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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】ゴムホース
(51)【国際特許分類】
   F16L 11/08 20060101AFI20220809BHJP
   B32B 1/08 20060101ALI20220809BHJP
   B32B 15/14 20060101ALI20220809BHJP
   B32B 25/10 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
F16L11/08 A
B32B1/08
B32B15/14
B32B25/10
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2017233404
(22)【出願日】2017-12-05
(65)【公開番号】P2019100481
(43)【公開日】2019-06-24
【審査請求日】2020-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】与那覇 智弘
【審査官】杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-220262(JP,A)
【文献】特開平09-096381(JP,A)
【文献】特開平11-257552(JP,A)
【文献】特開2000-304165(JP,A)
【文献】国際公開第00/063601(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 11/08
B32B 1/08
B32B 15/14
B32B 25/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路を形成する内面ゴム層と、前記内面ゴム層の外周に直接配置されたブレード状に編組された有機繊維層と、前記有機繊維層の外周に直接配置されたスチールワイヤ補強層とを備えるゴムホースであって、
前記有機繊維層の編組密度が20%以上30%以下であり、
前記有機繊維層はディップ処理が施されていない、
ことを特徴とするゴムホース。
【請求項2】
前記有機繊維層は、ナイロン、ポリエステル、アラミド、綿、ビニロンから選択された材料からなる糸材、または、それらの材料からなる混紡糸を使用している、
ことを特徴とする請求項1記載のゴムホース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴムホースに関する。
【背景技術】
【0002】
油圧で作動する建設機械や工作機械は、油圧ポンプから供給される作動油を油圧ピストンや油圧モータなどのアクチュエータに供給するためのゴムホース(油圧ホース)を備えている。
ゴムホースは、流路を形成する内面ゴム層、内面ゴム層を覆う外面ゴム層、内面ゴム層と外面ゴム層との間に設けられた、スチールワイヤ補強層および中間ゴム層を備えており、ゴムホースの長手方向の端部に継手金具が取着されている。
ところで、ゴムホースの製造時、加硫前の内面ゴム層の外周に直接ワイヤ補強層を設けると、内面ゴム層にスチールワイヤ補強層のスチールワイヤが食い込み、内面ゴム層が切れてしまう。
そこで、内面ゴム層の外周にブレード状に編組された有機繊維層を直接配置し、有機繊維層の外周にスチールワイヤ補強層を直接配置させることで、内面ゴム層にスチールワイヤ補強層のスチールワイヤが食い込むことを防止するようにしたゴムホースが提供されている。
ところで、上記の有機繊維層とスチールワイヤ補強層とは接着性がないため、内面ゴム層と、スチールワイヤ補強層およびスチールワイヤ補強層の外周に配置された中間ゴム層との接着力も低下する。
そのため、以下に説明するようにバルジと呼ばれる不具合いが発生するおそれがある。
【0003】
以下バルジについて説明する。
継手金具のゴムホースへの取り付けは、継手金具のニップルの外周部とソケットの内周部との間にゴムホースの端部が挿入された状態でソケットの軸心方向に沿った加締め範囲でソケットの外周面をその半径方向内側に加締めることでなされる。
すなわち、継手金具に加締められたゴムホースの部分が半径方向に圧縮されることで反発力がゴムホースの長手方向に作用した状態となり、この反発力により内面ゴム層が有機繊維層から剥離し、あるいは、内面ゴム層と有機繊維層がスチールワイヤ補強層から剥離し、径方向内側に突出するように変形して内面ゴム層が切れるバルジと呼ばれる不具合いが生じる。
なお、ゴムホースの流路を流通する流体の温度が高温(例えば80℃以上)になるほど、内面ゴム層と有機繊維層およびスチールワイヤ補強層との接着力が低下することから、ゴムホースの流路を流通する流体の温度が高温の場合にはバルジがさらに発生しやすくなる。
【0004】
そこで、従来技術では、有機繊維層に対してディップ処理を行ない、有機繊維層と内面ゴム層との接着力、有機繊維層とスチールワイヤ補強層との接着力を向上させることで上記反発力による内面ゴム層の変形を抑制しバルジの防止を図っている。
また、特許文献1には、内面ゴム層の外周に有機繊維層が直接配置され、有機繊維層の外周に中間ゴム層が直接配置され、中間ゴム層の外周にワイヤスパイラル構造の補強層を備えるゴムホースにおいて、編組密度を45~80%とした有機繊維層にディップ処理を複数回行ない、内面ゴム層と有機繊維層との接着力を向上させることでバルジの防止を図ることが開示されている。
すなわち、上記特許文献1では、内層ゴム層の外周に直接有機繊維層が配置される構造のゴムホースのバルジを防止するために、有機繊維層にディップ処理を行なう点では従来技術と同様である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-247674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来技術、上記特許文献1では、有機繊維層にディップ処理を行なうことから、製造工程の増加およびディップ処理の材料コストの増加を招くことになるため、製造コストの低減を図る上で改善の余地がある。
本発明は前記事情に鑑み案出されたものであって、その目的は、バルジの発生を抑制しつつ製造コストの低減を図る上で有利なゴムホースを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するため、本発明は、流路を形成する内面ゴム層と、前記内面ゴム層の外周に直接配置されたブレード状に編組された有機繊維層と、前記有機繊維層の外周に直接配置されたスチールワイヤ補強層とを備えるゴムホースであって、前記有機繊維層の編組密度が10%以上40%以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、内面ゴム層の外周に直接配置されたブレード状に編組された有機繊維層の編組密度を10%以上40%以下とすることで、スチールワイヤ補強層が加硫前の内面ゴム層に食い込むことで製造不良が発生することを抑制するできることは無論のこと、ゴムホースの加硫工程時に内面ゴム層のゴムが有機繊維層の網目から吹き出してスチールワイヤ補強層に接着することで内面ゴム層と有機繊維層とスチールワイヤ補強層との接着力が向上する。
そのため、継手金具に加締められたゴムホースの内面ゴム層が切れるバルジの発生を抑制できると共に、有機繊維層のディップ処理を省略できるので製造コストの低減を図る上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態のゴムホースの一部を切り欠いて示す斜視図である。
図2】実施の形態のゴムホースをその軸線と直交する方向で破断した断面図である。
図3】実験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、実施の形態に係るゴムホースについて図面を参照して説明する。
図1図2に示すように、ゴムホース10は、内面ゴム層12と、外面ゴム層14と、それら内面ゴム層12と外面ゴム層14との間に配置された有機繊維層16、スチールワイヤ補強層18、中間ゴム層20とを備えている。
内面ゴム層12は、流体の流路を形成するものである。
有機繊維層16は、内面ゴム層12の外周に直接配置されブレード状に編組されている。
有機繊維層16は、編組密度が10%以上40%以下である。
有機繊維層16は、ナイロン、ポリエステル、アラミド、綿、ビニロンから選択された材料からなる糸材、または、それらの材料からなる混紡糸を使用している。
有機繊維層16の形成は、鉄製のマンドレルの外周に内面ゴム層12を形成したのち、内面ゴム層12の外周に糸材をブレード状に編組することで行っている。
【0011】
スチールワイヤ補強層18は少なくとも有機繊維層16の外周に直接配置された1つのスチールワイヤ補強層18を備えている。
本実施の形態では、有機繊維層16の外周に直接配置された第1スチールワイヤ補強層18Aに加え、第2スチールワイヤ補強層18B、第3スチールワイヤ補強層18C、第4スチールワイヤ補強層18Dの合計4層のスチールワイヤ補強層18が設けられており、それら第1~第4スチールワイヤ補強層18A~18Dは、合計3層の中間ゴム層20である第1~第3中間ゴム層20A~20Cを介して設けられている。
第1~第4スチールワイヤ補強層18A~18Dは、スチールワイヤをスパイラル状に巻き付けるようにして形成されており、第1、第3スチールワイヤ補強層18A、18Cのスパイラル方向と、第2,第4スチールワイヤ補強層18B、18Dのスパイラル方向とは、それぞれホース軸線方向に対して逆方向に巻回され、各スチールワイヤ補強層18間でスチールワイヤが互いに交差するように配置されている。
【0012】
具体的に説明すると、第1中間ゴム層20Aは、第1スチールワイヤ補強層18Aの外周に直接配置されている。
第2スチールワイヤ補強層18Bは、第1中間ゴム層20Aの外周に直接配置されている。
第2中間ゴム層20Bは、第2スチールワイヤ補強層18Bの外周に直接配置されている。
第3スチールワイヤ補強層18Cは、第2中間ゴム層20Bの外周に直接配置されている。
第3中間ゴム層20Cは、第3スチールワイヤ補強層18Cの外周に直接配置されている。
第4スチールワイヤ補強層18Dは、第3中間ゴム層20Cの外周に直接配置されている。
外面ゴム層14は、第4スチールワイヤ補強層18Dの外周に直接配置されている。
内面ゴム層12の材料は、NBR:ニトリルゴムである。
中間ゴム層20の材料は、NBR:ニトリルゴムである。
外面ゴム層14の材料は、CR:クロロプレンゴムである。
また、各スチールワイヤ補強層18のスチールワイヤの表面はブラス(真鍮)めっきされ、加硫工程時における内面ゴム層12、中間ゴム層20、外面ゴム層14との接着性が高められている。
【0013】
次に作用効果について説明する。
本実施の形態では、内面ゴム層12の外周に直接配置されたブレード状に編組された有機繊維層16の編組密度を10%以上40%以下とした。
したがって、ゴムホース10の製造時、有機繊維層16の外周に直接配置された第1スチールワイヤ補強層18が加硫前の内面ゴム層12に食い込むことで製造不良が発生することを抑制する上で有利となる。
また、ゴムホース10の加硫工程時に内面ゴム層12のゴムが有機繊維層16の網目から吹き出して第1スチールワイヤ補強層18Aに接着することで、内面ゴム層12と有機繊維層16と第1スチールワイヤ補強層18Aとの接着力が向上する。
そのため、内面ゴム層12と有機繊維層16と第1スチールワイヤ補強層18Aとが強固に接着されているので、継手金具に加締められたゴムホース10の部分が半径方向に圧縮されることで反発力がゴムホース10の長手方向に作用した状態となっても、内面ゴム層12が有機繊維層16から剥離し、あるいは、内面ゴム層12と有機繊維層16がスチールワイヤ補強層18から剥離し、径方向内側に突出するように変形して内面ゴム層12が切れるバルジの発生を抑制する上で有利となる。
そのため、従来技術、特許文献1のように有機繊維層16にディップ処理を行なうことなく、バルジの発生を抑制できるため、製造工程の簡素化、ディップ処理に必要な材料コストの低減を図れ、ゴムホース10の製造コストの低減を図る上で有利となる。
【0014】
なお、有機繊維層16の編組密度が10%を下回ると、有機繊維層16の網目の寸法が大きくなりすぎるため、ゴムホース10の加硫工程時に有機繊維層16の網目から吹き出した内面ゴム層12のゴムによって内面ゴム層12と第1スチールワイヤ補強層18Aとの接着力を確保するできる反面、ゴムホース10の製造時、第1スチールワイヤ補強層18Aが加硫前の内面ゴム層12に食い込みやすくなり、ゴムホース10の製造不良を防止する上で不利となる。
また、有機繊維層16の編組密度が40%を上回ると、有機繊維層16の網目の寸法が小さくなりすぎるため、ゴムホース10の製造時、第1スチールワイヤ補強層18Aが加硫前の内面ゴム層12に食い込むことを抑制できる反面、ゴムホース10の加硫工程時に有機繊維層16の網目から内面ゴム層12のゴムが吹き出しにくくなり、内面ゴム層12と第1スチールワイヤ補強層18Aとの接着力を確保する上で不利が生じ、バルジを抑制する上で不利となる。
なお、有機繊維層16の編組密度を20%以上30%以下とすると、編組密度の製造時のばらつきが生じた場合であっても、編組密度を10%以上40%以下の範囲内とする上で有利となる。
【0015】
次に図3を参照して実施例、比較例、従来例について説明する。
実施例1~6、比較例1~3、従来例1、2のゴムホース10は、それらの基本的な構造、材料、各部の寸法が以下のように共通となるように作成し、スチールワイヤ補強層18および中間ゴム層20の層数は前述した実施の形態と同様とした。
また、後述するように、有機繊維層16の編組密度、ディップ処理の有無および回数、有機繊維層16の外周に配置する層間ゴム層の有無の条件を変更して実施例1~6、比較例1~3、従来例1、2のゴムホース10を作成した。
(ゴムホース10)
内面ゴム層12の材料:NBR:ニトリルゴム
内面ゴム層12の厚さ:1.8mm
内面ゴム層12の内径:19mm
有機繊維層16の材料:ポリエステル
有機繊維層16の厚さ:0.3mm
第1~第4スチールワイヤ補強層18の材料:ブラスメッキしたスチールワイヤ
第1~第4スチールワイヤ補強層18を構成するスチールワイヤの直径:0.5mm
第1~第3中間ゴム層20の材料:NBR:ニトリルゴム
第1~第3中間ゴム層20の厚さ:0.3mm
外面ゴム層14の材料:CR:クロロプレンゴム
外面ゴム層14の厚さ:1.2mm
層間ゴム層の材料:NBR:ニトリルゴム
層間ゴム層の厚さ:0.3mm
【0016】
評価項目は以下の4つとした。
(1)スチールワイヤ補強層18の内面ゴム層12への食い込みの有無
鉄製のマンドレルの外周に内面ゴム層12を形成したのち、内面ゴム層12の外周に糸材をブレード状に編組して有機繊維層16を形成し、有機繊維層16の外周に第1スチールワイヤ補強層18Aを形成したときに第1スチールワイヤ補強層18Aの内面ゴム層12への食い込みが発生するか否かを目視にて確認した。
【0017】
(2)バルジ発生の有無
両端に継手金具が加締められたゴムホース10の内部に試験油を封入し、両端の継手金具を密栓し、120℃雰囲気下の恒温槽内に放置(168時間)したのち、ゴムホース10内部の試験油を除去し、バルジの有無を目視にて確認した。
【0018】
(3)内面ゴム層12の接着力
JIS K6330-6「ゴム及びプラスチックホース-第6部:層間はく離強さの求め方」に基づきタイプ5の試験片を用いて内面ゴム層12と共に有機繊維層16を第1スチールワイヤ補強層18Aから剥離したときの層間はく離強さを内面ゴム層12の接着力として測定した。
【0019】
(4)製造工数
比較例1の製造工程を基準として製造工数が減ったか増えたかを評価した。
【0020】
(実施例1)
実施例1は、有機繊維層16の編組密度を10%とし、請求項1の10%以上40%以下の規定を満たすものである。
また、有機繊維層16のディップ処理は行わない。
また、有機繊維層16の外周に層間ゴム層を形成しない。
【0021】
(実施例2)
実施例2は、有機繊維層16の編組密度を20%とし、請求項1の10%以上40%以下の規定を満たすものである。
また、有機繊維層16のディップ処理は行わない。
また、有機繊維層16の外周に層間ゴム層を形成しない。
【0022】
(実施例3)
実施例3は、有機繊維層16の編組密度を30%とし、請求項1の10%以上40%以下の規定を満たすものである。
また、有機繊維層16のディップ処理は行わない。
また、有機繊維層16の外周に層間ゴム層を形成しない。
【0023】
(実施例4)
実施例4は、有機繊維層16の編組密度を40%とし、請求項1の10%以上40%以下の規定を満たすものである。
また、有機繊維層16のディップ処理は行わない。
また、有機繊維層16の外周に直接層間ゴム層を形成しない。
【0024】
(実施例5)
実施例5は、有機繊維層16の編組密度を10%とし、請求項1の10%以上40%以下の規定を満たすものである。
また、有機繊維層16に1回のディップ処理を行った。
ディップ処理は、濃度3%のスチレン・ブタジエン系ラテックスからなるディップ液に一回浸漬することで行った。
また、有機繊維層16の外周に層間ゴム層を形成しない。
【0025】
(実施例6)
実施例6は、有機繊維層16の編組密度を10%とし、請求項1の10%以上40%以下の規定を満たすものである。
また、有機繊維層16のディップ処理は行わない。
また、有機繊維層16の外周に直接層間ゴム層を形成した。
【0026】
(比較例1)
比較例1は、有機繊維層16の編組密度を60%とし、請求項1の10%以上40%以下の規定を上回るものである。
また、有機繊維層16に1回のディップ処理を行った。
ディップ処理は、濃度3%スチレン・ブタジエン系ラテックスからなるディップ液に一回浸漬することで行った。
また、有機繊維層16の外周に直接層間ゴム層を形成した。
【0027】
(比較例2)
比較例2は、有機繊維層16の編組密度を50%とし、請求項1の10%以上40%以下の規定を上回るものである。
また、有機繊維層16のディップ処理は行わない。
また、有機繊維層16の外周に層間ゴム層を形成しない。
【0028】
(比較例3)
比較例3は、有機繊維層16の編組密度を5%とし、請求項1の10%以上40%以下の規定を下回るものである。
また、有機繊維層16のディップ処理は行わない。
また、有機繊維層16の外周に層間ゴム層を形成しない。
【0029】
(従来例1)
従来例1、2は、有機繊維層16の編組密度を特許文献1(特開2003-247674号公報)における範囲内である45%以上80%以下の範囲内に設定したものであり、ゴムホース10の構造自体は実施例1~4と同じである。
従来例1は、有機繊維層16の編組密度を45%とし、請求項1の10%以上40%以下の規定を上回るものである。
また、有機繊維層16に2回のディップ処理を行った。
ディップ処理は、濃度3%、6%のスチレン・ブタジエン系ラテックスからなるディップ液にそれぞれ一回ずつ浸漬することで行った。
また、有機繊維層16の外周に層間ゴム層を形成しない。
【0030】
(従来例2)
従来例1は、有機繊維層16の編組密度を70%とし、請求項1の10%以上40%以下の規定を上回るものである。
また、従来例1と同様に2回のディップ処理を行った。
また、有機繊維層16の外周に層間ゴム層を形成しない。
【0031】
次に、実施例、比較例、従来例の評価について説明する。
なお、以下では、比較例1を比較対象として説明する。
実施例1~6は、何れも第1スチールワイヤ補強層18Aの内面ゴム層12への食い込みが無い。
実施例1~6は、何れもバルジが発生していない。
実施例1~6は、何れも比較例1に対して内面ゴム層12の内面ゴム層12の接着力が優れている。
実施例1~4は、何れもディップ処理を行なわず、かつ、層間ゴム層を設けないため、比較例1に対して製造工数が大幅に低減されている。
実施例5,6は、ディップ処理の実施、層間ゴム層の形成の何れか一方を省くため、比較例1に対して製造工数を低減する効果が低下している。
【0032】
比較例1は、有機繊維層16の編組密度が60%であり、請求項1の10%以上40%以下の規定を上回るため、有機繊維層16の網目の大きさが請求項1の規定範囲よりも小さく、内面ゴム層12が網目から吹き出しにくい。
一方、ディップ処理を行ない、層間ゴム層を形成したので、内面ゴム層12の接着力がある程度確保されている。
そのため、スチールワイヤ補強層18の内面ゴム層12への食い込みは無く、バルジも発生していない。
【0033】
比較例2は、有機繊維層16の編組密度が50%であり、請求項1の10%以上40%以下の規定を上回るため、有機繊維層16の網目の大きさが請求項1の規定範囲よりも小さく、内面ゴム層12が網目から吹き出しにくい。
また、ディップ処理を行なわず、層間ゴム層も形成していないので、内面ゴム層12の接着力が比較例1よりも弱い。
そのため、スチールワイヤ補強層18の内面ゴム層12への食い込みは無いものの、バルジが発生しており、また、バルジの発生により内面ゴム層12の接着力が評価外となっている。
【0034】
比較例3は、有機繊維層16の編組密度が5%であり、請求項1の10%以上40%以下の規定を大きく下回るため、有機繊維層16の網目の大きさが非常に大きい。
また、ディップ処理を行なわず、層間ゴム層も形成していない。
有機繊維層16の網目の大きさが非常に大きいため、第1スチールワイヤ補強層18Aが内面ゴム層12に食い込むことから、ホース製造が出来ないため、内面ゴム層12の接着力が評価外となっている。
【0035】
従来例1、2は、有機繊維層16の編組密度が45%、70%であり、請求項1の10%以上40%以下の規定を上回っているため、有機繊維層16の網目の網目が小さくゴムホース10の加硫工程時に有機繊維層16の網目から吹き出した内面ゴム層12のゴムによって内面ゴム層12と第1スチールワイヤ補強層18Aとの接着力を確保しにくい。
そのため、従来例1、2の何れも2回のディップ処理を行っているにも拘わらず、内面ゴム層12の接着力が実施例1~4の何れに対しても弱いものとなっており、特に従来例1ではバルジの発生の前兆現象である内面ゴム層12の膨れが認められ、バルジの発生を抑制する上で不利である。
また、2回のディップ処理を要するため、製造コストの低減を図る上で不利である。
【0036】
以上説明したように、比較例1~3、従来例1、2に比較して、実施例1~6は、何れも第1スチールワイヤ補強層18Aの内面ゴム層12への食い込みが無く、バルジが発生しておらず、製造工数を低減する上で有利であることが確認された。
【符号の説明】
【0037】
10 ゴムホース
12 内面ゴム層
14 外面ゴム層
16 有機繊維層
18 スチールワイヤ補強層
18A 第1スチールワイヤ補強層
18B 第2スチールワイヤ補強層
18C 第3スチールワイヤ補強層
18D 第4スチールワイヤ補強層
20A 第1中間ゴム層
20B 第2中間ゴム層
20C 第3中間ゴム層
図1
図2
図3