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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】鞍乗型車両の運転支援装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/188 20120101AFI20220809BHJP
   B60W 40/04 20060101ALI20220809BHJP
   B62J 27/00 20200101ALI20220809BHJP
   B62J 45/40 20200101ALI20220809BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
B60W30/188
B60W40/04
B62J27/00
B62J45/40
G08G1/16 D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018023060
(22)【出願日】2018-02-13
(65)【公開番号】P2019137263
(43)【公開日】2019-08-22
【審査請求日】2020-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100103539
【弁理士】
【氏名又は名称】衡田 直行
(74)【代理人】
【識別番号】100139365
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 武雄
(72)【発明者】
【氏名】倉田 光次
【審査官】▲高▼木 真顕
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-102893(JP,A)
【文献】特開2017-091138(JP,A)
【文献】特開2016-222170(JP,A)
【文献】特開2009-237887(JP,A)
【文献】特開2017-200791(JP,A)
【文献】特開2018-101302(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0158800(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00 - 60/00
B62J 1/00 - 99/00
G08G 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鞍乗型車両の運転を支援する鞍乗型車両の運転支援装置であって、
鞍乗型車両である自車両が道路に設けられたゲートを通過している最中であること、および前記自車両が前記ゲートを通過したことをそれぞれ認識するゲート通過認識部と、
前記自車両の側方を並走している側方車両を認識し、かつ前記側方車両が鞍乗型車両であるか、鞍乗型車両ではない四輪以上の自動車であるかを認識する側方車両認識部と、
前記自車両が前記ゲートを通過したことが前記ゲート通過認識部により認識され、前記自車両が前記ゲートを通過した時点において前記側方車両が前記側方車両認識部により認識され、かつ前記側方車両が鞍乗型車両ではない四輪以上の自動車であることが前記側方車両認識部により認識されたときには、前記自車両の運転者による前記自車両のアクセル操作に応じて前記自車両を通常よりも加速させる加速支援を行い、前記自車両が前記ゲートを通過したことが前記ゲート通過認識部により認識され、前記自車両が前記ゲートを通過した時点において前記側方車両が前記側方車両認識部により認識され、かつ前記側方車両が鞍乗型車両であることが前記側方車両認識部により認識されたときには、前記加速支援を行わない加速支援部と、
前記自車両と前記自車両の直後を走行する後続車両との距離が所定の距離未満となったか否かを認識する車間距離認識部と、
前記自車両が前記ゲートを通過している最中であることが前記ゲート通過認識部により認識され、かつ前記自車両が前記ゲートを通過している最中に前記自車両と前記後続車両との距離が前記所定の距離未満になったことが前記車間距離認識部により認識されたときに、前記後続車両に向けて警報を発する警報出力部とを備えていることを特徴とする鞍乗型車両の運転支援装置。
【請求項2】
前記加速支援部は、前記道路に設けられた複数の前記ゲートにそれぞれ対応する複数の車線がゲートを通過した先で合流する地点まで前記加速支援を行うことを特徴とする請求項1に記載の鞍乗型車両の運転支援装置。
【請求項3】
前記加速支援部は、前記自車両におけるスロットル開度、燃料噴射量、または走行の動力源として用いられる電動モータの回転速度を制御して前記加速支援を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の鞍乗型車両の運転支援装置。
【請求項4】
前記警報出力部は、前記自車両と前記後続車両との間の車車間通信を用いて前記警報を前記後続車両に向けて送信することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の鞍乗型車両の運転支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鞍乗型車両の運転を支援する鞍乗型車両の運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、交通の予防安全を図るために、自動車の運転を支援する運転支援装置の開発が進められている。運転支援装置には、自動車が走行する様々な場面や状況に対応して様々なものがある。
【0003】
基本的な運転支援装置として、カメラまたはレーダ等を用いて自車両の前方に存在する他車両または歩行者等を検知し、他車両または歩行者等との衝突の危険がある場合には、自車両の運転者へ警報を発し、または自車両を自動的に制動する運転支援装置がある。また、カメラ等を用いて車線の位置を認識し、自車両が車線から逸脱しそうになった場合には、自車両の運転者へ警報を発し、または自車両を車線内に維持するように自車両の制動および操舵を自動的に制御する運転支援装置がある。
【0004】
また、限られた場面に対応した運転支援装置として、下記の特許文献1には、加速車線と本線とが合流するエリアにおいて、自車両が加速車線から本線に合流する際に自車両の運転を支援する合流支援装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-199264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、自車両が自動二輪車等の鞍乗型車両であり、そのような自車両が道路に設けられたゲートを通過するという場面に対応した運転支援を考える必要がある。
【0007】
例えば、有料道路の入口または出口には、料金徴収等を行うためのゲート(料金所)がある。高速道路のように、交通量の多い有料道路の入口または出口においては、道路の幅が拡張され、複数のゲートが道路の幅方向に並べられている。これらゲートの前後では車線の数が変化する。すなわち、ゲートの手前では車線が分岐して車線の数が増加し、ゲートの先では車線が合流して車線の数が減少する。複数のゲートを複数の車両がそれぞれ同時に通過した場合、これらの車両がゲートの先の車線合流地点で互いに急接近または接触するおそれがある。このため、自車両が有料道路のゲートを通過するという場面においては、ゲートの先の車線合流地点で自車両と他車両との急接近または接触を回避するための運転支援が求められる。
【0008】
また、一般に、自動二輪車等の鞍乗型車両は、自動四輪車その他の四輪以上の自動車と比較して加速性能が高く、小回りが利く。それゆえ、自車両が鞍乗型車両であり、他車両が四輪以上の自動車である場合において、自車両と他車両とが2つのゲートをそれぞれ同時に通過したときには、自車両の方が他車両よりも車線合流地点に先に到達するようにすることで、自車両と他車両との急接近または接触を円滑に回避することができる。車線合流地点で自車両と他車両との急接近または接触を回避するための運転支援を行うに当たっては、このような鞍乗型車両の性能を考慮する必要がある。
【0009】
本発明は例えば上述したような要請に鑑みなされたものであり、本発明の目的は、道路に設けられたゲートを通過する際の鞍乗型車両の予防安全性能を向上させることができる鞍乗型車両の運転支援装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、鞍乗型車両の運転を支援する鞍乗型車両の運転支援装置であって、鞍乗型車両である自車両が道路に設けられたゲートを通過している最中であること、および前記自車両が前記ゲートを通過したことをそれぞれ認識するゲート通過認識部と、前記自車両の側方を並走している側方車両を認識し、かつ前記側方車両が鞍乗型車両であるか、鞍乗型車両ではない四輪以上の自動車であるかを認識する側方車両認識部と、前記自車両が前記ゲートを通過したことが前記ゲート通過認識部により認識され、前記自車両が前記ゲートを通過した時点において前記側方車両が前記側方車両認識部により認識され、かつ前記側方車両が鞍乗型車両ではない四輪以上の自動車であることが前記側方車両認識部により認識されたときには、前記自車両の運転者による前記自車両のアクセル操作に応じて前記自車両を通常よりも加速させる加速支援を行い、前記自車両が前記ゲートを通過したことが前記ゲート通過認識部により認識され、前記自車両が前記ゲートを通過した時点において前記側方車両が前記側方車両認識部により認識され、かつ前記側方車両が鞍乗型車両であることが前記側方車両認識部により認識されたときには、前記加速支援を行わない加速支援部と、前記自車両と前記自車両の直後を走行する後続車両との距離が所定の距離未満となったか否かを認識する車間距離認識部と、前記自車両が前記ゲートを通過している最中であることが前記ゲート通過認識部により認識され、かつ前記自車両が前記ゲートを通過している最中に前記自車両と前記後続車両との距離が前記所定の距離未満になったことが前記車間距離認識部により認識されたときに、前記後続車両に向けて警報を発する警報出力部とを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、道路に設けられたゲートを通過する際の鞍乗型車両の予防安全性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施例の運転支援装置が自車両の運転支援を行う場面の一例を示す説明図である。
図2】ゲートを通過している最中の自車両、およびその後続車両を示す説明図である。
図3】有料道路の入口に設置された2つのゲートを自車両と他車両とがほぼ同時に通過し、通過直後において、自車両の側方を他車両が並走している状態を示す説明図である。
図4】本発明の実施例の運転支援装置の構成を示すブロック図である。
図5】本発明の実施例の運転支援装置における運転支援処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態の運転支援装置は、鞍乗型車両の運転を支援する装置であって、ゲート通過認識部(第1のゲート通過認識部)、側方車両認識部および加速支援部とを備えている。ゲート通過認識部は、例えば自車両に設けられたカメラ等により、鞍乗型車両である自車両が道路の入口または出口等に設けられたゲートを通過したことを認識する。側方車両認識部は、例えば自車両に設けられたカメラ等により、自車両の側方を並走している側方車両を認識する。加速支援部は、ゲート通過認識部による認識および側方車両認識部による認識に基づき、自車両がゲートを通過した時点において側方車両が認識されたとき、自車両の加速支援を行う。加速支援は、自車両の運転者のアクセル操作に対する自車両の加速の割合を通常よりも増加させる制御でもよいし、自車両を自動的に加速させる制御でもよい。
【0014】
本発明の実施形態の運転支援装置において、道路の入口または出口等に道路の幅方向に並んで設けられている2つのゲートを自車両と他車両とがそれぞれ同時に通過したとき、ゲート通過認識部は、自車両がゲートを通過したことを認識し、側方車両認識部は、自車両の側方を並走している他車両(側方車両)を認識する。そして、加速支援部は、これらの認識に基づき、自車両の加速支援を行う。この結果、自車両はゲートの先の車線合流地点に側方車両よりも先に到達する。これにより、ゲートの先の車線合流地点で自車両と側方車両とが急接近または接触することを回避することができる。このように、本発明の実施形態の運転支援装置によれば、道路に設けられたゲートを通過する際の鞍乗型車両の予防安全性能を向上させることができる。
【0015】
また、本発明の実施形態の運転支援装置においては、鞍乗型車両である自車両を加速させて自車両を側方車両よりも先に車線合流地点に到達させることで自車両と側方車両との急接近または接触を回避する。これにより、自車両を減速させて自車両を側方車両よりも後に車線合流地点に到達させることで自車両と側方車両との急接近または接触を回避するよりも円滑に、自車両と側方車両との急接近または接触を回避することができる。すなわち、鞍乗型車両は他の種類の車両と比較して加速性能が高く、小回りが利くので、鞍乗型車両である自車両を、他の種類の車両である側方車両の先を行かせる方が、両車両の急接近または接触を迅速かつ容易に避けることができ、かつ自車両の運転者のストレスが少ない。
【実施例
【0016】
図1は本発明の実施例の運転支援装置が自車両の運転支援を行う場面の一例を示している。図1に示すように、本発明の実施例の運転支援装置は、自車両(当該運転支援装置による運転支援の対象となる車両)が有料道路の入口1または出口2に設置されたゲート3を通過する場面において、自車両の運転支援を行うことができる。
【0017】
一般に、有料道路の入口または出口には、有料道路の利用料金を徴収するためのゲートが設置されている。ゲートには有人ゲートと無人ゲートがある。現在は、無人ゲートの一種であるETC(電子料金収受)ゲートが普及している。また、例えば高速道路のように、有料道路の始点から終点までの間に複数の入口および出口が設けられており、利用区間に応じて利用料金の額が設定されている有料道路の場合には、通常、有料道路の入口と出口の双方にゲートが設置されている。また、例えば有料トンネルのように、有料道路の始点および終点に入口および出口がそれぞれ設けられているのみであり、利用区間に応じた利用料金の額の設定のない有料道路の場合には、有料道路の入口および出口のいずれか一方にのみゲートが設置されていることもある。また、例えば高速道路のように、多くの車両が利用する有料道路の場合には、入口または出口に複数のゲートが設置されている場合が多い。この場合、入口または出口において道路の幅が広がっており、複数のゲートが道路の幅方向に並んでいる。また、入口または出口に接続している道路の車線の数よりもゲートの数の方が多い場合には、ゲートの前後で車線が変化する。すなわち、ゲートの手前で車線の数が増加し、ゲートの先で車線の数が減少する。
【0018】
図1に示す例では、有料道路の入口1および出口2において道路の幅が広がっており、入口1には4つのゲート3が道路の幅方向に並んでおり、出口2にも4つのゲート3が道路の幅方向に並んでいる。また、入口1および出口2において、それぞれのゲート3に対応するように車線Lが設けられている。また、入口1および出口2のいずれにおいても、4つのゲート3のうち、道路の外側の3つのゲート3がETCゲートであり、道路の中央側の1つのゲート3が有人ゲートである。ETCゲートであるゲート3には、ゲートバー4およびETC通信機(図示せず)が設置されている。また、有人のゲート3の脇には料金徴収員が作業を行う作業室5が設置されている。
【0019】
また、入口1において車両の進行方向手前側(図1中の下側)には、1車線を有する1本の道路6が接続され、入口1において車両の進行方向先側(図1中の上側)には、それぞれ1車線を有する2本の道路7が接続されている。その結果、入口1において、ゲート3の手前では車線が1本から4本に増加し、ゲート3の先では車線が実質的に見て4本から2本に減少している。また、出口2において車両の進行方向手前側(図1中の上側)には、それぞれ1車線を有する2本の道路8が接続され、出口2において車両の進行方向先側(図1中の下側)には、1車線を有する1本の道路9が接続されている。その結果、出口2において、ゲート3の手前では実質的に見て車線が2本から4本に増加し、ゲート3の先では車線が4本から1本に減少している。また、入口1および出口2のそれぞれにおいて、ゲート3の先には、4本の車線Lが合流する車線合流地点Cが存在している。
【0020】
図2は、ゲート3を通過している最中の自車両11、およびその後続車両12を示している。本発明の実施例の運転支援装置21が運転支援を行う車両は、例えば自動二輪車等の鞍乗型車両である。また、図2に示すように、運転支援装置21は、鞍乗型車両である自車両11がゲート3を通過している最中に、自車両11の直後を走行する他車両(後続車両12)が自車両11に接近し、自車両11と後続車両12との間の距離が所定の距離未満となったときに、後続車両12に向けて警報を発する機能(第1の運転支援機能)を有している。なお、後続車両12は、図2に示すような自動四輪車に限らず、鞍乗型車両でもよいし、大型トラックのように4輪よりも多くの車輪を有する車両でもよい。また、後続車両12は手動運転車両でもよいし、自動運転車両(自動運転のレベルが1以上の車両)でもよい。
【0021】
図3は、例えば入口1に設置された2つのゲート3を自車両11と他車両とがほぼ同時に通過し、通過直後において、自車両11の側方を他車両が並走している状態を示している。本発明の実施例の運転支援装置21は、図3に示すように、鞍乗型車両である自車両11がゲート3を通過した後に、自車両11の側方を並走している他車両(側方車両13)が存在し、かつ、この側方車両13が四輪以上の自動車である場合に、自車両11の加速支援を行う機能(第2の運転支援機能)を有している。4輪以上の自動車には、自動四輪車、および大型トラックのような4輪よりも多くの車輪を有する車両が含まれる。また、側方車両は手動運転車両でもよいし、自動運転車両でもよい。
【0022】
図4は本発明の実施例の運転支援装置21の構成を示している。図4に示すように、運転支援装置21は、複数のカメラ22、複数のレーダ23、GPS(グローバル・ポジショニング・システム)受信機24、ジャイロセンサ25、ETC通信機26、レーダ波検知装置27、車車間通信機28、走行制御装置29、記憶装置30および演算処理装置31等を備えている。運転支援装置21のこれらの構成要素はいずれも自車両11に設けられている。
【0023】
カメラ22は例えばビデオカメラであり、自車両11の前方、後方、左方および右方を撮像することができるように、自車両11に複数設けられている。なお、カメラ22はスチルカメラでもよい。また、可視光線のカメラ22に加え、赤外線カメラを設けてもよい。レーダ23は例えばミリ波レーダまたはレーザレーダである。これら2種類のレーダの双方を設けてよい。また、レーダ23は、自車両11の前方、後方、左方および右方に存在する物体を検知することができるように、自車両11に複数設けられている。なお、カメラ22およびレーダ23に加え、超音波センサを設けてもよい。
【0024】
GPS受信機24は、GPS衛星から送信される信号を受信する装置であり、GPSにより自車両11の位置を認識するために利用される。ジャイロセンサ25は、GPSによる自車両11の位置の認識誤差を補正するため、またはGPS衛星から送信される信号をGPS受信機24により受信することができないときに、自車両11の位置を認識するために利用される。ETC通信機26は、ETCゲートに設けられたETC通信機と通信を行う装置である。レーダ波検知装置27は、他車両から自車両11に向けて発射されるレーダ波を検知する装置である。
【0025】
車車間通信機28は、自車両11と他車両との間で通信を行うための装置である。走行制御装置29は、自車両11の走行を制御する装置である。走行制御装置29は、自車両11のエンジンの吸気ポート近傍に設けられたスロットルバルブの開度(スロットル開度)、またはエンジンの吸気ポート付近でエンジンの燃焼室へ送り込むための燃料を噴射する燃料噴射装置における燃料噴射量を制御することができる。
【0026】
記憶装置30は例えば半導体記憶素子を有している。記憶装置30には地図情報Mが記憶されている。地図情報Mは、ジャイロセンサ25により自車両11の位置を認識する際に利用される。
【0027】
演算処理装置31は例えばCPU(中央演算処理装置)を有している。演算処理装置31は、記憶装置30等に記憶されたプログラムを読み取って実行することにより、ゲート通過認識部41、車間距離認識部42、警報出力部43、側方車両認識部44および加速支援部45として機能する。ゲート通過認識部41は、自車両11がゲート3を通過している最中であることを認識する機能を有している。また、ゲート通過認識部41は、自車両11がゲート3を通過したことを認識する機能を有している。車間距離認識部42は、自車両11と後続車両12との距離が所定の距離未満となったことを認識する機能を有している。警報出力部43は、自車両11がゲート3を通過している最中において、自車両11と後続車両12との間の距離が所定の距離未満になったとき、自車両11と後続車両12との間の車車間通信を用いて後続車両12に向けて警報を発する機能を有している。側方車両認識部44は、側方車両13の存在を認識し、かつ側方車両13が四輪以上の自動車であることを認識する機能を有している。加速支援部45は、自車両11がゲート3を通過した時点で側方車両13が認識されたときに自車両11の加速支援を行う機能を有している。
【0028】
図5は運転支援装置21における運転支援処理を示している。この運転支援処理は、自車両11のエンジンが稼働している間に繰り返し実行される。また、図5に示す運転支援処理において、ステップS1からステップS4までが上記における第1の運転支援機能を実現するための処理であり、ステップS5からステップS11までが上記における第2の運転支援機能を実現するための処理である。
【0029】
運転支援処理において、まず、運転支援装置21のゲート通過認識部41が、GPS受信機24、ジャイロセンサ25、地図情報M、カメラ22、ETC通信機26等を用いて、自車両11がゲート3を通過している最中か否かを認識する(ステップS1)。例えば、ゲート通過認識部41は、GPS衛星から送信されてGPS受信機24により受信された信号に基づいて自車両11の現在位置を認識し、この認識の誤差を、ジャイロセンサ25から出力された検出信号および地図情報Mに基づいて補正し、自車両11の正確な位置を認識する。さらに、ゲート通過認識部41は、カメラ22により撮像された自車両11の周囲の画像を用いて画像認識を行い、自車両11が現在走行している場所がゲート3内であることを認識する。さらに、ゲート通過認識部41は、自車両11に設けられたETC通信機26がゲート3に設けられたETC通信機と通信を行ったことに基づいて、自車両11がゲート3を通過していることを認識する。
【0030】
自車両11がゲート3を通過している最中であることがゲート通過認識部41により認識されたときには(ステップS1:YES)、続いて、車間距離認識部42が、カメラ22およびレーダ23を用いて、後続車両12が存在するか否かを認識する(ステップS2)。例えば、車間距離認識部42は、カメラ22により撮像された自車両11の後方の画像を用いて画像認識を行い、後続車両12の存在を認識する。また、車間距離認識部42は、レーダ23から自車両11の後方へ発射したレーダ波の反射波等に基づいて、後続車両12の存在を認識する。また、レーダ波検知装置27を用いて、後続車両12から発射されるレーダ波を検知することにより、後続車両12の存在を認識してもよい。
【0031】
後続車両12の存在が車間距離認識部42により認識された場合には(ステップS2:YES)、続いて、車間距離認識部42は、カメラ22およびレーダ23を用いて、自車両11と後続車両12との間の距離が所定の距離未満であるか否かを認識する(ステップS3)。例えば、車間距離認識部42は、自車両11の後方の画像において後続車両12の画像が占める割合に基づいて、自車両11と後続車両12との間の距離が所定の距離未満であることを認識する。また、車間距離認識部42は、レーダ23から自車両11の後方へ発射したレーダ波の反射波の帰還時間や周波数を測定することにより、自車両11と後続車両12との間の距離が所定の距離未満であることを認識する。なお、自車両11と後続車両12との間の距離が所定の距離未満であるか否かの認識における「所定の距離」は、例えば次のように決定することができる。日本では、ETCゲート内の速度は、時速20km以下が基本であることや、このような低速度を前提とした自車両11と後続車両12との相対速度から考えた場合、上記所定の距離は、例えば3m~5m程度が妥当な値である。もちろん、この値の決定においては、各国の法律や交通事情等を考慮すべきであり、上記に示した値はあくまでも車両が日本の道路を走行することを想定して決定した値の一例である。
【0032】
自車両11と後続車両12との間の距離が所定の距離未満であることが車間距離認識部42により認識された場合には(ステップS3:YES)、続いて、警報出力部43が後続車両12に向けて警報を発する(ステップS4)。具体的には、警報出力部43は、車車間通信機28を制御し、自車両11から後続車両12へ警報を送信する。また、警報として、自車両11に設けられたハザードランプを点滅させてもよい。
【0033】
例えば、図2に示すように、自車両11がゲート3を通過している最中に後続車両12が自車両11の後部に接近した場合には、自車両11においてその旨が認識され、自車両11から後続車両12へ警報が発せられる。これにより、後続車両12が手動運転車両である場合には、後続車両12の運転者は、警報に基づいて、自己の運転している車両が前方の車両に接近していることを認識することができ、自己が運転している車両を確実に減速させることができる。また、後続車両12が自動運転車両である場合には、後続車両12は、警報に基づいて、当該車両を、前方の車両に急接近または接触しないように確実に減速させることができる。したがって、自車両11がゲート3を通過しているときに、後続車両12が自車両11に急接近し、または接触することが防止される。
【0034】
一方、自車両11がゲート3を通過している最中であることがゲート通過認識部41により認識されなかった場合(ステップS1:NO)、後続車両12の存在が車間距離認識部42により認識されなかった場合(ステップS2:NO)、または自車両11と後続車両12との間の距離が所定の距離未満であることが車間距離認識部42により認識されなかった場合には(ステップS3:NO)、図5に示すように、ステップS1、S2またはS3から直接ステップS5へ移行する。
【0035】
次に、ゲート通過認識部41が、GPS受信機24、ジャイロセンサ25、地図情報M、カメラ22、ETC通信機26等を用いて、自車両11がゲート3を通過したか否かを認識する(ステップS5)。この認識は、ステップS1で行った認識の方法と同様の方法により行うことができる。また、ステップS5では、例えば、自車両11の全体がゲート3から出たことが認識されたとき、または自車両11がゲートバー4を超えたことが認識されたときに、自車両11がゲート3を通過したと認識することが望ましい。
【0036】
自車両11がゲート3を通過したことがゲート通過認識部41により認識されたときには(ステップS5:YES)、続いて、側方車両認識部44が、カメラ22およびレーダ23等を用いて、側方車両13が存在するか否かを認識する(ステップS6)。例えば、側方車両認識部44は、カメラ22により撮像された自車両11の側方の画像を用いて画像認識を行い、側方車両13の存在を認識する。また、側方車両認識部44は、レーダ23から自車両11の側方へ発射したレーダ波の反射波等に基づいて、側方車両13の存在を認識する。
【0037】
側方車両13の存在が側方車両認識部44により認識された場合には(ステップS6:YES)、続いて、側方車両認識部44は、カメラ22により撮像された自車両11の側方の画像中に含まれる側方車両13の画像に基づいて、側方車両13が四輪以上の自動車か否かを認識する(ステップS7)。
【0038】
側方車両13が四輪以上の自動車であることが側方車両認識部44により認識された場合には(ステップS7:YES)、続いて、加速支援部45が側方車両13に向けて合図を発する(ステップS8)。例えば、加速支援部45は、合図として、自車両11から見て側方車両31が存在する方向の方向指示器のランプを点滅させる。また、車車間通信機28を用いて合図を側方車両13へ送信してもよい。
【0039】
続いて、加速支援部45が自車両11の加速支援を開始する(ステップS9)。例えば、加速支援部45は、走行制御装置29を制御し、自車両11の運転者によるアクセル操作の増加量に対するスロットル開度、または燃料噴射量の増加量の割合を通常よりも高くし、自車両11の運転者のアクセル操作に応じて自車両11が通常よりも加速する状態にする。これにより、自車両11の運転者は、自車両11を加速させ、自車両11を側方車両13の前方へ容易に進めることができる。この結果、自車両11は側方車両13よりも先に車線合流地点C(図3参照)に到達する。
【0040】
続いて、加速支援部45は、自車両11が車線合流地点Cに到達したか否かを判断する(ステップS10)。例えば、加速支援部45は、カメラ22により撮像した自車両11の前方の画像、または地図情報Mに基づき、自車両11がゲート3を通過した直後の位置から車線合流地点Cまでの距離を認識し、当該距離および自車両11の速度に基づいて、自車両11がゲート3を通過した直後の位置から車線合流地点Cに到達するまでに要する移動時間を算出し、自車両11がゲート3を通過した直後の時点から当該移動時間が経過したときに、自車両11が車線合流地点Cに到達したと判断する。なお、全国各所の有料道路の入口および出口のそれぞれについて、車両がゲートを通過した直後の位置から車線合流地点までの距離、またはその距離を移動するのに要する時間を測定したデータを予め記憶装置30に記憶しておき、自車両11が車線合流地点に到達したか否かを判断する際に、そのデータを用いるようにしてもよい。
【0041】
加速支援部45の判断の結果、自車両11が車線合流地点Cに到達したとき、加速支援部45は加速支援を終了する(ステップS11)。
【0042】
一方、自車両11がゲート3を通過したことがゲート通過認識部41により認識されなかった場合(ステップS5:NO)、側方車両13の存在が側方車両認識部44により認識されなかった場合(ステップS6:NO)、または側方車両13が四輪以上の自動車であることが側方車両認識部44により認識されなかった場合には(ステップS7:NO)、図5に示すように、ステップS5、S6またはS7の処理を行った後、直ちに運転支援処理を終了する。
【0043】
例えば、図3に示すように、自車両11がゲート3を通過した後に、自車両11の側方を並走する四輪以上の自動車(側方車両13)が存在する場合には、自車両11においてその旨が認識され、自車両11の加速支援が開始される。加速支援の開始により、自車両11がアクセル操作に応じて通常よりも加速する状態となるので、自車両11の運転者は、アクセル操作を行うことにより、自車両11を容易に加速させることができ、自車両11を側方車両13の前方へ容易に進めることができる。それゆえ、自車両11の運転者は、自車両11を側方車両13よりも先に車線合流地点Cに容易に到達させることができる。この結果、自車両11と側方車両13とが車線合流地点Cで互いに急接近し、または接触することが防止される。
【0044】
以上、説明した通り、本発明の実施例の運転支援装置21によれば、自車両11がゲート3を通過している最中において、自車両11と後続車両12との間の距離が所定の距離未満になったときに後続車両12に向けて警報を発する構成としたから、ゲート3において後続車両12が自車両11に急接近または接触することを防止することができる。すなわち、有料道路の入口または出口に設置されているゲートがETCゲートである場合、車両はゲートの手前で減速する。また、ゲートが有人ゲートである場合、車両はゲートで一旦停止する。いずれの場合でも、自車両がゲートを通過するときには、ゲートの手前で減速するので、後続車両においてその前方の車両(つまり自車両)の減速の認識が遅れ、または認識をし損なった場合には、後続車両が自車両の後部に急接近し、または接触するおそれがある。特に、鞍乗型車両は自動四輪車と比較して車体が小さいため、撮像画像やレーダを用いた自動認識においても、運転者の目視による認識においても、自動四輪車と比較して認識が遅れ易く、または認識をし損ない易い。本発明の実施例の運転支援装置21によれば、自車両11と後続車両12との間の距離が所定の距離未満となって自車両11に後続車両12が接近したとき、後続車両12に向けて警報を発する。これにより、後続車両12においてその前方の車両(つまり自車両11)の減速の認識が遅れ、または認識をし損なった場合でも、自車両11と後続車両12とが互いに接近していることを後続車両12またはその運転者に認識させることができる。したがって、ゲート3において後続車両12が自車両11に急接近または接触することを防止することができる。
【0045】
また、自車両11と後続車両12との間の車車間通信を用いて警報を後続車両12に送信することにより、警報を後続車両12に確実に伝えることができる。特に、後続車両12が自動運転車両である場合には、車車間通信を用いて、後続車両12において当該車両が前方の車両に接近しつつあることを迅速に認識させることができる。
【0046】
また、本発明の実施例の運転支援装置21によれば、自車両11がゲート3を通過した後に側方車両13が認識されたとき、自車両11の加速支援を行う構成としたから、自車両11を側方車両13よりも先に車線合流地点Cに容易に到達させることができる。これにより、車線合流地点Cで自車両11と側方車両13とが急接近または接触することを回避することができる。
【0047】
また、鞍乗型車両は四輪以上の自動車と比較して加速性能が高く、小回りが利くので、鞍乗型車両である自車両11を、四輪以上の自動車である側方車両13の先を行かせる方が、両車両の急接近または接触を迅速かつ容易に避けることができ、かつ自車両の運転者のストレスが少ない。本発明の実施形態の運転支援装置21においては、鞍乗型車両である自車両11を加速させて自車両11を側方車両13よりも先に車線合流地点Cに到達させることで自車両11と側方車両13との急接近または接触を回避する。これにより、自車両11を減速させて自車両11を側方車両13よりも後に車線合流地点Cに到達させることで自車両11と側方車両13との急接近または接触を回避するよりも円滑に、自車両11と側方車両13との急接近または接触を回避することができる。
【0048】
また、本発明の実施例の運転支援装置21によれば、側方車両13が四輪以上の自動車であるか否かを認識し、側方車両13が四輪以上の自動車であるときに自車両11の加速支援を行うこととしたから、自車両11と側方車両13との車線合流地点Cでの急接近または接触の円滑な回避を確実に行うことができる。すなわち、自車両11および側方車両13がいずれも鞍乗型車両である場合には、両車両の加速性能の優劣が付け難いので、自車両11を加速させて先に車線合流地点Cに到達させることによって両車両の急接近または接触を円滑に回避することができるとは限らない。自車両11および側方車両13がいずれも鞍乗型車両である場合には、自車両11の運転者がその場の具体的な状況(例えば自車両11と側方車両13との排気量の差等)を判断し、側方車両13の先を行くか、後を行くかを決定して手動で自車両11の速度を制御する方が、両車両の急接近または接触を円滑に回避することができると考えられる。本発明の実施例の運転支援装置によれば、側方車両13が四輪以上の自動車であるときに自車両11の加速支援を行い、側方車両13が例えば鞍乗型車両であるときには自車両11の加速支援を行わないので、自車両11と側方車両13との車線合流地点Cでの急接近または接触の円滑な回避を確実に行うことができる。
【0049】
また、本発明の実施例の運転支援装置21では、自車両11がゲート3を通過した直後の位置から車線合流地点Cまでの間において自車両11の加速支援を行う。これにより、自車両11を側方車両13よりも先に車線合流地点Cへ確実に到達させることができる。また、自車両11が側方車両13よりも先に車線合流地点Cを通過した後に、加速支援が継続され、自車両11がその運転者の意に反して過剰に加速してしまうことを防止することができる。
【0050】
また、自車両11におけるスロットル開度または燃料噴射量を制御して自車両11の加速支援を行うこととしたから、自車両11の運転者は、アクセルを開けることにより、自車両11を容易に加速させることができ、自車両11を側方車両13の前方へ容易に進めることができる。
【0051】
なお、上述した実施例では、自車両11がエンジンを走行の動力源とする鞍乗型車両であり、加速支援を行うに当たり、スロットル開度または燃料噴射量を制御することによって自車両11を通常よりも加速する状態にする場合を例にあげた。しかしながら、自車両11が電動モータを走行の動力源とする電動駆動型またはハイブリッド型の鞍乗型車両である場合には、加速支援を行うに当たり、電動モータの回転速度を制御して自車両11を通常よりも加速する状態にしてもよい。具体的には、自車両11の運転者のアクセル操作の増加量に対する電動モータの回転速度の増加量の割合を通常よりも高くする。
【0052】
また、上述した実施例では、自車両11が車線合流地点Cに達するまで加速支援を行う場合を例にあげたが、これに代え、自車両11が側方車両13の前方であって側方車両13から十分に離れた位置に達するまで加速支援を行うこととしてもよい。
【0053】
また、上述した実施例の図2または図3等では、自車両11である鞍乗型車両の例として自動二輪車を例にあげたが、自車両11は、自動三輪車等、他の種類の鞍乗型車両でもよい。
【0054】
また、上述した実施例では、有料道路の入口または出口に設置されたゲートを自車両が通過するときに運転支援装置により自車両の運転支援を行う場合を例にあげたが、有料道路の途中に設置されたゲートや、有料道路の以外の道路の入口、出口または途中に設置されたゲートを自車両が通過するときに運転支援装置により自車両の運転支援を行ってもよい。
【0055】
また、本発明は、請求の範囲および明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨または思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う鞍乗型車両の運転支援装置もまた本発明の技術思想に含まれる。
【符号の説明】
【0056】
3 ゲート
11 自車両
12 後続車両
13 側方車両
21 運転支援装置
31 演算処理装置
41 ゲート通過認識部(第1のゲート通過認識部、第2のゲート通過認識部)
42 車間距離認識部
43 警報出力部
44 側方車両認識部
45 加速支援部
C 車線合流地点
図1
図2
図3
図4
図5