(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-05
(45)【発行日】2022-08-16
(54)【発明の名称】紙袋を製造するためのピロー包装機
(51)【国際特許分類】
B65B 51/10 20060101AFI20220808BHJP
B65B 9/213 20120101ALI20220808BHJP
B65B 51/22 20060101ALI20220808BHJP
【FI】
B65B51/10 Z
B65B9/213
B65B51/22 100
(21)【出願番号】P 2021551857
(86)(22)【出願日】2020-02-26
(86)【国際出願番号】 EP2020054961
(87)【国際公開番号】W WO2020178086
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2021-08-31
(31)【優先権主張番号】102019202847.0
(32)【優先日】2019-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521077576
【氏名又は名称】シンテゴンテクノロジー ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】Syntegon Technology GmbH
【住所又は居所原語表記】Stuttgarter Strasse 130, 71332 Waiblingen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ウルリッヒ ヴィードゥヴィルト
【審査官】永田 勝也
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第03330190(EP,A1)
【文献】特開2007-126249(JP,A)
【文献】特表2001-523595(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 51/10
B65B 9/213
B65B 51/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙から成る筒状袋パッケージを製造するためのピロー包装機であって、
- 紙ウェブ(10)を引き出すための引出しステーション(2)と、
- 前記紙ウェブ(10)の少なくとも1つの接合領域を連続的に粗面化するための粗面化ステーション(3)と、
- 前記紙ウェブ(10)の少なくとも1つの接合領域に給湿するための給湿ステーション(4)と、
- 袋の筒部を成形するための成形ステーション(5)と、
- 前記紙ウェブ(10)の前記接合領域をシールするための超音波シールステーション(6)と
を備え
、
前記粗面化ステーション(3)は、前記紙ウェブ(10)の運動方向(A)で見て、前記給湿ステーション(4)の上流側に配置されている、
ピロー包装機。
【請求項2】
前記超音波シールステーション(6)は超音波摩擦溶着シールステーションであり、接合プロセスを摩擦溶着によって実施する、請求項1記載のピロー包装機。
【請求項3】
前記超音波摩擦溶着シールステーションは、ホーン(11)とアンビル(12)とを有し、前記接合領域は、前記ホーンと前記アンビルとの間でガイドされており、前記ホーンの運動方向と前記アンビルの運動方向とは、互いに平行でない、請求項2記載のピロー包装機。
【請求項4】
前記アンビルは回転アンビルであ
る、請求項3記載のピロー包装機。
【請求項5】
前記アンビルは、前記紙ウェブ(10)の運動方向(A)に回転する、請求項4記載のピロー包装機。
【請求項6】
前記給湿ステーション(4)は、前記紙ウェブ(10)における粗面化された前記接合領域にのみ給湿するように構成されている、請求項1から5までのいずれか1項記載のピロー包装機。
【請求項7】
前記超音波シールステーション(6)は、シールプロセス時に20~50MPa
の範囲内の面圧を提供する、請求項1から6までのいずれか1項記載のピロー包装機。
【請求項8】
前記超音波シールステーション(6)は、シールプロセス時に30~40MPaの範囲内の面圧を提供する、請求項7記載のピロー包装機。
【請求項9】
前記超音波シールステーション(6)は、長手方向シールステーション(61)および/または横方向シールステーション(62)を備える、請求項1から
8までのいずれか1項記載のピロー包装機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景技術
本発明は、紙から成る筒状袋を製造するためのピロー包装機に関する。筒状袋は、付加的な接着剤または熱可塑性の合成樹脂またはこれに類するものなしに製造することができ、したがって、完全にリサイクル可能である。
【0002】
欧州特許出願公開第0340334号明細書に基づき、紙製品を超音波で接合する装置が公知である。同明細書では、使用される紙が、熱可塑性のコーティングを有する。この熱可塑性のコーティングが、接合プロセス中に一部溶融する。次いで、冷却および完全硬化後に、紙層の接合領域は互いに結合されている。さらに、独国特許出願公開第102013225745号明細書に基づき、紙材料を結合するための超音波接合法が公知であり、この公知の接合法では、超音波摩擦溶着が実施される。これらの公知の方法は基本的にその有効性が実証されているが、特に環境規定の厳格化に基づき、例えばパッケージを完全に、リサイクル可能な、かつ環境負荷を招く恐れがある他の付加的な構成成分、特にプラスチックまたは接着剤またはこれに類するものを含まない紙材料から製造することへの喫緊の需要がある。
【0003】
発明の開示
請求項1の特徴を有する本発明に係るピロー包装機(Schlauchbeutelmaschine)は、従来のものに比べて、付加的な接着剤を必要とすることなしにまたは紙ウェブを、例えば熱可塑性のプラスチックもしくはこれに類するものでコーティングすることなしに、筒状袋を連続した紙ウェブから製造することができるという利点を有している。本発明によれば、筒状袋を未処理の紙から製造することができる。これによって、物品、特に食品またはこれに類するもののための、完全にリサイクル可能なパッケージを提供することが可能となる。さらにまた、製造コストを不必要に増大させてしまう接着剤またはコーティングされた紙またはこれに類するものを一切使用せずに済むという、製造に起因する利点が得られる。さらに、接着剤またはこれに類するものが使用されないので、ピロー包装機のクリーニングプロセスを極めて簡単かつ確実に実施することができることを保証することができる。
【0004】
このことは、本発明によれば、ピロー包装機が、紙ウェブを引き出すための引出しステーションと、紙ウェブ上の少なくとも1つの接合領域を粗面化するための粗面化ステーションと、紙ウェブ上の少なくとも1つの接合領域に給湿するための給湿ステーションとを備えることによって達成される。さらに、袋の筒部を成形するための成形ステーションと、接合領域をシールするための超音波シールステーションとが設けられている。したがって、本発明によれば、紙ウェブが引き出されて、粗面化ステーションで接合領域が粗面化される。例えば袋の筒部の長手方向シールプロセスを実施しようとする場合、粗面化は紙ウェブの一方の縁部に対して行われる。続いて、粗面化された接合領域が、給湿ステーションで給湿される。ここで付言しておくと、この順序は入れ替えられてもよい。すなわち、接合領域がまず給湿され、続いて粗面化ステーションで粗面化されてよい。次いで、成形ステーションにおいて周知の方式で、例えば成形肩部または成形シューを介して袋の筒部が成形され、長手方向シームが、超音波シールステーションにおいて超音波によってシールされる。この場合、紙の接合領域を粗面化して給湿することによって、付加的な接着剤またはこれに類するものは不要になる。紙に、例えば熱可塑性樹脂によるコーティングを設ける必要もない。粗面化によって、接合領域の表面積は増大する。超音波シールプロセス前の給湿によって、粗面化された接合領域に湿分が存在することが保証されるので、次のシール工程において接合領域間に水素結合も生じ、したがって、付加的なシール媒体なしに、高いシール性と強度とを有する接合シームが得られる。複数の試験の結果、紙袋に形成されたシームは、極めて強固であり、外部からの力作用時に、シームは、紙包装材自体よりも長く保たれる、すなわち、シームが裂断する前に、袋が先に裂断することが判った。
【0005】
従属請求項は、本発明の好ましい改良形態を示す。
【0006】
超音波シールステーションは、好ましくは超音波摩擦溶着シールステーションである。この場合、シールプロセスは摩擦溶着によって行われ、従来技術で一般的な打撃超音波運動によって行われるのではない。摩擦溶着プロセスによって、より多くの熱を接合領域に導入することができるので、シールプロセスをより短い時間で実施することができ、特にシール工程前に導入された湿分をほぼ完全に除去することができる。
【0007】
超音波シールステーションが、ホーン(Sonotrode)とアンビル(Amboss)とを有し、ホーンの運動方向とアンビルの運動方向とが、互いに平行でない場合、超音波シールステーションの特に簡単な構成が得られる。アンビルは、好ましくは回転アンビルであり、軸線を中心として回転する。これによって、摩擦溶着シールステーションにおいて連続的な接合プロセスを実施することができる。ホーンの運動方向は、好ましくは回転アンビルの中心軸線に対して平行であり、特に回転アンビルの力方向に対して垂直である。
【0008】
さらに好ましくは、粗面化ステーションは、紙ウェブがピロー包装機を通過する方向で見て、給湿ステーションの上流側に配置されている。したがって、まず接合領域の粗面化が行われ、続いて給湿が行われる。したがって、粗面化工程による接合領域の表面積の増大により、より多くの湿分を接合領域に吸収することができる。
【0009】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、給湿ステーションは、粗面化された接合領域のみが給湿されるように構成されている。これによって、紙ウェブの他の領域が給湿されることが回避される。他の領域が給湿されると、紙ウェブがピロー包装機を通過する際に紙が裂断する恐れがある。
【0010】
好ましくは、超音波シールステーションにおける面圧は20~50MPa、特に30~40MPaの範囲内にある。さらに好ましくは、面圧は、特に紙厚さに応じて調整可能である。
【0011】
超音波シールステーションは、好ましくは長手方向シールステーションである。好ましくは、超音波シールステーションは、付加的にさらに横方向シールステーションを備える。有利には、長手方向シームと横方向シームとを製作するために、本発明に係るシール法は、先行する粗面化および給湿と、これに続く超音波による摩擦溶着シールとによって実施される。
【0012】
以下に、本発明の好ましい実施例を、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の好ましい実施例によるピロー包装機の概略図である。
【
図2】
図1に示した超音波シールステーションの概略的な斜視図である。
【0014】
本発明の好ましい実施形態
以下に、
図1および
図2を参照して、本発明の好ましい実施例によるピロー包装機1を詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明に係るピロー包装機1の全体像を概略的に示す。ピロー包装機1は、引出しステーション2を備える。引出しステーション2では、駆動されるローラ20の形態の引出し装置によって、大きなロールから紙ウェブ10が引き出される。
【0016】
紙ウェブ10は、次いで、粗面化ステーション3に供給される。粗面化ステーション3では、紙ウェブ上の接合領域101が粗面化される。この実施例では、粗面化ステーション3は、あとで長手方向シーム7をシールするために、紙ウェブの一方の長手方向側の縁領域を粗面化し、さらに、横方向シーム8をシールするために、縁領域に対して垂直な横方向領域も粗面化する。この場合、長手方向側の接合領域では連続的な粗面化が行われる。横方向領域は、袋のサイズに相応する区分ごとに粗面化される。
【0017】
次の工程において、粗面化された接合領域を備えた紙ウェブ10は給湿ステーション4に供給される。給湿ステーション4では、粗面化された接合領域が給湿される。ここで付言しておくと、正確に接合領域101のみが給湿され、粗面化されていない残りの紙ウェブは給湿されないので、紙ウェブの更なる搬送中の裂断は回避される。
【0018】
次の工程において、紙ウェブ10は、成形肩部50を備えた成形ステーション5に供給される。成形ステーション5では、袋の筒部が成形される。
【0019】
まだシールされていない袋の筒部は、続いて超音波シールステーション6に供給される。
【0020】
図1から判るように、超音波シールステーション6は、長手方向シールステーション61と横方向シールステーション62とを備える。紙ウェブ10の運動方向で見て、横方向シールステーション62は長手方向シールステーション61の下流側に配置されている。
【0021】
長手方向シールステーション61において、粗面化されて給湿された縁部の接合領域101は、長手方向シーム7を形成するようにシールされる。これによって、閉じられた筒状袋70が生じる。閉じられた筒状袋70は、次いで、横方向シールステーション62に供給され、そこで長手方向シーム7に対して垂直な横方向シーム8がシールされる。この場合、横方向シーム8は、周知の方式で筒状袋9の底部シームと頂部シームとの両方を形成する。次いで、成形肩部または充填・成形管を介した充填が行われ、紙ウェブが1工程分だけ送られて、次の横方向シーム8をシールすることができる。
【0022】
長手方向シールステーション61の詳細は、
図2から判る。
【0023】
長手方向シールステーション61は、ホーン11と、回転アンビル12と、コンバータ13と、超音波発生器14とを含む。
図2から判るように、回転アンビル12は軸線16を中心として紙ウェブ10の搬送方向Aに回転する。このことは、
図2に矢印Bによって示されている。超音波ホーン11は、運動方向Aに対して垂直に往復運動する。このことは、
図2に双方向矢印Cによって示されている。
【0024】
回転アンビル12は、さらに、ホーン11の運動方向Cに対して同じく垂直な矢印Fの方向で接合力を提供する。この構成によって、紙ウェブ10の接合領域での摩擦溶着が可能となり、これによって、接合領域への高い入熱が得られる。接合領域の粗面化によって接合領域の表面積が増大するので、給湿工程においてより多くの湿分を接合領域に導入することができる。これにより、超音波シールステーションでの摩擦溶着工程によって、接合領域で水素結合の強化を達成することができる。
【0025】
図2では、紙ウェブ10は単に概略的に図示されており、この実施例では、紙ウェブ10の縁領域の一方の接合領域101のみが粗面化および給湿によって処理された。紙ウェブ10の第2の縁領域は未処理であり、この第2の縁領域は第2の接合領域102であって、超音波シールステーション6において、処理済みの接合領域に接合される。
【0026】
こうして、紙から筒状袋70を製造することができ、シール工程のために付加的な接着剤は不要であり、熱可塑性のコーティングまたはこれに類するものもしくは熱可塑性のフィルムを接合領域に挿入する必要もない。紙ウェブ10の接合領域の間の結合は、粗面化されて給湿された接合領域の超音波接合プロセスによってのみ得ることができる。
【0027】
付言しておくと、ピロー包装機1は、例えば、紙ウェブ10の縁領域の第1の接合領域101のみが粗面化され、紙ウェブ10の反対側の縁領域の第2の接合領域102は給湿されるのみとして、次いで、両接合領域が超音波シールステーション6において接合されるように構成することもできる。さらに代替的に、第1の接合領域および第2の接合領域の両方がそれぞれ粗面化されて給湿されてもよい。さらに、両方の接合領域が粗面化され、続いて一方の接合領域のみが給湿されることも可能である。さらには、まず接合領域の給湿を行い、その後に初めて粗面化を行うことも可能である。ただし、この場合には、給湿された接合領域の裂断を回避するために、粗面化時に導入される力を低減する必要がある。