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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-05
(45)【発行日】2022-08-16
(54)【発明の名称】緑化システムおよびその施工方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 9/033 20180101AFI20220808BHJP
   A01G 9/02 20180101ALI20220808BHJP
   A01G 20/00 20180101ALI20220808BHJP
【FI】
A01G9/033
A01G9/02 E
A01G20/00
A01G9/02 101G
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022506596
(86)(22)【出願日】2021-11-19
(86)【国際出願番号】 JP2021042568
【審査請求日】2022-02-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000200367
【氏名又は名称】川田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】弁理士法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川田 紳一
【審査官】中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-013026(JP,A)
【文献】特許第5851245(JP,B2)
【文献】特表2009-521958(JP,A)
【文献】特開2004-305119(JP,A)
【文献】特開2002-000097(JP,A)
【文献】特開平06-078635(JP,A)
【文献】特開2004-254510(JP,A)
【文献】特許第5017591(JP,B2)
【文献】特開2002-294766(JP,A)
【文献】特開平10-164989(JP,A)
【文献】特開平11-341927(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104631561(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/00 - 9/08
A01G 20/00 - 20/47
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物を植栽するための土壌層と、前記土壌層を支持する透水性の土壌層支持部と、前記土壌層および前記土壌層支持部を支持する、貯水部とその上側の空気層とを有する面状の水容器部とを具える、植物を育成するための緑化システムであって、
前記水容器部が、容器ユニットを上面視で略矩形に形成し、隣接する容器ユニットの辺同士を嵌合させて、貯水部を持つように構成し、
前記容器ユニットが、各々水容器となり得る少なくとも二つの容器形状部を互いに連結されて有し、
容器形状部同士を重ねることなく配置され、
前記容器ユニットの所定箇所に、隣接する前記容器形状部、隣接する前記容器ユニットおよび前記容器ユニットの外へ水が越流できる越流部が設けられていることを特徴とする、緑化システム。
【請求項2】
前記容器ユニットの所定箇所に、隣接する前記容器形状部を繋ぐ補強部が設けられている、請求項1に記載の緑化システム。
【請求項3】
前記容器ユニットは、外周の二辺が山折りされ、他の二辺が谷折りされたものであり、山折りされた辺は、切り欠きによって分けられ、先端にフックを持つ固定部を有し、谷折りされた辺は、辺同士の嵌合時に前記フックが掛合する孔を有する、請求項1または請求項2に記載の緑化システム。
【請求項4】
前記容器ユニットは、前記容器形状を形成する四つの側壁のうち二つの各上部中央に越流部となる溝を持ち、前記容器ユニット内すべての前記容器形状部からの水の越流が前記容器ユニットの外に越流可能に構成されている、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の緑化システム。
【請求項5】
隣接する容器ユニットの間に有する越流部は、一の容器ユニットの一の越流部に溝形突起を持ち、該溝形突起が、他の容器ユニットの他の越流部に嵌合するように形成されている、請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の緑化システム。
【請求項6】
前記容器ユニットが溶融した熱可塑性樹脂を高圧で金型内に射出成形することによって形成されている、請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の緑化システム。
【請求項7】
前記土壌層支持部は、降伏点強度が2000N/m以上の樹脂ネットである、請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の緑化システム。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか一項に記載の緑化システムを施工する方法であって、
隣接する前記容器ユニットの辺同士を嵌合させて、前記容器ユニットを貯水部とし、前記越流部に相当する前記容器ユニットの上部を空気層として、前記水容器部を構成し、
前記水容器部に支持される前記土壌層支持部を設置し、
前記土壌層支持部に支持される前記土壌層を設置する、緑化システムの施工方法。
【請求項9】
隣接する容器ユニット同士の越流部は、一の容器ユニットの一の越流部に持つ溝形突起を、他の容器ユニットの他の越流部に嵌合するように配置することを特徴とする、請求項8に記載の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緑化システムが設置される設置面と、植物が植栽される土壌層との間に貯水部を設ける容器を具えた緑化システムおよびその施工方法に関し、特には、植物の熱枯れを防止し得るとともに耐荷重性に優れる緑化システムおよびその施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、植物の育成に適当な湿潤状態を維持するために、育成層の下方に透水性のないプラスチックシートで貯水部を設ける育成方法が用いられてきた(例えば、芝の育成について特許文献1参照)。
【0003】
また、植物の熱枯れを防止するために、非平坦屋根と土壌層との間にプランター状のユニットもしくはプランターを設置して空気層を設けた屋根の緑化構造や(例えば、特許文献2参照)、空気層を形成するための脚部を設けた、植物の育成が可能な断熱ブロックが用いられてきた(例えば、特許文献3参照)。
【0004】
また、屋根の骨格を形成する支持部材に、異なる高さの波型の板を重ね合わせて配置することにより、下側の波型板と上側の波型板との間に角柱状の空気層を形成すると共に上側の波型板の凹部に堰き止め部を設けて貯水部を形成した、防水性および断熱性に優れた緑化屋根が用いられてきた(例えば、特許文献4参照)。
【0005】
また、特許文献5には、植物を植栽するための土壌層と、土壌層を支持する透水性の土壌層支持部と、土壌層および土壌層支持部を支持する、貯水部とその下側の空気層とを有する水容器部とを具える、植物を育成するための緑化システムであって、水容器部が、容器ユニットを少なくとも二段重ねることにより容器ユニットの間に空気層を形成すると共に最上段の容器ユニットで貯水部を構成し、容器ユニットが、各々水容器となり得る少なくとも二つの容器形状部を互いに連結されて有するものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平11-75531号公報
【文献】特開2004-137895号公報
【文献】特許公開2003-147873号公報
【文献】特開2001-16982号公報
【文献】特開2005-333976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に開示の技術は、空気層を設けずに貯水部のみを設けるものであり、下部からの熱により植物が熱枯れしないように別途断熱材を用いて断熱層を形成する必要があった。また、特許文献2や3に開示の技術では、非平坦屋根にプランター状のユニット等を用いて空気層を形成するには個々の屋根の形状に合わせたプランター状のユニットを製造する必要があり、断熱ブロックを用いて空気層を形成するには断熱ブロックの敷設に多大な労力がかかった。また、特許文献4に開示の技術では、波型板を用いた緑化屋根においては、貯水部を形成するために板に複数の堰き止め部を加工する必要があり、また、空気層等の端部の開放部分を覆う必要があった。加えて、施工時には上側の板と下側の板とをボルト等で固定する必要があり、煩雑な作業が必要であるという問題点があった。その上、このような波型板を重ね合わせる構造では、緑化システムを設置する場所の大きさや形状に合わせて板を加工するのが困難であり、特に設置場所の端部においても空気層と貯水部とを加工するのが困難であるといった問題があった。
【0008】
また、特許文献5に開示の技術では、水容器部に容器ユニットを二段重ねする必要があり、施工に手間がかかる問題があった。同一形状の容器ユニットを重ねた場合、上部からの荷重で重なり部分に軋みが生じる問題があった。その問題を解決するために上段と下段とで異なる形状とした場合には、異なる形状の容器ユニットを製造することになり、コスト増となる問題があった。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、加工が容易な容器ユニットを用いた、施工が容易で、防水性、保水性、断熱性、および耐荷重性に優れる緑化システムならびに、その緑化システムの施工方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を有利に解決する本発明の緑化システムは、植物を植栽するための土壌層と、前記土壌層を支持する透水性の土壌層支持部と、前記土壌層および前記土壌層支持部を支持する、貯水部とその上側の空気層とを有する水容器部とを具える、植物を育成するための緑化システムであって、前記水容器部が、容器ユニットを上面視で略矩形に形成し、隣接する容器ユニットの辺同士を嵌合させて、貯水部を持つように構成し、前記容器ユニットが、各々水容器となり得る少なくとも二つの容器形状部を互いに連結されて有し、前記容器ユニットの所定箇所に、隣接する前記容器形状部、隣接する前記容器ユニットおよび前記容器ユニットの外へ水が越流できる越流部が設けられていることを特徴としている。
【0011】
なお、本発明の植栽用容器ユニットは、
(a)前記容器ユニットの所定箇所に、隣接する前記容器形状部を繋ぐ補強部が設けられていること、
(b)前記容器ユニットは、外周の二辺が山折りされ、他の二辺が谷折りされたものであること、
(c)前記容器ユニットは、前記容器形状を形成する四つの側壁のうち二つの各上部中央に越流部となる溝を持ち、前記容器ユニット内すべての前記容器形状部からの水の越流が前記容器ユニットの外に越流可能に構成されていること、
(d)隣接する容器ユニットの間に有する越流部は、一の容器ユニットの一の越流部に溝形突起を持ち、該溝状突起が、他の容器ユニットの他の越流部に嵌合するように形成されていること、
(e)前記容器ユニットが溶融した熱可塑性樹脂を高圧で金型内に射出成形することによって形成されていること、
(f)前記土壌層支持部は、降伏点強度が2000N/m以上の樹脂ネットであること、
などがより好ましい解決手段になり得るものと考えられる。
【0012】
上記課題を有利に解決する本発明にかかる緑化システムの施工方法は、上記いずれかの緑化システムを施工する方法であって、隣接する前記容器ユニットの辺同士を嵌合させて、前記容器ユニットを貯水部とし、前記越流部に相当する前記容器ユニットの上部を空気層として、前記水容器部を構成し、前記水容器部に支持される前記土壌層支持部を設置し、前記土壌層支持部に支持される前記土壌層を設置することを特徴としている。
【0013】
なお、本発明にかかる緑化システムの施工方法は、
(g)隣接する容器ユニット同士の越流部は、一の容器ユニットの一の越流部に持つ溝形突起を、他の容器ユニットの他の越流部に嵌合するように配置すること、
が好ましい解決手段になり得るものと考えられる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、上述のように、植物を植栽するための土壌層と、前記土壌層を支持する透水性の土壌層支持部と、前記土壌層および前記土壌層支持部を支持する、貯水部とその上側の空気層とを有する水容器部とを具える、植物を育成するための緑化システムであって、前記水容器部が、容器ユニットを上面視で略矩形に形成し、隣接する容器ユニットの辺同士を嵌合させて、貯水部を持つように構成し、前記容器ユニットが、各々水容器となり得る少なくとも二つの容器形状部を互いに連結されて有し、前記容器ユニットの所定箇所に、隣接する前記容器形状部、隣接する前記容器ユニットおよび前記容器ユニットの外へ水が越流できる越流部が設けられているものであるため、このような容器ユニットの施工が容易で、防水性、保水性、断熱性、および耐荷重性に優れる緑化システムを屋上や公園に設置することで、全体として非常に簡易な作業で緑化を行うことができるという効果がある。また、容器ユニットの数を増減させることにより緑化システムの設置面形状に柔軟に対応できると共に、個々の水容器を収容する大きな容器を設ける必要がないので施工を容易にすることができる。前記容器ユニットの所定箇所に、隣接する前記容器形状部または前記容器ユニット外へ水が越流できる越流部を設けているので、貯水部の保水量を一定にし、過剰な水を貯水部から排出することができる。
【0015】
前記容器ユニットの所定箇所に、隣接する前記容器形状部、たとえば、側壁部を繋ぐ補強部が設けられていれば、耐荷重性が向上し、好ましい。
【0016】
前記容器ユニットは、外周の二辺が山折りされ、他の二辺が谷折りされたものであれば、容器ユニットどうしを山折り部と谷折り部とで嵌合させて、容易に緑化システムを構築できるので好ましい。
【0017】
前記容器ユニットは、前記容器形状を形成する四つの側壁のうち二つの各上部中央に越流部となる溝を持ち、前記容器ユニット内すべての前記容器形状部からの水の越流が前記容器ユニットの外に越流可能に構成されていれば、荷重を支える側壁の面積確保と、水の越流による空気層の確保が両立できて、好ましい。
【0018】
隣接する容器ユニットの間に有する越流部は、一の容器ユニットの一の越流部に溝形突起を持ち、該溝状突起が、他の容器ユニットの他の越流部に嵌合するように形成されていれば、容器ユニット間の水の越流が可能となるとともに、その個所の耐荷重強度を確保できるので好ましい。
【0019】
前記容器ユニットが溶融した熱可塑性樹脂を高圧で金型内に射出成形することによって形成されていれば、容器ユニットを軽量に、簡易に成形でき、緑化システムの施工が容易となり、好ましい。
【0020】
前記土壌層支持部は、降伏点強度が2000N/m以上の樹脂ネットであれば、上部土壌層にかかる荷重を分散して、容器ユニットに伝えることができ、耐荷重性が向上するので好ましい。
【0021】
本発明にかかる緑化システムは、隣接する前記容器ユニットの辺同士を嵌合させて、前記容器ユニットを貯水部とし、前記越流部に相当する前記容器ユニットの上部を空気層として、前記水容器部を構成し、前記水容器部に支持される前記土壌層支持部を設置し、前記土壌層支持部に支持される前記土壌層を設置すれば、全体として非常に簡易な作業で緑化を行うことができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】(a)は、本発明にかかる緑化システムの一実施形態の縦断面を示す一部省略断面図であり、(b)は、(a)のA部の部分拡大図である。
図2】(a)は、上記実施形態にかかる緑化システムの水容器部を構成する容器ユニットの平面図であり、(b)は、正面図であり、(c)は右側面図である。
図3図2(a)に示す容器ユニットのB-B視断面図である。
図4】上記実施形態にかかる緑化システムの水容器部における容器ユニットの配置関係を簡略に示す平面図である。
図5】上記実施形態にかかる緑化システムの水容器部を構成する容器ユニットどうしの嵌合状態図であって、(a)は、図4に示すC-C視正面図であり、(b)は、図4に示すD-D視断面図であって、容器ユニット間の越流部を示す。
図6】上記実施形態にかかる容器ユニットを構成する容器形状部の縦断面拡大模式図である。
図7】本発明にかかる緑化システムの施工方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1に示す、この発明の一実施形態の緑化システム1は、緑化する範囲の外周を囲む土留め2と、土留め2の内側で芝3が植栽された土壌層4と、土壌層4を支持する透水性の土壌層支持部10と、土留め2の内側で設置面5上に配置されて土壌層4および土壌層支持部10を支持する水容器部20とを具える。土壌層4には、芝3に替えて、草花や、低木、中木などを植栽することもできる。
【0024】
ここで、土留め2には、土壌層4を保持するための構造体を用いることができ、例えば、化粧ブロック等のコンクリートブロックを用いることができる。
【0025】
土壌層4には、植栽する植物に適した土壌を用いることができ、例えば、植栽する植物に合わせて通気性および保湿性を調整した土壌であるシステム土壌を用いることができる。これにより、植物の育成に適した土壌環境で植物を育成することができる。
【0026】
土壌層支持部10には、土壌を支持できる透水性の素材を用いることができ、例えば、樹脂ネット13と、防根透水シート12と、その上に積まれた再生炭11等の高機能炭とで土壌層支持部10が構成される。このように土壌層支持部10を設けることで、水容器部20内への土壌の落下を防止し、土壌層4を支持できる。また、水容器部20に設けられた後述の貯水部23から蒸発した水が土壌層支持部10を通って土壌層4へ適度な水分を供給し、または雨天時や散水時に土壌層4から貯水部23へ過剰な水分を排出して、土壌層4を適切な湿度に保つことが可能となる。なお、本実施形態以外にも、再生炭11の代わりに、安価な材料である流木や解体家屋等を用いて土壌層支持部10を構成しても良い。防根透水シート12は、ポリエステル製シートなどを用いることができ、植物の根が伸びて、貯水部23に届くのを防止する。それによって、貯水部の水が植物に吸い上げられるのを防止し、効率的な水の運用が可能となる。
【0027】
図1に示す水容器部20は、図2~6に示すような容器ユニット21を上面視で略矩形に形成し、隣接する容器ユニットの辺同士を嵌合させて構成されている。容器ユニット2 1Aの容器形状部22が貯水部23を構成する。これにより、貯水部23に水が貯水可能となり、土壌層4の湿度を適切に保つことができる。また、貯水部23の越流部27形成された容器ユニット21上部の空気層24の断熱効果により、土壌層4に植栽した植物の熱枯れを防止することができる。
【0028】
本実施形態で用いる容器ユニット21の詳細を図2~6に示す。図2は、容器ユニット21の三面図であって、図2(a)~(c)は、それぞれ、平面図、正面図および右側面図を表す。図3図2(a)に示すB-B視断面図である。図4は、上記実施形態にかかる緑化システム1の水容器部20における容器ユニット21の配置関係を簡略に示す平面図である。図5は、図4に示す容器ユニット21の結合状態を示す模式図であって、図4(a)は、C-C視正面図であり、(b)は、D-D視断面図である。図6は、上記実施形態にかかる容器ユニット21を構成する容器形状部22の縦断面拡大模式図である。容器ユニット21は、各々水容器となる少なくとも二つの容器形状部22を互いに連結されて、有しており、図2および図3に示すように、各容器形状部22は、例えば、横断面が四角形状で下部に向かって漸次横断面積が小さくなる、截頭角錐形状を有する。
【0029】
また、容器ユニット21は、各容器形状部22を形成する四つの側壁25ののうち二つの各上部中央に越流部27となる溝を持ち、前記容器ユニット21内すべての前記容器形状部22からの水の越流が前記容器ユニット21の外に越流可能に構成されている。これにより、越流部27となる溝より貯水部23の水位が上昇することはなく、貯水部23の保水量を一定にし、過剰な水WTを貯水部23から排出して、水面と樹脂ネット13との間に空間(空気層24)を形成することができる(図6)。さらに、緑化システム1の設置面積に対する容器形状部22の数を増やせば、傾斜部に緑化システム1を設置した場合に、同じ深さの単一の容器と比べて保水量を増加させることができる。
【0030】
容器ユニット21は、例えば、溶融した熱可塑性樹脂を高圧で金型内に射出成形して軽量に作製することができ、他にも周知の素材、技術を用いて作製することができる。再生ポリプロピレンを用いることができる。
【0031】
図2、4および5に示すように、容器ユニット1の連結は、たとえば、略矩形に形成した容器ユニット1の外周の二辺が山折りされ、他の二辺が谷折りされたものであることが好ましい。それぞれ、山折り部29Bと谷折り部29Aとを嵌合することで簡便に面状の水容器部20を構成することができる。本実施形態では、山折り部29Aには、切り欠きによって分けられ、先端にフック29Dを持つ固定部29Cを持つ。山折り部29Bと谷折り部29Aとの嵌合時にフック29Dに対応する谷折り部の孔にフック先端が引っ掛かって、抜け防止の機能を持つ。
【0032】
また、隣り合う容器形状部22の側壁25を繋ぐ側壁補強部25Aを設置している。容器底面26は、設置面5に密着している。
【0033】
容器ユニット1の耐荷重の測定は、平面視で略矩形の容器形状部22が少なくとも4個を田の字状に含むように均等に鉛直に荷重を載荷して、圧潰し始める荷重を限界荷重とする。例えば、容器形状部22が平面視で70mm×70mmの矩形で、高さが70mmの場合、200mm×200mmの範囲に均等に荷重を載荷することが好ましい。屋上緑化用に土壌や植栽を支えるには、5kN/m以上の限界荷重を持つことが好ましい。緊急車両の乗り入れを考慮すると、適切な強度の樹脂シートを上部に敷いたうえで、500kN/m以上の限界荷重を持つことが好ましい。耐荷重を向上させるためには、材質の選択、適切な高さと素材の厚み、適切な形状の選択が必要である。越流部27を構成する溝部は荷重を支えることができないため、少ないことが好ましい。したがって、略矩形の容器形状部22を構成する側壁25の4辺のうち、2辺に溝部を構成し、他の2辺は溝部を設けずに荷重を支える側壁25として構成することが好ましい。樹脂ネット13の強度は、縦、横方向とも2000N/m以上の降伏点強度を持つことが好ましい。好ましくは、2700N/m以上の降伏点強度である。
【0034】
次に、本発明の他の実施形態にかかる緑化システムの施工方法について、図7のフロー図に基づいて、説明する。この実施形態は、上記容器ユニットを用いた緑化システムを施工する方法である。まず、対象となる緑化システム1の設置面5を設定する(S1)。その設置面5の外周に土留め2としてのコンクリートブロックを設置する(S2)。そして、コンクリートブロックで囲まれた設置面5に容器ユニット21を敷設する。容器ユニット21どうしを嵌合させて、隙間なく設置面を覆うように敷設して水容器部20を構成する(S3)。辺縁部は、容器ユニットを切欠くなどして、設置面の形状に合わせることが好ましい。このように構成した水容器部20の上に、樹脂ネット13、防根透水シート12および再生炭11を順に敷設して土壌層支持部10を構成する(S4)。そして、その、土壌層支持部10の上にシステム土壌を敷設して(S5)、システム土壌に任意の植物を植栽する(S6)という手順で施工することができる。
【0035】
このような緑化システム1によれば、防水性、保水性、断熱性および耐荷重性に優れた緑化システム1を提供でき、また、容器ユニット21の数を調整することにより、設置面5の形状に合わせて容易に施工することができる。また、容器ユニット21には同一形状のものを用いているので、大量生産によりコスト低減を図ることができる。
【0036】
以上、図面を参照して本発明にかかる緑化システムの実施形態に関して説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、構成部材の材質、製法、容器形状部の数、容器ユニットの配置等は、技術常識に従い他の部材、製法に置換することができる。
【0037】
たとえば、容器ユニット21の容器形状部22の形状は、截頭円錐、太さの異なる円柱、半球等、様々な形状を取ることができる。また、容器形状部22の連結部となる越流部27を溝形の橋状等の立体的形状に形成すれば、容器ユニット21の折り曲げ耐性が向上する。さらに、容器ユニットどうしの連結は、山折り、谷折りの嵌合に限らず、十分な連結強度を有する構造とすることができる。
【0038】
また、水容器部20の外周を構成する容器ユニット21に土壌層4まで伸びる壁面を一体的に形成すれば、土留め2を別途設けることなく容器ユニット21のみで土壌を保持できる。
【符号の説明】
【0039】
1 緑化システム
2 土留め
3 芝
4 土壌層
5 設置面
10 土壌層支持部
11 再生炭
12 防根透水シート
13 樹脂ネット
20 水容器部
21 容器ユニット
22 容器形状部
23 貯水部
24 空気層
25 側壁
25A 側壁補強部
26 容器ユニット底面
27 越流部
27A 容器ユニット間越流部(突出部)
27B 容器ユニット間越流部(受け部)
28 隣接部
29A 容器ユニット側辺谷折り部
29B 容器ユニット側辺山折り部
29C 固定部
29D フック
VP 蒸気
WT 水
【要約】
加工が容易な容器ユニットを用いた、施工が容易で、防水性、保水性、断熱性、および耐荷重性に優れる緑化システムおよびその施工方法を提供する。植物を植栽するための土壌層と、前記土壌層を支持する透水性の土壌層支持部と、前記土壌層および前記土壌層支持部を支持する、貯水部とその上側の空気層とを有する水容器部とを具える、植物を育成するための緑化システムであって、前記水容器部が、容器ユニットを上面視で略矩形に形成し、隣接する容器ユニットの辺同士を嵌合させて、貯水部を持つように構成し、前記容器ユニットが、各々水容器となり得る少なくとも二つの容器形状部を互いに連結されて有し、前記容器ユニットの所定箇所に、隣接する前記容器形状部、隣接する前記容器ユニットおよび前記容器ユニットの外へ水が越流できる越流部が設けられている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7