(10)を有することを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
前記装置が、骨セメントカートリッジ(10)であって、ポリメタクリル酸メチル骨セメント出発成分を混合し、混合されたポリメタクリル酸メチル骨セメントペースト(50、51)を前記骨セメントカートリッジ(10)から送達するための骨セメントカートリッジ(10)を有し、前記骨セメントカートリッジ(10)が、前記ポリメタクリル酸メチル骨セメントペースト(50、51)を製造するための前記ポリメタクリル酸メチル骨セメント出発成分を相互に分離した領域に含むことを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
前記装置が、前記弁本体(6、18、78、178、266、366)に接続可能であり、前記弁本体(6、18、78、178、266、366)を前記弁座(3、63、163、263、363)に対して回転可能であるようにするハンドル(14、74、174)を有することを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
前記ハンドル(14、74、174)が、骨セメントペースト(50、51)を受けるための空洞を有し、前記空洞が、液体透過的に前記少なくとも1つの第2の貫通部(8、21、68、168、268)に接続されていることを特徴とする請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記閉じたヘッド側(4、64、164、264、364)の前記少なくとも1つの第1の貫通部(5、65、165、265、365)のすべての自由な開口部の和が、前記ヘッド側(4、64、164、264、364)の閉じた表面以下の大きさであり、かつ
前記シール面(7、67、167、267)の前記少なくとも1つの第2の貫通部(8、21、68、168、268)のすべての自由な開口部の和が、前記シール面(7、67、167、267)の閉じた表面以下の大きさである
ことを特徴とする請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の装置。
【請求項15】
前記弁座(3、63、163、263、363)が内側に内ねじ部(20、80、180)を有し、前記弁本体(6、18、78、178、266、366)が外側に一致する外ねじ部(22、82、182)を有し、前記弁本体(6、18、78、178、266、366)が前記弁座(3、63、163、263、363)に螺合されることが可能であることを特徴とする請求項1から請求項14のいずれか1項に記載の装置。
【請求項16】
前記注型型が、空洞を有する槽状の型(1、61、161、361)とパンチ(2、62、162、362)とを有し、
前記パンチ(2、62、162、362)が前記槽状の型(1、61、161、361)の前記空洞内に挿入可能であるか又は挿入されており、前記パンチ(2、62、162、362)が前記空洞内で軸方向に変位可能であることを特徴とする請求項1から請求項15のいずれか1項に記載の装置。
【請求項17】
前記槽状の型(1、61、161、361)が空洞底部(32、92、192、392)を有し、前記空洞底部(32、92、192、392)が前記膝スペーサ部材(110、210、410)の1つ以上の関節摺動面(112、212)の輪郭を形成することを特徴とする請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記弁座(3、63、163、263、363)が前記パンチ(2、62、162、362)内に配置され、又は、前記膝スペーサ部材(110、210、410)のステムを形成する前記パンチ(2、62、162、362)の一部の端部に配置されることを特徴とする請求項16又は請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記領域的に閉じたヘッド側(4、64、164、264、364)の前記少なくとも1つの第1の貫通部(5、65、165、265、365)が、前記シール面(7、67、167、267)の前記少なくとも1つの第2の貫通部(8、21、68、168、268)と同じサイズ及び形状を有すること、並びに/又は
前記領域的に閉じたヘッド側(4、64、164、264、364)の前記少なくとも1つの第1の貫通部(5、65、165、265、365)が2つの第1の貫通部(5、65、165、265、365)であり、前記シール面(7、67、167、267)の前記少なくとも1つの第2の貫通部(8、21、68、168、268)が2つの第2の貫通部(8、21、68、168、268)であることを特徴とする請求項1から請求項18のいずれか1項に記載の装置。
【請求項20】
前記2つの第1の貫通部(5、65、165、265、365)が、前記弁座(3、63、163、263、363)内に、前記弁本体(6、18、78、178、266、366)の回転軸に関して対向して配置された四分円として配置され、前記2つの第2の貫通部(8、21、68、168、268)が、前記シール面(7、67、167、267)内に、前記弁本体(6、18、78、178、266、366)の回転軸に関して対向して配置された四分円として配置されることを特徴とする請求項19に記載の装置。
【請求項21】
カラーが前記弁本体(6、18、78、178、266、366)の前記シール面(7、67、167、267)に配置され、このカラーが前記弁座(3、63、163、263、363)の縁部に接触しているか、又はカラーが前記弁座(3、63、163、263、363)の前記領域的に閉じたヘッド側(4、64、164、264、364)に配置され、このカラーが前記弁本体(6、18、78、178、266、366)の縁部に接触していることを特徴とする請求項1から請求項20のいずれか1項に記載の装置。
【請求項22】
ハンドグリップ(16、38、76、176、298)が前記弁本体(6、18、78、178、266、366)に固定されているか又は固定可能であり、前記ハンドグリップが、前記弁本体(6、18、78、178、266、366)の回転軸に関して少なくとも1つの半径方向の範囲を有することを特徴とする請求項1から請求項21のいずれか1項に記載の装置。
【請求項23】
前記ハンドグリップ(16、38、76、176、298)が、前記シール面から前記弁本体の反対側に固定されているか又は固定可能であり、前記弁本体(6、18、78、178、266、366)が、前記弁座(3、63、163、263、363)に対して最大90°回転可能であることを特徴とする請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記弁本体(6、18、78、178、266、366)及び前記弁座(3、63、163、263、363)がプラスチック、又は熱可塑性プラスチックから作製されていることを特徴とする請求項1から請求項23のいずれか1項に記載の装置。
【請求項25】
前記弁座(3、63、163、263、363)が前記注型型と一体に形成されていることを特徴とする請求項24に記載の装置。
【請求項26】
ラッチ要素が前記弁本体(6、18、78、178、266、366)の前記シール面に配置され、嵌合ラッチ要素が前記弁座(3、63、163、263、363)の前記ヘッド側(4、64、164、264、364)に配置され、前記ラッチ要素が前記嵌合ラッチ要素と係合可能であり、前記ラッチ要素が、前記弁本体(6、18、78、178、266、366)を前記弁座(3、63、163、263、363)に最大限に入れられるか螺合されるときに、前記弁座(3、63、163、263、363)からの前記弁本体(6、18、78、178、266、366)の回転又は螺合解除が最大90°の回転角度に制限されるように、前記弁本体(6、18、78、178、266、366)上に配置されることを特徴とする請求項1から請求項25のいずれか1項に記載の装置。
【請求項27】
前記注型型が2つの部分又は複数の部分からなり、組み立てられた前記注型型の少なくとも2つの部品の間には、前記注型型の内部から空気又はガスが逃げることができる間隙が存在することを特徴とする請求項1から請求項26のいずれか1項に記載の装置。
【請求項28】
前記装置が収集容器を有し、前記弁が、前記注型型から離れた側で、前記注型型から前記開位置にある前記弁を介して出てくる余剰の骨セメントペースト(50、51)を受けるための前記収集容器に接続されているか若しくは接続可能であるか、又は前記弁が前記収集容器と一体的に形成されていることを特徴とする請求項1から請求項27のいずれか1項に記載の装置。
【請求項29】
膝関節の関節面を含む膝関節の一部を一時的に置換するため膝スペーサ部材(110、210、410)を製造する方法であって、前記方法は請求項1から請求項28のいずれか1項に記載の装置を用いて行われ、前記方法は、以下の時系列的な
A)骨セメントカートリッジ(10)を前記装置に液密に接続する工程と、
B)骨セメントペースト(50、51)を、前記開位置にある前記弁を通して前記骨セメントカートリッジ(10)から前記注型型に注入する工程と、
C)前記弁本体(6、18、78、178、266、366)を前記弁座(3、63、163、263、363)に対して回転させ、前記弁を前記閉位置に移動させ、前記弁座(3、63、163、263、363)に対する前記弁本体(6、18、78、178、266、366)の回転によって、前記弁座(3、63、163、263、363)の前記領域的に閉じたヘッド側(4、64、164、264、364)の前記少なくとも1つの第1の貫通部(5、65、165、265、365)で前記骨セメントペースト(50、51)を剪断する工程と、
D)前記骨セメントカートリッジ(10)を前記注型型から取り外す工程と、
E)前記注型型内で前記骨セメントペースト(50、51)を硬化させる工程と、
F)結果として成形され、硬化した膝スペーサ部材(110、210、410)を前記注型型から取り出す工程と
を備える方法。
【請求項30】
工程D)の後で工程E)の前に、以下の中間工程:
D2)新しい骨セメントカートリッジ(10)を前記装置に液密に接続する工程であって、骨セメントペースト(50、51)又は前記骨セメントペースト(50、51)を製造するための出発成分が前記新しい骨セメントカートリッジ(10)内に存在する工程、
D3)前記弁本体(6、18、78、178、266、366)を前記弁座(3、63、163、263、363)に対して回転させて、前記弁を前記開位置に移動させる工程、
D4)骨セメントペースト(50、51)を前記新しい骨セメントカートリッジ(10)から前記開位置にある前記弁を通って前記注型型に注入する工程、
D5)前記弁本体(6、18、78、178、266、366)を前記弁座(3、63、163、263、363)に対して回転させ、前記弁を前記閉位置に移動させ、前記弁座(3、63、163、263、363)に対する前記弁本体(6、18、78、178、266、366)の回転によって、前記弁座(3、63、163、263、363)の前記領域的に閉じたヘッド側(4、64、164、264、364)の前記少なくとも1つの第1の貫通部(5、65、165、265、365)で前記骨セメントペースト(50、51)を剪断する工程、及び
D6)前記新しい骨セメントカートリッジ(10)を前記注型型から取り外す工程
が進行することを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項31】
工程D2)~D6)が、前記注型型が骨セメントペースト(50、51)で完全に又は必要に応じて充填されるまで、いずれの場合も骨セメントペースト(50、51)又はその出発成分を含む新しい骨セメントカートリッジ(10)を用いて、1回又は複数回繰り返されることを特徴とする請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記骨セメントカートリッジ(10)及び/若しくは前記新しい骨セメントカートリッジ(10)の液密接続のために、前記骨セメントカートリッジ(10)若しくは前記新しい骨セメントカートリッジ(10)が、前記装置の前記弁本体(6、18、78、178、266、366)上のポート(11、271)に接続され、前記骨セメントカートリッジ(10)若しくは前記新しい骨セメントカートリッジ(10)が前記ポート(11、271)に回転されるか、若しくは前記ポート(11、271)に螺合され、前記ポート(11、271)から前記骨セメントカートリッジ(10)及び/若しくは前記新しい骨セメントカートリッジ(10)を取り外すために、前記骨セメントカートリッジ(10)若しくは前記新しい骨セメントカートリッジ(10)が前記ポート(11、271)から回転されるか、若しくは前記ポート(11、271)から螺合解除され、かつ/又は
前記骨セメントカートリッジ(10)若しくは前記新しい骨セメントカートリッジ(10)からの前記骨セメントペースト(50、51)の注入が、ピストン(46)を前記骨セメントカートリッジ(10)の内部に押し込むことによって進行する
ことを特徴とする
請求項30又は請求項3
1に記載の方法。
【請求項33】
前記注型型が、槽状の型(1、61、161、361)とパンチ(2、62、162、362)とを有し、工程E)の前に、前記パンチ(2、62、162、362)が前記槽状の型(1、61、161、361)に押しつけられ、その結果、前記膝スペーサ部材(110、210、410)が前記注型型内で前記骨セメントペースト(50、51)から成形されることを特徴とする請求項29から請求項32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記パンチ(2、62、162、362)が前記槽状の型(1、61、161、361)に押しつけられると、前記骨セメントペースト(50、51)の一部が、前記開位置にある前記弁を通って前記注型型から排出され、収集容器内に押しつけられる前記骨セメントペースト(50、51)の一部が、弁の少なくとも1つの第2の通路に関連する前記骨セメントペーストであることを特徴とする請求項33に記載の方法。
【請求項35】
膝関節の関節面を含む膝関節の一部を一時的に置換するための膝スペーサ部材(110、210、410)を製造する方法であって、前記方法は請求項1から請求項28のいずれか1項に記載の装置を用いて行われ、前記方法は、以下の時系列的な
A)骨セメントペースト(50、51)を製造する工程と、
B)混合された骨セメントペースト(50、51)を前記注型型に充填する工程と、
C)前記注型型を圧縮し、前記開位置にある前記弁を介して前記注型型から前記骨セメントペースト(50、51)の一部を排出する工程と、
D)前記弁本体(6、18、78、178、266、366)を前記弁座(3、63、163、263、363)に対して回転させ、前記弁を前記閉位置に移動させ、前記弁座(3、63、163、263、363)に対する前記弁本体(6、18、78、178、266、366)の回転によって、前記弁座(3、63、163、263、363)の前記領域的に閉じたヘッド側(4、64、164、264、364)の前記少なくとも1つの第1の貫通部(5、65、165、265、365)で前記骨セメントペースト(50、51)を剪断する工程と、
E)前記注型型内で前記骨セメントペースト(50、51)を硬化させる工程と、
F)結果として成形され、硬化した膝スペーサ部材(110、210、410)を前記注型型から取り出す工程と
を備える方法。
【請求項36】
工程B1):
前記注型型を前記弁以外は閉じる工程
が工程B)と工程C)との間に進行することを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記注型型が槽状の型(1、61、161、361)とパンチ(2、62、162、362)とを有し、工程C)で、前記パンチ(2、62、162、362)が前記槽状の型(1、61、161、361)に押しつけられ、その結果、前記膝スペーサ部材(110、210、410)が前記注型型内で前記骨セメントペースト(50、51)から成形されることを特徴とする請求項35又は請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記パンチ(2、62、162、362)が前記槽状の型(1、61、161、361)に押しつけられると、前記骨セメントペースト(50、51)の一部が前記開位置にある前記弁を通って前記注型型から排出されることを特徴とする請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記骨セメントペースト(50、51)が、工程B)の前に、モノマー液体及びセメント粉末から骨セメントカートリッジ(10)内で混合されることを特徴とする請求項29から請求項38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
工程D3)の前に又は工程D2)の前に、前記骨セメントペースト(50、51)が、モノマー液体及びセメント粉末から新しい骨セメントカートリッジ(10)内で混合されることを特徴とする請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記弁本体(6、18、78、178、266、366)を前記弁座(3、63、163、263、363)に螺合することによって、又は前記弁本体(6、18、78、178、266、366)を前記弁座(3、63、163、263、363)に対して手動で回転させることによって、前記弁本体(6、18、78、178、266、366)が前記弁座(3、63、163、263、363)に対して回転することを特徴とする請求項29から請求項40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
手動回転は、前記弁本体(6、18、78、178、266、366)上のハンドグリップ(16、38、76、176、298)の操作によって進行することを特徴とする請求項41に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨セメントペーストを硬化させることにより膝スペーサの膝スペーサ部材(構成要素)、すなわち大腿骨部材又は脛骨部材を製造するための装置に関する。膝スペーサ又は脛骨部材及び大腿骨部材は、膝関節の関節面を含む膝関節又は膝関節の一部を一時的に置換するための医療用途における一時的な代替物として提供される。好ましくは、脛骨部材及び大腿骨部材は、膝関節を一時的に置換するために好適であり、そのために提供される。本発明はまた、このような装置を用いて、膝スペーサ部材、すなわち大腿骨部材又は脛骨部材を製造する方法にも関する。従って、本発明は、膝スペーサの膝スペーサ部材を製造するための装置及び方法を提供する。この装置は、膝スペーサの挿入前、すなわち実際の手術の前に、手術担当者による膝スペーサ部材の製作を意図している。用語「膝スペーサ部材」は、関節の動きをする膝スペーサの脛骨部材及び大腿骨部材を意味するものとされる。
【背景技術】
【0002】
膝関節エンドプロテーゼは世界中で数多く埋め込まれている。残念なことに、ごく一部の症例では、膝関節エンドプロテーゼは、微生物、特にグラム陽性細菌及びグラム陰性細菌、さらにはごくわずかな程度では酵母及び真菌によってコロニー形成される。これらの微生物は、主に黄色ブドウ球菌(スタフィロコックス・アウレウス、Staphylococcus aureus)や表皮ブドウ球菌(スタフィロコッカス・エピデルミデス、Staphylococcus epidermidis)等の代表的な皮膚微生物は、外科手術(OP)中に患者の体内に侵入することがある。また、微生物が関節エンドプロテーゼに血行により侵入することもある。関節エンドプロテーゼが微生物によってコロニー形成されると、周囲の骨及び軟部組織もまた微生物によって感染し、損傷を受ける。
【0003】
先行技術は、主に、感染した関節エンドプロテーゼに対する2つの処置方法、一期的感染部位再置換及び二期的感染部位再置換を包含している。一期的再置換の場合、まず感染した関節エンドプロテーゼは取り除かれ、次に根治的なデブリードマンが行われ、次いで一回のOP内で再置換関節エンドプロテーゼが埋め込まれる。
【0004】
二期的感染部位再置換では、最初のOPで感染した膝関節エンドプロテーゼが最初に取り除かれ、次にデブリードマンが行われ、その後膝スペーサが埋め込まれる。膝スペーサは、脛骨部材と大腿骨部材とを有し、基本的には膝関節エンドプロテーゼの形状とサイズを複製している。脛骨部材はステムと脛骨プラトーを有し、この脛骨プラトーは膝関節の摺動面又は転動面を形成し、ステムは脛骨に固定可能である。大腿骨部材は、大腿骨に固定するためのステムと、脛骨プラトー上で転動するための2つの顆状突起(関節丘)とを有する。脛骨部材及び大腿骨部材は、それぞれの骨に骨セメントで固定され、すなわち、例えば、大腿骨部材の場合には大腿骨遠位部又は大腿骨管内に固定され、脛骨部材の場合にはステムが脛骨近位部又は脛骨管内に固定される。膝スペーサは、炎症がおさまって臨床的な炎症マーカーが後退するまで、数週間まで患者に留置される。その後、2回目のOPで膝スペーサが取り除かれ、新たなデブリードマンの後に再置換膝関節エンドプロテーゼが埋め込まれる。
【0005】
膝スペーサ部材の場合、実際に膝スペーサを製造する前に、抗生物質がセメント粉末に添加される。この抗生物質で変性された骨セメント粉末を使用して、次にモノマー液体を混合して骨セメントペーストが製造され、この骨セメントペーストから膝スペーサ部材が成型され、このスペーサは、次いでセメント粉末に添加されたモノマー液体を用いた重合により硬化される。このようにして、骨セメントペーストは抗生物質を実質的に組み込む。表面に近い領域に位置する抗生物質粒子は、創傷分泌物等の体液の作用下で放出される。活性成分の放出は開始時に最大で、その後数日の間に減少する。
【0006】
国際公開第2016/205077A1号パンフレット及び米国特許第8900322B2号明細書には、灌注機能を有する膝スペーサが記載されている。抗生物質を備えた膝スペーサを使用することはさらに公知である。膝スペーサは、例えば特許独国特許第10 2015 104 704B4号明細書、米国特許第7789646B2号明細書、米国特許第8801983B2号明細書又は欧州特許第2 617 393B1号明細書に記載されているように、PMMA骨セメント粉末、抗生物質及びモノマー液体を用いて、例えばスペーサ型を用いて製造することができる。他方、骨セメントから工業的に既製の膝スペーサを使用することも従来から行われている。
【0007】
特許欧州特許第2 931 180B1号明細書は、抗生物質の放出に好適な膝スペーサの脛骨部材を製造するためのセメント型を開示している。特許欧州特許第3 143 963B1号明細書は、脛骨スペーサ型、大腿骨スペーサ型、及び髄内管を充填する部材を製造するための第3の型を有する3部構成のスペーサ型を開示している。
【0008】
米国特許第10071511B2号明細書は、膝スペーサの脛骨部材を製造するための注型型を開示している。異なる高さの脛骨部材が、これらの注型型を用いて作製されうる。この注型型は、ポリメタクリル酸メチル骨セメントペーストがポートを介して注入されてもよい空洞を形成する下部部分と上部部分とから構成されている。注型される脛骨部材の高さは、注型型の下部部分と上部部分との間の距離を設定する歯を有するラッチ機構によって規定される。
【0009】
同様の概念は、膝スペーサのための型を請求する米国特許第9433506B2号明細書から公知である。この明細書の注型型は、脱型後、髄内空間にステムとして存在するポートを含む。注型型は、セメントカートリッジの助けを借りてこのポートを介して充填される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】国際公開第2016/205077A1号パンフレット
【文献】米国特許第8900322B2号明細書
【文献】独国特許第10 2015 104 704B4号明細書
【文献】米国特許第7789646B2号明細書
【文献】米国特許第8801983B2号明細書
【文献】欧州特許第2 617 393B1号明細書
【文献】欧州特許第2 931 180B1号明細書
【文献】欧州特許第3 143 963B1号明細書
【文献】米国特許第10071511B2号明細書
【文献】米国特許第9433506B2号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、先行技術の欠点を克服することが本発明の目的である。特に、本発明の目的は、骨セメントペーストを硬化させることにより膝スペーサの膝スペーサ部材を製造するための安価な装置を開発することであり、骨セメントペーストを硬化させることにより膝スペーサの膝スペーサ部材を製造するための安価な装置を開発することであり、骨セメントペースト、特にポリメタクリル酸メチル骨セメントを使用して手術室で医療従事者によって一部構成の膝スペーサ部材、すなわち脛骨部材及び大腿骨部材を製造することができる、骨セメントペーストを硬化させることにより膝スペーサの膝スペーサ部材を製造するために、簡単にかつ安価に実施することができる方法を開発することである。脛骨部材及び大腿骨部材は、構造が類似している。それらは、ステムとヘッド又はプラトーとから構成される。
【0012】
本発明のさらなる目的は、骨セメントペースト、特にポリメタクリル酸メチル骨セメントペースト(PMMA骨セメントペースト)を使用して、医療従事者が術中に膝スペーサ部材を製造することができる装置を開発することである。開発される装置の基本構造は、原則として膝スペーサの脛骨部材と大腿骨部材とについては同一であるべきである。それゆえ、この装置は、脛骨部材を製造するための第1の変形例においても、膝スペーサの大腿骨部材を製造するための第2の変形例においても適しているべきである。正常粘度及び高粘度の両方のポリメタクリル酸メチル骨セメントペーストを使用して、膝スペーサの膝スペーサ部材を製造することが可能であることが意図されている。
【0013】
高粘度の骨セメントペーストを注型型に完全に充填するためには、高い射出圧力が必要である。それゆえ、開発される装置は、(ポリメタクリル酸メチル)骨セメントペーストを骨セメントカートリッジから装置内に注入することができるようなものであるべきである。高粘度でない骨セメントペーストを使用する場合には、注型型が充填された後、スプルーから骨セメントペーストが流出しないようにする必要がある。この目的のためには、注型型と骨セメントカートリッジとを分離する際に、より低粘度の骨セメントペーストが注型型から流出するのを確実に防ぐために、注型型を構成する必要がある。このような閉鎖は、注型型の壁に複雑な構造のバルブ用の開口部を設けることなく可能であるべきである。注型型の壁に開口部があると、骨セメントペーストが高圧で注型型内に注入された場合に、注型型内に漏れが生じる可能性がある。さらには、注型型のスプルー領域は、一方では骨セメントペーストを注型型に容易に充填することができ、他方では骨セメントペーストの硬化が完了した後にスプルー残渣を容易に除去することができるように構成されるべきである。
【0014】
さらには、装置の一構成において、適切な混合ボウル内で手動で混合される(ポリメタクリル酸メチル)骨セメントペーストを使用して、骨セメントカートリッジを使用せずに膝スペーサ部材を製造することも可能であるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の目的は、骨セメントペーストを硬化させることにより膝スペーサ部材を製造するための装置であって、この膝スペーサ部材は、膝関節の関節面を含む膝関節の一部を一時的に置換するために医療分野で提供され、この装置は、
骨セメントペーストから膝スペーサ部材を成形するための注型型と、
上記注型型に接続された弁座であって、この弁座は、少なくとも1つの第1の貫通部(フィードスルー)を有する領域的に又は一部で閉じたヘッド側を有し、上記少なくとも1つの第1の貫通部は、上記注型型に開口している弁座と、
上記弁座に対して回転可能であるように装着され、シール面を有する弁本体であって、上記シール面は、上記弁座の上記領域的に閉じたヘッド側の方向に向けられており、少なくとも1つの第2の貫通部が、このシール面内に配置されている弁本体と
を有し、
上記弁座及び弁本体は一緒になって弁を形成し、この弁は、弁座に対する弁本体の回転によって開位置及び閉位置に可逆的に移動可能であり、弁の開位置において、弁座の少なくとも1つの第1の貫通部及び弁本体の少なくとも1つの第2の貫通部が、少なくとも一部で互いに重なり合って(互いに上方に)位置し、骨セメントペーストにとって透過性である、弁を介した接続を提供し、上記弁の閉位置において、上記弁座の少なくとも1つの第1の貫通部は上記弁本体のシール面によって覆われており、上記弁の閉位置において、上記注型型は骨セメントペーストのために液密に閉じられている装置によって達成される。
【0016】
液密とは、硬化していない、すなわち流動性のある骨セメントペーストが、好ましくは骨セメントの出発成分としての液体のモノマー液体も、ポートの接続部から流出したり、ポートの接続部を通り抜けたりすることができないことを意味する。
【0017】
骨セメントペーストについて覆われているとは、弁内の骨セメントペーストが、硬化前に弁を通って流れることができない程度に流動することが防止されていることを意味する。通常の粘度の骨セメントペーストについては、骨セメントペーストが弁内を一直線に流れることができず、自由通路の断面積が1mm未満であればこの目的のために十分である。骨セメントペーストは、「ペースト」という用語で示されるように、粘り気のある又は高粘性の流体である。骨セメントペーストの粘度は、少なくとも10Pa・sに達し、これは実質的に液体蜂蜜の粘度と同等である。加えて、骨セメントペーストは数分以内に硬化し、これは、そうなると通過がもはや不可能であることを意味する。好ましくは、骨セメントペーストが少なくとも10Pa・sの粘度を有するように構成されていてもよい。
【0018】
骨セメントペースト又は流動性のある骨セメントペーストとは、高粘度の粘稠度を有する混合された(即ち、すぐに使用できる)骨セメントペーストを意味するものと理解される。好ましくは、骨セメントの粘度は、蜂蜜の粘度に相当するか、又はそれよりもはるかに高い。流動性のある骨セメント及び骨セメントペーストという用語は、同義に使用される。
【0019】
上記注型型は、好ましくは内部が中空である。
【0020】
シール面が、少なくとも1つの第2の貫通部以外では閉じているように構成されていてもよい。
【0021】
好ましくは、上記注型型が、脛骨プラトー又は顆状突起(関節丘)の負の形状(反転形状)を複製する内部を有するように構成されていてもよい。
【0022】
また、弁座が、液体不透過的に注型型の注型型壁に接続されるように構成されていてもよい。
【0023】
弁座が、注型型によって画定された空洞の一端面において、円盤、特に平面円盤として構成されるようにさらに構成されていてもよい。
【0024】
また、好ましくは、弁座及び弁本体が中空円筒状であるように構成されていてもよい。
【0025】
注型型が2つの部分又は複数の部分からなり、注型型の複数の部分は、好ましくは、互いに押し込むことが可能であるようにさらに構成されてもよい。上記注型型は、特に好ましくは2つの部分からなる。
【0026】
注型型は、高粘度の骨セメントペーストの使用をも可能にするために、10N/cm2の圧力に耐えることを意図している。
【0027】
本特許出願において、膝スペーサ又は膝スペーサ部材及び注型型に関する方向(「近位」、「遠位」及び「側方」)の記述、並びに平面に関する記述(「矢状平面」、「正面平面」及び「横平面」)は、患者に挿入されたときの主解剖学的方向又は身体平面として理解されるであろうものと同様に使用される。本明細書中で、「近位」とは、身体の中心に向かっての意味であり、「遠位」とは、身体の中心から離れての意味である。
【0028】
ステムは、骨へ(脛骨部材の場合には脛骨、大腿骨部材の場合には大腿骨へ)の接続のために提供され、この目的のために、好ましくは、準備された骨の近位端若しくは遠位端に、又は骨管内に導入されてもよい。
【0029】
好ましくは、膝スペーサの膝スペーサ部材を製造するための当該装置が、少なくとも1種の抗生物質及び/又は抗真菌活性成分を付与するのに適しているように構成されていてもよい。
【0030】
膝スペーサ部材は、好ましくは、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等の生体適合性骨セメントペーストから一体的に作製されるべきであり、このPMMAは、特に好ましくは、PMMAから溶解可能な少なくとも1種の抗生物質及び/又は抗真菌剤を含む。
【0031】
好ましくは、弁座の領域的に閉じたヘッド側及び弁本体のシール面が円盤であるか、又は円盤状であるように構成されてもよい。
【0032】
好ましくは、弁座が注型型を画定するように構成されてもよい。
【0033】
弁座に対する弁又は弁本体の「開状態」及び「閉状態」という用語と、弁座に対する弁又は弁本体の「開位置」及び「閉位置」という用語は、同義に使用される。
【0034】
弁座が、注型型に対して回転不能に注型型に接続されるように構成され、好ましくは、弁座が、注型型に固定的に及び/若しくは剛性的に接続されるか、又は注型型と一体的に形成されるように構成されてもよい。
【0035】
このようにして、注型型に対する弁座のシール又は液密接続は、構造的に単純であり、従って安価な方法で達成されうる。
【0036】
弁が手動で操作可能であり、好ましくは当該装置の外部から手動で操作可能であり、弁本体は、特に好ましくは弁座に対して手動で回転可能であり、弁は、回転によって閉位置から開位置へ、及び開位置から閉位置へ移動可能であるようにさらに構成されてもよい。
【0037】
このようにして、骨セメントカートリッジを交換又は着脱するために、当該装置の弁は、外部から便利に操作することができる。
【0038】
弁の閉位置において、弁座の少なくとも1つの第1の貫通部が、弁本体のシール面で覆われており、弁座の領域的に閉じたヘッド側と弁本体のシール面は、好ましくは最大2mm、特に好ましくは最大1mm、さらに特に好ましくは最大0.5mmの間隔で互いに離間しているようにさらに構成されてもよい。
【0039】
このようにして、注型型内に充填された骨セメントペースト(流動性のある骨セメント)が、弁が閉じているときに弁を介して注型型から再び排出されることができないことを確実にすることができる。骨セメントペーストがスプルーの領域でこのような厚さ又は断面を持って硬化した場合、スペーサが硬化した後、その骨セメントは容易に手動で破断又は切断することができ、鋸で分離する必要はない。このような厚さのスプルーは、OP中のOP手順を大幅に遅らせることがないため、それゆえ無害である。
【0040】
本発明の好ましいさらなる発展によれば、弁本体が、弁座に対して回転軸の周りに回転可能であるように装着され、この回転軸は、弁本体のシール面に対して垂直に延びるか、又はこの回転軸は、弁本体のシール面の回転対称軸に沿って延びるように構成されてもよい。
【0041】
その結果、弁を通って流れる骨セメントペーストは、回転によって弁本体から切断されたり、ねじ切られたりすることができる。これにより、滑らかな切断面が得られ、剪断時の力の印加は少なくなる。骨セメントカートリッジの回転は、さらに、骨セメントペーストの剪断にも使用されてよい。回転軸は、弁本体のシール面の回転対称軸に沿って延びることが好ましい。回転軸が弁本体のシール面に対して垂直に延びる場合、弁は、(例えば、ビール用の)タップのように構成されてもよい。
【0042】
また、弁本体が、骨セメントカートリッジ又は装置のハンドルの液密接続のためのポートを有するか、又はそのようなポートに強固に接続されているように構成されてもよい。
【0043】
弁本体が、骨セメントカートリッジの液密接続のためのポートを有するか、又はそのようなポートに強固に接続されているようにさらに構成されてもよい。
【0044】
このようにして、弁本体は、接続された骨セメントカートリッジの助けを借りて、又はハンドルを用いて操作することができる。
【0045】
ここで、当該装置が、骨セメントカートリッジに接続されているか又は接続可能なアダプタ要素を有し、このアダプタ要素は、骨セメントカートリッジの内部が、アダプタ要素を介して少なくとも1つの第2の貫通部に、骨セメントペーストについて透過的に接続されているか又は接続可能であるように、ポートに着脱可能にかつ係合可能に接続されているか又は接続可能であるように構成されてもよい。
【0046】
これにより、骨セメントペーストを、開位置にある弁を介して骨セメントカートリッジから注型型内に直接的に充填することができるということが保証される。
【0047】
ポートが、骨セメントカートリッジ又はハンドルの液密接続のために、弁本体内の内ねじ部又は弁本体上の外ねじ部を含み、骨セメントカートリッジのアダプタ要素若しくは骨セメントカートリッジに接するアダプタ要素は、好ましくは、この内ねじ部若しくは外ねじ部と一致する嵌合ねじ部を有るか、又は当該装置のハンドルが、上記内ねじ部若しくは外ねじ部と一致する嵌合ねじ部を有するようにさらに構成されてもよい。
【0048】
このようにして、一方で、ポートへの安定した液密接続が得られる可能性があり、他方では、開始時の螺合動作中又は螺合動作の終了後の回転を利用して、弁本体を弁座に対して回転させ、弁を開状態から閉状態に移動させたり、弁を閉状態から開状態に移動させたりすることができる。
【0049】
適切なねじ部を使用することで、弁が閉じている状態でのみ骨セメントカートリッジ又はハンドルを取り外すことができ、骨セメントカートリッジ又はハンドルが接続されている状態でのみ弁を開くことができることによって、特に、当該装置の追加の安全機能を達成することができる。
【0050】
上記弁本体の内ねじ部若しくは弁本体上の外ねじ部が右ねじ部であり、弁が弁本体の同方向の右方向への回転によって閉位置から開位置に移動可能であり、弁が弁本体の異方向の左方向への回転によって開位置から閉位置に移動可能であるように構成されてもよく、又は
上記弁本体の内ねじ部若しくは弁本体上の外ねじ部が左ねじ部であり、弁が弁本体の同方向の左方向への回転によって閉位置から開位置に移動可能であり、弁が弁本体の異方向の右方向への回転によって開位置から閉位置に移動可能であるように構成されてもよく、又は
上記弁座の内ねじ部、並びに弁本体の内ねじ部及び外ねじ部がすべて左ねじ部、若しくはすべて右ねじ部であり、上記ポートへの骨セメントカートリッジの液密接続のためのアダプタ要素の外ねじ部若しくはハンドルの外ねじ部も好ましくは同じ回転方向を有するように構成されてもよい。
【0051】
これらの手段の目的は、骨セメントカートリッジ又はハンドルが螺合されていないときに弁が自動的に閉じ、骨セメントカートリッジ又はハンドルが螺合されているときに弁が自動的に開くことを確実にすることでもある。
【0052】
また、弁本体が、弁座に対して回転軸の周りに回転可能であるように装着され、この回転軸は少なくとも1つの第1の貫通部の方向に配向しているように構成されてもよい。
【0053】
弁本体が、弁座に対して最大280°、好ましくは最大180°、特に好ましくは弁座に対して最大100°、さらに特に好ましくは弁座に対して最大90°の角度で回転可能であるようにさらに構成されてもよい。
【0054】
好ましくは、2つの貫通部が、弁座及び弁本体のそれぞれに配置され、この2つの貫通部は、好ましくは、弁座及び弁本体の円盤の中心点の周りに180°オフセットして配置され、この円盤は、弁座の領域的に閉じたヘッド側及び弁本体のシール面を形成してもよい。
【0055】
当該装置が、骨セメントカートリッジであって、骨セメント出発成分を混合し、混合された骨セメントペーストをその骨セメントカートリッジから送達するための骨セメントカートリッジを有し、好ましくは、骨セメントカートリッジであって、ポリメタクリル酸メチル骨セメント出発成分を混合し、混合されたポリメタクリル酸メチル骨セメントペーストをその骨セメントカートリッジから送達するための骨セメントカートリッジを有し、この骨セメントカートリッジは、特に好ましくは、骨セメントペーストを製造するための骨セメント出発成分を相互に分離した領域に含むようにさらに構成されてもよい。
【0056】
このようにして、当該装置は、その後、膝スペーサの膝スペーサ部材を形成するための注型型に充填される骨セメントペーストを提供することもできるので、当該装置はさらに完成される。
【0057】
骨セメントカートリッジに代わるものとして、当該装置が、モノマー液体を含むモノマー液体容器と、骨セメント粉末(好ましくはパッケージ化された骨セメント粉末)と、このモノマー液体及び骨セメント粉末から骨セメントペーストを手動で調製して混合するための混合カップとを有し、さらに特に好ましくは、当該装置は、混合用ヘラを有するように構成されてもよい。
【0058】
また、当該装置が、弁本体に接続可能であり、弁本体を弁座に対して回転可能であるようにするハンドルを有し、このハンドルは、好ましくは、骨セメントペーストを受けるための空洞を有し、この空洞は、液体透過的に少なくとも1つの第2の貫通部に接続されているように構成されてもよい。
【0059】
その結果、上記弁は、ハンドルの助けを借りて、閉状態から開状態に手動で移動されてもよい。
【0060】
また好ましくは、閉じたヘッド側の少なくとも1つの第1の貫通部のすべての自由な開口部の和が、ヘッド側の閉じた表面以下の大きさであるように、かつ、シール面の少なくとも1つの第2の貫通部のすべての自由な開口部の和が、シール面の閉じた表面以下の大きさであるように構成されてもよい。
【0061】
これにより、弁本体が弁座に対して回転することにより、弁を安定して骨セメントペーストに対して不透過的に閉じることができることが確実になる。
【0062】
また、弁座が内側に内ねじ部を有し、弁本体が外側に一致する外ねじ部を有し、弁本体が弁座に螺合されることが可能であるように構成されてもよい。
【0063】
この手段により、弁本体と弁座の間の接続部で良好なシール効果を得ることができる。加えて、このようにして弁を簡単かつ安価に組み立てることができる。
【0064】
注型型が、空洞を有する槽(トラフ)状の型とパンチとを有し、このパンチが槽状の型の空洞内に挿入可能であるか又は挿入されており、パンチが空洞内で軸方向に変位可能であり、上記槽状の型が好ましくは空洞底部を有し、この空洞底部が膝スペーサ部材の1つ以上の関節摺動面の輪郭を形成するようにさらに構成されてもよい。
【0065】
このようにして、パンチの助けを借りて注型型内の骨セメントペーストを押しつけることにより、膝スペーサ部材を成形することができる。さらに、これは、膝スペーサ部材の高さを変化させることも可能にする。
【0066】
本発明において、有利には、パンチの底面が凹状になるように構成されてもよい。このようにすれば、空気が注型型からパンチと型との間の間隙の方向に逃げることができる。
【0067】
本発明において、弁座がパンチ内に配置されるように、好ましくは、膝スペーサ部材のステムを形成するパンチの一部の端部に配置されるように構成されてもよい。
【0068】
その結果、任意の余剰の骨セメントペーストは、パンチの押し込み時にパンチによって注型型から排出されることができる。このようにして、膝スペーサ部材の高さを調整することができる。
【0069】
ステムやステム型は必要ない。また、膝スペーサ部材は、ステムを設けずに具現化されてもよい。ここでは、弁又はスプルー若しくはバリは、脛骨プラットフォームの一方の側の水平面上に直接配置されてもよい。
【0070】
また、好ましくは、領域的に閉じたヘッド側の少なくとも1つの第1の貫通部が、シール面の少なくとも1つの第2の貫通部と同じサイズ及び形状を有するように構成されてもよい。
【0071】
好ましくは、同様に、領域的に閉じたヘッド側の少なくとも1つの第1の貫通部が2つの第1の貫通部であり、シール面の少なくとも1つの第2の貫通部が2つの第2の貫通部であり、2つの第1の貫通部は、好ましくは、弁座内に、弁本体の回転軸に関して対向して配置された四分円として配置され、2つの第2の貫通部は、シール面内に、弁本体の回転軸に関して対向して配置された四分円として配置されるように構成されてもよい。
【0072】
これら2つの手段のため、高粘度の骨セメントペーストのために十分な流動面積を提供することができ、別の態様では弁の漏れにつながる可能性のある弁の一方的な負荷を回避することができる。
【0073】
本発明はまた、カラーが弁本体のシール面に配置され、このカラーが弁座の縁部に接触しているか、又はカラーが弁座の領域的に閉じたヘッド側に配置され、このカラーが弁本体の縁部に接触していることを提案する。
【0074】
このようにして、弁本体を弁座に安定して案内することができる。弁本体の所定のねじ部長さの場合、少なくとも1つの第2の貫通部の位置は、少なくとも1つの第1の貫通部に関してさらに正確に規定されてもよい。
【0075】
さらに、ハンドグリップが弁本体に固定されているか又は固定可能であり、このハンドグリップは、弁本体の回転軸に関して少なくとも1つの半径方向の範囲を有し、このハンドグリップは、好ましくは、シール面から弁本体の反対側に固定されているか又は固定可能であり、弁本体は、特に好ましくは、弁座に対して最大90°の角度で回転されてもよいように構成されてもよい。
【0076】
その結果、弁は外部から便利に手動で操作することができる。このハンドグリップを使用して、弁本体を弁の開位置から閉位置に回転させることができる。
【0077】
さらに、弁本体及び弁座がプラスチック、特に熱可塑性プラスチックから作製され、弁座は、好ましくは、注型型と一体に形成されるように構成されてもよい。
【0078】
このようにして、弁、ひいては当該装置は、安価に、衛生的な使い捨て製品として製造することができる。
【0079】
また、好ましくは、ラッチ要素が弁本体のシール面に配置され、嵌合ラッチ要素が弁座のヘッド側に配置され、このラッチ要素は嵌合ラッチ要素と係合可能であり、ラッチ要素は、弁本体を弁座に最大限に入れられるか螺合されるときに、弁座からの弁本体の回転又は螺合解除が最大90°の回転角度に制限されるように、弁本体上に配置されるように構成されてもよい。
【0080】
その結果、ラッチ(係止)状態において弁本体が弁座に対して90°を超えて回転しないことを確実にすることができる。その結果、弁本体が弁座からあまりに遠くまで螺合解除されて、これにより弁本体と弁座との間に過度に大きな間隙が生じ、弁も閉位置で骨セメントペーストに対して透過可能になるということを防止することができる。
【0081】
さらに、注型型が2つの部分又は複数の部分からなり、組み立てられた注型型の少なくとも2つの部品の間には、注型型の内部から空気又はガスが逃げることができる間隙が存在するように構成されてもよい。
【0082】
その結果、骨セメントペーストから製造された膝スペーサ部材の表面を損なうおそれのある巻き込まれた空気が注型型内に残留することが防止される。
【0083】
また、当該装置が収集容器を有し、上記弁が、注型型から離れた側で、注型型から開位置にある弁を介して出てくる余剰の骨セメントペーストを受けるための収集容器に接続されているか若しくは接続可能であるか、又は上記弁が収集容器と一体的に形成されているように構成されてもよい。
【0084】
このようにすれば、出てくる骨セメントペーストが手術室を汚したり、汚損したりすることを防止することができる。
【0085】
本発明の根底にある目的は、膝関節の関節面を含む膝関節の一部を一時的に置換するための膝スペーサ部材を製造する方法であって、この方法は、本発明に係る装置を用いて行われ、この方法は、以下の時系列的な
A)骨セメントカートリッジを上記装置に液密に接続する工程と、
B)骨セメントペーストを、開位置にある弁を通して骨セメントカートリッジから注型型に注入する工程と、
C)弁本体を弁座に対して回転させ、弁を閉位置に移動させ、弁座に対する弁本体の回転によって、弁座の領域的に閉じたヘッド側の少なくとも1つの第1の貫通部で骨セメントペーストを剪断する工程と、
D)骨セメントカートリッジを注型型から取り外す工程と、
E)注型型内で骨セメントペーストを硬化させる工程と、
F)結果として成形され、硬化した膝スペーサ部材を注型型から取り出す工程と
を備える方法によっても達成される。
【0086】
上記膝スペーサは、医療用途を意図している。本発明に係る方法は、患者への埋め込みを含むものではなく、単に膝スペーサの形成を含むにすぎない。工程F)の後、膝スペーサは、バリを切り落とし、平滑化し、サンディングし、洗浄し、研磨し、及び/又は所々粗面化することができる。
【0087】
成形されて硬化した膝スペーサを工程F)で注型型から取り出すために、工程E)の後に注型型を開くことができる。
【0088】
本発明によれば、注型型が槽状の型とパンチを有するように構成されてもよい。このようにして、膝スペーサ部材は、最大に滑らかで欠陥のない摺動面を得るために、パンチの圧力によって成形することができる。
【0089】
本発明において、好ましくは、膝スペーサ部材を成形するために、パンチが槽状の型に押しつけられるように構成されてもよい。この目的のために、特に好ましくは、工程B)の後、特に好ましくは工程C)の前に、パンチが槽状の型に押し込まれるように構成されてもよい。このようにして、骨セメントペーストの一部は、弁を通って注型型から再び排出されてもよい。
【0090】
工程D)の後で工程E)の前に、以下の中間工程:
D2)新しい骨セメントカートリッジを上記装置に液密に接続する工程であって、骨セメントペースト又は骨セメントペーストを製造するための出発成分がその新しい骨セメントカートリッジ内に存在する工程、
D3)弁本体を弁座に対して回転させて、弁を開位置に移動させる工程、
D4)骨セメントペーストを新しい骨セメントカートリッジから開位置にある弁を通って注型型に注入する工程、
D5)弁本体を弁座に対して回転させ、弁を閉位置に移動させ、弁座に対する弁本体の回転によって、弁座の領域的に閉じたヘッド側の少なくとも1つの第1の貫通部で骨セメントペーストを剪断する工程、及び
D6)新しい骨セメントカートリッジを注型型から取り外す工程
が進行するように構成されてもよく、
工程D2)~D6)は、好ましくは、注型型が骨セメントペーストで完全に又は必要に応じて充填されるまで、いずれの場合も骨セメントペースト又はその出発成分を含む新しい骨セメントカートリッジを用いて、1回又は複数回繰り返される。
【0091】
このようにして、大きな容積を有する注型型が、少量の骨セメントペーストを含む複数の骨セメントカートリッジを用いて充填されてもよい。これは、例えば、大容量の膝スペーサの製造に有利である。
【0092】
骨セメントカートリッジ及び/又は新しい骨セメントカートリッジの液密接続のために、さらに、上記カートリッジが、上記装置の弁本体上のポートに接続され、上記骨セメントカートリッジ若しくは新しい骨セメントカートリッジが上記ポートに回転されるか、若しくは上記ポートに螺合され、上記ポートから骨セメントカートリッジ及び/若しくは新しい骨セメントカートリッジを取り外すために、上記骨セメントカートリッジ若しくは新しい骨セメントカートリッジが上記ポートから回転されるか、若しくは上記ポートから螺合解除され、かつ/又は
螺合で固定されることに加えて、骨セメントカートリッジが、例えば、バヨネット閉鎖器で弁本体に接続されるように構成されてもよい。
【0093】
骨セメントカートリッジを弁本体に回転又は螺合することにより、弁本体と骨セメントカートリッジとの間に液密な接続を提供することができる。加えて、この回転は、弁本体も弁座に対して回転させるか、又はその回転を引き起こしてもよい。
【0094】
さらに、骨セメントカートリッジ又は新しい骨セメントカートリッジからの骨セメントペーストの注入が、ピストンを骨セメントカートリッジの内部に押し込むことによって進行するように構成されてもよい。
【0095】
このようにして、骨セメントペーストは、骨セメントカートリッジから、開放弁を通って注型型に直接注入することができる。
【0096】
また、弁座に対する弁本体の回転が、弁本体を弁座に螺合することによって、又は弁本体を弁座に対して手動で回転させることによって進行し、手動回転は、好ましくは、弁本体に接続されているハンドグリップの操作によって進行するように構成されてもよい。
【0097】
その結果、弁は使用者によって簡単に操作可能である。
【0098】
注型型が、槽状の型とパンチとを有し、工程E)の前に、パンチが槽状の型に押しつけら、その結果、膝スペーサ部材が注型型内で骨セメントペーストから成形され、好ましくは、パンチが槽状の型に押しつけられると、骨セメントペーストの一部が、開位置にある弁を通って注型型から排出され、特に好ましくは、収集容器内に押しつけられる骨セメントペーストの一部が、弁の少なくとも1つの第2の通路に関連する骨セメントペーストであるように構成されてもよい。
【0099】
このようにして、高さが可変の膝スペーサ部材を成形することができる。加えて、パンチを押しつけることにより、注型型の成形内面を骨セメントペーストで完全に濡れさせて、欠陥のない完全な膝スペーサ部材を得ることができる。
【0100】
これに関して、弁は、ここではもはや、骨セメントペーストが注型型に充填される際に通ったものと同じ弁である必要はないことに留意すべきである。骨セメントカートリッジを取り出す際には、弁本体を同時に取り出し、新しい弁本体の付いたハンドルを弁座に挿入して、注型型の弁座とハンドルの弁本体とが、注型型の弁座と骨セメントカートリッジの接続用の弁本体とから構成される弁に類似したものでありながらも新しい弁を形成するようにされてもよい。
【0101】
本発明の根底にある目的は、膝関節の関節面を含む膝関節の一部を一時的に置換するための膝スペーサ部材を製造する方法であって、この方法は、本発明に係る装置を用いて行われ、この方法は、以下の時系列的な
A)骨セメントペーストを製造する工程と、
B)混合された骨セメントペーストを注型型に充填する工程と、
C)注型型を圧縮し、開位置にある弁を介して注型型から骨セメントペーストの一部を排出する工程と、
D)弁本体を弁座に対して回転させ、弁を閉位置に移動させ、弁座に対する弁本体の回転によって、弁座の領域的に閉じたヘッド側の少なくとも1つの第1の貫通部で骨セメントペーストを剪断する工程と、
E)注型型内で骨セメントペーストを硬化させる工程と、
F)結果として成形され、硬化した膝スペーサ部材を注型型から取り出す工程と
を備える方法によってさらに達成される。
【0102】
上記膝スペーサは、医療用途を意図している。本発明に係る方法は、患者への埋め込みを含むものではなく、単に膝スペーサの形成を含むにすぎない。工程F)の後、膝スペーサは、バリを切り落とし、平滑化し、サンディングし、洗浄し、研磨し、及び/又は所々粗面化することができる。
【0103】
工程B1):
B1)注型型を弁以外は(弁を除き)閉じる工程
が工程B)と工程C)との間に進行するように構成されてもよい。
【0104】
これにより、骨セメントペーストは、弁を通ってのみ注型型から出てくることが可能であるということが保証される。
【0105】
注型型が槽状の型とパンチとを有し、工程c)で、パンチが槽状の型に押しつけられ、その結果、膝スペーサ部材が注型型内で骨セメントペーストから成形され、好ましくは、パンチが槽状の型に押しつけられると、骨セメントペーストの一部が開位置にある弁を通って注型型から排出されるようにさらに構成されてもよい。
【0106】
このようにして、高さが可変の膝スペーサ部材を成形することができる。加えて、パンチを押しつけることにより、注型型の成形内面を骨セメントペーストで完全に濡らすことができ、欠陥のない完全な膝スペーサ部材を得ることができる。
【0107】
また、骨セメントペーストが、工程B)の前に、モノマー液体及びセメント粉末から骨セメントカートリッジ内で混合され、任意に、工程D3)の前に、好ましくは工程D2)の前に、骨セメントペーストが、好ましくは、モノマー液体及びセメント粉末から新しい骨セメントカートリッジ内で混合されるように構成されてもよい。
【0108】
このようにして、混合されたばかりの骨セメントペーストを膝スペーサの製造に使用することができる。特にPMMA骨セメントペーストは、混合状態であればほとんど問題なく数分以上の期間保存することができる。加えて、それに応じて、抗生物質や抗真菌剤等の適切な治療用医薬活性物質は、膝スペーサを製造する直前に骨セメントペーストに混合してもよい。
【0109】
また、さらに、弁座に対する弁本体の回転が、弁本体を弁座に螺合することによって、又は弁本体を弁座に対して手動で回転させることによって進行し、手動回転は、好ましくは、弁本体上のハンドグリップの操作によって進行するように構成されてもよい。
【0110】
その結果、装置は簡単に操作可能である。
【0111】
本発明は、弁座の中で回転可能である弁本体によって、スプルー又はバリが弁本体によって剪断されるか又は大部分が剪断されることができる注型型を備えた装置を提供することが可能であり、同時に、骨セメントペーストが注型型内で圧力下に保持され続けることができ、その結果、骨セメントペーストを注型型の内部に押し付けることができると同時に骨セメントペーストが開口部を通って注型型からさらに逆流するのを防ぐ程度に注型型を閉じるか、又は少なくとも残りの流路を縮小させることが可能であるという驚くべき認識に基づくものである。また、この装置によれば、骨セメントペーストが充填開口部を通って注型型から逆流できることなく、複数の骨セメントカートリッジの内容物を連続して注型型に充填することが可能となる。このようにして、少量の骨セメントしか供給しない骨セメントカートリッジを用いても、大容量の膝スペーサ又は膝スペーサ部材を製造することが可能となる。同様に、膝スペーサ部材のパンチングを使用して、膝スペーサ部材の高さを調整すること、及び骨セメントペーストを注型型内の成形面に押し付けることも可能であり、余剰の骨セメントペーストは、開放弁を介して注型型から排出することができ、結果として生じるバリは、骨セメントペーストが硬化する前に、弁本体を用いて剪断されるか、又は大部分が剪断されることが可能である。
【0112】
骨セメントペースト、特に高粘度でない骨セメントペーストは、クロージャー弁又は閉鎖弁を通って注型型から流出することができない。骨セメントが流出することに起因して膝スペーサ又は膝スペーサ部材に欠陥が形成されることは、結果として防止される。さらには、本発明に係る手段は、骨セメントカートリッジ内に残された骨セメントペーストの残留物(スプルー)及び/又は注型型から排出された骨セメントペースト(バリ)があれば、それらが注型型内の骨セメントペーストから分離されることを確実にする。それゆえ、骨セメントペーストの硬化が完了すると、スプルーやバリを機械的に、例えば鋸で切断するなどして分離する必要はもはやなくなる。残った細い接続部があってもそれは簡単に破断又は切断することができる。これにより、OP担当者の時間と労力を節約することができる。
【0113】
膝スペーサ部材のスプルー又はバリは、弁座と弁本体との開口部によって形成される。弁の開位置から弁の閉位置へと弁本体を弁座に対して回転させると、注型型は骨セメントペーストに対して不透過的に閉鎖される。これは、弁座と弁本体と、すなわちスプルー/バリ形成部材によって形成されたスプルー/バリが同時に弁として機能するということを意味する。複雑な追加の弁は必要ない。
【0114】
弁本体は、弁本体のハンドグリップによって、弁座に対して手動で回転させてもよい。また、回転は、有利には、骨セメントカートリッジが螺合解除されるときに、弁本体が骨セメントカートリッジによって共回転されることによって進行してもよい。しかしながら、ここでは、閉鎖が信頼性の高いものになるように、及び弁本体を弁座から完全に螺合解除させることはできないように、限界停止が、弁座に対する弁本体の回転運動を制限することが必要である。
【0115】
注型型を充填するためには、使用者が背圧をかける必要がある。注型型には、膝スペーサ部材の所望の高さが注型型内に確立されるまで、骨セメントペーストを充填してもよい。ここで、骨セメントペーストがさらに注型型内に充填されると、注型型のパンチが注型型の槽状の型から排出される可能性がある。この目的のために、使用者はパンチを介して注型型に対して圧力を維持する必要がある。巻き込まれた空気は、パンチと槽状の型の間の間隙から逃げることができる。注型型内で膝スペーサ部材の所望の高さに達した後、使用者は、さらなる骨セメントペーストを注型型内へ押し込むこと簡単に停止することができる。
【0116】
あるいは、骨セメントペーストを注型型内に過剰に充填し、注型型内で膝スペーサ部材の所望の高さが達成されるまで骨セメントペーストを充填した後に注型型を圧縮することによって高さを調整してもよい。この目的のために、パンチを(例えば、ハンドルを用いて)槽状の型内に、膝スペーサ部材の所望の高さが確立されるような深さまで押し込んでもよい。流出する余剰の骨セメントペーストは、開状態の弁を通って流れ去ることができる。余剰の骨セメントペーストは、好ましくは収集容器内に受け取られる。この収集容器は、パンチ及び弁を操作するためのハンドル内に配置されてもよい。
【0117】
このようにして、膝スペーサ部材の高さを連続的に調整することができる。結果的に、本発明に係る装置及び本発明に係る方法では、膝スペーサ部材の高さを調整するために注型型上の高さ調整のラッチ手段又は固定手段は必要ない。
【0118】
また、注型型の部分は、互いに圧密に固定可能である必要はない。注型型の部分を一緒に固定したり、圧力を吸収したりするためのクリップ、ねじ、又は他の固定手段は必要ない。結果的に、これらの部品は手術室で紛失することがあり得なくなり、従って、手術の経過を混乱させることがあり得なくなる。
【0119】
本発明によれば、内ねじ部又は内ねじ部の一部が中空円筒状弁本体の内側に配置されることが好ましく、この内ねじ部は、骨セメントカートリッジのカートリッジヘッドの外ねじ部と螺合することによって可逆的に接続可能である。この装置を使用して、まず、セメント粉末をモノマー液体と混合することにより、ポリメタクリル酸メチル骨セメントペーストが骨セメントカートリッジ内で製造され、第2の工程で、骨セメントカートリッジが弁本体に螺合され、弁又は弁本体が開位置に回転され、第3の工程で、弁座、弁本体及び骨セメントカートリッジを伴う注型型のパンチが、槽状の型の底部から上方の所望の高さに達するまで、注型型の槽状の型内に押し込まれ、第4の工程で、ポリメタクリル酸メチル骨セメントペーストが、パンチの下方の所望の充填レベルに達するまで上記パンチの下方の注型型の空洞内に送達装置を用いて骨セメントカートリッジから押し出され、空気は槽状の型とパンチとの間の隙間を通って注型型の空洞から逃げ、第5の工程で、骨セメントカートリッジが弁本体から螺合解除され、弁又は弁本体が弁座に対して閉位置に回転され、これにより、注型型の空洞内のポリメタクリル酸メチル骨セメントペーストが弁本体内の余剰のポリメタクリル酸メチル骨セメントペーストから分離され、第6の工程で、ポリメタクリル酸メチル骨セメントペーストが硬化した後、パンチが槽状の型から引き抜かれ、膝スペーサ部材がパンチから取り外され、第7の工程で、膝スペーサ部材が注型型又は注型型の槽状の型から取り出されるようにして、膝スペーサ部材が製造されてもよい。
【0120】
時間と労力を節約するように、ここでの膝スペーサ部材は、機械的に分離されなければならない余剰のポリメタクリル酸メチル骨セメントのスプルー又はバリを含まない。
【0121】
第2の変形構成では、弁本体は中空円筒の形状をしており、その中空円筒の上にハンドグリップがシール面とは反対側の狭い側に配置されている。この装置は、第1の工程で、ポリメタクリル酸メチル骨セメント粉末及びモノマー液体が混合ボウル内で、又は骨セメントカートリッジ内ででも一緒に混合されて、均質なポリメタクリル酸メチル骨セメントペーストが形成され、第2の工程で、製造される膝スペーサ部材の体積に対して余剰の骨セメントペーストが注型型の槽状の型に注がれ、注入され、又はヘラで導入され、第3の工程で、弁座及び弁本体を伴う注型型のパンチが注型型の空洞内に入れられ、弁又は弁本体がハンドグリップの回転によって弁座に対して開位置に移動され、第4の工程で、ハンドグリップを使用して、注型型内の骨セメントペーストの所望の高さに達するまで、パンチが槽状の型の底部の方向に押し込まれ、余剰の骨セメントペーストが弁座及び弁本体(又は弁座内の少なくとも1つの第1の通路及び弁本体内の少なくとも1つの第2の通路)を通過し、第5の工程で、弁又は弁本体が弁座に対して閉位置に移動するように弁本体上のハンドグリップが回転され、これにより、弁本体内の余剰のポリメタクリル酸メチル骨セメントペーストが注型型の空洞内のポリメタクリル酸メチル骨セメントペーストから分離され、第7の工程で、ポリメタクリル酸メチル骨セメントペーストが注型型内で硬化し、第8の工程で、パンチが槽状の型から引き抜かれ、パンチが硬化した膝スペーサ部材から分離し、第9の工程で、膝スペーサ部材が注型型又は注型型の槽状の型から取り出されるように取り扱われる。
【0122】
時間と労力を節約するように、ここでの膝スペーサ部材は、面倒にも機械的に分離しなければならない余剰のポリメタクリル酸メチル骨セメントのバリを持たない。空気が弁座の方向に導かれ、弁座及び弁本体を通って注型型の空洞の外に出るように、パンチの底面が凹状であることがさらに有利である。
【0123】
上記装置を用いて製造された膝スペーサ又は膝スペーサ部材は、有利には、2種以上の微生物による感染、特に問題のある微生物による感染が存在する二期的感染部位再置換に関して使用されてもよい。
【0124】
本発明に係る例示的な装置は、
a)注型型の一部としての槽状の型であって、この槽状の型は空洞を有し、この空洞の底部は1つ以上の関節摺動面の輪郭を有する注型型と、
b)上記槽状の型の空洞内で軸方向に変位可能な注型型の一部としてのパンチであって、このパンチは、上記槽状の型の空洞の底部に面する上記パンチの底面をそのパンチの反対側の上面に液体透過的に接続する開口部を含むパンチと、
c)寸法的に安定した中空円筒状の弁座であって、
c1)この弁座は、上記パンチの開口部に回転不能に配置されており、
c2)上記弁座は、そのヘッド側で円盤の形態をとり、その中に上記パンチの底面をそのパンチの上面に液体透過的に接続する少なくとも1つの第1の貫通部が配置されており、この少なくとも1つの第1の貫通部の領域は、弁座の円盤領域の最大50パーセントを占めるのみであり、
c3)上記弁座は内側に内ねじ部を有する、弁座と、
d)寸法的に安定した中空円筒状の弁本体であって、
d1)この弁本体は、上記中空円筒の外側に外ねじ部を有し、この外ねじ部は、上記弁座の内ねじ部と螺合可能であり、
d2)上記弁本体が、上記槽状の型の空洞に面して円盤の形態をとるそのシール面に、上記少なくとも1つの第2の貫通部を有し、この少なくとも1つの第2の貫通部の領域は、弁本体の円盤領域の最大50パーセントを占めるのみであり、
d4)上記少なくとも1つの第2の貫通部は、上記弁座の少なくとも1つの第1の貫通部とほぼ同一のサイズ及び形状を有し、
d5)上記弁座に螺合されると、弁本体は、上記少なくとも1つの第2の貫通部が上記少なくとも1つの第1の貫通部の上方に位置し、注型型の内部から周囲への液体透過的な接続が生成されるように開位置に回転され、そして、少なくとも1つの第2の貫通部が、少なくとも1つの第1の貫通部と重ならないように、又は、少なくとも1つの第1の貫通部を覆わないように閉位置に回転可能である弁本体と
から構成されてもよく、
e)槽状の型の空洞内に導入されたポリメタクリル酸メチル骨セメントペーストがパンチの底面で画定され、余剰のポリメタクリル酸メチル骨セメントペーストが弁本体の空洞内に配置され、弁本体を閉位置に回転させることにより、この余剰のポリメタクリル酸メチル骨セメントペーストが注型型の空洞内のポリメタクリル酸メチル骨セメントペーストから分離されるか、又は剪断されるか若しくは大部分が剪断される。
【0125】
注型型の空洞への骨セメントペーストの注入が完了すると、弁本体は、上記弁本体の少なくとも1つの第2の貫通部が、上記寸法的に安定した弁座の少なくとも1つの第1の貫通部の上方にもはや位置していないか、又は上記寸法的に安定した弁座の少なくとも1つの第1の貫通部ともはや位置合わせされていないように、手動で回転させられる。このようにして、注型型の空洞は液体不透過的に閉鎖される。その結果、高粘度でない骨セメントペーストであっても、注型型から流出することができない。
【0126】
本発明に係る装置を用いて膝スペーサを製造するための本発明に係る例示的な方法は、以下の連続した工程:
a)注型型、及びこの注型型の槽状の型を準備する工程と、
b)均質な骨セメントペーストが形成されるまで骨セメントカートリッジ内で骨セメント粉末をモノマー液体と混合する工程と、
c)アダプタ要素を弁本体の内ねじ部に螺合することにより、骨セメントカートリッジを注型型又はこの注型型上の弁に液体透過的に接続する工程であって、上記弁本体は開位置に回転される工程と、
d)圧出装置の助けを借りて、骨セメントペーストを骨セメントカートリッジから注型型内に注入する工程であって、この骨セメントペーストは、注型型の空洞内の空気を排出し、排出された空気は、好ましくは、注型型の空洞から、槽状の型とパンチとの間の間隙を通って周囲に出てくる工程と、
e)骨セメントカートリッジを弁本体から螺合を緩める工程であって、弁本体は弁の開位置から閉位置に回転され、それにより、骨セメントペーストが注型型の空洞から弁を通って周囲に出てくることができないように、少なくとも1つの第1の貫通部と少なくとも1つの第2の貫通部とが互いに重なり合って位置しないようにする工程と、
f)骨セメントカートリッジを注型型から取り外す工程と、
g)骨セメントペーストを注型型内で硬化させる工程と、
h)骨セメントペーストが硬化した後、槽状の型からパンチを取り出して注型型を開く工程と、
i)膝スペーサ部材を取り出す工程と
を備えてもよい。
【0127】
本発明に係る装置を用いて膝スペーサを製造するための本発明に係る代替的な例示的な方法は、以下の連続した工程:
a)注型型、及びこの注型型の槽状の型を準備する工程と、
b)骨セメントペーストが形成されるまで、(例えば、混合ボウル内で、又は骨セメントカートリッジ内でも)骨セメント粉末をモノマー液体と混合する工程と、
c)骨セメントペーストを槽状の型に充填する工程と、
d)任意に、弁座に対する弁本体の回転により、弁を開位置に開く工程と、
e)弁を開位置にした状態の注型型のパンチを槽状の型の空洞内に挿入する工程と、
f)膝スペーサ部材の所望の高さに達するまで、槽状の型の空洞底部の方向に注型型のパンチを押しつけると同時に、空気及び余剰のポリメタクリル酸メチル骨セメントペーストを開位置にある弁座及び弁本体を介して弁本体の空洞内に変位させる工程と、
g)ポリメタクリル酸メチル骨セメントペーストの所望の充填レベルに達すると、余剰のポリメタクリル酸メチル骨セメントペーストが注型型の空洞内のポリメタクリル酸メチル骨セメントペーストから分離されるように、弁本体を弁座に対して閉位置に手動で回転させる工程と、
h)骨セメントペーストを注型型内で硬化させる工程と、
i)骨セメントペーストが硬化した後、槽状の型からパンチを取り出して注型型を開く工程と、
i)膝スペーサ部材を取り出す工程と
を備えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0128】
本発明のさらなる例示的な実施形態を、33個の模式的な図を参照して以下で説明するが、それによって本発明を限定することはない。
【0129】
【
図1】
図1は、弁が開いた状態の、脛骨部材を製造するための本発明に係る第1の例示的な装置の模式的斜視断面図を示す。
【
図2】
図2は、
図1に係る本発明に係る第1の装置の部品の模式的外観図を示す。
【
図3】
図3は、パンチが挿入された状態の
図1~
図2に係る本発明に係る第1の装置の部品の模式的斜視外観図を示す。
【
図4】
図4は、パンチが挿入された状態の
図1~
図3に係る本発明に係る第1の装置の模式的斜視外観図を示す。
【
図5】
図5は、弁を閉じた状態の本発明に係る第1の装置の模式的斜視断面図を示す。
【
図6】
図6は、脛骨部材の成形中の弁が開いた状態の本発明に係る第1の装置の模式的斜視断面図を示す。
【
図7】
図7は、脛骨部材の形成中の弁が開いた状態の本発明に係る第1の装置の模式的斜視断面図を示し、この図では、断面平面は、
図6に対して90°回転されている。
【
図8】
図8は、弁が開いており、骨セメントカートリッジが注型型に接続されている状態の本発明に係る第1の装置の模式的断面図を示す。
【
図9】
図9は、弁が閉じられ、骨セメントカートリッジが注型型から取り外された状態の本発明に係る第1の装置の模式的断面図を示す。
【
図10】
図10は、脛骨部材の成形中の弁が開き、ハンドルが注型型に接続されている状態の本発明に係る第1の装置の模式的断面図を示す。
【
図11】
図11は、大腿骨部材を製造するための本発明に係る例示的な第2の装置の模式的斜視図を示す。
【
図12】
図12は、
図11に係る本発明に係る第2の装置の部品を通る模式的斜視断面図をそれらによって製造された大腿骨部材と共に示す。
【
図13】
図13は、本発明に係る第2の装置の注型型の部品に骨セメントペーストを充填する様子を示す。
【
図14】
図14は、大腿骨部材を形成する前の本発明に係る第2の装置の部品の模式的斜視外観図を示す。
【
図15】
図15は、
図11~
図14に係る本発明に係る閉状態の第2の装置と、そこに含まれる大腿骨部材の模式的斜視断面図を示す。
【
図17】
図17は、脛骨部材を製造するための本発明に係る第3の例示的な装置の模式的斜視外観図を示す。
【
図18】
図18は、弁を閉じた状態の本発明に係る第3の装置の模式的斜視断面図を示す。
【
図19】
図19は、弁が開いておりパンチが押し込まれている状態の本発明に係る第3の装置の模式的斜視断面図を示す。
【
図22】
図22は、骨セメント残渣を伴う、
図17~
図21に係る本発明に係る第3の装置を用いて製造された脛骨部材の斜視図を示す。
【
図23】
図23は、開状態にある本発明に係る装置のための弁の模式的斜視図を示す。
【
図30】
図30は、脛骨部材を製造するための本発明に係る第4の例示的な装置の模式的斜視外観図を示す。
【
図31】
図31は、パンチが挿入された状態の本発明に係る第4の装置の模式的斜視外観図を示す。
【
図32】
図32は、パンチが押し込まれた状態の本発明に係る第4の装置の模式的斜視外観図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0130】
図1~
図10は、膝スペーサの膝スペーサ部材を製造するための本発明に係る装置の第1の例示的な実施形態及びその部品の様々な観点を示す図面である。
【0131】
本発明に係る第1の装置は、膝スペーサの脛骨部材を製造するために適しており、そのために提供される。この装置は、2つの部分からなる注型型を含む。注型型は、槽状の型1とパンチ2とを有していてもよい。パンチ2は、槽状の型1内に挿入されることができ、槽状の型1内に押し込まれることができ、好ましくは再び引き抜かれることもできる。槽状の型1は、プラスチックフィルムから安価に作製することができる。プラスチックフィルムは、複数の層を有していてもよい。パンチ2の片側には、パンチ2の円筒状の壁で画定されてもよい骨セメントペースト50の貫通用の開口部が形成されていてもよい。この開口部には、弁座3が配置されていてもよい。弁座3は、
図1~
図10に示すように、注型型のパンチ2に強固に接続されていてもよいし、一体に形成されていてさえもよい。
【0132】
弁座3は、2つの第1の貫通部5以外ではパンチ2の開口部の方向に向けられたヘッド側4で閉じた中空円筒の形態をとってもよい。この2つの第1の貫通部5は、四分円形状であってもよく、好ましくは、弁座3の円筒軸に関して互いに対して180°回転又はオフセットして配置されてもよい。弁本体6は、弁座3に対して軸周りに(軸方向に)回転可能であるように弁座3の内部に配置されてもよい。弁本体6は、弁座3のヘッド側4の方向に向けられたシール面7又は表面を有してもよい。弁本体6は、段付き中空円筒として構成されてもよく、その中空円筒の前部は、弁座3内に螺合されるか、又は入れられることが可能である。
【0133】
シール面7には、2つの第2の貫通部8が配置されていてもよい。この2つの第2の貫通部8は、第1の貫通部5と同様に、四分円形状であってもよく、好ましくは、弁本体6の円筒軸に関して互いに対して180°回転して配置されてもよい。弁座3と弁本体6は一緒になって当該装置の弁を形成する。骨セメントカートリッジ10の液密接続のためのアダプタ要素9が、弁本体6に螺合されてもよい。骨セメントカートリッジ10及びアダプタ要素9は、本発明に係る装置の一部であってもよい。弁本体6は、シール面7から離れたその開放側に、アダプタ要素9を接続するためのポート11として形成されていてもよい。
【0134】
骨セメントカートリッジ10は、その前面側に、骨セメントカートリッジ10から骨セメントペースト50を送達するための送達開口部12を有していてもよい。骨セメントカートリッジ10の送達開口部12は、骨セメントカートリッジ10の送達チューブ13の前面側に配置されていてもよい。また、送達開口部12は、アダプタ要素9内に配置され、かつ、アダプタ要素9によって画定されていてもよい。アダプタ要素9は、送達開口部12以外では、かつ任意に真空ポート44以外では、その前面側で骨セメントカートリッジ10を閉じてもよく、送達チューブ13はアダプタ要素9を通って突出してもよい。
【0135】
当該装置は、一端にハンドグリップ16を形成するハンドル14を有してもよい(
図2、
図4、
図6、
図7及び
図10参照)。ハンドル14の反対側の端部には、外ねじ部19を有する弁本体18が配置されてもよい。ハンドル14の弁本体18は、弁座3に対して軸周りに回転可能であるように弁座3内に配置されてもよいし、又は配置されていてもよい(
図6、
図7及び
図10参照)。ハンドル14の弁本体18は、弁座3のヘッド側4の方向に向けられたシール面又は表面を有していてもよい。弁本体18は、弁座3内に螺合されてもよいし、入れられてもよい。
【0136】
シール面内には、ハンドル14の2つの第2の貫通部21が配置されていてもよい。この2つの第2の貫通部21は、第1の貫通部5と同様に、四分円形状であってもよく、好ましくは、ハンドル14の弁本体18の円筒軸に関して互いに対して180°回転して配置されてもよい。ハンドル14の弁座18及び弁本体6も、一緒に当該装置の弁を形成する。ハンドル14は、中空の内部を有していてもよい。ハンドル14の内部の空洞は、ハンドル14の2つの第2の貫通部21に接続されていてもよい。その結果、ハンドルの内部の空洞は、余剰の骨セメントペースト50を受けるための収集容器を形成してもよく、弁本体18と弁座3とによって形成された弁が、弁座3の2つの第1の貫通部5がハンドル14の2つの第2の貫通部21に骨セメントペースト50について液体透過的に接続されているか又は互いに重なり合って位置している開位置にあるとき、注型型からの余剰の骨セメントペースト50は、2つの第2の貫通部21を通って収集容器内に流入することができる。
【0137】
パンチ2は、槽状の型1内に押し込むことができる。パンチ2を槽状の型1に押し込むことにより、注型型を外部に対して閉鎖することができる。槽状の型1とパンチ2とが互いに入れ子状になっている場合には、注型型の内部の空気を抜くための間隙が存在してもよい(
図1~
図10では見えない)。骨セメントペースト50が注型型内に充填されるときに、閉鎖された注型型の内部から空気又はガスがこの間隙を通って逃げることができる。
【0138】
弁座3は、その内側に内ねじ部20を有していてもよい。ハンドル14の外ねじ部19は、ハンドル14の弁本体18が弁座3に螺合されうるように、弁座3の内ねじ部20と一致する。
【0139】
シール面7に面する弁本体6の前半分に、弁本体6は、その外側に弁座3の内ねじ部20と一致する外ねじ部22を有してもよい。弁本体6は、その外ねじ部22によって弁座3の内ねじ部20に螺合されてもよい。
【0140】
第1の貫通部5及び第2の貫通部8は、限界停止に達するまで弁本体6を弁座3に螺合することにより、互いに重なり合うようにしてもよい。第1の貫通部5及び第2の貫通部21は、同様に、限界停止に達するまでハンドル14の弁本体18を弁座3に螺合することにより、互いに重なり合うようにしてもよい。これにより、弁は開状態となる。この開状態では、骨セメントペースト50は、骨セメントカートリッジ10から第1の貫通部5及び第2の貫通部8を通って注型型内に流れ出てもよいし、この開状態では、骨セメントペースト50は、注型型から第1の貫通部5及びハンドル14の第2の貫通部21を通ってハンドル14内の収集容器内に流れ込んでもよい。
【0141】
弁本体6又は弁本体18を弁座3に対して4分の1回転(90°だけ)させることによって、すなわち弁本体6又は弁本体18を弁座3から螺合を緩めることによって、弁本体6のシール面7が弁座3の第1の貫通部5を覆い、弁座3のヘッド側4の閉領域が弁本体6の第2の貫通部8又は弁本体18の第2の貫通部21を覆うように、第1の貫通部5と第2の貫通部8又は第2の貫通部21とを互いに対してオフセットさせてもよい。これにより、弁は閉状態となる。1/4回転時の弁座3に対する弁本体6又は弁本体18のストロークが小さいため、弁本体6又は弁本体18と弁座3との間に生じる間隙は非常に狭く(1mm未満の幅)、高粘度のものは言うまでもなく、通常の粘度の骨セメントペースト50でもその間隙を通過することができない。これは特に、骨セメントペースト50がその間隙内でその実際の流れの方向から90°偏向しているためである。
【0142】
弁本体6の逆側には、ポート11内に内ねじ部24が配置されていてもよい。アダプタ要素9は、その前面側に、内ねじ部24と一致する外ねじ部26を有する。従って、アダプタ要素9は、弁本体6のポート11に螺合されてもよい。このようにして、骨セメントカートリッジ10と弁本体6との間、ひいては注型型内への液密接続を形成することができる。弁座3の内ねじ部20、ハンドル14の弁本体18の外ねじ部19、弁本体6の外ねじ部22、弁本体6の内ねじ部24、及びアダプタ要素9の外ねじ部26は、すべて同じ回転方向を有していてもよく、すなわち、これらのねじ部はすべて右ねじ部又は左ねじ部である。その結果、アダプタ要素9をポート11に螺合し、アダプタ要素9を同じ方向に回転させ続けることにより、弁を開くことができる。同時に、弁本体6は、弁座3に対してシールも提供する。その結果、弁は、同様に、ハンドル14を弁座3に螺合することによって開かれてもよい。同時に、弁本体18は、弁座3に対してシールも提供する。
【0143】
アダプタ要素9は、アダプタ要素9上のラッチ手段28を介して、骨セメントカートリッジ10の円筒壁上の嵌合ラッチ30に接続されてもよいし、接続されていてもよい。骨セメントカートリッジ10の円筒壁をアダプタ要素9に対してシールする周方向シール48が、シールのために設けられていてもよい。
【0144】
注型型は、注型型を用いて成形された膝スペーサ部材(図示せず)の摺動面を成形するための底板32を有してもよい。本実施形態では、これは脛骨プラトーであってもよい。底板32は、槽状の型1の基部又は底面を形成してもよい。パンチ2は、底板32の方向に槽状の型1に押し込むことができる。その結果、注型型内に充填された骨セメントペースト50を槽状の型1の底板32に押し付けることができる。注型型、特に注型型のパンチ2は、脛骨部材のステムを形成するためのステム成形部34をさらに有していてもよい。
【0145】
グリップ38が弁本体6に接続されていてもよい。弁本体6は、グリップ38によって弁座3内で手動で回転させることができる。
【0146】
骨セメントペースト50が混合される骨セメントカートリッジ10の内部を真空(減圧)にすることができる真空(減圧)ポート44がアダプタ要素9に配置されてもよい。その結果、骨セメントペースト50を真空下で混合することができる。
【0147】
骨セメントカートリッジ10の円筒状内部には、骨セメントペースト50を骨セメントカートリッジ10から弁本体6及び弁座3を介して注型型1内に排出するためのピストン46が配置されていてもよい。ピストン46は、この目的のために、外側に円筒状に形成されていてもよく、2つの周方向シール54によって円筒状内部に対してシールされていてもよい。ピストン46を前進させることにより、骨セメントペースト50は、骨セメントカートリッジ10の送達開口部12から、弁本体6と弁座3とからなる開放弁内に、又は弁本体6と弁座3とからなる開放弁を介して押し出されることが可能である。
【0148】
多孔質ディスク52がアダプタ要素9内に配置されてもよい。多孔質ディスク52は、骨セメントペースト50及びその出発成分に対して不透過性である。真空ポート44は、多孔質ディスク52によって覆われていてもよい。これにより、骨セメントペースト50の出発成分としての任意の骨セメント粉末が真空ポート44内に侵入することができることが防止される。
【0149】
本発明に係る方法の経過は、本発明に係る第1の装置に基づいて、
図1~
図10を参照して説明することができる。骨セメントペースト50は、骨セメントカートリッジ10内で真空下で混合することができる。次いで、骨セメントカートリッジ10は、アダプタ要素9を用いて弁本体6のポート11に螺合することができる。アダプタ要素9を螺合する際に、限界停止に達するまで弁本体6を弁座3に螺合することにより、弁を開位置に移動させることができる。
図1、
図3及び
図8はこの状況を示す。
【0150】
次に、ピストン46を前進させることにより、骨セメントペースト50は、骨セメントカートリッジ10から、弁を通って、重なり合う第1の貫通部5及び第2の貫通部8を通って注型型内に押し出される。そうする際に、パンチ2は、槽状の型から排出される可能性がある。骨セメントペースト50を注型型の内壁に押し付けて膝スペーサ部材を成形するためには、使用者は、骨セメントペースト50の注入時に骨セメントカートリッジ10を介してパンチ2に圧力をかけた状態を維持する必要がある。単一の骨セメントカートリッジ10からの骨セメントペースト50の体積が注型型を十分に充填するのに十分でない場合には、グリップ38を手動で操作して、弁本体6を弁座3に対して4分の1回転だけ回転させることにより弁を閉じ、間隔をおいて新しい骨セメントカートリッジ10を取り付けることができる。第1の通路5と第2の通路8は弁の閉位置では覆われており、その間の間隙は粘性のある骨セメントペースト50が流れることができるのに十分ではないので、注型型内に収容された骨セメントペースト50は再び流出することができない。
【0151】
ある時点で、注型型は骨セメントペースト50で十分に満たされる。注型型からの空気又はガスは、槽状の型1とパンチ2との間の間隙を通って、注型型から逃げることができる。パンチ2が槽状の型から正確に適量だけ排出されることによって膝スペーサ部材の所望の高さに達したら、弁を閉じたままにして、骨セメントペースト50を注型型内で硬化させて膝スペーサ部材を製造することができる。グリップ38によって弁を閉じることにより、骨セメントペースト50は剪断又は切断される。骨セメントカートリッジ10は、螺合解除して取り出すことができる。残っている薄い接続部があれば、それは、簡単に引き裂かれるか、又は破断される。
図5及び
図9はこの状況を示す。
【0152】
余剰の骨セメントペースト50が注型型に充填された場合、又は膝スペーサ部材の高さが大きすぎる場合、製造される膝スペーサ部材の所望の高さは、ハンドル14を弁座3の内ねじ部20に螺合することによって調整することができる。ここでは、弁本体18もまた、弁座3と新しい弁を形成する。弁は、限界停止に達するまでハンドル14を螺合することによって、開位置に移動される。
図6及び
図7はこの状況を示す。
【0153】
パンチ2を槽状の型1内に押し込むことによる注型型の内部の高さの低下により、骨セメントペースト50の一部が注型型から、2つの第1の貫通部5及び2つの第2の貫通部21を通ってハンドル14の収集容器内に排出される。これは
図10に示される。その後、ハンドル14は、1/4回転だけ(90°だけ)回転され、従って、2つの第2の開口部21は、2つの第1の開口部5に対して回転され、従って、弁が閉じられる。そうする際に、骨セメントペースト50は、弁内で剪断されるか、又は大部分が剪断される。
【0154】
この状態で、骨セメントペースト50を注型型内で硬化させることができる。このようにして成形された脛骨部材は、その後、注型型から取り出される。弁座3及び第1の通路5に起因するバリがあれば、それは切断されて除去することができる。脛骨部材の表面は、研磨され、及び/又は例えば抗生物質でコーティングされてもよい。
【0155】
脛骨部材を成形するための注型型の代わりに、大腿骨部材を成形するための注型型を使用することも容易に可能である。
【0156】
図11~
図15は、膝スペーサ用大腿骨部材の形態の膝スペーサ部材110を製造するための本発明に係る装置の第2の例示的な実施形態及びこの装置の部品を、様々な観点から見た図面である。
図16は、本発明に係る方法の結果としてこのような本発明に係る第2の装置を用いて製造された膝スペーサ部材110を示しており、その方法の工程は、
図13~
図16に時系列的に示されている。
【0157】
本発明に係る第2の装置は、膝スペーサの大腿骨部材を製造するために適しており、そのために提供される。この装置は、2つの部分からなる注型型を含む。注型型は、槽状の型61とパンチ62とを有していてもよい。パンチ62は、槽状の型61内に挿入されることができ、槽状の型61内に押し込まれることができ、好ましくは再び引き抜かれることもできる。槽状の型61は、プラスチックフィルムから安価に作製することができる。プラスチックフィルムは、複数の層を有していてもよい。パンチ62の片側には、パンチ62の円筒状の壁で画定されてもよい骨セメントペースト51の貫通用の開口部が形成されていてもよい。この開口部には、弁座63が配置されていてもよい。弁座63は、
図11~
図15に示すように、注型型のパンチ62に強固に連結されていてもよいし、一体に形成されていてさえもよい。
【0158】
弁座63は、2つの第1の貫通部65以外ではパンチ62の開口部の方向に向けられたヘッド側64で閉じた中空円筒の形態をとってもよい。この2つの第1の貫通部65は、四分円形状であってもよく、好ましくは、弁座63の円筒軸に関して互いに対して180°回転又はオフセットして配置されてもよい。
【0159】
弁本体78は、弁座63に対して軸周りに回転可能であるように、弁座63の内部に配置されてもよいし、配置されていてもよい。弁本体78は、弁座63のヘッド側64の方向に向けられたシール面67又は表面を有していてもよく、このシール面は、2つの第1の貫通部65を閉じるための閉鎖ピン82によって画定されていてもよい。
【0160】
2つの第2の貫通部68が弁本体78内に配置されてもよい。この2つの第2の貫通部68は、第1の貫通部65と同様に、四分円形状であってもよく、好ましくは、弁本体78の円筒軸に関して互いに対して180°回転して配置されてもよい。弁座63と弁本体78とは一緒になって、当該装置の弁を形成する。
【0161】
当該装置は、一端にハンドグリップ76を形成するハンドル74を有してもよい(
図11、
図12、
図14及び
図15参照)。ハンドル74の反対側の端部には、外ねじ部79を有する弁本体78が配置されてもよい。弁本体78は、ハンドル74によって弁座63に対して軸周りに回転可能であるように弁座63内に配置されてもよいし、配置されていてもよい(
図14及び15参照)。弁本体78は、弁座63のヘッド側64の方向に向けられた閉鎖ピン82を有してもよく、この閉鎖ピンは、弁本体78のシール面67を形成する。弁本体78は、弁座63に螺合されてもよいし、入れられてもよい。
【0162】
ハンドル74は、中空の内部を有してもよい。ハンドル74の内部の空洞は、ハンドル74の2つの第2の貫通部68に接続されていてもよい。その結果、ハンドルの内部の空洞は、余剰の骨セメント117を受けるための収集容器を形成してもよく、弁本体78と弁座63とによって形成された弁が、弁座63の2つの第1の貫通部65が2つの第2の貫通部68に骨セメントペースト51について液体透過的に接続されているか、又は互いに重なり合って位置している開位置にあるときに、注型型からの余剰の骨セメントペースト51は、2つの第2の貫通部68を通って収集容器内に流入することができる。
【0163】
パンチ62は、槽状の型61内に押し込むことができる。パンチ62を槽状の型61に押し込むことにより、注型型を外部に対して閉鎖することができる。槽状の型61とパンチ62とが互いに入れ子状になっている場合には、注型型の内部の空気を抜くための間隙が存在してもよい(
図11~
図15では見えない)。骨セメントペースト51が注型型内に充填されるときに、閉鎖された注型型の内部から空気又はガスがこの間隙を通って逃げることができる。
【0164】
弁座63は、その内側に内ねじ部80を有していてもよい。ハンドル74の外ねじ部79は、弁本体78が弁座63に螺合されることができるように、弁座63の内ねじ部80と一致する。
【0165】
第1の貫通部65及び第2の貫通部68は、限界停止に達するまで弁本体78を弁座63に螺合することにより、互いに重なり合うようにしてもよい。これにより、弁本体66は開状態となる。この開状態では、骨セメントペースト51は、注型型から第1の貫通部65及び第2の貫通部68を通って、ハンドル74内の収集容器内に流入してもよい。
【0166】
弁本体78を弁座63に対して4分の1回転(90°だけ)させることによって、すなわち弁本体78を弁座63から螺合を緩めることによって、弁本体78のシール面67が弁座63の第1の貫通部65を覆い、弁座63のヘッド側64の閉領域が弁本体78の第2の貫通部68を覆うように、第1の貫通部65と第2の貫通部68とを互いに対してオフセットさせてもよい。これにより、弁は閉状態となる。1/4回転時の弁座63に対する弁本体78のストロークが小さいため、弁本体78と弁座63との間に生じる間隙は非常に狭く(1mm未満の幅)、高粘度のものは言うまでもなく、通常の骨セメントペースト51でもその間隙を通過することができない。これは特に、骨セメントペースト51がその間隙内でその実際の流れの方向から90°偏向しているためである。
【0167】
弁座63の内ねじ部80と弁本体78の外ねじ部79とは、すべて同じ回転方向を有していてもよく、すなわち、これらのねじ部はすべて右ねじ部又は左ねじ部である。その結果、ハンドル74を弁座63に螺合することにより、弁が開かれてもよい。同時に、弁本体78は、弁座63に対してシールを提供する。
【0168】
注型型は、注型型を用いて成形された膝スペーサ部材110の摺動面を成形するための底板92を有していてもよい。本実施形態では、これは、大腿骨の顆状突起を複製する大腿骨部材の構造物の摺動面112であってもよい(
図16参照)。膝スペーサ部材110は、さらに、ステム114と、ステム114上の一片のバリ116とを有していてもよい。底板92は、槽状の型61の基部又は底面を形成してもよい。パンチ62は、底板92の方向に槽状の型61内に押し込むことができる。その結果、注型型内に充填された骨セメントペースト51を槽状の型61の底板92に押し付けることができる。注型型、特に注型型のパンチ62は、膝スペーサ部材110のステム114を形成するためのステム成形部94をさらに有していてもよい。
【0169】
骨セメントペースト51は、混合カップ70内で混合されてもよい(
図11及び
図13参照)。この目的のために、当該装置は、モノマー液体を含むモノマー液体容器72と、骨セメント粉末を含む骨セメント粉末容器73とを有していてもよい。骨セメントペースト51は、混合カップ70内で、骨セメント粉末とモノマー液体とから混合されてもよい。この装置は、混合カップ70内で骨セメントペースト51を混合するためのヘラ75又は他の混合用具を有していてもよい。モノマー液体容器72は、ガラス製のアンプルであってもよい。混合カップ70は、骨セメントペースト51を注ぎ出すための注ぎ口77を有していてもよい。混合された骨セメントペースト51は、混合カップ70から混合カップ70の注ぎ口77を介して、槽状の型61に充填されてもよい(
図13参照)。
【0170】
あるいは、
図1~
図10に係る第1の例示的な実施形態と同様にして、骨セメントペーストを製造して槽状の型61内に、又は注型型内に充填するために、骨セメントカートリッジを使用してもよい。
【0171】
本発明に係る方法の経過が、本発明に係る第2の装置に基づいて、
図13~
図16を参照して以下に説明される。混合カップ70内で骨セメントペースト51が混合されてもよい。骨セメント粉末容器73からの骨セメント粉末及びモノマー液体容器72からのモノマー液体は、この目的のために混合カップ70内に充填され、骨セメントペースト51が得られるまで、ヘラ75又は他の補助手段を用いてそこで混合される。このようにして混合された混合後の骨セメントペースト51は、次に、混合カップ70から注ぎ口77を介して槽状の型61内に充填される(
図13参照)。
【0172】
次に、ハンドル74が弁座63の内ねじ部80に螺合されて、製造される膝スペーサ部材110の所望の高さを調整してもよい。ここで、弁本体78は、弁座63と弁を形成する。この弁は、限界停止に達するまでハンドル74を螺合することにより、開位置に移動される。
図14はこの状況を示す。
【0173】
パンチ62を槽状の型61内に押し込むことによる注型型の内部の高さの低下により、骨セメントペースト51の一部が注型型から、2つの第1の貫通部65及び2つの第2の貫通部68を通ってハンドル74の収集容器内に排出される。これは
図15に示される。その後、ハンドル74は、1/4回転だけ(90°だけ)回転され、従って、2つの第2の開口部68は、2つの第1の開口部65に対して回転され、従って、弁が閉じられる。そうする際に、骨セメントペースト51は、弁内で剪断されるか、又は大部分が剪断される。このようにして、ハンドル74の収集容器内に保持されている余剰の骨セメント117は、膝スペーサ部材110から、又は注型型内で膝スペーサ部材110を形成している骨セメントペースト51から除去することができる。
【0174】
この状態で、骨セメントペースト51を注型型内で硬化させることができる。このようにして成形された膝スペーサ部材110は、その後、注型型から取り出される(
図16参照)。弁座63及び第1の通路65に起因するバリ116があれば、それは切断して除去することができる。膝スペーサ部材110の表面は、研磨され、及び/又は例えば抗生物質でコーティングされてもよい。
【0175】
大腿骨部材を成形するための注型型の代わりに、脛骨部材を成形するための注型型を使用することも容易に可能である。
【0176】
図17~
図21は、膝スペーサ用脛骨部材の形態の膝スペーサ部材210を製造するための本発明に係る装置の第3の例示的な実施形態及びこの装置の部品を様々な観点から見た図面である。
図22は、本発明に係る方法の結果としてこのような本発明に係る第3の装置を用いて製造された膝スペーサ部材210及び除去された余剰の骨セメント217を示しており、その方法の工程は、
図13~
図16に時系列的に示されている。
【0177】
本発明に係る第3の装置は、膝スペーサの脛骨部材を製造するために適しており、そのために提供される。この装置は、2つの部分からなる注型型を含む。注型型は、槽状の型161とパンチ162とを有していてもよい。パンチ162は、槽状の型161内に挿入されることができ、槽状の型161内に押し込まれることができ、好ましくは再び引き抜かれることもできる。槽状の型161は、プラスチックフィルムから安価に作製することができる。プラスチックフィルムは、複数の層を有していてもよい。パンチ162の片側には、パンチ162の円筒状の壁で画定されてもよい骨セメントペースト(図示せず)の貫通用の開口部が形成されていてもよい。この開口部には、弁座163が配置されていてもよい。弁座163は、
図17~
図21に示すように、注型型のパンチ162に強固に接続されていてもよいし、一体に形成されていてさえもよい。
【0178】
弁座163は、2つの第1の貫通部165以外ではパンチ162の開口部の方向に向けられたヘッド側164で閉じた中空円筒の形態をとってもよい。この2つの第1の貫通部165は、四分円形状であってもよく、好ましくは、弁座163の円筒軸に関して互いに対して180°回転又はオフセットして配置されてもよい。
【0179】
弁本体178は、弁座163に対して軸周りに回転可能であるように、弁座163の内部に配置されてもよいし、配置されていてもよい。弁本体178は、弁座163のヘッド側164の方向に向けられたシール面167又は表面を有していてもよく、このシール面は、2つの第1の貫通部165を閉じるのに適していてもよい。
【0180】
2つの第2の貫通部168が弁本体178内に配置されていてもよい。この2つの第2の貫通部168は、第1の貫通部165と同様に、四分円形状であってもよく、好ましくは、弁本体178の円筒軸に関して互いに対して180°回転して配置されてもよい。弁座163と弁本体178とは一緒になって、当該装置の弁を形成する。
【0181】
当該装置は、一端にハンドグリップ176を形成するハンドル174を有してもよい(
図17~
図21参照)。ハンドル174の反対側の端部には、外ねじ部179を有する弁本体178が配置されてもよい。弁本体178は、ハンドル174によって弁座163に対して軸周りに回転可能であるように弁座163内に配置されてもよいし、配置されていてもよい(
図18~
図21参照)。弁本体178は、弁座163に螺合されてもよいし、入れられてもよい。
【0182】
ハンドル174は、中空の内部を有してもよい。ハンドル174の内部の空洞は、ハンドル174の2つの第2の貫通部168に接続されていてもよい。その結果、ハンドルの内部の空洞は、余剰の骨セメント217を受けるための収集容器を形成してもよく、弁本体178と弁座163とによって形成された弁が、弁座163の2つの第1の貫通部165が2つの第2の貫通部168に骨セメントペーストについて液体透過的に接続されているか、又は互いに重なり合って位置している開位置にあるとき、注型型からの余剰の骨セメントペーストは、2つの第2の貫通部168を通って収集容器内に流入することができる。
【0183】
パンチ162は、槽状の型161内に押し込むことができる。パンチ162を槽状の型161に押し込むことにより、注型型を外部に対して閉鎖することができる。槽状の型161とパンチ162とが互いに入れ子状になっている場合には、注型型の内部の空気を抜くための間隙が存在してもよい(
図17~
図21では見えない)。骨セメントペーストが注型型内に充填されるときに、閉鎖された注型型の内部から空気又はガスがこの間隙を通って逃げることができる。
【0184】
弁座163は、その内側に内ねじ部180を有していてもよい。ハンドル174の外ねじ部179は、弁本体178が弁座163に螺合されることができるように、弁座163の内ねじ部180と一致する。
【0185】
第1の貫通部165及び第2の貫通部168は、限界停止に達するまで弁本体178を弁座163に螺合することにより、互いに重なり合うようにしてもよい。これにより、弁は開状態となる。この開状態では、骨セメントペーストは、注型型から第1の貫通部165及び第2の貫通部168を通って、ハンドル174内の収集容器内に流れてもよい。
【0186】
弁本体178を弁座163に対して4分の1回転(90°だけ)させることによって、すなわち弁本体178を弁座163から螺合を緩めることによって、弁本体178のシール面167が弁座163の第1の貫通部165を覆い、弁座163のヘッド側164の閉領域が弁本体178の第2の貫通部168を覆うように、第1の貫通部165と第2の貫通部168とを互いに対してオフセットさせてもよい。これにより、弁は閉状態となる。1/4回転時の弁座163に対する弁本体178のストロークが小さいため、弁本体178と弁座163との間に生じる間隙は非常に狭く(1mm未満の幅)、高粘度のものは言うまでもなく、通常の粘度の骨セメントペーストでもこの間隙を通過することができない。これは特に、骨セメントペーストが間隙の中でその実際の流れの方向から90°偏向しているためである。
【0187】
弁座163の内ねじ部180及び弁本体178の外ねじ部179は、すべて同じ回転方向を有していてもよく、すなわち、これらのねじ部はすべて右ねじ部又は左ねじ部である。その結果、ハンドル174を弁座163に螺合することにより、弁が開かれてもよい。同時に、弁本体178は、弁座163に対してシールを提供する。
【0188】
注型型は、注型型を用いて成形された膝スペーサ部材210の摺動面を成形するための底板192を有していてもよい。本実施形態では、これは、脛骨部材の脛骨プラトーの摺動面212であってもよい(
図22参照)。膝スペーサ部材210は、さらに、ステム214と、ステム214上の一片のバリ216とを有していてもよい。底板192は、槽状の型161の基部又は底面を形成してもよい。パンチ162は、底板192の方向に槽状の型161内に押し込むことができる。その結果、注型型内に充填された骨セメントペーストを槽状の型161の底板192に押し付けることができる。注型型、特に注型型のパンチ162は、膝スペーサ部材210のステム214を形成するためのステム成形部194をさらに有していてもよい。
【0189】
本発明に係る方法の経過が、本発明に係る第3の装置に基づいて、
図17~
図22を参照して以下に説明される。骨セメントペーストが槽状の型161内に充填される。
【0190】
次に、ハンドル174が弁座163の内ねじ部180に螺合されて、製造される膝スペーサ部材210の所望の高さを調整してもよい。ここで、弁本体178は、弁座163と弁を形成している。
図18はこの状況を示す。この弁は、限界停止に達するまでハンドル174を螺合することにより、開位置に移動される(
図19参照)。
【0191】
パンチ162を槽状の型161内に押し込むことによる注型型の内部の高さの低下により、骨セメントペーストの一部が注型型から、2つの第1の貫通部165及び2つの第2の貫通部168を通ってハンドル174の収集容器内に排出される。これは
図20に示される。その後、ハンドル174は、1/4回転だけ(90°だけ)回転され、従って、2つの第2の開口部168は、2つの第1の開口部165に対して回転され、従って、弁が閉じられる。そうする際に、骨セメントペーストは、弁内で剪断されるか、又は大部分が剪断される。このようにして、ハンドル174の収集容器内に保持されている余剰の骨セメント217は、膝スペーサ部材210から、又は注型型内で膝スペーサ部材210を形成している骨セメントペーストから除去することができる。
【0192】
この状態で、骨セメントペーストを注型型内で硬化させることができる。このようにして成形された膝スペーサ部材210は、その後、注型型から取り出される(
図22参照)。弁座163及び第1の通路165に起因するバリ216があれば、それは切断して除去することができる。膝スペーサ部材210の表面は、研磨され、及び/又は例えば抗生物質でコーティングされてもよい。
【0193】
脛骨部材を成形するための注型型の代わりに、大腿骨部材を成形するための注型型を使用することも容易に可能である。
【0194】
図23~
図29は、膝スペーサを製造するための本発明に係る装置のための弁を開位置(
図23~
図25)及び閉位置(
図26から
図29)で示す。この弁は、
図1~
図10に係る本発明に係る第1の装置の弁、
図11~
図15に係る本発明に係る第2の装置の弁、及び
図17~
図21に係る本発明に係る第3の装置の弁に対応するが、他の膝スペーサ及び膝スペーサ部材を製造するための他の注型型と共に使用してもよい。
【0195】
この弁は、注型型(図示せず)内に配置されていてもよいし、注型型(図示せず)と一体的に作られていてもよい弁座263を有する。しかしながら、弁座263は、別の方法で注型型の一部に強固に連結されていてもよく、また、注型型又は注型型の一部と一体的に作られていてもよい。
【0196】
弁座263は、2つの第1の貫通部265以外ではヘッド側264で閉じた中空円筒の形態をとってもよい。2つの第1貫通部265は、四分円形状であってもよく、好ましくは、弁座263の円筒軸に関して互いに対して180°回転して配置されてもよい。弁本体266は、弁座263に対して軸周りに回転可能であるように、弁座263の内部に配置されてもよい。弁本体266は、弁座263のヘッド側264の方向に向けられたシール面267又は表面を有していてもよい。弁本体266は、段付き中空円筒として構成されていてもよく、その中空円筒の前面は、弁座263内に螺合されるか、又は入れられることが可能である。
【0197】
シール面267には、2つの第2の貫通部268が配置されていてもよい。この2つの第2の貫通部268は、第1の貫通部265と同様に、四分円形状であってもよく、好ましくは、弁本体266の円筒軸に関して互いに対して180°回転又はオフセットして配置されてもよい。弁座263と弁本体266は一緒になって、本発明に係る装置の弁を形成する。骨セメントカートリッジ(図示せず)の液密接続のためのハンドル(図示せず)又はアダプタ要素(図示せず)が、弁本体266に螺合されてもよい。弁本体266は、シール面267から離れたその開放側に、ハンドル又はアダプタ要素を接続するためのポート271として形成されていてもよい。
【0198】
弁座263は、その内側に内ねじ部280を有していてもよい。シール面267に面する弁本体266の前半分において、弁本体266は、その外側に弁座263の内ねじ部280と一致する外ねじ部282を有していてもよい。弁本体266は、その外ねじ部282によって弁座263の内ねじ部280に螺合されてもよい。
【0199】
第1の貫通部265及び第2の貫通部268は、限界停止に達するまで弁本体266を弁座263に螺合することにより、互いに重なり合うようにしてもよい。これにより、弁は開状態となる。この開状態(
図23~
図25参照)では、骨セメントペーストは、第1の貫通部265及び第2の貫通部268を通って流れてもよい。弁本体266を弁座263に対して4分の1回転(90°だけ)させることによって、すなわち弁本体266を弁座263から螺合を緩めることによって、弁本体266のシール面267が弁座263の第1の貫通部265を覆い、弁座263のヘッド側264の閉領域が弁本体266の第2の貫通部268を覆うように、第1の貫通部265と第2の貫通部268とを互いに対してオフセットさせてもよい。これにより、弁は閉状態となる(
図26~
図29参照)。1/4回転時の弁座263に対する弁本体266のストロークが小さいため、弁本体266と弁座263との間に生じる間隙320は非常に狭く(1mm未満の幅)、高粘度のものは言うまでもなく、通常の粘度の骨セメントペーストでも間隙320を通過することができない(
図29を参照のこと)。これは特に、骨セメントペーストが間隙320の中でその実際の流れの方向から90°偏向しているためである。
【0200】
弁本体266の逆側には、ポート271内に内ねじ部184が配置されていてもよい。従って、ハンドル(図示せず)又はアダプタ要素(図示せず)は、弁本体266のポート271に螺合されてもよい。弁座263の内ねじ部280、弁本体266の外ねじ部282、及び弁本体266の内ねじ部284は、すべて同じ回転方向を有していてもよく、すなわち、これらのねじ部はすべて右ねじ部又は左ねじ部である。その結果、ハンドル又はアダプタ要素をポート271に螺合し、ハンドル又はアダプタ要素を同じ方向に回転させ続けることにより、弁を開くことができる。同時に、弁本体266は、弁座263に対してシールも提供する。
【0201】
さらには、グリップ298が弁本体266上に配置されてもよい。弁本体266は、グリップ298によって弁座263内で回転可能である。その結果、ポート271に骨セメントカートリッジが接続されていても、グリップ298の助けを借りて、開状態から閉状態へ、又は閉状態から開状態へと、外部から手動で弁を移動させることができる。
【0202】
図30~
図33は、膝スペーサ用脛骨部材の形態の膝スペーサ部材410を製造するための本発明に係る装置の第4の例示的な実施形態及びこの装置の部品を様々な観点から見た図面である。
図33は、特に、本発明に係る方法の結果としてこのような本発明に係る第4の装置を用いて製造された膝スペーサ部材410を示しており、その方法の工程は、
図30~
図33に時系列的に示されている。
【0203】
本発明に係る第4の装置は、膝スペーサの脛骨部材を製造するために適しており、そのために提供される。この装置は、2つの部分からなる注型型を含む。注型型は、槽状の型361とパンチ362とを有していてもよい。パンチ362は、槽状の型361内に挿入されることができ、槽状の型361内に押し込まれることができ、好ましくは再び引き抜かれることもできる。槽状の型361は、プラスチックフィルムから安価に作製することができる。プラスチックフィルムは、複数の層を有していてもよい。パンチ362の片側には、パンチ362の円筒状の壁で画定されてもよい骨セメントペースト(図示せず)の貫通用の開口部が形成されていてもよい。この開口部には、弁座363が配置されていてもよい。弁座363は、
図30~
図33に示すように、注型型のパンチ362に強固に連結されていてもよいし、一体に形成されていてさえもよい。
【0204】
弁座363は、2つの第1の貫通部365以外ではパンチ362の開口部の方向に向けられたヘッド側364に閉じた中空円筒の形態をとってもよい。この2つの第1の貫通部365は、四分円形状であってもよく、好ましくは、弁座363の円筒軸に関して互いに対して180°回転又はオフセットして配置されてもよい。
【0205】
弁本体178は、弁座363に対して軸周りに回転可能であるように、弁座363の内部に配置されてもよいし、配置されていてもよい。弁本体178は、弁座363のヘッド側364の方向に向けられたシール面167又は表面を有していてもよく、このシール面は、2つの第1貫通部365を閉じるのに適していてもよい。
【0206】
2つの第2の貫通部168が弁本体178内に配置されていてもよい。この2つの第2の貫通部168は、第1の貫通部365と同様に、四分円形状であってもよく、好ましくは、弁本体178の円筒軸に関して互いに対して180°回転して配置されてもよい。弁座363と弁本体178とは一緒になって、当該装置の弁を形成する。
【0207】
当該装置は、一端にハンドグリップ176を形成するハンドル174を有してもよい(
図30~
図33参照)。
図30~
図33に係る第4の例示的な実施形態のハンドル174は、
図17~
図21に係る第3の例示的な実施形態のハンドル174と同一に具現化されている。それに応じて、同じ参照符号が使用されている。弁本体178は、ハンドル174の反対側の端部に外ねじ部179を有していてもよい。弁本体178は、ハンドル174によって弁座363に対して軸周りに回転可能であるように弁座363内に配置されてもよいし、配置されていてもよい(
図31及び
図32参照)。弁本体178は、弁座363に螺合されてもよいし、入れられてもよい。
【0208】
ハンドル174は、中空の内部を有してもよい。ハンドル174の内部の空洞は、ハンドル174の2つの第2の貫通部168に接続されていてもよい。その結果、ハンドルの内部の空洞は、余剰の骨セメントを受けるための収集容器を形成してもよく、弁本体178と弁座363によって形成された弁が、弁座363の2つの第1の貫通部365が2つの第2の貫通部168に骨セメントペーストについて液体透過的に接続されているか、又は互いに重なり合って位置している開位置にあるとき、注型型からの余剰の骨セメントペーストは、2つの第2の貫通部168を通って収集容器内に流入することができる。
【0209】
パンチ362は、槽状の型361内に押し込むことができる。パンチ362を槽状の型361に押し込むことにより、注型型を外部に対して閉鎖することができる。槽状の型361とパンチ362が互いに入れ子状になっている場合には、注型型の内部の空気を抜くための間隙が存在してもよい(
図30~
図33では見えない)。骨セメントペーストが注型型内に充填されるときに、閉鎖された注型型の内部から空気又はガスがこの間隙を通って逃げることができる。
【0210】
弁座363は、その内側に内ねじ部380を有していてもよい。ハンドル174の外ねじ部179は、弁本体178が弁座363に螺合されることができるように、弁座363の内ねじ部380と一致する。
【0211】
第1の貫通部365及び第2の貫通部168は、限界停止に達するまで弁本体178を弁座363に螺合することにより、互いに重なり合うようにしてもよい。これにより、弁は開状態となる。この開状態では、骨セメントペーストは、注型型から第1の貫通部365及び第2の貫通部168を通って、ハンドル174内の収集容器内に流れてもよい。
【0212】
弁本体178を弁座363に対して4分の1回転(90°だけ)させることによって、すなわち弁本体178を弁座363から螺合を緩めることによって、弁本体178のシール面167が弁座363の第1の貫通部365を覆い、弁座363のヘッド側364の閉領域が弁本体178の第2の貫通部168を覆うように、第1の貫通部365と第2の貫通部168とを互いに対してオフセットさせてもよい。これにより、弁本体178は閉状態となる。1/4回転時の弁座363に対する弁本体178のストロークが小さいため、弁本体178と弁座363との間に生じる間隙は非常に狭く(1mm未満の幅)、高粘度のものは言うまでもなく、通常の粘度の骨セメントペーストでもこの間隙を通過することができない。これは特に、骨セメントペーストがその間隙内でその実際の流れの方向から90°偏向しているためである。
【0213】
弁座363の内ねじ部380及び弁本体178の外ねじ部179は、すべて同じ回転方向を有していてもよく、すなわち、これらのねじ部はすべて右ねじ部又は左ねじ部である。その結果、ハンドル174を弁座363に螺合することにより、弁が開かれてもよい。同時に、弁本体178は、弁座363に対してシールを提供する。
【0214】
注型型は、注型型を用いて成形された膝スペーサ部材410の摺動面を成形するための底板392を有していてもよい。本実施形態では、これは、脛骨部材の脛骨プラトーの摺動面であってもよい(
図33参照)。膝スペーサ部材410は、一片のバリ416を有していてもよい。他の例示的な実施形態1~3とは対照的に、第4の例示的な実施形態に係る膝スペーサ部材410は、ステムを有していない。底板392は、槽状の型361の基部又は底面を形成してもよい。パンチ362は、底板392の方向に槽状の型361内に押し込むことができる。その結果、注型型に充填された骨セメントペーストを槽状の型361の底板392に押し付けることができる。
【0215】
本発明に係る方法は、例示的な実施形態2及び例示的な実施形態3の例示的に記載された方法と同様に進行する。
【0216】
ここでは、骨セメントペーストは、混合カップ70内で混合されてもよい(
図30参照)。この目的のために、当該装置は、モノマー液体を含むモノマー液体容器72と、骨セメント粉末を含む骨セメント粉末容器73とを有していてもよい。骨セメントペーストは、混合カップ70内で、骨セメント粉末とモノマー液体とから混合されてもよい。この装置は、混合カップ70内で骨セメントペーストを混合するためのヘラ75又は他の混合用具を有していてもよい。モノマー液体容器72は、ガラス製のアンプルであってもよい。混合カップ70は、骨セメントペーストを注ぎ出すための注ぎ口77を有していてもよい。混合された骨セメントペーストは、混合カップ70から混合カップ70の注ぎ口77を介して槽状の型361に充填されてもよい。
【0217】
あるいは、
図1~
図10に係る第1の例示的な実施形態と同様にして、骨セメントペーストを製造して槽状の型361内に、又は注型型内に充填するために、骨セメントカートリッジを使用してもよい。
【0218】
脛骨部材を成形するための注型型の代わりに、大腿骨部材を成形するための注型型を使用することも容易に可能である。
【0219】
前述の説明、並びに特許請求の範囲、図、及び例示的な実施形態で開示された本発明の特徴は、本発明を様々な実施形態で実現するために、個別に、及び任意の組み合わせの両方で不可欠なものであってもよい。
【符号の説明】
【0220】
1、61、161、361 槽状の型/注型型
2、62、162、362 パンチ/注型型
3、63、163、263、363 弁座
4、64、164、264、364 ヘッド側
5、65、165、265、365 貫通部
6、266 弁本体
7、67、167、267 シール面
8、68、168、268 貫通部
9 アダプタ要素
10 骨セメントカートリッジ
11、271 ポート
12 送達開口部
13 送達チューブ
14、74、174 ハンドル
15 ミキサー
16、76、176 ハンドグリップ
17 シール
18、78、178 弁本体
19、79、179 外ねじ部
20、80、180、280、380 内ねじ部
21 貫通部
22、182、282 外ねじ部
24、184、284 内ねじ部
26 外ねじ部
28 ラッチ手段
30 嵌合ラッチ
32、92、192、392 摺動面を成形するための底板
34、94、194 ステム成形部
38、298 グリップ
44 真空ポート
46 ピストン
48 シール
50、51 骨セメントペースト
52 多孔質ディスク
54 シール
70 混合カップ
72 モノマー液体容器
73 骨セメント粉末容器
75 ヘラ
77 注ぎ口
82 閉鎖ピン
110 膝スペーサ部材/大腿骨部材
112、212 摺動面
114、214 ステム
116、216、416 バリ
117、217 余剰の骨セメント
210、410 膝スペーサ部材/脛骨部材
316 突起
320 間隙