(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】ウィンドウ用ポリエステルフィルム
(51)【国際特許分類】
B32B 27/36 20060101AFI20220809BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20220809BHJP
C08K 3/26 20060101ALI20220809BHJP
C08J 7/04 20200101ALI20220809BHJP
B29C 55/14 20060101ALI20220809BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20220809BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
B32B27/36
B32B27/30 A
C08K3/26
C08J7/04 Z CFD
B29C55/14
B05D7/00 A
B05D7/24 301F
B05D7/24 302P
(21)【出願番号】P 2020540414
(86)(22)【出願日】2019-01-24
(86)【国際出願番号】 KR2019001009
(87)【国際公開番号】W WO2019147037
(87)【国際公開日】2019-08-01
【審査請求日】2020-07-21
(31)【優先権主張番号】10-2018-0008586
(32)【優先日】2018-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0009056
(32)【優先日】2019-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】501380081
【氏名又は名称】東レ先端素材株式会社
【氏名又は名称原語表記】TORAY ADVANCED MATERIALS KOREA, INC.
【住所又は居所原語表記】93-1, Imsu-dong, Gumi-si, Gyeongsangbuk-do, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】キム, ヤン ホ
(72)【発明者】
【氏名】キム, チャン ヒ
(72)【発明者】
【氏名】リー, ギュ ソク
(72)【発明者】
【氏名】ホン, スン ヒ
【審査官】石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-201837(JP,A)
【文献】特開2007-224187(JP,A)
【文献】特開2008-069204(JP,A)
【文献】特開2010-208341(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
C08J 7/04-7/06
B05D 1/00-7/26
B29C 55/00-55/30、61/00-61/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
逐次二軸延伸工法で製造された3層の積層ポリエステルフィルムと前記3層の積層ポリエステルフィルムの少なくとも一面にアクリル酸アルキルエステル共重合体の水性エマルジョンを含むコーティング層Aを含
むウィンドウ用ポリエステルフィルムであって、
前記3層の積層ポリエステルフィルムは、微粒子が含まれないポリエステル樹脂層Cの上層と下層に無定形の炭酸カルシウム化合物を含有するポリエステル樹脂からなる粒子層B、Dからなり、
前記B層及びD層に対するC層の厚さ比は、4ないし40であり、
前記コーティング層Aの厚さは、5ないし20nmであり
、
前記無定形の炭酸カルシウム化合物の平均粒径は、0.8ないし1.2μmであり、
前記B層及びD層における無定形の炭酸カルシウム化合物の含有量は50重量%であり、
前記ウィンドウ用ポリエステルフィルムは、150℃の恒温槽に30分間放置して測定した熱収縮の数値のうち、横方向の熱収縮率が0以下であることを特徴とする、ウィンドウ用ポリエステルフィルム。
【請求項2】
前記B層及びD層に対するC層の厚さの比は、10ないし20であることを特徴とする、請求項1に記載のウィンドウ用ポリエステルフィルム。
【請求項3】
前記ウィンドウ用ポリエステルフィルムの厚さは、12ないし36μmであることを特徴とする、請求項1
または2に記載のウィンドウ用ポリエステルフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウィンドウ用ポリエステルフィルムに関し、さらに詳細には、像のぼやけ現象を改善でき、光学的表面視認性に優れ、施工時に作業便宜性を有するウィンドウ用ポリエステルフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ティントフィルムと呼なれるウィンドウ用ポリエステルフィルムは、その用途によって大きく自動車用と建築用に区分され、蒸着フィルムの採用有無によって反射用と非反射用に区分されて使用される。
【0003】
このようなウィンドウ用フィルムは、高透明ポリエステルフィルムに色相を付与し、ここに製品の表面保護のために高透明ハードコーティングをする製品の基材として使用されて、有害な紫外線を遮断するか、または直射光線による眩しさ防止及び熱エネルギーを減少させることができる。
【0004】
一方、車両用ウィンドウフィルム市場の場合、自動車市場の成長のような流れでコストと品質の熾烈な生存競争の下で、すこしでも低廉で品質に優れた製品を探す顧客とともに成長してきた。
【0005】
このために、現在は、既に2次加工をするオフライン加工市場を超えてポリエステルフィルムの生産と同時に表面に機能性プライマーコーティング処理により表面付着性を向上させた多様なインラインコーティングポリエステルフィルムが量産、販売されており、自動車市場と同時に成長した大型ウィンドウ加工メーカーは、ポリエステルフィルムを生産する大型会社らと交流、協力して共同開発などの活動を盛んに進行している。
【0006】
このような市場の流れをそのまま反映して、すこしでも光学的に優れ、作業が便利なウィンドウフィルムを作って顧客に提供することが必要なことが実情である。
【0007】
しかしながら、特にウィンドウポリエステルフィルム市場において持続的に指摘されてきた像のぼやけ問題、作業性問題などがあるから、このような問題点を解決して均一なウィンドウ用ポリエステルフィルムを提供することが切実なのが現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の要求に応え、従来の問題点を解決するために案出したものであって、本発明の目的は、光学的に内部に視認される粒子の粒子視認性を抑制させ、基本的な強度と伸度を確保する一方、肉眼で視認される縦方向のロール擦れ跡を抑制し車両と建物のガラスにフィルムを施工する時に高温でも収縮と剥離が容易なウィンドウ用ポリエステルフィルムを提供することにある。
【0009】
本発明の前記及び他の目的と利点は、好ましい実施例を説明した下記の説明からより明らかになるはずである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的は、逐次二軸延伸工法で製造された3層の積層ポリエステルフィルムと前記3層の積層ポリエステルフィルムの少なくとも一面にアクリル酸アルキルエステル共重合体の水性エマルジョンを含むコーティング層Aを含み、前記3層の積層ポリエステルフィルムは、微粒子が含まれないポリエステル樹脂層Cの上層と下層に無定形の炭酸カルシウム化合物を含有するポリエステル樹脂からなる粒子層B、Dからなり、前記B層及びD層に対するC層の厚さ比は、4ないし40で、前記3層積層ポリエステルフィルムの延伸比率は、下記式(1):
1.1≦Y/X≦1.5
を満たすものであり、式中、Xは、縦方向延伸比率で、Yは、横方向延伸比率であることを特徴とする、ウィンドウ用ポリエステルフィルムにより達成される。
【0011】
ここで、前記B層及びD層に対するC層の厚さの比は、10ないし20であることを特徴とする。
【0012】
好ましくは、前記3層積層ポリエステルフィルムの延伸比率が1.1ないし1.3であることを特徴とする。
【0013】
好ましくは、前記無定形の炭酸カルシウム化合物の平均粒径は、0.01ないし1.5μmであることを特徴とする。
【0014】
好ましくは、前記無定形の炭酸カルシウム化合物の平均粒径は、0.8ないし1.2μmであることを特徴とする。
【0015】
好ましくは、前記コーティング層の厚さは、5ないし20nmであることを特徴とする。
【0016】
好ましくは、前記ウィンドウ用ポリエステルフィルムの厚さは、12ないし36μmであることを特徴とする。
【0017】
好ましくは、前記ウィンドウ用ポリエステルフィルムは、150℃の恒温槽に30分間放置して測定した熱収縮の数値のうち、横方向の熱収縮率が0以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、車両または建物の外壁ガラスに付着する場合、外部から有害な紫外線の遮断または直射光線による眩しさ防止及び熱エネルギーを減少させることができる等の効果がある。
【0019】
また、本発明は、ガラスを介して外部形状を眺める時、像がぼやけるか、明確でなくて像が破られる現象を解決できる。
【0020】
なお、本発明は、ポリエステルフィルムの製造工程上において発生する縦方向の微細ロール擦れの欠点が見えないから、外部の澄んでいる形状をポリエステルフィルムを介しても確認することができ、異型フィルムと合紙された状態で車両または建物のガラスにウィンドウフィルムを施工する時に高温でも収縮と剥離が容易ななどの効果を有する。
【0021】
ただし、本発明の効果は、以上言及した効果に制限されず、言及しないさらに他の効果は、以下の記載から当業者に明確に理解されるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の好ましい実施形態によるウィンドウ用ポリエステルフィルムの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態と図面を参照して、本発明を詳細に説明する。これらの実施例は、ただ本発明をより具体的に説明するために例示的に提示したものに過ぎず、本発明の範囲がこれらの実施例により制限されないということは、当業界における通常の知識を有する者にとって自明であるはずである。
【0024】
別に定義されない限り、本明細書において使用されるすべての技術的及び科学的用語は、本発明が属する技術分野の熟練者により通常に理解されることと同じ意味を有する。相反する場合、定義を含む本明細書が優先するはずである。また、本明細書において説明されることと類似または同等な方法及び材料が本発明の実施または試験に使用されうるが、適合した方法及び材料が本明細書に記載される。
【0025】
本発明を説明し/するか、または請求するにおいて、用語「共重合体」は、二以上の単量体の共重合により形成された重合体を言及するために使用される。そういう共重合体は、二元共重合体、三元共重合体またはより高次の共重合体を含む。
【0026】
図1は、発明の好ましい実施形態によるウィンドウ用ポリエステルフィルムの断面図であって、本発明によるウィンドウ用ポリエステルフィルムは、逐次二軸延伸工法で製造された3層の積層ポリエステルフィルムにおいて、微粒子が含まれないポリエステル樹脂層Cの上層と下層に無定形の炭酸カルシウム化合物を含有するポリエステル樹脂からなる粒子層B、Dで構成されており、3層の積層ポリエステルフィルムの少なくとも一面にアクリル酸アルキルエステル共重合体の水性エマルジョンを含むコーティング層Aを含む。
【0027】
ここで、本発明によれば、B層及びD層に対するC層厚さの比は、4ないし40であることが好ましい。この厚さの比を4未満に制御する場合、ヘイズが高くなってウィンドウフィルムとしての相容性が低下し、40を超過して制御する場合、巻取り安定性を確保するのが難しいためである。
【0028】
さらに好ましくは、5ないし30の厚さ比が安定的であるが、量産段階で安定性が低い可能性もあるから、最も好ましくは、10ないし20の厚さ比にすることが量産安定性及び巻取り安定性を確保できるようになる。
【0029】
また、本発明による3層の積層ポリエステルフィルムは、縦方向の延伸比率に対する横方向の延伸比率の相対比率が1.1ないし1.5であることが好ましい。
【0030】
延伸比率は、屈折率と同様に、ポリエステルフィルムの光学性特性と関連が多いが、縦方向の延伸は、主にロールとロールの走行過程からなり、横方向の延伸は、ロールのないオーブン内のエアーフロートタイプで制御されるので、縦方向の延伸比率が高ければ高いほど、ロールとポリエステルフィルムとの間に摩擦及び剥離熱が増加し、これによってポリエステルフィルムの内部には、縦方向にロールが微細に擦れる跡が残るようになって、建物と車両のガラスに付着した時、このような跡がそのまま視認されて顧客社の不満を惹起させる恐れがあるから、可能なかぎり縦方向の延伸比率は低く、横方向の延伸比率は高く制御するほど、ロール擦れ跡が肉眼で視認されず、高温での縦方向熱収縮は高く、横方向熱収縮は低く制御することが可能になる。
【0031】
このような相対延伸比率を1.1未満に制御する場合、縦方向の延伸が高くなって、ロール擦れ跡が容易に肉眼で確認されて好ましくなく、反対に延伸比率を1.5超過に制御する場合、縦方向の延伸が少なくなされるから、強度が低くなり、横方向延伸時にオーブン内で容易に裂ける恐れがある。
【0032】
すなわち、縦方向と横方向の延伸比率を上記のように最適に設計して基本的な強度と伸度を確保する一方、肉眼で視認される縦方向のロール擦れ跡を抑制し、オーブン内の温度を最適化して、車両と建物のガラスに施工作業時に作業の便宜性を提供できる。
【0033】
さらに好ましくは、相対延伸比率を1.1ないし1.3にすることが量産安定性を維持することができる。
【0034】
また、本発明による粒子層B、Dには、フィルム表面の荒さと走行性を向上させることができる不活性粒子として炭酸カルシウムを使用することが好ましい。一般に有機高分子の屈折率は、1.57、シリカ粒子の屈折率は、1.40であることに対し、炭酸カルシウムの屈折率は、1.59で、ポリエステルフィルムの屈折率1.64と最も似ているから、屈折率の側面においてフィルム状態で肉眼区分時に不活性無定形の粒子が視認される確率が最も低いためである。すなわち、太陽光または蛍光灯、三波長などの透過、反射光に見える不活性粒子の視認強度を低くして視認がよくならないようにすることができる。
【0035】
また、炭酸カルシウムの平均粒径は、0.01ないし1.5μmであることが好ましい。炭酸カルシウムの平均粒径が0.01μm未満の小さな粒径の場合、フィルムの加工中走行性が悪化して表面スクラッチ(擦れ跡)が発生する問題があり、1.5μmを超過する大きな粒径の場合、巻取り安定性は高くなるが、フィルム内部的に粒径の凝集と視認性が高くなって、本発明の窮極的な目標である像のぼやけを解決できず、またフィルムのヘイズが高くなってウィンドウフィルムとしての使用可能性が低くなるから、競争力を確保し難いためである。
【0036】
さらに好ましくは、炭酸カルシウムの平均粒径が0.5ないし1.5μmであることが安定的であるが、粒径が小さいほど分散性が低下する可能性があって量産段階での安定性はよくない可能性があるから、炭酸カルシウムの平均粒径を0.8ないし1.2μmにすることが量産安定性面において優れており、粒子の視認性が低下して像のぼやけを解決できる。
【0037】
また、本発明の一実施例によるウィンドウ用ポリエステルフィルムは、3層積層ポリエステルフィルムの少なくとも一面にアクリル酸アルキルエステル共重合体の水性エマルジョンを含むコーティング層Aを含むことができる。このようなコーティング層に溶剤型アクリル酸アルキルエステル共重合体を使用する場合、溶剤がロールに容易について量産性を確保するのが極めて困難である。また、アクリル酸アルキルエステル共重合体を使用しないでウレタンまたはシリコン型の共重合体を使用する場合、ウィンドウフィルム加工時に染料粘着剤とハードコーティング剤との効用性が低いから、ヘイズが上昇するか、またはフィルムの晴明度が低くて像のぼやけ性が悪化することができ、耐ブロッキング性が低下してフィルム同士くっつく問題が発生できるから、アクリル酸アルキルエステル共重合体の水性エマルジョンを含むことが好ましい。
【0038】
また、本発明によるコーティング層の厚さは、5ないし20nmであることが好ましい。コーティング層の厚さが5nm未満の場合、フィルムの接着力が低くてハードコーティングとの密着力が低下し、コーティング層の厚さが20nmを超過する場合、コーティングむらが発生して高透明ウィンドウフィルムが解決しようとする像のぼやけ性が悪化するから、上記の厚さにすることが好ましい。
【0039】
また、本発明によるウィンドウ用ポリエステルフィルムの厚さは、12ないし36μmであることが好ましい。
【0040】
また、本発明によるウィンドウ用ポリエステルフィルムは、150℃の恒温槽に30分間放置して測定した熱収縮の数値のうち、横方向の熱収縮率が0以下であることが好ましい。
【0041】
したがって、上述した本発明によるウィンドウ用ポリエステルフィルムは、優れた光学特性、量産安定性、施工作業性が改善され、インライン及び逐次二軸延伸製造工法で製造できるから、均一な物性を有した製品を大量で提供でき、また多様な使用条件での加工性及び使用面でも非常に優秀に適用されることができるなどの効果がある。
【0042】
以下、実施例と比較例にて本発明の構成及びそれによる効果をさらに詳細に説明しようとする。しかしながら、本実施例は、本発明をより具体的に説明するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0043】
(実施例1)
逐次二軸延伸工法で3層の積層ポリエステルフィルムを製造した。
【0044】
微粒子が含まれないポリエステル樹脂層Cの上層と下層に平均粒径が1.0μmである無定形の炭酸カルシウム化合物を50重量%含有するポリエステル樹脂からなる粒子層B、Dを形成し、B層及びD層に対するC層の厚さ比がそれぞれ18である3層の積層ポリエステルフィルムを製造した。このとき、縦方向の延伸比に対する横方向の延伸比の相対比率を1.3にして、3層のポリエステルフィルムを製造した。
【0045】
具体的には、平均粒径が1.0μmである無定形の炭酸カルシウム化合物を50重量%含有するポリエチレンテレフタレート(原料A)と粒子を含有しない固有粘度0.62dl/gであるポリエチレンテレフタレート(原料B)を乾燥後積層及び共押出ダイを介して圧出して、キャストドラムで冷却させてシートを製造した。このシートを縦方向に95℃から110℃の温度範囲で3.0倍の延伸比で延伸した後、横方向に110℃から130℃の温度範囲で3.9倍延伸して約230℃の温度で熱処理を行って、平均厚23μmのフィルムを得、製造された各層(B/C/D)の厚さ比は、1:18:1であった。
【0046】
以後、前記3層の積層ポリエステルフィルムのB層にアクリル酸アルキルエステル共重合体の水性エマルジョンを含む厚さ5nmであるコーティング層を形成して、ウィンドウ用ポリエステルフィルムを製造した。
【0047】
(実施例2)
コーティング層の厚さが10nmであることを除き、実施例1と同様にウィンドウ用ポリエステルフィルムを製造した。
【0048】
(実施例3)
コーティング層の厚さが20nmであることを除き、実施例1と同様にウィンドウ用ポリエステルフィルムを製造した。
【0049】
(比較例1)
B層及びD層に対するC層の厚さ比がそれぞれ3であることを除き、実施例1と同様にウィンドウ用ポリエステルフィルムを製造した。
【0050】
(比較例2)
B層及びD層に対するC層の厚さ比がそれぞれ41であることを除き、実施例1と同様にウィンドウ用ポリエステルフィルムを製造した。
【0051】
(比較例3)
平均粒径が0.005μmである無定形の炭酸カルシウム化合物を使用したことを除き、実施例1と同様にウィンドウ用ポリエステルフィルムを製造した。
【0052】
(比較例4)
平均粒径が1.6μmである無定形の炭酸カルシウム化合物を使用したことを除き、実施例1と同様にウィンドウ用ポリエステルフィルムを製造した。
【0053】
(比較例5)
3層積層ポリエステルフィルムの縦方向の延伸比に対する横方向の延伸比の相対比率が1.0であることを除き、実施例1と同様にウィンドウ用ポリエステルフィルムを製造した。
【0054】
(比較例6)
3層積層ポリエステルフィルムの縦方向の延伸比に対する横方向の延伸比の相対比率が1.6であることを除き、実施例1と同様にウィンドウ用ポリエステルフィルムを製造した。
【0055】
(比較例7)
アクリル酸アルキルエステル共重合体の水性エマルジョンの代りに溶剤型アクリル酸アルキルエステル共重合体を使用したことを除き、実施例1と同様にウィンドウ用ポリエステルフィルムを製造した。
【0056】
(比較例8)
アクリル酸アルキルエステル共重合体の水性エマルジョンの代りにウレタン共重合体の水性エマルジョンを使用したことを除き、実施例1と同様にウィンドウ用ポリエステルフィルムを製造した。
【0057】
(比較例9)
アクリル酸アルキルエステル共重合体の水性エマルジョンの代りにシリコン共重合体の水性エマルジョンを使用したことを除き、実施例1と同様にウィンドウ用ポリエステルフィルムを製造した。
【0058】
(比較例10)
コーティング層の厚さが1nmであることを除き、実施例1と同様にウィンドウ用ポリエステルフィルムを製造した。
【0059】
(比較例11)
コーティング層の厚さが4nmであることを除き、実施例1と同様にウィンドウ用ポリエステルフィルムを製造した。
【0060】
(比較例12)
コーティング層の厚さが21nmであることを除き、実施例1と同様にウィンドウ用ポリエステルフィルムを製造した。
【0061】
(比較例13)
コーティング層の厚さが30nmであることを除き、実施例1と同様にウィンドウ用ポリエステルフィルムを製造した。
【0062】
(比較例14)
無定形の炭酸カルシウム化合物の代りに無定形のケイ素酸化物であるシリカを使用したことを除き、実施例1と同様にウィンドウ用ポリエステルフィルムを製造した。
【0063】
前記実施例1ないし3及び比較例1ないし14によるウィンドウ用ポリエステルフィルムを以下の実験例にて評価し、その結果を次の表1ないし表3に表した。
【0064】
(実験例)
1.量産安定性
実施例と比較例によるポリエステルフィルムの除膜工程においてフィルム破断またはロール擦れ跡による合格製品の歩留まりが何%かに応じて、下記のように評価した。
61%以上:◎
56~60%:○
51~55%:△
46~50%:X
45%以下:XX
【0065】
2.施工作業性
実施例と比較例によるポリエステルフィルムを車両の後面にヒートガンで施工する時(後面フィルムのサイズは、面積3.0m2程度)一回の施工作業が何分以内に完了するかに応じて、下記のように評価した。
30分以内:◎
31~1時間以内:○
1時間~2時間以内:△
2時間超過:X
作業不可:XX
ここで、一回の施工作業が2時間超過の場合は、2回以上の再施工作業が必要な場合も含み、作業不可の場合には、3回以上の再施工作業が必要な場合、または作業が困る場合も含んだ。
【0066】
3.像のぼやけ性
実施例と比較例によるポリエステルフィルムを利用して車両の後面にヒートガンで施工を完了した後、一点の雲もなく晴れわたった午後の時間で約12時ないし15時に温度約30℃、相対湿度約40~60%RHの条件において車両ウィンドウ及びフィルムを介して車両番号板をある程度の間隔から読むことができるかに応じて、下記のように評価した。
31m以上の間隔:◎
21~30m間隔:○
16~20m間隔:△
11~15m間隔:X
10m以下の間隔:XX
【0067】
4.ロール擦れ跡
約1.6m幅のフィルムを3m間隔でポラリオンを利用して表面を観察した時、1mm以上のスクラッチが延伸ロール2~3mの周期でどれくらいあるかを判断して、下記のように評価した。
無し:◎
2個/A4以下:○
3~5個/A4:△
6~10個/A4:X
11/A4以上:XX
【0068】
5.接着力
評価液(ピンクラッカー)をA4サイズのフィルムサンプルに#18メイヤーバーで塗布した後、90~105℃に設定された熱風乾燥器に入れて1分間乾燥させた。次に乾燥器から取り出した試料に1mmクロスカッターを利用して、TD方向、MD方向に垂直交差する正方向の方眼100個を作った後、3Mテープを付けた後に剥離して乾燥された評価液総100個のうち、剥離されずに残っている数を数えて、下記のように評価した。
無し:◎
1~5個:○
6~10個:△
10個超過:X
【0069】
6.ブロッキング
A4サンプル試料を20枚重ねて用意した後500gの重さを乗せ50℃のオーブンで24hr保管した後に取り出した。A4サンプルのくっついた程度に応じて、下記のようにブロッキングを評価した。
無し:◎
1~2枚:○
3~5枚:△
5枚超過:X
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
前記表1ないし表3から分かるように、実施例1ないし3に開示された本発明の一実施例によるウィンドウ用ポリエステルフィルムは、ヘイズに優れており、像のぼやけ性、ロール擦れ跡と量産安定性が大きく改善され、施工作業性まで優れていることを確認することができ、接着力及びブロッキング性もまた優れていることを確認することができる。よって、本発明によるウィンドウ用ポリエステルフィルムは、車両または建物の外壁ガラスに付着される場合、外部から有害な紫外線の遮断または直射光線による眩しさ防止及び熱エネルギーを減少させることができ、またガラスを介して外部形状を眺める時に、像がぼやけるか、明確でなくて像が破られる現象を解決できる。なお、ポリエステルフィルムの製造工程上において発生する縦方向の微細ロール擦れの欠点が見えないから、外部の澄んでいる形状をポリエステルフィルムを介しても確認することができ、異型フィルムと合紙された状態で車両または建物のガラスにウィンドウフィルムを施工する時にも収縮が容易であるから、顧客に便宜性を提供することができる。
【0074】
これに対してB層及びD層に対するC層厚の比を3に構成した比較例1の場合、像のぼやけ性が現れるだけでなく、ヘイズが非常に不良で、厚さの比を41に構成した比較例2の場合、量産安定性と施工作業性が不利であることがわかり、また無定形の炭酸カルシウム化合物の平均粒径が0.005μmである比較例3の場合、炭酸カルシウム化合物の粒子大きさがあまり小さくてフィルムの表面照度が低くなり、走行中スクラッチ(ロール擦れ跡)が発生する問題があり、炭酸カルシウム平均粒径を1.6μmに構成した比較例4の場合、像のぼやけ性が現れることを確認することができ、縦方向/横方向延伸比率をそれぞれ1.0と1.6に構成した比較例5及び比較例6の場合、それぞれロール擦れ跡と施工作業性面において、そして量産安定性面において極めて不利であることがわかる。
【0075】
また、アクリル酸アルキルエステル共重合体の水性エマルジョンの代りに溶剤型アクリル酸アルキルエステル共重合体を使用した比較例7の場合、溶剤が工程ロールについて汚染されてスクラッチが発生するから量産安定性が低下し、ウレタン共重合体の水性エマルジョンを使用した比較例8の場合、ヘイズが上昇して像のぼやけ性が悪化し、ブロッキング評価がよくないことが分かり、またシリコン共重合体の水性エマルジョンを使用した比較例9は、フィルムが晴明度が低くて像のぼやけ性が悪化するという問題を有する。
【0076】
また、コーティング層の厚さがそれぞれ1nm及び4nmである比較例10及び比較例11は、コーティング層の厚さが5nm未満で、接着力が低くてハードコーティングとの密着力不足の問題を有する。そして、コーティング層の厚さがそれぞれ21nm及び30nmである比較例12及び比較例13は、コーティング層の厚さが20nmを超過して、コーティングむらが発生し、像のぼやけ性が悪化するという問題を有する。
【0077】
最後に、無定形の炭酸カルシウム化合物の代りに無定形のケイ素酸化物であるシリカを使用した比較例14は、シリカ粒子の屈折率が1.40でフィルムの屈折率1.57と差が大きいから、粒子感が現れた結果、像のぼやけ性が悪化する問題を有する。
【0078】
本明細書では、本発明者等が行った多様な実施例のうち、いくつの例だけを挙げて説明するが、本発明の技術的思想は、これに限定または制限されず、当業者により変形されて多様に実施されうることはもちろんである。