(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
B41F 3/20 20060101AFI20220809BHJP
B41F 17/14 20060101ALI20220809BHJP
H05K 3/12 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
B41F3/20 D
B41F17/14 E
H05K3/12 630Z
(21)【出願番号】P 2017201973
(22)【出願日】2017-10-18
【審査請求日】2020-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】喜多 美博
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-255614(JP,A)
【文献】特開昭58-072457(JP,A)
【文献】特開2017-148964(JP,A)
【文献】特開2017-087596(JP,A)
【文献】特開平05-169625(JP,A)
【文献】特開2000-135852(JP,A)
【文献】特開2017-132079(JP,A)
【文献】特開2011-148233(JP,A)
【文献】特開2016-141013(JP,A)
【文献】特開2016-172348(JP,A)
【文献】特開2006-027227(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 3/20
B41F 17/14
H05K 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材を固定する第一の定盤と、
版を固定する第二の定盤と、
前記版にインキを充填する第一のドクタと、
前記版にインキを充填する第二のドクタと、
前記版からインキを取出し前記基材に転写するブランケットを巻き付けたブランケット胴と、
前記ブランケットに吸収された溶剤を除去する溶剤除去部と、
前記ブランケット表面の汚れを除去する汚れ除去部と、を備え、
前記第一の定盤、前記第二の定盤、前記第一のドクタ、前記第二のドクタおよび前記ブランケット胴は、それぞれが単独で印刷方向と平行に動作可能に設けられ、
前記溶剤除去部は、前記汚れ除去部よりも、前記第一の定盤側および前記第二の定盤側に位置
し、
前記溶剤除去部は、溶剤を除去するための熱源、または、溶剤を吸着するための真空吸着装置を備えることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記溶剤除去部および前記汚れ除去部は、前記ブランケット胴の移動動作に連動して移動可能に設けられたことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記インキは、前記版に、前記第一のドクタまたは前記第二のドクタを用いて一度に充填されることを特徴とする請求項1または2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記インキは、前記版に、前記第一のドクタおよび前記第二のドクタを用いて3回の充填動作で充填されることを特徴とする請求項1または2に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記第一の定盤、前記第二の定盤、前記第一のドクタ、前記第二のドクタ、前記ブランケット胴、前記溶剤除去部、および前記汚れ除去部の動作を制御する制御部を備えていることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記第一の定盤、前記第二の定盤、前記第一のドクタ、前記第二のドクタ、前記ブランケット胴、前記溶剤除去部および前記汚れ除去部の動作を、各々同時に動作することを特徴とする請求項5に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記溶剤除去部は、前記ブランケットに転写された前記インキを前記基材に転写した際、前記基材と前記汚れ除去部との間に位置することを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載の印刷装置。
【請求項8】
基材を固定する第一の定盤と、
版を固定する第二の定盤と、
前記版にインキを充填する第一のドクタと、
前記版にインキを充填する第二のドクタと、
前記版からインキを取出し前記基材に転写するブランケットを巻き付けたブランケット胴と、
前記ブランケットに吸収された溶剤を除去する溶剤除去部と、
前記ブランケット表面の汚れを除去する汚れ除去部と、を備え、
前記第一の定盤、前記第二の定盤、前記第一のドクタ、前記第二のドクタおよび前記ブランケット胴は、それぞれが単独で印刷方向と平行に動作可能に設けられ、
前記溶剤除去部および前記汚れ除去部は、前記ブランケット胴の移動動作に連動して移動可能に設けられ
、
前記溶剤除去部は、溶剤を除去するための熱源、または、溶剤を吸着するための真空吸着装置を備えることを特徴とする印刷装置。
【請求項9】
前記溶剤除去部は、溶剤を除去するための送風装置を有する熱源を備えることを特徴とする請求項1から8の何れか1項に記載の印刷装置。
【請求項10】
前記溶剤除去部は、溶剤を除去するための赤外線ヒータを有する熱源を備えることを特徴とする請求項1から8の何れか1項に記載の印刷装置。
【請求項11】
前記溶剤除去部は、前記ブランケット胴に常に接触しないことを特徴とする請求項1から10の何れか1項に記載の印刷装置。
【請求項12】
前記溶剤除去部は、前記汚れ除去部よりも、前記第一の定盤側および前記第二の定盤側にのみ位置することを特徴とする請求項1から11の何れか1項に記載の印刷装置。
【請求項13】
前記ブランケット胴の回転方向は、前記版から前記インキを取り出す際の回転方向と、前記版から取り出した前記インキを前記基材に転写する際の回転方向とが同じであることを特徴とする請求項1から12の何れか1項に記載の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生産性を向上させることができる印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、電子回路配線パターンや半導体関連の各種デバイス等の電極パターンは極めて高い精度で形成することが要求されている。このような微細で高精度なパターン形成は、フォトリソグラフィー法により形成する方法がある。しかしながら、フォトリソグラフィー法では、まず導電層を形成し、その上にレジスト層を形成し、次にレジスト層を露光、現像し、レジスト層の無い部分をエッチングし、さらにレジスト層を剥離して形成する。このため、必要な設備が多く、かつパターン形成までに要する工程が長くなってしまう問題があった。
また、別の方法としては、印刷法によるパターン形成があり、印刷法はフォトリソグラフィー法に比べて工程を簡略化することができコスト的に有利である。上記印刷法の一つとして、スクリーン印刷法が知られているが、可能な細線形成は70μm程度が限界でありまた同等のスペースを確保する必要がある。よって、更なる細線形成を安定して繰返し形成することは困難であった。
【0003】
そこで、スクリーン印刷法よりも微細なパターン形成のために凹版印刷法が用いられている。凹版印刷法による印刷装置は、印刷パターンが形成された凹版と、この凹版のパターン溝部分にインキを充填するドクタと、凹版に接触し回転しながらインキを受理するブランケットロールを備えている。このブランケットロールに受理されたインキを被印刷物の表面に圧着転写し、所定の微細パターンを形成することができる。
凹版印刷法は、印刷によってパターンを形成するため、フォトリソグラフィー法に比べて工程が短く必要な装置も少ない。さらにスクリーン印刷では難しかった微細なパターンを安定して形成できるという利点がある。
【0004】
以下に、従来の一般的な凹版印刷装置の概要を示す。
図4は、凹版に平版を用いた凹版印刷装置の概略図である。印刷装置100は、パターン溝104を複数有する金属製またはガラス製の凹版101と、導電性ペースト、樹脂等のインキ105を凹版101に充填し、余剰のインキをかき取る為の鋼製または、樹脂製のドクタ106と、凹版101のパターン溝104に充填されたインキ107を一定圧力で回転しながら受理・転写させるブランケット103を巻付けたブランケット胴102と、ブランケット103に受理された受理インキ108を印刷する為の印刷基材110とを備える。
【0005】
ここで、従来の凹版印刷工程について説明する。
図5は、
図4に示す凹版印刷装置を用いた印刷工程を示す概略図である。
まず、凹版101上にインキ105を適正量供給する(
図5(a))。次にドクタ106を凹版101に一定圧力で押し当てながら凹版101を矢印(1)方向に移動させ、供給されたインキ105を凹版101のパターン溝104に充填させ、同時に凹版101表面の余分なインキをかき取る(
図5(b))。
次に、凹版101を矢印(2)の方向に移動させブランケット胴102の下まで移動させる。ブランケット103を巻付けたブランケット胴102を凹版101に一定圧力で押付け凹版101を矢印(3)の方向に移動させブランケット胴102を同期回転させながら、凹版101のパターン溝104に充填した充填インキ107をブランケット103に受理させる(
図5(c))。
【0006】
次に、凹版101を矢印(4)の方向に移動する。印刷基材110を載せた印刷定盤111を矢印(5)の方向に移動させブランケット胴102の真下まで移動させる。ブランケット103に受理された受理インキ108を保持したまま、印刷基材110に一定圧力で押付ける。印刷基材110を矢印(6)の方向に移動させブランケット胴102を同期回転させながら、ブランケット103に受理されているインキ108を印刷基材110上に転写させる。(
図5(d))。
以上により印刷工程が完了する。印刷に使用するインキ105は作製するパターンの機能によって適宜選択することが出来る。例えば導電性ペーストの粘度は、レオロジー測定機によるコーンプレート径20mm、角度2°での測定で、角速度10~100rad/秒で、5~1000Pa・sである。
【0007】
ここで、スクリーン印刷では比較的粘度が高い70~100Pa・sのインキが使用されるが、凹版印刷による微細パターンの印刷にはレオロジー測定装置で角速度10rad/秒で、20Pa・s以下の粘度のものが使用される。
インキ105は、ドクタ106を凹版101に押し当てドクタ106を移動させることで、パターン溝104に充填されるとともに、凹版101表面の余分なインキはドクタ106によってかき取り除去される。その後、パターン溝104に充填したインキ107をブランケット103に受理させ、更に印刷基材110に転写して印刷し、所望の印刷パターン109が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前述した従来の凹版印刷装置は、凹版にインキを充填するドクタと凹版からインキを取出し印刷基材に転写するブランケット胴の位置は固定されている。すなわち、凹版を固定する定盤と印刷基材を固定する定盤が移動することで、凹版にインキ充填し凹版からインキを取出し、印刷基材にインキを転写している。
凹版を固定している定盤は、インキ充填の開始位置まで移動し、インキ充填の終了位置まで移動する。その後、ブランケット胴のインキ取出し開始位置まで移動しインキ取出し終了位置まで移動する。その後ブランケット胴から印刷基材にインキを転写する動作の邪魔にならない位置まで移動し退避する。
【0010】
印刷基材を固定する定盤は、退避位置からインキ受理開始位置まで移動しインキ受理終了位置まで移動する。その後凹版を固定する定盤の動作の邪魔にならない位置まで移動し退避する。
このように、定盤の移動が頻繁に発生し、長い距離を移動する場合も発生する。また、インキ充填が完了しないとインキ取出しが行えない、インキ取出しが完了しないと基材への転写が行えない、基材への転写が完了しないと次のインキ充填が行えないというように1つの動作しか行なえない。更に前述のようにどちらかの定盤が動作している場合は、片方の定盤はその作業が完了するまで退避し待ち状態となってしまう。
このように、移動によるロスと動作完了待ち及び同時に動作が行えない動作によるロスが発生しており、印刷タクトが長くなり生産性が低くなってしまっている。(課題1)
【0011】
また、凹版印刷で微細印刷を行う場合、凹版に彫刻された微細な溝にインキを充填するため、レオロジー測定装置で角速度10rad/秒で、20Pa・s以上の粘度では十分なインキ充填が行えず印刷された微細パターンには欠けや断線などの形状不良が発生し、歩留まりが低下することで生産性が低くなってしまっている。(課題2)
さらに、凹版印刷で微細印刷を行う場合、凹版にインキを充填する、凹版からブランケットにインキを受理する、ブランケット上のインキを印刷基材に転写するまでの間、微細形状のまま凹版からブランケット、ブランケットから印刷基材への授受をおこなわせるため、例えば、エチレングリコールモノブチルエーテルなど遅乾性の溶剤を使用している。遅乾性の溶剤として、沸点が150℃以上の溶剤が使用されるために印刷パターンを乾燥・硬化させる場合、100~200℃の高温で30分~1時間程度を要するため印刷基材の後処理に時間を費やし生産性が低くなってしまっている。(課題3)
【0012】
本発明は、上述の従来技術の問題点に鑑み、凹版印刷における印刷時の移動のロスや印刷動作のロスをなくし、印刷タクトタイムを短縮し、生産性を向上させることができる印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のある態様の印刷装置は、インキ転写する(印刷)基材を固定する第一の定盤と、版(凹版)を固定する第二の定盤と、版にインキを充填する第一のドクタと、版にインキを仮充填する第二のドクタと、版からインキを取出し、基材に転写するブラケット(シリコンブランケット)を巻き付けたブランケット胴と、ブランケットに吸収された溶剤を除去する溶剤除去部と、ブランケット表面の汚れを除去する汚れ除去部とを備える。
また、本発明のある態様の印刷装置においては、上記第一の定盤と第二の定盤と第一のドクタと第二のドクタとブランケット胴は、それぞれが単独で印刷方向に動作可能としてもよい。
【0014】
また、本発明のある態様の印刷装置においては、上記溶剤除去部と汚れ除去部は、ブランケット胴の移動動作に合わせて移動可能としてもよい。
また、本発明のある態様の印刷装置においては、上溶剤除去部と汚れ除去部は、ブランケット胴の移動動作には関係なくブランケットの溶剤除去とブランケットの汚れ除去が可能としてもよい。
また、本発明のある態様の印刷装置においては、上記第一の定盤と第二の定盤と第一のドクタと第二のドクタとブランケット胴と溶剤除去部と汚れ除去部の動作を制御する制御部を備えてもよい。
【0015】
また、本発明のある態様の印刷装置においては、上記第一の定盤と第二の定盤と第一のドクタと第二のドクタとブランケット胴と溶剤除去部と汚れ除去部の動作は同時に動作することができる。上記制御部がその動作を制御してもよい。
また、本発明のある態様の印刷装置においては、上記制御部は第一の定盤と第二の定盤と第一のドクタと第二のドクタとブランケット胴と溶剤除去部と汚れ除去部の動作の順序を規定できその動作方法を記憶させてもよい。
上記制御部は、上記で記憶させた動作方法の追加、削除、修正が可能としてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の印刷装置のある態様によれば、凹版印刷における印刷時の移動のロスや印刷動作のロスをなくし、印刷タクトタイムを短縮し、生産性を向上させることができる印刷装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の印刷装置のある実施形態を示す概略図である。
【
図2】ある実施形態の印刷装置を用いた印刷工程の一例を示す概略図である。
【
図3】ある実施形態の印刷装置を用いた高粘度インキを凹版に充填する場合の印刷工程の一例を示す概略図である。
【
図5】
図4に示す凹版印刷装置における印刷工程の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
ここで、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることがある。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造等が下記のものに特定されるものではない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0019】
<印刷装置の構成>
図1は、印刷装置のある実施形態を示す概略図であり、
図2は、
図1に示す印刷装置を用いた印刷動作の一例とその工程を示す概略図である。
図1に示す印刷装置(以下、凹版印刷装置ということがある)200には、基材(以下、印刷基材ということがある)205を固定する第一の定盤201と、凹版215を固定する第二の定盤202と、第一のドクタ203と、第二のドクタ204と、ブランケット212と、溶剤除去部207と、汚れ除去部208とを備える。第一のドクタ203は、凹版215のパターン溝209に供給されたインキ211を充填するための部材である。ブランケット212は、凹版に充填されたインキ210を取り出し、印刷基材205に受理インキ213を転写する為の部材である。溶剤除去部207は、ブランケット212を巻きつける為の部材である。汚れ除去部208は、ブランケット表面のゴミ(汚れ)を除去する部材である。
【0020】
図1に示す印刷装置200には、第一の定盤201と、第二の定盤202と、第一のドクタ203と、第二のドクタ204と、ブランケット胴206とは矢印で示す方向にそれぞれ動作することができる制御部(図示せず)が設けられてもよい。溶剤除去部207と汚れ除去部208はブランケット胴のフレームを利用して搭載されており、ブランケット胴206の移動と同時に移動する機構となっている。
次に、
図2を参照して、本実施形態の印刷装置を用いた印刷工程の一例を説明する。
まず、凹版215上にインキ211を適正量供給する。第一のドクタ203がドクタリング開始位置203aに移動し、凹版215に一定圧力で押し当てながら第一のドクタ203を矢印(1)の方向に移動させドクタリング終了位置203bまで移動させ、凹版215のパターン溝209にインキを充填させる。
【0021】
第一のドクタ203でドクタリングしている間に、溶剤除去部207と汚れ除去部208を起動させ、溶剤除去とゴミの除去を行う。(
図2(a))
次に、第一のドクタ203を矢印(2)の方向に移動させ、ドクタリング開始位置203aまで移動させる。同時に凹版215を固定している第二の定盤202を矢印(3)の方向に移動させ、ブランケット胴206のインキ取出し開始位置206aの下まで移動させる。
次に、第二の定盤202の移動が完了したら、溶剤除去部207と汚れ除去部208を停止する。(
図2(b))。
【0022】
次に、ブランケット胴206を凹版215に一定圧力で押し当て、インキ取出し開始位置206aから矢印(4)の方向に沿って回転させながら移動させ、インキ取出し終了位置206bまで移動させ、凹版215のパターン溝209に充填したインキ210をブランケット212に受理させる(
図2(c))。
次に、凹版を固定している第二の定盤202を矢印(5)の方向に移動させ、第二のドクタ204のドクタリング開始位置204aの下まで移動させる。同時に印刷基材205を固定している第一の定盤201を矢印(6)の方向に移動させ、ブランケット胴206の下の転写開始位置201aまで移動させる。(
図2(d))。
【0023】
次に、第二のドクタ204を凹版215に一定圧力で押し当てながら第二のドクタ204を矢印(7)の方向に移動させ、ドクタリング終了位置204bまで移動させ凹版215のパターン溝209にインキを充填させる。同時にブランケット胴206を印刷基材205に一定圧力で押し当てながら、第一の定盤201を矢印(8)の方向に移動させ、転写開始位置201aから転写終了位置201bまで移動させながらブランケット胴206を同期回転させ、ブランケット212に受理したインキ213を印刷基材205に転写して印刷を行う。
これと同時に、溶剤除去部207と汚れ除去部208を起動させ溶剤除去とゴミの除去を行う。(
図2(e))。
【0024】
以上により印刷工程が完了する。印刷に使用するインキ211は作製するパターンの機能によって適宜選択することが出来る。例えば、導電性ペーストの粘度は、レオロジー測定機によるコーンプレート径20mm、角度2°での測定で、角速度10~100rad/秒で、5~1000Pa・sである。凹版印刷による微細パターンの印刷には比較的粘度の高い材料が使用されるが、レオロジー測定装置で角速度10rad/秒で、20Pa・s以下の粘度ものが使用する。
上述したように、インキ211は、第一のドクタ203または第二のドクタ204を凹版215に押し当て凹版215のパターン溝209に充填される。また、凹版215表面の余分なインキは、ドクタ203,204によってかき取り除去される。その後、パターン溝209に充填したインキ210をブランケット212に受理させ、更に印刷基材205に転写して印刷することによって所望の印刷パターン214が得られる。
【0025】
以上は本実施形態による凹版印刷装置を用いた印刷方法の一例であり、本実施形態では以下に示す印刷動作の方法を選択することで、最適な印刷工程を実現することが可能である。
例えば、凹版215のパターン溝209にインキ211を充填するドクタリング動作は、第二の定盤202を固定して、ドクタ203・204を移動させて行う方法とドクタ203・204を固定して第二の定盤202を移動させて行う方法を選択することができる。
【0026】
また、凹版215のパターン溝209に充填されたインキ210をブランケット212に受理させる動作は、第二の定盤202を固定してブランケット胴206を回転移動させて行う方法と、ブランケット胴206を固定して第二の定盤202を移動させながらブランケット胴206を同期回転させて行う方法を選択することができる。
また、ブランケット212に受理されたインキ213を印刷基材205に転写する動作は、第一の定盤を固定しブランケット胴206を回転移動させて行う方法と、ブランケット胴206を固定して第一の定盤201を移動させながらブランケット胴206を同期回転のせて行う方法を選択することができる。
【0027】
また、凹版215のパターン溝209にインキ211を充填するドクタリング動作、凹版215のパターン溝209に充填されたインキ210をブランケット212に受理させる動作、ブランケット212に受理されたインキ213を印刷基材205に転写する動作は、動作させる位置はそれぞれの移動範囲内であれば任意の位置で行うことができる。
また、凹版215のパターン溝209にインキ211を充填するドクタリング動作、凹版215のパターン溝209に充填されたインキ210をブランケット212に受理させる動作、ブランケット212に受理されたインキ213を印刷基材205に転写する動作の移動方向は印刷方向であれば任意の方向で移動させることができる。
また、第一の定盤と第二の定盤と第一のドクタと第二のドクタとブランケット胴はお互いが干渉しない位置において同時に動作することができる。
【0028】
また、凹版215にインキを充填する動作でドクタ203・204を動作させる場合と第二の定盤を動作させる場合の動作選択と充填動作を行う位置を決め、インキ充填動作とし動作制御プログラムに記憶する。
また、凹版215からインキを取出す動作でブランケット胴206を動作させる場合と第二の定盤を動作させる場合の動作選択とインキ取出しを行う位置を決めインキ取出し動作として動作制御プログラムに記憶する。
また、ブランケット胴206に受理したインキ213を印刷基材105に転写して印刷する動作でブランケット胴206を動作させる場合と第一の定盤を動作させる場合の動作選択を行い印刷基材205にインキ転写を行う位置を決めインキ転写動作として動作制御プログラムに記憶することができる。この動作制御プログラムは制御部によって実行されてもよい。
【0029】
また、インキ充填動作、インキ取出し動作、インキ転写動作はそれぞれの動作が最も効率的に行えるように動作選択や動作位置を決めることで数種類の動作パターンが発生する。これらの動作パターン全てを動作制御プログラムに記憶することができる。
また、動作制御プログラムに記憶させた動作を印刷する動作の順番に組合せをすることで最も効率的な印刷動作プログラムを組み立てることができる。
また、上記印刷動作プログラムは、動作制御プログラムに記憶させた動作パターンを用いて、印刷動作の追加や削除を行い印刷動作プログラムの変更をおこなうことができる。
【0030】
また、溶剤除去部207と汚れ除去部208の動作は、ブランケット212に受理されたインキ213がない状態であれば動作させることができる。
また、溶剤除去部207には、温風、熱風、赤外線ヒータ等の熱源や、真空吸着、吸着シートなどブランケットに吸収された溶剤の種類によって溶剤を除去するために最適な除去方法を用いる。
また、汚れ除去部208には、粘着ローラーやタック性の高いゴムローラなど一般的なブランケットクリーニングに用いられる除去方法を用いる。
【0031】
以上説明したように、本実施形態の印刷装置によれば、第一の定盤と凹版を固定する第二の定盤と凹版にインキを充填する第一のドクタと凹版にインキを仮充填する第二のドクタと凹版からインキを取出し印刷基材に転写するシリコンブランケットを巻き付けたブランケット胴と溶剤除去部と汚れ除去部が単独で動作することができることにより、最短の移動距離で動作が可能となる。またお互いの動作を妨げない位置で作業がおこなえることにより動作待ちを最小限とし複数の動作を同時におこなうことが可能となる。移動によるロスと動作待ち及び同時動作を可能とし動作によるロスを最小限にすることにより印刷タクトを短縮することができ生産性の向上を図ることが可能な凹版印刷装置を実現できる。
【実施例】
【0032】
(実施例1)
以下、本発明を具体的に実施した実施例1を説明する。具体的には、
図1に示したある実施形態の印刷装置で
図2に示す印刷工程で印刷を行った。
まず、印刷パターンとしてピッチ40μmでパターン溝幅25μmを有する凹版215を用いてPET基材を印刷基材214とし導電性ペーストをインキ211として、
図1に示す印刷装置を用いて印刷した。
凹版215は、金属製の平版に上記の印刷パターン溝209をエッチングによって彫刻したものを使用した。印刷範囲は幅150mm×長さ150mmの凹版215を使用した。
【0033】
PET基材には、幅200×200mm×厚さ125μmのシート状のものを使用した。導電性銀ペーストの粘度は、レオロジー測定装置で角速度10rad/秒で、5~10Pa・sであるものを使用した。印刷用ブランケット212として、シリコーンゴムを主体とする厚み0.9mm、硬度10°のもので長さ600mmのものを使用した。ブランケット胴206はSUS304製のシリンダで幅200mm×直径200mmのものを使用した。
印刷条件として、凹版215上に導電性ペーストを0.5g/cm2で供給した。凹版215とブランケット212が接する位置をブランケット胴206のゼロ点とした。ゼロ点からブランケット胴206を0.5mm凹版215に近づけた位置を凹版215からブランケット206に充填インキ210を取り出す位置とした。凹版101からインキを取出すときの速度を50mm/secでブランケット胴206を回転させた。ブランケット206に受理されたインキ213を印刷基材205に転写させるときの速度を50mm/secでブランケット胴206を回転させた。
【0034】
(比較例1)
比較例1の凹版印刷として、
図5に示すドクタ106の位置とブランケット胴102の位置を固定して、凹版101と印刷基材110を移動させる方式で、
図5に示す印刷工程にて印刷を行った。
上述の印刷を連続的に50枚までおこなった。
この結果、実施例1の凹版印刷装置を用いた印刷工程での印刷タクトは、比較例1の凹版印刷工程で印刷した場合の約1/3に短縮された。また、実施例1では、高精彩で高精度な印刷が連続的且つ安定して印刷をすることが出来た。
【0035】
(実施例2)
以下、本発明を具体的に実施した実施例2を説明する。具体的には、凹版印刷方法として
図1に示したある実施形態の印刷装置で
図3に示す印刷工程で印刷を行った。
まず、印刷パターンとしてピッチ40μmでパターン溝幅25μmを有する凹版215を用いてPET基材を印刷基材214とし導電性ペーストをインキ211として、
図1に示したある実施形態の印刷装置を用いて印刷した。
凹版215は、金属製の平版に上記の印刷パターン溝209をエッチングによって彫刻したものを使用した。印刷範囲は幅150mm×長さ150mmの凹版215を使用した。PET基材には幅200×200mm×厚さ125μmのシート状のものを使用した。
【0036】
導電性銀ペーストとして凹版印刷用に用いられるレオロジー測定装置で角速度10rad/秒で、5~10Pa・sのものより粘度が高い20~30Pa・sであるものを使用した。印刷用ブランケット212として、シリコーンゴムを主体とする厚み0.9mm、硬度10°のもので長さ600mmのものを使用した。ブランケット胴206はSUS304製のシリンダで幅200mm×直径200mmのものを使用した。
印刷条件として、凹版215上に導電性ペーストを0.5g/cm2で供給した。凹版215とブランケット212が接する位置をブランケット胴206のゼロ点とする。ゼロ点からブランケット胴206を0.5mm凹版215に近づけた位置を凹版215からブランケット206に充填インキ210を取り出す位置とした。凹版101からインキを取出すときの速度を50mm/secでブランケット胴206を回転させる。ブランケット206に受理されたインキ213を印刷基材205に転写させるときの速度を50mm/secでブランケット胴206を回転させる。
【0037】
(比較例2)
比較例2の凹版印刷として、
図5に示すドクタ106の位置とブランケット胴102の位置を固定して、凹版101と印刷基材110を移動させる方式で、
図5に示す印刷工程にて印刷を行った。
比較例2の凹版印刷に用いられるインキ粘土よりも高いレオロジー測定装置で角速度10rad/秒で20~30Pa・sのインキを使用することから、
図3の(a)、(b)、(c)に示す通り、凹版215のパターン溝209へのインキ211の充填を第一のドクタ203と第二のドクタ204を用いて3回繰り返す動作プログラムに変更した。
【0038】
凹版215上にインキ211を適正量供給する。第一のドクタ203がドクタリング開始位置203aに移動させ、凹版215に一定圧力で押し当てながら第一のドクタ203を矢印(1)の方向に移動させ、ドクタリング終了位置203bまで移動させ、凹版215のパターン溝209にインキを充填させた。(
図3(a))
第二のドクタ204がドクタリング開始位置204aに移動し凹版215に一定圧力で押し当てながら第二のドクタ204を矢印(2)の方向に移動させドクタリング終了位置204bまで移動させ凹版215のパターン溝209に2回目のインキを充填させた。(
図3(b))
【0039】
第一のドクタ203がドクタリング開始位置203aに移動し凹版215に一定圧力で押し当てながら第一のドクタ203を矢印(3)の方向に移動させドクタリング終了位置203bまで移動させ凹版215のパターン溝209にインキを充填させた。(
図3(c))
この結果、比較例2の印刷工程で印刷した場合、一般的な凹版印刷に用いられるインキ粘土よりも高いレオロジー測定装置で角速度10rad/秒で20~30Pa・sのインキを使用した場合、凹版のパターン溝にインキを十分に充填することができないため、印刷された配線パターンには欠けや断線が発生し高精彩な印刷をすることができなかった。
【0040】
実施例2の凹版印刷装置では、
図3に示したある実施形態の印刷工程となるように容易にプログラム変更が行える。この工程で印刷した場合は、一般的な凹版印刷に用いられるインキ粘土よりも高い粘度のインキを用いた場合でもパターン溝にインキが十分に充填され高精彩で高精度な印刷が連続的且つ安定して印刷をすることが出来た。使用するインキ特性に合わせた印刷動作プログラムに変更することにより正常な印刷が行えるようになった。
【0041】
(実施例3)
以下、本発明を具体的に実施した実施例3を説明する。具体的には、凹版印刷方法として
図1に示したある実施形態の印刷装置で
図2に示す印刷工程で印刷を行った。
まず、印刷パターンとしてピッチ40μmでパターン溝幅25μmを有する凹版215を用いてPET基材を印刷基材214とし導電性ペーストをインキ211として、
図1に示したある実施形態の印刷装置を用いて印刷した。
凹版215は、金属製の平版に上記の印刷パターン溝209をエッチングによって彫刻したものを使用した。印刷範囲は幅150mm×長さ150mmの凹版215を使用した。
【0042】
PET基材には幅200×200mm×厚さ125μmのシート状のものを使用した。導電性銀ペーストの溶剤にはナフテン系の比較的低沸点の溶剤を用いた。粘度はレオロジー測定装置で角速度10rad/秒で、5~10Pa・sであるものを使用した。印刷用ブランケット212として、シリコーンゴムを主体とする厚み0.9mm、硬度10°のもので長さ600mmのものを使用した。ブランケット胴206はSUS304製のシリンダで幅200mm×直径200mmのものを使用した。
【0043】
印刷条件として、凹版215上に導電性ペーストを0.5g/cm2で供給した。凹版215とブランケット212が接する位置をブランケット胴206のゼロ点とする。ゼロ点からブランケット胴206を0.5mm凹版215に近づけた位置を凹版215からブランケット206に充填インキ210を取り出す位置とした。凹版101からインキを取出すときの速度を50mm/secでブランケット胴206を回転させる。ブランケット206に受理されたインキ213を印刷基材205に転写させるときの速度を50mm/secでブランケット胴206を回転させた。
【0044】
(比較例3)
比較例3の凹版印刷として、
図5に示すドクタ106の位置とブランケット胴102の位置を固定して、凹版101と印刷基材110を移動させる方式で、
図2に示す印刷工程にて印刷を行った。
この結果、比較例3の凹版印刷ではブランケット上に受理したインキに乾燥が発生し印刷基材への転写不良が発生した。実施例3の凹版印刷装置を用いた印刷工程での印刷タクトは、比較例3の凹版印刷工程で印刷した場合の約1/3に短縮されており、インキの乾燥が発生せず凹版からブランケットへの受理、ブランケットから印刷基材への転写が問題なくおこなえた。また、実施例3では、高精彩で高精度な印刷が連続的且つ安定して印刷をすることが出来た。
【0045】
また、従来の遅乾性溶剤を使用したインキでは印刷パターンの乾燥・硬化に120℃で30分要したが、今回のインキでは80℃で15分乾燥・硬化させることで従来にインキ同等の性能の印刷パターンとなった。印刷タクトを短縮することで乾燥・硬化時間を短縮できるインキを使用することが出来た。
【0046】
(その他)
以上、本発明の実施形態を詳述してきたが、実際には、上記の実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の変更があっても本発明に含まれる。すなわち、本発明は、実施形態に示された態様のみに限らず、特許請求の範囲によって規定される本発明の思想に包含されるあらゆる形態例や応用例、均等物が本発明に含まれる。従って本発明は、限定的に解釈されるべきではなく、本発明の思想の範囲内に帰属する他の任意の技術にも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0047】
200・・・印刷装置
201・・・第一の定盤
201a・・・第一の定盤の移動開始位置
201b・・・第一の定盤の移動終了位置
202・・・第二の定盤
202a・・・第二の定盤の移動開始位置
202b・・・第二の定盤の移動終了位置
203・・・第一のドクタ
203a・・・第一のドクタの移動開始位置
203b・・・第一のドクタの移動終了位置
204・・・第二のドクタ
204a・・・第二のドクタの移動開始位置
204b・・・第二のドクタの移動終了位置
205・・・印刷基材(基材)
206・・・ブランケット胴
206a・・・ブランケット胴の移動開始位置
206b・・・ブランケット胴の移動終了位置
207・・・溶剤除去部
208・・・汚れ除去部
209・・・パターン溝
210・・・充填インキ
211・・・インキ
212・・・ブランケット
213・・・受理インキ
214・・・印刷パターン
215・・・凹版(版)