(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】概日リズム障害の治療
(51)【国際特許分類】
A61K 31/343 20060101AFI20220809BHJP
A61P 25/20 20060101ALI20220809BHJP
A61P 25/26 20060101ALI20220809BHJP
A61K 31/15 20060101ALN20220809BHJP
A61K 45/00 20060101ALN20220809BHJP
A61P 43/00 20060101ALN20220809BHJP
【FI】
A61K31/343 ZMD
A61P25/20
A61P25/26
A61K31/15
A61K45/00
A61P43/00 111
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018197868
(22)【出願日】2018-10-19
(62)【分割の表示】P 2016177959の分割
【原出願日】2013-01-25
【審査請求日】2018-10-31
【審判番号】
【審判請求日】2021-01-15
(32)【優先日】2012-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2012-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2012-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2013-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2012-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2012-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2012-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2012-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507021702
【氏名又は名称】ヴァンダ ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(74)【代理人】
【識別番号】100165526
【氏名又は名称】阿部 寛
(72)【発明者】
【氏名】ドレスマン, マレーネ ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】フィーニー, ジョン, ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】リカメル, ルイス, ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】ポリメロポウロス, マイケル エイチ.
【合議体】
【審判長】前田 佳与子
【審判官】田中 耕一郎
【審判官】鳥居 敬司
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-538332(JP,A)
【文献】臨牀と研究,2012年 6月,Vol. 89, No. 6,pp. 737-741
【文献】S W LOCKLEY,JOURNAL OF ENDOCRINOLOGY,2000年 1月 1日,V164 N1,P R1-R6
【文献】ROBERT L. SACK,ENTRAINMENT OF FREE-RUNNING CIRCADIAN RHYTHMS BY MELATONIN IN BLIND PEOPLE,THE NEW ENGLAND JOURNAL OF MEDICINE [ONLINE],2000年12月10日,V343 N15,P1070-1077,URL,http://www.nejm.org/doi/pdf/10.1056/NEJM200010123431503
【文献】WALDEMAR OCKERT,NATURE REVIEWS. DRUG DISCOVERY,2012年 7月20日,V11 N8,P595-596
【文献】View of NCT01163032 on 2011_09_12, ClinicalTrials.gov archive[online], 2009, [2015/08/10検索],URL,https://clinicaltrials.gov/archive/NCT01163032/2011_09_12
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
CAplus/MEDLINE/BIOSIS/EMBASE/REGISTRY (STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580 (JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非24時間睡眠覚醒障害に罹患している患者を24時間睡眠覚醒サイクルに同調させることによって患者における非24時間睡眠覚醒障害を治療するための薬剤であって、
タシメルテオンを有効成分として含有し、
タシメルテオンが、1日1回、目標睡眠時刻の0.5~1.5時間前に20~50mgの1日用量で患者に経口投与されるように用いられ、
前記24時間睡眠覚醒サイクルは、7~9時間の1日の睡眠期間後の目標覚醒時刻又はほぼその時刻に患者が覚醒するサイクルであり、
患者は光覚障害である、
薬剤。
【請求項2】
タシメルテオンの1日用量は20mgである、請求項1に記載の薬剤。
【請求項3】
患者はCYP1A2阻害薬による治療も受けており、
前記薬剤は、
患者のタシメルテオンの血漿濃度がモニタリングされる、及び/又は
タシメルテオンに関連する有害反応について患者がモニタリングされる
ように用いられる、
請求項1又は2に記載の薬剤。
【請求項4】
非24時間睡眠覚醒障害の長期的治療のための請求項1~3のいずれか一項に記載の薬剤であって、患者は全盲である、薬剤。
【請求項5】
タシメルテオンは目標睡眠時刻の1時間前に投与されるように用いられる、請求項1~4のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項6】
患者を24時間睡眠覚醒サイクルに同調させることは、患者の異常なメラトニン概日リズム及び/又は異常なコルチゾール概日リズムを24時間概日リズムに同調させることを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の薬剤。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、同時係属の米国仮特許出願第61/590974号(2012年1月26日出願)、第61/640067号(2012年4月30日出願)、第61/650455号(2012年5月22日出願)、第61/650458号(2012年5月22日出願)、第61/714149号(2012年10月15日出願)、第61/738985号(2012年12月18日出願)、第61/738987号(2012年12月18日出願)、及び第61/755896号(2013年1月23日出願)の利益を主張するものである(これらの出願の各々は、参照により、完全に記載されているかのように本明細書に組み入れられている)。
【発明の分野】
【0002】
本発明の実施形態は、概して、概日リズム障害(CRD)の分野、そして特に、非24時間障害(Non-24)を患う人における概日リズムの同調に関する。
【発明の背景】
【0003】
マスター体内時計は、日周リズムを示す生理、挙動及び代謝の多くの態様(日内変動を示す睡眠覚醒サイクル、体温、注意力及びパフォーマンス、代謝リズム及びいくつかのホルモンを含む。)のタイミングを制御する。視交叉上核(SCN)からの出力は多くの内分泌リズムを制御する。例えば、松果腺によるメラトニン分泌のリズムが制御され、また、視床下部、下垂体及び副腎に対する効果を介してコルチゾールの分泌が制御される。このマスター体内時計はSCNに位置し、約24.5時間のリズムを自発的に生じる。これらの非24時間リズムは、毎日、光(網膜中の特殊化した細胞によって検出され、網膜-視床下部路を経由してSCNに伝えられる主要な環境同調因子である。)によって24時間昼夜サイクルに同期化される。この光シグナルを検出できないこと(これは、ほとんどの全盲の個人に生じる。)は、マスター体内時計が毎日リセットされること、及び1日24時間への同調を維持できないことの原因となる。
【0004】
非24時間障害:
Non-24は、非24時間睡眠覚醒障害(N24HSWD)又は非24時間障害とも呼ばれるが、米国で約65000~95000人及びヨーロッパで140000人に発症している希少疾患である。個人、主として光覚のない盲目の人が内因性概日ペースメーカーを24時間明暗サイクルに同期化できない場合に、非24時間障害は生じる。同調因子としての光を有さず、体内時計の周期が通常24時間より少し長いので、非24時間障害の個人は、睡眠を開始させる概日ドライブ(circadian drive)が毎日少しずつ後方にずれていくことを経験する。非24時間障害の個人は、日中目を覚ましていることの困難さを伴う異常な夜間睡眠パターンを有する。非24時間障害は、これらの個人の社会的及び職業上の機能に影響を与える慢性的な効果を有する重大な障害の原因となる。
【0005】
所望の時間に眠ることに関する問題に加えて、非24時間障害の個人は、しばしば居眠りをもたらす日中の過剰な眠気を経験する。
【0006】
夜間睡眠及び/又は日中の眠気に関する愁訴の重篤性は、自分の社会的な、仕事上の又は睡眠スケジュールとの関係で個人の体内時計がサイクルのどこにあるかに応じて変動する。時計の「自由継続」は、約1~4か月の繰り返しサイクルである概日サイクルをもたらすが、ここで、睡眠を開始させる概日ドライブは、サイクルが繰り返されるまで毎日少しずつ(平均約15分)継続的に移動する。まず、概日サイクルが24時間昼夜サイクルと脱同期性になると、非24時間障害の個人は睡眠を開始するのが困難になる。時間の経過とともに、これらの個人の体内概日リズムは24時間昼夜サイクルと周期が180度ずれ、このずれが、夜に眠ることを徐々に実質的に不可能にし、日中の極度の眠気をもたらす。
【0007】
結局、個人の睡眠覚醒サイクルは夜に足並みをそろえるようになり、「自由継続」の個人は通常の又は社会的に受け入れられる時間によく眠れるようになる。しかし、体内概日リズムと24時間昼夜サイクルとの合致は一時的なものにすぎない。周期的な夜間睡眠及び日中の眠気の問題に加えて、この状態は、体温及びホルモン分泌における有害な日々の変化を引き起こしたり、代謝の混乱を引き起こしたりすることもあり、時には抑鬱症状及び気分障害を伴う。
【0008】
米国における全盲の人々の50~75%(約65000~95000)が非24時間障害を有するものと推定される。この状態は、視覚に障害のない者にも影響を与え得る。しかし、この集団において事例は希にしか報告されず、一般集団における非24時間障害の真の割合は知られていない。
【0009】
非24時間障害の個人の究極の治療目標は、夜間の増加した眠気及び日中の増加した覚醒状態を有するように、概日リズムを1日24時間との適切な位相関係に同調又は同期させることである。
【0010】
タシメルテオン:
タシメルテオンは、2種の高親和性メラトニン受容体であるMel1a(MT1R)及びMel1b(MT2R)に特異的に結合する概日リズム調節剤である。これらの受容体は脳の視交叉上核(SCN)(これは、我々の睡眠/覚醒サイクルを同期させることに関与する。)に高密度で見出される。概日時計の脱同期化がシミュレーションされた前臨床研究において、タシメルテオンは、睡眠パラメーターを改善することが示されている。タシメルテオンは、今までのところ何百もの個人において研究されており、良好な耐容性プロファイルを示している。
【発明の概要】
【0011】
本発明の実施形態は、タシメルテオンは、自由継続概日リズムが非24時間障害として現れる患者(光覚障害の患者(例えば盲目患者)を含む。)において自由継続概日リズムを治療するために使用できるという発見に関する。
【0012】
本発明の実施形態は、人の概日リズム(タウ)を決定するための方法、及び自由継続概日リズムの治療へのそのような方法の適用にさらに関する。
【0013】
本発明の実施形態は、(これらの個人の社会的及び職業上の機能に影響を与える慢性的な効果を有し、また、慢性的な不整合による健康への悪影響の可能性を有する)重大な障害をしばしばもたらす非24時間障害の症状(具体的には、例えば、毎日睡眠が後方に移動すること、異常な夜間睡眠パターン、及び/又は日中目を覚ましていることの困難)を示す対象の治療にさらに関する。
【0014】
したがって、例示的な実施形態において、本発明は、非24時間障害に罹患している患者における非24時間障害を治療する方法であって、有効量のメラトニンアゴニスト(例えばタシメルテオン)を患者に体内投与するステップを含む方法を含む。そのような方法では、例えば、患者は光覚障害(LPI)であり、例えば、光覚がない状態すなわち全盲である。
【0015】
さらなる例示的な実施形態は、非24時間障害に罹患している患者を24時間睡眠覚醒サイクルに同調させる方法であって、前記24時間睡眠覚醒サイクルは、1日の睡眠期間(例えば約7~9時間)(当然、患者は必ずしも全睡眠期間中眠らなくてもよい。)後の目標覚醒時刻又はほぼその時刻に患者が覚醒する24時間睡眠覚醒サイクルであり、該方法は、有効量のメラトニンアゴニストを患者に体内投与することによって患者を治療するステップを含む、方法である。
【0016】
例示的な実施形態において、メラトニンアゴニストは、タシメルテオン又はその活性代謝物又はそのような代謝産物の薬学的に許容される塩である。例示的な実施形態において、メラトニンアゴニストは、タシメルテオンに類似した薬理学的プロファイルを有する。例えば、MT1R及びMT2Rに対する親和性についてはMT2Rに対してより大きな親和性(例えば2倍~4倍大きな親和性)を有し、また、tmaxは2時間未満(例えば1時間以下)である。
【0017】
さらなる例示的な実施形態は、全盲のヒトにおける非24時間障害の長期的治療のための方法であって、1日1回、目標就寝時刻の約1/2時間~約1と1/2時間前に20~50mgの量でタシメルテオンを人に経口投与するステップを含む方法である。本実施形態の下位形態では、メラトニンアゴニストで以前に治療され、24時間概日リズムに同調している患者は、例えば、継続的に毎日、約7~約9時間の1日の睡眠期間の約0.5~1.5時間前に有効量のメラトニンアゴニスト(例えば、タシメルテオンなどの約2時間未満のtmaxを有するメラトニンアゴニスト)を患者に体内投与することによって維持される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】aMT6s分析に基づいて自由継続概日リズムを有しないと決定された患者についての患者報告の一例である。
【
図2】aMT6s分析に基づいて自由継続概日リズムを有すると決定された患者についての患者報告の一例である。
【
図3】コルチゾール分析に基づいて自由継続概日リズムを有しないと決定された患者についての患者報告の一例である。
【
図4】コルチゾール分析に基づいて自由継続概日リズムを有すると決定された患者についての患者報告の一例である。
【
図5】タシメルテオンの代謝経路及びその代謝産物のいくつかを示す。
【
図6】タシメルテオンの濃度に対するタシメルテオン及びフルボキサミンの共投与の効果のプロットを示す。
【
図7】M9代謝産物の濃度に対するタシメルテオン及びフルボキサミンの共投与の効果のプロットを示す。
【
図8】M11代謝産物の濃度に対するタシメルテオン及びフルボキサミンの共投与の効果のプロットを示す。
【
図9】M12代謝産物の濃度に対するタシメルテオン及びフルボキサミンの共投与の効果のプロットを示す。
【
図10】M13代謝産物の濃度に対するタシメルテオン及びフルボキサミンの共投与の効果のプロットを示す。
【
図11】M14代謝産物の濃度に対するタシメルテオン及びフルボキサミンの共投与の効果のプロットを示す。
【
図12】タシメルテオンの濃度に対する喫煙の効果のプロットを示す。
【
図13】M9代謝産物の濃度に対する喫煙の効果のプロットを示す。
【
図14】M11代謝産物の濃度に対する喫煙の効果のプロットを示す。
【
図15】M12代謝産物の濃度に対する喫煙の効果のプロットを示す。
【
図16】M13代謝産物の濃度に対する喫煙の効果のプロットを示す。
【
図17】M14代謝産物の濃度に対する喫煙の効果のプロットを示す。
【発明の詳細な説明】
【0019】
タシメルテオンは、化学名:トランス-N-[[2-(2,3-ジヒドロベンゾフラン-4-イル)シクロプロパン-1-イル]メチル]プロパンアミドを有し、式I:
【化1】
の構造を有し、米国特許第5856529号及び米国特許出願公開第20090105333号(いずれも、参照により、完全に記載されているかのように本明細書に組み入れられている。)に開示されている。
【0020】
タシメルテオンは、約78℃(DSC)の融点を有する白色ないしオフホワイトの粉末であり、95%エタノール、メタノール、アセトニトリル、酢酸エチル、イソプロパノール、ポリエチレングリコール(PEG-300及びPEG-400)によく溶け又は溶けやすく、水にはわずかしか溶けない。水中のタシメルテオンの飽和溶液の固有のpHは8.5であり、その水溶解性はpHによって実質的に影響されない。タシメルテオンは、MT1Rに比べてMT2Rに対して2~4倍大きい親和性を有する。MT1Rに対する親和性(Ki)は0.3~0.4であり、MT2Rに対しては0.1~0.2である。タシメルテオンは、他の活性の中でもとりわけ、非24時間障害に罹患している患者を同調させることが明らかにされているメラトニンアゴニストであるので、本発明の実施において有用である。
【0021】
関連の態様において、本発明は、メラトニンアゴニストとしてのタシメルテオン代謝産物の使用に関する。タシメルテオン代謝産物には、例えば、フェノール-カルボン酸類似体(M9)及びヒドロキシプロピル-フェノール類似体(M11)が含まれる。各々、タシメルテオンの経口投与後にヒトにおいて形成される。
【0022】
具体的には、本発明の態様は、タシメルテオン又は式II若しくはIIIの化合物(非晶質又は結晶形態の、タシメルテオン又は式II若しくはIIIの化合物の塩、溶媒和物、及び水和物を含む。)の使用を包含する。
【0023】
【0024】
ここではR-トランス型立体配置で描かれているが、本発明は、その立体異性体、すなわちR-シス、S-トランス及びS-シスの使用を含む。さらに、本発明は、タシメルテオン又は式II若しくは式IIIの化合物のプロトラッグ(例えば、そのような化合物のエステルを含む。)の使用を含む。以下の説明はタシメルテオンに当てはまるが、式II及びIIIの化合物も本発明の態様の実施において有用であることを理解されたい。
【0025】
タシメルテオンの代謝産物には、例えば、“Preclinical Pharmacokinetics and Metabolism of BMS-214778, a Novel Melatonin Receptor Agonist” by Vachharajani et al., J.Pharmaceutical Sci.,92(4):760-772(参照により本明細書に組み入れられている。)に記載されたものが含まれる。タシメルテオンの活性代謝物も本発明の方法において使用することができ、タシメルテオン又はその活性代謝物の薬学的に許容される塩も使用することができる。例えば、上記の式II及びIIIの代謝産物に加えて、タシメルテオンの代謝産物には、モノヒドロキシル化類似体である式IVのM13、式VのM12、及び式VIのM14が含まれる。
【0026】
【0027】
したがって、本発明は、概日リズムを位相前進させる及び/又は同調させることができる概日リズム調節剤(概日リズム修正剤)、例えばメラトニンアゴニスト(例えば、タシメルテオン若しくはタシメルテオンの活性代謝物又はその薬学的に許容される塩)の投与による、自由継続概日リズムに罹患している患者の24時間概日リズムへの同調を包含することは明らかである。
【0028】
他のMT1R及びMT2Rアゴニストすなわちメラトニンアゴニストは、マスター体内時計に類似の効果を有し得る。したがって、例えば、本発明は、これらに限定されないが、メラトニン、N-[1-(2,3-ジヒドロベンゾフラン-4-イル)ピロリジン-3-イル]-N-エチルウレア及び構造的に関連する化合物(米国特許第6211225号に開示)、LY-156735((R)-N-(2-(6-クロロ-5-メトキシ-1H-インドール-3イル)プロピル)アセトアミド)(米国特許第4997845号に開示)、アゴメラチン(N-[2-(7-メトキシ-1-ナフチル)エチル]アセトアミド)(米国特許第5225442号に開示)、ラメルテオン((S)-N-[2-(1,6,7,8-テトラヒドロ-2H-インデノ-[5,4-b]フラン-8-イル)エチル]プロピオンアミド)、2-フェニルメラトニン、8-M-PDOT、2-ヨードメラトニン、6-クロロメラトニンなどのメラトニンアゴニストの使用をさらに包含する。
【0029】
さらなるメラトニンアゴニストには、米国特許出願公開第20050164987号(参照により本明細書に組み入れられている。)に挙げられたもの、具体的には、TAK-375(Kato,K.et al. Int.J.Neuropsychopharmacol. 2000, 3(Suppl.1):Abst P.03.130参照;また、abstracts P.03.125及びP.03.127参照)、CGP 52608(1-(3-アリル-4-オキソチアゾリジン-2-イリデン)-4-メチルチオセミカルバゾン)(Missbach et al., J.Biol.Chem. 1996, 271, 13515-22参照)、GR196429(N-[2-[2,3,7,8-テトラヒドロ-1H-フロ(2,3-g)インドール-1-イル]エチル]アセトアミド)(Beresford et al., J.Pharmacol.Exp.Ther. 1998, 285, 1239-1245参照)、S20242(N-[2-(7-メトキシナフト-1-イル)エチル]プロピオンアミド)(Depres-Brummer et al., Eur.J.Pharmacol. 1998, 347, 57-66参照)、S-23478(Neuropharmacology July 2000参照)、S24268(Naunyn Schmiedebergs Arch. June 2003参照)、S25150(Naunyn Schmiedebergs Arch. June 2003参照)、GW-290569、ルジンドール(luzindole)(2-ベンジル-N-アセチルトリプタミン)(米国特許第5093352号参照)、GR135531(5-メトキシカルボニルアミノ-N-アセチルトリプタミン)(米国特許出願公開第20010047016号参照)、メラトニン研究化合物A、メラトニンアゴニストA(IMS World R&D Focus August 2002参照)、メラトニン類似体B(Pharmaprojects August 1998参照)、メラトニンアゴニストC(Chem.Pharm.Bull.(Tokyo) January 2002参照)、メラトニンアゴニストD(J.Pineal Research November 2000参照)、メラトニンアゴニストE(Chem.Pharm.Bull.(Tokyo) February 2002参照)、メラトニンアゴニストF(Reprod.Nutr.Dev. May 1999参照)、メラトニンアゴニストG(J.Med.Chem. October 1993参照)、メラトニンアゴニストH(Famaco March 2000参照)、メラトニンアゴニストI(J.Med.Chem. March 2000参照)、メラトニン類似体J(Bioorg.Med.Chem.Lett. March 2003参照)、メラトニン類似体K(MedAd News September 2001参照)、メラトニン類似体L、AH-001(2-アセトアミド-8-メトキシテトラリン)(米国特許第5151446号参照)、GG-012(4-メトキシ-2-(メチレンプロピルアミド)インダン)(Drijfhout et al., Eur.J.Pharmacol. 1999, 382, 157-66参照)、エノール-3-IPA、ML-23(N-2,4-ジニトロフェニル-5-メトキシ-トリプタミン)(米国特許第4880826号参照)、SL-18.1616、IP-100-9(米国特許第5580878号)、睡眠誘導ペプチドA、AH-017(米国特許第5151446号参照)、AH-002(8-メトキシ-2-プロピオンアミド-テトラリン)(米国特許第5151446号参照)、及びIP-101が含まれる(これらに限定されない)。直接又は間接に活性である上記化合物の代謝産物、プロドラッグ、立体異性体、多形体、水和物、溶媒和物、及び塩も当然、本発明の実施において使用することができる。
【0030】
タシメルテオンと類似のMT1R及びMT2R結合プロファイルを有するメラトニンアゴニスト(これはMT2Rに対して2~4倍大きい特異性を有する。)は好適である。
【0031】
タシメルテオンは、当技術分野で知られている手順によって合成することができる。4-ビニル-2,3-ジヒドロベンゾフランシクロプロピル中間体の調製は、米国特許第7754902号(参照により、完全に記載されているかのように本明細書に組み入れられている。)に記載された方法で実施することができる。
【0032】
プロドラッグ(例えばエステル)及び薬学的に許容される塩は当分野の通常の技術によって調製することができる。
【0033】
非24時間障害に罹患している患者において、メラトニン及びコルチゾールの概日リズム並びに自然の昼夜サイクルは非同期化する。例えば、自由継続概日リズムに罹患している患者において、メラトニン及びコルチゾールの頂点位相は、それぞれ、前日のメラトニン及びコルチゾールの頂点位相の24時間以上(例えば>24.1時間)前に生じ、メラトニン、コルチゾール及び昼夜サイクルが再び一時的に同期化される前に、患者の概日リズムの長さに応じて数日、数週間又は数か月間の非同期化をもたらす。
【0034】
コルチゾールの慢性的なずれは、代謝障害、心臓障害、認知障害、神経障害、腫瘍性障害、及びホルモン障害に関連している。そのような障害には、例えば、肥満、鬱病、神経学的障害が含まれる。
【0035】
本発明は、メラトニン概日リズムの同調はコルチゾール概日リズムの同調と連関していることを示している。
【0036】
したがって、一態様において、本発明の例示的な実施形態は、異常なメラトニン概日リズム又は異常なコルチゾール概日リズムに罹患している患者を、有効量のメラトニンアゴニスト、特にタシメルテオン又はその活性代謝物を患者に体内投与することによって24時間概日リズムに同調させる方法を提供する。
【0037】
関連の態様において、本発明は、非同期性メラトニン又はコルチゾール概日リズム、すなわち自然の昼夜サイクルと同期していない概日リズムに関連する障害を予防又は治療する方法を提供する。そのような方法は、非同期性メラトニン又はコルチゾール概日リズムを有する患者に、本明細書に記載された有効量のメラトニンアゴニスト、特にタシメルテオン又はその活性代謝物を体内投与するステップを含む。
【0038】
本明細書に記載された有効量のタシメルテオンを体内投与することによって患者における非24時間障害を治療する(メラトニン及び/又はコルチゾール概日リズムを位相前進させる及び/又は同調させることを含む。)方法は、より高い量の内因性メラトニンを有する患者においてより多くの場合に有効である傾向がある。すなわち、治療の有効性の可能性は患者の体内に自然に存在するメラトニンの量に関連している。
【0039】
本明細書に記載された有効量のタシメルテオンを体内投与することによって患者における非24時間障害を治療する(メラトニン及び/又はコルチゾール概日リズムを位相前進させることを含む。)方法は、治療前の概日リズム(すなわちタウ)が特定の閾値未満である患者においてより多くの場合に有効である傾向がある。そのような閾値は、例えば、25.0時間、24.9時間、24.8時間、24.7時間、24.65時間、又は24.6時間であり得、したがって、治療の有効性の可能性はタウが該閾値未満である患者の場合により大きい。
【0040】
本発明によれば、規制当局、患者、ヘルスケア提供者若しくは保険会社、又はそのような実体若しくは人の任意の1つ若しくは複数は、メラトニンアゴニスト、特にタシメルテオンによる治療の開始を支持するのに十分である有効性の可能性を選択することができる。例えば、有効性の可能性が、選択された閾値確率未満である場合、患者はメラトニンアゴニストで治療されるべきではないと決定することができる。
【0041】
あるいは、そのような閾値確率は、高度のモニタリングの基準を有効性及び/又は有害事象に適用すべきかどうかを決定する際の要素として使用することができる。例えば、有効性の可能性が、選択された閾値確率未満である場合、患者は、治療の開始後、約6~9週以内に有効性及び/又は有害事象の兆候について検査されることを決定することができる。そのような高度のモニタリングは、明らかな有効性の欠如又は副作用の発生に関するより頻繁なモニタリング及び/又は減少した許容度を含み得る。例えば、有効性の証拠がない若しくはわずかしかない場合、又は有害事象の兆候(小さな若しくは早い兆候であり得る。)がある場合、メラトニンアゴニスト治療は中止又は変更され得る。高度のモニタリングは、例えば、睡眠及び覚醒時刻、仮眠の頻度及び継続時間、睡眠潜時、夜間睡眠の継続時間などの患者の記録(そのような記録は、例えば、書面、デジタル処理又は電話によるものである。)を含む睡眠日記を継続することを患者に要求することを含み得る。
【0042】
これらの目的のための有効性は、例えば、治療開始後の患者のタウを決定し、患者が例えば治療開始後約6~約9週間治療される少なくとも1つの完全な概日サイクルを追跡すること、又は患者の身体的若しくは情緒的健康を検査すること(例えば、身体検査、又は睡眠パターン、副作用、日中の仮眠、一般的健康状態などについての質問を患者に受けさせること)を含む、いくつかの方法で決定することができる。
【0043】
治療を終了させることを除いて、例えば、患者が、異なる用量のメラトニンアゴニスト又は異なるメラトニンアゴニスト(例えば、タシメルテオンの薬理活性(すなわち、MT1R及びMT2R結合及び相対的結合親和性)及びt1/2を有する異なるメラトニンアゴニスト)を受けるべきであるとの決定がされ得る。
【0044】
上述の閾値確率は、患者から採取された生体サンプル中のメラトニンの閾値濃度に関連付けることができる。例えば、メラトニンレベルは、血液、血漿、尿、唾液などのサンプルにおいて直接測定することができ、選択された閾値確率に対応するメラトニン濃度を確認することができる。選択された閾値確率に対応するメラトニンの濃度は閾値濃度と呼ぶことができる。
【0045】
メラトニンレベルは、概して、(1)24~48時間の期間にわたって2~8時間毎に採取されたメラトニンの一次尿代謝産物である6-スルファトキシメラトニン(aMT6s)の量を測定することによって、又は(2)ほのかな明かりの下で30~60分毎に採取された唾液のサンプル中のメラトニン濃度を測定することによって、又は(3)頻繁に(例えば20~30分毎に)採取された血液のサンプル中のメラトニンレベルを測定することによって決定される。そのような方法は、例えば、Benloucif et al., J Clin Sleep Med, 4(1):66-69(2008)に要約されている。
【0046】
メラトニンリズムの長さ(すなわちタウ)を決定するためにメラトニン濃度又は生成速度の任意の代替物を使用することは当分野の技術の範囲内にあり、したがって、本発明に包含される。例えば、本明細書に具体的に記載されるように、メラトニン量の代替物としてaMT6s量を使用してもよく、メラトニン概日リズムの代替物としてコルチゾール概日リズム又はaMT6s概日リズムを使用してもよい。すなわち、コルチゾール概日リズムの長さは、メラトニン概日リズムの長さ(すなわちタウ)の代替物であり得るaMT6s概日リズムの長さの代替物であり得る。それに代えて又はそれに加えて、そのようなメラトニンの代替物としてコルチゾールを使用してもよい。
【0047】
例示的な実施形態において、メラトニンの量は、例えば、メラトニンの代替物、具体的には尿サンプル中のaMT6sの量を測定すること、並びにそのような量を使用して、頂点位相及び血液中の平均及びピークの内因性aMT6sの量又は濃度を推定することによって間接的に測定される。
【0048】
例示的な実施形態において、メラトニンの代替物は、尿サンプル中のaMT6sを測定することによって確認されるaMT6sの生成速度である。そのような場合、閾値濃度は、実際は、例えばng/hrの単位で表された排出速度である。そのような速度は、以下により詳細に説明されるように、尿のアリコート中のaMT6sの濃度(ng/ml)を測定し、その濃度に該アリコートを得た排泄された尿全体の体積/時間(ml/hr)を乗じることによって決定することができる。この代替物の測定値は、もっぱら便宜のためにこの例示的な実施形態において使用され、尿中aMT6sの濃度として再計算し、例えばng/ml単位で表し、或いは尿中aMT6sの絶対量として再計算し、例えばng又はmg単位で表すことが容易になし得る。また、そのような量は、排出速度、濃度又は重量のいずれで表されても、同様に表されたメラトニン量に変換することができる。
【0049】
例えば、尿中の1500ng/hrのピークaMT6s生成速度(すなわち排出速度)を有する患者はタシメルテオンに対する有望な応答者である。したがって、閾値濃度は、1500ng/hrのaMT6sに設定することができる。あるいは、閾値濃度は、尿aMT6s(例えば、4時間間隔及び夜間睡眠期間中に採取された尿サンプル)の2000ng/hr又は1500ng/hrと2000ng/hrの間の任意の好都合な値、例えば、1550、1600、1650、1700、1750、1800、1850、1900、又は1950ng/hrに設定することもできる。あるいは、閾値濃度は、尿aMT6sの2000ng/hrより大きい値、例えば、2100、2200、2300、2400又は2500ng/hrに設定することもできる。
【0050】
1500ng/hrのaMT6sの閾値濃度は、所与の患者が治療に応答する50%より大きい確率を示し、すなわち、尿中ピークaMT6s濃度(又は別の生体サンプル中のそれに相当するメラトニン濃度)を有する患者の集団の50%より多くが治療に応答することが予想される。1500ng/hr又は2000ng/hrの尿中ピークaMT6s生成速度(又は生体サンプル中のそれに相当するメラトニン濃度)を有する場合、患者の約75%より多く、又は約80%若しくは90%より多くが応答することが、上述の研究結果に基づいて予想される。
【0051】
内因性メラトニンレベルが患者の応答可能性を予測するために使用され、タウ決定のために使用されない場合、1日全体を通じて複数の時点で又は複数の時点の範囲でaMT6sの排出速度を決定する必要はない。代わりに、例えば、尿中aMT6sから推測されるメラトニン量は、24時間又はより短時間にわたって採取され、単一バッチにプールされた尿中で測定することができる。実際、例示的な実施形態において、尿中aMT6sによって示される又は例えば血液中若しくは唾液中メラトニンとして直接示されるメラトニンレベルは、1日1回又は複数回、所与の時点で測定することができる。
【0052】
薬物への応答の可能性を予測する能力は、ヘルスケア提供者(例えば医師)及び患者並びにヘルスケア費用償還義務者(例えば処方薬保険の提供者)にとって非常に重要である。したがって、一実施形態においては、メラトニンアゴニスト(例えばタシメルテオン)による非24時間障害の治療の開始の前に、内因性メラトニンレベル、特にピークメラトニン濃度を決定するために患者を試験する。そのような試験は、上述の方法又は任意の他の方法を用いて、生体サンプル(例えば、尿、血液、血漿、又は唾液)を用いて実施することができる。本発明の方法は応答の確率を提供するので、ピークメラトニン濃度を決定する方法は精度を必要としない。例えば20%以内の推定値を提供することで十分であり、この場合、閾値濃度が2000ng/hrの尿aMT6sに設定されたとすると、患者の尿中ピークaMT6s排出が1600ng/hr以上であると決定されれば、患者は有望な応答者であるとみなされる。より小さい精度(例えば25%又は30%以内)も許容され得る。タウを決定する場合のように内因性メラトニンレベルの他の代替物を使用することもできる。
【0053】
本発明のさらなる態様は、ある種の治療薬はメラトニンの内因性レベルを低減することが知られているという事実から生じる。そのような薬物の中で著名なのは、「ベータ遮断薬」と通常呼ばれるベータ-アドレナリン受容体アンタゴニストであり、これらのベータ遮断薬は、一般に、心不整脈、心筋梗塞、鬱血性心不全、及び高血圧症の治療に処方される。ベータ遮断薬には、いくつか例を挙げると、例えば、アルプレノロール、アテノロール、カルベジロール、メトプロロール及びプロパノロールが含まれる。
【0054】
したがって、一態様において、本発明は、ベータ遮断薬治療を受けている非24時間障害患者をメラトニンアゴニスト治療に対する応答不良者と分類することを含む。この例示的な実施形態では、そのような患者についてピークメラトニン濃度の決定を行うことはできないが、代わりに、あたかもメラトニン濃度が閾値濃度未満であるかのように患者を扱うことができる。有効性に悪影響を有し得る他の要因はNSAID及び光である。
【0055】
関連の例示的な実施形態においては、患者がベータ遮断薬での治療を受けていることから、ベータ遮断薬治療が患者のピークメラトニンレベルを閾値濃度未満に実際に低下させているかどうかを確認するために、非24時間障害患者に、メラトニン濃度の決定を受けるよう指示することができる。
【0056】
本発明の関連の態様において、血漿メラトニン濃度又はベータ遮断薬治療又は両方は有効性又は有害事象の他のマーカーとともに有効性の予測因子として使用される。したがって、例えば、本発明の例示的な実施形態は、患者が、4時間間隔で又は夜間睡眠期間中に採取された尿中のaMT6sの1500ng/hr(又は2000ng/hr)に対応するピークメラトニンレベルを有し、かつ1種又は複数種のさらなる有効性マーカーに陽性である場合、非24時間障害に罹患している患者をタシメルテオンで治療するステップを含む。そのようなさらなる有効性マーカーの組み入れは、非24時間概日リズムに罹患している患者がタシメルテオンなどのメラトニンアゴニストによる治療から利益を得る可能性を評価するヘルスケア提供者の能力を強化し得る。
【0057】
関連の実施形態では、コンピューターベースのシステムが、タシメルテオンの処方についての情報を受け取る。そして、その情報を患者の内因性メラトニンレベルについての情報に関連付けて、有効性の可能性を示す報告を出力するように作動し、或いはタシメルテオンのより高い又はより低い用量(例えば<20mg/d又は>20mg/d)が指示されることを記載した報告を出力するように作動する。
【0058】
各患者の概日周期(タウ)を推定することによって、非24時間障害に罹患していると患者を診断することができる。タウが24時間を超える患者は、非24時間障害を有すると診断される。したがって、概して、タシメルテオンによる治療から利益を得ることができる非24時間障害患者は、24時間より長く、例えば、24時間より約0.1時間長く、場合により24時間より少なくとも約0.2時間、0.3時間、0.4時間長い又は約1.4時間も長いタウ(これは、例えば、aMT6s又はコルチゾール概日リズムを分析することによって決定され得る。)を有する。本明細書に記載のように、コルチゾール概日リズムの計算は、患者の集団の分析から集められるそのようなデータがより大きな標準偏差を示し得るという意味においてわずかにより不正確であり得るが、コルチゾール概日リズムはaMT6sリズムの代わりに又はそれに加えて使用することができる。
【0059】
対象における循環メラトニンサイクルをモニタリングするために、生成のパターンが循環メラトニンレベルと密接に相関することから、メラトニンの主要な代謝産物(これは、尿中の6-スルファトキシメラトニン(aMT6s)である。)のレベルを評価することが好都合である。しかし、本発明は、血液(例えば血漿)又は唾液などの他の身体サンプルにおけるaMT6sレベルの測定を包含し、また、メラトニン又はメラトニンレベルの他の代替物の直接測定を包含する。他の身体サンプル(すなわち、尿中aMT6s以外のサンプル)中のタシメルテオン又はタシメルテオン代謝産物のレベルを循環メラトニンレベルに関連付けることは当分野の技術の範囲内にある。例えば、血液中又は尿中のコルチゾールの量は、タウを決定するためにaMT6sの使用と同様にして使用することができる。
【0060】
非24時間障害の治療のための臨床試験の候補者におけるタウを推定するための有用なプロトコール(この方法は、所与の患者における非24時間障害の診断に適用できる。)は以下の通りである。
【0061】
各対象は、予定の7日目、14日目、21日目及び28日目に4つの48時間の尿採取セッションを受ける。各セッション中、セッションの開始及び各排尿の時間を記録する。4時間の期間(1日の最初の4時間の採取期間は予定された覚醒時刻に始まる。)又は睡眠中の約8時間にわたって採取された尿がプールされる(「採取間隔」)(したがって、対象は各48時間に合計10の尿採取間隔を有する)。スタディーナース(study nurse)は、各間隔中に採取された尿(尿はメスシリンダーに移される。)の量を決定し、アリコートをaMT6sについて分析する。
【0062】
各採取間隔について、間隔の開始及び終了時刻を用いて間隔の中間点及び継続時間を決定する。所与の間隔の開始時刻は、先の4時間(又は8時間)の採取間隔からの最後の排尿時間として定義され、所与の間隔の終了時刻は、採取間隔内の最後の排尿時間として定義される。
【0063】
間隔中に排出される主要なメラトニン代謝産物(aMT6s)の質量は、aMT6s濃度及び尿の量の積として決定される。aMT6sの排出速度は、排出されたaMT6sの質量を間隔の継続時間で除したものとして決定される。この速度は、そのセッションにおける最初の間隔の開始に先立つ真夜中を基準として間隔の中間点に関連付けられる。
【0064】
例えば、27日目の採取間隔が9AM~1PMである(そして、患者は、正確に9AMに排尿及び正確に1PMに排尿を有した)場合、その間隔の中間点には値11.0が割り当てられる。そのセッションの翌日の同じ間隔には値35.0が割り当てられる。
【0065】
夏時間の変更による時計時間の変更に合わせるために、時計が変更される日には尿採取は行われない。スクリーニングのために、尿採取が行われる4つの異なる週が時計時間の変更をまたがる場合が存在する。したがって、すべての尿採取時間は、計算のために現地標準時に自動的に変換され、次いで、報告の目的で適宜DSTに再変換される。
【0066】
ある状況において、尿採取又はそれらの記録は不完全である。これに対処するために下記の措置を行う。
1. 対象が排尿をタイムスタンプしなかった場合でも、1つの間隔内にタイムスタンプを有する複数の排尿が存在すれば、何のアクションも取らない。
2. 採取間隔に1つしか排尿がなく、患者が排尿の時間を思い出すことができない場合、48時間の採取期間全体を分析から排除し、対象は、28日目の後に追加の48時間の尿を採取することを要求される。標識のない尿がどの採取間隔に属するかを正確に決定することはできない。結局、採取間隔のすべてに開始及び終了時間を適切に割り当てることは問題がある。
3. 排尿が患者によって廃棄されたが、排尿の時間が知られている場合、その排尿に関連する継続時間(排尿の時間マイナス先の排尿の時間)を、その間隔に関連する全継続時間から差し引く。この修正された継続時間を、aMT6s排出の速度を計算するために使用する。廃棄されたサンプルが間隔におけるサンプルの最初又は最後のいずれかである場合、その間隔の中間点を、そのサンプルを考慮することなく計算する。
4. 4つより少ないサンプルしか1つの48時間採取セッションのために利用できない場合、コサインのフィッティングに支障が生じる(不十分な自由度)。結局、4つより少ないサンプルしか利用できない場合、頂点位相を決定しない。
【0067】
各セッションについて、頂点位相は、非重み付き非線形回帰を用いてそのセッションからのデータにコサインをフィッティングすることによって決定される。フィッティングは、非線形最小二乗フィッティングアルゴリズムを用いて行われる。フィッティングプロセスでは、位相シフト、メサー、及び大きさ、並びにそれらのそれぞれの標準誤差が推定され、コサインの周期は24時間に設定される(これらの対象はタウ>24時間を有すると推定されるが、タウを推定する試みは、多数の試験データセットで常に不十分な結果をもたらした。当分野のエキスパートであるSteven Lockley博士はこのアプローチを使用する)。
頂点位相は24時間の位相シフト係数として決定される。
【0068】
頂点位相値が3つ以上のセッションで利用できる場合、タウは以下の手順を用いて計算される。
1. 頂点位相を0日目に対して再計算する(24・各セッションの開始日+頂点位相)。
2. これらの値を、重み付き線形回帰を用いて各セッションの開始日に対して回帰させる。重み付けは、各セッションの頂点位相の推定値に関連する標準誤差の逆2乗による。
【0069】
したがって、本発明に関連するのは、患者の概日リズム(タウ)を決定するため、及び患者のタウに基づいて、メラトニンアゴニスト、特にタシメルテオンで患者を治療するための方法である。例示的な実施形態では、タウを決定し、患者のタウに基づいて、特にaMT6s頂点位相の時間に基づいて患者を治療するための方法は下記ステップ(a)~(f)を含む。
(a)少なくとも2つの採取セッション(各採取セッションの継続時間は少なくとも48時間である。)中の複数の規則的な採取間隔(CI)の各々の間に患者から少なくとも1つの生体サンプルを採取する。
(b)各CI中に複数の生体サンプル(すなわち同一タイプのサンプル)が採取される場合、所与のCI中に採取されたすべてのサンプルを任意選択で物理的にプールし、そのような場合、各CIに採取時点を割り当てる。
(c)サンプル又はプールされたサンプルの各々におけるメラトニン又はメラトニン代替物の量(絶対量又は濃度)を測定する。
(d)各採取時点におけるメラトニン又はメラトニン代替物の量を生成速度に任意選択で変換する。
(e)各採取時点におけるメラトニン若しくはメラトニン代替物の量又はメラトニン若しくはメラトニン代替物の生成速度についてコサイナー解析(cosinor analysis)を行って、各日のメラトニン又はメラトニン代替物の量又は生成の患者の(頂点位相を含む)サイクルをモデル化する。
(f)タウ(τ)(ここでτ=24+勾配)を決定するために一連の頂点位相決定を重み付き線形回帰モデルにフィッティングする。
【0070】
コサイナー解析が上で言及されているが、他の方法、例えば(特にコルチゾールリズム分析のための)2-ハーモニックフィット解析(2-harmonic fit analysis)が使用できることを理解されたい。
【0071】
そのようなτの決定に続いて、下記ステップ(g)に記載のようにメラトニンアゴニスト(例えばタシメルテオン)で患者を治療することができる。
(g)患者のτが24時間より長い場合、
(i)最終の採取セッションの2日目に続く少なくとも30日の各々について、前記最終の2日目及びその後の各日の頂点位相にτを加えることによって患者の頂点位相を予測し、かつ
(ii)最適治療開始日の夜、又は最適治療開始ウィンドウ内の夜から、続く概日サイクルの間、睡眠時刻の前に有効量のメラトニンアゴニストを患者に毎日体内投与することによって患者を治療する。
【0072】
最適治療開始日は、患者の睡眠時間が、患者が正常な(すなわち24時間、すなわち<24.1hrの)タウを有するならば実現するであろう睡眠時間に最も近いと推定される日である。そのような日は、概して、患者のメラトニン(又はメラトニン代替物)の頂点位相が最適頂点位相(すなわち、患者が正常な概日リズムを有するならば頂点位相が生じるであろう時間)になることが予測される夜の日である。正確に最適治療開始日に治療を開始する必要はないが、治療が、そのような日又はそのような日の両側の日の範囲内で開始されることが推奨される。前記範囲は、本明細書において最適治療開始ウィンドウと呼ばれる。ウィンドウは、概して、最適治療開始日、及び(a)メラトニン(又は代替物)の頂点位相がメラトニン(又は代替物)の最適頂点位相後約3.5時間(例えば、3時間、3.5時間、又は4時間)以内に生じると予測される、それに続く日、及び(b)メラトニン(又は代替物)の頂点位相がメラトニン(又は代替物)の最適頂点位相前5時間以内に生じると予測される、それに先行する日を含む。
【0073】
便宜上、最適治療開始ウィンドウは、予測された最適治療開始日の前後の固定した数の日(例えば、合計5日を含む最適治療開始ウィンドウについては前2日及び後2日)として定義することができる。そのようなウィンドウは
図2に例示されており、ここで、最初の最適治療開始日は2010年12月4日であり、最適治療開始ウィンドウは2010年12月2日~2010年12月6日と便宜上規定されている。
【0074】
しかし、ウィンドウは、所与の患者のタウに基づいて、すなわち患者の概日リズムがどの程度速く動いているかに応じて、上述のように設定することができ、比較的速く動いている概日リズムを有する患者は、比較的遅く動いている概日リズムを有する患者に比べてより狭い最適ウィンドウを有することは理解されたい。
【0075】
通常のモニタリングは下記ステップ(h)を含み得る。
(h)(患者の治療前のタウに基づく)少なくとも1つの完全な概日サイクルの治療期間に続いて、下記のように同調を評価する。
(i)τが<24.1時間であり、95%信頼区間が24.0時間をまたぐ場合、患者は1日24時間に同調しているとみなす。
(ii)最後の2つの頂点位相推定値が、目標範囲、すなわち最適頂点位相から-2~+6時間の範囲内にあり、これらの2つの頂点位相の標準偏差が重複する場合、追加の生体サンプル採取を行い、最後の3つの頂点位相推定値(元の2つ+追加)に基づいてτを再計算し、タウが<24.1時間であり、95%信頼区間が24.0時間をまたぐ場合、患者は1日24時間に同調しているとみなす。
(iii)τ>=24.1時間であり、又は95%信頼区間が24.0時間をまたがない場合、患者を再試験する。
【0076】
完全な概日サイクルの継続時間は、所与の患者が自由継続している速度に応じて変動する。例えば、
図2に関して、24.6時間のタウを有する患者は、約39日(例えば、2010年12月4日~2011年1月13日)で概日サイクルを完了する。より遅いリズム(例えばタウ=24.5)を有する患者はより長いサイクルを有し、逆に、より早いリズム(例えばタウ=24.7)を有する患者はより短いサイクルを有する。
【0077】
上述のタウ決定及び治療方法は、以下の特徴の任意の1つ又は任意の2つ以上の組み合わせを含み得る。
1. メラトニン量は、メラトニン代替物の量を測定することによって間接的に測定され、前記代替物はaMT6sである。
2. 生体サンプルは、尿であり、所与のCI中に採取されたすべての尿は物理的にプールされ、CIの中間点は該CIの採取時点として割り当てられる。
3. 覚醒期間中の各CIは4時間であり、睡眠期間は単一のCIであり、但し、各採取セッションの最初の4時間の期間中にサンプルが採取されないか、又は採取されるとしても、タウの決定においてサンプルが使用されない。
4. 各CIの採取時点は、所与のCIの直前のCIにおける最後の尿排泄の時刻及び所与のCIにおける最後の尿排泄の時刻の間の中間点として定義される。
5. 4つの採取セッションがある。
6. 各採取セッションは48時間である。
7. 採取セッションは週に1回行われる。
8. 最適治療開始日は、メラトニン又はメラトニン代替物の頂点位相が最適頂点位相であると予測される夜の日である。
9. 最適頂点位相は、aMT6s頂点位相が患者の目標覚醒時刻の約3.5時間前に最も近く、かつその時点より遅くないと予測される時間である。
10. 最適治療開始ウィンドウは、最適治療開始日、及び(a)メラトニンの頂点位相が最適頂点位相後3時間以内に生じると予測される、それに続く日、及び(b)メラトニンの頂点位相が最適頂点位相前5時間以内に生じると予測される、それに先行する日を含む。そのような実施形態において、コルチゾールは、コルチゾール概日リズム及びaMT6s概日リズムの間の差異を考慮した調整をしてaMT6sの代わりに使用することができる。
11. 治療は、有効量のタシメルテオンの1日1回の体内投与を含み、投与の時間は、最適なaMT6s頂点位相の時間の前の約5時間であり、ここで、治療は、少なくとも1つの完全な概日サイクルの間、毎日継続される。そのような実施形態において、コルチゾールは、コルチゾール概日リズム及びaMT6s概日リズムの間の差異を考慮した調整をしてaMT6sの代わりに使用することができる。
12. メラトニン又はメラトニン代替物の量は絶対単位又は濃度単位で測定される。
13. 生体サンプル中のメラトニン又はメラトニン代替物の量は、aMT6s濃度(質量/体積)及び生体サンプルの体積の積として決定される。
14. メラトニン又はメラトニン代替物の生成速度は、各CI中に生成及び採取されたメラトニン及びメラトニン代替物の質量をCIの継続時間で除したものとして決定される。
15. 生成速度はg/hrとして表される。
16. 時計が夏時間(DST)に又は夏時間から変更される日にサンプルは採取されず、採取セッションが時計時間の変更をまたがる場合、すべての採取時点は、計算のために現地標準時に変換され、次いで、報告の目的で、必要に応じてDST又は標準時に再変換される。
17. サンプルは、患者によってサンプル採取容器に採取され、分析のための試験(例えば診断試験)に供される。
18. 患者は、採取容器に予め取り付けられた又は採取容器に患者によって貼られたラベルに各サンプル採取の日付及び時間を記録する。
19. 各採取の日付及び時間はタイムスタンプクロックによってラベルに印刷される。
20. 生体サンプルは尿であり、メラトニン量は、aMT6sの量を測定することによって間接的に測定され、ここで、尿採取又はそれらの記録が不完全な場合:
(i)患者が排尿をタイムスタンプしなかった場合でも、1つのCI内にタイムスタンプを有する複数の排尿が存在すれば、何のアクションも取られず;
(ii)CIに1つの排尿しかなく、患者がその排尿の時間を思い出せない場合、その48時間の採取セッション全体が分析から排除され、追加の採取セッションが行われ;
(iii)排尿が患者によって廃棄されたが、排尿の時間が知られている場合、その排尿に関連する継続時間(排尿の時間マイナス先の排尿の時間)が、そのCIに関連する全継続時間から差し引かれ、修正された継続時間がaMT6sの生成速度の計算のために使用されるが、廃棄されたサンプルが所与のCIにおけるサンプルの最初又は最後のいずれかである場合、そのCIの中間点が、そのサンプルを考慮することなく計算され;
但し、4つより少ないサンプルしか1つの採取セッションのために利用できない場合、その採取セッションについて頂点位相が決定されない。
21. ステップ(h)において、τ>=24.1時間であり、又は95%信頼区間が24.0時間をまたがない場合、治療が継続され、患者は次の完全な概日サイクルの後に再試験される。
22. ステップ(g)において、患者のτが24時間より長い、例えばτ>=24.1時間である場合、最終の採取セッションの2日目に続く90日の各々について患者の頂点位相が予測される。
23. aMT6s又はコルチゾールを、プールされた尿サンプルから固相抽出によって抽出し、抽出物を蒸発乾固し、次いで、残渣を溶媒で再構成し、溶液をHPLC-MS、抗体結合アッセイ又は他の分析技術によって分析する。
【0078】
したがって、タウを決定し、その後、それにより自由継続概日リズムを有すると決定された患者を治療する方法の特定の例示的な実施形態は下記ステップ(a)~(f)である。
(a)4つの毎週の48時間の採取セッション中の9つの採取間隔(CI)の各々の間に患者から尿サンプルを採取し、1つより多い場合は物理的にプールする。前記9つのCIは、下記CI2、CI3、CI4、CI5、CI6、CI7、CI8、CI9及びCI10である。
CI1: 最初の採取セッションの1日目の覚醒期間のほぼ開始時に始まる4時間の期間
CI2: CI1の終了時に始まる4時間の期間
CI3: CI2の終了時に始まる4時間の期間
CI4: CI3の終了時に始まる4時間の期間
CI5: 終夜、すなわち睡眠期間(約8時間)
CI6: 採取セッションの2日目の覚醒期間のほぼ開始時に始まる4時間の期間
CI7: CI6の終了時に始まる4時間の期間
CI8: CI7の終了時に始まる4時間の期間
CI9: CI8の終了時に始まる4時間の期間
CI10: 終夜、すなわち睡眠期間(約8時間)
(b)(i)CI1中にサンプルを任意選択で採取及び廃棄し、かつ(ii)CI2、CI3、CI4、CI5、CI6、CI7、CI8、CI9及びCI10の各々の採取時点として、所与のCIの直前のCIの最後の排尿及び所与のCIの最後の排尿の間の中間点を振り分ける。
(c)上記10サンプルの各々におけるaMT6s又はコルチゾールの量を測定する。
(d)各採取時点における測定されたaMT6s又はコルチゾールの量を生成速度に変換する。
(e)各採取時点におけるaMT6s又はコルチゾールの生成速度についてコサイナー解析を行って、各日のaMT6s又はコルチゾール生成の(頂点位相を含む)サイクルをモデル化する。
(f)概日周期(τ)(ここでτ=24+勾配(p</=0.05))を決定するために一連の頂点位相決定を重み付き線形回帰モデルにフィッティングする。
(g)患者のτが、24時間より長い場合、
(i)最終の採取セッションの2日目に続く90日の各々について、前記最終の2日目及びその後の各日の頂点位相にτを加えることによって患者の頂点位相を予測し、かつ
(ii)最適治療開始日の夜、又は最適治療開始ウィンドウ内の異なる夜から、続く概日サイクルの間、睡眠時刻の前に有効量のタシメルテオンを患者に毎日体内投与することによって患者を治療する。
(h)1つの完全な概日サイクルの治療期間に続いて、下記のように同調を評価する。
(i)τが<24.1時間であり、95%信頼区間が24.0時間をまたぐ場合、患者は1日24時間に同調しているとみなす。
(ii)最後の2つの頂点位相推定値が、目標範囲、すなわち最適頂点位相から-2~+6時間の範囲内にあり、これらの2つの頂点位相の標準偏差が重複する場合、追加の48時間の尿採取を行い、最後の3つの頂点位相推定値(元の2つ+追加)に基づいてτを再計算し、τが<24.1時間であり、95%信頼区間が24.0時間をまたぐ場合、患者は1日24時間に同調しているとみなす。
(iii)τ>=24.1時間であり、又は95%信頼区間が24.0時間をまたがない場合、最初の採取から1概日サイクルに始まることが予定された追加の4つの48時間尿採取によって患者を再試験する。
【0079】
本発明の態様の実施において使用し得る尿採取及び分析方法において、各採取間隔中に採取した尿の全量を使用することが必須でないことは明らかである。
【0080】
有効量のメラトニンアゴニスト、特にタシメルテオンを体内投与することによる非24時間障害の治療の方法は、患者を診断又はモニタリングする方法に依存しない。この治療方法は、どのように診断されたかに関わらず、非24時間障害の患者を治療するのに有用である。同様に、他のマーカーを用いて尿aMT6s又はコルチゾール頂点位相を予測することができる。
【0081】
同調していない人、すなわち非24時間概日リズムを有する人は、睡眠及び覚醒期間の開始が(人為的に中断されない限り)日毎に遅くなる明らかな非24時間睡眠期間を有する非24時間障害の症状を示し得る。睡眠期間におけるより重篤でないシフトを示す患者も存在し、また、睡眠期間のシフトを示さない患者も相当数存在する。そのような患者、特に睡眠期間におけるシフトを示さない患者は、診断がもっぱら睡眠及び覚醒時間に基づく場合、正常なタウを有すると誤診され得る。睡眠期間において穏やかなシフトを示す又はシフトを示さない患者の中には、睡眠潜時、夜間睡眠継続時間及び日中の仮眠のうちの1つ又は複数についてサイクリックパターンを有するものもいる。睡眠問題に関わらず、非24時間概日リズムを有する患者は他の概日関連障害(例えば代謝障害)のリスクを有し得る。
【0082】
非24時間障害を含む非24時間概日リズムに罹患していると診断された患者の同調は、任意の時間において、メラトニンアゴニスト(例えば、タシメルテオン若しくはタシメルテオンの活性代謝物又はその薬学的に許容される塩)の体内投与を開始することによって実施することができる。あるいは、治療は、患者の(例えば尿aMT6sの頂点位相に基づく)メラトニンの頂点位相が、所与の患者のために又は所与の患者によって選択された目標覚醒時刻の約3~4時間前又は約3.5時間(例えば3.25~3.75時間)前に生じると予測される日又はほぼその日に開始することができる。治療の開始に「理想的」な日は、対象の予測された頂点位相が、1)目標覚醒時刻の3.5時間前に最も近く、かつ2)その時間より早い日としてより明確に定義することができる。後者の資格を得た人では、治療の開始が位相応答曲線の位相前進部分に生じる確率が5割を超える。
【0083】
例えば、10:00p.m.の目標就寝時刻及び7:00a.m.の目標覚醒時刻を有する患者の治療の場合、治療開始は、尿aMT6s頂点位相が3:30amに生じると予測される日であり得る。しかし、タシメルテオンによる治療は、メラトニンの頂点位相が(例えば計算された尿aMT6sの頂点位相を用いて)目標覚醒時刻の約5.5時間前から目標覚醒時刻の2.5時間後までの間にあると予測される日に好都合に開始することができる。特定の理論に束縛されることを意図するものではないが、この柔軟性は、治療開始の際の概日リズムに対するそのような活性成分の顕著な効果(例えば、最初の治療の際の約5時間もの位相前進)によるようである。
【0084】
尿aMT6s以外の循環メラトニンレベルのマーカー(例えば血漿中のaMT6s)を使用する場合、上記の時間は適宜調整されるが、それにも関わらず、尿aMT6sレベルを間接的に示す。
【0085】
非24時間障害に罹患している患者では、暦日が頂点位相に関連していないことがある。例えば、患者のタウが24.5時間であり、頂点位相が8月28日の23:45(11:45pm)に生じる場合、次の頂点位相は8月30日の00:15(12:15am)に生じると予測される。
【0086】
非24時間障害患者のタウを24時間(例えば<24.1時間)に同調させることに加えて、メラトニンアゴニスト、特にタシメルテオンは1日当たりの総睡眠時間を増加させ、1日当たりの総仮眠時間を低減させ得る。
【0087】
患者の同調は、上述の又は異なる方法によって患者のタウを決定することを含む種々の方法によって決定することができる。それに加えて又はそれに代えて、患者又はヘルスケア従事者の改善の認識は例えば質問票の使用によって評価することができる。そのような認識には、例えばthe Clinical Global Impression of Change(CGI-C)を使用することができる。
【0088】
CGI-Cは、安寧感及び日常活動を行う能力として定義される包括的な臨床状態における変化についての、ヘルスケア従事者によりなされる評価である。例えば、Lehmann E., Pharmacopsychiatry 1984, 17:71-75を参照されたい。CGI-Cは、臨床医、医師又は他のヘルスケア従事者が試験の開始時に対する患者の症状改善を評価する7段階評価スケールである。評価は次のように行われる。1:大きく改善された;2:かなり改善された;3:わずかに改善された;4:変化なし;5:わずかに悪化した;6:かなり悪化した;7:大きく悪化した。
【0089】
質問票は、治療の開始前又は治療開始後早期に、例えば1日目の前に又は例えば(治療の最初の日から数えて)56日目に行うことができ、治療開始後もっと後に、例えば112日目及び/又は183日目に再び行うことができる。
【0090】
非24時間障害の循環性のため、患者の全般的な改善は1つの時点/来院で評価されるべきではない。したがって、最後の2つの予定された評価(例えば112日目及び183日目)におけるCGI-Cの平均スコアは、患者の全般的な改善を評価するために使用できる。
【0091】
治療期間の後に患者のタウを測定すること及び/又は(例えばCGI-Cの使用により)患者若しくはヘルスケア従事者の評価を利用することに加えて又はそれに代えて、種々の睡眠パラメーターも、治療の有効性すなわち同調を評価するために使用できる。
【0092】
例えば、評価し得る睡眠パラメーターには、nTSTの下位四分位点(LQ-nTST)、dTSDの上位四分位点(UQ-dTSD)、及び睡眠タイミングの中間点(MoST)のうちの1つ又は複数が含まれる。
【0093】
nTSTの下位四分位点(LQ-nTST):
非24時間障害に罹患している患者は、睡眠サイクルが24時間の時計とずれている結果、眠るのが困難であり得る。このずれが、十分な睡眠の間隔が後に続く不十分な睡眠の間隔をもたらす。したがって、非24時間障害に関連する症状の重篤性は、睡眠が最悪であった夜及び仮眠が最も多かった日を特定した場合に最もよく示される。睡眠に関してワースト25%の夜を評価することは、夜間総睡眠時間(nTST)との関係でどのように個人がこの概日疾患を患っているかの良好な尺度となる。
【0094】
LQ-nTSTを計算する方法は次の通りである。所与の個人について、夜間総睡眠時間のすべての非欠測値(ベースラインデータ及び無作為化データの両方のための一概日サイクルの>70%を含まなくてはならない。)を最小から最大まで順序付ける。記録の最初の25%(シーリング(非欠測記録の数)/4)は、夜間総睡眠時間の下位四分位点に属しているとして印を付ける。これらの値の平均を計算し、この結果をLQ-nTSTとして表す。
【0095】
例えば、対象が次の21のnTSTベースライン記録を有すると仮定する。6.75、6.75、1、1、6.75、1.083、7.167、0.833、7.083、7.983、7、7、7.833、7、7.667、7.183、7、7.067、7、7.183,及び7
それらを順位付けし、記録の最初の25%を選択する。[(21/4)=6]:0.833、1、1、1.083、6.75、及び6.75
それらの値を平均して対象のLQ-nTSTを得る。(0.833+1+1+1.083+6.75+6.75)/6=2.91
【0096】
dTSDの上位四分位点(UQ-dTSD):
非24時間障害に罹患している患者は、日中の仮眠を含めて、睡眠サイクルが24時間時計とずれている結果、日中に眠る傾向を有する。対照的に、概日リズムが1日24時間に足並みをそろえている場合は仮眠をほとんど又は全くしないことがある。日中の仮眠に対するこの動的概日障害の効果を測定するために、日中の仮眠に関してワースト25%の日(日中の仮眠のワーストを測定するためのロバストな評価である。)がLQ-nTSTと同様にしてこの計算に使用される。
【0097】
UQ-dTSDを計算する方法は次の通りである。所与の個人について、日中総仮眠継続時間のすべての非欠測値を所与の1日について合計し、次いで、これらの毎日の合計を最大から最小まで順序付ける(但し、個人が仮眠を報告しなかった日はゼロと記録される)。記録の最初の25%(シーリング(非欠測記録の数)/4)を、日中総睡眠継続時間(dTSD)の上位四分位点に属するものとして印を付ける。これらの値の平均を計算し、この結果をUQ-dTSDとして表す。
【0098】
例えば、対象が次の26のdTSDベースライン記録を有すると仮定する。1.083、1.083、1.083、1.083、1.083、1.083、1.083、1.083、1.083、1.083、1.083、1.083、1.083、1.083、1.083、1.083、1.083、0、1.083、1.667、1.083、1.083、1.083、1.083、1.083、及び1.083
それらを(最大から最小へ)順位付けし、記録の最初の25%(すなわちシーリング(26/4))=7つの記録を特定する。1.667、1.083、1.083、1.083、1.083、1.083、及び1.083
それらの値を平均して対象のUQ-dTSDを得る。(1.667+1.083+1.083+1.083+1.083+1.083+1.083)/7=1.17
【0099】
睡眠タイミングの中間点(MoST):
非24時間障害を含む概日リズム障害は、24時間明暗サイクル及びひいては個人の行っている活動(例えば、概日リズムが、覚醒しているよう脳に信号を送っている夜に眠ろうと試みること)に対する概日リズムのタイミングのずれを特徴とする。睡眠タイミングの中間点は、睡眠前及び睡眠後の質問票の両方において報告された睡眠の組み合わせから導かれる。(就寝前-12時間から就寝後+12時間までの相対期間に調整された)24時間の期間にわたる睡眠タイミングの中間点は各日について計算することができる。中間点を計算する際の最初のステップは、各睡眠エピソードについて中間点及び重み(例えば継続時間)を計算することである。総24時間睡眠時間は、この24時間の期間におけるすべての睡眠エピソードの合計である。次いで、個人の睡眠エピソードの各々に、それが含む24時間睡眠の割合に応じて重みを割り当てる。
【0100】
有用なMoSTアルゴリズムを下記のように要約することができる。
1. 所与の24時間の期間における各睡眠エピソードについて中間点及び重み(すなわち継続時間)を計算する。
2. 各睡眠エピソードに重みを割り当てる。
3. 重み付き睡眠エピソードの平均を決定する。
4. 重み付き睡眠エピソードの平均を目標就寝時刻のために補正する。
【0101】
より具体的には、そのような有用なアルゴリズムを下記のようにさらに定義することができる。
24時間の期間における各睡眠エピソードの中間点は次のように計算される。
睡眠開始時刻+[(睡眠終了時刻-睡眠開始時刻)/2]-24
各睡眠エピソードの重みは、(知覚された又は客観的に測定された)睡眠の継続時間に等しい。
各睡眠エピソードの重み値は次のように計算される。
中間点*(重み/TST)(式中、TSTは、24時間の期間におけるすべての睡眠継続時間の合計である。)
重み付き睡眠エピソードの平均は、睡眠エピソードの数で割ったすべての睡眠エピソードの重み値の合計である。
目標就寝時刻の補正は次のように計算される。
24-目標就寝時刻+重み付き睡眠エピソードの平均
【0102】
例えば、10:30PMの目標就寝時刻を有する個人が10:30PMに眠り、6:30AMに目を覚ました(5時間の自己報告した総睡眠時間を有する)と仮定する。同様に、その個人が2時間5分続いた仮眠を8:05PMに取ったと仮定する。その日の睡眠タイミングの中間点(MoST)は(目標就寝時刻に対して)1.959559となる(計算は下記の通り)。
夜間睡眠中間点:
睡眠開始時刻=目標就寝時刻=目標BT=10:30PM=22.5
睡眠終了時刻=覚醒時刻=6:30AM=6.5
(24時間の周期性に合わせて調整された)睡眠終了時刻=24+6.5=30.5
夜間睡眠中間点=[(30.5-22.5)/2]係数24=2.5(真夜中に対して)
重み=nTST=5時間=5.0
仮眠中間点:
睡眠開始時刻=仮眠開始=08:05PM=20.08333
仮眠継続時間=02h05m=2.083333
睡眠終了時刻=仮眠終了=仮眠開始+仮眠継続時間=20.08333+2.083333=22.16667(10:10PM)
仮眠中間点=仮眠開始+(仮眠終了-仮眠開始)/2=20.08333+[(22.16667-20.08333)/2]-24=-2.875(真夜中に対して)
重み=仮眠継続時間=2.083333
睡眠エピソードの重み付け:
TST=合計(すべての睡眠エピソード)=合計(5.0、2.083333)=7.083333
重み付き夜間睡眠=中間点*(重み/TST)=2.5*(5/7.083333)=1.7647059
重み付き仮眠=中間点*(重み/TST)=-2.875*(2.083333/7.083333)=-0.8455882
重み付き睡眠エピソードの平均:
(1.7647059、-0.8455882)の平均=0.4595588
目標就寝時刻の補正:
補正量=24-目標BT=24-22.5=1.5
MoST=0.4595588+1.5=1.959559(目標就寝時刻に対して)
【0103】
個人が所望の期間に7~8時間睡眠し、日中の仮眠をしない理想的な環境下で、MoSTは約3.5~4.0である。上記例において、個人は遅い午後又は夜の仮眠を取っているが、これが、中間点を所望の範囲より引き下げて1.96にしている。あるいは、患者が午前の仮眠をより多く取る場合、これはより大きな数を潜在的にもたらす。設定を変えて患者が仮眠なしで10:30pmから6:30amまで眠ったとすると、患者のMoSTは4.0になる。このアルゴリズムは、夜間の睡眠及び日中の仮眠の両方からの情報を動的に考慮する。さらに、重み付き睡眠エピソードが24時間の期間内の睡眠エピソードの総数で除されるので、個人の睡眠がより細分化されるに従って、得られる睡眠タイミングの中間点は0に押される(3.5~4.0の最適値から離れる)。MoSTにおける改善はMoSTスケールにおける増加と定義される。
【0104】
有用な臨床応答のスケール(CRS又はN24CRS)は、LQ-nTST、UQ-dTSD、MoST及びCGI-Cのすべての結果を組み合わせることによって形成され得る。例示的な実施形態において、スケール上での各評価は、以下の表に定義されるように予め規定された閾値が達成されたかどうかに応じて1又は0のスコアが付けられる。各評価のスコアを0~4の範囲で合計する。≧3のN24CRSスコアを有する個人は、治療に応答したと分類される。
【0105】
臨床応答の非24時間障害スケール:
又はそれらの任意の組み合わせ又は順列。N24CRSにおける継続時間の増加及び減少、並びに他のスコアは、ベースライン(これは2つ以上の評価の平均であり得る。)を治療後(これは2つ以上の治療後評価の平均であり得る。)と比較することによって決定され得る。例えば、<=1(又は<=2)のCGI-Cスコアリングは、ベースラインスコア(これは、治療の開始前又は治療の開始直後に取られた評価からの単一データポイント又は2つ(又はそれ以上)のスコアの平均であり得る。)の、治療後評価からの単一データポイント又は2つ(又はそれ以上)のスコアの平均との比較であり得る。
【0106】
例示的な実施形態において、改善(すなわち治療に対する応答)は、
1. 24時間に向けたタウのシフト、及び
2. 上述のN24CRS上の>=3のスコア
が同時に示されることとして定義される。
【0107】
そのような実施形態において、実質的に上述のように、これらに限定されないが、尿中のaMT6、コルチゾール、血液又は唾液中のメラトニンなどを含む任意の方法を用いてタウを測定することができる。
>=2のスコアが改善(すなわち治療に対する患者の応答)を示していることもあり得る。
【0108】
LQ-nTST、UQ-dTSD、MoSTなどのパラメーターを計算するために必要なデータは、睡眠試験において客観的に定量化することができる。あるいは、より具体的には、例えば、睡眠したか、何時に就寝したか、入眠するのにどれだけの時間がかかったかを患者に申告してもらう患者質問票を手段として収集することができる。ある臨床研究では、対象は、すべてのスクリーニング評価が完了した翌日に開始して1日2回、双方向音声応答システム(IVRS)に電話をかけ、2.5概日サイクル又は6か月のいずれか少ない方の間、無作為化相を通じて継続することを要求される。対象は2回、すなわち、朝に1回、夕方に1回、IVRSに電話する。朝は、夜間睡眠パラメーター(PSQ)を報告するために予定の起床後1時間以内に、夕方は、任意の日中睡眠エピソード(PreSQ)の長さ及び継続時間を報告するために対象の毎日の投薬時間後15分以内に電話する。IVRSは、要求された電話を所定の時間内にしなかった対象に自動的に電話をかけ直す。当業者は、この方法又は類似の方法を治療の場に容易に移すことができる。
【0109】
治療開始後の改善を確認するために他の方法を使用し得ること、又は例えば他のタウ決定方法を使用することによって、及び/又は異なる若しくはさらなる睡眠パラメーターを測定することによって、上述の方法における変形を使用し得ることを当然ながら理解されたい。
【0110】
上記に基づく有効性の指標には例えば下記のものが含まれる。
1. 複合睡眠/覚醒反応(LQ-nTSTにおける>=90分の増加 + UQ-dTSDにおける90分の減少)
2. コルチゾール分泌の同調
3. 同調 + LQ-nTSTにおける45分の増加
4. 同調 + UQ-dTSDにおける45分の減少
5. 同調 + MoSTにおける>=30分の増加
6. 同調 + CGI-Cスケール上での大きく改善された又ははるかに良いスコア
7. LQ-nTSTにおける増加
8. UQ-dTSDにおける減少
9. MoSTにおける改善
10. CGI-Cにおける改善
11. N24CRS=4
12. 複合睡眠/覚醒反応(LQ-nTSTにおける>=45分の増加 + UQ-dTSDにおける45分の減少)
【0111】
本発明のこれらの方法を実施するに当たって、多数の治療前評価及び治療後評価の平均を、試験から試験及び/又は日から日の変動性をならすために使用することができる。例えば、ベースラインMoSTは2つの治療後開始MoSTの平均と比較することができ、この場合、2つの治療後MoSTの差は2時間未満であることが好ましい。差が約2時間より大きい場合、1つ又は複数のさらなるMoST評価を実施することができる。
【0112】
有効性が示された場合、すなわち、患者が正常な概日リズム(すなわち24時間又は最長で24.1時間)を達成した又は正常な概日リズムの方向に動いていると決定された場合、治療を継続することができる。有効性が示されない場合、医師又は他のヘルスケア従事者は、治療を中止するかメラトニンアゴニストの用量を変えるか、又は治療方法を変更してもよい。
【0113】
上述の応答評価方法は診断目的で使用することもできる。したがって、例えば、約3.5未満又は約3.0未満又は約2.5未満のMoSTは、患者が自由継続概日リズムに罹患していることの表示であり得る。そのような診断は、上述のパラメーターの1つ又は複数を使用することができ、任意選択で他の診断マーカーも評価される。例えば、タウ決定と組み合わせた患者のMoSTスコアも自由継続概日リズムの有用な診断又はその一部になり得る。
【0114】
したがって、本発明の一態様を含む治療の一方法において、睡眠障害の症状(例えば、夜眠ることの困難、日中の頻繁な仮眠)を有することを医師又は他のヘルスケア専門家に提示した患者は、他の診断評価とともに又は他の診断評価なしで、患者のMoSTの評価によってまず診断される。次いで、低い(例えば3.5未満の)MoSTを有する患者はメラトニンアゴニスト(例えばタシメルテオン)で治療される。
【0115】
第3相臨床試験すなわちヒトにおける安全性及び有効性試験(SET試験)において、タシメルテオンは、非24時間障害の患者を24時間概日リズムに同調させるのに有用であることが実証された。具体的には、患者は、タウを再推定する前に少なくとも12週間、1日当たり20mgのタシメルテオンを経口投与された。患者は、ベースラインタウ推定値に基づいて無作為化又は非盲検に選択された。9時間の夜間睡眠時間に基づいて患者によって決定された目標睡眠時刻の約1時間前に薬物を投与した。
【0116】
SET試験は、非24時間障害を有する患者における無作為化された84人の患者、二重盲検、プラセボ対照試験であった。この試験のプライマリーエンドポイントは、メラトニン(aMT6s)リズムの24時間時計への同調、及び同調により測定される臨床応答、それに加えて下記N24CRS上での3以上のスコアであった。
【0117】
【0118】
第2の試験(RESET試験)は、非24時間障害を有する盲目の個人の治療における20mg/日のタシメルテオンの持続効果を実証するために設計された、無作為化された20人の患者の投与中止試験であった。SET試験の非盲検導入期間において、少なくとも12週間、患者をタシメルテオンで治療した。次いで、非盲検導入期間中のタシメルテオン治療に応答した患者を無作為化して、2か月間、プラセボ又はタシメルテオン(20mg/日)のいずれかを受けさせた。
【0119】
SET試験のプライマリーエンドポイントに関する結果が表1Aに要約されている。
【表1A】
【0120】
SET試験は、コルチゾールリズムの同調並びに広範囲の臨床睡眠及び覚醒パラメーターを含むいくつかのセカンダリーエンドポイントも評価した。これらのパラメーターは、ワースト25%の夜の総夜間睡眠(LQ-nTST)における改善、ワースト25%の日の総日中睡眠継続時間(UQ-dTSD)における減少、並びに夜間及び日中の両方について報告された睡眠の組み合わせから導かれた睡眠タイミングの中間点(MoST)を含んでいた。CGI-Cは、より低いスコアがより大きな改善を示す全体的機能の7段階評価スケールである。
【0121】
【0122】
同調した患者の割合は、2つの完全な概日サイクルの間、薬物投与された患者において高かった。同調した患者の割合は、ベータ遮断薬を摂取していない患者でも高く、また、非常に長いタウ(例えばタウ>=24.7)を有する患者において低かった。少なくとも2つの概日サイクルの間、薬物を投与され、ベータ遮断薬は投与されず、タウが<24.7時間であった患者において、同調した患者の割合は約85%であった。
【0123】
SET試験の結果は、タシメルテオン非24時間障害第3相開発プログラムからの初期データを表し、この希少な概日リズム障害に罹患している患者を治療する上でのこの新規治療法の複数の利益を示している。SET試験において、タシメルテオンは安全で耐容性良好であることが示された。
【0124】
RESET試験のプライマリーエンドポイントは、メラトニン(aMT6s)リズムの同調によって測定される効果の維持であった。RESET試験のプライマリーエンドポイントに関する結果が表2Aに要約されている。
【表2A】
【0125】
RESET試験は、コルチゾールリズムの同調の維持、並びにLQ-nTST(ワースト25%の夜の総夜間睡眠)、UQ-dTSD(ワースト25%の日の総日中睡眠継続時間)及びMoST(夜間及び日中睡眠の両方からの睡眠タイミングの中間点)を含む一連の睡眠及び覚醒パラメーターを含むいくつかのセカンダリーエンドポイントも評価した。RESET試験のセカンダリーエンドポイントに関する結果が表2Bに要約されている。
【0126】
【0127】
試験の非盲検導入期間からタシメルテオンで治療された患者の同調の比率は、個々の患者の特徴に応じて50%~85%であった。再発までの時間の分析(毎週の平均夜間睡眠の45分の減少)において、プラセボで治療された患者は、タシメルテオンで治療された患者に比べて再発数が多く、また、再発時期が早かった(P=0.0907)。
【0128】
RESET試験は、非24時間障害におけるタシメルテオンによる長期的治療の有効性を示しており、SET試験の結果をさらに支持する。これは、マスター体内時計を同調させ、非24時間障害の臨床症状を顕著に改善するタシメルテオンの能力を確立した。
【0129】
同調した概日リズムの維持、すなわち長期的治療のために、本明細書に記載の治療レジメンを無期限に毎日継続することができる。したがって、例えばタシメルテオンを例えば就寝約1/2~1時間前に例えば20mg/日の用量で経口投与することができる。
【0130】
臨床研究の結果は、内因性メラトニンと、患者を24時間概日リズムに同調させる上でのタシメルテオンの有効性と、の間の強い相互依存関係も示している。下の表(表3A)は、24人の同調患者及び23人の非同調患者のピークaMT6sレベルを比較したものである。
【0131】
【0132】
尿中の平均ベースラインaMT6s排出速度は上述の方法を用いて決定した。タシメルテオン治療に応答して同調した対象において1814.98ng/hrであり、タシメルテオン治療に応答して同調しなかった対象において1128.65ng/hrであった。>2000ng/hrのベースラインaMT6s排出速度を有する13人の患者のうちの11人が治療に応答した。表3Bを参照されたい。
【0133】
【0134】
現在利用可能なこれらの試験からのデータは、ベータ遮断薬治療がタシメルテオンの有効性に間接的に関連していること、すなわち、ベータ遮断薬治療を受けている患者が、そうでない患者に比べて同調しにくかったことも示している。
【0135】
【0136】
さらに、表5に示されるように、現在利用可能なデータは、上に実質的に記載されているように尿中のaMT6sレベルを評価することによって決定されるタウ及び上に実質的に記載されているように尿中のコルチゾールを評価することによって決定されるタウの間の相関を示している。
【0137】
【0138】
臨床研究からのデータも、CYP1A2阻害薬及び喫煙がいずれも患者の薬物暴露に影響を与えることを示している。
【0139】
フルボキサミンは強力なCYP1A2阻害薬である。単独で投与されたタシメルテオンと比べて、フルボキサミン及びタシメルテオンの共投与(co-administration)では、タシメルテオンのAUC0-infは約7倍増加し、Cmaxは約2倍増加した。
【0140】
下の表6は、タシメルテオンの薬物動態へのタシメルテオン及びフルボキサミンの共投与の効果を示している。≧18及び≦35kg/m2の肥満指数(BMI)を有する非喫煙者であった18~55歳(両端を含む。)の24人の健康な男性又は女性対象が、1つの場所で行われた非盲検、単回シーケンス試験に参加した。1日目に、対象に5.667mgのタシメルテオンを投与した。2~7日目に、対象に50mgのフルボキサミンを投与した。8日目に、対象に5.667mgのタシメルテオン及び50mgのフルボキサミンを共投与した。
【0141】
【0142】
図5は、タシメルテオンの代謝経路を示す。
図6~11は、それぞれ、タシメルテオン、M9代謝産物、M11代謝産物、M12代謝産物、M13代謝産物、及びM14代謝産物の濃度へのタシメルテオン及びフルボキサミンの共投与の効果のプロットを示す。
図6~11から分かるように、フルボキサミン共投与に起因する濃度の増加は、その二次代謝産物(M9、M11)に比べてタシメルテオン及びその一次代謝産物(M12、M13、M14)に関してより明白であった。
【0143】
下の表7は、タシメルテオン及びその代謝産物のいくつかについて、それらの濃度への喫煙の効果を示す。喫煙者は、1日に10本以上のタバコを吸う人と定義された。非喫煙者は、1日にタバコを全く吸わない人と定義された。
【0144】
【0145】
図12~17は、それぞれ、タシメルテオン、M9代謝産物、M11代謝産物、M12代謝産物、M13代謝産物、及びM14代謝産物の濃度に対する喫煙の効果のプロットを示す。
【0146】
本発明の関連の態様は、治療に関連する健康情報に関するデータを受け取るための手段、そのような情報を一時的若しくは無期限に記憶するための手段、及びそのような情報をそのようなヘルスケア専門家若しくは患者に直接若しくは間接的に伝達するための手段を含むコンピューターベースのシステムを含む。そのような健康情報は、患者がCYP1A2阻害薬を受けているかどうか、すなわちCYP1A2阻害薬での治療を受けているかどうか、患者の内因性メラトニンレベルに関する情報、患者の内因性コルチゾールレベルに関する情報、患者のタウに関する情報、患者がベータ遮断薬を受けているかどうか、すなわちベータ遮断薬での治療を受けているかどうかに関する情報、患者が喫煙者であるかどうかに関する情報などを含み得る。
【0147】
したがって、本明細書に記載の方法を用いた、コンピューターにより実施される(computer implemented)システム及び方法が提供される。
【0148】
例えば、本発明に関連するのは、メラトニンレベルを決定するために患者の試験サンプルをスクリーニングするステップと、データを収集するステップと、データのレビュー又は分析に基づいて結論を得るために患者、ヘルスケア提供者又はヘルスケア管理者にデータを提供するステップと、を含む方法である。一実施形態において、結論は、患者、ヘルスケア提供者又はヘルスケア管理者に提供され、インターネットを通じたデータの伝達を含む。
【0149】
メラトニンレベル及び概日リズムの情報又は上記又は本明細書に記載のものなどの他の患者固有の情報はコンピューター可読形態で記憶させることができる。そのような情報は、例えば、患者がCYP1A2阻害薬での治療を受けているかどうか、患者の内因性メラトニンレベルに関する情報、患者の内因性コルチゾールレベルに関する情報、患者のタウに関する情報、患者がベータ遮断薬を受けているかどうか、すなわちベータ遮断薬での治療を受けているかどうかに関する情報、患者が喫煙者であるかどうかに関する情報などのうちの1つ又は複数を含み得る。そのようなコンピューターシステムは、典型的には、セントラルプロセッサ、システムメモリ(典型的にはRAM)、入出力(I/O)制御装置、ディスプレイアダプターを経由したディスプレイ画面などの外部デバイス、シリアルポート、キーボード、ストレージインターフェースを経由した固定ディスクドライブ、及び任意選択で、フロッピーディスク、CD若しくはDVD又は任意の他のデータ記憶媒体を受けるように作動するディスクドライブなどの主要なサブシステムを含む。多くの他のデバイス(例えば、閉じた又は開いたネットワークインターフェース)を接続することができる。
【0150】
コンピューターシステムは、データリンク、例えば、ケーブル、電話線、ISDN線、無線ネットワーク、光ファイバー、又は他の好適な信号伝達媒体によって連結されており、それによって、少なくとも1つのネットワークデバイス(例えば、コンピューター、ディスクアレイ)は、本発明のアッセイから得られたデータをコードする磁区(例えば磁気ディスク)のパターン及び/又はビットパターンを構成する電荷領域(例えば、DRAMセルのアレイ)を含む多数のコンピューティングデバイスを含むネットワークに連結することができる。
【0151】
コンピューターシステムは、本明細書に記載されたタウ分析の結果を解釈するためのコードを含み得る。したがって、例示的な実施形態において、ピークメラトニンレベル(又は代替物)及びタウの結果の決定値を、セントラルプロセッサが、例えば、最適な治療開始時刻、治療に対する応答の可能性などを決定するためのコンピュータープログラムを実行するコンピューターに提供する。
【0152】
同様に本発明に関連するのは、(1)コンピュータープロセッサを含むコンピューター、(2)本発明のメラトニン分析により得られた結果をコード化する記憶されたビットパターン(これはコンピューターに記憶され得る)、(3)及び任意選択で、(4)治療応答の可能性を決定するためのプログラムを含むコンピューターシステム(例えば上述のシステム)の使用である。
【0153】
本明細書に記載の方法における使用のためのコンピューターベースのシステムは、少なくとも1つのコンピュータープロセッサ(例えば、ここで、該方法はその全体が単一の場所で実施される。)又は少なくとも2つのネットワークコンピュータープロセッサ(例えば、ここで、データはユーザー(本明細書で「クライアント」とも呼ばれる。)によって入力され、(リモートサイトの)分析のための第2のコンピュータープロセッサに伝達され、ここで、第1及び第2のコンピュータープロセッサは、ネットワークによって(例えば、イントラネット又はインターネットを経由して)接続される。)を概して含む。また、システムは、入力のためのユーザーコンポーネント、並びにデータ、生成された報告書のレビュー、及び手作業による介入のためのレビュアーコンポーネントを含み得る。システムの追加のコンポーネントは、サーバーコンポーネント、及びデータを記憶させるためのデータベース(例えば、報告要素(例えば解釈的報告要素)のデータベース、又はユーザーによるデータ入力及びデータ出力を含み得る関係型データベース(RDB))を含み得る。コンピュータープロセッサは、パーソナルデスクトップコンピューター(例えば、IBM、Dell、Macintosh)、ポータブルコンピューター、大型汎用コンピューター、ミニコンピューター、又は他のコンピューティングデバイスに典型的に見出されるプロセッサであり得る。
【0154】
表示又は投影又は印刷し得る例示的な報告書が
図1~4に提供されている。
【0155】
ネットワーククライアント/サーバアーキテクチャーは所望に応じて選択することができ、例えば、古典的な2又は3階層クライアントサーバモデルであり得る。関係型データベース管理システム(RDMS)は、アプリケーションサーバーコンポーネントの一部又は個別コンポーネント(RDBマシン)のいずれかとしてデータベースへのインターフェースを提供する。
【0156】
一例において、アーキテクチャーはデータベース中心のクライアント/サーバアーキテクチャーとして提供され、ここで、クライアントアプリケーションは、概して、要求通りに種々の報告要素、特に解釈的報告要素、特に解釈テキスト及びアラートを報告に追加する要求をデータベース(又はデータベースサーバー)に行うアプリケーションサーバーからのサービスを要求する。(例えば、アプリケーションサーバーマシンの一部又は個別のRDB/関係型データベースマシンのいずれかとしての)サーバーはクライアントの要求に応える。
【0157】
入力クライアントコンポーネントは、アプリケーションを実行するためのあらゆる種類の能力及び特徴を提供する完全なスタンドアローンパーソナルコンピューターであり得る。クライアントコンポーネントは、通常、任意の所望のオペレーティングシステムで作動し、通信要素(例えば、モデム又はネットワークに接続するための他のハードウェア)、1つ又は複数の入力デバイス(例えば、キーボード、マウス、キーパッド、又は情報若しくはコマンドを伝えるために使用される他のデバイス)、ストレージエレメント(例えば、ハードドライブ又は他のコンピューターによる読み取り及び書き込み可能な記憶媒体)、及びディスプレイエレメント(例えば、モニター、テレビジョン、LCD、LED、又は情報をユーザーに伝える他のディスプレイデバイス)を含む。ユーザーは、入力デバイスを通じてコンピュータープロセッサに入力コマンドを入力する。概して、ユーザーインターフェースは、ウェブブラウザーアプリケーションのために書かれたグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)である。
【0158】
サーバーコンポーネントは、パーソナルコンピューター、ミニコンピューター、又は大型汎用コンピューターであり得、データ管理、クライアント間で共有する情報、ネットワーク管理及びセキュリティを提供する。使用されるアプリケーション及び任意のデータベースは同一又は異なるサーバーに存在し得る。
【0159】
単一マシン(例えば大型汎用コンピューター)、マシンの集合体、又は他の適当な構成における処理を含む、クライアント及びサーバーのための他のコンピューター構成も想定されている。概して、クライアント及びサーバーマシンは協働して本発明の処理を行う。
【0160】
使用される場合、データベースは、通常、データベースサーバーコンポーネントに接続されており、データを保持する任意のデバイスであり得る。例えば、データベースは、コンピューター用の任意の磁気又は光ストレージデバイス(例えば、CDROM、内蔵ハードドライブ、テープドライブ)であり得る。データベースは、サーバーコンポーネントと離れて(ネットワーク、モデムなどを介したアクセスが可能)又はサーバーコンポーネントの近くに位置し得る。
【0161】
上記システム及び方法において使用される場合、データベースは、データ項目間の関係に従って構築及びアクセスされる関係型データベースであり得る。関係型データベースは、概して多数の表(要素)からなる。表の行はレコード(個別の項目についての情報の集合)を表し、列はフィールド(レコードの特定の属性)を表す。その最も簡単な概念において、関係型データベースは、少なくとも1つの共通のフィールドを通じて互いに「関係」するデータ要素の集合である。
【0162】
データを入力し、及びいくつかの実施形態では所望に応じて適切な報告を生成するために、コンピューター及びプリンターを備えた追加のワークステーションをサービスのポイントで使用してもよい。コンピューターは、所望に応じて、アプリケーションを立ち上げてデータ入力、伝送、分析、報告受領などの開始を容易にするための(例えばデスクトップ上の)ショートカットを有し得る。
【0163】
本発明は、コンピューター環境において実行された場合、本明細書に記載された応答可能性評価のすべて又は一部を実施するためのアルゴリズムを実行するプログラムを記憶させているコンピューター可読記憶媒体(例えば、CD-ROM、メモリーキー、フラッシュメモリカード、ディスケット)を包含する。コンピューター可読媒体が、本明細書に記載の方法を実施するための完全なプログラムを含む場合、プログラムは、収集、分析及び出力生成のためのプログラム命令を含み、また、本明細書に記載されたユーザーと情報交換すること、分析情報と併せてそのデータを処理すること、及びそのユーザーのために独自の印刷又は電子媒体を生成することのためのコンピューター可読コードデバイスを概して含む。
【0164】
記憶媒体が、本明細書に記載の方法の一部(例えば、上記方法のユーザー側の態様(例えば、データ入力、報告受領機能))を実行するプログラムを提供する場合、プログラムは、ユーザーによって入力されたデータをリモートサイトのコンピューター環境に伝送する(例えば、インターネット経由、イントラネット経由)。リモートサイトでデータの処理又は処理の完了が行われて報告が生成される。完全な報告を提供するための報告のレビュー、及び任意の必要な手作業による介入の完了の後、完全な報告が電子文書又は印刷文書(例えばファックス又は郵送報告書)としてユーザーに返送される。本発明によるプログラムを含む記憶媒体は、適当な基板上に記録された指示(例えば、プログラムのインストール、使用)又はそのような指示が得られるウェブアドレスとともにパッケージ化することができる。
【0165】
コンピューター可読記憶媒体は、応答可能性評価を実施するための1種又は複数種の試薬とともに提供することもできる。
【0166】
同様に本発明に関連するのは、非24時間障害に罹患している患者におけるメラトニンレベルの分析に基づく報告を生成する方法である。概して、そのような方法は、生体サンプル中の内因性メラトニンのレベルを示す情報を決定するステップ、及び追加の情報とともに又は追加の情報なしで、例えば患者がCYP1A2阻害薬での治療を受けているかどうかを報告することによって、前記情報を要約する報告を生成するステップを含み得る。上記方法の例示的な一実施形態において、前記報告は、患者のメラトニンレベルが閾値濃度を実現しているかどうかの表示、患者のコルチゾールレベルの表示、患者のタウの表示、患者がCYP1A2阻害薬での治療を受けているかどうかの表示、患者が喫煙者かどうかに関する情報、及び患者がベータ遮断薬などの内因性メラトニンを減少させる薬物での治療を受けているかどうかの表示のうちの1つ又は複数を含む。
【0167】
いくつかの実施形態において、報告には、患者の生体サンプル中の閾値濃度及び任意選択でピークメラトニン濃度が含まれる。いくつかの実施形態において、報告には、タシメルテオン及びCYP1A2阻害薬の共投与に関する情報、例えば、後に続き得るタシメルテオンへの増加した暴露に関する情報、タシメルテオン又はCYP1A2阻害薬の用量を減少させることに関する情報、高度のモニタリングに関する情報が含まれる。いくつかの実施形態において、報告には、タシメルテオンの投与及び喫煙に関する情報、例えば、後に続き得るタシメルテオンへの減少した暴露に関する情報、タシメルテオンの用量を増加させることに関する情報、血液中のタシメルテオンレベルのモニタリングに関する情報などが含まれる。
【0168】
そのような報告は、1)試験施設に関する情報、2)サービス提供者の情報、3)患者データ、4)サンプルデータ、5)解釈的報告(この解釈的報告は、a)適応、b)試験データを含む種々の情報を含み得る)、及び6)他の特徴のうちの1つ又は複数をさらに含み得る。
【0169】
いくつかの実施形態において、報告は、前記患者のための物理療法の推奨をさらに含む。そのような態様において、報告は、前記患者のための治療の推奨を支持するための情報、例えば、メラトニンアゴニストによる治療を行わないこと又は高度のモニタリングの推奨を含み得る。すべての態様において、報告は、群(例えば、有望でない応答者又は有望な応答者)への対象の分類を含み得る。
【0170】
いくつかの実施形態において、報告は、例えば、電子表示(例えばコンピューターモニター)に示される電子形態をしている。
【0171】
いくつかの実施形態において、報告は、
1)記述タイトル、
2)患者識別子、
3)患者の目標睡眠開始時間、及び
下記(i)~(iii)のうちの1つ又は複数
を含むビジュアルレポートである。
(i)各採取セッションのメラトニン又はメラトニン代替物の生成速度の時間に対するグラフ(グラフは、データポイント及び計算された(頂点位相を含む)概日サイクルを示し、各グラフには、予測される頂点位相及び標準誤差が注記されている。)
(ii)各採取セッションについて決定された予測頂点位相及び予測頂点位相時間の線形回帰分析によって決定された勾配を示す、日に対する頂点位相(時刻)のグラフ(グラフには、患者のタウの長さ、標準誤差及び信頼区間(p値として及び時間の範囲として表されている。)が注記されている。)
(iii)最後の採取セッションの終了に続く90日間の頂点位相の予測時間を示す、頂点位相の表(表では、目標頂点位相に最も近い予測頂点位相の日付及び時間、治療の開始の最適日、並びに治療の開始のための推定ウィンドウが区別して強調されている。)
【0172】
そのような例示的な報告が、非24時間障害に罹患していない対象について
図1に提供されており、N24SWDに罹患している患者について
図2に提供されている。
【0173】
報告を作成する人又は存在(「報告作成者」)は可能性評価を行ってもよい。報告作成者は、サンプル収集、サンプル処理、及びデータ生成のうちの1つ又は複数を行ってもよく、例えば、報告作成者は、a)サンプル収集、b)サンプル処理、c)メラトニン又はメラトニン代替物のレベルの測定のうちの1つ又は複数を行ってもよい。あるいは、報告作成者以外の存在が、サンプル収集、サンプル処理、及びデータ生成のうちの1つ又は複数を行うことができる。
【0174】
「ユーザー」という語は「クライアント」と互換的に使用されるが、報告が伝達される人又は存在を意味するものとする。「ユーザー」は、a)サンプルを採取すること、b)サンプルを処理すること、c)サンプル又は処理されたサンプルを提供すること、及びd)可能性評価における使用のためのデータを生成することのうちの1つ又は複数を行う人又は存在と同じであってもよい。いくつかの場合、サンプル採取及び/又はサンプル処理及び/又はデータ生成を提供する人又は存在と、結果及び/又は報告を受ける人と、は異なり得るが、混乱を避けるために本明細書ではいずれも「ユーザー」又は「クライアント」と呼ばれる。ある実施形態において(例えば、上記方法が単一のコンピューター上で完全に実行される場合)、ユーザー又はクライアントはデータ入力を行い、データ出力をレビューする。「ユーザー」は、ヘルスケア専門家(例えば、臨床医、検査技師、医師)であり得る。
【0175】
ユーザーが上記方法の一部のみを実行する場合の実施形態において、本発明の方法によるコンピューターデータ処理の後に、データ出力(例えば公開前の結果)をレビューして完全な報告を提供する、あるいは「不完全な」報告をレビューして手作業による介入及び解釈的報告の完成を提供する個人は「レビュアー」と本明細書で呼ばれる。レビュアーは、ユーザーと離れた場所に(例えば、ユーザーが位置しているかもしれないヘルスケア施設から離れて提供される施設に)位置してもよい。
【0176】
政府規制又は他の制限(例えば、健康保険、専門職過失責任保険若しくは損害賠償保険、又は政策による要件)が適用される場合、完全に電子的に生成されたか部分的に電子的に生成されたかに関わらず、結果は、ユーザーに伝達される前に品質管理ルーチンに付される。
【0177】
別の態様において、本開示は、(a)患者の内因性メラトニン又はメラトニン代替物のレベルを決定し、(b)データを要約した報告を作成し、及び/又はそのようなデータを、患者の具体的な薬理学的特性及び状態を理解することに関する他のデータとともに編集することによって、患者のための独自の薬理学的プロファイルを作成する方法に関する。
【0178】
本発明の方法において、投与すべきタシメルテオンの用量は、治療される対象の特徴、例えば、障害の重篤性、メラトニンアゴニストへの応答性、年齢、体重、健康、(もしあれば)併用治療のタイプなどの種々の要因によって決定される。
【0179】
上述のコンピューターにより実施される方法、システム、報告などは、治療の有効性の決定、例えば上述の有効性決定法にも適用することができる(これに限定されない)。例えば、コンピューターベースのシステムは、MoST、LQ-nTST、UQ-dTSD及びCGI-Cのうちの1つ又は複数、及び/又は治療の開始前又は開始直後に行われるタウ決定及び後続のタウ決定に関する情報を記録及び報告するために使用することができる。
【0180】
さらなる例を挙げると、本発明の関連の態様は下記を含む。
MoST、LQ-nTST、UQ-dTSD及びCGI-Cのうちの1つ又は複数、及び/又は治療の開始前又は開始直後になされるタウ決定及び後続のタウ決定に関するデータを受けるための手段を含むコンピューターベースのシステム
MoST、LQ-nTST、UQ-dTSD及びCGI-Cのうちの1つ又は複数、及び/又は治療の開始前又は開始直後になされるタウ決定及び後続のタウ決定に関するデータを収集するステップと、データのレビュー又は分析に基づいて結論を得るためにデータを患者、ヘルスケア従事者又はヘルスケア管理者に提供するステップと、を含む方法(一実施形態において、結論は、患者、ヘルスケア従事者又はヘルスケア管理者に提供され、ネットワークによるデータの伝送を含む。)
コンピューター可読形態で記憶されたMoST、LQ-nTST、UQ-dTSD及びCGI-Cのうちの1つ又は複数、及び/又は治療の開始前又は開始直後になされるタウ決定及び後続のタウ決定に関する情報
ネットワークに任意選択で連結され、本明細書に記載された有効性評価の結果を解釈するためのコードを任意選択で含む、そのような情報を受け、記憶及び出力するための上述のコンピューターシステム
コンピューター環境において実行された場合、本明細書に記載された有効性評価の分析のすべて又は一部を実施するためのアルゴリズムを実行するプログラムを記憶させているコンピューター可読記憶媒体(例えば、CD-ROM、メモリーキー、フラッシュメモリカード、ディスケット)
本明細書に記載された有効性評価に基づく報告、例えば、患者が治療に応答しているかどうかの表示の1つ又は複数を含む報告を生成する方法
【0181】
そのような情報、データベース、システム、方法、分析、報告、プロファイル、出力、推奨などは、例えば、他のパラメーター(例えば、メラトニンレベル、概日リズム、コルチゾールレベル、タウ、CYP1A2阻害薬での共治療(co-treatment)、ベータ遮断薬での共治療、及び喫煙)に関して本明細書で記載したように、(但し、そのような他のパラメーターのいくつか又はすべてに関する情報を伴って又は伴わずに)記憶媒体、コンピューターシステム、及びネットワークに組み込むことができる。
【0182】
有効な用量は、治療の期間(例えば、1日又は複数週であり得る。)にわたって24時間概日リズムへの患者の同調をもたらす用量である。タウが24時間、例えば<24.1hrsに減少し、95%信頼区間が24.0を含む患者は同調しているとみなすことができる(同調の達成を定義するために他の値を使用することもできる)。
【0183】
非24時間障害の患者を24時間概日リズムに同調させるのに有用なタシメルテオンの1日用量は、概して約1~約100mg(例えば、10~約100mg又は約20~約50mg)の範囲にある。20mgの用量は、特に、CYP1A2阻害薬若しくはベータ遮断薬を投与されていない又は喫煙者ではない個人にとって通常は十分である。
【0184】
類似の用量が、患者のコルチゾール概日リズムを同調させる場合に使用され得る。
【0185】
上述のように、タシメルテオンのCYP1A2阻害薬との共投与はタシメルテオンの濃度を予想外に増加させることが見出された。これは、タシメルテオンの代謝産物へのCYP1A2が媒介する転換の阻害の結果であるようである。
【0186】
CYP1A2阻害薬には、例えば、シプロフロキサシンなどのフルオロキノロン抗生剤、フルボキサミンなどのSSRI、及びベラパミルなどのカルシウムチャンネル遮断薬が含まれる。したがって、患者が、24時間概日リズムに患者を同調させる試みの一環としてある用量のタシメルテオンを投与される予定であり、患者がCYP1A2阻害薬での治療も受けている場合、タシメルテオンの用量、CYP1A2阻害薬の用量、又は両方を減少させることが必要又は望ましいことがある。それに代えて又はそれに加えて、患者のタシメルテオンの血漿濃度をモニタリングすること、又はタシメルテオンに関連する有害反応について患者をモニタリングすることが必要又は望ましいことがある。
【0187】
例えば、CYP1A2阻害薬での治療を受けている患者に投与されるタシメルテオンの用量は、1日当たり20mg未満、例えば、1日当たり約15~約19mg、1日当たり約10~約 mg、又は1日当たり約5~約10mg、例えば、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、又は19mg/日に減少させることができる。いくつかの場合、タシメルテオンの用量又はCYP1A2阻害薬の用量はゼロにしてもよい。本発明の一実施形態において、タシメルテオンはフルボキサミンと一緒に使用されない。他のあまり強くないCYP1A2阻害薬は十分に研究されていない。タシメルテオンは、あまり強くないCYP1A2阻害薬を摂取している患者には慎重に投与されるべきである。
【0188】
タシメルテオン暴露に対するCYP1A2阻害薬の効果に関連する本発明の態様は下記を含む(これらに限定されない)。
CYP1A2阻害薬での治療も受けている患者をタシメルテオンで治療すること(該方法は、タシメルテオンの用量を減少させること、CYP1A2阻害薬の用量を減少させること、患者のタシメルテオンの血漿濃度をモニタリングすること、又はタシメルテオンに関連する有害反応について患者をモニタリングすることのうちの1つ又は複数を含む。)
CYP1A2の既知の阻害薬である物質での治療も受けている患者をタシメルテオンで治療すること(該方法は、患者にタシメルテオン及びCYP1A2阻害薬を共投与しつつ、増加したタシメルテオンの血漿濃度に関連する潜在的な又は実際の有害事象について患者をモニタリングすることを含む。)
CYP1A2阻害薬での治療を受けている、睡眠障害に罹患している患者を治療すること(該方法は、睡眠障害に罹患しているが、CYP1A2阻害薬での治療を受けていない患者に投与される量に比べて減少した量で患者にタシメルテオンを体内投与することを含む。)
プロセッサを有するコンピューティングデバイス、患者がCYP1A2阻害薬での治療を受けているという情報を含むストレージデバイス、患者がある用量のタシメルテオンを処方されるという情報をコンピューティングデバイス又はストレージデバイスのいずれか又は両方に入力するための入力デバイス、患者が上記用量のタシメルテオンを処方されるという情報を入力することによって、患者がCYP1A2阻害薬での治療を受けているという情報をストレージデバイスから取り出すように作動可能なコンピュータープログラム、及び患者がCYP1A2阻害薬での治療を受けているという情報をユーザーに出力するための出力デバイス
睡眠障害に罹患している患者を治療する、コンピューターにより実施される方法(該方法は、タシメルテオンによる患者の治療に関する情報を電子データベースに入力すること、タシメルテオン以外の薬物による患者の最近の治療に関する情報について患者の医療記録を、コンピューティングデバイスを用いて検索すること、及びタシメルテオン以外の薬物がCYP1A2阻害薬であるかを、コンピューティングデバイスを用いて決定することを含む。)
CYP1A2阻害薬での治療を受けている個人における睡眠障害の治療のための医薬組成物(該組成物は、薬学的に許容される担体、及び20mg未満の1日用量に相当する量のタシメルテオンを含む。)
【0189】
別の実施形態において、CYP1A2阻害薬(例えばフルボキサミン)を受けている患者はタシメルテオンで治療されない。関連の実施形態において、患者がCYP1A2阻害薬(例えばフルボキサミン)を既に受けている場合、患者は、タシメルテオンを受けないように指示され、ヘルスケア従事者は、タシメルテオンを処方しないよう指示される。
【0190】
他方、喫煙は、タシメルテオンのクリアランスを増加させ、それによって患者の暴露を減少させることが見出されている。したがって、タシメルテオン又はタシメルテオン代謝産物の喫煙する個人への投与は、タシメルテオン若しくはタシメルテオン代謝産物の用量を増加させること、及び/又は個人の喫煙を減少させる若しくは排除することを要求することもある。
【0191】
したがって、患者を24時間概日リズムに同調させる試みの一環として患者がある用量のタシメルテオンを投与される予定であり、患者が喫煙者でもある場合、タシメルテオンの用量を増加させることが必要又は望ましいことがある。それに代えて又はそれに加えて、患者のタシメルテオンの血漿濃度をモニタリングすることが必要又は望ましいことがある。
【0192】
例えば、喫煙する患者に投与されるタシメルテオンの用量は、1日当たり20mgより多い量、例えば、1日当たり25mg、1日当たり30mg、1日当たり40mg、1日当たり50mg又は1日当たり100mgに増加させることができる。
【0193】
タシメルテオン暴露に対する喫煙の効果に関連する本発明の態様は下記を含む(これらに限定されない)。
喫煙者である患者をタシメルテオンで治療すること(該方法は、タシメルテオンの用量を増加させること、患者のタシメルテオンの血液レベルをモニタリングすること、及び患者に喫煙を減少させる若しくは排除するよう指示することのうちの1つ又は複数を含む。)
喫煙者である、睡眠障害に罹患している患者を治療すること(該方法は、喫煙者ではない睡眠障害に罹患している患者に投与する量に比べて増加した量で患者にタシメルテオンを体内投与することを含む。)
プロセッサを有する少なくとも1つのコンピューティングデバイスと、患者が喫煙者であるという情報を含むストレージデバイスと、患者がある用量のタシメルテオンを処方されるという情報をコンピューティングデバイス又はストレージデバイスのいずれか又は両方に入力するための入力デバイスと、患者がタシメルテオンの上記用量を処方されるという情報を入力することによって、患者が喫煙者であるという情報をストレージデバイスから取り出すように作動可能なコンピュータープログラムと、患者が喫煙者であるという情報をユーザーに出力するための出力デバイスと、を含むシステム
睡眠障害に罹患している患者を治療する、コンピューターにより実施される方法(該方法は、タシメルテオンによる患者の治療に関する情報を電子データベースに入力すること、患者が喫煙者であるかに関する情報について患者の医療記録を、コンピューティングデバイスを用いて検索すること、及び患者が喫煙者であるかを、コンピューティングデバイスを用いて決定することを含む。)
喫煙する個人における睡眠障害の治療のための医薬組成物(該組成物は、薬学的に許容される担体、及び20mgより大きい1日用量に相当する量のタシメルテオンを含む。)
【0194】
概して、メラトニン(MT1及びMT2受容体)アゴニスト(例えばタシメルテオン)は、1日1回、目標睡眠期間の開始前に医薬製剤で投与される。非24時間障害を治療するに当たって、目標睡眠期間の開始の約1時間前より早く薬物を投与する必要はなく、薬物は例えば睡眠時刻の約0.5~約1.5時間前に投与できることが見出された。睡眠時刻の約1時間前の投与が好都合で有用である。しかし、本発明では、当日のより早い時間、例えば目標睡眠時刻の約2時間前又は約3時間若しくは約4時間前における投与も想定されている。
【0195】
睡眠時刻の約1時間という直前にタシメルテオンを投与できることは、睡眠前の催眠効果の回避を可能にすること、より大きな催眠効果を有し得るより高い用量の投与を可能にすること、及びより早く投与した場合に比べて睡眠サイクルの異なる相における薬理学的介入を可能にすることから有利である。いかなる特定の理論にも束縛されることを意図するものではないが、睡眠時刻の直前にタシメルテオンを投与できるのは、そのtmax(約半時間)によるようである。他方、約2時間以上のtmaxを有するメラトニンは、睡眠時刻の数時間前に投与され、早過ぎる眠気を引き起こすことがあり、この催眠効果を回避するために、メラトニンは準最適用量で投与されることがある。
【0196】
したがって、関連の態様において、本発明は、有効量のタシメルテオン、又は約2時間未満(例えば、約1.5時間未満又は約1時間未満(例えば、タシメルテオンのように約半時間))のtmaxを有する別のメラトニンアゴニストを体内投与することによって、非24時間障害の患者を治療する、すなわちそのような患者を24時間概日リズムに同調させる方法を含む。医薬組成物は、tmaxが改変されるように調製することができる。したがって、例えば、非24時間障害を治療するための、tmaxが約2時間未満(例えば、約1.5時間未満又は約1時間未満)になるように製剤化されたメラトニンなどの活性医薬成分の使用は本発明の一態様である。
【0197】
使用される医薬組成物は、治療有効量のタシメルテオン若しくはタシメルテオンの活性代謝物又はその薬学的に許容される塩若しくは他の形態(例えば溶媒和物)を、1種又は複数種の薬学的に許容される賦形剤とともに含む。「医薬組成物」という語は、医学的用途における投与に適した組成物を意味する。特定の患者のための適切な剤形、用量及び投与経路の決定が薬学及び医学分野における通常の技術のレベルの範囲内にあることは理解されたい。
【0198】
投与は典型的には経口であるが、他の投与経路、例えば、非経口、経鼻、頬側、経皮、舌下、筋肉内、静脈内、直腸内、膣内なども有用である。経口投与用の固体剤形には、カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤、及び顆粒剤が含まれる。そのような固体剤形において、上記化合物は、少なくとも1種の不活性な薬学的に許容される賦形剤と混合されている。そのような賦形剤は、例えば、(a)充填剤又は増量剤(例えば、デンプン、乳糖、ショ糖、ブドウ糖、マンニトール、及びケイ酸)、(b)結合剤(例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ショ糖、及びアラビアゴム)、(c)保湿剤(例えばグリセロール)、(d)崩壊剤(例えば、寒天、炭酸カルシウム、馬鈴薯若しくはタピオカデンプン、アルギン酸、一部の複合ケイ酸塩、及び炭酸ナトリウム)、(e)溶解遅延剤(例えばパラフィン)、(f)吸収促進剤(例えば第4級アンモニウム化合物)、(g)湿潤剤(例えば、セチルアルコール、及びモノステアリン酸グリセロール)、(h)吸着剤(例えば、カオリン、及びベントナイト)、及び(i)滑沢剤(例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム)、或いはそれらの混合物である。カプセル剤、錠剤及び丸剤の場合、剤形は緩衝剤を含んでもよい。錠剤、糖衣錠、カプセル剤、丸剤、顆粒剤などの固体剤形は、コーティング及びシェル(例えば、腸溶コーティング、及び当技術分野で周知の他のもの)を用いて調製することもできる。固体剤形は乳白剤を含有してもよく、また、1種又は複数種の活性化合物を腸管のある特定の部分で遅延した様式で放出するような組成物であってもよい。使用可能な包埋組成物の例はポリマー物質及びワックスである。活性化合物はまた、上記賦形剤の1種又は複数種を適宜含むマイクロカプセル化形態のものであり得る。そのような固体剤形は、概して1%~95%(w/w)の活性化合物を含有し得る。ある実施形態において、活性化合物は5%~70%(w/w)である。
【0199】
経口投与用の固体組成物は、各用量が約1~約100mgの活性成分を含有する単位剤形に製剤化することができる。「単位剤形」という語は、ヒト対象及び他の哺乳動物のための単位用量として適した物理的に離散した単位を指し、ここで、各単位は、治療期間にわたって所望の予防又は治療効果を生じるように計算された所定量の活性物質を所要の医薬担体とともに含有する。タシメルテオンは、例えば、賦形剤に加えて20mgの活性成分を有するカプセルである単位剤形に製剤化することができる。
【0200】
経口投与用の液体剤形には、薬学的に許容される乳濁液、溶液、懸濁液、シロップ、及びエリキシルが含まれる。上記化合物又は組成物に加えて、液体剤形は、当技術分野で一般的に使用される不活性希釈剤を含有し得る。そのような不活性希釈剤は、例えば、水又は他の溶媒、可溶化剤及び乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(特に、綿実油、落花生油、トウモロコシ胚芽油、オリーブ油、ひまし油、及びごま油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、及びソルビタンの脂肪酸エステル、或いはこれらの物質の混合物である。そのような不活性希釈剤に加えて、上記組成物はまた、湿潤剤、乳化剤、懸濁化剤、甘味料、香味料、芳香剤などの補助剤を含み得る。
【0201】
本発明は、他の治療法と併せて、例えば、不眠症、睡眠覚醒パターン、覚醒状態、鬱病、又は精神病エピソードに影響する他の薬物(これらに限定されない。)を含む第2の又は多数の他の活性医薬と組み合わせて実施することができる。
【0202】
上で概略が記載された特定の実施形態と併せて本発明を説明したが、多くの代替形態、修正形態及び変更形態が当業者に明らかであり、又はそうでなければそれらが包含されることが意図されていることは明白である。すなわち、上述の本発明の実施形態は説明を意図したものであり、限定を意図したものではない。特許請求の範囲に規定された本発明の精神及び範囲から逸脱することなく種々の変更がなされ得る。本明細書に引用されたすべての特許、特許出願、科学論文及び他の公開された文献は、その開示の内容についてそれらの全体がここに組み入れられている。