(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-05
(45)【発行日】2022-08-16
(54)【発明の名称】カテーテル用器具およびカテーテル
(51)【国際特許分類】
A61B 5/01 20060101AFI20220808BHJP
【FI】
A61B5/01 250
(21)【出願番号】P 2022508634
(86)(22)【出願日】2020-03-17
(86)【国際出願番号】 JP2020011597
(87)【国際公開番号】W WO2021186522
(87)【国際公開日】2021-09-23
【審査請求日】2022-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】594170727
【氏名又は名称】日本ライフライン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】榊 航平
【審査官】北島 拓馬
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/113934(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0105715(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0275763(US,A1)
【文献】国際公開第2019/049558(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/051837(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00 - 5/01
A61F 2/82 - 2/97
A61M 25/00 -29/04
A61M 35/00 -36/08
A61M 37/00
A61M 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
体内の中空器官の内部温度を測定するための複数の温度センサがカテーテルシャフトの先端付近に設けられているカテーテルに適用される器具であって、
前記カテーテルシャフトに形成されたルーメン内に挿通され、軸方向に沿って延在するチューブ状部材と、
前記チューブ状部材の基端側に装着されており、前記チューブ状部材の先端付近を屈曲変形させるための操作が行われる変形操作部を有するハンドルと
を備え、
前記変形操作部に対する前記操作が行われて、前記チューブ状部材の先端付近が屈曲変形する際に、
前記カテーテルシャフトにおける前記ルーメンの壁面に対して、屈曲変形している前記チューブ状部材が押し当てられることで、前記カテーテルシャフトの先端付近が変位するようになっている
カテーテル用器具。
【請求項2】
前記チューブ状部材内に挿通されており、前記チューブ状部材の先端部に先端側が固定されていると共に、前記ハンドル内に基端側が固定されている操作用ワイヤを、更に備え、
前記チューブ状部材の前記先端付近に、前記軸方向に沿った長手方向を有する開口部が、形成されている
請求項1に記載のカテーテル用器具。
【請求項3】
前記チューブ状部材内に挿通されており、前記チューブ状部材の先端部に先端側が固定されていると共に、前記ハンドル内に基端側が固定されている操作用ワイヤを、更に備え、
前記チューブ状部材の前記先端付近に、前記チューブ状部材の周方向に沿って一部分に延在するスリットが、前記軸方向に沿って複数形成されている
請求項1に記載のカテーテル用器具。
【請求項4】
前記チューブ状部材が、金属部材により構成されており、
前記金属部材における前記軸方向に沿った少なくとも基端側が、螺旋状に巻回された1または複数の金属線材を用いて構成されている
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のカテーテル用器具。
【請求項5】
前記金属部材における前記基端側には、前記金属線材が配置されていると共に、
前記金属部材における前記軸方向に沿った先端側には、前記金属線材が配置されていない
請求項4に記載のカテーテル用器具。
【請求項6】
前記チューブ状部材において、
屈曲変形する部分である前記先端付近よりも先端側における剛性が、前記先端付近よりも基端側における剛性と比べて大きい
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のカテーテル用器具。
【請求項7】
体内の中空器官の内部温度を測定するためのカテーテルであって、
ルーメンを有するカテーテルシャフトと、
前記カテーテルシャフトの先端付近に配置されており、前記体内の中空器官の内部温度を測定するための複数の温度センサと、
前記カテーテルシャフトの基端側に装着された第1ハンドルと、
前記カテーテルに適用されるカテーテル用器具と
を備え、
前記カテーテル用器具は、
前記カテーテルシャフトの前記ルーメン内に挿通されており、軸方向に沿って延在するチューブ状部材と、
前記チューブ状部材の基端側に装着されており、前記チューブ状部材の先端付近を屈曲変形させるための操作が行われる変形操作部を有する第2ハンドルと
を備え、
前記変形操作部に対する前記操作が行われて、前記チューブ状部材の先端付近が屈曲変形する際に、
前記カテーテルシャフトにおける前記ルーメンの壁面に対して、屈曲変形している前記チューブ状部材が押し当てられることで、前記カテーテルシャフトの先端付近が変位するようになっている
カテーテル。
【請求項8】
前記体内の中空器官が食道であり、
患者に対する左房アブレーション術の際に、前記食道の内部温度を測定するために使用されるカテーテルである
請求項7に記載のカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食道等の体内の中空器官の内部温度を測定する際に使用されるカテーテル、および、そのようなカテーテルに適用されるカテーテル用器具に関する。
【背景技術】
【0002】
不整脈等の治療法の1つとして、例えば心臓内部の不整脈となっている部分をアブレーションカテーテルによって焼灼(アブレーション)する手術が行われている。この焼灼の手法は、一般的に、高周波電流を用いて高温焼灼(加熱)する手法と、液化亜酸化窒素や液体窒素等を用いて低温焼灼(冷却)する手法とに大別される。このようなアブレーションカテーテルを用いて、例えば心臓の左房後壁を焼灼する場合(左房アブレーション術の際には)、一般に、この左房後壁に近接する食道もが加熱または冷却され、食道が損傷を受けてしまうおそれがある。
【0003】
そこで、患者の鼻を通して(経鼻的アプローチによって)食道の内部に温度測定用のカテーテル(いわゆる食道カテーテル)を挿入し、食道内部(内壁)の温度に関する情報を測定(監視)する手法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このようにして食道内部の温度を監視することで、例えば上記した左房アブレーション術の際に、食道が損傷を受けてしまうおそれを防止することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
ところで、このようなカテーテルでは一般に、食道等の体内の中空器官の内部温度を測定する際に、そのような中空器官が上記したようにして損傷を受けるおそれをより確実に防止しつつ、患者の体への負担を軽減することが求められている。したがって、体内の中空器官の内部温度を測定する際に、その中空器官が損傷されるおそれをより確実に防止しつつ、患者の体への負担を軽減することが可能なカテーテル、および、そのようなカテーテルに適用されるカテーテル用器具を提供することが望ましい。
【0006】
本発明の一実施の形態に係るカテーテル用器具は、体内の中空器官の内部温度を測定するための複数の温度センサがカテーテルシャフトの先端付近に設けられているカテーテルに適用される器具であって、上記カテーテルシャフトに形成されたルーメン内に挿通され、軸方向に沿って延在するチューブ状部材と、上記チューブ状部材の基端側に装着されており、そのチューブ状部材の先端付近を屈曲変形させるための操作が行われる変形操作部を有するハンドル(第2ハンドル)と、を備えたものである。また、上記変形操作部に対する上記操作が行われて、上記チューブ状部材の先端付近が屈曲変形する際に、上記カテーテルシャフトにおけるルーメンの壁面に対して、屈曲変形しているチューブ状部材が押し当てられることで、上記カテーテルシャフトの先端付近が変位するようになっている。
【0007】
本発明の一実施の形態に係るカテーテルは、体内の中空器官の内部温度を測定するためのカテーテルであって、ルーメンを有するカテーテルシャフトと、このカテーテルシャフトの先端付近に配置されており、上記体内の中空器官の内部温度を測定するための複数の温度センサと、上記カテーテルシャフトの基端側に装着された第1ハンドルと、このカテーテルに適用される、上記本発明の一実施の形態に係るカテーテル用器具と、を備えたものである。
【0008】
本発明の一実施の形態に係るカテーテル用器具およびカテーテルでは、カテーテル用器具のハンドル(第2ハンドル)における変形操作部に対して、カテーテルシャフトのルーメン内に挿通されている、カテーテル用器具のチューブ状部材における先端付近を屈曲変形させるための操作が行われると、以下のようになる。すなわち、そのようなチューブ状部材の先端付近が屈曲変形する際に、カテーテルシャフトにおけるルーメンの壁面に対して、屈曲変形しているチューブ状部材が押し当てられることで、カテーテルシャフトの先端付近が変位する。これにより、上記体内の中空器官の内壁に対して、カテーテルシャフトの先端付近の変位による押圧力が付与される結果、その中空器官自体も変位し、この中空器官に対する損傷要因(例えば、アブレーションの際の過熱源または冷却源)から遠ざけることができる。また、カテーテル本体とは別体のカテーテル用器具を用いて、カテーテルシャフトの先端付近を変位させていることから、例えば、カテーテルシャフト内を挿通する操作用ワイヤ等を用いて、カテーテルシャフトの先端付近自体を屈曲変形させる構成(一体型の構成)の場合等と比べ、以下のようになる。すなわち、例えば鼻腔等を通して、カテーテルを上記体内の中空器官に挿入する際には、まずはカテーテル本体のみが挿入されるが、上記一体型の構成とは異なり、この状態においては、カテーテルシャフト内には芯となる操作用ワイヤ等が存在しないことになる。したがって、上記一体型の構成の場合等と比べ、鼻腔等の形状に沿ってカテーテルシャフトが変形し易くなることから、鼻腔等を損傷するおそれ(鼻血等の出血のおそれ)が、低減される。また、そのようにして鼻腔等を通して挿入された後に、カテーテルシャフトのルーメン内に、カテーテル用器具のチューブ状部材が挿通されたとしても、カテーテルシャフトの内部に挿通されることから、この状態において鼻腔等が損傷されるおそれは、低くなる。
【0009】
本発明の一実施の形態に係るカテーテル用器具では、上記チューブ状部材内に挿通されており、上記チューブ状部材の先端部に先端側が固定されていると共に、上記ハンドル内に基端側が固定されている操作用ワイヤを、更に設けるようにし、上記チューブ状部材の先端付近に、上記軸方向に沿った長手方向を有する開口部が形成されているようにしてもよい。このようにした場合、上記操作用ワイヤの先端側がチューブ状部材の先端部に固定されていることから、この操作用ワイヤが基端側に引っ張られると、他の部分よりも変形し易い上記開口部付近において、チューブ状部材の先端付近が屈曲変形する。そして、カテーテルシャフトにおけるルーメンの壁面に対して、そのチューブ状部材の先端付近が押し当てられる結果、カテーテルシャフトの先端付近が変位するようになる。これにより、チューブ状部材の先端付近を屈曲変形させる機構が、簡易な構造で実現できるようになる。
【0010】
また、本発明の一実施の形態に係るカテーテル用器具では、上記操作用ワイヤを更に設けるようにし、上記チューブ状部材の先端付近に、そのチューブ状部材の周方向に沿って一部分に延在するスリットが、上記軸方向に沿って複数形成されているようにしてもよい。このようにした場合も、上記操作用ワイヤの先端側がチューブ状部材の先端部に固定されていることから、この操作用ワイヤが基端側に引っ張られると、他の部分よりも変形し易い上記スリット付近において、チューブ状部材の先端付近が屈曲変形する。そして、カテーテルシャフトにおけるルーメンの壁面に対して、そのチューブ状部材の先端付近が押し当てられる結果、カテーテルシャフトの先端付近が変位するようになる。これにより、チューブ状部材の先端付近を屈曲変形させる機構が、簡易な構造で実現できるようになる。
【0011】
ここで、本発明の一実施の形態に係るカテーテル用器具では、上記チューブ状部材を金属部材により構成すると共に、この金属部材における上記軸方向に沿った少なくとも基端側を、螺旋状に巻回された1または複数の金属線材を用いて構成するようにしてもよい。このようにした場合、チューブ状部材を構成する金属部材における少なくとも基端側が、上記金属線材を用いて構成されることで、そのチューブ状部材の先端付近が屈曲変形する際における追従性(上記体内の中空器官の形状に沿って、柔軟に変形する特性)が、向上することになる。また、チューブ状部材が柔軟に変形し易くなることから、屈曲変形した際に破損しにくくなり、チューブ状部材における耐久性も、向上することになる。
【0012】
この場合において、上記金属部材における上記基端側には、上記金属線材が配置されていると共に、上記金属部材における上記軸方向に沿った先端側には、上記金属線材が配置されていないようにしてもよい。このようにした場合、上記基端側には上記金属線材が配置されていることで、上記した追従性が向上する一方、上記先端側には上記金属線材が配置されていないことから、逆に、そのような追従性が低下することになる。このようにして、上記先端側における追従性が相対的に低下することで、チューブ状部材の先端付近が屈曲変形する際に、上記体内の中空器官が、効果的に変位するようになる。具体的には、上記体内の中空器官自体を変位させる際に発生する抗力によって、カテーテルシャフトの先端付近が押し戻されないようにすることができる。
【0013】
また、本発明の一実施の形態に係るカテーテル用器具では、上記チューブ状部材において、屈曲変形する部分である上記先端付近よりも先端側における剛性が、上記先端付近よりも基端側における剛性と比べて、大きくなっていてもよい。このようにした場合、上記先端側の剛性が上記基端側の剛性よりも大きいことから、チューブ状部材の先端付近が屈曲変形する際に、カテーテルシャフトにおけるルーメンの壁面に対して押し当てられる力が増加する結果、カテーテルシャフトの先端付近を、変位させ易くなる。これにより、上記体内の中空器官を上記損傷要因から遠ざけ易くなることから、その中空器官が損傷されるおそれが、更に確実に防止される。
【0014】
なお、上記体内の中空器官としては、例えば食道が挙げられる。この場合、本発明の一実施の形態に係るカテーテルは、患者に対する左房アブレーション術の際に、上記食道の内部温度を測定するために使用されるカテーテルとして構成することが可能である。
【0015】
本発明の一実施の形態に係るカテーテル用器具およびカテーテルによれば、上記チューブ状部材の先端付近が屈曲変形する際に、上記カテーテルシャフトにおけるルーメンの壁面に対して、屈曲変形しているチューブ状部材が押し当てられることで、カテーテルシャフトの先端付近が変位するようにしたので、上記体内の中空器官自体も変位し、この中空器官に対する損傷要因から遠ざけることができる。また、カテーテル本体とは別体のカテーテル用器具を用いて、カテーテルシャフトの先端付近を変位させるようにしたので、例えば上記一体型の構成の場合等と比べ、患者の鼻腔等を損傷するおそれを低減することができる。よって、上記体内の中空器官の内部温度を測定する際に、その中空器官が損傷されるおそれをより確実に防止しつつ、患者の体への負担を軽減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施の形態に係るカテーテルの概略構成例を表す模式図である。
【
図2】
図1に示した2つのハンドル同士の合体について説明するための模式図である。
【
図3】
図1に示した2つのハンドル同士の合体について説明するための他の模式図である。
【
図4】
図1中に示したIV-IV線に沿った矢視断面図である。
【
図5】
図1に示したカテーテル本体におけるハンドルの内部構造の一例を表す模式図である。
【
図6】
図1に示したカテーテル本体におけるハンドルの内部構造の一例を表す他の模式図である。
【
図7】
図1に示したチューブ状部材の先端付近における詳細構成例および屈曲変形の際の動作例を表す模式図である。
【
図8】
図1に示したカテーテル用器具におけるハンドルの内部構造の一例を表す模式図である。
【
図9】
図8に示したカテーテル用器具におけるハンドルの動作例を表す模式図である。
【
図10】
図1に示したカテーテルの使用態様例を表す模式図である。
【
図11】実施の形態および変形例1(1-1~1-3)に係るチューブ状部材における開口部の構成例を表す模式図である。
【
図12】変形例2に係るチューブ状部材におけるスリットの構成例を表す模式図である。
【
図13】変形例2および変形例3(3-1,3-2)に係るスリットを平面上に展開した場合の構成例を表す模式図である。
【
図14】実施の形態および変形例4(4-1,4-2)に係るチューブ状部材における金属線材を用いた金属部材の構成例を表す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.実施の形態(カテーテル本体とカテーテル用器具とを備えたカテーテルの構成例)
2.変形例
変形例1(チューブ状部材の先端付近における開口部の他の構成例)
変形例2,3(チューブ状部材の先端付近にスリットを設けた場合の構成例)
変形例4(チューブ状部材における金属線材の他の構成例)
3.その他の変形例
【0018】
<1.実施の形態>
図1は、本発明の一実施の形態に係るカテーテル(カテーテル3)の概略構成例を、正面図(Z-X正面図)にて模式的に表したものである。また、
図2,
図3はそれぞれ、
図1に示した2つのハンドル(後述するハンドル12,22)同士の合体について説明するための、模式図である。
図4は、
図1中に示したIV-IV線に沿った矢視断面図(X-Y断面図)である。
【0019】
このカテーテル3は、患者における不整脈等の治療(例えば左房アブレーション術)の際に、その患者の体内の中空器官(例えば、食道等の消化器官)の内部温度(内壁の温度)に関する情報を測定するために用いられるカテーテル(いわゆる食道カテーテル)である。具体的には、詳細は後述するが、このカテーテル3は、鼻(鼻腔)を通して(経鼻的アプローチにて)患者の食道等に挿入されるようになっている。ただし、このカテーテル3が、口(口腔)を通して(経口的アプローチにて)、患者の食道等に挿入されるようにしてもよい。
【0020】
図1に示したように、カテーテル3は、カテーテル本体1と、このカテーテル3に適用されるカテーテル用器具2と、を備えている。なお、カテーテル本体1は、患者に対する治療の度に、使い捨てられる機器(使い捨てタイプ)となっている一方、カテーテル用器具2は、患者に対する治療後においても再利用可能な器具(リユースタイプ)となっている。
【0021】
[カテーテル本体1]
カテーテル本体1は、
図1~
図3に示したように、長尺部分としてのカテーテルシャフト11(カテーテルチューブ)と、このカテーテルシャフト11の基端側に装着されたハンドル12と、を備えている。
【0022】
なお、このハンドル12は、本発明における「第1ハンドル」の一具体例に対応している。
【0023】
(カテーテルシャフト11)
カテーテルシャフト11は、可撓性を有する管状構造(中空のチューブ状部材)からなり、自身の軸方向(Z軸方向)に沿って延伸する形状となっている(
図1参照)。具体的には、カテーテルシャフト11の軸方向の長さは、ハンドル12の軸方向(Z軸方向)の長さと比べて、数倍~数十倍程度に長くなっている。
【0024】
図1に示したように、カテーテルシャフト11は、比較的可撓性に優れるように構成された、先端部(先端可撓部11A)を有している。このカテーテルシャフト11はまた、自身の軸方向(Z軸方向)に沿って延在するように内部に複数のルーメン(内孔,細孔,貫通孔)が形成された、いわゆるマルチルーメン構造を有している。このようなカテーテルシャフト11におけるルーメン内には、各種の細線(後述する導線50等)がそれぞれ、互いに電気的に絶縁された状態で挿通されていたり、後述するカテーテル用器具2におけるチューブ状部材21が、挿通されるようになっている。
【0025】
具体的には、
図4に示したように、このカテーテルシャフト11には、中央部に配置された1つのメインルーメン61と、このメインルーメン61の外周側に等方的に配置された複数(この例では6つ)のサブルーメン62A~62Fとが、設けられている。
【0026】
なお、上記したメインルーメン61は、本発明における「ルーメン」の一具体例に対応している。
【0027】
メインルーメン61には、軸方向(Z軸方向)に沿って延伸する、上記したカテーテル用器具2におけるチューブ状部材21が、内部を挿通するようになっている。このメインルーメン61内ではまた、
図4に示したように、後述するカテーテル用器具2における操作用ワイヤ40が、このチューブ状部材21内に挿通されている。なお、このようなメインルーメン61の内径は、例えば、0.6~4.5mm程度である。
【0028】
サブルーメン62A,62B内には、
図4に示した例では、細線が何も挿通されていない一方、サブルーメン62C,62D,62E,62F内にはそれぞれ、導線50(リード線)が挿通されている。なお、このような細線(導線50)はそれぞれ、カテーテルシャフト11の軸方向(Z軸方向)に沿って延伸している。
【0029】
各導線50における先端側は、後述する各電極(電極111~115)に対して、個別に電気的接続されている。また、各導線50における基端側は、カテーテルシャフト11内(サブルーメン62C,62D,62E,62F内)から、ハンドル12内および後述するコネクタ121内を介して、カテーテル3の外部へと接続可能となっている(
図1参照)。
【0030】
ここで、
図4に示したように、カテーテルシャフト11は、基本的には、内周側に位置する管状のチューブ60Aと、外周側に位置する管状のチューブ60Bとによって、構成されている。また、メインルーメン61は、チューブ60Aの内周側に位置する管状のチューブ60C内に形成されていると共に、サブルーメン62A~62Fはそれぞれ、チューブ60Aの内部に配置された、管状のチューブ60E内に形成されている。
【0031】
このようなカテーテルシャフト11の外径は、例えば、1.0~5.0mm程度であり、カテーテルシャフト11の軸方向の長さは、例えば、300~1500mm程度である。また、カテーテルシャフト11(上記したチューブ60A,60B,60C,60E)の構成材料としては、例えば、ポリアミド、ポリエーテルポリアミド、ポリウレタン、ポリエーテルブロックアミド(PEBAX)(登録商標)およびナイロン等の、熱可塑性樹脂が挙げられる。なお、チューブ60C,60Eとしては、このような熱可塑性樹脂のうち、例えば、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂が用いられる。また、チューブ60Bが、例えば、外周側の層(ポリアミド等からなる層)と、内周側の層(SUS(ステンレス鋼)ブレードからなる層)と、により構成されていてもよい。
【0032】
また、
図1に示したように、カテーテルシャフト11の先端付近(先端可撓部11A)には、金属リングからなる複数のリング状の電極111~115と、1つの先端チップ110とが、所定の間隔をおいて配置されている。具体的には、電極111~115はそれぞれ、先端可撓部11Aの途中部分(中央領域付近)に固定配置される一方、先端チップ110は、先端可撓部11Aの最先端側に固定配置されている。
【0033】
上記した5つの電極111~115は、カテーテルシャフト11の先端側(先端チップ110側)から基端側に向けて、この順序にて所定の間隔で並んで配置されている。なお、この所定の間隔(電極111~115間の距離)は、例えば10mm以下であることが好ましく、更に好ましくは2~5mm程度(例えば5mm)である。また、電極111~115の幅はそれぞれ、例えば7mm以下であることが好ましく、更に好ましくは1~5mm程度(例えば5mm)である。
【0034】
このような電極111~115はそれぞれ、例えば、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、SUS、金(Au)、白金(Pt)等の、電気伝導性の良好な金属材料により構成されている。また、先端チップ110は、例えば各電極111~115と同様の金属材料により構成されているほか、例えばシリコーンゴム樹脂やポリウレタン等の、樹脂材料により構成されている。なお、これらの電極111~115および先端チップ110の外径は、特には限定されないが、上記したカテーテルシャフト11の外径と同程度であることが望ましい。
【0035】
ここで、
図1中に括弧書きにて示したように、カテーテルシャフト11における先端可撓部11Aには、各電極111~115の近傍(例えば、各電極111~115の対向位置)に、これらと対応付けられた5つの温度センサ51~55が内蔵されている。すなわち、この例では、5つの電極111~115と5つの温度センサ51~55とが、1対1の対応関係にて、複数組(この例では5組)設けられている。なお、この例では、先端チップ110の近傍には、これと対となる(電気的接続された)温度センサは設けられていない。
【0036】
これらの温度センサ51~55はそれぞれ、例えば前述した左房アブレーション術中において、食道等の内部温度を測定するためのセンサであり、各電極111~115と個別に電気的接続されている。具体的には、
図1に示したように、温度センサ51は、電極111の近傍に内蔵されており、この電極111に対して電気的に接続されている。同様に、温度センサ52は、電極112の近傍に内蔵されており、この電極112に対して電気的に接続されている。温度センサ53は、電極113の近傍に内蔵されており、この電極113に対して電気的に接続されている。温度センサ54は、電極114の近傍に内蔵されており、この電極114に対して電気的に接続されている。温度センサ55は、電極115の近傍に内蔵されており、この電極115に対して電気的に接続されている。なお、これらの電気的接続はそれぞれ、例えば、電極111~115の内周面上に温度センサ51~55が個別にスポット溶接されることで、実現されるようになっている。
【0037】
このような温度センサ51~55はそれぞれ、例えば熱電対(熱電対の測温接点)を用いて構成されている。また、これらの温度センサ51~55に個別に電気的接続されたリード線(前述した導線50)はそれぞれ、例えば、熱電対を構成する異種同士の金属線からなる。なお、これらの導線50はそれぞれ、前述したように、カテーテルシャフト11におけるルーメン(サブルーメン62C~62F)内に挿通され、ハンドル12内へ引き出されるようになっている(
図1,
図4参照)。
【0038】
(ハンドル12)
ハンドル12は、
図1~
図3に示したように、カテーテルシャフト11の基端側に装着されており、カテーテル3(カテーテル本体1)の使用時に、操作者(医師)が掴む(握る)部分である。また、詳細は後述するが、このハンドル12は、後述するカテーテル用器具2におけるハンドル22とは、別体として設けられている。
【0039】
ここで、
図5および
図6はそれぞれ、このようなカテーテル本体1におけるハンドル12の内部構造の一例を、模式的に表したものである。なお、
図6に示した内部構造は、
図5に示した内部構造において、前述したカテーテル用器具2におけるチューブ状部材21が、カテーテルシャフト11内に挿通された状態を示している。
【0040】
図1~
図3,
図5,
図6に示したように、ハンドル12は、ハンドル本体120、コネクタ121、複数の凹部122、ガイド部123、挿入口124および流体注入管129を有している。
【0041】
ハンドル本体120は、操作者が実際に握る部分(把持部)に相当し、ハンドル12における外装としても機能する部分である。なお、このハンドル本体120は、例えば、ポリカーボネート、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)、アクリル、ポリオレフィン、ポリオキシメチレン、ポリアセタール等の合成樹脂により構成されている。
【0042】
コネクタ121は、前述した導線50(温度センサ51~55に対して個別に電気的接続されたリード線)をカテーテル3の外部に接続させるための部分である。このコネクタ121は、
図1~
図3,
図5,
図6に示したように、ハンドル12における軸方向(Z軸方向)から外れた側面側に(X軸方向に沿って)、設けられている。換言すると、コネクタ121は、Z軸方向に沿って延在するハンドル本体120から、X軸方向に沿って突き出るようにして設けられている。
【0043】
複数の凹部122はそれぞれ、
図2,
図3に示したように、ハンドル12における後述するハンドル22側に設けられており、Z軸方向に沿って延在する凹部となっている。これら複数の凹部122同士は、ハンドル本体120において、X-Y平面上を周回するようにして配置されている。このような各凹部122は、後述するハンドル22に設けられた各凸部222に対して、個別に嵌合可能に構成されている(
図2,
図3中の破線の矢印d1参照)。このようにして、このハンドル12は、後述するハンドル22に対して合体可能に構成されている。つまり、これらのハンドル12,22同士は、互いに合体可能に構成されており、換言すると、ハンドル全体として、互いに別体の2つのハンドル12,22に、分割可能に構成されている。
【0044】
ガイド部123は、
図5,
図6に示したように、カテーテルシャフト11の基端部分をハンドル本体120内で固定すると共に、
図6に示したように、後述するチューブ状部材21がカテーテルシャフト11内に挿通される際に、このカテーテルシャフト11の挿通路を案内する部分である。
【0045】
挿入口124は、
図6に示したように、後述するチューブ状部材21がハンドル本体120内に挿入される部分であると共に、このチューブ状部材21の位置(カテーテルシャフト11内への挿通位置)を固定可能に構成されている。このような挿入口124は、例えばゴム弁等により構成されている。
【0046】
流体注入管129は、
図5,
図6に示したように、ハンドル本体120内からカテーテルシャフト11内に対して、所定の流体(例えば造形剤など)を注入させるための管である。なお、このようにして流体注入管129から注入された流体は、カテーテルシャフト11におけるメインルーメン61内を通って、前述した先端チップ110に形成された貫通孔から、外部へ排出されるようになっている。
【0047】
[カテーテル用器具2]
カテーテル用器具2は、
図1~
図3に示したように、長尺部分としてのチューブ状部材21(スタイレット)と、このチューブ状部材21の基端側に装着されたハンドル22と、を備えている。
【0048】
なお、このハンドル22は、本発明における「第2ハンドル(ハンドル)」の一具体例に対応している。
【0049】
(チューブ状部材21)
チューブ状部材21は、
図1~
図3,
図6に示したように、前述したカテーテル本体1のカテーテルシャフト11に形成されたルーメン(メインルーメン61)内に挿通されるようになっており、軸方向(Z軸方向)に沿って延在している。また、このチューブ状部材21は、
図6に示したように、上記したハンドル12(ハンドル本体120)内を、Z軸方向に沿って直線状に挿通した状態で、カテーテルシャフト11内(メインルーメン61内)に挿通されるようになっている。
【0050】
なお、このようなチューブ状部材21の外径は、例えば、0.5~4.0mm程度であり、チューブ状部材21の軸方向の長さは、例えば、400~1700mm程度である。
【0051】
ここで、
図7(
図7(A),
図7(B))は、このようなチューブ状部材21の詳細例について、模式的に表したものである。具体的には、
図7(A)は、チューブ状部材21の先端付近における詳細構成例を、模式的に表したものであり、
図7(B)は、後述する、チューブ状部材21の先端付近における屈曲変形の際の動作例を、模式的に表したものである。なお、これらの
図7(A),
図7(B)においては、カテーテルシャフト11(先端可撓部11A付近)についても、破線にて併せて図示している。
【0052】
図7(A),
図7(B)に示したように、チューブ状部材21内には、Z軸方向に沿って延伸する操作用ワイヤ40が挿通されている。この操作用ワイヤ40の先端側は、チューブ状部材21の先端部に固定されており、操作用ワイヤ40の基端側は、後述するハンドル22内に固定されている。また、
図7(A),
図7(B)に示したように、チューブ状部材21の先端付近(カテーテルシャフト11の先端可撓部11A付近)には、軸方向(Z軸方向)に沿った長手方向を有する、矩形状の開口部210が形成されている。つまり、チューブ状部材21における先端付近は、そのような開口部210を有する半割り構造となっている。
【0053】
なお、チューブ状部材21における、上記した「先端付近」とは、一例として、以下のようにして定義される。すなわち、この「先端付近」とは、例えば、チューブ状部材21の先端から基端までの全長をLとした場合において、その先端近傍(先端から基端側へ向けて所定の距離だけ離れた位置)から基端側に向かって、(1/3)×Lまで長さの部分を意味している。ただし、このような定義には限られず、他の定義で規定するようにしてもよい。
【0054】
このようなチューブ状部材21は、
図7(A),
図7(B)に示したように、金属パイプ等からなる金属部材70により構成されている。また、この金属部材70における軸方向(Z軸方向)に沿った少なくとも基端側(
図7(A),
図7(B)の例では基端側のみ)は、螺旋状に巻回された1または複数の金属線材としての、1つの金属コイル71を用いて構成されている。つまり、
図7(A),
図7(B)の例では、金属部材70における基端側には、そのような金属コイル71が配置されていると共に、金属部材70における軸方向に沿った先端側には、金属コイル71が配置されていない。ただし、この例には限られず、金属部材70における基端側および先端側の双方に、そのような金属線材としての金属コイル71が配置されているようにしてもよい。
【0055】
なお、この金属コイル71は、本発明における「金属線材」の一具体例に対応している。
【0056】
このような金属部材70および金属コイル71はそれぞれ、例えば、ステンレス合金,ニッケル-チタン合金等の金属材料により構成されている。
【0057】
また、このチューブ状部材21では、
図7(A)に示したように、後述するようにして屈曲変形する部分である先端付近(
図7(B)中の開口部210付近を参照)を基準として、この先端付近よりも先端側および基端側における剛性の大小関係が、以下のようになっている。すなわち、
図7(A)の例では、チューブ状部材21において、開口部210付近よりも先端側の領域A1における剛性k1が、開口部210付近よりも基端側の領域A2における剛性k2と比べて、大きくなっている(k1>k2)。
【0058】
なお、
図7(B)に示した、チューブ状部材21の先端付近における屈曲変形(屈曲変形動作)の詳細については、後述する。
【0059】
(ハンドル22)
ハンドル22は、
図1~
図3に示したように、チューブ状部材21の基端側に装着されており、カテーテル3(カテーテル用器具2)の使用時に、操作者(医師)が掴む(握る)部分である。また、詳細は後述するが、このハンドル22は、前述したカテーテル本体1におけるハンドル12とは、別体として設けられている。
【0060】
ここで、
図8は、このようなカテーテル用器具2におけるハンドル22の内部構造の一例を、模式的に表したものである。また、
図9(
図9(A),
図9(B))は、
図8に示したハンドル22の動作例を、模式的に表したものである。
【0061】
図1~
図3,
図8,
図9に示したように、ハンドル22は、ハンドル本体220、回転体221、複数の凸部222および駆動体223を有している。
【0062】
ハンドル本体220は、操作者が実際に握る部分(把持部)に相当し、ハンドル22における外装としても機能する部分である。また、
図8,
図9に示したように、前述したチューブ状部材21の基端は、このハンドル本体220上で固定されるようになっている。なお、このようなハンドル本体220は、例えば、前述したハンドル本体120と同様の合成樹脂により構成されている。
【0063】
複数の凸部222はそれぞれ、
図2,
図3,
図8,
図9に示したように、ハンドル22における前述したハンドル12側に設けられており、Z軸方向に沿って延在する凸部となっている。これら複数の凸部222同士は、ハンドル本体220において、X-Y平面上を周回するようにして配置されている。このような各凸部222は、前述したハンドル12に設けられた各凹部122に対して、個別に嵌合可能に構成されている(
図2,
図3中の破線の矢印d1参照)。このようにして、このハンドル22は、前述したハンドル12に対して合体可能に構成されている。つまり、前述したように、これらのハンドル12,22同士は、互いに合体可能に構成されており、換言すると、ハンドル全体として、互いに別体の2つのハンドル12,22に、分割可能に構成されている。
【0064】
また、例えば、
図3中の破線の矢印d2で示したように、このようなハンドル12,22同士が合体する際における、軸方向(Z軸方向)と直交する面内(X-Y平面内)での合体角度に応じて、以下のような調整が可能となっている。すなわち、このようなハンドル12,22同士の合体角度に応じて、後述する、チューブ状部材21の先端付近が屈曲変形する際(
図7(B)参照)の変形の向きが、任意に調整可能となっている。つまり、ハンドル12における各凹部122と、ハンドル22における各凸部222とについて、互いに嵌合する組み合わせを変更することで、上記した合体角度も変更され、その結果、上記した屈曲変形の際の変形の向きも、所望の向きに変更可能となっている。
【0065】
回転体221は、
図8,
図9に示したように、ハンドル22における基端部分(ハンドル本体220の基端側)に配置されており、チューブ状部材21の先端付近を屈曲変形させるための操作(回転操作)が操作者によって行われる、操作部として機能する部分である。つまり、この回転体221は、そのような回転操作の際に用いられる部分となっている。
【0066】
なお、このような回転体221は、本発明における「変形操作部」の一具体例に対応している。
【0067】
駆動体223は、回転体221に対する上記した回転操作に連動して、ハンドル本体220内を軸方向(Z軸方向)に沿って、双方向に移動する部分である。また、
図8,
図9に示したように、前述した操作用ワイヤ40の基端は、ハンドル本体220内において、この駆動体223上に固定されている。これにより駆動体223は、下記のようにして、操作用ワイヤ40を駆動するようになっている。
【0068】
このような構成のハンドル22では、操作者によって、回転体221が回転操作されると(
図9(A)中の破線の矢印d31参照)、この回転操作に連動して、駆動体223が、ハンドル本体220内を移動する(
図9(B)中の破線の矢印d32参照)。具体的には、駆動体223は、ハンドル本体220内において、Z軸方向に沿って回転体221側(基端側)に移動する。これにより、操作用ワイヤ40が基端側に引っ張られ(
図9(B)中の破線の矢印d4参照)、その結果、詳細は後述するが、チューブ状部材21の先端付近が屈曲変形するようになっている。
【0069】
[動作および作用・効果]
(A.基本動作)
このカテーテル3は、患者における不整脈等の治療(例えば左房アブレーション術)の際に用いられることで、その患者の体内の中空器官(食道等)の内部温度に関する情報が測定される。具体的には、カテーテル3のうちのカテーテル本体1を用いて、そのような中空器官の内部温度に関する情報が測定される。なお、このときのアブレーションの手法としては、高周波電流を用いて高温焼灼(加熱)する手法と、液化亜酸化窒素や液体窒素等を用いて低温焼灼(冷却)する手法とが挙げられる。
【0070】
図10(A)に模式的に示したように、このような内部温度測定の際には、例えば患者9の鼻(鼻腔N)を通して(経鼻的アプローチにて)、カテーテル本体1におけるカテーテルシャフト11が、その先端側(先端可撓部11A側)から患者9の食道Eへ挿入される。
【0071】
ここで、このようなカテーテルシャフト11における先端可撓部11Aには、温度測定用金属リングとしての5つの電極111~115と、それらに個別に電気的接続された5つの温度センサ51~55とが設けられている。そのため、これらを利用して、食道Eの内部温度に関する情報を測定(監視)することが可能となる。なお、
図10(A)に示したように、カテーテルシャフト11は先端可撓部11A側から患者9の食道Eに挿入されると、電極111が食道Eの下側(胃側)、電極115が食道の上側(口腔側)をそれぞれ測定するように配置される。
【0072】
このようにして、カテーテル本体1を利用して患者9の食道Eの内部温度を監視することで、例えば上記した左房アブレーション術の際に、その食道Eが損傷を受けてしまうおそれを防止することが可能となる。すなわち、アブレーションカテーテルを用いて、例えば心臓の左房後壁を焼灼する場合(左房アブレーション術の際には)、一般に、この左房後壁に近接する食道もが加熱または冷却され、食道が損傷を受けてしまうおそれがある。そこで、このようにして食道Eの内部温度を監視することで事前の対応を取ることができるようになり、そのような損傷のおそれを防止することが可能となる。
【0073】
具体的には、例えばそのような左房アブレーション術中において、測定された食道Eの内部温度が所定の温度に到達した場合には、アブレーションカテーテル(カテーテル本体1)への通電を遮断する、といった対応を取ることができる。これにより、上記したようにして食道Eが損傷してしまうおそれを防止することが可能となる。
【0074】
(B.チューブ状部材21の屈曲変形動作)
また、本実施の形態のカテーテル3では、カテーテル用器具2におけるチューブ状部材21の先端付近での屈曲変形動作を利用することで、詳細は後述するが、食道Eの内部温度を測定する際に食道Eが損傷してしまうおそれを、より確実に防止するようにしている。具体的には、例えば上記したように、測定された食道Eの内部温度が所定の温度に到達した場合には、上記したカテーテル本体1に対してカテーテル用器具2を取り付けて、合体させて使用することで、そのようなおそれを、より確実に防止するようになっている。以下、このようなチューブ状部材21の先端付近における屈曲変形動作について、詳細に説明する。
【0075】
まず、操作者によって、カテーテル用器具2のハンドル22に対して、前述した回転操作が行われると、以下のようになる。すなわち、ハンドル22の回転体221が回転操作されると(
図9(A)中の破線の矢印d31参照)、この回転操作に連動して、駆動体223が、ハンドル本体220内を移動する(
図9(B)中の破線の矢印d32参照)。具体的には、駆動体223は、ハンドル本体220内において、Z軸方向に沿って回転体221側(基端側)に移動する。これにより、操作用ワイヤ40が基端側に引っ張られ(
図9(B)中の破線の矢印d4参照)、チューブ状部材21の先端付近における開口部210から、その操作用ワイヤ40が飛び出した状態となる。ここで、この操作用ワイヤ40の先端側は、前述したように、チューブ状部材21の先端部に固定されていることから、この操作用ワイヤ40が基端側に引っ張られると、他の部分よりも変形し易い開口部210付近において、チューブ状部材21の先端付近が、屈曲変形する。これにより、カテーテルシャフト11におけるメインルーメン61の壁面に対して、そのチューブ状部材21の先端付近が、押し当てられる(
図7(B)中の破線の矢印d5参照)。
【0076】
すると、例えば
図7(B)に示したように、チューブ状部材21の先端付近が押し当てられる結果、カテーテルシャフト11の先端付近(先端可撓部11A)が、変位(屈曲変位)する(
図7(B)中の破線の矢印d6参照)。
【0077】
そして、このようにしてカテーテルシャフト11の先端付近が変位することで、例えば
図10(B)に示したように、患者9の食道Eの内壁に対して、このカテーテルシャフト11の先端付近の変位による押圧力が、付与される(破線の矢印d6参照)。その結果、このような押圧力の付与により、患者9の食道E自体も変位することになる(破線の矢印d7参照)。なお、このような食道E自体の変位量は、例えば、数cm程度である。
【0078】
(C.作用・効果)
このようにして、本実施の形態のカテーテル3(カテーテル本体1およびカテーテル用器具2)では、例えば、以下のような作用および効果が得られる。
【0079】
(チューブ状部材21の屈曲変形動作について)
まず、本実施の形態では、上記したようにして、カテーテル用器具2のハンドル22に対して回転操作が行われて、チューブ状部材21の先端付近における屈曲変形動作がなされる。そして、上記したようにして、屈曲変形しているチューブ状部材21を利用して、カテーテルシャフト11の先端付近が変位することで、患者9の食道E自体も変位する。これにより、食道Eに対する損傷要因(例えば前述したように、アブレーションの際の過熱源または冷却源)から、この食道E自体を遠ざけることができる。具体的には、例えば、測定された食道Eの内部温度が上がってきた場合に、その食道Eの位置をずらすことで、食道Eの内部温度を下げる、といった対応を取ることができる。
【0080】
また、本実施の形態では、カテーテル本体1とは別体のカテーテル用器具2を用いて、上記したようにして、カテーテルシャフト11の先端付近を変位させている。したがって、例えば比較例としての、カテーテルシャフト内を挿通する操作用ワイヤ等を用いて、カテーテルシャフトの先端付近自体を屈曲変形させる構成(一体型の構成)の場合等と比べ、以下のようになる。すなわち、例えば鼻腔N等を通して、カテーテル3を食道Eに挿入する際には、まずはカテーテル本体1のみが挿入されるが、本実施の形態では上記比較例の構成とは異なり、この状態においては、カテーテルシャフト11内には芯となる操作用ワイヤ等が存在しないことになる。したがって、本実施の形態では上記比較例の場合等と比べ、鼻腔N等の形状に沿ってカテーテルシャフト11が変形し易くなることから、鼻腔N等を損傷するおそれ(鼻血等の出血のおそれ)が、低減される。また、そのようにして鼻腔N等を通して挿入された後に、カテーテルシャフト11のメインルーメン61内に、カテーテル用器具2のチューブ状部材21が挿通されたとしても、カテーテルシャフト11の内部に挿通されることから、この状態において鼻腔N等が損傷されるおそれは、低くなる。
【0081】
以上のことから、本実施の形態では、食道Eの内部温度を測定する際に、その食道Eが損傷されるおそれをより確実に防止しつつ、患者9の体への負担を軽減することが可能となる。
【0082】
また、本実施の形態では、チューブ状部材21内に挿通される操作用ワイヤ40を更に設けるようにすると共に、このチューブ状部材21の先端付近に、軸方向(Z軸方向)に沿った長手方向を有する開口部210が形成されているようにしたので、以下のようになる。すなわち、チューブ状部材21の先端付近が屈曲変形する際には、上記したようにして、そのチューブ状部材21の開口部210から操作用ワイヤ40が飛び出した状態において、カテーテルシャフト11におけるメインルーメン61の壁面に対して、そのチューブ状部材21の先端付近が押し当てられる結果、このカテーテルシャフト11の先端付近が変位するようになる。これにより、チューブ状部材21の先端付近を屈曲変形させる機構を、簡易な構造で実現することが可能となる。
【0083】
更に、本実施の形態では、チューブ状部材21を金属部材70により構成すると共に、この金属部材70における軸方向(Z軸方向)に沿った少なくとも基端側を、螺旋状に巻回された1または複数の金属線材(金属コイル71)を用いて構成するようにしたので、以下のようになる。すなわち、チューブ状部材21を構成する金属部材70における少なくとも基端側が、金属コイル71を用いて構成されることで、そのチューブ状部材21の先端付近が屈曲変形する際における追従性(食道Eの形状に沿って柔軟に変形する特性)を、向上させることが可能となる。また、チューブ状部材21が柔軟に変形し易くなることから、屈曲変形した際に破損しにくくなり、チューブ状部材21における耐久性を向上させることも可能となる。
【0084】
加えて、本実施の形態では、金属部材70における基端側には、金属コイル71が配置されていると共に、金属部材70における先端側には、金属コイル71が配置されていないようにしたので、以下のようになる。すなわち、基端側には金属コイル71が配置されていることで、上記した追従性が向上する一方、先端側には金属コイル71が配置されていないことから、逆に、そのような追従性が低下することになる。このようにして、先端側における追従性が相対的に低下することで、チューブ状部材21の先端付近が屈曲変形する際に、食道Eを効果的に変位させることができる。具体的には、食道E自体を変位させる際に発生する抗力によって、カテーテルシャフト11の先端付近が押し戻されないようにすることが可能となる。
【0085】
また、本実施の形態では、チューブ状部材21において、屈曲変形する部分である先端付近(開口部210付近)よりも先端側の領域A1における剛性k1が、その先端付近よりも基端側の領域A2における剛性k2と比べて大きくなるようにしたので、以下のようになる。すなわち、チューブ状部材21の先端付近が屈曲変形する際に、カテーテルシャフト11におけるメインルーメン61の壁面に対して押し当てられる力が増加する結果、カテーテルシャフト11の先端付近を、変位させ易くなる。具体的には、先端側の領域A1付近での剛性k1が、相対的に大きくなっている(相対的に硬い構造となっている)ことから、上記した壁面に対して押し当てられる力が、増加することになる。このようにして、カテーテルシャフト11の先端付近を変位させ易くなる結果、前述した損傷要因から食道Eを遠ざけ易くなるため、食道Eが損傷されるおそれを、更に確実に防止することが可能となる。
【0086】
(ハンドル12,22について)
更に、本実施の形態では、カテーテル本体1のハンドル12と、カテーテル用器具2のハンドル22とが、互いに合体可能(互いに別体として分割可能)に構成されているようにしたので、以下のようになる。すなわち、カテーテル3全体として、前述したように、使い捨てタイプのカテーテル本体1と、再利用可能な(リユースタイプの)カテーテル用器具2とをそれぞれ、個別に使い分けることができるようになる。
【0087】
その結果、本実施の形態では、上記したように、食道Eの内部温度を測定する際に、その食道Eが損傷されるおそれをより確実に防止しつつ、患者9の体への負担を軽減することに加え、カテーテル3を使用する際のコストを、低減することが可能となる。
【0088】
また、本実施の形態では、ハンドル12,22同士が合体する際における前述した合体角度に応じて、チューブ状部材21の先端付近が屈曲変形する際の変形の向きが、調整可能となっているようにしたので、以下のようになる。すなわち、カテーテル3を使用する際の利便性を、向上させることが可能となる。
【0089】
なお、この他にも、例えば、ハンドル12,22同士を完全には合体させていない状態(ハンドル12,22同士を、互いに少し離間させて配置した状態)とした場合には、ハンドル22内における操作用ワイヤ40の基端位置を、微調整可能となることから以下のようになる。すなわち、このようにした場合には、チューブ状部材21の先端付近が屈曲変形する際の変形位置についても、微調整することができることから、カテーテル3を使用する際の利便性を、向上させることが可能となる。
【0090】
更に、本実施の形態では、ハンドル12に設けられた凹部122と、ハンドル22に設けられた凸部222とが、互いに嵌合可能に構成されているようにしたので、以下のようになる。すなわち、例えば逆に、ハンドル12側が凸部であると共に、ハンドル22側が凹部である場合、そのハンドル12単体(カテーテル本体のハンドル)を使用して把持した際に、凸部が外部に引っ掛かってしまうおそれがある。これに対して、本実施の形態では、ハンドル12側が凹部122であると共に、ハンドル22側が凸部222であることから、カテーテル本体1のハンドル12単体を使用する際に、凸部が外部に引っ掛かってしまうおそれを、回避することができる。その結果、本実施の形態では、カテーテル3を使用する際の利便性を、向上させることが可能となる。
【0091】
加えて、本実施の形態では、前述した導線50を外部に接続させるためのコネクタ121が、ハンドル12における軸方向(Z軸方向)から外れた側面側に設けられていると共に、チューブ状部材21がハンドル22内を直線状に挿通した状態で、カテーテルシャフト11のメインルーメン61内に挿通されているようにしたので、以下のようになる。
【0092】
すなわち、まず、チューブ状部材21がハンドル22内を直線状に挿通した状態で、カテーテルシャフト11のメインルーメン61内に挿通されていることから、このチューブ状部材21の先端付近が屈曲変形する際に、カテーテルシャフト11におけるメインルーメン61の壁面に対して押し当てられる力が、減衰しにくくなる。その結果、カテーテルシャフト11の先端付近を変位させ易くなり、前述した損傷要因から食道Eを遠ざけ易くなることから、食道Eが損傷されるおそれを、更に確実に防止することが可能となる。
【0093】
また、上記したコネクタ121が、ハンドル12における上記側面側に位置していることから、例えば、このハンドル12を台上などに載置した際に、その載置位置が安定化し、軸方向(Z軸方向)を中心軸としたハンドル12の回転移動を、防止することができる。その結果、カテーテル3を使用する際の利便性も、向上させることが可能となる。
【0094】
<2.変形例>
続いて、上記実施の形態の変形例(変形例1~4)について説明する。なお、以下では、実施の形態における構成要素と同一のものには同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0095】
[変形例1]
図11(
図11(A)~
図11(D))は、実施の形態および変形例1(1-1~1-3)に係るチューブ状部材における開口部210の構成例を、模式的に表したものである。具体的には、
図11(A)は、実施の形態のチューブ状部材21における前述した開口部210の構成例を、
図11(B)は、変形例1-1のチューブ状部材21A1における開口部210の構成例を、それぞれ示している。また、
図11(C)は、変形例1-2のチューブ状部材21A2における開口部210の構成例を、
図11(D)は、変形例1-3のチューブ状部材21A3における開口部210の構成例を、それぞれ示している。
【0096】
まず、
図11(A)に示した実施の形態のチューブ状部材21では、前述したように、その先端付近に、軸方向(Z軸方向)に沿った長手方向を有する開口部210が、1つ形成されている。そして、この開口部210は矩形状であり、直角状の角部を有している。なお、この直角状の角部については、完全な直角ではなく、多少の丸みを帯びているようにしてもよい。
【0097】
一方、
図11(B)に示した変形例1-1のチューブ状部材21A1においても、チューブ状部材21と同様に、その先端付近に、軸方向に沿った長手方向を有する開口部210が、1つ形成されている。ただし、このチューブ状部材21A1における開口部210では、矩形状であるものの、円弧状の非角部を有している。
【0098】
また、
図11(C)に示した変形例1-2のチューブ状部材21A2では、その先端付近に、軸方向に沿った長手方向を有すると共に曲線状の縁を有する、開口部210が1つ形成されている。
【0099】
更に、
図11(D)に示した変形例1-3のチューブ状部材21A3では、その先端付近に、実施の形態と同様の形状を有する開口部210(
図11(A)参照)が、軸方向(Z軸方向)に沿って、複数形成されている。また、これら複数の開口部210同士は、軸方向に沿って、互いに離間して配置されている。
【0100】
このような構成の変形例1(1-1~1-3)においても、基本的には実施の形態と同様の作用により、同様の効果を得ることが可能となる。
【0101】
また、特に、変形例1-1,1-2(
図11(B),
図11(C))の場合には、実施の形態や変形例1-3(
図11(A),
図11(D))の場合と比較して、以下のような効果が得られる。すなわち、変形例1-1,1-2の開口部210では、上記したように、円弧状の非角部や、曲線状の縁が設けられており、チューブ状部材21A1,21A2の先端付近が屈曲変形する際に、応力が局所的に集中しにくい形状となっている。したがって、これらの変形例1-1,1-2では、チューブ状部材21A1,21A2を繰り返して屈曲変形させても、破損しにくくなることから、実施の形態や変形例1-3の場合と比べ、チューブ状部材21A1,21A2の耐久性を向上させることが可能となる。
【0102】
[変形例2,3]
図12(
図12(A),
図12(B))は、変形例2に係るチューブ状部材21Bにおけるスリット210Bの構成例を、模式的に表したものである。また、
図13(
図13(A)~
図13(C))は、変形例2および変形例3(3-1,3-2)に係るスリット210Bをそれぞれ平面上に展開した場合の構成例を、模式的に表したものである。具体的には、
図13(A)は、変形例2のチューブ状部材21Bにおけるスリット210Bを、
図13(B)は、変形例3-1のチューブ状部材21C1におけるスリット210Bを、
図13(C)は、変形例3-2のチューブ状部材21C2におけるスリット210Bを、それぞれ平面上に展開した場合の構成例について、模式的に示している。
【0103】
図12(A),
図12(B),
図13(A)に示したように、この変形例2のチューブ状部材21Bにおける先端付近には、このチューブ状部材21Bの周方向に沿って一部分に延在するスリット210Bが、軸方向(Z軸方向)に沿って複数形成されている。また、この変形例2における各スリット210Bは、
図13(A)に示したように、平面上に展開した場合に、直線状となっている。
【0104】
一方、
図13(B),
図13(C)に示した、変形例3-1,3-2のチューブ状部材21C1,21C2ではそれぞれ、上記した各スリット210Bが、平面上に展開した場合に、曲線状(変形例3-1)や鉤状(変形例3-2)となっている。
【0105】
このような構成の変形例2,3では、例えば
図12(B)に示したように、チューブ状部材21B(またはチューブ状部材21C1,21C2)の先端付近が屈曲変形する際には、以下のようになる。すなわち、実施の形態と同様に、操作用ワイヤ40の先端側は、チューブ状部材21B等の先端部に固定されていることから、この操作用ワイヤ40が基端側に引っ張られると、他の部分よりも変形し易いスリット210B付近において、チューブ状部材21B等の先端付近が、屈曲変形する。したがって、実施の形態と同様にして、カテーテルシャフト11におけるメインルーメン61の壁面に対して、そのチューブ状部材21B等の先端付近が押し当てられる(破線の矢印d5参照)。これにより、実施の形態と同様にして、カテーテルシャフト11の先端付近が、変位するようになる(破線の矢印d6参照)。その結果、これらの変形例2,3では、チューブ状部材21B,21C1,21C2の先端付近を屈曲変形させる機構を、簡易な構造で実現することが可能となる。
【0106】
また、特に、変形例3-1,3-2(
図13(B),
図13(C))の場合には、変形例2(
図13(A))の場合と比較して、以下のような効果が得られる。すなわち、変形例3-1,3-2におけるスリット210Bの形状の場合、チューブ状部材21C1,21C2の円周方向に捻じれる力が働いたとしても、変形例2の場合と比べ、これらのチューブ状部材21C1,21C2の捻じれを抑制することが可能となる。
【0107】
[変形例4]
図14(
図14(A)~
図14(C))は、実施の形態および変形例4(4-1,4-2)に係るチューブ状部材における金属部材70の構成例を、模式的に表したものである。具体的には、
図14(A)は、実施の形態のチューブ状部材21における、前述した金属コイル71の構成例を、模式的に示している。また、
図14(B)は、変形例4-1のチューブ状部材における金属ワイヤ72の構成例を、
図14(C)は、変形例4-2のチューブ状部材におけるスリット73等の構成例を、それぞれ模式的に示している。
【0108】
まず、
図14(A)に示した実施の形態では、前述したように、チューブ状部材21を構成する金属部材70において、軸方向(Z軸方向)に沿った一部分が、螺旋状に巻回された1または複数の金属線材としての、1つの金属コイル71を用いて構成されている。
【0109】
一方、
図14(B)に示した変形例4-1では、そのような金属線材として、1つの金属コイル71の代わりに、螺旋状に巻回された複数本の金属ワイヤ72(中空ワイヤ)が、用いられている。
【0110】
また、
図14(C)に示した変形例4-2では、そのような金属線材として、1つの金属コイル71の代わりに、以下のような構成が用いられている。すなわち、この変形例4-2では、螺旋状に形成されたスリット73(例えばレーザ加工により形成)によって、
螺旋状に巻回された1つの金属線材が構成されている。なお、
図14(C)中に示した、軸方向(Z軸方向)に沿ったスリット73同士の間隔L3は、均一の値でもよく、あるいは、可変の値であってもよい。
【0111】
このような構成の変形例4(4-1,4-2)においても、基本的には実施の形態と同様の作用により、同様の効果を得ることが可能となる。
【0112】
なお、実施の形態(
図14(A))の場合には、これらの変形例4-1,4-2(
図14(B),
図14(C))の場合と比較して、以下のような効果が得られる。すなわち、操作用ワイヤ40を引っ張った場合、チューブ状部材21には、相対的に軸方向(Z軸方向)に沿って圧縮の力が掛かかるが、実施の形態の金属部材70では、Z軸方向に沿って変形しにくくなる。よって、この実施の形態の場合には、変形例4-1,4-2の場合と比べ、操作用ワイヤ40の引っ張りによる力を、チューブ状部材21の先端付近を屈曲変形させる力に、より効果的に変えることが可能となる。
【0113】
<3.その他の変形例>
以上、実施の形態および変形例をいくつか挙げて本発明を説明したが、本発明はこれらの実施の形態等には限定されず、種々の変形が可能である。
【0114】
例えば、上記実施の形態等において説明した各部材の形状や配置位置、特性(剛性の特性等)、材料等は限定されるものではなく、他の形状や配置位置、特性、材料等としてもよい。
【0115】
また、上記実施の形態等では、カテーテルシャフト11の構成を具体的に挙げて説明したが、必ずしも全ての部材を備える必要はなく、また、他の部材を更に備えていてもよい。具体的には、例えば、カテーテルシャフト11における電極111~115および先端チップ110の配置や形状、個数等は、上記実施の形態等で挙げたものには限られない。更に、温度センサや導線50の個数もそれぞれ、上記実施の形態等で説明したもの(5つ)には限定されず、例えば1~20個の範囲内で適宜調整される。ただし、これらの個数はそれぞれ2以上(望ましくは4以上程度)であるのが望ましい。加えて、上記実施の形態等では先端チップ110には温度センサが電気的接続されていない例について説明したが、これには限られず、例えば、先端チップ110にも温度センサを電気的に接続し、先端チップ110も温度測定機能を有するようにしてもよい。また、この温度センサとしても、上記実施の形態等で説明したように熱電対を用いた構成には限られず、例えばサーミスタ等の他の温度センサを用いるようにしてもよい。加えて、電極111~115と温度センサ51~55とは、必ずしも電気的に接続されていなくともよい。
【0116】
更に、上記実施の形態等では、カテーテル用器具2におけるチューブ状部材の構成を具体的に挙げて説明したが、必ずしも全ての部材を備える必要はなく、また、他の部材を更に備えていてもよい。具体的には、例えば、上記実施の形態等では、チューブ状部材の先端付近に、開口部またはスリットが形成されていると共に、チューブ状部材内を挿通する操作用ワイヤ40が設けられている場合を例に挙げて説明したが、この場合には限られない。すなわち、他の手法を用いて、チューブ状部材の先端付近が屈曲変形するようにしてもよい。また、上記実施の形態等では、チューブ状部材が金属部材により構成されている場合を例に挙げて説明したが、この場合には限られず、例えば、チューブ状部材が非金属部材により構成されているようにしてもよい。
【0117】
加えて、上記実施の形態等では、2つのハンドル12,22の構成を具体的に挙げて説明したが、必ずしも全ての部材を備える必要はなく、また、他の部材を更に備えていてもよい。なお、ハンドル22における前述した「変形操作部」の構成としても、上記実施の形態等で説明した構成には限られず、他の部材を用いて、本発明における「変形操作部」を構成するようにしてもよい。
【0118】
また、上記実施の形態等では、患者における体内の中空器官が食道である場合を例に挙げて説明すると共に、患者に対する左房アブレーション術の際に、食道の内部温度を測定するために使用されるカテーテルを例に挙げて説明したが、この例には限られない。すなわち、体内における他の中空器官の内部温度を測定するために使用されるカテーテルについても、本発明を適用することが可能である。
【0119】
更に、これまでに説明した各種の例を、任意の組み合わせで適用させるようにしてもよい。