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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】故障診断装置、蓄電装置、故障診断方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/007 20060101AFI20220809BHJP
   H01M 10/42 20060101ALI20220809BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20220809BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20220809BHJP
   H01G 11/16 20130101ALN20220809BHJP
   H01G 2/14 20060101ALN20220809BHJP
【FI】
G01M17/007 K
H01M10/42 P
H02J7/00 Q
B60R16/02 645D
H01G11/16
H01G2/14 105Z
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2018021861
(22)【出願日】2018-02-09
(65)【公開番号】P2018136314
(43)【公開日】2018-08-30
【審査請求日】2020-12-25
(31)【優先権主張番号】P 2017031992
(32)【優先日】2017-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】和田 直也
(72)【発明者】
【氏名】白石 剛之
【審査官】岩永 寛道
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-036556(JP,A)
【文献】特開2008-043051(JP,A)
【文献】国際公開第2015/079522(WO,A1)
【文献】特開2013-074707(JP,A)
【文献】特開2011-229216(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 17/00- 17/10
B60R 16/00- 17/02
H01M 10/42- 10/48
H02J 7/00- 7/12
H02J 7/34- 7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された蓄電素子の通電路に配置され、並列に接続された第1電流遮断装置及び第2電流遮断装置からなる一対の電流遮断装置のうち、前記第1電流遮断装置の故障を診断する故障診断装置であって、
前記車両のエンジン停止中に、前記第1電流遮断装置をオープンからクローズ又はクローズからオープンに切り換え、前記第2電流遮断装置クローズする第1切換処理を行い、
前記第1切換処理後、前記第2電流遮断装置に閾値よりも大きい電流が流れている時に、前記一対の電流遮断装置の両端電圧を検出し、検出した両端電圧に基づいて、前記第1電流遮断装置の故障の有無を判定する、故障診断装置。
【請求項2】
請求項1に記載の故障診断装置であって、
前記第1電流遮断装置の故障判定後、前記車両のエンジン停止中に、前記第2電流遮断装置をオープンからクローズ又はクローズからオープンに切り換え、故障判定済みの前記第1電流遮断装置クローズする第2切換処理を行い、
前記第2切換処理後、故障判定済みの前記第1電流遮断装置に閾値よりも大きい電流が流れている時に、前記電流遮断装置の両端電圧を検出し、検出した両端電圧に基づいて、前記第2電流遮断装置の故障の有無を判定する、故障診断装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の故障診断装置であって、
前記電流遮断装置の両端電圧を、前記蓄電素子の放電中に検出する、故障診断装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の故障診断装置であって、
前記電流遮断装置の両端電圧を、前記蓄電素子の充電中に検出する、故障診断装置。
【請求項5】
請求項1から請求項のうちいずれか一項に記載の故障診断装置であって、
第2切換処理は、前記第1電流遮断装置の故障判定後、前記車両のエンジン停止中に、前記第2電流遮断装置をオープンからクローズ又はクローズからオープンに切り換え、故障判定済みの前記第1電流遮断装置をクローズする処理であり、
前記第1切換処理又は前記第2切換処理を、前記車両の駐車中に実行する、故障診断装置。
【請求項6】
請求項1から請求項のうちいずれか一項に記載の故障診断装置であって、
前記閾値は、エンジン始動時に流れるクランキング電流のピーク値に基づいて設定されている、故障診断装置。
【請求項7】
請求項1~請求項のいずれか一項に記載の故障診断装置であって、
前記故障診断装置は、エンジンが停止するごとに、(1)~(3)の処理を4回で1サイクルとして実行し、
1~2回目の処理では、一方の電流遮断装置について、オープン故障とクローズ故障を判定し、3~4回目の処理では、他方の電流遮断装置について、オープン故障とクローズ故障を判定することで、
前記一対の電流遮断装置について、オープン故障とクローズ故障を1つずつ順に判定する、故障診断装置。
(1)エンジンが停止するごとに、前記一対の電流遮断装置のうち診断対象となる一方の電流遮断装置をオープンからクローズ又はクローズからオープンに交互に切り換え、他方の電流遮断装置をクローズする。
(2)切り換え後、前記閾値よりも電流値の大きな電流が流れている時に、前記電流遮断装置の両端電圧を検出する。
(3)検出した両端電圧に基づいて、診断対象となる前記電流遮断装置の故障の有無を判定する。
【請求項8】
請求項に記載の故障診断装置であって、
前記閾値よりも大きな電流が流れている時に検出した前記電流遮断装置の両端電圧を、前回の検出値と比較することにより、診断対象となる前記電流遮断装置の故障の有無を判定する、故障診断装置。
【請求項9】
請求項に記載の故障診断装置であって、
前記閾値よりも大きい電流が流れている時に検出した前記電流遮断装置の両端電圧を、正常動作時の前記電流遮断装置の両端電圧と比較することにより、診断対象となる前記電流遮断装置の故障の有無を判定する、故障診断装置。
【請求項10】
請求項1~請求項のうちいずれか一項に記載の故障診断装置であって、
第2切換処理は、前記第1電流遮断装置の故障判定後、前記車両のエンジン停止中に、前記第2電流遮断装置をオープンからクローズ又はクローズからオープンに切り換え、故障判定済みの前記第1電流遮断装置をクローズする処理であり、
前記車両のエンジン停止中に、前記第1切換処理又は前記第2切換処理にて、診断対象となる電流遮断装置をクローズからオープンに切り換えた場合、
前記両端電圧検出後の車両の走行中、並列に接続された前記一対の電流遮断装置の双方
をクローズさせる、故障診断装置。
【請求項11】
請求項1~請求項10のうちいずれか一項に記載の故障診断装置であって、
前記電流遮断装置は故障と判定した場合、前記車両に対して警告を行う、故障診断装置。
【請求項12】
請求項1~請求項11のうちいずれか一項に記載の故障診断装置であって、
前記電流遮断装置は、機械式の接点を有するリレーである、故障診断装置。
【請求項13】
請求項1~請求項12のうちいずれか一項に記載の故障診断装置であって、
前記蓄電素子はリチウムイオン二次電池である、故障診断装置。
【請求項14】
請求項1~請求項13のうちいずれか一項に記載の故障診断装置であって、
前記車両はアイドリングストップ車両である、故障診断装置。
【請求項15】
蓄電素子と、
請求項1~請求項14のいずれか一項に記載の故障診断装置と、
前記蓄電素子と前記故障診断装置を収容するケースを含む、蓄電装置。
【請求項16】
車両に搭載された蓄電素子の通電路に配置され、並列に接続された一対の電流遮断装置の故障を診断する故障診断方法であって、
前記車両のエンジン停止中に、前記一対の電流遮断装置のうち診断対象となる一方の電流遮断装置をオープンからクローズ又はクローズからオープンに切り換え、他方の電流遮断装置をクローズする第1切換処理を行い、
前記第1切換処理後、前記電流遮断装置に閾値よりも大きな電流が流れている時に、前記電流遮断装置の両端電圧を検出し、検出した両端電圧に基づいて、前記一方の電流遮断装置の故障の有無を判定し、
前記車両のエンジン停止中に、前記一対の電流遮断装置のうち、診断対象となる他方の電流遮断装置をオープンからクローズ又はクローズからオープンに切り換え、一方の電流遮断装置をクローズする第2切換処理を行い、
前記第2切換処理後、前記電流遮断装置に閾値よりも大きい電流が流れている時に、前記電流遮断装置の両端電圧を検出し、検出した両端電圧に基づいて、前記他方の電流遮断装置の故障の有無を判定する、故障診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流遮断装置の故障を診断する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は、過充電及び過放電を防ぐために、電池監視装置(以下、BMU)が取り付けられている。BMUは、電池の状態を監視し、異常を検出した場合、リレー等の電流遮断装置を用いて、電池に流れる電流を遮断することで、電池が過充電及び過放電になることを防いでいる。こうした電流遮断装置が故障していると、電池の過電圧や過放電を防ぐことが出来ないことから、意図的に電流遮断装置をオープン又はクローズさせ、その際の電圧を計測することで、電流遮断装置の故障を診断することが考えられる。しかしながら、自動車等、システムに対して継続的に電力の供給が必要な用途では、一時的に電力の供給が遮断される方法は実施できない。
【0003】
電流遮断装置を2つ並列に接続して、車両走行中において、ある程度の電流が流れている時に、各電流遮断装置のオープン/クローズ動作を交互に繰り返して電流遮断装置の両端電圧の変化を検出する方法を用いれば、電力の供給を継続しながら電流遮断装置の故障診断を実施することできる。2つ並列に接続した電流遮断装置の故障を診断する方法を開示する文献として、例えば下記特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-36556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の方法では、車両走行中に、電流遮断装置をオープン又はクローズさせて故障を診断する。そのため、走行時の振動等により、いずれかの電流遮断装置がオープン故障した状態で、故障診断のため他方の電流遮断装置をオープンすると、2つの電流遮断装置が共にオープン状態になることから、車両走行中に、電力供給が遮断されてしまう。また、特許文献1の方法でも同様の課題がある。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、車両走行中に電力供給が遮断されてしまうことを回避しつつ、電流遮断装置の故障診断を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書により開示する故障診断装置は、車両に搭載された蓄電素子の通電路に配置され、並列に接続された一対の電流遮断装置の故障を診断する故障診断装置であって、前記車両のエンジン停止中に、前記一対の電流遮断装置のうち、診断対象となる一方の電流遮断装置をオープンからクローズ又はクローズからオープンに切り換え、他方の電流遮断装置をクローズする切換処理を行い、前記切換処理後、前記電流遮断装置に閾値よりも大きい電流が流れている時に、前記電流遮断装置の両端電圧を検出し、検出した両端電圧に基づいて、前記電流遮断装置の故障の有無を判定する。
【0007】
本明細書により開示する技術は、上記故障診断装置を有する蓄電装置、前記蓄電装置を有する車両に適用することが出来る。また、車両に搭載された蓄電素子の通電路に配置された電流遮断装置の故障を診断する診断方法に適用することが出来る。
【発明の効果】
【0008】
本明細書により開示する故障診断装置によれば、車両走行中に電力供給が遮断されてしまうことを回避しつつ、電流遮断装置の故障診断を行うことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態1に適用された車両の側面図
図2】バッテリの斜視図
図3】バッテリの分解斜視図
図4】バッテリの電気的構成を示すブロック図
図5】故障診断処理の流れを示すフローチャート
図6】故障診断処理中におけるリレーの状態遷移を示す図
図7】エンジン始動時のクランキング電流の波形を示すグラフ
図8】アシストモータが接続されたバッテリの電気的構成を示すブロック図
図9】バッテリの他の実施形態の電気的構成を示すブロック図
図10】12V系の組電池と48V系の組電池を組み合わせた電源システムの電気的構成を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0010】
初めに、本実施形態にて開示する故障診断装置の概要について説明する。
車両に搭載された蓄電素子の通電路に配置され、並列に接続された一対の電流遮断装置の故障を診断する故障診断装置であって、前記車両のエンジン停止中に、前記一対の電流遮断装置のうち、診断対象となる一方の電流遮断装置をオープンからクローズ又はクローズからオープンに切り換え、他方の電流遮断装置をクローズする切換処理を行い、前記切換処理後、前記電流遮断装置に閾値よりも大きい電流が流れている時に、前記電流遮断装置の両端電圧を検出し、検出した両端電圧に基づいて、前記電流遮断装置の故障の有無を判定する。この構成では、故障診断を目的とした電流遮断装置の切り換えをエンジン停止中に行うので、車両走行中、故障診断を目的に電流遮断装置が操作されることはない。そのため、車両走行中に電力供給が遮断されてしまうことを回避しつつ、電流遮断装置の故障を診断出来る。また、電流遮断装置に閾値よりも大きい電流が流れている時に電流遮断装置の両端電圧を検出するので、電流遮断装置の故障を精度よく診断することが出来る。
【0011】
前記電流遮断装置の両端電圧を、前記蓄電素子の放電中に検出することが好ましい。モータやコンプレッサなどの動力装置が負荷として接続されている場合、放電中は、充電中に比べて大電流が流れるので、故障診断装置の両端電圧を精度よく計測することが出来る。前記電流遮断装置の両端電圧を、前記蓄電素子の充電中に検出することが好ましい。充電中は、放電中に比べて電流が安定しているので、電流遮断装置の両端電圧を検出するタイミングが取りやすい。充電は、車両に搭載されたオルタネータなどの車両発電機による充電、車両外に設けられた外部充電器による充電のどちらでもよい。
【0012】
前記故障診断装置は、エンジンが停止するごとに、(1)~(3)の処理を実行することで、前記一対の電流遮断装置について、オープン故障とクローズ故障を1つずつ順に判定するとよい。
(1)エンジンが停止するごとに、前記一対の電流遮断装置のうち診断対象となる一方の電流遮断装置をオープンからクローズ又はクローズからオープンに交互に切り換え、他方の電流遮断装置をクローズする。
(2)切り換え後、前記閾値よりも大きい電流が流れている時に、前記電流遮断装置の両端電圧を検出する。
(3)検出した両端電圧に基づいて、診断対象となる前記電流遮断装置の故障の有無を判定する。
【0013】
この構成では、並列に接続された一対の電流遮断装置のうち診断対象となる一方側の電流遮断装置をオープン又はクローズを交互に切り換えて故障診断を行い、故障診断中、他方の電流遮断装置はクローズする。そのため、故障診断中、車両への電力供給が途絶えるリスクが小さい。
【0014】
前記閾値より大きい電流が流れている時に検出した前記電流遮断装置の両端電圧を、前回の検出値と比較することにより、診断対象となる前記電流遮断装置の故障の有無を判定する、とよい。今回の検出値を前回の検出値と比較することで、両端電圧の変化の有無を正確に検出出来るので、電流遮断装置の故障の有無を精度よく判定することが出来る。前記閾値より大きい電流が流れている時に検出した前記電流遮断装置の両端電圧を、正常動作時の前記電流遮断装置の両端電圧と比較することにより、診断対象となる前記電流遮断装置の故障の有無を判定するとよい。電流遮断装置の両端電圧を、正常動作時と比較することで、電流遮断装置の故障の有無を判断することが出来る。
前記切換処理を、前記車両の駐車中に実行するとよい。この構成では、駐車中に切換処理を行うため、切換による動作音が発生しても、ユーザが動作音を耳にすることがない。
【0015】
閾値は、エンジン始動時に流れるクランキング電流のピーク値に基づいて設定するとよい。クランキング電流は大電流であることから、電流遮断装置の両端電圧の変化は大きい。そのため、故障の有無を精度よく判定することが出来る。
【0016】
前記車両のエンジン停止中に、前記切換処理にて、診断対象となる電流遮断装置をクローズからオープンに切り換えた場合、前記両端電圧検出後の車両の走行中、並列に接続された前記一対の電流遮断装置の双方をクローズさせるとよい。この構成では、例えば、走行中の振動等により、一方の電流遮断装置が意図せずに開いた場合でも、車両走行中、蓄電素子から車両に対して、電力供給を継続出来る。
【0017】
前記故障診断装置は故障と判定した場合、前記車両に対して警告を行うとよい。警告を行うことで、車両に対して故障診断装置の故障を知らせることが出来る。前記電流遮断装置は、機械式の接点を有するリレーであることが好ましい。リレーは、機械式の接点であることから、FETなどの半導体スイッチに比べて、クローズ時の導通抵抗値が大きい。そのため、半導体スイッチに比べて、同じ電流が流れた時に、両端電圧が高くなることから、両端電圧の検出精度が高い。そのため、故障の有無を精度よく判定することが出来る。本技術の適用により、車両走行中に車両への電力供給が途絶えることを回避しつつ、故障確率の高い電流遮断装置の故障を診断することが出来る。前記車両はアイドリングストップ車両がよい。アイドリングストップ車両は、頻繁にクランキングが発生する。そのため、故障判定を実施できるタイミングが多く、信頼性があがる。
【0018】
<実施形態1>
1.バッテリの説明
図1は車両の側面図、図2はバッテリの斜視図、図3はバッテリの分解斜視図、図4はバッテリの電気的構成を示すブロック図である。
【0019】
自動車(以下、車両の一例)1は、図1に示すように、バッテリ(蓄電装置)20を備えている。バッテリ20は、図2に示すように、ブロック状の電池ケース21を有しており、電池ケース21内には、複数の二次電池31からなる組電池30や制御基板28が収容されている。以下の説明において、図2および図3を参照する場合、電池ケース21が設置面に対して傾きなく水平に置かれた時の電池ケース21の上下方向をY方向とし、電池ケース21の長辺方向に沿う方向をX方向とし、電池ケース21の奥行き方向をZ方向をとして説明する。
【0020】
電池ケース21は、図3に示すように、上方に開口する箱型のケース本体23と、複数の二次電池31を位置決めする位置決め部材24と、ケース本体23の上部に装着される中蓋25と、中蓋25の上部に装着される上蓋26とを備えて構成されている。ケース本体23内には、図3に示すように、各二次電池31が個別に収容される複数のセル室23AがX方向に並んで設けられている。
【0021】
位置決め部材24は、図3に示すように、複数のバスバー27が上面に配置されており、位置決め部材24がケース本体23内に配置された複数の二次電池31の上部に配置されることで、複数の二次電池31が、位置決めされると共に複数のバスバー27によって直列に接続されるようになっている。
【0022】
中蓋25は、図2に示すように、平面視略矩形状をなし、Y方向に高低差を付けた形状とされている。中蓋25のX方向両端部には、一対の端子部22P、22Nが設けられている。一対の端子部22P、22Nは、例えば鉛合金等の金属からなり、22Pが正極側端子部、22Nが負極側端子部である。一対の端子部22P、22Nは、バッテリ20の外部端子である。
【0023】
中蓋25は、図3に示すように、制御基板28を収容する収容部を有しており、中蓋25がケース本体23に装着されることで、二次電池31と制御基板28とが接続されるようになっている。
【0024】
図4を参照して、バッテリ20の電気的構成を説明する。バッテリ20は、組電池30と、電流センサ41と、電流遮断回路45と、組電池30を管理する電池管理装置(以下、BM)50とを有する。電池管理装置50が本発明の「故障診断装置」の一例である。
【0025】
組電池30は、12V系であり、直列接続された複数の蓄電素子(例えば、リチウムイオン二次電池31)から構成されている。組電池30、電流センサ41、電流遮断回路45は、通電路35を介して、直列に接続されている。電流センサ41を負極側、電流遮断回路45を正極側に配置しており、電流センサ41は負極側端子部22N、電流遮断回路45は、正極側端子部22Pにそれぞれ接続されている。
【0026】
図4に示すように、バッテリ20の端子部22P、22Nには、車両1に搭載されたエンジンを始動するためのセルモータ15が接続されており、セルモータ15はバッテリ20から電力の供給を受けて駆動する。バッテリ20には、セルモータ15の他に、電装品などの車両負荷(図略)やオルタネータ(図略)が接続されている。オルタネータの発電量が車両負荷の電力消費より大きい場合、バッテリ20はオルタネータによる充電される。また、オルタネータの発電量が車両負荷の電力消費より小さい場合、バッテリ20は、その不足分を補うため、放電する。
【0027】
電流センサ41は、電池ケース21の内部に設けられており、二次電池31に流れる電流Iを検出する。電流センサ41は、信号線によってBM50に電気的に接続されており、電流センサ41の出力は、BM50に取り込まれる構成になっている。
【0028】
電流遮断回路45は、電池ケース21の内部に設けられている。電流遮断回路45は、組電池30の通電路35上に配置されており、並列に接続された一対のリレーRL1、RL2から構成されている。リレーRL1、RL2を2つ並列に設ける理由は、リレーRL1、RL2の一方が故障しても、車両に対する電力の供給が維持できるように冗長性を図るためである。リレーRL1、RL2は電流遮断装置の一例である。
【0029】
リレーRL1、RL2は、例えば、ラッチ式のリレーであり、BM50からオープン指令を受けると、電磁作用により機械的に接点をオープンさせる。また、クローズ指令を受けると、電磁作用により機械的に接点をクローズさせる。
【0030】
BM50は、各リレーRL1、RL2に対して個別にオープン指令、クローズ指令を送ることで、各リレーRL1、RL2のオープン、クローズを個別に制御することが出来る。2つのリレーRL1、RL2のうち、少なくとも一方をクローズすることで、組電池30は通電状態となる。また、2つのリレーRL1、RL2の双方をオープンすることで、組電池30は通電が遮断された状態となる。以下の説明において、2つのリレーを特に区別しない場合、符号RLを用いる。
【0031】
BM50は、演算機能を有するCPU51、各種情報を記憶したメモリ53、通信部55など備えており、制御基板28に設けられている。通信部55には、車両に搭載された車両ECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)10が接続されており、BM50は、エンジンの動作状態など車両に関する情報を、車両ECU10から受信できるようになっている。
【0032】
BM50は、電流センサ41の出力に基づいて、二次電池31の電流を監視する。図外の電圧検出回路の出力に基づいて、各二次電池31の電圧や組電池30の総電圧を監視する。図外の温度センサの出力に基づいて、二次電池31の温度を監視する。
【0033】
BM50は、二次電池31の電圧、電流、異常を監視しており、異常を検出した場合には、2つのリレーRL1、RL2をオープンすることで、二次電池31が危険な状態になることを防ぐ。
【0034】
また、BM50は、リレーRL1、RL2の両端、端点Aと端点Bのそれぞれと電圧計測線La、Lbで接続されており、リレーRL1、RL2の両端電圧(2点AB間の電圧)Vabを検出する。
【0035】
2.リレーRL1、RL2の故障診断
BM50のCPU51は、車両の駐車中にリレーRLをオープンからクローズ又はクローズからオープンに切り換え、その後エンジン始動時に、リレーRLの両端電圧Vabを検出する。そして、CPU51は、検出した両端電圧Vabに基づいて、リレーRLのオープン故障とクローズ故障を診断する。オープン故障は、クローズ指令を受けても、クローズせず、オープンに固着した故障である。クローズ故障は、オープン指令を受けても、オープンせず、クローズに固着した故障である。
【0036】
以下、図5図6を参照してリレーRLの故障診断処理について具体的に説明する。図5に示す故障診断処理はS10~S50のステップから構成されており、例えば、BM50が起動して、組電池30の監視を開始するのと同時にCPU51により実行される。
【0037】
故障診断処理前の状態において、リレーRL1、リレーRL2はいずれもクローズ状態であるものとする。1回目と2回目の故障診断処理では、リレーRL1の故障診断を行うものとし、3回目と4回目の故障診断処理では、リレーRL2の故障診断を行うものとする。
【0038】
<1回目(リレーRL1の故障診断)>
処理がスタートすると、BM50は、車両の駐車を検出する処理を実行する(S10)。駐車とは、少なくともエンジンやモータ等の駆動部が停止しており、所定時間、車両に動きがない状態である。車両の駐車は、電流センサ41の検出する電流値が所定値以下の状態が所定時間以上継続しているか、否かにより判定することが出来る。所定値は、駐車中にバッテリ20から車両の特定の負荷にのみ流れる暗電流(微小電流)の大きさに合わせてその値が設定されており、一例として100mA程度である。また、それ以外にも、例えば、車両ECU10との通信が所定時間以上、停止しているか否かにより判定することが出来る。
【0039】
車両の駐車(1回目の駐車)を検出すると、次にBM50は、2つのリレーRL1、RL2のうち、診断対象となる一方のリレーRL1についてオープン、クローズを切り換える処理を行う(S20)。
【0040】
1回目に実行するS20の処理では、BM50からリレーRL1に対してオープン指令が送信される。これにより、図6の(A)に示すように、正常であれば、リレーRL1は、クローズからオープンに切り換わる。BM50からリレーRL2に対して指令は送られず、リレーRL2はクローズを維持する。
【0041】
リレーRL1の切り換えを行うと、次に、BM50はエンジンの始動を検出する処理を実行する(S30)。エンジンの始動は、電流センサ41の検出する電流値が閾値より大きいか、否かにより検出することが出来る。閾値は、エンジンをクランキングする時に、バッテリ20からセルモータ15に流れるクランキング電流のピーク値Ipの大きさに合わせてその値が設定されており、一例として800A程度である。
【0042】
エンジンの始動を検出するまでの期間は、S30の処理が繰り返され、待機状態となる。エンジンの始動を検出すると、BM50は、一対のリレーRL1、RL2の両端電圧Vabを検出する(S40)。具体的には、図7に示すように、電流センサ41の検出する電流値が閾値(本例では、800A)を超えるタイミングP、すなわちクランキング電流がピーク値付近となるタイミングで、両端電圧Vabを検出する。
【0043】
リレー1本あたりの導通抵抗値(クローズ状態での抵抗値)を200μΩとすると、リレーRL1が正常にオープンしている場合、2点A-B間の抵抗値は200μΩである。そのため、リレーRL1が正常にオープンしていれば、検出される両端電圧Vabは160mVである。
【0044】
両端電圧Vabを検出すると、次に、BM50は、S40で検出した両端電圧Vabを前回値と比較して電圧差を求めることにより、リレーRL1の故障の有無を判定する処理を実行する。1回目の判定では、前回値が存在していないことから、リレーRL1の故障判定は行われず、S40で検出した両端電圧Vabをメモリ53に記憶する処理が行われる。以上により、1回目の故障診断処理(S10~S50)は終了する。
【0045】
<2回目(リレーRL1の故障診断)>
その後、2回目の処理が開始され、BM50は、車両の駐車を検出する処理を実行する(S10)。エンジン始動後、車両が走行中の期間は、S10の処理(S10:NO)が繰り返され、待機状態となる。
【0046】
車両が走行中から駐車(2回目の駐車)に移行すると、BM50は車両の駐車を検出し、リレーRL1について、オープン、クローズを切り換える処理を行う(S20)。
【0047】
2回目に実行するS20の処理では、BM50からリレーRL1に対してクローズ指令が送信される。これにより、図6の(B)に示すように、正常であれば、リレーRL1は、オープンからクローズに切り換わる。BM50からリレーRL2に対して指令は送られず、リレーRL2はクローズを維持する。
【0048】
リレーRL1に対して切り換えの指令を送ると、次に、BM50はエンジンの始動を検出する処理を実行する(S30)。エンジンの始動を検出するまでの期間は、S30の処理が繰り返され、待機状態となる。
【0049】
エンジンの始動を検出すると、BM50は、一対のリレーRL1、RL2の両端電圧Vabを検出する(S40)。リレー1本あたりの導通抵抗値を200μΩとすると、リレーRL1が正常に動作してクローズしている場合、2点A-B間の抵抗値は100μΩである。そのため、リレーRL1が正常にクローズしている場合、エンジンの始動時に検出される両端電圧Vabは80mVである。
【0050】
両端電圧Vabを検出すると、次に、BM50は、S40で検出した両端電圧Vabに基づいて、リレーRL1の故障の有無を判定する処理を実行する。具体的には、リレーRL1が正常に動作してクローズしていれば、2回目に検出される両端電圧Vabは80mVであり、1回目に検出される両端電圧Vabに対して、約80mVの電圧差が生じる。
【0051】
従って、S40で検出した両端電圧Vabを前回値と比較して、2つの両端電圧Vabの電圧差の絶対値が規定値(一例として40mV)以上の場合、リレーRL1はオープン故障していないと判定できる。
【0052】
オープン故障していないと判定された場合、S40で検出した両端電圧Vabをメモリ53に記憶する処理が行われる。以上により、2回目の故障診断処理(S10~S50)は終了する。その後、3回目の故障診断処理が実行される。
【0053】
2回目の故障診断処理で、2つの両端電圧Vabの電圧差の絶対値が規定値(一例として40mV)未満の場合、リレーRL1はオープン故障していると判定される。オープン故障と判定された場合、BM50から車両ECU10に対して異常を通知する等の警告処理が実行される。
【0054】
<3回目(リレーRL2の故障診断)>
その後、3回目の処理が開始され、BM50は、車両の駐車を検出する処理を実行する(S10)。車両が走行中から駐車(3回目の駐車)に移行すると、BM50は車両の駐車を検出し、リレーRL2について、オープン、クローズを切り換える処理を行う(S20)。
【0055】
3回目に実行するS20の処理では、BM50からリレーRL2に対してオープン指令が送信される。これにより、図6の(C)に示すように、正常であれば、リレーRL2は、クローズからオープンに切り換わる。BM50からリレーRL1に対して指令は送られず、リレーRL1はクローズを維持する。
【0056】
リレーRL2に対して切り換えの指令を送ると、次に、BM50はエンジンの始動を検出する処理を実行する(S30)。エンジンの始動を検出するまでの期間は、S30の処理が繰り返され、待機状態となる。
【0057】
エンジンの始動を検出すると、BM50は一対のリレーRL1、RL2の両端電圧Vabを検出する(S40)。リレーRL2が正常に動作してオープンしている場合、2点A-B間の抵抗値は200μΩである。そのため、リレーRL2が正常に動作してオープンしている場合、エンジンの始動時に検出される両端電圧Vabは160mVである。
【0058】
両端電圧Vabを検出すると、次に、BM50は、S40で検出した両端電圧Vabに基づいて、リレーRL2の故障の有無を判定する処理を実行する。具体的には、リレーRL2が正常に動作してオープンしていれば、3回目に検出される両端電圧Vabは160mVであり、2回目に検出される両端電圧Vabに対して約80mVの電圧差が生じる。
【0059】
従って、S40で検出した両端電圧Vabを前回値と比較して、2つの両端電圧Vabの電圧差の絶対値が規定値(一例として40mV)以上の場合、リレーRL2はクローズ故障していないと判定できる。
【0060】
クローズ故障していないと判定された場合、S40で検出した両端電圧Vabをメモリ53に記憶する処理が行われる。以上により、3回目の故障診断処理(S10~S50)は終了する。その後、4回目の故障診断処理が実行される。
【0061】
3回目の故障診断処理で、2つの両端電圧Vabの電圧差の絶対値が規定値(一例として40mV)未満の場合、リレーRL2はクローズ故障していると判定される。クローズ故障と判定された場合、BM50から車両ECU10に対して異常を通知する等の警告処理が実行される。
【0062】
<4回目(リレーRL2の故障診断)>
その後、4回目の処理が開始され、BM50は、車両の駐車を検出する処理を実行する(S10)。車両が走行中から駐車(4回目の駐車)に移行すると、BM50は車両の駐車を検出し、リレーRL2について、オープン、クローズを切り換える処理を行う(S20)。
【0063】
4回目に実行するS20の処理では、BM50からリレーRL2に対してクローズ指令が送信される。これにより、図6の(D)に示すように、正常であれば、リレーRL2は、オープンからクローズに切り換わる。BM50からリレーRL1に対して指令は送られず、リレーRL1はクローズを維持する。
【0064】
リレーRL2に対して切り換えの指令を送ると、次に、BM50はエンジンの始動を検出する処理を実行する(S30)。エンジンの始動を検出するまでの期間は、S30の処理が繰り返され、待機状態となる。
【0065】
エンジンの始動を検出すると、BM50は、一対のリレーRL1、RL2の両端電圧Vabを検出する(S40)。リレーRL2が正常に動作してクローズしている場合、2点A-B間の抵抗値は100μΩである。そのため、リレーRL2が正常に動作してクローズしている場合、エンジンの始動時に検出される両端電圧Vabは80mVである。
【0066】
両端電圧Vabを検出すると、次に、BM50は、S40で検出した両端電圧Vabに基づいて、リレーRL2の故障の有無を判定する処理を実行する。具体的には、リレーRL2が正常であれば、4回目に検出される両端電圧Vabは80mVであり、3回目に検出される両端電圧Vabに対して約80mVの電圧差が生じる。
【0067】
従って、S40で検出した両端電圧Vabを前回値と比較して、2つの両端電圧Vabの電圧差の絶対値が規定値(一例として40mV)以上の場合、リレーRL2はオープン故障していないと判定できる。オープン故障していないと判定された場合、S40で検出した両端電圧Vabをメモリ53に記憶する処理が行われる。以上により、4回目の故障診断処理(S10~S50)は終了する。
【0068】
4回目の故障診断処理で、2つの両端電圧Vabの電圧差の絶対値が規定値(一例として40mV)未満の場合、リレーRL2はオープン故障していると判定される。オープン故障と判定された場合、BM50から車両ECU10に対して異常を通知する等の警告処理が実行される。
【0069】
故障診断処理は1回目~4回目が1つのサイクルを構成している。1サイクル目が終了すると、2サイクル目に入り、1サイクル目と同様に1回目の故障診断処理が順に実行される。
【0070】
これにより、1回目の故障診断処理では、駐車中にリレーRL1に対してオープンに切り換える指令を送った後、BMは、エンジンの始動時に、一対のリレーRL1、RL2の両端電圧Vabを検出する。
【0071】
検出した両端電圧Vabを、前回値(1サイクル目の4回目の故障診断処理で検出した両端電圧Vab)と比較して電圧差を求め、求めた電圧差の絶対値を規定値と比較することにより、BM50は、リレーRL1についてクローズ故障しているか判定する。
【0072】
クローズ故障していないと判定された場合、S40で検出した両端電圧Vabをメモリ53に記憶する処理が行われる。一方、クローズ故障と判定された場合、BM50から車両ECU10に対して異常を通知する等の警告処理が実行される。
【0073】
2回目以降の故障診断処理は、1サイクル目の各回の故障診断処理と同じであり、2回目の故障診断処理では、リレーRL1についてオープン故障しているか判定される。3回目の故障診断処理では、リレーRL2についてクローズ故障しているか判定される。4回目の故障診断処理では、リレーRL2についてオープン故障しているか判定される。
【0074】
以上説明したように、BM50は、車両が駐車するごとに、下記の(1)~(3)を実行することで、一対のリレーRL1、RL2についてオープン故障とクローズ故障を1つずつ順に診断する。
【0075】
(1)車両の駐車を検出し、一対のリレーRL1、RL2のうち診断対象となる一方のリレーRLをオープンからクローズ又はクローズからオープンに交互に切り換え、他方のリレーはクローズする(S20)。
(2)切り換え後、エンジン始動時に、リレーRL1、RL2の両端電圧Vabを検出する(S40)。
(3)検出した両端電圧Vabに基づいて、診断対象となるリレーRLの故障の有無を判定する(S50)。
【0076】
3.効果説明
本構成では、故障診断を目的としたリレーRL1、RL2の切り換えを駐車中に行うので、車両走行中に故障診断を目的にリレーRL1、RL2が操作されることはない。そのため、車両走行中に電力供給が遮断されてしまうことを回避しつつ、リレーRL1、RL2の故障を診断出来る。従って、自動車に求められる機能安全(ISO26262規格)の要求を満たすことが出来る。
【0077】
また、エンジン始動のクランキング電流が流れた時に、リレーRL1、RL2の両端電圧Vabを検出する。クランキング電流は大電流であることから、両端電圧Vabの変化が大きい。そのため、リレーRL1、RL2の故障の有無を精度よく判定することが出来る。
【0078】
本構成では、一対のリレーRL1、RL2のオープン又はクローズを交互に切り換えて故障診断を行うので、故障診断中でも、いずれか一方のリレーRL1、RL2はクローズ状態である。そのため、故障診断中についても、車両への電力供給が途絶えるリスクが小さい。
【0079】
<実施形態2>
実施形態1にて、BM50は、リレーRL1、RL2のクローズ故障を診断のため、駐車中に、診断対象のリレーRL1、RL2をクローズからオープンに切り換えた。例えば、図6の(A)では、リレーRL1のクローズ故障を診断するため、駐車を検出すると、リレーRL1をクローズからオープンに切り換え、図6の(C)では、リレーRL2のクローズ故障を診断するため、駐車を検出すると、リレーRL2をクローズからオープンに切り換えた。
【0080】
そして、リレーRL1、RL2の切り換え後、エンジン始動時に、リレーRL1、RL2の両端電圧Vabを検出し、それを前回値と比較することで、リレーRL1、RL2のオープン故障を診断した。
【0081】
実施形態2において、BM50は、両端電圧検出後の車両の走行中、並列に接続された一対のリレーRL1、RL2の双方をクローズさせる。具体的には、図6の(A)に示すように、リレーRL1をオープンに切り換えてリレーRL1のクローズ故障を診断した後、車両が走行状態に移行すると、BM50は、リレーRL1に対してクローズの指令を送る。これにより、リレーRL1がオープンからクローズに切り換わり、走行中、2つのリレーRL1、RL2の双方がクローズする。
【0082】
また、図6の(C)に示すように、リレーRL2をオープンに切り換えてリレーRL2のクローズ故障を診断した後、車両が走行状態に移行すると、BM50は、リレーRL2に対してクローズの指令を送る。これにより、リレーRL2がオープンからクローズに切り換わり、走行中、2つのリレーRL1、RL2の双方がクローズする。
【0083】
車両ECU10は、エンジンの状態を監視している。そのため、BM50は、車両ECU10からエンジンの状態に関する情報を通信で受信することにより、車両1が走行中か、否かを判断することが出来る。
【0084】
実施形態2では、走行中、2つのリレーRL1、RL2の双方をクローズすることで、例えば、走行中の振動等により、一対のリレーRL1、RL2のうち、いずれか一方のリレーRLが意図せずに開いた場合でも、車両走行中、バッテリ20から車両に対して電力供給を継続出来る。従って、自動車に求められる機能安全(ISO26262規格)の要求を満たすことが出来る。実施形態2では、走行中、2つのリレーRL1、RL2の双方をクローズする。そのため、図6の(B)、(D)に示すように、リレーRL1やリレーRL2のオープン故障の診断を行う場合、駐車中にリレーRL1、RL2を改めて閉じる操作を行う必要はなく、エンジン始動時に、リレーRLの両端電圧Vabを検出して、それを前回値と比較することで、リレーRL1やリレーRL2のオープン故障の有無を診断できる。
【0085】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0086】
(1)上記実施形態1、2では、電流遮断装置の一例にリレーRLを例示したが、FETやトランジスタなどの半導体スイッチを用いてもよい。また、蓄電素子の一例にリチウムイオン二次電池を例示したが、蓄電素子は他の二次電池やキャパシタ等であってもよい。蓄電素子の個数も複数である必要はなく、1つでもよい。
【0087】
(2)上記実施形態1、2では、診断対象のリレーRLをオープンからクローズ又はクローズからオープンに切り換える切換処理を駐車中に行った例を示した。切換処理の実行タイミングは、駐車中に限定されるものではなく、エンジン停止中であれば、いつ実施してもよい。例えば、エンジン停止直後のタイミングで行ってもよい。
【0088】
(3)上記実施形態1、2では、車両の駐車を検出してリレーRLを切り換え、その後、エンジン始動時に検出したリレーRLの両端電圧Vabを前回値と比較することにより、リレーRLの故障の有無を判定する方法を例示した。リレーRLの故障の有無の判定は、実施形態で例示した方法の他にも、例えば、エンジン始動時に検出されるリレーRLの両端電圧Vabを、リレー正常時の両端電圧(リレーRLが正常に動作している場合にエンジン始動時に検出される両端電圧)Vabと比較することにより、故障の有無を判断するようにしてもよい。例えば、図6の(B)に示すように、リレーRL1をクローズに切り換えて、リレーRL1のオープン故障を診断する場合、リレーRL1がオープン故障していなければ、エンジン始動時に検出されるリレーRLの両端電圧Vabは80mVである。従って、実際に検出される両端電圧Vabが80mVであるか否かにより、故障の有無を判定してもよい。
【0089】
(4)上記実施形態1、2では、車両の駐車を検出してリレーRLを切り換え、その後、エンジン始動時に検出したリレーRLの両端電圧Vabを前回値と比較することにより、リレーRLの故障の有無を判定する方法を例示した。リレーRLの両端電圧Vabを検出するタイミングは、、アイドリングストップ後のエンジン始動時でもよい。すなわち、駐車を検出してリレーRLを切り換えた後、その車両が次に駐車するまでの間に、エンジン始動が複数回ある場合、どのタイミングでリレーRLの両端電圧Vabを検出してもよい。アイドリングストップとは、信号待ちなど車両を停止させたときに自動的にエンジンを切り、発進時にエンジンを再始動するシステムである。
【0090】
(5)上記実施形態1、2では、車両の駐車中に、リレーRLをオープンからクローズ又はクローズからオープンに切り換えた。その後、リレーRLに800A以上の電流が流れている時に、リレーRLの両端電圧Vabを検出し、検出した両端電圧Vabに基づいて、リレーRLのオープン故障とクローズ故障を診断した。両端電圧Vabの検出の可否を決める電流の閾値は、800Aに限らない。例えば、リレーRLの1本当たりの導通抵抗が800μΩ、BM50にて計測可能な最低電圧が80mVの場合、200A以上の電流が流れると、2つのリレーRL1、RL2をクローズした時の両端電圧Vabは80mVで、BM50が計測可能な最低電圧と等しい。従って、閾値を200Aとして、200A以上の電流が流れている時に、リレーRLの両端電圧Vabを検出することが出来る。また、リレーRLの1本当たりの導通抵抗が800μΩ、BM50にて計測可能な最低電圧が40mVの場合、100A以上の電流が流れていれば、2つのリレーRL1、RL2をクローズした時の両端電圧Vabは40mVで、BM50が計測可能な最低電圧に等しい。そのため、閾値を100Aとして、100A以上の電流が流れている時に、リレーRLの両端電圧Vabを検出することが出来る。上記のように、閾値は、リレーRLの両端電圧Vabが、BM50により計測可能であるか否かに基づいて決定することが出来る。
【0091】
また、リレーRLに閾値よりも大きい電流が流れている時であれば、エンジン始動時以外のタイミング、例えば、車両1の走行開始時や走行中に、リレーRLの両端電圧Vabを検出してもよい。図8に示すように、バッテリ20に車両1の走行をアシストするアシストモータ16が接続されている場合、バッテリ20からアシストモータ16に対して、閾値よりも大きい電流が流れている時に、リレーRLの両端電圧Vabを検出してもよい。尚、閾値と比較する電流値は、2つのリレーRL1、RL2に流れる総電流であり、2つのリレーRL1、RL2の一方だけクローズしている場合は、クローズしている一方のリレーRL1、RL2に流れる電流、2つのリレーRL1、RL2の双方がクローズしている場合は、クローズしている2つのリレーRL1、RL2に流れる電流の合計である。
【0092】
(6)リレーRLの両端電圧Vabを検出するタイミングは、リレーRLに閾値よりも大きい電流が流れている時であればよく、放電中、充電中のどちらでもよい。バッテリ20に対してモータやコンプレッサなどの動力装置が負荷として接続されている場合、放電中は、充電中に比べて大電流が流れることから、リレーRLの両端電圧Vabが高く、計測精度が高い。従って、計測精度を優先する場合は、バッテリ20の放電中に両端電圧Vabを検出するとよい。充電中は、放電中に比べて電流が安定している場合が多く、リレーRLの両端電圧Vabを検出するタイミングが取りやすい。従って、検出タイミングを優先する場合は、バッテリ20の充電中に両端電圧Vabを検出するとよい。充電は、車両に搭載されたオルタネータなどの車両発電機による充電、車両外に設けられた外部充電器による充電のどちらでもよい。バッテリ20が放電中か、充電中かの判断は、電流センサ41により検出される電流の極性に基づいてCPU51にて行うことが出来る。
【0093】
(7)上記実施形態1、2では、電流遮断回路45を、並列に接続された2つのリレーRL1、RL2から構成した。図9に示すバッテリ100のように、電流遮断回路145を、半導体スイッチ145Aとリレー145Bを並列に組み合わせた構成にしてもよい。半導体スイッチ145Aの電流容量が、リレー145Bの電流容量に比べて小さい場合、半導体スイッチ145Aを複数並列に接続して電流容量の不足を補うとよい。
【0094】
(8)上記実施形態1、2では、12V系の組電池30からセルモータ15に電力を供給する電源システムを例示した。本技術は、図10に示すように、12V系組電池210対してDC-DCコンバータ230を介して48V系組電池250を組み合わせた電池システム200からセルモータやアシストモータ等の12V系車両負荷Uに対して、電力を供給する電源システム200に対して適用することが出来る。また、12V系組電池と24V系組電池を組み合わせた電源システムに対して適用することが出来る。
【0095】
(10)また、本明細書に開示した技術は、電流遮断装置に閾値以上の電流が流れる用途であれば、適用することが出来る。上記のような自動車に限られず、電動駆動も併せ持つHEV(Hybrid Electric Vehicle)、2輪車、大きな回生電力が発生する鉄道車両などに、バッテリ20、100、電源システム200を搭載してもよい。アイドリングストップ車両に搭載されたバッテリ20、100、電源システム200に対して本技術を実施すると、頻繁にクランキングが発生するため、故障検知を実施できるタイミングが多く、故障検知について、信頼性があがる。
【符号の説明】
【0096】
1...自動車(本発明の「車両」の一例)
15...セルモータ
20...バッテリ(本発明の「蓄電装置」の一例)
30...組電池
31...次電池(本発明の「蓄電素子」の一例)
41...電流センサ
45...電流遮断回路
50...電池管理装置(本発明の「故障診断装置」の一例)
RL1...リレー(本発明の「電流遮断装置」の一例)
RL2...リレー(本発明の「電流遮断装置」の一例)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10