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特許7119381地中構造物撤去装置及びこれを用いた地中構造物撤去方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】地中構造物撤去装置及びこれを用いた地中構造物撤去方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 9/02 20060101AFI20220809BHJP
   E02D 13/08 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
E02D9/02
E02D13/08
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018007009
(22)【出願日】2018-01-19
(65)【公開番号】P2019124092
(43)【公開日】2019-07-25
【審査請求日】2020-09-25
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000230788
【氏名又は名称】日本基礎技術株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新町 修一
(72)【発明者】
【氏名】奥野 倫太郎
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-057749(JP,A)
【文献】特開2003-064975(JP,A)
【文献】特開2003-214078(JP,A)
【文献】特開昭64-048987(JP,A)
【文献】特開2016-176263(JP,A)
【文献】特開2005-307537(JP,A)
【文献】米国特許第05772363(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 9/02
E02D 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中構造物を把持する複数の把持部材と、
前記複数の把持部材を各々回動させるアクチュエータと、
回転ロッドに固定される一端部とは反対側となる他端部に、前記複数の把持部材が各々軸着され、前記回転ロッドの回転時に前記複数の把持部材とともに回転して、前記複数の把持部材により把持した状態で前記地中構造物を捩ることが可能な本体部材と、
前記本体部材に固定され、前記複数の把持部材及び前記アクチュエータを被覆するケーシングと、
前記ケーシングの下端部に所定角度間隔を空けて設けられる削孔ビットと、
を有し、
前記ケーシングは、前記本体部材の回転時に、前記複数の把持部材の各々に側方から当接して、前記複数の把持部材の捻れを防止する捻れ防止部材を有する
ことを特徴とする地中構造物撤去装置。
【請求項2】
請求項1に記載の地中構造物撤去装置において、
前記複数の把持部材に把持される前記地中構造物は、前記回転ロッドの正逆回転により、ねじ切られる
ことを特徴とする地中構造物撤去装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の地中構造物撤去装置において、
前記アクチュエータは、前記複数の把持部材の各々と前記本体部材との間に配置されて、前記複数の把持部材の各々を個別に回動させる油圧シリンダである
ことを特徴とする地中構造物撤去装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の地中構造物撤去装置において、
前記複数の把持部材は、前記地中構造物の側面を切り込む切削刃を有する
ことを特徴とする地中構造物撤去装置。
【請求項5】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の地中構造物撤去装置において、
前記回転ロッドは、複数段階に伸縮可能なテレスコピック方式のケリーバである
ことを特徴とする地中構造物撤去装置。
【請求項6】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の地中構造物撤去装置において、
前記回転ロッドは、掘削機が有する全周回転装置の駆動により回転する
ことを特徴とする地中構造物撤去装置。
【請求項7】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の地中構造物撤去装置を地盤に生成された掘削穴に挿入する挿入工程と、
前記地中構造物撤去装置が有する複数の把持部材により前記掘削穴の底面から露呈する地中構造物を把持する把持工程と、
前記複数の把持部材により前記地中構造物を把持した状態で、前記地中構造物撤去装置を正逆回転させて、前記複数の把持部材が保持した前記地中構造物をねじ切る切断工程と、
前記地中構造物撤去装置を前記掘削穴から引き上げて、前記切断工程によりねじ切られた前記地中構造物を地盤表面に排出する排出工程と、
を有することを特徴とする地中構造物撤去方法。
【請求項8】
請求項に記載の地中構造物撤去方法において、
前記挿入工程は、前記地中構造物撤去装置が下端部に固定されたテレスコピック方式のケリーバを下方に伸長させる工程を含み、
前記排出工程は、伸長した前記ケリーバを縮退させて前記地中構造物撤去装置を前記掘削穴から引き上げる工程を含む
ことを特徴とする地中構造物撤去方法。
【請求項9】
請求項又は請求項に記載の地中構造物撤去方法において、
前記把持工程は、前記複数の把持部材が有する切削刃により前記地中構造物の側面に切り込む工程を含む
ことを特徴とする地中構造物撤去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中に埋没されている、例えば既設杭などの既設構造物を撤去する際に用いる地中構造物撤去装置及びこれを用いた地中構造物撤去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
既存の建築物を建て替える場合、建築物の解体とともに建築物の基礎に埋没された既成基礎や既成杭などの地中構造物を撤去する作業が行われる。例えば既成基礎を撤去する方法については、例えば、特許文献1にて考案されている。この特許文献1では、据え置き式の全周回転装置により保持されたケーシングを用いて、既成基礎を貫通するまで掘削し、ケーシングの内部にクレーンなどにより吊り下げられた吊上げ装置を挿入し、挟持アームを拡開させて内張り状に保持することで、吊上げ装置を固定する。この状態で、ケーシングに回転と押し込みの推進力を付与することで、挟持アームの先端に設けた切削ビットにより既成基礎の外周部を切削し掴み代を形成する。その後、拡開した挟持アームを閉じる方向に回動させることにより既成杭の上端部を掴み、吊下げ装置を引き上げることで、既成基礎を地上に排出する。
【0003】
また、既成杭を撤去する方法については、例えば特許文献2にて考案されている。特許文献2では、回転圧入手段により筒状ケーシングを地盤に回転圧入し、既設杭の上部側を筒状ケーシングにより同心状に囲繞した後、筒状ケーシング内部で既設杭の頂端よりも上位側にある土砂をハンマーグラブなどで地上に排出する。次に、クレーンなどにより吊り下げられた地中障害物撤去装置を、該装置が有するグラブシェルを非切断姿勢の状態で筒状ケーシング内に挿入し、地中障害物撤去装置を筒状ケーシングに固定する。そして、筒状ケーシングを再度回転圧入した後、地中障害物撤去装置のグラブ保持筒に入り込む既設杭の上部側が所定長さに達した段階で、非切断姿勢にあるグラブシェルを内側に回動させてゆき、グラブシェルの先端に有する切断刃により既設杭を外周面側から切り込んでいき、最終的に既設杭を切断する。その後、筒状ケーシングの回転圧入を停止し、グラブシェルの筒状ケーシングへの固定を解除し、グラブシェルを筒状ケーシングから引き上げることで、グラブ保持筒に保持された既成杭の上部の切断部分を地上に排出する。
【0004】
また、既設杭を撤去する方法としては、上述した特許文献2の他に、特許文献3が挙げられる。特許文献3では、地盤への建て込み時にケーシングの内周面の下端部に設置した切断装置により既成杭の鉄筋カゴの主筋群を切断した後、ケーシング内部に把持装置を挿入する。把持装置により既成杭の上部を把持した後、把持装置をケーシングに固定し、ケーシングを回転させる。これにより、ケーシングの回転により把持装置を回転させて、把持装置に把持された既成杭をねじ切る。なお、把持装置を引き上げることで、把持装置が把持している既成杭のねじ切られた部分が地上に排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-132218号公報
【文献】特開2016-176263号公報
【文献】特開2013-253455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示される方法では、既設構造物が既設基礎の場合に有効な方法であるが、既設構造物が例えば地盤に固着安定されている既設杭の場合には、深度が深く、且つ既設杭を一度に引き上げて取り出すことが困難であり、既設杭を撤去する方法としては好適ではない。
【0007】
また、特許文献2に開示される方法では、既設杭を短く切断して地上に搬出することから、特許文献1に開示される方法よりも既設杭を撤去する方法としては適している。しかしながら、特許文献2に開示される方法では、グラブシェルを内側に回動させながら既設杭を切断する時に、グラブシェルに設けた切断刃が既設杭の鉄筋を切断しきれない場合がある。このような場合には、一旦、装置をケーシングから取り出し、切断されていない鉄筋を別の装置を用いて切断する必要がある。その際に、グラブシェルを閉じ状態から開き状態に回動させる必要があるが、掘削時に発生する土砂やコンクリートなどにより、グラブシェルを閉じ状態から開き状態に回動させることが困難となる場合もある。その結果、既設杭の撤去作業の効率が低下するという問題がある。
【0008】
また、特許文献3に開示される方法では、地盤に回転圧入されたケーシングの内部に既設杭が所定長さ入り込んだことを受けて、ケーシングを高速回転させながらケーシングの内部に設けた切断装置の削孔ビットを中心側に延出させて、既設杭が有する鉄筋(主筋)を横切断する。しかしながら、ケーシングの回転圧入は、既設杭を目視確認した上での作業ではなく、構造図(設計図面)などを参照して施工されるため、回転圧入されるケーシングの長手方向に直交する断面における中心と、既設杭の延出方向に直交する断面における中心とが一致していないこともあり、このような場合には、既設杭が有する鉄筋を横切断することができない場合もある。
【0009】
さらに、これら特許文献で開示される方法では、回転圧入されたケーシングに吊下げ装置、構造物撤去装置、把持装置などを挿入し、ケーシングに対して固定する作業や、ケーシングへの固定を解除する作業を要することから撤去作業が長期化しやすい。同時に、ケーシングを回転圧入する全周回転装置の他に、クレーンを設置するスペースを確保する必要がある。
【0010】
本発明は、地中構造物を効率良く撤去することができるようにした地中構造物撤去装置及びこれを用いた地中構造物撤去方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するために、本発明の地中構造物撤去装置は、地中構造物を把持する複数の把持部材と、前記複数の把持部材を各々回動させるアクチュエータと、回転ロッドに固定される一端部とは反対側となる他端部に、前記複数の把持部材が各々軸着され、前記回転ロッドの回転時に前記複数の把持部材とともに回転して、前記複数の把持部材により把持した状態で前記地中構造物を捩ることが可能な本体部材と、前記本体部材に固定され、前記複数の把持部材及び前記アクチュエータを被覆するケーシングと、前記ケーシングの下端部に所定角度間隔を空けて設けられる削孔ビットと、を有し、前記ケーシングは、前記本体部材の回転時に、前記複数の把持部材の各々に側方から当接して、前記複数の把持部材の捻れを防止する捻れ防止部材を有することを特徴とする。
【0012】
なお、前記複数の把持部材に把持される前記地中構造物は、前記回転ロッドの正逆回転により、ねじ切られることが好ましい。
【0013】
また、前記アクチュエータは、前記複数の把持部材の各々と前記本体部材との間に配置されて、前記複数の把持部材の各々を個別に回動させる油圧シリンダであることを特徴とする。
【0014】
なお、前記複数の把持部材は、前記地中構造物の側面を切り込む切削刃を有することが好ましい。
【0017】
また、前記回転ロッドは、複数段階に伸縮可能なテレスコピック方式のケリーバであることが好ましい。この場合、前記回転ロッドは、掘削機が有する全周回転装置の駆動により回転することが好ましい。
【0018】
本発明の地中構造物撤去方法の一実施形態は、上記記載の地中構造物撤去装置を地盤に生成された掘削穴に挿入する挿入工程と、前記地中構造物撤去装置が有する複数の把持部材により前記掘削穴の底面から露呈する地中構造物を把持する把持工程と、前記複数の把持部材により前記地中構造物を把持した状態で、前記地中構造物撤去装置を正逆回転させて、前記複数の把持部材が保持した前記地中構造物をねじ切る切断工程と、前記地中構造物撤去装置を前記掘削穴から引き上げて、前記切断工程によりねじ切られた前記地中構造物を地盤表面に排出する排出工程と、を有することを特徴とする。
【0019】
また、前記挿入工程は、前記地中構造物撤去装置が下端部に固定されたテレスコピック方式のケリーバを下方に伸長させる工程を含み、前記排出工程は、伸長した前記ケリーバを縮退させて前記地中構造物撤去装置を前記掘削穴から引き上げる工程を含むことを特徴とする。
【0020】
また、前記把持工程は、前記複数の把持部材が有する切削刃により前記地中構造物の側面に切り込む工程を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、地中構造物を効率良く撤去することが可能となり、地中構造物の撤去作業の工期を短縮することが可能となる。また、本発明によれば、全周回転装置の他に、クレーンを設置するスペースを確保する必要がなくなるため、狭い作業領域であっても効率良く地中構造物を撤去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】第1実施形態の構造物撤去装置を搭載した掘削機の外観を示す図である。
図2】構造物撤去装置の構成の一例を示す斜視図である。
図3】(a)グラブシェル対が開き状態にあるとき、(b)グラブシェル対が閉じ状態にあるとき、(c)回転中心CLから距離L1ずれた位置にある地中構造物を把持したグラブシェル対を示す斜視図である。
図4】地中構造物撤去装置のケーシングの開口近傍を下方から視認した場合の一例を示す図である。
図5】地盤の穿孔時を示す正面図である。
図6】地盤に生成した掘削穴に構造物撤去装置を挿入した状態を示す図である。
図7】(a)構造物撤去装置を掘削穴に挿入した状態、(b)構造物撤去装置により地中構造物を把持した状態、(c)ねじ切った地中構造物を掘削穴から排出する状態を示す図である。
図8】全周回転装置の下部に設けた固定具にケーシングを取り付けた状態で、地盤を穿孔する場合の一例を示す図である。
図9】第2実施形態の構造物撤去装置の正面、側面及び底面を示す図である。
図10】(a)構造物撤去装置を掘削穴に挿入した状態、(b)構造物撤去装置により地中構造物を把持した状態、(c)ねじ切った地中構造物を掘削穴から排出する状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本実施形態について、図面を用いて説明する。
【0024】
<第1実施形態>
図1に示すように、掘削機10は、下部走行体11aと上部旋回体(以下、車体と称する)11bとからなる自走式のベースマシン11と、車体11bの前後方向に回動可能な短尺のリーダ12とを有する。リーダ12は、長手方向の略中央部分を、車体11bの前部に有するフロントブラケット13に軸着される。また、リーダ12は、フロントブラケット13の上部に軸支された油圧シリンダ(以下、起伏シリンダと称する)14の先端部を、長手方向の上端部に後方から軸着する。したがって、リーダ12は、起伏シリンダ14の伸縮により、フロントブラケット13に軸着された箇所を中心として立設又は倒伏される。図1では、リーダ12が地盤に垂直に立設された状態を示す。この状態においては、リーダ12の下端部が地盤表面近傍に位置する。なお、起伏シリンダ14の伸縮させることでリーダ12を立設又は倒伏させているが、リーダ12を立設又は倒伏させることが可能な機構であれば、起伏シリンダ14に限定される必要はない。
【0025】
全周回転装置15は、ケリーバ16などを保持(チャック)して、保持したケリーバ16を回転させながら下方に押し込む装置である。全周回転装置15は、リーダ12に移動可能に設置される。全周回転装置15は、リーダ12の上端に軸着された油圧シリンダ(以下、昇降シリンダと称する)17の下端部を軸着する。したがって、全周回転装置15は、昇降シリンダ17の伸縮によってリーダ12の長手方向に沿って移動する。符号18は、ケリーバ16を保持する回転アダプタであり、符号19は、ケーシングを用いた掘削を行う際に、ケーシングを接続するドレッテラーと呼ばれる固定具である。なお、昇降シリンダ17を用いて全周回転装置15をリーダ12の長手方向に移動させているが、全周回転装置15をリーダ12の長手方向に沿って移動させることが可能な機構であれば、昇降シリンダ17に限定される必要はない。
【0026】
全周回転装置15に保持されるケリーバ(請求項に記載の回転ロッドに相当)16は、複数段の分割ケリーバのうち、内側の分割ケリーバから伸長及び縮退させることで、ケリーバの長さを段階的に変更することができるテレスコピックタイプのケリーバである。以下、分割ケリーバのうち、最内側に位置する分割ケリーバをインナーケリーバ16a、最も外側に位置する分割ケリーバをアウターケリーバと称する。ケリーバが有する分割ケリーバのうち、インナーケリーバ16aは、掘削を行うオーガドリルやコアバレルなどの掘削具の他、本発明の構造物撤去装置30を固定する。
【0027】
マストヘッド20は、立設状態のリーダ12の上端側に設けられる。マストヘッド20は、車体11bが有するウインチ25,26から繰り出された吊下げワイヤを巻き掛ける。ウインチ25は、繰り出された吊下げワイヤが全周回転装置15に保持されるケリーバ16のインナーケリーバ16aに取り付けられる。したがって、ウインチ25は、吊下げワイヤの繰り出し及び巻き取りにより、ケリーバ16のインナーケリーバ16aを昇降させる。また、ウインチ26は、繰り出された吊下げワイヤが全周回転装置15に保持されるケリーバ16のアウターケリーバに取り付けられる。したがって、ウインチ26は、吊下げワイヤの繰り出し及び巻き取りにより、ケリーバ16のアウターケリーバを昇降させる。なお、アウターケリーバの昇降により、ケリーバ16全体が昇降する。
【0028】
図2に示すように、構造物撤去装置30は、装置本体(請求項に記載の本体部材に相当)31、グラブシェル対(請求項に記載の把持部材に相当)32、油圧シリンダ(請求項に記載のアクチュエータに相当)34,35、ケーシング36などを有する。装置本体31は、ケリーバ16のインナーケリーバ16aを挿入固着する筒状の接続部31aを装置本体31の長手方向における一端部に有する。装置本体31は、装置本体31の長手方向において、接続部31aが設けられる一端部とは反対側となる他端部にグラブシェル対32のグラブシェル37,38を各々軸着する。また、装置本体31は、長手方向の略中央となる外周面に油圧シリンダ34,35を180°間隔を空けて軸着する。なお、図2において、符号31bは、油圧シリンダ34を軸着する際に用いるピン39を固定する軸受け部であり、符号31cは、油圧シリンダ35を軸着する際に用いるピン40を固定する軸受け部である。
【0029】
グラブシェル対32は、2つのグラブシェル37,38を有する。グラブシェル対32は、閉じ動作時に対象となる物体を把持し、開き動作時に物体の把持を解除する。グラブシェル対32の各グラブシェル37,38は、油圧シリンダ34,35の伸縮により各々開閉して、その閉じ動作時に目的の対象物を把持(挟持)する。なお、グラブシェル対32におけるグラブシェルの数を2としているが、3以上であってもよい。
【0030】
グラブシェル37は、閉じ動作時にグラブシェル38と対峙する一側面が略円弧状に切り欠かれた略三角筒状の部材である。言い換えれば、グラブシェル37は凹状に湾曲した一側面を有し、この一側面が閉じ動作時にグラブシェル38と対峙する。グラブシェル37は、閉じ動作時にグラブシェル38と対峙する一側面及び側面37aに跨った凹部41と、側面37a及び側面37bに跨った凹部42とを有する。例えば凹部41は、装置本体31の軸着片31dを挿入する。グラブシェル37と、装置本体31の軸着片31dとは、装置本体31の軸着片31dを凹部41に挿入した状態でピン43を用いて軸着される。また、凹部42は、油圧シリンダ34のロッド34bの先端部を挿入する。グラブシェル37と、油圧シリンダ34のロッド34bの先端部とは、油圧シリンダ34のロッド34bの先端部を凹部42に挿入した状態でピン44を用いて軸着される。なお、符号37dは、グラブシェル37を閉じ動作したときに対象物に当接される当接面である。
【0031】
グラブシェル38は、グラブシェル37と同一の形状の部材である。グラブシェル38は、グラブシェル37と同様に、2つ凹部45,46を有する。例えば凹部45は、装置本体31の軸着片31e(図4参照)を挿入する。グラブシェル38と、装置本体31の軸着片31eとは、装置本体31の軸着片31eを凹部45に挿入した状態でピン47を用いて軸着される。また、凹部46は、油圧シリンダ35のロッド35bの先端部を挿入する。グラブシェル38と、油圧シリンダ35のロッド35bの先端部とは、油圧シリンダ35のロッド35bの先端部を凹部46に挿入した状態でピン48を用いて軸着される。なお、符号38dは、グラブシェル38を閉じ動作したときに対象物に当接される当接面である。
【0032】
油圧シリンダ34,35は、例えば複動式の油圧シリンダである。なお、図2においては、油圧シリンダ34,35に作動油を供給する供給管、作動油を供給する供給路の切り替を行う方向切替弁、及び地盤に設置した油圧ポンプの構成については省略している。また、以下に示す油圧シリンダの配置は、一例を示すものであり、使用に応じて適宜変更されることが好ましい。
【0033】
油圧シリンダ34,35は、シリンダ本体34a,35aの長手方向に設けた供給ポートのいずれか一方への作動油の供給によりロッド34b,35bを伸縮動作する。例えば油圧シリンダ34のシリンダ本体34aの両端部に設けられる供給ポートのうち、ロッド34b側の一端部に設けられる供給ポートに作動油が供給されたときには、油圧シリンダのロッド34bがシリンダ本体34aの内部に縮退される。油圧シリンダ34のロッド34bの先端部は、グラブシェル37に軸着されている。したがって、油圧シリンダ34のロッド34bが縮退すると、グラブシェル37がロッド34bに引っ張られる。その結果、グラブシェル37は、装置本体31の軸着片31dに軸着するピン43を中心にして外方に向けて(図7(a)中A方向に)回動する。
【0034】
また、シリンダ本体34aの両端部に設けられる供給ポートのうち、ロッド34b側の一端部とは反対側となる他端部に設けられる供給ポートに作動油が供給されたときには、油圧シリンダ34のロッド34bがシリンダ本体34aから伸長される。油圧シリンダ34のロッド34bが伸長すると、グラブシェル37がロッド34bを押し出す。したがって、グラブシェル37は、装置本体31の軸着片31dに軸着するピン43を中心にして内方に向けて(図7(a)中B方向に)回転する。
【0035】
同様に、油圧シリンダ35のシリンダ本体35aの両端部に設けられる供給ポートのうち、ロッド35b側の一端部に設けられる供給ポートに作動油が供給されたときには、油圧シリンダ35のロッド35bがシリンダ本体35aの内部に縮退される。油圧シリンダ35のロッド35bの先端部は、グラブシェル38に軸着されている。したがって、油圧シリンダ35のロッド35bが縮退すると、グラブシェル38がロッド35bに引っ張られる。その結果、グラブシェル38は、装置本体31の軸着片31eに軸着するピン47を中心にして外方に向けて(図7(a)中C方向に)回転する。
【0036】
また、シリンダ本体35aの両端部に設けられる供給ポートのうち、ロッド35b側の一端部とは反対側となる他端部に設けられる供給ポートに作動油が供給されたときには、油圧シリンダ35のロッド35bがシリンダ本体35aから伸長される。油圧シリンダ35のロッド35bが伸長すると、グラブシェル38がロッド35bを押し出す。したがって、油圧シリンダ35のロッド35bが伸縮すると、グラブシェル38が、装置本体31の軸着片31eに軸着するピン47を中心にして内方に向けて(図7(a)中D方向に)回転する。
【0037】
ここで、グラブシェル37,38が各々内方に向けて回動する動作を閉じ動作と称し、グラブシェル37,38が各々外方に向けて回動する動作を開き動作と称する。また、油圧シリンダ34,35は、伸縮動作によりグラブシェル対32のグラブシェル37,38を開閉動作させることから、以下、油圧シリンダ34,35を、開閉動作用シリンダ34,35と称する。
【0038】
ここで、図3(a)に示すように、開閉動作用シリンダ34のロッド34bがシリンダ本体34aに、開閉動作用シリンダ35のロッド35bがシリンダ本体35aに完全に縮退したときのグラブシェル対32の状態を開き状態と称する。一方、図3(b)に示すように、開閉動作用シリンダ34のロッド34bがシリンダ本体34aから、開閉動作用シリンダ35のロッド35bがシリンダ本体35aから各々伸長してグラブシェル37の当接面37dの上端部と、グラブシェル38の当接面38dの上端部とが接触した状態を閉じ状態と称する。
【0039】
例えば開閉動作用シリンダ34,35のロッド34b,35bがシリンダ本体34a,35aから伸長される際の最大伸長量に対して、グラブシェル37,38の回動量は、以下に設定される。例えば、掘削による掘削穴に対して、図3(c)の点線で示すように、掘削穴の底面の中心となる位置(装置本体31の中心軸CLと同軸となる位置)で露呈される地中構造物70の他に、図3(c)の二点鎖線で示すように、掘削穴の底面の中心からずれた位置(例えば装置本体31の中心軸から距離L1離れた位置)で露呈される地中構造物70’がある。
【0040】
上述したように、図3(c)の点線で示す地中構造物70は、掘削穴の底面の中心で露呈される地中構造物である。この場合、グラブシェル対32のグラブシェル37,38は、各々閉じ状態となる前に、当接面37d,38dが地中構造物70に各々当接される。一方、図3(c)の二点鎖線で示す地中構造物70’は、掘削穴の底面の中心から距離L1ずれた位置で露呈される地中構造物である。この場合、グラブシェル対32のグラブシェル37,38のうち、地中構造物70’に近接する一方のグラブシェル(図3(c)においては、グラブシェル37が相当する)は、閉じ状態に到達する前に当接面37dが地中構造物70’に当接される。その一方で、他方のグラブシェル(図3(c)においては、グラブシェル38が相当する)は、閉じ状態を超えて回動したときに当接面38dが地中構造物70’に当接される必要がある。
【0041】
したがって、グラブシェル対32の各グラブシェル37,38の最大回動量は、グラブシェル対32の各グラブシェル37,38が閉じ状態となるときのグラブシェル37,38の回動量を超過するように設定される。つまり、閉じ状態までグラブシェル37,38を回動させたときの開閉動作用シリンダ34,35のロッド34b,35bの伸長量は、ロッド34b,35bの最大伸長量未満に設定される。
【0042】
図2に戻って、上述した装置本体31は、外周縁に下方に延出された筒状のリブを有する円板状の固定具50を有する。固定具50は、ケーシング36を固定保持する。ケーシング36は、下端部に削孔ビット55を所定角度間隔(例えば45°間隔など)で複数備え、これら削孔ビット55により地中構造物の外周を掘削する他、地盤に埋設された地中構造物を切削する。
【0043】
図2及び図4に示すように、ケーシング36は、外周面に2つの開口56,57を有する円筒状の部材である。開口56,57は、180°間隔で、言い換えれば対面する位置に設けられる。開口56は、外方に向けて回動するグラブシェル37がケーシング36に接触することを防止する。同様にして、開口57は、外方に向けて回動するグラブシェル38がケーシング36に接触することを防止する。
【0044】
ケーシング36は、内周面に、開口56,57の各々に連なるように配置されたガイド部材(請求項に記載の捻れ防止部材に相当)61,62,63,64を有する。ガイド部材61,62は、グラブシェル37の両側面に位置してグラブシェル37の回動方向を規制する他、グラブシェル対32により地中構造物を把持した状態で構造物撤去装置30を回転させたときに、回転方向における後端側に位置するガイド部材がグラブシェル37の側方から当接されてグラブシェル37を支持して、把持した地中構造物からの反力によるグラブシェル37の捻れや捻れによる変形を防止する。同様にして、ガイド部材63,64は、グラブシェル38の両側面に位置してグラブシェル38の回動方向を規制する他、グラブシェル対32により地中構造物を把持した状態で構造物撤去装置30を回転させた
ときに、回転方向における後端側に位置するガイド部材がグラブシェル38の側方から当接されてグラブシェル38を支持して、把持した地中構造物からの反力によるグラブシェル38の捻れや捻れによる変形を防止する。
【0045】
次に、第1実施形態の構造物撤去装置30を用いて地中構造物100を撤去する方法について説明する。
【0046】
まず、地盤の穿孔(掘削)が実施される。詳細には、掘削機10を目的の位置に設置した後、ケリーバ16が掘削機10の全周回転装置15に取り付ける。ここで、ケリーバ16は、掘削機10が設置される前に予め掘削機10の全周回転装置15に予め設置してもよい。掘削機10は、例えば地中構造物が既成杭であれば、全周回転装置15の回転中心が既成杭の中心と同軸となるように設置されることになるが、既成杭の位置は、立て替える前の建築物の施工時における設計図面等から特定される。
【0047】
図5に示すように、ケリーバ16を全周回転装置15に取り付けた後、ケリーバ16のインナーケリーバ16aの先端部に、ケーシング付きオーガドリル(以下、オーガドリル)75を固定する。ここで、オーガドリル75が有するケーシング75aは、内径が既成杭の最大径よりも大きいものが使用される。なお、図5においては、ケーシング75aを有するオーガドリル75を例に挙げているが、ケーシングを有していないオーガドリルの他、コアバレルなどの掘削具を固定し、地盤を穿孔してもよい。なお、符号75bはドリル部である。
【0048】
全周回転装置15を駆動させると、ケリーバ16の回転によりオーガドリル75が回転しながら地盤に押し込まれる。その結果、地盤が穿孔される。オーガドリル75による地盤の穿孔では、所定深さまで穿孔した後、オーガドリル75を掘削穴65から引き上げて、ケーシング内に保持された土砂を取り除く。そして、オーガドリル75を掘削穴65に再度挿入して、オーガドリル75による地盤を削孔する。これら動作が繰り返し実行される。その結果、深度の深い掘削穴65が地盤に形成される。
【0049】
オーガドリル75により地中構造物100が埋設される深度まで穿孔すると、オーガドリル75の回転及び地盤への押し込みが停止される。その後、ウインチ25による吊下ワイヤの巻き取りにより、伸長したケリーバ16をインナーケリーバ16aから順に縮退させる。そして、ケリーバ16を縮退させた後、昇降シリンダ17が縮退して、全周回転装置15が上方に移動する。その結果、オーガドリル75が掘削穴65から地盤に引き出される。掘削穴65から引き出されたオーガドリル75は、ケリーバ16のインナーケリーバ16aの先端部から取り外される。そして、構造物撤去装置30がケリーバ16のインナーケリーバ16aの先端部に取り付けられる。
【0050】
図6に示すように、構造物撤去装置30は、オーガドリル75が取り外されたケリーバ16のインナーケリーバ16aの先端部に固定される。全周回転装置15の昇降により、構造物撤去装置30は、掘削穴65に挿入される。このとき、構造物撤去装置30は、ケーシング36の下端部に設けた削孔ビット55が掘削穴65の底面に当接するまで掘削穴65に挿入される。このとき、構造物撤去装置30が有するグラブシェル対32の各グラブシェル37,38は、開き状態に保持される。
【0051】
全周回転装置15を駆動させて、ケリーバ16を回転させながら、掘削穴65の底面に向けて押し込む。これにより、構造物撤去装置30が回転し、構造物撤去装置30が有するケーシング36の下端部に設けた削孔ビット55が、掘削穴65の底面を掘削する。その後、全周回転装置15の駆動が停止される。このとき、水平方向に伸びる地中構造物がある場合には、ケーシング36の下端部に設けた削孔ビット55による切削により切断される。
【0052】
図7(a)に示すように、掘削穴65に挿入された構造物撤去装置30は、グラブシェル対32は、開き状態で保持されている。その後、地上側に設置された油圧ポンプを駆動させ、同時に必要に応じて方向切替弁を切り替える。油圧ポンプの駆動により、開閉動作用シリンダ34,35が作動して、グラブシェル37,38は、内方に向けて各々回動する。その結果、図7(b)に示すように、グラブシェル37,38の当接面37d,38dが地中構造物100の側面に個々に当接される。したがって、地中構造物100は、グラブシェル対32により把持される。この状態で、全周回転装置15が駆動する。全周回転装置15の駆動により、ケリーバ16が軸CLを中心として所定角度範囲で複数回、正逆回転する。正逆回転とは、図7(b)に示すように、軸CLを中心として、R1方向の回転及びR2方向の回転である。なお、R1方向への回転とR2方向への回転の各々における回転角は同一の角度であってもよいし、異なる角度であってもよい。
【0053】
ケリーバ16の複数回の正逆回転に合わせて、構造物撤去装置30も軸CLを中心に正逆回転する。上述したように、地中構造物100の上端部はグラブシェル対32により把持されている。したがって、グラブシェル対32に把持された地中構造物100の上端部は、地中に埋設される部分に対して複数回捩られる。上述したように、ケーシング36は、ガイド部材61,62,63,64を内部に有している。したがって、構造物撤去装置30の正逆回転時に、ガイド部材61,62,63,64のうち、回転方向において後端側に位置するガイド部材が、グラブシェル対32のグラブシェル37,38の側方から支持する。例えばR1方向の回転の場合には、グラブシェル37はガイド部材61に、グラブシェル38はガイド部材64に各々支持される。また、R2方向の回転の場合には、グラブシェル37はガイド部材62に、グラブシェル38はガイド部材63に各々支持される。その結果、地中構造物100を把持するグラブシェル対32のグラブシェル37,38が地中構造物100からの反力によるねじれの発生を防止することができる。
【0054】
上述したグラブシェル対32の正逆回転により、グラブシェル対32に把持された地中構造物100の上端部100aが、例えば図7(b)中点線で示す位置でねじ切られる。
【0055】
その後、全周回転装置15の駆動が停止され、ウインチ25による吊下げワイヤの巻き取りが実行される。吊下げワイヤの巻き取りにより、構造物撤去装置30が掘削穴65から引き上げられる。このとき、グラブシェル対32は、ねじ切った地中構造物100の上端部100aを把持しているので、ねじ切った地中構造物100の上端部100aが地盤上に排出される。なお、地中構造物100が地盤内に残存している場合には、掘削穴65に構造物撤去装置30を挿入し、地中構造物100の一部をグラブシェル対32によりねじ切りながら回収していく。
【0056】
このように、地中構造物100の上端部を把持したグラブシェル対32は、構造物撤去装置30を固定するケリーバ16の正逆回転とともに回転し、この回転により地中構造物をねじ切る。そしてケリーバ16の縮退による構造物撤去装置30の引き上げとともに、ねじ切った地中構造物が引き上げられて、地盤表面に撤去される。その結果、地中構造物を撤去する作業を効率良く実施することが可能となる。
【0057】
なお、図7においては、掘削穴65の底部の中心から地中構造物100の上端部100aが露呈する場合を説明している。しかしながら、地中構造物100の上端部100aが露呈する位置は、掘削穴65の底部の中心である場合の他、該中心からずれた位置から露呈する場合もある。上述したように、グラブシェル対32の各グラブシェル37,38の最大回動量は、グラブシェル対32の各グラブシェル37,38が閉じ状態となるときのグラブシェル37,38の回動量を超過するように設定される。したがって、掘削穴65の底部の中心からずれた位置で露呈される地中構造物100であっても、グラブシェル対32により地中構造物100の上端部100aを把持でき、また、把持した地中構造物100の上端部100aをねじ切ることが可能となる。
【0058】
ここで、開閉動作用シリンダ34,35のロッド34b,35bの最大回動量を、グラブシェル対32の各グラブシェル37,38が閉じ状態となるときのグラブシェル37,38の回動量を超過するように設定しているが、開閉動作用シリンダ34,35に供給される作動油の油圧の調整を開閉動作用シリンダ毎に個別に行うことも可能である。開閉動作用シリンダ34,35に供給される作動油の油圧の調整を開閉動作用シリンダ毎に個別に行うことで、グラブシェル対32の各グラブシェル37,38の回動量を個別に調整できる。その結果、掘削穴65の底部の中心からずれた位置で露呈される地中構造物100の場合であっても、グラブシェル対32による地中構造物100の上端部100aの把持や、把持した地中構造物100の上端部100aをねじ切る動作を行うことが可能となる。
【0059】
第1実施形態では、オーガドリル75のみを用いて地盤を穿孔している。しかしながら、図8に示すように、全周回転装置15の下部に設けた固定具19にケーシング77を固定し、オーガドリル75とケーシング77とを回転させながら地盤に押し込むことで、地盤を穿孔することも可能である。この場合、固定具19に固定されるケーシング77は、穿孔の深さに応じて、順次継ぎ足される。地中構造物が露呈する深さまで地盤を穿孔した後、ケーシング77は、地盤中にそのまま残存される。したがって、構造物撤去装置30による地中構造物の撤去作業が終了するまでの間、ケーシング77は、孔壁を保護する。図8の事例では、本発明と同様の効果が得られる他、地中構造物を撤去する過程で、孔壁が崩壊することを防止することができる他、地中構造物を撤去する際の排出経路が確保されるので、地中構造物を確実に地盤上に排出することができる。
【0060】
第1実施形態では、ケーシング36を有する構造物撤去装置30を一例として取り上げているが、これに限定されるものではなく、ケーシングを備えていない構造物撤去装置30であってもよい。
【0061】
第1実施形態では、構造物撤去装置30が有するグラブシェル対32は地中構造物100を把持する機能のみを有しているが、グラブシェルの先端に切削刃を設け、地中構造物を把持する機能の他に、地中構造物を切削する機能を持たせることも可能である。
【0062】
<第2実施形態>
図9(a)から図9(c)に示すように、構造物撤去装置80は、装置本体81、グラブシェル対82及び開閉動作用シリンダ83,84を有する。なお、図9に示す構造物撤去装置80は、ケーシングを有していないが、図9に示す構造物撤去装置80にケーシングを設けることも可能である。
【0063】
装置本体81は、ケリーバ16に固定する接続部81aを上端部に有する。また、装置本体81は、下端部において、グラブシェル対82の各グラブシェル86,87を軸着する。さらに、装置本体81は、長手方向の中央部分において、開閉動作用シリンダ83,84の一端部を各々軸着する。なお、図9中符号88は支持部であり、地中構造物200の上面に当接されて地中構造物200を支持する。
【0064】
グラブシェル対82は、対面する2つのグラブシェル86,87を有する。これらグラブシェル86,87の形状は同一である。グラブシェル86は、幅方向(図9中Y方向)の中央部分を外側に湾曲させた円弧状のシェル本体86aを有する。シェル本体86aは切削刃90を下端部に有する。切削刃90は、例えば7つの刃部90a,90b,90c,90d,90e,90f,90gを有する。なお、これら刃部90a,90b,90c,90d,90e,90f,90gは、図9(b)に示す側面視において、幅方向の中央部に位置する刃部90dが最も高い位置に、また幅方向の両端部に位置する刃部90a,90gが最も低い位置となるように、階段状に配置される。
【0065】
グラブシェル86は、シェル本体86aから内方に向けて延出する2つの側壁86b,86cと、これら側壁86b,86cに跨った上壁86dと、を有する。上壁86dは、開閉動作用シリンダ83の一端を軸着する軸着片91と、装置本体81の下端部に軸着する軸着片92,93とを有する。軸着片91は、開閉動作用シリンダ83の一端部に設けた凹部83aに挿入された状態で軸着される。また、軸着片92,93は、装置本体81の下端部に設けた凹部81b,81cに各々挿入された状態で軸着される。
【0066】
グラブシェル87は、グラブシェル86と同様に、幅方向(図9中Y方向)の中央部分を外側に湾曲させた円弧状のシェル本体87aを有する。シェル本体87aは切削刃95を下端部に有する。切削刃95は、例えば7つの刃部95a,95b,95c,95d,95e,95f,95gを有する。なお、これら刃部95a,95b,95c,95d,95e,95f,95gは、グラブシェル86が有する切削刃90と同様に、幅方向の中央部に位置する刃部95dが最も高い位置に、また幅方向の両端部に位置する刃部95a,95gが最も低い位置となるように、階段状に配置される。
【0067】
グラブシェル87は、シェル本体87aから内方に向けて延出する2つの側壁87b,87cと、これら側壁87b,87cに跨った上壁87dと、を有する。上壁87dは、開閉動作用シリンダ84の一端を軸着する軸着片96と、装置本体81の下端部に軸着する軸着片97,98とを有する。軸着片96は、開閉動作用シリンダ84の一端部に設けた凹部(図示省略)に挿入された状態で軸着される。また、軸着片97,98は、装置本体81の下端部に設けた凹部81d、81eに各々挿入された状態で軸着される。
【0068】
開閉動作用シリンダ83,84は、例えば油圧シリンダが用いられる。なお、油圧シリンダとしては、複動式の油圧シリンダが挙げられる。開閉動作用シリンダ83,84は、伸縮動作によりグラブシェル対82のグラブシェル86,87を開閉動作する。開閉動作用シリンダが伸長すると、グラブシェル対82のグラブシェル86,87が内方に向けて回動し、開閉動作用シリンダが縮退すると、グラブシェル対82のグラブシェル86,87が外方に向けて回動する。なお、図9(a)は、開閉動作用シリンダ83,84が完全に縮退した状態を示している。この状態では、グラブシェル対82のグラブシェル86,87が開いた状態となる。以下、開閉動作用シリンダ83,84が完全に縮退して、グラブシェル対82のグラブシェル86,87が開いている状態を開き状態と称する。
【0069】
次に、構造物撤去装置80を用いて地中構造物200を撤去する手順について説明する。なお、第2実施形態においては、掘削機及びケリーバについては説明を省略しているが、第1実施形態において説明した掘削機及びケリーバが用いられる。したがって、以下の説明においては、掘削機、掘削機を構成する各部及びケリーバについては、第1実施形態と同一の符号を付して説明する。
【0070】
まず、掘削穴150の底面から地中構造物200が露呈するまで、オーガドリル75による地盤の穿孔が実施される。地盤の穿孔の後、伸長したケリーバ16を縮退させ、オーガドリル75が掘削穴150から引き上げられる。ケリーバ16の先端部に固定したオーガドリル75を取り外した後、構造物撤去装置80がケリーバ16の先端部に固定される。ケリーバ16の伸長により、構造物撤去装置80が掘削穴150に挿入される。図10(a)に示すように、掘削穴150に挿入された構造物撤去装置80は、伸長されるケリーバ16により掘削穴150の底部に向けて移動する。構造物撤去装置80の支持部88が、地中構造物200の上面に当接される。この状態で、地盤上に設置された油圧ポンプを駆動させると、開閉動作用シリンダ83,84が作動する。なお、掘削穴150の底部に向けて移動する構造物撤去装置80のグラブシェル対82のグラブシェル86,87は、開き状態に保持されている。開閉動作用シリンダ83,84の作動により、開閉動作用シリンダ83,84が各々伸長する。その結果、開き状態に保持されたグラブシェル対82のグラブシェル86は図10(b)中H方向に回動し、グラブシェル87は図10(b)中I方向に回動する。つまり、グラブシェル対82のグラブシェル86,87は、内方に向けて各々回動する。この過程で、グラブシェル86が有する切削刃90及びグラブシェル87が有する切削刃95が地中構造物200の側面に当接される。なお、開閉動作用シリンダ83,84に供給される作動油の油圧は、開閉動作用シリンダ83,84において設定される油圧の最大値である。したがって、切削刃90,95は、地中構造物200の側面に当接された後、開閉動作用シリンダ83,84の伸長により、地中構造物200の側面に各々食い込む。
【0071】
油圧ポンプの作動により開閉動作用シリンダ83,84が伸長した後、全周回転装置15が駆動される。全周回転装置15の駆動により、全周回転装置15に保持されたケリーバ16が回転する。したがって、ケリーバ16の回転ととともに、構造物撤去装置80が回転する。ここで、構造物撤去装置80は、正逆回転してもよいし、一方向のみに回転してもよい。なお、正逆回転とは、R3方向、R4方向、R3方向、・・・の順(又はその逆の順)で、所定の角度回転することを指す。構造物撤去装置80が回転されることで、グラブシェル対82に把持された地中構造物200の上端部が、地盤に固定された他の部分に対して捩られる。
【0072】
グラブシェル対82の回転により地中構造物200の上端部200aが、地盤に固定された他の部分に対して捩られる過程にも、グラブシェル86の切削刃90及びグラブシェル87の切削刃95が地中構造物200の側面へ食い込み、また、その食い込み量が増大する。その結果、地中構造物200の上端部200aが、地盤に固定された他の部分に対してねじ切られる。
【0073】
なお、ねじ切られた地中構造物200の上端部200aは、支持部88により支持された状態で、グラブシェル対82に把持される。したがって、図10(c)に示すように、構造物撤去装置80を引き上げると、ねじ切られた地中構造物200の上端部200aは、構造物撤去装置80とともに地盤表面に排出される。なお、地中構造物200が地盤内に残存している場合には、掘削穴150に構造物撤去装置80を挿入し、地中構造物200の一部をグラブシェル対82によりねじ切りながら回収していく。その結果、第1実施形態と同様に、地中構造物を撤去する作業を効率良く実施することが可能となる。
【0074】
第2実施形態の構造物撤去装置80は、グラブシェル86,87の切削刃90,95を地中構造物200の側面に食い込ませながら回転して、地中構造物200の上端部をねじ切るようにしている。地中構造物200の上端部をねじ切る方法は、上記に限定されるものではない。例えば、構造物撤去装置80を回転させながら、グラブシェル86,87の切削刃90,95を地中構造物200の側面に摺接させて、地中構造物の側面を全周に亘って切削して切削溝を生成する。そして、グラブシェル86,87の切削刃を、切削溝の底部にグラブシェル86,87の切削刃90,95を食い込ませながら構造物撤去装置80を回転させて、地中構造物200の上端部をねじ切る。この場合、開閉動作用シリンダ83,84に供給する作動油の油圧を調整して、グラブシェル86,87の回動量を制御する必要がある。
【0075】
なお、第2実施形態の構造物撤去装置80は、開閉動作用シリンダ83,84の作動時に、供給する作動油の油圧を個別に調整する、言い換えれば、グラブシェル86,87の
回動量を個別に調整することも可能である。グラブシェル対82のグラブシェル86,87の回動量を個別に調整できるようにすることで、第2実施形態の構造物撤去装置80の場合も、第1実施形態の構造物撤去装置30と同様に、地中構造物200の上端部が掘削穴150の底部の中心から露呈される場合だけでなく、掘削穴150の底部の中心からずれた位置から露呈する場合であっても、地中構造物200の上端部の外周面を切削し、地中構造物200の上端部を把持した状態で地中構造物200の上端部をねじ切ることが可能となる。
【符号の説明】
【0076】
10…掘削機、15…全周回転装置、16…ケリーバ、30…構造物撤去装置、32,82…グラブシェル対、31,81…装置本体、34,35,83,84…油圧シリンダ(開閉動作用シリンダ)、36…ケーシング、37,38,86,87…グラブシェル、55…削孔ビット、61,62,63,64…ガイド部材、100,200…地中構造物、90,95…切削刃
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10