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特許7119350縦型GaN系半導体装置の製造方法および縦型GaN系半導体装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】縦型GaN系半導体装置の製造方法および縦型GaN系半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/336 20060101AFI20220809BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20220809BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20220809BHJP
   H01L 21/265 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
H01L29/78 658A
H01L29/78 652T
H01L29/78 653A
H01L29/78 658E
H01L29/78 652G
H01L21/265 601A
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2017225218
(22)【出願日】2017-11-22
(65)【公開番号】P2019096744
(43)【公開日】2019-06-20
【審査請求日】2020-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高島 信也
(72)【発明者】
【氏名】上野 勝典
(72)【発明者】
【氏名】江戸 雅晴
【審査官】恩田 和彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-095467(JP,A)
【文献】特開2017-079234(JP,A)
【文献】特開2006-100801(JP,A)
【文献】特開2012-156207(JP,A)
【文献】特開2007-335677(JP,A)
【文献】特開2011-165777(JP,A)
【文献】特開2017-054944(JP,A)
【文献】特許第6123941(JP,B1)
【文献】特開2017-045943(JP,A)
【文献】特開2003-173968(JP,A)
【文献】特開2007-243080(JP,A)
【文献】特開2017-163021(JP,A)
【文献】特開2016-115831(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/336
H01L 29/12
H01L 29/78
H01L 21/265
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
GaN系半導体基板と、
前記GaN系半導体基板よりも低いn型不純物のドーピング濃度を有するドリフト領域を含み、前記GaN系半導体基板上に設けられたGaN系半導体層と、
前記GaN系半導体層と、前記GaN系半導体層に接する絶縁膜と、前記絶縁膜に接する導電部とを有するMIS構造と
を有する縦型GaN系半導体装置の製造方法であって、
前記MIS構造を形成する段階と、
前記MIS構造を形成する段階の後に、前記GaN系半導体基板の裏面へn型ドーパントを注入し、下方領域を形成する段階と、
前記n型ドーパントを注入する段階の後に、前記GaN系半導体基板をアニールする段階と
を備え、
前記MIS構造を形成する段階において、前記導電部と電気的に分離するソース電極を形成し、
前記下方領域の少なくとも一部は、前記導電部の下方に設けられ
前記下方領域に接するドレイン電極を形成する段階を更に備える
縦型GaN系半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記GaN系半導体基板の前記裏面は、ガリウム極性面よりも耐熱性の高い面である
請求項に記載の縦型GaN系半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記GaN系半導体基板の前記裏面は、窒素極性面またはm面である
請求項1または2に記載の縦型GaN系半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記GaN系半導体基板をアニールする段階において、前記裏面に接する保護層を設けることなく前記GaN系半導体基板をアニールする
請求項1からのいずれか一項に記載の縦型GaN系半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記GaN系半導体基板をアニールする段階において、前記裏面にレーザーを照射することにより前記GaN系半導体基板をアニールする
請求項1からのいずれか一項に記載の縦型GaN系半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記裏面へn型ドーパントを注入する段階、および、前記GaN系半導体基板をアニールする段階の前に、前記GaN系半導体基板を薄化する段階をさらに備える
請求項1からのいずれか一項に記載の縦型GaN系半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記GaN系半導体基板をアニールする段階において、前記GaN系半導体基板を1000℃以上1350℃以下の予め定められた温度でアニールする
請求項1からのいずれか一項に記載の縦型GaN系半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記GaN系半導体基板の前記裏面へn型ドーパントを注入する段階において、シリコン、ゲルマニウムおよび酸素のうち少なくとも一種類の元素を前記裏面へ注入する
請求項1からのいずれか一項に記載の縦型GaN系半導体装置の製造方法。
【請求項9】
GaN系半導体基板と、
前記GaN系半導体基板よりも低いn型ドーパントのドーピング濃度を有するドリフト領域を含み、前記GaN系半導体基板上に設けられたGaN系半導体層と、
前記GaN系半導体層と、前記GaN系半導体層に接する絶縁膜と、前記絶縁膜に接する導電部とを有するMIS構造と、
前記導電部と電気的に分離するソース電極と
を有する縦型GaN系半導体装置であって、
前記GaN系半導体基板の予め定められた深さ位置から裏面までに設けられる下方領域のn型ドーパントのドーピング濃度は、前記GaN系半導体基板の前記予め定められた深さ位置よりも上方に設けられる上方領域のn型ドーパントのドーピング濃度よりも高く、
前記下方領域の少なくとも一部は、前記導電部の下方に設けられ
前記下方領域に接するドレイン電極を更に有する
縦型GaN系半導体装置。
【請求項10】
前記下方領域は、n型ドーパントのドーピング濃度のピークを有し、
前記ピークにおけるn型ドーパントのドーピング濃度は、前記裏面におけるn型ドーパントのドーピング濃度以上および前記予め定められた深さ位置におけるn型ドーパントのドーピング濃度以上であり、
前記上方領域は、n型ドーパントのテール領域を有し、
前記テール領域におけるn型ドーパントのドーピング濃度は、前記予め定められた深さ位置から前記GaN系半導体層に向かって減少する
請求項に記載の縦型GaN系半導体装置。
【請求項11】
前記GaN系半導体基板の前記裏面は、ガリウム極性面よりも耐熱性の高い面である
請求項9または10に記載の縦型GaN系半導体装置。
【請求項12】
前記GaN系半導体基板の前記裏面は、窒素極性面またはm面である
請求項から11のいずれか一項に記載の縦型GaN系半導体装置。
【請求項13】
前記下方領域の深さ方向におけるn型ドーパントのドーピング濃度のピークは、1E+19cm-3以上である
請求項から12のいずれか一項に記載の縦型GaN系半導体装置。
【請求項14】
前記裏面の予め定められた方向において、前記下方領域のキャリア濃度が周期的に変化している
請求項から13のいずれか一項に記載の縦型GaN系半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縦型GaN系半導体装置の製造方法および縦型GaN系半導体装置に関する。
【0002】
イオン注入したドーパントを活性化するべく窒化ガリウム(以下、GaN)層を熱アニールするときに、GaN層上にキャップ層を設けることが知られている(例えば、非特許文献1参照)。また、マグネシウム(Mg)が各々イオン注入されたGaN基板の(000-1)面及び(0001)面上に保護層を設けることなく、各GaN基板を窒素ガス中において1230℃で30秒アニールした場合において、GaN基板の(000-1)面は、(0001)面に比べて窒素が離脱しにくく、(0001)面に比べて熱的に安定であることが知られている(例えば、非特許文献2参照)。なお、非特許文献2においては「-1」に代えて、数字「1」の上にバーを付した表現が採用されているが、「-1」を用いた場合であっても、数字「1」の上にバーを付した表現を用いた場合であっても、同じ意味であることに留意されたい。本明細書においては、数字「1」の上にバーを付した表現に代えて、「-1」を用いる。
[先行技術文献]
[特許文献]
[非特許文献1] Yuki Niiyama et al.,"Normally off operation GaN‐based MOSFETs for power electronics applications",Semiconductor Science and Technology, November 10,2010,vol.25,125006
[非特許文献2] Tetsuo Narita et al.,"P‐type doping of GaN(000-1) by magnesium ion implantation",Applied Physics Express,December 1,2016,10,vol.10,016501
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
GaN系半導体基板の抵抗は、縦型GaN系半導体装置のオン抵抗の一因となる。縦型GaN系半導体装置において、オン抵抗は低減することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様においては、縦型GaN系半導体装置の製造方法を提供する。縦型GaN系半導体装置は、GaN系半導体基板と、GaN系半導体層と、MIS構造とを有してよい。GaN系半導体層は、ドリフト領域を含んでよい。GaN系半導体層は、GaN系半導体基板上に設けられてよい。ドリフト領域は、GaN系半導体基板よりも低いn型不純物のドーピング濃度を有してよい。MIS構造は、GaN系半導体層と、GaN系半導体層に接する絶縁膜と、絶縁膜に接する導電部とを有してよい。縦型GaN系半導体装置の製造方法は、MIS構造を形成する段階と、GaN系半導体基板の裏面へn型ドーパントを注入する段階と、GaN系半導体基板をアニールする段階とを備えてよい。GaN系半導体基板の裏面へn型ドーパントを注入する段階は、MIS構造を形成する段階の後であってよい。GaN系半導体基板をアニールする段階は、n型ドーパントを注入する段階の後であってよい。
【0005】
GaN系半導体基板の裏面は、ガリウム極性面よりも耐熱性の高い面であってよい。
【0006】
GaN系半導体基板の裏面は、窒素極性面またはm面であってよい。
【0007】
GaN系半導体基板をアニールする段階においては、裏面に接する保護層を設けることなくGaN系半導体基板をアニールしてよい。
【0008】
GaN系半導体基板をアニールする段階において、裏面にレーザーを照射することによりGaN系半導体基板をアニールしてよい。
【0009】
裏面へn型ドーパントを注入する段階、および、GaN系半導体基板をアニールする段階の前に、GaN系半導体基板を薄化する段階をさらに備えてよい。
【0010】
GaN系半導体基板をアニールする段階において、GaN系半導体基板を1000℃以上1350℃以下の予め定められた温度でアニールしてよい。
【0011】
GaN系半導体基板の裏面へn型ドーパントを注入する段階において、シリコン、ゲルマニウムおよび酸素のうち少なくとも一種類の元素を前記裏面へ注入してよい。
【0012】
本発明の第2の態様においては、縦型GaN系半導体装置を提供する。縦型GaN系半導体装置は、GaN系半導体基板と、GaN系半導体層と、MIS構造とを有してよい。GaN系半導体層は、ドリフト領域を含んでよい。GaN系半導体層は、GaN系半導体基板上に設けられてよい。ドリフト領域は、GaN系半導体基板よりも低いn型ドーパントのドーピング濃度を有してよい。MIS構造は、GaN系半導体層と、GaN系半導体層に接する絶縁膜と、絶縁膜に接する導電部とを有してよい。下方領域のn型ドーパントのドーピング濃度は、上方領域のn型ドーパントのドーピング濃度よりも高くてよい。下方領域は、GaN系半導体基板の予め定められた深さ位置から裏面までに設けられてよい。上方領域は、GaN系半導体基板の予め定められた深さ位置よりも上方に設けられてよい。
【0013】
GaN系半導体基板の裏面は、ガリウム極性面よりも耐熱性の高い面であってよい。
【0014】
GaN系半導体基板の裏面は、窒素極性面またはm面であってよい。
【0015】
下方領域の深さ方向におけるn型ドーパントのドーピング濃度のピークは、1E+19cm-3以上であってよい。
【0016】
裏面の予め定められた方向において、下方領域のキャリア濃度は周期的に変化していてよい。
【0017】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1実施形態における縦型MOSFET200の断面を示す。
図2】GaN結晶におけるGa極性面、N極性面及びm面を示す図である。
図3】縦型MOSFET200の製造方法を示す。
図4】縦型MOSFET200の製造方法における段階S10からS60までを示す。
図5】縦型MOSFET200の製造方法における段階S70からS100までを示す。
図6】段階S90にいて、裏面16にレーザーを照射する様子を示す。
図7】第2実施形態における縦型MOSFET300の断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0020】
図1は、第1実施形態における縦型MOSFET200の断面を示す。図1は、GaN系半導体チップにおける活性領域を通るX‐Z断面であってよい。GaN系半導体チップは、活性領域と、当該活性領域のX‐Y平面の周囲に設けられたエッジ終端領域とを有してよい。縦型MOSFET200は、GaN系半導体チップの活性領域に設けられてよい。
【0021】
本例において、X軸とY軸とは互いに直交する軸であり、Z軸はX‐Y平面に直交する軸である。X、Y及びZ軸は、いわゆる右手系を成す。本例の表(おもて)面14及び裏面16は、X‐Y平面に平行である。本例においては、Z軸の正方向(+Z方向)を「上」と称し、Z軸の負方向(-Z方向)を「下」と称する場合がある。ただし、「上」及び「下」は、必ずしも地面に対する鉛直方向を意味しない。つまり、「上」及び「下」の方向は、重力方向に限定されない。「上」及び「下」は、領域、層、膜及び基板等における相対的な位置関係を特定する便宜的な表現に過ぎない。
【0022】
本例の縦型MOSFET200は、二重拡散MOS(DMOS:Double Diffusion Metal Oxide Semiconductor)構造を有する。本例の縦型MOSFET200は、縦型GaN系半導体装置の一例である。本例の縦型MOSFET200は、n型のGaN基板10と、GaN層20と、ゲート絶縁膜54と、ゲート電極52と、ソース電極56と、ドレイン電極58とを有する。
【0023】
本例において、GaN系半導体はGaNであるが、GaN系半導体はアルミニウム(Al)及びインジウム(In)の一以上の元素を含んでもよい。つまり、GaN系半導体の組成式は、Al及びInを微量に含んだ混晶半導体、即ちAlInGa1-x-yN(0≦x<1、0≦y<1)であってもよい。なお、本例のGaN系半導体の組成式は、AlInGa1-x-yNにおいてx=y=0としたGaNである。
【0024】
GaN系半導体に対するp型ドーパントは、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ベリリウム(Be)及び亜鉛(Zn)の一種類以上の元素であってよい。本例においては、p型ドーパントとしてMgを用いる。また、GaN系半導体に対するn型ドーパントは、Si(シリコン)、Ge(ゲルマニウム)及びO(酸素)の一種類以上の元素であってよい。本例においては、n型ドーパントとしてSiを用いる。
【0025】
また、本例において、nまたはpは、それぞれ電子または正孔が多数キャリアであることを意味する。nまたはpの右に記載した+または-について、+はそれが記載されていないものよりもキャリア濃度が高く、-はそれが記載されていないものよりもキャリア濃度が低いことを意味する。例えば、ドリフト領域22におけるn型ドーパントのドーピング濃度は、GaN基板10に比べて低いので、ドリフト領域22はn型でありGaN基板10はn型である。なお、++は、+よりもキャリア濃度が高いことを意味する。
【0026】
本例のGaN層20は、GaN基板10上に設けられたホモエピタキシャル層である。本例においては、GaN基板10とGaN層20との境界を、境界12として示す。本例において、表面14は、境界12とは反対側のGaN層20の主面である。また、裏面16は、境界12とは反対側のGaN基板10の主面である。
【0027】
GaN基板10の厚さ(Z軸方向の長さ)は、50μm以上200μm以下であってよく、より好ましくは50μm以上100μm以下であってよい。GaN基板10の厚さを薄くするほど、縦型MOSFET200のオン抵抗に占めるGaN基板10の抵抗の割合を低減することができる。なお、オン抵抗とは、縦型MOSFET200がオン状態であるときの縦型MOSFET200の抵抗を意味してよい。本件の出願時点において市販されているGaNウェハの厚さは、一般的に200μmを超えるものであり、例えば、300μm以上400μm以下の厚さを有する。それゆえ、GaN基板10の厚さ50μm以上200μm以下は、GaNウェハを研磨及びエッチングすることにより実現してよい。
【0028】
ただし、GaN基板10の厚さを薄くしすぎると、縦型MOSFET200の製造方法において、GaN基板10及びGaN層20を適切に取り扱うことが困難になる。製造方法において適切な取扱いが可能となる必要最小限のGaN基板10の厚さは、50μmであってよい。
【0029】
本例のGaN基板10は、上方領域18と下方領域19とを含む。下方領域19のn型ドーパントのドーピング濃度は、上方領域18のn型ドーパントのドーピング濃度よりも高くてよい。また、下方領域19の深さ方向におけるn型ドーパントのドーピング濃度のピークは、1E+19cm-3以上であってよい。本例のピーク濃度は、3E+20cm-3である。なお、本例の深さ方向とは、表面14から裏面16に向かうZ軸と平行な方向である。ピーク位置は、裏面16近傍の所定の深さ位置であってよい。
【0030】
市販のGaNウェハは、例えば、E+18(cm-3)のオーダーのn型ドーパントを有する。なお、本例においては、GaNウェハとGaN基板とは同じ対象を指すものとするが、GaN基板はGaNウェハの一部を切り出したものを意味してもよい。なお、Eは10の冪を意味し、E+18は1018を意味する。
【0031】
本例においては、市販のGaNウェハに対して裏面からn型ドーパントをイオン注入することにより、下方領域19を形成する。なお、E+19(cm-3)以上のオーダーのn型ドーパントを含む高濃度n型GaNウェハを用いると、GaNウェハ上に形成するホモエピタキシャル層と、GaNウェハとで格子定数のずれが生じ得る。格子定数のずれにより、ホモエピタキシャル層の品質が低下する恐れがある。これに対して、本例においてはイオン注入により下方領域19を形成するので、高濃度n型GaNウェハを用いる場合に比べて、格子定数のずれの少ない高品質なGaN層20を形成することができる。
【0032】
本例の下方領域19は、GaN基板10の予め定められた深さ位置17から裏面16までに設けられる。これに対して、上方領域18は、GaN基板10の予め定められた深さ位置17よりも上方に位置してよい。本例の上方領域18は、GaN基板10における下方領域19以外の領域である。上方領域18は、イオン注入前におけるGaN基板10のn型ドーパント濃度と同じオーダーのドーパント濃度を有してよい。縦型MOSFET200の右に、GaN基板10におけるn型ドーパントの濃度分布を示す。本例において、イオン注入前におけるGaN基板10のn型ドーパントの濃度は、1E+18(cm-3)である。上方領域18は、下方領域19を形成するべくイオン注入したn型ドーパントが一部拡散してもよい。つまり、上方領域18は、イオン注入されたn型ドーパントのテール領域を含んでもよい。
【0033】
例えば、GaN基板10の厚さが50μm以上100μm以下である場合に、下方領域19の厚さは、10nm以上1μm未満、または、より典型的には50nm以上300nm未満である。下方領域19の厚さは、GaN基板10の0.01%以上2%以下であってよく、0.02%以上1%以下であってもよい。より典型的には、下方領域19の厚さは、GaN基板10の0.05%以上0.6%以下であってよく、0.1%以上0.3%以下であってもよい。本例では、GaN基板10において下方領域19以外の部分が、上方領域18に対応する。
【0034】
一例において、抵抗率0.01ΩcmのGaN基板10の厚さが340μmの場合に、GaN基板10における抵抗率と厚さの積は0.34mΩcmとなる。これに対して、本例においては、GaN基板10の厚さを50μm以上100μm以下とし、かつ、n++型の下方領域19を設ける。これにより、GaN基板10における抵抗率と厚さの積を、例えば0.05mΩcm以上0.10mΩcm以下とすることができる。当該積の値は、縦型MOSFET200の特性オン抵抗である約1mΩcmの10%以下である。GaN基板10の厚みは、GaN基板10の抵抗率を考慮し、目標とするGaN基板10の抵抗に応じて定めてよい。
【0035】
下方領域19は、ドレイン電極58とGaN基板10との接触抵抗を下げるために用いてよい。一例において、1E+19cm-3以上のピーク濃度を有する下方領域19を設けることで、電極との接触抵抗を0.01mΩcm以下にすることができる。
【0036】
本例の縦型MOSFET200は、MIS構造を含む。本例のMIS構造は、GaN層20と、GaN層20に接するゲート絶縁膜54と、ゲート絶縁膜54に接するゲート電極52とを有する。GaN層20は、n型のドリフト領域22と、p型のベース領域24と、n型のソース領域26と、p型のコンタクト領域28とを有する。
【0037】
ベース領域24の少なくとも一部は、GaN層20の表面14に露出し、ゲート絶縁膜54と接触してよい。ベース領域24の当該少なくとも一部は、ゲート電極52直下に位置してよく、チャネル形成領域25として機能してよい。チャネル形成領域25は、ゲート電極52に所定の電圧が印加された場合(ターン・オン(ゲート・オン)時)に、電荷反転層が形成される領域である。電荷反転層が形成された状態を、縦型MOSFET200がオン状態であると称する。本例のベース領域24は、表面14から境界12よりも浅い所定の深さ位置まで設けられたウェル領域である。
【0038】
コンタクト領域28の少なくとも一部は、GaN層20の表面14に露出してよい。コンタクト領域28は、表面14においてソース電極56に接触してよい。コンタクト領域28は、表面14とソース電極56との接触抵抗を低減する機能、及び、ゲート・オフ(ターン・オフ)時の正孔引き抜き経路を提供する機能を有してよい。本例のコンタクト領域28は、表面14からベース領域24の底部よりも浅い所定の深さ位置まで設けられたウェル領域である。
【0039】
ソース領域26の少なくとも一部もまた、GaN層20の表面14に露出してよい。ソース領域26は、表面14においてゲート絶縁膜54とソース電極56とに接触してよい。ソース領域26は、電子電流にとって低抵抗な経路を提供する機能を有してよい。本例のソース領域26は、表面14からコンタクト領域28の底部よりも浅い所定の深さ位置まで設けられたウェル領域である。本例のソース領域26は、ベース領域24及びコンタクト領域28を部分的にカウンタードープすることにより形成される。
【0040】
本例のゲート電極52は、ゲート絶縁膜54上に設けられた導電層である。ゲート電極52はMIS構造における導電部の一例である。ゲート電極52は、アルミニウム(Al)で形成されてよく、ドーパントを含むポリシリコンで形成されてもよい。ゲート絶縁膜54は、二酸化シリコン(SiO)膜または酸化アルミニウム(Al)膜であってよい。ゲート端子は、ゲート電極52に電気的に接続してよい。
【0041】
本例のソース電極56は、表面14上に設けられた電極層である。ソース電極56は、表面14と接触しバリアメタル層として機能するチタン(Ti)層と、Ti層に接触するAl等の金属層との積層構造を有してよい。また、ソース電極56は、層間絶縁膜によりゲート電極52と電気的に分離されてよい。本例のドレイン電極58は、裏面16に接して裏面16の下に設けられた電極層である。ドレイン電極58は、ソース電極56と同じ材料で形成されてよい。
【0042】
図1においては、ゲート端子、ソース端子及びドレイン端子を、それぞれG、S及びDで示す。例えば、ゲート端子を介してゲート電極52に閾値電圧以上の電位が与えられると、チャネル形成領域25に電荷反転層が形成される。例えば、ドレイン電極58が所定の高電位を有し、かつ、ソース電極56が接地電位を有する場合に、チャネル形成領域25に電荷反転層が形成されると、ドレイン端子からソース端子へ電流が流れる。また、例えば、ゲート電極52に閾値電圧よりも低い電位が与えられると電荷反転層が消滅し、電流が遮断される。電荷反転層が消滅した状態を、縦型MOSFET200がオフ状態であると称してよい。このように、縦型MOSFET200は、ソース端子及びドレイン端子間における電流を制御することができる。
【0043】
本例においては図示しないが、エッジ終端領域は、例えばガードリング、フィールドプレート、リサーフ及びこれらを組み合わせた構造を有する。エッジ終端領域は、それが設けられない場合に比べて、縦型MOSFET200の逆バイアス耐圧を向上させることができる。
【0044】
図2は、GaN結晶におけるGa極性面、N極性面及びm面を示す図である。本明細書において、Ga極性面とはGaN系半導体の(0001)面を意味し、N極性面とはGaN系半導体の(000-1)面を意味する。(0001)面はGaN結晶における+c軸方向の一面であり、(000-1)面はGaN結晶における-c軸方向の面である。また、m面とは、(1-100)面である。本例では、m面により特定される複数の面のうち一つの面に斜線を付す。GaN基板10の裏面16は、Ga極性面よりも耐熱性の高い面であってよい。Ga極性面よりも耐熱性の高い面とは、例えば、N極性面またはm面である。本例において、GaN層20の表面14はGa極性面であり、GaN基板10の裏面16はN極性面である。
【0045】
本例において、耐熱性が高いとは、同じ条件でアニールした異なる結晶面の、SEM(Scanning Electron Microscope)像または光学顕微鏡での表面観察において、GaNの分解の程度が低いこと、ピット(pit)の数が少ないこと、及び、より多孔性でない(less porous)ことの一以上を満たすことを意味してよい。
【0046】
図3は、縦型MOSFET200の製造方法を示す。本例の製造方法は、GaN基板10上にGaN層20をエピタキシャル成長により形成する段階(S10)と、表面14へn型及びp型ドーパントを注入する段階(S20)と、表面14上に保護層30を形成する段階(S30)と、活性化アニール段階(S40)と、保護層30を除去する段階(S50)と、ゲート電極52、ゲート絶縁膜54及びソース電極56を形成する段階(S60)と、GaN基板10を薄化する段階(S70)と、裏面16へn型ドーパントを注入する段階(S80)と、裏面16にレーザーを照射することによりGaN基板10をアニールする段階(S90)と、ドレイン電極58を形成する段階(S100)とを有する。本例においては、小さい番号から大きい番号の順に各段階が行われる。なお、本例においては、段階S10から段階S60までがMIS構造を形成する段階に対応する。
【0047】
図4は、縦型MOSFET200の製造方法における段階S10からS60までを示す。図4の(a)は、段階S10を示す。本例の段階S10では、GaN基板10上にn型のドーパントを含むGaN層20をエピタキシャル成長により形成する。GaN層20は、有機金属成長法(MOCVD)等によりエピタキシャル形成されてよい。なお、図4においては、薄化段階(S70)前のGaN基板10の下面を下面15とし、薄化段階(S70)後のGaN基板10の裏面16と区別する。本例においては、下面15がN極性面であり、表面14がGa極性面である。なお、下面15がN極性面であれば、薄化後におけるGaN基板10の裏面16もN極性面となる。
【0048】
図4の(b)は、段階S20を示す。本例の段階S20では、開口を有するマスク材料層を用いて、n型及びp型ドーパントを順次注入する。例えば、ベース領域24に対応する開口を有するマスク材料層を用いてp型ドーパントを注入し、その後、コンタクト領域28に対応する開口を有するマスク材料層を用いてさらにp型ドーパントを注入し、さらにその後、ソース領域26に対応する開口を有するマスク材料層を用いてn型ドーパントを注入する。なお、注入領域には相対的に薄い厚さを有し且つ非注入領域には相対的に厚い厚さを有する、スルー膜を用いてもよい。図4の(a)においては、ドーパントが活性化前であることを意味するべく、ドーパントの注入領域を破線で示す。
【0049】
図4の(c)は、段階S30を示す。本例の段階S30では、表面14に接して保護層30を形成する。保護層30を設けることにより、アニール炉90を用いたアニール時に、GaN層20から窒素(N)が離脱して表面14近傍に窒素空孔が形成されることを低減することができる。保護層30は、高耐熱性(高温でも分解しにくい性質)、表面14との良好な密着性、保護層30からGaN層20へ不純物拡散が拡散しにくいこと、及び、GaN層20に対して選択的に除去可能であることのうち、1つ以上の条件を満たしてよい。本例においては、全ての条件を満たす窒化アルミニウム(AlN)層を保護層30として用いる。本例においては、GaN基板10、GaN層20及び保護層30を積層体40と称する。なお、追加的に、下面15に接する保護層30を設けてもよい。
【0050】
図4の(d)は、段階S40を示す。本例の段階S40では、S20で注入したドーパントを活性化するべく、アニール炉90を用いて積層体40をアニールする。例えば、1100℃以上1400℃以下の所定の温度で積層体40をアニールする。これにより、n型及びp型ドーパントが活性化することにより、ドナー及びアクセプタとして機能し得る。また、イオン注入により生じた欠陥をある程度回復することができる。
【0051】
図4の(e)は、段階S50を示す。本例の段階S50では保護層30を除去する。本例では、水酸化カリウム水溶液(KOHaq)を用いてウェットエッチングすることにより、GaN層20に対して保護層30を選択的に除去する。
【0052】
図4の(f)は、段階S60を示す。本例の段階S60では、ゲート電極52、ゲート絶縁膜54及びソース電極56を形成する。まず、PECVD(Plasma-Enhanced Chemical Vapor Deposition)等によりSiO膜を表面14上に堆積させる。次に、スパッタリングによりアルミニウム層をSiO膜上に堆積させる。次いで、フォトリソグラフィー及びエッチングによりAl層をパターニングし、ゲート電極52を形成する、ゲート電極52をマスクとしてSiO膜をエッチングすることで、ゲート絶縁膜54を形成することができる。次いで、ゲート絶縁膜54上に層間絶縁膜(不図示)を形成し、当該層間絶縁膜にソース領域26及びコンタクト領域28を露出させる開口を形成する。表面14及び層間絶縁膜上にTi層及びAl層を順次堆積させることによりソース電極56を形成することができる。
【0053】
図5は、縦型MOSFET200の製造方法における段階S70からS100までを示す。図5の(a)は、段階S70を示す。本例の段階S70では、GaN基板10を下面15から表面14に向かってGaN基板10を部分的に除去する。薄化は、研磨及びエッチングのいずれかまたは両方により行ってよい。本例では、境界12から下面15までの厚さが350μmであるGaN基板を、薄化により100μmとする。
【0054】
図5の(b)は、段階S80を示す。本例の段階S80では、10keV以上150keV以下の加速エネルギー及び1E+15cm-2以上1E+16cm-2のドーズ量でSiを裏面16へイオン注入する。これにより、深さ方向においてn型ドーパントの濃度分布がピークを有する下方領域19を形成する。
【0055】
図5の(c)は、段階S90を示す。本例の段階S90では、裏面16に接する保護層30を設けることなくGaN基板10をアニールする。本例の段階S90においては、パルス幅50ns、波長355nm、フルエンス(fluence、即ち、単位面積当たりのエネルギー量)1.0J/cmの線状レーザー光を裏面16に直接照射する。これにより、GaN基板10をアニールする。レーザー光を用いてアニールすることにより、MIS構造を含む表面側の構造及び領域の温度をほぼ上昇させることなく、実質的に裏面16のみの温度を上昇させることができる。
【0056】
本例の段階S90においては、線状レーザー光を裏面16上においてX軸方向に走査することにより、GaN基板10をアニールする。段階S90においては、GaN基板10を1000℃以上1350℃以下の予め定められた温度でアニールしてよく、より好ましくは、1000℃以上1250℃以下の予め定められた温度でアニールしてよい。なお、本例の段階S90におけるアニール温度は、段階S40におけるアニール温度よりも低くてもよい。本例の段階S90では、GaN基板10からの窒素の離脱を十分に低減した温度でGaN基板10をアニールすることができ、且つ、裏面16へ注入したn型ドーパントを活性化することができる。
【0057】
本例とは異なり、仮に、表面14がN極性面である場合には、裏面16がGa極性面となる。この場合に、Ga極性面である裏面16に保護層30を設けることなくレーザーアニールすると、1000℃未満の温度で裏面16から窒素が離脱し始める。それゆえ、裏面16に凹凸が生じるので、GaN基板10とドレイン電極58との接触不良が生じ得るし、加えて、接触抵抗も増加し得る。これに対して、本例の裏面16はN極性面であるので、Ga極性面に比べて耐熱性が高い。それゆえ、裏面16に保護層30を設けずにレーザーアニールをしても、n型ドーパントを活性化しつつ、かつ、窒素の離脱を低減することができる。また、本例においては裏面16に接する保護層30を設けないので、表面14近傍のMIS構造を適切に保護でき、且つ、裏面の保護層30を除去する必要もない点が有利である。
【0058】
図5の(d)は、段階S100を示す。本例の段階S100では、裏面16に接するドレイン電極58を形成する。本例では、裏面16の全体にTi層及びAl層を順次堆積させることによりドレイン電極58を形成する。これにより、縦型MOSFET200を得る。なお、本例では裏面16にレーザー光を照射した後にドレイン電極58を形成したが、他の例においては、ドレイン電極58を形成し、その後、ドレイン電極58を介してレーザー光によって裏面16をアニールしても良い。つまり、この他の例においては、段階S100の後に、段階S90を行ってもよい。この他の例の場合、レーザー光の照射が、ドレイン電極58とGaN基板10との合金化と、GaN基板10のアニールとを兼ねることができるので、段階S90の後に段階S100を行う例に比べて、より接触抵抗を下げることができる点が有利である。
【0059】
図6は、段階S90において、裏面16にレーザーを照射する様子を示す。図6は裏面16の全体を示す。A‐Aの左側は、線状レーザー光が照射された後の領域である。これに対して、A‐Aの右側は、線状レーザー光が照射される前の領域である。A‐Aの右側に、線状レーザー光がワンショットで照射される範囲R(即ち、パルス幅50nsの時間に線状レーザー光が照射される範囲)を破線で示す。本例において、範囲RのY軸方向の長さは、裏面16のY軸方向の長さに等しい。ただし、範囲RのX軸方向の長さは、裏面16のX軸方向の長さよりも十分に小さい。範囲RのX軸方向の長さの数十倍または数百倍以上の長さが、裏面16のX軸方向の長さに等しくてよい。
【0060】
本例においては、裏面16に線状レーザー光を複数回照射する。ただし、1度(ワンショット)だけ線状レーザー光を照射した後、範囲RをX軸正方向にずらして再び線状レーザー光を照射する。このように、照射の実行と照射範囲の移動とを順次繰り返すことにより、裏面16において線状レーザー光を走査する。例えば、図6に示す様に、R、R、R…Rのように順次線状レーザー光を照射する。
【0061】
本例においては、X軸方向に隣接する範囲Rは部分的に重なってよい。図6においては、隣接する範囲R同士の重なり領域に斜線を付して示す。本例においては、段階S80において、X‐Y平面方向においては、ほぼ均等にn型ドーパントが注入されている。ただし、範囲Rの重複領域では2度のレーザーアニールが行われることになるので、当該重複領域においては非重複領域に比べてキャリア濃度が高くなってよい。重複領域に対応して、裏面16のX軸方向において、下方領域19のキャリア濃度は周期的に変化してよい。本例においては、キャリア濃度が相対的に高い部分と低い部分とが、X軸方向において交互に設けられる。これにより、重複領域が設けられない場合にと比較して、裏面16近傍のn型ドーパントをより確実に活性化することができる。それゆえ、より確実に低抵抗化が担保される。
【0062】
注入したドーパントを最大限利用するべく、範囲Rの重複領域は周期的に設けられてよいが、範囲Rの重複領域は必ずしも設けられなくてもよい。つまり、各範囲RがX軸方向において所定の長さだけ互いに離間していてもよい。また、いずれの場合においても、裏面16の形態(morphology)に周期的な変化があってもよい。一例であるが、範囲Rの重複領域は、範囲Rの非重複領域に比べて凹凸の程度が高くてよい。また、線状レーザー光が少なくとも一度照射された範囲Rは、線状レーザー光が照射されていない範囲に比べて凹凸の程度が高くてよい。
【0063】
図7は、第2実施形態における縦型MOSFET300の断面を示す。第2実施形態のMIS構造は、ゲートトレンチ部250を有する。係る点が主として第1実施形態と異なる。本例のゲートトレンチ部250は、ゲート電極52、ゲートトレンチ53及びゲート絶縁膜54を有する。ゲートトレンチ53は、表面14からベース領域24の底部よりも深い位置まで設けられてよい。ゲート絶縁膜54は、ゲートトレンチ53の内壁を覆って設けられてよい。ゲート電極52は、ゲートトレンチ53の内部においてゲート絶縁膜54よりも内側に設けられてよい。ゲート絶縁膜54は、ゲート電極52とGaN層20とを絶縁してよい。ソース領域26は、ゲートトレンチ53の側壁に接して設けられてよい。本例において、ベース領域24は活性領域におけるGaN層20のX‐Y平面全体にわたって設けられてよい。チャネル形成領域25は、ベース領域24中のゲートトレンチ53の側壁に接する領域であって、ソース領域26の下方に位置してよい。その他の点は、第1実施形態と同じである。
【0064】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0065】
特許請求の範囲、明細書、及び図面中において示した装置、システム、プログラム、及び方法における動作、手順、ステップ、及び段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、及び図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順序で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0066】
10・・GaN基板、12・・境界、14・・表面、16・・裏面、15・・下面、17・・位置、18・・上方領域、19・・下方領域、20・・GaN層、22・・ドリフト領域、24・・ベース領域、25・・チャネル形成領域、26・・ソース領域、28・・コンタクト領域、30・・保護層、40・・積層体、52・・ゲート電極、53・・ゲートトレンチ、54・・ゲート絶縁膜、56・・ソース電極、58・・ドレイン電極、90・・アニール炉、200・・縦型MOSFET、250・・ゲートトレンチ部、300・・縦型MOSFET
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7