(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】分離膜モジュール
(51)【国際特許分類】
B01D 63/06 20060101AFI20220809BHJP
【FI】
B01D63/06
(21)【出願番号】P 2017206294
(22)【出願日】2017-10-25
【審査請求日】2020-10-09
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504117958
【氏名又は名称】独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【氏名又は名称】重野 剛
(72)【発明者】
【氏名】野口 直樹
(72)【発明者】
【氏名】国司 洋介
【審査官】中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-155093(JP,A)
【文献】特公昭46-012877(JP,B1)
【文献】特開2007-044684(JP,A)
【文献】特開平02-139014(JP,A)
【文献】特開昭55-102404(JP,A)
【文献】特開2002-273112(JP,A)
【文献】特開平10-057719(JP,A)
【文献】特開2003-144859(JP,A)
【文献】特開2016-155097(JP,A)
【文献】特開2017-113742(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 27/00-35/34、46/00-90、61/00-71/82
C02F 1/44
F16J 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のハウジングと、
該ハウジング内に該ハウジングの長手方向に配置された複数の管状分離膜と
を有し、
被処理流体が該ハウジング内を一端側から他端側に流れ、管状分離膜を透過した流体が該管状分離膜を通って取り出される分離膜モジュールであって、
該管状分離膜の一端部にエンド管が接続され、
該エンド管は、前記ハウジングを横断するように設置された支持板の一方の板面から突出している分離膜モジュールにおいて、
該支持板の一方の板面に差込穴が設けられ、前記エンド管が該差込穴に差し込まれており、
該エンド管の端面と差込穴の底面との間がガスケットでシールされて
おり、
前記管状分離膜は上下方向に設置されており、前記エンド管は該管状分離膜の下端に接続されていることを特徴とする分離膜モジュール。
【請求項2】
筒状のハウジングと、
該ハウジング内に該ハウジングの長手方向に配置された複数の管状分離膜と
を有し、
被処理流体が該ハウジング内を一端側から他端側に流れ、管状分離膜を透過した流体が該管状分離膜を通って取り出される分離膜モジュールであって、
該管状分離膜の一端部にエンド管が接続され、
該エンド管の先端側は、前記ハウジングを横断するように設置された支持板に連結されている分離膜モジュールにおいて、
該エンド管は、先端近傍にフランジ部が設けられると共に、該フランジ部よりも先端側に突出する差込部を有しており、
前記支持板に設けられた差込用貫通孔に該差込部が挿通されており、
該差込用貫通孔の管状分離膜側にガスケット設置凹部が設けられており、
該ガスケット設置凹部の底面と前記フランジ部との間にガスケットが挟持されていることを特徴とする分離膜モジュール。
【請求項3】
前記差込部の先端側の外周面に雄ネジが設けられており、該雄ネジにナットが締め込まれることにより、前記エンド管と前記支持板とが固定されていることを特徴とする請求項2記載の分離膜モジュール。
【請求項4】
前記ナットと前記支持板との間にスプリング部材が介在されていることを特徴とする請求項3記載の分離膜モジュール。
【請求項5】
前記スプリング部材が、スプリングワッシャーであり、該スプリングワッシャーと前記支持板との間にワッシャーが介在されていることを特徴とする請求項4記載の分離膜モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は溶液や混合気体等の流体から一部の成分を分離するために用いられる分離膜モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
溶液又は混合気体中の成分を分離するための機器として分離膜モジュールが知られている。この分離膜モジュールに用いる管状分離膜は、管状の多孔質セラミック支持体と、該支持体の外周面に設けられたゼオライト等からなる多孔質の分離膜とを有する。溶液や混合気体等の流体から特定の成分を分離するためには、溶液の流体を分離膜エレメントの一方(外面)に接触させて、もう一方(内面)を減圧することにより、特定の成分を気化させ分離する方法や、溶液を気化させて気体状態で分離膜に接触させて、非接触面側を減圧して特定成分を分離する方法、加圧状態の混合気体を分離膜に接触させて特定の成分を分離する方法などが知られている。
【0003】
特許文献1(特にその
図6(a))に、上下方向に配置された筒状のハウジングと、該ハウジング内に上下方向に配置された複数の管状分離膜とを有し、該管状分離膜の下端部にエンド管が接続され、該エンド管は、前記ハウジングを横断するように設置された支持板の上面から突出しており、該支持板の上面に差込穴が設けられ、前記エンド管が該差込穴に差し込まれており、該エンド管の下端面と差込穴の底面との間がOリングでシールされている分離膜モジュールが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
管状分離膜の下端に接続されたエンド管を支持板の差込穴に差し込み、エンド管の下端面と差込穴の底面との間をOリングでシールする特許文献1の構造にあっては、エンド管の下端面にOリング装着用の溝を形成する必要があり、エンド管の製作に手間がかかる。また、Oリングに加えられる管状分離膜やエンド管の荷重が大きいと、Oリングが潰れすぎてエンド管の下端面が差込穴の底面に直に当たるようになってシール性能が低下するおそれがある。また、エンド管底面の溝にOリングを嵌入する態様(
図6a)では、エンド管が鉛直から僅かにでも傾いた場合にも、Oリングによるシール性能が低下するおそれがある。この問題はエンド管の外径と差込穴の内径を精密に合わせることで解決されるが、この場合、エンド管にグリース等の潤滑剤を塗布する必要があり、潤滑剤の成分が揮発して分離膜に付着することで、分離性能が低下する問題がある。
【0006】
さらに、分離膜がセラミック系等の脆い素材の場合、長尺の脆い分離膜と一体化したエンド管にガスケットを嵌める作業、ならびに、ガスケットを嵌めた数百本のエンド管を、分離膜にストレスを加えないように差込穴に送入する作業を、天然ガス生産プラントの建設現場で実施することは、著しく困難である。
【0007】
本発明は、管状分離膜の一端に接続されたエンド管と支持板との間のシール性能が良好であると共に、広い温度領域で使用可能であり、エンド管の製造も、分離膜モジュールの組み立ても容易である分離膜モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明(第1発明)の分離膜モジュールは、筒状のハウジングと、該ハウジング内に該ハウジングの長手方向に配置された複数の管状分離膜とを有し、被処理流体が該ハウジング内を一端側から他端側に流れ、管状分離膜を透過した流体が該管状分離膜を通って取り出される分離膜モジュールであって、該管状分離膜の一端部にエンド管が接続され、該エンド管は、前記ハウジングを横断するように設置された支持板の一方の板面から突出している分離膜モジュールにおいて、該支持板の一方の板面に差込穴が設けられ、前記エンド管が該差込穴に差し込まれており、該エンド管の端面と差込穴の底面との間がガスケットでシールされていることを特徴とするものである。
【0009】
本発明(第2発明)の分離膜モジュールは、筒状のハウジングと、該ハウジング内に該ハウジングの長手方向に配置された複数の管状分離膜とを有し、被処理流体が該ハウジング内を一端側から他端側に流れ、管状分離膜を透過した流体が該管状分離膜を通って取り出される分離膜モジュールであって、該管状分離膜の一端部にエンド管が接続され、該エンド管の先端側は、前記ハウジングを横断するように設置された支持板に連結されている分離膜モジュールにおいて、該エンド管は、先端近傍にフランジ部が設けられると共に、該フランジ部よりも先端側に突出する差込部を有しており、前記支持板に設けられた差込用貫通孔に該差込部が挿通されており、該差込用貫通孔の管状分離膜側にガスケット設置凹部が設けられており、該ガスケット設置凹部の底面と前記フランジ部との間にガスケットが挟持されていることを特徴とするものである。
【0010】
本発明の一態様では、前記差込部の先端側の外周面に雄ネジが設けられており、該雄ネジにナットが締め込まれることにより、前記エンド管と前記支持板とが固定されている。
【0011】
本発明の一態様では、前記ナットと前記支持板との間にスプリングワッシャーが介在されている。
【0012】
本発明の一態様では、前記スプリングワッシャーと支持板との間にワッシャーが介在されている。
【0013】
本発明の一態様では、前記管状分離膜は上下方向に設置されており、前記エンド管は該管状分離膜の下端に接続されている。
【発明の効果】
【0014】
本発明(第1発明)の分離膜モジュールにあっては、支持板に設けた差込穴にエンド管を差し込むことによりエンド管が支持板に接続される。本発明では、エンド管の端面と差込穴の底面との間に介在されたガスケットによってエンド管と支持板との間のシールが行われる。管状分離膜及び支持板から加えられる荷重が大きくても、またエンド管が若干傾いたりしても、エンド管の端面と差込穴の底面との間にガスケットが介在し、かつエンド管端面及び差込穴底面がガスケットに十分に押し付けられるので、エンド管と支持板との間のシール性能が良好である。
【0015】
本発明(第2発明)の分離膜モジュールにあっては、支持板に設けた差込用貫通孔にエンド管の差込部を差し込むことによりエンド管が支持板に接続される。本発明では、エンド管のフランジ部とガスケット設置凹部の底面との間に介在されたガスケットによってエンド管と支持板との間のシールが行われる。管状分離膜及び支持板から加えられる荷重が大きくても、またエンド管が若干傾いたりしても、フランジ部とガスケット設置凹部の底面との間にガスケットが介在し、かつフランジ部及びガスケット設置凹部がガスケットに十分に押し付けられるので、エンド管と支持板との間のシール性能が良好である。
【0016】
本発明では、エンド管にOリング装着溝を設ける必要がないから、エンド管の製造も容易である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施の形態に係る分離膜モジュールのハウジング軸心線方向に沿う断面図である。
【
図6】実施の形態に係る分離膜モジュールのハウジング軸心線方向に沿う断面図である。
【
図7】別の実施の形態におけるエンド管及び支持板の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1~6を参照して、本発明の一実施の形態に係る分離膜モジュールについて説明する。
【0019】
この分離膜モジュール1は、筒軸心方向を上下方向とした円筒状ハウジング2と、ハウジング2の軸心線と平行方向に配置された複数の管状分離膜3と、ハウジング2内の下部に設けられた支持板5と、ハウジング2の下端に取り付けられたボトムカバー6A及び上端に取り付けられたトップカバー6Bと、支持板5と平行にハウジング2内の下部及び上部にそれぞれ配置された第1のバッフル(整流板)7及び第2のバッフル(整流板)8等を有する。第1のバッフル7は支持板5の上側に配置されている。
【0020】
この実施の形態では、ハウジング2の下端及び上端側とボトムカバー6A及びトップカバー6Bの外周縁にそれぞれ外向きのフランジ2a,2b,6b,6cが設けられ、ボルト(図示略)によってこれらが固定されている。支持板5の周縁部は、フランジ2a,6b間にガスケット(図示略)を介して挟持されている。
【0021】
この実施の形態では、管状分離膜3の下端にエンド管4が連結されている。管状分離膜3の上端にエンドプラグ20が連結されている。なお、
図1~3では、管状分離膜は7本のみ示されているが、実際は
図4のように多数本設けられている。
【0022】
図1では、管状分離膜3は一本物となっているが、
図6の通り、複数本、例えば2本の管状分離膜3がジョイント管17を介して連結されてもよい。このジョイント管17は、管軸方向に貫通する貫通孔を有する。ジョイント管17の両端側(上端側と下端側)は、管状分離膜3内に差し込まれる小径部となっている。管状分離膜3をジョイント管に対して平行に設置することと、シール性能の向上を目的に小径部の外周面には溝が周回して設け、Oリング(図示略)が装着してもよい。
【0023】
また、ジョイント管17の両端側の小径部同士の間は大径部となっており、小径部と大径部との境界部は段差面となっている。この段差面と管状分離膜3の端面との間にもOリングもしくはガスケットが介在されている。ジョイント管17と管状分離膜3は、Oリングを使用せず、熱収縮チューブを用いることでシールしてもよいし、Oリングを使用した上にさらに熱収縮チューブを用いてもよい。
【0024】
ハウジング2の下部の外周面に被処理流体の流入口9が設けられ、上部の外周面に被処理流体の流出口10が設けられている。流入口9は、支持板5と第1のバッフル7との間の室11に臨むように設けられている。流出口10は、第2のバッフル8の上側の室12に臨むように設けられている。バッフル7,8間は膜分離を行うための主室13となっている。
【0025】
底部の支持板5から複数のロッド14が立設され、該ロッド14にバッフル7,8が支持されている。ロッド14の下端には雄ねじが刻設されており、支持板5の雌ねじ穴に螺着されている。バッフル7,8はロッド14に外嵌された鞘管14A,14B(
図4)によって所定高さに支持されている。鞘管14Aは、支持板5とバッフル7との間に配置されている。鞘管14Bは、バッフル7,8間に配置されている。バッフル8は、鞘管14Bの上端面に載設され、ロッド14の上端に螺着されたナットによって固定されている。バッフルの数はこの実施の形態によらず、3以上のバッフルを使用してもよい。
【0026】
バッフル7,8の外周面とハウジング2の内周面との間には、Oリング、Vパッキン、Cリングなどのシール部材が介在され、ハウジング2の外周部を優先的にガスが流れないようにしてもよい。
【0027】
各バッフル7,8には、管状分離膜3を挿通させるための円形の挿通孔7a,8aが設けられており、管状分離膜3、エンド管4及びエンドプラグ20の連結体が各挿通孔7a,8aに挿通されている。挿通孔7a,8aの口径は、管状分離膜3、エンド管4及びエンドプラグ20の直径(外径)よりも大きく、挿通孔7a,8aの内周面と、エンド管4及びエンドプラグ20の外周面との間に全周にわたって間隙があいている。
【0028】
支持板5の上面側には、管状分離膜3に連結されたエンド管4の下端が差し込まれた差込穴5aが設けられている。差込穴5aは、円柱形であり、支持板5の上面から厚み方向の途中まで延在している。差込穴5aの穴底は、小孔5bと大孔5c(もしくは大孔5cがなく小孔5のみでもよい)とを介して支持板5の下側の流出室16に臨んでいる。
【0029】
エンド管4の下端面と差込穴5の底面5tとの間にガスケット30が介在されている。ガスケット30は円板形であり、中央部に開口31が設けられている。エンド管4の直径が5.0~25.0mm程度である場合、ガスケット30の厚みは0.2~5.0mm特に0.5~2.0mm程度が好ましい。ガスケット30の材質はシリーコンゴム・天然ゴム・バイトン・パーフロロエラストマー・テトラフルオロエチレン系樹脂などの高分子系材料、膨張黒鉛および、膨張黒鉛とステンレス板の複合体等素材からなるガスケット、さらに、金属チューブとコイルスプリングの複合体からなるいわゆる金属ガスケットが例示されるが、これに限定されない。
【0030】
各エンド管4の管孔4aは、開口31、小孔5b及び大孔5cを介して、ボトムカバー6Aと支持板5との間の流出室16に連通している。ボトムカバー6Aには、分離された透過流体の取出口6aが設けられている。
【0031】
図5の通り、エンド管4の上端部は小径部4gとなっており、管状分離膜3の下部に差し込まれている。この小径部4gにはエンド管4gと管状分離膜3の中心が合うように外周面に周設された溝にOリング32が装着してもよい。また、管状分離膜3の下端面とエンド管4の段差面との間にもOリングもしくはガスケット33が介在されている。エンド管4と管状分離膜3の接続部は、上記のようなOリング等を使用せず、熱収縮チューブを用いることでシールしてもよいし、Oリング等を使用した上にさらに熱収縮チューブを用いてもよい。
【0032】
管状分離膜3の上端にエンドプラグ20が連結されている。エンドプラグ20は円柱状またはこれの一部を削った形状であり、管状分離膜3の上端を封止している。エンドプラグ20の下端には、管状分離膜3内に差し込まれた小径部が設けられている。エンドプラグ20と管状分離膜3との間はOリングによってシールされている。図示は省略するが、このエンドプラグ20と管状分離膜3とのシール構造は、前記エンド管4と管状分離膜3とのシール構造と同様のものとなっている。また、エンドプラグ20と管状分離膜3は、Oリングを使用せず、熱収縮チューブを用いることでシールしてもよいし、Oリングを使用した上にさらに熱収縮チューブを用いてもよい。
【0033】
この実施の形態では、管状分離膜3の上端側にエンドプラグ20を配置しているので、ガスケット30に対し、エンドプラグ20、管状分離膜3、及びエンド管4の荷重がかかっている。そのため、エンド管4の下端面及び差込穴底面5tがガスケット30に密着し、良好なシール性能が得られる。管状分離膜3等の重量が大きい場合であっても、エンド管4の下端面と差込穴底面5tとの間にガスケット30が必ず介在するので、シール性能が良好である。また、エンド管4が若干傾いても、エンド管4の下端面の全体がガスケット30に密着した状態に保たれるので、良好なシール性能が得られる。
【0034】
なお、本発明では、エンド管4及び支持板5を管状分離膜3の上端側に配置し、エンドプラグ20を管状分離膜3の下端側に配置してもよい。この場合、エンドプラグ20を上方に付勢するためのスプリング等の付勢部材を設けることにより、エンド管上端面及び差込穴底面がガスケット30に押し付けられるように荷重を加えることが好ましい。
【0035】
この実施の形態では、差込穴5aにエンド管4の下端部を差し込むだけでエンド管4と支持板5とを気密ないし液密状に容易に連結することができる。この差込穴5aが円柱形であるので、支持板5に差込穴5aを穿設する作業は容易であり、支持板5の製作も容易である。また、エンド管4にOリング装着溝を穿設する作業も不要である。さらに、上記の付勢部材を設けることにより、エンド管4と差し込み穴5aとの嵌め合い公差を緩くしてもエンド管4はガスケット30に対し鉛直に接し、エンド管4が傾くことによるシールの悪化が生じにくくなる。従って、分離膜モジュールの製作工期の短縮及び製作コストの低減を図ることができる。
【0036】
また、分離工程では管状分離膜3の外側が内側より高圧になるため、その圧力差により管状分離膜3には鉛直下方向に力が働く。この力はエンド管4に伝わりエンド管4がガスケット30に密着する力となりシール性がより良好となる。
【0037】
この実施の形態では、ガスケット30をエンド管4の下端面と底面5tとの間に介在させたので、差込穴5aの内周面とエンド管4の外周面との間に隙間があっても、エンド管4を鉛直に保つことが容易である。
【0038】
この分離膜モジュール1において、被処理流体は流入口9からハウジング2の室11内に導入され、バッフル7の挿通孔7aの内周面とエンド管4の外周面との間の間隙を通って主室13に流入し、主室13を通った後、バッフル8の挿通孔8aとエンドプラグ20との間隙を通って室12に流出する。主室13を流れる間に被処理流体の一部の成分が管状分離膜3を透過して管状分離膜3内から流出室16及び取出口6aを介して取り出される。透過しなかった流体は、流出口10から分離膜モジュール1外に流出する。
【0039】
主室13内の流れと管状分離膜3内の流れは並流であっても、向流であっても差し支えなく、被処理流体の流入口9と流出口10とは入れ替えても差し支えない。
【0040】
分離膜モジュール1は、
図1のようにトップカバー6B側を上にして使用してもよく、またボトムカバー6A側を上にして使用しても差し支えない。また、ボトムカバー6Aとトップカバー6Bを結ぶ方向が略水平方向となるように、分離膜モジュール1を横置きに設置して使用しても差し支えない。
【0041】
この実施の形態では、管状分離膜3を平行に多数本配列設置しており、膜面積が大きいので、効率良く膜分離が行われる。
【0042】
この実施の形態では、管状分離膜3の上下両端に連結されたエンド管4とエンドプラグ20がそれぞれバッフル7,8の挿通孔7a,8aに差し込まれている。そのため、管状分離膜3が振動ないし揺動してエンド管4及びエンドプラグ20が挿通孔7a,8aの内周面に当接してもゼオライト膜が損傷することがなく、長期にわたって安定して運転を行うことができる。
【0043】
図7,8を参照して、本発明における他の実施の形態を説明する。
【0044】
本実施の形態では、支持板50に設けられた差込用貫通孔51は、支持板50を貫通するように設けられるとともに、ガスケット30を設置するためのガスケット設置凹部52が、管状分離膜側にザグリ加工で形成される。該凹部52は差込用貫通孔51よりも大径である。
【0045】
エンド管40は、先端(下端)近傍にフランジ部41を備えている。また、エンド管40は、フランジ部41よりも下方に突出するように差込部42を有する。差込部42は差込用貫通孔51を突き抜ける長さを有している。差込部42の下端直近の外周面に雄ネジ43が設けられている。
【0046】
図8に示されるように、水平に保持された支持板50のガスケット設置凹部52に、ガスケット30を嵌め込んだ後、分離膜3、エンドプラグ20等を組み付けたエンド管40を差込用貫通孔51に挿通させ、ガスケット30を、凹部52の底面とフランジ部41との間で挟み付ける。
【0047】
次いで、支持板50の下面から突出した差込部42にワッシャー61及びスプリング部材として、端部のバリとワッシャー外周および内周のコーナー部をR加工したスプリングワッシャー62を嵌めた後、ナット63を雄ネジ43に螺着し、締め込む。これにより、エンド管40が支持板50に固定される。また、凹部52の底面とフランジ部41との間がガスケット30でシールされる。
【0048】
この実施の形態では、分離膜モジュールの運転温度が100℃以上変動する場合、支持板50と、エンド管40を同一素材とすることで、熱膨張による寸法変動を吸収することができる。また、ナット63を2個締め込むダブルナット構造としたことにより、ゆるみが防止される。
【0049】
なお、スプリングワッシャーは、通常、端部のバリを基材喰い込ませることで、ゆるみ防止機能を発揮するが、この実施の形態では、ワッシャー61とナット63との間に介在される、スプリングワッシャー62は、端部のバリを除去し、外周と内周をR加工することで、スプリングワッシャーがナット63、あるいはワッシャー61に食い込むことが防止される。これによりスプリングワッシャー62は、ワッシャー61およびナット63の表面を滑動可能となり、スプリング部材として差込部42に対し、図面下方に向けた張力をより有効に発生させるため、ガスケット自体の体積変化ならびに圧縮永久歪による寸法変化を吸収することが可能となる。
【0050】
図7,8の実施の形態は、
図1~6に示した実施の形態に比べて、構造ならびに組み立て作業が複雑になる反面、ガスケット30は、ガスケット設置凹部52内に、フランジ41の底面と、差込部51で限定された空間に配置されるため、ガスケット30に加わる圧力の設定が容易になる。また、ガスケット30の変形が抑制され、シリコーンゴムやフッ素系ゴム等の高分子系エラストマでも、変形が限定され、比較的高い温度でも安定したシール性が維持可能になる。また、エンド管40が支持板50に対し、フランジ部41とワッシャー61、スプリングワッシャー62及びナット63によって固定されるため、エンド管40を吊り下げる等、設置の自由度が増すとともに、分離膜内外の圧力を逆転させることが可能になり、より運転の自由度が増加する。さらに、ガスケット30が変形しても、スプリング部材としてのスプリングワッシャー62が、スプリングとして、差込部42に対し、図面下方に向けた張力を発生し続けるため、ガスケット30に適切な圧力がかかり続けるため、シールが安定する。なお、
図7,8の実施例は、既存の分離膜モジュールの改造等で、スペース的な制約が大きな場合に実施するものであり、このような制約がない条件下では、差込部42を延長し、ここにスプリングワッシャーに変わる圧縮コイルバネを挿入することで、より、自由度の高い設計が可能となる。また、本態様では、差込部が圧縮コイルバネに早秋されるため、差込部がガイドとなるため、コイル内周と差込部外周の間の間隙を0.05~2mmとなるように設定することで、圧縮コイルばねの座屈が防止されるため、差込部に掛ける張力がより安定する。
【0051】
以下、本発明の分離膜モジュールを構成するエンド管4,40、エンドプラグ20及び管状分離膜3の好適な材料等について説明する。
【0052】
エンド管4,40及びエンドプラグ20の材料としては金属、セラミックスなど、流体を透過させないものが例示されるが、これに限定されない。バッフル7,8及びジョイント管17の材質は、通常、ステンレスなどの金属材料であるが、分離条件における耐熱性と供給、透過成分に対する耐性があれば特に限定されず、用途によっては、樹脂材料など他の材質に変更可能である。
【0053】
管状分離膜3は、好ましくは、管状の多孔質支持体と、該多孔質支持体の外周面に形成された無機分離膜としてのゼオライト膜とを有する。この管状の多孔質支持体の材質としては、シリカ、α-アルミナ、γ-アルミナ、ムライト、ジルコニア、チタニア、イットリア、窒化珪素、炭化珪素などを含むセラミックス焼結体や金属焼結体の無機多孔質支持体が挙げられる。その中でもアルミナ、シリカ、ムライトのうち少なくとも1種を含む無機多孔質支持体が好ましい。多孔質支持体表面が有する平均細孔径は特に制限されるものではないが、細孔径が制御されているものが好ましく、通常0.02μm以上、好ましくは0.05μm以上、さらに好ましくは0.1μm以上であり、通常20μm以下、好ましくは10μm以下、さらに好ましくは5μm以下の範囲が好ましい。
【0054】
多孔質支持体の表面においてゼオライトを結晶化させゼオライト膜を形成させる。
ゼオライト膜を構成する主たるゼオライトは、通常、酸素6-10員環構造を有するゼオライトを含み、好ましくは酸素6-8員環構造を有するゼオライトを含む。
【0055】
ここでいう酸素n員環を有するゼオライトのnの値は、ゼオライト骨格を形成する酸素とT元素で構成される細孔の中で最も酸素の数が大きいものを示す。例えば、MOR型ゼオライトのように酸素12員環と8員環の細孔が存在する場合は、酸素12員環のゼオライトとみなす。
【0056】
酸素6-10員環構造を有するゼオライトの一例を挙げれば、AEI、AEL、AFG、ANA、BRE、CAS、CDO、CHA、DAC、DDR、DOH、EAB、EPI、ESV、EUO、FAR、FRA、FER、GIS、GIU、GOO、HEU、IMF、ITE、ITH、KFI、LEV、LIO、LOS、LTN、MAR、MEP、MER、MEL、MFI、MFS、MON、MSO、MTF、MTN、MTT、MWW、NAT、NES、NON、PAU、PHI、RHO、RRO、RTE、RTH、RUT、SGT、SOD、STF、STI、STT、TER、TOL、TON、TSC、TUN、UFI、VNI、VSV、WEI、YUG等がある。
【0057】
ゼオライト膜は、ゼオライトが単独で膜となったものでも、前記ゼオライトの粉末をポリマーなどのバインダー中に分散させて膜の形状にしたものでも、各種支持体上にゼオライトを膜状に固着させたゼオライト膜複合体でもよい。ゼオライト膜は、一部アモルファス成分などが含有されていてもよい。
【0058】
ゼオライト膜の厚さとしては、特に制限されるものではないが、通常、0.1μm以上であり、好ましくは0.6μm以上、さらに好ましくは1.0μm以上である。また通常100μm以下であり、好ましくは60μm以下、さらに好ましくは20μm以下の範囲である。
【0059】
ただし、本発明はゼオライト膜以外の分離膜を有した管状分離膜を用いてもよい。
【0060】
管状分離膜3の外径は、好ましくは3mm以上、より好ましくは6mm以上、さらに好ましくは10mm以上、好ましくは20mm以下、より好ましくは18mm以下、さらに好ましくは16mm以下である。外径が小さすぎると管状分離膜の強度が十分でなく壊れやすくなることがあり、大きすぎるとモジュール当りの膜面積が低下する。
【0061】
管状分離膜3のうちゼオライト膜で覆われた部分の長さは好ましくは20cm以上、好ましくは200cm以下である。
【0062】
本発明の分離膜モジュールにおいて、管状分離膜は、単管式でも多管式でもよく、通常1~3000本、特に50~850本配置され、管状分離膜同士の最短距離は、2mm~10mmとなるように配置されることが好ましい。ハウジングの大きさ、管状分離膜の本数は処理する流体量によって適宜変更されるものである。なお、管状分離膜はジョイント管17によって連結されなくてもよい。また、図による説明では分離膜モジュール1は縦向きに設置するようになっているが、横向きや傾けて使用してもよい。
【0063】
本発明の分離膜モジュールにおいて、分離または濃縮の対象となる被処理流体としては、分離膜によって分離または濃縮が可能な複数の成分からなる気体または液体の混合物であれば特に制限はなく、如何なる混合物であってもよいが、気体の混合物に使用することが好ましい。
【0064】
分離または濃縮にはパーベーパレーション法(浸透気化法)、ベーパーパーミエーション法(蒸気透過法)と呼ばれる分離または濃縮方法を用いることができる。パーベーパレーション法は、液体の混合物をそのまま分離膜に導入する分離または濃縮方法であるため、分離または濃縮を含むプロセスを簡便なものにすることができる。
【0065】
本発明において、分離または濃縮の対象となる混合物が、複数の成分からなる気体の混合物である場合、気体の混合物としては、例えば、二酸化炭素、酸素、窒素、水素、メタン、エタン、エチレン、プロパン、プロピレン、ノルマルブタン、イソブタン、1-ブテン、2-ブテン、イソブテン、トルエンなどの芳香族系化合物、六フッ化硫黄、ヘリウム、一酸化炭素、一酸化窒素、水などから選ばれる少なくとも1種の成分を含むものが挙げられる。これらの気体成分からなる混合物のうち、パーミエンスの高い気体成分は、分離膜を透過し分離され、パーミエンスの低い気体成分は供給ガス側に濃縮される。
【0066】
本発明の分離膜モジュールは、流体量、あるいは目的の分離度、濃縮度によって連結して使用することができる。流体量が多い場合または目的の分離度・濃縮度が高く1つのモジュールでは処理が十分できない場合には出口から出た流体をさらにもう一つのモジュールの入口に入るように配管を接続して使用することが好ましい。また分離度、濃縮度に応じてさらに連結して目的の分離度・濃縮度とすることができる。
【0067】
本発明の分離膜モジュールを並列に設置して流体を分岐してガスを供給してもよい。この時さらに並列したそれぞれのモジュールに直列でモジュールを設置することもできる。並列としたモジュールを直列とする場合、供給ガス量が直列方向に低下し線速が低下するので、適宜線速を保つように並列の設置数を減少させることが好ましい。
【0068】
モジュールを直列に配置する場合の透過した成分はモジュール毎に排出しても良く、モジュール間を連結して集合させて排出しても良い。
【符号の説明】
【0069】
1 分離膜モジュール
2 ハウジング
3 管状分離膜
4,40 エンド管
5,50 支持板
5a 差込穴
5t 差込穴の底面
6A ボトムカバー
6B トップカバー
6a 取出口
7,8 バッフル
7a,8a 挿通孔
9 流入口
10 流出口
11,12 室
13 主室
14 ロッド
16 流出室
17 ジョイント管
20 エンドプラグ
30 ガスケット
41 フランジ部
42 差込部
51 差込用貫通孔
52 ガスケット設置凹部
61 ワッシャー
62 スプリングワッシャー
63 ナット