(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-05
(45)【発行日】2022-08-16
(54)【発明の名称】コモンモードコイル部材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01F 27/28 20060101AFI20220808BHJP
H01F 17/04 20060101ALI20220808BHJP
H01F 27/00 20060101ALI20220808BHJP
H01F 27/29 20060101ALI20220808BHJP
【FI】
H01F27/28 K
H01F17/04 A
H01F27/00 R
H01F27/29 G
(21)【出願番号】P 2021503195
(86)(22)【出願日】2019-05-23
(86)【国際出願番号】 CN2019088171
(87)【国際公開番号】W WO2020098241
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2020-10-06
(31)【優先権主張番号】201811347405.7
(32)【優先日】2018-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】510248062
【氏名又は名称】深▲セン▼順絡電子股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Shenzhen Sunlord Electronics Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】Sunlord Guanlan Industrial Park, Dafuyuan Industrial Zone, Guanlan Street, Longhua District, Shenzhen, Guangdong 518110 CN
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】黄 敬新
(72)【発明者】
【氏名】尉 朗
(72)【発明者】
【氏名】林 藝氷
【審査官】秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-120730(JP,A)
【文献】特開2017-112156(JP,A)
【文献】特開2019-121692(JP,A)
【文献】国際公開第2017/061143(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/178194(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/28
H01F 17/04
H01F 27/00
H01F 27/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方側及び他方側にそれぞれ第1フランジ部及び第2フランジ部を有する巻線中心部を含む巻芯部と、
巻線中心部に前記第1フランジ部から前記第2フランジ部に向かって螺旋状に巻き取られ、同じターン数で前記巻線中心部に螺旋状に巻き取られる第1線材及び第2線材と、
それぞれ前記第1フランジ部及び前記第2フランジ部に設けられ、前記巻線中心部の周面に接触した一層目の巻取を構成する前記第1線材の一端及び他端にそれぞれに接続される第1外部電極及び第3外部電極と、
それぞれ前記第1フランジ部及び前記第2フランジ部に設けられ、前記第1線材の隣り合うターン間に形成された凹部に巻き取られて二層目の巻取を構成する前記第2線材の一端及び他端にそれぞれに接続される第2外部電極及び第4外部電極と、
前記第2線材の第
n
1
ターンは、前記第1線材の第
n
1
ターンと第
n
1
+1ターンとの間における凹部に嵌められることで、前記第1線材と前記第2線材との間に+0.5ターンでずれる第1巻取領域が形成され、
前記第2線材の第
n
2
ターンは、前記第1線材の第
n
2
-1ターンと第
n
2
ターンとの間における凹部に嵌められることで、前記第1線材と前記第2線材との間に-0.5ターンでずれる第2巻取領域が形成され、
n
1と
n
2
は、自然数であり、
前記第1巻取領域と前記第2巻取領域との間に位置し、
且つ、前記第1線材及び前記第2線材に交差に巻き取られてなり、1~3ターンの
第2線材を有する切替領域であって、前記第1線材
が前記第1巻取領域でのターン数は、
前記第1線材が前記第2巻取領域でのターン数と同じである切替領域と、
1~3ターンの
第2線材を有
する第3巻取領域と、
を備え、
前記切替領域及び前記第3巻取領域における第2線材のターン数を調整することにより前記第2線材の第1巻取領域でのターン数と前記第2線材の第2巻取領域でのターン数とが1~3ターン違うようにすることができ、
前記第1線材及び前記第2線材の総ターン数は、それぞれが前記第1巻取領域、前記第2巻取領域、前記切替領域及び前記第3巻取領域に巻き取られるターン数の合計であ
り、
前記第1線材及び前記第2線材の間に小さい傾斜容量の差値を有し、前記傾斜容量の差値は、前記切替領域及び第3巻取領域により制御され、前記傾斜容量の差値は、他の浮遊容量と相殺することができる
ことを特徴とするコモンモードコイル部材。
【請求項2】
前記第3巻取領域において、前記第2線材の第
n
3
ターンは、前半ターン及び後半ターンに分けられ、
前記前半ターンは前記第1線材の第
n
3
ターンと第
n
3
+1ターンとの間における凹部又は第
n
3
-1ターンと第
n
3
ターンとの間における凹部に嵌められ、
また/あるいは、前記後半ターンは前記第1線材の第n
3
ターンと第n
3
+1ターンとの間における凹部又は第n
3
-1ターンと第n
3
ターンとの間における凹部に嵌められ、前記第2線材の最後のターンは、前記巻線中心部の周面に直接接触して巻き取られ、又は部分的に接触して巻き取られ
、n
3
は、自然数である
請求項1に記載のコモンモードコイル部材。
【請求項3】
前記第1線材及び前記第2線材は、二重線である
請求項1に記載のコモンモードコイル部材。
【請求項4】
前記第2線材の前記第1巻取領域でのターン数は、前記第1線材の前記第1巻取領域内でのターン数よりも1~3ターン少なく、前記第2線材の前記第2巻取領域内のターン数は、前記第1線材の前記第2巻取領域内でのターン数よりも1~3ターン少ない
請求項1ないし3のいずれかに記載のコモンモードコイル部材。
【請求項5】
巻芯部と、第1外部電極と、第2外部電極と、第3外部電極と、第4外部電極とを含み、前記巻芯部は、一方側及び他方側にそれぞれ第1フランジ部及び第2フランジ部を有する巻線中心部を含み、前記第1外部電極及び前記第3外部電極は、それぞれ前記第1フランジ部及び前記第2フランジ部に設けられ、前記第2外部電極及び前記第4外部電極は、それぞれ前記第1フランジ部及び前記第2フランジ部に設けられるコモンモードコイル部材の製造方法であって、
第1線材及び第2線材を前記第1フランジ部から前記第2フランジ部に向かって同じターン数で前記巻線中心部に螺旋状に巻き取り、前記第1線材の一端及び他端をそれぞれ前記第1外部電極及び前記第3外部電極に接続し、前記第1線材で前記巻線中心部の周面に接触した一層目の巻取を構成し、前記第2線材の一端及び他端をそれぞれ前記第2外部電極及び前記第4外部電極に接続し、前記第2線材を前記第1線材の隣り合うターン間に形成された凹部に巻き取って二層目の巻取を構成する工程と、
前記第2線材の第
n
1
ターンを前記第1線材の第
n
1
ターンと第
n
1
+1ターンとの間における凹部に嵌めることで、前記第1線材と前記第2線材との間に+0.5ターンでずれる第1巻取領域を形成する工程と、
前記第2線材の第
n
2
ターンを前記第1線材の第
n
2
-1ターンと第
n
2
ターンとの間における凹部に嵌めることで、前記第1線材と前記第2線材との間に-0.5ターンでずれる第2巻取領域を形成する(
n
1
、n
2
は、自然数である)工程と、
前記第1線材
が前記第1巻取領域でのターン数は、
前記第1線材が前記第2巻取領域でのターン数と同じとする工程と、
前記第1線材及び前記第2線材を前記第1巻取領域と前記第2巻取領域との間に交差に1~3ターン巻き取り、
1~3ターンの第2線材を有する切替領域を形成する工程と、
1~3ターンの
第2線材を有する第3巻取領域を形成する工程と、
前記第1線材及び前記第2線材の総ターン数を、それぞれが前記第1巻取領域、前記第2巻取領域、前記切替領域及び前記第3巻取領域に巻き取られるターン数の合計とする工程と、
を含み、
前記切替領域及び前記第3巻取領域における第2線材のターン数を調整することにより前記第2線材の第1巻取領域でのターン数と前記第2線材の第2巻取領域でのターン数とが1~3ターン違うようにすることができ、
前記第1線材及び前記第2線材の間に小さい傾斜容量の差値を有し、前記傾斜容量の差値は、前記切替領域及び第3巻取領域により制御され、前記傾斜容量の差値は、他の浮遊容量と相殺することができる
ことを特徴とするコモンモードコイル部材の製造方法。
【請求項6】
前記第3巻取領域において、前記第2線材の第
n
3
ターンを、前半ターン及び後半ターンに分け、
前半ターンは前記第1線材の第
n
3
ターンと第
n
3
+1ターンとの間における凹部又は第
n
3
-1ターンと第
n
3
ターンとの間における凹部に嵌め、
また/あるいは、前記後半ターンは前記第1線材の第n
3
ターンと第n
3
+1ターンとの間における凹部又は第n
3
-1ターンと第n
3
ターンとの間における凹部に嵌められ、前記第2線材の最後のターンを、前記巻線中心部の周面に直接接触して巻き取り、又は部分的に接触して巻き取
られ、n
3
は、自然数である
請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
二重線により前記第1線材及び前記第2線材を前記巻芯部に順に巻き取る
請求項5に記載の製造方法。
【請求項8】
前記第2線材の前記第1巻取領域でのターン数を前記第1線材の前記第1巻取領域内でのターン数と同じとし、又はそれよりも1~3ターン少なくし、あるいは、前記第2線材の前記第2巻取領域内でのターン数を前記第1線材の前記第2巻取領域内でのターン数と同じとし、又はそれよりも1~3ターン少なくする
請求項5ないし7のいずれかに記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル部材の技術分野に関し、特に、コモンモードコイル部材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
巻線型コイル部材は、主に高速シリアルのデータ伝送に応用されており、差動信号を伝送する伝送線路において二本の信号線は、互いに磁気結合された一対のコイルによりコモンモードのノイズ電流を選択的に除去することができる。
【0003】
当該コイル部材は、二群の線材により巻芯部に巻き取られて外部電極に固定された、互いに結合された一対のコイルを有する。一般的には、ターン数及び位相がいずれも同じの線材を使用する構造である。応用過程において、差分信号伝送線路に、正常な電流は、コイルを流れ、電流は、コイルで逆方向の磁界を発生させ、磁界は、相殺して低減衰を呈する。コモンモード電流がコイルを流れると、電流は、同方向に同方向の磁界を発生させてコイルの誘導リアクタンスが増大することで、フィルタリング効果を達成する。従来のコイル部材は、二群の線材の非対称性のため、使用中、差分モード信号の一部がコモンモード信号に変換され、コモンモード信号の一部が差分モード信号に変換され、「コモンモード-差分モード」又は「差分モード-コモンモード」のモード変換は、放射ノイズを引き起こし又は外乱耐性が低下する要因となっている。
【0004】
本発明に係るコイル部材は、コイルにおける二群の線材の巻取方式を調整することによりコイルのモード変換性能を低下させることを趣とする。例えば、中国特許公開番号CN1624828Aである特許文献1及び中国特許公開番号CN101449346Aである特許文献2には、基本的に同じ構成のコイル外観が記載されており、従来のドラム型芯構造を備え、巻芯部、外部電極、二群の線材を含み、エポキシ樹脂などの粘着剤により磁気蓋板構造を巻芯部と接合して磁気回路構造を構成し、巻芯部と磁気蓋板との間の粘着部の隙間を低減させて高い実効導磁率を得て、さらに高いノイズ除去性能を得る。前記2つの特許文献では、より理想的なノイズ低下効果を得るために、二群の線材の巻線構造について検討したところ、二群の線材を、階層を分けてコイル芯部に巻き取り、第1線材は、巻芯部の巻線中心周面に巻き取って2つのフランジ部の外部電極に固定し、第1線材の各ターン間は、巻芯部の巻線中心部の表面に並列に巻き取られて一層目の巻線層を構成する。第2線材を第1線材の上面に巻き取って上下階層構造を形成し、対応するフランジ部の外部電極に固定し、第2線材の第nターン及び以降の各ターンは、第1線材の同一ターン及び前のターンで形成された一層目の巻線層の凹部に嵌められながら、当該一層目の巻線層と重なるように巻き取られることで、二層目の巻線層を構成し、二群の線材の各ターン及び同一ターンは、互いに隣接する。このような巻線構造により、より大きなインダクタンス値の範囲、安定した特性及び高いノイズ低下性能を効果的に得ることができる。
【0005】
応用中、コイル部材の差分信号成分においてコモンモードノイズに変換されて出力されることを表す比率は、モード変換特性(Scd)である。したがって、ドラム型芯型コモンモードコイルのノイズ降圧性能を改善し、モード変換特性を低下させたものは、車載イーサネット用として最適なコモンモードコイルである。前記コモンモードコイルにおいて、信号入力周波数が高くなると、入力された差動信号成分においてコモンモードノイズに変換されて出力される比率及びモード変換特性が顕著になる。例えば、日本特許公開番号JP2014120730Aである特許文献3には、第1線材と第2線材の異なるターン間に発生する浮遊容量、即ち分布容量のバランスを破壊することが主な検討する要因として挙げられ、同様に、中国特許公開番号CN107430923Aである特許文献4にも、二群の線材の異なるターン間に発生する浮遊容量について検討し、二群の線材全体で傾斜容量のバランスを取り、浮遊容量の回路全体に対する影響を低減させることを目的とする。
【0006】
発明者及び出願人は、実際の応用過程において検討したところ、モード変換特性に影響を与える浮遊容量は、以上に説明された二群の線材間に発生する浮遊容量に加えて、二群の線材と外部電極との間に発生する他の浮遊容量、コイルが実装された実装基板における配線と基準大地面との間に発生する他の浮遊容量などがあることを見出した。前記特許文献3及び4におけるコモンモードコイルは、依然としてこれらの他の浮遊容量からの影響を受けて、モード変換特性を示すため、近年、普及されつつある車載用LANにおけるイーサネットシステムの安定性及びモード変換性能に対する高要求を満たすことができず、信号の高速イーサネットシステムでの伝送精確度に影響を直接与え、深刻には、情報誤断を引き起こしてシステム全体の運転に影響を与える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】中国特許公開番号CN1624828A
【文献】国特許公開番号CN101449346A
【文献】日本特許公開番号JP2014120730A
【文献】中国特許公開番号CN107430923A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする技術的課題は、コモンモードコイル部材が二群の線材と外部電極との間、コイルが実装された実装基板における配線と基準大地面との間などに発生する他の浮遊容量から影響を受けることである。このため、コモンモードコイル部材及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記技術的課題を解決するために、本発明は、以下の技術方案を採用する。
一方側及び他側にそれぞれ第1フランジ部及び第2フランジ部を有する巻線中心部を含む巻芯部と、
【0010】
巻線中心部に前記第1フランジ部から前記第2フランジ部に向かって螺旋状に巻き取られ、同じターン数で前記巻線中心部に螺旋状に巻き取られる第1線材及び第2線材と、
【0011】
それぞれ前記第1フランジ部及び前記第2フランジ部に設けられ、前記巻線中心部の周面に接触した一層目の巻取を構成する前記第1線材の一端及び他端にそれぞれに接続される第1外部電極及び第3外部電極と、
【0012】
それぞれ前記第1フランジ部及び前記第2フランジ部に設けられ、前記第1線材の隣り合うターン間に形成された凹部に巻き取られて二層目の巻取を構成する前記第2線材の一端及び他端にそれぞれに接続される第2外部電極及び第4外部電極と、
【0013】
前記第2線材の第nターンは、前記第1線材の第nターンと第n+1ターンとの間における凹部に嵌められることで、前記第1線材と前記第2線材との間に+0.5ターンでずれる第1巻取領域が形成され、
【0014】
前記第2線材の第nターンは、前記第1線材の第n-1ターンと第nターンとの間における凹部に嵌められることで、前記第1線材と前記第2線材との間に-0.5ターンでずれる第2巻取領域が形成され、nは、自然数であり、
【0015】
前記第1巻取領域と前記第2巻取領域との間に位置し、1~3ターンの線材を有する切替領域であって、前記第1線材及び前記第2線材は、前記切替領域に交差に巻き取られ、前記第1線材のターン数は、前記第1巻取領域と前記第2巻取領域とで同じである切替領域と、
【0016】
1~3ターンの線材を有し、前記第2線材の、前記第1巻取領域でのターン数と前記第2巻取領域でのターン数とが1~3ターン違うように、前記第2線材の前記第1巻取領域と前記第2巻取領域でのターン数の合計の差を調整するために用いられる第3巻取領域と、
を備え、
【0017】
前記第1線材及び前記第2線材の総ターン数は、それぞれが前記第1巻取領域、前記第2巻取領域、前記切替領域及び前記第3巻取領域に巻き取られるターン数の合計である、コモンモードコイル部材。
【0018】
巻芯部と、第1外部電極と、第2外部電極と、第3外部電極と、第4外部電極とを含み、前記巻芯部は、一方側及び他方側にそれぞれ第1フランジ部及び第2フランジ部を有する巻線中心部を含み、前記第1外部電極及び前記第3外部電極は、それぞれ前記第1フランジ部及び前記第2フランジ部に設けられ、前記第2外部電極及び前記第4外部電極は、それぞれ前記第1フランジ部及び前記第2フランジ部に設けられるコモンモードコイル部材の製造方法であって、
【0019】
前記第1線材及び前記第2線材を前記第1フランジ部から前記第2フランジ部に向かって同じターン数で前記巻線中心部に螺旋状に巻き取り、前記第1線材の一端及び他端をそれぞれ前記第1外部電極及び前記第3外部電極に接続し、前記第1線材で前記巻線中心部の周面に接触した一層目の巻取を構成し、前記第2線材の一端及び他端をそれぞれ前記第2外部電極及び前記第4外部電極に接続し、前記第2線材を前記第1線材の隣り合うターン間に形成された凹部に巻き取って二層目の巻取を構成する工程と、
【0020】
前記第2線材の第nターンを前記第1線材の第nターンと第n+1ターンとの間における凹部に嵌めることで、前記第1線材と前記第2線材との間に+0.5ターンでずれる第1巻取領域を形成する工程と、
【0021】
前記第2線材の第nターンを前記第1線材の第n-1ターンと第nターンとの間における凹部に嵌めることで、前記第1線材と前記第2線材との間に-0.5ターンでずれる第2巻取領域を形成する(nは、自然数である)工程と、
【0022】
前記第1線材のターン数を前記第1巻取領域と前記第2巻取領域とで同じとする工程と、
前記第1線材及び前記第2線材を前記第1巻取領域と前記第2巻取領域との間に交差に1~3ターン巻き取り、切替領域を形成する工程と、
【0023】
前記第2線材の、前記第1巻取領域でのターン数と前記第2巻取領域でのターン数とが1~3ターン違うようにすることにより、1~3ターンの線材を有する第3巻取領域を形成する工程と、
【0024】
前記第1線材及び前記第2線材の総ターン数を、それぞれが前記第1巻取領域、前記第2巻取領域、前記切替領域及び前記第3巻取領域に巻き取られるターン数の合計とする工程と、を含むコモンモードコイル部材の製造方法。
【発明の効果】
【0025】
従来技術に比べて、本発明は、以下の有益な効果を有する。
切替領域は、第1巻取領域と第2巻取領域との間に位置し、第1線材と第2線材とが交差に巻き取られてなるものであり、すると、第1線材と第2線材とは、第1線材と第2線材との第1巻取領域での位置関係が第2巻取領域での位置関係と異なるように、切替領域により位置関係を切り替えることができる。加えて、第1線材が巻線中心部の周面に巻き取られ、第2線材が第1線材の隣り合うターン間に形成された凹部に巻き取られることにより、第1線材と第2線材とを第1巻取領域で+0.5ターンでずらし、第1線材と第2線材とを第2巻取領域で-0.5ターンでずらすことができる。第1巻取領域において、第2線材の第nターンは、第1線材の第nターンと第n+1ターンとの間の凹部に嵌められ、第2線材の第nターンと第1線材の第n+1ターンとの間に「+1」に数値化可能な傾斜容量が発生する。第2巻取領域において、第2線材の第nターンは、第1線材の第n-1ターンと第nターンとの間の凹部に嵌められ、第2線材の第nターンと第1線材の第n-1ターンとの間に「-1」に数値化可能な傾斜容量が発生する。「+1」の傾斜容量と「-1」の傾斜容量とは、相殺することができる。第1線材及び第2線材の総ターン数は、同じであり、切替領域は、第1巻取領域と第2巻取領域との間に位置し、第1線材と第2線材とが交差に巻き取られてなる1~3ターンの線材を有し、第3巻取領域も、1~3ターンの線材を有し、すると、切替領域及び第3巻取領域における線材のターン数を調整することにより第2線材の第1巻取領域でのターン数と第2巻取領域でのターン数とが1~3ターン違うようにすることができる。加えて、第1線材のターン数は、第1巻取領域と第2巻取領域とで同じであり、且つ、第1線材及び第2線材の総ターン数は、それぞれが第1巻取領域、第2巻取領域、切替領域及び第3巻取領域に巻き取られるターン数の合計であり、すると、第1巻取領域における「+1」の傾斜容量の総数と第2巻取領域における「-1」の傾斜容量の総数とは、差値があるため、小さい傾斜容量として表れ、第3巻取領域にも小さい傾斜容量が発生する可能性があり、この二つの傾斜容量は、一部相殺する可能性があり、すべて加算する可能性もあり、これにより、二群の線材間の小さい傾斜容量の差値を形成する。当該傾斜容量の差値は、切替領域及び第3巻取領域により制御される。傾斜容量の差値は、他の浮遊容量と相殺することができ、コモンモードコイル部材のモード変換特性を最低限に低下させることができ、車載用LANにおけるイーサネットシステムの安定性及びモード変換性能に対する高要求を満たすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の第1実施形態のコモンモードコイル部材の斜視図である。
【
図2】
図1に示されるコモンモードコイル部材における第1線材31及び第2線材32の巻取状態を模式的に示す断面図である。
【
図3】
図2に示される第1線材31と第2線材32との間に発生する傾斜容量を説明する断面図である。
【
図4】
図3に示される第1線材31と第2線材32との間に+0.5ターンでずれる領域に発生する傾斜容量をより詳細に説明する等価回路図である。
【
図5】
図3に示される第1線材31と第2線材32との間に-0.5ターンでずれる領域に発生する傾斜容量をより詳細に説明する等価回路図である。
【
図6】
図2を基礎として派生する巻線方式であり、本発明の第2実施形態に係るコモンモードコイル部材における第1線材31及び第2線材32の巻取状態を模式的に示す断面図である。
【
図7】
図6を基礎として派生する巻線方式であり、本発明の第3実施形態に係るコモンモードコイル部材における第1線材31及び第2線材32の巻取状態を模式的に示す断面図である。
【
図8】
図7を基礎として派生する巻線方式であり、本発明の第4実施形態に係るコモンモードコイル部材における第1線材31及び第2線材32の巻取状態を模式的に示す断面図である。
【
図9】
図8を基礎として派生する巻線方式であり、本発明の第5実施形態に係るコモンモードコイル部材における第1線材31及び第2線材32の巻取状態を模式的に示す断面図である。
【
図10】
図2を基礎として派生する巻線方式であり、本発明の第6実施形態に係るコモンモードコイル部材における第1線材31及び第2線材32の巻取状態を模式的に示す断面図である。
【
図11】
図6を基礎として派生する巻線方式であり、本発明の第7実施形態に係るコモンモードコイル部材における第1線材31及び第2線材32の巻取状態を模式的に示す断面図である。
【
図12】
図7を基礎として派生する巻線方式であり、本発明の第8実施形態に係るコモンモードコイル部材における第1線材31及び第2線材32の巻取状態を模式的に示す断面図である。
【
図13】
図8を基礎として派生する巻線方式であり、本発明の第9実施形態に係るコモンモードコイル部材における第1線材31及び第2線材32の巻取状態を模式的に示す断面図である。
【
図14】
図9を基礎として派生する巻線方式であり、本発明の第10実施形態に係るコモンモードコイル部材における第1線材31及び第2線材32の巻取状態を模式的に示す断面図である。
【
図15】
図14を基礎として派生する巻線方式であり、本発明の第11実施形態に係るコモンモードコイル部材における第1線材31及び第2線材32の巻取状態を模式的に示す断面図である。
【
図16】比較例のコモンモードコイル部材における第1線材31及び第2線材32の巻取状態の断面図である。
【
図17】比較例及び
図7の実施例のスペクトログラムである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1~15を参照して、以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。強調すべきこととして、下記説明は、例示的なものに過ぎず、本発明の範囲及びその応用を制限するためのものではない。
【0028】
本発明に係るコモンモードコイル部材は、巻芯部1と、第1外部電極21と、第2外部電極22と、第3外部電極23と、第4外部電極24と、磁気蓋板4とを含み、巻芯部1は、一方側及び他方側にそれぞれ第1フランジ部12及び第2フランジ部13を有する巻線中心部11を含み、第1外部電極21及び第3外部電極23は、それぞれ第1フランジ部12及び第2フランジ部13に設けられ、第2外部電極21及び第4外部電極24は、それぞれ第1フランジ部12及び第2フランジ部13に設けられ、磁気蓋板4は、エポキシ接着剤により磁気巻芯部1に粘着される。
【0029】
第1実施例において、
図1に示されるコモンモードコイル部材における二群の線材31及び32の巻取状態は、
図2に模式的な断面図で示される。第1線材31と第2線材32との区別を明確にするために、
図2及び以降の図面において、第1線材31を示す断面図にハッチングが施されている。巻き取られた巻芯部1の周囲における二群の線材31及び32の各部分のうち巻芯部1の手前側に位置する部分は、実線で模式的に示され、遮蔽された部分は、破線で模式的に示される。
図2には、二群の線材31及び32は、巻芯部1を回って上下に配列され巻き取られ、第2線材32は、大部分が第1線材31の隣り合うターン間に形成された凹部に嵌められ、一層目の巻線層の外側を構成して二層目の巻線層を形成する。
図1及び
図2を参照し、第1線材31の一端は、第2外部電極22に接続され、第1巻取領域Aにおいて隣り合うターンが緊密に配列された状態で第1ターンから第16ターンまで巻き取られ、切替領域Cにおいて第16ターンから第17ターンに移行する部分にギャップが形成される。第2巻取領域Bにおいて、第1線材31は、再度、隣り合うターン間にギャップが形成されない状態で第17ターンから第32ターンまで巻き取られる。第2線材32の一端で、+0.5ターンの領域でずれる第1巻取領域Aにおいて第1ターンが第1線材31の第1ターンと第2ターンとの間における凹部に嵌められ、即ち、第2線材32の第nターンが第1線材31の第nターンと第n+1ターンとの間における凹部に嵌められ、このように15ターンまで持続的に巻き取られる。切替領域Cにおいて、第2線材32は、第15ターンに対してギャップが形成される状態で第18ターンまで巻き取られ、巻線中心部11の周面に接触した状態で巻き取られ、第1線材31の第16ターンから第17ターンに移行する部分と2つの位置で交差する。続いて、第2巻取領域Bにおいて、第2線材32の第19ターンが第1線材31の第18ターンと第19ターンとの間における凹部に嵌められ、即ち第2線材32の第n+1ターンが第1線材31の第nターンと第n+1ターンとの間における凹部に嵌められる状態で、第2線材の第19ターンから第31ターンまで巻き取られる。続いて、第3巻取領域Dにおいて、第2線材32の第32ターンは、第1線材31の第32ターンに隣り合ってギャップが形成されない状態で巻線中心部11の周面と接触するように巻き取られて、第2線材32の末端が第4外部電極24に接続される。第1線材31及び第2線材32は、巻芯部1に巻き取られて第1巻取領域A、切替領域C、第2巻取領域B、第3巻取領域Dが形成されるとともに、外部電極に固定され、二層区分構造を構成する。第1線材及び第2線材の総ターン数は、同じであり、第1線材31及び第2線材32の総ターン数は、それぞれの第1巻取領域A、第2巻取領域B、切替領域C及び第3巻取領域Dに巻き取られるターン数の合計であり、第1線材31のターン数は、第1巻取領域Aと第2巻取領域Bとで同じである。
【0030】
コモンモードコイル部材の差分信号成分がコモンモードノイズに変換されて出力される比率は、モード変換特性Scd21である。モード変換特性Scd21について、
図3、
図4及び
図5におけるコモンモードコイルに対して発生する浮遊容量、即ち分布容量により説明することができる。
図3は、二群の線材31及び32の巻取状態で一部のコイルに傾斜容量が発生する断面図であり、第1巻取領域Aの一部及び第2巻取領域Bの一部を含み、断面内に表記された数値は、二群の線材31及び32それぞれのターン数であり、それぞれ二群の線材31及び32それぞれの第1ターン~第4ターン、第29ターン~第32ターンを例にする。第1巻取領域Aは、+0.5ターンでずれる領域であり、第1線材31で一層目を構成し、第2線材32の第1ターンが第1線材31の第1ターンと第2ターンとの間における凹部に嵌められ、第2線材32の第2ターンが第1線材31の第2ターンと第3ターンとの間における凹部に嵌められ、このように磁性巻芯部1に巻き取られる。第2巻取領域Bは、-0.5ターンでずれる領域であり、第1線材31及び第2線材32の各ターンの相対位置は、明らかに変化し、第2線材32の第19ターンは、第1線材31の第18ターンと第19ターンとの間における凹部に嵌められ、第2線材32の第20ターンは、第1線材31の第19ターンと第20ターンとの間における凹部に嵌められる。
【0031】
図4及び
図5において、二群の線材それぞれの1ターンは、1つのインダクタ符号で表され、二群の線材それぞれの同じターンが磁性巻芯部1を取り囲んで配列されることを示す。図に示される浮遊容量は、第1線材31の第1ターンと第2線材32の第1ターンとの間に発生する浮遊容量、第1線材31の第2ターンと第2線材32の第1ターンとの間に発生する浮遊容量、第1線材31の第2ターンと第2線材32の第2ターンとの間に発生する浮遊容量などを含む。モード変換特性Scd21が増加する主な原因は、二群の線材31と32との間に発生する浮遊容量であり、特に、二群の線材31と32との間の異なるターン間における浮遊容量Cd、即ち、傾斜容量Cdの影響が最も大きい。
【0032】
第1巻取領域Aにおいて、コモンモードコイルの傾斜容量Cdは、第1線材31の第2ターンと第2線材32の第1ターンとの間、即ち第1線材31の第n+1ターンと第2線材32の第nターンとの間に形成され、第2巻取領域Bにおいて、傾斜容量Cdは、第1線材32の第18ターンと第2線材32の第19ターンとの間、即ち第1線材31の第nターンと第2線材32の第n+1ターンとの間に形成される。
図4は、二群の線材31及び32のそれぞれの同じターンが上下に配列された等価回路を示し、傾斜容量Cd1は、「右斜め下」の接続方式である。
図1において、第1外部電極21から入力された信号を第3外部電極23に出力する比率をS21とし、第1外部電極21から入力された信号を第4外部電極24に出力する比率をS41とする。また、同様に、第2外部電極22から入力された信号を第3外部電極23に出力する比率をS23とし、第2外部電極22から入力された信号を第4外部電極24に出力する比率をS43とすると、このとき、Scd21=(S21-S43)+(S41-S23)である。S41及びS23は、二群の線材31と32との間で伝送する信号に関する特性であり、特に、二群の線材31と32との間に発生する浮遊容量を伝送する信号の影響を大きく受ける。傾斜容量Cdの存在が、S41及びS23の伝送経路に影響を与え、S41は、勾配が-1である傾斜容量Cdの経路で伝送される信号を含む値であり、例えば、第1線材31の第2ターンから第2線材32の第1ターンまでの経路である。S23は、勾配が+1である傾斜容量Cdの経路で伝送される信号を含む値であり、例えば、第2線材32の第2ターンから第1線材31の第3ターンまでの経路である。インダクタにおいて、通過する距離が異なれば、信号の衰減特性が異なる。したがって、S41とS23との間の非対称性が生じ、(S41-S23)は、0ではない。また、第1線材31と第2線材32の同じターン間に発生する勾配が0である浮遊容量の経路で伝送される信号も含むが、当該経路について、S41とS23とは、対称であり、(S41-S23)に対する影響をほぼ無視することができる。したがって、傾斜容量Cdの勾配差異により生じる信号伝送性の非対称性は、S41とS23との間の信号伝送特性の非対称性をさらに大きくするため、Scd21は、大きくなる。
前記傾斜容量CdがS41及びS23に総合的に影響することについて、コモンモードコイルに対して、本発明の実施形態を説明する。
【0033】
図4及び
図5は、二群の線材の同じターンが上下に配列された等価回路図を示し、異なるターン間に発生する浮遊容量、即ち傾斜容量Cdを含む。
図4に示すように、第1巻取領域Aにおいて、+0.5ターンでずれる領域のうち、第2線材32側から見て、二群の線材31と32との間における「右斜め下」の傾斜容量Cd1の勾配は、「+1」である。
図5に示すように、第2巻取領域Bにおいて、-0.5ターンでずれる領域のうち、第2線材32側から見て、二群の線材31と32との間における「右斜め上」の傾斜容量Cd2の勾配は、「-1」である。次に、傾斜容量Cd1及びCd2を数値化して示し、それぞれの大きさ及び作用を考察する。
図4において、+0.5でずれる領域Aに示される傾斜容量Cd1は、「右斜め下」の接続姿勢を有し、傾斜容量Cd1を数値化すると、「+」符号になり、
図5において、-0.5ターンでずれる領域Bに示される傾斜容量Cd2は、「右斜め上」の接続姿勢を有し、傾斜容量Cd2を数値化すると、「-」符号になる。同時に、傾斜容量の発生する第1線材31側のターン数と第2線材32側のターン数との差が「1」である場合、例えば、第1線材31の第2ターン及び第2線材32の第1ターンであり、傾斜容量を「1」に絶対値化する。
【0034】
前記内容により、+0.5ターンでずれる領域Aに発生する傾斜容量Cd1を「+1」に数値化することができ、-0.5ターンでずれる領域Bに発生する傾斜容量Cd2を「-1」に数値化することができる。このとき、+0.5ターンでずれる領域Aにおける第2線材のターン数の合計をN
+0.5とし、-0.5ターンでずれる領域Bにおける第2線材32のターン数の合計をN
-0.5とする。第3巻取領域Dにおける第2線材32の第32ターン及び第1線材31の第32ターンを微調整することにより、以上の
図7に示される具体的な巻取状態で、+0.5ターンの領域でずれる第1巻取領域Aにおいて、第2線材32のターン数の合計N
+0.5は、「15」であり、-0.5ターンの領域でずれる第2巻取領域Bにおいて、第2線材32のターン数の合計N
-0.5は、「13」であり、このとき、第1巻取領域Aにおける第2線材32のターン数の合計N
+0.5と第2巻取領域Bにおける第2線材32のターン数の合計N
-0.5とは、ほぼ同じであり、2ターン違う。このように、二群の線材31及び32は、第1巻取領域A及び第2巻取領域Bに発生する傾斜容量Cdの大部分が相殺し、2ターンの違により、小さい傾斜容量のみが表れ、加えて、第3巻取領域Dにも小さい傾斜容量が発生する可能性があり、この二部分の傾斜容量は、一部相殺する可能性があり、すべて加算する可能性もあり、二群の線材31と32との間における小さい傾斜容量の差値を形成する。当該傾斜容量の差値は、二群の線材31及び32と外部電極21~24との間、コイルが実装された実装基板における配線と基準大地面との間などに発生する他の浮遊容量と相殺することができ、コモンモードコイル部材のモード変換特性を最低限に低下させることができ、車載用LANにおけるイーサネットシステムの安定性及びモード変換性能に対する高要求を満たすことができる。
以上のほか、以下のいくつかの状況は、いずれも本発明の範囲内である。
【0035】
次に、
図6に、本発明の第2実施形態に係るコモンモードコイルを説明する。
図6に示される巻線方式は、
図2を基礎として派生されるものであり、同時に、繰り返し説明を省略する。
【0036】
図6に示されるコモンモードコイルは、巻線中心部の軸線に沿うように巻線分布され、
図2の巻線状況と同じである。
図6において、第2実施形態における二群の線材31及び32は、第1巻取領域A、切替領域C及び第2巻取領域Bでの巻線方式が
図2における第1巻取領域A、切替領域C及び第2巻取領域Bでの巻線方式と同じであり、主な区別は、第3巻取領域Dにある。
図6において、第2線材32は、第2巻取領域Bに第2線材の第19ターンから第31ターンまで巻き取られた後、第3巻取領域Dに入る。続いて、第3巻取領域Dにおいて、第2線材32の第32ターンの前半ターンは、第1線材31の第32ターンに隣り合ってギャップが形成されない状態で巻線中心部11の周面と接触するように巻き取られ、続いて、第2線材32の第32ターンの後半ターンは、第1線材31の第31ターンと第32ターンとの間における凹部に。
【0037】
以上の
図6に示される具体的な巻取状態で、第1巻取領域Aにおいて、第2線材32のターン数の合計N
+0.5は、「15」であり、第2巻取領域Bにおいて、第2線材32のターン数の合計N
-0.5は、「13」であり、このとき、第1巻取領域Aにおける第2線材32のターン数の合計N
+0.5と第2巻取領域Bにおける第2線材32のターン数の合計N
-0.5とは、ほぼ同じであり、二群が2ターン違う。
【0038】
次に、
図7において、本発明の第3実施形態に係るコモンモードコイルを説明する。
図7に示される巻線方式は、
図6を基礎として派生されるものであり、同時に、繰り返し説明を省略する。
【0039】
図7に示されるコモンモードコイルは、巻線中心部の軸線に沿うように巻線分布され、
図6の巻線状況と同じである。
図7において、第3実施形態における二群の線材31及び32は、第1巻取領域A、切替領域Cでの巻線方式が
図6の第2実施形態における第1巻取領域A、切替領域Cでの巻線方式と同じであり、主な区別は、第2巻取領域B及び第3巻取領域Dを調整することにある。
図7には、第2巻取領域Bにおいて、第2線材32の第19ターンが第1線材31の第18ターンと第19ターンとの間における凹部に嵌められ、即ち、第2線材32の第n+1ターンが第1線材31の第nターンと第n+1ターンとの間における凹部に嵌められる状態で、第2線材の第19ターンから第30ターンまで巻き取られる。第3巻取領域Dにおいて、第2線材32の第31ターンの前半ターンは、第1線材31の第30ターンと第31ターンとの間における凹部に嵌められ、続いて、第2線材32の第31ターンの後半ターンは、第1線材31の第31ターンと第32ターンとの間における凹部に嵌められる。続いて、第2線材32の第32ターンは、第1線材31の第32ターンに隣り合ってギャップが形成されない状態で巻線中心部11の周面と接触するように巻き取られる。
【0040】
以上の
図7に示される具体的な巻取状態で、第1巻取領域Aにおいて、第2線材32のターン数の合計N
+0.5は、「15」であり、第2巻取領域Bにおいて、第2線材32のターン数の合計N
-0.5は、「12」であり、このとき、第1巻取領域Aにおける第2線材32のターン数の合計N
+0.5と第2巻取領域Bにおける第2線材32のターン数の合計N
-0.5とは、ほぼ同じであり、二群が3ターン違う。
【0041】
次に、
図8において、本発明の第4実施形態に係るコモンモードコイルを説明する。
図8に示される巻線方式は、
図7を基礎として派生されるものであり、同時に、繰り返し説明を省略する。
【0042】
図8に示されるコモンモードコイルは、
図7に示されるコモンモードコイルと巻線状況が同じであり、
図8において、第4実施形態における二群の線材31及び32は、第1巻取領域A、切替領域C及び第2巻取領域Bでの巻線方式が
図7の第3実施形態における第1巻取領域A、切替領域C及び第2巻取領域Bでの巻線方式と同じであり、主な区別は、第3巻取領域Dを調整することにある。第3巻取領域Dにおいて、第2線材32の第31ターンの前半ターンは、第1線材31の第31ターンと第32ターンとの間における凹部に嵌められ、続いて、第2線材32の第31ターンの後半ターンは、第1線材31の第30ターンと第31ターンとの間における凹部に嵌められる。続いて、第2線材32の第32ターンは、第1線材31の第32ターンに隣り合ってギャップが形成されない状態で巻線中心部11の周面と接触するように巻き取られる。
【0043】
以上の
図8に示される具体的な巻取状態で、第1巻取領域Aにおいて、第2線材32のターン数の合計N
+0.5は、「15」であり、第2巻取領域Bにおいて、第2線材32のターン数の合計N
-0.5は、「12」であり、このとき、第1巻取領域Aにおける第2線材32のターン数の合計N
+0.5と第2巻取領域Bにおける第2線材32のターン数の合計N
-0.5とは、ほぼ同じであり、二群が3ターン違う。
【0044】
次に、
図9において、本発明の第5実施形態に係るコモンモードコイルを説明する。
図9に示される巻線方式は、
図8を基礎として派生されるものであり、同時に、繰り返し説明を省略する。
【0045】
図9に示されるコモンモードコイルは、
図8に示されるコモンモードコイルと巻線状況が同じであり、
図9において、第5実施形態における二群の線材31及び32は、第1巻取領域A、切替領域C及び第2巻取領域Bでの巻線方式が
図8の第4実施形態における第1巻取領域A、切替領域C及び第2巻取領域Bでの巻線方式と同じであり、主な区別は、第3巻取領域Dを調整することにある。第3巻取領域Dにおいて、第2線材32の第31ターンの前半ターンは、第1線材31の第31ターンと第32ターンとの間における凹部に嵌められ、続いて、第2線材32の第31ターンの後半ターンは、第1線材31の第30ターンと第31ターンとの間における凹部に嵌められる。このとき、第2線材32の第32ターンの前半ターンは、第1線材31の第32ターンに隣り合ってギャップが形成されない状態で巻線中心部11の周面と接触するように巻き取られ、続いて、第2線材32の第32ターンの後半ターンは、第1線材31の第31ターンと第32ターンとの間における凹部に。
【0046】
以上の
図9に示される具体的な巻取状態で、第1巻取領域Aにおいて、第2線材32のターン数の合計N
+0.5は、「15」であり、第2巻取領域Bにおいて、第2線材32のターン数の合計N
-0.5は、「12」であり、このとき、第1巻取領域Aにおける第2線材32のターン数の合計N
+0.5と第2巻取領域Bにおける第2線材32のターン数の合計N
-0.5とは、ほぼ同じであり、二群が3ターン違う。
【0047】
次に、
図10において、本発明の第6実施形態に係るコモンモードコイルを説明する。
図10に示される巻線方式は、
図2を基礎として派生されるものであり、同時に、繰り返し説明を省略する。
図10に示されるコモンモードコイルは、
図2に示されるコモンモードコイルと状況が類似し、
図10の第6実施形態における二群の線材31及び32は、第1巻取領域Aと第3巻取領域Dとで同じであり、主に切替領域C及び第2巻取領域Bにおいて調整される。切替領域Cにおいて、第2線材32は、第15ターンに対してギャップが形成された状態で第17ターンまで巻き取られ、第16ターンから第17ターンに移行した部分は、巻線中心部11の周面に接触した状態で巻き取られ、第1線材31の第16ターンから第17ターンに移行した部分と1つの位置で交差する。続いて、第2巻取領域Bにおいて、第2線材32の第18ターンが第1線材31の第17ターンと第18ターンとの間における凹部に嵌められ、即ち第2線材32の第n+1ターンが第1線材31の第nターンと第n+1ターンとの間における凹部に嵌められる状態で、第2線材の第18ターンから第31ターンまで巻き取られる。
【0048】
次に、
図11~14において、本発明の第7~10実施形態に係るコモンモードコイルを。
図11の第7実施形態の巻線方式は、
図6を基礎として派生されるものであり、
図12の第8実施形態の巻線方式は、
図7を基礎として派生されるものであり、
図13の第9実施形態の巻線方式は、
図8を基礎として派生されるものであり、
図14の第10実施形態の巻線方式は、
図9を基礎として派生されるものであり、主な区別は、いずれも切替領域C及び第2巻取領域Bの開始端を調整することにあり、切替領域C及び第2巻取領域Bの調整方式は、
図10における第6実施形態及び
図2に示されるコモンモードコイルと類似し、繰り返し説明する部分を省略する。
【0049】
図15は、本発明の第11実施形態に係るコモンモードコイルである。
図15に示されるコモンモードコイルは、
図10~14に示されるコモンモードコイルと状況が類似し、主な区別は、第3巻取領域Dを調整することにある。第3巻取領域Dにおいて、第2線材32の第30ターンの前半ターンは、第1線材31の第29ターンと第30ターンとの間における凹部に嵌められ、続いて、第2線材32の第30ターンの後半ターンは、第1線材31の第30ターンと第31ターンとの間に嵌められる。このとき、第2線材32の第31ターンは、第1線材31の第31ターンと第32ターンとの間における凹部に嵌められ、続いて第2線材32の第32ターンは、第1線材31の第32ターンに隣り合ってギャップが形成されない状態で巻線中心部11の周面と接触するように巻き取られる。このとき、第1巻取領域Aにおいて、第2線材32のターン数の合計N
+0.5は、「15」であり、第2巻取領域Bにおいて、第2線材32のターン数の合計N
-0.5は、「12」であり、このとき、第1巻取領域Aにおける第2線材32のターン数の合計N
+0.5と第2巻取領域Bにおける第2線材32のターン数の合計N
-0.5とは、ほぼ同じであり、二群が3ターン違う。
以下、実験によって、本発明を説明する。
【0050】
図16に示されるコモンモードコイル部材を比較例として、
図7、即ち本発明の実施例3に示されるコモンモードコイル部材と比較する。比較例と実施例3との区別は、比較例における二群の線材間の傾斜容量が完全に相殺するが、実施例3の傾斜容量には差値が存在することにある。実験において、比較例及び実施例3のコモンモードコイル部材に同じ周波数の信号を入力し、0.1MHz~1000MHzであり、測定機器により信号の損失を測定する。
図17において、実線は、比較例の実験結果を表し、破線は、実施例3の実験結果を表し、20MHz~300MHzの範囲内で、実施例3の信号損失が比較例よりも明らかに低く、つまり、実施例3のモード変換特性Scd21がより低いことが分かる。実施例3の傾斜容量の差値が前述した他の浮遊容量と相殺したためである。本発明の他の実施例と比較例との比較結論は、前記結論と一致し、ここで、説明を省略する。明らかに、本発明は、コモンモードコイルのモード変換特性を最低限に低下させることができ、車載用LANにおけるイーサネットシステムの安定性及びモード変換性能に対する高要求を満たすことができる。
【0051】
しかしながら、本発明における実施形態は、前記状況に限られず、前記構成は、図面に示される実施形態が備える構成のうち、ターン数方向が逆な構成は、本質的には同じ構成とは言えるので、それに関する図面を省略する。
【0052】
以上、図面に示されるコモンモードコイル部材に係る実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明の実施は、これらの説明に限定されると理解すべきではない。当業者にとって、本発明の構想から逸脱することなく、これらの説明された実施形態に対して幾つかの置換及び変形を行うことができ、これらの置換及び変形方式は、いずれも本発明の保護範囲に属する。